説明

鋼製セグメントとRC部材との接合構造

【課題】鋼製セグメントとRC部材とを確実にかつ簡便に接合することができる鋼製セグメントとRC部材との接合構造を提供する。
【解決手段】シールドトンネルにおける鋼殻としての鋼製セグメント2と、その外周面側に設けられるRC部材とを接合するための鋼製セグメントとRC部材との接合構造において、孔部25が形成された孔あき鋼板24が鋼製セグメント2の主桁21,21に鋼製セグメント2の外周面から突出するように接合され、RC部材のコンクリートの内部に埋設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にシールドトンネルにおける鋼殻としての鋼製セグメントとRC部材(鉄筋コンクリート部材)との接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シールドトンネルの鋼殻としての鋼製セグメントとRC部材との接合構造として、接合部にスタッドジベルや縦リブ、また孔あき鋼板などのシアコネクタを設置したり、接合部の鋼製セグメントに鉄筋継手を設置しこの鉄筋継手とRC部材の鉄筋とを接続したりして、接合部にコンクリートを打設することで、接合部において軸力、せん断力、曲げモーメントが効率的に伝達する構造が知られている(例えば、特許文献1および2参照)。
また、このような鋼製セグメントとRC部材との接合構造には、特許文献1に開示されたような鋼製セグメントを外周面側と内周面側からRC部材で巻き込むように接合する構造や、特許文献2に開示されたような鋼製セグメントの外周面側からRC部材を接合する構造がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−47968号公報
【特許文献2】特許第4350629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、鋼製セグメントを外周面側と内周面側からRC部材で巻き込むように接合する構造では、シールドトンネル内部においてRC部材の配筋や型枠の組み立てなどの作業を行うため、シールド工事の工程に支障を及ぼすことがある。
また、接合部の鋼製セグメントに鉄筋継手を設置しこの鉄筋継手とRC部材の鉄筋とを接続する構造は、シールド工事とRC部材の工事とを別々に行う場合に、鉄筋継手とRC部材の鉄筋との接合が困難である。
また、接合部に鉄筋継手やシアコネクタを設置する場合は、鋼製セグメントに予め鉄筋継手やシアコネクタを設置する加工を行う必要があるため、この鋼製セグメントの加工が簡便で経済的であることが望まれている。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、鋼製セグメントとRC部材とを確実にかつ簡便に接合することができる鋼製セグメントとRC部材との接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る鋼製セグメントとRC部材との接合構造は、鋼殻としての鋼製セグメントと、その外周面側に設けられるRC部材とを接合するための鋼製セグメントとRC部材との接合構造において、孔部が形成された孔あき鋼板が前記鋼製セグメントの主桁に前記鋼製セグメントの外周面から突出するように接合され、前記RC部材のコンクリートの内部に埋設されていることを特徴とする。
【0007】
本発明では、鋼製セグメントの主桁に接合された孔あき鋼板がRC部材のコンクリートの内部に埋設されることにより、孔あき鋼板がジベルとなって鋼製セグメントとRC部材とが確実にかつ簡単な構造で接合されるため、鋼製セグメントとRC部材とを容易に接合することができるとともに、鋼製セグメントの構造やRC部材の構造に関わらず適用することができる。
また、孔あき鋼板が鋼製セグメントの主桁に接合されているため、孔あき鋼板が、例えば鋼製セグメントのスキンプレートなどに接合されている場合と比べて、強度的に安定した状態で鋼製セグメントに接合することができる。
【0008】
また、本発明に係る鋼製セグメントとRC部材との接合構造では、前記孔あき鋼板の孔部には、前記RC部材の鉄筋が挿通されていることが好ましい。
このようにすることにより、鋼製セグメントとRC部材とを確実に接合することができる。
【0009】
また、本発明に係る鋼製セグメントとRC部材との接合構造では、前記孔あき鋼板は、前記主桁に溶接されていることが好ましい。
このようにすることにより、鋼製セグメントの外方から孔あき鋼板を主桁に接合することができるため、例えば、シールドトンネル内部から鋼製セグメントとRC部材との接合にかかる作業をすることがなく、シールド工事に影響を及ぼすことがない。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、鋼製セグメントの主桁に接合された孔あき鋼板がRC部材のコンクリートの内部に埋設されることにより、孔あき鋼板がジベルとなって鋼製セグメントとRC部材とが確実にかつ簡単な構造で接合されるため、鋼製セグメントとRC部材とを容易に接合することができるとともに、鋼製セグメントの構造やRC部材の構造に関わらず適用することができる。
また、孔あき鋼板が鋼製セグメントの主桁に接合されているため、孔あき鋼板が、例えば鋼製セグメントのスキンプレートなどに接合されている場合と比べて、強度的に安定した状態で鋼製セグメントに接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態によるシールドトンネルの一例を示す図である。
【図2】(a)は、鋼製セグメントと孔あき鋼板を説明する斜視図、(b)は(a)の部分破断図である。
【図3】主桁にボルト接合された孔あき鋼板を説明する図である。
【図4】鋼製セグメントとダクト側壁との接合構造を説明する図である。
【図5】鋼製セグメントと底板との接合構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態による鋼製セグメントとRC部材との接合構造について、図1乃至図5に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態による鋼製セグメントとRC部材との接合構造1は、地中における円形断面のシールドトンネル4の鋼殻としての鋼製セグメント2と、鋼製セグメント2の外方に鋼製セグメント2と当接するように設置された、例えば、ダクトの側壁3Aや底板3BなどのRC部材3との接合構造である。
【0013】
図2(a)および(b)に示すように、鋼製セグメント2は、一対の主桁21,21の外周部端面21aにスキンプレート22を溶接することで内周側が開放された中空部23を有する溝形円弧状のもので、これを周方向にリング状に連結し、かつトンネル軸方向に順次連結して全体として筒状に組み立てることにより、シールドトンネル4(図1参照)の一次覆工を構成している。
そして、鋼製セグメント2には、主桁21,21の外周部端面21aに、RC部材3(図1参照)との接合時にジベルとなる孔あき鋼板24が、主桁21,21よりもシールドトンネル4(図1参照)の外周側となる外方に突出するように接合されている。
【0014】
孔あき鋼板24は、例えば、平面視において略長方形状や部分円環状の板状に形成され、複数の孔部25が形成されている。孔あき鋼板24の孔部25の位置や個数は任意に設定されてよい。
なお、図3に示すように、孔あき鋼板24は、その側面が一対の主桁21,21の互いに対向する側面21bに溶接やボルト接合され(図3ではボルト接合された様子を示している)、孔部25が形成されている側が、主桁21,21よりもシールドトンネル4(図1参照)の外周側となる外方に突出する構成としてもよい。
このように、孔あき鋼板24と主桁21,21とがボルト接合されている場合は、孔あき鋼板24および主桁21,21にボルト26が挿通可能なようにボルト孔が形成されている。
【0015】
上述した鋼製セグメント2とRC部材3とは、以下のように接合する。
まず、シールド工事において鋼製セグメント2を設置しシールドトンネル4を構築した後に、主桁21の外周部端面21aの孔あき鋼板24が接合される部分が露出するようにスキンプレート22に切欠き部22aを形成し、孔あき鋼板24を主桁21,21の外周部端面21aに溶接接合する。
なお、孔あき鋼板24を主桁21,21にボルト接合する場合は、スキンプレート22に孔あき鋼板24が貫通する開口部を形成し、この開口部に孔あき鋼板24を挿通させる。そして、主桁21,21の側面21bに形成されたボルト孔(不図示)に孔あき鋼板24のボルト孔を合致させ、これらのボルト孔にボルト26を挿通させてボルト締結する。
【0016】
続いて、図4および図5に示すように、孔あき鋼板24が内部に埋設されるように、RC部材3の配筋および型枠設置を行い、コンクリートを打設する。ここで、図4では、鋼製セグメント2とダクトの側壁3Aとの接合構造で、孔あき鋼板24が主桁21に溶接された場合を示し、図5では、鋼製セグメント2と底板3Bとの接合構造で、孔あき鋼板24が主桁に21ボルト接合された場合を示している。
そして、コンクリートが硬化することによって、孔あき鋼板24がジベルとなって鋼製セグメント2とRC部材3とが接合される。
【0017】
なお、孔あき鋼板24や主桁21,21のボルト孔は、予め形成しておいてもよいし、シールドトンネル4内に鋼製セグメント2を設置した後に主桁21,21にボルト孔を形成し、孔あき鋼板24と主桁21,21とを接合してもよい。
【0018】
次に、上述した鋼製セグメントとRC部材との接合構造の効果について図面を用いて説明する。
本実施形態による鋼製セグメントとRC部材との接合構造1によれば、鋼製セグメント2の主桁21,21に接合された孔あき鋼板24がRC部材3のコンクリートの内部に埋設されることにより、孔あき鋼板24がジベルとなって鋼製セグメント2とRC部材3とが確実にかつ簡単な構造で接合されるため、鋼製セグメント2とRC部材3とを容易に接合することができるとともに、鋼製セグメント2の構造やRC部材3の構造に関わらず適用することができる。
また、孔あき鋼板24が鋼製セグメント2の主桁21,21に接合されているため、孔あき鋼板24が、例えば、鋼製セグメント2のスキンプレート22などに接合されている場合と比べて、強度的に安定した状態で鋼製セグメント2に接合することができる。
【0019】
また、孔あき鋼板24が主桁21,21に溶接されていることにより、鋼製セグメント2の外方から孔あき鋼板24を主桁21,21に接合することができるため、シールドトンネル4内部から鋼製セグメント2とRC部材3との接合にかかる作業をすることがなく、シールド工事に影響を及ぼすことがない。
なお、孔あき鋼板24が主桁21,21にボルト接合されている場合においても、シールドトンネル4内部における作業は、ボルト締結のみであるため(場合によっては、主桁21,21のボルト孔の形成が追加される)、シールド工事にほとんど影響を及ぼすことがない。
【0020】
以上、本発明による鋼製セグメントとRC部材との接合構造の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上述した実施形態では、鋼製セグメント2と接合されるRC部材3としてダクトの側壁3Aや、底板3Bをあげているが、RC部材3をこれ以外の部材としてもよい。
また、上述した実施形態の孔あき鋼板24の孔部25に、RC部材3のせん断補強筋などの鉄筋を挿通させてもよい。このようにすることにより、鋼製セグメント2に生じるせん断力に対して有効に抵抗することができる。
また、上述した実施形態では、鋼製セグメント2は、シールドトンネル4の鋼殻としているが、シールドトンネル4以外の構造物に本実施形態の鋼製セグメント2を用いてもよい。
【符号の説明】
【0021】
1 鋼製セグメントとRC部材との接合構造
2 鋼製セグメント
3 RC部材
4 シールドトンネル
21 主桁
24 孔あき鋼板
25 孔部




【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼殻としての鋼製セグメントと、その外周面側に設けられるRC部材とを接合するための鋼製セグメントとRC部材との接合構造において、
孔部が形成された孔あき鋼板が前記鋼製セグメントの主桁に前記鋼製セグメントの外周面から突出するように接合され、前記RC部材のコンクリートの内部に埋設されていることを特徴とする鋼製セグメントとRC部材との接合構造。
【請求項2】
前記孔部には、前記RC部材の鉄筋が挿通されていることを特徴とする請求項1に記載の鋼製セグメントとRC部材との接合構造。
【請求項3】
前記孔あき鋼板は、前記主桁に溶接されていることを特徴とする請求項1または2に記載の鋼製セグメントとRC部材との接合構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−246660(P2012−246660A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118236(P2011−118236)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】