説明

錠剤カセット

【課題】払い出す錠剤の大きさに応じて、ロータの案内溝の幅を簡単に調整する。
【解決手段】錠剤を収容するカセット本体と、カセット本体の錠剤収容部の底に回転駆動可能に配設され、外周面に軸方向に延びる複数の錠剤案内溝88が形成されたロータとを有する。錠剤案内溝88の両側の側面をロータの周方向に相対的に移動させる溝幅調整機構17,18を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤を種類毎に多数個収容し、処方に従って錠剤を必要数だけ取り出す錠剤収納取出装置に設置される錠剤カセットに関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤カセットは、特許文献1に記載のように、カセット本体の底に回転駆動するロータを配設し、ロータの外周面に複数の軸方向の案内溝と周方向の周溝を形成し、案内溝とカセット本体の底に形成した錠剤出口とを連通させ、カセット本体の外面にロータの周溝に進入するように仕切部材を取り付けて、この仕切部材により案内溝に導入された最下部の錠剤とその上方の錠剤とを仕切り、最下部の錠剤のみが錠剤出口から払い出される構造を有している。特許文献2にも同様の仕切部材をカセット本体の挿入孔に差し込んでカバーで固定するものが記載されている。これらの構造の錠剤カセットでは、錠剤の大きさによって案内溝が異なるロータを使用する必要があり、また仕切部材の取り付け位置を変更する必要があった。
【0003】
そこで、同一の錠剤カセットで大きさの異なる複数種の錠剤を払い出すことができるように種々の提案がなされている。
【0004】
特許文献3には、ロータを芯体と該芯体に着脱可能な外筒体とで構成し、払い出す錠剤の大きさによって案内溝の幅や深さの異なる外筒体と取り換える一方、仕切部材をボルトの締緩により上下動可能に構成して、払い出す錠剤の大きさによって仕切部材の位置を変更するようにした錠剤カセットが開示されている。しかし、この構造では、外筒体の交換と仕切部材の着け換えの2つの作業が必要であり、煩雑である。また、同特許文献3には、ロータの外面とカセット本体の内面との間にリング体を嵌入して案内溝の断面を小さくできるようにしたものや、案内溝の底に溝深調整体を径方向に移動可能に設けて案内溝の深さを調整できるようにしたものも開示されている。しかし、リング体の装着や固定は困難であり、溝深調整体の移動及び固定は案内溝毎に行うので、煩雑で時間がかかる。外筒体やリング体は、錠剤の形状に応じて交換するので、それらの交換部品が必要である。
【0005】
特許文献4には、カセット本体に複数の差し込み孔を設けて、錠剤の大きさに応じた高さの差し込み孔に仕切部材を嵌合して固定したり、複数の差し込み孔と位置決め孔を設けて、錠剤の大きさに応じた高さの差し込み孔に仕切部材を挿入するとともに仕切部材に設けたピンを位置決め孔に嵌合して固定する構造が開示されている。しかし、この構造では、仕切部材の案内溝への進入量を調整できないという問題がある。
【0006】
特許文献1−4では、仕切部材により案内溝に導入された最下部の錠剤とその上方の錠剤とを仕切るので、ロータの回転につれて錠剤が仕切部材に摺接するので、錠剤が傷つき易いと問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−39910号公報
【特許文献2】韓国実用新案登録第20−0438560号
【特許文献3】特開平8−164904号公報
【特許文献4】特開2005−247355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記従来の問題点に鑑みてなされたもので、払い出す錠剤の大きさに応じて、ロータの案内溝の幅を簡単に調整することができ、交換部材が不要な錠剤カセットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、案内溝の幅の調整に関し、
錠剤を収容するカセット本体と、
前記カセット本体の錠剤収容部の底に回転駆動可能に配設され、外周面に軸方向に延びる複数の錠剤案内溝が形成されたロータと
を有する錠剤カセットにおいて、
前記錠剤案内溝の両側の側面を前記ロータの周方向に相対的に移動させる溝幅調整機構を備えた。
前記溝幅調整機構は、
前記複数の錠剤案内溝の一方の側面を形成する第1側面を有する複数の第1調整壁を外周に設けた第1可動板と、
前記第1可動板に対して回動可能に設けられ、前記第1可動板の第1側面と対向して、前記複数の錠剤案内溝の他方の側面を形成する第2側面を有する複数の第2調整壁を外周に設けた第2可動板と、
前記第1可動板と前記第2可動板を相対的に回転させる可動板移動機構と、
を有することが好ましい。
【0010】
前記可動板移動機構は、
前記第1可動板に設けた第1調整孔及び第2調整孔と、
前記第2可動板に設け、前記第1調整孔と交差する第3調整孔及び前記第2調整孔と交差する第4調整孔と、
前記第1調整孔と前記第3調整孔に嵌合する第1調整ピンと、前記第2調整孔と前記第4調整孔に嵌合する第2調整ピンとを備えた操作部材と
からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、錠剤の大きさに応じて、第1可動板と第2可動板を可動板移動機構により相対的に回転させることにより、錠剤案内溝の両側面間の間隔、すなわち溝幅を調整することができる。このため、大きさの異なる種々の錠剤を収容しても、ロータを交換することなく、錠剤を排出することができる。しかも、交換部品が全く必要なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る錠剤カセットの斜め上からみた斜視図。
【図2】錠剤カセットの斜め下からみた斜視図。
【図3】錠剤カセットのカセット本体を一部破断した斜視図。
【図4】錠剤カセットの断面図
【図5】ロータの斜視図。
【図6】ロータの分解斜視図。
【図7】(a)、(b)はロータコア部材のそれぞれ上方、下方から見た斜視図。
【図8】可動片の斜視図。
【図9】(a)、(b)、(c)は可動片上部材の上方の3方向から見た斜視図。
【図10】可動片駆動板の斜視図。
【図11】(a)、(b)は第1可動板のそれぞれ上方、下方から見た斜視図。
【図12】(a)、(b)は第2可動板のそれぞれ上方、下方から見た斜視図。
【図13】溝幅調整部材の斜視図。
【図14】(a)は錠剤押さえ部材の斜視図、(b)は平面図。
【図15】(a)、(b)はロータカバーのそれぞれ上方、下方から見た斜視図、(c)は断面図。
【図16】(a)はロータキャップの斜視図、(b)は断面図。
【図17】(a)は押付け部材の斜視図、(b)は平面図、(c)は断面図、(d)、(e)は(c)の変形例を示す断面図。
【図18】押し付け部材と錠剤押さえ部材の作用を示す断面図。
【図19】(a)、(b)は可動片と可動片駆動板による溝深の調整時の動作前後を示す平面図。
【図20】(a)、(b)は可動片上部材とロータカバーの間の関係を示す動作前後の断面図。
【図21】隣接する可動片上部材の間の隙間の変化を示す正面図。
【図22】(a)、(b)は第1可動片と第2可動片による溝幅の調整時の動作前後を示す平面図、(c))は(a)のA−A線、(d)は(b)のB−B線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を添付図面に従って説明する。
【0014】
図1−4は、本発明に係る錠剤カセット1を示し、カセット本体2と、ロータ3と、押付け部材4とから構成されている。
【0015】
カセット本体2は、図4に示すように、多数の錠剤を収容可能な錠剤収容部5と、この錠剤収容部5より下方に設けられ前記ロータ3を収容するロータ収容部6とから構成されている。錠剤収容部5は、上方に開口する矩形の開口部7が設けられ、該開口部7は図示しない蓋で開閉可能に覆われている。ロータ収容部6は、有底筒状で、底面には中心にロータ軸孔8と外周に錠剤排出孔9が形成されている。ロータ軸孔8には円筒状のブッシュが取り付けられている。錠剤排出孔9の近傍には、前記押付け部材4を取り付けるための取付け口10が形成され、該取付け口10の一方の縁に押付け部材4の爪部85が係合するスリット10aと、他方の縁に押付け部材4のねじ挿通孔86と一致するねじ穴10bが形成されている。
【0016】
図5は、ロータの組み立て状態を示す。ロータ3は、図6に示すように、ロータコア部材11、駆動ギア12、可動片13、可動片上部材14、可動片駆動板15、溝深調整ねじ16、第1可動板17、第2可動板18、溝幅調整部材19、錠剤押さえ部材20、ロータカバー21、ロータキャップ22からなっている。
【0017】
ロータコア部材11は、図7に示すように、円板形状を有し、上面中央には円柱状の上突部23、下面中央には上突部23より大径の下突部24が形成されている。上突部23と下突部24には軸孔25a,25bが形成されている。上突部23の軸孔25aにはロータ軸26がねじ込まれて固定されている。ロータコア部材11の下面外周縁には、下方に突出する環状リブ27が形成されている。ロータコア部材11の下面外周縁から中心に向かって複数(実施例では18)のガイド溝28が等間隔で放射状に形成されている。ロータコア部材11には、軸孔25aを中心とする円弧状の複数(実施例では3)の凹部29が等間隔に形成されている。これらの凹部29の底には円弧状の長孔30が形成されている。さらに、ロータコア部材11には、凹部29の近傍に、軸孔25aを中心とする同一円上に複数(実施例では3)の取付孔31が形成されている。
【0018】
駆動ギア12は、図4に示すように、ロータコア部材11の下突部24に係合して、図示しない取付けねじを下突部24の軸孔25bにねじ込むことで固定されている。
【0019】
可動片13は、図8に示すように、ロータコア部材11のガイド溝28の数と同じ数だけ設けられている。可動片13は、ロータ3の軸方向に延びる板状の基部32と、該基部32の内面32a(以下、各部材のロータコア部材11の軸孔25aに対向する面を内面、その反対側を外面という。)から内方に水平に延びるガイドアーム33とからなっている。基部32の外面32bは、後述するロータ3の錠剤案内溝88におけるロータ3の半径方向の面(底面)となる。基部32の上端面には、可動片上部材14が嵌合する嵌合穴34が形成されている。基部32の下端には、外面と面一の突片35が形成されている。ガイドアーム33の先端には下方に突出する円形の突部36が形成されている。
【0020】
可動片上部材14は、可動片13の数と同じ数だけ設けられている。可動片上部材14は、図9に示すように、水平な下面14aと、該下面14aに垂直な内面14bと、屈曲した外面14cと、傾斜した上面14dと、ロータコア部材11の軸孔25を通る垂直面の一部をなす両側面14e,14fとからなる6面体である。下面14aには、可動片13の基部32の嵌合穴34に嵌合する嵌合突部37が形成されている。傾斜した上面14dは、内面から外面に向かって低くなり、かつ、外面側の縁が一方の側面14eから他方の側面14fに向かって高くなるような面形状を有している。一方の側面14eの上縁には、内面14bから外面14cに向かって延びる切欠き部38が形成されている。他方の側面14fには、内面14bから外面14cに向かって延びる突出部39が形成されている。これにより、隣接する可動片上部材14の切欠き部38と突出部39とが重なるように形成されている。
【0021】
可動片駆動板15は、図10に示すように、ロータコア部材11の下面の環状リブ27内に回動可能に装着される円板形状を有する。可動片駆動板15の中心には、ロータコア部材11の下突部24よりも大きな径の中心孔40が形成されている。可動片駆動板15の外周縁には、ロータコア部材11との摺動抵抗を軽減するために、上方に突出する環状リブ41が形成されている。可動片駆動板15の外周側には、可動片13の数と同じ数の円弧状のガイド孔42が形成されている。ガイド孔42の一端は外周寄りにあり、他端は内周寄りにある。ガイド孔42は、必ずしも円弧状である必要はなく、可動片13の移動方向すなわちロータコア部材の11のガイド溝28と交差するものであれば、直線状であってもよい。可動片駆動板15には、中心孔40を中心とする同一円上の前記ロータコア部材11の3つの長孔30と対応する位置に、3つのねじ孔43が等間隔に形成されている。
【0022】
溝深調整ねじ16は、図6に示すように、前記ロータコア部材11の3つの凹部29から長孔30を貫通して前記可動片駆動板15のねじ孔43にねじ込まれている。
【0023】
第1可動板17は、図11に示すように、ロータコア部材11の上に載置されるもので、円形の基板部44と、該基板部44の外周縁から周方向に等間隔に外方に放射状に延び、かつ、下方に延びる可動片13と同数の(実施例では18)の調整壁45とからなっている。
基板部44は、中心にロータコア部材11の上突部23に嵌合する中心孔46が形成されている。中心孔46の周囲には、ロータコア部材11の凹部29と対向するように、中心孔46を中心とする円弧状の複数(実施例では3)の円弧孔47が形成されている。また、円弧孔47の外側には、ロータコア部材11の取付孔31と対向するように、中心孔46を中心とする円弧状の複数(実施例では3)のねじ挿入孔48が形成されている。さらに、基板部44には、中心孔46から等距離離れた2点から平行に延びる2つの第1調整長孔49と第2調整長孔50が形成されている。第2調整長孔50の長さは第1調整長孔49の長さよりも短く形成されている。
調整壁45の図12(a)において時計回り方向から見た面は、ロータ3の錠剤案内溝88の一方の側面となる。調整壁45の先端には、調整壁45の上面と時計回り方向から見た側面から、逆L字形に径方向外方に突出する突出片51が形成されている。
【0024】
第2可動板18は、第1可動板17の上に載置されるもので、図12に示すように、円形の基板部52と、該基板部52の外周縁から周方向に等間隔に外方に放射状に延びる可動片13と同数の(実施例では18)の上壁53と、各上壁53の一側端から下方に延びる調整壁54と、各調整壁54の外端を連結する全体として円筒状の外壁55とからなっている。
基板部52は、第1可動板17の中心孔46、円弧孔47、ねじ挿入孔48、第1,第2調整長孔49,50と対応する位置に、中心孔56、円弧孔57、ねじ挿入孔58、第3,第4調整長孔59,60が形成されている。ただし、第2可動板18の第3,第4調整長孔59,60は、第1可動板17の第1,第2調整長孔49,50と交差する方向に平行に延びている。第3調整長孔59の長さは、第1可動板11の第2調整長孔50と同じ長さであり、第4調整長孔60の長さは第1可動板11の第1調整長孔49の長さと同じである。
調整壁54の図12(a)において反時計回り方向から見た面は、ロータ3の錠剤案内溝88の一方の側面となる。
外壁55には、隣接する調整壁54の間に、後述する錠剤押さえ部材20が進入する複数(実施例では4)の周方向に延びるスリット61と、錠剤押さえ部材20を取り付けるための2つの切欠き62と、錠剤押さえ部材20を取り付けるための2つの取付孔63とが形成されている。
【0025】
第1可動板17と第2可動板18とは、図6に示すように、第1可動板17をロータコア部材11の上に載置し、該第1可動板17の上に第2可動板18を載置して、第2可動板18のねじ挿入孔58、第1可動板17のねじ挿入孔48に取付ねじ31aを挿入してロータコア部材11の取付孔31にねじ込むことで固定される。また取付ねじ31aを緩めることで、第1可動板17と第2可動板18とは、相対的に回動可能となる。
【0026】
溝幅調整部材19は、図13に示すように、前記第1可動板17の第1,第2調整長孔49,50と前記第2可動板18の第3,第4調整長孔59,60に装着されている。
溝幅調整部材19は、長円板形状の基部64と、該基部64の一端側の下面から突出し、第1可動板17の第1調整長孔49と第2可動板18の第3調整長孔59に挿入される第1調整ピン65と、基部64の他端側の下面から突出し、第1可動板17の第2調整長孔50と第2可動板18の第4調整長孔60に挿入される第2調整ピン66とからなっている。
【0027】
錠剤押さえ部材20は、図14に示すように、ステンレス鋼などのばね性を有する金属材料からなり、基部67と、該基部67から延設された4つの弾性片68とからなっている。
基部67は上下方向に延びる細長い板状で、上下端には第2可動板18の外壁55の上下端の切欠き62に係止して折り曲げる2つの係止片69が形成され、一方の側端には第2可動板18の外壁55の取付孔63に挿入して折り曲げる2つの挿入片70が形成されている。
弾性片68は、図14(b)に示すように、基部67の挿入片70が形成されていない側端から、第2可動板18の外壁55に沿って基部67から離れる方向に延び、U字形に屈曲して基部67から徐々に離れる方向に延び、基部67を横切ったところで、第2可動板18の外壁55に近づく方向に屈曲して隆起部71を形成し、第2可動板18の外壁55の近傍で第2可動板18の外壁55から遠ざかる方向に緩やかに屈曲し押圧部72を形成して、そこで終端となっている。
【0028】
ロータカバー21は、図15に示すように、全体的に傘形状を有している。ロータカバー21の上面は、中心から外周縁に向かって緩やかな傾斜を有し、外周縁に近づくと急激な傾斜になっている。ロータカバー21の径は、可動片上部材14が最も内側と最も外側との間のいずれの位置にあっても、ロータカバー21の外周縁が可動片上部材14の上面と重なる位置にあるように定められている。
ロータカバー21の下面中央には、突部73が形成されている。ロータカバー21の上面中央には、突部73と同心の円形の凹部74が形成され、該凹部73の底にはロータ軸26が貫通する中心孔75が形成されている。
ロータカバー21の中心から外周縁に向かって放射状のリブ76が形成され、カセット本体2に収容された錠剤を撹拌できるようになっている。リブ76はロータカバー21の外周縁に向かうにつれて高さ及び幅が大きくなるような断面三角形状である。
ロータカバー21の外周縁には、可動片上部材14と同一の数の三角形状の切欠き77が周方向に等間隔に形成されている。この切欠き77は、図21に詳細に示すように、ロータ21の外周縁からロータ21の中心に向かって半径方向内方に延びる縁77aと、該縁77aの内端から隣接する切欠き77の縁77aの外端に向かって延びるなめらかな曲線からなる縁77bとで形成されている。
隣接する一方の切欠き77から他方の切欠き77までの範囲のロータカバー21の外周縁の内面78は、前記可動片上部材14の上面と一致する形状を有し、可動片上部材14の上面と密接して重なるように形成されている。
【0029】
ロータキャップ22は、図16に示すように、上端が閉塞され、下端が開放された円筒状で、前記ロータカバー21の凹部74に嵌合する径を有している。ロータキャップ22の上端はロータキャップ22がロータカバー21の凹部74に嵌合した際にロータカバー21から突出する略円錐形状を有している。内面にはロータ軸26が螺合する雌ねじ79が形成されている。ロータキャップ22の上端には、ドライバーなどの工具が係合する工具溝80が形成されている。
【0030】
押付け部材4は、図17に示すように、矩形板状の取付け部81と、該取付け部81の内側に一体に形成されて内面がロータ3の外周面に沿って湾曲した第1基部82と、該第1基部82の内側に一体に形成されて内面がロータ3の外周面に沿って湾曲した第1基部82より1回り小さな第2基部83と、該第2基部83の内側に一体に形成され、ロータ3の周方向に延びる押付けリブ84とからなっている。
取付け部81は、カセット本体2の取付口10の外側に位置し、一端には着脱時にカセット本体2のスリット10aに係合する爪部85が形成され、他端にはカセット本体2にねじ孔10bと合致して図示しない取付けねじが挿通されるねじ挿通孔86が形成されている。
第2基部83の内面は、ロータ3に取り付けた錠剤押さえ部材20の隆起部71が接触しない位置に設けられている。
押付けリブ84は、錠剤案内溝88に進入した錠剤のうち最下部の錠剤から2番目の錠剤の高さ位置に設けられている。押付けリブ84の内面は、ロータ3の回転により押付けリブ84に接近してくる錠剤押さえ部材20の隆起部71を押し付けて押圧部72がロータ3の第2可動板18のスリット61に進入するような位置に設けられている。
押付けリブ84の前端部、すなわちロータの回転により押付けリブ84に接近してくる錠剤押さえ部材20と対向する端部は、傾斜面87が形成されている。
【0031】
以下、前記構成からなる錠剤カセット1の動作、特に錠剤案内溝の調整時の動作を説明する。
【0032】
ロータ3の錠剤案内溝88は、図18に示すように、第1可動板17の調整壁45、第2可動板18の調整壁54及び外壁55、及び可動片13の外面32bで囲まれた空間によって形成され、ロータ3の軸に平行に延びている。錠剤案内溝88の上端は錠剤カセット1の錠剤収容部5の内部空間に連通し、下端はカセット本体2の底に対向しており、ロータ3の回転により所定の位置にくると、錠剤排出孔9と連通する。
【0033】
カセット本体2の錠剤収容部5に収容された錠剤Tは、ロータ3の回転により、ロータカバー21のリブ76によって撹拌されながら、各錠剤案内溝88に進入する。錠剤案内溝88が錠剤排出孔9に近づくと、押付け部材4の押付けリブ84が錠剤押さえ部材20を押し付ける結果、錠剤案内溝88に進入した錠剤Tのうち下から2番目の錠剤Tが錠剤押さえ部材20により押さえられ、最下の錠剤Tのみが錠剤排出孔9から排出する。これにより、錠剤案内溝88が錠剤排出孔9に回ってくる毎に、錠剤Tが排出される。
【0034】
ロータ3の錠剤案内溝88において、ロータ3の半径方向の寸法すなわち溝深Dと、ロータ3の周方向の寸法すなわち溝幅Wは、カセット本体2の錠剤収容部5に収納される錠剤の大きさに応じて調整することができる。
【0035】
<錠剤案内溝の溝深の調整>
錠剤案内溝88の溝深Dを調整するには、図19に示すように、3個の溝深調整ねじ16を緩めて、円弧状の長孔30に沿って移動させる。これにより、可動片駆動板15が回動してガイド孔42が移動する結果、ガイド孔42に係合している突部36が押されて、可動片13がロータコア部材11のガイド溝28に沿って半径方向に移動する。
【0036】
すなわち、図19(a)に示すように、可動片13がロータ3の半径方向外方に移動していて最小深さDの状態から、調整ねじ16により可動片駆動板15を時計回り方向に回動させると、可動片13の突部36がガイド孔42の外側の縁に押されるので、図19(b)に示すように可動片13が半径方向内方に移動し、最大深さDの状態となる。逆に、図19(b)に示すように、最大深さDの状態から、調整ねじ16により可動片駆動板15を反時計回り方向に回動させると、可動片13の突部36がガイド孔42の内側の縁に押されるので、図19(a)に示すように可動片13が半径方向外方に移動し、最小深さDの状態となる。勿論、調整ねじ16をガイド孔42の中間の位置に止めることで、錠剤案内溝88を最小深さDと最大深さDの間の任意の深さに調整することができる。
【0037】
可動片13が半径方向に移動すると、可動片上部材14も半径移動方向に移動する。図20(a)に示すように、可動片上部材14が半径方向外方に最大限移動した状態では、ロータカバー21の縁が可動片上部材14の縁に載った状態となる。また、図20(b)に示すように、可動片上部材14が半径方向内方に移動すると、ロータカバー21の縁部が可動片上部材14の上面に完全に載った状態となる。いずれにしても、ロータカバー21の外周縁の内面は、可動片上部材14の上面と一致する形状を有しているので、可動片上部材14の上面と密接して重なり、ロータカバー21と可動片上部材14との間に隙間が空くことはない。
【0038】
可動片上部材14が半径方向内方に移動すると、隣接する可動片上部材14は互いに接近する。また、可動片上部材14が半径方向外方に移動すると、隣接する可動片上部材14は互いに離間する。この場合、図21に示すように、隣接する可動片上部材14は、切欠き部38と突出部39が係合しているので、隙間が空くことはない。
【0039】
<錠剤案内溝の溝幅の調整>
錠剤案内溝88の溝幅を調整するには、3つの取付けねじ31aを緩めて、第1可動板17と第2可動板18を相対的に回動可能な状態にしておいて、溝幅調整部材19を半径方向内方又は外方に移動させる。これにより、溝幅調整部材19の第1調整ピン65が第1可動板17の第1調整孔49と第2可動板18の第3調整孔59を押圧し、第2調整ピン66が第1可動板17の第2調整孔50と第2可動板18の第4調整孔60を押圧する結果、第1可動板17と第2可動板18が相対的に移動し、第1可動板17の調整壁45と第2可動板18の調整壁54が接近又は離間する。
【0040】
すなわち、図22(a)に示すように、溝幅調整部材19がロータ3の半径方向内方に位置していて、第1可動板17の調整壁45と第2可動板18の調整壁54との間の間隔が最小幅Wの状態(図22(c)参照)から、溝幅調整部材19をロータ3の半径方向外方に移動させると、溝幅調整部材19の第1調整ピン65と第2調整ピン66が第1可動板17の第1調整孔49と第2調整孔50を押圧して時計回り方向に回動させるとともに、第2可動板19の第3調整孔59と第4調整孔50を押圧して反時計回り方向に回動させる。これにより、図22(b)に示すように、第1可動板17の調整壁45と第2可動板19の調整壁54が離間し、溝幅が最大幅W(図22(d)参照)に調整される。
逆に、図22(b)に示すように、最大幅Wの状態(図22(d)参照)から、溝幅調整部材19をロータ3の半径方向内方に移動させると、溝幅調整部材19の第1調整ピン65と第2調整ピン66が第1可動板17の第1調整孔49と第2調整孔50を押圧して反時計回り方向に回動させるとともに、第2可動板18の第3調整孔59と第4調整孔60を押圧して時計回り方向に回動させる。これにより、図22(a)に示すように、第1可動板17の調整壁45と第2可動板18の調整壁54が離間し、溝幅が最小幅W(図22(c)参照)に調整される。勿論、溝幅調整部材19の第1調整ピン65と第2調整ピン66を調整孔49,50,59,60の中間の位置に止めることで、錠剤案内溝88を最小幅と最大幅の間の任意の幅に調整することができる。
【0041】
<錠剤押さえ部材の調整>
カセット本体2の錠剤収容部5に収納される錠剤の大きさ、具体的には錠剤案内溝88に進入したときの錠剤の高さに応じて、押付け部材4を押付けリブ84の上下方向の位置が異なる他の押付け部材4と交換することにより、押し付け部材4が押し付ける錠剤押さえ部材20の弾性片68を選択することができる。
【0042】
すなわち、図17(d)に示すように、押付けリブ84が図17(c)よりも1つ上の位置にある押付け部材4を使用すれば、錠剤押さえ部材20の下から2番目の弾性片68の押圧部72を押し付けることができ。このように、押付けリブ84の位置が異なる4つの押付け部材4を予め用意しておくことで、収容された錠剤の大きさに応じて、小さな錠剤の場合は、一番下の弾性片68を押し付けできるような押付けリブ84を有する押付け部材4を選択し、大きな錠剤の場合は、それより上の弾性片68を押し付けできるような押付けリブ84を有する押付け部材4を選択することができる。
【0043】
なお、押付け部材4全体を取り換える代わりに、図17(e)に示すように、押付けリブ84が一体に形成された第1基部82を取付部82に着脱可能にするとともに、押付けリブ84の位置が異なる他の第1基部82と交換可能にしてもよい。
【0044】
前記実施形態では、錠剤案内溝88の溝深の調整と溝幅の調整を共に行えるようにしたが、溝深の調整と溝幅のどちらか一方のみの調整を行えるようにしてもよい。
【0045】
また、錠剤押さえ部材20は、4つの弾性片68を設けたが、その数は任意であり、1つの弾性片68のみを有するようにしてもよい。1つの弾性片68のみを有する錠剤押さえ部材20を使用して錠剤押さえ位置を調整する場合、弾性片68の位置が異なる他の錠剤押さえ部材20と交換するか、弾性片68の位置が上下に変更できるような構造を採用することができる。
【0046】
押付け部材4は、押付けリブ84が固定されているものとしたが、押付けリブ84が錠剤押さえ部材20の弾性片68の高さに合わせて上下に移動可能なものでもよい。このようにすれば、押付け部材4の交換が不要である。
【0047】
錠剤押さえ部材20と押付け部材4を使用する場合、溝深と溝幅が一定の従来の錠剤案内溝を有するロータを使用してもよい。
【0048】
さらに、前記実施形態では、溝深調整機構として、調整ねじ16を移動操作することにより可動片駆動板15を回動させて可動片13を移動するようにしたが、ダイヤル等の回動操作によって可動片駆動板15を回動させてもよい。同様に、前記溝幅調整機構として、溝幅調整部材19を移動操作することにより第1可動板17と第2可動板18を回動させるようにしたが、ダイヤル等の回動操作によって第1可動板17と第2可動板18を回動させてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 錠剤カセット
2 カセット本体
3 ロータ
4 押付け部材
9 錠剤排出孔
11 ロータコア部材
13 可動片
15 可動片駆動板
16 溝深調整ねじ
17 第1可動板
18 第2可動板
19 溝幅調整部材
20 錠剤押さえ部材
28 ガイド溝
42 ガイド孔
45 調整壁
49 第1調整孔
50 第2調整孔
54 調整壁
59 第3調整孔
60 第4調整孔
68 弾性片
71 隆起部
72 押圧部
88 錠剤案内溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠剤を収容するカセット本体と、
前記カセット本体の錠剤収容部の底に回転駆動可能に配設され、外周面に軸方向に延びる複数の錠剤案内溝が形成されたロータと
を有する錠剤カセットにおいて、
前記錠剤案内溝の両側の側面を前記ロータの周方向に相対的に移動させる溝幅調整機構を有することを特徴とする錠剤カセット。
【請求項2】
前記溝幅調整機構は、
前記複数の錠剤案内溝の一方の側面を形成する第1側面を有する複数の第1調整壁を外周に設けた第1可動板と、
前記第1可動板に対して回動可能に設けられ、前記第1可動板の第1側面と対向して、前記複数の錠剤案内溝の他方の側面を形成する第2側面を有する複数の第2調整壁を外周に設けた第2可動板と、
前記第1可動板と前記第2可動板を相対的に回転させる可動板移動機構と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の錠剤カセット。
【請求項3】
前記可動板移動機構は、
前記第1可動板に設けた第1調整孔及び第2調整孔と、
前記第2可動板に設け、前記第1調整孔と交差する第3調整孔及び前記第2調整孔と交差する第4調整孔と、
前記第1調整孔と前記第3調整孔に嵌合する第1調整ピンと、前記第2調整孔と前記第4調整孔に嵌合する第2調整ピンとを備えた操作部材と
からなることを特徴とする請求項2に記載の錠剤カセット。

【図4】
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【図6】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−254830(P2012−254830A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−155600(P2012−155600)
【出願日】平成24年7月11日(2012.7.11)
【分割の表示】特願2012−531160(P2012−531160)の分割
【原出願日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【出願人】(592246705)株式会社湯山製作所 (202)
【Fターム(参考)】