説明

鋼管突き合わせ溶接部の冷却装置及び冷却方法

【課題】敷設船上にて鋼管の突き合わせ溶接部の強制冷却を行うことで、次工程の非破壊検査を速やかに行うことができ、かつ船上の限られたスペースで効率良く溶接部の冷却が可能な、鋼管突き合わせ溶接部の冷却方法及びその装置を提供する。
【解決手段】円筒状の鋼管Pbが嵌まる半円状の凹状部11を有しかつ全体でボックス状に形成された一対の半割状ケーシング部12Aを互い近接させ、これら半割状ケーシング部12を、それらの間に鋼管の溶接部を位置させた状態で、互い相対移動して近接させ該半割状ケーシング部同士の対向部分12AAを突き合わせて内部の鋼管の溶接部を囲繞した後、ケーシング12内の鋼管の溶接部に向けてスプレーノズルを通じて冷却水を噴射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海底パイプラインを構築する際の敷設船上での管の突き合わせを行う鋼管溶接装置に係り、特に、鋼管の溶接部を速やかに冷却することができる鋼管突き合わせ溶接部の冷却装置及び冷却方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、海底パイプラインを構築する際、敷設船上にて鋼管の突き合わせ作業を行うようにしている。
具体的には、停止させた敷設船上で既に接続した管の端部に、新たに接続しようとする管を突き合わせ溶接により接続し、次いで敷設船を管の長さ分だけ前進させると同時に既に接続した管の基端側の所定長を海中へ投入し、以下、停止させた敷設船上で新たに接続しようとする管の突き合わせ溶接、敷設船の前進並びに既に接続した管の基端側所定長の海中への投入を順次繰返しながら海底パイプラインを構築する。
また、既に接続した管の端部に新たに接続しようとする管を突き合わせて溶接した後には、その溶接部の非破壊検査を行う。
【0003】
ところで、上述したような敷設船上での鋼管の突き合わせ溶接作業では、通常、溶接部の強制冷却は行われておらず、自然冷却に頼っていたため、次工程である非破壊検査までの間に多くの時間が必要となり、作業能率の低下を招いていた。
【0004】
一方、配管冷却に関する技術としては、特許文献1が知られている。この特許文献1に示される「鋼管の冷却方装置」は、リング状のヘッダーの周上に、鋼管の搬送方向側に傾斜するようにスプレーノズルを複数配置し、ヘッダーの中央孔に鋼管を挿通状態に配置とし、この鋼管に向けてスプレーノズルから、鋼管の衝突部中心における衝突圧力が2kPa以上となるように冷却水を噴射する。そして、このようにスプレーノズルから噴射された冷却水により、蒸気膜を発生させることなく、鋼管を周方向と軸方向の両方向に対して均一に冷却するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−261018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1は、鋼管製造後に所望の特性を得るための冷却技術であり、該冷却技術をそのまま敷設船上での鋼管の突き合わせ溶接に適用することができない。
具体的には、冷却のために多量の冷却水を必要とするが、船上の限られた作業スペースにおいては飛散する冷却水するのため他の作業に支障を来たす、また、鋼管の突合せ溶接部にスプレーノズルを対向配置させるときのスプレーノズルの位置決め作業が面倒であるという問題があり、この問題解決のために新たな技術の提供が期待されていた。
【0007】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、敷設船上にて鋼管の突き合わせ溶接部の強制冷却を行うことで、次工程の非破壊検査を速やかに行うことができ、かつ船上の限られたスペースで効率良く溶接部を冷却することができる、鋼管突き合わせ溶接部の冷却装置及び冷却方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明は以下の手段を提案している。
本願の請求項1に示される鋼管突き合わせ溶接部の冷却装置では、互いに近接離間するように移動自在に設けられ、かつ全体でボックス状に形成されて、円筒状に形成された鋼管の突き合わせ溶接部を周囲から挟む半円状の凹状部を有する一対の半割状ケーシング部と、該半割状ケーシング部内でかつ半円状の凹状部の外側位置に配置され、前記半割状ケーシング部同士の対向部分を突き合わせた前記判割状ケーシング部による鋼管囲繞時に、前記凹状部間に挟持された前記鋼管の溶接部に向けて冷却水を噴射するスプレーノズルを有するノズル装置と、を具備することを特徴とする。
なお、ここでいうボックス状とは、立方体、直方体のほか多角形の柱状体も含むものであって、鋼管を挿通可能な中空の立体形状を意味する。
【0009】
この発明の鋼管突き合わせ溶接部の冷却装置によれば、円筒状の鋼管が嵌まる半円状の凹状部を有しかつ全体でボックス状に形成された一対の半割状ケーシング部を、それらの間に前記鋼管の溶接部を位置させた状態で、互い相対移動して近接させ該半割状ケーシング部同士の対向部分を突き合わせて内部の鋼管の溶接部を囲繞した後、該半割状ケーシング部内の鋼管の溶接部に向けてスプレーノズルを通じて冷却水を噴射するようにしたので、該半割状ケーシング部内において溶接直後の鋼管の溶接部を速やかに強制冷却することができる。また、前記半割状ケーシング部にて冷却水の噴射及び回収ができるので、スペースの限られた船上においても、周りに冷却水が飛散することなく、溶接直後の鋼管の溶接部の強制冷却が可能となる。また、ケーシングが半割状となっているので、ケーシング及びそれに付随するスプレーノズルを、鋼管の溶接部に対向するよう鋼管の外方から容易に装着することができる。
【0010】
また、本願の請求項2に示される鋼管突き合わせ溶接部の冷却装置では、前記スプレーノズルは前記半割状ケーシング部内でかつ前記半円状の凹状部の外側位置に、前記鋼管の周方向に沿って一定の間隔をおいて複数配置されていることを特徴とする。
【0011】
この発明の鋼管突き合わせ溶接部の冷却装置によれば、スプレーノズルは半割状ケーシング部内でかつ半円状の凹状部の外側位置に、凹状部に沿うようにつまり鋼管の周方向に沿って一定の間隔をおいて複数配置されているので、凹状部に挟まれた鋼管の溶接部に対して該スプレーノズルを通じて均一に冷却水を噴射することができ、該鋼管の溶接部の冷却を均一に行うことができる。
【0012】
また、本願の請求項3に示される鋼管突き合わせ溶接部の冷却装置では、前記半割状ケーシング部は上下方向に近接離間するように移動自在に設けられていることを特徴とする。
【0013】
この発明の鋼管突き合わせ溶接部の冷却装置によれば、半割状ケーシング部を上下方向に近接離間するように移動自在に設けることで、開閉の際に半割状ケーシング部が側方に広がらないため、該半割状ケーシング部の側方のスペースを有効に利用することができ、スペースの限られた船上においても効率良い強制冷却が可能となる。
【0014】
また、本願の請求項4に示される鋼管突き合わせ溶接部の冷却装置では、上側の半割状ケーシング部に属する前記スプレーノズルは、下側の半割状ケーシング部に属する前記スプレーノズルの数よりも多く配置されていることを特徴とする。
【0015】
この発明の本発明の鋼管突き合わせ溶接部の冷却装置によれば、鋼管突き合わせ溶接部の冷却に適するスプレーノズル数が配置されている。すなわち、上側に配置されたスプレーノズルから噴射される冷却水は、鋼管の溶接部に当たった後、重力の影響受けてそのまま該鋼管の溶接部に沿って下方に流れる。つまり、鋼管の溶接部の下側には、それに対向配置されたスプレーノズルから噴射される冷却水の他に、鋼管の溶接部の上側に噴射された冷却水も流れる。この結果、下側の半割状ケーシング部に属する前記スプレーノズルの数は少なくて足りる。
【0016】
また、本願の請求項5に示される鋼管突き合わせ溶接部の冷却装置では、前記半割状ケーシング部及び前記ノズル装置は、移動台車に搭載されていることを特徴とする。
【0017】
この発明の鋼管突き合わせ溶接部の冷却装置によれば、冷却対象である鋼管の溶接部の位置に応じて、移動台車ごと移動することができる。このため、鋼管の溶接部に対向する位置にスプレーノズルを容易に配置することができる。また、ケーシング及びノズル装置を、必要なときにのみ所要箇所に配置させ、その他不要なときにはその所要箇所から外れた位置に配置することができるので、例えば船上においてスペースの有効利用が行える。
【0018】
また、本願の請求項6に示される鋼管突き合わせ溶接部の冷却方法では、請求項1〜5のいずれか1項に記載の鋼管突き合わせ溶接部の冷却装置を使用する鋼管突き合わせ溶接部の冷却方法であって、前記一対の半割状ケーシング部を、それらの間に前記鋼管の溶接部を位置させた状態で、互い相対移動して近接させ該半割状ケーシング部同士の対向部分を突き合わせて内部の鋼管の溶接部を囲繞した後、該半割状ケーシング部内の鋼管の溶接部に向けて前記スプレーノズルを通じて冷却水を噴射することを特徴とする。
【0019】
この発明の鋼管突き合わせ溶接部の冷却方法によれば、請求項1〜5のいずれか1項に記載の鋼管突き合わせ溶接部の冷却装置を使用して、ケーシング部内における溶接直後の鋼管の溶接部を速やかに強制冷却することができる。
【発明の効果】
【0020】
本願の請求項1に示される鋼管突き合わせ溶接部の冷却装置によれば、該半割状ケーシング部内において溶接直後の鋼管の溶接部を速やかに強制冷却することができる。また、半割状ケーシング部にて冷却水の噴射及び回収ができるので、スペースの限られた船上においても、周りに冷却水が飛散することなく、溶接直後の鋼管の溶接部の強制冷却が可能となる。また、ケーシングが半割状となっているので、ケーシング及びそれに付随するスプレーノズルを、鋼管の溶接部に対向するよう鋼管の外方から容易に装着することができる。
つまり、本発明の鋼管突き合わせ溶接部の冷却装置により、敷設船上において、突き合わせた直後の鋼管の溶接部の強制冷却を行ない、次工程の非破壊検査を速やかに進むことができ、かつ船上の限られたスペースで効率良く鋼管の溶接部の冷却処理が可能となる。
【0021】
また、本願の請求項2に示される鋼管突き合わせ溶接部の冷却装置によれば、凹状部に挟まれた鋼管の溶接部に対して該スプレーノズルを通じて均一に冷却水を噴射することができ、該鋼管の溶接部の冷却を均一に行うことができる。
【0022】
また、本願の請求項3に示される鋼管突き合わせ溶接部の冷却装置によれば、該半割状ケーシング部の側方のスペースを有効に利用することができ、スペースの限られた船上においても効率良い強制冷却が可能となる。
【0023】
本願の請求項4に示される鋼管突き合わせ溶接部の冷却装置によれば、上側の半割状ケーシング部に属するスプレーノズル数と、下側の半割状ケーシング部に属するスプレーノズル数とが好適に配置されることとなり、省力化の面において優れる。
【0024】
また、本願の請求項5に示される鋼管突き合わせ溶接部の冷却装置では、冷却対象である鋼管の溶接部の位置に応じて、移動台車ごと移動することができ、このため、鋼管の溶接部に対向する位置にスプレーノズルを容易に配置することができる。また、ノズル装置を、必要なときにのみ所要箇所に配置させ、その他不要なときにはその所要箇所から外れた位置に配置することができるので、例えば船上においてスペースの有効利用が行える。
【0025】
また、本願の請求項6に示される鋼管突き合わせ溶接部の冷却方法では、ケーシング部内における溶接直後の鋼管の溶接部を速やかに強制冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る、鋼管突き合わせ溶接部の冷却装置及び冷却方法が適用される敷設船を示す概略側面図である。
【図2】図1に示す冷却装置の正面図であって、ケーシングが開放した状態にある図である。
【図3】図2の冷却装置を詳細に示す図であって、(a)は平面図、(b)はケーシング部が閉鎖した状態にある正面図、(c)は図3(b)のc−c線に沿う断面図である。
【図4】(a)は上側に位置するケーシングのスプレーノズルの配置状態を示す正面図、(b)はスプレーノズルの具体的構成を示す断面図、(c)は図4(b)の下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態について図1〜図4を参照して説明する。
図1は、本発明に係る、鋼管突き合わせ溶接部の冷却装置及び冷却方法が適用される敷設船1である。
この敷設船1上には、船首から船尾に向けて、位置合わせおよび第1の溶接ステージS1、第2の溶接ステージS2、第3の溶接ステージS3、非破壊検査ステージS4、防食下地処理ステージS5、防食処理ステージS6が、接続しようとする鋼管の長さごとに順に配備される。
【0028】
敷設船1上では、位置合わせおよび第1の溶接ステージS1にて、既に接続した鋼管Pbの端部と新たに接続しようとする鋼管Paが同一軸線上となるように、双方の管の位置合わせを行い、その後既に接続した鋼管Pbの端部に対して新たに接続しようとする鋼管Paを突き合わせて溶接する。第2、第3の溶接ステージS2、S3では、位置合わせおよび第1の溶接ステージS1で行った溶接箇所についてさらに必要な箇所に追加の溶接を行う。これにより、既に接続した鋼管Pbに対して新たに接続しようとする鋼管Paを接続する。非破壊検査ステージS4では、突き合わせ溶接部が正規に溶接されているか否かを検査する。
【0029】
ここで、正規に溶接されていないと判断した場合には、このステージS4の後段で溶接箇所の補修を行う。他方、正規に溶接されていたと判断した場合には、防食下地処理ステージS5にて、溶接箇所を素地調整した後さらに下地処理する。また、防食処理ステージS6では、下地処理された既に接続した鋼管Pbに対し、処理熱収縮用のチューブにて該管の外周を覆った後にさらにその外周部をウレタンで蓋う防食処理を行う。これら一連の工程は敷設船1を停止させた状態で同時に行うが、接続されるあるいは接続された管を基準に考えると、先端側から基端側に向けて順に行う。これら各作業ステージでの一連の工程が完了したら、敷設船を新たに接続しようとする管の長さ分(例えば12m)だけ前進させ、これと同時に既に接続した鋼管Pbの基端側の所定長を海中へ投入する。
以下、停止させた前記敷設船上の各作業ステージで一連の工程を行うことと、敷設船の前進並びに既に接続した管の基端側の所定長の海中への投入を順次繰返すことによって、海底パイプラインを構築しながらその敷設を行う。
【0030】
溶接工程の最終となる第3の溶接ステージS3と非破壊検査ステージS4との間には、鋼管突き合わせ溶接部の冷却装置10がベース上に配置されている。
この冷却装置10は、図2及び図3に示されるように、互いに近接離間するように移動自在に設けられ、かつ全体でボックス状に形成されて、円筒状の鋼管Pbを周囲から挟む半円状の凹状部11を有する一対の半割状ケーシング部12Aからなるケーシング12と、該半割状ケーシング部12A内でかつ半円状の凹状部11の外側位置に配置され、半割状ケーシング部12A同士の対向部分12AAを突き合わせた判割状ケーシング部12Aによる鋼管囲繞時に、前記凹状部11間に鋼管Pbが挟持されかつケーシング12の内部に鋼管の溶接部(図3(c)に符号Mで示す)が位置する状態で、該鋼管の溶接部Mに向けて冷却水を噴射する複数のスプレーノズル13を有するノズル装置14と、これらケーシング12及びノズル装置14を搭載する移動台車15を具備する。
ケーシング12は鋼管囲繞時にある場合に、図3(b)に示すように全体として直方体を形成する。なお、ケーシング12の形状は、なんら直方体に限られることなく、立方体でもあるいはそれ以外の多角形柱状体であってもよい。
【0031】
また、前記半割状ケーシング部12Aは、上下方向に配置された複数本の支持パイプ20にスライド部材21を介して上下方向に移動自在に設けられており、これにより上側に位置する半割状ケーシング部12Aと、下側に位置する半割状ケーシング部12Aとが互いに近接離間する。
なお、支持パイプ20に対するスライド部材21の固定は、ボルト、ピンなどの様々な固定手段が用いられる。また、前記ケーシング12の鋼管囲繞時及び開放時の切換は手動で行っても良いし、機械的に上下動させる駆動機構を設けて自動で行っても良い。
【0032】
また、前記半円状の凹状部11は、上側に位置する半割状ケーシング部12Aと下側に位置する半割状ケーシング部12Aが近接して互いに接触した場合に全体として円をなし、その周縁部に鋼管Pbが嵌まりかつ密着するようにその内径寸法が設定されている。
また、前記半割状ケーシング部12Aの凹状部11に沿う周面には、図3(c)に示すように、鋼管Pbに接触するシリコンゴム22が配置されており、該シリコンゴム22によってケーシング12が閉じた場合に内部を密封するようになっている。
【0033】
前記ノズル装置14のスプレーノズル13は、半円状の凹状部11の外側位置に、凹状部11に沿うように一定の間隔で配置されている。
これらスプレーノズル13は、下側に位置する半割状ケーシング部12Aでは図2、図3(b)に示されるように、凹状部11の下方に配置された支持部材23に直線状に一定間隔に配置され、また、上側に位置する半割状ケーシング部12Aでは図2、図3(b)、図4(a)に示されるように、鋼管Pbの周方向に沿うよう、凹状部11の外方位置にて該凹状部11と平行に配置された円弧状のパイプ24に一定間隔で(例えば、図4(a)に示すように5°の間隔をおいて)配置されている。
なお、支持部材23は図示せぬステーを介して下側の半割状ケーシング部12Aに支持され、円弧状のパイプ24は図示せぬステーを介して上側の半割状ケーシング部12Aに支持される。
上側の半割状ケーシング部に属するスプレーノズル13は、鋼管の溶接部Mの上側半分に冷却水を噴射できるように、また、下側の半割状ケーシング部に属する前記スプレーノズル13は、鋼管の溶接部Mの下側半分のうち両側部を除く一部(約120度の角度部分)に冷却水を噴射できるように配置されている。また、上側の半割状ケーシング部12Aに属するスプレーノズル13は、下側の半割状ケーシング部12Aに属するスプレーノズル13の数よりも多く配置されている。
【0034】
また、前記スプレーノズル13の形状としては、例えば図4(b)に示されるように、全体として筒状体13Aに形成され、その先端中央部に設けられた噴出孔13Bから冷却水が噴出する構成のものが使用される。
また、前記パイプ24及び支持部材23内のパイプ23Aに通じる冷却水供給管30は、図3(b)に示すように、冷却水が貯留されるタンク31に接続されており、該タンク31には、エアーホース32を通じてエアーコンプレッサ33から圧縮空気が供給されるようになっている。
これにより、エアーコンプレッサ33から圧縮空気が供給された場合に、その圧力で、タンク31内の冷却水が、冷却水供給管30、パイプ24及び支持部材23内のパイプ23Aを通じて、上側及び下側のケーシング部12内に位置するスプレーノズル13に供給される。
【0035】
そして、以上のように構成された冷却装置10では、溶接ステージS1〜S3にて溶接処理が完了した後、その直後に設けられる冷却装置10にて、鋼管Pbの鋼管の溶接部Mが冷却される。
すなわち、この冷却装置10において、開放状態にある一対の半割状ケーシング部12Aを、それらの間に鋼管の溶接部Mを位置させた状態で、互い相対移動して近接させ該半割状ケーシング部12A同士の対向部分12AAを突き合わせて内部の鋼管の溶接部を囲繞した後、エアーコンプレッサ33を駆動する。すると、該エアーコンプレッサ33の圧力により、タンク31内の水が冷却水供給管30を通じてスプレーノズル13に供給される。その結果、該スプレーノズル13から鋼管の溶接部Mに向けて冷却水が噴射され、該冷却水により鋼管の溶接部Mが強制冷却される。一方、ケーシング12内で冷却に使用された後の水は、下側に位置する半割状ケーシング部12Aに設けられた図示しない排水部を通じて放出される。
【0036】
以上詳細に説明したように本実施形態に示される、鋼管突き合わせ溶接部Mの冷却装置10によれば、互いに近接離間するように移動自在でありかつ全体でボックス状に形成されて、円筒状の鋼管を周囲から挟む半円状の凹状部11を有する一対の半割状ケーシング部12Aを具備し、これら半割状ケーシング部12Aを、それらの間に鋼管の溶接部Mを位置させた状態で、互い相対移動して近接させ該半割状ケーシング部同士の対向部分12AAを突き合わせて内部の鋼管の溶接部を囲繞した後、鋼管の溶接部Mに向けてスプレーノズル13から冷却水を噴射するようにしたので、該ケーシング12内において溶接直後の鋼管の溶接部Mを速やかに強制冷却することができる。また、前記ケーシング12にて冷却水の噴射及び回収ができるので、スペースの限られた船上においても溶接直後の強制冷却が可能となる。また、ケーシング12にて冷却水の噴射及び回収ができるので、スペースの限られた船上においても、周りに冷却水が飛散することなく、溶接直後の鋼管の溶接部Mの強制冷却が可能となる。また、ケーシング12が半割状となっているので、ケーシング12及びそれに付随するスプレーノズル13を、鋼管の溶接部Mに対向するよう鋼管Pbの外方から容易に装着することができる。
すなわち、上記鋼管冷却装置10では、ケーシング12とスプレーノズル13からなる鋼管の溶接部Mの冷却装置という簡易な構成体により、敷設船上において、突き合わせた直後の鋼管の溶接部Mの強制冷却を行ない、次工程の非破壊検査を速やかに進むことができ、かつ船上の限られたスペースで効率良く鋼管の溶接部Mの冷却処理が可能となる。
【0037】
また、上記冷却装置10では、スプレーノズル13は半円状の凹状部11の外側位置に、鋼管Pbの周方向に沿うようにつまり凹状部11に沿うように一定の間隔で配置されているので、凹状部11に挟まれた鋼管の溶接部Mに対して該スプレーノズル13を通じて均一に冷却水を噴射することができ、該鋼管の溶接部Mの冷却処理を均一に行うことができる。
【0038】
また、上記冷却装置10では、ケーシング部12を上下方向に近接離間するように移動自在に設けることで、該ケーシング部12の側方のスペースを有効に利用することができ、スペースの限られた船上においても効率良い強制冷却が可能となる。
また、上記冷却装置では、上側の半割状ケーシング部に属する前記スプレーノズル13を、下側の半割状ケーシング部に属する前記スプレーノズルの数よりも多く配置している。これは、上側に配置されたスプレーノズルから噴射される冷却水が、鋼管の溶接部に当たった後、重力の影響受けてそのまま該鋼管の溶接部に沿って下方に流れることとなり、結局、鋼管の溶接部の下側には、それに対向配置されたスプレーノズルから噴射される冷却水の他に、鋼管の溶接部の上側に噴射された冷却水も流れることとなり、この結果、下側の半割状ケーシング部に属する前記スプレーノズルの数は少なくて足りるからである。つまり、上側の半割状ケーシング部12Aに属するスプレーノズル数と、下側の半割状ケーシング部12Aに属するスプレーノズル数とが好適に配置されることとなり、省力化の面において優れるものとなっている。
さらに、この冷却装置10では、冷却対象である鋼管の溶接部Mの位置に応じて、移動台車10ごと移動することができ、このため、鋼管の溶接部Mに対向する位置にスプレーノズル13を容易に配置することができる。また、ケーシング12やノズル装置14を、必要なときにのみ所要箇所に配置させ、その他不要なときにはその所要箇所から外れた位置に配置することができるので、例えば船上においてスペースの有効利用が行える。
【0039】
なお、上記実施形態では、上側に位置する半割状ケーシング部12A、及び下側に位置する半割状ケーシング部12Aにおけるスプレーノズル13の配置形態を異ならせたが、これに限定されず、同一としても良い。例えば、下側に位置するスプレーノズル13を、上側と同様に、凹状部11の外方位置にて該凹状部11と平行に配置された円弧状のパイプ24に一定間隔に配置しても良い。
【0040】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、海底パイプラインを構築する際の敷設船上での敷設船上にて鋼管の突き合わせ溶接部の強制冷却を行う、鋼管突き合わせ溶接部の冷却方法及びその装置に関する技術である。
【符号の説明】
【0042】
1 敷設船
10 冷却装置
11 凹状部
12 ケーシング
12A 半割状ケーシング部
12AA 半割状ケーシング部同士の対向部分
13 スプレーノズル
14 ノズル装置
15 移動台車
Pa 鋼管
Pb 鋼管
M 鋼管の溶接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに近接離間するように移動自在に設けられ、かつ全体でボックス状に形成されて、円筒状に形成された鋼管の突き合わせ溶接部を周囲から挟む半円状の凹状部を有する一対の半割状ケーシング部と、
該半割状ケーシング部内でかつ半円状の凹状部の外側位置に配置され、前記半割状ケーシング部同士の対向部分を突き合わせた前記判割状ケーシング部による鋼管囲繞時に、前記凹状部間に挟持された前記鋼管の溶接部に向けて冷却水を噴射するスプレーノズルを有するノズル装置と、を具備することを特徴とする鋼管突き合わせ溶接部の冷却装置。
【請求項2】
前記スプレーノズルは前記半割状ケーシング部内でかつ前記半円状の凹状部の外側位置に、前記鋼管の周方向に沿って一定の間隔をおいて複数配置されていることを特徴とする請求項1に記載の鋼管突き合わせ溶接部の冷却装置。
【請求項3】
前記半割状ケーシング部は上下方向に近接離間するように移動自在に設けられていることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の鋼管突き合わせ溶接部の冷却装置。
【請求項4】
上側の半割状ケーシング部に属する前記スプレーノズルは、下側の半割状ケーシング部に属する前記スプレーノズルの数よりも多く配置されていることを特徴とする請求項3に記載の鋼管突き合わせ溶接部の冷却装置。
【請求項5】
前記半割状ケーシング部及び前記ノズル装置は、移動台車に搭載されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の鋼管突き合わせ溶接部の冷却装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の鋼管突き合わせ溶接部の冷却装置を使用する鋼管突き合わせ溶接部の冷却方法であって、
前記一対の半割状ケーシング部を、それらの間に前記鋼管の溶接部を位置させた状態で、互い相対移動して近接させ該半割状ケーシング部同士の対向部分を突き合わせて内部の鋼管の溶接部を囲繞した後、該半割状ケーシング部内の鋼管の溶接部に向けて前記スプレーノズルを通じて冷却水を噴射することを特徴とする鋼管突き合わせ溶接部の冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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