説明

錠剤の製造方法

【課題】製造後、錠剤の形状を維持し、保存による炭酸ガスの発生も無く、使用に際し良好な発泡性を有し、溶解可能な成分は速やかに水に溶解する錠剤の製造方法の提供。
【解決手段】炭酸水素ナトリウムを造粒機を用いて粉体温度を50〜68℃に上げ、炭酸水素ナトリウムに対して1〜15%のポリエチレングリコールを添加して造粒し、この造粒物を冷却して得た造粒物Aと、クエン酸、もしくはクエン酸のポリエチレン造粒物B及び無水物を撹拌、混合して、圧縮成型によって錠剤を製造する方法において、炭酸水素ナトリウムの造粒物A対クエン酸もしくはクエン酸造粒物Bが、2対1〜10対1の比率となるように添加し、さらに、圧縮成型前のいずれかの工程において、炭酸水素ナトリウムの1/10から1/100の量の、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムから選ばれる無水物を添加し含有させて混合して圧縮成型する錠剤の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品として、経時や物流中に炭酸ガスを発生させず長期間の保存性が良く、お湯や水中に錠剤を溶かした時は、効率よく炭酸ガスを発泡する発泡性組成物である錠剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
重炭酸塩(炭酸水素ナトリウム)と、有機酸とを含む混合物を打錠等によって成型し、発泡性組成物(固形物)とすることは、洗浄剤、浴剤、風呂水清浄剤、プール用殺菌剤等の製品に適用されている。これらの製品(固形物)は、水に投入すると、その成分が反応して炭酸ガスを発生し速やかに溶解する利点を有すると同時に、消費者に快適な使用感を与えるので商品価値を高める効果があり、特に浴剤においては、発生する炭酸ガスの血管への経皮吸収による血行促進効果が積極的に利用されている。
【0003】
しかしながら、重炭酸塩(炭酸水素ナトリウム)と有機酸とを共存させると、結晶中にわずかな水分の存在があっても中和反応が起きてしまうので、炭酸ガスが発生してしまい、錠剤(固形物)の形状が崩れたり、包装容器の内圧が高まり、容器が膨れたり、場合によっては、破損を引き起こすことがある。このような事態が発生すると、商品価値が著しく損なわれるばかりでなく、消費者の信用をも失墜する恐れさえあった。
【0004】
このように重炭酸塩(炭酸水素ナトリウム)と有機酸を混合した上で安定な製品を得るためには、原料中の水分の混入を厳格に防ぐことが最も重要である。そこで製造時に原料及び工程の湿度の除去などの管理を厳重に行い、水分の混入を防ぐことに細心の注意が払われている。更に製造してから消費者が使用するまで錠剤の形状を安定に保つために密封包装をし、製品の吸湿を防いでいる。それにも拘らず、問題が解決されたとは言いがたい現状にある。
【0005】
この現状を解決するために、炭酸塩と芒硝の復塩を予め調整しておき、これに有機酸を混合調整する方法が提案されている(特許文献1)。
【0006】
また、平均分子量950〜3,700のポリエチレングリコール(以下「PEG」と略記することもある。)30〜70質量%と他の発泡性成分70〜30質量%とを配合した後、加熱してPEGを溶融せしめ、発泡成分をPEG中に埋め込む方法が提案されている(特許文献2)。
【0007】
しかし、これら大量のPEGで被覆する方法では、製品の安定化のために、多量の成分を混合することは、炭酸ガスの発生量がそれだけ低下し、消費者の快適な使用感を損なうのみならず、製品目的を発現する有効成分の配合量が減少することになるので、発生する炭酸ガス量が減少し、一回あたりの使用量も増えるため、結局コストが高くなる。更に発生する炭酸ガスを積極的に利用する浴剤や、発生する泡沫を利用する洗浄剤では、発生する炭酸ガス量の低下は致命的な欠点とも言える。
【0008】
一方、生産性の面からは、特に打錠製品において、錠剤の機械的強度を得ること、及び臼や杵への付着が問題となり、結合剤や離型剤の使用が不可欠であるが、これらの成分も、炭酸ガスの発生量の低下をもたらす一因となる。しかも、一般に使われる離型剤としての金属石鹸の微粉末は、水に不溶のために使用時に不快感を与える恐れさえも懸念された。これらの問題を解決する手段として、実質的に水を含まないか或いは50℃以下で結晶水を遊離しない有機酸とPEGとを60〜100℃で加熱溶融混合後、内部にパドル又は
プロペラ状の攪拌翼を取り付けた空気式流動層で攪拌しながら冷却、粉末化し、これに炭酸水素ナトリウムと炭酸ナトリウムを添加して打錠成型する錠剤の製造方法が提案されており、前記実質的に水を含まないか或いは50℃以下で結晶水を遊離しない有機酸として、フマル酸、酒石酸、蓚酸、クエン酸、コハク酸、グルコン酸又はアジピン酸などが挙げられている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭58−213714号公報
【特許文献2】特開昭58−105910号公報
【特許文献3】特公平7−47532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明者らは、有機酸として、疲労回復作用があり、きれいな血管を作る血液サラサラ効果があるクエン酸を使用するという条件下において、輸送しても錠剤の形状を維持でき、錠剤が崩壊するという問題がなく、保存による炭酸ガスの発生もなく、使用に際し、水中での、気泡が細かく良好な発泡により、溶解する炭酸イオン濃度が高く、全部が水に溶解する錠剤の製造方法を明らかにすべく研究を続けた。
その結果、後記本発明の参考発明等に示す技術を特願2009−260079号及びPCT/JP2011−60696として、先に提案した。
本発明者らは、この先提案技術についての研究を続けた結果、更に解決すべき課題があることが判明した。
【0011】
そこで、本発明の第1の目的は、炭酸ガス発生源としての化合物、重炭酸塩(炭酸水素ナトリウム)と反応させる化合物として、有機酸の中でもとりわけ反応性が高く、効率よく炭酸ガスを発生させられるクエン酸を組み合わせて、更に商品価値の高い浴剤等の錠剤の製造方法を提供することである。
本発明の第2の目的は、水に溶けたとき効率よく反応し炭酸ガスを発泡する反応性の良い炭酸水素ナトリウムとクエン酸を使用した錠剤で、保存中、微量の水分が存在しても、使用前の商品としての経時や物流中には、互いが反応せず、錠剤が崩壊したり、密閉容器が膨らんでしまったり、破裂してしまうなどの問題が起こらない、保存安定性が更に優れた浴剤等の錠剤の製造方法を提供することである。
本発明のその他の目的は、以下の記述によって明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明は、下記構成を有する。なお、本発明において「量」は、特に断らない限り「質量」を表し、「%」は、特に断らない限り「質量%」を表す。
[発明1]
重炭酸塩(炭酸水素ナトリウム)とポリエチレングリコールの混合物を、造粒機により、粉体温度50℃から68℃にて一定時間撹拌しながら得た造粒物Aを冷却した後、この造粒物Aに対しクエン酸を加えて混合し、圧縮成型する錠剤の製造方法において、冷却して得た造粒物Aとクエン酸を、2対1〜10対1の比率となるように混合して圧縮成型する錠剤の製造方法であって、下記から選ばれる無水物を、炭酸水素ナトリウム量の1/10から1/100までの量を圧縮成型前のいずれかの工程に添加し含有させる錠剤の製造方法。
[無水物]
無水炭酸ナトリウム、無水炭酸マグネシウム、無水炭酸カルシウム。
[発明2]
前記重炭酸塩(炭酸水素ナトリウム)とポリエチレングリコールからなる造粒物Aを造
粒する方法が、実質的に空気を使用しない機械式撹拌方法からなる造粒方式であることを特徴とする発明1に記載の錠剤の製造方法。
[発明3]
前記無水物を添加する工程が重炭酸塩(炭酸水素ナトリウム)とポリエチレングリコールの造粒物Aを造粒した後であって、この造粒物Aにクエン酸を添加混合する工程と実質的に同時であることを特徴とする発明1又は2に記載の錠剤の製造方法。
[発明4]
添加するクエン酸が実質的にポリエチレングリコールとの造粒物Bであることを特徴とする発明1〜3のいずれかに記載の錠剤の製造方法。
[発明5]
前記無水物が無水炭酸ナトリウムであることを特徴とする発明1〜4のいずれかに記載の錠剤の製造方法。
[発明6]
前記造粒物Aを造粒する際、重炭酸塩(炭酸水素ナトリウム)に対するポリエチレングリコールの量が1質量%から15質量%であることを特徴とする発明1〜5のいずれかに記載の錠剤の製造方法。
【0013】
本発明の参考発明として、下記構成を挙げることができる。
造粒機としては実質的に空気を攪拌作用として使用しない機械式造粒機を使用し、クエン酸とポリエチレングリコールの混合物にエタノールを添加し、粉体温度を60〜65℃に上げ、その後、冷却して得た造粒物Aと、実質的に空気を攪拌作用として使用しない機械式流動層造粒機を使用し、炭酸水素ナトリウムとポリエチレングリコールの混合物にエタノールを添加し、粉体温度を60〜65℃に上げ、その後、冷却して得た造粒物Bとを、前記造粒物A対前記造粒物Bが、1対2〜1対10の比率となるように混合して圧縮成型することを特徴とする錠剤の製造方法。
この参考発明等(先提案技術)と本発明の利点の違いは 無水物として炭酸ナトリウムを製造工程のいずれかにおいて添加することで重炭酸塩(炭酸水素ナトリウム)とクエン酸をそれぞれポリエチレングリコールで造粒する場合の造粒機の選択範囲が広がり、製造の自由度が高まること、ポリエチレングリコールの使用料が大幅に低減できること、及び重炭酸塩もしくはクエン酸の造粒温度の選択範囲が大幅に広まり、またクエン酸の造粒が実質的に不要になる等の製造上の制約なく、浴剤等としての性能を発揮できること、その他後述の利点が挙げられる。
【発明の効果】
【0014】
前記発明1によれば、
重炭酸塩(炭酸水素ナトリウム)とポリエチレングリコール(PEG)からなる混合物を50℃から68℃にて造粒機で造粒して得られた造粒物Aを冷却後、この造粒物Aに対して2対1から10対1の比率でクエン酸を加え、圧縮成型して錠剤とする場合において、重炭酸塩(炭酸水素ナトリウム)に対し1/10から1/100の比率の無水炭酸ナトリウム、無水炭酸マグネシウム、無水炭酸カルシウムのいずれかの無水物を単独もしくは2以上混合して製剤工程のいずれかの工程に添加することによって、上記本発明の目的を達成することができ、有機酸の中でも炭酸水素ナトリウムとの反応性が高いクエン酸を用いるという条件下でさえ、輸送しても錠剤が崩壊したり、密閉包材が膨らむなどの問題がなく、且つ使用する水やお湯に溶かした場合の発泡性が良好な錠剤が得られる。
【0015】
前記発明2によれば、前記造粒物Aの流動層造粒機による造粒方法において、実質的に空気を攪拌手段として使わない機械式攪拌方式による造粒機によって得られた造粒物Aを使用することによって、上記本発明の効果がより顕著となる。
【0016】
前記発明3によれば、前記無水物を添加する工程が炭酸水素ナトリウムとポリエチレン
グリコールの造粒物Aの造粒後であって、造粒物Aにクエン酸を添加混合する工程と実質的に同時であることによって、上記本発明の効果がより顕著となる。
【0017】
前記発明4によれば、添加するクエン酸が実質的にポリエチレングリコールとの造粒物Bであることによって上記本発明の効果がとりわけ顕著となる。
【0018】
前記発明5によれば、無水物が無水炭酸ナトリウムであることにより本発明の効果が、更により顕著になる。
【0019】
前記発明6によれば、造粒物Aを造粒する場合、重炭酸塩(炭酸水素ナトリウム)に対するポリエチレングリコールの量が1質量%から15質量%であることで本発明の効果が、特に顕著になる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について説明する。
本発明で使用する重炭酸塩(炭酸水素ナトリウム)とポリエチレングリコールを混合し造粒する造粒機は、圧縮成型しやすくするための造粒が可能であれば、いずれの方法でもよく、炭酸水素ナトリウムをポリエチレングリコールで被覆し流動性のよい粒子を得るために乾式、自立、混合造粒として作用する、転動造粒機、流動層造粒機、攪拌造粒機などのシステムであれば、どんなものを使ってもよいが、50℃から68℃に加温コントロールできることが必要であり、外部の湿気のある空気が入らない構造であることがより好ましい。
無水物を使用しない本発明者らの最初の研究(先提案技術)では炭酸水素ナトリウム及びクエン酸の造粒では空気を撹拌機能として使った製剤方法の場合には成功せず、解決手段として空気を使わない撹拌造粒機の使用で解決したが、本発明者らの更なる研究の結果、無水物の添加により 造粒機の選択範囲が広がり、いかなる方法を用いても目的の製剤を得ることができ、本発明では空気を攪拌作用に利用したものさえも使用することができることを突き止めた。但し使用する空気の湿気を十分除去する必要があり、使用には注意が必要である。
【0021】
本発明では、より好ましい造粒機として、実質的に空気を攪拌作用として使用しない機械式流動層造粒機が用いられる。この方式は、空気で流動することなく、ショベルと言われる羽根を用い機械式にて流動させるため、造粒中に湿気のある空気から持ち込まれる水分を吸湿することもなく、造粒中に減圧ポンプで真空にすることが可能となり、乾燥効果を上げることもできるため、炭酸水素ナトリウムやクエン酸を造粒するためにも吸湿することなく、崩壊を抑制できる錠剤を製剤するために好ましく使われる。
実質的に空気を攪拌作用として使用しない機械式流動層造粒機とは、
横型ドラムの中にすき状ショベルを配し、遠心拡散及び渦流作用を起こさせ三次元流動させる混合機の事で、例えば、ドイツレーディゲ社製又は松坂技研社製として市場で販売されている。これを利用し造粒する場合は、充填する粉体の体積比率は、40%以上80%以下が、本発明の効果を奏する上で特に好ましい。本造粒機には、減圧するための真空ポンプが付いていることがより好ましい。即ち、冷却時に減圧し、少しでも水分が飛ぶように操作して、本発明の効果をより向上させる上で好ましい。更に、造粒した顆粒が冷却時に粗大粒子になるのを防止するためのチョッパーが付いていることが好ましい。即ち、チョッパーを冷却時に作動させて、整粒することにより、本発明の効果をより向上させる上で好ましい。
【0022】
本発明における粉体温度とは、造粒機の缶体中に粉体温度を測定するための熱電対を設け、これで測定し、表示された温度を示す。この粉体温度は、装置の外側の温度をコントロールするジャケットに目的の温度を得るための温水を温水タンクから流しコントロール
することもでき、かつ冷却する場合にも、粉体温度を短時間でコントロールできるようになしたものが好ましい。
【0023】
本発明の粉体温度は、50〜68℃であり、50℃未満、68℃を超える場合では粉体の造粒がうまくいかず団子状になったりすることがあり、製造効率が著しく悪くなることが分かった。
【0024】
本発明で使用するPEGは、平均分子量が4000〜8000のものが本発明の効果を奏する点で好ましい。ロータリー式打錠機の如き圧縮成形打錠機による成形安定性、杵付着耐性、キャッピング、錠剤成型速度の向上の点より、平均分子量6000程度のPEGが、最も好ましいポリエチレングリコールである。
【0025】
造粒物Aにおける重炭酸塩(炭酸水素ナトリウム)100質量部に対するポリエチレングリコールの比率は、1〜15質量部が好ましく、特に好ましくは3〜10質量部であり、PEGの比率が上記量よりも少ないと、内部反応が押さえられず、保存品質安定性が劣る場合があり、一方、PEGの比率が上記量よりも多いと、発泡性が損なわれ、製造コストの点でも劣ることがある。
クエン酸100質量部に対するポリエチレングリコールの比率は0〜20質量部であり、望ましくは2〜10質量部である錠剤全成分の総質量100部に対するポリエチレングリコールの比率は1から15質量部であり、望ましくは2から10質量部である。
【0026】
また、本発明では無水物の添加により、クエン酸はポリエチレングリコールと混合するだけで、良好な錠剤を得ることができるが、最も好ましくはクエン酸をポリエチレングリコールと、造粒機を用いて造粒し、造粒物Bを得て、造粒物Aと混合して、圧縮成型することである。クエン酸に対するポリエチレングリコールの使用比率はクエン酸100質量部に対し0から15質量部であり、PEGを添加しない場合にも、本発明の効果は得られるが、打錠性が悪くなる場合があり、PEGの比率は好ましくは1〜10質量部である。これより多いと、品質安定性及び発泡性が悪くなる場合があり、またコストも上昇する。
好ましい造粒物Aに対するクエン酸の添加量は、2対1から10対1であり、更に好ましくは3対1から7対1であることが本発明の効果を得る上で特に望ましい。
クエン酸は無水物の添加によって、特に造粒しなくても本発明の効果が得られるが、より好ましくはポリエチレングリコールと一緒に50℃から68℃にて造粒することで、前記造粒物Bとし造粒物Aと混合して圧縮成型することで最も好ましい保存安定性を示す良好な錠剤を製剤することができる。
【0027】
更に、本発明では前記造粒物Aの造粒工程、もしくは造粒物Aとクエン酸を混合する工程など圧縮成型前のいずれかの工程に無水物を添加することが好ましい効果を発揮するが、無水物の添加による本発明の効果の順は、造粒物Aの造粒時<クエン酸造粒時<クエン酸添加と同時混合であり、詳しく説明すると、最も好ましい無水物の添加は炭酸水素ナトリウムの造粒物Aを製造後これを冷却したのちクエン酸を添加する段階で前記無水物を添加することが最も望ましい結果が得られ、造粒物Aを冷却後、クエン酸、無水炭酸ナトリウム、ポリエチレングリコールを同時に添加し混合して直ちに打錠することである。
無水物の量は多すぎる場合は浴中ペーハー(PH)が高くなりアルカリ泉となってしま
うこと、少なすぎると商品の保存中の炭酸ガスの発生が防げず、また造粒温度を下げることもできなくなってしまうなどの問題が起こってしまう。
また本発明においては、使用される無水物とは、無水炭酸ナトリウム、無水炭酸マグネシウム、無水炭酸カルシウム、から選ばれる無水物の1又は2以上を、炭酸水素ナトリウム量の1/10〜1/100量だけ使用すること、特に1/10〜1/50量だけ使用することにより、後記実施例に示すとおり、保存中でのわずかな水分による反応を抑え、錠剤の保存中の形状安定性を高める本発明の効果が発揮された。
特に本発明の効果を最大に発揮する無水物としては無水炭酸ナトリウムが挙げられ、長期保存安定性の点でその効果が最大顕著であった。
【0028】
本発明において、打錠のための滑沢剤を添加することができ、造粒物Aにクエン酸と無水物を加え さらに滑沢剤としてポリエチレングリコールを加えて混合し、圧縮成型して錠剤を得ることが好ましい製剤方法であり、この場合、混合工程で実質的にクエン酸は造粒物Bとなるが、造粒物Aさせポリエチレングルコールで造粒してあれば、クエン酸添加工程ではポリエチレングリコールを添加することは必須ではない、また本発明では錠剤成形のための離型剤を使用することができ、この離型剤としては、n−ヘキサンスルホン酸ソーダ及びn−オクタンスルホン酸ソーダ等が、本発明の効果を奏する上で好ましい。特にn−オクタンスルホン酸ソーダは、本発明に係る錠剤を安定に連続で、かつ高速に圧縮成型するために最も好ましい。
【0029】
本発明には、その他の成分を必要に応じて混合することができる。その他の成分としては、造粒物Aには 重炭酸塩として炭酸水素ナトリウムもしくは炭酸水素カリウムが主成分として使われ、その他の添加物として、香料、色素、界面活性剤等及び必要に応じ炭酸ナトリウムなどの無水物が挙げられる。
クエン酸もしくはクエン酸造粒物Bには 炭酸ナトリウムなどの無水物や、香料、色素、界面活性剤等及びポリエチレングリコールなどが望ましい添加物として挙げられる。
【0030】
前記造粒物Aとクエン酸もしくはクエン酸の造粒物Bとの混合比率は、2対1〜10対1であり、好ましくは3対1〜7対1であり、この範囲外であると、本発明の効果が得られないほど炭酸ガス発泡が激しすぎて空気中に逃げてしまう浴剤となったり、炭酸ガスの発泡が乏しい効果のない浴剤商品となってしまうことがある。
錠剤を作製する圧縮成形には、公知の圧縮成形機を特別の制限なく使用でき、例えば、油圧プレス機、単発式打錠機、ロータリー式打錠機、ブリケッティングマシンなどを用いることができる。
錠剤は必ずしも平面を持つ円形でなくても、球体でもよいし、楕円形でも形は何ら制限されない、物流上、欠けや割れ、粉落ちのない形であれば、どのような直径でも厚みでの形状でもよい。
【実施例1】
【0031】
以下、実施例を挙げ本発明を詳細に説明するが、本発明の態様は、これらに限定されない。

1. 比較用原料の造粒
操作―1
Powrex社製流動層造粒機GPCG−300CTを用いて下記操作を行った。
23℃60%RHに空調された造粒室に設置されたPowrex社製流動層造粒機GPCG−300CTに炭酸水素ナトリウム460kgを添加し、加温し、粉体温度が68℃にてPEG#6000を80kg投入し72℃まで加温しながら造粒し、終了後、流動エアーを20℃に設定し、粉体を冷却する。粉体温度が約35℃に到達したら、造粒物を外部密閉容器へ取り出し操作を終了、造粒物A01を得た。
同じくPowrex社製流動層造粒機GPCG−300CTを用いて下記操作を行った。
23℃60%RHに空調された造粒室に設置されたPowrex社製流動層造粒機GPCG−300CTに無水クエン酸60kg及びPEG#6000を30kg投入し、45℃から70℃にて造粒を行い終了後、エアーを20℃に設定し、粉体を冷却する。粉体温度が約35℃に到達したら、造粒を終了し、密閉容器に粉体を排出し、保管、造粒物B01を得た。
【0032】
操作―2
松坂技研社製レディゲミキサーVT1200改良型にクエン酸60kgと無水炭酸ナトリウム460kgに、ポリエチレングリコール#6000の80kgをクエン酸の粉体温度が45℃にて添加し、造粒し、粉体温度が70℃になったら造粒を終了、これを20℃の冷水にて間接冷却し、造粒物A02を得た。
さらに松坂技研社製レディゲミキサーVT1200改良型にクエン酸60kgとPEG#6000の40kgをクエン酸の粉体温度が45℃から添加し、造粒を行い、粉体温度が69℃にて造粒を停止し、これを20℃の冷水により間接に粉体を冷却し、造粒物B02を得た。
【0033】
松坂技研社製レディゲミキサーの使用は以下共通であり、
23℃60%RHに空調された造粒室に松坂技研社製レディゲミキサーVT1200改良型を設置し、炭酸水素ナトリウムを規定量投入し、回転数115rpmで攪拌しながら、ジャケットに規定温度の温水を循環させ粉体温度を上げてから規定温度に到達したところで、PEG#6000を規定量投入する、粉体温度が規定温度に達し一定時間経過したら造粒を終了し、ジャケットの水の温度を下げ温水を置き換え、加えて10トールの減圧下で冷却する。粉体温度が約35℃に到達したら、底部排出口より、粉体を排出し、密閉容器に保管し、造粒物を得る方法によった。なお、造粒物を得る方法の詳細な操作は、これと同様ないし同等のため以後は省略することがある。
【0034】
本発明例原料の造粒[無水物添加なしの造粒]
操作―3
Powrex社製流動層造粒機GPCG−300CTを用いて下記操作を行った。
23℃60%RHに空調された造粒室に設置されたPowrex社製流動層造粒機GPCG−300CTに炭酸水素ナトリウム460Kg及びPEG#6000の30Kgを、63℃にて造粒し、その後20℃に設定した流動エアーで粉体を冷却する。粉体温度が約35℃に到達したら、造粒を終了し、密閉容器に粉体を排出し、保管、造粒物A3を得た。
【0035】
同じくPowrex社製流動層造粒機GPCG−300CTを用いて下記操作を行った。
23℃60%RHに空調された造粒室に設置されたPowrex社製流動層造粒機GPCG−300CTに無水クエン酸60Kg及びPEG#6000の10Kgを投入し、63℃にて流動エアーで粉体を流動造粒し、造粒が完了したら、流動エアーを15℃に設定し、粉体を冷却する。粉体温度が約35℃に到達したら、造粒を終了し、密閉容器に粉体を排出し、保管、造粒物B3を得た。
【0036】
松坂技研社製レディゲミキサーVT1200改良型に炭酸水素ナトリウム460Kg、ポリエチレングリコール#6000の30kgを加え62℃にて造粒し、終了後、冷却水で間接的に粉体を冷却し、造粒物A4を得た。
【0037】
同じく松坂技研社製レディゲミキサーVT1200改良型にクエン酸、60kgとPEG#6000の8kgを添加し、62℃にて造粒し、終了後、冷却して造粒物B4を得た。
【0038】
操作―4
本発明無水物添加による原料の造粒
Powrex社製流動層造粒機GPCG−300CTを用いて下記操作を行った。
23℃60%RHに空調された造粒室に設置されたPowrex社製流動層造粒機GPCG−300CTに炭酸水素ナトリウム460Kg及びPEG#6000の31Kg、無
水炭酸ナトリウム10Kgを混合しながら、51℃にて造粒し、その後20℃に設定した流動エアーで粉体を冷却する。粉体温度が約35℃に到達したら、造粒を終了し、密閉容器に粉体を排出し、保管、造粒物A5を得た。
【0039】
同じくPowrex社製流動層造粒機GPCG−300CTを用いて下記操作を行った。
23℃60%RHに空調された造粒室に設置されたPowrex社製流動層造粒機GPCG−300CTに無水クエン酸60Kg及びPEG#6000の10Kg及び無水炭酸ナトリウムの10Kgを混合しながら62℃にて造粒し、造粒が完了したら、流動エアーを15℃に設定し、粉体を冷却する。粉体温度が約35℃に到達したら、造粒を終了し、密閉容器に粉体を排出し、保管、造粒物B5を得た。
【0040】
操作―5
本発明無水物添加による 原料の造粒
松坂技研社製レディゲミキサーVT1200改良型に炭酸水素ナトリウム460Kg、炭酸ナトリウム10Kg、ポリエチレングリコール#6000の18kgを加え53℃にて造粒し、終了後冷却し、造粒物A6を得た。
【0041】
同じく松坂技研社製レディゲミキサーVT1200改良型にクエン酸90kg、ポリエチレングリコール#6000の6kg及び無水炭酸ナトリウム8kgを混合しながら53℃にて造粒し、終了後冷却し、造粒物B6を得た。
【0042】
操作―6
比較用発明による原料の造粒
松坂技研社製レディゲミキサーVT1200改良型に炭酸水素ナトリウム460Kgに、ポリエチレングリコール#6000の80kgを加え、62℃にて造粒し、造粒を終了後、これを15℃の冷水にて間接冷却し、造粒物TA001を得た。
【0043】
さらに松坂技研社製レディゲミキサーVT1200改良型にクエン酸60kgとPEG#6000の26kgを粉体温度が60℃から添加し、造粒を行い、粉体温度が63℃にて造粒を停止し、これを20℃の冷水により間接的に粉体を冷却し、造粒物TB001を得た。
【0044】
操作―7
比較用錠剤の作成
比較サンプル1
造粒物A01を540kgと造粒物B01を100kgに、ポリエチレングリコール#6000を6Kg及びn−オクタンスルホン酸ソーダ1.5Kgを投入し、回転数115rpmで攪拌し、混合後、菊水製作所社製タフプレスコレクト1527HU(錠剤製造機)により、直径30mmで重量15gの錠剤J01を作成した。
【0045】
比較サンプル2
造粒物A02を540Kgと造粒物B02を100Kgに、ポリエチレングリコール#6000を6Kg及びn−オクタンスルホン酸ソーダ1.5Kgを投入し、回転数115rpmで攪拌し、混合後、菊水製作所社製タフプレスコレクト1527HU(錠剤製造機)により、直径30mmで重量15gの錠剤J02を作成した。
【0046】
比較サンプル3
造粒物A01を540Kgに造粒物B02を100kg及びポリエチレングリコール#6000を6Kg並びにn−オクタンスルホン酸ソーダ1.5Kgを投入し、回転数11
5rpmで攪拌し、混合後、菊水製作所社製タフプレスコレクト1527HU(錠剤製造機)により、直径30mmで重量15gの錠剤J03を作成した。
【0047】
比較サンプル4
造粒物A02を540Kgに造粒物B01を100kg及びポリエチレングリコール#6000を6Kg並びにn−オクタンスルホン酸ソーダ1.5Kgを投入し、回転数115rpmで攪拌し、混合後、菊水製作所社製タフプレスコレクト1527HU(錠剤製造機)により、直径30mmで重量15gの錠剤J04を作成した。
【0048】
比較サンプル5
造粒物A01を540Kgにクエン酸80kg及びポリエチレングリコール#6000を16Kg並びにn−オクタンスルホン酸ソーダ1.5Kgを投入し、回転数115rpmで攪拌し、混合後、菊水製作所社製タフプレスコレクト1527HU(錠剤製造機)により、直径30mmで重量15gの錠剤J05を作成した。
【0049】
比較サンプル6
造粒物A02を540Kgにクエン酸80kg及びポリエチレングリコール#6000を16Kg並びにn−オクタンスルホン酸ソーダ1.5Kgを投入し、回転数115rpmで攪拌し、混合後、菊水製作所社製タフプレスコレクト1527HU(錠剤製造機)により、直径30mmで重量15gの錠剤J06を作成した。
【0050】
操作―8
本発明サンプル1
造粒物A3を500Kgにクエン酸60kg及びポリエチレングリコール#6000を16Kg並びに無水炭酸ナトリウム10kgとn−オクタンスルホン酸ソーダ1.5Kgを投入し、回転数115rpmで攪拌し、混合後、菊水製作所社製タフプレスコレクト1527HU(錠剤製造機)により、直径30mmで重量15gの錠剤J1を作成した。
【0051】
本発明サンプル2
造粒物A4を500Kgにクエン酸60kg及び無水炭酸ナトリウム10kg、ポリエチレングリコール#6000を8Kg並びにn−オクタンスルホン酸ソーダ1.5Kgを投入し、回転数115rpmで攪拌し、混合後、菊水製作所社製タフプレスコレクト1527HU(錠剤製造機)により、直径30mmで重量15gの錠剤J2を作成した。
【0052】
本発明サンプル3
造粒物A5を500Kgにクエン酸60kg及びポリエチレングリコール#6000を10Kg並びにn−オクタンスルホン酸ソーダ1.5Kgを投入し、回転数115rpmで攪拌し、混合後、菊水製作所社製タフプレスコレクト1527HU(錠剤製造機)により、直径30mmで重量15gの錠剤J3を作成した。
【0053】
本発明サンプル4
造粒物A3を500Kgに造粒物B5を66kg及びポリエチレングリコール#6000を6Kg並びにn−オクタンスルホン酸ソーダ1.5Kgを投入し、回転数115rpmで25分攪拌し、混合後、菊水製作所社製タフプレスコレクト1527HU(錠剤製造機)により、直径30mmで重量15gの錠剤J4を作成した。
【0054】
本発明サンプル5、サンプル6
上記、本発明サンプル2の作成において無水炭酸ナトリウムの代わりに無水炭酸カルシウム12kg(錠剤サンプルJ5)無水炭酸マグネシウム10kg(錠剤サンプルJ6)を用いて、それぞれ錠剤J5、J6を作成した。
【0055】
本発明サンプル7
造粒物A4を500Kgに造粒物B4を80kg及び無水炭酸ナトリウム10kg、ポリエチレングリコール#6000を6Kg並びにn−オクタンスルホン酸ソーダ1.5Kgを投入し、回転数115rpmで攪拌し、混合後、菊水製作所社製タフプレスコレクト1527HU(錠剤製造機)により、直径30mmで重量15gの錠剤J7を作成した。
【0056】
本発明サンプル8
造粒物A4を500Kgに造粒物B6を80kg及びポリエチレングリコール#6000を6Kg並びにn−オクタンスルホン酸ソーダ1.5Kgを投入し、回転数115rpmで攪拌し、混合後、菊水製作所社製タフプレスコレクト1527HU(錠剤製造機)により、直径30mmで重量15gの錠剤J8を作成した。
【0057】
本発明サンプル9
造粒物A6を500Kgにクエン酸60kg、ポリエチレングリコール#6000を12kg及びn−オクタンスルホン酸ソーダ1.5Kgを投入し、回転数115rpmで攪拌し、混合後、菊水製作所社製タフプレスコレクト1527HU(錠剤製造機)により、直径30mmで重量15gの錠剤J9を作成した。
【0058】
本発明サンプル10
造粒物A4を500Kgにクエン酸60kg及び無水炭酸カリウム9kg、ポリエチレングリコール#6000を10Kg並びにn−オクタンスルホン酸ソーダ1.5Kgを投入し、回転数115rpmで-攪拌し、混合後、菊水製作所社製タフプレスコレクト15
27HU(錠剤製造機)により、直径30mmで重量15gの錠剤J10を作成した。
【0059】
操作―9
本発明の参考発明に係る錠剤の作成
造粒物TA001を500kg及びTB001を80kgとり、ポリエチレングリコール#6000を6Kg並びにn−オクタンスルホン酸ソーダ1.5Kgを投入し、回転数115rpmで攪拌し、混合後、菊水製作所社製タフプレスコレクト1527HU(錠剤製造機)により、直径30mmで重量15gの錠剤JT001を作成した。
【0060】
操作―10
実施例―1での評価サンプルの作成
(操作7,8,9)で作成した比較用錠剤J01からJ06及び参考発明用錠剤JT001のサンプル並びに本発明錠剤サンプルJ1からJ10までの全17サンプルを、それぞれアルミバリア袋に50ケづつ入れ、密閉したものを2ケづつ作り、各々のサンプルの片方には縫い針を用いて直径0.1mm程度のピンホールを2つ開け、評価用サンプルとした。

J01(比較用サンプル) 密閉又はピンホールあり、アルミバリア袋保存
J02(比較用サンプル) (全サンプル以下同じ保存)
J03(比較用サンプル)
J04(比較用サンプル)
J05(比較用サンプル)
J06(比較用サンプル)
JT001(参考発明用サンプル)

J1[本発明サンプル]
J2[本発明サンプル]
J3[本発明サンプル]
J4[本発明サンプル]
J5[本発明サンプル]
J6[本発明サンプル]
J7[本発明サンプル]
J8[本発明サンプル]
J9[本発明サンプル]
J10[本発明サンプル]
【0061】
アルミバリア袋入り密閉評価用サンプル[ピンホールなし]の17個とピンホールありのサンプル17個を、39℃70%RH[相対湿度]の恒温湿度実験室にて22日間保存したのち評価試験を行った。
【0062】
(評価方法−1)
密閉 耐温度、保存試験 [ピンホールなしのサンプルを評価]
(内部結晶中の水分による中和反応の防止効果の確認)

39℃保存前と保存後のアルミバリア袋の膨らみ、厚み幅を測定した。
尚、厚みの変化は目視で定規を当てておおよその膨らみを測定した。
○:膨らみなし、問題なし。
△:5mm未満の膨らみは商品化可能として問題なし。
×:5mm以上の袋の膨らみが目立つサンプルは、保存中錠剤内部の水分で反応しやすく(炭酸ガスが大量に発生したと推定)、商品上問題あり。
【0063】
(評価方法−2)
半密閉 耐湿度保存後、物流振動試験 [ピンホールありのサンプルを評価]
(長距離物流中の商品欠損性を見た)

アイデックス社製振動試験機BF−50UCを用い、JISZ0232の条件で2000Km輸送相当の振動を与え、開封後の錠剤について、割れ及び欠けが発生した錠剤の個数を数えた。

◎ : わずかな削れ程度で、欠け、ヒビ割れ、粉落ちはない。
○ : 5個以下のわずかな欠け、ヒビ割れあり。
△ : 5個を超え10以下の欠け、ヒビ割れあり、粉落ちは10g以内である。
× : 10個を超え20個以下の欠け、ヒビ割れあり。
××: 20個を超え、ほとんどが欠け、ヒビ割れあり。

尚、○以上であれば、実用に耐え、実用上問題はない。
【0064】
(評価方法―3)
温水にての溶解、発泡状態観察試験 [ピンホールなしのサンプルを評価]
溶解試験:
32℃に保温した水500mlに15gの錠剤1ヶを入れ、錠剤が溶解するまでの様子を観察し、以下の基準で評価した。

◎ : 5分以上8分未満に激しく発砲しながら溶解する。
○ : 8分以上15分未満に発泡しながら溶解する。
△ : 3分以上5分未満に激しく発泡し、溶解する。
× : 3分未満に激しく発泡して形が崩れて溶解成分が溶けてしまう。
××: 15分以上、発泡少なく、溶解成分も溶解しない。

尚、◎、○、△であれば、実用に耐え、実用上問題はないが、3分未満に溶解してしまう場合や15分以上溶解せず、目視では分からないくらいゆっくり発泡する場合は商品価値として問題ありとした。
【0065】
[表1] 実施例1の評価の結果を以下に示す。

【0066】
表1の結果より、比較例J01からJ06までは物流振動テストにおいても、膨らみにおいても、ピンホールでの耐湿度性においても、ヒビ割れ、欠け、粉落ちや溶解性、発泡性が悪く、商品価値上、問題があることが分かる。
本発明の無水物を含まないが、空気を使わない造粒方法である機械撹拌方式の造粒法を用いて、望ましい造粒温度で原料を造粒した、参考発明例JT001は、性能上は本発明とほぼ同じ良好な性能を示すが、造粒温度が低い場合、発泡性が悪くなり、製造上の制約がある。
それに対し 本発明のいずれの場合にも、溶解性、発泡性、ピンホール耐湿度性能、密閉時の内部水分での反応性などいずれの場合にも問題なく、また造粒温度を低くできるメリットがあった。
【0067】
表1からも明らかなように、本発明の無水物として、無水炭酸カルシウムや無水炭酸マグネシウムを用いた場合、(J5、J6)は欠けやひび割れ性能が少し落ちること、また、浴剤として、これら無水物が完全に溶解せず溶解残さが残り、発泡性が少し劣るため、炭酸水素ナトリウムを用いる場合が最も良好な商品を製造できると判断した。
またこれ以外の無水物、特に無水ケイ酸ナトリウム、無水ケイ酸カルシウムなどのケイ酸塩も、本発明の無水物と同じような効果がみられることが確認されたが、耐湿度性能の点で若干劣ることと、コストの点で本発明からは除外される。
【0068】
また本発明サンプルJ10の結果に示すように、無水物として、無水炭酸カリウムは、無水炭酸ナトリウムとほぼ同じ効果が発揮され良好な本発明の化合物である。
【0069】
また本発明の大きな効果はサンプルJ4、J7、J8のように炭酸水素ナトリウムとクエン酸の両方を造粒され、その後混合して打錠する場合に比べてみても、J1、J2、J9のように炭酸水素ナトリウムさえ造粒しておけば クエン酸と同時に無水物を添加して混合し打錠した本発明も、発明の効果は大きく変わらないことが分かる。
造粒物Aにクエン酸を加え、同時に無水物とPEGを加え混合して打錠でき、造粒工程を省けるメリットが挙げられる。
この時打錠の性能を上げるためにPEG#6000を同時に添加することが好ましいため、クエン酸と無水物とPEGを用いているのだが、実際はこの混合時クエン酸の造粒が行われているとも推察されるが、無水物の添加は、クエン酸の造粒が実質的に不要となり、製造コストの大幅削減を果たしたうえでも、輸送しても崩壊するという問題がなく、発泡性がよくて、且つ、保存による炭酸ガスの発生がなく、理想的な製造方法を提供できることが分かる。
【0070】
実施例2
本発明の錠剤成分の添加量の比較
操作―11
実施例1で作成した造粒物A4を500Kgに造粒物B4を80kg及び無水炭酸ナトリウム10kg、ポリエチレングリコール#6000を6Kg並びにn−オクタンスルホン酸ソーダ1.5Kgを投入し、回転数115rpmで攪拌し、混合後、菊水製作所社製タフプレスコレクト1527HU(錠剤製造機)により、直径30mmで重量15gの錠剤J11を作成した。
【0071】
操作―12
同じく造粒物A4、500Kgにクエン酸60kg及び無水炭酸ナトリウム10kg及びポリエチレングリコール#6000を6Kg並びにn−オクタンスルホン酸ソーダ1.5Kgを投入し、回転数115rpmで攪拌し、混合後、菊水製作所社製タフプレスコレクト1527HU(錠剤製造機)により、直径30mmで重量15gの錠剤J12を作成した。
【0072】
操作―13
前記操作11での製造において、
造粒物A4に対する造粒物B4の量を以下の通り変化し、混合して打錠し、作成した錠剤を前記の物流振動テストと同じ要領でアルミバリア袋に50個づつ入れ密閉した後、片方にピンホール2つ開け、32℃70%RHにて22日間保存し、振動に対する性能を評価確認した。

J13 : 1倍 (500kg)
J14 : 1/2倍 (250kg)
J15 : 1/5倍 (100kg)
J16 : 1/10倍 (50kg)
J17 : 1/20倍 (25kg)
J18 : 1/100倍 (5kg)

と変化して、回転数115rpmで攪拌し、混合後、菊水製作所社製タフプレスコレクト1527HU(錠剤製造機)により、直径30mmで重量15gの錠剤J13〜18を作成し打錠した。
【0073】
操作―14
前記操作12での製造で、造粒物A4に対するクエン酸の量を以下の通り変化し、混合
して打錠し、作成した錠剤を前記の物流振動テストと同じ要領でアルミバリア袋に50個づつ入れ密閉した後、片方にピンホール2つ開け、32℃70%RHにて22日間保存し、振動に対する性能を評価確認した。

J19 : 1倍 (500kg)
J20 : 1/2倍 (250kg)
J21 : 1/5倍 (100kg)
J22 : 1/10倍 (50kg)
J23 : 1/20倍 (25kg)
J24 : 1/100倍 (5kg)

と変化した。
【0074】
操作―15
前記操作12での製造で、造粒物A4の炭酸水素ナトリウムの量に対する無水物(無水炭酸ナトリウム)の量を以下の通り変化し、混合して打錠し、作成した錠剤を前記の物流振動テストと同じ要領でアルミバリア袋に50個づつ入れ密閉した後、片方にピンホール2つ開け、32℃70%RHにて22日間保存し、振動に対する性能を評価確認した。

J25 : 1倍 (460kg)
J26 : 1/5倍 (92kg)
J27 : 1/10倍 (46kg)
J28 : 1/20倍 (23kg)
J29 : 1/50倍 (9kg)
J30 : 1/100倍 (5kg)
J31 : 1/200倍 (2.5kg)

と変化して、それぞれ回転数115rpmで攪拌し、混合後、菊水製作所社製タフプレスコレクト1527HU(錠剤製造機)により、直径30mmで重量15gの錠剤J25〜31を作成し打錠した。
【0075】
操作―16
造粒物A4の製造において、松坂技研社製レディゲミキサーVT1200改良型に炭酸水素ナトリウム460kgに、ポリエチレングリコール#6000を秤量し、混合して造粒する工程で粉体温度53℃にてポリエチレングリコールを添加し、造粒する方法において、ポリエチレングリコールの量を下記の通り変化し、添加して造粒し、この造粒物Aをそれぞれ500kgと、クエン酸80kg、無水炭酸ナトリウム10kg及びPEG#6000を10kg加え、n−オクタンスルホン酸ソーダ1.5Kgを投入して、回転数115rpmで攪拌し、混合後、菊水製作所社製タフプレスコレクト1527HU(錠剤製造機)により、直径30mmで重量15gの錠剤J32〜37を作成した。
造粒物Aの製造時のPEG#6000の投入量を以下のように変化した。

J32 : 1kgを投入
J33 : 15kgを投入
J34 : 30kgを投入
J35 : 60kgを投入
J36 : 100kgを投入
J37 : 200kgを投入
【0076】
操作―17
前記造粒物A4の製造において、松坂技研社製レディゲミキサーVT1200改良型に炭酸水素ナトリウム460kgに、ポリエチレングリコール#6000の40kgを混合し造粒する工程において、ポリエチレングリコールを添加する造粒粉体温度を下記の通り変化し、得られた造粒物500kgにクエン酸60kg、無水炭酸ナトリウム10kg及びPEG#6000を6kg加え、n−オクタンスルホン酸ソーダ1.5Kgを投入して、回転数115rpmで攪拌し、混合後、菊水製作所社製タフプレスコレクト1527HU(錠剤製造機)により、直径30mmで重量15gの錠剤J38〜41を作成した。
造粒物Aの製造時のPEG#6000の投入粉体温度を以下のように変化した。

J38 : 40℃から投入
J39 : 52℃から投入
J40 : 63℃から投入
J41 : 75℃から投入
【0077】
操作―18
実施例2の錠剤評価実験
実施例2の評価サンプルの作成(操作11,12,13,14、15,16、17)で作成した錠剤J13からJ41のサンプル錠剤をそれぞれアルミバリア袋に50ケづつ入れ、密閉したものを2つづつ作り、各々のサンプルの片方には縫い針を用いて直径0.1mm程度のピンホールを2つ開け、評価用サンプルとした。
【0078】
アルミバリア袋入り密閉評価用サンプル[ピンホールなし]及びピンホールありのサンプルを、32℃70%RH[相対湿度]の恒温湿度実験室にて22日間保存したのち評価試験を行った。
【0079】
(評価方法−1 前記実施例−1と同じ)
密閉 耐温度、保存試験
(内部結晶中の水分による中和反応の防止効果の確認)

39℃保存前と保存後のアルミバリア袋の膨らみ、厚み幅を測定した。
尚、厚みの変化は目視で定規を当てておおよその膨らみを測定した。
○:膨らみなし、問題なし。
△:5mm未満の膨らみは商品化可能として実用上問題なし。
×:5mm以上の袋の膨らみが目立つサンプルは、保存中錠剤内部の水分で反応しやすく、炭酸ガスが大量に発生したと推定、実用上商品上問題あり。
【0080】
(評価方法−2 前記実施例−1と同じ)
半密閉 耐湿度保存後、物流振動試験 [ピンホールありのサンプルを評価]
(長距離物流中の商品欠損性を見た)

アイデックス社製振動試験機BF−50UCを用い、JISZ0232の条件で2000Km輸送相当の振動を与え、開封後の錠剤について、割れ及び欠けが発生した錠剤の個数を数えた。

◎ : わずかな削れ程度で、欠け、ヒビ割れ、粉落ちはない。
○ : 5個以下のわずかな欠け、ヒビ割れあり。
△ : 5個を超え10以下の欠け、ヒビ割れあり、粉落ちは10g以内である。
× : 10個を超え20個以下の欠け、ヒビ割れあり。
××: 20個を超え、ほとんどが欠け、ヒビ割れあり。

尚、○以上であれば、実用に耐え、実用上問題はない。
【0081】
(評価方法―3 前記実施例−1と同じ)
温水にての溶解、発泡状態観察試験:
溶解試験:
32℃に保温した水500mlに15gの錠剤1ヶを入れ、錠剤が溶解するまでの様子を観察し、以下の基準で評価した。

◎ : 5分以上8分未満に激しく発砲しながら溶解する。
○ : 8分以上15分未満に発泡しながら溶解する。
△ : 3分以上5分未満に激しく発泡し、溶解する。
× : 3分未満に激しく発泡して形が崩れて溶解成分が溶けてしまう。
××: 15分以上、発泡少なく、溶解成分も溶解しない。

尚、◎、○、△であれば、実用に耐え、実用上問題はないが、3分未満に溶解してしまう場合や15分以上溶解せず、目視では分からないくらいゆっくり発泡する場合は商品価値として問題ありとした。
【0082】
[表2] 実施例2の作成錠剤の性能評価の結果を以下に示す。

【0083】
[表3] 炭酸水素ナトリウムに対するクエン酸造粒物Bの量を変化した結果を以下に示す。


【0084】
[表4] 炭酸水素ナトリウムに対するクエン酸の添加量を変化した結果を以下に示す。

【0085】
[表5] 無水炭酸ナトリウムの添加量を変化した結果を以下に示す。

【0086】
[表6] 造粒物Aの製造時のPEG#6000の投入量を変化した結果を以下に示す。

【0087】
[表7] 造粒物Aの製造時のPEG#6000の投入粉体温度を変化した結果を以下に示す。



【0088】
表2〜7の結果より、炭酸水素ナトリウムに対するクエン酸の量は、炭酸水素ナトリウムの造粒方法が空気を撹拌手段に使う方法においても、実質的に空気を使わない機械式の撹拌方式であっても、同じように2対1から1/10の比率で使う事が望ましく、多過ぎても少な過ぎてもよい結果にはならない。少な過ぎると、発泡が起こらず、溶解もよくない結果となった。
本発明の物流振動耐性には影響しなかった。
【0089】
同じく表2〜7の結果より、炭酸水素ナトリウムに対する無水炭酸ナトリウムの添加量の変化においては、1/10から1/100の添加量において良好な結果を得られたが、少なすぎる場合、多すぎる場合はいずれも問題があり、特に多すぎる場合には発泡溶解性に大きな問題が生じてしまった。
【0090】
同じく表2〜7の結果から、炭酸水素ナトリウムの量に対するポリエチレングリコールの添加量は1%から15%の範囲が好ましく、少なすぎると 保存安定性及び、溶解性、発泡性にも問題があり、多すぎても発泡溶解性に問題が生じてしまう。
また炭酸水素ナトリウムのポリエチレングリコールによる造粒時の造粒温度は、本発明では50℃〜68℃まで良好な結果が得られた、無水炭酸ナトリウムの添加がなかった場
合、本発明者らの最初の研究では60℃〜65℃と狭い範囲でしか良好な結果が得られなかったが、大幅に造粒温度の自由度が上がったことになり、製造コストが大幅に下げられることになることが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重炭酸塩(炭酸水素ナトリウム)とポリエチレングリコールの混合物を、造粒機により、粉体温度50℃から68℃にて一定時間撹拌しながら得た造粒物Aを冷却した後、この造粒物Aに対しクエン酸を加えて混合して圧縮成型する錠剤の製造方法において、冷却して得た造粒物Aとクエン酸を、2対1〜10対1の比率となるように混合して圧縮成型する錠剤の製造方法であって、下記から選ばれる無水物を、炭酸水素ナトリウム量の1/10から1/100までの量を圧縮成型工程前のいずれかの工程に添加し含有させることを特徴とする錠剤の製造方法。
[無水物]
無水炭酸ナトリウム、無水炭酸マグネシウム、無水炭酸カルシウム。
【請求項2】
前記重炭酸塩(炭酸水素ナトリウム)とポリエチレングリコールからなる造粒物Aを造粒機により造粒する方法が、実質的に空気を使用しない機械式撹拌方法からなる造粒方式であることを特徴とする請求項1に記載の錠剤の製造方法。
【請求項3】
前記無水物を添加する工程が重炭酸塩(炭酸水素ナトリウム)とポリエチレングリコールの造粒物Aを造粒した後であって、この造粒物Aにクエン酸を添加混合する工程と実質的に同時であることを特徴とする請求項1又は2に記載の錠剤の製造方法。
【請求項4】
添加するクエン酸が実質的にポリエチレングリコールとの造粒物Bであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の錠剤の製造方法。
【請求項5】
前記無水物が無水炭酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の錠剤製造方法。
【請求項6】
前記造粒物Aを造粒する際、重炭酸塩(炭酸水素ナトリウム)に対するポリエチレングリコールの量が1質量%から15質量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の錠剤製造方法。

【公開番号】特開2012−236825(P2012−236825A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−107272(P2012−107272)
【出願日】平成24年5月9日(2012.5.9)
【出願人】(512083883)株式会社ホットアルバム炭酸泉タブレット (2)
【Fターム(参考)】