説明

鎖状脂肪族ジアミンの製造方法

【課題】 ポリアミド樹脂やポリウレタン樹脂のモノマー原料および医農薬原料の中間体として有用な、鎖状脂肪族ジアミンの製造方法を提供する。
【解決手段】 下記一般式(1)で表されるジハロゲノアルカジエンをアミノ化してジアミノアルカジエンを製造する工程、およびジアミノアルカジエンを水素化する工程からなることを特徴とする下記一般式(2)で表される鎖状脂肪族ジアミンの製造方法。
【化1】


(式中、Xはそれぞれ独立して塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、nは3〜6の整数を表す。)
【化2】


(式中、nは9〜12の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鎖状脂肪族ジアミンの新規な製造方法に関する。本発明の鎖状脂肪族ジアミンはポリアミド樹脂やポリウレタン樹脂のモノマー原料及び医農薬原料の中間体として有用なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高耐熱及び低吸水性のポリアミド樹脂が鉛フリーハンダ対応の材料として注目されている。一方、無黄変性、耐候性及び柔軟性のポリウレタン樹脂が塗料や接着剤用途の材料として注目されている。いずれの樹脂も炭素数6以上で、しかも鎖状構造の脂肪族炭化水素を骨格に持ち、末端にアミノ基を有するモノマー原料が用いられている。
【0003】
例えば、炭素数10のデカンジアミンはひまし油のアルカリ溶融によるセバシン酸製造(例えば、非特許文献1参照)、次いでアミノ化工程からなるルートで製造されている。
【0004】
しかし、このルートには反応条件が厳しく、取扱いが難しいアルカリ溶融プロセスが含まれたり、ジカルボン酸構造の中間体を経るためジアミンに転換しにくい等の問題があった。
【0005】
【非特許文献1】1999年版ファインケミカル年鑑、361頁(シーエムシー)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は容易に入手ができ、ポリアミド樹脂やポリウレタン樹脂用モノマーの中間原料及び医農薬原料の中間体として有用な鎖状脂肪族ジアミンの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討を行った結果、鎖状脂肪族ジアミンの新規な製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、下記一般式(2)で表される鎖状脂肪族ジアミンの新規な製造方法に関するものである。
【0008】
【化1】

(式中、nは9〜12の整数を表す。)
以下、本発明について詳細に説明する。
【0009】
本発明の下記一般式(2)で表される鎖状脂肪族ジアミンの新規な製造方法は、下記一般式(1)で表されるジハロゲノアルカジエンをアミノ化してジアミノアルカジエンを製造する工程、およびジアミノアルカジエンを水素化する工程からなる。
【0010】
【化2】

(式中、nは9〜12の整数を表す。)
【0011】
【化3】

(式中、Xはそれぞれ独立して塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、nは3〜6の整数を表す。)
本発明の製造方法で製造される上記一般式(2)で表される鎖状脂肪族ジアミンとしては、例えば、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン等があげられる。
【0012】
本発明の製造方法に用いられる上記一般式(1)で表されるジハロゲノアルカジエンとしては、例えば、1,9−ジクロロ−2,7−ノナジエン、1,9−ジブロモ−2,7−ノナジエン、1,9−ジヨード−2,7−ノナジエン、1−ブロモ−9−クロロ−2,7−ノナジエン、1−ブロモ−9−ヨード−2,7−ノナジエン、1−クロロ−9−ヨード−2,7−ノナジエン、1,10−ジクロロ−2,8−デカジエン、1,10−ジブロモ−2,8−デカジエン、1,10−ジヨード−2,8−デカジエン、1−ブロモ−10−クロロ−2,8−デカジエン、1−ブロモ−10−ヨード−2,8−デカジエン、1−クロロ−10−ヨード−2,8−デカジエン、1,11−ジクロロ−2,9−ウンデカジエン、1,11−ジブロモ−2,9−ウンデカジエン、1,11−ジヨード−2,9−ウンデカジエン、1−ブロモ−11−クロロ−2,9−ウンデカジエン、1−ブロモ−11−ヨード−2,9−ウンデカジエン、1−クロロ−11−ヨード−2,9−ウンデカジエン、1,12−ジクロロ−2,10−ドデカジエン、1,12−ジブロモ−2,10−ドデカジエン、1,12−ジヨード−2,10−ドデカジエン、1−ブロモ−12−クロロ−2,10−ドデカジエン、1−ブロモ−12−ヨード−2,10−ドデカジエン、1−クロロ−12−ヨード−2,10−ドデカジエン等があげられる。これらのうち、簡便に効率よく製造できることから、上記一般式(1)におけるXが両方とも塩素原子である1,9−ジクロロ−2,7−ノナジエン、1,10−ジクロロ−2,8−デカジエン、1,11−ジクロロ−2,9−ウンデカジエン、1,12−ジクロロ−2,10−ドデカジエン、上記一般式(1)におけるXが両方とも臭素原子である1,9−ジブロモ−2,7−ノナジエン、1,10−ジブロモ−2,8−デカジエン、1,11−ジブロモ−2,9−ウンデカジエン、1,12−ジクロロ−2,10−ドデカジエン、上記一般式(1)におけるXが両方ともヨウ素原子である1,9−ジヨード−2,7−ノナジエン、1,10−ジヨード−2,8−デカジエン、1,11−ジヨード−2,9−ウンデカジエン、1,12−ジヨード−2,10−ドデカジエンが好ましく、特に安定性が高いこと及び原料の入手が容易であること等から、上記一般式(1)におけるXが両方とも塩素原子である1,9−ジクロロ−2,7−ノナジエン、1,10−ジクロロ−2,8−デカジエン、1,11−ジクロロ−2,9−ウンデカジエン、1,12−ジクロロ−2,10−ドデカジエンがさらに好ましい。
【0013】
本発明の製造方法に用いられる当該一般式(1)で表されるジハロゲノアルカジエンは、いかなる方法によって製造されていても差し支えないが、例えば、下記一般式(3)で表される1,4−ジハロゲノ−2−ブテンと下記一般式(4)で表される環状オレフィンをメタセシス反応触媒の存在下で開環クロスメタセシス反応を行うことにより簡便に効率的に製造することができる。
【0014】
【化4】

(式中、Xはそれぞれ独立して塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。)
【0015】
【化5】

(式中、mは0〜3の整数を表す。)
ここで、開環クロスメタセシス反応とは、環状オレフィンと非環状オレフィンを原料に用い、環状オレフィンの開環反応と非環状オレフィンとのクロスメタセシス反応が同時に起こることによりカップリング生成物を与える反応であり、例えば、「第5版 実験化学講座18 有機化合物の合成VI 金属を用いる有機合成」(日本化学会編・丸善株式会社)第311頁、第322頁に記載されている。
【0016】
開環クロスメタセシス反応は、アリルハライド同士のメタセシス反応により、1,4−ジハロゲノ−2−ブテンとエチレンが生成し、この1,4−ジハロゲノ−2−ブテンと環状オレフィンとのメタセシス反応により目的のジハロゲノアルカジエンが生成すること等が考えられる。この1,4−ジハロゲノ−2−ブテンとしては、例えば、1,4−ジクロロ−2−ブテン、1,4−ジブロモ−2−ブテン、1,4−ジヨード−2−ブテン、1−クロロ−4−ブロモ−2−ブテン、1−クロロ−4−ヨード−2−ブテン、1−ブロモ−4−ヨード−2−ブテン等があげられる。
【0017】
開環クロスメタセシス反応には、通常、メタセシス反応触媒が用いられる。メタセシス反応触媒は周期表第4〜9族の遷移金属化合物であって、前記のアリルハライドと環状オレフィンとの開環クロスメタセシス反応が進行する触媒であればどのようなものでもよく、メタセシス反応触媒としては、例えば、(i)遷移金属化合物と助触媒として機能するアルキル化剤又はルイス酸との組み合わせによる触媒、(ii)遷移金属−カルベン錯体触媒、(iii)担体に遷移金属化合物を担持した固体触媒等があげられ、例えば、「第5版 実験化学講座18 有機化合物の合成VI 金属を用いる有機合成」(日本化学会編・丸善株式会社)第313頁〜第314頁や、「触媒講座 第8巻(工業触媒反応編2)工業触媒反応I」(触媒学会編・講談社サイエンティフィク)第70〜第71頁に記載されている触媒が使用できる。
【0018】
前記(i)の触媒における遷移金属化合物としては、高い触媒活性と安定性を保持するものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、TiCl、TiBr等のチタン化合物類;VOCl、VOBr等のバナジウム化合物類;NbBr、NbCl、Nb(OEt)等のニオブ化合物類;TaBr、TaCl、Ta(OMe)、Ta(OBu)等のタンタル化合物類;MoBr、MoBr、MoBr、MoCl、MoCl、MoF、MoOCl、MoOF等のモリブデン化合物類;WBr、WCl、WBr、WCl、WCl、WCl、WF、WI、WOBr、WOCl、WOF、WCl(OCCl、W(CO)等のタングステン化合物類;CHReO、ReCl、ReCl(CO)等のレニウム化合物類、RuBr、RuCl、Ru(CO)12等のルテニウム化合物類;RhCl等のロジウム化合物類;IrCl等のイリジウム化合物類等があげられる。
【0019】
前記(i)の触媒における助触媒として機能するアルキル化剤又はルイス酸としては、高い触媒活性を発現できるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリへキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリベンジルアルミニウム、ジエチルアルミニウムモノクロリド、ジ−n−ブチルアルミニウムモノクロリド、ジエチルアルミニウムモノヒドリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン等の有機アルミニウム化合物類;テトラメチルスズ、ジエチルジメチルスズ、テトラエチルスズ、ジブチルジエチルスズ、テトラブチルスズ、テトラオクチルスズ、トリオクチルスズフロリド、トリオクチルスズクロリド、トリオクチルスズブロミド、トリオクチルスズアイオダイド、ジブチルスズジフロリド、ジブチルスズジクロリド、ジブチルスズジブロミド、ジブチルスズジアイオダイド、ブチルスズトリフロリド、ブチルスズトリクロリド、ブチルスズトリブロミド等の有機スズ化合物類;メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、フェニルリチウム等の有機リチウム化合物類;メチルマグネシウムアイオダイド、エチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムブロミド、n−プロピルマグネシウムブロミド、t−ブチルマグネシウムクロリド、アリールマグネシウムクロリド等の有機マグネシウム化合物類;ジエチル亜鉛等の有機亜鉛化合物類;シクロペンチルナトリウム等の有機ナトリウム化合物類;トリメチルホウ素、トリエチルホウ素、トリ−n−ブチルホウ素、トリフェニルホウ素、トリス(パーフルオロフェニル)ホウ素、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(パーフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラキス(パーフルオロフェニル)ボレート等の有機ホウ素化合物類;トリフェニルアンチモン等の有機アンチモン化合物類等があげられる。
【0020】
さらに第3成分として、開環クロスメタセシス反応に影響を及ぼさない程度で、メタノール、エタノール等のアルコール、フェノール等を加えても良い。
【0021】
前記(ii)の遷移金属−カルベン錯体触媒としては、高い触媒活性を発現できるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、W(N−2,6−Pr)(CHBu)(OBu、W(N−2,6−Pr)(CHBu)(OCMeCF、W(N−2,6−Pr)(CHBu)(OCMe(CF、W(N−2,6−Pr)(CHCMePh)(OBu、W(N−2,6−Pr)(CHCMePh)(OCMeCF、W(N−2,6−Pr)(CHCMePh)(OCMe(CF等のタングステン−カルベン錯体類;Mo(N−2,6−Pr)(CHBu)(OBu、Mo(N−2,6−Pr)(CHBu)(OCMeCF、Mo(N−2,6−Pr)(CHBu)(OCMe(CF、Mo(N−2,6−Pr)(CHCMePh)(OBu、Mo(N−2,6−Pr)(CHCMePh)(OCMeCF、Mo(N−2,6−Pr)(CHCMePh)(OCMe(CF、Mo(N−2,6−Pr)(CHCMePh)(BIPHEN)、Mo(N−2,6−Pr)(CHCMePh)(BINO)(THF)等のモリブデン−カルベン錯体類、Re(CBu)(CHBu)(O−2,6−Pr、Re(CBu)(CHBu)(O−2−Bu、Re(CBu)(CHBu)(OCMeCF、Re(CBu)(CHBu)(OCMe(CF、Re(CBu)(CHBu)(O−2,6−Me等のレニウム−カルベン錯体類;ベンジリデン(1,3−ジメシチル−2−イミダゾリジンイリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−2−イミダゾリジンイリデン)(3−メチル−2−ブテンイリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−2−オクタヒドロベンズイミダゾールイリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン[1,3−ビス(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(トリシクロヘキシルホスフィン)(1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジイソプロピルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン)(エトキシメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−2−イミダゾリジンイリデン)ピリジンルテニウムジクロリド、ベンジリデンビス(1,3−ジシクロヘキシル−2−イミダゾリジンイリデン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデンビス(1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(フェニルビニリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(t−ブチルビニリデン)(1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ビス(1,3−ジシクロヘキシル−4−イミダゾリン−2−イリデン)フェニルビニリデンルテニウムジクロリド、ベンジリデン−ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−2−イミダゾリジンイリデン)(o−イソプロポキシフェニルメチレン)ルテニウムジクロリド、トリシクロヘキシルホスフィン(o−イソプロポキシフェニルメチレン)ルテニウムジクロリド、(3−メチル−2−ブテンイリデン)ビス(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(3−メチル−2−ブテンイリデン)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド等のルテニウム−カルベン錯体類等があげられる。
【0022】
ここで、上記式中、Prはイソプロピル基を、Buはtert−ブチル基を、Meはメチル基を、Phはフェニル基を、BIPHENは、5,5',6,6'−テトラメチル−3,3'−ジ−tert−ブチル−1,1'−ビフェニル−2,2'−ジオキシ基を、BINOは、1,1'−ジナフチル−2,2'−ジオキシ基を、THFはテトラヒドロフランを、それぞれ表す。
【0023】
前記(iii)の固体触媒における遷移金属化合物としては、安定性が高いものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、V、Nb、Ta、MoO、MoO、WO、Re、ReO、CHReO、RuO、Rh、Ir等の酸化物類;MoS、MoS、WS、Re等の硫化物類等があげられる。また、担体としては、特に限定されるものではないが、例えば、Al、SiO、TiO、MgO、ZrO、Ta、Nb、WO、SnO、SiO−Al等があげられる。
【0024】
これらのメタセシス反応触媒は単独で使用し得るのみならず、二種以上を混合して用いることも可能である。これらのうち、触媒活性が高く且つ取り扱いの安全性に優れることから、遷移金属−カルベン錯体触媒を使用することが好ましく、さらに好ましくはルテニウム−カルベン錯体類が用いられる。
【0025】
一般式(1)で表されるジハロゲノアルカジエンをアミノ化してジアミノアルカジエンを製造する工程におけるアミノ化反応は、例えば、アンモニア、ヘキサメチレンテトラミン、フタルイミドアルカリ塩、ヒドラジン等が用いられる。ここに、アンモニアとしてはアンモニア水、ガス状のアンモニア、液状のアンモニアのいずれでも差し支えない。フタルイミドアルカリ塩としては、フタルイミドナトリウム塩、フタルイミドカリウム塩、フタルイミドセシウム塩等があげられる。これらのうち、入手が容易で、しかも効率よくアミノ基に変換できることから好ましくはアンモニアが用いられる。
【0026】
アミノ化反応におけるジハロゲノアルカジエンとアンモニア等の仕込み比率は、特に制限されないが、効率的にアミノ化が行えることからジハロゲノアルカジエン1モルに対してアンモニアの量は2〜10000モル、好ましくは2〜2000モル、より好ましくは2〜500モルである。
【0027】
アミノ化反応は溶媒中又は無溶媒で行うことができる。そのような溶媒としては、特に限定するものではないが、例えば、水;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、シクロオクタン、デカヒドロナフタレン等の脂環族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグライム、トリグライム等のエーテル類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類等があげられる。さらに、原料の一方であるアンモニア、又はジハロゲノアルカジエンを溶媒に用いることも可能である。これらの溶媒は単独で使用し得るのみならず、二種以上を混合して用いることも可能である。
【0028】
アミノ化反応における温度は特に制限はなく、例えば、−50〜300℃、好ましくは0〜200℃である。反応圧力は特に制限されないが、通常、絶対圧で0.01〜300kg/cmであり、好ましくは1〜150kg/cmである。また、反応時間は温度や原料の基質濃度に左右され、一概に決めることはできないが、通常、1秒〜100時間である。反応中の雰囲気はアンモニアガスであることが好ましいが、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスによって希釈して用いることができる。
【0029】
アミノ化反応の方法に特に制限はなく、原料であるジハロゲノアルカジエン、アンモニア等および必要であれば溶媒を一度に反応装置に仕込む回分式、原料であるジハロゲノアルカジエン、アンモニアおよび必要であれば溶媒等を連続的に供給すると共に未反応原料、及び反応液を連続的に抜出す連続式のいずれでも実施できる。また、反応状態は特に制限されず、液相または気相状態、さらに気液混合状態で行うことができる。
【0030】
反応終了後、公知の分離法、例えば、蒸留等の方法によりジアミノアルカジエンを得ることができる。また、原料であるジハロゲノアルカジエン、アンモニアは公知の分離法、例えば、蒸留等の方法により回収し、原料として再利用することが可能である。
【0031】
上記のようにアミノ化反応によって得られたジアミノアルカジエンを水素化して鎖状脂肪族ジアミンを製造する。ジアミノデカジエンを水素化して鎖状脂肪族ジアミンを製造する工程における水素化反応は、水素化反応が効率的に進行することが可能であれば、特に限定されるものではなく、例えば、水素化反応触媒の存在下で水素を用いて反応を行う。ここで水素化反応触媒とは周期表第6〜11族の遷移金属からなる触媒であって、具体的にはクロム、モリブデン、タングステン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金等の金属触媒が使用できる。
【0032】
水素化反応触媒は水素化反応が進行する触媒であればどのような形態のものでもよく、例えば、固体触媒、および金属錯体触媒のいずれも使用することができる。固体触媒には(i)遷移金属化合物から調製した固体触媒、および(ii)担体に遷移金属化合物を担持した固体触媒があり、いずれの固体触媒も使用することができる。固体触媒、金属錯体触媒については、例えば、「接触水素化反応」(株式会社東京化学同人)第15頁〜第54頁に記載されている。
【0033】
前記(i)の遷移金属化合物から調製した固体触媒としては、高い触媒活性と安定性を保持するものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、ラネーニッケル触媒、漆原ニッケル触媒、ホウ化ニッケル触媒、ギ酸ニッケル触媒、ニッケルーリン触媒、硫化ニッケル触媒、ラネーコバルト触媒、ラネー銅触媒、ラネー鉄触媒、酸化モリブデン触媒、酸化タングステン触媒、三硫化モリブデン触媒、水酸化ルテニウム触媒、ルテニウム黒触媒、二酸化ルテニウム触媒、水酸化ロジウム触媒、ロジウム黒触媒、酸化ロジウム触媒、ロジウム−白金酸化物触媒、酸化パラジウム触媒、水酸化パラジウム触媒、パラジウム黒触媒、酸化白金触媒、白金黒触媒、オスミウム黒触媒、イリジウム黒触媒、レニウム黒触媒等があげられる。
【0034】
前記(ii)の担体に遷移金属化合物を担持した固体触媒としては、高い触媒活性と安定性を保持するものであれば、特に限定されるものではないが、例えばモリブデン、タングステン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金の金属、酸化物、水酸化物、硫化物等があげられる。担体としては、特に限定されるものではないが、例えば、活性炭、アルミナ、シリカ、チタニア、マグネシア、ジルコニア、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ−アルミナ等があげられる。
【0035】
前記の金属錯体触媒としては、高い触媒活性と安定性を保持するものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)、ジカルボニルジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)、ジ−μ−クロロビス(シクロオクタジエン)ジロジウム(I)、trans−ヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)、ジ−μ−クロロジクロロビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジロジウム(III)、ヘキサデカカルボニルヘキサロジウム、trans−クロロカルボニルビス(トリフェニルホスフィン)イリジウム(I)、ヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ジクロロイリジウム(III)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ドデカカルボニルトリオスミウム(0)、cis−ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)白金(II)、ヘキサカルボニルクロム、ベンゼン−トリカルボニルクロム(0)、ペンタシアノコバルト(II)、オクタカルボニルジコバルト(0)、η−アリルトリス(トリメトキシホスフィン)コバルト等があげられる。
【0036】
これらの水素化反応触媒のうち、取り扱いの容易性や安全性の点から、固体触媒を使用することが好ましく、さらに好ましくは前記(i)の遷移金属化合物から調製した固体触媒のラネーニッケル触媒、ラネーコバルト触媒、ラネー銅触媒、ラネー鉄触媒等、または前記(ii)の担体に遷移金属化合物を担持した固体触媒の担持ニッケル活性炭触媒、担持ニッケルアルミナ触媒、担持ニッケルシリカ触媒、担持パラジウム活性炭触媒、担持パラジウムアルミナ触媒、担持パラジウムシリカ触媒、担持ルテニウム活性炭触媒、担持ルテニウムアルミナ触媒、担持ルテニウムシリカ触媒、担持ロジウム活性炭触媒、担持ロジウムアルミナ触媒、担持ロジウムシリカ触媒、担持レニウム活性炭触媒、担持レニウムアルミナ触媒、担持レニウムシリカ触媒、担持白金活性炭触媒、担持白金アルミナ触媒、担持白金シリカ触媒、担持イリジウム活性炭触媒、担持イリジウムアルミナ触媒、担持イリジウムシリカ触媒等が用いられる。
【0037】
水素化反応は溶媒中又は無溶媒で行うことができる。そのような溶媒としては、特に限定するものではないが、例えば、水;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類;N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグライム、トリグライム等のエーテル等があげられる。さらに、これらの溶媒は単独で使用し得るのみならず、二種以上を混合して用いることも可能である。
【0038】
水素化反応における温度は特に制限はなく、例えば、−20〜300℃、好ましくは0〜200℃である。反応圧力は特に制限されないが、通常、絶対圧で0.01〜300kg/cmであり、好ましくは1〜150kg/cmである。また、反応時間は温度や原料の基質濃度に左右され、一概に決めることはできないが、通常、1分〜100時間である。水素化反応は、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスによって希釈して行うことができる。
【0039】
水素化反応の方法に特に制限はなく、原料であるジアミノアルカジエン、水素化触媒、および必要であれば溶媒を一度に反応装置に仕込む回分式、ジアミノアルカジエン、および必要であれば溶媒等を連続的に供給すると共に未反応原料、及び反応液を連続的に抜出す固定床または懸濁床の連続式のいずれでも実施できる。また、反応状態は特に制限されず、液相または気相状態、さらに気液混合状態で行うことができる。
【0040】
反応終了後、公知の分離法、例えば、蒸留等の方法により鎖状脂肪族ジアミンを得ることができる。また、原料であるジアミノアルカジエンは公知の分離法、例えば、蒸留等の方法により回収し、原料として再利用することが可能である。
【0041】
本発明の鎖状脂肪族ジアミンは、ポリアミド樹脂やポリウレタン樹脂のモノマー原料および医農薬原料の中間体として、好適に使用することができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明は、ポリアミドやポリウレタン樹脂のモノマー原料および医農薬原料の中間体として有用な鎖状脂肪族ジアミンの効率的な製造方法を提供するものであり、工業的にも非常に有用である。
【実施例】
【0043】
以下に、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0044】
以下に実施例に用いた測定方法を示す。
【0045】
<ガスクロマトグラフ分析>
反応液に内標としてテトラデカンを加え、ジーエルサイエンス製TC−1カラム(商品名)が備わったガスクロマトグラフ(島津製作所製GC−1700)に反応液0.4μlを注入し、分析を行った。
【0046】
H−核磁気共鳴吸収(以下、NMRと記す)測定>
核磁気共鳴装置(日本電子製、商品名JNMGX400)を用い、H−NMR測定を行った。
【0047】
<GC−MS測定>
ガスクロマトグラフ質量分析計(GC部;ヒューレット・パッカード製、商品名HP6890、MS部;日本電子製、商品名JMS−700)を用い、測定を行った。
【0048】
合成例1
(1,3−ジメシチル−2−イミダゾリジンイリデン)(o−イソプロポキシフェニルメチレン)ルテニウムジクロリド(Aldrich製、商品名Hoveyda−Grubbs Catalyst 2nd Generation)6.8mg(10.9μmol)とジクロロメタン20mlを50mlのシュレンク管に入れた。次いでシクロペンテン2.11g(31.0mmol)を加え、さらに、1,4−ジクロロ−2−ブテン(cis体:trans体=36:64)1.54g(12.3mmol)を加えた。シュレンク管をオイルバス中で40℃に加温し、3時間攪拌することにより開環クロスメタセシス反応を行った。反応終了後、シュレンク管を冷却し、反応液を得た。
【0049】
シリカゲル(和光純薬工業製、商品名ワコーゲル)が充填されたカラムクロマトグラフに反応液を入れ、ヘキサンとジクロロメタンの混合物(体積比2:1)300mlで展開し、反応液から触媒を除去した。得られた液を真空蒸留(40℃、4mmHgにより、無色透明液体を分離した。
【0050】
得られた液体のH−NMRおよびGC-MS測定を行った。
【0051】
H−NMR(CDCl溶媒)測定の結果、δ1.46〜1.55ppm(m)に炭素鎖中央の3個のメチレン基の内、中央1個のメチレン基に基づくピーク、δ2.00〜2.10ppm(m)に炭素鎖中央の3個のメチレン基の内、二重結合に隣接する2個のメチレン基に基づくピーク、δ4.06ppm(d)に塩素原子に隣接する炭素差末端の2個のメチレン基に基づくピーク、δ5.60〜5.75ppm(m)に二重結合部位の4個の水素原子に基づくピークが観察された。
【0052】
GC−MS測定の結果、主成分はm/e192と194に分子イオンピークが確認された。
【0053】
これらの結果から、この液体は1,9−ジクロロ−2,7−ノナジエンと同定された。
【0054】
一方、反応液をガスクロマトグラフで分析した結果、アリルクロライドの転化率は55.3%、1,9−ジクロロ−2,7−ノナジエンの選択率は73.3%であった。
【0055】
合成例2
(1,3−ジメシチル−2−イミダゾリジンイリデン)(o−イソプロポキシフェニルメチレン)ルテニウムジクロリド(Aldrich製、商品名Hoveyda−Grubbs Catalyst 2nd Generation)6.8mg(10.9μmol)を50mlのシュレンク管に入れた。次いでシクロヘキセン18.0g(220mmol)を加え、さらに、1,4−ジクロロ−2−ブテン(cis体:trans体=36:64)1.54g(12.3mmol)を加えた。シュレンク管をオイルバス中で80℃に加温し、3時間攪拌することにより開環クロスメタセシス反応を行った。反応終了後、シュレンク管を冷却し、反応液を得た。
【0056】
シリカゲル(和光純薬工業製、商品名ワコーゲル)が充填されたカラムクロマトグラフに反応液を入れ、ヘキサンとジクロロメタンの混合物(体積比2:1)300mlで展開し、反応液から触媒を除去した。得られた液を真空蒸留(40℃、4mmHgにより、無色透明液体を分離した。ガスクロマトグラフ分析から、生成物の純度は98%であった。
【0057】
得られた液体のH−NMR測定及びGC−MS測定を行った。
【0058】
H−NMR(CDCl溶媒)測定の結果、δ1.33〜1.46ppm(m)に炭素鎖中央の4個のメチレン基の内、中央2個のメチレン基に基づくピーク、δ2.01〜2.17ppm(m)に炭素鎖中央の4個のメチレン基の内、二重結合に隣接する2個のメチレン基に基づくピーク、δ4.03ppm(d)及びδ4.09ppm(d)に塩素原子に隣接する炭素鎖末端の2個のメチレン基に基づくピーク、δ5.55〜5.82ppm(m)に二重結合部位の4個の水素原子に基づくピークが観察された。なお、δ4.03ppm(d)及びδ4.09ppm(d)のピークは幾何異性の構造(シス体、トランス体)に基づくピークであった。
【0059】
また、GC−MS測定の結果、m/e206と208に分子イオンピークが確認された。
【0060】
これらの結果から、この液体は1,10−ジクロロ−2,8−デカジエンと同定された。
【0061】
一方、反応液をガスクロマトグラフで分析した結果、1,4−ジクロロ−2−ブテンの転化率は18.2%、1,10−ジクロロ−2,8−デカジエンの選択率は90.4%であった。
【0062】
合成例3
(1,3−ジメシチル−2−イミダゾリジンイリデン)(o−イソプロポキシフェニルメチレン)ルテニウムジクロリド(Aldrich製、商品名Hoveyda−Grubbs Catalyst 2nd Generation)6.8mg(10.9μmol)とジクロロメタン20mlを50mlのシュレンク管に入れた。次いでシクロヘプテン2.10g(22.0mmol)を加え、さらに、1,4−ジクロロ−2−ブテン(cis体:trans体=36:64)1.30g(10.3mmol)を加えた。シュレンク管をオイルバス中で80℃に加温し、3時間攪拌することにより開環クロスメタセシス反応を行った。反応終了後、シュレンク管を冷却し、反応液を得た。
【0063】
シリカゲル(和光純薬工業製、商品名ワコーゲル)が充填されたカラムクロマトグラフに反応液を入れ、ヘキサンとジクロロメタンの混合物(体積比2:1)300mlで展開し、反応液から触媒を除去した。得られた液を真空蒸留(40℃、4mmHgにより、無色透明液体を分離した。ガスクロマトグラフ分析から、生成物の純度は97%であった。
【0064】
得られた液体のH−NMR測定及びGC−MS測定を行った。
【0065】
H−NMR(CDCl溶媒)測定の結果、δ1.12〜1.23ppm(m)に炭素鎖中央の5個のメチレン基の内、中央1個のメチレン基に基づくピーク、δ1.36〜1.46ppm(m)に炭素鎖中央の5個のメチレン基の内、中央から2番目の2個のメチレン基に基づくピーク、δ2.00〜2.08ppm(m)に炭素鎖中央の5個のメチレン基の内、二重結合に隣接する2個のメチレン基に基づくピーク、δ4.03ppm(d)に塩素原子に隣接する炭素鎖末端の2個のメチレン基に基づくピーク、δ5.65〜5.77ppm(m)に二重結合部位の4個の水素原子に基づくピークが観察された。
【0066】
GC−MS測定の結果、主成分はm/e220と222に分子イオンピークが確認された。
【0067】
これらの結果から、この液体は1,11−ジクロロ−2,9−ウンデカジエンと同定された。
【0068】
一方、反応液をガスクロマトグラフで分析した結果、1,4−ジクロロ−2−ブテンの転化率は82.1%、1,11−ジクロロ−2,9−ウンデカジエンの選択率は63.2%であった。
【0069】
合成例4
(1,3−ジメシチル−2−イミダゾリジンイリデン)(o−イソプロポキシフェニルメチレン)ルテニウムジクロリド(Aldrich製、商品名Hoveyda−Grubbs Catalyst 2nd Generation)6.8mg(10.9μmol)とジクロロメタン20mlを50mlのシュレンク管に入れた。次いでシクロオクテン2.93g(26.7mmol)を加え、さらに、1,4−ジクロロ−2−ブテン(cis体:trans体=36:64)1.21g(9.7mmol)を加えた。シュレンク管をオイルバス中で80℃に加温し、3時間攪拌することにより開環クロスメタセシス反応を行った。反応終了後、シュレンク管を冷却し、反応液を得た。
【0070】
シリカゲル(和光純薬工業製、商品名ワコーゲル)が充填されたカラムクロマトグラフに反応液を入れ、ヘキサンとジクロロメタンの混合物(体積比2:1)300mlで展開し、反応液から触媒を除去した。得られた液を真空蒸留(40℃、4mmHgにより、無色透明液体を分離した。ガスクロマトグラフ分析から、生成物の純度は95%であった。
【0071】
得られた液体のH−NMR測定及びGC−MS測定を行った。
【0072】
H−NMR(CDCl溶媒)測定の結果、δ1.25〜1.37ppm(m)に炭素鎖中央の6個のメチレン基の内、中央4個のメチレン基に基づくピーク、δ2.05〜2.13ppm(m)に炭素鎖中央の6個のメチレン基の内、二重結合に隣接する2個のメチレン基に基づくピーク、δ4.05ppm(d)に塩素原子に隣接する炭素鎖末端の2個のメチレン基に基づくピーク、δ5.65〜5.78ppm(m)に二重結合部位の4個の水素原子に基づくピークが観察された。
【0073】
反応液のGC−MS測定の結果、主成分はm/e234と236に分子イオンピークが確認された。
【0074】
これらの結果から、この液体は1,12−ジクロロ−2,10−ドデカジエンと同定された。
【0075】
一方、反応液をガスクロマトグラフで分析した結果、1,4−ジクロロ−2−ブテンの転化率は92.5%、1,12−ジクロロ−2,10−ドデカジエンの選択率は56.6%であった。
【0076】
実施例1
300mlのステンレス製オートクレーブに蒸留水34gと1,4−ジオキサン130gを入れ密閉した。窒素でオートクレーブ内を置換した後、液体アンモニア60gを窒素で圧入した。その後、温度を上げてオートクレーブ内の温度を140℃、オートクレーブ内の圧力を4.5MPaに維持した。
【0077】
合成例1で得られた1,9−ジクロロ−2,7−ノナジエン1.5gを上記オートクレーブ内に窒素で圧入して反応を開始した。30分後、オートクレーブを氷冷して温度を室温まで下げた。その後、オートクレーブを開放して反応液を回収した。
【0078】
2M水酸化ナトリウム水溶液8.2mlを添加した後、生成物をGC−MSで分析した結果、m/eに154の分子イオンピークが確認された。
【0079】
ガスクロマトグラフで分析した結果、1,9−ジクロロ−2,7−ノナジエンは完全に転化し、1,9−ジアミノ−2,7−ノナジエンの選択率は93%であった。
【0080】
実施例2
50mlの2口ナスフラスコにエタノール3mlと水素化反応触媒としてエヌ・イー ケムキャット社製5wt%Pt/C0.01gを入れて、窒素置換した。その後、水素を15ml/minでフラスコに供給して、50℃で2時間還元処理を行った。
【0081】
その後フラスコ内の温度を40℃に下げ、実施例1で得られた1,9−ジアミノ−2,7−ノナジエン0.03gを添加した。18時間後、反応液を取り出し、ガスクロマトグラフで分析した結果、1,9−ジアミノ−2,7−ノナジエンは完全に転化し、1,9−ノナンジアミンの選択率は90%であった。
【0082】
実施例3
300mlのステンレス製オートクレーブに蒸留水34gと1,4−ジオキサン130gを入れ密閉した。窒素でオートクレーブ内を置換した後、液体アンモニア60gを窒素で圧入した。その後、温度を上げてオートクレーブ内の温度を140℃、オートクレーブ内の圧力を4.5MPaに維持した。
【0083】
合成例2で得られた1,10−ジクロロ−2,8−デカジエン1.7gを上記オートクレーブ内に窒素で圧入して反応を開始した。30分後、オートクレーブを氷冷して温度を室温まで下げた。その後、オートクレーブを開放して反応液を回収した。
【0084】
2M水酸化ナトリウム水溶液8.2mlを添加した後、生成物をGC−MSで分析した結果、m/eに168の分子イオンピークが確認された。
【0085】
ガスクロマトグラフで分析した結果、1,10−ジクロロ−2,8−デカジエンは完全に転化し、1,10−ジアミノ−2,8−デカジエンの選択率は95%であった。
【0086】
実施例4
300mlのステンレス製オートクレーブに蒸留水34gと1,4−ジオキサン130gを入れ密閉した。窒素でオートクレーブ内を置換した後、液体アンモニア37gを窒素で圧入した。その後、温度を上げてオートクレーブ内の温度を100℃、オートクレーブ内の圧力を2.0MPaに維持した。
【0087】
合成例2で得られた1,10−ジクロロ−2,8−デカジエン1.6gを上記オートクレーブ内に窒素で圧入して反応を開始した。1時間後、オートクレーブを氷冷して温度を室温まで下げた。その後、オートクレーブを開放して反応液を回収した。
【0088】
2M水酸化ナトリウム水溶液8.2mlを添加した後、ガスクロマトグラフで分析した結果、1,10−ジクロロ−2,8−デカジエンは完全に転化し、1,10−ジアミノ−2,8−デカジエンの選択率は85%であった。
【0089】
実施例5
50mlの2口ナスフラスコにエタノール3mlと水素化反応触媒としてエヌ・イー ケムキャット社製5wt%Pt/C0.01gを入れて、窒素置換した。その後、水素を15ml/minでフラスコに供給して、50℃で2時間還元処理を行った。
【0090】
その後フラスコ内の温度を40℃に下げ、実施例3で得られた1,10−ジアミノ−2,8−デカジエン0.03gを添加した。18時間後、反応液を取り出し、ガスクロマトグラフで分析した結果、1,10−ジアミノ−2,8−デカジエンは完全に転化し、1,10−デカンジアミンの選択率は90%であった。
【0091】
実施例6
水素化反応触媒をエヌ・イー ケムキャット社製5wt%Ru/Cに換えた以外は実施例5と同様に水素化反応を行った。ガスクロマトグラフで分析した結果、1,10−ジアミノ−2,8−デカジエンは完全に転化し、1,10−デカンジアミンの選択率は95%であった。
【0092】
実施例7
水素化反応触媒を日興リカ社製ラネーニッケル0.3gに換えた以外は実施例5と同様に水素化反応を行った。ガスクロマトグラフで分析した結果、1,10−ジアミノ−2,8−デカジエンは完全に転化し、1,10−デカンジアミンの選択率は90%であった。
【0093】
実施例8
300mlのステンレス製オートクレーブに蒸留水34gと1,4−ジオキサン130gを入れ密閉した。窒素でオートクレーブ内を置換した後、液体アンモニア60gを窒素で圧入した。その後、温度を上げてオートクレーブ内の温度を140℃、オートクレーブ内の圧力を4.5MPaに維持した。
【0094】
合成例3で得られた1,11−ジクロロ−2,9−ウンデカジエン1.8gを上記オートクレーブ内に窒素で圧入して反応を開始した。30分後、オートクレーブを氷冷して温度を室温まで下げた。その後、オートクレーブを開放して反応液を回収した。
【0095】
2M水酸化ナトリウム水溶液8.2mlを添加した後、生成物をGC−MSで分析した結果、m/eに182の分子イオンピークが確認された。
【0096】
ガスクロマトグラフで分析した結果、1,11−ジクロロ−2,9−ウンデカジエンは完全に転化し、1,11−ジアミノ−2,9−ウンデカジエンの選択率は94%であった。
【0097】
実施例9
50mlの2口ナスフラスコにエタノール3mlと水素化反応触媒としてエヌ・イー ケムキャット社製5wt%Pt/C0.01gを入れて、窒素置換した。その後、水素を15ml/minでフラスコに供給して、50℃で2時間還元処理を行った。
【0098】
その後フラスコ内の温度を40℃に下げ、実施例8で得られた1,11−ジアミノ−2,9−ウンデカジエン0.03gを添加した。18時間後、反応液を取り出し、ガスクロマトグラフで分析した結果、1,11−ジアミノ−2,9−ウンデカジエンは完全に転化し、1,11−ウンデカンジアミンの選択率は90%であった。
【0099】
実施例10
1,11−ジアミノ−2,9−ウンデカジエン0.03g、水素化反応触媒をエヌ・イー ケムキャット社製5wt%Ru/Cに換えた以外は実施例9と同様に水素化反応を行った。ガスクロマトグラフで分析した結果、1,11−ジアミノ−2,9−ウンデカジエンは完全に転化し、1,11−ウンデカンジアミンの選択率は94%であった。
【0100】
実施例11
1,11−ジアミノ−2,9−ウンデカジエン0.03g、水素化反応触媒を日興リカ社製ラネーニッケル0.3gに換えた以外は実施例9と同様に水素化反応を行った。ガスクロマトグラフで分析した結果、1,11−ジアミノ−2,9−ウンデカジエンは完全に転化し、1,11−ウンデカンジアミンの選択率は90%であった。
【0101】
実施例12
300mlのステンレス製オートクレーブに蒸留水34gと1,4−ジオキサン130gを入れ密閉した。窒素でオートクレーブ内を置換した後、液体アンモニア60gを窒素で圧入した。その後、温度を上げてオートクレーブ内の温度を140℃、オートクレーブ内の圧力を4.5MPaに維持した。
【0102】
合成例4で得られた1,12−ジクロロ−2,10−ドデカジエン1.9gを上記オートクレーブ内に窒素で圧入して反応を開始した。30分後、オートクレーブを氷冷して温度を室温まで下げた。その後、オートクレーブを開放して反応液を回収した。
【0103】
2M水酸化ナトリウム水溶液8.2mlを添加した後、生成物をGC−MSで分析した結果、m/eに196の分子イオンピークが確認された。
【0104】
ガスクロマトグラフで分析した結果、1,12−ジクロロ−2,10−ドデカジエンは完全に転化し、1,12−ジアミノ−2,10−ドデカジエンの選択率は94%であった。
【0105】
実施例13
50mlの2口ナスフラスコにエタノール3mlと水素化反応触媒としてエヌ・イー ケムキャット社製5wt%Pt/C0.01gを入れて、窒素置換した。その後、水素を15ml/minでフラスコに供給して、50℃で2時間還元処理を行った。
【0106】
その後フラスコ内の温度を40℃に下げ、実施例12で得られた1,12−ジアミノ−2,10−ドデカジエン0.03gを添加した。18時間後、反応液を取り出し、ガスクロマトグラフで分析した結果、1,12−ジアミノ−2,0−ドデカジエンは完全に転化し、1,12−ドデカンジアミンの選択率は90%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるジハロゲノアルカジエンをアミノ化してジアミノアルカジエンを製造する工程、およびジアミノアルカジエンを水素化する工程からなることを特徴とする下記一般式(2)で表される鎖状脂肪族ジアミンの製造方法。
【化1】

(式中、Xはそれぞれ独立して塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表し、nは3〜6の整数を表す。)
【化2】

(式中、nは9〜12の整数を表す。)
【請求項2】
一般式(1)におけるXが両方とも塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であることを特徴とする請求項1に記載の鎖状脂肪族ジアミンの製造方法。
【請求項3】
アミノ化してジアミノアルカジエンを製造する工程がアンモニアを用いて反応させることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかの項に記載の鎖状脂肪族ジアミンの製造方法。
【請求項4】
ジアミノアルカジエンを水素化する工程が水素化反応触媒の存在下に水素を用いて反応させることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかの項に記載の鎖状脂肪族ジアミンの製造方法。
【請求項5】
水素化反応触媒が固体触媒であることを特徴とする請求項4に記載の鎖状脂肪族ジアミンの製造方法。

【公開番号】特開2009−7316(P2009−7316A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172184(P2007−172184)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】