説明

鍵盤楽器

【課題】響板を加振する構成を設けても、響板の振動特性の変化が少なくなるようにすること。
【解決手段】加振部50は、響板7に接続された振動部51と、支持部55によって支持されたヨーク保持部52とを有する。振動部51は、ヨーク保持部52が有するヨーク521、523および磁石522により形成された磁路に位置するように配置されたボイスコイル512を有し、ボイスコイル512に入力される駆動信号により振動し、響板7を加振する。加振部50のうち駆動信号に応じて振動する振動部51以外の負荷は支持部55によって支持されているため、加振部50が響板7の振動特性にほとんど影響を与えない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍵盤楽器の音を変化させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子ピアノにおいてはスピーカから電子音を発生させることが一般的に行われている。この電子音だけでなく豊かな低音を発生させるために、電子ピアノにおいても響板が設けられている場合がある。この場合には、響板にスピーカを取り付け、スピーカにより響板を加振することにより、響板から音を放射させる技術が、例えば、特許文献1に開示されている。この技術の適用対象としては電子ピアノに限らず、弦を振動させないように構成された消音ピアノにも適用可能であることも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−292739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、アコースティックピアノの音質は、音を放射する響板の振動特性によるところが大きい。そのため、製造当初に想定していなかった重量物が響板に取り付けられると、その重量物の影響で響板の振動特性が大きく変化してしまう。その結果、アコースティックピアノの音質が悪化することになる。
【0005】
特許文献1においては、響板に重量物であるスピーカを取り付けているため、スピーカの取り付け前後では響板の振動特性が大きく変化してしまう。そのため、アコースティックピアノにおいて特許文献1に開示された技術を適用すると、響板の振動特性がスピーカの影響により変化し、その影響を受けた音質に変わってしまう。
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、響板を加振する構成を設けても、響板の振動特性の変化が少なくなるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、本発明は、複数の発音モードを有し、いずれかの発音モードがユーザによって設定される鍵盤楽器であって、鍵と、前記鍵に対応して設けられた発音体と、前記鍵の操作に応じて前記発音体を打撃するハンマと、前記ハンマによる前記発音体への打撃の阻止をするストッパと、前記発音体の振動に伴い振動する響板と、本体部と、前記響板に接続された振動部とを有し、入力された駆動信号に応じて前記本体部と前記振動部との間に引力および斥力の少なくとも一方を生じさせることにより前記振動部を振動させて前記響板を振動させる加振部と、少なくとも前記響板が振動していない状態において前記響板に前記本体部の負荷がかからないように前記本体部を支持する支持部と、前記鍵の操作に応じた演奏情報を出力する演奏情報出力部と、前記演奏情報に基づく音を示す前記駆動信号を前記加振部に出力し、ユーザによって設定された前記発音モードが特定の発音モードである場合には前記駆動信号を出力しない信号出力部と、少なくとも前記設定された発音モードが前記特定の発音モードである場合には、前記打撃の阻止をしないように前記ストッパを制御する阻止制御部とを具備することを特徴とする鍵盤楽器を提供する。
【0007】
また、好ましい態様において、前記本体部は磁石を有し、前記振動部は前記磁石が形成する磁路上に配置され、前記駆動信号が入力されるボイスコイルを有することを特徴とする。
【0008】
また、別の好ましい態様において、前記本体部と前記振動部とは空間によって隔てられて配置され、前記支持部は、前記本体部が前記響板に接触しないように前記本体部を支持することを特徴とする。
【0009】
また、別の好ましい態様において、前記本体部と前記振動部とはダンパ部を介して接続され、前記支持部は、前記振動部が振動していない状態において前記響板に前記振動部の負荷がかからないように前記振動部を前記ダンパ部および前記本体部を介して支持することを特徴とする。
【0010】
また、別の好ましい態様において、前記信号出力部は、前記出力する駆動信号の周波数特性を調整するイコライザ部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、響板を加振する構成を設けても、響板の振動特性の変化が少なくなるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態におけるグランドピアノの外観を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態におけるグランドピアノの内部構造を説明する図である。
【図3】本発明の実施形態における加振部の位置を説明する図である。
【図4】本発明の実施形態における加振部の外観を説明する図である。
【図5】図4に示す矢視V−V方向から見た加振部の断面図である。
【図6】本発明の実施形態におけるコントローラの構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施形態におけるグランドピアノの機能構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の変形例1における加振部の断面図である。
【図9】本発明の変形例2におけるアップライトピアノの内部構造を示す図である。
【図10】本発明の変形例2における加振部の位置を説明する図である。
【図11】本発明の変形例3における加振部の位置を説明する図である。
【図12】本発明の変形例3におけるアップライトピアノの内部構造を示す図である。
【図13】本発明の変形例6における加振部の断面図である。
【図14】本発明の変形例9における加振部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
[全体構成]
図1は、本発明の実施形態におけるグランドピアノ1の外観を示す斜視図である。グランドピアノ1は、その前面に演奏者によって演奏操作がなされる鍵2が複数配列された鍵盤、およびペダル3を有する鍵盤楽器である。また、グランドピアノ1は、前面部分に操作パネル13を有する制御装置10、および譜面台部分に設けられたタッチパネル60を有する。ユーザの指示は、操作パネル13およびタッチパネル60が操作されることにより、制御装置10に対して入力可能になっている。
【0014】
グランドピアノ1は、複数の発音モードのうち、ユーザの指示に応じた発音モードでの発音が可能になっている。この発音モードには、一般的なグランドピアノと同様の態様にハンマによる打弦のみで発音させる通常発音モード、ハンマによる打弦を阻止し、電子音源などの音源部からの信号を用いて加振部により響板を加振することにより、響板から通常より小さな音(大きな音であってもよい)で自然な響きで発音させる弱音モード、通常発音モードの動作と同様に打弦で発音させるとともに、さらにピアノの音色の信号を用いて加振部により響板を加振することで、ハンマによる打弦時(通常発音モード)よりも大きな音で演奏する強音モードを有する。この強音モードでは、音量を大きくするだけでなく、ハンマが打弦して発音することと、ピアノ以外(ピアノに類似した音色を含む)の音色の信号を用いて加振部により響板を加振して発音することを同時に行うことで、音色レイヤー効果を得る演奏モードとして使うこともできる。
なお、発音モードには、弱音モードの構成において音源部からの信号を響板の加振に用いるのではなくヘッドホン端子へ供給することにより外部への発音をさせない消音モードなど、他の発音モードが存在していてもよい。
この発音モードを整理すると以下の表1に示すようになる。
【0015】
【表1】

【0016】
また、グランドピアノ1においては、複数の演奏モードのうち、ユーザの指示に応じた演奏モードでの動作が可能になっている。この演奏モードには、ユーザが演奏操作をして発音させる通常演奏モード、および鍵を自動的に駆動して発音させる自動演奏モードが含まれている。なお、いずれか一方の演奏モードについては存在しなくてもよい。
【0017】
[グランドピアノ1の構成]
図2は、本発明の実施形態におけるグランドピアノ1の内部構造を説明する図である。この図においては、各鍵2に対応して設けられている構成については、1つの鍵2に着目して示し、他の鍵2に対応して設けられている部分については記載を省略している。
【0018】
各鍵2の後端側(演奏するユーザから見て鍵2の奥側)の下部には、演奏モードが自動演奏モードである場合において、ソレノイドを用いて鍵2を駆動する鍵駆動部30が設けられている。鍵駆動部30は、制御装置10からの制御信号に応じてソレノイドを駆動する。鍵駆動部30は、ソレノイドを駆動してプランジャを上昇させることにより、ユーザが押鍵したときと同様な状態を再現する一方、プランジャを下降させることにより、ユーザが離鍵したときと同様な状態を再現する。このように、通常演奏モードと自動演奏モードとの違いは、鍵2を駆動させるのがユーザの操作であるか、鍵駆動部30であるかの違いである。
【0019】
ハンマ4は、各鍵2に対応して設けられ、鍵2が押下されるとアクション機構(図示略)を介して力が伝達されて移動し、各鍵2に対応する弦5を打撃する。また、ダンパ8は、鍵2の押下量、およびペダル3のうちダンパペダル(以下、単にペダル3といった場合にはダンパペダルを示す)の踏込量に応じて、弦5と非接触状態または接触状態となる。ダンパ8は、弦5と接触しているときには、その弦5の振動を抑制する。
【0020】
ストッパ40は、弱音モードに設定されているときに、ハンマ4による弦5への打撃を阻止する部材である。すなわち、発音モードが弱音モードに設定されているときには、ハンマシャンクがストッパ40に衝突してハンマ4の弦5への打撃が阻止される一方、通常発音モードに設定されているときには、ストッパ40は、ハンマシャンクと衝突しない位置に移動するようになっている。
【0021】
鍵センサ22は、各鍵2の下部に設けられ、鍵2の挙動に応じた検出信号を制御装置10に出力する。この例においては、鍵センサ22は、鍵2の押下量を検出し、検出結果を示す検出信号を制御装置10に出力する。なお、鍵センサ22は、鍵2の押下量に応じた検出信号を出力する代わりに、鍵2が特定の押下位置を通過したことを示す検出信号が出力されるようにしてもよい。特定の押下位置とは、鍵2のレスト位置からエンド位置に至る範囲のいずれかの位置であり、複数箇所であることが望ましい。このように、鍵センサ22が出力する検出信号は、鍵2の挙動を制御装置10に認識させることができる信号であればどのようなものであってもよい。
【0022】
ハンマセンサ24は、各ハンマ4に対応して設けられ、ハンマ4の挙動に応じた検出信号を制御装置10に出力する。この例においては、ハンマセンサ24は、ハンマ4による弦5の打撃直前の移動速度を検出し、検出結果を示す検出信号を制御装置10に出力する。なお、この検出信号は、ハンマ4の移動速度そのものを示すものでなくてもよく、別の態様での検出信号として、制御装置10において移動速度が算出されるようにしてもよい。例えば、ハンマ4が移動中にハンマシャンクが通過する2つの位置について、ハンマシャンクが通過したことを示す検出信号が出力されるようにしてもよいし、一方の位置を通過してから他方の位置を通過するまでの時間を示す検出信号が出力されるようにしてもよい。このように、ハンマセンサ24が出力する検出信号は、ハンマ4の挙動を制御装置10に認識させることができる信号であればどのようなものであってもよい。
【0023】
ペダルセンサ23は、各ペダル3に対応して設けられ、ペダル3の挙動に応じた検出信号を制御装置10に出力する。この例においては、ペダル3の踏込量を検出し、検出結果を示す検出信号を制御装置10に出力する。なお、ペダルセンサ23は、ペダル3の踏込量に応じた検出信号を出力する代わりに、ペダル3が特定の踏込位置を通過したことを示す検出信号が出力されるようにしてもよい。特定の踏込位置とは、ペダルのレスト位置からエンド位置に至る範囲のいずれかの位置であり、ダンパ8と弦5とが完全に接触する状態と非接触の状態とを区別できる踏込位置であることが望ましく、複数箇所を特定の踏込位置とすることでハーフペダルの状態についても検出することができるようにすることがさらに望ましい。このように、ペダルセンサ23が出力する検出信号は、ペダル3の挙動を制御装置10に認識させることができる信号であればどのようなものであってもよい。
【0024】
なお、鍵センサ22、ペダルセンサ23、およびハンマセンサ24から出力される検出信号によって、制御装置10が、弦5に対するハンマ4の打撃タイミング(キーオンのタイミング)、打撃速度(ベロシティ)、およびその弦5に対するダンパ8の振動抑制タイミング(キーオフのタイミング)を、各鍵2(キーナンバ)に対応して特定することができるようになっていれば、鍵センサ22、ペダルセンサ23およびハンマセンサ24は、鍵2、ペダル3、ハンマ4の挙動を検出した結果を、他の態様での検出信号として出力してもよい。
【0025】
響板7は、響棒75および駒6が接続され、駒6を介して響板7の振動を各弦5に伝達するとともに、各弦5の振動が駒6を介して響板7に伝達される。
また、響板7には、加振部50が接続されている。加振部50は、響板7に接続された振動部51と、直支柱9に接続された支持部55によって支持されたヨーク保持部52(本体部)とを有する。加振部50には、制御装置10から駆動信号が入力される。振動部51は、入力された駆動信号が示す波形に応じて振動し、響板7を加振する。これにより、駒6も加振される。この例においては、振動部51は、ヨーク保持部52が有するヨーク521、523および磁石522により形成された磁路に位置するように配置されたボイスコイル512を有し、ボイスコイル512に入力される駆動信号により振動する(図5参照)。
【0026】
図3は、本発明の実施形態における加振部50の位置を説明する図である。この例においては、加振部50として、加振部50H、50Lの2つが設けられている。以下、加振部50H、50Lを互いに特に区別して説明する必要がない場合には、単に加振部50という。
【0027】
加振部50は、響板7のうち、複数存在する響棒75の間に接続されている。また、加振部50Hは、2つの駒6(駒6H(長駒)、6L(短駒))のうち、駒6Hに対応する位置に設けられている。一方、加振部50Lは、駒6Lに対応する位置に設けられている。すなわち、響板7は、加振部50と駒6とに挟まれた状態になる。
なお、響板7に設けられている加振部50の数は2つに限らず、より多くの数であってもよいし、1つだけが設けられていてもよい。加振部50が1つである一方、駒6が2つである場合には、長い駒6Hに加振部50が設けられるようにすることが望ましい。
【0028】
駒6Hは、高音側の弦5を支持する駒であり、駒6Lは、低音側の弦5を支持する駒である。以下、駒6H、6Lを互いに特に区別して説明する必要がない場合には、単に駒6という。また、上述したように加振部50は、直支柱9に接続された支持部55によって支持されている。
続いて、加振部50の構成について説明する。
【0029】
[加振部50の構成]
図4は、本発明の実施形態における加振部50の外観を説明する図である。この図においては、ヨーク保持部52の主要な構造を見やすくするため、ヨーク保持部52の筐体524(図5参照)については記載を省略し、筐体524の内部を図示している。振動部51は、響板7と接続する上面が塞がれた円筒状の接続部材511およびボイスコイル512を有する。接続部材511は、ポリイミド等の樹脂あるいはアルミ素材の金属などの軽い素材で形成され、上面部に樹脂等のキャップを取り付けている。ヨーク保持部52は、磁石522、および磁石522を挟みこむヨーク521、523を有する。ヨーク521、523は、例えば、軟鉄などの軟磁性材料により形成され、接続部材511に比べて非常に重くなっている。
また、振動部51とヨーク保持部52とは、空間により隔てられている。
【0030】
図5は、図4に示す加振部50を接続部材511の中心を通る鉛直面で切断した断面を水平方向から見た断面図である。図5においては、図4において記載を省略した筐体524についても記載している。また、図5においては、加振部50、響板7および駒6の位置関係を示すため、響板7および駒6の位置を破線で示している。振動部51は、接続部材511およびボイスコイル512を有している。ボイスコイル512は、ヨーク521、523および磁石522により形成された磁路(破線矢印)のうち、ヨーク521とヨーク523との間に形成される空間を通過する磁路上に位置するように配置されている。加振部50に入力される駆動信号は、ボイスコイル512に入力される。上記のように形成されている磁路における磁力を受けて、ボイスコイル512は、入力される駆動信号が示す波形に応じて接続部材511が図における上下方向に振動するように駆動力を発生させる。このとき、ヨーク保持部52は、支持部55によって支持されて、その位置が固定されているため、ボイスコイル512が発生させた駆動力は、ほとんどが接続部材511の振動のための推力として用いられる。
【0031】
接続部材511の上面と響板7とは接着剤、両面テープ(図示せず)などにより接着され、接続部材511が響板7に固定されている。なお、接続部材511の上面と響板7とは、接着により互いに接続される場合に限らず、ネジ止めなどにより接続されていてもよい。これにより、響板7は、接続部材511が上方に移動した場合には上方に押され、接続部材511が下方に移動した場合には、接続部材511が離れるのではなく、接続部材511により下方に引っ張られることになる。このようにして、接続部材511における振動は、響板7を介して駒6に加えられ、さらには、弦5に伝達される。
【0032】
また、筐体524は、ヨーク521、523および磁石522を収容する。また、筐体524は、支持部55によって支持される。このとき、ヨーク521、523、磁石522および筐体524により構成されるヨーク保持部52は、振動部51と空間によって隔てられた位置、かつ、響板7と接触しない位置に、支持部55によって支持される。図5に示すように、この例においては、支持部55は、筐体524の下面側からヨーク保持部52を支持する。また、振動部51(接続部材511)は、ヨーク保持部52と空間によって隔てられているため、響板7と接続されることによって響板7に支持された状態となる。
【0033】
なお、振動部51とヨーク保持部52とが、空間によって隔てられている、とは、図示した構成において、互いに接触していないことを示しているのであって、振動部51につながる一部の構成(例えば、ボイスコイル512への配線など)が、ヨーク保持部52と接触していてもよい。このとき、その一部の構成によって振動部51に対してヨーク保持部52の重力等による負荷がかからないようになっていることが望ましい。
【0034】
このような態様で加振部50のうちヨーク保持部52が支持部55によって支持されることにより、響板7に対して加振部50のうち振動部51以外の負荷がかからないようになっている。なお、支持部55がヨーク保持部52を支持する態様については、響板7に対して加振部50のうち振動部51以外の負荷がかからないようになっていれば、どのような態様であってもよい。
【0035】
ここで、接続部材511はヨーク保持部52を構成する各部材に比べ、樹脂など軽い素材で形成されている。また、ボイスコイル512を含めた振動部51全体としても、ヨーク保持部52に比べれば、非常に軽い構成である。ヨーク保持部52の重力等の負荷は支持部55により直支柱9にかかるため、加振部50の大部分の負荷は響板7へはかからないようになっている。響板7へは振動部51の負荷がかかることになるが、その負荷はわずかであるため、響板7の振動特性に与える影響は非常に少ない。以上が加振部50の説明である。
続いて、制御装置10の構成について説明する。
【0036】
[制御装置10の構成]
図6は、本発明の実施形態における制御装置10の構成を示すブロック図である。制御装置10は、制御部11、記憶部12、操作パネル13、通信部14、信号出力部15、およびインターフェイス16を有する。これらの各構成はバスを介して接続されている。
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)などの記憶装置を有する。制御部11は、記録装置に記憶されている制御プログラムに基づいて、制御装置10の各部およびインターフェイス16に接続された各構成を制御する。この例においては、制御部11は、制御プログラムを実行することにより、制御装置10および制御装置10に接続された構成の一部を、本発明の鍵盤楽器として機能させる。
【0037】
記憶部12は、制御プログラムを実行しているときに用いられる各種設定内容を示す設定情報を記憶する。設定情報は、例えば、鍵センサ22、ペダルセンサ23、およびハンマセンサ24から出力される検出信号に基づいて、信号出力部15から出力される駆動信号の内容を決定するための情報である。また、設定情報には、ユーザにより設定された発音モード、演奏モードなどを示す情報も含まれる。
【0038】
操作パネル13は、ユーザの操作を受け付ける操作ボタンなどを有する。この操作ボタンによりユーザの操作が受け付けられると、操作に応じた操作信号が制御部11に出力される。インターフェイス16に接続されたタッチパネル60は、液晶ディスプレイなどの表示画面を有し、その表示画面の表面部分には、ユーザの操作を受け付けるタッチセンサが設けられている。この表示画面には、制御部11のインターフェイス16を介した制御により、記憶部12に記憶された設定情報の内容を変更するため設定変更画面、各種モードの設定などを行う設定画面、楽譜などの各種情報が表示される。また、タッチセンサにより利用者の操作が受け付けられると、操作に応じた操作信号がインターフェイス16を介して制御部11に出力される。ユーザから制御装置10への指示は、操作パネル13およびタッチパネル60によって受け付けられる操作により入力される。
【0039】
通信部14は、無線、有線などにより他の装置と通信を行うインターフェイスである。このインターフェイスには、DVD(Digital Versatile Disk)やCD(Compact Disk)などの記録媒体に記録された各種データを読み出し、読み出したデータを出力するディスクドライブが接続されていてもよい。通信部14を介して制御装置10に入力されるデータは、例えば、自動演奏に用いる楽曲データなどである。
【0040】
信号出力部15は、音響信号を出力する音源部151、この音響信号の周波数特性を調整するイコライザ部152、この音響信号を増幅する増幅部153を有する(図7参照)。信号出力部15は、周波数特性が調整されて増幅された音響信号を、駆動信号として出力する。
【0041】
インターフェイス16は、制御装置10と外部の各構成とを接続するインターフェイスである。インターフェイス16に接続される各構成は、この例においては、鍵センサ22、ペダルセンサ23、ハンマセンサ24、鍵駆動部30、ストッパ40、加振部50およびタッチパネル60である。インターフェイス16は、鍵センサ22、ペダルセンサ23、ハンマセンサ24から出力される検出信号、およびタッチパネル60から出力される操作信号を、制御部11に出力する。また、インターフェイス16は、制御部11から出力された制御信号を鍵駆動部30に出力し、信号出力部15から出力された駆動信号を加振部50に出力する。
続いて、制御部11が制御プログラムを実行することにより機能する構成について説明する。
【0042】
[グランドピアノ1の機能構成]
図7は、本発明の実施形態におけるグランドピアノ1の機能構成を示すブロック図である。図7に示すように、鍵2が操作されると、ハンマ4が弦5を打撃し、弦5が振動する。この振動は、駒6を介して響板7に伝達される。また、鍵2の操作、ペダル3の操作によりダンパ8が動作する。ダンパ8の動作により、弦5の振動の抑制状態が変化する。
【0043】
設定部110は、タッチパネル60および制御部11により以下に示す機能を有する構成として実現される。まず、タッチパネル60は、発音モードを設定するユーザの操作を受け付ける。制御部11は、ユーザによって設定された演奏モードおよび発音モードに応じて設定情報を変更し、これらのモードに応じて演奏情報出力部120および阻止制御部130に対して、選択された発音モードを示す制御信号を出力する。
【0044】
また、タッチパネル60は、信号出力部15における各種制御パラメータを設定するためのユーザの操作を受け付ける。各種制御パラメータとは、音源部151から出力される音響信号が示す楽音の音色、イコライザ部152における周波数特性の調整態様、増幅部153における増幅率などを決定するためのパラメータである。
【0045】
それぞれの制御パラメータをユーザが個別に設定する構成が採用されてもよいし、記憶部12に予め記憶された各々制御パラメータの値が決められた複数のプリセットデータからユーザが一のプリセットデータを選択して制御パラメータを設定する構成が採用されてもよい。制御部11は、ユーザによって設定された各種制御パラメータに応じて設定情報を変更し、これらの制御パラメータにより信号出力部15から出力される駆動信号を制御する。なお、イコライザ部152、増幅部153は、予め設定されたパラメータのみを使用し、制御部11によるパラメータ変更が行われない構成が採用されてもよい。
【0046】
演奏情報出力部120は、制御部11、鍵センサ22、ペダルセンサ23およびハンマセンサ24により以下に示す機能を有する構成として実現される。鍵センサ22、ペダルセンサ23およびハンマセンサ24によって、鍵2、ペダル3およびハンマ4の挙動がそれぞれ検出され、その結果出力される検出信号に基づいて、制御部11は、ハンマ4による弦5の打撃タイミング(キーオンのタイミング)、打撃された弦5に対応する鍵2の番号(キーナンバ)、打撃速度(ベロシティ)、およびその弦5に対するダンパ8の振動抑制タイミング(キーオフのタイミング)を、音源部151で用いる情報(演奏情報)として特定する。この例においては、制御部11は、打撃タイミングおよび鍵2の番号については鍵2の挙動から特定し、打撃速度についてはハンマ4の挙動から特定し、振動抑制タイミングについては、鍵2およびペダル3の挙動から特定する。なお、打撃タイミングがハンマ4の挙動から特定されてもよいし、打撃速度が鍵2の挙動から特定されてもよい。なお、演奏情報は、例えば、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)形式の制御パラメータで示されるものであってもよい。
【0047】
制御部11は、特定したキーオンのタイミングにおいて、キーナンバ、ベロシティ、およびキーオンを示す演奏情報を、音源部151に出力する。また、制御部11は、キーオフのタイミングにおいて、キーナンバおよびキーオフを示す演奏情報を、音源部151に出力する。制御部11は、ユーザによって設定された発音モードが弱音モードもしくは強音モードである場合に、上記の機能を実現する一方、通常発音モードである場合には、この例においては、演奏情報の音源部151への出力を行わない。なお、通常発音モードである場合には、信号出力部15から駆動信号が出力されないようにすればよいから、演奏情報が出力される構成であったとしても、信号出力部15からの駆動信号が出力されないように制御部11が制御すればよい。
【0048】
阻止制御部130は、制御部11により以下に示す機能を有する構成として実現される。制御部11は、ユーザによって設定された発音モードが弱音モードである場合には、ハンマ4の弦5への打撃を阻止する位置にストッパ40を移動させる一方、通常発音モードもしくは強音モードに設定されているときには、ハンマ4の弦5への打撃を阻止しない位置にストッパ40を移動させる。
【0049】
音源部151は、演奏情報出力部120(制御部11)から出力される演奏情報に基づいて、音響信号を出力する。例えば、音源部151は、キーナンバに応じた音高、ベロシティに応じた音量になるように音響信号を出力する。この音響信号は、上述したように、イコライザ部152により周波数特性が調整され、増幅部153において増幅されて加振部50に駆動信号として出力される。
【0050】
加振部50は、上述したように、入力された駆動信号に応じて振動し、響板7を介して駒6を加振する。これにより、駒6に加えられた振動は、弦5にも伝達される。以上がグランドピアノ1の機能構成についての説明である。
【0051】
[動作例]
続いて、本発明の実施形態におけるグランドピアノ1の動作例について説明する。まず、ユーザは、タッチパネル60を操作して、演奏モードを通常演奏モードとし、発音モードを弱音モードとして設定する。この状態において、ユーザが鍵2を操作して演奏すると、ハンマ4による弦5の打撃はストッパ40により阻止される一方、加振部50により響板7が加振され響板7から音が放射される。また、響板7を介して駒6が加振されることによりダンパ8により振動が抑制されていない弦5も振動し、アコースティックピアノに近い音の発音が行われる。このとき、ハンマ4による弦5の打撃はストッパ40により阻止されているため、打弦による発音は無い。したがって、加振部50の振動の振幅を調整することにより、打弦による発音よりも小さな音量(もしくは大きな音量)で、アコースティックピアノと同様に響板7の振動および弦の共鳴による音響効果を利用した発音が可能となる。
【0052】
一方、ユーザが、タッチパネル60を操作して、発音モードを通常発音モードとして設定した場合には、加振部50による加振は行われず、また、ハンマ4による弦5の打撃が阻止されない状態となる。そのため、打弦による発音が行われ、弦5の振動は、駒6を介して響板7に伝達される。響板7は、弦5から伝達された振動に応じた音を放射することになる。このとき、響板7には、加振部50のうち非常に軽い部分の振動部51の負荷がかかるだけであるため、加振部50が響板7自体の振動特性にほとんど影響を与えることはなく、演奏者は本来のアコースティックピアノの音響性能を損なわずに演奏することができる。
【0053】
また、ユーザが、タッチパネル60を操作して、発音モードを強音モードとして設定した場合には、加振部50による響板7への加振と、ハンマ4による弦5への打撃が同時に行われる。そのため、響板7は駒6を介して伝達される打弦による弦5の振動と加振部50からの加振による振動が加算された振動により音の放射を行う。また、ハンマ4により打弦された弦5が振動により音の放射を行うとともに、ダンパ8により振動が抑制されていない弦5は駒6を介して響板7の振動に従い振動し、共鳴音を発する。従って、演奏者は本来のアコースティックピアノの音と音源部151から出力される音響信号に示される音が自然にミックスされた音により演奏することができる。
【0054】
<変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以下のように、様々な態様で実施可能である。
[変形例1]
上述した実施形態において、振動部51(接続部材511)は、ヨーク保持部52から空間により隔てられていたが、ヨーク保持部52(筐体524)と間接的に接続されていてもよい。
【0055】
図8は、本発明の変形例1における加振部50Aの断面図である。この例における加振部50Aは、接続部材511と筐体524とを接続するダンパ部53を有する。ダンパ部53は、ボイスコイル512が駆動信号により駆動されず、接続部材511による響板7に対する力がかからない状態での位置である標準位置から、接続部材511の上下振動に追従して伸縮する。この例においては、接続部材511が響板7にまだ接続されておらず、ダンパ部53のみに支持された状態で、標準位置における接続部材511の上面が響板7の下面にちょうど接する高さとなるように、支持部55に対する加振部50の取り付けの高さが調整されている。そして、その状態で接続部材511の上面と響板7の下面が接続されている。
そのため、標準位置において加振部50の重量は響板7にかかることがない。また、ダンパ部53は軽量な振動部51を支持可能ではあるが、高い伸縮性を備えているため、響板7の振動時にヨーク保持部52の重量がダンパ部53を介して振動部51に伝わることはほとんど無く、響板7の振動特性に与える影響もほとんど無い。また、ダンパ部53の存在により、振動部51とヨーク保持部52との位置関係が保たれるため、加振部50を響板7に接続する際の作業が容易になる。
【0056】
[変形例2]
上述した実施形態においては、鍵盤楽器としてグランドピアノ1を用いた例を説明したが、アップライトピアノを用いてもよい。
【0057】
図9は、本発明の変形例2におけるアップライトピアノ1Bの内部構造を示す図である。図9において、アップライトピアノ1Bの各構成には、実施形態におけるグランドピアノ1の各構成と対応する符号に「B」を加えた符号を付している。アップライトピアノ1Bの場合においても、加振部50Bにおける振動部51Bは、響板7Bに接続され、ヨーク保持部52Bは、直支柱9Bに接続された支持部55Bに支持されている。
【0058】
図10は、本発明の変形例2における加振部50Bの位置を説明する図である。この例においても、実施形態と同様に、加振部50Bは、響板7Bのうち、響棒75Bの間に接続されている。また、加振部50Bは、駒6Bに対応する位置(言い換えれば、響板7Bの駒6Bが取り付けられている位置の裏面)に設けられている。また、図10に示す例において、支持部55Bは、複数の直支柱9Bに接続されているが、1本の直支柱9Bに接続されていてもよい。なお、加振部50Bを設ける位置は、駒6Bのうち長駒に対応する位置としたが、短駒(図示略)に対応する位置としてもよい。また、長駒と短駒のそれぞれに対応する位置に設けてもよい。
【0059】
[変形例3]
上述した実施形態およびその変形例においては、加振部は、響板のうち駒に対応する位置に設けられていたが、駒とは離れた位置であってもよい。
【0060】
図11は、図9に示した変形例2にかかるアップライトピアノ1Bを変形し、響板7Bの駒6Bから離れた位置に加振部50Bを配置した例を示す図である。図11に示す例においては、2個の加振部50Bが各々、響板7Bを挟んで響棒75Bに対向する位置(図11における響板7Bの裏面)に配置されている。
【0061】
図12は図11に示す加振部50Bが支持部55Bにより支持される様子を示す図である。図12に示すように、本変形例の支持部55Bはステンレス等の板を長手方向の異なる2カ所で長手方向に垂直な線に沿って互いに反対方向に90度、屈曲させた形状をしている。支持部55Bの一方の端部を構成する平面部分はアップライトピアノ1Bの棚板90の背面にネジ止め等により取り付けられている。支持部55Bの一方の端部を構成する平面部分には加振部50Bのヨーク保持部52Bが取り付けられている。ヨーク保持部52Bはちょうど響板7Bを挟んで響棒75Bに対向する位置に配置され、その位置において響板7Bに接続されている振動部51Bを収容している。
【0062】
上記の例のように、駒ではなく響棒に対応する位置において加振部を響板に接続する構成においても、響棒により加振部による加振が響板全体に効率的に伝わるため、響板による望ましい音の放射が行われ得る。
【0063】
また、響棒とは異なる棒状の部材である加振棒を響板の、例えば響棒とは反対の面上に取り付けて、響板を挟んで加振棒に対向する位置に加振部を配置する構成が採用されてもよい。この場合、加振棒は既存の駒や響棒とは個別に設計可能であるため、加振部の加振に応じて望ましい音響特性の音が響板から放射されるように、加振棒の形状、大きさ、配置位置等が調整されることが望ましい。
【0064】
[変形例4]
上述した実施形態においては、ヨーク保持部52は磁石522を用いて磁力を発生させていたが、電磁石など磁力の発生の有無を制御できる構成を用い、振動部51を振動させないとき(例えば、発音モードが通常発音モードであるとき)には、磁力の発生を停止してもよい。
【0065】
[変形例5]
上述した実施形態においては、複数の加振部50は、同じ駆動信号が入力されていたが、加振部50毎に異なる駆動信号が入力されるようにしてもよい。例えば、音源部151は、加振部50のそれぞれに対応して音響信号を出力し、イコライザ部152における周波数特性の調整、増幅部153における増幅を、それぞれの音響信号に対して個別に行うようにしてもよい。このようにすれば、周波数特性の調整態様および増幅率のパラメータの設定を加振部50毎に異なるパラメータとして設定することもできる。例えば、一の加振部50が設けられた響板7の位置において、特定の周波数に共振ピークをもつような振動特性となる場合には、その特定の周波数において駆動信号の出力レベルが下がるように周波数特性が調整されるように設定されればよい。そして、周波数特性が調整された駆動信号が、その加振部50に出力されるようにすればよい。
【0066】
音源部151から出力される複数の音響信号もそれぞれ異なる信号であってもよい。例えば、2つの加振部50が用いられる場合、それぞれに対応する音響信号は、Lch用の音響信号とRch用の音響信号としてもよいし、それぞれ異なる音色の楽音を示す音響信号としてもよい。
また、各音響信号は、それぞれ周波数帯域が異なるものとなっていてもよい。この場合には、加振部50Hに高い方の周波数帯域を有する音響信号が出力され、加振部50Lに低い方の周波数帯域を有する音響信号が出力されるようにしてもよい。
【0067】
[変形例6]
上述した実施形態においては、加振部50は、振動部51およびヨーク保持部52を有し、ボイスコイルを用いたダイナミック型のスピーカに近い構成により実現されていたが、本発明にかかる加振部の構成はダイナミック型のスピーカに類似の構成に限られない。本体部と、本体部に対し隔離配置された本体部より軽量で響板に接続された振動部とを有し、本体部と振動部との間に駆動信号に応じた引力および斥力の少なくとも一方を生じる構成であれば、他のいかなる構成が採用されてもよい。
図13は、ダイナミック型のスピーカと類似しない構成の本発明にかかる加振部の一例を示す図である。この変形例にかかる加振部80は、響板7に貼りつけられたシート状の強磁性材料である磁性体シート81(振動部)と、支持部55に支持される電磁石82(本体部)を有する。電磁石82は柱状の磁性材料である芯821と、芯821の周りに螺旋状に巻き付けられた電線であるコイル822を有し、制御装置10から入力される駆動信号に従い強度および極性が変化する磁力を発生させる。
【0068】
磁性体シート81は、電磁石82から発生される磁力により生じる引力および斥力で響板7を加振する。なお、磁性体シート81は電磁石82から発生される磁力により電磁石82に向かう方向に生じる引力のみでなく、電磁石82から離れる方向に生じる斥力が得られる強磁性材料であることが望ましいが、常磁性体や反磁性体であってもよい。その場合、響板7は磁性体シート81によって、電磁石82に向かう方向(常磁性材料の場合)もしくは電磁石82から離れる方向(反磁性材料の場合)のいずれか一方向のみにしか力を受けず、磁性体シート81から力を受けて定常位置から移動し、磁性体シート81からの力から解放された時に復元力により定常位置に向かい移動する結果、振動する。
【0069】
加振部80によっても、響板7には加振部80のうち軽量な磁性体シート81の重量のみがかかり、加振部80の重量の大半を占める電磁石82の重量は支持部55に支持されて響板7にはかからないため、加振部80が響板7自体の振動特性にほとんど影響を与えることはない。
【0070】
[変形例7]
上述した実施形態においては、支持部55は、直支柱9に接続された状態で、加振部50を支持していたが、直支柱9以外の場所に接続された状態であってもよい。例えば、支持部55は、グランドピアノ1の側板、脚などに接続された状態で加振部50を支持していてもよい。また、支持部55は、グランドピアノ1とは異なる部分、例えば、グランドピアノ1が設置される部屋の構造物(床、壁など)に接続された状態で、加振部50を支持してもよい。
【0071】
[変形例8]
上述した実施形態における制御プログラムは、磁気記録媒体(磁気テープ、磁気ディスクなど)、光記録媒体(光ディスクなど)、光磁気記録媒体、半導体メモリなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶した状態で提供し得る。また、グランドピアノ1は、制御プログラムをネットワーク経由でダウンロードしてもよい。
【0072】
[変形例9]
上述した実施形態においては、接続部材511の形状として、ボイスコイル512の直径とほぼ同じ直径の円筒状の形状が採用されているが、接続部材511の形状はこれに限られない。図14は、円筒状でない形状の接続部材511を有する本発明にかかる加振部の一例を示す図である。図14に示す加振部50の接続部材511は、上面が閉じられ、下面が開口した中空の円筒状の本体部5111と、本体部5111の上面中央から上方向に延伸するように下面が本体部5111の上面に取り付けられた円柱状の支持棒5112を有している。支持棒5112の上面が響板7の下面に接続されており、支持棒5112の上面により響板7が加振される。
【0073】
図14に示す形状の接続部材511を有する加振部50によれば、例えば加振部50を配置したい響板7上の望ましい位置(例えば、駒6に応じた位置)の付近に響棒75が配置されており、上述した実施形態にかかる接続部材511の形状では響棒75に干渉するような場合であっても、支持棒5112がその響棒75に干渉しない限り、響板7に対する接続部材511の接続を行うことができる。
【0074】
[変形例10]
上述した実施形態および変形例においては、鍵盤打楽器の例としてピアノが採用されている。本発明は例えば弦に代えて金属製の音板を発音体として有するチェレスタなどのピアノ以外の鍵盤打楽器にも適用可能である。
【符号の説明】
【0075】
1…グランドピアノ、1B…アップライトピアノ、2,2B…鍵、3,3B…ペダル、4,4B…ハンマ、5,5B…弦、6,6B,6H,6L…駒、7,7B…響板、8,8B…ダンパ、9…直支柱、9B…直支柱、10…制御装置、11…制御部、12…記憶部、13…操作パネル、14…通信部、15…信号出力部、16…インターフェイス、22,22B…鍵センサ、23,23B…ペダルセンサ、24,24B…ハンマセンサ、30,30B…鍵駆動部、40,40B…ストッパ、50,50A,50B,50H,50L…加振部、51,51B…振動部、511…接続部材、512…ボイスコイル、52,52B…ヨーク保持部、521,523…ヨーク、522…磁石、524…筐体、53…ダンパ部、55,55B…支持部、60…タッチパネル、75,75B…響棒、90…棚板、110…設定部、120…演奏情報出力部、130…阻止制御部、151…音源部、152…イコライザ部、153…増幅部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発音モードを有し、いずれかの発音モードがユーザによって設定される鍵盤楽器であって、
鍵と、
前記鍵に対応して設けられた発音体と、
前記鍵の操作に応じて前記発音体を打撃するハンマと、
前記ハンマによる前記発音体への打撃の阻止をするストッパと、
前記発音体の振動に伴い振動する響板と、
本体部と、前記響板に接続された振動部とを有し、入力された駆動信号に応じて前記本体部と前記振動部との間に引力および斥力の少なくとも一方を生じさせることにより前記振動部を振動させて前記響板を振動させる加振部と、
少なくとも前記響板が振動していない状態において前記響板に前記本体部の負荷がかからないように前記本体部を支持する支持部と、
前記鍵の操作に応じた演奏情報を出力する演奏情報出力部と、
前記演奏情報に基づく音を示す前記駆動信号を前記加振部に出力し、ユーザによって設定された前記発音モードが特定の発音モードである場合には前記駆動信号を出力しない信号出力部と、
少なくとも前記設定された発音モードが前記特定の発音モードである場合には、前記打撃の阻止をしないように前記ストッパを制御する阻止制御部と
を具備することを特徴とする鍵盤楽器。
【請求項2】
前記本体部は磁石を有し、
前記振動部は前記磁石が形成する磁路上に配置され、前記駆動信号が入力されるボイスコイルを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の鍵盤楽器。
【請求項3】
前記本体部と前記振動部とは空間によって隔てられて配置され、
前記支持部は、前記本体部が前記響板に接触しないように前記本体部を支持する
ことを特徴とする請求項2に記載の鍵盤楽器。
【請求項4】
前記本体部と前記振動部とはダンパ部を介して接続され、
前記支持部は、前記振動部が振動していない状態において前記響板に前記振動部の負荷がかからないように前記振動部を前記ダンパ部および前記本体部を介して支持する
ことを特徴とする請求項2または3に記載の鍵盤楽器。
【請求項5】
前記信号出力部は、前記出力する駆動信号の周波数特性を調整するイコライザ部を有する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の鍵盤楽器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−77000(P2013−77000A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−200456(P2012−200456)
【出願日】平成24年9月12日(2012.9.12)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】