説明

鍵盤楽器

【課題】鍵盤蓋に印加される負荷をより適切に測定すること。
【解決手段】鍵盤が配置される開口部を開閉する鍵盤蓋3と、鍵盤蓋3を駆動する動力を生成するモータと、鍵盤蓋3が配置される鍵盤蓋位置を測定する鍵盤蓋位置センサと、その動力に対抗するように鍵盤蓋3に印加される負荷を測定する負荷センサ19と、コントローラとを備えている。そのコントローラは、その鍵盤蓋位置に基づいて閾値を算出する閾値算出部と、その負荷とその閾値とに基づいてそのモータを制御するモータ制御部とを備えている。その負荷は、その鍵盤蓋位置により鍵盤蓋3に印加される重力の釣り合いが変化することにより、変化する。このような鍵盤楽器は、鍵盤蓋3に印加される重力による誤動作を低減し、鍵盤蓋3に印加される負荷をより適切に測定することができ、鍵盤蓋3をより適切に自動的に開閉させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍵盤楽器に関し、特に、鍵盤が配置される開口部を開閉する鍵盤蓋を備える鍵盤楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
鍵盤が配置される開口部を開閉する鍵盤蓋を備える鍵盤楽器が知られている。その鍵盤蓋は、その鍵盤が汚染されることを防止している。このような鍵盤楽器は、その鍵盤蓋の開閉をより容易にすることが望まれている。蓋開閉装置を備えた鍵盤楽器が知られている。その蓋開閉装置は、ユーザの操作に基づいてその鍵盤蓋を自動的に開閉する。より使い勝手がよい蓋開閉装置が望まれている。
【0003】
実用新案登録第2600363号公報には、蓋の破損事故が起きない構造とした鍵盤楽器の蓋開閉装置が開示されている。その鍵盤楽器の蓋開閉装置は、前端を低くした斜めの姿勢で差渡されて鍵盤の上面を覆い、かつ鍵盤の前方端面を遮蔽する前面遮蔽部を有する蓋と、上記前端を上げて水平の姿勢とされた上記蓋を、その水平の姿勢を維持して収納する収納ガイドとを具備して構成されている。その鍵盤楽器の蓋開閉装置は、上記鍵盤の両側に一対の駆動手段が設けられ、これら駆動手段はそれぞれ鍵盤の前端付近に上下に配された第1、第2プーリと、鍵盤の後端付近に配された第3プーリと、これら第1、第2、第3プーリに掛けられたベルトとよりなり、上記ベルトと上記前面遮蔽部とが係合され、上記一対の駆動手段は共通の1つのモータにより駆動され、この駆動により、上記蓋はその前面遮蔽部が鍵盤の前端に近接した位置で上下方向に移動され、鍵盤の前端と後端との間の上部に近接した位置で前後方向に移動されて、上記蓋が開閉されるように構成したことを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第2600363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、鍵盤蓋に印加される負荷をより適切に測定する鍵盤楽器を提供することにある。
本発明の他の課題は、鍵盤蓋の開閉の誤動作を低減する鍵盤楽器を提供することにある。
本発明のさらに他の課題は、鍵盤蓋を開閉させるためのユーザによる操作をより容易にする鍵盤楽器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、発明を実施するための形態・実施例で使用される符号を括弧付きで用いて、課題を解決するための手段を記載する。この符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態・実施例の記載との対応を明らかにするために付加されたものであり、特許請求の範囲に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0007】
本発明による鍵盤楽器(1)は、鍵盤(5)が配置される開口部(4)を開閉する鍵盤蓋(3)と、鍵盤蓋(3)を駆動する動力を生成するモータ(16)と、鍵盤蓋(3)が配置される鍵盤蓋位置を測定する鍵盤蓋位置センサ(45)と、その動力に対抗するように鍵盤蓋(3)に印加される負荷を測定する負荷センサ(19)と、コントローラ(52)とを備えている。コントローラ(52)は、その鍵盤蓋位置に基づいて閾値を算出する閾値算出部(74)と、その負荷とその閾値とに基づいてモータ(16)を制御するモータ制御部(76)とを備えている。その負荷は、その鍵盤蓋位置により鍵盤蓋(3)に印加される重力の釣り合いが変化することにより、変化する。このような鍵盤楽器(1)は、鍵盤蓋(3)に印加される重力による誤動作を低減し、鍵盤蓋(3)をより適切に自動的に開閉させることができる。
【0008】
鍵盤蓋位置センサ(45)は、鍵盤蓋(3)のうちの複数の位置にそれぞれ配置される複数の永久磁石(46,47)と、磁界の向きを測定するホールセンサ(48)とを備えている。コントローラ(52)は、モータ(16)により生成される動力の向きとその磁界の向きとに基づいて鍵盤蓋位置を算出する鍵盤蓋位置算出部(73)をさらに備えていることが好ましい。
【0009】
その閾値は、開閾値と閉閾値と開停止閾値と閉停止閾値とを含んでいる。モータ制御部(76)は、鍵盤蓋(3)が開口部(4)を開放するようにモータ(16)が制御されている場合で、その負荷がその開停止閾値より大きいときに、鍵盤蓋(3)が停止するようにモータ(16)を制御する。鍵盤蓋(3)が開口部(4)を閉鎖するようにモータ(16)が制御されている場合で、その負荷がその閉停止閾値より大きいときに、鍵盤蓋(3)が停止するようにモータ(16)を制御する。鍵盤蓋(3)が停止するようにモータ(16)が制御されている場合で、その負荷がその開閾値より大きいときに、鍵盤蓋(3)が開口部(4)を開放するようにモータ(16)を制御する。鍵盤蓋(3)が停止するようにモータ(16)が制御されている場合で、その負荷がその閉閾値より大きいときに、鍵盤蓋(3)が開口部(4)を閉鎖するようにモータ(16)を制御する。このような鍵盤楽器(1)は、鍵盤蓋(3)を開閉させるためのユーザによる操作をより容易にすることができ、鍵盤蓋(3)をより適切に自動的に開閉させることができる。
【0010】
本発明による鍵盤楽器(1)は、鍵盤(5)のうちの押鍵された鍵に対応する楽音が発音されるように音声装置(56)を制御する電子楽器本体(51)をさらに備えている。電子楽器本体(51)は、さらに、鍵盤(5)の使用状態を示している使用状態電気信号を生成する。モータ制御部(76)は、鍵盤(5)が使用されていることをその使用状態電気信号が示しているときに、鍵盤蓋(3)が開口部(4)を閉鎖しないようにモータ(16)を制御する。すなわち、このような鍵盤楽器(1)は、電子楽器に適用されることが好ましい。
【0011】
コントローラ(52)は、暗号電気信号を出力し、その負荷とその閾値とに基づいて生成される制御電気信号を出力するプロセッサ(53)と、その暗号電気信号が所定の暗号を示しているときにイネーブル信号を出力する暗号比較論理回路(54)と、そのイネーブル信号が出力されているときに、その制御電気信号に基づいて駆動電気信号を出力するモータ駆動回路(55)とを備えている。モータ(16)は、その駆動電気信号に基づいてモータ側プーリ(31)を回転させる。プロセッサ(53)は、暗号電気信号を正常に生成してないときに、制御電気信号を正常に生成していない可能性が高い。このような鍵盤楽器(1)は、プロセッサ(53)が誤動作しているときに、鍵盤蓋(3)が開閉しないように、モータ(16)を制御することができる。このため、このような鍵盤楽器(1)は、鍵盤蓋(3)をより適切に自動的に開閉させることができる。
【0012】
本発明による鍵盤楽器(1)は、第1回転軸(24)を中心に回転可能に支持されている第1アイドラ(20)と、第1回転軸(24)と異なる第2回転軸(25)を中心に回転可能に支持されている第2アイドラ(21)とを備えている。第1アイドラ(20)と第2アイドラ(21)とは、鍵盤蓋(3)の外側面(12)に接触するように、配置される。鍵盤蓋(3)は、複数のスラット(7−1〜7−n)から形成されている。複数のスラット(7−1〜7−n)は、鍵盤蓋(3)が外側面(12)を外側に屈曲することができるように、連結される。このとき、第1アイドラ(20)と第2アイドラ(21)とは、複数のスラット(7−1〜7−n)のいずれかが第1アイドラ(20)と第2アイドラ(21)とのいずれかにより確実に接触するように配置されることができる。このとき、鍵盤楽器(1)は、鍵盤蓋(3)に駆動ローラ(18)がより確実に接触し、その負荷をより確実に測定することができ、鍵盤蓋(3)をより確実に自動的に開閉させることができる。
【0013】
負荷センサ(19)は、モータ側プーリ(31)の回転軸とローラ側プーリ(32)の回転軸とに対して平行移動可能に支持されたスライダ(35)と、回転可能にスライダ(35)に支持された第1プーリ(36)と、回転可能にスライダ(35)に支持された第2プーリ(37)と、スライダ(35)が配置されるスライダ位置に基づいてその負荷を検出するスライダ位置センサ(41)とを備えている。第1プーリ(36)は、第1ベルト張力がスライダ(35)をスライド方向(38)に移動させるように作用するように、第1部分(42)に接触する。第2プーリ(37)は、第2ベルト張力がスライダ(35)をスライド方向(38)の反対方向に移動させるように作用するように、第2部分(43)に接触する。このような鍵盤楽器(1)は、その第1ベルト張力と第2ベルト張力との差をより適切に測定することができる。その結果、鍵盤楽器(1)は、その負荷をより適切に測定することができ、鍵盤蓋(3)をより適切に自動的に開閉させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明による鍵盤楽器は、鍵盤蓋に印加される負荷をより適切に測定することができ、その鍵盤蓋をより適切に自動的に開閉させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明による鍵盤楽器を示す斜視図である。
【図2】図2は、鍵盤蓋を示す斜視図である。
【図3】図3は、側板を示し、伝達装置を示し、負荷センサを示す側面図である。
【図4】図4は、蓋開閉装置を示す正面図である。
【図5】図5は、鍵盤蓋とアイドラとを示す平面図である。
【図6】図6は、鍵盤蓋とアイドラとを示す側面図である。
【図7】図7は、鍵盤蓋に負荷が印加されているときの伝達装置を示す側面図である。
【図8】図8は、鍵盤蓋位置センサを示す側面図である。
【図9】図9は、コントローラを示すブロック図である。
【図10】図10は、マイクロプロセッサを示すブロック図である。
【図11】図11は、他のアイドラを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照して、本発明による鍵盤楽器の実施の形態を記載する。その鍵盤楽器1は、図1に示されているように、外装2と鍵盤蓋3と鍵盤5とを備えている。外装2は、側板6−1と側板6−2とを備えている。側板6−1と側板6−2とは、板状に形成されている。側板6−1は、側板6−2に対向している。外装2には、側板6−1と側板6−2との間に開口部4が形成されている。鍵盤蓋3は、開口部4を開閉し、開口部4の内部と外部とを隔離する。鍵盤5は、開口部4の内部に配置されている。鍵盤5は、複数の音高に対応する複数の鍵を備えている。その複数の鍵は、複数の白鍵と複数の黒鍵とを含んでいる。鍵盤5は、その複数の鍵のうちのいずれかの鍵が打鍵されたときに、その打鍵された鍵とその打鍵強度とを示す電気信号を出力する。
【0017】
図2は、鍵盤蓋3を示している。鍵盤蓋3は、帯状に形成され、複数のスラット7−1〜7−n(n=2,3,4,…)と複数の節8−1〜8−(n−1)とを備えている。複数のスラット7−1〜7−nは、それぞれ、底面が台形である柱状に形成され、互いに合同である。その台形の上底9は、その台形の下底10より短い。複数の節8−1〜8−(n−1)のうちの各節8−i(i=1,2,3,…,n−1)は、上底9の一端を中心に回転可能にスラット7−(i+1)がスラット7−iに支持されるように、スラット7−iとスラット7−(i+1)とを連結している。すなわち、鍵盤蓋3は、下底10が配置される内側面11に溝が形成されないで、上底9が配置される外側面12に溝13が形成されている。さらに、鍵盤蓋3は、内側面11が内側になるように曲げることができるように、形成されている。
【0018】
図3は、側板6−1を示している。側板6−1は、開口部4に面する面にガイドレール14が形成されている。ガイドレール14は、溝に形成されている。その溝の幅は、鍵盤蓋3の厚さより少し大きい。その溝の長さは、鍵盤蓋3の長さより長く、鍵盤蓋3の長さの2倍より短い。ガイドレール14には、複数のスラット7−1〜7−nの底面が嵌まり、すなわち、鍵盤蓋3の端が配置されている。側板6−2は、側板6−1と同様にして、開口部4に面する面にガイドレール14が形成されている。側板6−2のガイドレール14は、複数のスラット7−1〜7−nの底面が嵌まり、すなわち、鍵盤蓋3の側板6−1のガイドレール14に嵌まる端の反対側の端が配置されている。このとき、鍵盤蓋3は、側板6−1、6−2のガイドレール14が配置される面に平行に複数のスラット7−1〜7−nの各々が平行移動可能に支持され、すなわち、ガイドレール14に沿って移動するように支持されている。
【0019】
鍵盤楽器1は、さらに、蓋開閉装置を備えている。その蓋開閉装置15は、図4に示されているように、モータ16と伝達装置17と駆動ローラ18と負荷センサ19と第1アイドラ20と第2アイドラ21とを備えている。モータ16は、台座29に固定されている。台座29は、側板6−1に固定されている。モータ16は、外部から入力される電気信号に応答して、回転動力を生成する。伝達装置17は、モータ16により生成された回転動力を駆動ローラ18に伝達する。駆動ローラ18は、円柱状に形成され、その円柱の側面が弾性体から形成されている。駆動ローラ18は、その円柱の中心軸が回転軸23に重なるように配置され、回転軸23を中心に回転可能に支持されている。鍵盤蓋3がガイドレール14に支持されているときに、回転軸23と鍵盤蓋3の距離は、その円柱の半径に等しい。すなわち、駆動ローラ18は、鍵盤蓋3がガイドレール14に支持されているときに、その円柱の側面が鍵盤蓋3の内側面11に接触するように、配置されている。
【0020】
第1アイドラ20は、互いに半径が等しい複数の円盤から形成され、その円盤の側面が弾性体から形成されている。第1アイドラ20は、その複数の円盤の中心軸が回転軸24に重なるように配置され、回転軸24を中心に回転可能に側板6−1、6−2に支持されている。鍵盤蓋3がガイドレール14に支持されているときに、回転軸24と鍵盤蓋3の距離は、その円盤の半径に等しい。すなわち、第1アイドラ20は、鍵盤蓋3がガイドレール14に支持されているときに、その複数の円盤の側面が鍵盤蓋3の外側面12に接触するように、配置されている。第2アイドラ21は、互いに半径が等しい複数の円盤から形成され、その円盤の側面が弾性体から形成されている。その半径は、さらに、第1アイドラ20の円盤の半径に等しい。第2アイドラ21は、その複数の円盤の中心軸が回転軸25に重なるように配置され、回転軸25を中心に回転可能に側板6−1、6−2に支持されている。鍵盤蓋3がガイドレール14に支持されているときに、回転軸25と鍵盤蓋3の距離は、その円盤の半径に等しい。すなわち、第2アイドラ21は、鍵盤蓋3がガイドレール14に支持されているときに、その複数の円盤の側面が鍵盤蓋3の外側面12に接触するように、配置されている。
【0021】
負荷センサ19は、蓋開閉装置15から鍵盤蓋3に印加される動力に対抗するように鍵盤蓋3に印加される負荷を測定し、その測定された負荷を示す電気信号を出力する。
【0022】
伝達装置17は、図3に示されているように、モータ側プーリ31とローラ側プーリ32とベルト33とを備えている。モータ側プーリ31は、回転軸34を中心に回転可能に台座29に支持されている。回転軸34は、回転軸23に平行である。モータ側プーリ31は、さらに、モータ16により回転されるように、モータ16に接合されている。ローラ側プーリ32は、回転軸23を中心に回転可能に台座29に支持されている。ローラ側プーリ32は、さらに、駆動ローラ18と同体に回転するように、駆動ローラ18に接合されている。ベルト33は、モータ側プーリ31とローラ側プーリ32とに巻かれ、モータ側プーリ31とローラ側プーリ32との間で回転動力を伝達する。ベルト33は、モータ側プーリ31とローラ側プーリ32とに接触していない部分を有している。その部分は、第1部分42と第2部分43とを含んでいる。第1部分42は、第2部分43にゆるみ側張力が作用しているときに張り側張力が作用し、第2部分43に張り側張力が作用しているときにゆるみ側張力が作用する。
【0023】
負荷センサ19は、スライダ35と第1プーリ36と第2プーリ37とスライダ位置センサ41とを備えている。スライダ35は、スライド方向38に平行な方向に平行移動可能に台座29に支持されている。スライド方向38は、回転軸23と回転軸34とを含む平面に垂直である。第1プーリ36は、回転軸39を中心に回転可能にスライダに支持されている。回転軸39は、回転軸23に平行である。第1プーリ36は、第1部分42に作用する第1ベルト張力がスライダ35をスライド方向38に移動させるように作用するように、第1部分42に接触している。第2プーリ37は、回転軸40を中心に回転可能にスライダに支持されている。回転軸40は、回転軸23に平行である。第2プーリ37は、第2部分43に作用する第2ベルト張力がスライダ35をスライド方向38の反対方向に移動させるように作用するように、第2部分43に接触している。スライダ位置センサ41は、台座29に対するスライダ35の位置を測定し、その測定された位置を示す電気信号を出力する。
【0024】
図5は、鍵盤蓋3がガイドレール14に支持されているときの駆動ローラ18と第1アイドラ20と第2アイドラ21とを示している。駆動ローラ18の回転軸23は、鍵盤蓋3の外側面12の溝13に平行になるように、配置されている。第1アイドラ20の回転軸24は、鍵盤蓋3の外側面12の溝13に平行になるように、配置されている。第1アイドラ20の回転軸24は、鍵盤蓋3の外側面12の溝13に平行になるように、配置されている。回転軸23は、回転軸24と回転軸25とを含む平面に回転軸23を垂直に投射した直線が回転軸24と回転軸25との間に配置されるように、配置されている。
【0025】
回転軸25と回転軸24との距離は、図6に示されているように、複数のスラット7−1〜7−nの幅の概ね1.5倍の長さに等しい。このため、第1アイドラ20は、第2アイドラ21が鍵盤蓋3の2つのスラット7−iとスラット7−(i+1)との間の隙間に配置されたときに、スラット7−(i+2)の中央に接触する。さらに、第2アイドラ21は、第1アイドラ20が鍵盤蓋3の2つのスラット7−iとスラット7−(i+1)との間の隙間に配置されたときに、スラット7−(i−1)の中央に接触する。すなわち、第1アイドラ20と第2アイドラ21とは、複数のスラット7−1〜7−nのいずれかが第1アイドラ20と第2アイドラ21とのいずれかにより確実に接触するように配置されている。このとき、第1アイドラ20と第2アイドラ21とは、鍵盤蓋3がガイドレール14に沿って移動するときに、鍵盤蓋3のがたつきを防止し、鍵盤蓋3が開閉するときに発生する騒音を低減することができる。鍵盤蓋3は、さらに、駆動ローラ18に向かってより確実に押さえられ、駆動ローラ18により確実に接触することができる。
【0026】
図7は、鍵盤蓋3に負荷が印加されたときの負荷センサ19の状態を示している。鍵盤蓋3が閉まるように(スライド方向38の反対方向に)移動するように蓋開閉装置15により動力が印加されている場合で、鍵盤蓋3を停止させようとする負荷が鍵盤蓋3に印加されたときに、第2部分43に作用する第2ベルト張力は、第1部分42に作用する第1ベルト張力より大きくなる。このとき、スライダ35は、スライド方向38の反対方向に移動し、その第1ベルト張力と第2ベルト張力との差に1対1対応する位置に配置される。
【0027】
さらに、鍵盤蓋3が開くように(スライド方向38に)移動するように蓋開閉装置15により動力が印加されている場合で、鍵盤蓋3を停止させようとする負荷が鍵盤蓋3に印加されたときに、第2部分43に作用する第2ベルト張力は、第1部分42に作用する第1ベルト張力より小さくなる。このとき、スライダ35は、スライド方向38に移動し、その第1ベルト張力と第2ベルト張力との差に1対1対応する位置に配置される。さらに、蓋開閉装置15により動力が鍵盤蓋3に印加されていない場合で、鍵盤蓋3を開けようとする負荷(スライド方向38に移動させようとする負荷)が鍵盤蓋3に印加されたときに、第2部分43に作用する第2ベルト張力は、第1部分42に作用する第1ベルト張力より大きくなる。このとき、スライダ35は、スライド方向38の反対方向に移動し、その第1ベルト張力と第2ベルト張力との差に1対1対応する位置に配置される。さらに、蓋開閉装置15により動力が鍵盤蓋3に印加されていない場合で、鍵盤蓋3を閉めようとする負荷(スライド方向38の反対方向に移動させようとする負荷)が鍵盤蓋3に印加されたときに、第2部分43に作用する第2ベルト張力は、第1部分42に作用する第1ベルト張力より小さくなる。このとき、スライダ35は、スライド方向38に移動し、その第1ベルト張力と第2ベルト張力との差に1対1対応する位置に配置される。
【0028】
すなわち、スライダ35の位置は、その第1ベルト張力と第2ベルト張力との差に1対1対応し、モータ16により生成された回転動力に対抗するように鍵盤蓋3に印加される負荷に1対1対応している。すなわち、鍵盤蓋3に印加される負荷は、スライダ35の位置に基づいて算出されることができ、スライダ35の位置を測定することにより容易に測定されることができる。
【0029】
鍵盤楽器1は、図8に示されているように、さらに、鍵盤蓋位置センサ45を備えている。鍵盤蓋位置センサ45は、第1永久磁石46と第2永久磁石47とホールセンサ48とを備えている。鍵盤蓋3は、複数の節8−1〜8−(n−1)のいずれかを介して5つの部分49−1〜49−5に分割されている。部分49−5は、5つの部分49−1〜49−5のうちの鍵盤蓋3の先端50に近い側の端に配置されている。部分49−4は、部分49−5と部分49−3との間に配置されている。部分49−3は、部分49−4と部分49−2との間に配置されている。部分49−2は、部分49−3と部分49−1との間に配置されている。部分49−1は、5つの部分49−1〜49−5のうちの鍵盤蓋3の先端50の反対側の端に配置されている。
【0030】
第1永久磁石46は、部分49−2の側板6−2の側の端の一部に固定されている。第2永久磁石47は、部分49−4の側板6−2の側の端の一部に固定され、ホールセンサ48は、鍵盤蓋3の第1永久磁石46と第2永久磁石47とが通過する位置の近傍に固定されている。ホールセンサ48は、磁束密度を測定し、その測定された磁束密度を示す電気信号を出力する。第1永久磁石46は、さらに、ホールセンサ48の近傍に配置されたときに、N極がホールセンサ48に向くように、配置されている。第2永久磁石47は、ホールセンサ48の近傍に配置されたときに、S極がホールセンサ48に向くように、配置されている。
【0031】
部分49−3は、部分49−3がホールセンサ48の近傍に配置されたときに、重力により鍵盤蓋3に印加される負荷が十分に小さくなるように、設計されている。部分49−2は、部分49−2がホールセンサ48の近傍に配置されたときに、鍵盤蓋3が閉じるように鍵盤蓋3に重力が印加されるように、設計されている。部分49−1は、部分49−1がホールセンサ48の近傍に配置されたときに、部分49−2がホールセンサ48の近傍に配置されたときに比較して、鍵盤蓋3が閉じるように作用する重力がより大きく印加されるように、設計されている。部分49−4は、部分49−4がホールセンサ48の近傍に配置されたときに、鍵盤蓋3が開くように鍵盤蓋3に重力が印加されるように、設計されている。部分49−5は、部分49−5がホールセンサ48の近傍に配置されたときに、部分49−4がホールセンサ48の近傍に配置されたときに比較して、鍵盤蓋3が開くように作用する重力がより大きく印加されるように、設計されている。
【0032】
鍵盤楽器1は、図9に示されているように、さらに、電子楽器本体51とコントローラ52とを備えている。電子楽器本体51は、音声装置56を備え、図示されていない電源スイッチを備えている。電子楽器本体51は、鍵盤5から出力された電気信号に基づいて、鍵盤5のうちの押鍵された鍵に対応する楽音が音声装置56から発音されるように、音声装置56を制御する。その電源スイッチは、開口部4の内側に配置されている。電子楽器本体51は、その電源スイッチがオンになるようにユーザにより操作されたときに、音声装置56を制御することができるようになる。電子楽器本体51は、その電源スイッチがオフになるようにユーザにより操作されたときに、音声装置56を制御することができなくなる。電子楽器本体51は、さらに、鍵盤5がユーザにより操作されているかどうかを示す楽器状態電気信号をコントローラ52に出力する。たとえば、その楽器状態電気信号は、その電源スイッチがオンであるときに鍵盤5がユーザにより操作されていることを示し、その電源スイッチがオフであるときに鍵盤5がユーザにより操作されていないことを示している。
【0033】
コントローラ52は、マイクロプロセッサ53と暗号比較論理回路54とモータ駆動回路55とを備えている。マイクロプロセッサ53は、スライダ位置センサ41から出力された電気信号とホールセンサ48から出力された電気信号と電子楽器本体51から出力された電気信号とに基づいて暗号電気信号とモータ制御信号とを出力する。暗号比較論理回路54は、マイクロプロセッサ53から出力される暗号電気信号が所定の暗号を示しているかどうかを判別する。暗号比較論理回路54は、さらに、マイクロプロセッサ53から出力される暗号電気信号が所定の暗号を示しているときに、その暗号電気信号を受信した時刻から所定の期間(たとえば、6.5m秒)だけイネーブル信号をモータ駆動回路55に出力する。モータ駆動回路55は、暗号比較論理回路54からイネーブル信号が受信されているときに、マイクロプロセッサ53から出力されたモータ制御信号に対応する電気信号を生成し、その電気信号をモータ16に出力する。モータ駆動回路55は、暗号比較論理回路54からイネーブル信号が受信されていないときに、モータ16が回転動力を生成しないように、電気信号をモータ16に出力する。
【0034】
図10は、マイクロプロセッサ53を示している。マイクロプロセッサ53は、図示されていないCPUと記憶装置とインターフェースとを備えている。そのCPUは、マイクロプロセッサ53にインストールされるコンピュータプログラムを実行して、その記憶装置とインターフェースとを制御する。その記憶装置は、そのコンピュータプログラムを記録し、そのCPUにより生成される情報を一時的に記録する。そのインターフェースは、マイクロプロセッサ53に接続される外部機器により生成される情報をそのCPUに出力し、そのCPUにより生成された情報をその外部機器に出力する。その外部機器は、スライダ位置センサ41と鍵盤蓋位置センサ45と電子楽器本体51と暗号比較論理回路54とモータ駆動回路55とを含んでいる。
【0035】
鍵盤楽器1は、さらに、図示されていないリムーバルメモリドライブを備えている。そのリムーバルメモリドライブは、記録媒体が挿入されたときに、その記録媒体に記録されているデータを読み出すことに利用される。そのリムーバルメモリドライブは、さらに、コンピュータプログラムが記録されている記録媒体が挿入されたときに、そのコンピュータプログラムをマイクロプロセッサ53にインストールするときに利用される。その記録媒体としては、フラッシュメモリ、磁気ディスク(フレキシブルディスク、ハードディスク)、磁気テープ(ビデオテープ)、光ディスク(CD、DVD)、光磁気ディスクが例示される。
【0036】
マイクロプロセッサ53にインストールされるコンピュータプログラムは、マイクロプロセッサ53に複数の機能を実現させるための複数のコンピュータプログラムから形成されている。その複数の機能は、楽器状態収集部71と暗号出力部72と鍵盤蓋位置算出部73と閾値算出部74と負荷収集部75とモータ制御部76とを含んでいる。
【0037】
楽器状態収集部71は、電子楽器本体51から出力される楽器状態電気信号に基づいて鍵盤5が使用されているかどうかを判別する。
【0038】
暗号出力部72は、所定の暗号を示す暗号電気信号を間欠的に定期的に(たとえば、5m秒ごとに)暗号比較論理回路54に出力する。
【0039】
鍵盤蓋位置算出部73は、ホールセンサ48により検出される磁極と鍵盤蓋3が移動している向きとに基づいて蓋位置を算出する。その蓋位置は、部分49−1〜49−5のうちのホールセンサ48の近傍に配置された部分を示している。たとえば、その蓋位置は、ホールセンサ48によりN極が検出されたときに、部分49−2を示している。その蓋位置は、ホールセンサ48によりS極が検出されたときに、部分49−4を示している。その蓋位置は、鍵盤蓋3が閉じるように移動している場合で、ホールセンサ48によりS極が検出された後に十分に小さい磁束密度が検出されたときに、部分49−3を示している。その蓋位置は、鍵盤蓋3が閉じるように移動している場合で、ホールセンサ48によりN極が検出された後に十分に小さい磁束密度が検出されたときに、部分49−1を示している。その蓋位置は、鍵盤蓋3が開くように移動している場合で、ホールセンサ48によりS極が検出された後に十分に小さい磁束密度が検出されたときに、部分49−5を示している。その蓋位置は、鍵盤蓋3が開くように移動している場合で、ホールセンサ48によりN極が検出された後に十分に小さい磁束密度が検出されたときに、部分49−3を示している。
【0040】
閾値算出部74は、蓋位置集合に開停止閾値集合と閉停止閾値集合と開閾値集合と閉閾値集合とを対応付ける閾値テーブルを記憶装置に記録している。すなわち、その蓋位置集合のうちの任意の要素は、その開停止閾値集合のうちの1つの要素に対応し、その閉停止閾値集合のうちの1つの要素に対応し、その開閾値集合のうちの1つの要素に対応し、その閉閾値集合のうちの1つの要素に対応している。その蓋位置集合の要素は、それぞれ、鍵盤蓋位置算出部73により算出される蓋位置を示している。その開停止閾値集合と閉停止閾値集合と開閾値集合と閉閾値集合との要素は、それぞれ、閾値を示している。
【0041】
閾値算出部74は、さらに、鍵盤蓋3が停止しているときに、鍵盤蓋位置算出部73により算出された蓋位置に対応する開閾値をその開閾値集合から算出し、鍵盤蓋位置算出部73により算出された蓋位置に対応する閉閾値をその閉閾値集合から算出する。閾値算出部74は、さらに、鍵盤蓋3が開くように移動しているときに、鍵盤蓋位置算出部73により算出された蓋位置に対応する開停止閾値をその開停止閾値集合から算出する。閾値算出部74は、さらに、鍵盤蓋3が閉じるように移動しているときに、鍵盤蓋位置算出部73により算出された蓋位置に対応する閉停止閾値をその閉停止閾値集合から算出する。
【0042】
負荷収集部75は、スライダ位置センサ41から出力される電気信号に基づいて、蓋開閉装置15から鍵盤蓋3に印加される動力に対抗するように鍵盤蓋3に印加される負荷の大きさと向きとを算出する。
【0043】
モータ制御部76は、楽器状態収集部71により鍵盤5が使用されていないと判別されたときに動作しない。モータ制御部76は、鍵盤5が使用されていると判別されたときに、直前に生成された制御信号に基づいて、現在の鍵盤蓋3の状態を算出する。その鍵盤蓋3の状態は、鍵盤蓋3が停止している場合と鍵盤蓋3が開くように移動している場合と鍵盤蓋3が閉じるように移動している場合とのうちの1つの場合を示している。
【0044】
モータ制御部76は、鍵盤蓋3が停止している場合で、負荷収集部75により算出された負荷の向きが鍵盤蓋3を開く方向であり、その負荷の大きさが閾値算出部74により算出された開閾値より大きいときに、鍵盤蓋3を開くことを示す制御信号を生成する。モータ制御部76は、鍵盤蓋3が停止している場合で、負荷収集部75により算出された負荷の向きが鍵盤蓋3を閉じる方向であり、その負荷の大きさが閾値算出部74により算出された閉閾値より大きいときに、鍵盤蓋3を閉めることを示す制御信号を生成する。モータ制御部76は、鍵盤蓋3が開くように移動している場合で、負荷収集部75により算出された負荷の向きが鍵盤蓋3を閉じる方向であり、その負荷の大きさが閾値算出部74により算出された開停止閾値より大きいときに、鍵盤蓋3を停止することを示す制御信号を生成する。モータ制御部76は、鍵盤蓋3が閉じるように移動している場合で、負荷収集部75により算出された負荷の向きが鍵盤蓋3を開く方向であり、その負荷の大きさが閾値算出部74により算出された閉停止閾値より大きいときに、鍵盤蓋3を停止することを示す制御信号を生成する。
【0045】
コントローラ52の動作は、定期的動作と鍵盤蓋3が開くように移動しているときの動作と鍵盤蓋3が閉じるように移動しているときの動作とを備えている。
【0046】
その定期的動作は、所定の周期で間欠的に実行される。マイクロプロセッサ53は、所定の暗号を示す暗号電気信号を5m秒ごとに暗号比較論理回路54に出力する。マイクロプロセッサ53は、直前に生成された制御信号に基づいて、現在の鍵盤蓋3の状態を算出する。
【0047】
その鍵盤蓋3が停止しているときの動作は、その定期的動作により算出される状態が鍵盤蓋3が停止していることを示すときに、実行される。マイクロプロセッサ53は、鍵盤5が使用されているときに、鍵盤蓋3を停止したままにすることを示す制御信号を生成する。
【0048】
マイクロプロセッサ53は、鍵盤5が使用されていないときに、ホールセンサ48により検出される磁極に基づいて蓋位置を算出する。マイクロプロセッサ53は、その記憶装置に記録されている閾値テーブルを参照して、その蓋位置に対応する開閾値を算出し、その蓋位置に対応する閉閾値を算出する。マイクロプロセッサ53は、スライダ位置センサ41から出力される電気信号に基づいて、鍵盤蓋3に印加される負荷の向きと大きさとを算出する。
【0049】
マイクロプロセッサ53は、その負荷の向きが鍵盤蓋3を開く方向である場合で、その負荷の大きさがその算出された開閾値より大きいときに、鍵盤蓋3を開くことを示す制御信号を生成する。マイクロプロセッサ53は、さらに、その算出された負荷の向きが鍵盤蓋3を閉じる方向である場合で、その負荷の大きさがその算出された閉閾値より大きいときに、鍵盤蓋3を閉めることを示す制御信号を生成する。
【0050】
モータ駆動回路55は、暗号比較論理回路54からイネーブル信号が受信されているときに、マイクロプロセッサ53から出力されたモータ制御信号が示すようにモータ16が動作するように、電気信号をモータ16に出力する。モータ駆動回路55は、暗号比較論理回路54からイネーブル信号が受信されていないときに、モータ16が回転動力を生成しないように、電気信号をモータ16に出力する。
【0051】
このような動作によれば、鍵盤楽器1は、停止している鍵盤蓋3を開けようとユーザが鍵盤蓋3を操作したときに、鍵盤蓋3が開くように鍵盤蓋3を駆動する。さらに、鍵盤楽器1は、停止している鍵盤蓋3を閉めようとユーザが鍵盤蓋3を操作したときに、鍵盤蓋3が閉まるように鍵盤蓋3を駆動する。このような操作は、直感的でわかりやすく、好ましい。すなわち、鍵盤楽器1は、鍵盤蓋3を開閉するためのユーザの操作をより容易にすることができる。
【0052】
その鍵盤蓋3が開くように移動しているときの動作は、その定期的動作により算出される状態が鍵盤蓋3が開くように移動していることを示すときに、実行される。マイクロプロセッサ53は、ホールセンサ48により検出される磁極に基づいて蓋位置を算出する。マイクロプロセッサ53は、その閾値テーブルを参照して、その蓋位置に対応する開停止閾値を算出する。マイクロプロセッサ53は、スライダ位置センサ41から出力される電気信号に基づいて、鍵盤蓋3に印加される負荷の向きと大きさとを算出する。マイクロプロセッサ53は、その算出された負荷の向きが鍵盤蓋3を閉じる方向である場合で、その負荷の大きさがその算出された開停止閾値より大きいときに、鍵盤蓋3を停止することを示す制御信号を生成する。
【0053】
モータ駆動回路55は、暗号比較論理回路54からイネーブル信号が受信されているときに、マイクロプロセッサ53から出力されたモータ制御信号が示すようにモータ16が動作するように、電気信号をモータ16に出力する。モータ駆動回路55は、暗号比較論理回路54からイネーブル信号が受信されていないときに、モータ16が回転動力を生成しないように、電気信号をモータ16に出力する。
【0054】
このような動作によれば、鍵盤楽器1は、鍵盤蓋3が開口部4を開放しきったときに、または、鍵盤蓋3が開いている最中に何かに引っかかったときに、鍵盤蓋3が停止するように鍵盤蓋3を駆動する。このような動作は、ユーザにとって直感的でわかりやすく、好ましい。
【0055】
その鍵盤蓋3が閉まるように移動しているときの動作は、その定期的動作により算出される状態が鍵盤蓋3が閉まるように移動していることを示すときに、実行される。マイクロプロセッサ53は、ホールセンサ48により検出される磁極に基づいて蓋位置を算出する。マイクロプロセッサ53は、その閾値テーブルを参照して、その蓋位置に対応する閉停止閾値を算出する。マイクロプロセッサ53は、スライダ位置センサ41から出力される電気信号に基づいて、鍵盤蓋3に印加される負荷の向きと大きさとを算出する。マイクロプロセッサ53は、その算出された負荷の向きが鍵盤蓋3を開く方向である場合で、その負荷の大きさがその算出された閉停止閾値より大きいときに、鍵盤蓋3を停止することを示す制御信号を生成する。このような制御信号は、鍵盤5が使用されていないときに、生成される。マイクロプロセッサ53は、鍵盤5が使用されているときに、鍵盤蓋3を停止することを示す制御信号を生成する。
【0056】
モータ駆動回路55は、暗号比較論理回路54からイネーブル信号が受信されているときに、マイクロプロセッサ53から出力されたモータ制御信号が示すようにモータ16が動作するように、電気信号をモータ16に出力する。モータ駆動回路55は、暗号比較論理回路54からイネーブル信号が受信されていないときに、モータ16が回転動力を生成しないように、電気信号をモータ16に出力する。
【0057】
このような動作によれば、鍵盤楽器1は、鍵盤蓋3が開口部4を閉じきったときに、または、鍵盤蓋3が閉じている最中に何かに引っかかったときに、鍵盤蓋3が停止するように鍵盤蓋3を駆動する。このような動作は、ユーザにとって直感的でわかりやすく、好ましい。
【0058】
鍵盤蓋3は、鍵盤蓋3が配置される蓋位置に応じて、鍵盤蓋3に印加される重力の向きと大きさとが変化する。鍵盤蓋3を駆動するときに用いられる閾値が鍵盤蓋3の蓋位置に基づいて変化することによれば、鍵盤楽器1は、鍵盤蓋3がどの位置に配置されていても、鍵盤蓋3に印加される負荷のうちの重力による力と異なる負荷のみをより正確に検出することができ、鍵盤蓋3をより適切に開閉することができる。たとえば、ユーザは、鍵盤蓋3がどの位置に停止されていても、鍵盤蓋3に同程度の負荷を印加することにより、鍵盤蓋3を開閉することができる。ユーザは、鍵盤蓋3がどの位置を移動していても、鍵盤蓋3に同程度に力を印加することにより、鍵盤蓋3を停止させることができる。
【0059】
マイクロプロセッサ53は、その暗号電気信号を正常に生成してないときに、その制御信号を正常に生成していない可能性が高い。このような動作によれば、鍵盤楽器1は、マイクロプロセッサ53が誤動作しているときに、鍵盤蓋3が閉じないように、モータ16を制御することができる。このため、鍵盤楽器1は、鍵盤蓋3をより適切に自動的に開閉させることができる。
【0060】
なお、マイクロプロセッサ53が十分に安定して動作するとき、暗号比較論理回路54を省略することもできる。このような鍵盤楽器は、既述の実施の形態における鍵盤楽器1と同様にして、鍵盤蓋3をより適切に自動的に駆動することができる。
【0061】
本発明による鍵盤楽器の実施の他の形態は、既述の実施の形態における鍵盤楽器1の第1アイドラ20と第2アイドラ21とが他のアイドラに置換されている。そのアイドラ60は、図11に示されているように、円柱から形成され、その円柱の側面が弾性体から形成されている。アイドラ60は、その複数の円柱の中心軸が回転軸61に重なるように配置され、回転軸61を中心に回転可能に側板6−1、6−2に支持されている。鍵盤蓋3がガイドレール14に支持されているときに、回転軸61と鍵盤蓋3の距離は、その円柱の半径に等しい。すなわち、アイドラ60は、鍵盤蓋3がガイドレール14に支持されているときに、その複数の円柱の側面が鍵盤蓋3の外側面12に接触するように、配置されている。回転軸61は、さらに、鍵盤蓋3の外側面12の溝13に平行になるように、配置されている。
【0062】
アイドラ60は、鍵盤蓋3がガイドレール14に沿って移動するときに、駆動ローラ18に向かって鍵盤蓋3を押さえ、駆動ローラ18に鍵盤蓋3を確実に接触させることができる。アイドラ60は、アイドラ60が鍵盤蓋3の外側面12の溝13に配置されたり、アイドラ60が外側面12の溝13以外の場所に接触したりすることにより発生する騒音が十分に小さいときに、好適である。
【0063】
なお、既述の実施の形態における鍵盤楽器1の第1アイドラ20と第2アイドラ21とは、ガイドレール14が駆動ローラ18に鍵盤蓋3を十分に接触させることができるときに、省略されることもできる。
【0064】
なお、本発明による鍵盤楽器は、電気的な機器を用いないで楽音を生成するアコースティック鍵盤楽器に適用することもできる。
【符号の説明】
【0065】
1 :鍵盤楽器
2 :外装
3 :鍵盤蓋
4 :開口部
5 :鍵盤
6−1:側板
6−2:側板
7−1〜7−n:複数のスラット
8−1〜8−(n−1):複数の節
9 :上底
10:下底
11:内側面
12:外側面
13:溝
14:ガイドレール
15:蓋開閉装置
16:モータ
17:伝達装置
18:駆動ローラ
19:負荷センサ
20:第1アイドラ
21:第2アイドラ
23:回転軸
24:回転軸
25:回転軸
29:台座
31:モータ側プーリ
32:ローラ側プーリ
33:ベルト
34:回転軸
35:スライダ
36:第1プーリ
37:第2プーリ
38:スライド方向
39:回転軸
40:回転軸
41:スライダ位置センサ
42:第1部分
43:第2部分
45:鍵盤蓋位置センサ
46:第1永久磁石
47:第2永久磁石
48:ホールセンサ
49−1〜49−5:部分
50:先端
51:電子楽器本体
52:コントローラ
53:マイクロプロセッサ
54:暗号比較論理回路
55:モータ駆動回路
56:音声装置
71:楽器状態収集部
72:暗号出力部
73:鍵盤蓋位置算出部
74:閾値算出部
75:負荷収集部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵盤が配置される開口部を開閉する鍵盤蓋と、
前記鍵盤蓋を駆動する動力を生成するモータと、
前記鍵盤蓋が配置される鍵盤蓋位置を測定する鍵盤蓋位置センサと、
前記動力に対抗するように前記鍵盤蓋に印加される負荷を測定する負荷センサと、
コントローラとを具備し、
前記コントローラは、
前記鍵盤蓋位置に基づいて閾値を算出する閾値算出部と、
前記負荷と前記閾値とに基づいて前記モータを制御するモータ制御部とを備える
鍵盤楽器。
【請求項2】
請求項1において、
前記鍵盤蓋位置センサは、
前記鍵盤蓋のうちの複数の位置にそれぞれ配置される複数の永久磁石と、
磁界の向きを測定するホールセンサとを備え、
前記コントローラは、前記モータにより生成される動力の向きと前記磁界の向きとに基づいて前記鍵盤蓋位置を算出する鍵盤蓋位置算出部をさらに備える
鍵盤楽器。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれかにおいて、
前記閾値は、
開閾値と、
閉閾値と、
開停止閾値と、
閉停止閾値とを含み、
前記モータ制御部は、
前記鍵盤蓋が前記開口部を開放するように前記モータが制御されている場合で、前記負荷が前記開停止閾値より大きいときに、前記鍵盤蓋が停止するように前記モータを制御し、
前記鍵盤蓋が前記開口部を閉鎖するように前記モータが制御されている場合で、前記負荷が前記閉停止閾値より大きいときに、前記鍵盤蓋が停止するように前記モータを制御し、
前記鍵盤蓋が停止するように前記モータが制御されている場合で、前記負荷が前記開閾値より大きいときに、前記鍵盤蓋が前記開口部を開放するように前記モータを制御し、
前記鍵盤蓋が停止するように前記モータが制御されている場合で、前記負荷が前記閉閾値より大きいときに、前記鍵盤蓋が前記開口部を閉鎖するように前記モータを制御する
鍵盤楽器。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかにおいて、
前記鍵盤のうちの押鍵された鍵に対応する楽音が発音されるように音声装置を制御する電子楽器本体をさらに具備し、
前記電子楽器本体は、さらに、前記鍵盤の使用状態を示す使用状態電気信号を生成し、
前記モータ制御部は、前記鍵盤が使用されていることを前記使用状態電気信号が示すときに、前記鍵盤蓋が前記開口部を閉鎖しないように前記モータを制御する
鍵盤楽器。
【請求項5】
請求項4において、
前記コントローラは、
暗号電気信号を出力し、前記負荷と前記閾値とに基づいて生成される制御電気信号を出力するプロセッサと、
前記暗号電気信号が所定の暗号を示すときにイネーブル信号を出力する暗号比較論理回路と、
前記イネーブル信号が出力されているときに、前記制御電気信号に基づいて駆動電気信号を出力するモータ駆動回路とを備え、
前記モータは、前記駆動電気信号に基づいて前記モータ側プーリを回転させる
鍵盤楽器。
【請求項6】
請求項4または請求項5のいずれかにおいて、
第1回転軸を中心に回転可能に支持されている第1アイドラと、
前記第1回転軸と異なる第2回転軸を中心に回転可能に支持されている第2アイドラとを具備し、
前記第1アイドラと前記第2アイドラとは、前記鍵盤蓋の外側面に接触するように、配置され、
前記鍵盤蓋は、複数のスラットから形成され、
前記複数のスラットは、前記鍵盤蓋が前記外側面を外側に屈曲することができるように、連結される
鍵盤楽器。
【請求項7】
請求項4〜請求項6のいずれかにおいて、
前記負荷センサは、
前記モータ側プーリの回転軸と前記ローラ側プーリの回転軸とに対して平行移動可能に支持されたスライダと、
回転可能に前記スライダに支持された第1プーリと、
回転可能に前記スライダに支持された第2プーリと、
前記スライダが配置されるスライダ位置に基づいて前記負荷を検出するスライダ位置センサとを備え、
前記第1プーリは、前記第1ベルト張力が前記スライダをスライド方向に移動させるように作用するように、前記第1部分に接触し、
前記第2プーリは、前記第2ベルト張力が前記スライダを前記スライド方向の反対方向に移動させるように作用するように、前記第2部分に接触する
鍵盤楽器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−70132(P2011−70132A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223483(P2009−223483)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)
【Fターム(参考)】