説明

錨収納装置

【課題】デッキ水線面がより低い水線面より狭くなっている船舶においても、投揚錨時に錨が外板に接触することが防止された錨収納装置を提供する。
【解決手段】船体の側方に張出して設置され錨103が載置され得る大きさの上面を有するアンカー台1と、アンカー台1の上面の中央部に配置されたホースパイプと、ホースパイプの延長上となる位置に上甲板102上に配置された制鎖器3とを備え、錨103に取付けられた錨鎖105が、ホースパイプ内を通り、制鎖器3内も通って、上甲板102上に配置された揚錨機106に至っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶において引揚げた錨(アンカー)を収納する錨収納装置に関し、特に、デッキ水線面がより低い水線面より狭くなっている船舶に好適な錨収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1及び特許文献2に記載されているように、船舶においては、船首部に揚錨機(ウインドラス)等、揚錨作業や係船作業のための機器類が配置されている。錨(アンカー) は、錨鎖(アンカーチェーン)の先端に連結され、船首甲板上の揚錨機により引揚げられる。錨鎖は、チェーンパイプと、船首フレアの外側に設けたベルマウスを通過するようになっている。
【0003】
船舶の係留時には、錨鎖を延ばし、錨を海底に降ろす。航行時には、錨鎖を揚錨機で巻き上げて錨鎖庫(チェーンロッカ)に格納するとともに、錨をベルマウスに引揚げている。揚錨時には、錨は、船首フレアの外側の水面(満載喫水線)より上に引揚げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−132492号公報
【特許文献2】特開2008−149819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述のようにベルマウスに引揚げるようにした錨は、デッキ水線面がより低い水線面より広くなっている従来の船舶においては問題を生じない。
【0006】
しかし、このような錨は、デッキ水線面をより低い水線面より狭くして、波浪抵抗の低減を図っている近年の船舶においては、投揚錨時に、船舶の外板に接触してしまうという問題を生ずる。
【0007】
そこで、本発明は、前述の実情に鑑みて提案されるものであって、デッキ水線面がより低い水線面より狭くなっている船舶においても、投揚錨時に錨が外板に接触することが防止された錨収納装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の課題を解決し、前記目的を達成するため、本発明に係る錨収納装置は、以下の構成を有するものである。
【0009】
〔構成1〕
船体の側方に張出して設置され基端側が上甲板と同じ高さ位置とされ先端側が上甲板より低い位置となっている傾斜した平坦面であり錨が載置され得る大きさの上面を有するアンカー台と、アンカー台の上面の中央部にアンカー台の基端側から先端側に向けて配置されたホースパイプと、ホースパイプの延長上となる位置となされて上甲板上に配置された制鎖器とを備え、錨に取付けられた錨鎖が、ホースパイプ内を通り、制鎖器内も通って、上甲板上に配置された揚錨機に至っていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る錨収納装置においては、構成1を有することにより、船体の側方に張出して設置され基端側が上甲板と同じ高さ位置とされ先端側が上甲板より低い位置となっている傾斜した平坦面であり錨が載置され得る大きさの上面を有するアンカー台を備えるので、投揚錨時の錨の移動軌跡が、船体の外板から離れる。
【0011】
すなわち、本発明は、デッキ水線面がより低い水線面より狭くなっている船舶においても、投揚錨時に錨が外板に接触することが防止された錨収納装置を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る錨収納装置が装着される船舶の形状を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る錨収納装置の構成を示す側面図である。
【図3】本発明に係る錨収納装置の構成を示す平面図である。
【図4】本発明に係る錨収納装置の構成を示す正面図である。
【図5】本発明に係る錨収納装置における錨の移動軌跡を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は、本発明に係る錨収納装置が装着される船舶の形状を示す斜視図である。
【0015】
この実施形態において、本発明に係る錨収納装置が装着される船舶は、図1に示すように、デッキ水線面Aをより低い水線面Bより幅を狭くして、波浪抵抗の低減を図っている船舶である。すなわち、この船舶においては、デッキよりも下方部分の船体の幅が広がっており、デッキ近傍において、外板101は、船舶の中心側に向けて傾斜した状態となっている。
【0016】
図2は、本発明に係る錨収納装置の構成を示す側面図である。
【0017】
本発明に係る錨収納装置は、図1及び図2に示すように、船体の側方に張出して設置されたアンカー台1を有している。このアンカー台1は、例えば、鋼板を溶接して構成されており、船体の外板101に溶接により取付けられている。このアンカー台1は、基端側の上面が上甲板102と同じ高さ位置とされ、先端側が上甲板102より低い位置となっている。このアンカー台1の上面は、傾斜した平坦面となっている。
【0018】
図3は、本発明に係る錨収納装置の構成を示す平面図である。
【0019】
アンカー台1の上面は、図3に示すように、錨(アンカー)103が載置され得る大きさとなっている。錨103は、海中において下側となる先端側を船体の外側に向けた状態で、アンカー台1の上面に載置される。
【0020】
図4は、本発明に係る錨収納装置の構成を示す正面図である。
【0021】
アンカー台1の上面の中央部には、図1乃至図4に示すように、ホースパイプ(錨鎖管)2が配置されている。このホースパイプ2は、例えば、鋼管からなり、アンカー台1に対して、ブラケットにより接続されている。ホースパイプ2は、アンカー台1の基端側から先端側に向けて配置されている。ホースパイプ2は、上甲板102よりも上に延在された外板101の上縁側であるブルワーク104に、基端側を貫通させて配置されている。上甲板102上には、ホースパイプ2の延長上となる位置に、制鎖器(デッキ上ホースパイプ)3が配置されている。
【0022】
錨103に取付けられた錨鎖(アンカーチェーン)105は、ホースパイプ2内を通り、制鎖器3内も通って、揚錨機(ウインドラス)106に至っている。揚錨機106は、上甲板102上に配置されている。
【0023】
図5は、本発明に係る錨収納装置における錨の移動軌跡を示す斜視図である。
【0024】
この錨収納装置においては、揚錨時には、揚錨機106により錨鎖105を巻き取ると、図5に示すように、錨103は、矢印Uで示すように、海中から引揚げられて、アンカー台1上に載置される。そして、投錨時には、揚錨機106から錨鎖105を送り出すと、錨103は、自重によってアンカー台1上から滑り落ち、図5中矢印Dで示すように、海面に向かって降下し、海中に没する。
【0025】
このような揚錨及び投錨において、この錨収納装置においては、アンカー台1が船体の側方に張出して設置されているため、錨103が船舶の外板101に接触することがない。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、船舶において引揚げた錨(アンカー)を収納する錨収納装置に適用され、特に、デッキ水線面がより低い水線面より狭くなっている船舶に好適な錨収納装置に適用される。
【符号の説明】
【0027】
1 アンカー台
2 ホースパイプ(錨鎖管)
3 制鎖器
101 外板
102 上甲板
103 錨(アンカー)
105 錨鎖(アンカーチェーン)
106 揚錨機(ウインドラス)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体の側方に張出して設置され、基端側が上甲板と同じ高さ位置とされ先端側が前記上甲板より低い位置となっている傾斜した平坦面であり錨が載置され得る大きさの上面を有するアンカー台と、
前記アンカー台の上面の中央部に、アンカー台の基端側から先端側に向けて配置されたホースパイプと、
前記ホースパイプの延長上となる位置となされて、前記上甲板上に配置された制鎖器と
を備え、
前記錨に取付けられた錨鎖が、前記ホースパイプ内を通り、前記制鎖器内も通って、前記上甲板上に配置された揚錨機に至っている
ことを特徴とする錨収納装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−91372(P2013−91372A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233639(P2011−233639)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(502422351)株式会社アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド (159)