説明

錠剤用分割器

【課題】製造加工をできるだけ簡素化して、簡単且つ安価に製造できるようにする。
【解決手段】錠剤Aが投入される凹部3を有する容器1と、該凹部3に挿脱可能に挿入される押圧体10と、凹部3に投入された錠剤Aの上面に押圧体10の先端部12の端面が当接した状態で、容器1の口部2の先端部に螺合して、押圧体10の基端部11の端面に裏面が当接する蓋体5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤を小片に分割するための錠剤用分割器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の錠剤用分割器としては、例えば錠剤が収容可能な凹部を有する容器と、該容器の口部に螺合する蓋体と、該蓋体の中央部に軸方向に貫設されると共に、容器の凹部に挿脱可能なねじ棒とを備えたものが公知になっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、容器に螺合している蓋体を取り外すと共に、ねじ棒を容器の凹部から引き出す。つぎに錠剤を容器の口部から投入すると、容器の凹部の内壁に錠剤の側壁がガイドされるように、錠剤が略水平に落下して凹部の底部に載置される。この状態で、ねじ棒を回転させると、該ねじ棒の先端部が錠剤の上面を押圧して、錠剤が、例えば二分割される。
【0004】
【特許文献1】特開2003−325641号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の上記錠剤用分割器は、蓋体の中央部にねじ穴を形成すると共に、ねじ棒の周面にねじ溝を形成する必要がある。このため、製造加工に手間が掛かり、その分コスト高にもなる。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされ、製造加工をできるだけ簡素化して、簡単且つ安価に製造できる錠剤用分割器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る錠剤用分割器は、錠剤Aが投入される凹部を有する容器1と、該凹部3に挿脱可能に挿入される押圧体10と、凹部3に投入された錠剤Aの上面に押圧体10の先端部12の端面が当接した状態で、押圧体10を凹部3の底部側に移動できるように、容器10の口部2に螺合する蓋体5とを備えることを特徴とする。
【0008】
この場合、例えば円板状の分割可能な錠剤Aを容器1の凹部3に投入し、押圧体10を容器1の凹部3に挿入し、押圧体10の先端部12の端面を錠剤Aの上面に当接させる。つぎに、蓋体5の裏面が押圧体10の基端部11の端面に当接するまで、蓋体5を容器1の口部2の先端部に螺合させる。そして、蓋体5をさらに締め付ける方向に回転させて、該蓋体5を口部2の基端部11側に移動させると、蓋体5の裏面に当接している押圧体10が軸方向に沿って凹部3の底部側に移動し、錠剤Aの上面が押圧体10の先端部12の端面に圧接されて、錠剤Aが分割される。この際、蓋体5の回転は押圧体10に伝達されることはないので、押圧体10はほとんど回転することなく、鉛直方向に移動するようになり、錠剤Aに対して鉛直方向の力のみが作用し、錠剤Aの表面が潰れることはなく、きれいに分割できる。
【0009】
また本発明によれば、容器1の側面1aの少なくとも下部が透明であるような構成を選択することもできる。
【0010】
この場合、少なくとも容器1の側面1aの下部を透明にすることによって、容器1の凹部3に投入された錠剤Aの状態を目視できると共に、錠剤Aの分割された状態を目視できるので、錠剤Aの状態を目視しつつ、錠剤Aに加える力を加減できるようになり、錠剤Aをきれいに且つ確実に分割できる。なお、前記公報においては、容器内において、錠剤が容器の底部に対して水平に位置固定されているか否かを目視できるような記載事項はなく、錠剤の分割されている状態も目視する記載事項もない。このため、錠剤を分割する際の力加減が難しいと推察される。
【0011】
また本発明によれば、凹部3の直径よりも小径のリング15を、凹部3の底部に内挿するような構成を選択することもできる。
【0012】
この場合、容器1の凹部3の底部にリング15が内挿されることで、錠剤Aが凹部3の端縁部から離間した位置に載置されるようになり、錠剤Aに対して押圧体10から伝達される力が略均一に加えられるようになり、より確実に且つきれいに錠剤Aを分割できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の錠剤用分割器は、容器の口部に螺合する蓋体と、容器の凹部に挿入される押圧体とは別体であるため、従来のようにねじ加工が不要になり、その分製造工程及びコストを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の最良の実施の形態に係る錠剤用分割器について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0015】
本発明に係る錠剤用分割器は、図1に示すように、全体が透明の容器1と、該容器1の口部2に螺合する蓋体5と、容器1の凹部3に挿脱可能な押圧体10と、凹部3の底部に内挿された底板14及びリング15とを備えている。
【0016】
容器1は、有底円筒状を呈しており、その側面1aにおいて、口部2側が底部側よりもやや大きくなるようにテーパが形成されていると共に、このテーパに応じて凹部3の内壁もテーパが形成されている。そして、容器1の材質としては、錠剤Aに近い硬度を有する材質、安全性、吸湿性を有するものが好ましく、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどが選択できる。
【0017】
容器1は、口部2にねじ溝(雄ねじ)2aが形成されており、ねじ溝の深さを大きくすることで、蓋体5の外形を容器1の外形よりも大きくしてもよく、ねじ溝のピッチを変更、例えば小さくすることで、蓋体5の締め付ける力加減を微調整するようにしてもよく、大きくする(例えば4条ねじなど)ことで、少ない動作で錠剤Aを分割できるようにしてもよい。
【0018】
容器1の凹部3の直径は、直径5〜15mm程度の円板状の錠剤Aが1〜7粒投入できる大きさに設定されており、例えば23.41〜〜47.68mmとなっている。凹部3の深さは、押圧体10の長さよりもやや大きく設定されており、錠剤Aを容器1に入れて、押圧体10を凹部3に内挿したとき、押圧体10の基端部11が口部2から少し突出する程度になっている。
【0019】
なお、錠剤Aは、その上面の中心線に沿って割線としての溝が形成されると共に、溝の両側に隆起部が形成され、分割しやすいように構成されている。より詳しくは、分割するための溝が上面に形成される胴部と、該溝を囲むようにして胴部の上面から隆起する第一隆起部と、胴部の下面から中央側が高く隆起する第二隆起部とを備え、該第二隆起部の中心と第一隆起部の2つの頂点とにより力点が生じて分割が可能になる。錠剤Aの厚み寸法、即ち第二隆起部の中心から第一隆起部の頂点の距離は、例えば3.10〜3.45mmである。なお、この数値範囲は、常温において、錠剤Aが成形した後に膨張することを考慮したものである。
【0020】
蓋体5は、円板状の上壁6と、該上壁6の周面から垂設された環状の側壁7とを備えている。そして、側壁7は、その裏面にねじ溝(雌ねじ)7aが形成されており、容器1の口部2の雄ねじ2aに螺着するよう構成されている。なお、蓋体5の外径を容器1の外径よりも大きくすることで、蓋体5の回転操作が容易にできる。
【0021】
押圧体10は、容器1の凹部3に挿脱しやすいように緩やかなテーパが形成されている。押圧体10のテーパと容器1の凹部3のテーパとによって、押圧体10の移動が錠剤Aをうまく分割できる位置で停止するように規制されている。そして、押圧体10の長さは、凹部3の深さよりもやや短い長さを有する有底円筒状で、その開口部(基端部)11の端面が蓋体5の上壁6の裏面に当接し、平坦に形成された先端部12の端面が、底板14の上面に載置されたリング15に当接し、押圧体10の基端部11が容器1の口部2からやや突出し、蓋体5の裏面に当接している。例えば、押圧体10の開口部(基端部)11の外径は、24.57〜50.64mm、先端部12の直径は、23.32〜47.56mm、底面積は、4.26〜17.79cm2になっている。
【0022】
底板14は、円板状の上部14aと、該上部14aの裏面の周縁部に垂設された環状の支持部14bとを有している。使用目的としては、容器1の凹部3の底部から離間した位置に平坦面を設けることを目的としている。その理由としては、容器1を成形する際に生じる凹部3の底部の凹凸を解消して、がたつきをなくすためである。
【0023】
リング15は、容器1の直径よりもやや小さく、例えば内径が17.41〜41.68mmになっている。したがって、リング15の内側に錠剤Aが位置することで、錠剤Aを、錠剤Aの上面に対して略均一に力を加えることのできる位置(凹部3の略中央部)に載置できる。また、リング15の厚さ寸法は、錠剤Aの分割を考慮すると、錠剤Aの厚さ寸法よりも0.1〜0.3mm程度小さくするのが好ましい。
【0024】
つぎに錠剤Aを分割する場合の態様について説明する。まず、図1の状態は、容器1の凹部3の底部に底板14が載置されると共に、該底板14の上部14aの上面にリング15が載置され、さらに、容器1の凹部3に押圧体10が挿入され、リング15の上面に押圧体10の先端部の端面が当接し、容器1の口部2に蓋体5が螺着して、蓋体5の裏面に押圧体10の基端部11の開口端面が当接した状態になっている。この状態から蓋体5を緩める方向に回転させて容器1の口部2から取り外すと共に、押圧体10も容器1の凹部3から引き出す。
【0025】
つぎに複数の錠剤A(図2においては便宜上1錠を図示する)を容器1の凹部3に投入し、容器1の側面1aから離間した位置、即ち各錠剤Aがリング15の内側に位置しているか否か、重ならないように底板14に対して水平に載置されているか否かを視認する。
【0026】
確認後、図2に示すように、容器1の凹部3に押圧体10を挿入し、押圧体10の先端部12を各錠剤Aの上面に当接させる。そして、蓋体5を容器1の口部2に螺合させて、押圧体10の開口部(基端部)11の端面を蓋体5の上壁6の裏面に当接させる。この状態から、図3に示すように、蓋体5を締める方向に少し回転させ、押圧体10を下方に若干移動させ、錠剤Aに対して上側から押圧して、錠剤Aを分割する。この際、蓋体5の回転は押圧体10に伝達されず、押圧体10は回転することなく容器1の底部側に直進移動し、錠剤Aに対して鉛直方向の力が作用し、錠剤Aの表面が回転力によって潰れることなく、きれいに分割できるようになる。
【0027】
また、分割された錠剤Aは、容器1の口部2に蓋体5が螺着しているので、密閉された状態の容器1内部、又は押圧体10の中空部において保管できる。この際、錠剤Aの薬剤が何であるのか、錠剤Aをいつ分割したのかなどを容器1の側面1aに直接記載できるように、例えば梨地加工したマーキングスペースを設けたり、梨地加工したシートを容器1の側面1aに貼着したりするのが好ましい。蓋体5や押圧体10などの部材を装備した状態の容器1全体が軽量且つ小型であるため、錠剤Aを保管した状態で容器1を携帯することもできる。
【0028】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されることなく、発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、適宜、必要に応じて、設計変更や改良等を行うのは自由である。
【0029】
例えば、前記実施形態においては、容器1を有底円筒状としたが、有底角筒状であってもよい。また、容器1全体を透明にしたが、容器1の側面の下部のみを透明にしてもよい。要は、容器1の凹部3に挿入された錠剤Aの状態を目視できればよい。
【0030】
また、前記実施形態の場合、押圧体10として、テーパを有する有底円筒状(外形は台錐状)としたが、テーパが形成されていない丸棒又は角棒(中実体)であってもよい。但し、軽量にすることを考慮すると、有底筒状であることが好ましい。また、蓋体の裏面に当接する部位と、錠剤の上面に当接する部位とを平板で形成すると共に、該両平板の中央部を連結する柱体とで構成する押圧体であってもよい。
【0031】
また、前記実施形態の場合、凹部3の底部に底板14を内挿したが、凹部3の底部が平坦に形成されてあればなくてもよい。
【0032】
また、前記実施形態の場合、上面の中心線に沿って割線としての溝が形成されると共に、溝の両側に隆起部が形成された錠剤Aを使用したが、単に上面の中心線に沿って割線が形成された錠剤であってもよく、割線のない錠剤であってもよい。また、錠剤の形状は限定されるものではなく、角板状、直方体、棒状のものであってもよい。但しこの場合、容器1の凹部3の底部と、押圧体10の先端部の端面とを曲面、例えば図4(a)に示すように、円錐状にしたり、図4(b)に示すように、半球形状にしたりする必要がある(便宜上底板14及びリング15は省略して図示している)。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態に係る錠剤用分割器の断面図。
【図2】図1の錠剤用分割器の凹部に錠剤を投入した状態を示した断面図。
【図3】図1の錠剤用分割器の凹部に投入した錠剤を分割した状態を示した断面図。
【図4】(a)は容器の底部及び押圧体の先端部の端面が円錐状に形成された錠剤用分割器の断面図、(b)は容器の底部及び押圧体の先端部の端面が半球形状に形成された錠剤用分割器の断面図。
【符号の説明】
【0034】
1…容器、1a…側面、2…口部、2a…ねじ溝(雄ねじ)、3…凹部、5…蓋体、6…上壁、7…側壁、7a…ねじ溝(雌ねじ)、10…押圧体、11…開口部(基端部)、12…先端部、14…底板、14a…上部、14b…支持部、15…リング、A…錠剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠剤(A)が投入される凹部(3)を有する容器(1)と、該凹部(3)に挿脱可能に挿入される押圧体(10)と、凹部(3)に投入された錠剤(A)の上面に押圧体(10)の先端部(12)の端面が当接した状態で、押圧体(10)を凹部(3)の底部側に移動できるように、容器(10)の口部(2)に螺合する蓋体(5)とを備えることを特徴とする錠剤用分割器。
【請求項2】
前記容器(1)の側面(1a)の少なくとも下部が透明であることを特徴とする請求項1に記載の錠剤用分割器。
【請求項3】
前記凹部(3)の直径よりも小径のリング(15)を、凹部(3)の底部に内挿することを特徴とする請求項1又は2に記載の錠剤用分割器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−12014(P2010−12014A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−174381(P2008−174381)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(000206956)大塚製薬株式会社 (230)
【Fターム(参考)】