説明

鋼製スリットダム、これに用いられる礫体捕捉ユニット及び礫体捕捉ユニットの取り付け方法

【課題】スリットダム本体に対する礫体捕捉用の部材の取り付け作業が容易であるとともに、そのような礫体捕捉用の部材を取り付けるために必要となるスリットダム本体への加工を簡略化することを可能とする鋼製スリットダムを提供すること。
【解決手段】川幅方向に間隔を空けて立設された断面円形状の複数の鋼管柱11と、筒状断面を周方向に分割した断面からなる複数の分割部材25が鋼管柱11を外周側から取り囲むように配置され、当該複数の分割部材25が着脱可能に連結されて構成される筒状体23に川幅方向に延長されてなる横桟27が取り付けられた礫体捕捉ユニット20を備える。礫体捕捉ユニット20は、鋼管柱11の周方向P1への回転力の作用時において、基礎コンクリート5、鋼管梁13等の他部材に鋼管柱11の周方向から係合してその回転が拘束されるよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川の土石流、流木対策用等として好適に用いられる鋼製スリットダム、これに用いられる礫体捕捉ユニット及び礫体捕捉ユニットの取り付け方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、土石流発生時に河川を流れる巨礫、流木等の礫体が河川下流側へ流出するのを防止するため、図22に示すような鋼製スリットダム101が提案されている。この鋼製スリットダム101は、川幅方向に間隔を空けて構築された堤体104間に配置されるもので、複数の鋼管部材を組み合わせて形成される骨組構造体としてのスリットダム本体110から構成されている。このスリットダム本体110は、河床103上に打設された基礎コンクリート105上で川幅方向に間隔を空けて立設された複数の鋼管柱111と、鋼管柱111に接続された鋼管梁113とを備えている。河川の上流側から下流側にかけて流れてくる比較的粒径の大きな礫や流木等は、このスリットダム本体110に衝突することによって捕捉されることになる。
【0003】
ところで、近年においては、家屋等が周囲に多く存在する河川の上流側においてこのような鋼製スリットダムが設置されるケースが増加してきている。このため、保全対象となる下流側の家屋等の安全性を確保する観点から、土石流中に含まれる粒径の小さい中小礫も捕捉可能となるよう礫体捕捉性能を向上させた構造の鋼製スリットダムの提案が望まれている。
【0004】
このような構造の鋼製スリットダムとしては、例えば、特許文献1、2に記載のようなものが提案されている。特許文献1において提案されている鋼製スリットダムは、エキスパンドメタル、H形鋼等によって構成される礫捕捉用部材をスリットダム本体に上流側から取り付けることを特徴としている。特許文献2において提案されている鋼製スリットダムは、複数本の縦桟、横桟を格子状に組んで構成される中小礫捕捉部材をスリットダム本体に上流側から取り付けたことを特徴としている。
【0005】
何れの文献においても、スリットダム本体に対して礫体捕捉用の部材を取り付けることによって、川幅方向に間隔を空けた複数の鋼管柱間を通過しようとする礫体をその礫体捕捉用の部材によって捕捉する構造の鋼製スリットダムが開示されており、これによって、鋼製スリットダムの礫体捕捉性能の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−201019号公報
【特許文献2】特開2007−191936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、特許文献1、2において開示されている礫体捕捉用の部材をスリットダム本体に対して取り付ける方法について検討する。
【0008】
特許文献2においては、礫体捕捉用の部材をスリットダム本体に取り付けるためにスリットダム本体にブラケットを取り付け、ブラケットに対して礫体捕捉用の部材をボルトナットにより取り付ける構造や、礫体捕捉用の部材をスリットダム本体に直接、ボルトナットにより取り付ける構造が開示されている。特許文献1においては、H形鋼からなる礫体捕捉用の部材をどのようにスリットダム本体に取り付けるのか明記はされていないが、特許文献2と同様にして取り付けるものと考えられる。
【0009】
このように、礫体捕捉用の部材をスリットダム本体やブラケットに対してボルトナットにより取り付ける場合、礫体捕捉用の部材をクレーン等で吊り下げたり作業員が把持した状態でスリットダム本体やブラケットに当接させたうえで、その状態を保持したまま礫体捕捉用の部材とスリットダム本体やブラケットとのボルト孔を位置合わせした後にこれらをボルトナットで固定する必要があり、礫体捕捉用の部材の取り付け作業が非常に煩雑なものとなってしまうという問題点がある。
【0010】
また、ブラケットを介してスリットダム本体に対して礫体捕捉用の部材を取り付ける場合、そのようなブラケットをスリットダム本体に対して予め溶接等によって取り付けておく必要があり、スリットダム本体に対して直接礫体捕捉用の部材を取り付ける場合も、スリットダム本体にボルト用孔を多く設けたりする必要があると考えられる。これらのブラケットやボルト用孔は、礫体捕捉用の部材をボルトナットにより取り付けるうえでは精度よく設けておく必要がある。このため、従来においては、礫体捕捉用の部材をスリットダム本体に対して取り付けるにあたって、スリットダム本体に対して精度よく加工を施す必要があり、その分、施工コスト、施工期間が増大してしまうという問題点が生じている。
【0011】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、スリットダム本体に対する礫体捕捉用の部材の取り付け作業が容易であるとともに、そのような礫体捕捉用の部材を取り付けるために必要となるスリットダム本体への加工を簡略化することを可能とする鋼製スリットダム、これに用いられる礫体捕捉ユニット及びこの礫体捕捉ユニットを利用した鋼製スリットダムの補強方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上述した課題を解決するために、鋭意検討の末、下記の鋼製スリットダム、その補強方法及び礫体捕捉ユニットを発明した。
【0013】
第1発明に係る鋼製スリットダムは、河川の川幅方向に間隔を空けて構築された堤体間に配置される鋼製スリットダムにおいて、前記川幅方向に間隔を空けて立設された断面円形状の複数の鋼管柱と、筒状断面を周方向に分割した断面からなる複数の分割部材が前記鋼管柱を外周側から取り囲むように配置され、当該複数の分割部材が着脱可能に連結されて構成される筒状体に前記川幅方向に延長されてなる横桟が取り付けられた礫体捕捉ユニットとを備えることを特徴とする。
【0014】
第2発明に係る鋼製スリットダムは、第1発明において、前記礫体捕捉ユニットは、前記鋼管柱の周方向への回転力の作用時において、その回転が拘束されるように構成されていることを特徴とする。
【0015】
第3発明に係る鋼製スリットダムは、第1又は第2発明において、前記礫体捕捉ユニットは、その上側又は下側における筒状体端面に前記鋼管柱の軸方向に傾斜してなる傾斜面が形成され、前記回転力の作用時において、その傾斜面が他部材に前記鋼管柱の周方向から係合するとともに、その傾斜面と反対側の当該礫体捕捉ユニットの上側又は下側における筒状体端面が他部材に係合してその回転が拘束されることを特徴とする。
【0016】
第4発明に係る鋼製スリットダムは、第1又は第2発明において、前記複数の分割部材は、これらのうちの一つが他の分割部材より軸方向長さが長くなるよう形成され、前記礫体捕捉ユニットは、前記回転力の作用時において、前記軸方向長さが長くなるよう形成された分割部材の周方向端部が他部材に前記鋼管柱の周方向から係合してその回転が拘束されることを特徴とする。
【0017】
第5発明に係る鋼製スリットダムは、第3又は第4発明において、前記礫体捕捉ユニットが係合すべき前記他部材は、前記鋼管柱に一つ又はその軸方向に間隔を空けて接続された鋼管部材、若しくは前記鋼管柱が立設されている基礎コンクリートであることを特長とする。
【0018】
第6発明に係る鋼製スリットダムは、第1又は第2発明において、前記礫体捕捉ユニットは、その上側又は下側における筒状体端面に嵌合凹部が形成されるとともに、前記鋼管柱に固着された被係合部材が当該嵌合凹部に嵌合され、前記回転力の作用時において、前記嵌合凹部が前記被係合部材に周方向から係合してその回転が拘束されることを特徴とする。
【0019】
第7発明に係る鋼製スリットダムは、第1〜第6発明の何れか一つの発明において、前記礫体捕捉ユニットは、前記筒状体の軸方向に間隔を空けて前記横桟が複数取り付けられ、前記複数の横桟と交差するように縦桟が取り付けられていることを特徴とする。
【0020】
第8発明に係る鋼製スリットダムは、第1〜第7発明の何れか一つの発明において、前記礫体捕捉ユニットは、前記筒状体と前記横桟とを有する単一の礫体捕捉部材から構成されていることを特徴とする。
【0021】
第9発明に係る鋼製スリットダムは、第1〜第7発明の何れか一つの発明において、前記礫体捕捉ユニットは、前記筒状体と前記横桟とを有する礫体捕捉部材を前記鋼管柱に対して直列に複数配置して構成されていることを特徴とする。
【0022】
第10発明に係る鋼製スリットダムは、第9発明において、前記複数の礫体捕捉部材は、互いに対向する筒状体端面に前記鋼管柱の軸方向に傾斜してなる傾斜面が形成されているとともに、当該対向する筒状体端面を互いに接触させて配置されていることを特徴とする。
【0023】
第11発明に係る鋼製スリットダムは、第9発明において、前記複数の礫体捕捉部材は、一の礫体捕捉部材への前記回転力の作用時において、他の礫体捕捉部材へ当該回転力を伝達可能となるよう構成されていることを特徴とする。
【0024】
第12発明に係る鋼製スリットダムは、第1〜第11の何れか一つの発明において、前記筒状体は、前記複数の分割部材がボルトナットにより周方向に着脱可能に連結されて構成されていることを特徴とする。
【0025】
第13発明に係る鋼製スリットダムは、第1〜第12の何れか一つの発明において、前記複数の鋼管柱に対して取り付けられた前記礫体捕捉ユニットの横桟により、前記複数の鋼管柱の川幅方向両側を通過しようとする礫体が捕捉可能とされていることを特徴とする。
【0026】
第14発明に係る鋼製スリットダムは、第1〜第13の何れか一つの発明において、前記礫体捕捉ユニットは、前記河川の流れ方向に複数立設された鋼管柱のうち上流側に立設された鋼管柱に取り付けられ、前記横桟は、前記鋼管柱の上流側に位置するように前記筒状体に取り付けられていることを特徴とする。
【0027】
第15発明に係る礫体捕捉ユニットは、第1〜第14の何れか一つの発明の鋼製スリットダムに用いられることを特徴とする。
【0028】
第16発明に係る礫体捕捉ユニットの取り付け方法は、第1〜第14発明の何れか一つの発明に係る複数の鋼管柱を有する鋼製スリットダムに対して前記礫体捕捉ユニットを取り付ける方法であって、前記複数の分割部材を前記鋼管柱にその外周側から取り囲むように配置し、当該複数の分割部材を着脱可能に連結することによって、前記礫体捕捉ユニットを前記鋼管柱に取り付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
第1〜第16発明によれば、礫体の捕捉を容易とするための礫体捕捉ユニットをスリットダム本体に対して取り付ける場合に、その位置決め作業が容易であるとともに取り付け作業時の労力負担の軽減を図ることが可能となっている。また、礫体捕捉ユニットをスリットダム本体に取り付けるにあたって、スリットダム本体に対する加工を簡略化することができ、その分、施工コスト、施工期間の増大を抑えることが可能となっている。また、礫体捕捉ユニットの回転をある程度許容する構造となっているので、複数の分割部材の連結を簡単な構造とすることが可能となっている。また、礫体捕捉ユニットを構成する筒体が着脱可能に連結されているため、その補修作業を容易に行うことが可能となっている。また、礫体捕捉ユニットが基礎コンクリート、スリットダム本体に固定されない構造となっているので、礫体捕捉ユニットを取り付けた場合でも温度応力による影響を受けないものにすることが可能となっている。
【0030】
第2発明〜第6発明によれば、礫体から過大な衝撃荷重が横桟に負荷された場合でも、礫体捕捉ユニットに対して作用する回転力に対して十分に抵抗することが可能となる。特に、第5発明によれば、スリットダム本体に対する加工が不要であり、施工コスト等の増大を一層効果的に抑えることが可能となっている。
【0031】
第7発明によれば、鋼管柱や礫体捕捉ユニットの横桟によって形成される格子の目が更に小さくなり、礫体捕捉性能を更に高めることが可能となる。また、礫体捕捉ユニットの耐久性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1実施形態に係る鋼製スリットダムの構成を示す一部横断正面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1のB−B線断面図である。
【図4】基礎コンクリートから鋼管柱の中間部までの間にかけて取り付けられた礫体捕捉ユニットの構成を示す拡大側面図である。
【図5】図4のC−C線断面図である。
【図6】図4のD−D線断面図である。
【図7】鋼管柱に礫体捕捉ユニットを取り付ける状態を示す分解斜視図である。
【図8】第2実施形態に係る鋼製スリットダムの礫体捕捉ユニットの構成を示す拡大側面図である。
【図9】第3実施形態に係る鋼製スリットダムの礫体捕捉ユニットの構成を示す拡大側面図である。
【図10】図9のE−E線断面図である。
【図11】第4実施形態に係る鋼製スリットダムの礫体捕捉ユニットの構成を示す拡大側面図である。
【図12】図11のF−F線断面図である。
【図13】第5実施形態に係る鋼製スリットダムの礫体捕捉ユニットの構成を示す拡大側面図である。
【図14】第6実施形態に係る鋼製スリットダムの礫体捕捉ユニットの構成を示す拡大側面図である。
【図15】第7実施形態において礫体捕捉ユニットを取り付ける対象となるスリットダム本体の構成を下流側から見たものを示す一部横断正面図である。
【図16】礫体捕捉ユニットをスリットダム本体に対して取り付けた状態を下流側から見たものを示す一部横断正面図である。
【図17】礫体捕捉ユニットの下端における筒体端面の構成を示す拡大正面図である。
【図18】第8実施形態に係る鋼製スリットダムの構成を示す側面断面図である。
【図19】第9実施形態に係る鋼製スリットダムの構成を上流側から見たものを示す一部横断正面図である。
【図20】図19のG部の拡大図である。
【図21】(a)は図20の側面図であり、(b)は(a)の要部拡大図である。
【図22】従来技術について説明するための一部横断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を適用した鋼製スリットダムを実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0034】
まず、本発明に係る鋼製スリットダム1の第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態の鋼製スリットダム1の構成を示す一部横断正面図を示しており、図2は、図1のA−A線断面図を示しており、図3は、図1のB−B線断面図を示している。
【0035】
鋼製スリットダム1は、河川2の川幅方向に間隔を空けて構築された堤体4間に配置されるものであり、その堤体4間の河床3上には基礎コンクリート5が打設されている。堤体4は、河床3上に構築された剛性に優れた構造体であり、例えば、コンクリート等から構築される。また、堤体4は、この他に、複数の鋼矢板や鋼製セグメント等を組み合わせて筒状構造体や二重壁構造を構築し、その内部に土砂等を充填して構成されていてもよい。また、いわゆるインセム工法のような、現地発生土にセメントを混合して得られるソイルセメントを用いて堤体4を構築してもよいし、堤体4の構造、構築方法は公知のものであれば特に限定するものではない。
【0036】
鋼製スリットダム1は、上下方向や水平方向等に延長されてなる複数の断面円形状の鋼管部材を組み合わせて形成される骨組構造体としてのスリットダム本体10を備えている。図示の例では、河川2の川幅方向に間隔を空けて二つのスリットダム本体10が配置されているが、スリットダム本体10の数については特に限定するものではない。
【0037】
第1実施形態におけるスリットダム本体10は、河川2の川幅方向や流れ方向に間隔を空けて基礎コンクリート5上で傾斜して立設される複数の鋼管柱11と、鋼管柱11の軸方向に間隔を空けて複数接続された鋼管部材からなる鋼管梁13とを備えている。鋼管梁13は、河川2の川幅方向や流れ方向に隣り合う鋼管柱11に接続されることによって、それらの鋼管柱11間に架設されている。
【0038】
河川2の上流側に位置する鋼管柱11は、その下端から上端に向かうにつれて河川2の下流側に傾斜するように設けられ、下流側に位置する鋼管柱11は、その下端から上端に向かうにつれて河川2の上流側に傾斜するよう設けられている。各鋼管柱11は、その下端が基礎コンクリート5内に埋め込み固定されている。
【0039】
鋼管柱11は、その上端部や中間部から川幅方向及び流れ方向に隣り合う鋼管柱11に向けて、鋼管梁13の一部を構成する水平部材14が突出されている。水平部材14の先端には環状のフランジ15が固着されている。略同一方向に直列に配置された複数の水平部材14は、互いのフランジ15を当接させたうえでこれらをボルトナットにより固定することによって連結されており、これら直列に配置された複数の水平部材14によって一つの鋼管梁13が構成されている。
【0040】
また、本発明に係る鋼製スリットダム1は、川幅方向に間隔を空けて立設された複数の鋼管柱11に対して取り付けられた複数の礫体捕捉ユニット20を備えている。
【0041】
第1実施形態における礫体捕捉ユニット20は、河川2の上流側に位置する一つの鋼管柱11につき二つ取り付けられている。具体的には、基礎コンクリート5から鋼管柱11の中間部までの間にかけて一つの礫体捕捉ユニット20が取り付けられ、鋼管柱11の中間部からその上端部までの間にかけて他の礫体捕捉ユニット20が取り付けられている。
【0042】
図4は、基礎コンクリート5から鋼管柱11の中間部までの間にかけて取り付けられた礫体捕捉ユニット20の構成を示す拡大側面図であり、図5は図4のC−C線断面図であり、図6は図4のD−D線断面図であり、図7は鋼管柱11に礫体捕捉ユニット20を取り付ける状態を示す分解斜視図である。
【0043】
礫体捕捉ユニット20は、鋼管柱11を外周側から取り囲むように配置される筒状体23と、筒状体23に取り付けられた複数の横桟27とを備えている。第1実施形態においては、一の礫体捕捉ユニット20がこのような筒状体23と横桟27とを有する単一の礫体捕捉部材21から構成されている。また、第1実施形態における礫体捕捉ユニット20は、その下端における筒状体端面23aを基礎コンクリート5又は鋼管梁13に接触させて、これら基礎コンクリート5又は鋼管梁13によって支承された状態で鋼管柱11に取り付けられている。
【0044】
筒状体23は、第1実施形態においては、その下側から上側にかけて、円形の筒状断面に形成された円筒部23bと、中心角が略90°の円弧状断面に形成された円弧状部23cと、半円状断面に形成された半円部23dとを備えている。筒状体23は、鋼管柱11を構成する鋼管部材の外径に応じた内径をもつように形成されており、第1実施形態においては鋼管柱11の外径と略同径の内径をもつように形成されている。
【0045】
筒状体23の円筒部23bは、筒状断面を周方向に分割した断面からなる複数の分割部材25から構成されており、第1実施形態においては、その筒状断面を周方向に等分に二分割した半割筒状断面からなる一対の分割部材25から構成されている。以下においては、一対の分割部材25のうち、上流側のものを分割部材25a、下流側のものを分割部材25bとして説明することがある。
【0046】
複数の分割部材25は、鋼管柱11を外周側から取り囲むように配置されたうえで、それぞれ周方向に着脱可能に連結され、これによって筒状体23の円筒部23bが構成されることになる。第1実施形態においては、複数の分割部材25の周方向両側の端部から筒状体23の外周側に向けてフランジ26が突出されている。このフランジ26は、分割部材25の軸方向に延長されており、複数の分割部材25は、互いのフランジ26を当接させたうえでこれらをボルトナットにより固定することによって、周方向に着脱可能に連結されている。
【0047】
複数の分割部材25を周方向に着脱可能に連結する手段としては、第1実施形態のようにボルトナットを用いるのが作業性、加工性の点から好ましいが、これに限定されるものではない。例えば、複数の分割部材25の周方向端部におけるフランジ26を互いに当接させたうえで、これらのフランジ26をクランプ金具で締め付ける手段を用いてもよいし、公知のいかなる連結手段を用いてもよい。
【0048】
第1実施形態においては、上流側の分割部材25aの上部が下流側の分割部材25bよりもその軸方向長さが長くなるように形成されている。この分割部材25aの上部は、中心角が略90°の円弧状断面に形成されており、この分割部材25aの上部の上端寄りの部位には、更に他の分割部材25cが下流側から着脱可能に連結されている。この他の分割部材25cは、中心角が略90°の円弧状断面に形成されており、分割部材25aの上部と他の分割部材とにより筒状体23の円弧状部23cと半円部23dが構成されている。
【0049】
なお、筒状体23は、後述の第2実施形態等において説明するように、少なくともその円筒部23bを有するものとして構成されていればよく、円弧状部23cや半円部23dを必須の構成にするものではない。また、筒状体23の円筒部23bは、筒状断面を三分割以上した断面から構成されていてもよい。
【0050】
横桟27は、筒状体23の軸方向に間隔を空けて複数に亘ってその筒状体23に取り付けられるものであるが、一つのみが筒状体23に接続されるようにしてもよい。各横桟27は、その筒状体23から川幅方向に延長されるように取り付けられている。
【0051】
横桟27は、図5等に示すように、第1実施形態においては中空断面の円形鋼管から構成されている。この円形鋼管からなる横桟27は、その軸方向両端の開口を塞ぐように端板28が固着されている。これにより、横桟27内に水が浸入するのを防止でき、横桟27の内面側について腐食代を考慮しなくともよいというメリットがある。この円形鋼管からなる横桟27は、その長手方向中間部が円弧状に切り欠かれることによって切欠凹部27aが形成されており、その切欠凹部27aの内周面27bを筒状体23の外周面に当接させたうえで、これらの当接部を溶接により固定することによって筒状体23に対して取り付けられている。このようにして横桟27を筒状体23に取り付けることによって、その取り付け作業時の位置決めを容易に行えるというメリットがあるが、特にその取り付け手段について限定するものではない。
【0052】
横桟27は、第1実施形態のような中空断面の円形鋼管や角形鋼管から構成されている場合、礫体との衝突時において横桟27自体が大きく変形することによって礫体からの衝撃力を吸収しやすくなり、スリットダム本体10に過度の衝撃力が加わるのを抑えることができるというメリットがある。しかし、横桟27は、H形鋼、C形鋼等の形鋼から構成されていてもよいし、中実断面の角鋼、丸鋼等から構成されていてもよい。また、横桟27は、スリットダム本体10を構成する鋼管部材と異なり、礫体との衝突時において破断さえしなければ変形してもよいので、小径、薄肉の低強度部材を用いてもよく、これによってコストの低減を図るようにしてもよい。
【0053】
横桟27は、礫体捕捉ユニット20の取り付けられた複数の鋼管柱11間や、堤体4と鋼管柱11との間のような、複数の鋼管柱11の川幅方向両側を通過しようとする礫体に対して衝突できるような長さに調整されており、これによりその複数の鋼管柱11間を通過しようとする礫体を捕捉することが可能となっている。
【0054】
なお、第1実施形態においては、礫体捕捉ユニット20の横桟27が、鋼管柱11の下端側に設けられないように構成されており、これによって、鋼管柱11の下端側において、図1、図4に示すように、礫体捕捉ユニット20の横桟27、筒状体23、基礎コンクリート5によって囲まれた礫体透過空間41が形成されている。このような礫体透過空間41が形成されることにより、平常時において河川2を流れる中小礫等を礫体透過空間41を通して積極的に透過させて、河川2の流れが妨げられるのを防止することが可能となっている。
【0055】
次に、このような礫体捕捉ユニット20を鋼管柱11に対して取り付ける方法について説明する。
【0056】
まず、礫体捕捉ユニット20を構成する複数の分割部材25を、鋼管柱11に対して接触させながらその鋼管柱11を外周側から取り囲むように配置する。この場合に、各分割部材25は、その下端面を基礎コンクリート5や鋼管梁13によって支承させた状態としつつ、その内周面を鋼管柱11に接触させた状態で配置することができる。続いて、複数の分割部材25をボルトナット等によって連結することによって礫体捕捉ユニット20が鋼管柱11に取り付けられることになる。
【0057】
次に、本発明に係る鋼製スリットダム1の作用効果について説明する。
【0058】
本発明に係る鋼製スリットダム1によれば、複数の鋼管柱11の川幅方向両側を通過しようとする礫体を、その複数の鋼管柱11に取り付けられた礫体捕捉ユニット20の横桟27によって捕捉することが可能となっており、礫体捕捉性能の向上を図ることが可能となっている。
【0059】
ここで、礫体が横桟27に衝突した場合においては、図4に示すように礫体捕捉ユニット20に対して鋼管柱11の周方向P1へ回転力が作用することになる。この場合に、礫体捕捉ユニット20の筒状体23は、この回転力により鋼管柱11に密着しつつ、回転力の大きさによっては変形を伴って鋼管柱11に大きく密着しつつ回転しようとすることになる。これにより、礫体捕捉ユニット20の筒状体23の内周面と鋼管柱11の外周面との間で大きな摩擦力が発生するため、回転力に対して摩擦力により抵抗して礫体捕捉ユニット20の回転を防止することが可能となっている。
【0060】
また、本発明に係る鋼製スリットダム1によれば、このような礫体の捕捉を容易とするための礫体捕捉ユニット20をスリットダム本体10に対して取り付ける場合に、複数の分割部材25を鋼管柱11に対して接触させたうえ、基礎コンクリート5や鋼管部材からなる鋼管梁13によって支承させた状態でこれらを連結することができるので、その位置決め作業が容易であるとともに取り付け作業時の労力負担の軽減を図ることが可能となっている。
【0061】
また、本発明に係る鋼製スリットダム1によれば、このような礫体捕捉ユニット20をスリットダム本体10に取り付けるにあたって、スリットダム本体10に対する加工を簡略化することができ、その分、施工コスト、施工期間の増大を抑えることが可能となっている。
【0062】
また、本発明に係る鋼製スリットダム1は、礫体捕捉ユニット20の回転をある程度許容する構造となっているので、複数の分割部材25を連結するボルトナット等の連結金具に対して大きな荷重が作用しない構造となっている。このため、複数の分割部材25の連結を簡単な構造とすることが可能となっている。
【0063】
また、本発明に係る鋼製スリットダム1によれば、礫体捕捉ユニット20を構成する筒状体23がボルトナット等によって着脱可能に連結されているため、礫体捕捉ユニット20の横桟27によって礫体を捕捉して横桟27が破損した場合でも、筒状体23からボルトナット等を取り外して礫体捕捉ユニット20を取り替えることによって、その補修作業を容易に行うことが可能となっている。
【0064】
また、本発明に係る鋼製スリットダム1によれば、礫体捕捉ユニット20が鋼管柱11毎に独立して取り付けられており、溶接等によって基礎コンクリート5、スリットダム本体10に固定されない構造となっているので、礫体捕捉ユニット20を取り付けた場合でも温度応力による影響を受けないものにすることが可能となっている。
【0065】
なお、本発明に係る礫体捕捉ユニット20を、既設の鋼製スリットダム1のスリットダム本体10を構成する複数の鋼管柱11に対して取り付けることによって、その既設の鋼製スリットダム1の礫体捕捉能力を増大させるようにしてもよい。既設の鋼製スリットダム1に対して礫体捕捉ユニット20を取り付ける作業をする場合においても、既設の鋼製スリットダム1のスリットダム本体10に対する加工数を抑えることができるので、上述したような、施工コスト、施工期間の増大を抑えつつ補強作業を行うことが可能となる。
【0066】
因みに、礫体から過大な衝撃荷重が横桟27に負荷された場合、礫体捕捉ユニット20に対して作用する回転力に対して摩擦力のみでは十分に抵抗できない恐れがある。このため、礫体捕捉ユニット20は、以下に説明するように、この回転力の作用時において、その回転が拘束されるように構成されていることが好ましい。
【0067】
第1実施形態における礫体捕捉ユニット20は、図4等に示すように、その下端における筒状体端面23aに鋼管柱11の軸方向に傾斜してなる傾斜面24が形成されている。この傾斜面24は、鋼管柱11の周方向P1への回転力の作用時に、基礎コンクリート5又は鋼管梁13に鋼管柱11の周方向P1から係合するよう配置されている。これにより、礫体捕捉ユニット20は、回転力の作用時において、その傾斜面24が基礎コンクリート5又は鋼管梁13に係合しつつ、その回転力による回転に応じて上側へ向けてスライドしようとすることになる。ここで、礫体捕捉ユニット20は、このような上側へ向けてのスライド時に、その傾斜面24が形成された下側である下端における筒状体端面23aと反対側の上側における円筒部23bの筒状体端面23aが、その上側に位置する鋼管梁13に係合するよう構成されており、これによって、これ以上の上側へのスライドが防がれて、その回転が拘束されることになる。
【0068】
なお、第1実施形態に係る礫体捕捉ユニット20は、筒状体23の円弧状部23cや半円部23dに取り付けられている横桟27に対して礫体が衝突して円弧状部23cや半円部23dに過大な回転力が作用した場合に、その円弧状部23cに大きなねじり荷重が作用して円弧状部23cが破断する恐れがある。このため、第1実施形態においては、鋼管柱11と鋼管梁13との接続部の下流側に突起状の被係合部材17が溶接により固着されており、この被係合部材17に対して半円部23dを構成する分割部材25cの周方向端部が近接して配置されている。筒状体23の円弧状部23cや半円部23に回転力が作用した際には、半円部23dを構成する分割部材25cの周方向端部25dが被係合部材17に係合してこの回転力に対して抵抗でき、円弧状部23cに大きなねじり荷重が作用するのを防止することが可能となっている。
【0069】
本発明に係る礫体捕捉ユニット20は、鋼管柱11の周方向P1への回転力の作用時にその回転が拘束されるように、以下の第2実施形態〜第8実施形態のように構成されていてもよい。なお、上述した構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付すことにより以下での説明を省略する。
【0070】
図8は、第2実施形態に係る鋼製スリットダム1の礫体捕捉ユニット20の構成を示す拡大側面図である。
【0071】
第2実施形態に係る礫体捕捉ユニット20は、筒状体23が円筒部23bのみを備えている。第2実施形態に係る礫体捕捉ユニット20は、その上端における筒状体端面23aの一部に鋼管柱11の軸方向に傾斜してなる傾斜面24が形成されている。この傾斜面24は、半割筒状の一対の分割部材25a、25bのうち、下流側に位置する分割部材25bの上端面のみに形成されている。
【0072】
礫体捕捉ユニット20は、鋼管柱11の周方向P1への回転力の作用時に、その上端における筒状体端面23aの傾斜面24が鋼管梁13に鋼管柱11の周方向から係合するよう構成されている。これにより、礫体捕捉ユニット20は、そのような回転力の作用時に、その上側である上端における傾斜面24が鋼管梁13に係合しつつ、その礫体捕捉ユニット20の傾斜面24と反対側の下側である下端における筒状体端面23aが基礎コンクリート5又は鋼管梁13に係合し、これによって、礫体捕捉ユニット20の回転が拘束されることになる。
【0073】
なお、ここで礫体捕捉ユニット20の筒状体端面23aに形成される傾斜面24は、第1実施形態、第2実施形態のように平面状に形成されていてもよいし、後述の第8実施形態のように曲面状に形成されていてもよい。
【0074】
また、鋼管柱11の周方向P1への回転力の作用時に礫体捕捉ユニット20の回転が拘束されるために、礫体捕捉ユニット20の上側又は下側における傾斜面24と反対側のその筒状体端面23aが係合するべき他部材としては、基礎コンクリート5、鋼管梁13の他に、後述するような鋼管柱11に設けられるフランジ15や被係合部材17、鋼管柱11に接続される他の鋼管柱11等であってもよい。
【0075】
図9は、第3実施形態に係る鋼製スリットダム1の礫体捕捉ユニット20の構成を示す拡大側面図であり、図10は、図9のE−E線断面図である。
【0076】
第3実施形態に係る礫体捕捉ユニット20は、筒状体23が円筒部23bと半円状断面に形成された半円部23dとを備えている。礫体捕捉ユニット20は、その筒状体23の円筒部23bを構成する半割筒状断面からなる一対の分割部材25a、25bのうち、上流側に位置する分割部材25aの上部が下流側に位置する分割部材25bよりもその軸方向長さが長く形成されている。礫体捕捉ユニット20の筒状体23は、一対の分割部材25a、25bにより円筒部23bが構成され、上流側の分割部材25aの上部により半円状断面に形成された半円部23dが構成されている。上流側の分割部材25aの上部は、その周方向の両側の周方向端部25dが鋼管部材からなる鋼管梁13に鋼管柱11の周方向から係合可能となるよう配置されている。
【0077】
礫体捕捉ユニット20は、鋼管柱11の周方向P1への回転力の作用時に、上流側の分割部材25の周方向端部25dが、鋼管部材からなる鋼管梁13に鋼管柱11の周方向から係合してその回転が拘束されることになる。
【0078】
第2実施形態や第3実施形態に係る鋼製スリットダム1によれば、スリットダム本体10に対する加工が不要であり、施工コスト等の増大を一層効果的に抑えることが可能となっている。
【0079】
図11は、第4実施形態に係る鋼製スリットダム1の礫体捕捉ユニット20の構成を示す拡大側面図であり、図12はそのF−F線断面図である。
【0080】
第4実施形態に係る礫体捕捉ユニット20は、筒状体23が円筒部23bのみを備えている。第4実施形態に係る礫体捕捉ユニット20は、その上側である上端における筒状体端面23aに嵌合凹部29が形成されている。また、礫体捕捉ユニット20が取り付けられる鋼管柱11には、その嵌合凹部29に対応した位置に、突起状の被係合部材17が溶接により固着されている。この被係合部材17と礫体捕捉ユニット20の嵌合凹部29とは互いに嵌合可能な形状とされており、礫体捕捉ユニット20の鋼管柱11への取り付け時には、礫体捕捉ユニット20の嵌合凹部29に被係合部材17が嵌合されることになる。礫体捕捉ユニット20は、鋼管柱11の周方向への回転力の作用時に、その筒状体端面23aの嵌合凹部29に被係合部材17が周方向から係合してその回転が拘束されることになる。
【0081】
第4実施形態においては、礫体捕捉ユニット20をスリットダム本体10に取り付けるにあたって、被係合部材17をスリットダム本体10に固着するような加工が必要となるが、被係合部材17としては安価、簡単な構造のものを取り付けるのみでよいため、スリットダム本体10への加工を簡略化することが可能となっている。
【0082】
因みに、この嵌合凹部29は、礫体捕捉ユニット20の上側ではなく下側における筒状体端面23aに形成されていてもよいし、その嵌合凹部29、被係合部材17の形状については特に限定するものではない。また、この嵌合凹部29及び被係合部材17は、第4実施形態において、鋼管柱11の下流側に設けられているが、その上流側に設けられるようにしてもよい。しかし、被係合部材17を鋼管柱11の下流側に設けられるようにした方が、被係合部材17に対して礫体が衝突した場合にその被係合部材17近傍の鋼管柱11で応力集中が発生するのを防止できるというメリットがある。
【0083】
図13は、第5実施形態に係る鋼製スリットダム1の礫体捕捉ユニット20の構成を示す拡大側面図である。
【0084】
第5実施形態〜第7実施形態においては、礫体捕捉ユニット20が、二つの礫体捕捉部材21を鋼管柱11に対して直列に配置して構成されている。礫体捕捉ユニット20は、三つ以上の礫体捕捉部材21を直列に配置して構成されていてもよい。以下においては、礫体捕捉ユニット20を構成する礫体捕捉部材21のうち上側に配置されたものを上側礫体捕捉部材21a、下側に配置されたものを下側礫体捕捉部材21bとして説明することがある。
【0085】
第5実施形態における礫体捕捉ユニット20は、上側礫体捕捉部材21a、下側礫体捕捉部材21bの互いに対向する筒状体端面23aに、鋼管柱の軸方向に傾斜してなる傾斜面30が形成されており、更に、その対向する筒状体端面23aを互いに接触させて配置されている。このような傾斜面30が形成されている以外は、第1実施形態において説明した礫体捕捉ユニット20と外観上同様の構成とされている。
【0086】
このような傾斜面30を複数の礫体捕捉部材21の互いに対向する筒状体端面23aに形成する理由は、以下の通りである。
【0087】
礫体捕捉ユニット20の下側礫体捕捉部材21bに対して鋼管柱11の周方向P1への回転力が作用した場合について検討する。この場合、下側礫体捕捉部材21bは、その下側における筒状体端面23aの傾斜面24が基礎コンクリート5又は鋼管梁13に鋼管柱11の周方向P1から係合しつつ、その回転力による回転に応じて上側へ向けて上側礫体捕捉部材21aとともにスライドしようとすることになる。ここで、第1実施形態において説明したのと同様に、礫体捕捉ユニット20の傾斜面24が形成された筒状体端面23aと反対側の上側礫体捕捉部材21aの上側における筒状体端面23aが、その上側に位置する鋼管梁13に係合し、これ以上の上側へのスライドが防がれて、下側礫体捕捉部材21bの回転が拘束されることになる。
【0088】
次に、礫体捕捉ユニット20の上側礫体捕捉部材21aに対して鋼管柱11の周方向P1へ回転力が作用した場合について検討する。この場合、上側礫体捕捉部材21aは、その下側の筒状体端面23aが下側礫体捕捉部材21bの上側の筒状体端面23aに周方向から係合しつつ、その回転に応じて上側へ向けてスライドしようとすることになる。この場合も、その上側礫体捕捉部材21aの上側の筒状体端面23aが、その上側に位置する鋼管梁13に係合し、これ以上のスライドが防がれて、上側礫体捕捉部材21aの回転が拘束されることになる。
【0089】
ここで、複数の礫体捕捉部材21の互いに対向する筒状体端面23aに傾斜面30がないと、上側礫体捕捉部材21aの下側の筒状体端面23aが下側礫体捕捉部材21bの上側の筒状体端面23aに周方向から係合されず、上側礫体捕捉部材21aの回転が構造上許容されてしまうことになる。
【0090】
このように、複数の礫体捕捉部材21の互いに対向する筒状体端面23aの傾斜面30の有無によって、礫体捕捉ユニット20を構成する複数の礫体捕捉部材21のうち、総ての礫体捕捉部材21の回転を拘束できるか、一部の礫体捕捉部材21の回転を拘束できるかという差異が生じることになる。一部の礫体捕捉部材21の回転を拘束できるのみでも、礫体捕捉ユニット20の筒状体23と鋼管柱11との間で発生する摩擦力によってある程度回転を防止できるが、総ての礫体捕捉部材21の回転を拘束できる方がよいので、礫体捕捉ユニット20を複数の礫体捕捉部材21から構成する場合は、第5実施形態、第6実施形態のような構成とすることが好ましい。
【0091】
図14は、第6実施形態に係る鋼製スリットダム1の礫体捕捉ユニット20の構成を示す拡大側面図である。
【0092】
第6実施形態における礫体捕捉ユニット20は、上側礫体捕捉部材21aを構成する半割筒状断面からなる一対の分割部材25a、25bのうち、上流側に位置する分割部材25aが下流側に位置する分割部材25bよりもその軸方向長さが短くなるよう形成されている。また、下側礫体捕捉部材21bを構成する半割筒状断面からなる一対の分割部材25a、25bのうち、上流側に位置する分割部材25aが下流側に位置する分割部材25bよりもその軸方向長さが長くなるよう形成されている。
【0093】
下側礫体捕捉部材21bの軸方向長さの異なる各分割部材25a、25bの上端面に上側礫体捕捉部材21aの軸方向長さの異なる各分割部材25a、25bの下端面が接触して支承されており、上側礫体捕捉部材21aの下流側の分割部材25bにおける周方向両端のフランジ26と、下側礫体捕捉部材21bの上流側の分割部材25aにおける周方向両端のフランジ26とが互いに面接触するように構成されている。
【0094】
これによって、一の礫体捕捉部材21に対して鋼管柱11の周方向への回転力の作用時において、各礫体捕捉部材21のフランジ26を介してその回転力が他の礫体捕捉部材21に対して伝達されるように構成されることになる。この場合においても、礫体捕捉ユニット20を構成する総ての礫体捕捉部材21の回転を拘束することが可能となる。
【0095】
一の礫体捕捉部材21から他の礫体捕捉部材21に回転力を伝達可能とするための構成は、上述の形態に限定されるものではなく、例えば、その互いに対向する筒状体端面に凹凸を設けて、これらを互いに嵌合させるようにしてもよい。
【0096】
次に、本発明に係る鋼製スリットダム1の第7実施形態、第8実施形態について説明する。
【0097】
図15は、第7実施形態において礫体捕捉ユニット20を取り付ける対象となるスリットダム本体10の構成を下流側から見たものを示す一部横断正面図であり、図16は、礫体捕捉ユニット20をこのスリットダム本体10に対して取り付けた状態を下流側から見たものを示す一部横断正面図である。図17は、礫体捕捉ユニット20の下端における筒状体端面23aの構成を示す拡大正面図である。
【0098】
第7実施形態に係るスリットダム本体10は、図15に示すように、川幅方向に間隔を空けて略鉛直に立設された複数の鋼管柱11と、複数の鋼管柱11と交差するように接続された鋼管梁13とを備えている。第7実施形態において鋼管柱11には一つの鋼管部材からなる鋼管梁13が接続されているが、その軸方向に間隔を空けて複数接続されていてもよい。鋼管梁13の両端は、堤体4内に埋め込まれた鞘管19内に挿入されている。
【0099】
第7実施形態に係る鋼管梁13は、鞘管19内に挿入された二つの軸方向両側の水平部材14と、二つの軸方向両側の水平部材14に対してフランジ15を介して接続された軸方向中央の水平部材14とから構成されている。また、第7実施形態に係る鋼管柱11は、鋼管梁13の軸方向中央の水平部材14から鉛直方向の下側に突出された軸方向上側の鉛直部材12と、基礎コンクリート5から上側に突出された軸方向下側の鉛直部材12と、これら上側、下側の鉛直部材12にフランジ15を介して接続された軸方向中央の鉛直部材12とから構成されている。各水平部材14、各鉛直部材12は、断面円形状の鋼管部材から構成されている。
【0100】
第7実施形態に係る礫体捕捉ユニット20は、図16、図17に示すように、軸方向中央の鉛直部材12に取り付けられ、二つの礫体捕捉部材21が直列に配置されて構成されている。礫体捕捉ユニット20は、その上側である上端と下側である下端とにおける筒状体端面23aに、第4実施形態において説明したような嵌合凹部29が形成されている。鋼管柱11を構成する軸方向中央の鉛直部材12には、その嵌合凹部29に対応した位置に、鋼管柱11の外周面から突出された被係合部材17が溶接により固着されている。
【0101】
第7実施形態に係る礫体捕捉ユニット20は、鋼管柱11を構成する軸方向中央の鉛直部材12への取り付け時に、その鉛直部材12の下端のフランジ15に支承されており、更に、礫体捕捉ユニット20の上側及び下側の嵌合凹部29に被係合部材17が嵌合されている。
【0102】
また、第7実施形態に係る礫体捕捉ユニット20は、第5実施形態において説明したのと同様に、上下の礫体捕捉部材21の互いに対向する筒状体端面23aに、鋼管柱11の軸方向に傾斜してなる傾斜面30が形成され、その対向する筒状体端面23aを互いに接触させて配置されている。
【0103】
礫体捕捉ユニット20の各礫体捕捉部材21に対して鋼管柱11の周方向への回転力の作用時においては、第4実施形態で説明したのと同様に、各礫体捕捉部材21筒状体端面23aの嵌合凹部29に被係合部材17が周方向から係合して、各礫体捕捉部材21の回転が拘束されることになる。
【0104】
図18は、第8実施形態に係る鋼製スリットダム1の構成を示す側面断面図である。
【0105】
第8実施形態に係るスリットダム本体10は、第7実施形態において説明したスリットダム本体10と比較して、鋼管柱11が単一の鋼管部材から構成されている点と、礫体捕捉ユニット20が単一の礫体捕捉部材21から構成されている点において相違している。
【0106】
第8実施形態に係る礫体捕捉ユニット20は、その上側である上端における筒状体端面23aに鋼管柱11の軸方向に傾斜してなる傾斜面24が形成されている。この傾斜面24は、半割筒状の一対の分割部材25a、25bのうち、上流側に位置する分割部材25aの上端面のみに形成されており、曲面状に形成されている。この傾斜面24は、鋼管柱11の周方向P1への回転力が礫体捕捉ユニット20に作用した際に、鋼管梁13に対して周方向から係合可能となるように、鋼管梁13の外周面に応じた形状に形成されている。
【0107】
この場合でも、礫体捕捉ユニット20に対して鋼管柱11の周方向へ回転力が作用した場合に、礫体捕捉ユニット20の上側における筒状体端面23aの傾斜面24が鋼管梁13に周方向から係合して、礫体捕捉ユニット20の回転が拘束されることになる。
【0108】
このように、本発明の適用の対象となるスリットダム本体10は、河床3上に打設された基礎コンクリート5上で川幅方向へ間隔を空けて立設された複数の鋼管柱11を少なくとも備えるものであり、鋼管柱11が傾斜して立設されていても略鉛直に立設されていてもよい。
【0109】
次に、本発明に係る鋼製スリットダム1の第9実施形態について説明する。
【0110】
図19は、第9実施形態に係る鋼製スリットダム1の構成を上流側から見たものを示す一部横断正面図であり、図20は、図19のG部の拡大図であり、図21(a)は図20の側面図であり、図21(b)は図21(a)の要部拡大図である。
【0111】
第9実施形態に係る鋼製スリットダム1は、第1実施形態において説明した鋼製スリットダム1と比較して、礫体捕捉ユニット20が、その複数の横桟27と交差するように縦桟31が取り付けられている点において相違している。
【0112】
縦桟31は、複数の鋼管柱11の川幅方向両側を通過しようとする礫体が捕捉可能となるように、複数の横桟27の軸方向端部と交差して取り付けられている。縦桟31は、第9実施形態においては、上下方向に延びた鋼板から構成されているが、特にその断面形状、材質について限定するものではない。
【0113】
縦桟31は、図21に示すように、U字状の取付金具33を介して横桟27に対して取り付けられている。取付金具33は、両端に雄ねじ部33aが形成された棒材をU字状に折り曲げることによって構成されており、その両端の雄ねじ部33aを縦桟31に形成された挿通孔に挿通させたうえでナット35を強固に螺合させることによって縦桟31に取り付けられている。取付金具33を折り曲げて形成された湾曲部33bと縦桟31とによって形成される環状部33c内には横桟27が挿通され、横桟27により取付金具33及び縦桟31が支持されるようにして縦桟31が取り付けられる。なお、縦桟31の横桟27に対する取り付け方法についてはこれに限定するものではなく、溶接等により取り付けることとしてもよい。
【0114】
このような縦桟31が取り付けられることによって、鋼管柱11や礫体捕捉ユニット20の横桟27によって形成される格子の目が更に小さくなり、礫体捕捉性能を更に高めることが可能となる。これは、複数の鋼管柱11間の間隔が比較的広く形成された既設の鋼管スリットダム1に対して、本発明に係る礫体捕捉ユニット20を取り付ける場合に特に有効となる。また、このような縦桟31が取り付けられることによって、一の横桟27に対して負荷される礫体からの衝突荷重を他の横桟27にまで伝達させることが可能となり、礫体捕捉ユニット20の耐久性を向上させることが可能となる。
【0115】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明したが、前述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【0116】
例えば、スリットダム本体10の構成は、一の鋼管柱11に対して、基礎コンクリート5から傾斜又は略鉛直に立設された他の鋼管柱11が接続されていてもよい。この場合、礫体捕捉ユニット20に対してその一の鋼管柱11の周方向P1への回転力が作用した際に、礫体捕捉ユニット20の回転が拘束されるために係合すべき鋼管部材としてこの他の鋼管柱11を対象としてもよい。
【0117】
また、礫体捕捉ユニット20が取り付けられるべき鋼管柱11は、スリットダム本体10の最上流側に位置する鋼管柱11とすることが好ましく、これによって、横桟27に対して礫体が衝突する際に発生する荷重を有効に基礎コンクリート5に分散させることができる。また、同様の理由により、礫体捕捉ユニット20の横桟27は、鋼管柱11の上流側に位置するように筒状体23に取り付けられていることが好ましい。
【符号の説明】
【0118】
1 鋼製スリットダム
2 河川
3 河床
4 堤体
5 基礎コンクリート
10 スリットダム本体
11 鋼管柱
12 鉛直部材
13 鋼管梁
14 水平部材
15 フランジ
17 被係合部材
19 鞘管
20 礫体捕捉ユニット
21 礫体捕捉部材
23 筒状体
23a 筒状体端面
23b 円筒部
23c 円弧状部
23d 半円部
24 傾斜面
25 分割部材
25d 周方向端部
26 フランジ
27 横桟
27a 切欠凹部
27b 内周面
28 端板
29 嵌合凹部
30 傾斜面
31 縦桟
33 取付金具
35 ナット
41 礫体透過空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川の川幅方向に間隔を空けて構築された堤体間に配置される鋼製スリットダムにおいて、
前記川幅方向に間隔を空けて立設された断面円形状の複数の鋼管柱と、
筒状断面を周方向に分割した断面からなる複数の分割部材が前記鋼管柱を外周側から取り囲むように配置され、当該複数の分割部材が着脱可能に連結されて構成される筒状体に前記川幅方向に延長されてなる横桟が取り付けられた礫体捕捉ユニットとを備えること
を特徴とする鋼製スリットダム。
【請求項2】
前記礫体捕捉ユニットは、前記鋼管柱の周方向への回転力の作用時において、その回転が拘束されるように構成されていること
を特徴とする請求項1記載の鋼製スリットダム。
【請求項3】
前記礫体捕捉ユニットは、その上側又は下側における筒状体端面に前記鋼管柱の軸方向に傾斜してなる傾斜面が形成され、前記回転力の作用時において、その傾斜面が他部材に前記鋼管柱の周方向から係合するとともに、その傾斜面と反対側の当該礫体捕捉ユニットの上側又は下側における筒状体端面が他部材に係合してその回転が拘束されること
を特徴とする請求項1又は2記載の鋼製スリットダム。
【請求項4】
前記複数の分割部材は、これらのうちの一つが他の分割部材より軸方向長さが長くなるよう形成され、
前記礫体捕捉ユニットは、前記回転力の作用時において、前記軸方向長さが長くなるよう形成された分割部材の周方向端部が他部材に前記鋼管柱の周方向から係合してその回転が拘束されること
を特徴とする請求項1又は2記載の鋼製スリットダム。
【請求項5】
前記礫体捕捉ユニットが係合すべき前記他部材は、前記鋼管柱に一つ又はその軸方向に間隔を空けて接続された鋼管部材、若しくは前記鋼管柱が立設されている基礎コンクリートであること
を特徴とする請求項3又は請求項4項記載の鋼製スリットダム。
【請求項6】
前記礫体捕捉ユニットは、その上側又は下側における筒状体端面に嵌合凹部が形成されるとともに、前記鋼管柱に固着された被係合部材が当該嵌合凹部に嵌合され、前記回転力の作用時において、前記嵌合凹部が前記被係合部材に周方向から係合してその回転が拘束されること
を特徴とする請求項1又は2記載の鋼製スリットダム。
【請求項7】
前記礫体捕捉ユニットは、前記筒状体の軸方向に間隔を空けて前記横桟が複数取り付けられ、前記複数の横桟と交差するように縦桟が取り付けられていること
を特徴とする請求項1〜6の何れか1項記載の鋼製スリットダム。
【請求項8】
前記礫体捕捉ユニットは、前記筒状体と前記横桟とを有する単一の礫体捕捉部材から構成されていること
を特徴とする請求項1〜7の何れか1項記載の鋼製スリットダム。
【請求項9】
前記礫体捕捉ユニットは、前記筒状体と前記横桟とを有する礫体捕捉部材を前記鋼管柱に対して直列に複数配置して構成されていること
を特徴とする請求項1〜7の何れか1項記載の鋼製スリットダム。
【請求項10】
前記複数の礫体捕捉部材は、互いに対向する筒状体端面に前記鋼管柱の軸方向に傾斜してなる傾斜面が形成されているとともに、当該対向する筒状体端面を互いに接触させて配置されていること
を特徴とする請求項9記載の鋼製スリットダム。
【請求項11】
前記複数の礫体捕捉部材は、一の礫体捕捉部材への前記回転力の作用時において、他の礫体捕捉部材へ当該回転力を伝達可能となるよう構成されていること
を特徴とする請求項9記載の鋼製スリットダム。
【請求項12】
前記筒状体は、前記複数の分割部材がボルトナットにより周方向に着脱可能に連結されて構成されていること
を特徴とする請求項1〜11の何れか1項記載の鋼製スリットダム。
【請求項13】
前記複数の鋼管柱に対して取り付けられた前記礫体捕捉ユニットの横桟により、前記複数の鋼管柱の川幅方向両側を通過しようとする礫体が捕捉可能とされていること
を特徴とする請求項1〜12の何れか1項記載の鋼製スリットダム。
【請求項14】
前記礫体捕捉ユニットは、前記河川の流れ方向に複数立設された鋼管柱のうち上流側に立設された鋼管柱に取り付けられ、
前記横桟は、前記鋼管柱の上流側に位置するように前記筒状体に取り付けられていること
を特徴とする請求項1〜13の何れか1項記載の鋼製スリットダム。
【請求項15】
請求項1〜14の何れか1項記載の鋼製スリットダムに用いられること
を特徴とする礫体捕捉ユニット。
【請求項16】
請求項1〜14の何れか1項記載の複数の鋼管柱を有する鋼製スリットダムに対して前記礫体捕捉ユニットを取り付ける方法であって、
前記複数の分割部材を前記鋼管柱にその外周側から取り囲むように配置し、当該複数の分割部材を着脱可能に連結することによって、前記礫体捕捉ユニットを前記鋼管柱に取り付けること
を特徴とする礫体捕捉ユニットの取り付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−117247(P2011−117247A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277832(P2009−277832)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(000006839)日鐵住金建材株式会社 (371)