説明

鎖伸長剤およびその製造方法、および、熱可塑性ポリウレタン樹脂

【課題】機機械強度に優れるとともに、優れた熱安定性を備える熱可塑性ポリウレタン樹脂を製造できる鎖伸長剤およびその製造方法、および、機械強度に優れるとともに、優れた熱安定性を備える熱可塑性ポリウレタン樹脂を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で示されるアミド基含有ジオールからなる鎖伸長剤を、ポリウレタン樹脂の原料成分として用いる。
【化38】


(式中、Rは、置換基を有していてもよいアリーレン基、RおよびRは、互いに同一または相異なって、水素原子または炭化水素基を示す。また、nおよびmは、互いに同一または相異なって、0以上の整数を示し、xおよびyは、互いに同一または相異なって、1以上の整数を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鎖伸長剤およびその製造方法、および、熱可塑性ポリウレタン樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂は、例えば、熱硬化性ポリウレタン樹脂(注型ポリウレタン樹脂)、熱可塑性ポリウレタン樹脂、混練型ポリウレタン樹脂(ミラブルポリウレタン樹脂)などとして製造されており、例えば、エラストマー、弾性成形品(スパンデックス)、RIM成形品、発泡成形品などとして、広範に使用されている。
【0003】
熱可塑性ポリウレタン樹脂(TPU)は、ポリイソシアネート、高分子量ポリオールおよび鎖伸長剤(低分子量ポリオール)の反応により得られるゴム弾性体であって、ポリイソシアネートおよび鎖伸長剤の反応により形成されるハードセグメントと、ポリイソシアネートおよび高分子量ポリオールの反応により形成されるソフトセグメントとを備えている。
【0004】
このような熱可塑性ポリウレタン樹脂では、ポリイソシアネート、高分子量ポリオールおよび鎖伸長剤の種類や配合割合を変更することにより、弾性率などの各種物性を調整することができ、また、耐摩耗性、機械強度(引張強度など)などの優れた特性を確保することができる。
【0005】
そのため、熱可塑性ポリウレタン樹脂は、例えば、押出成形、射出成形など、熱可塑性樹脂の成形加工方法における成形材料として用いられており、例えば、靴のソールおよびインソール、スキー靴、自動車外装部品および内装部品、電装部品、キャスター類、ロール、ホース、チューブ、シート、繊維などの各種産業分野において、よく使用されている。
【0006】
一方、混練型ポリウレタン樹脂は、実質的にハードセグメントを含有しないポリウレタン樹脂であって、例えば、ゴム練り装置などを用いて、容易に混練成形することができ、加硫により硬化させることができるため、例えば、搬送ベルト、駆動ベルト、搬送ロール、駆動ロールなどにおいて、よく使用されている。
【0007】
このような混練型ポリウレタン樹脂として、耐熱性、機械強度などを向上させるべく、例えば、4,4´−ジアミノジフェニルメタン、4,4´−ジアミノジシクロヘキシルメタン、ヘキサメチレンジアミン、エチレンジアミン、ブチレンジアミン、p−フェニレンジアミンなどのアミン化合物からなる重合開始剤と、ε−カプロラクトンとを反応させ、ε−カプロラクトンの平均連鎖の数が約6であるアミド基含有ポリ−ε−カプロラクトンジオールを製造し、その後、得られたアミド基含有ポリ−ε−カプロラクトンジオールと、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネートとを反応させ、ミラブルウレタンタイプのポリアミドエステルウレタンを製造する方法が、提案されている(例えば、特許文献1(実施例1〜12)参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−302864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一方、熱可塑性ポリウレタン樹脂においても、耐熱性および機械強度の向上が、要求されている。
【0010】
しかし、熱可塑性ポリウレタン樹脂は、合成後に再度溶融して成形する必要があるため、熱可塑性を維持しながら、耐熱性および機械強度を向上させる必要がある。
【0011】
本発明の目的は、機械強度に優れるとともに、優れた熱安定性を備える熱可塑性ポリウレタン樹脂を製造できる鎖伸長剤およびその製造方法、および、機械強度に優れるとともに、優れた熱安定性を備える熱可塑性ポリウレタン樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の鎖伸長剤は、ポリウレタン樹脂の原料成分として用いられ、下記一般式(1)で示されるアミド基含有ジオールからなることを特徴としている。
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、Rは、置換基を有していてもよいアリーレン基、RおよびRは、互いに同一または相異なって、水素原子または炭化水素基を示す。また、nおよびmは、互いに同一または相異なって、0以上の整数を示し、xおよびyは、互いに同一または相異なって、1以上の整数を示す。)
また、本発明の鎖伸長剤では、上記式(1)において、RおよびRが、水素原子またはメチル基であることが好適である。
【0015】
また、本発明の鎖伸長剤では、上記式(1)において、Rが、置換基を有していてもよいフェニレン基であることが好適である。
【0016】
また、本発明の鎖伸長剤では、上記式(1)において、xおよびyが、1であることが好適である。
【0017】
また、本発明の鎖伸長剤では、上記式(1)において、nおよびmが、0であることが好適である。
【0018】
また、本発明の鎖伸長剤の製造方法は、上記の鎖伸長剤の製造方法であって、芳香族ジアミンと、環状エステル化合物とを反応させる工程、および、前記反応により得られた反応物を加水分解する工程を備えることを特徴としている。
【0019】
また、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネートと、高分子量ポリオールと、上記の鎖伸長剤とを少なくとも反応させてなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明の鎖伸長剤は、上記一般式(1)で示されるアミド基含有ジオールを含有するとともに、ポリウレタン樹脂の原料成分としての鎖伸長剤として用いられるため、ポリウレタン樹脂中に、上記のアミド基含有ジオールによるハードセグメントを形成することができる。その結果、本発明の鎖伸長剤によれば、優れた機械強度を確保するとともに、優れた熱安定性を備えるポリウレタン樹脂を得ることができる。
【0021】
また、本発明の鎖伸長剤の製造方法によれば、優れた機械強度および熱安定性を備えるポリウレタン樹脂を得ることができる鎖伸長剤を、容易に製造することができる。
【0022】
また、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂では、原料成分として、上記一般式(1)で示されるアミド基含有ジオールが用いられるため、優れた機械強度を確保するとともに、優れた熱安定性を備えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の鎖伸長剤は、例えば、熱可塑性ポリウレタン樹脂などのポリウレタン樹脂の原料成分として用いられる鎖伸長剤であって、下記一般式(1)で示されるアミド基含有ジオールからなる。
【0024】
【化2】

【0025】
(式中、Rは、置換基を有していてもよいアリーレン基、RおよびRは、互いに同一または相異なって、水素原子または炭化水素基を示す。また、nおよびmは、互いに同一または相異なって、0以上の整数を示し、xおよびyは、互いに同一または相異なって、1以上の整数を示す。)
上記式(1)において、Rは、アリーレン基を示す。
【0026】
Rにおいて、アリーレン基は、Rに結合される2つの窒素原子(アミド基に含まれる窒素原子)が、いずれも、芳香族炭化水素に直接結合していれば、複数の芳香環が、2価の炭化水素基などにより結合していてもよい。
【0027】
このようなアリーレン基として、より具体的には、例えば、フェニレン基、トリレン基、フルオレン基、ナフチレン基、メチレンビスフェニレン基、ビフェニレン基、トリフェニレン基、ビナフタレン基などの炭素数6〜20の炭素環式アリーレン基、例えば、フランジイル基、チオフェンジイル基、ピリジル基、イミダゾリジル基などのヘテロ環式アリーレン基などが挙げられる。
【0028】
アリーレン基として、好ましくは、炭素環式アリーレン基が挙げられ、より好ましくは、フェニレン基が挙げられる。
【0029】
また、このようなアリーレン基は、置換基を有することができる。
【0030】
置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭化水素基(後述)、ハロゲン化炭化水素基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、シリル基などが挙げられる。
【0031】
これらの置換基は、上記式(1)において、Rに複数置換していてもよく、また、置換基がRに複数置換する場合には、各置換基は、互いに同一であっても、それぞれ異なっていてもよい。
【0032】
このような置換基を有するアリーレン基として、より具体的には、例えば、メチルフェニレン基、エチルフェニレン基、メトキシフェニレン基、エトキシフェニレン基、ブトキシフェニレン基、オクチルオキシフェニレン基、ハロゲノフェニレン基、トリフルオロメチルフェニレン基、トリフルオロメトキシフェニレン基、パーフルオロヘキシルエチルオキシフェニレン基、カルボキシフェニレン基、シアノフェニレン基などの炭素環式置換アリーレン基、例えば、ジメチルアミノピリジル基、N−メチルイミダゾリル基などの複素環式置換アリーレン基などが挙げられる。
【0033】
また、上記のアリーレン基は、例えば、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合などの安定な結合を含むことができる。
【0034】
このようなアリーレン基として、より具体的には、例えば、ジフェニレンエーテル基、ジフェニレンチオエーテル基などが挙げられる。
【0035】
上記式(1)において、RおよびRは、互いに同一または相異なって、水素原子または炭化水素基を示す。
【0036】
炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環含有炭化水素基、芳香環含有炭化水素基などが挙げられる。
【0037】
およびRにおいて、脂肪族炭化水素基としては、例えば、1価の脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0038】
1価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基などが挙げられる。
【0039】
アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、iso−ペンチル、sec−ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、イソデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシルなどの炭素数1〜18のアルキル基が挙げられる。
【0040】
アルケニル基としては、例えば、ビニル、アリル、メタリル、イソプロペニル、1−プロペニル、2−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプチニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、テトラデセニル、ヘキサデセニル、オクタデセニルなどの炭素数2〜18のアルケニル基が挙げられる。
【0041】
アルキニル基としては、例えば、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、ブチニル、ペンチニル、オクテニルなどの炭素数2〜8のアルキニル基が挙げられる。
【0042】
およびRにおいて、脂環含有炭化水素基としては、例えば、1価の脂環含有炭化水素基などが挙げられる。
【0043】
なお、脂環含有炭化水素基は、その炭化水素基中に1つ以上の脂環式炭化水素を含有していればよく、例えば、その脂環式炭化水素に、例えば、脂肪族炭化水素基などが結合していてもよい。このような場合には、R、Rに結合される炭素原子は、脂環式炭化水素に直接結合していてもよく、脂環式炭化水素に結合される脂肪族炭化水素基に結合していてもよい。
【0044】
このような脂環含有炭化水素基として、より具体的には、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの炭素数3〜24のシクロアルキル基、例えば、メチルシクロプロピル基、エチルシクロプロピル基、メチルシクロペンチル基、エチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルプロピル基などの炭素数4〜24の脂肪族炭化水素基を含有する脂環含有炭化水素基などが挙げられる。
【0045】
およびRにおいて、芳香環含有炭化水素基としては、例えば、1価の芳香環含有炭化水素基などが挙げられる。
【0046】
なお、芳香環含有炭化水素基は、その炭化水素基中に1つ以上の芳香族炭化水素を含有していればよく、例えば、その芳香族炭化水素に、例えば、脂肪族炭化水素基などが結合していてもよい。このような場合には、R、Rに結合される炭素原子は、芳香族炭化水素に直接結合していてもよく、芳香族炭化水素に結合される脂肪族炭化水素基に結合していてもよい。
【0047】
このような芳香環含有炭化水素基として、より具体的には、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基などの炭素数6〜24のアリール基、例えば、ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、1−フェニルプロピル、2−フェニルプロピル、3−フェニルプロピル、ジフェニルメチル、o、mまたはp−メチルベンジル、o、mまたはp−エチルベンジル、o、mまたはp−イソプロピルベンジル、o、mまたはp−tert−ブチルベンジル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−または3,5−ジメチルベンジル、2,3,4−、3,4,5−または2,4,6−トリメチルベンジル、5−イソプロピル−2−メチルベンジル、2−イソプロピル−5−メチルベンジル、2−メチル−5−tert−ブチルベンジル、2,4−、2,5−または3,5−ジイソプロピルベンジル、3,5−ジ−tert−ブチルベンジル、1−(2−メチルフェニル)エチル、1−(3−メチルフェニル)エチル、1−(4−メチルフェニル)エチル、1−(2−イソプロピルフェニル)エチル、1−(3−イソプロピルフェニル)エチル、1−(4−イソプロピルフェニル)エチル、1−(2−tert−ブチルフェニル)エチル、1−(4−tert−ブチルフェニル)エチル、1−(2−イソプロピル−4−メチルフェニル)エチル、1−(4−イソプロピル−2−メチルフェニル)エチル、1−(2,4−ジメチルフェニル)エチル、1−(2,5−ジメチルフェニル)エチル、1−(3,5−ジメチルフェニル)エチル、1−(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)エチルなどのアラルキル基などが挙げられる。
【0048】
このようなRおよびRとして、好ましくは、1価の脂肪族炭化水素基、より好ましくは、アルキル基、さらに好ましくは、メチル基が挙げられる。
【0049】
また、RおよびRとして、好ましくは、水素原子も挙げられる。
【0050】
上記式(1)において、nおよびmは、互いに同一または相異なって、0以上の整数を示す。より具体的には、nおよびmは、互いに同一または相異なって、例えば、0〜20、好ましくは、0〜4、とりわけ好ましくは、0である。
【0051】
上記式(1)において、xおよびyは、互いに同一または相異なって、1以上の整数を示す。より具体的には、xおよびyは、互いに同一または相異なって、例えば、1〜10、好ましくは、1〜6、とりわけ好ましくは、1である。
【0052】
このようなアミド基含有ジオールとしては、例えば、下記式(2)〜(11)に示すものなどが挙げられる。
【0053】
【化3】

【0054】
【化4】

【0055】
【化5】

【0056】
【化6】

【0057】
【化7】

【0058】
【化8】

【0059】
【化9】

【0060】
【化10】

【0061】
【化11】

【0062】
【化12】

【0063】
そして、このような鎖伸長剤は、例えば、芳香族ジアミンと、カルボン酸またはその誘導体との反応により、得ることができる。
【0064】
芳香族ジアミンは、1つ以上のアリーレン基と、そのアリーレン基に直接結合する2つのアミノ基とを有する有機化合物であって、例えば、フェニレンジアミン類、ビスアニレン類、フルオレンジアミン類などが挙げられる。
【0065】
フェニレンジアミン類としては、例えば、1,4−フェニレンジアミン、2,5−ジアミノトルエン、2−クロロ−5−メチル−1,4−フェニレンジアミン、2,5−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−フェニレンジアミンなどが挙げられる。
【0066】
ビスアニレン類としては、例えば、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−エチル−6−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0067】
フルオレンジアミン類としては、例えば、9,9−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンなどが挙げられる。
【0068】
また、その他の芳香族ジアミンとして、例えば、1,1−ビス(4−アミノフェニル))シクロヘキサン、ビス(4−アミノ−2,3−ジクロロフェニル)メタン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパンなどが挙げられる。
【0069】
これら芳香族ジアミンは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0070】
芳香族ジアミンとして、好ましくは、フェニレンジアミン類、より好ましくは、フェニレンジアミンが挙げられる。
【0071】
カルボン酸は、1つ以上のカルボン酸基を有する有機化合物であって、例えば、水酸基不含カルボン酸、水酸基含有カルボン酸(ヒドロキシカルボン酸)などが挙げられる。
【0072】
水酸基不含カルボン酸は、1つ以上、好ましくは、1つのカルボン酸基を有するとともに、水酸基を有さない有機化合物であって、例えば、水酸基不含脂肪族カルボン酸が挙げられる。
【0073】
水酸基不含脂肪族カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸(ピバリン酸)、トリエチル酢酸、2,2−ジメチルブタン酸などの水酸基不含脂肪族モノカルボン酸、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸などの水酸基不含脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。
【0074】
水酸基含有カルボン酸(ヒドロキシカルボン酸)は、1つ以上、好ましくは、1つのカルボン酸基を有するとともに、1つ以上、好ましくは、1つの水酸基を有する有機化合物であって、脂肪族ヒドロキシカルボン酸などが挙げられる。
【0075】
脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、2−ヒドロキシプロパン酸(乳酸)、3−ヒドロキシプロパン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸などが挙げられる。
【0076】
また、カルボン酸の誘導体としては、上記カルボン酸(水酸基不含カルボン酸、水酸基含有カルボン酸)の、例えば、アルキルエステル、酸ハライドなどが挙げられる。
【0077】
カルボン酸のアルキルエステルとしては、例えば、上記したカルボン酸(水酸基不含カルボン酸、水酸基含有カルボン酸)の、例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステルなどが挙げられる。
【0078】
例えば、水酸基含有カルボン酸のアルキルエステルは、下記式(12)で示される。
【0079】
【化13】

【0080】
(式中、Rはアルキル基を示す。また、Rおよびnは、上記式(1)のRおよびnと同意義を示す。)
上記式(12)において、Rで示されるアルキル基としては、上記した炭素数1〜18のアルキル基などが挙げられる。
【0081】
カルボン酸の酸ハライドとしては、例えば、水酸基不含カルボン酸の酸ハライド、水酸基含有カルボン酸の酸ハライドなどが挙げられる。
【0082】
水酸基不含カルボン酸の酸ハライドとしては、例えば、酢酸クロリド、酢酸ブロミド、プロピオン酸クロリド、プロピオン酸ブロミド、酪酸クロリド、酪酸ブロミドなどの水酸基不含脂肪族カルボン酸ハライドなどが挙げられる。
【0083】
水酸基含有カルボン酸の酸ハライドとしては、例えば、グリコール酸クロリド、グリコール酸ブロミド、乳酸クロリド、乳酸ブロミド、ヒドロキシ酪酸クロリド、ヒドロキシ酪酸ブロミド、ヒドロキシ吉草酸クロリド、ヒドロキシ吉草酸ブロミド、ヒドロキシカプロン酸クロリド、ヒドロキシカプロン酸ブロミドなどの脂肪族ヒドロキシカルボン酸の酸ハライドなどが挙げられる。
【0084】
また、水酸基含有カルボン酸の酸ハライドにおいては、水酸基を保護基により保護することができる。水酸基を保護基により保護された水酸基含有カルボン酸の酸ハライドは、例えば、下記一般式(13)で示される。
【0085】
【化14】

【0086】
(式中、Xは、ハロゲン原子を示し、Proは、保護基を示す。また、Rおよびnは、上記式(1)のRおよびnと同意義を示す。)
上記式(13)において、Proで示される保護基としては、例えば、アセチル基などのアシル基などが挙げられる。
【0087】
このような水酸基を保護基により保護された水酸基含有カルボン酸の酸ハライドとして、より具体的には、例えば、アセトキシアセチルクロリド、アセトキシプロピオニルクロリド、アセトキシブチリルクロリドなどが挙げられる。
【0088】
また、カルボン酸の酸ハライドは、さらに、ハロゲン原子などを置換基として含有することもできる。
【0089】
例えば、カルボン酸の酸ハライドとして、水酸基不含脂肪族カルボン酸の酸ハライドが採用される場合には、ハロゲン原子を、例えば、酸ハライド基に対する逆側の末端に、置換することができる。
【0090】
このような、ハロゲン原子を置換基として含有する水酸基不含脂肪族カルボン酸の酸ハライドは、例えば、下記一般式(14)で示される。
【0091】
【化15】

【0092】
(式中、XおよびXは、互いに同一または相異なって、ハロゲン原子を示す。また、Rおよびnは、上記式(1)のRおよびnと同意義を示す。)
そのようなハロゲン原子を置換基として含有する、水酸基不含カルボン酸の酸ハライドとして、より具体的には、例えば、3−クロロプロピオニルクロリド、3-ブロモプロピオニルクロリド、3−クロロプロピオニルブロミド、3−ブロモプロピオニルブロミド、4−クロロブチリルクロリド、4−ブロモブチリルクロリド、4−クロロブチリルブロミド、4−ブロモブチリルブロミド、5−クロロペンチリルクロリド、5−ブロモペンチリルクロリド、5−クロロペンチリルブロミド、5−ブロモペンチリルブロミド、6−クロロヘキサノイルクロリド、6−ブロモヘキサノイルクロリド、6−クロロヘキサノイルブロミド、6−ブロモヘキサノイルブロミドなどが挙げられる。
【0093】
さらに、カルボン酸の誘導体として、環状エステル化合物が挙げられる。
【0094】
環状エステル化合物は、環中にエステル結合を含む環状有機化合物であって、例えば、
ラクトン類、ラクチド類などが挙げられる。
【0095】
ラクトン類は、例えば、1つの水酸基と1つのカルボキシル基とを有する水酸基含有カルボン酸の1分子脱水縮合などにより得られ、例えば、下記式(15)で示される。
【0096】
【化16】

【0097】
(式中、Rおよびnは、上記式(1)のRおよびnと同意義を示す。)
上記式(15)で示されるラクトン類としては、例えば、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン(γ−メチルブチロラクトン)、ε−カプロラクトンなどなどが挙げられる。
【0098】
ラクチド類は、例えば、1つの水酸基と1つのカルボキシル基とを有する水酸基含有カルボン酸の2分子脱水縮合などにより得られ、例えば、下記式(16)で示される。
【0099】
【化17】

【0100】
(式中、Rおよびnは、上記式(1)のRおよびnと同意義を示す。)
上記式(16)で示されるラクチド類としては、例えば、グリコリド、(3S,6S)−3,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン(別名:L−(−)−ラクチド)、1,6−ジオキサシクロデカン−2,7−ジオンなどが挙げられる。
【0101】
これらカルボン酸またはその誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができ、例えば、芳香族ジアミンの求核性などにより、適宜選択される。
【0102】
例えば、芳香族ジアミンの求核性が高い場合には、カルボン酸またはその誘導体として、好ましくは、水酸基含有カルボン酸のアルキルエステル(上記一般式(12)参照。)が挙げられる。
【0103】
求核性の高い芳香族ジアミンと、水酸基含有カルボン酸のアルキルエステルとは、下記式(17)に示す反応機構で反応し、上記式(1)で示されるアミド基含有ジオールを合成する。
【0104】
【化18】

【0105】
(式中、R、Rおよびnは、上記式(1)のR、Rおよびnと同意義を示す。また、Rは、上記式(12)のRと同意義を示す。)
この反応において、芳香族ジアミンと、水酸基含有カルボン酸のアルキルエステルとの配合割合は、芳香族ジアミン1モルに対して、水酸基含有カルボン酸のアルキルエステルが、例えば、2.0〜4.0モル、好ましくは、2.5〜3.0モルである。また、反応温度は、例えば、80〜200℃、好ましくは、100〜150℃であり、反応時間が、例えば、5〜20時間、好ましくは、6〜15時間である。
【0106】
一方、例えば、芳香族ジアミンの求核性が低い場合には、カルボン酸またはその誘導体として、好ましくは、水酸基を保護基により保護された水酸基含有カルボン酸の酸ハライド(上記一般式(13)参照。)が挙げられる。
【0107】
この方法において、求核性の低い芳香族ジアミンと、水酸基を保護基により保護された水酸基含有カルボン酸の酸ハライドとは、下記式(18)に示す反応機構で反応する。
【0108】
【化19】

【0109】
(式中、R、Rおよびnは、上記式(1)のR、Rおよびnと同意義を示す。また、XおよびProは、上記式(13)のXおよびProと同意義を示す。)
この反応において、芳香族ジアミンと、水酸基を保護基により保護された水酸基含有カルボン酸の酸ハライドとの配合割合は、芳香族ジアミン1モルに対して、水酸基を保護基により保護された水酸基含有カルボン酸の酸ハライドが、例えば、2.0〜3.0モル、好ましくは、2.1〜2.8モルである。また、反応温度は、例えば、−10〜60℃、好ましくは、−5〜40℃であり、反応時間が、例えば、2〜8時間、好ましくは、3〜6時間である。
【0110】
次いで、この方法では、下記式(19)に示すように、上記反応(上記式(18))により得られた生成物から、Proで示される保護基を脱保護する。
【0111】
【化20】

【0112】
(式中、R、Rおよびnは、上記式(1)のR、Rおよびnと同意義を示す。また、Proは、上記式(13)のProと同意義を示す。)
脱保護としては、特に制限されず、採用される保護基に応じて、公知の方法を採用することができる。
【0113】
例えば、保護基として、アシル基が採用される場合には、Pro−O−で示されるエステル結合を、公知の方法により切断する。
【0114】
エステル結合の切断では、例えば、メタノール(MeOH)、テトラヒドロフラン(THF)などの溶媒中において、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの処理剤が用いられる。
【0115】
これにより、アミド基含有ジオール(上記式(1)において、mとnとが等しく、また、xおよびyが1であるアミド基含有ジオール)を合成する。
【0116】
また、芳香族ジアミンの求核性が低い場合には、カルボン酸またはその誘導体として、上記のほか、好ましくは、ハロゲン原子を置換基として含有する水酸基不含脂肪族カルボン酸の酸ハライド(上記一般式(14)参照。)も挙げられる。
【0117】
求核性の低い芳香族ジアミンと、ハロゲン原子を置換基として含有する水酸基不含脂肪族カルボン酸の酸ハライドとは、まず、下記式(20)に示す反応機構で反応する。
【0118】
【化21】

【0119】
(式中、R、Rおよびnは、上記式(1)のR、Rおよびnと同意義を示す。また、XおよびXは、上記式(14)のXおよびXと同意義を示す。)
この反応において、芳香族ジアミンと、ハロゲン原子を置換基として含有する水酸基不含脂肪族カルボン酸の酸ハライドとの配合割合は、芳香族ジアミン1モルに対して、ハロゲン原子を置換基として含有する水酸基不含脂肪族カルボン酸の酸ハライドが、例えば、2.0〜3.0モル、好ましくは、2.1〜2.8モルである。また、反応温度は、例えば、−10〜60℃、好ましくは、−5〜40℃であり、反応時間が、例えば、2〜8時間、好ましくは、3〜6時間である。
【0120】
次いで、この反応では、上記反応(上記式(20))により得られた反応物に、カルボン酸のアルカリ金属塩、例えば、酢酸カリウム、酢酸ナトリウムなどを反応させる(下記式(21)参照。)。
【0121】
【化22】

【0122】
(式中、R、Rおよびnは、上記式(1)のR、Rおよびnと同意義を示し、Xは、上記式(14)のX同意義を示す。また、Mは、カリウムまたはナトリウムを示す。)
この反応において、カルボン酸のアルカリ金属塩の配合割合は、芳香族ジアミン1モルに対して、カルボン酸のアルカリ金属塩が、例えば、2.5〜10モル、好ましくは、3.0〜8.0モルである。また、反応温度は、例えば、25〜150℃、好ましくは、40〜120℃であり、反応時間が、例えば、3〜10時間、好ましくは、4〜8時間である。
【0123】
次いで、この反応では、上記反応(上記式(21))により得られた反応物において、上記と同様にして、エステル結合を切断する(下記式(22)参照。)。
【0124】
【化23】

【0125】
(式中、R、Rおよびnは、上記式(1)のR、Rおよびnと同意義を示す。)
これにより、アミド基含有ジオール(上記式(1)において、mとnとが等しく、また、xおよびyが1であるアミド基含有ジオール)を合成する。
【0126】
また、アミド基含有ジオールの合成では、芳香族ジアミンの求核性によらず、カルボン酸またはその誘導体として、環状エステル化合物を用いることができる。
【0127】
例えば、環状エステル化合物として、ラクトン類(上記式(15))が採用される場合において、芳香族ジアミンと、ラクトン類とは、下記式(23)に示す反応機構で反応する。
【0128】
【化24】

【0129】
(式中、R、R、n、xおよびyは、上記式(1)のR、R、n、xおよびyと同意義を示す。)
この反応において、芳香族ジアミンと、ラクトン類との配合割合は、芳香族ジアミン1モルに対して、ラクトン類が、例えば、2.0〜20.0モル、好ましくは、2.0〜12.0モルである。また、反応温度は、例えば、80〜200℃、好ましくは、100〜160℃であり、反応時間が、例えば、3〜12時間、好ましくは、5〜10時間である。
【0130】
次いで、この反応では、上記反応(上記式(23))により得られた反応物において、上記と同様にして、エステル結合を切断する(下記式(24)参照。)。
【0131】
【化25】

【0132】
(式中、R、R、n、xおよびyは、上記式(1)のR、R、n、xおよびyと同意義を示す。)
これにより、アミド基含有ジオール(上記式(1)において、mとnとが等しく、また、xおよびyが1であるアミド基含有ジオール)を合成する。
【0133】
一方、環状エステル化合物として、ラクチド類(上記式(16))が採用される場合において、芳香族ジアミンと、ラクトン類とは、下記式(25)に示す反応機構で反応する。
【0134】
【化26】

【0135】
(式中、R、R、n、xおよびyは、上記式(1)のR、R、n、xおよびyと同意義を示す。)
この反応において、芳香族ジアミンと、ラクチド類との配合割合は、芳香族ジアミン1モルに対して、ラクチド類が、例えば、2.0〜10.0モル、好ましくは、2.0〜6.0モルである。また、反応温度は、例えば、100〜200℃、好ましくは、110〜160℃であり、反応時間が、例えば、2〜10時間、好ましくは、3〜8時間である。
【0136】
次いで、この反応では、上記反応(上記式(25))により得られた反応物において、上記と同様にして、エステル結合を切断する(下記式(26)参照。)。
【0137】
【化27】

【0138】
(式中、R、R、n、xおよびyは、上記式(1)のR、R、n、xおよびyと同意義を示す。)
これにより、アミド基含有ジオール(上記式(1)において、mとnとが等しく、また、xおよびyが1であるアミド基含有ジオール)を合成する。
【0139】
なお、上記各反応において、反応温度は、一定温度、あるいは、段階的に昇温または冷却することもできる。
【0140】
また、上記各反応は、無溶媒でもよいが、必要により公知の反応溶媒を用いることもできる。
【0141】
反応溶媒としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノールなどのアルコール系溶媒、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコール系溶媒、例えば、アセトン、メチルエチルケトンメチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、ヘキサメチルホスホニルアミドなどの極性溶媒などの有機溶媒、例えば、水などが挙げられる。
【0142】
これら反応溶媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0143】
さらに、このような反応では、必要に応じて、得られた反応混合物から、アミド基含有ジオールを、例えば、再結晶などの結晶化処理により分離することができる。
【0144】
結晶化処理において用いられる結晶化溶媒としては、上記反応溶媒と同様の有機溶媒などが挙げられる。
【0145】
これら結晶化溶媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0146】
このようにして得られるアミド基含有ジオールの融点(示差走査熱量測定(DSC)測定による融点)は、例えば、100〜300℃、好ましくは、150〜250℃である。
【0147】
また、このようなアミド基含有ジオールの5%熱重量減少温度(測定法:熱重量分析(昇温速度10℃/分、窒素気流下))は、例えば、150℃以上、好ましくは、200℃以上、より好ましくは、280℃以上であり、通常、350℃以下である。
【0148】
そして、このようにして得られる鎖伸長剤と、ポリイソシアネートと、高分子量ポリオールとを、少なくとも反応させることにより、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂を得ることができる。
【0149】
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂は、合成後に再度加熱溶融できるポリウレタン樹脂であって、合成後に加熱溶融不能である熱硬化性ポリウレタン樹脂(注型ポリウレタン樹脂)とは区別される。
【0150】
従って、熱可塑性ポリウレタン樹脂は、一旦、ペレットなどの成形材料として成形し、その後、例えば、押出成形、射出成形などにより、任意の形状に成形することができる。
【0151】
このような熱可塑性ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネートと、高分子量ポリオールと、鎖伸長剤とを、少なくとも反応させることにより得られる。
【0152】
このような熱可塑性ポリウレタン樹脂は、詳しくは後述するが、ポリイソシアネートおよび高分子量ポリオールが少なくとも反応することにより形成されるソフトセグメントと、ポリイソシアネートおよび鎖伸長剤(および必要により配合される低分子量ポリオール(後述))が少なくとも反応することにより形成されるハードセグメントとを備えている。
【0153】
ポリイソシアネートは、イソシアネート基を2つ以上有する有機化合物であって、例えば、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネートなどのジイソシアネートなどが挙げられる。
【0154】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、m−またはp−フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物(TDI)、4,4′−、2,4′−または2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物(MDI)、4,4′−トルイジンジイソシアネート(TODI)、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4′−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)などが挙げられる。
【0155】
芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(XDI)、1,3−または1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(TMXDI)、ω,ω′−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼンなどが挙げられる。
【0156】
脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,3−または1,4−シクロヘキサンジイソシアネートもしくはその混合物(CHDI)、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート;IPDI)、4,4′−、2,4′−または2,2′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートもしくはその混合物(水添MDI、H12MDI)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物(水添XDI、HXDI)、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(NBDI)などが挙げられる。
【0157】
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,2−、2,3−または1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0158】
また、ポリイソシアネートとしては、例えば、上記したジイソシアネート(芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネートなど)の誘導体も挙げられる。
【0159】
ジイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したジイソシアネートの多量体(例えば、2量体、3量体(例えば、イソシアヌレート変性体、イミノオキサジアジンジオン変性体)、5量体、7量体など)、アロファネート変性体(例えば、上記したジイソシアネートと、アルコール類との反応より生成するアロファネート変性体など)、ポリオール変性体(例えば、ジイソシアネートと低分子量ポリオール(後述)との反応より生成するポリオール変性体(ポリオール付加体、ウレタン変性体)など)、ビウレット変性体(例えば、上記したジイソシアネートと、水やアミン類との反応により生成するビウレット変性体など)、ウレア変性体(例えば、上記したジイソシアネートとジアミンとの反応により生成するウレア変性体など)、オキサジアジントリオン変性体(例えば、上記したジイソシアネートと炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオンなど)、カルボジイミド変性体(上記したジイソシアネートの脱炭酸縮合反応により生成するカルボジイミド変性体など)、ウレトジオン変性体、ウレトンイミン変性体などが挙げられる。
【0160】
これらポリイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0161】
ポリイソシアネートとして、好ましくは、m−またはp−フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物(TDI)、4,4′−、2,4′−または2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)
、1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(XDI)、1,3−または1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(TMXDI)、1,4−または1,3−シクロヘキサンジイソシアネートもしくはその混合物(CHDI)、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート;IPDI)、4,4′−、2,4′−または2,2′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートもしくはその混合物(水添MDI、H12MDI)、1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物(水添XDI、HXDI)、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(NBDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、および、それらの誘導体が挙げられる。より好ましくは、m−またはp−フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4′−、2,4′−または2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート;IPDI)、4,4′−、2,4′−または2,2′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートもしくはその混合物(水添MDI、H12MDI)、1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物(水添XDI、HXDI)、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(NBDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、および、それらの誘導体が挙げられ、さらに好ましくは、m−またはp−フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4′−、2,4′−または2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物(MDI)、4,4′−、2,4′−または2,2′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートもしくはその混合物(水添MDI、H12MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、および、それらのイソシアヌレート変性体、ポリオール変性体(ポリオール付加体、ウレタン変性体)、カルボジイミド変性体、ウレトンイミン変性体が挙げられる。
【0162】
高分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する数平均分子量400以上の有機化合物であって、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、エポキシポリオール、天然油ポリオール、シリコーンポリオール、フッ素ポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリウレタンポリオールなどのマクロポリオールが挙げられる。
【0163】
ポリエーテルポリオールは、例えば、低分子量ポリオール(後述)および/または低分子量ポリアミン(後述)を開始剤として、これにアルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、オキセタン化合物などの炭素数2−5のアルキレンオキサイド)の開環付加重合(単独重合または共重合(アルキレンオキサイドとして、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドが併用される場合には、ブロック共重合および/またはランダム共重合))させることにより得ることができる。
【0164】
低分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する数平均分子量400未満の有機化合物であって、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオール、アルカン(炭素数7〜22)ジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、キシレングリコール、ビスヒドロキシエチレンテレフタレート、ビスフェノールA、ジエチレングリコール、トリオキシエチレングリコール、テトラオキシエチレングリコール、ペンタオキシエチレングリコール、ヘキサオキシエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリオキシプロピレングリコール、テトラオキシプロピレングリコール、ペンタオキシプロピレングリコール、ヘキサオキシプロピレングリコールなどの2価アルコール、例えば、グリセリン、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−3−ブタノールおよびその他の脂肪族トリオール(炭素数8〜24)などの3価アルコール、例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリンなどの4価アルコール、例えば、キシリトールなどの5価アルコール、例えば、ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトール、ダルシトール、アルトリトール、イノシトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコール、例えば、ペルセイトールなどの7価アルコール、例えば、ショ糖などの8価アルコールなどが挙げられる。また、多価アルコールとしては、上記の1〜8価アルコールに、さらに、例えば、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加した付加重合体(ポリオキシアルキレンポリオール)も含まれる。
【0165】
低分子量ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,3−または1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、2,5(2,6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ヒドラジン、o、mまたはp−トリレンジアミン(TDA、OTD)などの低分子量ジアミン、例えば、ジエチレントリアミンなどの低分子量トリアミン、例えば、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどのアミノ基を4個以上有する低分子量ポリアミンなどが挙げられる。
【0166】
これら開始剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0167】
開始剤として、好ましくは、低分子量ポリオールが挙げられる。
【0168】
ポリエーテルポリオールとして、より具体的には、上記した低分子量グリコールを開始剤として、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加反応させることによって得られる、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよび/またはポリエチレンポリプロピレングリコール(ランダムまたはブロック共重合体)などのポリオキシC2−3アルキレン(エチレンおよび/またはプロピレン)グリコールが挙げられる。
【0169】
また、例えば、テトラヒドロフランの開環重合などによって得られるポリテトラメチレンエーテルグリコール(ポリオキシブチレングリコール)、テトラヒドロフランの重合単位に上記の2価アルコールを共重合させることにより得られる非晶性(常温液状)のポリテトラメチレンエーテルグリコール、テトラヒドロフランとエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドとを共重合させることにより得られる、ポリオキシC2−4アルキレングリコールなどが挙げられる。
【0170】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子量ポリオールの1種または2種以上から選択される多価アルコールと、多塩基酸、そのアルキルエステル、その酸無水物、および、その酸ハライドとの縮合反応またはエステル交換反応により得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0171】
低分子量ポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオールなどが挙げられる。
【0172】
多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2,2−ジメチルマロン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、1,1−ジメチル−1,3−ジカルボキシプロパン、3−メチル−3−エチルグルタル酸、メチルヘキサン二酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、その他の脂肪族ジカルボン酸(炭素数11〜20)、水添ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエンジカルボン酸、ダイマー酸、ヘット酸などが挙げられる。
【0173】
多塩基酸のアルキルエステルとしては、上記した多塩基酸のメチルエステル、エチルエステルなどが挙げられる。
【0174】
酸無水物としては、上記した多塩基酸から誘導される酸無水物が挙げられ、例えば、無水シュウ酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水2−アルキル(炭素数12〜18)コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水トリメリット酸などが挙げられる。
【0175】
酸ハライドとしては、上記した多塩基酸から誘導される酸ハライドが挙げられ、例えば、シュウ酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、セバチン酸ジクロライドなどが挙げられる。
【0176】
また、ポリエステルポリオールとして、例えば、上記した低分子量ポリオールを開始剤として、ヒドロキシル基含有植物油脂肪酸(例えば、リシノレイン酸を含有するひまし油脂肪酸、12−ヒドロキシステアリン酸を含有する水添ひまし油脂肪酸など)などのヒドロキシカルボン酸を、公知の条件下、縮合反応させて得られる植物油系ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0177】
また、ポリエステルポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオールを開始剤として、例えば、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトンなどのラクトン類を開環重合により得られる、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオールなどのラクトン系ポリオールなどが挙げられ、さらには、それらポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオールなどに上記の2価アルコールを共重合させることにより得られるラクトン系ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0178】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオールを開始剤として、例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネートなどのカーボネート類を付加重合して得られる、ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。ポリカーボネートポリオールとしては、1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールとの共重合体からなる非晶性ポリカーボネートジオール、1,4−ブタンジオールと1,6−ヘキサンジオールとの共重合体からなる非晶性ポリカーボネートジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールからなる非晶性ポリカーボネートジオールが挙げられる。
【0179】
アクリルポリオールとしては、例えば、1つ以上の水酸基を有する重合性単量体と、それに共重合可能な別の単量体とを共重合させることによって得られる共重合体が挙げられる。
【0180】
水酸基を有する重合性単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2−ジヒドロキシメチルブチル(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシアルキルマレエート、ポリヒドロキシアルキルフマレートなどが挙げられる。
【0181】
また、それらと共重合可能な別の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1〜12)、マレイン酸、マレイン酸アルキル、フマル酸、フマル酸アルキル、イタコン酸、イタコン酸アルキル、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、3−(2−イソシアネート−2−プロピル)−α−メチルスチレン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0182】
そして、アクリルポリオールは、それら単量体を適当な溶剤および重合開始剤の存在下において共重合させることによって得ることができる。
【0183】
エポキシポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオールと、例えば、エピクロルヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリンなどの多官能ハロヒドリンとを反応させることよって得られるエポキシポリオールが挙げられる。
【0184】
天然油ポリオールとしては、例えば、ひまし油、やし油などの水酸基含有天然油などが挙げられる。
【0185】
シリコーンポリオールとしては、例えば、上記したアクリルポリオールの共重合において、共重合可能な別の単量体として、ビニル基含有のシリコーン化合物、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが用いられる共重合体、および、末端アルコール変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。
【0186】
フッ素ポリオールとしては、例えば、上記したアクリルポリオールの共重合において、共重合可能な別の単量体としてビニル基含有のフッ素化合物、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンなどが用いられる共重合体などが挙げられる。
【0187】
ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、ポリブタジエンポリオール、部分ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
【0188】
ポリウレタンポリオールは、上記のマクロポリオール(例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールなど)を、イソシアネート基に対する水酸基の当量比(OH/NCO)が1を超過する割合で、上記ポリイソシアネートと反応させることによって、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオール、ポリカーボネートポリウレタンポリオール、あるいは、ポリエステルポリエーテルポリウレタンポリオールなどとして得ることができる。
【0189】
これら高分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0190】
高分子量ポリオールとして、透湿性の観点から、好ましくは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリウレタンポリオールが挙げられ、より好ましくは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、テトラヒドロフランとアルキレンオキサイドとの共重合体、ポリエステルポリオールが挙げられる。
【0191】
また、高分子量ポリオールとして、透湿性の観点から、とりわけ好ましくは、オキシエチレン基を有するポリエーテルポリオールが挙げられ、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンポリプロピレングリコール(ランダムまたはブロック共重合体)、テトラヒドロフランとエチレンオキサイドとの共重合体が挙げられる。
【0192】
高分子量ポリオールの数平均分子量は、例えば、400〜5000、好ましくは、1000〜4000、より好ましくは、1500〜3000である。
【0193】
また、高分子量ポリオールの水酸基価は、例えば、25〜280mgKOH/g、好ましくは、30〜120mgKOH/gである。
【0194】
なお、水酸基価は、JIS K 1557−1のA法またはB法に準拠するアセチル化法やフタル化法などから求めることができる。
【0195】
また、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂を製造するには、上記ポリイソシアネートと、上記高分子量ポリオールと、上記鎖伸長剤とを少なくとも反応させればよく、任意成分として、さらに、その他の鎖伸長剤を配合することもできる。
【0196】
その他の鎖伸長剤としては、例えば、上記した低分子量ポリオールなどが挙げられ、好ましくは、2価アルコールが挙げられる。
【0197】
その他の鎖伸長剤を配合する場合において、その配合割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0198】
そして、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法では、少なくとも、上記ポリイソシアネートと、上記高分子量ポリオールと、上記鎖伸長剤とを反応させる。
【0199】
すなわち、熱可塑性ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネート、高分子量ポリオールおよび鎖伸長剤の反応により、合成される。
【0200】
そして、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法では、例えば、プレポリマー法、ワンショット法などの公知の方法を採用することができる。
【0201】
プレポリマー法では、例えば、まず、ポリイソシアネートと高分子量ポリオールとを反応させて、分子末端にイソシアネート基を有するイソシアネート基末端プレポリマーを合成する。次いで、得られたイソシアネート基末端プレポリマーと、鎖伸長剤とを反応させる。
【0202】
イソシアネート基末端プレポリマーを合成するには、ポリイソシアネートと高分子量ポリオールとを、高分子量ポリオール中の水酸基に対するポリイソシアネート中のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が、例えば、1.1〜20、好ましくは、1.7〜10、さらに好ましくは、2.0〜7.0となるように処方(混合)し、反応容器中にて、例えば、40〜150℃、好ましくは、80〜120℃で、例えば、30秒間〜8時間、好ましくは、30分間〜3時間反応させる。なお、反応終了後には、必要に応じて、未反応のポリイソシアネートを、例えば、蒸留や抽出などの公知の除去手段により、除去することもできる。
【0203】
次いで、得られたイソシアネート基末端プレポリマーと、鎖伸長剤とを反応させるには、イソシアネート基末端プレポリマーと、鎖伸長剤とを、鎖伸長剤中の水酸基に対するイソシアネート基末端プレポリマー中のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が、例えば、0.8〜1.2、好ましくは、0.9〜1.1、より好ましくは、0.98〜1.05となるように処方(混合)し、例えば、40〜280℃、好ましくは、100〜260℃、より好ましくは、120〜240℃で、例えば、30秒間〜12時間、好ましくは、30分間〜4時間反応させる。
【0204】
また、ワンショット法では、例えば、ポリイソシアネートと、高分子量ポリオールおよび鎖伸長剤とを、高分子量ポリオールおよび鎖伸長剤中の水酸基の総量に対する、ポリイソシアネート中のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が、例えば、0.8〜1.2、好ましくは、0.9〜1.1、より好ましくは、0.98〜1.05となるように処方(混合)した後、例えば、40〜280℃、好ましくは、100〜260℃で、例えば、30秒間〜12時間、好ましくは、30分間〜4時間反応させる。なお、反応温度は、一定温度、あるいは、段階的に昇温または冷却することもできる。
【0205】
これらプレポリマー法およびワンショット法において、上記各成分(ポリイソシアネート、高分子量ポリオール、アミド基含有ジオール、イソシアネート基末端プレポリマー、低分子量ポリオールなど)の混合では、特に制限されないが、好ましくは、ディゾルバーなどの混合槽、例えば、循環式の低圧、高圧衝突混合装置、例えば、高速撹拌ミキサー、スタティックミキサー、ニーダー、例えば、単軸または二軸回転式の押出機などの混合装置が、用いられる。
【0206】
また、プレポリマー法およびワンショット法において、水酸基を含有する化合物(高分子量ポリオール、アミド基含有ジオール、および、必要により配合される低分子量ポリオール)は、好ましくは、前処理として、加熱減圧処理され、含水量が低減される。
【0207】
これら水酸基を含有する化合物(高分子量ポリオール、アミド基含有ジオール、および、必要により配合される低分子量ポリオール)それぞれの含水量は、それぞれの総量に対して、例えば、0.05質量%以下、好ましくは0.03質量%以下、より好ましくは0.02質量%以下、通常、0.005質量%以上である。
【0208】
また、プレポリマー法またはワンショット法により、上記各成分(ポリイソシアネート、高分子量ポリオール、アミド基含有ジオール、イソシアネート基末端プレポリマー、低分子量ポリオールなど)を反応(重合)させる方法としては、特に制限されず、公知の重合方法、より具体的には、例えば、溶液重合、水中懸濁重合、非水分散重合、溶融重合(バルク重合)などが挙げられる。好ましくは、溶液重合、非水分散重合、溶融重合が挙げられる。
【0209】
溶液重合では、極性有機溶媒に上記各成分を加え、溶解させるとともに、上記各成分を重合させる。
【0210】
極性有機溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミドなどの非プロトン性極性溶媒などが挙げられる。
【0211】
これら極性有機溶媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0212】
なお、極性有機溶媒の配合割合は、特に制限されず、目的および用途や、反応系の粘度などにより、適宜設定される。
【0213】
非水分散重合では、例えば、低極性有機溶媒に上記各成分を加えるとともに、分散剤を配合し、上記各成分を分散させるとともに、重合させる。
【0214】
低極性有機溶媒としては、例えば、n−ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。
【0215】
これら低極性有機溶媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0216】
なお、低極性有機溶媒の配合割合は、特に制限されず、目的および用途や、反応系の粘度などにより、適宜設定される。
【0217】
分散剤としては、特に制限されないが、例えば、特開2004−169011号公報に記載される分散剤や、例えば、スルホン酸基、カルボン酸基、アミノ基などのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、無機酸塩、有機酸塩などのイオン性の親水基を有する公知の水溶性高分子、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤などの公知の界面活性剤などが挙げられる。
【0218】
溶融重合(バルク重合)では、例えば、窒素気流下において、ポリイソシアネートを撹拌しつつ、これに、高分子量ポリオールおよびアミド基含有ジオール(および、必要により配合される低分子量ポリオール)を加え、上記反応温度に加熱し、上記各成分を溶融させるとともに、重合させる。
【0219】
また、上記の重合方法においては、必要に応じて、例えば、アミン類や有機金属化合物などの公知のウレタン化触媒を添加することができる。
【0220】
アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ビス−(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N−メチルモルホリンなどの3級アミン類、例えば、テトラエチルヒドロキシルアンモニウムなどの4級アンモニウム塩、例えば、イミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類などが挙げられる。
【0221】
有機金属化合物としては、例えば、酢酸錫、オクチル酸錫、オレイン酸錫、ラウリル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジメチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジメルカプチド、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジネオデカノエート、ジオクチル錫ジメルカプチド、ジオクチル錫ジラウリレート、ジブチル錫ジクロリドなどの有機錫系化合物、例えば、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛などの有機鉛化合物、例えば、ナフテン酸ニッケルなどの有機ニッケル化合物、例えば、ナフテン酸コバルトなどの有機コバルト化合物、例えば、オクテン酸銅などの有機銅化合物、例えば、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマスなどの有機ビスマス化合物などが挙げられる。
【0222】
さらに、ウレタン化触媒として、例えば、炭酸カリウム、酢酸カリウム、オクチル酸カリウムなどのカリウム塩が挙げられる。
【0223】
これらウレタン化触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0224】
ウレタン化触媒の配合割合は、特に制限されないが、例えば、高分子量ポリオール100質量部に対して、例えば、0.0001〜0.05質量部、好ましくは、0.001〜0.03質量部である。
【0225】
さらに、このような熱可塑性ポリウレタン樹脂においては、必要に応じて、さらに、公知の添加剤、例えば、可塑剤、発泡剤、ブロッキング防止剤、耐熱安定剤、耐光安定剤、酸化防止剤、離型剤、触媒、さらには、カップリング剤、滑剤、防錆剤、乳白剤、顔料、染料、滑剤、フィラー、加水分解防止剤などを、適宜の割合で配合することができる。これら添加剤は、各成分の1種または2種以上に添加してもよく、また、各成分の製造時に添加してもよく、また、各成分の混合時に添加してもよく、さらには、得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂に添加することもできる。
【0226】
そして、このようにして得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂において、ポリイソシアネートと鎖伸長剤(アミド基含有ジオール)との反応により形成されるハードセグメントの濃度は、例えば、10〜60質量%、好ましくは、25〜50質量%、より好ましくは、30〜45質量%である。
【0227】
ハードセグメント(ポリイソシアネートと鎖伸長剤との反応により形成されるハードセグメント)濃度が上記下限未満である場合には、熱可塑性ポリウレタン樹脂の機械強度が低下するという不具合がある。
【0228】
一方、ハードセグメント(ポリイソシアネートと鎖伸長剤との反応により形成されるハードセグメント)濃度が上記上限を超過する場合には、熱可塑性ポリウレタン樹脂の成形加工性が低下するという不具合がある。
【0229】
なお、ハードセグメント(ポリイソシアネートと鎖伸長剤との反応により形成されるハードセグメント)濃度は、例えば、各成分の配合割合(仕込)から次式により算出することができる。
[アミド基含有ジオールの質量(g)+鎖伸長剤の質量(g)/鎖伸長剤の分子量)×ポリイソシアネートの分子量]÷[(ポリイソシアネートの質量(g)+高分子量ポリオールの質量(g)+鎖伸長剤の質量(g)+その他の成分(任意成分としての低分子量ポリオール、添加剤など)の質量(g))]×100
また、熱可塑性ポリウレタン樹脂において、任意成分として、低分子量ポリオールが配合される場合には、ポリイソシアネートと低分子量ポリオールとの反応により形成されるハードセグメントの濃度は、例えば、1〜50質量%、好ましくは、5〜40質量%、より好ましくは、5〜35質量%である。
【0230】
なお、ハードセグメント(ポリイソシアネートと低分子量ポリオールとの反応により形成されるハードセグメント)濃度は、例えば、各成分の配合割合(仕込)から次式により算出することができる。
[低分子量ポリオールの質量(g)+低分子量ポリオールの質量(g)/低分子量ポリオールの分子量)×ポリイソシアネートの分子量]÷[(ポリイソシアネートの質量(g)+高分子量ポリオールの質量(g)+低分子量ポリオールの質量(g)+その他の成分(必須成分としての鎖伸長剤、添加剤など)の質量(g))]×100
そして、ポリイソシアネートと鎖伸長剤との反応により形成されるハードセグメントの濃度と、ポリイソシアネートと低分子量ポリオールとの反応により形成されるハードセグメントの濃度との総量は、例えば、10〜60質量%、好ましくは、25〜50質量%、より好ましくは、30〜45質量%である。
【0231】
また、このような熱可塑性ポリウレタン樹脂の重量平均分子量(標準ポリスチレンを検量線とするGPC測定による重量平均分子量)は、例えば、50000〜400000、好ましくは、60000〜300000、より好ましくは、80000〜250000である。
【0232】
重量平均分子量が上記範囲であれば、優れた機械強度および耐熱性を確保することができ、また、熱成形における優れた成形安定性を向上させることができる。
【0233】
また、このような熱可塑性ポリウレタン樹脂の軟化温度(JIS K−7196に準拠した熱機械分析(TMA)測定による軟化温度)は、例えば、160℃以上、好ましくは、170℃以上、より好ましくは、180℃以上、通常、250℃以下である。
【0234】
軟化温度が上記範囲であれば、熱可塑性ポリウレタン樹脂の耐熱性および熱安定性を向上させることができ、熱成形における優れた成形安定性を確保することができる。
【0235】
また、このような熱可塑性ポリウレタン樹脂の流動開始温度(流動特性評価装置で測定される流動開始温度)は、例えば、150℃以上、好ましくは、170℃以上、より好ましくは、190℃以上、通常、250℃以下である。
【0236】
また、このような熱可塑性ポリウレタン樹脂の5%熱重量減少温度(測定法:熱重量分析(昇温速度10℃/分、窒素気流下))は、例えば、250℃以上、好ましくは、265℃以上、より好ましくは、305℃以上であり、通常、350℃以下である。
【0237】
また、このような熱可塑性ポリウレタン樹脂において、高分子量ポリオールがオキシエチレン基を含有する場合には、そのオキシエチレン基の含有量が、熱可塑性ポリウレタン樹脂の総量に対して、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上であり、例えば、80質量%以下、好ましくは、60質量%以下である。
【0238】
オキシエチレン基の含有量が上記下限以上であれば、その熱可塑性ポリウレタン樹脂を厚み20μmのフィルムにしたときに、その透湿度を向上させることができる。
【0239】
このような透湿度(JIS L−1099に準拠)としては、例えば、4000g/m・24h以上、好ましくは、10000g/m・24h以上、より好ましくは、40000g/m・24h以上であり、通常、800000g/m・24h以下である。
【0240】
そして、このような熱可塑性ポリウレタン樹脂は、特に制限されず、公知の成形方法、例えば、射出成形、押出成形、プレス成形、キャスト成形などの熱可塑性樹脂の成形加工方法、好ましくは、押出成形、プレス成形、キャスト形成により、例えば、ペレット状、板状、繊維状、ストランド状、フィルム状、シート状、パイプ状、中空状、箱状などの各種形状の成形品に成形することができる。
【0241】
上記成形加工方法のうち、熱可塑性ポリウレタン樹脂の熱溶融成形(射出成形、押出成形、プレス成形など)における成形温度は、熱可塑性ポリウレタン樹脂の熱特性に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、例えば、160〜260℃、好ましくは、175〜245℃である。
【0242】
また、このような方法では、例えば、熱可塑性ポリウレタン樹脂の熱溶融成形において、超臨界二酸化炭素などを導入し、熱可塑性ポリウレタン樹脂中に超臨界流体を拡散および溶解させれば、超臨界二酸化炭素が発泡剤となって、熱可塑性ポリウレタン樹脂を、微細かつ均一なセルからなるマイクロセルラーフォームとして形成することができる。
【0243】
また、熱可塑性ポリウレタン樹脂に、可塑剤(例えば、脂肪族二塩基酸エステル類、リン酸エステル類、エポキシ系可塑剤など)を配合すれば、熱可塑性ポリウレタン樹脂のガラス転移点を低下させ、さらには、粘度を低下させることができる。
【0244】
これにより、熱可塑性ポリウレタン樹脂の射出成形性、押出成形性を向上することができ、成形体の薄肉化、成形体の表面精度の向上、成形温度の低下などを図ることができる。
【0245】
また、キャスト成形では、熱可塑性ポリウレタン樹脂が可溶な有機溶媒、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性極性有機溶媒などを用いて、熱可塑性ポリウレタン樹脂の溶液を調製し、その溶液を、基板に塗工し、例えば、上記非プロトン性極性有機溶媒の沸点以下の温度で、不活性ガス気流下において、非プロトン性極性有機溶媒を揮発除去させることによって、熱可塑性ポリウレタン樹脂をフィルム(キャストフィルム)として成形することができる。
【0246】
また、このようにして得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂は、例えば、公知の紡糸方法(例えば、湿式紡糸、乾式紡糸、溶融紡糸など)により容易に紡糸することができ、弾性繊維とすることができる。
【0247】
さらに、上記の方法などにより得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂の成形品を製造後、その成形品を、さらに、アニール処理することもできる。
【0248】
この方法では、例えば、熱可塑性ポリウレタン樹脂の成形品を、例えば、70〜190℃、好ましくは、80〜180℃において、例えば、10分間〜24時間、好ましくは、1〜20時間アニール処理する。
【0249】
これにより、熱可塑性ポリウレタン樹脂に含まれるハードセグメントの凝集性を向上することができ、機械強度および耐熱性に優れた成形品を得ることができる。
【0250】
そして、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂によれば、透湿度に優れたフィルムを形成できるため、衣料用透湿フィルム、具体的には、例えば、レインコート、ウインドブレーカーなどの製造において、好適に用いられる。
【0251】
さらに、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂は、上記の用途に限定されず、例えば、自動車部品、エレクトロニクス部品、機械・産業部品、電線・ケーブル、ロール、ホース・チューブ、ベルト、フィルム・シート、ラミネート品、コーティング、接着剤、シール材、スポーツ・レジャー用品、靴関連部品、雑貨、介護用品、住宅用品、医療、建材、土木関連、防水材・舗装材、発泡体、スラッシュパウダーなどの各種産業分野において、用いることができる。
【0252】
そして、本発明の鎖伸長剤は、上記一般式(1)で示されるアミド基含有ジオールを含有するとともに、ポリウレタン樹脂の原料成分としての鎖伸長剤として用いられるため、ポリウレタン樹脂中に、上記のアミド基含有ジオールによるハードセグメントを形成することができる。その結果、本発明の鎖伸長剤によれば、優れた機械強度を確保するとともに、優れた熱安定性を備えるポリウレタン樹脂を得ることができる。
【0253】
また、本発明の鎖伸長剤の製造方法によれば、優れた機械強度および熱安定性を備えるポリウレタン樹脂を得ることができる鎖伸長剤を、容易に製造することができる。
【0254】
また、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂では、原料成分として、上記一般式(1)で示されるアミド基含有ジオールが用いられるため、優れた機械強度を確保するとともに、優れた熱安定性を備えることができる。
【実施例】
【0255】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。また、実施例などに用いられる測定方法を、以下に示す。
<重量平均分子量(Mw)>
N,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬工業社製、液体クロマトグラフィー用)に0.01mmo/Lの濃度で臭化リチウム(純正化学社製)を溶解したものを溶離液として使用した。
【0256】
測定試料溶液は上記の溶離液と同じ組成の溶媒に、測定試料を0.25質量%の濃度で溶解して調製した。GPC測定装置(昭和電工社製 商品名:Shodex GPC−101)にGPCカラム(昭和電工社製 商品名:KD−G、KD−806M)を直列に装着し、カラム温度45℃、溶離液の流速0.7mL/minの条件で、示差屈折計(RI)検出器を用いて測定し、予め作成した標準ポリスチレンの検量線から重量平均分子量(Mw)を算出した。
<流動開始温度(単位:℃)>
試料1gを高架式フローテスター(島津製作所社製 型式:CFT−500)に充填し、1mm(径)×10mm(長さ)のノズルを用い、昇温速度5℃/min、荷重100kgfの条件で、流動開始温度を測定した。
<融点(単位:℃)>
試料約4mgを、30℃から300℃の温度範囲で、昇温速度10℃/minの条件でDSC測定した。測定結果から得られたDSC曲線の吸熱ピークの値を融点とした。
<熱重量減少温度(単位:℃)>
熱分析装置(島津製作所製 商品名:TGA−50)を用い、約5mgの試料を白金セルに秤量し、窒素雰囲気下、10℃/minの昇温速度で室温から800℃まで昇温して測定した。200℃を基準として、5%重量減少温度を測定した。
<軟化温度(単位:℃)>
熱機械分析(TMA)装置(Mac Science社製 商品名:TMA4000S)を用いて、JIS K−7196「熱可塑性プラスチックフィルム及びシートの熱機械分析による軟化温度試験方法」に従って、軟化温度を測定した。
【0257】
なお、使用した圧子の直径は1.0mmであり、軟化温度は、窒素気流下、50gfの荷重をかけた状態で、25℃で30分間保持した後、昇温速度5℃/minの条件で測定した。
【0258】
実施例1
下記式(27)で示されるスキーム1に従い、鎖伸長剤(I)を合成した。
【0259】
【化28】

【0260】
具体的には、氷水浴下、1,4−フェニレンジアミン23.5g(0.22mol)を750mLのアセトニトリルに溶かし、その溶液に、炭酸水素ナトリウム74g(0.88mol)を添加し、分散させた。
【0261】
次いで、その分散液の中に、アセトキシアセチルクロリド78g(0.54mol)を30分かけて徐々に滴下し、さらに、4時間攪拌を続けた。反応後、2Lの水中に投入および沈殿させ、濾過して、中間体(I−a)粗結晶68gを得た。
【0262】
次いで、得られた中間体(I−a)全量と、炭酸カリウム152g(1.1mol)とを、テトラヒドロフランおよびメタノール混合溶媒(混合比(体積基準)1:1)600mLに分散し、80℃で5時間攪拌をした。
【0263】
その後、反応液を2Lの水中に分散し、濾過した後、得られた湿結晶を、メタノールで2回再結晶した。得られた結晶を、70℃において7時間真空乾燥し、鎖伸長剤(I)40g(収率:82%)を得た。
【0264】
得られた鎖伸長剤(I)は、下記の通り同定された。
【0265】
H−NMR(270MHz、溶媒:d6−DMSO、基準:TMS)
δ(ppm):9.60(2H,s)、7.60(4H,s)、5.63(2H,t)、3.95(4H,d)
融点:226℃
5%重量減少温度:300℃
実施例2
下記式(28)で示されるスキーム2に従い、鎖伸長剤(I)を合成した。
【0266】
【化29】

【0267】
具体的には、撹拌機を備えた200ml三つ口セパラフラスコに、1,4−フェニレンジアミン2.7g(0.025mol)と、グリコリド17.41g(0.15mol)とを仕込み、120℃で加熱し、4時間反応させ、1,4−フェニレンジアミンを完全に消失させた。その後、室温まで冷却し、三つ口セパラフラスコの内容物(中間体)を固化させた。
【0268】
なお、中間体は、下記の通り同定された。
【0269】
H−NMR(270MHz、溶媒:d6−DMSO、基準:TMS)
δ(ppm):10.04(2H,s)、7.51(4H,s)、5.50(2H,t)、4.91〜4.68(〜28H,m)、4.13(4H,d)
これにより、上記の中間体が、オリゴマー(I−A)(上記式(28)において、x、yの平均値≒7)であることが確認された。
【0270】
次いで、オリゴマー(I−A)に、炭酸カリウム20.7g(0.15mol)とメタノール100mLを添加した後、80℃まで昇温し、4時間攪拌した。
【0271】
その後、反応液を1Lの水中に分散し、濾過した後、得られた湿結晶を、メタノールで2回再結晶した。得られた結晶を、70℃において7時間真空乾燥し、鎖伸長剤(I)3.8g(収率:68%)を得た。
【0272】
得られた鎖伸長剤(I)を、H−NMR(270MHz、溶媒:d6−DMSO、基準:TMS)により構造同定したところ、鎖伸長剤(I)の構造が上記実施例1で得られた鎖伸長剤(I)と同じであることが確認された。
【0273】
実施例3
下記式(29)で示されるスキーム3に従い、鎖伸長剤(II)を合成した。
【0274】
【化30】

【0275】
具体的には、上記の実施例2と同様の操作で、過剰量のL−(−)−ラクチド22g(0.15mol)と、1,4−フェニレンジアミン2.7g(0.025mol)とを反応させ、中間体を得た。なお、中間体をH−NMR(270MHz、溶媒:d6−DMSO、基準:TMS)で構造同定することにより、上記の中間体が、オリゴマー(II−a)(上記式(29)において、x、yの平均値≒6)であることが確認された。
【0276】
次いで、オリゴマー(II−a)に、上記の実施例2と同様に、炭酸カリウムおよびメタノールを添加した後、4時間還流した。
【0277】
その後、反応液を、水中に落とし、酢酸エチルを抽出した。次いで、シリカクロマトグラフィーにより、鎖伸長剤(II)4g(収率:63%)を得た。
【0278】
得られた鎖伸長剤(II)は、下記の通り同定された。
【0279】
H−NMR(270MHz、溶媒:d6−DMSO、基準:TMS)
δ(ppm):9.54(2H,s)、7.62(4H,s)、5.69(2H,d)、4.12(2H,m)、1.30(6H,d)
融点:188℃
5%重量減少温度:291℃
実施例4
下記式(30)で示されるスキーム4に従い、鎖伸長剤(III)を合成した。
【0280】
【化31】

【0281】
以下において、具体的に説明する。
(3−アセトキシプロピオニルクロリド(III−a)の製造)
まず、1000mL三つ口フラスコに、アセチルクロリド300g(3.82mmol)および濃硫酸1gを仕込み、50℃で加熱した後、β−プロピオラクトン89g(1.24mmol)を滴下した。
【0282】
次いで、6時間攪拌して反応させ、その後、過剰なアセチルクロリドを常圧蒸留で除去し、減圧蒸留で精製して、3−アセトキシプロピオニルクロリド(III−a)179g(収率:96%)を得た。
【0283】
3−アセトキシプロピオニルクロリドは、下記の通り同定された。
【0284】
H−NMR(270MHz、溶媒:d6−DMSO、基準:TMS)
δ(ppm):4.36(2H,t)、3.23(2H,t)、2.04(3H,s)
(中間体(III−b)の製造)
1000ml三つ口フラスコに、1,4−フェニレンジアミン51.42g(0.476mol)、炭酸水素ナトリウム160g(1.90mol)、および、アセトニトリル700mLを仕込み、氷水浴下において、上記により得られた3−アセトキシプロピオニルクロリド179g(1.19mol)を30分かけて徐々に滴下し、さらに、4時間攪拌を続けた。
【0285】
反応後、2Lの水中に投入および沈殿させ、濾過して、中間体(III−b)の粗結晶120g(粗収率75%)を得た。
【0286】
中間体(III−b)は、下記の通り同定された。
【0287】
H−NMR(270MHz、溶媒:d6−DMSO、基準:TMS)
δ(ppm):9.97(2H,s)、7.51(4H,s)、4.27(4H,t)、2.64(4H,t)、1.99(6H,s)
(鎖伸長剤(III)の製造)
上記により得られた中間体(III−b)の粗結晶全量と、炭酸カリウム152g(1.1mol)とを、600mLメタノール中に分散し、80℃で5時間攪拌した。
【0288】
その後、反応液を2Lの水中に分散し、濾過した後、得られた湿結晶を、メタノールで2回再結晶した。得られた結晶を、70℃において7時間真空乾燥し、鎖伸長剤(III)60g(収率:66%)を得た。
【0289】
得られた鎖伸長剤(III)は、下記の通り同定された。
【0290】
H−NMR(270MHz、溶媒:d6−DMSO、基準:TMS)
δ(ppm):9.82(2H,s)、7.51(4H,s)、4.68(2H,t)、3.70(4H,d)、2.44(4H,t)
融点:180℃以上分解
5%重量減少温度:185℃
実施例5
下記式(31)で示されるスキーム5に従い、鎖伸長剤(IV)を合成した。
【0291】
【化32】

【0292】
具体的には、窒素雰囲下、1,4−フェニレンジアミン10.8g(0.1mol)とγ−ブチロラクトン17.2g(0.2mol)とを仕込み、140℃で7時間を反応させた。
【0293】
その後、生成物を、水およびメタノール混合溶媒(混合比(体積基準)3:2)で2回再結晶した。得られた結晶を、70℃において6時間真空乾燥し、鎖伸長剤(IV)10g(収率:36%)を得た。
【0294】
得られた鎖伸長剤(IV)は、下記の通り同定された。
【0295】
H−NMR(270MHz、溶媒:d6−DMSO、基準:TMS)
δ(ppm):9.79(2H,s)、7.49(4H,s)、4.50(2H,t)、3.43(4H,m)、3.32(4H,t)、1.72(4H,m)
融点:200℃以上分解
5%重量減少温度:247℃
実施例6
下記式(32)で示されるスキーム6に従い、鎖伸長剤(V)を合成した。
【0296】
【化33】

【0297】
具体的には、上記の実施例5と同様の操作で、窒素雰囲下、1,4−フェニレンジアミン10.8g(0.1mol)とδ−バレロラクトン20g(0.2mol)とを仕込み、110℃で7時間反応させた。
【0298】
その後、生成物を、メタノールで再結晶した。得られた結晶を、70℃において6時間真空乾燥し、鎖伸長剤(V)15g(収率:49%)を得た。
【0299】
得られた鎖伸長剤(V)は、下記の通り同定された。
【0300】
H−NMR(270MHz、溶媒:d6−DMSO、基準:TMS)
δ(ppm):9.78(2H,s)、7.49(4H,s)、4.40(2H,t)、3.41(4H,m)、2.28(4H,t)、1.61(4H,m)、1.43(4H,m)
融点:192℃
5%重量減少温度:267℃
実施例7
下記式(33)で示されるスキーム7に従い、鎖伸長剤(VI)を合成した。
【0301】
【化34】

【0302】
具体的には、上記実施例5と同様の操作で、窒素雰囲下、1,4−フェニレンジアミン21.6g(0.2mol)とε−カプロラクトン45.6g(0.4mol)とを仕込み、140℃で10時間反応させた。
【0303】
その後、生成物を、メタノールおよび酢酸エチル混合溶媒(混合比(体積基準)1:1)により2回再結晶した。得られた結晶を、70℃において6時間真空乾燥し、鎖伸長剤(VI)30g(収率:45%)を得た。
【0304】
得られた鎖伸長剤(VI)は、下記の通り同定された。
【0305】
H−NMR(270MHz、溶媒:d6−DMSO、基準:TMS)
δ(ppm):9.76(2H,s)、7.48(4H,s)、4.35(2H,t)、3.38(4H,m)、2.26(4H,t)、1.58(4H,m)、1.44(4H,m)、1.33(4H,m)
融点:202℃
5%重量減少温度:276℃
実施例8
下記式(34)で示されるスキーム8に従い、鎖伸長剤(VI)を合成した。
【0306】
【化35】

【0307】
以下において、具体的に説明する。
(中間体(VI−a)の製造)
300ml三つ口フラスコに、1,4−フェニレンジアミン5.12g(47.3mmol)、炭酸水素ナトリウム16g(190mmol)およびアセトニトリル150mLを仕込み、氷水浴下、6−ブロモヘキサノイルクロリド25.26g(118.3mmol)を30分間かけて徐々に滴下し、さらに、4時間攪拌を続けた。
【0308】
反応後、1Lの水中に投入および沈殿させ、濾過し、中間体(VI−a)の粗結晶19.5g(粗収率:89%)を得た。
【0309】
中間体(VI−a)は、下記の通り同定された。
【0310】
H−NMR(270MHz、溶媒:d6−DMSO、基準:TMS)
δ(ppm):9.79(2H,s)、7.49(4H,s)、3.54(2H,t)、2.28(4H,t)、1.83(4H,m)、1.61(4H,m)、1.41(4H,m)
(中間体(VI−b)の製造)
上記により得られた中間体(VI−a)の粗結晶17.2g(37.2mmol)、酢酸カリウム27g(274mmol)、および、テトラエチルアンモニウムクロリド620mg(3.74mmol)をジメチルスルホキシド120mLに加え、60℃で5時間攪拌した。
【0311】
その後、反応液を1Lの水中に分散し、中間体(VI−b)の粗結晶15.42g(粗収率:99%)を得た。
【0312】
中間体(VI−b)は、下記の通り同定された。
【0313】
H−NMR(270MHz、溶媒:d6−DMSO、基準:TMS)
δ(ppm):9.78(2H,s)、7.48(4H,s)、3.99(2H,t)、2.28(4H,t)、1.99(6H,s)、1.59(8H,m)、1.35(4H,t)
(鎖伸長剤(VI)の製造)
上記によりえられた中間体(VI−b)15.42g(36.67mmol)、および、炭酸カリウム152g(1.10mol)を、メタノール400mL中に分散し、80℃で4時間攪拌した。
【0314】
その後、反応液を1Lの水中に分散し、濾過した後、得られた湿結晶を、メタノールおよび酢酸エチル混合溶媒(混合比(体積基準)1:1)で2回再結晶した。得られた結晶を、70℃において5時間真空乾燥し、鎖伸長剤(VI)6.5g(収率:53%)を得た。
【0315】
得られた鎖伸長剤(VI)は、下記の通り同定された。
【0316】
H−NMR(270MHz、溶媒:d6−DMSO、基準:TMS)
δ(ppm):9.76(2H,s)、7.48(4H,s)、4.35(2H,t)、3.40(4H,m)、2.26(4H,t)、1.60(4H,m)、1.45(4H,m)、1.35(4H,m)
融点:202℃
5%重量減少温度:276℃
実施例9
下記式(35)で示されるスキーム9に従い、鎖伸長剤(VI)を合成した。
【0317】
【化36】

【0318】
窒素雰囲下、1,4−フェニレンジアミン21.6g(0.2mol)と、過剰量のε−カプロラクトン136.8g(1.2mol)とを仕込み、120℃で反応させた。6時間後、1,4−フェニレンジアミンが消失し、中間体(VI−A)の生成が確認された。
【0319】
次いで、反応系を室温まで冷却し、炭酸カリウム166g(1.2mol)とメタノール500mLとを添加した後、2時間加熱還流させた。
【0320】
その後、2Lの水中に投入および沈殿させ、得られた固体をメタノールおよび酢酸エチル混合溶媒(混合比(体積基準)1:1)により2回再結晶した。得られた結晶を、70℃において6時間真空乾燥し、鎖伸長剤(VI)53g(収率:80%)を得た。
【0321】
実施例10
窒素雰囲気下、撹拌機を備えた500ml三つ口セパラフラスコに、PTG−2000SN(保土谷化学製、数平均分子量1968)29.72g(15.10mmol)と、実施例1において得られた鎖伸長剤(I)7.80g(34.78mmol)とを、脱水ジメチルアセトアミド40mLに溶解させ、100℃で加熱しながら、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)12.66g(50.59mmol)の10mLジメチルアセトアミド溶液を滴下し、さらに、4時間攪拌して、反応させた。
【0322】
反応終了後、溶液を室温まで冷却し、アセトニトリル1000mL中に投入および沈殿させ、濾過し、沈殿物を回収した。
【0323】
その後、得られた沈殿物を、70℃において、一晩、真空乾燥し、熱可塑性ポリウレタン樹脂47.0g(収率:94%)を得た。
【0324】
得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は82600であり、5%熱重量減少温度は306℃であり、流動開始温度は202℃であった。
【0325】
また、得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂を、真空プレス機により、成形温度160〜240℃、成形圧力5.0MPa(2分間)の条件で、80×80×0.3mmのシートとして成形し、このシートを100℃で4時間アニール処理した。得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂シートの軟化温度は212℃であった。
【0326】
実施例11
実施例10と同様に、窒素雰囲気下、撹拌機を備えた500ml三つ口セパラフラスコに、PEG−2000(日本油脂製、数平均分子量2000)14.89g(7.4mmol)と、ポリセリンDC−1800E(日本油脂製、数平均分子量1773)14.68g(8.3mmol)と、実施例1において得られた鎖伸長剤(I)7.80g(34.8mmol)とを、脱水ジメチルアセトアミド40mLに溶解させ、100℃で加熱しながら、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)12.63g(50.5mmol)の10mLジメチルアセトアミド溶液を滴下し、さらに、4時間攪拌して、反応させた。
【0327】
反応終了後、溶液を室温まで冷却し、アセトニトリル1000mL中に投入および沈殿させ、濾過し、沈殿物を回収した。
【0328】
その後、得られた沈殿物を、70℃において、一晩、真空乾燥し、熱可塑性ポリウレタン樹脂42.8g(収率:86%)を得た。
【0329】
得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は91000であり、5%熱重量減少温度は315℃であり、流動開始温度は204℃であった。
【0330】
また、得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂を、真空プレス機により、成形温度160〜240℃、成形圧力5.0MPa(2分間)の条件で、80×80×0.3mmのシートとして成形し、このシートを100℃で4時間アニール処理した。得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂シートの軟化温度は230℃であった。
【0331】
実施例12
実施例10と同様に、窒素雰囲気下、撹拌機を備えた500ml三つ口セパラフラスコに、PEG−2000(日本油脂製,数平均分子量2000)14.89g(7.4mmol)、ポリセリンDC−1800E(日本油脂製、数平均分子量1773)14.68g(8.3mmol)、および、実施例7で得られた鎖伸長剤(VI)10.16g(30.2mmol)を脱水ジメチルアセトアミド40mLに溶解させ、100℃で加熱しながら、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)11.46g(45.8mmol)の10mlDMAc溶液を滴下し、さらに、4.5時間攪拌して、反応させた。
【0332】
反応終了後、溶液を室温まで冷却し、アセトニトリル1000mL中に投入および沈殿させ、濾過し、沈殿物を回収した。
【0333】
その後、得られた沈殿物を、70℃において、一晩、真空乾燥し、熱可塑性ポリウレタン樹脂20.8g(収率:42%)を得た。
【0334】
得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は135000であり、5%熱重量減少温度は317℃であり、流動開始温度は185℃であった。
【0335】
また、得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂を、真空プレス機により、成形温度160〜240℃、成形圧力5.0MPa(2分間)の条件で、80×80×0.3mmのシートとして成形し、このシートを100℃で4時間アニール処理した。得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂シートの軟化温度は198℃であった。
【0336】
比較例1
PEG−2000(日本油脂製、数平均分子量2000)46.48g(23mmol)、ポリセリンDC−1800E(日本油脂製、数平均分子量1773)45.83g(26mmol)、1,4−ブタンジオール13.64g(151mmol)、および、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)50.16g(200mmol)を用いた以外は、実施例10と同様の操作により、熱可塑性ポリウレタン樹脂150g(収率:96%)を得た。
【0337】
得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は219000であり、5%熱重量減少温度は319℃であり、流動開始温度は157℃であった。
【0338】
また、得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂を、真空プレス機により、成形温度160〜240℃、成形圧力5.0MPa(2分間)の条件で、80×80×0.3mmのシートとして成形し、このシートを100℃で4時間アニール処理した。得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂シートの軟化温度は144℃であり、実施例10〜12で得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂シートの軟化温度よりも低いことが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン樹脂の原料成分として用いられ、
下記一般式(1)で示されるアミド基含有ジオールからなることを特徴とする、鎖伸長剤。
【化37】

(式中、Rは、置換基を有していてもよいアリーレン基、RおよびRは、互いに同一または相異なって、水素原子または炭化水素基を示す。また、nおよびmは、互いに同一または相異なって、0以上の整数を示し、xおよびyは、互いに同一または相異なって、1以上の整数を示す。)
【請求項2】
上記式(1)において、RおよびRが、水素原子またはメチル基であることを特徴とする、請求項1に記載の鎖伸長剤。
【請求項3】
上記式(1)において、Rが、置換基を有していてもよいフェニレン基であることを特徴とする、請求項1または2に記載の鎖伸長剤。
【請求項4】
上記式(1)において、xおよびyが、1であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の鎖伸長剤。
【請求項5】
上記式(1)において、nおよびmが、0であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の鎖伸長剤。
【請求項6】
請求項4に記載の鎖伸長剤の製造方法であって、
芳香族ジアミンと、環状エステル化合物とを反応させる工程、および、
前記反応により得られた反応物を加水分解する工程
を備えることを特徴とする、鎖伸長剤の製造方法。
【請求項7】
ポリイソシアネートと、高分子量ポリオールと、請求項1〜5のいずれかに記載の鎖伸長剤とを少なくとも反応させてなることを特徴とする、熱可塑性ポリウレタン樹脂。


【公開番号】特開2011−213866(P2011−213866A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83471(P2010−83471)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】