説明

錯体、高分子錯体、高分子錯体複合体、及びレドックス触媒

【課題】 過酸化水素を水と酸素とに分解できる触媒能を有し、触媒の分離回収性、材料性、複合性などに優れる高分子錯体又は高分子錯体複合体を形成するための錯体を提供すること。
【解決手段】 本発明に係る錯体は、1個以上の遷移金属原子、遷移金属原子に配位結合する配位原子を3個以上含む多座配位子及び前記多座配位子に結合した1個以上のビニル基を含む置換基を備え、更に−(OCHCH(R))ORで表される官能基(Rは水素原子、アルキル基又はアリール基)等を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は錯体、該錯体を重合又は共重合して得られる高分子錯体、該錯体をカーボンブラックの存在下で重合又は共重合して得られる高分子錯体複合体、及び該錯体、該高分子錯体、該錯体複合体を用いたレドックス触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子錯体は、「高分子新素材 One Point 25 高分子錯体」(初版1刷、1990年、戸嶋直樹、金子正夫、関根光雄、共立出版)の7〜10頁に記載されるように、低分子錯体に比べ、材料性、複合性、高機能化、多様性などに優れた特徴を持っており、有望な機能性材料である。また、高分子錯体は、1つの錯体分子内に2つ以上の金属を有する多核錯体を容易に形成できるため、複数ある金属サイト間の相互作用に基づいた特異で多様な反応性に由来する、ユニークな触媒となり得る化合物である。
【0003】
とりわけ、このような多核錯体は、レドックス触媒等の電子移動を伴う化学反応に係る触媒の用途に有用である(例えば、非特許文献1参照)。その一つの例として、低分子の2核錯体では、フリーラジカル(ヒドロキシルラジカル、ヒドロペルオキシラジカル、等)の発生を抑制しつつ、過酸化水素を水と酸素とに分解する触媒(過酸化水素分解触媒)としてマンガン2核錯体が知られている(例えば、非特許文献2参照)。また、金属を含有するタンパク質を熱処理して得られる触媒の報告もある(例えば、特許文献1参照)。
【非特許文献1】小柳津研一、湯浅 真、表面 2003、41(3)、22.
【非特許文献2】A.E.Boelrijk and G.C.Dismukes Inorg.Chem.2000、39、3020.
【特許文献1】特開2004−217507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献2で開示されている、低分子マンガン2核錯体を過酸化水素分解触媒として溶媒が共存する反応系で用いた場合、溶媒によっては触媒が溶解するという問題点があり、反応系からの触媒分離回収や支持担体への複合化の観点から、溶媒に不溶な不均一系触媒の開発が望まれていた。
【0005】
また、金属を含有するたんぱく質を熱処理して得られる触媒は、高価であるばかりか、生体物質であることから保存安定性も悪く、これを用いた触媒は製造再現性が困難であった。
【0006】
本発明の目的は、過酸化水素を水と酸素に分解できる触媒能を有し、不均一系触媒に適用できる錯体、これを用いた高分子錯体及び高分子錯体複合体、並びにこれらを用いたレドックス触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の(i)〜(iv)の条件を満たす錯体を提供する。
(i)1個以上の遷移金属原子を有すること
(ii)前記遷移金属原子に配位結合する配位原子を3個以上含む多座配位子を有すること
(iii)前記多座配位子に結合した1個以上のビニル基を含む置換基を有すること
(iv)有機酸塩構造、アミン塩構造、アンモニウム塩構造、ピリジニウム塩構造、イミダゾリウム塩構造、水酸基構造、エーテル構造及び酸アミド構造の何れかの構造を有すること
【0008】
本発明の錯体は、ビニル基と上記(iv)に示す構造(親水性基)とを併せ持つものであり、錯体モノマーとして機能する。この錯体を重合又は共重合することにより、触媒の分離回収性、材料性、複合性などに優れる微粒子状の高分子錯体及び高分子錯体複合体を得ることができる。
【0009】
上記錯体は、上記条件(iv)として、として、下記一般式(1−1)、(1−2)、(1−3)、(1−4)、(1−5)、(1−6)、(1−7)、(1−8)、(1−9)で表される官能基の少なくとも1つを有するものが好適である。
【0010】
【化1】

【0011】
なお、上記式中、nは1〜500の整数、Eは、プロトン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン又はアンモニウムイオン、Rは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜50のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜50のアリール基、Xは、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、メタンスルホン酸イオン又はトリフルオロメタンスルホン酸イオン、をそれぞれ示す。
【0012】
この錯体は、水などの溶媒中で良好な分散性を示し、乳化重合などの微粒子分散系ラジカル重合法が適用可能であり、該重合法により微粒子状の高分子錯体や高分子錯体複合体へと誘導することができる。また、得られた微粒子状の高分子錯体や高分子錯体複合体は、表面積が大きく、触媒としての用途に最適である。また、錯体、高分子錯体及び高分子錯体複合体は、複数の金属中心を有するものとすることができ、不均一系レドックス触媒に適用可能である。
【0013】
上記錯体は、下記一般式(2)で表される構造を有するものが好適である。
(L01(M)(L02 (2)
【0014】
なお、上記式(2)中、Mは遷移金属原子、mは1〜20の整数、pは1〜5の整数、qは1〜20の整数、をそれぞれ示す。L01は、窒素配位原子を含む3個以上の配位原子を有する多座配位子であり、ビニル基を含む置換基又は下記一般式(1−1)
−(OCHCH(R))OR (1−1)
で表される官能基を含む置換基(nは1〜500の整数、Rは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜50のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜50のアリール基、をそれぞれ示す。)を備える。L02は、配位子又は対イオンであり、ビニル基を含む置換基又は上記一般式(1−1)で表される官能基を含む置換基を備える。但し、L01及びL02における置換基の組合せは、ビニル基を含む置換基及び上記一般式(1−1)で示される官能基の組合せでなければならない。
【0015】
錯体が一般式(1−1)で表される官能基を有することにより、極性溶媒中、特に水を含む溶媒中での分散能および/又は乳化能に優れるようになる。したがって、例えば、錯体とコモノマーと共重合して高分子錯体とするときに、優れた乳化重合性を発揮する。
【0016】
触媒に適用した場合の活性の点から、錯体において、以下の(i)の構造が生じていることが好ましく、(i)と(ii)の構造を併せ持つことがさらに好ましい。
(i)2個以上の遷移金属原子を有し、当該2個以上の遷移金属原子のうち2個の遷移金属原子が同一の配位原子と配位結合している構造が少なくとも1つ存在する
(ii)2個以上の遷移金属原子を有し、当該2個以上の遷移金属原子のうち一の遷移金属原子に配位結合した配位原子と、当該2個以上の遷移金属原子のうち当該一の遷移金属原子以外の遷移金属原子に配位結合した配位原子とが、1〜4個の共有結合を介して結合している構造が少なくとも1つ存在する
【0017】
一般式(2)のL01が下記一般式(3)で表される構造を有することが好ましく、下記一般式(3a)又は(3b)で表される構造を有することがより好ましい。このような構造を有する錯体から得られる高分子錯体や高分子錯体複合体は、活性が特に優れる不均一系触媒となる。
【0018】
【化2】

【0019】
上記式(3)中、Ar、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に、ビニル基を有していてもよい含窒素芳香族複素環基、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、ビニル基を有していてもよい2価の基、Z及びZは、それぞれ独立に窒素原子又は3価の基、をそれぞれ示す。但し、Ar、Ar、Ar、Ar、R、R、R、R及びRの少なくとも1つはビニル基を有する。
【0020】
【化3】

【0021】
【化4】

【0022】
上記式(3a)、(3b)中、Y、Y、Y及びYは、それぞれ独立に水素原子、ビニル基を有していてもよい炭素数1〜50のアルキル基又はビニル基を有していてもよい炭素数2〜60の芳香族基を示す。但し、Y、Y、Y及びYのうち少なくとも1つは、ビニル基を有する炭素数1〜50のアルキル基、又はビニル基を有する炭素数2〜60の芳香族基である。
【0023】
一般式(2)のL02が下記一般式(4)で表される構造を有することが好ましい。
01−(OCHCH(R))OR (4)
【0024】
なお、上記式(4)中、Rは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜50のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜50のアリール基、G01は下記式(4−1)、(4−2)、(4−3)、(4−4)のいずれかで表される官能基を含む置換基、をそれぞれ示す。
【0025】
【化5】

【0026】
上記式(4−4)中、Rは上記一般式(4)のRと同義である。
【0027】
一般式(4)で表される化合物は、本発明の触媒における対イオンとして機能し得る化合物であり、このような構造を有する錯体は、極性溶媒中、特に水を含む溶媒中での分散能及び/又は乳化能が特に優れるようになる。したがって、例えば、錯体とコモノマーと共重合して高分子錯体とするときに、優れた乳化重合性を発揮する。
【0028】
遷移金属原子は第一遷移元素系列の遷移金属原子であることが好ましい。このような中心金属を有する錯体は、レドックス触媒として好適であり、過酸化水素を水と酸素に分解する触媒能に特に優れる。
【0029】
本発明の錯体を重合させることにより、或いは本発明の錯体とコモノマーとを共重合させることにより、高分子錯体を得ることができる。この高分子錯体は、過酸化水素を水と酸素に分解できる触媒能を有しており、不均一系触媒に適用可能である。
【0030】
上記コモノマーとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド及びクロロアクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。このようなコモノマーを用いることで、高分子錯体の側鎖を介した分子間及び/又は分子内での相互作用の効果により、特に安定性の優れる高分子錯体を得ることができる。
【0031】
また、上記コモノマーとしては、アクリル酸、アクリル酸塩、メタクリル酸、メタクリル酸塩、ビニルホスホン酸、ビニルホスホン酸塩、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸塩、スチレンスルホン酸エステル、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸塩、及び、ビニルスルホン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。上記スチレンスルホン酸エステル、ビニルスルホン酸エステルとしては、加水分解により容易にスルホン酸部位を与えるものが好ましい。このような親水性コモノマーを用いることで、極性溶媒中、特に水を含む溶媒中で良好な分散性を示し、該溶媒中でレドックス触媒として用いた際の触媒活性に優れ、特に過酸化水素を水と酸素に分解する触媒能に優れる高分子錯体を得ることができる。
【0032】
上記高分子錯体は、粒子状を成しており、平均粒径が10nm〜1μmであることが好ましい。このような高分子錯体は、例えば上記錯体の乳化重合により得ることができる。微粒径の高分子錯体は、表面積が大きいため触媒として適用するのに非常に適している。
【0033】
上記高分子錯体は、熱重量−マススペクトルにおいて、分子イオンの質量数をm、当該分子イオンの電荷数をZとしたときに、m/Zが53又は67のいずれかである分子イオンピークを示すことが好ましい。このような高分子錯体は、ポリマー鎖中に、ポリアクリロニトリル型構造又はポリメタクリロニトリル型構造が形成されていると考えられ、側鎖を介した分子間及び/又は分子内での相互作用の効果により、安定性に特に優れる高分子錯体となる。
【0034】
また上記高分子錯体は、赤外分光法において、2200〜2300cm−1の領域に吸収極大を有することが好ましい。このような高分子錯体は、ニトリル基を含有しており、ニトリル基を介した分子間及び/又は分子内での相互作用の効果により、熱安定性に特に優れる高分子錯体となる。
【0035】
さらに上記高分子錯体は、元素組成において、上記遷移金属原子の含有量が0.01重量%〜8重量%であることが好ましい。このような高分子錯体であれば、レドックス触媒として用いた際の触媒活性に優れ、特に過酸化水素を水と酸素に分解する触媒能に優れたものとなる。
【0036】
本発明の錯体をカーボンブラックの存在下で重合させることにより、或いは、本発明の錯体とコモノマーとをカーボンブラックの存在下で共重合させることにより、高分子錯体複合体を得ることができる。この高分子錯体複合体は、レドックス触媒として好適であり、過酸化水素を水と酸素に分解できる触媒能を有しており、不均一系触媒に適用可能である。カーボンブラックの存在下で重合させることにより、カーボンブラックが非存在の場合に比べて、得られる高分子錯体の粒径を小さくすることができ、触媒能が更に向上する。高分子錯体とカーボンブラックを複合させることによって、得られる高分子錯体複合体に電気伝導性が付与されるため、高分子錯体複合体を電池電極の劣化防止剤等として用い易くなる。
【0037】
上記コモノマーとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド及びクロロアクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。このようなコモノマーを用いることで、高分子錯体複合体の側鎖を介した分子間及び/又は分子内での相互作用の効果により、特に安定性の優れる高分子錯体複合体を得ることができる。
【0038】
また、上記コモノマーとしては、アクリル酸、アクリル酸塩、メタクリル酸、メタクリル酸塩、ビニルホスホン酸、ビニルホスホン酸塩、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸塩、スチレンスルホン酸エステル、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸塩、及び、ビニルスルホン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。上記スチレンスルホン酸エステル、ビニルスルホン酸エステルとしては、加水分解により容易にスルホン酸部位を与えるものが好ましい。このような親水性コモノマーを用いることで、極性溶媒中、特に水を含む溶媒中で良好な分散性を示し、該溶媒中でレドックス触媒として用いた際の触媒活性に優れ、特に過酸化水素を水と酸素に分解する触媒能に優れる高分子錯体複合体を得ることができる。
【0039】
上記高分子錯体複合体は、粒子状を成しており、平均粒径が10nm〜1μmであることが好ましい。このような高分子錯体複合体は、例えば上記錯体の乳化重合により得ることができる。微粒径の高分子錯体複合体は、表面積が大きいため触媒として適用するのに非常に適している。
【0040】
また上記高分子錯体複合体は、熱重量−マススペクトルにおいて、分子イオンの質量数をm、当該分子イオンの電荷数をZとしたときに、m/Zが53又は67のいずれかである分子イオンピークを示すことが好ましい。このような高分子錯体複合体は、ポリマー鎖中に、ポリアクリロニトリル型構造又はポリメタクリロニトリル型構造が形成されていると考えられ、側鎖を介した分子間及び/又は分子内での相互作用の効果により、安定性に特に優れる高分子錯体複合体となる。
【0041】
さらに上記高分子錯体複合体は、元素組成において、上記遷移金属原子の含有量が0.01重量%〜8重量%であることが好ましい。このような高分子錯体複合体であれば、レドックス触媒として用いた際の触媒活性に優れ、特に過酸化水素を水と酸素に分解する触媒能に優れたものとなる。
【0042】
上記錯体、上記高分子錯体、及び、上記高分子錯体複合体は、固体電子スピン共鳴スペクトルにおいて、下記数式(I)によって定義されるgTOPが1.8000〜2.2400の範囲にあることが好ましい。
【0043】
gTOP=hν/βH (I)
【0044】
なお、上記式(I)中、hはプランク定数、νは測定電磁波の共鳴周波数、βはボーア磁子、Hは観測されるESR信号が極大を示す磁場強度をそれぞれ示す。]
【0045】
gTOPが上記範囲にある上記錯体、上記高分子錯体、及び、上記高分子錯体変性物は、マンガン原子を含み、かつ、好ましい金属中心構造を有する。
【0046】
上述した錯体、高分子錯体又は高分子錯体複合体は触媒に適用可能である。すなわち、上述した錯体、高分子錯体又は高分子錯体複合体を含有するレドックス触媒が提供される。
【発明の効果】
【0047】
本発明の錯体、高分子錯体、及び高分子錯体複合体は、レドックス触媒として有用である。特に本発明の高分子錯体及び高分子錯体複合体は、過酸化水素分解触媒として用いた場合、過酸化水素を水と酸素に分解することが可能であるのみならず、複数の金属中心を有する微粒子状の高分子錯体及び高分子錯体複合体とすることも可能であり、従来の多核錯体触媒と異なり溶媒に不溶な不均一系触媒であるため、反応系からの触媒分離回収や材料への複合化が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明するが、本発明は下記実施形態に限定されるものではない。
【0049】
(錯体)
本実施形態の錯体(錯体モノマー)は1個以上の遷移金属原子を有する。その結果、フリーラジカル(ヒドロキシルラジカル、ヒドロペルオキシラジカル、等)の発生を抑制しつつ過酸化水素を水と酸素とに分解する触媒活性を、錯体、錯体の重合又は共重合によって得られる高分子錯体及び高分子錯体複合体に付与することができる。なお、錯体が有する遷移金属原子は無電荷であっても、荷電しているイオンでもよい。また、錯体中に遷移金属原子が複数含まれる場合、複数の遷移金属原子は同一であっても異なっていてもよい。
【0050】
錯体中に含まれる遷移金属原子の具体例としては、例えば、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛からなる群から選ばれる第一遷移元素系列の遷移金属原子、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、アクチニウム、トリウム、プロトアクチニウム、ウランなどを例示することができる。
【0051】
上述の遷移金属原子のうち、第一遷移元素系列の遷移金属原子、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金を用いることが好ましく、第一遷移元素系列の遷移金属原子、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、ランタン、セリウム、サマリウム、ユウロピウム、イッテルビウム、ルテチウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金を用いることがより好ましく、第一遷移元素系列の遷移金属原子を用いることが更に好ましく、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅を用いることが特に好ましく、これらの中でも、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅を用いることが最も好ましい。
【0052】
錯体に含まれる配位子の少なくとも一つは多座配位子である。配位子が多座配位子であると、多座配位子のキレート効果により安定な錯体を形成することが可能である。多座配位子において遷移金属原子に配位結合する配位原子の数は3個以上であり、3個以上50個以下であることが好ましく、4個以上25個以下であることが更に好ましく、6個以上20個以下であることが特に好ましい。
【0053】
錯体は、多座配位子に結合した1個以上のビニル基を含む置換基を有する。ビニル基の重合反応性を利用して錯体を重合させたり、あるいは錯体とコモノマーとを共重合させたりして、高分子化することにより、不均一系錯体触媒へと容易に誘導することができる。
【0054】
錯体に含まれるビニル基の数は、合成上の観点より、1以上20以下であることが好ましく、2以上10以下であることが更に好ましく、4以上8以下であることが特に好ましい。
【0055】
ビニル基を含む置換基は、ビニル基、スチリル基、ビニルベンジル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基であることが好ましく、ビニル基、スチリル基、ビニルベンジル基であることが更に好ましい。
【0056】
錯体は、有機酸塩構造、アミン塩構造、アンモニウム塩構造、ピリジニウム塩構造、イミダゾリウム塩構造、水酸基構造、エーテル構造及び酸アミド構造の何れかの構造を有し、これらの構造として、以下の一般式(1−1)、(1−2)、(1−3)、(1−4)、(1−5)、(1−6)、(1−7)、(1−8)及び(1−9)で示される官能基の何れかを有することが好ましい。錯体がこのような親水性官能基を併せ持つことで、極性溶媒中で錯体を分散させることが可能となり、このような反応系で錯体の重合を行うことによって微粒子状の高分子錯体及び高分子錯体複合体を得ることが可能となる。錯体が有する官能基としては、下記一般式(1−1)〜(1−9)の中では、一般式(1−1)、(1−2)、(1−3)、(1−4)、(1−5)、(1−6)で示されるものが好ましく、一般式(1−1)、(1−3)、(1−4)、(1−5)で示されるものが更に好ましく、一般式(1−1)で示されるものが特に好ましい。
【0057】
【化6】

【0058】
一般式(1−1)、(1−2)、(1−3)、(1−4)、(1−5)、(1−6)、(1−7)、(1−8)及び(1−9)中、nは1以上500以下の整数を示す。Eは、プロトン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン又はアンモニウムイオンを示す。Rは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜50のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜50のアリール基を示す。Xは、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、メタンスルホン酸イオン又はトリフルオロメタンスルホン酸イオンを示す。
【0059】
錯体は下記一般式(2)で表される構造を有することが好ましい。
(L01(M)(L02 (2)
【0060】
なお、一般式(2)中、mは1以上20以下の整数、pは1以上5以下の整数、qは1以上20以下の整数を示す。Mは遷移金属原子を示し、Mが複数存在する場合、それらは互いに同じ元素であってもよく、異なる元素であってもよい。L01は、ビニル基を含む置換基又は一般式(1−1)式で示される官能基を含む置換基を有し、且つ窒素配位原子を含む3個以上の配位原子を有する多座配位子を示し、L01が複数存在する場合、それらは互いに同じ多座配位子であってもよく、互いに異なる多座配位子であってもよい。L02は、ビニル基を含む置換基又は一般式(1−1)式で示される官能基を含む置換基を有する、配位子又は対イオンを示し、L02が複数存在する場合、それらは互いに同じ配位子又は対イオンであってもよく、互いに異なる配位子又は対イオンであってもよい。なお、L01とL02上の置換基の組合せは、ビニル基を含む置換基と上記(1−1)式で示される官能基を併せ持つ組合せでなければならない。
【0061】
すなわち、一般式(2)中、L01及びL02は、それぞれビニル基を含む置換基又は一般式(1−1)で示される官能基を含む置換基のどちらか一種類を有し、且つ、これら置換基の組合せは、一般式(2)で示される錯体が、ビニル基を含む置換基と一般式(1−1)で示される官能基を含む置換基とを併せ持つ組合せでなければならならない。特にL01がビニル基を含む置換基を有し、L02が一般式(1−1)式で示される官能基を含む置換基を有する組合せが好ましい。このような組合せにしておくことで配位子原料及び錯体の合成が容易となる。
【0062】
一般式(2)のL01又はL02が有するビニル基の総数は、合成上の観点より、1以上20以下であることが好ましく、2以上10以下であることが更に好ましく、4以上8以下であることが特に好ましい。また、L01又はL02が有するビニル基を含む置換基は、ビニル基、スチリル基、ビニルベンジル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基であることが好ましく、ビニル基、スチリル基、ビニルベンジル基であることが更に好ましい。
【0063】
一般式(2)で示される錯体に含まれる遷移金属原子の個数mは、2以上8以下であることが好ましく、2以上4以下であることが更に好ましく、2又は3であることが特に好ましい。遷移金属原子の個数mを上記の好適な値とすることによって、錯体、錯体から得られる高分子錯体、及び高分子錯体複合体に対して、多電子移動が可能なレドックス触媒能を確実に付与することができると共に、錯体、錯体から得られる高分子錯体、及び高分子錯体複合体の合成が容易となる。
【0064】
一般式(2)中のL01が窒素配位原子を含むことによって、錯体、錯体から得られる高分子錯体、及び高分子錯体複合体のレドックス触媒能を更に向上させることができる。
【0065】
一般式(2)におけるL01中の配位原子の数は3以上50以下であることが好ましく、4以上25以下であることが更に好ましく、6以上20以下であることが特に好ましい。また、L01中の一般式(1−1)で示される官能基を含む置換基の数は、1以上10以下であることが好ましく、1以上6以下であることがより好ましく、1以上4以下であることが特に好ましい。
【0066】
02中の一般式(1−1)式で示される官能基を含む置換基の数は、1以上10以下であることが好ましく、1以上4以下であることがより好ましく、1以上2以下であることが特に好ましい。なお、一般式(1−1)で示される官能基を含む置換基をもつL02の一例としては後述の一般式(4)で示されるものを挙げることができる。
【0067】
02中に含まれるビニル基の数は、1以上6以下であることが好ましく、1以上4以下であることが更に好ましく、1であることが特に好ましい。ビニル基を含む置換基を有するL02は、例えば、アクリレート、メタクリレート、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、イソプロペニルオキサゾリン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリロアミド、メタクリロアミド、ビニルピロリドン、ビニルアニリン、ビニルアニリド、スチレンスルホネート、ビニルスルホネート、ビニルホスホネート、ビニルベンゾエート、などであり、アクリレート、メタクリレート、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、イソプロペニルオキサゾリン、スチレンスルホネート、ビニルスルホネート、ビニルホスホネート、ビニルベンゾエートであることが好ましく、アクリレート、メタクリレート、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、イソプロペニルオキサゾリン、ビニルホスホネート、ビニルベンゾエートであることがより好ましく、アクリレート、メタクリレート、ビニルホスホネート、ビニルベンゾエートであることが特に好ましい。
【0068】
一般式(2)で示される錯体は、L01でもなくL02でもない他の配位子を更に併せ持っていてもよい。他の配位子としてはイオン性でも電気的に中性の化合物でもよく、このような他の配位子を複数有する場合、これらは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0069】
01でもなくL02でもない他の配位子であり、電気的に中性である化合物としては、アンモニア、ピリジン、ピロール、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2,4―トリアジン、ピラゾール、イミダゾール、1,2,3―トリアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、1,3,4−オキサジアゾール、チアゾール、イソチアゾール、インドール、インダゾール、キノリン、イソキノリン、フェナントリジン、シンノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、1,8−ナフチリジン、アクリジン、2,2’−ビピリジン、4,4’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、フェニレンジアミン、シクロヘキサンジアミン、ピリジンN−オキシド、2,2’−ビピリジンN,N’−ジオキシド、オキサミド、ジメチルグリオキシム、o―アミノフェノール等の窒素原子含有化合物、水、フェノール、シュウ酸、カテコール、サリチル酸、フタル酸、2,4−ペンタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン、ヘキサフルオロペンタンジオン、1,3−ジフェニルー1,3―プロパンジオン、2,2’−ビナフトール等の酸素含有化合物、ジメチルスルホキシド、尿素等の硫黄含有化合物、1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、1,2−フェニレンビス(ジメチルホスフィン)等のリン含有化合物が例示される。
【0070】
上述した物質の中でも、電気的に中性である化合物としては、アンモニア、ピリジン、ピロール、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2,4―トリアジン、ピラゾール、イミダゾール、1,2,3―トリアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、1,3,4−オキサジアゾール、インドール、インダゾール、キノリン、イソキノリン、フェナントリジン、シンノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、1,8−ナフチリジン、アクリジン、2,2’−ビピリジン、4,4’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、フェニレンジアミン、シクロヘキサンジアミン、ピリジンN−オキシド、2,2’−ビピリジンN,N’−ジオキシド、オキサミド、ジメチルグリオキシム、o―アミノフェノール、水、フェノール、シュウ酸、カテコール、サリチル酸、フタル酸、2,4−ペンタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン、ヘキサフルオロペンタンジオン、1,3−ジフェニルー1,3―プロパンジオン、2,2’−ビナフトールが好ましく、アンモニア、ピリジン、ピロール、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2,4―トリアジン、ピラゾール、イミダゾール、1,2,3―トリアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、1,3,4−オキサジアゾール、インドール、インダゾール、キノリン、イソキノリン、フェナントリジン、シンノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、1,8−ナフチリジン、アクリジン、2,2’−ビピリジン、4,4’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、フェニレンジアミン、シクロヘキサンジアミン、ピリジンN−オキシド、2,2’−ビピリジンN,N’−ジオキシド、o―アミノフェノール、フェノール、カテコール、サリチル酸、フタル酸、1,3−ジフェニルー1,3―プロパンジオン、2,2’−ビナフトールがより好ましく、ピリジン、ピロール、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、インドール、キノリン、イソキノリン、アクリジン、2,2’−ビピリジン、4,4’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、フェニレンジアミン、ピリジンN−オキシド、2,2’−ビピリジンN,N’−ジオキシド、o―アミノフェノール、フェノールが特に好ましい。
【0071】
01でもなくL02でもない他の配位子であり、アニオン性を有する配位子としては、水酸化物イオン、ペルオキシド、スーパーオキシド、シアン化物イオン、チオシアン酸イオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンなどのハロゲン化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、テトラフェニルボレートイオンなどのテトラアリールボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェイトイオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、リン酸イオン、亜リン酸イオン、フェニルホスホン酸イオン、ジフェニルホスホン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酸イオン、安息香酸イオン、水酸イオン、金属酸化物イオン、メトキサイドイオン、エトキサイドイオン等が挙げられる。
【0072】
上述した物質の中でも、アニオン性を有する配位子としては、水酸化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、テトラフェニルボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェイトイオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、リン酸イオン、亜リン酸イオン、フェニルホスホン酸、ジフェニルホスホン酸リン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオンが好ましく、水酸化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、テトラフェニルボレートイオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸がより好ましい。
【0073】
なお、アニオン性を有する配位子として上記したイオンは、錯体自体を電気的に中和する対イオンであってもよい。
【0074】
また、錯体は、電気的中性を保たせるようなカチオン性を有する対イオンを有する場合もある。カチオン性を有する対イオンとしては、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、テトラ(n−ブチル)アンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオンなどのテトラアルキルアンモニウムイオン、テトラフェニルホスホニウムイオンなどのテトラアリールホスホニウムイオン等が例示され、具体的には、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン、テトラ(n−ブチル)アンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラフェニルホスホニウムイオンであり、より好ましくはテトラ(n−ブチル)アンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラフェニルホスホニウムイオンが挙げられる。これらの中でも、カチオン性を有する対イオンとして、テトラ(n−ブチル)アンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオンが好ましい。
【0075】
錯体は、2個以上の遷移金属原子を有することが好ましい。また、錯体、錯体から得られる高分子錯体又は高分子錯体複合体をレドックス触媒として用いる観点から、とりわけ複数の遷移金属原子の中で少なくとも2つの遷移金属原子が分子内で近接して位置することが好ましい。
【0076】
錯体中の2つの遷移金属原子をM1、M2とし、M1に配位する配位原子のうち1個をAM1、M2に配位する配位原子のうち1個をAM2としたとき、AM1とAM2との間に介在する共有結合数を計算して、これを「遷移金属原子が近接して位置する指標」として用いることができる。ここで、AM1とAM2が直接結合しているときは、共有結合数は1となり、AM1とAM2が1個の原子を介して全体として共有結合しているときは、共有結合数は2となり、AM1とAM2がn個の原子を介して全体として共有結合しているときは、共有結合数は(n+1)となる。また、AM1とAM2が複数の原子を介して結合しているが、例えばその結合に共有結合と配位結合が混在している場合には、共有結合の数だけを計算する。なお、原子と原子が2重結合で直接結合している場合(例えばC=C)や、原子と原子が3重結合で結合している場合(例えばC≡C)も、それぞれ共有結合数は1と計算する。
【0077】
例えば、M1に配位する配位原子AM1が複数存在し、M2に配位する配位原子AM2が複数存在する場合において、AM1とAM2の間に介在する共有結合数は種々の値を取り得るが、その値が1以上4以下となるAM1とAM2との組み合わせが存在することが好ましい。なお、これは、「一の遷移金属原子に配位結合した配位原子と、当該一の遷移金属原子以外の遷移金属原子に配位結合した配位原子とが、1〜4個の共有結合を介して結合している構造が少なくとも1つ存在する」と言い換えることもできる。
【0078】
AM1とAM2との間に介在する共有結合数は1以上3以下であることがより好ましく、1以上2以下であることが更に好ましく、1であることが特に好ましい。AM1とAM2との間に介在する共有結合数が小さいほどM1−M2間距離が近づくことになる。その結果、2つの遷移金属原子間の相互作用が発現され易くなり、錯体及び錯体を用いて形成される高分子錯体、高分子錯体複合体の触媒活性がより高くなる。
【0079】
これらに加え、錯体が有する複数の遷移金属原子から選ばれる2つの遷移金属原子(M1、M2)が同一の配位原子と配位結合していることが特に好ましい。これは、M1とM2が同一の配位原子で架橋配位されていることを意味する。このようにM1とM2が同一の配位原子で架橋配位されていると、M1−M2間距離が近づくことになる。上述のように、M1−M2間距離が近づくと、2つの遷移金属原子間の相互作用が発現されやすくなり、錯体及び錯体を用いて形成される高分子錯体、高分子錯体複合体の触媒活性がより高くなる。
【0080】
なお、上述のAM1とAM2は、多座配位子の中にある配位原子同士でもよく、あるいは多座配位子以外の配位子の中にある配位原子同士でもよい。また、錯体中において、2つの遷移金属原子を架橋配位している配位原子も、多座配位子の中にある配位原子でもよく、多座配位子以外の配位子の中にある配位原子でもよい。
【0081】
一般式(2)の多座配位子L01は下記一般式(3)で表される構造を有することが好ましい。
【0082】
【化7】

【0083】
上記一般式(3)中、Ar、Ar、Ar及びAr(以下、Ar〜Arのように表わすこともある。)は、それぞれ独立に含窒素芳香族複素環基を示し、R、R、R、R及びR(以下、R〜Rのように表すこともある)は、それぞれ独立に2価の基を示し、Z、Zは、それぞれ独立に窒素原子又は3価の基を示し、Ar〜Ar、R〜Rの中で少なくとも1つがビニル基を含む基を有する。
【0084】
一般式(3)で表される多座配位子L01が有する配位原子の一部又は全部は、Ar〜Arの含窒素芳香族複素環上にある窒素原子であることが好ましい。このような窒素原子を配位原子として含む多座配位子L01を有する錯体、錯体を用いて形成される高分子錯体、及び高分子錯体複合体は、レドックス触媒活性、特に過酸化物分解反応における触媒活性に優れる。
【0085】
一般式(3)におけるAr〜Arとしては、例えば、イミダゾリル基、ピラゾリル基、2H−1,2,3−トリアゾリル基、1H−1,2,4−トリアゾリル基、4H−1,2,4−トリアゾリル基、1H−テトラゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、フラジル基、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピリダジル基、1,3,5−トリアジリル基、1,3,4,5−テトラジリル基等の含窒素芳香族複素環基を例示することができる。この芳香族複素環は、その縮合環基であってもよく、例えば、ベンゾイミダゾイル基、1H−インダゾイル基、ベンゾオキサゾイル基、ベンゾチアゾイル基、キノリル基、イソキノリル基、シンノリル基、キナゾイル基、キノキサリル基、フタラジル基、1,8−ナフチリジル基、プテリジル基、カルバゾリル基、フェナントリジル基、1,10−フェナントロリル基、プリル基、プテリジル基、ペリミジル基等であってもよい。なお、縮合環とは、「化学辞典」(第1版、1994年、東京化学同人)に記載の通り、2つ又はそれ以上の環をもつ環式化合物において、各々の環が2個又はそれ以上の原子を共有する環式構造のことを示すものである。
【0086】
一般式(3)におけるAr〜Arは、ベンゾイミダゾイル基、ピリジル基、イミダゾイル基、ピラゾイル基、オキサゾイル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピリダジル基であることが好ましく、ベンゾイミダゾイル基、ピリジル基、イミダゾイル基、ピラゾイル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピリダジル基であることがより好ましく、ベンゾイミダゾイル基、ピリジル基、イミダゾイル基、ピラゾイル基であることが更に好ましい。
【0087】
また、一般式(3)におけるAr〜Arの芳香族複素環基は、置換基を有していてもよい。該置換基の置換位置、数、及びその組合せは任意である。また、該芳香族複素環基に、後述のビニル基を含む基が結合されていてもよい。
【0088】
一般式(3)におけるRは、配位原子又は配位原子を含む基を有していてもよい2価の基であり、以下に示すアルキレン基、2価の芳香族基、及び2価のヘテロ原子を含む基から選ばれ、これらを任意につなぎ組み合わせた基でもよい。
【0089】
のアルキレン基としては、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、オクタン、デカン、イコサン、トリアコンタン、ペンタコンタン、シクロヘプタン、シクロへキサンなどの全炭素数1〜50程度の飽和炭化水素分子から水素原子を二つ取り去って得られるアルキレン基が挙げられる。また、Rのアルキレン基における含有炭素数は、1〜30であることが好ましく、1〜16であることがより好ましく、1〜8であることが更に好ましく、1〜4であることが特に好ましい。また、アルキレン基には、前述のビニル基を含む基が置換されていてもよい。
【0090】
の2価の芳香族基としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、ビフェニル、アセナフチレン、フェナレン、ピレン、フラン、チオフェン、ピロール、ピリジン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、1−ベンゾチオフェン、2−ベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、カルバゾ−ル、キサンテン、キノリン、イソキノリン、4H−キノリジン、フェナントリジン、アクリジン、1,8−ナフチリジン、ベンゾイミダゾール、1H−インダゾール、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、プリン、プテリジン、ペリミジン、1,10−フェナントロリン、チアントレン、フェノキサチイン、フェノキサジン、フェノチアジン、フェナジン、フェナルサジン等の芳香族化合物、複素環化合物又はこれらの化合物に置換基を有している化合物から水素原子を二つ取り去って得られる基等が挙げられる。
【0091】
これらの中でも、Rとしての2価の芳香族基は、ベンゼン、フェノール、p−クレゾール、ナフタレン、ビフェニル、フラン、チオフェン、ピロール、ピリジン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、1−ベンゾチオフェン、2−ベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、カルバゾ−ル、キサンテン、キノリン、イソキノリン、1,8−ナフチリジン、ベンゾイミダゾール、1H−インダゾール、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、プリン、プテリジン、ペリミジンから選ばれる化合物から水素原子を二つ取り去って得られる基であることが好ましく、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ピロール、ピリジン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドール、イソインドール、キノリン、イソキノリン、1,8−ナフチリジン、ベンゾイミダゾール、1H−インダゾール、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジンから選ばれる化合物から水素原子を二つ取り去って得られる基であることがより好ましく、ベンゼン、フェノール、p−クレゾール、ナフタレン、ビフェニル、ピロール、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリダジン、インドール、イソインドール、キノリン、イソキノリン、1,8−ナフチリジン、ベンゾイミダゾール、1H−インダゾール、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジンから選ばれる化合物から水素原子を二つ取り去って得られる基であることが更に好ましく、フェノール、p−クレゾール、ピリジン、ピラゾール、ピリダジン、1,8−ナフチリジン、1H−インダゾール、フタラジンから選ばれる化合物から水素原子を二つ取り去って得られる基であることが特に好ましい。また、R5としての2価の芳香族基には、前述のビニル基を含む置換基が結合されていてもよい。
【0092】
一般式(3)におけるRがヘテロ原子を含む2価の基である場合、Rとしては、例えば以下の式(E−1)〜(E−10)で示される基及びこれらの基を含む基が挙げられる。
【0093】
【化8】

【0094】
式(E−1)〜(E−10)中、R、Re、R、Rは炭素数1〜50のアルキル基、炭素数2〜60の芳香族基、炭素数1〜50のアルコキシ基、炭素数2〜60のアリールオキシ基、水酸基、又は水素原子を示す。Rは炭素数1〜50のアルキル基、炭素数2〜60の芳香族基又は水素原子示し、R、Rは炭素数1〜50のアルキル基又は炭素数2〜60の芳香族基を示す。
【0095】
一般式(3)におけるRとしてのヘテロ原子を含む2価の基は、(E−1)、(E−2)、(E−3)、(E−4)、(E−5)、(E−7)、(E−8)、(E−10)であることが好ましく、(E−1)、(E−2)、(E−4)、(E−7)、(E−10)であることがより好ましく、(E−1)、(E−7)であることが更に好ましい。
【0096】
一般式(3)におけるRは遷移金属原子に配位可能な官能基を含むことが好ましい。該配位可能な官能基としては、ヒドロキシ基、カルボキシル基、メルカプト基、スルホン酸基、ホスホン酸基、ニトロ基、シアノ基、エーテル基、アシル基、エステル基、アミノ基、カルバモイル基、酸アミド基、ホスホリル基、チオホスホリル基、スルフィド基、スルホニル基、ピロリル基、ピリジル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピリダジル基、インドリル基、イソインドリル基、カルバゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、1,8−ナフチリジル基、ベンゾイミダゾリル基、1H−インダゾリル基、キノキサリル基、キナゾリル基、シンノリル基、フタラジル基、プリル基、プテリジル基、ペリミジル基などが挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシ基、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基、ニトロ基、シアノ基、エーテル基、アシル基、アミノ基、ホスホリル基、チオホスホリル基、スルホニル基、ピロリル基、ピリジル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピリダジル基、インドリル基、イソインドリル基、キノリル基、イソキノリル基、1,8−ナフチリジル基、ベンゾイミダゾリル基、1H−インダゾリル基、キノキサリル基、キナゾリル基、シンノリル基、フタラジル基、プリル基、プテリジル基、ペリミジル基が好ましく、ヒドロキシ基、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基、シアノ基、エーテル基、アシル基、アミノ基、ホスホリル基、スルホニル基、ピリジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリミジル基、ピリダジル基、キノリル基、イソキノリル基、1,8−ナフチリジル基、ベンゾイミダゾリル基、1H−インダゾリル基、シンノリル基、フタラジル基、プテリジル基がより好ましい。
【0097】
一般式(3)におけるRとしては、とりわけ、下記化学式(R5−1)、(R5−2)、(R5−3)あるいは(R5−4)に示すものが好ましく、特に下記化学式(R5−1)に示すものがより好ましい。
【0098】
【化9】

【0099】
上記化学式(R5−1)、(R5−2)における水酸基、(R5−3)のピラゾール環、(R5−4)のホスフィン酸基は、配位子として金属原子に配位する際に、プロトンを放出してアニオン性となることもある。
【0100】
一般式(3)におけるR〜Rは置換されてもよい2価の基であり、それぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。R〜Rは、Rと場合の同様のアルキレン基、2価の芳香族基、ヘテロ原子を含む2価の基、及びこれらの基を任意につなぎ組み合わせた2価の基であればよく、メチレン基、1,1−エチレン基、2,2−プロピレン基、1,2−エチレン基、1,2−フェニレン基であることが好ましく、メチレン基、1,2−エチレン基を用であることがより好ましい。
【0101】
一般式(3)におけるZ、Zは窒素原子又は3価の基から選ばれ、3価の基としては、例えば、下記一般式(Z−1)、(Z−2)、(Z−3)、(Z−4)、(Z−5)、(Z−6)、(Z−7)のいずれかで表される基が挙げられるが、Z、Zのどちらか一方が窒素原子であることが好ましく、両方が窒素原子であることがより好ましい。
【0102】
【化10】

【0103】
一般式(Z−1)、(Z−2)中、Rは炭素数1〜50のアルキル基、炭素数2〜60の芳香族基、炭素数1〜50のアルコキシ基、炭素数2〜60のアリールオキシ基、水酸基、又は水素原子を示し、Rは炭素数1〜50のアルキル基又は炭素数2〜60の芳香族基を示す。
【0104】
一般式(3)で示される多座配位子の中でも、下記一般式(3a)又は(3b)で表される構造を有する多座配位子が好ましい。
【0105】
【化11】

【0106】
一般式(3a)、(3b)中、Y、Y、Y及びYは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜50のアルキル基又は炭素数2〜60の芳香族基を示し、且つ、Y、Y、Y及びYのうち少なくとも1つは、ビニル基を有する炭素数1〜50のアルキル基、又はビニル基を有する炭素数2〜60の芳香族基である。
【0107】
一般式(3)と同様に、一般式(3a)又は(3b)において、水酸基は、配位子として遷移金属原子に配位する際に、プロトンを放出してアニオン性となることもある。また、Y〜Yのうちビニル基を含む基は、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ブタジニル基、スチリル基、2−ビニルベンジル基、3−ビニルベンジル基、4−ビニルベンジル基、などが挙げられ、ビニル基、スチリル基、アリル基、2−ビニルベンジル基、3−ビニルベンジル基、4−ビニルベンジル基であることが好ましく、ビニル基、スチリル基、アリル基、4−ビニルベンジル基であることがより好ましい。
【0108】
一般式(2)で示されるL02は、下記一般式(4)で表される構造を有することが好ましい。
01−(OCHCH(R))OR (4)
【0109】
一般式(4)中、Rは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜50のアルキル基、又は置換基を有していてもよい炭素数6〜50のアリール基を示す。G01は下記式(4−1)、(4−2)、(4−3)、(4−4)のいずれかで表される構造を有する官能基を含む置換基である。
【0110】
【化12】

【0111】
上記式(4−1)〜(4−4)中、Rは上記一般式(4)のRと同意義を示す。
【0112】
一般式(4)におけるG01としては、下記式(G−1)、(G−2)、(G−3)、(G−4)、(G−5)、(G−6)、(G−7)、(G−8)、(G−9)、(G−10)、(G−11)、(G−12)で示されるものが好ましい。
【0113】
【化13】

【0114】
上記式(G−1)〜(G−12)中、Rは上記一般式(4)のRと同意義を示す。
【0115】
一般式(4)におけるG01としては、式(G−1)〜(G−12)の中でも、一般式(G−1)、(G−2)、(G−3)、(G−4)、(G−5)、(G−6)、(G−7)で示すものがより好ましく、(G−1)、(G−2)、(G−5)、(G−6)、(G−7)で示すものが更に好ましい。
【0116】
本実施形態に係る錯体の好適な具体例としては、例えば、下記一般式(5)で表される構造を有する錯体が例示できる。
【0117】
【化14】

【0118】
一般式(5)に示す錯体において、配位原子を3以上有する多座配位子は、窒素配位原子を含む芳香族複素環基(一般式(3)におけるAr〜Ar)としてベンゾイミダゾリル基を4つ有する。このベンゾイミダゾリル基の中で1つの窒素原子が配位原子(N、N、N及びNと表す)としてM又はMに配位し(M又はMに結合する点線は配位結合を示す)、このベンゾイミダゾリル基の他方の窒素原子には重合反応性を有する4−ビニルベンジル基が結合している。一般式(3)におけるR〜Rで示される基は、一般式(5)におけるメチレン基であり、一般式(3)におけるRは、一般式(5)において、アルコラート基を架橋配位原子(O1と表す)として有するプロピレン基を有するものである。更に前述の多座配位子以外の配位子として、p−ビニル安息香酸イオンを有し(配位原子としてO、Oを有する)、カウンターイオンとして、OSCHCHCHCH(OCHCHOCHの化学式で示される陰イオンを2分子有する。一般式中、n=〜45とは、nの平均値が45であることを意味する(以下同様)。なお、一般式(5)において、窒素配位原子、酸素配位原子に表記した数字は、後述の配位原子間の共有結合数を説明するにあたり、区別のために表記したものである。
【0119】
ここで、一般式(5)に示す錯体において、MとMにそれぞれ配位する配位原子間に存在する共有結合数を説明する。一般式(5)の錯体では、M−O−M間では、MとMが同一配位原子Oで(架橋)配位しており、M−O−O−M間では、配位原子間を結ぶ共有結合数の最小値が2であり、M−O−N−M間とM−O−N−M間では、その配位原子間を結ぶ共有結合数の最小値が3であり、M−N−N−M間では、配位原子間を結ぶ共有結合数の最小値が4となる。すなわち、「一の遷移金属原子に配位結合した配位原子と、当該一の遷移金属原子以外の遷移金属原子に配位結合した配位原子とが、1〜4個の共有結合を介して結合している構造が少なくとも1つ存在している」と言える。
【0120】
このような配位原子の組合せを有する多核錯体は、MとMが近接して存在する配位構造を有する多核錯体であり、このような多核錯体は触媒活性に富むため、錯体(錯体モノマー)として好ましい。
【0121】
(高分子錯体及び高分子錯体複合体)
上述した本実施形態の錯体(モノマー)は、重合性のビニル基を有するため、重合反応させることにより高分子錯体へと誘導することができる。高分子錯体は、上述の錯体を重合させることにより形成してよく、上述の錯体とビニル化合物等のコモノマーとを共重合させることにより形成してもよい。
【0122】
錯体の重合反応又は錯体とコモノマーとの共重合反応は、無溶媒で行うこともできれば、反応溶媒の存在下で行うこともできるが、反応溶媒の存在下で行うことが好ましい。
【0123】
反応溶媒を用いて重合反応また共重合反応を行う際の反応系は、均一系でも不均一系でもよいが、錯体が良好に分散する反応系が好ましい。反応溶媒としては、種々の溶媒を用いることが可能であり、例えば、水、テトラヒドロフラン、エーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、アセトン、メタノール、エタノール、イソプルパノール、エチレングリコール、2−メトキシエタノール、1−メチル−2−ピロリジノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸、ヘキサン、ペンタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素などが挙げられる。
【0124】
これらの反応溶媒の中でも極性の高い反応溶媒が好ましい。極性の高い反応溶媒中で錯体を重合又は共重合させることによって、微粒子状の高分子錯体を得ることができる。極性の高い反応溶媒としては、水、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、アセトニトリル、アセトン、メタノール、エタノール、イソプルパノール、エチレングリコール、2−メトキシエタノール、1−メチル−2−ピロリジノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸が好ましく、水、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、イソプルパノール、エチレングリコール、1−メチル−2−ピロリジノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドがより好ましい。
【0125】
なお、上述した反応溶媒は単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
【0126】
錯体の重合又は共重合の重合開始法としては、熱、光、電解、放射線、酸化などの様々な手法を用いることができ、ラジカル発生触媒や開始剤などを用いてもよい。これらの中でも、ラジカル開始剤を用いた重合開始法が好ましい。
【0127】
ラジカル開始剤を用いた重合又は共重合を行う場合、ラジカル開始剤としては、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物、過硫酸カリウムなどの無機過酸化物、もしくは2,2'-アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系の開始剤を用いることができる。
【0128】
重合温度又は共重合温度は、使用するラジカル開始剤のラジカル発生温度により決められるが、10℃以上200℃以下の範囲が好ましい。重合時間は重合温度などの反応条件にもよるが、30分から24時間程度とすればよい。
【0129】
また、錯体とコモノマーとの共重合を行う場合は、上述の錯体のうち少なくとも1種類以上の錯体と、1種類以上のコモノマーとを共に重合させる。錯体と共重合させるコモノマーとしては、種々の重合性モノマーを組み合わせることができ、様々なモノマー比で共重合を行うことができる。
【0130】
コモノマーとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、クロロアクリロニトリル、アクリル酸及びその塩、メタクリル酸及びその塩、アクリル酸エチルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸エチルなどのメタクリル酸エステル、スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ビニルピロリドン、ビニルアニリン、ビニルトリメトキシシランなどのビニルアルコキシシラン、ビニル安息香酸及びその塩、ビニルスルホン酸及びその塩、スチレンスルホン酸及びその塩、スチレンスルホン酸エステル、アクロレイン、メタクロレイン、ビニルホスホン酸及びその塩、イタコン酸、マレイン酸、マレアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸モノエチルエステル、フマル酸、フマラミド、フマル酸モノエチルエステル、フマロニトリル、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N−(n−ブトキシメチル)アクリルアミド、ビニルクロライド、ビニルブロマイド、1,1−ジクロロエチレン、2,3−ジクロロ−1−プロペン、2−プロペニルオキサゾロンなどが挙げられる。
【0131】
上記コモノマーとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド及びクロロアクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。このようなコモノマーを用いることで、高分子錯体の側鎖を介した分子間及び/又は分子内での相互作用の効果により、特に安定性の優れる高分子錯体を得ることができる。
【0132】
また、上記コモノマーとしては、アクリル酸、アクリル酸塩、メタクリル酸、メタクリル酸塩、ビニルホスホン酸、ビニルホスホン酸塩、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸塩、スチレンスルホン酸エステル、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸塩、及び、ビニルスルホン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。上記スチレンスルホン酸エステル、ビニルスルホン酸エステルとしては、加水分解により容易にスルホン酸部位を与えるものが好ましい。このような親水性コモノマーを用いることで、極性溶媒中、特に水を含む溶媒中で良好な分散性を示し、該溶媒中でレドックス触媒として用いた際の触媒活性に優れ、特に過酸化水素を水と酸素に分解する触媒能に優れる高分子錯体を得ることができる。
【0133】
上記親水性コモノマーとしては、例えば、アクリル酸、アクリル酸リチウム、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、アクリル酸ルビジウム、アクリル酸セシウム、メタクリル酸、メタクリル酸リチウム、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸カリウム、メタクリル酸ルビジウム、メタクリル酸セシウム、ビニルホスホン酸、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸リチウム、スチレンスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸カリウム、スチレンスルホン酸ルビジウム、スチレンスルホン酸セシウム、スチレンスルホン酸メチル、スチレンスルホン酸エチル、スチレンスルホン酸プロピル、スチレンスルホン酸ネオペンチル、スチレンスルホン酸フェニル、スチレンスルホン酸ベンジル、スチレンスルホン酸アリル等が好適に使用できる。上記親水性コモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルホスホン酸、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸リチウム、スチレンスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸カリウム、スチレンスルホン酸ルビジウム、スチレンスルホン酸セシウム、スチレンスルホン酸メチル及びスチレンスルホン酸エチルからなる群より選択される少なくとも一種がさらに好ましく、スチレンスルホン酸ナトリウムが特に好ましい。
【0134】
また、錯体の重合反応又は錯体とコモノマーとの共重合反応には、必要に応じて、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、キチン、キトサン、ポリメタクリルアミドなどの水溶性ポリマー、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、タルク、ベントナイト、シリカゲル、珪藻土、粘土、酸化チタン、BaSO、Al(OH)、CaSO、BaCO、MgCO、Ca(PO4、CaCO、カーボン系添加剤(フラーレン、カーボンブラック、ポリピロール・カーボンブラック複合体、ポリアニリン・カーボンブラック複合体、活性炭等)などの添加剤を併用してもよい。すなわち、これら添加剤の存在下で、錯体の重合反応又は錯体とコモノマーとの共重合反応を行ってもよい。これらの添加剤を併用することによって、錯体を高分子錯体複合体に誘導することができる。なお、添加剤は、それぞれ単独で使用されたり2種以上組み合わせて使用されたりする。
【0135】
また、上述の添加剤の他に、必要に応じて、t−ドデシルメルカプタン(TDM)、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン等のメルカプタン類、α−メチルスチレンダイマー(αMSD)、ターピノーレン類等の連鎖移動剤を併せて用いることができる。
【0136】
上述の添加剤の中でも、カーボン系添加剤を用いることが好ましく、特にカーボンブラックを用いることが好ましい。錯体をカーボンブラックの存在下で重合させることによって微粒子状の高分子錯体とカーボンブラックとの複合体(高分子錯体複合体)を得ることができる。また、錯体とコモノマーとをカーボンブラックの存在下で共重合させる場合も、微粒子状の高分子錯体とカーボンブラックとの複合体を得ることができる。高分子錯体とカーボンブラックとの複合体は、錯体をカーボンブラックの非存在下で重合又は共重合させることによって得られる高分子錯体に比べて、粒径が小さいため、触媒能が更に向上する傾向がある。また、高分子錯体とカーボンブラックとを複合させることによって、得られる高分子錯体複合体に電気伝導性が付与されるため、高分子錯体複合体を電池電極の劣化防止剤等として用い易くなる。
【0137】
上記カーボンブラックとしては、種々のカーボンブラックを用いることが可能であり、例えば、アセチレンブラック、コンダクティブファーネスブラック(CF)、スーパーコンダクティブファーネスブラック(SCF)、エクストラコンダクティブファーネスブラック(XCF)、コンダクティブチャンネルブラック(CC)、1500°C程度の高温で熱処理されたファーネスブラック、1500°C程度の高温で熱処理されたチャンネルブラック等が挙げられる。
【0138】
上記カーボンブラックとして、より具体的には、電化アセチレンブラック(電気化学製)、シャウニガンアセチレンブラック(シャウニガンケミカル製)、コンチネックスCF(コンチネンタルカーボン製)、バルカンC(キャボット製)、コンチネックスSCF(コンチネンタルカーボン製)、バルカンSC(キャボット製)、旭HS−500(旭カーボン製)、バルカンXC−7(キャボット製)、コウラックスL(デグッサ製)、ケッチェンブラックEC、ケッチェンブラックEC−600JD(ケッチェンブラックインターナショナル製)、カーボンナノパウダー(アルドリッチ製)、nanom black ST(フロンティアカーボン製)、nanom mix ST(フロンティアカーボン製)、Aqua−black001(東海カーボン製)等が挙げられる。これらの中で、好ましくはバルカンC(キャボット製)、バルカンXC−7(キャボット製)、ケッチェンブラックEC、ケッチェンブラックEC−600JD(ケッチェンブラックインターナショナル製)、カーボンナノパウダー(アルドリッチ製)、namo black ST(フロンティアカーボン製)、nanom mix ST(フロンティアカーボン製)であり、より好ましくは、ケッチェンブラックEC、ケッチェンブラックEC−600JD(ケッチェンブラックインターナショナル製)である。
【0139】
上記高分子錯体(錯体の重合体又は共重合体)又は高分子錯体複合体は、不均一系触媒としての観点から粒子状、特に微粒子であることが好ましい。高分子錯体又は高分子錯体複合体の粒径としては、10nm〜1μmが好ましく、10nm〜500nmがより好ましく、10nm〜300nmが更に好ましく、10nm〜200nmが特に好ましい。走査型電子顕微鏡写真から導出される平均粒径がこのような微粒子状であると比表面積も大きく、レドックス触媒として好適に用いることができる。
【0140】
走査型電子顕微鏡写真からの平均粒径導出としては、下記の条件および方法が挙げられる。
【0141】
[条件]250個以上の粒子が長方形の走査型電子顕微鏡写真に写っており、かつ該写真を長方形に均等に16分割した際にそれぞれの分割写真中に15個以上の粒子が確認できる走査型電子顕微鏡写真であること。
【0142】
[方法]上記の16個の分割写真それぞれから、任意の3つの粒子の長径を測定し、測定したこれら48個の粒子の長径を平均したものを平均粒径とする。ただし長径が10μmを超える粒子が該写真の中に一つでも存在する場合、該写真中の10μmを超える粒子のうちの何れか一つの長径を平均粒径とする。
【0143】
上記高分子錯体(錯体の重合体又は共重合体)又は高分子錯体複合体は、窒素気流下で測定した熱重量−マススペクトルにおいて、熱重量分析条件として400〜500℃の領域で、m/Zが53又は67のいずれかである分子イオンピークを示すことが好ましい。なお、mは分子イオンの質量数であり、Zは分子イオンの電荷数である。このような高分子錯体又は高分子錯体複合体は、ポリマー鎖中に、ポリアクリロニトリル型構造又はポリメタクリロニトリル型構造が形成されていると考えられ、側鎖を介した分子間及び/又は分子内での相互作用の効果により、安定性に特に優れる傾向がある。
【0144】
上記高分子錯体は、赤外分光法において、2200〜2300cm−1の領域に吸収極大を有すると好ましい。このような高分子錯体は、ニトリル基を含有しており、ニトリル基を介した分子間及び/又は分子内での相互作用の効果により、熱安定性に特に優れる高分子錯体となる。
【0145】
上記高分子錯体(錯体の重合体又は共重合体)又は高分子錯体複合体は、元素組成において、上記遷移金属原子の含有量が0.01重量%〜8重量%であると好ましく、0.05重量%〜5重量%であるとより好ましく、0.1重量%〜4重量%であると更に好ましい。高分子錯体又は高分子錯体複合体は、遷移金属原子の含有量が上記範囲であると、レドックス触媒として用いた際に触媒活性が優れたものとなり、特に過酸化水素を水と酸素に分解する触媒能に優れたものとなる。遷移金属原子の含有量が0.01重量%未満であると、レドックス触媒能が低下する。また、高分子錯体又は高分子錯体複合体の遷移金属原子の含有量が8重量%より多いと、該高分子錯体又は高分子錯体複合体を製造する際の共重合反応における重合反応性が低下し、製造効率が悪くなる傾向がある。
【0146】
上記錯体、上記高分子錯体(錯体の重合体又は共重合体)、上記高分子錯体複合体は、固体電子スピン共鳴スペクトルにおいて、下記数式(I)によって定義されるgTOPが、1.8000〜2.2400の範囲にあることが好ましく、19.000〜2.2000であることがより好ましく、1.9500〜2.1000であることが特に好ましい。
【0147】
gTOP=hν/βH (I)
【0148】
なお、上記数式(I)中、hはプランク定数、νは測定電磁波の共鳴周波数、βはボーア磁子、Hは観測されるESR信号が極大を示す磁場強度をそれぞれ示す。
【0149】
gTOPが上記範囲にある高分子錯体変性物は、マンガン原子を含み、かつ、好ましい金属中心構造を有する。
【0150】
高分子錯体又は高分子錯体複合体は、2個の遷移金属原子が同一の配位原子と配位結合している構造を少なくとも1つ有することが好ましい。また、高分子錯体又は高分子錯体複合体においては、一の遷移金属原子に配位結合した配位原子と、当該一の遷移金属原子以外の遷移金属原子に配位結合した配位原子とが、1〜4個の共有結合を介して結合している構造が少なくとも1つ存在していることが好ましい。このような高分子錯体又は高分子錯体複合体においては、2個の遷移金属原子間の距離が近づき、2つの遷移金属原子間の相互作用が発現され易くなる。その結果、高分子錯体又は高分子錯体複合体の触媒活性がより高くなる。
【0151】
上述した本実施形態の錯体、高分子錯体、及び高分子錯体複合体は、レドックス触媒として有用である。特に本実施形態の高分子錯体及び高分子錯体複合体は、過酸化水素分解触媒として用いた場合、フリーラジカルの発生を抑制しつつ過酸化水素を水と酸素に分解することが可能である。
【0152】
また、本実施形態の高分子錯体及び高分子錯体複合体は、複数の金属中心を有する微粒子状の高分子錯体及び高分子複合体であり、従来の多核錯体触媒と異なり溶媒に不溶であるため、反応系からの触媒分離回収や材料への複合化が容易であり、不均一系触媒として好適に用いることができる。
【0153】
本実施形態の錯体、高分子錯体、又は高分子錯体複合体を用いたレドックス触媒は、高分子電解質型燃料電池や水電解装置の劣化防止剤や、医農薬や食品の抗酸化剤などの用途に用いることができる。
【実施例】
【0154】
以下、本発明を、実施例を示し、具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0155】
(製造例1)[配位子の合成]
J.Am.Chem.Soc.1984、106、pp4765−4772.に記載のHL-Et配位子の合成に準拠し、2−ヒドロキシ−1,3−ジアミノプロパン四酢酸と、o−ジアミノベンゼンと反応させ、次いで4−クロロメチルスチレンを反応させることで、下記化学式(6)で示されるbbpr−CHSt配位子を収率85%で得た。この配位子のH−NMR(0.05%(v/v)TMS CDCl溶液)を測定した。得られたH−NMRのチャートを図1に示す。図1に示すように、5〜8ppmのピークから−CHSt基が導入されたことを確認した。
【0156】
【化15】

【0157】
(製造例2)[錯体前駆体の合成1]
フラスコにp−ビニル安息香酸(10.1g,67.5mmol)、NaOH水溶液(10.2g,64.1mmol)を量りとり、ここに水140mlを加え攪拌溶解させ、不溶成分を濾別し、p−ビニル安息香酸ナトリウム水溶液を調製した。別途フラスコに、Mn(SO)・5HO(7.74g,32.1mmol)と水50mlとを量りとり、攪拌溶解させた。ここに前述のp−ビニル安息香酸ナトリウム水溶液を加え、室温下2時間攪拌した。生成した沈殿を濾取し、水洗浄、ether洗浄した後、減圧乾燥させることでp−ビニル安息香酸マンガン・4水和物(錯体先駆体)の白色粉末を得た。収量は5.87g(13.9mmol)、収率は43%であった。元素分析Calcd for C1822MnO:C,51.32;H.5.26.Found:C,51.63;H,5.16。
【0158】
(製造例3)[錯体前駆体の合成2]
フラスコにbbpr−CHSt(400mg、0.372mmol)、NEt(i−Pr)(43.2mg、0.335mmol)を量りとり、ここにTHF54mlを加え攪拌溶解させた。ここにp−ビニル安息香酸マンガン・4水和物(313mg、0.744mmol)を加え、室温下2時間攪拌した。この反応混合物を減圧下濃縮し、MeOHを加えて生成した沈殿を濾取し、水洗浄とエーテル洗浄を行なった後、減圧乾燥させることで、ベージュ色粉末の下記化学式(7)で示されるMn−vb−(bbpr−CHSt)−vb(錯体前駆体)を得た。収量は122mgであった。ESI MS、m/Z 1477.4 ([M−(p−ビニル安息香酸アニオン)]+)。
【0159】
【化16】

【0160】
(製造例4)[錯体前駆体の合成3]
500ml三口フラスコにポリエチレングリコールモノメチルエステル(73.4g、Mn:〜2000)と水酸化ナトリウム、1,4−ブタンスルトンをそれぞれ36.7mmolずつ量り取り、テトラヒドロフラン(250ml)を加え80℃のオイルバスにて48時間撹拌させた。その後、溶媒を減圧下で留去し、真空乾燥することによって下記化学式(8)で示されるP45Na(錯体前駆体)を褐色固体の状態で得た。なお、一般式中、n=〜45とは、nの平均値が45であることを意味する。収量は79.0gであった。このP45NaのH−NMR(0.05%(v/v)TMS CDCl溶液)を測定した。得られたH−NMRのチャートを図2に示す。図2に示すように、1.6〜2.0ppmのピーク及び2.8〜2.9ppmのピークから、得られた錯体前駆体に−CHCHCHSONa基が導入されていることを確認した。
【0161】
【化17】

【0162】
(実施例1)[錯体の合成]
200mlフラスコにMn−vb−(bppr−CHSt)−vb(1.00g)とP45Na(2.67g)を量り取り、THF(60ml)を加え80℃のオイルバスにて2時間還流撹拌させた。その後、減圧下にて反応混合物から溶媒を留去し、ヘキサンで洗浄して下記化学式(9)で示される錯体Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45を黄土色粉末の状態で得た。収量は3.66gであった。
【0163】
【化18】

【0164】
実施例1で得られた錯体の赤外分光測定を行った。スペクトルチャートを図3に示す。
【0165】
また、実施例1で得られた錯体の固体電子スピン共鳴スペクトルを−150℃で測定した。上記数式(I)よりgTOPを算出したところ、2.0076であった。
【0166】
(実施例2)[高分子錯体の製造]
ガラスコートされた撹拌子(φ6mm、L25mm)の入った50mlガラス製サンプル管に、Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、エタノール(1.5g)、アクリロニトリル(100mg)、アクリル酸(18.4mg)、及び2,2'-アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10.0mg)、水(1.5g)を加え混合撹拌した。このサンプル管を窒素ガス置換し、ラバーセプタムで栓をした状態で、60℃のオイルバスとマグネチックスターラーを用い、回転数350rpmで1時間加熱し反応を行った。生成した高分子錯体を、反応混合物から濾別し、メタノール次いでエーテルで洗浄し、真空乾燥させることで白色粉末として得た。収量は73.7mgであった。得られた高分子錯体の走査型電子顕微鏡写真を図4に示す。前述の方法で平均粒径を導出すると平均粒径362nmの微粒子であることが確認された。また、得られた高分子錯体のIRスペクトルを測定した。結果を図5に示す。実施例2で得られた高分子錯体は、IRスペクトルにおいて2240cm−1の波数にピークを示すことから、シアノ基を有するポリアクリロニトリル構造を有することが確認された。
【0167】
実施例2の高分子錯体は、上記式(9)の錯体モノマーと、アクリロニトリル及びアクリル酸のコモノマーとの共重合体であることから、例えば、下記化学式(10)で表す化学構造を有することができる(式(10)は、模式図であるために主鎖や側鎖の一部は省略されている。)。
【0168】
【化19】

【0169】
(実施例3)[高分子錯体・カーボンブラック複合体の製造]
ガラスコートされた撹拌子(φ6mm、L25mm)の入った50mlガラス製サンプル管に、Mn−vb(bbpr−CHSt)−P45(150mg)とエタノール(1.5g)を入れて混合し、これに2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、アクリロニトリル(100mg)、アクリル酸(一滴)、水(1.5g)、ケッチェンブラックEC(50mg)を順次加え混合撹拌した。このような反応混合物の入ったサンプル管3つ調製し、これらサンプル管をそれぞれ、窒素ガス置換し、ラバーセプタムで栓をした状態で、50℃のオイルバスとマグネチックスターラーを用い、回転数350rpmで1時間加熱し反応を行った。反応後、3つサンプル管中の不溶物を一つにまとめて濾取し、メタノール、ジエチルエーテルで洗浄を行い、真空乾燥させて高分子錯体・カーボンブラック複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は293mgであった。得られた高分子錯体・カーボンブラック複合体の走査型電子顕微鏡写真を図6に示す。前述の方法で平均粒径を導出すると、得られた高分子錯体・カーボンブラック複合体は、平均粒径179nmの微粒子であることが確認された。
【0170】
図4及び図6の走査型電子顕微鏡写真より、本発明の高分子錯体及び高分子錯体・カーボンブラック複合体は共に粒径1μmに満たない微粒子であることが明らかとなった。特に高分子錯体・カーボンブラック複合体については、1次粒子径は200nmに満たない微粒子であることがわかった。
【0171】
(実施例4)[高分子錯体・カーボンブラック複合体の製造]
メカニカルスターラーを備えた200mlセパラブルフラスコ中、窒素気流下、Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(3.0g)をメタノール(60g)と混合した後、アクリロニトリル(2.0g)、アクリル酸(609mg)、ケッチェンブラックEC(1.0g)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(200mg)を順次加え混合撹拌した。このフラスコを、60℃のオイルバス中、撹拌回転数350rpmで1時間加熱し反応を行った。反応後、不溶物を濾取し、メタノールで洗浄を行い、真空乾燥させて高分子錯体・カーボンブラック複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は2.00gであった。
【0172】
(実施例5)[高分子錯体・カーボン複合体の製造]
Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、アクリロニトリル(103mg)、アクリル酸(19mg)、ジメチルホルムアミド(1.2g)、水(1.8g)、およびカーボンナノパウダー(50mg、アルドリッチ製)を合成試薬として用い、実施例2と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・カーボン複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は102mgであった。また、実施例5で得られた高分子錯体の固体電子スピン共鳴スペクトルを室温下で測定した。上記数式(I)よりgTOPを算出したところ、1.9985であった。
【0173】
(実施例6)[高分子錯体・ポリアニリン・カーボンブラック複合体の製造]
Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、アクリロニトリル(101mg)、アクリル酸(18mg)、エタノール(1.5g)、水(1.5g)、およびポリアニリン・カーボンブラック複合体(50mg、ポリアニリン20重量%、アルドリッチ製)を合成試薬として用い、実施例2と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・ポリアニリン・カーボンブラック複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は80mgであった。
【0174】
(実施例7)[高分子錯体・ポリピロール・カーボン複合体の製造]
Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、アクリロニトリル(107mg)、アクリル酸(17mg)、エタノール(1.5g)、水(1.5g)、およびポリピロール・カーボン複合体(50mg、ポリピロール20重量%、アルドリッチ製)を合成試薬として用い、実施例2と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・ポリピロール・カーボン複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は93mgであった。
【0175】
(実施例8)[高分子錯体・メラミン樹脂・カーボンブラック複合体の製造]
Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、アクリロニトリル(100mg)、アクリル酸(16mg)、エタノール(1.5g)、水(1.5g)、アクリル化(メラミン・ホルムアルデヒド共重合体)メチルエチルケトン溶液(30mg、80重量%、アルドリッチ製)、およびケッチェンブラックEC(50mg)を合成試薬として用い、実施例2と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・メラミン樹脂・カーボンブラック複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は94mgであった。
【0176】
(実施例9)[高分子錯体・カーボンブラック複合体の製造]
Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、メタクリルアミド(70mg)、アクリル酸(50mg)、エタノール(3.0g)、およびケッチェンブラックEC(50mg)を合成試薬として用い、実施例2と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・カーボンブラック複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は70mgであった。
【0177】
(実施例10)[高分子錯体・カーボンブラック複合体の製造]
Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、アクリロニトリル(70mg)、ビニルホスホン酸(50mg)、エタノール(3.0g)、およびケッチェンブラックEC(50mg)を合成試薬として用い、実施例2と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・カーボンブラック複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は82mgであった。
【0178】
(実施例11)[高分子錯体・カーボンブラック複合体の製造]
Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、アクリロニトリル(70mg)、メタクロレイン(25mg)、アクリル酸(25mg)、エタノール(3.0g)、およびケッチェンブラックEC(50mg)を合成試薬として用い、実施例2と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・カーボンブラック複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は72mgであった。
【0179】
(実施例12)[高分子錯体・カーボンブラック複合体の製造]
Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、アクリロニトリル(30mg)、N−メチロールアクリルアミド(30mg)、アクリル酸(50mg)、エタノール(3.0g)、およびケッチェンブラックEC(50mg)を合成試薬として用い、実施例2と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・カーボンブラック複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は88mgであった。
【0180】
(実施例13)[高分子錯体・カーボンブラック複合体の製造]
Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、アクリロニトリル(30mg)、N−(n−ブトキシメチル)アクリルアミド(30mg)、アクリル酸(50mg)、エタノール(3.0g)、およびケッチェンブラックEC(50mg)を合成試薬として用い、実施例2と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・カーボンブラック複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は89mgであった。
【0181】
(実施例14)[高分子錯体・カーボンブラック複合体の製造]
Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、アクリロニトリル(100mg)、スチレンスルホン酸ナトリウム(20mg)、アクリル酸(18mg)、エタノール(1.5g)、水(1.5g)、およびケッチェンブラックEC(50mg)を合成試薬として用い、実施例2と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・カーボンブラック複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は110mgであった。
【0182】
(実施例15)[高分子錯体・カーボンブラック複合体の製造]
Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、メチルメタクリレート(51mg)、4−ビニルピリジン(50mg)、アクリル酸(17mg)、エタノール(3.0g)、およびケッチェンブラックEC(50mg)を合成試薬として用い、実施例2と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・カーボンブラック複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は82mgであった。
【0183】
(実施例16)[高分子錯体・カーボンブラック複合体の製造]
Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、N−ビニルイミダゾール(55mg)、N−ビニルピロリドン(53mg)、アクリル酸(19mg)、エタノール(3.0g)、およびケッチェンブラックEC(50mg)を合成試薬として用い、実施例2と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・カーボンブラック複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は82mgであった。
【0184】
(実施例17)[高分子錯体・カーボン複合体の製造]
Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、アクリロニトリル(101mg)、アクリル酸(16mg)、メタノール(3.0g)、およびnanom mix ST(50mg、フロンティアカーボン製)を合成試薬として用い、実施例2と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・カーボン複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は66mgであった。
【0185】
(実施例18)[高分子錯体・カーボン複合体の製造]
Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、アクリロニトリル(105mg)、アクリル酸(15mg)、メタノール(3.0g)、およびnanom black ST(50mg、フロンティアカーボン製)を合成試薬として用い、実施例2と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・カーボン複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は66mgであった。
【0186】
(実施例19)[高分子錯体・キトサン複合体の製造]
Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、アクリロニトリル(102mg)、アクリル酸(17mg)、メタノール(3.0g)、およびキトサン低分子量体(50mg、アルドリッチ製)を合成試薬として用い、実施例2と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・キトサン複合体(高分子錯体複合体)を乳白色の粉末で得た。収量は78mgであった。
【0187】
(実施例20)[高分子錯体・カーボンブラック複合体の製造]
Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、アクリロニトリル(52mg)、ビニルトリメトキシシラン(66mg)、無水メタノール(3.0g)、およびケッチェンブラックEC(50mg)を合成試薬として用い、実施例2と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・カーボンブラック複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は73mgであった。
【0188】
(実施例21)[高分子錯体・カーボンブラック複合体の製造]
Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、アクリロニトリル(21mg)、アクリル酸(20mg)、2−プロペニルオキサゾリン(80mg)、メタノール(3.0g)、およびケッチェンブラックEC(50mg)を合成試薬として用い、実施例2と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・カーボンブラック複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は71mgであった。
【0189】
(実施例22)[高分子錯体・カーボンブラック複合体の製造]
Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、2,3−ジクロロ−1−プロペン(111mg)、アクリル酸(30mg)、エタノール(3.0g)、およびケッチェンブラックEC(50mg)を合成試薬として用い、実施例2と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・カーボンブラック複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は70mgであった。
【0190】
(実施例23)[高分子錯体・カーボンブラック複合体の製造]
Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、2−クロロアクリロニトリル(101mg)、アクリル酸(27mg)、エタノール(3.0g)、およびケッチェンブラックEC(50mg)を合成試薬として用い、実施例2と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・カーボンブラック複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は100mgであった。
【0191】
(製造例5)[錯体前駆体の合成]
500mlフラスコにbbpr−CHSt(2.00g)と塩化鉄(III)・6水和物(1.01g)を量り取り、ジメチルスルホキシド(300ml)を加え80℃のオイルバスにて24時間撹拌させた。その後、反応混合物を1lビーカーに張った水中にゆっくりと加えて撹拌し、得られた沈殿物を桐山漏斗にて濾過し、残渣を水で洗浄、真空乾燥することで、下記化学式(11)で示されるFe−Cl−(bbpr−CHSt)−Clを淡緑色の粉末で得た。収量は779mgであった。
【0192】
【化20】

【0193】
(実施例24)[錯体の合成]
100mlフラスコにFe−Cl−(bbpr−CHSt)−Cl(300mg)とP45Na(956mg)を量り取り、テトラヒドロフラン(22ml)を加えオイルバス80℃にて27時間加熱還流した。その後減圧下にて溶媒を留去し、下記化学式(12)で示されるFe−Cl−(bbpr−CHSt)−P45を黄褐色粉末で得た。収量は1.18gであった。
【0194】
【化21】

【0195】
(実施例25)[高分子錯体・カーボンブラック複合体の製造]
Fe−Cl−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、アクリロニトリル(106mg)、アクリル酸(21mg)、メタノール(3.0g)、およびケッチェンブラックEC(50mg)を合成試薬として用い、実施例2と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・カーボンブラック複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は93mgであった。
【0196】
(製造例6)[錯体前駆体の合成]
500mlフラスコにbbpr−CHSt(2.00g)と酢酸コバルト・4水和物(927mg)を量り取り、ジメチルスルホキシド(300ml)を加え80℃のオイルバスにて24時間撹拌させた。その後、反応混合物を1lビーカーに張った水中にゆっくりと加えて撹拌し、沈殿物を桐山漏斗にて濾過し、残渣を水で洗浄、真空乾燥することで、下記化学式(13)で示されるCo−OAc−(bbpr−CHSt)−OAcを橙色の粉末で得た。収量は688mgであった。ESI MS、m/Z 625.2 ([M−2(酢酸アニオン)]2+)。
【0197】
【化22】

【0198】
(実施例26)[錯体の合成]
100mlフラスコにCo−OAc−(bbpr−CHSt)−OAc(300mg)とP45Na(951mg)を量り取り、テトラヒドロフラン(22ml)を加えオイルバス80℃にて27時間加熱還流した。その後減圧下にて溶媒を留去し、下記化学式(14)で示されるCo−OAc−(bbpr−CHSt)−P45を赤褐色粉末で得た。収量は1.19gであった。
【0199】
【化23】

【0200】
(実施例27)[高分子錯体・カーボンブラック複合体の製造]
Co−OAc−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、アクリロニトリル(100mg)、アクリル酸(21mg)、メタノール(3.0g)、およびケッチェンブラックEC(50mg)を合成試薬として用い、実施例2と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・カーボンブラック複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は94mgであった。
【0201】
(製造例7)[錯体前駆体の合成]
500mlフラスコにbbpr−CHSt(2.00g)とNi−(OAc)・4HO(926mg)を量り取り、ジメチルスルホキシド(300ml)を加え80℃のオイルバスにて24時間撹拌させた。その後、反応混合物を1リットルビーカーに張った水中にゆっくりと加えて撹拌し、得られた沈殿物を桐山漏斗にて濾過し、残渣を水で洗浄、真空乾燥することで、下記化学式(15)で示されるNi−OAc−(bbpr−CHSt)−OAcを黄緑色の粉末で得た。収量は937mgであった。ESI MS、m/Z 624.2 ([M−2(酢酸アニオン)]2+)。
【0202】
【化24】

【0203】
(実施例28)[錯体の合成]
100mlフラスコにNi−OAc−(bbpr−CHSt)−OAc(300mg)とP45Na(951mg)を量り取り、テトラヒドロフラン(22ml)を加えオイルバス80℃にて27時間加熱還流した。その後減圧下にて溶媒を留去し、下記化学式(16)で示されるNi−OAc−(bbpr−CHSt)−P45を緑褐色粉末で得た。収量は1.14gであった。
【0204】
【化25】

【0205】
(実施例29)[高分子錯体・カーボンブラック複合体の製造]
Ni−OAc−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、アクリロニトリル(103mg)、アクリル酸(23mg)、メタノール(3.0g)、およびケッチェンブラックEC(50mg)を合成試薬として用い、実施例2と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・カーボンブラック複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は97mgであった。
【0206】
(製造例8)[錯体前駆体の合成]
500mlフラスコにbbpr−CHSt(2.00g)とCu(OAc)・HO(743mg)を量り取り、ジメチルスルホキシド(300ml)を加え80℃のオイルバスにて24時間撹拌させた。その後、反応混合物を1lビーカーに張った水中にゆっくりと加えて撹拌し、得られた沈殿物を桐山漏斗にて濾過し、残渣を再度同様の操作にて水、ヘキサンで洗い真空乾燥することで、下記化学式(17)で示されるCu−OAc−(bbpr−CHSt)−OAcを茶色の粉末で得た。収量は1.14gであった。
【0207】
【化26】

【0208】
(実施例30)[錯体の合成]
100mlフラスコにCu−OAc−(bbpr−CHSt)−OAc(300mg)とP45Na(947mg)を量り取り、テトラヒドロフラン(22ml)を加えオイルバス80℃にて27時間加熱還流した。その後減圧下にて溶媒を留去し、下記化学式(18)で示されるCu−OAc−(bbpr−CHSt)−P45を茶褐色粉末で得た。収量は1.22gであった。
【0209】
【化27】

【0210】
(実施例31)[高分子錯体・カーボンブラック複合体の製造]
Cu−OAc−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10mg)、アクリロニトリル(103mg)、アクリル酸(18mg)、メタノール(3.0g)、およびケッチェンブラックEC(50mg)を合成試薬として用い、実施例2と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・カーボンブラック複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は89mgであった。
【0211】
(製造例9)[錯体前駆体の合成]
500mlフラスコにbbpr−CHSt(2.00g)とCe(OAc)・4HO(1.25g)を量り取り、ジメチルスルホキシド(300ml)を加え80℃のオイルバスにて12時間撹拌させた。その後、反応混合物を1リットルビーカーに張った水中にゆっくりと加えて撹拌し、得られた沈殿物を桐山漏斗にて濾過し、残渣を水で洗浄、真空乾燥することで、下記化学式(19)で示されるCe−OAc−(bbpr−CHSt)−OAcをベージュ色の粉末で得た。収量は824mgであった。
【0212】
【化28】

【0213】
(実施例32)[錯体の合成]
200mlフラスコにCe−OAc−(bbpr−CHSt)−OAc(412mg)とP45Na(4.04g)を量り取り、テトラヒドロフラン(90ml)を加えオイルバス80℃にて71時間加熱還流した。その後減圧下にて溶媒を留去し、下記化学式(20)で示されるCe−OAc−(bbpr−CHSt)−P45をベージュ色粉末で得た。収量は4.34gであった。
【0214】
【化29】

【0215】
(実施例33)[高分子錯体・カーボンブラック複合体の製造]
Mn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(150mg)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(30mg)、エタノール(3.0g)、およびケッチェンブラックEC(50mg)を合成試薬として用い、実施例2と同様に反応および精製操作を行うことで、高分子錯体・カーボンブラック複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は78mgであった。
【0216】
(実施例34)[高分子錯体・カーボンブラック複合体の製造]
メカニカルスターラーを備えた200mlセパラブルフラスコにMn−vb−(bbpr−CHSt)−P45(3.0g)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(200mg)、蒸留水(20g)を加え、次いでここに予め100mlバイアル中、エタノール(30g)とケッチェンブラックEC(1.0g)を超音波撹拌した混合物を加え、室温下350rpmで30分間撹拌した。ここに、アクリロニトリル(2.4g)、アクリル酸(400mg)、p−スチレンスルホン酸ナトリウム(10g)、および蒸留水(10g)を加え、更に室温下350rpmで30分間撹拌した。このフラスコに窒素ガスを30分間バブルさせ、フラスコを窒素気流下とした後に、60℃下350rpmで60分間加熱撹拌し反応させた。反応後、沈殿を濾取し、メタノールで洗浄した。次いで濾取物をメタノール/水=9/1(v/v)の溶液で洗浄した後、更にメタノールで洗浄し、真空乾燥させることで高分子錯体・カーボンブラック複合体(高分子錯体複合体)を黒色の粉末で得た。収量は4.69gであった。マンガン含有量についてICP発光分析を行ったところ、0.38重量%であった。
【0217】
また、実施例34で得られた高分子錯体の固体電子スピン共鳴スペクトルを−150℃で測定した。上記数式1よりgTOPを算出したところ、1.9896であり、出発のマンガン錯体モノマーの金属中心を備えることが確認された。
【0218】
(実施例35)[高分子錯体・カーボンブラック複合体の過酸化水素分解試験]
過酸化水素分解触媒(レドックス触媒)として実施例3で得られた高分子錯体・カーボンブラック複合体(10.0mg)を25ml二口フラスコに量り取った。ここに溶媒として、酒石酸/酒石酸ナトリウム緩衝溶液(0.20mol/l酒石酸水溶液と0.10mol/l酒石酸ナトリウム水溶液から調製、pH4.0、2.00ml)を加えて攪拌した。これを触媒混合液(触媒は不溶)として用いた。
【0219】
この触媒混合溶液の入った二口フラスコの一方の口にセプタムを取り付け、もう一方の口をガスビュレットへ連結した。このフラスコを反応前熱処理として80℃下5分間攪拌した後、過酸化水素水溶液(11.4mol/l、0.20ml(2.28mmol))をシリンジで加え、80℃下60分間、過酸化水素分解反応を行った。発生する酸素をガスビュレットにより測定し、分解した過酸化水素を定量した。すなわち、過酸化水素の定量では、発生した酸素をガスビュレットにより測定し、得られた実測の酸素の体積値(v)を下記数式(II)で換算し、大気圧と水蒸気圧を考慮した条件下(0℃,101325Pa(760mmHg))での気体発生量(V)を求めた。
【0220】
【数1】


[上記数式(II)中、P:大気圧(mmHg)、p:水の蒸気圧(mmHg)、t:温度(℃)、v:実測の体積値(ml)、V:0℃、101325Pa(760mmHg)下の体積値(ml)を示す。]
【0221】
過酸化水素分解試験の結果、過酸化水素の分解に伴う酸素が経時的に発生することが判明し、1時間にV=2.37mlの酸素発生が観測された。これより本発明のレドックス触媒(不均一系触媒)は過酸化水素の分解触媒活性を持つことが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0222】
【図1】製造例1で得られたbbpr−CHSt配位子の1H−NMR分析チャートである。
【図2】製造例4で得られたP45Na錯体前駆体の1H−NMR分析チャートである。
【図3】実施例1で得られたMn−vb−(bbpr−CHSt)−P45のIR分析チャートである。
【図4】実施例2で得られた高分子錯体の走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】実施例2で得られた高分子錯体のIRスペクトルである。
【図6】実施例3で得られた高分子錯体・カーボンブラック複合体の走査型電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(i)〜(iv)の条件を満たす錯体。
(i)1個以上の遷移金属原子を有すること
(ii)前記遷移金属原子に配位結合する配位原子を3個以上含む多座配位子を有すること
(iii)前記多座配位子に結合した1個以上のビニル基を含む置換基を有すること
(iv)有機酸塩構造、アミン塩構造、アンモニウム塩構造、ピリジニウム塩構造、イミダゾリウム塩構造、水酸基構造、エーテル構造及び酸アミド構造の何れかの構造を有すること
【請求項2】
前記条件(iv)として、下記一般式(1−1)、(1−2)、(1−3)、(1−4)、(1−5)、(1−6)、(1−7)、(1−8)、(1−9)で表される官能基の少なくとも1つを有することを特徴とする請求項1に記載の錯体。
【化1】


[式中、nは1〜500の整数、Eは、プロトン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン又はアンモニウムイオン、Rは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜50のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜50のアリール基、Xは、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、メタンスルホン酸イオン又はトリフルオロメタンスルホン酸イオン、をそれぞれ示す。]
【請求項3】
下記一般式(2)で表される構造を有する請求項1又は2に記載の錯体。
(L01(M)(L02 (2)
[式中、Mは遷移金属原子、mは1〜20の整数、pは1〜5の整数、qは1〜20の整数、をそれぞれ示す。L01は、窒素配位原子を含む3個以上の配位原子を有する多座配位子であり、ビニル基を含む置換基又は下記一般式(1−1)
−(OCHCH(R))OR (1−1)
で表される官能基を含む置換基(nは1〜500の整数、Rは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜50のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜50のアリール基、をそれぞれ示す。)を備える。L02は、配位子又は対イオンであり、ビニル基を含む置換基又は前記一般式(1−1)で表される官能基を含む置換基を備える。但し、L01及びL02における置換基の組合せは、ビニル基を含む置換基及び前記一般式(1−1)で示される官能基の組合せでなければならない。]
【請求項4】
2個以上の遷移金属原子を有し、
前記2個以上の遷移金属原子のうち2個の遷移金属原子が同一の配位原子と配位結合している構造が少なくとも1つ存在する請求項1〜3のいずれか一項に記載の錯体。
【請求項5】
2個以上の遷移金属原子を有し、
前記2個以上の遷移金属原子のうち一の遷移金属原子に配位結合した配位原子と、前記2個以上の遷移金属原子のうち当該一の遷移金属原子以外の遷移金属原子に配位結合した配位原子とが、1〜4個の共有結合を介して結合している構造が少なくとも1つ存在する請求項1〜4のいずれか一項に記載の錯体。
【請求項6】
前記一般式(2)のL01が下記一般式(3)で表される構造を有する請求項3〜5のいずれか一項に記載の錯体。
【化2】


[式中、Ar、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に、ビニル基を有していてもよい含窒素芳香族複素環基、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、ビニル基を有していてもよい2価の基、Z及びZは、それぞれ独立に、窒素原子又は3価の基、をそれぞれ示す。但し、Ar、Ar、Ar、Ar、R、R、R、R及びRの少なくとも1つはビニル基を有する。]
【請求項7】
前記一般式(2)のL01が下記一般式(3a)又は(3b)で表される構造を有する請求項3〜6のいずれか一項に記載の錯体。
【化3】


【化4】


[式中、Y、Y、Y及びYは、それぞれ独立に、水素原子、ビニル基を有していてもよい炭素数1〜50のアルキル基又はビニル基を有していてもよい炭素数2〜60の芳香族基を示す。但し、Y、Y、Y及びYのうち少なくとも1つは、ビニル基を有する炭素数1〜50のアルキル基、又はビニル基を有する炭素数2〜60の芳香族基である。]
【請求項8】
前記一般式(2)のL02が下記一般式(4)で表される構造を有する請求項3〜7のいずれか一項に記載の錯体。
01−(OCHCH(R))OR (4)
[式中、Rは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜50のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜50のアリール基、G01は下記式(4−1)、(4−2)、(4−3)、(4−4)のいずれかで表される官能基を含む置換基、をそれぞれ示す。]
【化5】


[式(4−4)中、Rは前記一般式(4)のRと同義である。]
【請求項9】
前記遷移金属原子が第一遷移元素系列の遷移金属原子である請求項1〜8のいずれか一項に記載の錯体。
【請求項10】
固体電子スピン共鳴スペクトルにおいて、下記式(I)によって定義されるgTOPが1.8000〜2.2400の範囲にある、請求項1〜9のいずれか一項に記載の錯体。
gTOP=hν/βH (I)
[式中、hはプランク定数、νは測定電磁波の共鳴周波数、βはボーア磁子、Hは観測されるESR信号が極大を示す磁場強度をそれぞれ示す。]
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の錯体を重合させることにより得ることのできる高分子錯体。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の錯体とコモノマーとを共重合させることにより得ることのできる高分子錯体。
【請求項13】
前記コモノマーが、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド及びクロロアクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項12に記載の高分子錯体。
【請求項14】
前記コモノマーが、アクリル酸、アクリル酸塩、メタクリル酸、メタクリル酸塩、ビニルホスホン酸、ビニルホスホン酸塩、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸塩、スチレンスルホン酸エステル、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸塩及びビニルスルホン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項12又は13に記載の高分子錯体。
【請求項15】
粒子状を成しており、平均粒径が10nm〜1μmである、請求項11〜14のいずれか一項に記載の高分子錯体。
【請求項16】
熱重量−マススペクトルにおいて、分子イオンの質量数をm、当該分子イオンの電荷数をZとしたときに、m/Zが53又は67の分子イオンピークを示す、請求項11〜15のいずれか一項に記載の高分子錯体。
【請求項17】
赤外分光法において、2200〜2300cm−1の領域に吸収極大を有する、請求項11〜16のいずれか一項に記載の高分子錯体。
【請求項18】
元素組成において、前記遷移金属原子の含有量が0.01重量%〜8重量%である、請求項11〜17のいずれか一項に記載の高分子錯体
【請求項19】
固体電子スピン共鳴スペクトルにおいて、下記式(I)によって定義されるgTOPが1.8000〜2.2400の範囲にある、請求項11〜18のいずれか一項に記載の高分子錯体。
gTOP=hν/βH (I)
[式中、hはプランク定数、νは測定電磁波の共鳴周波数、βはボーア磁子、Hは観測されるESR信号が極大を示す磁場強度をそれぞれ示す。]
【請求項20】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の錯体をカーボンブラックの存在下で重合させることによって得ることのできる、高分子錯体複合体。
【請求項21】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の錯体とコモノマーとをカーボンブラックの存在下で共重合させることによって得ることのできる、高分子錯体複合体。
【請求項22】
前記コモノマーが、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド及びクロロアクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項21に記載の高分子錯体複合体。
【請求項23】
前記コモノマーが、アクリル酸、アクリル酸塩、メタクリル酸、メタクリル酸塩、ビニルホスホン酸、ビニルホスホン酸塩、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸塩、スチレンスルホン酸エステル、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸塩及びビニルスルホン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項21又は22に記載の高分子錯体複合体。
【請求項24】
粒子状を成しており、平均粒径が10nm〜1μmである請求項20〜23のいずれか一項に記載の高分子錯体複合体。
【請求項25】
熱重量−マススペクトルにおいて、分子イオンの質量数をm、当該分子イオンの電荷数をZとしたときに、m/Zが53又は67の分子イオンピークを示す、請求項の20〜24のいずれか一項に記載の高分子錯体複合体。
【請求項26】
元素組成において、上記遷移金属原子の含有量が0.01重量%〜8重量%である、請求項20〜25のいずれか一項に記載の高分子錯体複合体。
【請求項27】
固体電子スピン共鳴スペクトルにおいて、下記式(I)によって定義されるgTOPが1.8000〜2.2400の範囲にある、請求項20〜26のいずれか一項に記載の高分子錯体複合体。
gTOP=hν/βH (I)
[式中、hはプランク定数、νは測定電磁波の共鳴周波数、βはボーア磁子、Hは観測されるESR信号が極大を示す磁場強度をそれぞれ示す。]
【請求項28】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の錯体、請求項11〜19のいずれか一項に記載の高分子錯体、又は請求項20〜27のいずれか一項に記載の高分子錯体複合体、を含有するレドックス触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−57374(P2009−57374A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198541(P2008−198541)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】