説明

錠剤及びカプレットのためのフィルムコーティング

【課題】錠剤又はカプレットなどの固体投与形態に施すための新規なコーティング組成物を提供する。
【解決手段】コーティング組成物の重量を規準として、0〜約85重量%のフィルム形成剤、約10〜約90重量%の接着増進剤、及び約5〜約50重量%の滑剤を含んでなる組成物。該組成物でコートされた固体投与形態、及び前記コーティング組成物を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、錠剤又はカプレットなどの固体投与形態への用途のための新規なコーティング組成物、該組成物でコートされた固体投与形態、及び前記コーティング組成物を製造する方法に関する。
【0002】
EP−A−0891180は、カプセル内にカプレットを包み込む方法であって、カプレットがカプセルシェルに包み込まれる方法を記載している。不法行為防止固体投与形態を得るために、カプセルシェルの中に包まれるカプレットは、カプレット加工にとって許容できるコーティングでコートされている。EP−A−0891180に記載のように、前記コーティングは、セラセフェート、ポリビニルアセテートフタレート、メタクリル酸ポリマー、ハイプロメロースフタレート、ヒドロキシアルキルメチルセルロースフタレート又はそれらの混合物からなる群から選択される材料から選択される。
【0003】
そのようなコーティングでコートされた後、そのカプレットは、通常、振動フィード上に送入され、カプセルシェル部材の中に充填され、そしてカプセルに包まれた投与形態が乾燥されてカプセル剤が得られる。
【0004】
しかしながら、上記のようにして製造された仕上がりカプセル剤に関して本発明によって行われた幾つかの試験では、前記カプセル剤を得た後、シェル部材が外れて、離れ離れになった無傷のシェル部材とカプレットが積もっていることが見出された。
【0005】
前記カプセル剤を流通させた後の権限のない者による前記カプセル剤中に含有されているカプレットのいかなる入れ換えも避けるために、これは防がれなければならない。
従って、本発明の目的は、シェル部材及び/又はカプレットを破壊することなしにはそのシェル部材から容易に離れ離れになることがない不法行為防止形態にあるカプセル剤をもたらすコーティング組成物を提供することである。
【0006】
本発明の別の目的は、コーティング組成物であって、前記コーティング組成物でコートされたカプレット又は錠剤などの固体投与形態の、例えば、カプセル製造プロセスにおいて使用される振動フィード上への送入を改善するコーティング組成物を提供することである。
【0007】
本発明の更に別の目的は、カプレット又は錠剤などの固体投与形態を前記コーティング組成物でコートする方法を提供することである。
本発明の更に別の目的は、カプレットを不法行為防止形態のカプセル剤に包み込む方法を提供することである。
【0008】
第1の側面によれば、本発明は、コーティング組成物であって、該コーティング組成物の重量を基準として、0〜約85重量%の量のフィルム形成剤、約10〜約90重量%の量の接着増進剤、及び約5〜約50重量%の量の滑剤を含んでなる組成物を提供する。
【0009】
第2の側面によれば、本発明は、コーティング組成物でコートされた固体投与形態であって、該コーティング組成物が、該コーティング組成物の重量を基準として、0〜約85重量%の量のフィルム形成剤、約10〜約90重量%の量の接着増進剤、及び約5〜約50重量%の量の滑剤を含んでなる固体投与形態を提供する。
【0010】
第3の側面によれば、本発明は、コーティング組成物を製造する方法であって、該コー
ティング組成物の重量を基準として、0〜約85重量%の量のフィルム形成剤、約10〜約90重量%の量の接着増進剤、及び約5〜約50重量%の量の滑剤を混合することを含んでなる方法を提供する。
【0011】
第4の側面によれば、本発明は、固体投与形態を製造する方法であって、固体投与形態コアをコーティング組成物でコートすることを含んでなり、該コーティング組成物が、該コーティング組成物の重量を基準として、0〜約85重量%の量のフィルム形成剤、約10〜約90重量%の量の接着増進剤、及び約5〜約50重量%の量の滑剤を含んでなる方法を提供する。
【0012】
第1側面の好ましい態様において、前記コーティング組成物は、該コーティング組成物の重量を基準として、約0〜約40重量%の量のフィルム形成剤、約35〜約80重量%の量の接着増進剤、及び約5〜約25重量%の量の滑剤を含んでなる。
【0013】
第1側面の特に好ましい態様において、前記コーティング組成物は、該コーティング組成物の重量を基準として、約20重量%の量のフィルム形成剤、約60重量%の量の接着増進剤、及び約20重量%の量の滑剤を含んでなる。
【0014】
第1の側面の別の特に好ましい態様において、前記コーティング組成物は、該コーティング組成物の重量を基準として、約30重量%の量のフィルム形成剤、約50重量%の量の接着増進剤、及び約20重量%の量の滑剤を含んでなる。
【0015】
第1側面の別の特に好ましい態様において、前記コーティング組成物は、該コーティング組成物の重量を基準として、約80重量%の量の接着増進剤、及び約20重量%の量の滑剤を含んでなる。
【0016】
本発明の第1側面のコーティング組成物に組み込むのに適する前記フィルム形成剤の例には、セルロースフタレートアセテート、微結晶性セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸塩、アラビアガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びメチルセルロースが含まれる。
【0017】
本発明の第1側面に従って使用される好ましいフィルム形成剤は、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アラビアガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びメチルセルロースであり、より好ましいのは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0018】
本発明の第1側面のコーティング組成物に組み込むのに適する前記接着増進剤の例には、デキストロース、ソルビトール、マンニトール、スクロース、ポリビニルピロリドン、ラクトース、スターチ、スターチグリコール酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース及びマルトデキストリン類が含まれる。
【0019】
本発明の第1側面のコーティング組成物に組み込むのに適する好ましい接着増進剤は、スクロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース及びマルトデキストリン類であり、より好ましいのは、ヒドロキシプロピルセルロースである。
【0020】
本発明の第1側面のコーティング組成物に組み込むのに適する前記滑剤の例には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、クエン酸トリエチル、グリセロールのモノ、ジ、又はトリアセテート、及び1,2−プロピレングリコールが含まれる。
【0021】
本発明の第1側面のコーティング組成物に組み込むのに適する好ましい滑剤は、ポリエチレングリコールである。
通常、第1側面に従うコーティング組成物は、約40℃又はそれを越えるゲル化点、即ち、転移点に近いゲル化点を有する。
【0022】
本発明の第2側面の、コーティング組成物でコートされた固体投与形態は、通常、本発明のコーティング組成物でコートされるべきカプレット又は錠剤である。
本発明の更なる側面によれば、コーティング組成物を製造する方法であって、該コーティング組成物の重量を基準として、0〜約85重量%の量のフィルム形成剤、約10〜約90重量%の量の接着増進剤、及び約5〜約50重量%の量の滑剤を混合することを含んでなる方法が提供される。
【0023】
本発明の更なる側面によれば、固体投与形態を製造する方法であって、固体投与形態コアをコーティング組成物でコートすることを含んでなり、該コーティング組成物が、該コーティング組成物の重量を基準として、0〜約85重量%の量のフィルム形成剤、約10〜約90重量%の量の接着増進剤、及び約5〜約50重量%の量の滑剤を含んでなる方法が提供される。
【0024】
通常、前記固体投与形態は、カプレット又は錠剤であり、好ましくは、カプレットである。
本発明の第4側面の1つの態様では、前記コーティング組成物でコートされた1又はそれを越えるカプレットは、その後に、カプセル剤を得るために少なくとも1つのカプセル部材の中に充填されることができる。
【0025】
カプレットがその中に包まれるカプセルシェルは、好ましくは、2つの二等分シェル、つまりボディ部分とキャップ部分を含んでなる。2を越える部材を含んでなる他のカプセルシェルも可能である。好ましい態様において、使用されるカプセルシェルは、EP−A−0891180に記載された通りのものである。
【0026】
驚いたことに、本発明に従うコーティング組成物でコートされたカプレットは、それらがその中に充填されたカプセルシェル部材に優れた接着性を示すことが分かった。
特に、実験結果で、本発明に従うコーティング組成物でコートされたカプレットが充填されたカプセル剤は、それらカプレットが、EP−A−0891180に記載されたものなどの先行技術のカプセル剤よりも、カプセルシェル部材への優れた接着性と良好な接着強度を示すというもので、不法行為防止性である。このことは、本明細書の以下の実験部分でも証明される。
【0027】
本発明に従ってコートされたカプレットを使用することにより製造されたカプセル剤からカプセルシェル部材を剥がそうとすると、非常に高いパーセンテージのシェル部材が破れるので、カプセルシェルに傷つけることなくカプセルシェルを引き離すことが可能ではないことが分かった。
【0028】
かくして、更なる側面では、本発明は、コーティング組成物の使用であって、該コーティング組成物の重量を基準として、0〜約85重量%の量のフィルム形成剤、約10〜約90重量%の量の接着増進剤、及び約5〜約50重量%の量の滑剤を含んでなるコーティング組成物を、固体投与形態に施して、前記固体投与形態のカプセルシェルへの接着性を向上させるための使用を提供する。
【0029】
更には、カプセル製造プロセスにおいて使用される振動フィード(典型的には、振動プレート上へのカプレット送入速度は1〜7cm/秒である)上へのカプレットの送入が、
本発明に従って特許請求される該コーティング組成物でコートされたカプレットを使用することにより、大きく改善されることが分かった。
【0030】
カプレットを使用することによりカプセル剤を製造するプロセスの好ましい態様では、更なる工程において、本発明に従って特許請求されるコーティング組成物でコートされたカプレットがカプセルシェル部材の中に充填され、次いで、合わされたカプセルシェル部材が、カプセル剤を得るために冷収縮により処理される。
【0031】
好ましい操作として、EP−A−0891180に記載されたカプセル製造プロセスが使用されることができる。
本発明を更に例示するために、以下の実施例が、限定を意図することなく提示される。
【実施例】
【0032】
実施例1
この最初の実施例では、以下の表1に示す組成を有する異なるコーティング組成物が、Capsugel 707 プラシーボカプレット上にコートされ、コートされたカプレットが得られ
た。これらコートされたカプレットは、振動フィードに送入された(振動プレート上へのカプレット送入速度は1〜7cm/秒)。これらコートされたカプレットの挙動が肉眼で試験され、得られた結果が以下の通りである:
【0033】
【表1】

【0034】
実施例2
安定性保管後の接着結果
この実施例では、標準的なHPMCコーティングで作られた Press-fit ゲルキャップ
(サンプル1)と本発明に従うコーティング組成物で作られた Press-fit ゲルキャップ
(サンプル2)のサンプルが標準的プロセスに従って製造された。
【0035】
【表2】

【0036】
【表3】

【0037】
その後、これらサンプルは、室温条件下及び40℃/75%RHで3カ月間保管され、接着性と崩壊性が測定された。
結論:
・接着性は両方のサンプルについて室温条件で安定である。
・40℃/75%RHでは、HPMCで作られたサンプルについて接着性が低下する一方、本新規なコーティング混合物で作られたサンプルについては安定なままである。
・崩壊性は、全てのサンプルについて等しく委細が一致する。
1.接着性結果:
【0038】
【表4】

【0039】
【表5】

【0040】
2.崩壊性結果:
【0041】
【表6】

【0042】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのカプセルシェル部材を含んでなり、そして、固体投与形態コアを包み込んでいる不法行為防止カプセル剤であって、前記コアが、コーティング組成物であって、該コーティング組成物の重量を基準として、0〜85重量%の量のフィルム形成剤、10〜90重量%の量の接着増進剤、及び5〜50重量%の量の滑剤を含んでなる組成物でコートされているカプセル剤。
【請求項2】
請求項1のカプセル剤であって、該コーティング組成物が、該コーティング組成物の重量を基準として、0〜40重量%の量のフィルム形成剤、35〜80重量%の量の接着増進剤、及び5〜25重量%の量の滑剤を含んでなるカプセル剤。
【請求項3】
請求項1又は2のカプセル剤であって、該コーティング組成物が、該コーティング組成物の重量を基準として、20〜40重量%の量のフィルム形成剤、35〜60重量%の量の接着増進剤、及び20〜25重量%の量の滑剤を含んでなるカプセル剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項のカプセル剤であって、前記フィルム形成剤が、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アラビアガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びメチルセルロースから選択されるカプセル剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項のカプセル剤であって、前記フィルム形成剤がヒドロキシプロピルメチルセルロースであるカプセル剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項のカプセル剤であって、前記接着増進剤が、デキストロース、ソルビトール、マンニトール、スクロース、ポリビニルピロリドン、ラクトース、スターチ、スターチグリコール酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース及びマルトデキストリン類から選択されるカプセル剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項のカプセル剤であって、前記接着増進剤がヒドロキシプロピルセルロースであるカプセル剤。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項のカプセル剤であって、前記滑剤が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、クエン酸トリエチル、グリセロールのモノ、ジ、又はトリアセテート、及び1,2−プロピレングリコールから選択されるカプセル剤。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項のカプセル剤であって、前記滑剤がポリエチレングリコールであるカプセル剤。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項のカプセル剤であって、前記フィルム形成剤がヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、前記接着増進剤がヒドロキシプロピルセルロースであり、そして、前記滑剤がポリエチレングリコールであるカプセル剤。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項のカプセル剤であって、該コーティング組成物の重量を基準として、該フィルム形成剤が40重量%の量のヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、該接着増進剤が40重量%の量のヒドロキシプロピルセルロースであり、そして、該滑剤が20重量%の量のポリエチレングリコールであるカプセル剤。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項のカプセル剤であって、前記固体投与形態がカプレットであるカプセル剤。
【請求項13】
不法行為防止カプセル剤を製造する方法であって、固体投与形態コアをコーティング組成物でコートすることを含んでなり、該コーティング組成物が、該コーティング組成物の重量を基準として、0〜85重量%の量のフィルム形成剤、10〜90重量%の量の接着増進剤、及び5〜50重量%の量の滑剤を含んでなり、該方法が、更に、該コーティング組成物でコートされた該固体投与形態をカプセルシェル部材の中に充填する工程、該合わされたカプセルシェル部材を処理してカプセル剤を得る工程を更に含んでなる方法。
【請求項14】
コーティング組成物の使用であって、該コーティング組成物の重量を基準として、0〜85重量%の量のフィルム形成剤、10〜90重量%の量の接着増進剤、及び5〜50重量%の量の滑剤を含んでなる組成物を、固体投与形態コアに施して、前記コートされた固体投与形態コアで充填された少なくとも1つのカプセルシェルへの前記固体投与形態コアの接着性を向上させるための使用。

【公開番号】特開2011−26337(P2011−26337A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223990(P2010−223990)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【分割の表示】特願2004−527191(P2004−527191)の分割
【原出願日】平成15年7月30日(2003.7.30)
【出願人】(503181266)ワーナー−ランバート カンパニー リミテッド ライアビリティー カンパニー (167)
【Fターム(参考)】