説明

錆止め塗料

【課題】 塗装後長期間経過しても劣化の見られない錆止め塗料を提供する。
【解決手段】 エポキシ樹脂50〜70%、固形エポキシ樹脂6〜15%、塩化ビニリデン系樹脂エマルジョン0.5〜7.0%、金属箔片5〜40%及び垂止剤5〜7%を溶融状態で混合し、これに硬化剤を全体量の28〜38%を混合して撹拌してなる錆止め塗料の構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステンレス、溶融亜鉛メッキ製品などの表面の錆止めとして長期間の錆止め効果に優れ、塩害に強い錆止め塗料に関し、特に変成エポキシ樹脂を含有する新規な錆止め塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
塩水、ガソリン、原油、や強酸、強アルカリの薬品に対して耐久性の有る塗料について古くから多くの研究がされている。例えば、エポキシ樹脂を主成分とする塗料が市販されている。しかしこのエポキシ樹脂塗料を施した製品でも塗装面において長期間安定してエポキシ樹脂塗料膜が維持されるものでもなかった。特に、気温の低い地方、例えば、日本国の東北地方の冬期には気温5℃以下になることが多く、このような低温ではエポキシ樹脂塗料の硬化が進まず、使用できなかった。また、食品用の貯蔵容器など金属製品の錆止め塗料は塗料成分の溶出などの問題で厳しい規格があり、この規格に合格しなければ使用できなかった。そのため食品用規格に適した塗料として市販されるものは非常に少ない現状である。このような規格に適した食品用容器の塗料として出願人は特公平6−13669号公報に記載される「変成エポキシ樹脂塗料」を発明した。
【0003】
【特許文献1】特公平6−13669号公報(第1頁)
【0004】
特許文献1記載の発明においては主剤と硬化剤との混合割合は60:40とし、硬化剤の含有量の関係で金属板上に塗装するに際して厚さ200ミクロンの塗膜を得るために3回の塗布しなければならなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の問題点を改善し、一回の塗布で250ミクロン以上の厚さに塗布でき、塗装面における長期間の耐久性を維持する塗料膜を形成する錆止め塗料が必要であった。また、被金属表面への一回の塗布作業にして、塗布膜厚みを厚くした錆止め塗料が要望されている。
本発明の課題は、塗装面の膜厚を厚くし、なお、耐久性に優れた錆止め塗料を提供することである。
本発明の課題は、塗装後、長期間経過しても劣化の見られることがない錆止め塗料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記課題は、以下の構成によって達成できる。
エポキシ樹脂50〜70%、固形エポキシ樹脂6〜15%、塩化ビニリデン系樹脂エマルジョン0.5〜7.0%、金属箔片5〜40%及び垂止剤5〜7%からなる主剤を含有することを特徴とする錆止め塗料の構成である。
【0007】
本発明の課題は、前記金属箔片がステンレス箔片またはキュプロニッケル箔片である構成、前記垂止剤がアルコール系溶剤中に脂肪酸アマイドを含むものである構成によって達成できる。
【0008】
また,本発明の課題は、前記主剤に組み合わせる硬化剤の混合割合が全体量の28〜38%である錆止め塗料によって前記課題は達成できる。
【0009】
本発明の錆止め塗料の主成分であるエポキシ樹脂としては、エポキシ樹脂塗料に使用する組成や硬化剤の異なる各種のものを使用可能である。例えば、大日本塗料株式会社製の「エポニックス#10クリア(商品名)」、「SDCコート(商品名)#402」などである。
【0010】
本発明の錆止め塗料は、主剤に垂止剤が5〜7%を含有するから主剤と硬化剤とを混合し、金属板の表面に塗布したときに密着性がよく、塗布後にこの塗料が垂れる恐れは無かった。この垂止剤の添加により一回の塗布で250ミクロンの厚みの塗膜を形成することができた。この垂止剤の含有量が4%以下では塗布後に垂れることがあり、均一な塗膜が出来ず、8%以上では塗布乾燥したときに表面にブツブツが生じて美観に問題があった。
【0011】
本発明の錆止め塗料に使用する固形エポキシ樹脂として、例えば、ジャパンエポキシシエル株式会社製の「シエルポキシ#1004(商品名)」を使用できる。
この固形エポキシ樹脂の含有量は固形エポキシ樹脂が6〜15%含有するから乾燥塗膜の性能に優れ、塗装時に添加する硬化剤との組み合わせにより、耐海水、耐溶剤,耐硫化物の性能が向上し、塩水や原油に対して特に効果を発揮する。この固形エポキシ樹脂の含有量が6%以下では塗料としての性能を発揮せず、16%以上になると塩化ビニリデン系樹脂エマルジョンを添加したときに固くなり過ぎて塗料にならない。
【0012】
本発明に使用する塩化ビニリデン系樹脂エマルジョンは、例えば、旭化成工業株式会社製造のサランラテックスRタイプl321(商品名)が使用できる。この含有量は主剤の0.5〜7.0%が好ましく、0.5%未満では塗膜としての耐久性に問題があり、7.0%を越えたときはエポキシ樹脂との親和性に支障をきたし、所期の効果を得ることができない。最も好ましいのは3〜6%である。
この塩化ビニリデン系樹脂エマルジョンとエポキシ樹脂との混合物の溶剤としてはエポキシシンナーが好ましい。
【0013】
本発明錆止め塗料の金属箔片は、ステンレス箔片、ニッケル箔片などが使用でき、ステンレス箔片として一般に知られるSUS 316L、SUS 304Lなどで、キュプロニッケル箔片としては銅が90〜70%、ニッケルが10〜30%の組成のものなどが使用できる。箔片の形状としては厚さ3ミクロン以下で幅100ミクロン以下、長さ100ミクロン以下の小判状,木の葉状の箔片である。この箔片の比表面積が1000cm2/g以上のものが良好である。
本発明の錆止め塗料の主剤に含まれる金属箔片の含有量は、5〜40%が好ましく、4%以下では金属箔の効果が現れず41%以上では塗布したときに均一な塗膜を形成しなかった。
【0014】
本発明の錆止め塗料は、食品製造貯蔵などに使用するステンレス製タンクの錆止め塗料として使用できるばかりでなく、海上に設置される巨大構造物(メガフロート)、溶融亜鉛メッキの防護剤として好適である。その他、鉄塔上部の細い部材や食品工場の塩素系消毒薬清掃散布の場所などにも利用することができる。
【0015】
本発明の錆止め塗料について,日本塗料検査協会の「試験結果報告書」を表1、表2に示すとおり、錆止め塗料として優れたものである。
【0016】
【表1】

【0017】
【表2】

【発明の効果】
【0018】
本発明の新規錆止め塗料は、通常のステンレスなどの金属表面に塗装したときは、一回の塗装によって200ミクロン〜250ミクロンの厚みの塗膜を形成することができた。その耐久性
は長期間におよんで腐食は見られなかった。
本発明の錆止め塗料は、ステンレス加工品の表面、溶融亜鉛メッキ表面に直塗りで密着性のよい塗膜を形成した。特に、食品貯蔵タンクとして日本塗料検査協会の溶出試験では全く
異常が無く環境衛生上優れた錆止め塗料である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下,本発明に係わる錆止め塗料の実施形態について説明する。
(実施例1)
本発明の錆止め塗料の主剤として以下の組成を準備した。
エポキシ樹脂クリア 61%
固形エポキシ樹脂 11%
垂止剤 5%
塩化ビニリデン系樹脂
エマルジョン 5%
ステンレス箔片 18%
(SUS316L)
合計 100%

これらの化合物を主剤として調合するに当たって次のようにして製造した。
先ず、大日本塗料株式会社製造の商品名クリアのエポキシ樹脂を70℃に加熱溶融し、これに垂止剤としてアルコール系溶剤に脂肪酸アマイドを含有する楠本化成株式会社製造のディスパロン(商品名)を加えてよく撹拌し、溶融状態のこれにジャパンエポキシシエル株式会社のシエルポキシ#1004(商品名)の固形エポキシ樹脂を加えて、撹拌して溶融させ、次に旭化成株式会社製のサランラテックスRタイプl321(商品名)の塩化ビニリデン系樹脂エマルジョンを加えて、撹拌して熱を止めて放置し、30℃位に温度が下がった状態でステンレスSUS316L箔を練り込んで主剤を仕上げた。
【0020】
一方、硬化剤として大日本塗料株式会社製造のポリアミドアミン樹脂を準備した。
主剤と硬化剤との割合を70%:30%として混合し、熟成時間30分を経過した後、製造された錆止め塗料の塗布量を350g/m2/回とし、ステンレス鋼板の表面に均一の厚み200ミクロンで塗布して試験片とした。この膜面は良好であった。
【0021】
(実施例2)
エポキシ樹脂クリア 55%
固形エポキシ樹脂 15%
垂止剤 (ディスパロン) 7%
塩化ビニリデン系樹脂
エマルジョン 7%
ステンレスSUS316L箔片 16%
合計 100%
以上の組成物を実施例1と同様にして溶融状態で混合撹拌して主剤を製造した。
塗装する際に、この主剤に硬化剤を主剤に対して38%混合して撹拌して熟成してステンレス鋼板に1回の塗装で250ミクロン塗布した。良好な塗布膜が形成された。
【0022】
(実施例3)
エポキシ樹脂クリア 68%
固形エポキシ樹脂 6%
垂止剤(ディスパロン) 7%
塩化ビニリデン系樹脂
エマルジョン 7%
ステンレス箔片 12%
(SUS304L)
合計100
実施例1,2同じようにして製造した。
この主剤を硬化剤としてポリアミドアミンを使用し、混合割合を29%にして鋼鉄板に塗装した。その結果良好な塗料膜が形成された。
【0023】
以上のようにして製造した主剤に硬化剤以下の割合で混合した錆止め塗料と、従来の製品の比較実験結果を表3に示す。
厚み 0.3mm、巾50mm、長さ100mmの錫メッキ板をケトンにより素地調整し、下塗として市販のエポキシジンクリッチペイントを塗装し、その上に本発明に係る錆止め塗料(エポキシ樹脂塗料としては大日本塗料株式会社製造のエポニックス#10クリヤー(商品名)を使用した。)を塗装して、試験片を作成した。試験片を海水とシンナーとを混ぜた溶液に浸し、164時間試験をした。膜厚はマイクロメーターで実測し平均値を求め値とした。
【0024】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂50〜70%、固形エポキシ樹脂6〜15%、塩化ビニリデン系樹脂エマルジョン0.5〜7.0%、金属箔片15〜20%及び垂止剤5〜7%からなる主剤を含有することを特徴とする錆止め塗料。
【請求項2】
前記金属箔片がステンレス箔片またはキュプロニッケル箔片であることを特徴とする請求項1に記載の錆止め塗料。
【請求項3】
前記垂止剤がアルコール系溶剤中に脂肪酸アマイドを含むものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の錆止め塗料。
【請求項4】
前記主剤に組み合わせる硬化剤の混合割合が全体量の28〜38%であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の錆止め塗料。

【公開番号】特開2008−195839(P2008−195839A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−32959(P2007−32959)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(307004039)ステンレスペイント有限会社 (1)
【Fターム(参考)】