説明

鎌状赤血球症のためのトリアリールメタン化合物

【課題】鎌状赤血球症及び望まない又は異常な細胞増殖により特徴づけられる疾患に効き目のある医薬として有用な化学化合物の群を提供する。
【解決手段】活性化合物は、置換されたトリアリールメタン化合物又はこれらの類似体であって、1以上のアリール基がヘテロアリール、シクロアルキル又はヘテロシクロアルキル基で置換され、及び/又は四級炭素原子がSi、Ge、N又はPのような異なった原子で置換されるものである。該化合物は、哺乳類細胞の増殖を阻害し、赤血球のガルドスチャンネルを阻害し、鎌状赤血球の脱水を減少し、及び/又は赤血球の鎌状化又は変形の発生を遅らせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.関連出願に対する相互参照文献
本出願は、現在継続中の1996年3月20日に提出された出願番号08/618,952及び現在継続中の1996年3月20日に提出された出願番号08/618,760の一部継続出願である。これらの両出願は、現在放棄された1994年9月16日に提出された出願番号08/307,874の一部継続出願である。本出願はまた、現在継続中の1996年3月20日に提出された出願番号08/618,762及び現在継続中の1996年3月20日に提出された出願番号08/618,759の一部継続出願である。これらの両出願は、現在放棄された1994年9月16日に提出された出願番号08/307,887の一部継続出願である。これら出願の各々は、その全体を参照文献として本明細書中に取り込まれる。
【0002】
2.発明の分野
本発明は、赤血球及び/又は哺乳類細胞の増殖のCa2+−活性化カリウムチャンネル(ガルドスチャンネンル(Gardos Channel))の、特異的で強力で、且つ安全な阻害剤である芳香族有機化合物に関する。該化合物は、鎌状赤血球症の治療又は予防に対する治療的なアプローチとして、in situで鎌状赤血球の脱水の低減及び/又は赤血球の鎌状化又は変形の発生を遅らせるために使用されうる。
該化合物はまた、異常な細胞増殖により特徴づけられる疾患の治療又は予防に対する治療的なアプローチとして、in situで哺乳類細胞の増殖を阻害するために使用されうる。
【背景技術】
【0003】
3.発明の背景
鎌状赤血球症は、数世紀の間西アフリカで認められている。鎌状赤血球貧血及び 鎌状赤血球ヘモグロビン(Hb S)の存在は、分子レベルで理解されうる最初の遺伝病であった。これは今日、ベータグロブリン鎖の第6ポジションでグリシンがバリンに置換されたことによる形態学的及び臨床的結果として認識されている(Ingram,1956,Nature 178:792-794)。アミノ酸の変化及び疾患状態の原因は、単一のヌクレオチドの置換の結果である(Marottaら、1977,J.Biol.Chem.252:5040-5053)。
【0004】
鎌状赤血球症に罹っている患者の罹患及び死亡の主要な原因は、鎌状化した細胞により起こる血管閉塞である。これは、急性及び慢性型の痛みの症状の繰り返しの発現を起こし、更に、時間の経過につれて器官の損傷の進行も起こす。完全な脱酸素化での鎌状赤血球の変形及び破壊が、鎌状赤血球ヘモグロビン、ヘモグロビンS(Hb S)の重合及び細胞内ゲル化により起こることが、長く認められ、受け入れられている。この現象は、Eaton及びHofrichter,1987,Blood 70:1245でよく再検討され、議論されている。Hb Sの細胞内ゲル化及び重合は、脈管構造を介した赤血球の移動の間の何れのときにも起こりうる。従って、全く重合していないヘモグロビンSを含む鎌状赤血球を持つ患者の赤血球は、微少循環系を通って進み、鎌状化することなく肺に戻ることができるが、静脈内で鎌状化しうるが、又は毛細血管中で鎌状化しうる。
【0005】
これらの各現象の蓋然性は、適切な毛細血管通過時間に対する細胞内ゲル化の遅延時間で決定される(Eatonら、1976,Blood 47:621)。次に、遅延時間は、ヘモグロビンの酸素化状態に依存し、脱酸素化は遅延時間を短くする。従って、細胞内ゲル化の起こることが熱力学的に不可能な場合、又は静脈中の酸素圧での遅延時間が約15秒より長い場合、細胞の鎌状化は起こらないであろう。この他に、遅延時間が約1から15秒の間である場合、赤血球は静脈中でおそらく鎌状化するであろう。しかし、遅延時間が約1秒以下である場合、赤血球は毛細血管内で鎌状化するであろう。
【0006】
毛細血管内で鎌状化する赤血球に対して、移動時間に影響のないものから、毛細血管の一時的な閉塞、虚血又は周りの細胞の梗塞、及び赤血球細胞の破壊を最終的に引き起こしうるより永続的な封鎖の範囲まで、多くの当然に起こりうる現象が存在する。
【0007】
正常な赤血球の細胞質は、約70%の水を含有することが長く認められている。水は、ミリ秒で正常な赤血球膜を通過するが、細胞の水の損失は、平均の細胞モグロビンの濃度(MCHC)を約32g/dl以上にあげるので細胞質の粘度の指数関数的増加を起こす。細胞質の粘度は、赤血球の変形及び鎌状化の主要な決定子であるので、赤血球の脱水は実質的な流動学的及び病理学的因果関係を有する。
【0008】
従って、正常な赤血球の水含有量を維持する生理学的メカニズム及び血液循環で赤血球から水の損失を起こす病理学的症状が極めて重要である。驚くことではないが、赤血球の脱水の調節は、鎌状赤血球症の治療に対する重要な治療的アプローチであると認識されている。細胞の水は、イオンの細胞内濃度の何れかの浸透性の変化に追随するであろうから、赤血球細胞のカリウム濃度の維持が特に重要である(Stuart及びEllory、1988,Brit J.Haematol.69:1-4)。
脱水した鎌状赤血球を治療するため(従って、血漿のオスモル濃度を低下することによってヘモグロビンSの重合を減少させること。)の多くの試み及びアプローチ(制限付きではあるが成功している。)が、試みられている。これらには、以下のアプローチが含まれる:蒸留水の静脈内点滴(Geyら、1973,Am.J.Med.Sci.266:267-277);高度の液体摂取及び塩の制限を伴った抗利尿ホルモン、バソプレッシンの投与(Rosaら、1980,M.Eng.J.Med.303:1138-1143;Charache及びWalker、1981,Blood 58:892-896):鎌状赤血球のカチオン含量を増加するモネンシン(monensin)の使用(Clarkら、1982,J.Clin.Invest.70:1074-1080;Fahim及びPressman、1981,Life Sciences 29:1959-1966);セチエジルシトレート(cetiedil citrate)の静脈内投与(Benjaminら、1986,Blood 67:1442-1447;Berkowitz及びOrringer、1984,Am.J.Hemotl.17:217-223;Stuartら、1987,J,Clin.Pathol.40:1182-1186);及びオキシペンチフィリン(Oxpentifyline)の使用(Stuartら、1987,J.Clin.Pathol.40:1182-1186)。
【0009】
脱水した鎌状赤血球を治療する他のアプローチには、クロトリマゾール(Clotrimazole)のようなイミダゾール、ニトロイミダゾール及びトリアゾール抗真菌剤を投与することが含まれる(Brugnaraらに対する米国特許第5,273,992)。クロトリマゾール、イミダゾールを含有する抗真菌剤は、正常及び鎌状赤血球のガルドスチャンネルの特異的で強力な阻害剤であることが示されており、in vitro及びin vivoの両方で鎌状赤血球のCa2+依存性脱水を阻害する(Brugnaraら、1993,J.Clin.Invest.92:520-526,De Franceschiら、1994,J.Clim.Invest.93:1670-1676)。Hb Sのオキシコンフォーメーション(oxyconformation)を安定化する化合物と組み合わせた場合、クロトリマゾールは、ミクロ細孔フィルターの詰まる速度の更なる減少を誘導し、不可逆的に鎌状化した細胞の形成を減少させうる(Stuartら、1994,J.Haematol.86:820-823)
。ガルドスチャンネルの阻害を介して鎌状赤血球の脱水を減少させるのに有用であると信じられる、イミダゾール様のヘテロアリール部分を含有する他の化合物には、ミコナゾール、エコナゾール、ブトコナゾール、オキシコナゾール及びスルコナゾールが含まれる。これらの化合物の各々は公知の抗真菌剤である。イミダゾールを含有する他の化合物は、ガルドスチャンネルを阻害し、カリウムの損失を防止することができないことが見いだされている。
【0010】
上記の議論から明かなように、ガルドスチャンネルの遮断を介して鎌状赤血球の脱水を減少させることは、鎌状赤血球症の治療及び/又は予防に対する強力な治療アプローチである。鎌状赤血球の脱水を減少させる手段としてのガルドスチャンネルを阻害することができる化合物が非常に望まれており、従ってこれは本発明の目的である。
【0011】
細胞増殖は、哺乳類の存在、即ち生命自身に必要な正常な要素である。しかし、細胞増殖は常に望まれるわけではなく、最近では、癌、一定の皮膚疾患、炎症性疾患、繊維性の症状及び動脈硬化の症状のような多くの生命を脅かす疾患の根幹となることが示されている。
【0012】
細胞増殖は、種々の細胞コンパートメントを越えてイオンの調節された移動に顕著に依存し、DNA合成に関連する。特異的なポリペプチド成長因子の、成長阻害された細胞中の特異的な受容体への結合は、最終的にDNA合成に導く有糸分裂のカスケードで重要な初期イオンシグナルの配列を誘発する(Rozengurt,1986,Sci-ence 234:161-164)。これらには、(1)大抵の場合、細胞内貯蔵からCa2+の迅速な放出による細胞性(cystohic)Ca2+の迅速な増加;(2)細胞内Ca2+濃度を増加させるのに更に寄与する原形質膜でのリガンド結合及び超分極感受性Ca2+チャンネンルの開放に応答する容量性Ca2+流入(Tsien及びTsien、1990,Annu.Rev.Cell Biol.6:715-760;Peppelenboschら、1991,J.Blol.Chem.266:19938-19944):及び(3)増加したK+コンダクタンス及び膜超分極を伴う原形質膜でのCa2+依存性K+チャンネルの活性化(Magniら、1991,J.Biol.Chem 261:9321-9327)が含まれる。シグナル変換経路で決定的な現象と考えられるこれらのマイトジェンで誘導される初期イオンシグナルは、正常及び悪性細胞での細胞増殖を阻害するための強力な治療標的である。
【0013】
初期の有糸分裂シグナルに関連したイオン流出の変化を介した望まないか、又は異常な細胞増殖により特徴づけられる疾患の治療に対する1つの治療的なアプローチには、クロトリマゾールの投与が含まれる。先に議論したように、クロトリマゾールは、赤血球のCa2+で活性化されたカリウムチャンネルを阻害することが示されている。加えて、クロトリマゾールは、凝集した細胞において、電圧で刺激された、及びリガンドで刺激されたCa2+流入機構を阻害し(Villalobosら、1992,FASEB J.6:2742-2747;Monteroら、1991,Biochem.J.277.73-79)、in vitro及びin vivoの両方で細胞の増殖を阻害する(Benzaquenら、1995,Nature Medicine 1:534-540)。最近、Ca2+で活性化されたカリウムチャンネルを阻害することができるクロトリマゾール及び他のイミダゾール含有抗真菌剤が、動脈硬化(Halperinらに対する米国特許第5,358,959)、並びに望まない又は異常な細胞増殖により特徴づけられる他の疾患の治療に有用であることが示された。
【0014】
上記の議論から明らかなように、初期有糸分裂シグナルに関連したイオン流出の変化を通して哺乳類細胞の増殖を阻害することは、望まないが、又は異常な細胞の増殖により特徴づけられる疾患を治療及び/又は予防するための強力な治療的アプローチとなる。哺乳類細胞の増殖を阻害できる化合物が非常に望まれており、従って、これはまた本発明の目的である。
【0015】
4.本発明の概要
これらの及び他の目的が本発明によって提供される。一側面では、赤血球、特に鎌状赤血球のCa2+で活性化されたカリウムチャンネル(ガルドスチャンネル)、及び/又は哺乳類細胞の増殖の強力で、選択的で安全な阻害剤である一群の有機化合物を提供する。該化合物は、一般に、置換されたトリアリールメタン化合物、又はこれらの類似体であって、1以上のアリール部分が、ヘテロアリール、シクロアルキル又はヘテロシクロアルキル部分で置換され、及び/又は四級炭素がSi、Ge、N、又はPのような他の原子で置換されたものである。
例示的な一態様では、ガルドスチャンネル及び/又は哺乳類細胞の増殖を阻害することができる本発明に従った化合物は、以下の構造式を有する化合物又はこれらの薬学的に許容しうる塩又は水和物である。
【化1】

但し、 nは0、1、2、3又は4である。
Xは存在せず、(C1−C3)アルキル、(C1−C3)アルケニル、又は( C1−C3)アルキニルである。
YはC、N、P、Si又はGeである。
1は存在せず、−ハロ、−R、−OR、−SR、−NR2、−ONR2、−NO2、−CN、−C(O)R、−C(S)R、−C(O)OR、−C(S)OR、−C(O)SR、−C(S)SR、−C(O)NR2、−C(S)NR2、−C(O)NR(OR)、−C(S)NR(OR)、−C(O)NR(SR)、−C(S)NR(SR)、−CH(CN)2、−CH[C(O)R]2、−CH[C(S)R]2、−CH[C(O)OR]2、−CH[C(S)OR]2、−CH[C(O)SR]2、−CH[C(S)SR]2又はアリールである。
Ar1はアリール、置換アリール、イミダゾール、ニトロイミダゾール及びトリアゾール以外のヘテロアリール、イミダゾリウム、ニトロイミダゾリウム及びトリアゾリウム以外のヘテロアリーリウム、(C5−C8)シクロアルキル又は(C5−C8)ヘテロシクロアルキルである。
Ar2はアリール又は置換アリールである。
Ar5はアリール、置換アリール、ビアリール又はイミダゾール、ニトロ イミダゾール及びトリアゾール以外のヘテロアリールである。
各Rは、−H、(C1−C6)アルキル、置換(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル、置換(C1−C6)アルケニル、(C1−C6)アルキニル、置換(C1−C6)アルキニル、及び(C1−C6)アルコキシよりなる群から 独立に選択される。
アリール置換基は、−ハロ、トリハロメチル、−R、−R’、−OR’、−SR’、−NR’2、−NO2、−CN、−C(O)R’、−C(S)R 、−C(O)OR’、−C(S)OR’、−C(O)SR’及び−C(S)
SR’よりなる群から各々独立に選択される。
アルキル、アルケニル及びアルキニル置換基は、−ハロ、−R’、−OR’、−SR’、−NR’2、−NO2、−CN、−C(O)R’、−C(S)R’、−C(O)OR’、−C(S)OR’、−C(O)SR’、−C(S)SR’、アリール、γ−ブチロラクトニル、ピロリジニル及びスクシニックアンハイドリジル(sccunic anhydridyl)よりなる群から各々独立に選択 される。及び各R’は−H、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル及び(C1−C6)アルキニルよりなる群から独立に選択される。
【0016】
他の側面では、本発明は、本発明に従った1以上の化合物を、薬学的に許容しうる担体、賦形剤又は希釈剤とともに混合して含有する薬学的組成物を提供する。このような調剤は、本発明の方法で投与されうる。
【0017】
更に他の側面では、本発明は、in situで、鎌状赤血球の脱水を減少させる及び/又は赤血球の鎌状化又は変形の発生を遅らせる方法を提供する。該方法は、鎌状赤血球を、in situで、鎌状赤血球の脱水を減少させるのに及び/又は赤血球の鎌状化又は変形の発生を遅らせるのに効果的な、本発明に従った少なくとも1つの化合物又はこれらの薬学的組成物と接触することを包含する。好ましい態様では、患者の微少循環系の脈管構造内にある鎌状赤血球で、鎌状赤血球の脱水が減少され、赤血球の変形が遅延され、これによって血管閉塞、及び、鎌状化した細胞で通常起こる引き続きの有害な影響を防止又は減少する。
【0018】
更に他の側面では、本発明は、ヒトのような患者の鎌状赤血球症の治療及び/又は予防のための方法を提供する。該方法は、鎌状赤血球症に罹患している患者に、予防又は治療に効果的な量の本発明に従った少なくとも1つの化合物を投与することを包含する。該患者は、急性鎌状クリーゼ(acute sickle crisis)又は慢性鎌状赤血球症状の発症の何れに苦しんでいてもよい。
【0019】
更に他の側面では、本発明は、in situで、哺乳類細胞の増殖を阻害するための方法を提供する、この方法は、哺乳類細胞を、細胞の増殖を阻害するのに効果的な本発明に従った少なくとも1つの化合物、又はこれらの薬学手組成物の所定量にin situで接触することを包含する。該化合物又は組成物は、細胞増殖抑制的、細胞毒性的、又は両機構の組合せによって作用し、増殖を阻害しうる。この方法での哺乳類細胞には、血管平滑筋細胞、繊維芽細胞、内皮細胞、種々のタイプの前癌細胞及び種々のタイプの癌細胞が含まれる。
【0020】
更に他の側面では、本発明は、ヒトのような患者の望まない又は異常な細胞増殖を治療及び/又は予防する方法を提供する。該方法では、本発明に従った少なくとも1つの化合物、又はこれらの薬学的組成物を、望まない又は異常な哺乳類細胞の増殖を阻害するのに効果的な量で、このような治療が必要な患者に投与する。該化合物及び/又は組成物は、増殖細胞に局所的に適用し得、患者の全身に投与することもできる。好ましくは、該化合物及び/又は組成物は、望まない又は異常な細胞増殖により特徴づけられる疾患を有する患者に投与される。このような疾患には、癌、上皮全癌性傷害、非癌性血管形成症状、又は動脈硬化が含まれるが、これらに限定されない。
【0021】
第一の側面では、本発明は、望まない及び/又は異常な哺乳類細胞の増殖により特徴づけられる疾患の治療及び/又は予防の方法を提供する。該方法は、予防又は治療に効果的な量の本発明に従った少なくとも1つの化合物、又はこれらの薬学的組成物を、このような治療の必要な患者に投与することを包含する。本発明の方法で治療又は予防されうる異常な哺乳類細胞の増殖により特徴づけられる疾患には、癌、血管増殖性障害、繊維性障害及び動脈硬化症状が含まれるが、これらに限定されない。
【0022】
4.1定義
本明細書で使用する以下の語は、以下の意味を有すものとする。
アルキル」は、飽和の分岐、直鎖又は環状炭化水素基をいう。代表的なアルキル基にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、シクロブチル、ペンチル、イソペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル等が含まれる。
ヘテロシクロアルキル」は、飽和環状炭化水素基であって、1以上の炭素原子がSi、Ge、N、O、S又はPのような他の原子で置換されるものをいう、代表的なヘテロシクロアルキル基には、モルホリノ、チオリノ、ピペリジル、ピロリジニル、ピペラジル、ピラゾリジル、イミダゾリジニル等が含まれるが、これらに限定されない。
【0023】
アルケニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する不飽和の分岐、直鎖又は環状炭化水素基をいう。この基は、二重結合に関してシス又はトランス配置の何れでもよい。代表的なアルケニル基には、エテニル、プロペニル、イソプロペニル、シクロプロペニル、ブテニル、イソブテニル、シクロブテニル、tert−ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル等が含まれる。
【0024】
アルキニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有する不飽和の分岐、直鎖又は環状炭化水素基をいう。代表的なアルキニル基には、エチニル、プロピニル、ブチニル、イソブチニル、ペンチニル、ヘキシニル等が含まれる。
【0025】
アルコキシ」は、−OR基(但し、Rは先に定義したようなアルキル、アルケニル又はアルキニルである。)をいう。
【0026】
アリール」は、共役π電子系を有する不飽和環状炭化水素基をいう。代表的なアリール基には、ペンタ−2,4−ジエン、フェニル、ナフチル、アントラシル、アズレニル、インダセニル等が含まれるが、これらに限定されない。
【0027】
ヘテロアリール」は、1以上の環炭素原子がN、O又はSのような他の原子で置換されたアリール基をいう。代表的なヘテロアリール基には、フラニル、チエニル、インドリル、ピロリル、ピラニル、ピリジル、ピリミジル、ピラジル、ピリダジル等が含まれるが、これらに限定されない。
【0028】
ヘテロアリーリウム」は、1以上の水素原子が中性の親環(parent ring)
の何れかの位置に付加されたヘテロアリール基をいう。代表的なヘテロアリーリウム基には、ピリジニウム、ピラジニウム、ピリミジニウム、ピリダジニウム、1,3,5−トリアジニウム等が含まれるが、これらに限定されない。
in situ」は、「in vivo」、「ex vivo」、及び「in vitro」の語をいい、これらを包含する。これらの語は、当業者に一般に認識され、理解される。更に、「in situ」の語句は、本明細書中において、その供給源又は起源、その条件又は状態、又はそのロケーション又は位置での持続期間又は生存期間に関わりなく、ありのままで(as found or in place)、実在物、細胞又は組織を同定するために、その最も広い含意的及び明示的文脈で使用される。
【0029】
5.本発明の詳細な説明
背景のところで議論したように、ガルドスチャンネルの阻害を介した鎌状脱水の阻害は、鎌状赤血球症の治療及び/又は予防に対する強力な治療アプローチである。in vitroの試験で、クロトリマゾール、即ちイミダゾールを含有する抗真菌剤が、鎌状赤血球でのCa2+で活性化されるK+輸送及び細胞脱水をブロックすることが示された(Brugnaraら、1993,J.Clin.Invest.92:520-526)。鎌状赤血球症に対するトランスジェニックマウスモデルでの研究(SADマウス、Trudelら、1991,EMBO J.11:3157-3165)で、クロトリマゾールの経口投与が、赤血球ガルドスチャンネルの阻害、赤血球細胞K+含量の増加、平均細胞ヘモグロビン濃度(MCHC)の減少、及び細胞密度の減少を導いたことが示された(De Franceschiら、1994,J.Clin.Invest.93:1670-1676)。更に、経口でのクロトリマゾールの治療が、鎌状赤血球症を持つ患者でガルドスチャンネルの阻害を誘導し、赤血球の脱水を減少する(Brugnaraら、1996,J.Clin.Invest.97:1227-1234)。in vitroでガルドスチャンネルを阻害する他の抗真菌剤には、ミコナゾール、エコナゾール、ブトコナゾール、オキシコナゾール及びスルコナゾールが含まれる(Brugnaraらに対する米国特許第5,273,992)。これらの化合物のすべてが、イミダゾール様の環、即ち2以上の窒素を含有するヘテロアリール環を含有する。
【0030】
背景のところで議論したように、初期イオン性有糸分裂シグナルの調節及び細胞増殖の阻害は、異常な細胞増殖によって特徴づけられる疾患の治療及び/又は予防に対する強力な治療アプローチである。クロトリマゾールはまた、赤血球のガルドスチャンネルの阻害に加えて、in vivo及びin vitroの両方で、イオン性有糸分裂シグナルを調節し、細胞の増殖を阻害する。
【0031】
例えば、クロトリマゾールは、in vitroにおいて可逆的且つ投与量依存性で正常及びガン細胞系の細胞増殖の速度を阻害する(Benzaquenら、1995 Nature Medi-cine 1:534-540)。クロトリマゾールはまた、細胞内Ca2+貯蔵を涸渇し、通常有糸分裂刺激を起こす細胞性Ca2+の上昇を阻害する。更に、重篤な合併免疫不全症(SCID)を有し、MM−RUヒトメラノーマ細胞を接種しマウスでは、毎日クロトリマゾールを投与することで、観測された肺転移の数が有意に減少した(Benzaquenら、上記)。
【0032】
非常に驚くことに、クロトリマゾール及び他の上記の抗真菌剤のイミダゾール様の環部分(これは、これらの抗真菌活性及び他の生物活性の基礎をなす必須の官能基としてよく認識されている。)は、ガルドスチャンネルの阻害又はマイトジェンで誘導される哺乳類細胞の増殖の阻害を起こす原因となる、基本をなす官能基ではないことを今回発見した。従って、この驚くべき発見を一部基礎として、一側面では、本発明は、赤血球、特に鎌状赤血球のCa2+で活性化されるカリウムチャンネル(ガルドスチャンネル)を阻害することができる、及び/又は哺乳類の細胞増殖、特にマイトジェンで誘導される細胞増殖を阻害することができる新たな群の有機化合物を提供する。
【0033】
他の側面では、本発明は、鎌状赤血球症の治療に対する治療的なアプローチとしてin situで、鎌状赤血球の脱水を減少する、及び/又は赤血球の鎌状化の発生を遅らせる方法を提供する。このもっとも広い意味では、この方法は、単一のステップのみ、−−本発明の少なくとも1つの薬理学的に活性な化合物、又はこれらの組成物を、in situで、脱水を減少させるのに、及び/又は、細胞の鎌状化又は変形の発生を遅らせるのに効果的な量で、鎌状赤血球に投与すること、を含有する。
【0034】
何れかの特別な理論に結びつけるつもりはないが、本発明で開示される活性化合物を、in situで、鎌状赤血球に適切な量で投与することは、鎌状赤血球のガルドスチャンネルのほぼ完全な阻害を起こし、これによって鎌状赤血球の脱水を減少する、及び/又は、細胞の鎌状化又は変形の発生を遅らせると考えられる。
好ましい態様では、鎌状赤血球の脱水が減少され、及び/又は、鎌状化の発生が患者の微少循環系脈管構造内にある鎌状赤血球で遅れ、これによって鎌状化した細胞によって一般に起こる血管閉塞を減少又は除去する。
【0035】
鎌状赤血球症の治療において治療の標的としてのガルドスチャンネルの推定される重要性に一部基づけば、本発明はまた、鎌状赤血球症の治療又は予防方法に向けられる。この方法では、効果的な量の、1以上の本発明に従った化合物又はこれらの薬学的組成物を鎌状赤血球症に罹患している患者に投与する。この方法は、予防として鎌状赤血球症を治療するのに使用され、細胞内Hb S濃度及び/又は重合を減少し、これによって血液循環での赤血球の鎌状化及び血管閉塞の時間及び持続期間を減少しうる。この方法はまた、鎌状赤血球クリーゼを持つ患者で、及び慢性鎌状赤血球症状に罹患している患者で治療に使用されれ、クリーゼの頻度及び持続期間の両方を制御することができる。
【0036】
本発明の化合物は、哺乳類細胞の増殖の強力で特異的な阻害剤でもある。従って、他の側面では、本発明は、望まない又は異常な細胞増殖によって特徴づけられる疾患の治療又は予防に対する治療アプローチとして、哺乳類細胞の増殖を阻害する方法を提供する。このもっとも広い意味では、この方法は単一のステップのみ−−in situで、効果的な量の少なくとも1つの本発明に従った薬理学的に活性な化合物を投与することを含有する。該化合物は、細胞増殖抑制的に、細胞毒性的に、又は細胞増殖を阻害する両機構の組み合わせによって作用しうる。この方法で治療可能な哺乳類細胞には、血管平滑筋細胞、繊維芽細胞、上皮細胞、種々の前癌細胞及び種々の癌細胞が含まれる。好ましい態様では、細胞増殖は、望まない又は異常な細胞増殖によって特徴づけられる疾患に罹患している患者で阻害される。このような疾患は、以下でより完全に開示される。
【0037】
ある一定の疾患で哺乳類細胞の増殖の推定の役割に一部基づけば、本発明はまた、異常な細胞の増殖によって特徴づけられる疾患を治療又は予防する方法に向けられる。この方法では、効果的な量の本発明に従った少なくとも1つの化合物、又はこれらの薬学的組成物を、異常な細胞増殖によって特徴づけられる疾患に罹っている患者に投与する。何れかの特別な理論に結びつけるつもりはないが、適切な量の本発明に従った化合物を患者に投与することは、初期有糸分裂シグナルに関連するイオン流出を変えることによって細胞増殖を阻害すると考えられる。このようなイオン流出の変更は、細胞のカリウムチャンネル、特にCa2+で活性化されるカリウムチャンネルを阻害する本発明の化合物の能力によると考えられる。この方法は、望まない又は異常な細胞増殖を予防的に防止するのに使用されうるが、又は、異常に増殖する細胞を減少させ、又は、阻止するために治療的に使用されうる。該化合物、又はこれらの薬学的処方剤は、増殖する細胞に局所的に適用され、所望の時に増殖を阻止又は阻害することができるか、又は、患者に全身的に投与され、細胞の増殖を阻止又は阻害しうる。
【0038】
本発明の方法で治療又は予防されうる異常な細胞増殖によって特徴づけられる疾患には、血管増殖性障害、繊維性障害、動脈硬化症、及び種々の癌が含まれる。
血管増殖性障害は、血管の異常な増殖により一般に起こる血管形成性(angio-genic)及び脈管形成性(vaculogenic)疾患をいう。血管の形成及び拡張、又は脈管形成及び血管形成は、それぞれ、胚の成長、黄体の形成、傷の回復、及び器官の再生のような種々の生理学的プロセスで重要な役割を演じている。これらはまた、癌の発達に中心的な役割を演じている。血管増殖性疾患の他の例には、新たな毛細血管が関節を侵し、軟骨を破壊する関節炎、及び、網膜での新たな毛細血管が硝子体を侵し、出血し、失明及び血管新生緑内障を起こす、糖尿病性網膜症のような眼疾患が含まれる。
【0039】
異常な新血管新生の他の例は、固形腫瘍に関連したものである。腫瘍の無制限な成長が血管形成に依存すること、及び、血管形成因子の遊離による血管形成の誘導が発癌現象で重要なステップであり得ることが、現在確立されている。例えば、基本的な繊維芽細胞成長因子(bFGF)は、幾つかの癌細胞により遊離され、癌血管形成に決定的な役割を演じる。幾つかの動物腫瘍が、血管形成が阻害される場合、退行するという証明は、腫瘍成長で血管形成の役割に対する、最も人を動かさずにはおかない証拠を提供した。新血管新生に関連した他の癌には、血管内皮種、血管腫、及びカポジ肉腫が含まれる。
【0040】
内皮細胞及び血管平滑筋細胞の増殖は、新血管新生の主要な特徴である。本発明は、このような増殖を阻害するのに有効であり、従って、このような新血管新生に完全に又は一部依存する血管形成症状の進行を、全体として阻害又は阻止するのに有用である。本発明は、特に、該症状が新血管新生に必ずしも関連しない上皮細胞又は血管平滑筋細胞増殖の追加の要素を有する場合に有用である。例えば、乾癬は新血管新生に関連した上皮細胞増殖に独立な上皮細胞増殖を更に含みうる。同様に、成長を続けるのに新血管新生を必要とする固形腫瘍も、上皮細胞又は血管平滑筋細胞の腫瘍であり得る。この場合に、腫瘍細胞自身の成長並びに新血管新生は、本発明で開示した化合物により阻害される。
【0041】
本発明はまた、繊維芽細胞の増殖により全体として又は部分的に起こる繊維症のような繊維性障害及び繊維症の他の医学的合併症の治療に有用である。繊維症(以下で議論するアテローム硬化症以外)を含む医学的な症状には、外科手術又は損傷にで起こる望まない組織の癒着が含まれる。
【0042】
本発明により治療されうる他の細胞増殖性疾患には、動脈硬化性症状が含まれる。動脈硬化は、動脈壁の肥厚化及び硬化を記述する言葉である。本明細書中で使用する動脈硬化性症状とは、古典的なアテローム硬化症、加速性アテローム硬化症、アテローム硬化性傷害、及び、糖尿病の血管合併症を含めた、望まない上皮細胞及び/又は血管平滑筋細胞の増殖により特徴づけられる何れかの他の動脈硬化性症状を意味する。
【0043】
血管平滑筋細胞の増殖は、古典的なアテローム硬化症における主要な生理学的特徴である。これは、上皮細胞からの成長因子の遊離が、順次、内径を減少させ、最終的に動脈を塞ぐ内膜下平滑筋の増殖を刺激すると考えられている。本発明は、このような増殖を阻害するのに有用であり、従って、このような増殖及び関連したアテローム硬化性症状の開始を遅らせ、これらの進行を阻害し、又はこれらの進行を停止させるのに有用である。
【0044】
血管平滑筋細胞の増殖は、拒絶されない心臓移植片の欠損に対する主要な応答である加速性アテローム硬化症を起こす。この増殖もまた、成長因子により媒介されると考えられており、最終的に冠状動脈の閉塞を起こしうる。本発明は、このような閉塞を阻害し、このような欠損のリスクを減少させるか、又は防止しさえするのに有効である。
【0045】
血管の損傷もまた、上皮細胞及び血管平滑筋細胞の増殖を起こす。この損傷は、血管の手術及びバルーン血管形成を含めたかなり多くの外傷性の現象又は介入により起こりうる。
【0046】
再狭窄は、冠状動脈の、成功したバルーン血管形成の主要な合併症である。これは、冠状動脈の内側を覆う内皮細胞に対する機械的な損傷の結果として成長因子が放出されることにより起こる。従って、望まない内皮細胞及び平滑筋細胞の増殖を阻害することにより、本発明で述べる化合物は、再狭窄の開始を遅らせるか、又は防止しさえもするのに使用されうる。
【0047】
本発明によって治療又は予防されうる他のアテローム硬化性症状には、糖尿病の合併症、糖尿病性糸球体硬化症及び糖尿病性網膜症のような上皮細胞及び/又は血管平滑筋細胞の増殖を含めた動脈壁の疾患が含まれる。
【0048】
本発明で説明する化合物はまた、種々のタイプの癌を治療又は予防するのに有効である。本発明により治療されうる癌には、胆管癌;グリア芽細胞腫及び髄芽腫のような脳腫瘍;乳ガン;子宮頸癌:絨毛癌;結腸癌;子宮内膜癌;食道癌;
胃癌;急性又は慢性リンパ球性及び骨髄性白血病、複合骨髄腫、白血病に関連したエイズ及び成人T−細胞白血病性リンパ腫を含めた血液学的新生物;ボーエン症及びパジェット病を含む上皮内新生物;肝癌;肺癌;ホジキン症及びリンパ性リンパ腫を含めたリンパ腫;神経芽腫;扁平上皮癌を含めた口部癌;上皮細胞、間質細胞、胚細胞及び間葉細胞から生じるものを含めた卵巣癌;膵臓癌;前立腺癌;直腸癌;平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫及び骨肉腫を含めた肉腫;メラノーマ、カポジ肉腫、バソセルラー癌(basocellular cancer)及び扁平上皮細胞癌を含めた皮膚癌:胚腫瘍(セミノーマ、非セミノーマ(奇形種、絨毛癌))、間質腫瘍(stromaltumors)及び胚細胞腫瘍を含めた精巣癌;甲状腺腺癌及び髄様癌(medullar carcinoma)のような甲状腺癌;並びに腺癌及びビルムス腫を含めた腎臓癌が含まれるがこれらに限定されない。
【0049】
本発明の化合物はまた、ホルモン依存性癌、及び、非ホルモン依存性癌にも有用である。これらはまた、前立腺及び非前立腺癌で、並びに乳癌及び非乳癌にも有用である。これらは更に、複数の医薬に耐性な株の癌に有用である。
上に列挙した特別な疾患に加えて、本発明はまた、ケロイド、肥厚性の傷跡、脂漏性皮膚病、乳頭腫ウイルス感染(例えば、尋常性ゆうぜい、足底ゆうぜい、扁平ゆうぜい(verrucaplan)、コンジローム等を生じる。)、湿疹及び光線性角化症のような上皮前癌性傷害を含めた皮膚科学的疾患;細胞増殖性糸球体腎炎を含めた他の炎症性疾患;紅斑性狼瘡;硬皮症;一時的関節炎;閉塞性血栓性血管炎;皮膚粘膜リンパ節症候群;及び子宮平滑筋腫を含めた成長因子により媒介される他の病状を治療又は予防するのに有用である。
【0050】
本発明の化合物及び方法は、鎌状赤血球症及び/又は細胞増殖性疾患を治療するのに一般的に使用される医薬及び方法以上の無数の利点を提供する。本発明の化合物及び方法はまた、クロトリマゾール又は他の抗真菌剤での鎌状赤血球症及び/又は細胞増殖性疾患の治療以上の無数の利点を提供する。例えば、本発明の多くの化合物は、in vitro試験でクロトリマゾールよりも強力であり、従って臨床上の設定において、重要な治療上の利点を提供しうる。
【0051】
より重要なのは、本発明の化合物が、これらの他の医薬と比較して毒性が減少されていることである。クロトリマゾールでは、イミダゾール部分は、シトクロームP−450補酵素で触媒される広範囲の反応を阻害する要因であるが、これが、これらの主要な毒物学的影響を構成することは周知である(Pappas及びFrankhn,1993,Toxicology 80:27-35;Matsuuraら、1991,Biolochemical Pharmacology 41:1949-1956)。クロトリマゾールの類似体及び代謝物は、シトクロームP450を誘導せず(Matsuuraら、1991,Biochemical Pharmacology 41:1949-1956)、従って、クロトリマゾールの毒性を共有しない。
【0052】
5.1化合物
本発明に従ってガルドスチャンネル及び/又は哺乳類細胞の増殖を阻害することができる化合物は、一般には、トリアリールメタン化合物又はこれらの類似体であって、1以上のアリール部分が、ヘテロアリール、シクロアルキル又はヘテロシクロアルキル部分で置換されたもの、及び/又は四級炭素がSi、Ge、N又はPのような他の原子で置換されたものである。例示的な一態様では、本発明の化合物は下式を有する化合物である。
【化2】

但し、nは0、1、2、3又は4である。
Xは存在せず、(C1−C3)アルキル、(C1−C3)アルケニル、又は(C1−C3)アルキニルである。
YはC、N、P、Si又はGeである。
1は存在せず、−ハロ、−R、−ORN−SRN−NR2、−ONR2、−NO2、−CN、−C(O)R、−C(S)R、−C(O)OR、−C(S)OR、−C(O)SR、−C(S)SR、−C(O)NR2、−C(S)NR2、−C(O)NR(OR)、−C(S)NR(OR)、−C(O)NR(SR)、C(S)NR(SR)、−CH(CN)2、−CH[C(O)R]2、−CH[C(S)R]2、−CH[C(O)OR]2、−CH[C(S)OR]2、−CH[C(O)SR]2、−CH[C(S)SR]2又はアリールである。
【0053】
Ar1はアリール、置換アリール、イミダゾール、ニトロイミダゾール及びトリアゾール以外のヘテロアリール、イミダゾリウム、ニトロイミダゾリウム及びトリアゾリウム以外のヘテロアリーリウム、(C5−C8)シクロアルキル又は(C5−C8)ヘテロシクロアルキルである。
Ar2はアリール又は置換アリールである。
Ar3はアリール、置換アリール、ビアリール又はイミダゾール、ニトロイミダゾール及びトリアゾール以外のヘテロアリールである。
各Rは、−H、(C1−C6)アルキル、置換(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル、置換(C1−C6)アルケニル、(C1−C6)アルキニル、置換(C1−C6)アルキニル、及び(C1−C6)アルコキシよりなる群から独立に選択される。
アリール置換基は、−ハロ、トリハロメチル、−R、−R’、−OR’、−SR’、−NR’2、−NO2、−CN、−C(O)R’、−C(S)R’、C(O)OR’、−C(S)OR’、−C(O)SR’、−C(S)SR’よりなる群から各々独立に選択される。
【0054】
アルキル、アルケニル及びアルキニル置換基は、−ハロ、−R’、−OR’、−SR’、−NR’2、−NO2、−CN、−C(O)R’、−C(S)R’、−C(O)OR’、−C(S)OR’、−C(O)SR’、−C(S)SR’、アリール、γ−ブチロラクトニル、ピロリジニル及びスクシニックアンハイドリジル(sccunic anhydridyl)よりなる群から各々独立に選択される。及び各R’は−H、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル及び(C1−C6)アルキニルよりなる群から独立に選択される。
【0055】
他の例示的な態様では、本発明の化合物は式(I)の化合物であるが、該化合物は1−(2−クロロフェニル)−1,1−ジフェニルメタノール、1−(2−クロロフェニル)−1,1−ジフェニルメタン又は1−(2−クロロフェニル)
−1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタンではない。
更に他の例示的な態様では、本発明の化合物は式(I)の化合物であるが、該化合物は下式を包含する何れかの化合物ではない。
【化3】

但し、 R1は−H、−OH、アルキル又はアルコキシである。
2は−H又は−OHである。
3は−H、−OH又はハロゲンである。及びR4は−H、−OH又はハロゲンである。
【0056】
更に他の例示的な態様では、本発明の化合物は、式(I)の化合物であるが、該化合物は下式を包含する何れかの化合物ではない。
【化4】

但し、R1は−H、−OH又はハロゲンである。
2は存在せず、−H、フェニル又はヒドロキシ置換されたフェニルである。
3は−H、−OH、低級アルキル又は低級アルコキシである。
4は−S−CH2−R5、−O−CH2−R5、=N−O−CH2−R5、CH2−CH(CH3)−S−置換フェニル、O−フェニル−CH=CH2、フェニル又は置換フェニルであり、該フェニル置換基は−OH又はハロゲンである。
5はビニル、フェニル、ハロゲン一置換フェニル、ハロゲン二置換フェニル、フェニル−S−フェニル、−CH2−O−フェニル、−CH2−O−(ハロゲン置換)フェニル又は下式の置換基である。
【0057】
【化5】

但し、ZはS、O又はNである。及びR6は−H又はハロゲンである。
好ましい態様では、式(I)の化合物の置換基は以下のとおりである。
nが1、2、3又は4である。
Xが存在せず又は−C≡C−である。
YがC、N、P、Si又はGeである。
1が存在せず、−F、−Cl、−Br、−R、−OR、−SR、−NR、−ONR2、−NO2、−CN、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR2、=C(O)NR(OR)、−CH[C(O)OR]2、又はシクロペンタ−2,4−ジエン−1−イリデンである。
Ar1がフェニル、置換フェニル、イミダゾール、ニトロイミダゾール及びトリアゾール以外のヘテロアリール、シクロヘキシル、ピペリジル、又はピリジニウムである。
【0058】
Ar2がフェニル又は置換フェニルである。
Ar3がフェニル、置換フェニル、ビフェニル、ナフチル又はピリジルである。
Rは−H、(C1−C3)アルキル、置換(C1−C3)アルキル、(C1−C3)アルケニル、置換(C1−C3)アルケニル、(C1−C3)アルキニル、置換(C1−C3)アルキニル及び(C1−C3)アルコキシである。
フェニル置換基は、−F、−Cl、−Br、−CF3、−R、−R’、−OR’、−SR’、−NR’2、−NO2、−CN、−C(O)R’及び−C(O)OR’よりなる群から各々独立に選択される。
【0059】
アルキル、アルケニル及びアルキニル置換基は、−F、−Cl、−Br、−R’、−OR’、−SR’、−NR’2、−NO2、−CN、−C(O)R’、−C(O)OR’、ナフチル、γ−ブチロラクトニル及びピロリジニル よりなる群から各々独立に選択される。及び 各R’は、−H、(C1−C3)アルキル、(C1−C3)アルケニル及び(C1−C3)アルキニルよりなる群から独立に選択される。
式(I)に従った例示的な好ましい化合物には、以下の表Aに列記した化合物が含まれる。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
【表3】

【0063】
【表4】

【0064】
【表5】

【0065】
【表6】

【0066】
【表7】

【0067】
【表8】

【0068】
【表9】

【0069】
【表10】

【0070】
【表11】

【0071】
これらの化合物は、本明細書中において、上記表Aで示した化合物番号で参照されるであろう。
【0072】
他の好ましい態様では、本発明の化合物は、下記構造式を有する化合物である。
【化6】

但し、nは0、1、2、3又は4である。
1は−H、−OR、−SR、−CN、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR2、−CH[C(O)R]2、又は−CH[C(O)OR]2である。
2は−F、−Cl、−Br、−I、−OR、−SR、−C(O)R又は−C(O)NR2である。
2は−H又は−NO2である。
3は−H、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル、(C1−C6)アルキニル、−OR又は−SRである。
4は−H又は−NR2である。
4'は−H、−F、−Cl、−Br又は−Iである。及び 各Rは、−II、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル、(C1−C6)アルキニル又は(C1−C6)アルコキシよりなる群から独立に選択 される。
式(II)に従った例示的な好ましい化合物には以下のものが含まれる:6、14、15、17、20、27、32、33、36、42、45、49、55、70、75、79、80、81、82、83、84、85及び86。
【0073】
他の好ましい態様では、本発明の化合物は、下記構造式を有する化合物である。
【化7】

但し、Xは存在せず、又は−C≡C−である。
YはC、P、Si又はGeである。
nは0、1、2、3又は4である。
【0074】
Ar1はフェニル、置換フェニル、シクロアルキル、イミダゾリウム、ニトロイミダゾリウム又はトリアゾリウム以外のヘテロアリーリウムである。
Ar3はフェニル、ナフチル、ピペリジル又はシクロヘキシルである。
1は−R、−OR、−SR、−CN、−NR2、−ONR2、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR2、−CH[C(O)R]2、−CH[C(O)OR]2、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル、(C1−C6)アルキニル、シクロペンタ−2,4−ジエン−1−イリデン又はフェニルである。
2、R3及びR4の各々は、−H、−F、−Cl、−Br、−I、−OR、−SR、−NR2、−NO2、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR2、トリハロメチル、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル、(C1−C6)アルキニル及びフェニルよりなる群から独立に選択される。
【0075】
各Rは−H、ハロ、(C1−C6)アルキル、置換(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル、置換(C1−C6)アルケニル、(C1−C6)アルキニル、置換(C1−C6)アルキニル及び(C1−C6)アルコキシよりなる 群から独立に選択される。
アルキル、アルケニル又はアルキニル置換基は、アリール、−C(O)OR、ピロリジニル、ブチロラクトニル、−F、−Cl、−Br、−I及び−CNよりなる群から各々独立に選択される。
フェニル置換基は、各々独立に−Rである。
【0076】
式(III)に従った例示的な好ましい化合物は以下の通りである:7、10、12、13、16、18、19、21、22、23、24、26、28、29、30、31、34、35、37、38、40、41、43、44、46、47、48、50、51、52、53、54、56、58、59、60、61、62、64、65、67、68、69、71、72、73、78、87、88、89及び90。
【0077】
本明細書中で参照される化学式は、互変異性又は配座異性の現象を示しうる。
本明細書の範囲内の図式は可能な互変異性又は配座異性体の1つのみを表しうるので、本発明は、本明細書中で説明される生物学的又は薬理学的活性を示すいずれの互変異性体又は配座異性体も包含する。
【0078】
本発明の化合物は、遊離の酸、遊離の塩基又は薬学的に許容しうるこれらの塩の形態であり得る。このような塩は、化合物を適切な酸で処理することにより容易に調製されうる。このような酸には、例として、及び制限を意味しないが、ハロゲン化水素酸(塩酸、臭素酸、など)、硫酸、硝酸、リン酸等のような無機酸、及び、酢酸、プロパン酸、2−ヒドロキシ酢酸、2−ヒドロキシプロパン酸、2−オキソプロパン酸、プロパン二酸、ブタン二酸等のような有機酸が含まれる。逆に、塩はアルカリで処理することにより遊離の塩基へ変換されうる。
上記化合物及びこれらの薬学的に許容しうる塩加えて、本発明は、該化合物の適切な溶媒和された、並びに溶媒和されていない形態(例えば、水和された形態)を使用しうる。
【0079】
本明細書に示される化合物は、化学化合物の調製に適用しうる何れかの公知の方法をにより製造されうる。適切な方法は、当業者に周知である。好ましい方法は、代表的な例によって例示される。必要な出発物質は、商業的に、又は、有機化学の標準的手順により得ることができる。更に、多くの化合物は商業的に利用可能である。
【0080】
鎌状赤血球の脱水又は変形、及び/又は哺乳類細胞の増殖に作用する医薬としての個々の化合物の適切な活性及び有効性は、標準的な技法を用いて決定することができる。好ましくは、化合物を一連のスクリーニングにかけ、その薬理学的活性を決定する。
【0081】
ほとんどの場合、本発明の活性化合物は、2つの薬理学的活性:赤血球のガルドスチャンネルの阻害及び哺乳類細胞の増殖の阻害を示す。しかし、若干の場合、本発明の化合物は、これらの薬理学的活性の一方のみを示しうる。これらの薬理学的活性の少なくとも1つを示す式(I)の化合物に包含される何れかの化合物は、本発明の範囲内にあると考えられる。
【0082】
一般に、本発明の活性化合物は、赤血球のガルドスチャンネルの少なくとも約25%(約10μMでの平均)の阻害、及び/又は、哺乳類細胞の増殖の約25%(約10μMでの平均)の阻害を誘導するものである。これは、当分野で一般に知られたin vitroアッセイを用いて測定される(例えば、Brugnaraら、1993,J.Biol.Chem.268(12):8760-8768;Benzaquenら、1995,Nature Medicine 1:534-540参照)。この他に、又は加えて、本発明の活性化合物は、一般に、約10μM以下のガルドスチャンネルの阻害に対するIC50(50%阻害を与える化合物の濃度)、及び/又は、約10μM以下の細胞増殖の阻害に対するIC50を有しうる。これらは、当分野で一般に知られたin vitroアッセイを用いて測定される(例えば、Brugnaraら、1993,J.Blol.Chem.268(12):8760-8768;Benzaquenら、1995,Nature Medicine 1:534-540参照)。
【0083】
本発明に従った代表的な活性化合物は上記表1に例示した化合物である。
本発明のある一定の態様では、1のみの薬理学的活性、又はより高い程度の1つの活性を示す化合物が好ましい。従って、該化合物が、in situで、鎌状赤血球症を治療又は予防する方法で、又は、鎌状赤血球の脱水及び/又は赤血球の鎌状化又は変形の発生を遅らせる方法で使用される場合、該化合物は、少なくとも約75%のガルドスチャンネルの阻害(約10μMでの平均)を示し、及び/又は、約1μM以下のガルドスチャンネルの阻害のIC50を有することが好ましく、少なくとも90%の阻害及び/又は約0.1μM以下のIC50が特に好ましい。
【0084】
ガルドスチャンネルの阻害及び鎌状赤血球症に関連した方法に使用するための例示的な好ましい化合物には、化合物番号6、7、10、12、13、14、15、16、17、18、20、21、22、23、24、27、29、30、31、32、33、34、35、37、38、42、43、44、45、46、47、49、50、51、52、53、55、56、58、59、60、62、64、65、67、68、69、70、73、75、78、79、80、81、82、83、85、86、87、88及び90が含まれる。
【0085】
ガルドスチャンネルの阻害及び鎌状赤血球症に関連した方法に使用するための例示的な特に好ましい化合物には、化合物番号6、14、15、16、32、37、43、46、55、62、64、69、75、79、82、87、及び90が含まれる。
【0086】
該化合物が、in situで、異常な細胞増殖によって特徴づけられる疾患を治療又は予防する方法で、又は、細胞増殖を阻害する方法で使用される場合、該化合物は、マイトジェンで誘導される細胞増殖の少なくとも約75%の阻害(約10μMでの平均)を示し、及び/又は、約3μM以下の細胞増殖のIC50を有することが好ましく、少なくとも90%の阻害及び/又は約1μM以下のIC50が特に好ましい。
【0087】
哺乳類の細胞増殖を阻害する方法使用するため、又は、異常な細胞増殖により特徴づけられる疾患の治療又は予防のための例示的な好ましい化合物には、化合物番号13、14、15、16、17、18、19、20、21、26、27、28、30、31、36、38、40、41、42、43、45、46、47、48、49、50、52、54、59、61、65、67、68、70、71、72、73、79、82、83、84、85、86、89及び90が含まれる。
【0088】
哺乳類の細胞増殖を阻害する方法に使用するため、又は、異常な細胞増殖により特徴づけられる疾患の治療又は予防のための例示的な好ましい化合物には、化合物番号16、28、30、36、43、45、47、48、49、50、54及び84が含まれる。
【0089】
式(I)のある化合物は、商業的に利用可能である。例えば、化合物番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、19、20、21、23、24、25、26、28、34、37、38、39、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、54、57、59、60、61、62、66、67、69、71、72、73、76、77及び87が商業的に利用可能である。しかし、生物学的活性は、これらの化合物に対して全く報告されていない(例えば、Hanesianら、1976,Methods Carbohvdr.Chem.7:63;Paike,1992,Mater.Sci.18:53-57,Liu & Paike,1987,Tetrahedron Lett.28(3):3763-3766;Tomiokaら、1981,Chem Lett.11:1621-1624;Glidewellら、1994,Acta Crystallogr.,Sect C:Cryst.Struct.Commun.C50:1362-1366;Ponnuswamyら、1984,Acta Crystal-logr.,Sect C:Cryst.Struct.Commun.C40(1):142-144;Lewisら、1980,J.Am.Chem.Soc.102(14):4659-4664及びCA 083:018922;Illesら、1988,Acta Phyto-pathologica et Entomologia Hungarica 23:243-255;及びMatsuuraら、1991,Biochem.Pharmacol.41:1949-1956参照)。
【0090】
ここで開示し、特許請求した本発明は別として、生物学的活性が以前に報告されていない式(I)の追加の活性化合物には、化合物13(米国特許第4,006,023)、化合物25(WO96/36631)、化合物26(Fanら、1983,Yiyao Gongye 9:2-4)、化合物60(Ethridgeら、1990,J.Procuction Aginculture 3(2):246-252)、化合物76(CASNo.18740−94−8)、化合物77(Fergusonら、1992,Acta Crystallogr.,Sect C:Cryst.Struct.Commun.C48:1228-1231)、及び化合物90(1957,Comptes.Rendus.245(1):73-75)が含まれる。
【0091】
ここで開示され、特許請求された本発明は別として、生物学的活性が報告されていない式(I)の他の化合物には、1,1−ジフェニル−1−(2−ヒドロキシナフチル)−メタノール(Lewisら、1980,J.Am.Chem.Soc.101(14):4659-4664;CA083:018922)、1,1−ジフェニル−1−(ピリド−2−イル)−メタノール、1−(4−クロロフェニル)−1−フェニル−1−(ピリド−2−イル)−メタノール、1−(4−メトキシフェニル)−1−フェニル−1−(ピリド−3−イル)−メタノール及び1,1−ジ−(4−メトキシフェニル)−1−(ピリド−3−イル)−メタノール(Illesら、1988,Acta Phytopathologica et Entomologia Hungarica 23:243-255)、1,1,1−トリフェニル−1−アミノメタン及び1,1−ジフェニル−1−(N−ピリジル)−メタン(Matsuuraら、1991,Biochem.Pharmacol.41:1949-1956)、4,4’−ジメトキシトリチルクロライド、ピクシルクロライド、ジ−o−アニシル−1−ナフチル−メチルクロライド、及びp−アニシル−1−ナフチル−メチルクロライド、(Gait,1984,Orlgonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press,Oxford)が含まれる。
【0092】
更に、化合物6、17及び85は、クロトリマゾールの代謝物として知られている(Duhmら、1974,Postgraduate Medical Journal July Suppl:13-16)しかし、クロトリマゾールとは異なって、生物学的又は薬理学的活性はこれらの化合物に対して報告されていない、例えば、クロトリマゾールとは異なって、化合物6は、ラットで肝ミクロソームチトクロームP450を誘導しない(Matsuuraら、1991,Biochem.Pharmacol.41:1949-1956)。
【0093】
本発明の薬学的組成物は、式(I)の化合物のすべてを包含する。何れかの試薬学的賦形剤、担体又は希釈剤は別にして、本発明に含まれる式(I)のある特定の化合物は、以下の式(A)、(B)及び(C)で表される。
【0094】
好ましい態様では、本発明の化合物は下式を有する化合物、又はこれらの薬学的に許容しうる塩又は水和物である。
【化8】

但し、nは0、1、2、3又は4である。
1は−H、−OR、−SR、−CN、−C(O)R、−C(S)R、−C(O)OR、−C(S)OR、−C(O)SR、−C(S)SR、−C(O)NR2、−C(S)NR2、−CH[C(O)R]2、−CH[C(S)R]2、−CH[C(O)OR]2、−CH[C(S)OR]2、−CH[C(O)SR]2、−CH[C(S)SR]2である。
2は−F、−Cl、−Br又は−Iである。
3は−R、−OR又は−SRである。
4は−H又は−NR2である。
4'は−H、−F、−Cl、−Br又は−Iである。及び 各Rは、−H、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル、(C1−C6)アルキニル及び(C1−C6)アルコキシよりなる群から独立に選択される。
【0095】
他の好ましい態様では、本発明の化合物は、式(A)の化合物であるが、但し、(i)nが0であり、R1が−H又は−OHである場合、R3が−H以外であり、(ii)nが0であり、R1が−Hである場合、R3が−OH以外であるという条件が付くものである。
【0096】
他の好ましい態様では、本発明の化合物は、式(A)の化合物であるが、但し、nが0であり、R1が−C(O)NH2である場合、R。は−F以外であるという条件が付くものである。
【0097】
式(A)に従った代表的化合物には、化合物14、15、32、33、36、55、70、75、79、80、81、82、83、84及び86が含まれる。
他の好ましい態様では、本発明の化合物は、下式を有する化合物、又はこれらの薬学的に許容する塩又は水和物である。
【化9】

但し、nは0、1、2、3又は4である。
1は−NR2、−C(O)R、−C(S)R、−C(O)NR’2又は−C(S)NR’2である。
2は−F、−Cl、−Br又は−Iである。
3は−F、−Cl、−Br又は−Iである。
4は−F、−Cl、−Br又は−Iである。
【0098】
各Rは、−H、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル、(C1−C6)アルキニル及び(C1−C6)アルコキシよりなる群から独立に選択 される。及び各R’は−H、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル、(C1−C6)アルキニル及び(C1−C6)アルコキシよりなる群から独立に選択される。
式(B)に従った代表的な好ましい化合物には、化合物30、40、41及び65が含まれる。
【0099】
他の好ましい態様では、本発明の化合物は下式を有する化合物、又はこれらの薬学的に許容しうる塩又は水和物である。
【化10】

但し、nは0、1、2、3又は4である。
Ar1はフェニル又はシクロヘキシルである。
1は−NR2、−CH[C(O)OR]2、−CH[C(S)OR]2、−CH[C(O)SR]2、−CH[C(S)SR]2、−C(O)NR2又は−C(S)NR2である。及び 各Rは、−H、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル、(C1−C6)アルキニル及び(C1−C6)アルコキシよりなる群から独立に選択される。
【0100】
他の好ましい態様では、本発明の化合物は、式(C)の化合物であるが、R1が−NH2又は−C(O)NH2である場合、nは1、2又は3であるという条件が付くものである。
式(C)に従った代表的な好ましい化合物には、化合物18、29、31、56及び78が含まれる。
【0101】
5.2処方剤及び投与経路
本明細書中で記載される化合物、又はこれらの薬学的に許容しうる付加塩又は水和物は、広範囲の投与経路又は方法を用いて患者に投与される。適切な投与経路には、吸入、経皮、経口、直腸、経粘膜(transmucosal)、腹腔、及び、筋肉内、皮下及び静脈内注射を含めた非経口投与が含まれるが、これらに限定されない。
本明細書に記載される化合物、又はこれらの薬学的に許容しうる塩及び/又は水和物は、単独で、本発明の他の化合物と組み合わせて、及び/又は他の治療薬と組み合わせたカクテルとして投与されうる。もちろん、本発明の化合物と共に投与されうる治療薬の選択は、治療される症状に一部依存するであろう。
【0102】
例えば、鎌状赤血球症に罹患していろ患者に投与する場合、本発明の化合物は、痛み、感染及び他の症状、及び鎌状赤血球症に一般に付随する副作用を治療するのに使用される医薬を含有するカクテルとして投与されうる。このような医薬には、例えば鎮痛剤、抗生物質等が含まれる。該化合物はまた、ブチレート及びブチレート誘導体(Perrineら、1993,N.Engl.J.Med.328(2):81-86);ヒドロキシ尿素(Characheら、1995,N.Engl.J.Med.323(20):1317-1322);エリスロポエチン(Goldbergら、1990,N.Engl.J.Med.323(6):366-372);及びマグネシウムのような規定食の塩(dietary salt)(De Franceschiら、1996,Blood 88(648a):2580)を含めた、鎌状赤血球症を治療するのに一般に使用される他の医薬を含有するカク鎌状赤血球症を治療するのに一般に使用される他の医薬を含有するカクテルとして投与されうる。
【0103】
癌の治療を受ける患者に投与する場合、該化合物は、他の抗ガン剤及び/又は追加の効力増強薬を含むカクテルとして投与されうる。該化合物はまた、制吐剤、放射線保護薬等のような放射線治療の副作用を治療する医薬を含むカクテルとして投与されうる。
【0104】
本発明の化合物と共に投与されうる抗ガン剤には、例えばアミノグルテチミド;アスパラギナーセ;ブレオマイシン;ブスルファン;カルボプラチン:カルムスチン(BCNU);クロランブシル(Chlorambucil);シスプラチン(シス−DDP);シクロフォスファミド:シタラビンHCl;ダカルバジン;ダクチノマイシン;ダウノルビシンHCl;ドキソルビシンHCl;エストラムスチンホスフェートナトリウム;エトポシド(VP−16);フロキシウリジン;フルオロウラシル(5−FU);フルタミド;ヒドロキシ尿素(ヒドロキシカルバミド);イフォスファミド:インターフェロンアルファ−2a、アルファ2b、ルエプロリドアセテート(LHRH−放出因子類似体);ロムスチン(CCNU);メクロレタミンHCl(ナイトロジェンマスタード);メルファラン;メルカプトプリン;メスナ;メトトレキサート(MTX);マイトマイシン;マイトタン(o.p’−DDD);マイトキサントロンHCl;オクトテオトリド;プリカマイシン;プロカルバジンHCl;ストレプトゾシン;タモキシフェンシトレート;チオグアニン;チオテパ:ビンブラスチンスルフェート;ビンクリスチンスルフェート;アムサクリン(m−AMSA);アザシチジンヘキサメチルメラミン(HMM);インターロイキン2;マイトグアゾン(メチル−GAG;メチルグリオキサールビス−グアニルヒドラゾン;MGBG);ペントスタチン;セムスチン(メチル−CCNU);テニポシド(VM−26);パクリタキセル(paclitaxel)及び他のタキサン;並びにビンデシンスルフェートが含まれる。
【0105】
本発明の化合物と共に投与されうる追加の効力増強薬には、例えば三環性抗鬱薬(例えば、イミプラミン、デシプラミン、アミチリプチリン、クロミプラミン、トリミプラミン、ドキセピン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、アモキサピン及びマプロチリン);非三環性抗鬱薬(例えば、セルトラリン、トラゾドン及びシタロプラム);Ca-+拮抗薬(例えば、バラパミル、ニトレンジピン及びカロベリン);アンフォテリシン(例えば、ツウィーン80及びパーヘキシリン);トリパラノール類似体(例えば、タモキシフェン):抗不整脈薬(例えば、キニジン);抗高血圧薬(例えば、レセルピン);チオール涸渇剤(例えば、ブチオニン及びスルホキシイミン);並びにカルシウムロイコボリンが含まれる。
【0106】
活性化合物は、それ自体で、又は、活性化合物を1以上の薬学的に許容しうる担体、賦形剤又は希釈剤と混合した薬学的組成物の形態で投与されうる。本発明に従って使用される薬学的組成物は、賦形剤及び薬学的に使用されうる製剤への活性化合物の加工処理を容易にする補助剤を含有する生理学的に許容しうる1以上の担体を用いて、従来の方法で処方されうる。適切な処方剤は、選択される投与経路に依存する。
【0107】
注射に対しては、本発明の医薬を水性溶液、好ましくは、ハンクス溶液、リンガー溶液、又は生理学的食塩水のような生理学的に適合したバッファー中で処方される。経粘膜投与に対しては、透過される障壁に適合した浸透剤を処方に使用する。このような浸透剤は、当分やで一般に公知である。
【0108】
経口投与に対しては、該化合物は、当分やで周知の薬学的に許容しうる担体と該活性化合物とを組み合わせて容易に処方されうる。このような担体は、本発明の化合物を、治療される患者により経口摂取させろための、錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液等として処方することができる。経口使用用の薬学的製剤は、固体賦形剤を得、得られた混合物を任意にすりつぶし、所望であれば適切な補助剤を添加した後に顆粒の混合物を加工し、錠剤又は糖衣錠コアを得る。適切な賦形剤は、特に、ラクトース、蔗糖、マンニトール、又はソルビトールを含む糖のようなフィラー;例えばトウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガガントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)のようなセルロース調製物である。所望であれば、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、又は、アルギン酸ナトリウムのようなアルギニン酸若しくはこれらの塩のような崩壊剤を添加しうる。
【0109】
糖衣錠コアは、適切なコーティングを施される。この目的には、濃糖溶液が使用されうる。これは、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、及び適切な有機溶媒又は溶媒混合物を任意に含有しうる。色素又は顔料が、活性化合物の投与量の異なった組み合わせを確認するため、又は特徴づけるために錠剤又は糖衣錠コート剤に添加されうる。
【0110】
経口で使用されうる薬学的製剤には、ゼラチンで作られるプッシュフィットカプセル、並びにゼラチン及びグリセロール又はソルビトールのような可塑剤で作られた軟質密封カプセルが含まれる。ブッシュフィットカプセルは、ラクトースのようなフィラー、デンプンのようなバインダー、及び/又はタルク若しくはステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤及び任意に安定化剤と混合された活性成分を含有しうる。ソフトカプセルでは、活性化合物は、脂肪オイル、液体パラフィン、又は液体ポリエチレングリコールのような適切な液体に溶解又は懸濁されうる。加えて、安定化剤が添加されうる。経口投与のためのすべての処方剤は、このような投与に適した投与量であるべきである。
【0111】
バッカル投与に対しては、該組成物は従来の方法で処方される錠剤又はロゼンジの形態をとりうる。
【0112】
吸入による投与に対しては、本発明に従って使用するための化合物は、都合よくは、適切な噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の適切なガスを用いて、加圧容器又は噴霧器から供されるエアロゾルスプレーの形態で輸送される。加圧されたエアロゾルの場合、投与量単位は、計量された量を輸送するためのバルブを備えることにより決定される。本発明の化合物と、ラクトース又はデンプンのような適切な粉末基質の粉末混合物を含有する吸入器又は吹き入れ器に使用するための、例えばゼラチンのカプセル及びカートリッジが、処方されうる。
【0113】
本発明の化合物は、注射による非経口投与、例えばボーラスインジェクション又は連続的な点滴用に処方されうる。注射用処方剤は、単位投与量形態、例えばアンプル、又は防腐剤を添加した複数回投与用容器で提供される。該組成物は、油性又は水性ビヒクル(vehicles)中で懸濁液、溶液又はエマルジョンのような形態をとることができ、懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤のような処方薬を含有しうる。
【0114】
非経口投与用の薬学的処方剤は、水溶性の形態での活性化合物の水性溶液を包含する。加えて、活性化合物の懸濁液が適切な油性注射用懸濁液として調製されうる。適切な親油性溶媒又はビヒクルには、ごま油のような脂肪オイル、又はオレイン酸エチル又はトリグリセリドのような合成脂肪酸エステル、又はリポソームが含まれる。水性注射懸濁液は、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、又はデキストランのような該懸濁液の粘度を増加する物質を含みうる。必要に応じて、該懸濁液はまた、適切な安定化剤、又は化合物の溶解性を増加し、高濃度のよう液を調製することができるような試薬を含有しうる。
【0115】
この他に、活性成分は、適切なビヒクル、例えば無菌のパイロジェンフリーの水で、使用の前に構成される粉末の形態でありうる。
本発明の化合物はまた、座薬又は携帯用浣腸のような直腸投与用の組成物、例えばココア脂又は他のグリセリドのような従来の座薬ベースを含有するものとして処方されうる。
【0116】
先に説明した処方剤に加えて、本発明の化合物はまた、デボー(depot)製剤として処方されうる。このような長期間作用する処方剤は、移植又は皮膚を通しての輸送(例えば、皮下的に又は筋肉内に)、筋肉内注射又は経皮用パッチにより投与される。従って、例えば、本発明の化合物は、適切なポリマー又は疎水性物質(例えば条件に合ったオイル中のエマルジョンとして)又はイオン交換樹脂と処方されるか、又は溶解性の乏しい誘導体、例えば溶解性の乏しい塩として処方されうる。
【0117】
本発明の薬学的組成物はまた、適切な固相又はゲル相担体又は賦形剤を含有しうる。このような担体又は賦形剤の例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、及びポリエチレングリコールのようなポリマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0118】
5.3 有効投与量
本発明と共に使用するのに適した薬学的組成物は、治療的に有効な量、即ち、その所期の目的を達成するために有効な量の活性成分を含有した組成物が含まれる。勿論、特定の適用についての実際の有効量は、就中、治療すべき症状に依存する。例えば、鎌状赤血球脱水の低減および/またはin situでの赤血球の鎌形化もしくは湾曲発生を遅延させるための方法において投与するとき、かかる組成物は、この結果を達成するのに有効な量の活性成分を含有するであろう。細胞増殖を阻止する方法において投与するとき、該組成物は、この結果を達成するのに有効な量の活性成分を含有するであろう。鎌形赤血球病または異常な細胞増殖を特徴とする疾患に罹った患者に投与するとき、かかる組成物は、特に、治療すべき患者の症状の進行防止、症状の緩和、または当該患者の延命のために有効な量の活性成分を含有するであろう。癌の治療に使用する場合、この治療的に有効な量には、更に、腫瘍の増殖を停止または退化させる或る量の化合物が含有される。有効量の決定は、特にここでの詳細な開示を考慮すれば、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0119】
ここに開示した如何なる化合物についても、治療的有効量は、最初は細胞培養アレイから決定することができる。目標血漿濃度は、勿論、特定の望ましい適用に依存するが、少なくとも約25%のガルドスチャンネル(Gardoschannel)の阻害および/または細胞培養試験における少なくとも約25%の細胞増殖阻害を誘導できる活性化合物濃度であろう。ガルドスチャンネルおよび/または細胞試験における増殖を、少なくとも約50%、75%、更には90%またはそれ以上阻害するような、活性化合物の目標血漿濃度が好ましい。ガルドスチャンネルおよび/または細胞試験での増殖の阻害パーセントを患者でモニターすることにより、達成される血漿薬物濃度の適切さを評価し、また、望ましい阻害パーセントを達成するために投与量を上方修正および下方修正することができる。
【0120】
ヒトで使用するための治療的有効量は、動物モデルで決定することもできる。
例えば、 ヒトについての投与量は、動物において有効であることが知られた循環濃度を達成するように定式化することができる。鎌形赤血球症のための特に有用な動物モデルは、SADマウスモデルである(Trudel et al.,1991,EMBO J.11:3157-3165)。異常な細胞増殖を特徴とする疾患のための有用な動物モデルは、当該技術において周知である。特に、次の参照文献は、癌の異種移植(Corbett et al.,1996,J.Exp.Ther.Oncol.1:95-108;Dykes et al.,1992,Contrib.Oncol.Basel.Karger 42:1-22)、再狭窄(Carter et al.,1994,J.Am.Coll.Cardiol.24(5):1398-1405)、粥状硬化症(Zhu et al.,1994,Cardiology 85(6):370.377)、および血管新生(Epstein et al.,1987,Cornea 6(4):250-257)のための適切な動物モデルを提供する。ヒトにおける投与量は、ガルドスチャンネル阻害および/または細胞増殖阻害をモニターし、上記のようにして、投与量を上方修正または下方修正することにより調節することができる。
【0121】
治療的有効量は、クロトリマゾールおよび他の抗菌剤のような、同様の薬理学的活性を示すことが知られた化合物についてのヒトでのデータから決定することもできる(例えば、Brugnara et al.,1995,JPET 273:266-272;Benzaquen et al.,1995,Nature Medicine 1:534-540;Brugnara et al.,1996,J.Clin.Invest.97(5):1227-1234を参照のこと)。適用される投与量は、クロトリマゾールと比較したときの投与化合物の相対的な生体利用性および能力に基づいて調節することができる。
【0122】
上記の方法および当該技術で周知の他の方法に基づいて、ヒトでの最大効率を達成するように投与量を調節することは、十分に当業者の能力の範囲内である。
勿論、局所投与の場合には、投与化合物の全身循環濃度は特に重要ではない。
このような場合、該化合物は、所期の結果を達成するために有効な局所領域での濃度を達成するように投与される。
【0123】
慢性鎌形赤血球症の症状発現および急性鎌形赤血球の発病の両者を含む、鎌形赤血球症の予防および/または鎌形赤血球症の治療に使用するためには、約0.001μM〜20μMの投与化合物の循環濃度が好ましい。
【0124】
ここに記載した化合物の経口投与(慢性鎌形赤血球症の症状発現を予防および治療するための好ましい投与モード)のための患者への投与量は、典型的には約80mg/日〜16,000mg/日、より典型的には約800mg/日〜8,000mg/日、最も典型的には約800mg/日〜4,000mg/日の範囲である。患者の体重当たりで言えば、典型的な投与量は約1〜200mg/kg/日、より典型的には約10〜100mg/kg/日、最も典型的には約10〜50mg/kg/日の範囲である。患者の体表面積当たりで言えば、典型的な投与量は約40〜8000mg/m2/日、より典型的には約400〜4000mg/m2/日、最も典型的には約400〜2000mg/m2/日の範囲である。
【0125】
癌、粥状硬化症および再狭窄のような血管由来の症状を含む異常な細胞増殖を特徴とする疾患の治療に使用するためには、典型的には約80mg/日〜16,000mg/日、より典型的には約800mg/日〜8,000mg/日、最も典型的には約800mg/日〜4,000mg/日の範囲である。患者の体重当たりで言えば、典型的な投与量は約1〜200mg/kg/日、より典型的には約10〜100mg/kg/日、最も典型的には約10〜50mg/kg/日の範囲である。患者の体表面積当たりで言えば、典型的な投与量は約40〜8000mg/m2/日、より典型的には約400〜4000mg/m2/日、最も典型的には約400〜2000mg/m2/日の範囲である。
【0126】
他の投与モードについては、投与の量および間隔は、特定の臨床症状を治療するための投与化合物の有効血漿レベルを与えるように、個別的に調節することができる。例えば、急性鎌形赤血球症が最も優勢な臨床的発現症状であるときは、本発明による化合物は、比較的高い濃度で1日に複数回投与すればよい。或いは、患者が、時たま、周期的または不規則な鎌形赤血球症の周期的発病のみを示すときは、本発明の化合物を最小限の有効濃度で投与し、且つより頻繁な投与レジメを使用することが望ましい。これによって、鎌形赤血球病症状の重篤度に一致した治療が提供されるであろう。
【0127】
腫瘍原性癌の治療に使用するためには、当該化合物を、腫瘍の外科的除去の際またはその後に投与することができる。例えば、外科手術の前に、一回または数回の投与量にわけて、当該化合物を、注射によって腫瘍塊の中に投与することができる。次いで、その腫瘍または可能な限り多くの腫瘍を外科的に除去すればよい。除去後に、更なる量の薬物を腫瘍部位に適用することができる。或いは、先に可能な限り多くの腫瘍の外科的除去を行い、その後に腫瘍部位に化合物を投与することができる。
【0128】
ここに提供される教示と組合わせれば、種々の活性化合物の中から選択し、且つ能力、相対的生体利用性、患者の体重、副作用の重篤度および好ましい投与モードのような因子に重み付を行うことによって、実質的な毒性を生じず、且つ特定の患者が示す臨床症状を治療するために完全に有効であるような、予防または治療レジメを計画することができる。勿論、特定の適応症または患者に適した治療レジメを決定するには、多くの因子が重要である。癌のような重篤な適応症では、鎌形赤血球病のような重篤度の低い適応症に比較して更に多い量の投与を保証してもよい。
【0129】
5.4 毒性
特定の化合物についての毒性と治療効果との比は、その治療指数であり、またLD50(集団の50%において致死的である化合物の量)とED50(集団の50%において有効である化合物の量)の比として表すことができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。細胞培養試験および/または動物実験から得られる治療指数データは、ヒトに使用する投与量範囲を定めるために使用することができる。このような化合物の投与量は、好ましくは、毒性が少ないか又は毒性のないED50を含む血漿濃度の範囲内にある。投与量は、採用される投与形態および利用される投与形路に応じて、この範囲内で変化し得る。正確な処方、投与形路および投与量は、患者の症状を考慮して、個々の医者によって選択される。(例えば、Fingl et al.,1975,In:The Pharmacological Basis of Therapeutics,ch.1 p1を参照のこと)。
本発明を説明してきたが、以下の例は、例示を目的とするものであり、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0130】
6.化合物の合成
この例は、本発明の多くの好ましい化合物の一般的な合成方法、並びに本発明の一定の例示化合物の好ましい合成方法を示すものである。
6.1 トリフェニルメタノール類の合成
トリフェニルメタノール誘導体の一般的な合成方法は次の通りである:置換塩化ベンゾイル(1当量)、置換ベンゼン(1当量)および塩化アルミニウム(1.1当量)の塩化メチレン中の混合物を、室温で1時間攪拌した。この反応混合物を氷浴中で冷却し、水を添加した。層分離を行い、水層を塩化メチレンで抽出した。合体した塩化メチレン抽出物を水および飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄し、次いで、硫酸ナトリウム上で乾燥した。溶媒を蒸発して、80−95%の収率で置換ベンゾフェノンを得た。この置換ベンゾフェノン(1当量)および置換臭化フェニルマグネシウム(1.1当量)をテトラヒドロフラン中で5時間還流し、氷浴中で冷却して水を添加した。反応混合物を塩化メチレンで抽出し、合体した抽出物を硫酸ナトリウム上で乾燥した。溶媒を蒸発させた後、カラムクロマトグラフィーにかけて、45−90%の収率で置換トリフェニルメタノールを得た。
【0131】
6.2 トリフェニルプロピオン酸の合成
6.2.1方法A
トリフェニルプロピオン酸誘導体の一つの合成方法は次の通りである:置換トリフェニルメタノール(1当量)およびマロン酸(2−3当量)を、溶媒なしで、170℃で3時間攪拌した。冷却の後、反応混合物に水性の0.1M水酸化ナトリウムを添加した。この混合物を90℃で4時間攪拌し、次いで熱いまま濾過した。冷却した濾液を1.0Mの塩酸で中和して、白色生成物の沈殿を生じさせ、吸引濾過によりこれを20−40%の収率で回収した。
【0132】
6.2.2 方法B
トリフェニルプロピオン酸誘導体の第二の合成法は次の通りである:無水エタノール中のマグネシウム(1.1当量)およびマロン酸ジエチル(1.1当量)の混合物を、全てのマグネシウムが消費されるまで(略2時間)加熱還流させた。
溶媒を蒸発させて透明なオイルを得、これに置換トリフェニルメタン(Ando & Ikenoの方法(1979,Tetrahedron,Lett.51:4941)により置換トリフェニルメタノールの還元によって得たもの)(1当量)およびベンゼンを添加した。この混合物を5分間加熱還流し、次いで周囲温度で3時間攪拌した。塩酸(0.1M)を添加し、この混合物を室温で一晩攪拌した。有機層を分離し、水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥した。蒸発により、中間体であるジエチル置換されたマロン酸ジフェニルベンジルを50−90%で得た。最終工程において、エタノール中のこの中間体(1当量)および水酸化カリウム(6当量)を、9時間還流加熱した。溶媒を減圧において除去し、水を加え、該溶液を65℃で1時間攪拌した。冷却した溶液を1.0M塩酸で酸性化し、白色固体の沈殿を生じさせた。この固体を吸引濾過によって回収し、所望のトリフェニルプロピオン酸を60−90%で得た。
【0133】
6.3 2−クロロフェニル−ジフェニルメタノールの合成
2−クロロフェニル−ジフェニルメタノール(化合物6)の好ましい合成方法は次の通りである:100mLの1.0MのHCl中における25g(0.073モル)のクロトリマゾールを2.5時間還流した。室温まで冷却した後に、この混合物を酢酸エチルで抽出し、合体させた有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥した。溶媒を減圧下で除去し、残査をヘキサンから結晶化させて、92−93.5℃の融点を有する黄色結晶19.5g(収率91%)を得た。
この生成物から以下の分析データが得られた。
【数1】

【0134】
6.4 (2−クロロフェニル)−ジフェニルアセトニトリルの合成
(2−クロロフェニル)−ジフェニルアセトニトリル(化合物14)の好ましい合成法は次の通りである:1g(0.003モル)のクロロ−(2−クロロフェニル)−ジフェニルメタンおよび0.3g(0.004モル)のシアン化銅の混合物を、溶媒なしで、150℃で2時間加熱した。この混合物を若干冷却し、10mLのトルエンを添加し、混合物を濾過し、溶媒を減圧下で除去した。得られた褐色の固体を2−プロパノールから結晶化させて、145−147℃の融点を有する明褐色の結晶生成物を得た。
この生成物から以下の分析データが得られた。
【数2】

【0135】
6.5 2−クロロフェニル−ジフェニルアセトアルデヒドの合成
2−クロロフェニル−ジフェニルアセトアルデヒド(化合物15)の好ましい合成法は次の通りである:7.5g(0.025モル)の2−クロロフェニル−ジフェニルアセトニトリルおよび56mL(0.056モル)のDIBAL-Hの混合物を、100mLのトルエン中において、-78℃で1時間攪拌した。酢酸エチル(7mL)、シリカゲル(65g)および水(5mL)を添加し、この混合物を-78℃で2時間攪拌した。次いで、この混合物を室温にまで加温し、室温で4時間攪拌した。酢酸エチル(200mL)を添加し、該混合物を濾過した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、減圧下で溶媒を除去した。得られた固体を2−プロパノールから結晶化させて、126−129℃の融点を有する6.0g(収率77%)の白色結晶生成物を得た。
この生成物から以下の分析データが得られた。
【数3】

【0136】
6.6 トリフェニルアセトアルデヒドの合成
トリフェニルアセトアルデヒド(化合物16)の好ましい合成法は次の通りである:1g(0.003モル)の2−クロロフェニル−ジフェニルアセトニトリルおよび8mL(0.008モル)のDIBAL-Hの混合物を、15mLのトルエン中において、-78℃で1時間攪拌した。酢酸エチル(4mL)、シリカゲル(10g)および水(0.5mL)を添加し、この混合物を-78℃で30分間攪拌した。次いで、この混合物を室温にまで加温し、室温で4時間攪拌した。酢酸エチル(100mL)を添加し、該混合物を濾過した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥した。溶媒の蒸発により、91−96℃の融点を有する0.9g(収率95%)の白色粉末を得た。
この生成物から以下の分析データが得られた。
【数4】

【0137】
6.7 2−クロロフェニル−ジフェニルメタン
2−クロロフェニル−ジフェニルメタン(化合物17)の合成の好ましい方法は、次の通り。30mLのジクロロメタン中の2−クロロフェニル−ジフェニルメタノール(化合物6)5g(0.017モル)、沃化ナトリウム15g(0.1モル)、クロロトリメチルシラン12.7mL(0.1モル)及びアセトニトリル5mL(0.1モル)の混合物を、室温で2日間撹拌した。反応混合物を水50mLで希釈し、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機物質を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空下に溶媒を除去した。得られた油状物質を、酌酸エチル:ヘキサン(1:5)を溶出剤として用いるシリカゲルカラムを通した。回収された第1の画分に生成物が含有され、これは、真空下に溶媒を除去した後に固形物として得られた。この固形物エタノール/水から結晶化させ、融点74〜76℃を有する白色結晶生成物3.67g(収量78%)を得た。
この生成物から以下の分析データが得られ得た。
【数5】

【0138】
6.8 トリス(4−クロロフェニル)プロピオンアミドの合成
トリス(4−クロロフェニル)プロピオンアミド(化合物30)の合成の好ましい方法は、次の通りである。テトラヒドロフラン25mL中のトリス(4−クロロフェニル)プロピオン酸クロリド5.2g(0.012モル)の混合物を0〜5℃に冷却し、水酸化アンモニウム25mL(0.4モルNH3)を添加した。溶液を0〜5℃で15分間撹拌し、次いで、酢酸エチル(5×25mL)で抽出した。合わせた有機物質を硫酸マグネシウム上で乾燥させた。蒸発に供し、灰色がかった白色粉体4.5g(収量91%)が得られ、これをヘキサンから結晶化させ、融点158〜160℃を有する白色粉体3.7g(収量74%)を得た。
この生成物から以下の分析データが得られ得た。
【数6】

【0139】
6.9 (2−フルオロフェニル)−ジフェニルアセトニトリルの合成
(2−フルオロフェニル)−ジフェニルアセトニトリル(化合物 32)の合成の好ましい方法は、次の通りである。クロロ−(2−フルオロフェニル)−ジフェニルメタン0.5g(0.002モル)及びシアン化銅0.15g(0.002モル)の混合物を、溶媒なしで2時間150℃で加熱した、混合物を僅かに冷却し、トルエン10mLを添加し、混合物をろ過し、溶媒を真空下に除去した。得られた灰色がかった白色の固形物を2−プロパノールから結晶化し、融点144〜145℃を有する透明結晶生成物0.31g(収率64%)を得た。
この生成物から以下の分析データが得られ得た。
【数7】

【0140】
6.10 3−(2−クロロフェニル)−3,3−ジフェニルプロピオン酸の 合成
3−(2−クロロフェニル)−3,3−ジフェニルプロピオン酸(化合物36)
の合成の好ましい方法は、次の通り。無水エタノール25mL中のマグネシウム1.7g(0.07モル)及びマロン酸ジエチル11.2g(0.07モル)の混合物を、全てのマグネシウムが消費されるまで還流温度で加熱した(約2時間)。溶媒を蒸発させることにより、透明油状物質が得られ、これにクロロ−(2−クロロフェニル)ジフェニルメタン20g(0.064)及びベンゼン100mLを添加した。混合物を5分間還流し、次いで、周囲の温度で3時間撹拌した。水(90mL)及び1.0M塩酸10mLを添加し、混合物を室温で14時間撹拌した。有機層を分離し、水洗し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。蒸発に供し、薄黄色固形物14.6g(収量51%)を得た。最終工程において、100mLのエタノール中で、この固形物125g(0.028モル)及び水酸化カリウム9.5g(0.17モル)を9時間還流させた。溶媒を真空下に除去し、水400mLを添加し、溶媒を65℃で1時間撹拌した。冷却した溶液を1.0M塩酸で酸性にし、白色固形物を沈殿させた。固形物をろ過により回収し、ヘキサン中で沸騰させ、熱いままろ過した。得られた白色固形物は重さ8.5g(収量90%)、融点180〜182℃を有した。
この生成物から以下の分析データが得られ得た。
【数8】

【0141】
6.11 ジエチル−(α,α−ジフェニル)−2−フルオロベンジル)マロ ネートの合成
ジエチル−(α,α−ジフェニル)−2−フルオロベンジルマロネート(化合物55)の合成の好ましい方法は、次の通りである。無水エタノール10mL中のマグネシウム0.1g(0.0035モル)、ジエチルマロネート0.64g(0.004モル)、触媒量の沃素及び四塩化炭素1滴の混合物を、マグネシウムが消費されるまで還流温度で加熱した(2時間)。溶媒を蒸発に供し、透明な油状物質を得、これにクロロ−(2−フルオロフェニル)−ジフェニルメタン1g(0.0034モル)及びベンゼン40mLを添加した。混合物を5分間還流し、次いで、周囲の温度で4時間撹拌した。水(10mL)及び1.0M塩酸1mLを添加し、混合物を室温で14時間撹拌した。有機層を分離し、水洗し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、溶媒を真空下に除去した。得られた赤色固形物をエタノールから結晶化し、重量1.0g(収量67%)、融点1335〜135℃を有する薄い黄色固形物を得た。
この生成物から以下の分析データが得られ得た。
【数9】

【0142】
6.12 4,4,4−トリフェニルブトロニトリルの合成
4,4,4−トリフェニルブトロニトリル(化合物64)の合成の好ましい方法は、次の通り。塩化メチレン100mL中の3,3,3−トリフェニルプロパノール5.0g(0.017モル)、メタンスルホニルクロリド2.2g(0.019モル)及びトリエチルアミン3.6mL(0.026モル)の混合物を−15℃で30分間撹拌した。次いで、反応混合物を、水50mL、1.0M塩酸100mL、飽和炭酸ナトリウム100mL及び塩水100mLを用いて続けて洗浄した。溶媒を蒸発に供し、6.4g(収量80%)の白色固形物(3,3,3−トリフェニルプロピルメシレート)を得た。このメシレート5.3g(0.0145モル)及びシアン化ナトリウム0.85g(0.017モル)の混合物を2.5時間100mLのメチルスルホキシド中で還流させた。冷却した反応混合物に水500mL及び酢酸エチル500mLを添加し、層を分離し、水性層を、各々100mLの酢酸エチルを用いで3回抽出した。合わせた有機層を200mLの水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させた。溶媒を真空下に除去し、得られた白色固形物を2−プロパノールから結晶化し、融点130〜133℃を有する白色結晶2.3g(収量45%)を得た。
この生成物から以下の分析データが得られ得た。
【数10】

【0143】
6.13 (2−クロロフェニル)−ジフェニルアセタミドの合成
(2−クロロフェニル)−ジフェニルアセタミド(化合物75)の合成の好ましい方法は、次の通りである。(2−クロロフェニル)−ジフェニルアセトニトリル(化合物14)2.0g(0.007モル)を硫酸15mL及び酢酸15mL中に溶解し、12時間100℃で加熱した。冷却した反応混合物を水酸化アンモニウムで中和し、メチレンクロリドで抽出した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、溶媒を真空下に除去した。得られた茶色固形物をアセトンから結晶化し、融点197〜198.5℃を有する薄い茶色の固形物0.9g(収量42%)を得た。
生成物から、次の分析データが得られた。
この生成物から以下の分析データが得られ得た。
【数11】

【0144】
6.14 3−(2’−クロロフェニル)−3,3−ジフェニルプロパナール )の合成
3−(2’−クロロフェニル)−3,3−ジフェニルプロパナール(化合物79)の合成の好ましい方法は、次の通りである。25mLのジメチルホルムアミド中の3−(2−クロロフェニル)−3,3−ジフェニルプロピオン酸(化合物36)1.8g(0.0053モル)、N−メチル−N−メトキシヒドロキシルアミン・塩酸塩0.68g(0.007モル)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド・塩酸塩0.91g(0.0059モル)及びトリエチルアミン0.97mL(0.007モル)の混合物を0〜5℃で2時間撹拌し、次いで、室温で15時間撹拌した。水(15mL)を添加し、混合物を室温で1.5時間撹拌し、その後、追加の水を30mL添加し、混合物を酢酸エチル(3×50mL)で抽出し、次いで、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を蒸発させることにより、オレンジ色の油状物質(0.99g、0.0026モル、収量49%のN−メチル−N−メトキシ−3−(2’−クロロフェニル)−3,3−ジフェニルプロピルアミド)を得た。このアミドを25mLのテトラヒドロフランに溶解し、撹拌しながら0〜5℃に冷却した。5mLのテトラヒドロフラン中の水素化リチウムアルミニウム0.20g(0.0053モル)のスラリーを、この冷たい撹拌中の溶液に滴下した。混合物を0〜5℃で1時間撹拌し、70mLの水中の硫酸水素化カリウム9.9g(0.073モル)の溶液を用いて反応を停止した。酢酸エチル(50mL)を添加し、層を分離した。水層を30mLの酢酸エチルで抽出し、合わせた有機画分を硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を真空下に除去し、黄色の残渣を酢酸エチルから結晶化させ、融点92〜93℃を有する白色結晶生成物0.29g(収量91%)を得た。
生成物から次の分析データが得られた。
この生成物から以下の分析データが得られ得た。
【数12】

【0145】
6.15 4−(2−クロロフェニル)−4,4−ジフェニル−2−ブタノン の合成
4−(2−クロロフェニル)4,4−ジフェニル−2−ブタノン(化合物82)の合成の好ましい方法は、次の通りである。20mLのテトラヒドロフラン中のN−メチル−N−メトキシ−3−(2−クロロフェニル)−3,3−ジフェニルプロピオンアミド1.05g(0.0027モル)の溶液を0℃に冷却し、メチルマグネシウムブロミド(テトラヒドロフラン中の3.0M溶液、0.00303モル)1.01mLを、冷却した溶液に添加した。混合物を室温で一晩撹拌した。冷塩酸水溶液(25mL、1.0M)を用いで反応を停止し、次いで、ジクロロメタン(2×20mL)により抽出した。有機溶液を飽和重炭酸ナトリウム水溶液20mL及び塩水15mLにより洗浄した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させた。蒸発により、黄色固形物として粗生成物0.89gを得た。粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、1:5 酢酸エチル:ヘキサン)精製することにより、融点120〜123℃を有する白色固形物0.385g(収量41%)を得た。
生成物からは、次の分析データが得られた。
この生成物から以下の分析データが得られ得た。
【数13】

【0146】
6.16 α−(2−クロロフェニル)−α−(4−ヒドロキシフェニル)ベ ンジルアルコールの合成
α−(2−クロロフェニル)−α−(4−ヒドロキシフェニル)ベンジルアルコール(化合物84)の合成の好ましい方法は、次の通りである。ジクロロメタン10mL中のα−(2−クロロフェニル)−α−(4−メトキシフェニル)ベンジルアルコール0.5g(0.0015モル)の溶液を−15℃に冷却し、4.5mLの三臭化ホウ素(ジクロロメタン中の1.0M溶液、0.0045モル)を冷却した溶液に添加した。混合物を室温で一晩撹拌し、次いで、8時間還流させた。反応混合物を水を用いて反応停止し、重炭酸ナトリウム水溶液を添加することにより中和した。混合物をジクロロメタン(3×20mL)により抽出した。有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させた。蒸発により、赤色濃油状物質として粗生成物0.47gを得た。フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、1:5 酢酸エチル:ヘキサン)により粗生成物を精製し、融点56.5〜60℃を有する黄色固形物0.182g(収量39%)を得た。
生成物からは、次の分析データが得られた。
この生成物から以下の分析データが得られ得た。
【数14】

【0147】
6.17 シクロヘキシル−ジフェニルメタノールの合成
シクロヘキシル−ジフェニルメタノール(化合物88)の合成の好ましい方法は、次の通りである。20mLのテトラヒドロフラン(THF)中のメチルシクロヘキシルカルボキシレート3.0g(0.0021モル)の溶液を、46mL(0.0046モル)の臭化フェニルマグネシウム(THF中1.0M)へ撹拌しながら室温で滴下した。溶液を6時間還流させ、次いで、冷却させた。水(15mL)を添加し、白色沈殿を生成させた。混合物を酢酸エチル(3×25mL)により抽出し、合わせた有機物を硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を蒸発させることにより、透明油状物質が得られ、これをエタノールから結晶化させた。白色結晶をろ過により回収し、融点76〜78℃を有する生成物4.0g(収量75%)を得た。
生成物からは、次の分析データが得られた。
この生成物から以下の分析データが得られ得た。
【数15】

【0148】
6.18 シクロヘキシル−ジフェニルアセトニトリルの合成
シクロヘキシル−ジフェニルアセトニトリル(化合物89)の合成の好ましい方法は、次の通りである。トルエン25mL中のナトリウムアミド0.94g(0.024モル)及びジフェニルアセトニトリル3.85g(0.02モル)の混合物を還流温度で3時間撹拌した。この還流混合物へ、塩化シクロヘキシル2.6mL(0.022モル)を添加した。
混合物を還流下にさらに3時間撹拌し、次いで、冷却した。冷却した溶液に50mLの1.0M HCl溶液を添加した。層を分離し、有機層を塩水により洗浄し、次いで、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。トルエンを真空下に除去し、黄色固形物(4.9g)を得た。この固形物をエタノールから結晶化し、融点117.5〜119℃を有する白色結晶生成物3.6gを得た。
生成物からは、次の分析データが得られた。
この生成物から以下の分析データが得られ得た。
【数16】

【0149】
6.19 シクロヘキシル−ジフェニルアセタミドの合成
シクロヘキシル−ジフェニルアセタミド(化合物90)の合成の好ましい方法は、次の通りである。シクロヘキシル−ジフェニルアセトニトリル(化合物89)0.155g(0.0056モル)を、1mLの硫酸及び1mLの酢酸中で撹拌し、110℃で9時間加熱した。冷却した反応混合物を等体積の水で希釈し、塩化メチレンで抽出した。未反応物の出発物質からの生成物の分離は、フラッシュクロマトグラフィー(7:3 ヘキサン:酢酸エチル、シリカ上)により行った。真空下に画分を蒸発に供し、白色固形物0.044g(収量27%)を得た。
生成物からは、次の分析データが得られた。
この生成物から以下の分析データが得られ得た。
【数17】

【0150】
6.20 他の化合物
本発明の他の化合物は、上述した合成のルーチンの修飾により、又は当技術に周知の他の方法により合成することができる、化合物1、3、4、5、7、8、9,、10、11、12、19、20、21、23、24、25、26、28、34、37、38、39、42、43、44、45、46、47、48、50、51、54、57、59、60、61、62、66、67、69、71、72、73、76、77及び78は、Aldich Chemical社から入手可能である。
化合物49及び52は、Maybridge Chemical社から入手可能である。
【0151】
7. イン・ビトロ活性
この例は、式(I)のいくつかの例示化合物が、イン・ビトロにおける赤血球のガルドスチャネル及び/又はミトゲン誘発性細胞増殖を阻害する活性を実証するものである。このアッセイは、式(I)の他の化合物のイン・ビトロ活性を実証するために一般的に適用し得るものである。
【0152】
7.1 実験プロトコール
ガルドスチャネルの阻害百分率(10μM化合物)及びIC50は、Brugnaraら、1993,J.Biol.Chem.268(12):8760-8768に記載されるようにして測定した。ミトゲン誘発性細胞増殖の阻害百分率(10μM化合物)及びIC50は、NIH 3T3マウス繊維芽細胞(ATCC No.CRL 1658)を用いて、Benzaquenら(1995,Nature Medicine 1:5:34-540)に記載されているように測定した。クロトリマゾールは、比較を目的として報告する。他の細胞株、例えば、癌細胞、内皮細胞及び繊維芽細胞、さらには多くの他のものを、細胞増殖アッセイにおいて用い得る。特定の細胞株を選択することは、所望する適用に部分的に依存し、当業者の能力内のものである。
【0153】
7.2 結果
イン・ビトロアッセイの結果を以下の表1に示す。試験された化合物の全てが、少なくとも1のアッセイにおいて有意な活性を示した。
【表12】

【0154】
【表13】

【0155】
【表14】

【0156】
【表15】

【0157】
8. : クロトリマゾール代謝生成物B(化合物6)は、125I-ChTX結合を 置換する
長さ37アミノ酸のペプチドであるキャリブドトキシン(ChTX)は、ガルドスチャネルを含む多くのCa2+−活性化チャネル及び電位型K+チャネルの潜在的な阻害剤である(Millerら、1985,Nature 313:316-318:Bontemsら、1992,Biochemistry 31:7756-7764:Parkら、1991,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 88:2046-2050:Vazquezら、1989,J.Biol.Chem.264:20902-20909:Grinstein及びSmith.1990,J.Gen.Physiol.95:97-120:Brugnaraら、1993,J.Biol.Chem.268:8760-8768)。ChTX結合阻害剤は、他のガルドスチャネル阻害剤により競争的に置換され得るので、ChTXは、ガルドスチャネル機能及び活性化を理解するために重要な手段である。この例は、CLT代謝生成物B(化合物6)によるChTXの置換を実証する。本明細書に記載される方法は、式(I)の他の化合物がChTXを競争的に置換する能力を実証するためにに一般的に提供し得るものである。
【0158】
8.1 赤血球へ結合する125ChTX
Beutler及びWest,1976.J.Lab.Clin.Med.88:328-333に元々記載されるように、バックされた0.8mLの赤血球を、等部のアルファ−セルロース及び微結晶セルロースの混合物を含有する5mLシリンジを通過させることにおり、白血球を除去した。赤血球を、18mM NaCl、2mM KCl、10mM Tris-Cl、pH80、230mMしょ糖及び0.25%子牛血清アルブミンを含有する結合培地中で3回洗浄した。次いで、懸濁液を同じ培地中で15%ヘマトクリット(HCt)にした。細胞に、125IChTXを含有する結合培地を3.5mL添加し、特定の薬剤の存在下又は非存在下に、最終濃度1×107細胞/mLにした。細胞懸濁液を含有する試験管を90分間穏やかに、室温で回転した。インキュベーションの終了時、1mLのアリコートをマイクロフュージによりペレット化し、200mM NaCl、10mM Tris-Cl、pH8.0を含有する溶液を用いて4℃で3回洗浄した。次いで、洗浄した赤血球ペレットを、1mLの0.01% ACationox(American Scientisic Products)中に溶解し、ガンマカウンタにおいて計測した。結合培地のアリコートは、結合アッセイの最後において、細胞を添加する前に計測した。
【0159】
8.2 代謝生成物B(化合物6)による置換
アセトニトリル中のストック溶液から代謝生成物B(化合物6)を赤血球に添加した。同様の量のアセトニトリルを各コントロール試験管に添加した。特異的結合を、50nM非標識ChTXによる125I−ChTXの置換に基づいて概算した。125I−ChTXの添加前に、各種濃度の代謝生成物B(化合物6)又は非標識ChTXを細胞懸濁液(1×107細胞/mL)へ添加した。
8.3 結果
アッセイの結果を表2に示す。代謝生成物B(化合物6)は、125IChTX結合を特異的に置換する。
【0160】
【表16】

【0161】
9.
クロトリマゾール及びその代謝生成物は、ヒトのイン・ビボCa2+活性化カルシウム輸送を阻害する
この例は、クロトリマゾール(CLT)並びにCLT代謝生成物A及びB(それぞれ化合物17及び6)が、ヒトにおけるイン・ビボでの赤血球のガルドスチャネルを阻害する能力を実証するものである。本明細書に記載される方法は、ヒトに投与される場合、式(I)の他の化合物のイン・ビボ活性を実証するために一般に適用し得る。
【0162】
9.1 実験プロトコール
6日間、12時間毎に500mg CLT錠剤1錠を、1方は、男性(A、72Kg)及びもう1方は、女性(D、56Kg)の2人の対象に摂取させた(それぞれ、14及び18mg/kgの一日CLT投与量に相当する)。3日目及び6日目に、午前のCLT投与の6時間後に血液を採取し、赤血球カルシウムへ活性化カリウム輸送の阻害の測定に供した。
【0163】
9.2 結果
表3に2人の正常な対象における、赤血球カルシウム−活性化カリウム輸送の測定の結果を示す。表3に示すように、CLT投与中に、カルシウム−活性化カリウム輸送の有意な阻害があり、それは、薬剤投与を停止した後少なくとも7日間は持続した。6日目に、血漿CLT濃度は、0.2μM、並びに合わせた代謝生成物レベルは、2.9μM(対象A)及び3.85μM(対象D)であった。CLT投与を停止した後2日目には、血漿中のCLT又はCLT代謝生成物はともに認められなかった。
【0164】
【表17】

【0165】
全血CLTレベルの測定により、「血液細胞関連」CLTレベルを概算することができる。表3に示すように、CLTを使用中止した後、7日目まで(対象A)及び14日目まで(対象D)、「血液細胞関連」CLTの有意なレベルが検知された。CLTが停止された後2日目には、血液細胞中に検知可能な代謝生成物はなかった。これらのデータは、測定可能な血漿レベルの不存在下であっても、赤血球及びおそらくは他の血液成分は、延長された時間有意量のCLTと結合あるいは含有することを示唆している。CLT代謝生成物は、血漿及び細胞の両者から同時に消失するという、異なった挙動を示す。
【0166】
細胞中のCLT及びその代謝生成物の合計レベルと、全血中で測定したガルドスチャネルの阻害百分率とは、有意な相関関係があった(%阻害=31.7log(CLT+MetA+Met B.μM)+56.4:r2=0.439.t=3.06.p<0.02.n=14)。
代謝生成物B(化合物6)は、赤血球ガルドスチャネルを介してカルシウム輸送を特異的に阻害する。CLT及び代謝生成物B(化合物6)は、20%Hctの赤血球懸濁液と共にインキュベートされた。CLT及び代謝生成物B(化合物6)の赤血球ガルドスチャネルへの阻害効果を比較すると、CLTについてIC50値310=63nM、代謝生成物B(化合物6)について、IC50値720±190nMを示している。代謝生成物B(化合物6)によるK+輸送の阻害に対する値は、代謝生成物B(化合物6)
による125I-ChTXの置換についてのIC50値よりも2ないし3倍低い。ChTXについては、ChTXによるK+輸送の阻害と比較して、ChTXによる125I-ChTXの置換についてのIC50値は、2ないし3倍増加することが先に示されている(Brugnara.1993.同上)。
【0167】
代謝生成物B(化合物6)及びCLTの濃度を変化させることによりK+輸送の阻害を測定した、結果を表4に示す。K+輪送の百分率阻害は、細胞が500nMのCLT又は1μMの代謝生成物B(化合物6)により処理された場合、50%よりも大きく、5μMのCLT及び10μMの代謝生成物B(化合物6)において、最大レベルに到達した。
【0168】
CLTの経口投与は、研究された対象のいずれにおいても有意な副作用を伴わなかった。具体的には、悪心、嘔吐又は下痢はいずれも観察されたなかった。肝臓機能試験、血漿クレアチン又は血漿尿素窒素(BUN)において、変化は観察されなかった。
【0169】
【表18】

【0170】
10. :代謝生成物B(化合物6)は、各種細胞株におけるイン・ビトロで のミトゲン誘導性細胞増殖を阻害する
この例は、クロトリマゾール(CLT)代謝生成物B(化合物6)が、癌細胞を含む各種細胞株においてミトゲン誘発性細胞増殖を阻害することができることを実証するものである。そのようなアッセイは、各種細胞株において、式(I)の他の化合物の活性を実証するために一般に適用可能である。
【0171】
10.1 実験プロトコール
Benzaquenら、1995、Nature Medicine 1:534-540に記載されるようにして、10μM CLT代謝生成物B(化合物6)の存在下及び非存在下にヒト黒色腫細胞(MM-RU)及び結腸腺癌細胞(HT29)を培養し、[3H]チミジン取り込みを測定することに上りDNA合成のレベルを決定した。
【0172】
10.2 結果
CLT代謝生成物B(化合物6)は、イン・ビトロにおいてこれらの細胞株の増殖の潜在的阻害剤であった。具体的には、CLT代謝生成物B(化合物6)は、MM-RU細胞においてコントロールに対して約60%、HT29細胞においてコントロールに対して約50%[3H]チミジン取り込みを阻害した。
【0173】
11. CLTはイン・ビボで細胞増殖を阻害する
この例は、クロトリマゾール(CLT)が、ヒト黒色腫のイン・ビボ動物モデルにおいて細胞増殖を阻害する能力を実証するものである。そのような動物モデルは、イン・ビトロでMM-RU細胞を阻害する式(I)の化合物のイン・ビボ活性を実証するために適用可能であると考えられている。
【0174】
11.1 実験プロトコール
重篤な合併免疫欠乏症(SCID)を有するマウスの外部尾静脈を経由して約2.5×106MM-RUヒト黒色腫細胞(肺においてのみ転移する細胞株(Byersら、1993,Melanoma Res.3:247.253))を接種した。ビヒクル(コントロール群、n=9)又はCLT(120mg/Kg,治療群、n=10)のいずれかの皮下注射を接種の日に開始し、10週間毎日投与した。10週間の治療期間の終わりに、マウスを犠牲にし、転移を検査した。
【0175】
11.2 結果
MM-RU細胞の接種後10週間、コントロール群の全ての動物は、肋膜の巨視的及び顕微鏡的肺転移を発生した。これと著しく対照的には、CLT処理された動物の半分は、巨視的転移を発生せず、2匹は、顕微鏡的転移の形跡さえも示さなかった。
【0176】
各群において観察された転移の数が多様であったにもかかわらず、CLT治療された群の動物は、コントロール群の動物よりも有意に少ない胸膜転移(コントロールの14±4に対して、治療動物2±1:p<0.05)、及び顕微鏡的転移(コントロールの27±9に対して、治療動物7±2:p<0.05)を示した。SCID-マウス/MM-RU-細胞モデルにおいて典型的であるように、胸膜表面上よりも多数の転移が、顕微鏡切片において計数された。両計数方法間には、優れた相互関係があった(r=0.90)。MM-RU黒色腫細胞が肺に対して高い器官特異性を有することと調和して、他の器官は、いずれもの転移病変の組織学的形跡を示さなかった。
【0177】
コントロール群及び治療群の動物は、全身転移疾患又は毒性のいずれもの形跡を示さず、コントロール及びCLT−治療された動物の両者とも同量の体重増加を見た。
【0178】
このマウス黒色腫モデルにおけるイン・ビボ有効性は、イン・ビトロにおいてMM-RU細胞を阻害する式(I)の他の化合物についても実証され得る。
12 処方
次の例は、ほ乳類、特にヒト患者に本発明の化合物を投与するための限定するものではない例示の処方を示すものである。本明細書に記載される化合物、又はその薬学的塩もしくは水和物のいずれも、次の例に示すように処方することができる。
【0179】
12.1 錠剤処方
活性成分60mgを含有する錠剤を次のようにして製造した。
【表19】

【0180】
活性成分、デンプン及びセルロースは、No.45メッシュU.S.シーブを通し、完全に混合する。ポリビニルピロリドンの溶液を得られた粉体と混合し、次いで、No.14メッシュU.S.シーブを通す。顆粒を50〜60℃で乾燥し、No.18メッシュU.S.シーブを通す。カルボキシメチルナトリウムデンプン、ステアリン酸マグネシウム及びタルクは、予めNo.60メッシュU.S.シーブを通し、次いで、得られた顆粒に添加し、混合後、錠剤機により圧縮し、各々150mgの重量を有する錠剤を得る。
錠剤は、上述の成分から圧縮に続いて湿顆粒化することにより調製することができる。
【0181】
12.2 ゼラチンカプセル
硬質ゼラチンカプセルを、次の成分を用いて製造した
【表20】

上記成分を混合し、460mg重量の硬質ゼラチンカプセル内に充填する。
【0182】
12.3 アエロゾル溶液
次の成分を含有するアエロゾル溶液を調製する。
【表21】

活性化合物をメタノールと混合し、混合物をプロペラント 22の一部分に添加し、−30℃に冷却し、充填装置へ移動する。次いで、ステンレススチール溶液へ必要量を供給し、プロペラントの残部により希釈する。次いで、バルブユニットを容器に固定する。
【0183】
12.4 坐薬
活性成分225mgを各々含有する坐薬を次のようにして製造する。
【表22】

活性成分を、No.60メッシュU.S.シーブを通し、必要最小限の熱を用いて予め溶解した飽和脂肪酸グリセリド中に懸濁させる。次いで、混合物を名目容量2gの坐薬型内に注ぎ、冷却する。
【0184】
12.5 懸濁液
5mLの投与量当たり各々50mgの薬剤を含有する懸濁液を次のようにして調製する。
【表23】

活性成分をNo.45メッシュU.S.シーブを通し、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びシロップと混合し、滑らかなペーストを形成する。安息香酸溶液、矯味矯臭薬及びいくつかの着色剤を水の一部分を用いて希釈し、撹拌しながら添加する。次いで、十分な水を所望の体積にする。
【0185】
上述の明細書は、当業者が本発明を実施することを可能にするために十分であると思量される。本発明を実施するための上述した態様の各種修飾であって、薬学分野又は関連分野の当業者に自明であるものは、次の請求の範囲の範疇内にあることを意図するものである。
全ての引用文献は、引用によりそれらの全てを本明細書に取り込む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式を有する化合物又はこれらの薬学的に許容しうる塩又は水和物
【化1】

但し、nは0、1、2、3又は4である。
1は−H、−OR、−SR、−CN、−C(O)R、−C(S)R、−C(O)OR、−C(S)OR、−C(O)SR、−C(S)SR、−C(O)NR2、−C(S)NR2、−CH[C(O)R]2、−CH[C(S)R]2、−CH[C(O)OR]2、−CH[C(S)OR]2、−CH[C(O)SR]2、−CH[C(S)SR]2である。
2は−F、−Cl、−Br又は−Iである。
3は−R、−OR又は−SRである。
4は−H又は−NR2である。
4'は−H、−F、−Cl、−Br又は−Iである。及び
各Rは、−H、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル、(C1−C6)アルキニル及び(C1−C6)アルコキシよりなる群から独立に選択される。
但し、(i)nが0であり、R1が−H又は−OHである場合、R3が−H以外であり、(ii)nが0であり、R1が−Hである場合、R3が−OH以外であるという条件が付く。
下式を有する化合物又はこれらの薬学的に許容しうる塩又は水和物
【化2】

但し、nは0、1、2、3又は4である。
1は−NR2、−C(O)R、−C(S)R、−C(O)NR’2又は−C(S)NR’2である。
2は−F、−Cl、−Br又は−Iである。
3は−F、−Cl、−Br又は−Iである。
4は−F、−Cl、−Br又は−Iである。
各Rは、−H、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル、(C1−C6)アルキニル及び(C1−C6)アルコキシよりなる群から独立に選択される。及び
各R’は−H、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル、(C1−C6)アルキニル及び(C1−C6)アルコキシよりなる群から独立に選択される。
及び
下式を有する化合物又はこれらの薬学的に許容しうる塩又は水和物
【化3】

但し、 nは0、1、2、3又は4である。
Ar1はフェニル又はシクロヘキシルである。
1は−NR2、−CH[C(O)OR]2、−CH[C(S)OR]2、−CH[C(O)SR]2、−CH[C(S)SR]2、−C(O)NR2又は− C(S)NR2である。及び
各Rは、−H、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル、(C1−C6)アルキニル及び(C1−C6)アルコキシよりなる群から独立に選択される。
但し、R1が−NH2又は−C(O)NH2である場合、nは1、2又は3であるという条件が付く。
よりなる群から選択される化合物。
【請求項2】
請求の範囲第1項に記載の化合物であって、
下式を有する化合物又はこれらの薬学的に許容しうる塩又は水和物。
【化4】


但し、nは0、1、2、3又は4である。
1は−H、−OR、−SR、−CN、−C(O)R、−C(S)R、−C(O)OR、−C(S)OR、−C(O)SR、−C(S)SR、−C(O)NR2、−C(S)NR2、−CH[C(O)R]2、−CH[C(S)R]2、−CH[C(O)OR]2、−CH[C(S)OR]2、−CH[C(O)SR]2、−CH[C(S)SR]2である。
2は−F、−Cl、−Br又は−Iである。
3は−R、−OR又は−SRである。
4は−H又は−NR2である。
4'は−H、−F、−Cl、−Br又は−Iである。及び
各Rは、−H、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル、(C1−C6)アルキニル及び(C1−C6)アルコキシよりなる群から独立に選択される。
但し、(i)nが0であり、R1が−H又は−OHである場合、R3が−H以外であり、(ii)nが0であり、R1が−Hである場合、R3が−OH以外であるという条件が付く。
【請求項3】
請求の範囲第2項に記載の化合物であって、前記化合物が、化合物14、15、32、33、36、55、70、75、79、80、81、82、83、84及び86よりなる群から選択されるもの。
【請求項4】
請求の範囲第1項に記載の化合物であって、下式を有する化合物又はこれらの薬学的に許容しうる塩又は水和物。
【化5】


但し、nは0、1、2、3又は4である。
1は−NR2、−C(O)R、−C(S)R、−C(O)NR’2又は−C(S)NR’2である。
2は−F、−Cl、−Br又は−Iである。
3は−F、−Cl、−Br又は−Iである。
4は−F、−Cl、−Br又は−Iである。
各Rは、−H、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル、(C1−C6)アルキニル及び(C1−C6)アルコキシよりなる群から独立に選択される。及び
各R’は−H、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル、(C1−C6)アルキニル及び(C1−C6)アルコキシよりなる群から独立に選択される。
【請求項5】
請求の範囲第4項に記載の化合物であって、前記化合物が化合物30、40、41及び65よりなる群から選択されるもの。
【請求項6】
請求の範囲第1項に記載の化合物であって、下式を有する化合物又はこれらの薬学的に許容しうる塩又は水和物。
【化6】


但し、nは0、1、2、3又は4である。
Ar1はフェニル又はシクロヘキシルである。
1は−NR2、−CH[C(O)OR]2、−CH[C(S)OR]2、−CH[C(O)SR]2、−CH[C(S)SR]2、−C(O)NR2又は−C(S)NR2である。及び
各Rは、−H、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル、(C1−C6)アルキニル及び(C1−C6)アルコキシよりなる群から独立に選択される。
但し、R1が−NH2又は−C(O)NH2である場合、nは1、2又は3であるという条件が付く。
【請求項7】
請求の範囲第6項に記載の化合物であって、前記化合物が、化合物18、29、31、56及び78よりなる群から選択されるもの。
【請求項8】
薬学的に許容しうる賦形剤、担体又は希釈剤と混合して化合物を含有する薬学的組成物であって、前記化合物が下式を有するもの又はこれらの薬学的に許容しうる塩又は水和物である組成物。
【化7】


但し、nは0、1、2、3又は4である。
Xは存在せず、(C1−C3)アルキル、(C1−C3)アルケニル、又は(C1−C3)アルキニルである。
YはC、N、P、Si又はGeである。
1は存在せず、−ハロ、−R、−OR、−SR、−NR2、−ONR2、−NO2、−CN、−C(O)R、−C(S)R、−C(O)OR、−C(S)OR、−C(O)SR、−C(S)SR、−C(O)NR2、−C(S)NR2、−C(O)NR(OR)、−C(S)NR(OR)、−C(O)NR(SR)、C(S)NR(SR)、−CH(CN)2、−CH[C(O)R]2、−CH[C(S)R]2、−CH[C(O)OR]2、−CH[C(S)OR]2、−CH[C(O)SR]2、−CH[C(S)SR]2又はアリールである。
Ar1はアリール、置換アリール、イミダゾール、ニトロイミダゾール及びトリアゾール以外のヘテロアリール、イミダゾリウム、ニトロイミダゾリウム及びトリアゾリウム以外のヘテロアリーリウム、(C5−C8)シクロアルキル又は(C5−C8)ヘテロシクロアルキルである。
Ar2はアリール又は置換アリールである。
Ar3はアリール、置換アリール、ビアリール又はイミダゾール、ニトロイミダゾール及びトリアゾール以外のヘテロアリールである。
各Rは、−H、(C1−C6)アルキル、置換(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル、置換(C1−C6)アルケニル、(C1−C6)アルキニル、置換(C1−C6)アルキニル、及び(C1−C6)アルコキシよりなる群から独立に選択される。
アリール置換基は、−ハロ、トリハロメチル、−R、−R’、−OR’、−SR’、−NR’2、−NO2、−CN、−C(O)R’、−C(S)R’、−C(O)OR’、−C(S)OR’、−C(O)SR’及び−C(S)SR’よりなる群から各々独立に選択される。
アルキル、アルケニル及びアルキニル置換基は、−ハロ、−R’、−OR’、−SR’、−NR’2、−NO2、−CN、−C(O)R’、−C(S)R’、−C(O)OR’、−C(S)OR’、−C(O)SR’、−C(S)SR’、アリール、γ−ブチロラクトニル、ピロリジニル及びスクシニックアンハイドリジル(sccunic
anhydridyl)よりなる群から各々独立に選択される。及び
各R’は−H、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル及び(C1−C6)アルキニルよりなる群から独立に選択される。
但し、該化合物は1−(2−クロロフェニル)−1,1−ジフェニルメタノール、1−(2−クロロフェニル)−1,1−ジフェニルメタン又は1−(2−クロロフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン以外である。
【請求項9】
請求の範囲第8項に記載の薬学的組成物であって、置換基が以下のものである組成物。
nが1、2、3又は4である。
Xが存在せず又は−C≡C−である。
YがC、N、P、Si又はGeである。
1が存在せず、−F、−Cl、−Br、−R、−OR、−SR、−NR2、−ONR2、−NO2、−CN、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR2、−C(O)NR(OR)、−CH[C(O)OR]2、又はシクロペンタ−2,4−ジエン−1−イリデンである。
Ar1がフェニル、置換フェニル、イミダゾール、ニトロイミダゾール及びトリアゾール以外のヘテロアリール、シクロヘキシル、ピペリジル、又はピリジニウムである。
Ar2がフェニル又は置換フェニルである。
Ar3がフェニル、置換フェニル、ビフェニル、ナフチル又はピリジルである。
Rは−H、(C1−C3)アルキル、置換(C1−C3)アルキル、(C1−C3)アルケニル、置換(C1−C3)アルケニル、(C1−C3)アルキニル、置換(C1−C3)アルキニル及び(C1−C3)アルコキシである。
フェニル置換基は、−F、−Cl、−Br、−CF3、−R、−R’、−OR’、−SR’、−NR’2、−NO2、−CN、−C(O)R’及び−C(O)OR’よりなる群から各々独立に選択される。
アルキル、アルケニル及びアルキニル置換基は、−F、−Cl、−Br、−R’、−OR’、−SR’、−NR’2、−NO2、−CN、−C(O)R’、−C(O)OR’、ナフチル、γ−ブチロラクトニル及びピロリジニルよりなる群から各々独立に選択される。及び
各R’は、−H、(C1−C3)アルキル、(C1−C3)アルケニル及び(C1−C3)アルキニルよりなる群から独立に選択される。
【請求項10】
請求の範囲第9項に記載の薬学的組成物であって、前記化合物が化合物1〜90よりなる群から選択される組成物。
【請求項11】
請求の範囲第10項に記載の薬学的組成物であって、前記化合物が、7、10、12、13、14、15、16、18、19、20、21、22、23、24、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、58、59、60、61、62、64、65、67、68、69、70、71、72、73、75、78、79、80、81、82、83、84、86、87、88、89及び90よりなる群から選択される組成物。
【請求項12】
請求の範囲第8項に記載の薬学的組成物であって、前記化合物が、下式を有する化合物又はこれらの薬学的に許容しうる塩又は水和物
【化8】

但し、nは0、1、2、3又は4である。
1は−H、−OR、−SR、−CN、−C(O)R、−C(O)OR、 −C(O)NR2、−CH[C(O)R]2、又は−CH[C(O)OR]2 である。
2は−F、−Cl、−Br、−I、−OR、−SR、−C(O)R又は −C(O)NR2である。
2'は−H又は−NO2である。
3は−H、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル、(C1−C6)アルキニル、−OR又は−SRである。
4は−H又は−NR2である。
4'は−H、−F、−Cl、−Br又は−Iである。及び
各Rは、−H、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル、(C1−C6)アルキニル又は(C1−C6)アルコキシよりなる群から独立に選択される。
及び
下式を有する化合物又はこれらの薬学的に許容しうる塩又は水和物
【化9】


但し、
Xは存在せず、又は−C≡C−である。
YはC、P、Si又はGeである。
nは0、1、2、3又は4である。
Ar1はフェニル、置換フェニル、シクロアルキル、イミダゾリウム、ニトロイミダゾリウム又はトリアゾリウム以外のヘテロアリーリウムである。
Ar3はフェニル、ナフチル、ピペリジル又はシクロヘキシルである。
1は−R、−OR、−SR、−CN、−NR2、−ONR2、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR2、−CH[C(O)R]2、−CH[C(O)OR]2、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル、(C1−C6)アルキニル、シクロペンタ−2,4−ジエン−1−イリデン又はフェニルである。
2、R3及びR4の各々は、−H、−F、−Cl、−Br、−I、−OR、−SR、−NR2、−NO2、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR2、トリハロメチル、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル、(C1−C6)アルキニル及びフェニルよりなる群から独立に選択される。
各Rは−H、ハロ、(C1−C6)アルキル、置換(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル、置換(C1−C6)アルケニル、(C1−C6)アルキニル、置換(C1−C6)アルキニル及び(C1−C6)アルコキシよりなる群から独立に選択される。
アルキル、アルケニル又はアルキニル置換基は、アリール、−C(O)OR、ピロリジニル、ブチロラクトニル、−F、−Cl、−Br、−I及び−CNよりなる群から各々独立に選択される。及び
フェニル置換基は、各々独立に−Rである。
但し、該化合物は、1−(2−クロロフェニル)−1,1−ジフェニルメタノール、1−(2−クロロフェニル)−1,1−ジフェニルメタン又は1−(2−クロロフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン以外である。
よりなる群から選択される組成物。
【請求項13】
請求の範囲第12項に記載の薬学的組成物であって、前記化合物が、下式の構造を有するもの、又はこれらの薬学的に許容しうる塩又は水和物である組成物。
【化10】

但し、
nは0、1、2、3又は4である。
1は−H、−OR、−SR、−CN、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR2、−CH[C(O)R]2、又は−CH[C(O)OR]2である。
2は−F、−Cl、−Br、−I、−OR、−SR、−C(O)R又は−C(O)NR2である。
2は−H又は−NO2である。
3は−H、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル、(C1−C6)アルキニル、−OR又は−SRである。
4は−H又は−NR2である。
4'は−H、−F、−Cl、−Br又は−Iである。及び
各Rは、−H、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル、(C1−C6)アルキニル又は(C1−C6)アルコキシよりなる群から独立に選択される。
但し、該化合物は、1−(2−クロロフェニル)−1,1−ジフェニルメタノール、1−(2−クロロフェニル)−1,1−ジフェニルメタン又は1−(2−クロロフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン以外である。
【請求項14】
請求の範囲第13項に記載の薬学的組成物であって、前記化合物が、化合物14、15、20、27、32、33、36、42、45、49、55、70、75、79、80、81、82、83、84及び86よりなる群から選択される組成物。
【請求項15】
請求の範囲第12項に記載の薬学的組成物であって、前記化合物が下記構造式を有するもの、又はこれらの薬学的に許容しうる塩又は水和物である組成物。
【化11】

但し、
Xは存在せず、又は−C≡C−である。
YはC、P、Si又はGeである。
nは0、1、2、3又は4である。
Ar1はフェニル、置換フェニル、シクロアルキル、イミダゾリウム、ニトロイミダゾリウム又はトリアゾリウム以外のヘテロアリーリウムである。
Ar3はフェニル、ナフチル、ピペリジル又はシクロヘキシルである。
1は−R、−OR、−SR、−CN、−NR2、−ONR2、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR2、−CH[C(O)R]2、−CH[C(O)OR]2、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル、(C1−C6)アルキニル、シクロペンタ−2,4−ジエン−1−イリデン又はフェニルである。
2、R3及びR4の各々は、−H、−F、−Cl、−Br、−I、−OR、−SR、−NR2、−NO2、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR2、トリハロメチル、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル、(C1−C6)アルキニル及びフェニルよりなる群から独立に選択される。
各Rは−H、ハロ、(C1−C6)アルキル、置換(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル、置換(C1−C6)アルケニル、(C1−C6)アルキニル、置換(C1−C6)アルキニル及び(C1−C6)アルコキシよりなる群から独立に選択される。
アルキル、アルケニル又はアルキニル置換基は、アリール、−C(O)OR、ピロリジニル、ブチロラクトニル、−F、−Cl、−Br、−I及び−CNよりなる群から各々独立に選択される。
フェニル置換基は、各々独立に−Rである。
但し、該化合物は、1−(2−クロロフェニル)−1,1−ジフェニルメタノール、1−(2−クロロフェニル)−1,1−ジフェニルメタン又は1−(2−クロロフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン以外である。
【請求項16】
請求の範囲第15項に記載の薬学的組成物であって、該化合物が、化合物7、10、12、13、16、18、19、21、22、23、24、26、28、29、30、31、34、35、37、38、40、41、43、44、46、47、48、50、51、52、53、54、56、58、59、60、61、62、64、65、67、68、69、71、72、73、78、87、88、89及び90よりなる群から選択される組成物。
【請求項17】
カルシウムで活性化される細胞のカリウム輸送を阻害する方法であって、前記方法が、in situで、下式を有する化合物又はこれらの薬学的に許容しうる塩又は水和物の効果的な量を細胞に接触するステップを具備する方法。
【化12】

但し、
nは0、1、2、3又は4である。
Xは存在せず、(C1−C3)アルキル、(C1−C3)アルケニル、又は(C1−C3)アルキニルである。
YはC、N、P、Si又はGeである。
1は存在せず、−ハロ、−R、−OR、−SR、−NR2、−ONR2、−NO2、−CN、−C(O)R、−C(S)R、−C(O)OR、−C(S)OR、−C(O)SR、−C(S)SR、−C(O)NR2、−C(S)NR2、−C(O)NR(OR)、−C(S)NR(OR)、−C(O)NR(SR)、C(S)NR(SR)、−CH(CN)2、−CH[C(O)R]2、−CH[C(S)R]2、−CH[C(O)OR]2、−CH[C(S)OR]2、−CH[C(O)SR]2、−CH[C(S)SR]2又はアリールである。
Ar1はアリール、置換アリール、イミダゾール、ニトロイミダゾール及びトリアゾール以外のヘテロアリール、イミダゾリウム、ニトロイミダゾリウム及びトリアゾリウム以外のヘテロアリーリウム、(C5−C8)シクロアルキル又は(C5−C8)ヘテロシクロアルキルである。
Ar2はアリール又は置換アリールである。
Ar3はアリール、置換アリール、ビアリール又はイミダゾール、ニトロイミダゾール及びトリアゾール以外のヘテロアリールである。
各Rは、−H、(C1−C6)アルキル、置換(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル、置換(C1−C6)アルケニル、(C1−C6)アルキニル、置換(C1−C6)アルキニル、及び(C1−C6)アルコキシよりなる群から独立に選択される。
アリール置換基は、−ハロ、トリハロメチル、−R、−R’、−OR’、−SR’、−NR’2、−NO2、−CN、−C(O)R’、−C(S)R’、−C(O)OR’、−C(S)OR’、−C(O)SR’及び−C(S)SR’よりなる群から各々独立に選択される。
アルキル、アルケニル及びアルキニル置換基は、−ハロ、−R’、−OR’、−SR’、−NR’2、−NO2、−CN、−C(O)R’、−C(S)R’、−C(O)OR’、−C(S)OR’、−C(O)SR’、−C(S)SR’、アリール、γ−ブチロラクトニル、ピロリジニル及びスクシニックアンハイドリジル(sccunic
anhydridyl)よりなる群から各々独立に選択される。及び
各R’は−H、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル及び(C1−C6)アルキニルよりなる群から独立に選択される。
但し、該化合物は1−(2−クロロフェニル)−1,1−ジフェニルメタノール、1−(2−クロロフェニル)−1,1−ジフェニルメタン又は1−(2−クロロフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン以外である。
【請求項18】
請求の範囲第17項に記載の方法であって、前記細胞が赤血球である方法。
【請求項19】
請求の範囲第17項に記載の方法であって、前記化合物が、7、10、12、13、14、15、16、18、20、21、22、23、24、27、29、30、31、32、33、34、35、37、38、42、43、44、45、46、47、49、50、51、52、53、55、56、58、59、60、62、64、65、67、68、69、70、73、75、78、79、80、81、82、83、86、87、88及び90よりなる群から選択される方法。
【請求項20】
請求の範囲第19項に記載の方法であって、前記化合物が14、15、16、32、37、43、46、55、62、64、69、75、79、82、87及び90よりなる群から選択される方法。
【請求項21】
鎌状赤血球の脱水を減少するか、又は赤血球の鎌状化又は変形の発生を遅らせる方法であって、前記方法が、in situで、下式を有する化合物又はこれらの薬学的に許容しうる塩又は水和物の効果的な量を鎌状赤血球に接触するステップを具備する方法。
【化13】

但し、nは0、1、2、3又は4である。
Xは存在せず、(C1−C3)アルキル、(C1−C3)アルケニル、又は(C1−C3)アルキニルである。
YはC、N、P、Si又はGeである。
1は存在せず、−ハロ、−R、−OR、−SR、−NR2、−ONR2、−NO2、−CN、−C(O)R、−C(S)R、−C(O)OR、−C(S)OR、−C(O)SR、−C(S)SR、−C(O)NR2、−C(S)NR2、−C(O)NR(OR)、−C(S)NR(OR)、−C(O)NR(SR)、C(S)NR(SR)、−CH(CN)2、−CH[C(O)R]2、−CH[C(S)R]2、−CH[C(O)OR]2、−CH[C(S)OR]2、−CH[C(O)SR]2、−CH[C(S)SR]2又はアリールである。
Ar2はアリール、置換アリール、イミダゾール、ニトロイミダゾール及びトリアゾール以外のヘテロアリール、イミダゾリウム、ニトロイミダゾリウム及びトリアゾリウム以外のヘテロアリーリウム、(C5−C8)シクロアルキル又は(C5−C8)ヘテロシクロアルキルである。
Ar2はアリール又は置換アリールである。
Ar3はアリール、置換アリール、ビアリール又はイミダゾール、ニトロイミダゾール及びトリアゾール以外のヘテロアリールである。
各Rは、−H、(C1−C6)アルキル、置換(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル、置換(C1−C6)アルケニル、(C1−C6)アルキニル、置換(C1−C6)アルキニル、及び(C1−C6)アルコキシよりなる群から独立に選択される。
アリール置換基は、−ハロ、トリハロメチル、−R、−R’、−OR’、−SR’、−NR’2、−NO2、−CN、−C(O)R’、−C(S)R’、−C(O)OR’、−C(S)OR’、−C(O)SR’及び−C(S)SR’よりなる群から各々独立に選択される。
アルキル、アルケニル及びアルキニル置換基は、−ハロ、−R’、−OR’、−SR’、−NR’2、−NO2、−CN、−C(O)R’、−C(S)R’、−C(O)OR’、−C(S)OR’、−C(O)SR’、−C(S)SR’、アリール、γ−ブチロラクトニル、ピロリジニル及びスクシニックアンハイドリジル(sccunic anhydridyl)よりなる群から各々独立に選択される。及び
各R’は−H、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル及び(C1−C6)アルキニルよりなる群から独立に選択される。
但し、該化合物は1−(2−クロロフェニル)−1,1−ジフェニルメタノール、1−(2−クロロフェニル)−1,1−ジフェニルメタン又は1−(2−クロロフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン以外である。
【請求項22】
請求の範囲第21項に記載の方法であって、前記化合物が、7、10、12、13、14、15、16、18、20、21、22、23、24、27、29、30、31、32、33、34、35、37、38、42、43、44、45、46、47、49、50、51、52、53、55、56、58、59、60、62、64、65、67、68、69、70、73、75、78、79、80、81、82、83、86、87、88及び90よりなる群から選択される方法。
【請求項23】
請求の範囲第22項に記載の方法であって、前記化合物が14、15、16、32、37、43、46、55、62、64、69、75、79、82、87及び90よりなる群から選択される方法。
【請求項24】
請求の範囲第21項に記載の方法であって、前記投与が、生きた人に対する経口、非経口、静脈内、皮下、経皮及び経粘膜よりなる群から選択される方法
【請求項25】
鎌状赤血球症を治療又は予防する方法であって、前記方法が、下式を有する化合物又はこれらの薬学的に許容しうる塩又は水和物の治療的に効果的な量を、鎌状赤血球症に罹患している患者に投与するステップを具備する方法。
【化14】

但し、nは0、1、2、3又は4である。
Xは存在せず、(C1−C3)アルキル、(C1−C3)アルケニル、又は(C1−C3)アルキニルである。
YはC、N、P、Si又はGeである。
1は存在せず、−ハロ、−R、−OR、−SR、−NR2、−ONR2、−NO2、−CN、−C(O)R、−C(S)R、−C(O)OR、−C(S)OR、−C(O)SR、−C(S)SR、−C(O)NR2、−C(S)NR2、−C(O)NR(OR)、−C(S)NR(OR)、−C(O)NR(SR)、C(S)NR(SR)、−CH(CN)2、−CH[C(O)R]2、−CH[C(S)R]2、−CH[C(O)OR]2、−CH[C(S)OR]2、−CH[C(O)SR]2、−CH[C(S)SR]2又はアリールである。
Ar1はアリール、置換アリール、イミダゾール、ニトロイミダゾール及びトリアゾール以外のヘテロアリール、イミダゾリウム、ニトロイミダゾリウム及びトリアゾリウム以外のヘテロアリーリウム、(C5−C8)シクロアルキル又は(C5−C8)ヘテロシクロアルキルである。
Ar2はアリール又は置換アリールである。
Ar3はアリール、置換アリール、ビアリール又はイミダゾール、ニトロイミダゾール及びトリアゾール以外のヘテロアリールである。
各Rは、−H、(C1−C6)アルキル、置換(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル、置換(C1−C6)アルケニル、(C1−C6)アルキニル、置換(C1−C6)アルキニル、及び(C1−C6)アルコキシよりなる群から独立に選択される。
アリール置換基は、−ハロ、トリハロメチル、−R、−R’、−OR’、−SR’、−NR’2、−NO2、−CN、−C(O)R’、−C(S)R’、−C(O)OR’、−C(S)OR’、−C(O)SR’及び−C(S)SR’よりなる群から各々独立に選択される。
アルキル、アルケニル及びアルキニル置換基は、−ハロ、−R’、−OR’、−SR’、−NR’2、−NO2、−CN、−C(O)R’、−C(S)R’、−C(O)OR’、−C(S)OR’、−C(O)SR’、−C(S)SR’、アリール、γ−ブチロラクトニル、ピロリジニル及びスクシニックアンハイドリジル(sccunic
anhydridyl)よりなる群から各々独立に選択される。及び
各R’は−H、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル及び(C1−C6)アルキニルよりなる群から独立に選択される。
但し、該化合物は1−(2−クロロフェニル)−1,1−ジフェニルメタノール、1−(2−クロロフェニル)−1,1−ジフェニルメタン又は1−(2−クロロフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン以外である。
【請求項26】
請求の範囲第25項に記載の方法であって、前記化合物が、7、10、12、13、14、15、16、18、20、21、22、23、24、27、29、30、31、32、33、34、35、37、38、42、43、44、45、46、47、49、50、51、52、53、55、56、58、59、60、62、64、65、67、68、69、70、73、75、78、79、80、81、82、83、86、87、88及び90よりなる群から選択される方法。
【請求項27】
請求の範囲第26項に記載の方法であって、前記化合物が14、15、16、32、37、43、46、55、62、64、69、75、79、82、87及び90よりなる群から選択される方法。
【請求項28】
請求の範囲第25項に記載の方法であって、前記患者が急性鎌状クリーゼに罹患している方法。
【請求項29】
請求の範囲第25項に記載の方法であって、前記投与が非経口である方法。
【請求項30】
請求の範囲第24項に記載の方法であって、前記患者が慢性鎌状赤血球症状の発現に苦しんでいる方法。
【請求項31】
請求の範囲第30項に記載の方法であって、前記投与が経口によっている方法。
【請求項32】
哺乳類細胞の増殖を阻害する方法であって、前記方法が、in situで、下式を有する化合物又はこれらの薬学的に許容しうる塩又は水和物の効果的な量と哺乳類細胞を接触するステップを具備する方法。
【化15】

但し、nは0、1、2、3又は4である。
Xは存在せず、(C1−C3)アルキル、(C1−C3)アルケニル、又は(C1−C3)アルキニルである。
YはC、N、P、Si又はGeである。
1は存在せず、−ハロ、−R、−OR、−SR、−NR2、−ONR2、−NO2、−CN、−C(O)R、−C(S)R、−C(O)OR、−C(S)OR、−C(O)SR、−C(S)SR、−C(O)NR2、−C(S)NR2、−C(O)NR(OR)、−C(S)NR(OR)、−C(O)NR(SR)、C(S)NR(SR)、−CH(CN)2、−CH[C(O)R]2、−CH[C(S)R]2、−CH[C(O)OR]2、−CH[C(S)OR]2、−CH[C(O)SR]2、−CH[C(S)SR]2又はアリールである。
Ar1はアリール、置換アリール、イミダゾール、ニトロイミダゾール及びトリアゾール以外のヘテロアリール、イミダゾリウム、ニトロイミダゾリウム及びトリアゾリウム以外のヘテロアリーリウム、(C5−C8)シクロアルキル又は(C5−C8)ヘテロシクロアルキルである。
Ar2はアリール又は置換アリールである。
Ar3はアリール、置換アリール、ビアリール又はイミダゾール、ニトロイミダゾール及びトリアゾール以外のヘテロアリールである。
各Rは、−H、(C1−C6)アルキル、置換(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル、置換(C1−C6)アルケニル、(C1−C6)アルキニル、置換(C1−C6)アルキニル、及び(C1−C6)アルコキシよりなる群から独立に選択される。
アリール置換基は、−ハロ、トリハロメチル、−R、−R’、−OR’、−SR’、−NR’2、−NO2、−CN、−C(O)R’、−C(S)R’、−C(O)OR’、−C(S)OR’、−C(O)SR’及び−C(S)SR’よりなる群から各々独立に選択される。
アルキル、アルケニル及びアルキニル置換基は、−ハロ、−R’、−OR’、−SR’、−NR’2、−NO2、−CN、−C(O)R’、−C(S)R’、−C(O)OR’、−C(S)OR’、−C(O)SR’、−C(S)SR’、アリール、γ−ブチロラクトニル、ピロリジニル及びスクシニックアンハイドリジル(sccunic
anhydridyl)よりなる群から各々独立に選択される。及び
各R’は−H、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル及び(C1−C6)アルキニルよりなる群から独立に選択される。
但し、該化合物は1−(2−クロロフェニル)−1,1−ジフェニルメタノール、1−(2−クロロフェニル)−1,1−ジフェニルメタン又は1−(2−クロロフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン以外である。
【請求項33】
請求の範囲第32項に記載の方法であって、前記化合物が、13、14、15、16、18、21、26、27、28、30、31、36、38、40、41、42、43、44、46、47、48、49、50、52、54、59、61、65、67、68、70、71、72、73、79、82、83、84、86、89及び90よりなる群から選択される方法。
【請求項34】
請求の範囲第33項に記載の方法であって、前記化合物が16、28、30、36、43、45、47、49、50、54及び84よりなる群から選択される方法。
【請求項35】
請求の範囲第32項に記載の方法であって、前記哺乳類細胞が内皮細胞、繊維細胞又は血管平滑筋細胞である方法。
【請求項36】
異常な細胞増殖により特徴づけられる疾患を治療又は予防する方法であって、前記方法が、下式を有する化合物、これらの薬学的に許容しうる塩又は水和物の治療的に効果的な量を患者に投与するステップを具備した方法。
【化16】

但し、nは0、1、2、3又は4である。
Xは存在せず、(C1−C3)アルキル、(C1−C3)アルケニル、又は(C1−C3)アルキニルである。
YはC、N、P、Si又はGeである。
1は存在せず、−ハロ、−R、−OR、−SR、−NR2、−ONR2、−NO2、−CN、−C(O)R、−C(S)R、−C(O)OR、−C(S)OR、−C(O)SR、−C(S)SR、−C(O)NR2、−C(S)NR2、−C(O)NR(OR)、−C(S)NR(OR)、−C(O)NR(SR)、C(S)NR(SR)、−CH(CN)2、−CH[C(O)R]2、−CH[C(S)R]2、−CH[C(O)OR]2、−CH[C(S)OR]2、−CH[C(O)SR]2、−CH[C(S)SR]2又はアリールである。
Ar1はアリール、置換アリール、イミダゾール、ニトロイミダゾール及びトリアゾール以外のヘテロアリール、イミダゾリウム、ニトロイミダゾリウム及びトリアゾリウム以外のヘテロアリーリウム、(C5−C8)シクロアルキル又は(C5−C8)ヘテロシクロアルキルである。
Ar2はアリール又は置換アリールである。
Ar3はアリール、置換アリール、ビアリール又はイミダゾール、ニトロイミダゾール及びトリアゾール以外のヘテロアリールである。
各Rは、−H、(C1−C6)アルキル、置換(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル、置換(C1−C6)アルケニル、(C1−C6)アルキニル、置換(C1−C6)アルキニル、及び(C1−C5)アルコキシよりなる群から独立に選択される。
アリール置換基は、−ハロ、トリハロメチル、−R、−R’、−OR’、−SR’、−NR’2、−NO2、−CN、−C(O)R’、−C(S)R’、−C(O)OR’、−C(S)OR’、−C(O)SR’及び−C(S)SR’よりなる群から各々独立に選択される。
アルキル、アルケニル及びアルキニル置換基は、−ハロ、−R’、−OR’、−SR’、−NR’2、−NO2、−CN、−C(O)R’、−C(S)R’、−C(O)OR’、−C(S)OR’、−C(O)SR’、−C(S)SR’、アリール、γ−ブチロラクトニル、ピロリジニル及びスクシニックアンハイドリジル(sccunic
anhydridyl)よりなる群から各々独立に選択される。及び
各R’は−H、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルケニル及び(C1−C6)アルキニルよりなる群から独立に選択される。
但し、該化合物は1−(2−クロロフェニル)−1,1−ジフェニルメタノール、1−(2−クロロフェニル)−1,1−ジフェニルメタン又は1−(2−クロロフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン以外である。
【請求項37】
請求の範囲第36項に記載の方法であって、前記化合物が、化合物13、14、15、16、18、19、21、26、27、28、30、31、36、38、40、41、42、43、45、46、47、48、49、50、52、54、59、61、65、67、68、70、71、72、73、79、82、83、84、86、89及び90よりなる群から選択される方法。
【請求項38】
請求の範囲第37項に記載の方法であって、前記化合物が、化合物16、28、30、36、43、45、47、48、49、50、54及び84よりなる群から選択される方法。
【請求項39】
請求の範囲第36項に記載の方法であって、前記異常な細胞増殖により特徴づけられる疾患が癌、血管増殖性疾患、繊維性疾患又は動脈硬化性症状である方法。
【請求項40】
請求の範囲第39項に記載の方法であって、前記化合物の前記投与が経口、非経口又は静脈内による方法。
【請求項41】
請求の範囲第36項に記載の方法であって、前記異常な細胞増殖により特徴づけられる疾患が、皮膚科学的疾患又はカポジ肉腫であり、前記投与が経皮的である方法。
【請求項42】
請求の範囲第41項に記載の方法であって、前記皮膚科学的疾患が、ケロイド、肥厚性の傷跡、脂漏性皮膚病、乳頭腫ウイルス感染、湿疹及び光線性角化症よりなる群から選択される方法。

【公開番号】特開2008−201783(P2008−201783A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48469(P2008−48469)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【分割の表示】特願平9−533721の分割
【原出願日】平成9年3月19日(1997.3.19)
【出願人】(508062018)プレジデント・アンド・フェロウズ・オブ・ハーバード・カレッジ (1)
【出願人】(500092480)チルドレンズ メディカル センター コーポレーション (5)
【出願人】(500232639)ヌケム・ファーマスーティカルズ・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】