説明

鋼製セグメント、それを用いたシールドトンネルの覆工構造及びその施工方法

【課題】土圧を安定支持することが可能でかつシールド径にも影響を及ぼさずに避難用スロープを設置する。
【解決手段】本発明に係る鋼製セグメント2においては、主桁91aは、切欠き102aが形成された主桁本体101aと、該切欠きの形状に一致するように形成された主桁切片94aとで構成してあり、両者、着脱自在に連結できるようになっている。同様に主桁91bは、切欠き102bが形成された主桁本体101bと、該切欠きの形状に一致するように形成された主桁切片94bとで構成してあり、両者、着脱自在に連結できるようになっている。同様に主桁91cは、切欠き102cが形成された主桁本体101cと、該切欠きの形状に一致するように形成された主桁切片94cとで構成してあり、両者、着脱自在に連結できるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドトンネルに適用される鋼製セグメント、それを用いたシールドトンネルの覆工構造及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル、特に道路用トンネルには、快適性、高速性はもちろん、安全性が最も重視されることは言うまでもなく、ある程度規模の大きな道路用トンネルには、送排風機や集塵機等からなる換気施設、非常電話等の非常用施設、火災検知機や消火栓あるいは水噴霧設備からなる消火施設などが備えられている。
【0003】
これらのうち、消火施設は、トンネル内で火災が生じたとき、すみやかに消火作業ができるようになっているが、このような火災時も含め、不測の事態が発生したときに人が安全にトンネルの外に避難できるようにしておくこともまた重要である。
【0004】
このような避難施設として、車道床版の下方、つまりシールド断面の中央やや下方に設けられた車道床版の下方空間に避難通路が設けられたシールドトンネルがあり、かかるシールドトンネルにおいては、この避難通路を通ってトンネル外に避難することができる。
【0005】
【特許文献1】特開平11−71998
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したシールドトンネルでは、車道上で不測の事態が発生したとき、避難通路に降りるための手段として道路脇に滑り台状の避難用スロープが設けられており、その避難用スロープを滑り降りることで速やかに車道から逃れることができる。
【0007】
一方、シールド工法でトンネルを構築するにあたり、そのトンネル径が大きくなればなるほど、コストが高くなることは言うまでもなく、同じ車道幅であれば、トンネル径をできるだけ小さくすることが望ましい。
【0008】
しかしながら、避難用スロープは上述したように、道路脇、すなわちトンネルの内周面に沿って設けられるため、シールドトンネルを構成するセグメントと干渉しないようにするためには、トンネル径をその分大きくしなければならず、避難用スロープが安全上必要とはいえ、そのためにトンネル径を大きくするというのは、費用対効果の面で検討の余地があるとともに、避難用スロープと干渉するからといって、その部分のセグメントを切り欠いてしまっては、断面欠損となって強度が低下し、ひいては土圧を安定支持することができないという問題を生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、土圧を安定支持することが可能でかつシールド径にも影響を及ぼさずに避難用スロープを設置可能な鋼製セグメント、それを用いたシールドトンネルの覆工構造及びその施工方法を提供することを目的とする。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る鋼製セグメントは請求項1に記載したように、トンネル径に応じて湾曲形成され互いに平行配置された少なくとも2本の主桁と該主桁の両端にほぼ直角に接合された一対の継手板と前記主桁の凸側に設けられたスキンプレートとを備えた鋼製セグメントであって、前記主桁のうち、少なくともいずれかを、切欠きが形成された主桁本体と、該切欠きの形状に一致するように形成され前記主桁本体と着脱自在に連結可能な主桁切片とで構成したものである。
【0011】
また、本発明に係る鋼製セグメントは、前記主桁の間に該主桁と直交するように配置された縦リブを、切欠きが形成された縦リブ本体と、該切欠きの形状に一致するように形成され前記縦リブ本体と着脱自在に連結可能な縦リブ切片とで構成するとともに、該縦リブ切片と前記主桁切片とを一体化したものである。
【0012】
また、本発明に係る鋼製セグメントを用いたシールドトンネルの覆工構造は請求項3に記載したように、トンネル径に応じて湾曲形成され互いに平行配置された少なくとも2本の主桁、該主桁の両端にほぼ直角に接合された一対の継手板及び前記主桁の凸側に設けられたスキンプレートを有し、前記主桁のうち、少なくともいずれかを、切欠きが形成された主桁本体及び該切欠きの形状に一致するように形成され前記主桁本体と着脱自在に連結可能な主桁切片で構成してなる鋼製セグメントと、前記主桁切片が取り外された状態で前記主桁本体の切欠きに嵌め込むように設置された避難用スロープと、前記鋼製セグメントが配置された領域の上下にトンネル軸線方向に沿ってそれぞれ設けられた曲げせん断補強手段と、トンネルの周方向に沿って前記領域の左右にそれぞれ形成された圧縮補強手段とを備えるとともに、前記曲げせん断補強手段の左右端と前記圧縮補強手段の上下端を接合したものである。
【0013】
また、本発明に係る鋼製セグメントを用いたシールドトンネルの覆工構造は請求項4に記載したように、トンネル径に応じて湾曲形成され互いに平行配置された少なくとも2本の主桁、該主桁の両端にほぼ直角に接合された一対の継手板及び前記主桁の凸側に設けられたスキンプレートを有し、前記主桁のうち、少なくともいずれかを、切欠きが形成された主桁本体及び該切欠きの形状に一致するように形成され前記主桁本体と着脱自在に連結可能な主桁切片で構成するとともに、前記主桁の間に該主桁と直交するように配置された縦リブを、切欠きが形成された縦リブ本体及び該切欠きの形状に一致するように形成され前記縦リブ本体と着脱自在に連結可能な縦リブ切片とで構成して該縦リブ切片と前記主桁切片とを一体化してなる鋼製セグメントと、前記主桁切片及び前記縦リブ切片が取り外された状態で前記主桁本体及び前記縦リブ本体の切欠きに嵌め込むように設置された避難用スロープと、前記鋼製セグメントが配置された領域の上下にトンネル軸線方向に沿ってそれぞれ設けられた曲げせん断補強手段と、トンネルの周方向に沿って前記領域の左右にそれぞれ設けられた圧縮補強手段とを備えるとともに、前記曲げせん断補強手段の左右端と前記圧縮補強手段の上下端を接合したものである。
【0014】
また、本発明に係る鋼製セグメントを用いたシールドトンネルの覆工構造の施工方法は請求項5に記載したように、トンネル径に応じて湾曲形成され互いに平行配置された少なくとも2本の主桁、該主桁の両端にほぼ直角に接合された一対の継手板及び前記主桁の凸側に設けられたスキンプレートを有し、前記主桁のうち、少なくともいずれかを、切欠きが形成された主桁本体及び該切欠きの形状に一致するように形成され前記主桁本体と着脱自在に連結可能な主桁切片で構成してなる鋼製セグメントを、前記主桁切片を前記主桁本体に連結した状態で配置し、
【0015】
前記鋼製セグメントの配置工程と相前後しながら、前記鋼製セグメントが配置された領域の上下にトンネル軸線方向に沿って曲げせん断補強手段をそれぞれ設けるとともに、トンネルの周方向に沿って前記領域の左右に圧縮補強手段をそれぞれ設け、
【0016】
前記主桁切片を前記主桁本体から取り外し、
【0017】
前記主桁本体の切欠きに避難用スロープを嵌め込むようにして該避難用スロープを設置するものである。
【0018】
また、本発明に係る鋼製セグメントを用いたシールドトンネルの覆工構造の施工方法は請求項6に記載したように、トンネル径に応じて湾曲形成され互いに平行配置された少なくとも2本の主桁、該主桁の両端にほぼ直角に接合された一対の継手板及び前記主桁の凸側に設けられたスキンプレートを有し、前記主桁のうち、少なくともいずれかを、切欠きが形成された主桁本体及び該切欠きの形状に一致するように形成され前記主桁本体と着脱自在に連結可能な主桁切片で構成するとともに、前記主桁の間に該主桁と直交するように配置された縦リブを、切欠きが形成された縦リブ本体及び該切欠きの形状に一致するように形成され前記縦リブ本体と着脱自在に連結可能な縦リブ切片とで構成して該縦リブ切片と前記主桁切片とを一体化してなる鋼製セグメントを、前記主桁切片と前記縦リブ切片とを前記主桁本体と前記縦リブ本体にそれぞれ連結した状態で配置し、
【0019】
前記鋼製セグメントの配置工程と相前後しながら、前記鋼製セグメントが配置された領域の上下にトンネル軸線方向に沿って曲げせん断補強手段をそれぞれ設けるとともに、トンネルの周方向に沿って前記領域の左右に圧縮補強手段をそれぞれ設け、
【0020】
前記主桁切片と前記縦リブ切片とを前記主桁本体と前記縦リブ本体からそれぞれ取外し、
【0021】
前記主桁本体及び前記縦リブ本体の切欠きに避難用スロープを嵌め込むようにして該避難用スロープを設置するものである。
【0022】
本発明に係る鋼製セグメント、それを用いたシールドトンネルの覆工構造及びその施工方法においては、まず、本発明に係る鋼製セグメントを、主桁切片を主桁本体に連結した状態で、又は主桁切片と縦リブ切片とを主桁本体と縦リブ本体とにそれぞれ連結した状態でトンネル内面に配置する。
【0023】
本発明に係る鋼製セグメントをトンネル内面に配置するにあたっては、必要に応じて公知の鋼製セグメント、すなわち、トンネル径に応じて湾曲形成され互いに平行配置された少なくとも2本の主桁と該主桁の両端にほぼ直角に接合された一対の継手板と前記主桁の凸側に設けられたスキンプレートとを備えた鋼製セグメントをはじめ、RCセグメントなどシールドトンネルに使用される公知のセグメント(以下、標準セグメントと呼ぶ)と適宜組み合わせる。
【0024】
一方、このような本発明に係る鋼製セグメントの配置工程と相前後しながら、鋼製セグメントが配置された領域の上下にトンネル軸線方向に沿って曲げせん断補強手段をそれぞれ設けるとともに、トンネルの周方向に沿って上述した領域の左右に圧縮補強手段をそれぞれ設ける。なお、曲げせん断補強手段の左右端と前記圧縮補強手段の上下端とは、互いに接合しておく。
【0025】
このようにすると、本発明に係る鋼製セグメントが設けられた領域においては、トンネル周囲からの土圧は、曲げせん断補強手段による曲げ抵抗やせん断抵抗でいったん支持された後、軸力として圧縮補強手段に流れることとなり、標準セグメントの圧縮抵抗と相まって安定した形で支持される。
【0026】
次に、主桁切片を主桁本体から取り外すとともに、必要に応じて取り付けた縦リブ切片を縦リブ本体から取り外す。
【0027】
ここで、上述したように曲げせん断補強手段や圧縮補強手段で土圧が安定支持されるため、主桁切片や縦リブ切片を安全に取り外すことができる。
【0028】
ちなみに、曲げせん断補強手段及び圧縮補強手段の設置が全て完了するまでは、主桁切片や縦リブ切片が主桁本体や縦リブ本体に連結された状態であり、標準セグメントと同様の強度を有しているので、セグメント組立中における安全性は十分に確保される。
【0029】
最後に、主桁本体の切欠き及び必要に応じて設けられた縦リブ本体の切欠きに避難用スロープを嵌め込むようにして該避難用スロープを設置する。
【0030】
曲げせん断補強手段は、例えば標準セグメント又は本発明に係る鋼製セグメントのうち、トンネル内面に組み上げた状態でトンネル軸線に沿った同一の線上に揃う箇所を補剛すればよい。例えば、かかる箇所の部材厚さを大きくしたり、溝型鋼、ボックス鋼、H型鋼などを嵌め込んだりすることが考えられる。
【0031】
このようにすれば、異なるセグメントであっても、トンネル軸線に沿った同一ライン上に沿って連続的に補剛された状態となり、いわば補強梁が形成された状態となる。
【0032】
圧縮補強手段は、例えば標準セグメントの部材厚を大きくし、これを周方向に連続配置することで構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明に係る鋼製セグメント、それを用いたシールドトンネルの覆工構造及びその施工方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0034】
図1乃至図3は、本実施形態に係るシールドトンネルの覆工構造を示した図である。本実施形態に係るシールドトンネルの覆工構造1は、鋼製セグメント2と、該鋼製セグメントに形成された切欠きに嵌め込むように設置された避難用スロープ3と、鋼製セグメント2が配置された領域の上下にトンネル軸線方向に沿ってそれぞれ設けられた曲げせん断補強手段4,4と、トンネルの周方向に沿って上記領域の左右にそれぞれ設けられた圧縮補強手段5,5とを備えるとともに、曲げせん断補強手段4,4の左右端と圧縮補強手段5,5の上下端を接合して構成してある。
【0035】
鋼製セグメント2は図4乃至図8でわかるように、避難用スロープ3とのとりあい箇所で、切欠き状況が異なるので、図4(図3のC−C断面)における鋼製セグメント2を特に鋼製セグメント2aとし、以下に説明する。
【0036】
鋼製セグメント2aは図9及び図10に示したように、トンネル径に応じて湾曲形成され互いに平行配置された3本の主桁91a,91b,91cと、該主桁の両端にほぼ直角に接合された一対の継手板92a,92bと、3本の主桁91a,91b,91cの凸側に設けられたスキンプレート93とから概ね構成してある。
【0037】
ここで、主桁91aは、切欠き102aが形成された主桁本体101aと、該切欠きの形状に一致するように形成された主桁切片94aとで構成してあり、主桁切片94aは、連結プレート95aを介して主桁本体101aと着脱自在に連結できるようになっている。
【0038】
また、主桁91bは、切欠き102bが形成された主桁本体101bと、該切欠きの形状に一致するように形成された主桁切片94bとで構成してあり、主桁切片94bは、連結プレート95bを介して主桁本体101bと着脱自在に連結できるようになっている。
【0039】
また、主桁91cは、切欠き102cが形成された主桁本体101cと、該切欠きの形状に一致するように形成された主桁切片94cとで構成してあり、主桁切片94cは、連結プレート95cを介して主桁本体101cと着脱自在に連結できるようになっている。
【0040】
一方、3本の主桁91a,91b,91cの間には、該主桁と直交するように縦リブを設けてあり、縦リブ96b,96eはT型鋼で構成してあるが、縦リブ96cは、避難用スロープ3との干渉を回避するため、フランジのないI型鋼で構成してある。
【0041】
また、縦リブ96dは、切欠き103が形成された縦リブ本体104と、該切欠きの形状に一致するように形成された縦リブ切片97とで構成してあり、縦リブ切片97は、連結プレート98を介して縦リブ本体104と着脱自在に連結できるようになっている。
【0042】
同様に、縦リブ96fは、切欠き105が形成された縦リブ本体106と、該切欠きの形状に一致するように形成された縦リブ切片99とで構成してあり、縦リブ切片99は、連結プレート98を介して縦リブ本体106と着脱自在に連結できるようになっている。
【0043】
ここで、主桁切片94bと縦リブ切片97とは、着脱時の作業性を考慮し、互いに一体化してある。同様に、主桁切片94c及び縦リブ切片99についても、互いに一体化してある。
【0044】
上述した主桁の切欠き102a,102b,102c及び縦リブの切欠き103,105は、主桁切片94a,94b,94c及び縦リブ切片97,99が取り外された状態で避難用スロープ3が嵌め込むことができるようにその形状や寸法を適宜決定する。なお、他の鋼製セグメント2も、避難用スロープ3が嵌め込むことができるように、切欠きの形状や寸法を適宜決定すればよい。
【0045】
図11及び図12に鋼製セグメント2aの正面図及び詳細断面図を示す。また、図13に鋼製セグメント2aと避難用スロープ3との取合い関係を示す。
【0046】
ここで、鋼製セグメント2aは、継手板92a側に溝型鋼96aを取り付けてあるが、同様の溝型鋼が図3でわかるように、トンネル軸線に沿った同一線上に並ぶように、鋼製セグメント2あるいは標準セグメントに設けてあり、これらが一体となって曲げせん断補強手段4を構成する。
【0047】
一方、圧縮補強手段5は、標準セグメントの部材厚を大きくし、これを周方向に連続配置して構成してある。
【0048】
本実施形態に係る鋼製セグメントを用いたシールドトンネルの覆工構造1を施工するには、まず、鋼製セグメント2を、主桁切片を主桁本体に連結した状態で、又は主桁切片と縦リブ切片とを主桁本体と縦リブ本体とにそれぞれ連結した状態でトンネル内面に配置する。
【0049】
鋼製セグメント2aの例で説明すれば、主桁切片94aを主桁本体101aに、主桁切片94bを主桁本体101bに、主桁切片94cを主桁本体101cにそれぞれ連結するとともに、縦リブ切片97を縦リブ本体104に、縦リブ切片99を縦リブ本体106に連結する。
【0050】
一方、このような鋼製セグメント2の配置工程と相前後しながら、鋼製セグメント2が配置された領域の上下にトンネル軸線方向に沿って曲げせん断補強手段4をそれぞれ設ける。
【0051】
本実施形態の場合、鋼製セグメント2及び標準セグメントの継手板側に溝型鋼を装着し、これらのセグメントを、溝型鋼がトンネル軸線方向に揃うように並べれば、おのずと、曲げせん断補強手段4が形成される。
【0052】
また、トンネルの周方向に沿って上述した領域の左右に圧縮補強手段5をそれぞれ設ける。なお、曲げせん断補強手段4の左右端と圧縮補強手段5の上下端とは、互いに接合しておく。
【0053】
このようにすると、本実施形態に係る鋼製セグメント2が設けられた領域においては、トンネル周囲からの土圧は、曲げせん断補強手段4による曲げ抵抗やせん断抵抗でいったん支持された後、軸力として圧縮補強手段5に流れることとなり、標準セグメントの圧縮抵抗と相まって安定した形で支持される。
【0054】
次に、主桁切片を主桁本体から取り外すとともに、必要に応じて取り付けた縦リブ切片を縦リブ本体から取り外す。鋼製セグメント2aの例で説明すれば、主桁切片94aを主桁本体101aから、主桁切片94bを主桁本体101bから、主桁切片94cを主桁本体101cからそれぞれ取り外すとともに、縦リブ切片97を縦リブ本体104から、縦リブ切片99を縦リブ本体106からそれぞれ取り外す。
【0055】
ここで、上述したように曲げせん断補強手段4や圧縮補強手段5で土圧が安定支持されるため、主桁切片や縦リブ切片を安全に取り外すことができる。
【0056】
ちなみに、曲げせん断補強手段4及び圧縮補強手段5の設置が全て完了するまでは、主桁切片や縦リブ切片が主桁本体や縦リブ本体に連結された状態であり、標準セグメントと同様の強度を有しているので、セグメント組立中における安全性は十分に確保される。
【0057】
最後に、主桁本体の切欠き及び必要に応じて設けられた縦リブ本体の切欠きに避難用スロープ3を嵌め込むようにして該避難用スロープを設置する。
【0058】
以上説明したように、本実施形態に係る鋼製セグメント2、それを用いたシールドトンネルの覆工構造1及びその施工方法によれば、鋼製セグメント2を切り欠いても、セグメント組立中は、主桁切片や縦リブ切片が主桁本体や縦リブ本体に連結された状態であり、標準セグメントと同様の強度を有しているので、セグメント組立中における安全性を十分に確保することができるとともに、セグメント組立後は、曲げせん断補強手段4及び圧縮補強手段5によって、トンネル周囲からの土圧を安定支持することができるため、主桁切片や縦リブ切片を主桁本体や縦リブ本体から取り外すことが可能となる。
【0059】
したがって、土圧を安定支持しながらかつシールド径に影響を及ぼすことなく、避難用スロープを設置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本実施形態に係る鋼製セグメントを用いたシールドトンネルの覆工構造1の断面図。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図。
【図3】図1のB−B線に沿う断面図。
【図4】避難用スロープ3とセグメント2との取合いを示した断面図。
【図5】同じく避難用スロープ3とセグメント2との取合いを示した断面図。
【図6】同じく避難用スロープ3とセグメント2との取合いを示した断面図。
【図7】同じく避難用スロープ3とセグメント2との取合いを示した断面図。
【図8】同じく避難用スロープ3とセグメント2との取合いを示した断面図。
【図9】セグメント2aの全体斜視図。
【図10】セグメント2aから主桁切片及び縦リブ切片を取り除いた様子を示した全体斜視図。
【図11】セグメント2aの正面図。
【図12】断面図であり、(a)は図11のC″−C″線に沿う断面図、(b)はC−C線に沿う断面図、(c)はC′―C′線に沿う断面図。
【図13】セグメント2aと避難用スロープ3との取合いを示した全体斜視図。
【符号の説明】
【0061】
1 シールドトンネルの覆工構造
2,2a 鋼製セグメント
3 避難用スロープ
4 曲げせん断補強手段
5 圧縮補強手段
91a,91b,91c 主桁
92a,92b 継手板
101a,101b,101c 主桁本体
94a,94b,94c 主桁切片
102a,102b,102c 主桁の切欠き
96b,96c,96d,96e 縦リブ
104,106 縦リブ本体
97 縦リブ切片
103,105 縦リブの切欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル径に応じて湾曲形成され互いに平行配置された少なくとも2本の主桁と該主桁の両端にほぼ直角に接合された一対の継手板と前記主桁の凸側に設けられたスキンプレートとを備えた鋼製セグメントであって、前記主桁のうち、少なくともいずれかを、切欠きが形成された主桁本体と、該切欠きの形状に一致するように形成され前記主桁本体と着脱自在に連結可能な主桁切片とで構成したことを特徴とする鋼製セグメント。
【請求項2】
前記主桁の間に該主桁と直交するように配置された縦リブを、切欠きが形成された縦リブ本体と、該切欠きの形状に一致するように形成され前記縦リブ本体と着脱自在に連結可能な縦リブ切片とで構成するとともに、該縦リブ切片と前記主桁切片とを一体化した請求項1記載の鋼製セグメント。
【請求項3】
トンネル径に応じて湾曲形成され互いに平行配置された少なくとも2本の主桁、該主桁の両端にほぼ直角に接合された一対の継手板及び前記主桁の凸側に設けられたスキンプレートを有し、前記主桁のうち、少なくともいずれかを、切欠きが形成された主桁本体及び該切欠きの形状に一致するように形成され前記主桁本体と着脱自在に連結可能な主桁切片で構成してなる鋼製セグメントと、前記主桁切片が取り外された状態で前記主桁本体の切欠きに嵌め込むように設置された避難用スロープと、前記鋼製セグメントが配置された領域の上下にトンネル軸線方向に沿ってそれぞれ設けられた曲げせん断補強手段と、トンネルの周方向に沿って前記領域の左右にそれぞれ形成された圧縮補強手段とを備えるとともに、前記曲げせん断補強手段の左右端と前記圧縮補強手段の上下端を接合したことを特徴とする鋼製セグメントを用いたシールドトンネルの覆工構造。
【請求項4】
トンネル径に応じて湾曲形成され互いに平行配置された少なくとも2本の主桁、該主桁の両端にほぼ直角に接合された一対の継手板及び前記主桁の凸側に設けられたスキンプレートを有し、前記主桁のうち、少なくともいずれかを、切欠きが形成された主桁本体及び該切欠きの形状に一致するように形成され前記主桁本体と着脱自在に連結可能な主桁切片で構成するとともに、前記主桁の間に該主桁と直交するように配置された縦リブを、切欠きが形成された縦リブ本体及び該切欠きの形状に一致するように形成され前記縦リブ本体と着脱自在に連結可能な縦リブ切片とで構成して該縦リブ切片と前記主桁切片とを一体化してなる鋼製セグメントと、前記主桁切片及び前記縦リブ切片が取り外された状態で前記主桁本体及び前記縦リブ本体の切欠きに嵌め込むように設置された避難用スロープと、前記鋼製セグメントが配置された領域の上下にトンネル軸線方向に沿ってそれぞれ設けられた曲げせん断補強手段と、トンネルの周方向に沿って前記領域の左右にそれぞれ設けられた圧縮補強手段とを備えるとともに、前記曲げせん断補強手段の左右端と前記圧縮補強手段の上下端を接合したことを特徴とする鋼製セグメントを用いたシールドトンネルの覆工構造。
【請求項5】
トンネル径に応じて湾曲形成され互いに平行配置された少なくとも2本の主桁、該主桁の両端にほぼ直角に接合された一対の継手板及び前記主桁の凸側に設けられたスキンプレートを有し、前記主桁のうち、少なくともいずれかを、切欠きが形成された主桁本体及び該切欠きの形状に一致するように形成され前記主桁本体と着脱自在に連結可能な主桁切片で構成してなる鋼製セグメントを、前記主桁切片を前記主桁本体に連結した状態で配置し、
前記鋼製セグメントの配置工程と相前後しながら、前記鋼製セグメントが配置された領域の上下にトンネル軸線方向に沿って曲げせん断補強手段をそれぞれ設けるとともに、トンネルの周方向に沿って前記領域の左右に圧縮補強手段をそれぞれ設け、
前記主桁切片を前記主桁本体から取り外し、
前記主桁本体の切欠きに避難用スロープを嵌め込むようにして該避難用スロープを設置することを特徴とする鋼製セグメントを用いたシールドトンネルの覆工構造の施工方法。
【請求項6】
トンネル径に応じて湾曲形成され互いに平行配置された少なくとも2本の主桁、該主桁の両端にほぼ直角に接合された一対の継手板及び前記主桁の凸側に設けられたスキンプレートを有し、前記主桁のうち、少なくともいずれかを、切欠きが形成された主桁本体及び該切欠きの形状に一致するように形成され前記主桁本体と着脱自在に連結可能な主桁切片で構成するとともに、前記主桁の間に該主桁と直交するように配置された縦リブを、切欠きが形成された縦リブ本体及び該切欠きの形状に一致するように形成され前記縦リブ本体と着脱自在に連結可能な縦リブ切片とで構成して該縦リブ切片と前記主桁切片とを一体化してなる鋼製セグメントを、前記主桁切片と前記縦リブ切片とを前記主桁本体と前記縦リブ本体にそれぞれ連結した状態で配置し、
前記鋼製セグメントの配置工程と相前後しながら、前記鋼製セグメントが配置された領域の上下にトンネル軸線方向に沿って曲げせん断補強手段をそれぞれ設けるとともに、トンネルの周方向に沿って前記領域の左右に圧縮補強手段をそれぞれ設け、
前記主桁切片と前記縦リブ切片とを前記主桁本体と前記縦リブ本体からそれぞれ取外し、
前記主桁本体及び前記縦リブ本体の切欠きに避難用スロープを嵌め込むようにして該避難用スロープを設置することを特徴とする鋼製セグメントを用いたシールドトンネルの覆工構造の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−204957(P2007−204957A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−22516(P2006−22516)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】