説明

錯体

【課題】多座ピリジル系の配位子と特定の配位子を組み合わせて用いることによって、膜状態で優れた発光量子効率を示す錯体を提供する。
【解決手段】組成式(1)で表される錯体(式中、Mは金属のイオンであり、Yは−C(R4)=C(R5)−、−N=C(R6)−、−N(R7)−、−O−、又は−S−であり、Spは炭素原子数が1から18の範囲の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、Coreは炭素原子数が1から30の範囲のn+m価の炭化水素基か、又は、炭素原子数が1から30の範囲のn+m価のヘテロ化合物残基であり、R1は炭素原子数が1から18の範囲の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、mは0以上6以下の整数であり、nは2以上6以下の整数であり、Xはアニオンであり、a、b、及びcはそれぞれ独立に正の数である。)、及び該錯体を含有する膜を提供する。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は錯体に関する。
【背景技術】
【0002】
金属錯体を用いた発光材料として、銅錯体が報告されている。中でも、窒素原子含有複素環系配位子を用いた銅錯体が種々検討されており、3座ピリジル系のみを配位子とした銅錯体が結晶状態で発光特性を示すことが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−174052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この3座ピリジル系のみを配位子とした銅錯体は、膜状態での発光量子効率が低いという問題があった。
そこで、本発明は、膜状態で優れた発光量子効率を示す錯体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、第一に、下記組成式(1)で表される錯体を提供する。
【化1】

(式中、MはCu、Ag、Au、Al、Ir、Ru、Re、Rh、Ce、Pr、Nd、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Fe、Mn、Cr、Bi、Pb、Sn、及びSbからなる群より選ばれる1種類以上の金属のイオンである。Yは−C(R4)=C(R5)−、−N=C(R6)−、−N(R7)−、−O−、又は−S−である。ここで、R4、R5、R6、及びR7はそれぞれ独立に水素原子、又は炭素原子数が1から18の範囲の有機基である。R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数が1から18の範囲の有機基である。R2、R3、R4、R5、R6、及びR7のうち任意の2つが互いに連結して環構造を形成してもよい。Spは炭素原子数が1から18の範囲の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、該アルキレン基中の1つ又は隣接しない2つ以上のメチレン基は、−O−、−S−、−C(=O)−、−O−C(=O)−、及び−O−C(=O)−O−からなる群より選ばれる1つ以上で置き換えられてもよく、該アルキレン基中にエチレン基が存在する場合、−CH=CH−及び−C≡C−からなる群より選ばれる1つ以上で置き換えられてもよく、該アルキレン基中の水素原子は、ハロゲン原子で置き換えられてもよい。Coreは炭素原子数が1から30の範囲のn+m価の炭化水素基か、又は、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群より選ばれる1種類以上の原子を含有する炭素原子数が1から30の範囲のn+m価のヘテロ化合物残基を表す。R1は炭素原子数が1から18の範囲の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、該アルキル基中のメチレン基、エチレン基、及び水素原子は上記Spの場合と同様に置換されていてもよい。mは0以上6以下の整数であり、nは2以上6以下の整数である。複数個のR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、X、Y、及びSpが存在する場合、これらは同じでも異なっていてもよい。L2はMに配位可能な原子を有する中性分子である。Xはアニオンである。a、b、及びcはそれぞれ独立に正の数である。)
【0006】
本発明は第二に、前記錯体を含有する膜を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の錯体は、膜状態で優れた発光量子効率を示す。すなわち、本発明の錯体は発光材料として工業的に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を説明する。
【0009】
本発明の錯体は、前記組成式(1)で表される。
【0010】
式(1)において、MはCu、Ag、Au、Al、Ir、Ru、Re、Rh、Ce、Pr、Nd、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Fe、Mn、Cr、Bi、Pb、Sn、及びSbからなる群より選ばれる1種類以上の金属のイオンである。好ましくはCu、Ag、Au、Al、Ir、Ru、Re、及びRhからなる群より選ばれる1種類以上の金属のイオンであり、より好ましくはCu、Ag、及びAuからなる群より選ばれる1種類以上の金属のイオンであり、更に好ましくは銅(I)イオンである。Mは1種類の金属のイオンであってもよいし、2種類以上の金属のイオンであってもよいが、1種類の金属イオンであることが好ましい。
【0011】
式(1)において、Yは−C(R4)=C(R5)−、−N=C(R6)−、−N(R7)−、−O−、又は−S−である。ここで、R4、R5、R6、及びR7はそれぞれ独立に水素原子、又は炭素原子数が1から18の範囲の有機基である。該有機基としては、例えば、直鎖状又は分岐状のアルキル基、シアノ基、アリール基誘導体から水素原子を1つ除いた基(アリール基とは、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、及びアントリル基である。)、アルコキシ基誘導体から水素原子を1〜3つ除いた基、アミノ基誘導体から水素原子を1つ除いた基、及びエステル基誘導体から水素原子を1つ除いた基が挙げられる。R4、R5、R6、及びR7中に1つ又は隣接しない2つ以上のメチレン基が存在する場合、それらのメチレン基のうち1つ以上は、−O−、−S−、−C(=O)−、−O−C(=O)−、及び−O−C(=O)−O−からなる群より選ばれる1つ以上で置き換えられてもよく、R4、R5、R6、及びR7中に1つ以上のエチレン基が存在する場合、それらのうち1つ以上は−CH=CH−及び−C≡C−からなる群より選ばれる1つ以上で置き換えられてもよい。R4、R5、R6、及びR7中の1つ以上の水素原子は、ハロゲン原子で置き換えられてもよい。
【0012】
4、R5、及びR6として、それぞれ独立に、好ましくは水素原子、炭素原子数が1から12の範囲の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素原子数が6から12の範囲のアリール基、又は炭素原子数が1から12の範囲のアルコキシ基であり、より好ましくは水素原子、及び炭素原子数が1から8の範囲の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であり、更に好ましくは水素原子である。
【0013】
7として、好ましくは水素原子、炭素原子数が1から12の範囲の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、又は炭素原子数が6から12の範囲のアリール基であり、より好ましくは炭素原子数が1から12の範囲の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、又は炭素原子数が6から12の範囲のアリール基であり、更に好ましくは炭素原子数が1から12の範囲の直鎖状のアルキル基である。
【0014】
Yが−C(R4)=C(R5)−の場合、組成式(1)中の[ ]aでくくられる構造(以下、L1と表記する。)は、ピリジン環を有する下記構造式(2)で表される。Yが−N=C(R6)−の場合、L1はピリミジン環を有する下記構造式(3)で表される。Yが−N(R7)−の場合、L1はイミダゾール環を有する下記構造式(4)で表される。Yが−O−の場合、L1はオキサゾール環を有する下記構造式(5)で表される。Yが−S−の場合、L1はチアゾール環を有する下記構造式(6)で表される。L1は、好ましくは構造式(2)、(4)、又は(6)で表される構造であり、より好ましくは構造式(2)、又は(4)で表される構造であり、更に好ましくは構造式(2)で表される構造である。
【0015】
【化2】

【0016】
式(1)におけるR2及びR3はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数が1から18の範囲の有機基である。該有機基としては、例えば、直鎖状又は分岐状のアルキル基、シアノ基、アリール基誘導体(アリール基とは例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基等を示す。)、アルコキシ基誘導体、アミノ基誘導体、及びエステル基誘導体が挙げられる。R2及びR3中に1つ又は隣接しない2つ以上のメチレン基が存在する場合、それらのメチレン基のうち1つ以上は−O−、−S−、−C(=O)−、−O−C(=O)−、及び−O−C(=O)−O−からなる群より選ばれる1つ以上で置き換えられてもよく、R2及びR3中に1つ以上のエチレン基が存在する場合、それらのうち1つ以上は−CH=CH−及び−C≡C−から選ばれる1つ以上で置き換えられてもよく、R2及びR3で表される有機基中の水素原子はハロゲン原子で置き換えられてもよい。
【0017】
2として、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、炭素原子数が1から12の範囲の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素原子数が6から12の範囲のアリール基、又は炭素原子数が1から12の範囲のアルコキシ基であり、より好ましくはハロゲン原子、トリフルオロメチル基、炭素原子数が1から12の範囲の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素原子数が6から12の範囲のアリール基、又は炭素原子数が1から12の範囲のアルコキシ基であり、更に好ましくはフッ素原子、トリフルオロメチル基、、炭素原子数が1から12の範囲の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、又は炭素数が1から12の範囲のアルコキシ基であり、特に好ましくはメチル基、フッ素原子、トリフルオロメチル基、又はメトキシ基である。
【0018】
3として、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1から12の範囲の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素原子数が6から12の範囲のアリール基、又は炭素原子数が1から12の範囲のアルコキシ基であり、より好ましくは水素原子、又は炭素原子数が1から8の範囲の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であり、更に好ましくは水素原子である。
【0019】
前記R2、R3、R4、R5、R6、及びR7のうち任意の2つが互いに連結して環構造を形成してもよい。組成式(1)におけるL1が上記構造式(2)で表される構造である場合、R2とR3が形成する環構造の代表的な構造の例は、下記構造式(7)で表される構造である。
【0020】
【化3】

【0021】
式(1)におけるCoreは、炭素原子数が1から30の範囲のn+m価の炭化水素基か、又は窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群より選ばれる1種類以上の原子を含有する炭素原子数が1から30の範囲のn+m価のヘテロ化合物残基を表す。Coreの例としては、直鎖状又は分岐状のアルキレン基、芳香族炭化水素a残基、及び、窒素原子、酸素原子、並びに硫黄原子からなる群より選ばれる1種類以上の原子を含有するヘテロ化合物のa残基が挙げられる。
【0022】
本明細書において、「x残基」とは、「x」の直前に示される化合物から水素原子がx個除かれたx価の基を意味する。例えば、芳香族炭化水素a残基とは、芳香族炭化水素から水素原子がa個除かれたa価の基(すなわち、a価の芳香族炭化水素残基)を意味する。ヘテロ化合物のa残基とは、ヘテロ化合物から水素原子がa個除かれたa価の基(すなわち、a価のヘテロ化合物残基)を意味する。
【0023】
前記直鎖状又は分岐状のアルキレン基としては、環状構造を有するものが好ましい。環状構造を有する直鎖状又は分岐状のアルキレン基としては、例えば、シクロペンタン(下記式C−1)a残基、シクロヘキサン(下記式C−2)a残基、シクロヘプタン(下記式C−3)a残基、及びアダマンタン(下記式C−4)a残基が挙げられる。前記芳香族炭化水素a残基としては、例えば、ベンゼン(下記式C−5)a残基、ナフタレン(下記式C−6)a残基、アントラセン(下記式C−7)a残基、ピレン(下記式C−8)a残基、トリフェニレン(下記式C−9)a残基、及びペリレン(下記式C−10)a残基が挙げられる。前記窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群より選ばれる1種類以上の原子を含有するヘテロ化合物のa残基としては、例えば、ピリジン(下記式C−11)a残基、ピラジン(下記式C−12)a残基、フラン(下記式C−13)a残基、及びチオフェン(下記式C−14)a残基が挙げられる。これらの中で、式(1)におけるCoreは、前記芳香族炭化水素a残基であることが好ましく、ベンゼンa残基であることがより好ましい。
【0024】
【化4】

【0025】
式(1)におけるm個のR1は炭素原子数が1から18の範囲の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、該アルキル基中のメチレン基、エチレン基、及び水素原子は、Spの場合と同様に置換されていてもよい。すなわち、R1で表される該アルキル基中に1つ又は隣接しない2つ以上のメチレン基が存在する場合、それらのメチレン基のうち1つ以上は−O−、−S−、−C(=O)−、−O−C(=O)−、及び−O−C(=O)−O−からなる群より選ばれる1つ以上で置き換えられてもよく、R1中に1つ以上のエチレン基が存在する場合、それらのうち1つ以上は−CH=CH−及び−C≡C−からなる群より選ばれる1つ以上で置き換えられてもよく、R1で表されるアルキル基中の水素原子はハロゲン原子で置き換えられてもよい。R1における該アルキル基の炭素原子数は、1から12の範囲であることが好ましく、1から8の範囲であることがより好ましく、1から6の範囲であることが更に好ましい。R1は好ましくはエチル基である。
【0026】
式(1)におけるスペーサ部(Sp)は、炭素原子数が1から18の範囲の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、該アルキレン基中の1つ又は隣接しない2つ以上のメチレン基は、−O−、−S−、−C(=O)−、−O−C(=O)−、及び−O−C(=O)−O−からなる群より選ばれる1つ以上で置き換えられてもよく、該アルキレン基中にエチレン基が存在する場合、それらは−CH=CH−及び−C≡C−からなる群より選ばれる1つ以上で置き換えられてもよく、該アルキレン基中の水素原子は、ハロゲン原子で置き換えられてもよい。
Spがメチレン基である場合、メチレン基が−O−又は−S−に置き換えられて、炭素原子数が0になってもよい。
【0027】
Spにおける該アルキレン基の炭素原子数は、1から12の範囲であることが好ましく、1から8の範囲であることがより好ましく、1から6の範囲であることが更に好ましい。特に好ましくは2であり、この場合のSpはエチレン基である。
【0028】
式(1)におけるmは0以上6以下の整数であり、nは2以上6以下の整数である。好ましくは、m及びnがそれぞれ独立に2以上4以下の整数であり、より好ましくは、m及びnが2以上4以下の整数であり、かつ、m+n=6[即ち、n=2とm=4、n=3とm=3、及びn=4とm=2]であり、更に好ましくは、m=3とn=3である。
【0029】
組成式(1)における特に好ましいL1の構造としては、Spがエチレン基であり、R1がエチル基であり、Coreが6価のベンゼン残基であり、m=3であり、n=3であり、SpがCoreのベンゼン環の1、3、5位に、R1がCoreのベンゼン環の2、4、6位に、それぞれ結合しており、Yが−C(R4)=C(R5)−であり、R2はメチル基、フッ素原子、又はトリフルオロメチル基であり、R3、R4、及びR5は水素原子である構造が挙げられる。
【0030】
組成式(1)におけるL1の例を式Com1〜Com14に示す。
【0031】
【化5】

【0032】
式Com1〜Com14中、好ましくは式Com1〜Com7及びCom11〜Com14であり、より好ましくは式Com1、Com4〜Com7、及び式Com11〜Com13であり、更に好ましくは式Com1、Com12、及びCom13である。
【0033】
前記式(1)において、L2はMに配位可能な原子を有する中性分子である。L2はMに配位可能なリン原子を有する中性分子であることが好ましい。
【0034】
2はMに配位していることが好ましく、単座配位子としてMに配位しても、二座配位子としてMに配位してもよいが、二座配位子としてMに配位することがより好ましい。
【0035】
2の炭素原子数は、通常2から200の範囲であり、好ましくは4から150の範囲、より好ましくは6から100の範囲であり、更に好ましくは10から80の範囲である。
【0036】
2の構造は、下記式(A)、(B)、(C)、又は(D)で表される構造であることが好ましい。L2の構造は、好ましくは式(A)、(B)、又は(C)で表される構造であり、より好ましくは式(B)又は(C)で表される構造である。
【0037】
【化6】

【0038】
(式(A)中、R11は置換されていてもよいアリール基である。3つのR11は同じでも異なっていてもよい。)
【0039】
【化7】

【0040】
(式(B)中、R21は2価の有機基である。R22は置換されていてもよいアリール基であり、4つのR22は同じでも異なっていてもよい。)
【0041】
【化8】

【0042】
(式(C)中、R31は2価の有機基であり、2つのR31は同じでも異なっていてもよい。R32及びR33はそれぞれ独立に置換されていてもよいアリール基であり、4つのR32とR33は同じでも異なっていてもよい。)
【0043】
【化9】

【0044】
(式(D)中、R41は3価の有機基である。R42は置換されていてもよいアリール基であり、6つのR42は同じでも異なっていてもよい。)
【0045】
上記R11、R22、R32、R33、及びR42で表されるアリール基の例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基、4−フェニルフェニル基、及び9−フルオレニル基が挙げられ、好ましくはフェニル基、2−メチルフェニル基、1−ナフチル基、及び4−ブチルフェニル基であり、更に好ましくはフェニル基である。
【0046】
本明細書において、「置換されていてもよい」とは、その直後に記載された化合物又は基を構成する水素原子の一部又は全部が置換基によって置換されていてもよいことを意味する。置換基によって置換されている場合の置換基としては、特に説明のない限り、ハロゲン原子、炭素原子数が1から30の範囲のヒドロカルビル基、及び炭素原子数が1から30の範囲のヒドロカルビルオキシ基が挙げられ、これらの中でも、ハロゲン原子、炭素原子数が1から12の範囲のヒドロカルビル基、及び炭素原子数が1から12の範囲のヒドロカルビルオキシ基が好ましく、ハロゲン原子及び炭素原子数が1から12の範囲のヒドロカルビル基がより好ましく、ハロゲン原子及び炭素原子数が1から6の範囲のヒドロカルビル基が更に好ましい。
【0047】
複数あるR11、R22、R32、R33、及びR42は、それぞれ同じでも異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
【0048】
上記R21及びR31で表される2価の有機基の例としては、以下のものが挙げられる。
置換されていてもよい炭素原子数が1から30の範囲のアルカンジイル基;置換されていてもよい炭素原子数が2から30の範囲のアルケンジイル基;置換されていてもよい主鎖炭素原子数が2から30の範囲のアルキンジイル基;置換されていてもよい炭素原子数が4から30の範囲のシクロアルカンジイル基;置換されていてもよいヒドロカルビレン基と−O−及び/又は−S−とを組み合わせてできる2価の基;置換されていてもよい下記式r1〜r12のいずれかで表される2価の基(より具体的には下記式r1’〜r12’のいずれかで表される基)。
【0049】
【化10】

【0050】
(式中、Y1は、−(C(R512mm−、−O−、−S−、−N(R50)−、−Si(R512−、−O(C(R512mm−、又は−O(C(R512mm−O−である。Y2は、−(C(R512mm−、−O−、−S−、又は−Si(R512−である。mmは1〜3の整数である。R50は置換されていてもよい炭素原子数が6から30の範囲のアリール基であり、R51は水素原子又は置換されていてもよい炭素原子数が1から30の範囲のヒドロカルビル基である。複数あるR51は同じでも異なっていてもよい。)
【0051】
上記R50で表される置換されていてもよい炭素原子数が6から30の範囲のアリール基の、炭素原子数が6から30の範囲のアリール基の例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基、4−フェニルフェニル基、及び9−フルオレニル基が挙げられ、好ましくはフェニル基である。
【0052】
上記R51で表される置換されていてもよい炭素原子数が1から30の範囲のヒドロカルビル基の、ヒドロカルビル基は、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基等の炭素原子数が1から18の範囲のアルキル基;フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−(2−エチルヘキシル)フェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基等の炭素原子数が6から24の範囲のアリール基であり、より好ましくは、炭素原子数が1から8の範囲のアルキル基又はフェニル基であり、更に好ましくは、炭素原子数が1から6の範囲のアルキル基である。
【0053】
前記置換されていてもよい式r1〜r12で表される基の例である、置換されていてもよいr1’〜r12’で表される基を以下に示す。
【0054】
【化11】

【0055】
(式中、Y3は、−(C(R532nn−、−O−、−S−、−N(R52)−、又は−Si(R532−である。nnは1又は2である。R52は、置換されていてもよい炭素原子数が6から18の範囲のアリール基であり、R53は、水素原子、又は置換されていてもよい炭素原子数が1から18の範囲のヒドロカルビル基である。複数あるR53は同じでも異なっていてもよい。)
【0056】
上記R52で表される置換されていてもよい炭素原子数が6から18の範囲のアリール基の、炭素原子数が6から18の範囲のアリール基の例と好ましい構造は、前記R50で表される置換されていてもよい炭素原子数が6から30の範囲のアリール基の、炭素原子数が6から30の範囲のアリール基の例と好ましい構造のうち、炭素原子数が6から18の範囲のものと同様である。
【0057】
上記R53で表される置換されていてもよい炭素原子数が1から18の範囲のヒドロカルビル基の、炭素原子数が1から18の範囲のヒドロカルビル基の例と好ましい構造は、前記R51で表される置換されていてもよい炭素原子数が1から30の範囲のヒドロカルビル基の、炭素原子数が1から30の範囲のヒドロカルビル基の例と好ましい構造のうち、炭素原子数が1から18の範囲のものと同様である。
【0058】
前記上記R21及びR31は、それぞれ独立に、好ましくは置換されていてもよい前記式r1〜r12のいずれかで表される基であり、更に好ましくは、置換されていてもよい前記式r1'、r5'、r6'、及びr10'のいずれかで表される基、及び、前記式r12'で表される基であって、式中のY3が−C(CH32−である基からなる群から選ばれる基である。
【0059】
複数あるR31は、それぞれ同じでも異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
【0060】
上記R41は3価の有機基である。R41で表される3価の有機基の例としては、下記式r31、r32、及びr33のいずれかで表される基が挙げられ、好ましくは式r31又はr33で表される基であり、より好ましくは式r31で表される基である。
【化12】

(式r31〜r33中、Y4はC又はSiである。Y5及びY6はそれぞれ独立に、直接結合又は置換されていてもよい−(CH2n1−であり、該CH2は隣同士でない限り任意の数だけ−O−又は−S−に置き換わってもよく、n1は1〜8の整数であり、好ましくは1である。複数のY5及びY6はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。R31は置換されていてもよい炭素原子数が1から30の範囲のヒドロカルビル基である。R32は、直接結合又は置換されていてもよい上記r1〜r12のいずれかで表される基である。複数あるR32は同じでも異なっていてもよい。Y5、Y6、R31、及びR32から選ばれる2つ以上の基が任意に結合して環を形成してもよい。)
【0061】
上記R31における置換されていてもよいヒドロカルビル基の、ヒドロカルビル基として、例えば、炭素原子数が1から8の範囲のアルキル基及びフェニル基が挙げられ、好ましくは、炭素原子数が1から6の範囲のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0062】
上記Y5として、好ましくは、直接結合、置換されていてもよい−(CH2)−、置換されていてもよい−(CH22−、及び置換されていてもよい−(CH23−であり、より好ましくは−(CH2)−である。
【0063】
上記Y6として、好ましくは、直接結合、置換されていてもよい−(CH2)−、置換されていてもよい−(CH22−、及び置換されていてもよい−(CH23−であり、より好ましくは直接結合である。
【0064】
上記R32として、好ましくは直接結合、置換されていてもよい前記式r1、r2、r4、r5、r8、及びr10で表される基であり、より好ましくは直接結合である。
【0065】
前記式(A)の具体的な構造例を下記式Aa1〜13に、前記式(B)の具体的な構造例を下記式Ba1〜16に、前記式(C)の具体的な構造例を下記式Ca1〜7に、前記式(D)の具体的な構造例を下記式Da1〜11に、それぞれ挙げる。なお、本明細書において、Meはメチル基、Etはエチル基、t−Buはtert−ブチル基、Phはフェニル基を表す。
【0066】
【化13】

【0067】
式Aa1〜Aa13で表される分子のうち、好ましくは式Aa1〜Aa4で表される分子、Aa6、Aa8、及びAa9で表される分子であり、より好ましくは式Aa1で表される分子である。
【0068】
【化14】

【0069】
式Ba1〜Ba16で表される分子のうち、好ましくは式Ba1〜Ba8、Ba11、及びBa12で表される分子である。
【0070】
【化15】

【0071】
式Ca1〜Ca7で表される分子のうち、好ましくは式Ca1、Ca4、Ca5、及びCa7で表される分子である。
【0072】
【化16】

【0073】
式Da1〜Da11で表される分子のうち、好ましくは式Da1〜Da4、及びDa8〜Da11で表される分子であり、より好ましくは式Da1〜Da4で表される分子である。
【0074】
式(1)中、b個あるL2は複数種の混合であってもよいが、単一種であることが好ましい。
【0075】
前記組成式(1)で表される錯体においてXはアニオンであり、具体的には、ハロゲン化物イオン(例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン)、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、ヘキサフルオロアンチモンイオン、ヘキサフルオロヒ素イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオンのほか、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、酢酸イオン、過塩素酸イオン、メタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、パラトルエンスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、及びテトラフェニルボレートイオン等が挙げられ、好ましくは、ハロゲン化物イオンであり、より好ましくは、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンであり、更に好ましくは塩化物イオン及びヨウ化物イオンである。
【0076】
前記組成式(1)においてaは正の数であり、好ましくは0.1〜1.0の数であり、より好ましくは0.2〜0.7の数であり、更に好ましくは0.3〜0.4の数である。
【0077】
前記組成式(1)において、bは正の数であり、好ましくは0.01〜3.0の数であり、より好ましくは0.1〜2.0の数であり、更に好ましくは0.2〜1.5の数であり、特に好ましくは0.3〜1.0の数である。
【0078】
前記組成式(1)において、cは正の数であり、好ましくは0.1〜2.0の数であり、より好ましくは0.5〜1.5の数であり、更に好ましくは1.0である。
【0079】
本発明の錯体の例を表1−1〜1−8に示す。
【0080】
【表1−1】

【0081】
【表1−2】

【0082】
【表1−3】

【0083】
【表1−4】

【0084】
【表1−5】

【0085】
【表1−6】

【0086】
【表1−7】

【0087】
【表1−8】

【0088】
表1−1〜1−8中、錯体番号1〜45、91〜135、及び181〜225が好ましく、錯体番号19〜45、109〜135、及び199〜225がより好ましく、錯体番号19、22、25、28、31、34、37、40、43、109、112、115、118、121、124、127、130、133、199、202、205、208、211、214、217、220、及び223が更に好ましい。
【0089】
本発明の錯体は、溶媒中で金属塩と前記L1、L2、及びXに相当する分子とを混合する等の常法に従って製造できる。
【0090】
本発明の錯体について、前記錯体番号22を例に挙げて説明すると、アルゴンガス雰囲気下、0.33mmolのCom1と、1mmolの塩化銅(I)と、溶媒(例えば、アセトニトリル、ジクロロメタン)50mLとを混合し、30分程度加熱し還流させる。反応液に、0.67mmolのBa6の溶液(例えば、クロロホルム、ジクロロメタンの溶液)30mLを加え、更に30分時間程度加熱し還流させる。反応液から溶媒を留去することにより、本発明の錯体を得ることができる。
【0091】
本発明は、前記錯体を含有する膜を提供する。
【0092】
本発明が提供する膜の厚さは、通常、1nm〜50μmであり、好ましくは3nm〜5μmであり、より好ましくは5nm〜1μmであり、更に好ましくは10nm〜200nmである。膜はピンホールや凹凸の形状を含んでいてもよいが、平坦な形状が好ましい。
【0093】
本発明の膜は、例えば、本発明の錯体と他の成分とを任意の割合で基板上に蒸着する工程を含む方法によって、又は本発明の錯体と他の成分とを任意の割合で溶媒中に懸濁又は溶解させ塗布する工程を含む方法によって、製造することができる。好ましくは塗布する工程を含む方法によって製造される。
【0094】
前記塗布する工程に使用する溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサン、シクロヘキサン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0095】
塗布方法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、ディップコート法、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット法、及びオフセット印刷が挙げられる。
【0096】
本発明の膜は、その他の成分を含んでいてもよい。該成分には、低分子有機材料、高分子有機材料、有機無機複合材料、無機材料、及びそれらの混合物が使用でき、用途に応じて任意に選択できる。該成分としては、例えば、フルオレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリジミン誘導体、トリアジン誘導体、ポリアセン誘導体、アリールシラン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、スチリルアミン誘導体、芳香族ジメチリジン誘導体、ポルフィリン誘導体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、芳香環(例えば、ナフタレン、ペリレン)のテトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、金属錯体(例えば、8−キノリノール誘導体の金属錯体、メタルフタロシアニンを配位子とする金属錯体、ベンゾオキサゾールを配位子とする金属錯体、ベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体)、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物又は希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属錯体、アルカリ土類金属錯体、希土類金属錯体、支持塩(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸カリウム、テトラフルオロホウ酸テトラ−n−ブチルアンモニウム等)を含有してもよい溶媒(プロピレンカーボネート、アセトニトリル、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソフラン、ニトロベンゼン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、グリセリン、プロピルアルコール、水等)、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0097】
好ましくは、フルオレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリジミン誘導体、トリアジン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ポリアセン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、スチリルアミン誘導体、ポルフィリン誘導体、チオフェンオリゴマー、ジフェニルキノン誘導体、芳香環(例えば、ナフタレン、ペリレン)のテトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、金属錯体(例えば、8−キノリノール誘導体の金属錯体、メタルフタロシアニンを配位子とする金属錯体、ベンゾオキサゾールを配位子とする金属錯体、及びベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体)である。
【0098】
膜中の本発明の錯体の含量は、膜全体の重量に対して、通常、0.01〜100重量%であり、好ましくは1〜90重量%であり、より好ましくは5〜80重量%であり、特に好ましくは10〜50重量%である。
【0099】
上述したその他の成分である高分子化合物のポリスチレン換算の数平均分子量は、通常、1×103〜1×108であり、好ましくは1×103〜1×107であり、より好ましくは2×103〜1×106であり、更に好ましくは3×103〜5×105であり、特に好ましくは5×103〜1×105である。
【0100】
本発明の錯体は、例えば、発光素子の材料として用いることができる。該発光素子は、通常、陽極と陰極からなる一対の電極と、該電極間に設けられた発光層を有する一層又は複数層からなる薄膜層とが挟持されている発光素子であり、該薄膜層の少なくとも1層が、本発明の錯体を含有する発光素子である。
【0101】
前記発光素子において、本発明の錯体を含む膜層中の該錯体の含有量は、該層全体の重量に対し、通常0.01〜100重量%であり、好ましくは0.1〜99重量%であり、より好ましくは1〜90重量%であり、更に好ましくは5〜80重量%であり、特に好ましくは10〜50重量%である。
【0102】
前記発光素子としては、例えば、単層型の発光素子(陽極/発光層/陰極)が挙げられ、多層型の発光素子の層構成としては、例えば、以下の層構成が挙げられる。
(a)陽極/正孔注入層/(正孔輸送層)/発光層/陰極
(b)陽極/発光層/電子注入層/(電子輸送層)/陰極
(c)陽極/正孔注入層/(正孔輸送層)/発光層/電子注入層/(電子輸送層)/陰極
(d)陽極/発光層/(電子輸送層)/電子注入層/陰極
(e)陽極/正孔注入層/(正孔輸送層)/発光層/(電子輸送層)/電子注入層/陰極
【0103】
前記(a)〜(e)において、(正孔輸送層)及び(電子輸送層)は、その位置にこれらの層がそれぞれ存在していてもしなくてもよい任意の層であることを表す。
【0104】
前記(a)〜(e)において、構成するいずれかの層が本発明の錯体を含有していることが好ましく、その層は限定されないが、発光層であることがより好ましい。
【0105】
陽極は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層等の層に正孔を供給するものである。陽極は、4.5eV以上の仕事関数を有することが好ましい。陽極の材料には、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、及びこれらの組み合わせを用いることができ、具体的には、例えば、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)等の導電性金属酸化物;金、銀、クロム、ニッケル等の金属;前記導電性金属酸化物と前記金属との混合物及び積層物;ヨウ化銅、硫化銅等の無機導電性物質、ポリアニリン類、ポリチオフェン類〔ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン等〕、ポリピロール等の有機導電性材料、及びこれらとITOとの組み合わせを用いることができる。
【0106】
陰極は、電子注入層、電子輸送層、発光層等に電子を供給するものである。陰極の材料には、例えば、金属、合金、金属ハロゲン化物、金属酸化物、電気伝導性化合物、及びこれらの組み合わせを用いることができ、具体的には、例えば、アルカリ金属(Li、Na、K等)及びそのフッ化物並びに酸化物;アルカリ土類金属(Mg、Ca、Ba、Cs等)及びそのフッ化物並びに酸化物;金、銀、鉛、アルミニウム、合金、及び混合金属類〔ナトリウム−カリウム合金、ナトリウム−カリウム混合金属、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−アルミニウム混合金属、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−銀混合金属等〕;希土類金属〔インジウム、イッテルビウム等〕を用いることができる。
【0107】
正孔注入層及び正孔輸送層は、陽極から正孔を注入する機能、正孔を輸送する機能、又は陰極から注入された電子を障壁する機能を有する。これらの層に用いられる材料の例としては、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン誘導体、スチリルアミン誘導体、芳香族ジメチリジン誘導体、ポルフィリン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、有機シラン誘導体、及びこれらの残基を含む重合体;アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマーが挙げられる。前記正孔注入層及び前記正孔輸送層は、これらの1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0108】
電子注入層及び電子輸送層は、陰極から電子を注入する機能、電子を輸送する機能、又は陽極から注入された正孔を障壁する機能を有する。これらの層に用いられる材料の例としては、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、芳香環(例えば、ナフタレン、ペリレン)のテトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、金属錯体(例えば、8−キノリノール誘導体の金属錯体、メタルフタロシアニンを配位子とする金属錯体、ベンゾオキサゾールを配位子とする金属錯体、ベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体)、及び有機シラン誘導体が挙げられる。電子注入層及び前記電子輸送層は、これらの1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0109】
電子注入層及び電子輸送層の材料として、絶縁体又は半導体の無機化合物も使用できる。電子注入層及び電子輸送層が絶縁体又は半導体で構成されていれば、電流のリークを有効に防止して、電子注入性を向上させることができる。このような絶縁体としては、アルカリ金属カルコゲニド、アルカリ土類金属カルコゲニド、アルカリ金属のハロゲン化物、及びアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属化合物が挙げられ、CaO、BaO、SrO、BeO、BaS、及びCaSeが好ましい。また、電子注入層及び電子輸送層を構成する半導体としては、Ba、Ca、Sr、Yb、Al、Ga、In、Li、Na、Cd、Mg、Si、Ta、Sb、及びZnからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素の酸化物、窒化物、酸化窒化物等が挙げられる。
【0110】
発光素子において、陰極と陰極に接する薄膜との界面領域に還元性ドーパントが添加されていてもよい。還元性ドーパントとしては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物、希土類金属のハロゲン化物、希土類金属のアルカリ金属錯体、希土類金属のアルカリ土類金属錯体、及び希土類金属錯体が挙げられる。
【0111】
発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層又は正孔輸送層より正孔を注入することができ、陰極、電子注入層又は電子輸送層より電子を注入することができる機能、注入した電荷を電界の力で移動させる機能、及び電子と正孔の再結合の場を提供しこれを発光につなげる機能のいずれかを有する。本発明の錯体をゲスト材料として発光層に含有させ、さらにホスト材料を発光層に含有させてもよい。ホスト材料としては、例えば、フルオレン骨格を有する化合物、カルバゾール骨格を有する化合物、ジアリールアミン骨格を有する化合物、ピリジン骨格を有する化合物、ピラジン骨格を有する化合物、トリアジン骨格を有する化合物、及びアリールシラン骨格を有する化合物が挙げられる。ホスト材料のT1エネルギーは、ゲスト材料のT1エネルギーより大きいことが好ましく、その差が0.2eVよりも大きいことが更に好ましい。ホスト材料は低分子化合物であっても、高分子化合物であってもよい。ホスト材料は更に電解質を含有してもよく、該電解質としては、例えば、支持塩(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸カリウム、テトラフルオロホウ酸テトラ−n−ブチルアンモニウム等)を含有してもよい溶媒(プロピレンカーボネート、アセトニトリル、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソフラン、ニトロベンゼン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、グリセリン、プロピルアルコール、水等)、及び該溶媒で膨潤したゲル状の高分子(ポリエチレンオキシド、ポリアクリルニトリル、及びフッ化ビニリデンと六フッ化プロピレンの共重合体等)が挙げられる。
【0112】
発光素子において、各層の形成方法としては、例えば、真空蒸着法〔抵抗加熱蒸着法、電子ビーム法等〕、スパッタリング法、LB法、分子積層法、及び塗布法〔キャスティング法、スピンコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット法等〕が挙げられるが、製造プロセスを簡略化できる点で、塗布法が好ましい。前記塗布法では、例えば、各層の材料である、前記錯体、前記高分子化合物、それらの組成物等を、溶媒と混合して塗布液を調製し、該塗布液を所望の層(又は電極)上に、塗布・乾燥させることによって、各層を形成することができる。塗布液中にはホスト材料及び/又はバインダーとしての樹脂を含有させてもよい。この樹脂を塗布液に含有させる場合には、溶媒に溶解状態とすることも、分散状態とすることもできる。
【0113】
樹脂としては、ポリビニルカルバゾール等の非共役系高分子、ポリオレフィン系高分子等の共役系高分子を使用することができるが、具体的には、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、PMMA、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂が挙げられる。樹脂の溶液は、更に、酸化防止剤、粘度調整剤等を含有してもよい。前記溶液に用いられる溶媒としては、薄膜の成分を均一に溶解するもの又は安定な分散液を与える溶媒が好ましく、例えば、アルコール類〔メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等〕、ケトン類〔アセトン、メチルエチルケトン等〕、塩素化炭化水素類〔クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等〕、芳香族炭化水素類〔ベンゼン、トルエン、キシレン等〕、脂肪族炭化水素類〔ノルマルヘキサン、シクロヘキサン等〕、アミド類〔ジメチルホルムアミド等〕、スルホキシド類〔ジメチルスルホキシド等〕、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0114】
インクジェット法においては、例えば、ノズルからの蒸発を押さえるために高沸点の溶媒〔アニソール、ジエチレングリコール、ビシクロヘキシルベンゼン等〕を用いることができる。また、溶液の粘度は、25℃において、1〜100mPa・sが好ましい。
【0115】
発光素子の各層の厚さは、0.3nm〜100μmであることが好ましく、1nm〜1μmであることがより好ましい。
【0116】
発光素子は、例えば、照明用光源、サイン用光源、バックライト用光源、ディスプレイ装置、プリンターヘッド等に用いることができる。ディスプレイ装置としては、公知の駆動技術、駆動回路等を用い、セグメント型、ドットマトリクス型等の構成とした装置が挙げられる。
【0117】
本発明の錯体は、可視光、紫外線、真空紫外線、電子注入、電界、熱、応力、超音波、電磁波以外の放射線の何れか1種以上の励起源により発光させることができるので、例えば、三波長型蛍光ランプ等の紫外線発光素子、CRT等の電子線励起発光素子、及びフィルムバッチ等の電磁波以外の放射線による励起発光素子に用いることもできる。本発明の錯体は、他の発光材料と組み合わせて、白色発光素子の材料として用いることが好ましい。
【実施例】
【0118】
次に、実施例を示して本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0119】
[原料の調製]
Com1を前記特許文献1に記載の方法で合成した。
【0120】
窒素雰囲気下、塩化銅(I)(204mg,2.05mmol)のアセトン8.0mL懸濁液にCom1(327mg,0.684mmol)のアセトン溶液2.0mLを加えた。27時間撹拌後、反応液をろ過し、白色固体の錯体1を486mg(収率92%)得た。
【0121】
錯体1の元素分析測定結果を以下に示す。
Anal.Calcd for [Cu3(Com1)Cl3],C33393Cl3Cu3(%):C,51.16;H,5.07;N,5.42.found:C,50.96;H,4.99;N,5.43.
【0122】
【化17】

【0123】
[錯体の調製]
実施例1(表1−1における錯体番号19)
錯体1(0.20mg)をアセトニトリル200mgに溶解し、錯体1に対して1当量のBa6(0.17mg)のジクロロメタン169mg溶液を室温で混合し、40℃で10分間撹拌した。反応液を留去し、真空下で乾燥させて錯体番号19の錯体を得た。
【0124】
実施例2(表1−1における錯体番号22)
錯体1(0.20mg)をアセトニトリル200mgに溶解し、錯体1に対して2当量のBa6(0.34mg)のジクロロメタン338mg溶液を室温で混合し、40℃で10分間撹拌した。反応液を留去し、真空下で乾燥させて錯体番号22の錯体を得た。
【0125】
実施例3(表1−1における錯体番号25)
錯体1(0.18mg)をアセトニトリル180mgに溶解し、錯体1に対して3当量のBa6(0.46mg)のジクロロメタン457mg溶液を室温で混合し、40℃で10分間撹拌した。反応液を留去し、真空下で乾燥させて錯体番号25の錯体を得た。
【0126】
実施例4(表1−1における錯体番号37)
錯体1(0.20mg)をアセトニトリル200mgに溶解し、錯体1に対して1当量のDa1(0.15mg)のジクロロメタン153mg溶液を室温で混合し、40℃で10分間撹拌した。反応液を留去し、真空下で乾燥させて錯体番号37の錯体を得た。
【0127】
実施例5(表1−2における錯体番号40)
錯体1(0.20mg)をアセトニトリル200mgに溶解し、錯体1に対して2当量のDa1(0.31mg)のジクロロメタン306mg溶液を室温で混合し、40℃で10分間撹拌した。反応液を留去し、真空下で乾燥させて錯体番号40の錯体を得た。
【0128】
実施例6(表1−2における錯体番号43)
錯体1(0.17mg)をアセトニトリル170mgに溶解し、錯体1に対して3当量のDa1(0.39mg)のジクロロメタン390mg溶液を室温で混合し、40℃で10分間撹拌した。反応液を留去し、真空下で乾燥させて錯体番号43の錯体を得た。
【0129】
実施例7(表1−1における錯体番号28)
錯体1(0.24mg)をアセトニトリル240mgに溶解し、錯体1に対して1当量のCa1(0.19mg)のジクロロメタン185mg溶液を室温で混合し、40℃で10分間撹拌した。反応液を留去し、真空下で乾燥させて錯体番号28の錯体を得た。
【0130】
実施例8(表1−1における錯体番号31)
錯体1(0.24mg)をアセトニトリル240mgに溶解し、錯体1に対して2当量のCa1(0.37mg)のジクロロメタン371mg溶液を室温で混合し、40℃で10分間撹拌した。反応液を留去し、真空下で乾燥させて錯体番号31の錯体を得た。
【0131】
実施例9(表1−1における錯体番号34)
錯体1(0.18mg)をアセトニトリル180mgに溶解し、錯体1に対して3当量のCa1(0.42mg)のジクロロメタン417mg溶液を室温で混合し、40℃で10分間撹拌した。反応液を留去し、真空下で乾燥させて錯体番号34の錯体を得た。
【0132】
[膜の作製]
実施例10〜18
実施例1〜9で調製した錯体をそれぞれクロロホルム80mgに溶かし、石英板の上にそれぞれをドロップしてキャストし、自然乾燥によりそれぞれ実施例10〜18の膜を得た。実施例10の膜の厚さは、80nmであった。実施例11〜18の膜の厚さは、実施例10で用いた溶液と同程度の濃度の溶液から膜を作製しているため、80nm程度であると見込まれる。
【0133】
比較例1
錯体1(0.36mg)をアセトニトリル100mgに溶かし、石英板の上にドロップしてキャストし、自然乾燥により比較例1の膜を得た。
【0134】
[発光量子効率]
発光量子効率の測定は、量子効率測定装置(住友重機械メカトロニクス社製)を用いた。該機器構成は以下の通りである。光源はKimmon社製クラス3BのHe−Cd式CWレーザーを用いた。出射部にOFR社製のNDフィルターFDU0.5を挿入し、光ファイバーで積分球へ導いた。住友重機械メカトロニクス社製のオプテル部の積分球、ポリクロメータ、及びCCDマルチチャンネル検出器を介し、KEYTHLEY社製の型式2400ソースメーターを連結して、パソコンでデータを取り込んだ。
【0135】
発光量子効率の測定方法は、以下の通りである。室温窒素雰囲気下、積分球内に前記条件で調製したサンプルを配置し、レーザー励起光を325nmとし、CW光で、積分時間を300ms、励起光積分範囲を315〜335nm、PL波長積分範囲を390〜800nmとした。そして、住友重機械メカトロニクス社製の測定・解析ソフトの手順に従って、発光量子効率を算出した。
【0136】
実施例10〜18で作製した膜の発光量子効率はそれぞれ、2.6%、4.2%、1.9%、15%、2.4%、2.1%、7.4%、19%、18%であった。
【0137】
比較例1で作製した膜の発光量子効率は0.3%であった。
【0138】
以上の結果より、本発明の錯体は、膜状態で優れた発光量子効率を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記組成式(1)で表される錯体。
【化1】

(式中、MはCu、Ag、Au、Al、Ir、Ru、Re、Rh、Ce、Pr、Nd、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Fe、Mn、Cr、Bi、Pb、Sn、及びSbからなる群より選ばれる1種類以上の金属のイオンである。Yは−C(R4)=C(R5)−、−N=C(R6)−、−N(R7)−、−O−、又は−S−である。ここで、R4、R5、R6、及びR7はそれぞれ独立に水素原子、又は炭素原子数が1から18の範囲の有機基である。R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数が1から18の範囲の有機基である。R2、R3、R4、R5、R6、及びR7のうち任意の2つが互いに連結して環構造を形成してもよい。Spは炭素原子数が1から18の範囲の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、該アルキレン基中の1つ又は隣接しない2つ以上のメチレン基は、−O−、−S−、−C(=O)−、−O−C(=O)−、及び−O−C(=O)−O−からなる群より選ばれる1つ以上で置き換えられてもよく、該アルキレン基中にエチレン基が存在する場合、−CH=CH−及び−C≡C−からなる群より選ばれる1つ以上で置き換えられてもよく、該アルキレン基中の水素原子は、ハロゲン原子で置き換えられてもよい。Coreは炭素原子数が1から30の範囲のn+m価の炭化水素基か、又は、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群より選ばれる1種類以上の原子を含有する炭素原子数が1から30の範囲のn+m価のヘテロ化合物残基を表す。R1は炭素原子数が1から18の範囲の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、該アルキル基中のメチレン基、エチレン基、及び水素原子は上記Spの場合と同様に置換されていてもよい。mは0以上6以下の整数であり、nは2以上6以下の整数である。複数個のR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、X、Y、及びSpが存在する場合、これらは同じでも異なっていてもよい。L2はMに配位可能な原子を有する中性分子である。Xはアニオンである。a、b、及びcはそれぞれ独立に正の数である。)
【請求項2】
前記式(1)において、Mが銅(I)イオンである、請求項1に記載の錯体。
【請求項3】
前記式(1)において、Coreが芳香族炭化水素残基である、請求項1又は2に記載の錯体。
【請求項4】
前記式(1)において、R1が炭素原子数が1から6の範囲の直鎖状又は分岐状のアルキル基である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の錯体。
【請求項5】
前記式(1)において、Spが炭素原子数が1から6の範囲の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の錯体。
【請求項6】
前記式(1)において、m及びnが2以上4以下の整数であり、かつ、m+n=6である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の錯体。
【請求項7】
前記式(1)において、L2がMに配位可能なリン原子を有する中性分子である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の錯体。
【請求項8】
前記式(1)において、L2が下記(A)、(B)、(C)、又は(D)で表される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の錯体。
【化2】

(式(A)中、R11は置換されていてもよいアリール基である。3つのR11は同じでも異なっていてもよい。)
【化3】

(式(B)中、R21は2価の有機基である。R22は置換されていてもよいアリール基であり、4つのR22は同じでも異なっていてもよい。)
【化4】

(式(C)中、R31は2価の有機基であり、2つのR31は同じでも異なっていてもよい。R32及びR33はそれぞれ独立に置換されていてもよいアリール基であり、4つのR32とR33は同じでも異なっていてもよい。)
【化5】

(式(D)中、R41は3価の有機基である。R42は置換されていてもよいアリール基であり、6つのR42は同じでも異なっていてもよい。)
【請求項9】
前記式(1)において、Xがフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、又は、ヨウ化物イオンである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の錯体。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の錯体を含有する膜。

【公開番号】特開2012−229181(P2012−229181A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98931(P2011−98931)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(506122327)公立大学法人大阪市立大学 (122)
【Fターム(参考)】