鎮痛のためのブプレノルフィン経皮投与計画
悪心、嘔吐又は他の有害作用を増加させることなく迅速な疼痛寛解を達成するブプレノルフィンの投与計画を記載する。(1)約5日以下である第一投与期間、第一のブプレノルフィン含有経皮剤形を、(2)5日以下である第二投与期間、前記第一剤形と同じ用量のブプレノルフィン又は前記第一剤形より多い用量のブプレノルフィンを含む第二のブプレノルフィン含有経皮剤形を;及び(3)第三投与期間、前記第二剤形より多い用量のブプレノルフィンを含む第三のブプレノルフィン含有経皮剤形を被験者に投与することを含む、慢性疼痛を治療するためのブプレノルフィン投与計画も記載する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2002年12月13日出願の米国特許仮出願第60/433,423号の恩典を請求するものである。
【0002】
技術分野
本発明は、慢性疼痛の治療に有効な投与計画に関する。本計画は、上昇する用量のブプレノルフィンを含む1シリーズの経皮剤形を患者に投与することを含む。具体的には、高齢者高血圧被験者を含む高齢者患者における疼痛の治療、及び呼吸器疾患患者の治療に関する。本発明は、例えば、慢性閉塞性肺疾患、反応性気道疾患、心疾患、脊柱側弯症、脳性麻痺、若年性関節炎、又は術後疼痛に罹患しているものを含む、危険度が高い若年及び小児集団における疼痛の治療にも関する。
【0003】
背景技術
米国成人人口の約9%が、中等度から重度の癌無関連慢性疼痛に罹患していることが推定されている(American Academy of Pain Medicine, 2001)。1ヵ月より長く続く疼痛と定義することができる(Bonica, Semin Anesth 1986, 5 : 82-99)慢性疼痛は、常用の疼痛制御法では効果がでにくい、たゆまぬ持続性疼痛と説明することができる。9千万人もの米国人が、慢性疼痛に罹患しており、そのうち6千万人までが、数日から数年にわたる期間、一部又は完全に無力化している可能性がある(Bonica, Semin Anesth 1986, 5 : 82-99)。
【0004】
慢性疼痛は、幾つかの方法で分類することができる。1つの大まかな分類では、生理学的メカニズムの観点から説明できる体因性疼痛を、心理学的観点でより良好に理解される心因性疼痛と区別している。推定される病因による疼痛のさらなる分類が、関連の分類法によって試みられている。例えば、侵害受容器性疼痛は、体性又は内臓性、いずれかの疼痛感受性神経線維の活性化に起因する。体性神経が関与する場合、その疼痛は、典型的にはうずく痛み又は圧迫されるような痛みとして経験される。求心路遮断痛は、求心性経路の遮断をもたらす神経組織損傷に起因するものであり、交感神経遮断に対する反応を基にさらに区別することができる。最後に、心因性疼痛は、心理的な原因に起因するものであり、神経受容器性及び神経原性のものではない。
【0005】
長期に及ぶ疼痛は、その適応性のある生物学的役割を喪失させる。植物性兆候、例えば、倦怠、睡眠障害、食欲低下、食物に対する嗜好の喪失、体重減少、性欲減退及び便秘が、次第に発現する。抑うつ的情動が目立ってくることもある。特に、多くの患者において、精神的障害のほうが疼痛の継続的知覚より彼らの生活にとって破壊的である。
【0006】
慢性疼痛の罹患率は、高齢者(Mobily, J Aging Health 1994, 6 : 139-154; Crook et al., Pain 1984, 18 : 299-314)及び手術後の患者(Crook et al., Pain 1984, 18 : 299-314; Perttunen et al., Acta Anaesthesiol Scand 1999, 43 : 563-567; Callesen et al., Br J Surg 1999, 86:1528-1531)などの特定の集団において特に高い。高齢者の中で、地域社会で生活している人の25%から50%が、疼痛に罹患しており、ナーシングホームで生活している人の49%から83%が、日常生活の活動を妨げる疼痛に罹患していると推定されている(Ferrel and Ferrell, Compr Ther 1991, 17 : 53-58; Ferrell, Ann Ther Med 1995, 123: 681-687)。
【0007】
多種多様な薬剤(例えば、非ステロイド性抗炎症薬、アセトアミノフェン)を高齢者及び他の集団における慢性疼痛の治療に使用することができる(Brusso and Brose, Ann Rev. Med, 1998, 49 : 123-133)が、依然としてオピオイドがこの状態の重要な薬物療法源である(Cherny, J. Oncol Manag 2000, 9 : 8-15)。オピオイドは、オピオイド療法の便宜を増し、潜在的副作用を多少低下させる可能性がある経皮的制御送達(Ahmedzai, Eur. J. Cancer 1997, 33 : 58-514; Jeal and Benfield, Drugs 1997, 53 : 109-138; Mercadente, Cancer 1999, 86 : 1856-66)を含む様々な剤形で、投与することができる。このアプローチの利点には、数日毎に1回の適用、及び起立性低血圧などの有害事象をもたらすことがある高い血漿中薬物ピーク濃度の回避が挙げられる(Dayer et al., Drugs 1997, 53 : 18-24; Merecadante and Fulfaro, Oncology 1999, 13 : 215-220,225)。
【0008】
例えば、フェンタニールを投与するためのデュラゲシック(Duragesic)を含む、オピオイド鎮痛薬が活性成分である経皮送達システムは、市販されている。デュラゲシックパッチは、48時間から72時間(2から3日)まで十分な鎮痛をもたらすと言われている。
【0009】
経皮剤形での高齢者の治療では、それより若い人々に対する高齢者の皮膚の著しい変化を考慮しなければならない。例えば、高齢者では皮膚の厚さが減少し、皮脂分泌が減少する(Seindenari et al., Skin Pharmacol 1994, 7 : 201-209; Jacobsen et al., J Invest Dermatol 1985, 85 : 483-485)。老年期では皮膚のコラーゲン線維数が減少し(Lovell et al., Br J Dermatol 1987, 117: 419-428; Moragas et al., Analyt Quant Cytol Histol 1998, 20 : 493-499)、また皮膚への血流が減少する(Rooke et al., J Appl Physiol 1994, 77 : 11-14; Weiss et al, Age Ageing 1992, 21 : 237-241)。
【0010】
ブプレノルフィンは、若年患者においても、高齢者患者においても、静脈内経路、硬膜外経路、クモ膜下経路又は舌下経路を含む多数の異なる投与経路により送達したときに広範な患者における疼痛制御に有効であることが証明されている、μ−オピオイド受容体の強力な部分作動薬である(Inagaki et al. , Anesth Analg 1996, 83 : 530-536; Brema et al., Int J Clin Pharmacol Res 1996, 16 : 109-116; Capogna et al., Anaesthesia 1988, 43 : 128-130; Adrianensen et al., Acta Anaesthesiol Belg 1985, 36 : 33-40; Tauzin-Fin et al., Eur J Anaesthesiol 1998, 15 : 147-152; Nasar et al., Curr Med Res Opin 1986, 10 : 251-255)。ブプレノルフィンの幾つかのタイプの経皮製剤が、文献に報告されている。例えば、ハイル(Hille)らの米国特許第5,240,711号、ヒダカ(Hidaka)らの米国特許第5,225,199号、シャルマ(Sharma)らの米国特許第5,069,909号、チャン(Chien)らの米国特許第4,806,341号、ドラスト(Drust)らの米国特許第5,026,556号、コチンケ(Kochinke)らの米国特許第5,613,958号及びレダー(Reder)らの米国特許第5,968,547号を参照のこと。ローマン・セラピエ・システム社(Lohmann Therapie-Systeme GmbH & Co.)製のブプレノルフィン経皮送達システムが、商標名TRANSTEC(登録商標)で、現在、欧州連合において販売されている。これらのパッチは、20、30及び40mgのブプレノルフィンを含有し、近似的送達率、すなわち「流」速は、それぞれ35、52.5及び70μg/時である。しかし、現行のブプレノルフィン経皮システムは、7日の投与期間で処方される。これでは、漸増用量を必要とする患者が疼痛寛解が有効であるレベルに達するために、数週間かかることもある。
【0011】
慢性疼痛は、小児集団においても有意な問題であり、また慢性疼痛に随伴する肉体的及び精神的症状は、全健康に影響を及ぼすことがあり、成人慢性疼痛の発現の素因をもたらすこともある。小児において、慢性疼痛は、若年性関節炎、脳性麻痺、脊柱彎曲症、術後性のもの、及び癌を含む様々な病状によって引き起こされる。
【0012】
青年期及び若年性脊柱側弯症は、前頭面における側方弯曲によって特徴づけられる脊柱異常である。脊柱手術後の疼痛管理法には、静脈内注射、経口投与、患者管理型鎮痛薬送達システム、及び硬膜外カテーテル薬物送達が挙げられる。一般に、患者は、術後2〜4日間、これらの治療を併用し、その後は一般に経口鎮痛薬で十分である。しかし、残留疼痛を制御するために、術後3ヶ月以下の疼痛投与が必要である。
【0013】
若年性関節炎(JA)は、通常は16歳未満の小児患者を罹患させる、また多くの場合慢性疼痛を随伴する慢性関節炎性疾患を指す。JAは、関節の炎症が主症状である別の状態を包含し、再発と寛解のサイクルによってさらに特徴付けられる。現行の治療法には、腫脹を軽減するための治療、疾患関節の充分な動きを維持するための治療、疼痛を寛解するための治療、及び合併症を特定、治療及び予防するための処置が挙げられる。現在使用されている薬物には、非ステロイド性抗炎症薬(イブプロフェン及びナプロキセンなど)、メトトレキセート、スルファサラジン、ペニシラミン、及びヒドロキシクロロキンが挙げられる。ステロイド経口投与は有効であるが、長期使用に伴う有害な副作用を有する。疾患関節へのステロイド注射も有効であり得るが、この送達方式は、多くの場合、小児には問題が多い。エンブレル(Enbrel)などの新しい抗炎症モノクローナル抗体は、多くの治療耐性患者に間欠的寛解をもたらしている。
【0014】
脳性麻痺は、病因不明の疾患の一定範囲に付けられた集合名である。脳性麻痺に罹患している小児患者にとって共通の目標は、筋痙攣の管理及び防止である。硬膜外鎮痛法は、重大な整形外科処置を行う場合に特に価値がある(Nolan et al., Anesthesia 2000 Jan; 55(1) : 32-41)。また、厄介な処置である硬膜外ブピバカイン及びフェンタニールの持続注入を用いて、重度の合併症がないCPの小児に鎮痛をもたらしているが、間欠的硬膜外塊状注入でのモルヒネは、高い過剰鎮静発生率を伴う(Brenn et al., Can J Anaesth 1998, 45 (12): 1156-61)。痙攣の管理に使用される薬物の一部は、バクロフェン及びボツリヌス毒素である。
【0015】
一般に、小児において疼痛を寛解するための現行の薬物には、パラセタモール、アスピリン、非ステロイド性抗炎症組成物、オピオイド(天然のものと合成のもの、両方を含む)、及びオピオイド類似体が挙げられる。経皮又は経粘膜吸収によるオピオイド投与、及び脳脊髄幹鎮痛法(neuraxial analgesia)(Gohanu et al., Pediatr Clin North Am 2000, 47(3) : 559-87)の使用を含む、小児集団における疼痛制御のための新しい技法が提案されているが、長期疼痛制御の改善された方法が、依然として必要とされている。
【0016】
当該技術分野における進歩にもかかわらず、悪心又は起立性低血圧などの有害な副作用の発生率を実質的に上昇させることなく長期間にわたって有効鎮痛レベルのブプレノルフィンを提供するように、疼痛罹患患者を有効に治療する方法が依然として必要とされている。これらの関心事は、高齢者高血圧患者、呼吸器疾患患者及び小児患者のような危険度の高い患者に安全で有効な疼痛管理方法を提供することに関して、特に重要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、有害反応、例えば、悪心、便秘、嘔吐、頭痛、めまい及び傾眠など(しかし、これらに限定されない)を惹起することなく、又は少なくとも最小限にして、有効な鎮痛又は疼痛寛解を可能にするブプレノルフィンの特異的な投与計画を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
従って、本発明は、(1)5日以下である第一投与期間、第一のブプレノルフィン含有経皮剤形を、(2)5日以下である第二投与期間、前記第一剤形と同じ用量のブプレノルフィン又は前記第一剤形より多い用量のブプレノルフィンを含む第二のブプレノルフィン含有経皮剤形を、及び(3)第三投与期間、前記第二剤形より多い用量のブプレノルフィンを含む第三のブプレノルフィン含有経皮剤形を、患者に投与することを含む、患者において慢性疼痛を治療する方法を提供する。
【0019】
特定の実施形態において、前記第一、第二及び第三経皮剤形は、概算で、以下の表の一行に示す量のブプレノルフィンを含有する。
第一(mg) 第二(mg) 第三(mg)
5 5 10
5 5 20
5 5 30
5 10 20
5 10 30
5 10 40
5 20 40
5 30 40
10 10 20
10 10 30
10 10 40
10 20 30
10 20 40
10 30 40
20 20 30
20 20 40
20 30 40
【0020】
好ましくは、前記第一、第二及び第三投与期間は、各々、少なくとも2日である。さらに好ましくは、前記第一及び/又は第二投与期間は、5日、4日又は3日である。特定の実施形態において、前記第一投与期間は、2日である。もう1つの実施形態において、前記第二投与期間は、2日又は3日である。場合により、本発明の方法は、前記第三投与期間の後の第四投与期間に、少なくとも1回、第四のブプレノルフィン含有経皮剤形を投与することをさらに含む。例えば、前記第四投与期間は、2日であり得、前記第四剤形は、30又は40mgのブプレノルフィンを含有し得る。
【0021】
1つの実施形態において、前記第一剤形は、5mgのブプレノルフィンを含む。もう1つの実施形態において、前記第二剤形は、10mgのブプレノルフィンを含む。さらに他の実施形態において、前記第三剤形は、20、30又は40mgのブプレノルフィンを含み、その後の剤形は、30又は40mgのブプレノルフィンを含む。
1つの好ましい実施形態は、前記第一剤形が、3日以下の投与期間のために5mg以下のブプレノルフィンを含み、前記第二剤形が、3日以下の投与期間のために10mg以下のブプレノルフィンを含み、及び前記第三剤形が、20mg以下のブプレノルフィンを含み、前記第三投与期間が、7日以下続く実施形態である。
【0022】
特定の実施形態において、前記患者は、高齢者もしくは小児、高齢者高血圧患者、又は少なくとも1週間続くと予想される疼痛に罹患している患者である。疼痛が少なくとも1週間続くと予想される疾患には、患者が、変形性関節炎、慢性腰痛、術後疼痛に罹患しているか、広範囲の外傷から回復しつつある場合のものが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、前記投与計画は、収縮期血圧を少なくとも20mmHg及び/又は拡張期血圧を少なくとも10mmHg低下させる。前記経皮投与は、局所用ゲル、ローション、軟膏、経粘膜システム、経粘膜装置、及びイオン導入法による送達システムから成る群より選択される経皮システムによってもたらすことができる。
【0023】
本発明は、ブプレノルフィンの第一、第二、及び第三経皮剤形(この場合、前記第三剤形は、前記第一及び第二剤形より高い用量のブプレノルフィンを含む)を投与することにより、慢性疼痛をその必要がある患者において治療する方法も提供し、この方法は、前記第三剤形と同じ用量のブプレノルフィンを単に投与のに比べ、悪心、嘔吐及び頭痛から選択される有害事象の発生率を上昇させない。好ましくは、前記方法は、失神を誘発しない。1つの実施形態において、前記第一剤形は、5、10又は20mg以下のブプレノルフィンを含み、前記第二剤形は、10、20又は30mg以下のブプレノルフィンを含み、3日間投与され、及び前記第三剤形は、少なくとも20、30又は40mgのブプレノルフィンを含み、少なくとも2日間投与される。前記患者は、高齢者患者、高血圧に罹患している高齢者患者、又は高血圧の治療のためにサイアザイド利尿薬を服用している高齢者患者であり得る。特定の実施形態において、この投与計画は、収縮期血圧を少なくとも20mmHg及び/又は拡張期血圧を少なくとも10mmHg低下させる。
【0024】
本発明は、(1)第一投与期間、第一のブプレノルフィン含有経皮剤形を、(2)第二の投与期間、前記第一剤形より多い用量のブプレノルフィンを含む第二のブプレノルフィン含有経皮剤形を、及び(3)第三投与期間、前記第二剤形より多い用量のブプレノルフィンを含む第三のブプレノルフィン含有剤形を、患者に投与することにより、慢性疼痛を治療する方法も提供し、この場合、前記投与計画は、(a)投与24時間後の平均血漿中ブプレノルフィン濃度が、10〜100pg/mLの間、好ましくは20〜50pg/mLの間であること、(b)投与72時間後の平均血漿中ブプレノルフィン濃度が、25〜200pg/mLの間、好ましくは40〜100pg/mLの間であること、(c)投与144時間後の平均血漿中ブプレノルフィン濃度が、100〜250pg/mLの間、好ましくは100〜200pg/mLであること;及び(d)投与168時間後の平均血漿中ブプレノルフィン濃度が、400〜1000pg/mLの間、好ましくは少なくとも500pg/mLであることを特徴とする血漿中ブプレノルフィンプロフィールをもたらす。1つの実施形態において、前記血漿プロフィールは、図1に示すものと実質的に同様である。
【0025】
もう1つの実施形態において、前記患者は、高齢者であり、及び/又は高血圧に罹患している。
【0026】
もう1つの実施形態において、前記患者は、脊柱側弯症、脳性麻痺、若年性関節炎、癌又は術後疼痛に罹患している小児患者である。
【0027】
さらに他の実施形態において、前記経皮剤形は、経皮投与用品及び経皮投与用組成物から選択される。前記経皮投与用品は、例えば、拡散駆動型経皮システムであり得る。あるいは、前記経皮投与用組成物は、局所用ゲル、ローション、軟膏、経粘膜システム、経粘膜装置、及びイオン導入法による送達システムから成る群より選択することができる。
(発明の詳細な説明)
【0028】
本発明は、一定の有害反応を最小限にしつつ、そうした治療がすぐに必要な患者において有効な慢性疼痛治療を達成する方法を提供する。本発明は、経皮ブプレノルフィンの用量を急速に上昇させて、有害反応を誘発することなく又は有害反応を最小限にして有効な鎮痛を達成することができるという発見に、一部基づく(例えば、実施例5を参照のこと)。7日用経皮ブプレノルフィン剤形は、有効な疼痛療法への調整を遅らせることがあり、即時有効用量は、有害事象、特に悪心をもたらすことがある。それ故、本発明の治療計画は、疼痛、特に3日より長く続く疼痛を有効に治療することができる。そうした疼痛は、例えば、術後疼痛、癌に起因する疼痛、又は収縮性疼痛、ならびに小児の疼痛疾患、例えば、脊柱側弯症、若年性関節炎、収縮性疼痛及び脳性麻痺(しかし、これらに限定されない)であり得る。
【0029】
本方法は、少なくとも1つの漸増用量のブプレノルフィンを含む1シリーズの経皮剤形を患者に投与することを含む投与計画で、鎮痛に有効な量のブプレノルフィンを患者に投与することを含む。本発明の投与計画は、合併症を最小限にしつつ、又は一定の有害反応を減少させつつ、7日用用量増加計画より迅速に鎮痛を達成する点で、オピオイドについての先行技術の投与計画に勝る重要な利点を生じる。例えば、実施例1に記載するように、6日間でのBTDS 20への調整に基づく用量増加計画は、利尿薬での治療を受けている高齢者高血圧患者においても、健常な、治療を受けていない被験者においても、起立性低血圧の発現を導かなかった。起立性低血圧は、オピオイド鎮痛薬の投与の結果生じ得る公知有害事象の中の一つである(Thompson et al., Br J Anaesth 1998, 81: 152-154; “Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,” J. G. Hardman (Ed.), McGraw-Hill Professional Publishing, 2001, pp.530-532)。従って、必ずしもいずれかの特定のグループ又は患者集団に限定する必要はないが、本発明は、危険度の高い患者、例えば、高血圧患者などの心血管予備能不全の患者に有効な治療法を提供する。加えて、実施例6に記載するように、健常な被験者における悪心、嘔吐及び頭痛の発生率を、6日以内にBTDS 20に用量を増加させることにより、BTDS 20の直接投与と比較して低下させた。
【0030】
本発明の経皮投与計画は、高齢者、若年及び小児患者における血圧も低下させた。本投与計画は、本投与計画の使用の中止が必要となる有意な有害事象を生じることなく、血圧を低下させた。加えて、薬物動態試験は、高齢者被験者及び若年被験者における薬物の血漿中プロフィールが類似していることを示した。これは、特定の標的集団における特定の薬物動態学的投与調節の必要がないことを示唆している。対照的に、フェンタニール経皮投与システムでの先行試験は、高齢者患者では、呼吸抑制などの有害事象のため、パッチを除去する必要があった(Thompson et al., Br J Anaesth 1998, 81 : 152-154)。従って、本発明は、疼痛治療における効能を維持させつつ、又は増大さえもさせつつ、他のオピオイドで以前に見られたような有害事象を誘発しないオピオイド鎮痛薬の新規送達法を提供する。
【0031】
従って、本発明は、薬物療法での患者のコンプライアンス率及び治療効能を増大させる、ブプレノルフィンのより有効な経皮投与方法を提供する。本方法は、起立性低血圧など(しかし、これに限定されない)の有害事象の発現を減少させる。従って、本方法は、薬物療法での患者のコンプライアンス率及び治療効能を増大させる。特に、副作用の低減及び合併症の最少化(上記ならびに実施例1及び6を参照のこと)は、その主治療効果:疼痛制御を低減させない。
【0032】
あるいは、本発明の投与計画は、「少なくとも1つの増加用量のブプレノルフィンを含む1シリーズの経皮剤形」の投与という言葉で記述することができる。これは、前の剤形より多い用量のブプレノルフィンを各々有する少なくとも2つの経皮剤形を患者に適用すること指し、この場合、そのシリーズのブプレノルフィンの用量は、用量増加前、既定の日数、好ましくは3日間、直線的に上昇する。例えば、1つのシリーズの、3つの経皮剤形を、そのシリーズの各々の後続剤形がその前のものの2倍の用量のブプレノルフィンを有するように、第一剤形が5mgのブプレノルフィンを含有し、第二剤形が10mgのブプレノルフィンを含有し、第三剤形が20mgのブプレノルフィンを含有する投与計画で投与することができる。あるいは、そのシリーズの剤形は、それぞれ20mg、30mg及び40mgのブプレノルフィン、又はそれぞれ2mg、4mg及び8mgのブプレノルフィン、又は1mg、2mg又は3mgのブプレノルフィンを含むことができる。特定の投与計画(単位:mg)は、5−5−10、5−10−10、5−10−20、5−20−40、5−10−30、5−30−40、10−10−20、10−10−30、10−10−40、10−20−30、10−20−40及び10−30−40である。下で論じるように、本発明は、所望の用量のシリーズを収容しているキットを提供する。
【0033】
本明細書で用いる「BTDS」は、「ブプレノルフィン経皮システム」を意味し、「BTDS X」(この場合、「X」は、ゼロより大きな数である)は、Xミリグラムのブプレノルフィンを含有する経皮剤形を意味する。従って、「BTDS 5」は、約5mgのブプレノルフィンを含有する。好ましくは、BTDSは、塩基又は塩の形態、さらに好ましくは塩基の形態のブプレノルフィンを含有する。
【0034】
本発明の方法は、高齢者(65歳より上の年齢)、若年青年(17歳と45歳の間の年齢)、及び小児(誕生と16歳の間の年齢。新生児、幼児、小児及び青年と、多くの場合、呼ばれる年齢群を包含する)集団における患者を含む、疼痛治療が必要なあらゆる患者に投与することができる。
【0035】
前記患者は、危険度の高い患者として分類することができるが、そうである必要はない。本発明の文脈において、用語「危険度の高い」は、その患者が、オピオイド療法に禁忌を示す、又はそうした療法からの有害事象の可能性を増大させる持病を有する患者を意味する。そうした持病は、年齢を包含し、危険度の高い集団には、高齢者及び小児を挙げることができる。小児集団には、特に、学齢の小児、さらに特に、危険度の高い疾患、例えば気管支肺形成異常に罹患している幼児が挙げられる。危険度の高い患者、特に高齢者患者は、追加の薬物を用いて、血圧をさらに低下させることができる。そうした薬物には、利尿薬、β−受容体遮断薬、ACE阻害剤、アンギオテンシンII受容体拮抗薬、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。加えて、危険度の高い集団の他のグループには、心疾患に罹患している人が挙げられる。具体的には、この治療グループは、うっ血性心疾患の患者;右左シャント、心室中隔欠損症、動脈管開存症、肺動脈バイパス形成、ブラロック(Blalock)−タウシグ(Tausig)及びフォンターネ(Fontane)処置後状態を伴う小児を包含し得る。
本発明の方法は、疼痛治療が必要なあらゆる患者に投与することができる。患者は、特別な病状を有するものとして分類することができるが、そうである必要ははい。これらの病状には、高血圧、脊柱彎曲症、脳性麻痺、収縮性疼痛及び他の癌によるものが挙げられるが、これらに限定されない。患者は、必要な場合には、追加の薬物を用いて、さらに疼痛を軽減することができる。そうした薬物には、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、アセトアミノフェン(又はパラセタモール)ならびに即時放出型μ−作動薬オピオイド及び/又は非経口オピオイド、ならびにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本発明を既存の薬物の代わりに使用することもでき、その結果、他のタイプの薬物の必要性を低下させることができる。
【0036】
鎮痛薬の「鎮痛に有効な」量は、患者が経験する疼痛のレベルを低下させることができる薬剤の量を意味する。患者が経験する疼痛のレベルは、視覚アナログ尺度(VAS)又はリカート(Likert)型尺度の使用により評定することができる。VASは、線の一方の端が無痛を表し、線のもう一方の端が想像できるかぎり最悪の痛みを表す直線である。患者には、各時点での自分たちの痛みを考えてその線上に印をつけるように頼み、無痛からその印までの長さは、その全尺度長と関連付けることができる。リカート型尺度は、記載に対する同意又は不同意の程度に基づく、通常は1から5の範囲の評点尺度である。同様のタイプの尺度ではあるが、11点尺度(0から10の範囲)に基づくものを使用することもできる。そうした疼痛尺度を適用して、患者が治療中に経験する疼痛レベルの変化、例えば、患者又は患者の集団が疼痛療法の開始前及び開始後に経験する疼痛レベルの低下を視覚化することができる。
【0037】
本明細書で用いる用語「高血圧」は、血圧読み取り前と比較して異常に高い動脈血圧を指し、その異常に高い値が、特定期間にわたって維持される。従来、その期間は、3〜6ヶ月である。その上昇は、収縮期圧、拡張期圧、又はそれら両方において観察することができる。従来、成人における高血圧は、140/90mmHgと等しい、又はそれより高い血圧と定義される。血圧は、当該技術分野において公知のいずれかの方法によって測定することができる。そうした方法には、直接動脈穿刺、振動測定法、ドップラー超音波検査法、及び血圧測定法が挙げられるが、これらに限定されない。通常の実施において、血圧は、聴診器を上腕動脈の上に配置し、血圧計のカフを上腕のまわりに配置して測定する。血圧計のカフは、血流の有意な閉塞が達成され、血液の拍動を聞くことができなくなるまでポンプによって膨らませる。収縮期血圧である、血流の最初の音(第一カラトコフ(Karatkoff)音)が聞こえるまで、圧を開放する。血流をもはや聞くことができなくなるまでさらに圧力を開放し、その時点で、拡張期圧の読み取り値を記録する(Bate’s Guide to Physical Examination and History Taking, 6th ed., L. S. Bickley, R. A.Hoekelman, B. Bates, pp. 276-280, Lippincott Williams & Wilkins Publishers, 1995)。血圧は、水銀ミリメートル(mmHg)で測定する。逆に、「低血圧」は、集団正常値に対して異常に低い血圧を指す。
【0038】
「抗高血圧活性」又は「血圧を低下させる」という言い回しは、患者、好ましくは高血圧の患者の血圧を低下させる活性薬剤の効果を指す。1つの実施形態では、血圧降下を経験する人の血圧を、収縮期圧については少なくとも20mmHg又は拡張期圧については少なくとも10mmHg低下させる。もう1つの実施形態において、抗高血圧活性は、収縮期圧については少なくとも20mmHg及び拡張期圧については少なくとも10mmHg、血圧を低下させる活性薬剤の効果を指す。本活性薬剤は、高血圧でない人において血圧を低下させることもあるし、させないこともあり、また高血圧の人すべてにおいて血圧を低下させるとはかぎらない。好ましい実施形態において、経皮ブプレノルフィンは、患者の血圧を140/90mmHgに低下させる。
【0039】
用語「起立性低血圧」は、臥位から急に立ち上がることによって引き起こされる測定血圧の著しい低下を指す。
【0040】
本明細書で用いる用語「既定の日数」は、薬物療法開始前に、その薬物の用量を必要な患者に投与する時間の長さを指す。好ましくは、その薬物はオピオイドであり、さらに好ましくはそのオピオイドは、ブプレノルフィンである。本発明の文脈において、その薬物は、薬物療法の開始前にその日数、投与される。その既定の日数は、個人間で変化し得り、また通常の当業者は、本出願の中で論じているガイドラインを用いて、それを決定することができる。好ましい実施形態において、既定の日数は、3日である。
【0041】
本明細書における用語「有害事象(AE)」又は「有害な経験」は、患者又は医薬品の投与を受ける臨床検査の被験者におけるあらゆる有害な医療上のできごとを意味し、それは必ずしもこの治療と因果関係があるとはかぎらない。深刻な有害事象(経験)又は反応は、死をもたらす、生命にかかわる、入院患者に入院もしくは既存の入院を長期化求める、永続性のもしくは有意な能力障害/不能状態をもたらす、又は先天的異常/出生時欠損である、あらゆる用量でのあらゆる不都合な医療上のできごとである。(Guideline for Industry-Clinical Safety Data Management: Definitions and Standards for Expedited reporting. ICH-E2A, March 1995. World Wide Web (www. ) address fda.gov/MedWatch/report/iche2a.pdf, pp.5-7)。ある治療計画における有害事象の例には、悪心、便秘、嘔吐、頭痛、めまい、傾眠、起立性低血圧、呼吸抑制、胆嚢炎、及び腹痛が挙げられるが、これらに限定されない(さらなる有害事象につては、表5を参照のこと)。
【0042】
「部分作動薬」は、受容体に結合するが、完全には刺激しない作用因子を本明細書では意味する。受容体において高濃度ででも、低濃度ででもこの作用因子は結合し、その受容体から可能な総薬理活性の機能を発生させる。加えて、この作用因子は、完全作動薬の結合を妨げ、その結果、その受容体からの総活性を遮断する。Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, J. G. Hardman (Ed.), McGraw-Hill Professional Publishing, 2001, p. 31-32も参照のこと。
【0043】
(ブプレノルフィン)
本発明は、ブプレノルフィン又はその薬学的に許容可能な塩、エーテル誘導体、エステル誘導体、酸誘導体、エナンチオマー、ジアステレオマー、ラセミ体、多形もしくは溶媒和物に関する。薬理学的に、ブプレノルフィンは、オピオイド部分作動薬であり、オピオイド作動薬の多くの作用、例えば鎮痛を共有する。部分作動薬は、一般に、受容体に対して親和性を有する化合物を包含するが、完全作動薬とは異なり、受容体の高い比率をその化合物が占有している場合でさえ、その薬理活性を小程度にしか惹起しない。鎮痛に対する「天井効果」(すなわち、用量増加に伴って追加される鎮痛効果がない)は、多くの動物モデルにおけるブプレノルフィンに関して充分に文献に記載されている。それは、高親油性であり、オピオイド受容体からゆっくりと解離する。ブプレノルフィンは、中枢神経系(「CNS」)及び抹消組織内のμオピオイド受容体における部分作動薬であると当該技術分野ではみなされている。さらに、ブプレノルフィンは、μ受容体及びκ1受容体に高い親和性で結合し、δ受容体にはそれより低い親和性で結合すると考えられている。κ受容体における内作動薬活性は、限られているようであり、大部分の証拠は、ブプレノルフィンがκ受容体において拮抗薬活性を有することを示唆している。κ作動作用の欠如は、作動薬/拮抗薬でよく見られる不快及び精神異常作用がブプレノルフィンには全くないことの説明となる。他の研究は、ブプレノルフィンのオピオイド拮抗作用が、δオピオイド受容体との相互作用によって媒介され得ることを示唆している。
ブプレノルフィンが、ゆっくりとμ受容体と結合し、μ受容体からゆっくりと解離することは、当該技術分野において公知である。μ受容体に対するブプレノルフィンの高い親和性ならびに前記受容体へのそのゆっくりとした結合及び解離によって、鎮痛の長期持続を説明することができ、その薬物で観察される限定的肉体的依存能を一部説明することができると考えられる。高親和性結合は、ブプレノルフィンが、他の投与オピオイドのμ作動薬作用を阻害できるということの説明にもなる。
【0044】
他のオピオイド作動薬と同様に、ブプレノルフィンは、用量に関連した鎮痛をもたらす。正確なメカニズムは、完全には証明されていないが、鎮痛は、中枢神経系内のμ及びことによるとκオピオイド受容体に対するブプレノルフィンの高い親和性の結果として生じるように見える。この薬物は、痛覚閾値(有害刺激に対する求心性神経終末の閾値)を変化させることもできる。体重ベースで、非経口ブプレノルフィンの鎮痛効力は、非経口モルヒネのものの約25から約50倍、ペンタゾシンのものの約200倍、及びメペリジンのものの約600倍であるように見える。
【0045】
(塩及び誘導体)
本活性化合物の様々な薬学的に許容可能な塩、エーテル誘導体、エステル誘導体、酸誘導体、及び水溶性変更性誘導体も本発明に包含される。本発明は、さらに、本化合物の個々のエナンチオマー、ジアステレオマー、ラセミ体及び他の異性体すべてを包含する。本発明は、本化合物のすべての多形ならびに溶媒和物、例えば、水和物及び有機溶媒とで形成されたものも包含する。そうした異性体、多形及び溶媒和物は、本明細書に提供する開示を基に、当該技術分野において公知の方法、例えば、位置特異的及び/又はエナンチオ選択的合成及び分割によって調製することができる。
【0046】
本化合物の適する塩には、酸付加塩、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、過塩素酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、炭酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、サリチル酸、p−アミノサリチル酸、2−フェノキシ安息香酸、及び2−アセトキシ安息香酸とで作られたもの;サッカリンとで作られた塩;アルカリ金属塩、例えば、ナトリウム及びカリウム塩;アルカリ土類金属塩、例えば、カルシウム及びマグネシウム塩;ならびに有機又は無機配位子とで形成された塩、例えば四級アンモニウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。
追加の適する塩には、本発明の化合物の酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物、エデト酸カルシウム塩、カンシル酸、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エディシレート、エストレート、エシレート、フマル酸塩、グルセプテート、グルコネート、グルタメート、グリコリルアルサニレート、ヘキシルレソルシネート、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエート、ヨウ化物、イソチオネート、乳酸塩、ラクトビオネート、ラウレート、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシレート、臭化メチル塩、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、ムケート(mucate)、ナプシレート、硝酸塩、N−メチルグルカミンアンモニウム塩、オレイン酸塩、パモ酸塩(エンボネート)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロネート、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、硫酸塩、セバセテート、コハク酸塩、タンネート、酒石酸塩、テオクレート、トシレート、トリエチオダイド及びバレレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
本発明は、本発明の化合物のプロドラッグを包含する。プロドラッグには、ブプレノルフィンにインビボで容易に転化することができるブプレノルフィンの機能性誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。適するプロドラッグ誘導体の選択及び調製のための従来の手順は、例えば、「Design of Prodrugs」, ed. H. Bundgaard, Elsevier, 1985に記載されている。
【0048】
(経皮剤形)
経皮剤形は、例えばオピオイド鎮痛薬などの鎮痛薬を含む(しかし、これらに限定されない)多数の異なる活性治療有効薬の送達に適便な剤形である。典型的なオピオイド鎮痛薬には、フェンタニール、ブプレノルフィン、エトルフィン、及び他の高力価麻薬が挙げられるが、これらに限定されない。経皮剤形は、活性薬剤の時限放出及び持続放出に特に有用である。
【0049】
経皮剤形は、経皮投与用品及び経皮投与用組成物に分類することができる。最も一般的な経皮投与用品は、液体レザバー又は接着マトリックス中に薬物を配したシステムを使用する拡散駆動型経皮システム(経皮パッチ)である。経皮投与用組成物には、局所用ゲル、ローション、軟膏、経粘膜システム及び装置、ならびにイオン導入法(電気拡散)による送達システムが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、経皮剤形は、経皮パッチである。
【0050】
本医薬組成物は、経皮剤形、例えば、液体レザバー又は接着マトリックス中に薬物を配したシステムを使用する拡散駆動型経皮システム(経皮パッチ)、局所用ゲル、ローション、軟膏、経粘膜システム及び装置、ならびにイオン導入法(電子拡散)による送達システムとして処方される。ブプレノルフィンの時限放出及び持続放出のために、本発明の投与計画では経皮剤形を使用する。
【0051】
本発明に従って使用される経皮剤形は、好ましくは、ブプレノルフィン不透過性の薬学的に許容可能な材料で製造された裏層を含む。この裏層は、好ましくは、活性薬剤、例えばブプレノルフィンに対する保護カバーとしての役割を果たし、また支持機能を提供することもできる。裏層の製造に適する材料の例は、高及び低密度ポリエチレンのフィルム、ポリプロピレンのフィルム、ポリビニルクロライドのフィルム、ポリウレタンのフィルム、ポリエステル、例えばポリ(エチレンフタレート)のフィルム、金属箔、そうした適するポリマーフィルムの金属箔積層品、織布(前記レザバーの成分がそれらの物理的特性などのためにその織物を透過することができない場合)である。好ましくは、裏層に使用される材料は、アルミニウム箔などの金属箔とそうしたポリマーの積層品である。裏層は、望ましい保護及び支持機能を提供するであろうあらゆる適切な厚さであり得る。適する厚さは、約10から約200マイクロメートルであろう。望ましい材料及び厚さは、当業者には明らかであろう。
【0052】
一定の好ましい実施形態において、本発明に従って使用される経皮剤形は、ポリマーマトリックス層を含む。一般に、生体的に許容可能なポリマーマトリックスを形成するために用いられるポリマーは、薬剤が制御された速度で通過できる薄い壁又は被膜を形成することができるものである。前記ポリマーマトリックスに含めるための材料の例の非限定的なリストには、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/エチレンアクリレートコポリマー、エチレンビニルアセテートコポリマー、シリコーン、ゴム、ゴム様合成ホモポリマー、コポリマー又はブロックポリマー、ポリアクリル酸エステル及びそれらのコポリマー、ポリウレタン、ポリイソブチレン、塩素化ポリエチレン、ポリビニルクロライド、ビニルクロライド−ビニルアセテートコポリマー、ポリメタクリレートポリマー(ヒドロゲル)、ポリビニリデンクロライド、ポリ(エチレンテレフタレート)、エチレン−ビニルアルコールコポリマー、エチレン−ビニルオキシエタノールコポリマー、ポリシロキサン−ポリメタクリレートコポリマーなどのシリコーンコポリマーを含むシリコーン、セルロースポリマー(例えば、エチルセルロース、及びセルロースエステル)、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ならびにそれらの混合物が含まれる。前記ポリマーマトリックス層に含めるための材料の例は、一般的なポリジメチルシロキサン構造のシリコーンエラストマー(例えば、シリコーンポリマー)である。好ましいシリコーンポリマーは、架橋しており、薬学的に許容可能である。ポリマーマトリックスに含めるための他の好ましい材料には、適する過酸化物触媒を使用して架橋することができるジメチル及び/又はジメチルビニルシロキサン単位を有する架橋性コポリマーであるシリコーンポリマーが挙げられる。スチレン及び1,3−ジエンに基づくブロックコポリマー(特に、スチレン−ブタジエン・ブロックコポリマーの直鎖スチレン−イソプレン・ブロックコポリマー)、ポリイソブチレン、アクリレート及び/又はメタクリレートに基づくポリマーから成るポリマー類も好ましい。
【0053】
ポリマーマトリックス層は、薬学的に許容可能な架橋剤を場合によっては含むことができる。適する架橋剤には、例えばテトラプロポキシシランが挙げられる。本発明の方法に従って使用される好ましい経皮送達システムは、望ましい投与期間、例えば約2日から約8日間、患者の皮膚にその剤形を貼り付けるための接着層を含む。その剤形の接着層が、望ましい期間、接着を施すことに失敗した場合、例えば、接着テープ、例えば外科用テープで患者の皮膚にその剤形を貼り付けることによって、その剤形と皮膚の間の接触を維持することができる。患者の皮膚へのその剤形の接着は、その剤形の接着層のみによって達成してもよいし、又は外科用テープなどの周囲接着源を伴って達成してもよいが、その剤形は、必要な投与期間、患者の皮膚に好ましく接着されていなければならない。
【0054】
接着層は、その剤形と薬学的に許容可能であり、好ましくは低アレルギー性である当該技術分野において公知のあらゆる接着剤、例えば、ポリアクリル酸接着性ポリマー、アクリレートコポリマー(例えばポリアクリレート)及びポリイソブチレン接着性ポリマーの使用を好ましくは含む。本発明の他の好ましい実施形態において、接着剤は、好ましくは低アレルギー性である感圧接触接着剤である。
【0055】
本発明に従って使用することができる経皮剤形は、場合によっては浸透増進薬を含むことができる。浸透増進薬は、患者の血流へのブプレノルフィンの浸透及び/又は吸収を促進する化合物である。浸透増進剤の非限定的なリストには、ポリエチレングリコール、界面活性剤などが含まれる。
【0056】
あるいは、ブプレノルフィンの透過は、その剤形を患者の望ましい部位に適用した後、例えば閉鎖包帯で閉鎖することにより増進することができる。浸透は、例えば刈り込むこと、剃ること、又は脱毛薬の使用により適用部位から毛髪を除去することによって、増進することもできる。もう1つの浸透増進因子は、熱である。熱的増進は、数ある中でも、経皮剤形の適用後にその適用部位に対して赤外線ランプなどの放射熱形を使用することによって誘導することができる。ブプレノルフィンの浸透を増進する他の手段、例えばイオン導入法による手段の使用も、本発明の範囲内であると考えられる。
【0057】
本発明に従って使用することができる好ましい経皮剤形は、非透過性裏層、例えばポリエステル製のもの;接着層、例えばポリアクリレート製のもの;及びブプレノルフィン及び他の望ましい製薬助剤、例えば軟化剤、浸透増進剤、粘度調節剤などを含有するマトリックスを含む。
【0058】
本活性薬剤、ブプレノルフィンは、薬物レザバー、薬物マトリックス又は薬物接着剤層の中の装置に含めることができる。パッチのこの面積、及び単位面積あたりの活性薬剤の量によって、通常の当業者が容易に決定できるような限界用量が決まる。
【0059】
一定の好ましい経皮送達システムは、軟化剤も含む。適する軟化剤には、高級アルコール、例えば、ドデカノール、ウンデカノール、オクタノール;カルボン酸のエステル(この場合、そのアルコール成分は、ポリエトキシル化アルコールであってもよい);ジカルボン酸のジエステル、例えば、ジ−n−ブチルアジアペート;及びトリグリセリド、特に、カプリル酸/カプリン酸又はヤシ油の中鎖トリグリセリドが挙げられ、これらは、特に適することが証明された。適する軟化剤のさらなる例は、多価アルコール、例えば、レブリン酸、コクプリル酸(cocprylic acid)グリセロール及び1,2−プロパンジオールであり、これらは、ポリエチレングリコールによってエーテル化することもできる。
【0060】
ブプレノルフィン溶媒も本発明の経皮送達システムに含めることができる。好ましくは、前記溶媒は、塩の形成の完了を回避するために十分な程度までブプレノルフィンを溶解する。適する溶媒の非限定的な例には、少なくとも1つの酸性基を有するものが挙げられる。ジカルボン酸のモノエステル、例えば、モノメチルグルタレート及びモノメチルアジペートが、特に適する。
【0061】
前記レザバー又はマトリックスに含めることができる他の薬学的に許容可能な化合物には、溶媒、例えば、イソプロピルアルコールなどのアルコール;浸透増進剤、例えば、上に記載したもの;及び粘度調節剤、例えば、セルロース誘導体、天然又は合成ゴム(例えばグアールガム)などが挙げられる。
【0062】
好ましい実施形態において、本経皮剤形は、除去可能な保護層を含む。前記除去可能な保護層は、適用前に除去され、それらを例えばシリコーン処理によって除去可能にするならば、上に記載した裏層の製造に使用される材料から成る。他の除去可能な保護層は、例えば、ポリテトラ−フルオロエチレン、処理紙、アロフェン、ポリビニルクロライドなどである。一般に、除去可能な保護層は、接着層と接触した状態にあり、適用が望まれる時まで接着層の完全性を維持する適便な手段となる。
【0063】
本発明に従って使用される経皮剤形の組成及び使用される装置のタイプは、その装置が、望ましい期間、その経皮剤形の望ましい流量及び/又は望ましい送達速度で、活性薬剤、例えばブプレノルフィンを送達するならば、本発明の方法にとって重要とは考えられない。
【0064】
本発明に従って使用するための一定の好ましい経皮剤形は、ハイル(Hille)らの米国特許第5,240,711号(LTS・ローマン・セラピエ・システム社(LTS Lohmann Therapie-Systeme GmbH & Co.)に譲渡された)に記載されている。前記特許は、本明細書に参照して組み込まれている。そうしたブプレノルフィン経皮送達システムは、ブプレノルフィン及び場合によっては感圧接着剤と併用した浸透増進剤を含有する不透過性裏層を有する積層複合体であり得る。前記第5,240,711号特許の好ましい経皮剤形は、(i)ブプレノルフィン不透過性のポリエステル裏層、(ii)ポリアクリレート接着層、(iii)ポリエステル分離層;ならびに(iv)ブプレノルフィン、ブプレノルフィン用の溶媒、軟化剤及びポリアクリレート接着剤を含有するマトリックスを含む。前記ブプレノルフィン溶媒は、最終的な製剤の中に存在していてもよいし、していなくてもよい。そこに記載されている経皮送達装置は、活性物質不透過性の裏層、感圧接着剤レザバー層及び場合によっては除去可能な保護層を具備する。好ましくは、前記レザバー層は、(重量で)約10から約95%のポリマー材料、(重量で)約0.1から約40%の柔軟剤、(重量で)約0.1から約30%のブプレノルフィンを含む。ブプレノルフィン基剤又はその薬学的に許容可能な塩のための溶媒は、(重量で)約0.1から約30%ほど含めることができる。
【0065】
本発明の投与計画は、幾つかの別個の投与期間を含む。投与期間は、そのシリーズの経皮剤形のうちの1つが患者に投与される時間であり、その投与計画は、そのシリーズの各経皮剤形の投与のための別個の投与期間から成るであろう。従って、例えば、患者は、そのシリーズの第一の経皮剤形を3日続けて身に付けることができる。そのパッチは、例えば第五肋間腔の腋窩中線に配置してもよい。除去したら、患者は、第二剤形をさらに3日続けて身に付けることができ、その後、患者は、第三剤形をさらに7日間身に付けることができる。好ましい実施形態において、望ましい用量、すなわち第三用量レベルが達成されるまでの本投与計画の全治療期間は、6日である。その後、無期限にこの用量を維持することができる。用量の増加が必要な場合には、適切な間隔で、例えば3日ごとに用量を増加してもよい。
【0066】
本発明の剤形は、1つ又はそれ以上の不活性化剤も含むことができる。用語「不活性化剤」は、その経皮剤形の乱用の可能性を低下させるために、活性薬剤を不活性化又は架橋する化合物を指す。不活性化剤の非限定的な例には、重合剤、光開始剤及びホルマリンが挙げられるが、これらに限定されない。重合剤の例には、ジイソシアネート、過酸化物、ジイミド、ジオール、トリオール、エポキシド、シアノアクリレート、及びUV活性化モノマーが挙げられる。
【0067】
好ましい実施形態において、本発明の方法は、高齢者、例えば65歳又はそれより高齢の患者において慢性疼痛を治療するために用いられる。もう1つの好ましい実施形態において、本発明の方法は、小児集団において慢性疼痛を治療するために用いられる。
【0068】
本発明の方法では、好ましくは、患者におけるブプレノルフィンの血漿中濃度の漸進的上昇を達成する方法で、ブプレノルフィンを投与する。好ましい実施形態において、本発明の方法によって達成される血漿プロフィールは、次のように説明することができる。
(a)投与24時間後の平均血漿中ブプレノルフィン濃度は、10〜100pg/mL、好ましくは20〜50pg/mLの間である;
(b)投与72時間後の平均血漿中ブプレノルフィン濃度は、25〜200pg/mL、好ましくは40〜100pg/mLの間である;
(c)投与144時間後の平均血漿中ブプレノルフィン濃度は、100〜250pg/mL、好ましくは150〜200pg/mLの間である;及び
(d)投与168時間後の平均血漿中ブプレノルフィン濃度は、400〜1000pg/mLの間、好ましくは、少なくとも500pg/mL、又は患者の必要性に依存してそれ以上である。
【0069】
好ましい実施形態において、本発明の方法は、図2に示すものと実質的に同様の血漿プロフィールを達成する。「実質的に同様」は、最大血漿中濃度(Cmax)又は血漿中濃度−時間経過プロフィールの下の面積(AUC)が、図2に示す基準プロフィールのものと30%より大きく異ならないを指す。好ましくは、最大血漿中濃度(Cmax)及び/又は血漿中濃度−時間経過プロフィールの下の面積(AUC)は、図2に示す基準プロフィールのものとは20%より大きく、さらにいっそう好ましくは10%より大きく異ならない。あるいは、血漿プロフィールは、食品医薬品局(FDA)のガイドライン(21 C. F. R. 320, and “Guidance for Industry-Statistical Approaches to Establishing Bioequivalence” U. S. Dept. of Health and Human Services, FDA, and CDER, January 2001参照のこと)に従って判定した場合、基準プロフィールと生体内利用率が等価である。
【0070】
局所製剤は、典型的には懸濁化剤及び場合によっては消泡剤を含有する。そうした局所製剤は、水薬、アルコール溶液、局所用クレンザー、クレンジングクリーム、スキンゲル、スキンローション、及びクリーム又はゲル処方(水溶液及び水性懸濁液が挙げられるが、これらに限定されない)でのシャンプーであり得る。
【0071】
本発明の化合物は、リポソーム送達システム、例えば、経皮用製品又は経皮用組成物に含めることができる小さな単層ベシクル、大きな単層ベシクル及び多層ベシクルなどの形態で投与することができる。リポソームは、様々なリン脂質、例えば、コレステロール、ステアリルアミン又はホスファチジルコリンから形成することができる。
【0072】
本経皮剤形は、当該技術分野において公知のいずれかの方法によって処方することができ、提案のとおり投与することができる。そうした処方は、米国特許第4,806,341号、同第5,240,711号及び同第5,968,547号に記載されている。
【0073】
(患者集団)
本明細書に記載するような本発明の用量増加計画は、小児患者を含むあらゆる年齢群の患者の疼痛療法に適用することができる。前記小児患者は、脊柱側弯症、若年性関節炎、ならびに収縮性疼痛、鎌状赤血球疼痛及び持続性(3日より長い)術後疼痛を含む(しかし、これらに限定されない)疾患からの慢性疼痛症状を患っていてもよい。
【0074】
小児集団への特定のBTDS投与は、注射にまつわる針の不快感を伴わず、すなわち経口投与法で迅速な用量増加をもたらす。さらに、小児の疼痛の評定は、小児がその不快感を取り次ぐことができないため、難しいことがあり、それ故、治療が遅れることがある。BTDSパッチの適用は、背中への配置である可能性が高く、その結果、薬物の除去が回避されるであろうという点も、患者のコンプライアンスを増す。
【0075】
本発明において、小児集団のための投与計画は、目標血漿中レベルを達成する際の吸収及び代謝の差により体重差を補正することができるので、成人集団のものに厳密に合わせることができる。一般に、小児は、同じオピオイド血中レベルを達成するために、1ポンドあたりで約30〜40%多く必要とする。例えば、BTDS 20を使用する25kg(55ポンド)の小児は、同じBTDS 20を使用する50kgの成人とほぼ同様の血漿中レベルを達成することができる。従って、好ましい実施形態において、小児患者のための投与スケジュールは、成人のものと同じである。
【0076】
(投与)
本発明の単位剤形は、慢性疼痛に罹患している患者、好ましくは人間に投与される。好ましい実施形態において、患者は、高齢者である。もう1つの好ましい実施形態において、患者は、小児である。本発明の単位剤形は、あらゆる潜在的毒性を最小限にしつつ最適な活性を得るように定義した投与計画で投与することができる。例えば、本方法は、段階的、上昇的用量のブプレノルフィンを含む1シリーズの経皮剤形を患者に投与することを含む投与計画で、鎮痛に有効な量のブプレノルフィンを患者に投与することを含む。好ましくは、本投与計画は、次の段階を含む:
(a)第一投与期間、第一のブプレノルフィン含有経皮剤形を患者に投与する段階;
(b)第二投与期間、前記第一剤形と同じ又はそれより多い用量のブプレノルフィンを含む第二のブプレノルフィン含有経皮剤形を患者に投与する段階;及び
(c)第三投与期間、前記第二剤形より多い用量のブプレノルフィンを含む第三のブプレノルフィン含有経皮剤形を患者に投与する段階。
【0077】
特定の実施形態において、前記第一剤形は、5mg以下のブプレノルフィンを含み、前記第一投与期間は、少なくとも約2日であり、前記第二剤形は、10mg以下のブプレノルフィンを含み、前記第二投与期間は、少なくとも約3日であり、前記第三剤形は、20mg以下のブプレノルフィンを含み、前記第三投与期間は、少なくとも約2日である。もう1つの特定の実施形態において、前記第一及び第二投与期間は、各々約7日未満であり、好ましくは、約5日未満、さらにいっそう好ましくは約3日以下である。
【0078】
もう1つの実施形態では、後続の剤形を投与することができる。例えば、目標鎮痛レベルが、第三投与期間で達成される場合、第三剤形は、約2日ごとから約1週間ごとにわたる頻度でパッチを交換しながら、無期限の期間、継続的に投与することができる。目標鎮痛レベルが、第三投与期間で達成されない場合、30mgのブプレノルフィン及び40mgのブプレノルフィン負荷で出発して漸増的に後続剤形を用いることができる。
【0079】
本発明の化合物の用量は、様々な因子、例えば、基礎疾患状態、その個体の状態、体重、性別及び年齢、ならびに投与方式によって変化し得る。本発明の化合物を利用する投与の既定間隔又は計画は、患者のタイプ、種、年齢、体重、性別及び病状;治療すべき疾患の重症度;投与経路;患者の腎機能及び肝機能;ならびに利用する特定の化合物を含む様々な因子に従って選択される。通常の技術の医師又は獣医師は、その疾患を予防する、その疾患に対抗する、又はその疾患の進行を阻止するために必要な薬物の有効量を容易に決定し、処方することができる。毒性を伴うことなく効能を生じる範囲内の薬物濃度を達成する際の最適精度には、標的部位の薬物利用能の動態に基づく計画が必要である。これは、薬物の吸収、分布、代謝及び排泄の考慮を含む。
【0080】
本発明の組成物又は剤形は、経皮剤形として投与されるとき、通常の当業者が決定できるようなあらゆる身体部位に施すことができる。例えば、本組成物又は剤形は、患者の上肢、下肢又は胸部に施すことができる。小児についての好ましい実施形態において、好ましくは、その配置は、その経皮ユニットが取れるの防ぐために背中への配置である。各回、同じ位置に用量を繰り返し投与してもよいし、しなくともよい。
【0081】
一般に、局所製剤は、その局所製剤の全重量100%を基準にして、約0.01から約100重量%、好ましくは約3から約80重量%の本化合物を含有する。一般に、経皮剤形は、その剤形の全重量100%を基準にして、約0.01から約100重量%、好ましくは約3から約50重量%の本化合物を含有する。
本発明の方法において使用される剤形は、単独で投与してもよいし、又は他の活性薬剤と併用で投与してもよい。別の製剤の形態の1つより多くの活性薬剤との併用治療については、それらの活性薬剤を同時に投与することができ、又は時間をずらして別々に各々を投与することができる。望ましい効果を達成するために上に記載したような他の活性薬剤と併用する時には、投与量を調節することができる。その一方で、これらの様々な活性薬剤の単位剤形を独自に最適化し、併用して、いずれかの活性薬剤を単独で使用した場合より病状が大きく軽減される相乗的な結果を達成することができる。
【0082】
小児集団への特定のBTDSの投与は、注射にまつわる針の不快感を伴うことなく、すなわち経口投与で迅速な用量増加をもたらす点で有利である。本発明では、最適な疼痛寛解までの時間が、大きく短縮される。BTDSパッチの適用が、背中への配置である可能性が高く、その結果、薬物が取れることを避けられるという点で、患者のコンプライアンスも増す。
【0083】
(キット)
本発明は、本発明を実施するための成分をキットの形態で適便に提供することができる実施形態も提供する。その最も単純な実施形態において本発明のキットは、患者の必要に従ってセットするセット用量で、セット数のブプレノルフィンパッチを提供する。各キットは、次の表から選択される適切な投与計画を含むであろう。
【表2】
【0084】
好ましい実施形態において、本投与計画は、5mg、10m及び20mgである。パッチを適用する方法、そのユニットの保管及び治療計画の詳細に関する説明も含まれる。
【0085】
さらなる実施形態において、本キットは、使用済みブプレノルフィンパッチ廃棄用の廃棄容器又は装置を含むであろう。そうした容器又は装置は、パッチの中の薬物についての潜在的乱用を防止又は制限するために使用されるあろう。本明細書で用いる用語「容器」は、その最も広い意味、すなわち、材料を保持するためのあらゆる入れ物という意味を有する。
【0086】
本発明のキットは、包装材、及び、例えばその包装材又は添付文書上のその使用についての説明を好ましくは含む。本キット内のブプレノルフィンパッチは、患者のためにコード(すなわち、色コード、日による数字コード、又は用量による数字コードなど)付けすることができる。患者は、疼痛寛解が十分であると患者が判断するまで処方された順序でBTDSを適用し、必要に応じて即時放出型の救急薬を利用することとなろう。
【0087】
(実施例)
本発明は、以下の実施例を参照することにより、よりよく理解されるであろう。これらの実施例は、本発明の例として提供するものであり、制限として提供するのではない。
【実施例1】
【0088】
(高齢者及びサイアザイド利尿薬を受けている高齢者高血圧患者におけるBTDS投与計画の生理学的効果)
この試験の目的は、高齢者被験者及びサイアザイド利尿薬を服用している高齢者高血圧被験者におけるBTDS用量増加の生理学的効果を評価することである。
【0089】
(被験者選択)
A.高齢者高血圧被験者: 年齢65〜80歳、体重範囲70〜94kg(男性)及び55から81kgまで(女性)の男性又は女性高血圧被験者。高血圧を除き、患者には、基本的な身体検査、血液学、血液化学、尿検査、ECG、及び生命徴候によって証明されるような有意な異常病歴はなかった。女性は、閉経後、すなわち少なくとも1年は月経がない状態、又は外科的に生殖不能でなければならなかった。血圧及び抗高血圧薬物療法は、参加前の少なくとも2ヶ月間は安定していなければならなかった。血圧は、サイアザイド利尿薬単独で、又はサイアザイド利尿薬と他のいずれかの単一薬剤とを併用して制御した。
【0090】
B.高齢者健常被験者: 年齢65〜74歳(65歳及び74歳を含む)、体重範囲70〜94kg(男性)及び55から81kgまで(女性)の男性又は女性高齢者被験者。患者は、基本的な身体検査、血液学、血液化学、尿検査、ECG、及び生命徴候によって証明されるような有意な異常病歴はなかった。女性は、閉経後、すなわち少なくとも1年は月経がない状態、又は外科的に生殖不能でなければならなかった。
【0091】
C.若年健常被験者: 年齢21〜40歳、体重範囲70〜94kg(男性)及び55から81kgまで(女性)の男性又は女性被験者。患者は、基本的な身体検査、血液学、血液化学、尿検査、ECG、及び生命徴候によって証明されるような有意な異常病歴はなかった。女性は、スクリーニングのための訪問中及び投与前の時点で血清妊娠テスト陰性でなければならなかった。スクリーニングから、試験から開放されるまで、追加の殺精子性フォーム又はゼリーを併用するバリア又はIUD避妊を使用しなければならなかった。
【0092】
(除外基準)
1.オピオイドに対する、又は向精神薬もしくは催眠薬に対するなんらかの過敏性歴。
2.発作、失神直前又は失神歴。
3.ブプレノルフィンの経皮吸収、分布、代謝又は排泄に有意に干渉し得るなんらかの病状又は外科的疾患。
4.高齢者女性被験者におけるホルモン補充療法(全身又は局所的)及び高齢者高血圧患者における抗高血圧薬物療法を除く、現在進行中の処方又は一般用医薬品を必要とするあらゆる付随する病状。
5.過去3ヶ月以内の7日間より長いオピオイド含有薬物の使用。
6.過去2年間の薬物又はアルコール乱用歴。
7.文書化された現在進行中の臨床的に有意な心血管疾患、肺疾患、内分泌性疾患、神経疾患、代謝性疾患又は精神病。
8.病因にかかわらず、頻繁な悪心又は嘔吐歴。
9.この試験に登録する前30日間の臨床試験への参加。
10.この試験に参加する前4週間のなんらかの有意な疾患。
11.試験投与適用前7日間の、ビタミン及び/又はミネラルサプリメントを含むあらゆる薬物の使用。
12.試験薬投与8時間前から試験薬投与開始の4時間後まで食物及びカフェイン含有飲料を控えることに対する拒絶。
13.予備試験(スクリーニング)又は投与直前血中アルコール、尿中薬物スクリーニング又は血清妊娠テスト陽性。
14.タバコ製品の現在使用。
15.1日あたり60グラムより多くのアルコール接取。
16.試験投与適用の48時間以内、又はこの試験中のあらゆる時点でのアルコール飲料の消費。
17.試験投与適用前過去6週間の血液又は血液製剤の受容。
18.HIV(Eliza)及び/又はB型肝炎(HBsAg)陽性。
【0093】
(方法)
BTDS 5を第0日から第3日まで、BTDS 10を第3日から第6日まで、及びBTDS 20を第6日から第13日まで被験者に投与した。第13日の後、さらに4日間(第17日)、患者をモニターした。
【0094】
生命徴候は、次のとおり測定した。
1.BTDS 5の適用の0、1、4、8、12、24時間前
2.第0日及び第3日、BTDS 5及び10の適用の30分前、ならびにBTDS 5及びBTDS 10の適用の1、2、4、8、12、20、23、36、47及び60時間後、
3.第6日、BTDS 20の適用の30分前、ならびにBTDS 20適用の1、2、4、8、12、20、23、36、47、60、71、84、95、108、119、132、143、156及び164時間後、ならびに
4.第13日、BTDS 20の除去の0.25、0.50、0.75、1、2、4、8、12、24、48及び72時間後。
【0095】
検査した生命徴候には、血圧(被験者は、5分間は仰臥位のままで、その後、血圧測定を受けた。その後、被験者は、起立し、起立の1分後及び2分間起立した後、血圧を測定した)、脈拍(bpm、5分仰臥、1分起立、及び2分起立で測定)、呼吸数(呼吸回数/分)、及び経皮的酸素飽和度(SaO2)が含まれていた。
【0096】
生理学的測定。血圧(mmHg):予定された評定時間各々において、被験者は、5分間は仰臥位のままでおり、その後、BP測定を受けた。その後、被験者は、起立し、起立の1分後及び2分間起立した後、BPの測定をした。
【0097】
脈拍(bpm):脈拍は、5分仰臥、1分起立、及び2分起立で測定した。
【0098】
経皮的酸素飽和度(SaO2):経皮的酸素飽和度SaO2は、赤外分光光度測定法によりSaO2を定量するフィンガーティップセンサーを使用するパルスオキシメトリーによって測定した。
【0099】
薬物動態のサンプリングは、次のように行った。
(1)BTDS 5及びBTDS 10の適用の0、23、47時間後、
(2)BTDS 20の適用の0、23、47、71、95、119及び143時間後、ならびに
(3)BTDS 20の除去の0.25、0.50、0.75、1、2、4、8、12、24、48及び72時間後。
【0100】
BTDS適用部位における局所反応の評定。BTDS適用部位における反応についての皮膚の評定を最初のシステムの適用前及び各BTDS除去時に行った。BTDS適用部位における皮膚の外観を、紅斑及び浮腫について、紅斑は0(目に見える発赤がない)から5(皮膚の暗赤色変色)の範囲にわたる、及び浮腫は0(目に見える反応がない)から5(直径1mmより大きく広がっている、またそのシステムの縁からはみ出している重度の腫脹)まで変化する評価尺度を用いて評価した。
【0101】
臨床検査: スクリーニング時及び試験完了時(第15日)に得た血液及び尿サンプルについて、臨床試験を行った。血液サンプルは、血液学及び化学についての分析を行い、検尿の評定は、色、懸濁度、比重、グルコース、アルブミン、胆汁(ウロビリノーゲン)、pH、アセトン(ケトン)及び顕微鏡検査を含むものだった。
【0102】
身体検査及びECG。標準的な身体検査及び12誘導ECGを、スクリーニング時及び試験完了時に行った。薬力学評価のために調べたものに加え、生命徴候をこれらの時点で調べた。
【0103】
ブプレノルフィン/ノルブプレノルフィンアッセイ。この薬物動態分析は、ブプレノルフィン及びノルブプレノルフィンの濃度についての血漿サンプルのアッセイを含むものだった。ノルブプレノルフィンは、ブプレノルフィンの主要な公知I相代謝産物であり、その親化合物より低い薬理活性を有する。
【0104】
簡単に言えば、ブプレノルフィン及びノルブプレノルフィン、ならびにその内標準重水素化d4−ブプレノルフィン及び重水素化d9−ノルブプレノルフィン(テキサス州オースチンのラディアン社(Radian Corporation, Austin, TX))を液体クロマトグラフィー−エレクトロスプレー/質量分析/質量分析(LC−ESI/MS/MS)によって測定した。これらの技法の一般的な説明については、Huang et al., Anal Chem 1990, 62 : 713A-725A.; Heel et al., Curr Ther 1979, 5 : 29-33.; Watson et al., 1982??? ; Adrianensen et al., Acta Anaesthesiol Belg 1985, 36 : 33-40; ; Lewis and Walter, “Buprenorphine: An Alternative Treatment For Opioid Dependence” National Institute on Drug Abuse, Monograph series ; Hand et al., 1989 ; Tebbett, 1985 ; and Blom et al., 1985を参照のこと。内標準は、凝固を防止するためにEDTAで処理したヒト血漿に、適切な体積のd4−ブプレノルフィン/d9−ノルブプレノルフィン溶液をピペッティングすることによって、サンプル調製前にヒト血漿に入れた(spiked)。
【0105】
固相抽出法(SPE)を用いて、2つの対象化合物を0.5mL ヒト血漿サンプルから単離した。抽出前、すべての患者サンプル、標準物質及び対照を37℃で解凍し、渦攪拌して、少なくとも15分間、3000rpmで遠心分離した。対照及び標準物質(すなわち、既知量のブプレノルフィン及び/又はノルブプレノルフィンを含有するサンプル)を含め、各血漿サンプルに、バッファ(8mM 酢酸アンモニウム)及び内標準を添加した。その後、パッカード・マルチプローブ IIEX(Packard MultiProbe IIEX)(コネチカット州メリデンのパッカード(Packard, Meriden, CT))又はトムテック・カデュラ(Tomtec Qadra)(コネチカット州ハムデンのトムテック(Tomtech, Hamden, CT))のいずれかを使用し、対象分析物を固定相に吸収させ、その後、洗浄してマトリックス材料を除去し、溶離して分析物を回収する抽出法に、各サンプル、標準物質及び対照を付した。溶離物を窒素ガス流のもと、45℃で蒸発乾固させ、その後、9:1 アセトニトリル:酢酸アンモニウム(8mM)中で再構成した。
【0106】
アセトニトリル:酢酸アンモニウム:メタノール移動相を使用する、逆相SB−C18カラム(2.1mm ID x 50mm、5u 粒径;デラウエア州ウィルミントンのヒューレット・パッカード(Hewlett-Packard, Wilmington, DE))をベースにした高速液体クロマトグラフィー(HPLC)システムをMSの前に適用して、各サンプル中の成分を分離した。
【0107】
そのMSシステムは、ESI源を装備したマイクロマス・カトロ・LC質量分析器(Micromass Qattro LC Mass Spectrometer)(マサチューセッツ州ベヴァリーのマイクロマス社(Micromass Inc., Beverly, MA))から成り、多重反応モニターモード(Multiple Reaction Monitoring Mode(MRM))で操作した。定量は、ブプレノルフィン対d4−ブプレノルフィン、及びノルブプレノルフィン対d9−ノルブプレノルフィンのピーク面積比に基づく較正曲線を用いて行った。ブプレノルフィン及びノルブプレノルフィン分析物に対する選択性及び感受性を強化するために、前駆体又は分子イオン(複数を含む)から生成物イオン(複数を含む)への遷移プロセスを両方の分析物に用いた。用いた遷移は、468.1から55.1(ブプレノルフィンについて)、472.4から59.1(d4−ブプレノルフィンについて)、414.1から101.0(ノルブプレノルフィンについて)、及び423.1から110.0(d9−ノルブプレノルフィンについて)であった。生成物イオンへの前駆体の正確な遷移は、質量調整レポートを基に微調整することができる。
【0108】
マイクロマス(Micromass)のマスリナックス(MassLynx)ソフトウエアを使用して、そのMSからのクロマトグラフピークを積分し、ブプレノルフィン/d4−ブプレノルフィン及びノルブプレノルフィン/d9−ノルブプレノルフィンのピーク面積比を決定した。各血漿標準物質、サンプル及び対照について面積比を決定した。その後、標準物質のピーク面積比を用いて、加重(1/x2)線形回帰に基づく較正曲線を作成した。サンプル及び対照の濃度をその回帰線からpg/mLで計算した。この方法の定量限界は、両方の分析物について、ヒト血漿中25pg/mLであり、濃度範囲は、ヒト血漿中25から600pg/mLである判定した。
【0109】
薬物動態測定基準。BTDSでの処理後、血漿中ブプレノルフィン及び血漿中ノルブプレノルフィン濃度から、以下の薬物動態測定基準を概算した。
AUCt(pg・h/mL)。時間=0(システム・アプリケーション)から最終定量可能濃度までの血漿中濃度−時間経過プロフィール下の面積は、次のような線形台形公式を用いて概算した。
【数1】
式中、ciは、i番目のサンプルの濃度であり、tiは、i番目のサンプルの投与からの時間であり、nは、最終定量可能濃度まで(最終定量可能濃度を含む)の利用可能なサンプルの数である。
【0110】
AUC∞(pg・h/mL) − 時間=0(投与)から無限大までの血漿中濃度−時間経過プロフィール下の面積は、次のとおり概算した。
【数2】
式中、Ctは、最終定量可能濃度であり、λzは、対数変換プロフィールの見掛けの最終段階の負の傾斜である。
【0111】
Cmax(pg/mL) − サンプリング時間に対するブプレノルフィン及びノルブプレノルフィンの測定血漿中濃度を、各個の血漿中濃度−時間経過プロフィールにプロットした。各物質の最大濃度をそれぞれのプロフィールから各々取った。各物質の平均最大濃度は、個々の値すべての算術平均として計算した。
【0112】
tmax(h) − 投与から最大観測濃度までの時間は、血漿中濃度−時間経過プロフィールから直接取った。投与から最大観測濃度までの平均時間は、個々の値すべての算術平均として計算した。
【0113】
t1/2(h) − 見掛けの最終半減期は、次のように計算した。
【数3】
式中、λzは、その曲線の最終(対数線形)部分に関連した一次速度定数である。これは、対数濃度に対する時間の線形回帰によって概算した。見掛けの最終半減期は、次の基準に合う場合に報告可能とみなした。
・ 観測データ点が、最終対数線形部分上にあらねばならない。
・ 決定にあたり、少なくとも3つのデータ点
・ 決定係数(R2)>0.85。
個々の時間経過データセットが、上の基準に合わない場合、t1/2は、概算不可と報告した。
【0114】
応答変量として平均仰臥血圧、予測因子としてグループ、及び共変量として基線平均仰臥血圧を用いる共分散分析(ANCOVA)モデルを使用して、平均仰臥BPについて各区画内でのグループ間での比較を行った。2つの高齢者グループと若年健常被験者のグループの間のペアワイズ比較も行った。他のすべてのPD変量は、同じ方法で分析した。
【0115】
分析のために薬物動態測定基準を対数変換した。対数変換した変量について、信頼区画の差及び限度を累乗することにより、その原尺度における対応する平均比率及び信頼区画を生じた。薬物動態測定基準のグループ間比較は、分散分析(ANOVA)モデルを使用して行った。2つの高齢者グループと若年健常被験者グループの間でペアワイズ比較を行った。統計学的有意性は、多重比較のため、一種過誤を調節せず5%レベルで評定した。AUCt、AUC∞、及びCmaxの最小二乗平均の比率(高齢者健常/若年健常及び高齢者高血圧/若年健常)の信頼区画(90%)を概算した。
【0116】
統計法。応答変量として平均仰臥BP、予測因子としてグループ、及び共変量として基線平均仰臥BPを用いる共分散分析(ANCOVA)モデルを使用して、平均仰臥BPについて各区画内のグループ間での比較を行った。2つの高齢者グループと若年健常被験者のグループの間でペアワイズ比較も行った。他のすべてのPD変量は、同じ方法で分析した。
【0117】
分析のために薬物動態測定基準を対数変換した。対数変換した変量について、信頼区画の差及び限度を累乗することにより、その原尺度における対応する平均比率及び信頼区画を生じた。薬物動態測定基準のグループ間での比較は、分散分析(ANOVA)モデルを使用して行った。2つの高齢者グループと若年健常被験者のグループの間でのペアワイズ比較を行った。統計学的有意性は、多重比較のため、一種過誤を調節せず5%レベルで評定した。AUCt、AUC∞、及びCmaxの最小二乗平均の比率(高齢者健常/若年健常及び高齢者高血圧/若年健常)の信頼区画(90%)を概算した。
【0118】
(結果及び考察)
生理学的な結果及び安全性の結果を表1〜6及び図1〜5に提示する。
【0119】
被験者人口統計及び基線素因。36人の被験者が、この試験に登録した。12人の若年健常被験者(年齢21歳から41歳、平均年齢29歳)、13人の高齢者健常被験者(年齢65歳から74歳、平均年齢68歳)、及び11人の高血圧の高齢者被験者(年齢65歳から80歳、平均年齢71歳)。すべての被験者は、薬物動態及び安全性の評定について評価することができ、32人が、薬物動態分析のためにデータを提供した。被験者についての人口統計学的及び基線生理学的特徴を表1にまとめる。
【表3】
【0120】
(薬物動態の結果)
血圧及び脈拍数の起立性変化。表2は、5分仰臥血圧と2分直立血圧の間の差、ならびに最初のBTDS適用の30分前(基線)、各用量増加の4から8時間後、及び第13日におけるBTDS 20の除去の3.5時間後に取った脈拍数読み取り値をまとめたものである。
【表4】
a 起立性変化は、5分仰臥の読み取り値と2分直立の読み取り値の間の差である。平均変化は、特定の評定時点で全グループに対して平均した各被験者についての変化である。
b 評定区画は、各BTDS投与後6から8時間及びBTDS除去後4時間である。
c 応答変量として平均起立性変化、予測変量としてグループ、及び共変量として基線起立性変化を用いたANCOVAモデルからのペアワイズ比較(レファレンスとして若年健常を用いる)に関して、P<0.5。
d 11人の若年健常被験者が、適用3及びBTDS 20除去後に血圧及び脈拍数について評価可能であった。
e 12人の高齢者健常被験者が、BTDS 20除去後に血圧及び脈拍数について評価可能であった。
f 基線起立性変化に合わせた調整最小二乗平均分析(ANCOVAモデル)についての90% CI。
【0121】
3グループ間で起立性血圧応答の差は観測されなかった。脈拍の起立性増加はわずかであったが、2つの高齢者グループにおけるものより若年成人におけるもののほうが統計学的に有意に大きかった。失神は発生しなかった。
【0122】
呼吸数及び酸素飽和度。表3は、各BTDSの適用後6から8時間及びBTDS 20の除去後4時間の時点での、基線におけるRR及び%SaO2についてのデータをまとめたものである。すべてのグループにおいて、平均RRの変化は小さかった。2つの高齢者グループにおける基線での平均%SaO2は、レファレンス範囲よりわずかに低かった。基線と比較して、各評定時点での平均%SaO2は、3グループいずれにおいても有意には変化しなかった。呼吸抑制は観察されなかった。
【表5】
a 変化は、BTDS前(0.5時間)から適用後までである;平均変化は、特定の評定時点で全グループに対して平均した各被験者についての変化である。
b 評定区画は、各BTDS投与後6から8時間及びBTDS除去後4時間である。
c 11人の若年健常被験者が、適用3及びBTDS 20除去後にRR及び%SaO2について評価可能であった。
d 11人の高齢者健常被験者が、BTDS 20除去後にRRについて評価可能であった。
e レファレンス範囲: 95%から110%。
f 12人の高齢者健常被験者が、BTDS 20除去後に%SaO2について評価可能であった。
【0123】
薬物動態。ブプレノルフィン及びその代謝産物、ノルブプレノルフィンについての3グループの関する血漿中濃度対時間曲線を図2及び3に示し、薬物動態パラメータを表4にまとめる。評価したいずれのブプレノルフィン又はノルブプレノルフィン薬物動態パラメータについてもグループ間に統計学的に有意な差はなかった。ノルブプレノルフィンについてのAUCt及びCmaxは、高齢者健常被験者又は若年成人被験者におけるものより高血圧の高齢者におけるもののほうが高かった。
【表6】
a 10人の若年健常被験者が、AUC∞及びt1/2について評価可能であった。
b 7人の高齢者健常被験者が、AUC∞及びt1/2について評価可能であった。
c 4人の高血圧の高齢者被験者がAUC∞及びt1/2について評価可能であった。このグループのうち7人の被験者について、ノルブプレノルフィン濃度が最終測定(最終BTDSの除去後72時間)の時点で高いままであったためである。
【0124】
薬物動態/薬力学の関係。平均血漿中ブプレノルフィン濃度対仰臥SBP、DBP(図4A、4B、4C及び図5A、5B、5C)及び脈拍(データは示さない)のプロット及び評価は、いずれの被験者グループについてもブプレノルフィンの血漿中レベルとこれらの血行力学パラメータの間に関係がないことを示した。
【0125】
(安全性)
有害事象。すべての被験者は、BTDSに対する忍容性に優れていた。いずれかの治療グループの1人より多くの被験者が報告した有害事象を表5にまとめる。2件の重度の治療関連有害事象(同じ若年成人被験者について記録された胆嚢炎及び腹部疼痛)が入院を必要とした。2人の被験者が、治療関連有害事象のため、中止した。1人の若年成人被験者は、嘔吐のため第5日に試験を中止し、1人の高齢者健常被験者は、第10日に経験した低血圧のため中止した。これらの有害事象は、その施設から出る前に解決した。
【表7】
【0126】
適用部位の反応。各BTDS用量についての適用部位の紅斑及び浮腫を表6にまとめる。大部分の被験者が、軽度の適用部位の反応を経験した。重度又は用量を制限する紅斑又は浮腫の報告はなかった。
【表8】
【0127】
身体検査、臨床検査、又はECG。身体検査、臨床検査、又はECGの結果において臨床的に有意な変化はなかった。
【0128】
起立性低血圧(OH)の発現に対する開示した投与計画の効果も図2から5Cに示す。これらの図は、増加用量でのブプレノルフィンの経皮投与(BTDS)及び同じ適用部位への反復適用が、若年健常被験者、高齢者健常被験者、及び利尿薬での治療を受けている高齢者高血圧被験者においてOHの発現をもたらさなかったことを示している。加えて、この試験のいずれの被験者も、失神(全身性脳性虚血に起因する意識の一時的停止、気絶又は卒倒)を経験しなかった。高血圧の被験者についての結果も、BTDSとサイアザイド利尿薬の同時使用により起立性低血圧(OH)の発生率増加が生じないという結論を支持している。
【0129】
薬物動態分析は、高齢者正常血圧又は高血圧被験者対若年健常被験者におけるBTDSの薬物動態の間に潜在的交絡差はなかった。この薬物動態試験の結果は、BTDSが忍容性に優れていることを示した。一部の高齢者被験者においてBP低下が観察されたが、症候性のものではなく、有意とみなされるものでもなかった。BP低下を経験した若年被験者はいなかった。薬物動態の結果は、BTDS用量増加によるブプレノルフィンの低血圧作用の欠如が、ブプレノルフィン暴露の相違によるものではかったことを実証している。
【実施例2】
【0130】
(健常な高齢者被験者と若年成人被験者を比較する7日適用用BTDSの薬物動態及び安全性)
この試験は、7日間身に付けるBTDS単独適用の薬物動態及びそのバイオアベイラビリティに対する年齢の影響を比較及び評定した。
【0131】
(被験者選択)
年齢21〜45歳及び65歳より高齢又は65歳、体重範囲70から94kg(男性)及び55から81kg(女性)の男性及び妊娠していない女性。患者には、基本的な身体検査、血液学、血液化学、尿検査、ECG、及び生命徴候によって証明されるような有意な異常病歴はなかった。
【0132】
(方法)
登録前の2週間の間、被験者をスクリーニングした。同じ日にすべての被験者に投与し、すべての被験者が、胸部右上にBTDS 10(活性)(10mg(流量 10μg/h))、BTDS 5(プラシーボ)及びBTDS 20(プラシーボ)を受けた。薬物動態サンプリングは、投与前から適用の7日間(168時間)を通して除去の36時間後(204時間)まで行った。1被験者につき合計27のサンプルを計画した。血漿を分離し、−20℃で凍結した。LC/MS/MS法を用いて盲検でのブプレノルフィン血漿中濃度を決定し、25pg/mLから600pg/mLまで線形であることを確認する。BTDS 20(BTDS 5又はBTDS 10については、薬物動態プロフィールを発生させなかった)での処理後、血漿中ブプレノルフィン及び血漿中ノルブプレノルフィン濃度から、以下の薬物動態測定基準を概算した。
【0133】
AUCt(pg・h/mL)。時間=0(システム・アプリケーション)から最終定量可能濃度までの血漿中濃度−時間経過プロフィールの下の面積は、次のような線形台形公式を用いて概算した。
【数4】
式中、ciは、i番目のサンプルの濃度であり、tiは、i番目のサンプルの投与からの時間であり、nは、最終定量可能濃度まで(最終定量可能濃度を含む)の利用可能なサンプルの数である。
【0134】
Cmax(pg/mL) − 最大観測濃度は、血漿中濃度−時間経過プロフィールから直接取った。
【0135】
(結果)
7日間身に付けるBTDS 10は、高齢者にも、若年成人にも忍容性に優れていた。相乗平均値を用いてそれら2つの試験グループにおけるAUCt及びCmaxを比較したところ、グループ間の差は、AUCについては7%、Cmaxについては10%であった(図6及び表7参照)。高齢者においてシステムの除去直後にブプレノルフィン濃度上昇の形跡があったが、この上昇は、有害事象をもたらさなかった。いずれの年齢群においても経皮システムでの治療を制限する問題はなかった。
【表9】
【0136】
血圧試験は、高齢者被験者と若年被験者の両方においてブプレノルフィンの投与が血圧を低下させることを示した(表8参照)。
【表10】
【0137】
体温、呼吸数及び脈拍の平均値は、BTDS 10への暴露による影響を受けなかった。1人の若年被験者及び3人の高齢者被験者において、大部分にBTDS 10の除去後に呼吸数及び/又は脈拍の低下が観察されたが、それらは有意とは考えられなかった。1分あたりの呼吸回数8未満の呼吸数は、観測されなかった。異常な身体検査所見はBTDS 10暴露中には現れず、ECG所見において試験前及び試験後に観測された異常は、いずれも有意とは考えられなかった。
【0138】
収縮期血圧(SBP)及び拡張期血圧(DBP)における同時低下(SBP:基線より20mmHg以上低下;DBP:10mmHg以上低下)が、BTDS 10暴露中に7人(58%)の高齢者被験者において発生した。これらの事象は、すべて、自然に解決した。1人の高齢者被験者には、血圧低下と同時に発生した軽度のめまいがあった。SBP及びDBPの同時低下を経験した若年被験者はいなかった。(図7及び8を参照のこと)。
【0139】
患者グループごとの有害事象を表9に示す。
【表11】
【0140】
他の経路によるブプレノルフィンは、この試験において観察されたものと同様の血圧に対する効果を示している。カトリーヌ(Catheline)ら(1980)は、血圧、脈拍及び呼吸に関し、筋肉内ブプレノルフィン及び筋肉内モルフィンについて同様の用量応答曲線を示し、一方、ヒール(Heel)ら(Drugs 1979; 17: 81-110)は、経口ブプレノルフィン後の収縮期血圧における約10%の低下ならびに拡張期血圧におけるわずかな低下を報告した。血圧の低下についての本試験の所見は、非経口ブプレノルフィン後の約10mmHgの平均動脈圧の低下及び約10pbmの呼吸数の減少を示したMelon et al., Anesth Anal Rean 1980, 37 : 121-125による以前の研究を裏付けるものでもある。
【0141】
もう1つのオピオイド、フェンタニールは、経皮製剤の形で現在利用可能であるが、高齢者では薬物動態変化を随伴する((Holdsworth et al., Gerontology 1994, 40: 32-37; Bentley et al., Anesth Analg 1982,61 : 968-971; Thompson et al., Br J Anaesth 1998, 81: 152-154)。IVフェンタニール薬物動態及び年齢についての研究において、高齢者では、この集団では薬物クリアランスの低下に起因して排泄が長期化するため、匹敵する用量のIVフェンタニールにより、より高い血清中薬物濃度が生じることが判明した(Bentley, 1982)。フェンタニールの2つの経皮製剤についての比較薬物動態性能評価が公表されている(Holdsworh et al., Gerontology 1994, 40: 32-37; Thompson et al., Br J Anaesth 1998,81: 152-154)。24時間用フェンタニール経皮システムの試験では、若年成人被験者より高齢者被験者のほうが大きいCmaxを達成する傾向があった(Holdsworth et al., Gerontology 1994, 40 : 32-37)。10人の高齢者被験者は、有害事象のため、早々にパッチを除去したため、高齢者被験者と若年成人被験者を比較するために、AUCをパッチを身に付けていた期間で割った。パッチを身に付けていた実際の期間についてAUCを補正すると、高齢者被験者は若年及び若年成人よりフェンタニールへの平均暴露が有意に長かった。この試験は、この24時間用フェンタニール経皮システムが、若年成人に比べて高齢者では薬物動態学的に交換可能な性能を提供できないことを示した。
【0142】
高齢者被験者における異なる3日用フェンタニール経皮システムについて、9人の高齢者被験者のうち2人が、呼吸抑制(呼吸回数8未満/分)のために試験が終わる前にフェンタニール経皮システムを除去した(Thompson et al., Br J Anaesth 1998, 81 : 152- 154)。血漿中フェンタニール濃度の増加は、若年成人被験者より高齢者被験者のほうが有意に遅かった(P=0.005で、平均半減期、それぞれ、11.1時間対4.2時間)。従って、上に記載した試験は、2つの異なるフェンタニール経皮システムが、若年成人に比べて高齢者では薬物動態学的に交換可能な性能を提供しなかったことを示している。従って、これら2つのフェンタニール経皮システムでの経験は、若年成人において見られるものに匹敵する経皮的薬物動態機能を高齢者において提供することが、技術的な挑戦を意味することを示している。
【0143】
特に、薬物誘発起立性低血圧は、高齢者における罹病率の主因である(Verhaeverbekel, Drug Sat., 1997, 17 : 105-108)。起立性低血圧及び他の失神エピソードは、この年齢群におけるナーシングホームへの入院の40%及び少なからぬ医学的問題の原因である。高齢者高血圧は、心臓前負荷の低下及び自律神経機能(例えば、アドレナリン作動性受容体の反応及び圧反射)の低下をもたらす医原性血液量減少のため、特に危険度が高い。
【0144】
この試験は、BTDS 10が、高齢者においても、若年成人においても、一定したブプレノルフィン血中濃度を提供することを示した。
【実施例3】
【0145】
変形性関節炎の患者におけるブプレノルフィン経皮システム(BTDS)の鎮痛効力及び安全性
この実施例は、イブプロフェンだけでは充分な疼痛制御を達成することができなかった変形性関節炎患者において、プラシーボとの比較で、ブプレノルフィン、μ−オピオイド部分作動薬を含有する増加用量の経皮システムの鎮痛効力及び安全性を評価するように設計する。
【0146】
(方法)
この試験設計は、変形性関節炎に随伴する慢性疼痛の制御のためにオピオイドを服用している患者のスクリーニングを伴う。オピオイドの投与は、疼痛レベルが疼痛尺度で7未満になったときに停止し、イブプロフェン1600mg/日を、非盲検ラン・インとして7日間投与する。7日のイブプロフェンの後、疼痛レベルが、7日より長い又は7日である場合、二重盲検力での適切量への調整(titration)に対する無作為化を行って、3日ごとにプラシーボ又はBTDS(5−10−20 mcg/h)を投与する。7日後、維持用量は、目標鎮痛レベルが達成されている限り、少なくとも3日ごとに投与される最終BTDS用量である。(疼痛制御が達成されない場合、1又はそれ以上の後続のBTDS用量レベルを投与、40mgまで調整することができる)。21日後、二重盲検の維持を7日間追跡する。
【0147】
一次効能変量は、維持期間の終了時(第28日)に分析する疼痛についての治療が成功した患者の割合である。患者が、効能がない(DOLE)ため早期に中止しない場合、及び最終訪問時に疼痛のための投与に伴う患者の満足度(患者満足度)(「あなたが受けた疼痛のための試験投与をあなたはどのように評価するでしょうか?」)についてのかれらの評点が、2、3又は4(この場合、0は、「劣る」であり、1は、「並」であり、2は、「良好」であり、3は、「非常に良好」であり、4は、「超良好」である)である場合、治療は成功と考えられる。二次効能変量には、最後の24時間の間の平均疼痛強度、患者の満足度、及び適切量への調整期間終了時の用量レベルが挙げられる。疼痛についての治療が成功した患者の割合は、治療及びセンターに関する項ならびに他の適切な共変量を用いるロジスティック回帰を使用して分析する。平均疼痛強度及び患者の満足度については、治療及びセンターに関する項ならびに他の適切な共変数を用いる線形混合型モデルを使用する。適切量への調整期間終了時に用量レベルについてコクラン−マンテル−ヘンツェル(Cochran-Mantel-Haenszel)カイ二乗解析を行う。
【実施例4】
【0148】
(慢性腰痛の患者の治療におけるヒドロコドン/アセトアミノフェンとの比較でのBTDSの有効性及び安全性)
この実施例は、慢性腰痛の患者においてBTDS、ブプレノルフィンを含有するマトリックス経皮システムの有効性を、ヒドロコドン/アセトアミノフェン(HCD/APAP)錠と比較するように設計する。
【0149】
(方法)
7日のランイン期間中、患者は、すべての鎮痛薬を中止して、400mgのイブプロフェンを1日4回服用し、それをその試験を通して継続する。最初の7日間、患者は、鎮痛の有効レベルに調整する(3投与レベル: BTDS 5、10、20mcg/h);3日ごとに適用、又はHCD/APA(2.5mg ヒドロコドン/250mg アセトアミノフェン;1、2又は3錠、1日4回)。患者は、所定の維持期間、許容可能な有効用量を継続する。
【0150】
一次効能変量は、最後の24時間の間の平均疼痛強度(0〜10の尺度)及び維持期間の疼痛のための投与に関する患者の満足(0〜4の尺度)である。治療及びセンターに関する項及び他の適切な共変数を用いる反復測定線形混合モデルを使用する。最小二乗平均(LS平均)、SE及び95%CIを概算する。95%CIを平均疼痛強度に含める場合(−2,2)及び患者の満足度に含める場合(−1,1)には、等価を示す。公表されているヒドロコドン対プラシーボ試験(7)についての効果量(ES)メタアナリシスを行う。ESを各試験について計算する(ESは、平均差(ヒドロコドン−プラシーボ)/SDである)。デルシモニアン(DerSimonian)併合ES及び95%CIを計算して、BTDSの帰無仮説の間接試験を可能ならしめる。
【実施例5】
【0151】
(慢性腰痛の患者におけるブプレノルフィンTDS、オキシコドン/アセトアミノフェン及びプラシーボの比較効能試験)
本実施例は、ブプレノルフィン経皮システム(BTDS)の鎮痛効能を評価するものである。
【0152】
(方法)
これは、プラシーボ及び活性制御・多用量・二重盲検・平行群間・多施設・安全性及び効能試験である。患者を3つの治療グループのうちの1つにランダムに振り分けた。その試験の最初の21日の間、有効性に関する3つの用量レベルのうちの1つに患者を調整することができた。患者は、この試験期間を通して安定した用量のNSAIDを継続した。平均年齢52歳(年齢範囲19から85歳)の54人の男性及び80人の女性がこの試験に参加した。80%は、オピオイドの経験がなく、20%は、オピオイド経験者であった。効能の一次変量は、平均での疼痛及び現時点での疼痛として測定した。二次効能変量は、効能がないための中止、メディカル・アウトカム・スタディー(medical outcome study)健康調査、治療応答、患者の選好、平均的疼痛についての毎日の患者の日記、安定した疼痛管理までの時間、及び適切量への調整後の用量調整数であった。統計的方法には、疼痛項目についての反復測定分析、及び対象比較についてのペアワイズ対比、メディカル・アウトカム・スタディー(Medical Outcome Study)健康調査項目に関する90%信頼区画、効能がないため中止するまでの時間及び安定した疼痛管理までの時間についてのCOX比例ハザード回帰分析が含まれた。
【0153】
(結果)
BTDSグループとプラシーボグループの間の「平均での疼痛」についての基線からの最小二乗平均変化での効能差は、維持期間、第21日及び第30日(P=0.009)について統計学的に有意であった(図9A、9B)。BTDSグループとプラシーボグループの間の「現時点での疼痛」についての基線からの最小二乗平均変化での差は、第21日及び第30日(P=0.028)によって判定して、維持期間については統計的に有意であった(図10A、10B)。二次効能分析の結果は、一次変量の分析において観測された効能を支持している。効能がないための中止は、Oxy/APAPグループ及びBTDSグループにおけるよりプラシーボグループにおけるほうが多かった。効能がないために中止した患者の試験終了時における割合は、プラシーボでは44%、BTDSグループでは16%、及びOxy/APAPグループでは2%であった(図11A、11B)。中止率を比較するCox比例ハザード回帰分析は、プラシーボと比較してBTDSで0.30の有害率を示し、これは、統計学的に有意であった(P=0.01)。安定した疼痛管理までの時間を比較するCox比例ハザード回帰分析は、プラシーボと比較してBTDSについては1.67及びOxy/APAPグループについては1.51のハザード率を示した。BTDSとプラシーボの間の比率の統計学的分析は、P=0.054という結果になった。試験投与に関する患者の満足度は、プラシーボでよりOxy/APAP及びBTDSでのほうが大きな満足度を示した。
【0154】
(考察)
慢性腰痛の治療に関するBTDSの効能をこの試験で実証した。この試験の維持期間、プラシーボと比較して、BTDSグループについての「平均での疼痛」と「現時点での疼痛」、両方の一次効能変量に関する基線からの最小二乗平均変化の差は、反復測定分析により、統計学的に有意であった。この一次分析からの肯定的な所見は、BTDSグループとプラシーボグループの間の統計学的に有意な差を示した、効能がないための中止率を比較するCox比例ハザード回帰分析を含む二次変量についての結果によって支持された。NSAIDだけでは十分な疼痛制御が達成されなかった選択患者の治療計画にBTDSを加えることにより、プラシーボに比べて有意な改善が生じた。
【実施例6】
【0155】
用量増加計画の関数として有害作用発生率の比較試験
本実施例は、用量増加を伴うBTDS 20を受けた(グループ1)又は用量増加前に用量増加を伴わないBTDS 20を受けた(グループ2)健常な被験者における有害事象の相対的発生率を比較するものである。
【0156】
(方法)
グループ1.グループ1の被験者についての選択基準及び試験計画は、高齢者高血圧、高齢者健常及び若年健常被験者を組み合わせる、実施例1に記載したものと同じであった。簡単に言えば、高齢者高血圧被験者は、年齢65〜80歳、体重範囲70〜94kg(男性)及び55から81kgまで(女性)の高血圧の男性又は女性であり、高齢者健常被験者は、年齢65〜74歳(65歳及び74歳を含む)、体重範囲70〜94kg(男性)及び55から81kgまで(女性)の男性又は女性であり、若年健常被験者は、年齢21〜40歳、体重範囲70〜94kg(男性)及び55から81kgまで(女性)の男性又は女性であった。グループ1の全被験者数は、36であった。
【0157】
グループ1の全被験者に、第0日から第3日までBTDS 5を、第3日から第6日までBTDS 10を、及び第6日から第13日までBTDS 20を投与した。第13日の後、さらに4日間(第17日)、患者をモニターした。第0日から第17日までの期間中に1人より多くの患者によって報告されたあらゆる有害事象を書き留め、実施例1に記載した方法による統計学的分析に用いた。
グループ2.グループ2の被験者についての選択基準は、次のとおりであった。年齢18歳から80歳まで(18歳及び80歳を含む)(平均年齢35歳)、体重範囲42kgから107kgまで(平均体重74kg)の健常な成人被験者で、前記被験者の34%が女性であった。グループ2の全被験者数は、78であった。
【0158】
グループ2の全被験者に、第0日から第7日までBTDS 20を投与した。第7日の後、さらに3日間、患者をモニターした。第0日から第10日までの期間中に1人より多くの患者によって報告されたあらゆる有害事象を書き留め、実施例1に記載した方法による記述分析に用いた。
【0159】
(結果)
グループ1及び2の被験者について書き留めた有害事象の発生率を表10に示す。表10に示されているように、BTDS 20に調整した被験者は、全体的に、より低い有害事象発生率を示した。便秘を報告した被験者数は、グループ1のほうが多かったが、BTDS 20を直接適用するよりむしろBTDS 20に用量を増加させていくほうが、頭痛、悪心及び嘔吐の発生率は顕著に低下した。
【表12】
【0160】
本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態による範囲に限定されない。実際、本明細書に記載されているものに加え、本発明の様々な変形が、上記説明及び添付の図面から当業者には明らかとなろう。そうした変形は、添付の特許請求の範囲内に入るものと解釈する。
【0161】
特許、出版物、手順などが、本出願中いたるところに、また参考文献一覧に特記されているが、それらの開示は、それら全文、本明細書に参照して組み込まれている。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】試験設計。
【図2】BTDS 5(0〜72時間)、BTDS 10(72〜144時間)及びBTDS 20(144〜312時間)の適用後のブプレノルフィンについての血漿中濃度対時間曲線。
【図3】BTDS 5(0〜72時間)、BTDS 10(72〜144時間)及びBTDS(144〜312時間)の適用後のノルブプレノルフィンについての血漿中濃度対時間曲線。
【図4A】グループ(N=36)ごとの収縮期血圧の平均起立性変化及び血漿中ブプレノルフィン濃度の平均変化。
【図4B】グループ(N=36)ごとの収縮期血圧の平均起立性変化及び血漿中ブプレノルフィン濃度の平均変化。
【図4C】グループ(N=36)ごとの収縮期血圧の平均起立性変化及び血漿中ブプレノルフィン濃度の平均変化。
【図5A】グループ(N=36)ごとの拡張期血圧の平均起立性変化及び血漿中ブプレノルフィン濃度の平均変化。
【図5B】グループ(N=36)ごとの拡張期血圧の平均起立性変化及び血漿中ブプレノルフィン濃度の平均変化。
【図5C】グループ(N=36)ごとの拡張期血圧の平均起立性変化及び血漿中ブプレノルフィン濃度の平均変化。
【図6】若年及び高齢者被験者における血漿中ブプレノルフィン濃度対時間(平均±SD)。
【図7】若年被験者における平均血圧及び脈拍数対時間。
【図8】高齢者患者における平均血圧及び脈拍数対時間。
【図9A】BTDS及び対照グループについての平均疼痛強度に関する基線からの変化。
【図9B】BTDS及び対照グループについての平均疼痛強度に関する基線からの変化。
【図10A】BTDSグループと対照グループの間の「現時点での疼痛」に関する基線との差。
【図10B】BTDSグループと対照グループの間の「現時点での疼痛」に関する基線との差。
【図11A】効能がないために中止した患者の試験終了時における割合。
【図11B】効能がないために中止した患者の試験終了時における割合。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2002年12月13日出願の米国特許仮出願第60/433,423号の恩典を請求するものである。
【0002】
技術分野
本発明は、慢性疼痛の治療に有効な投与計画に関する。本計画は、上昇する用量のブプレノルフィンを含む1シリーズの経皮剤形を患者に投与することを含む。具体的には、高齢者高血圧被験者を含む高齢者患者における疼痛の治療、及び呼吸器疾患患者の治療に関する。本発明は、例えば、慢性閉塞性肺疾患、反応性気道疾患、心疾患、脊柱側弯症、脳性麻痺、若年性関節炎、又は術後疼痛に罹患しているものを含む、危険度が高い若年及び小児集団における疼痛の治療にも関する。
【0003】
背景技術
米国成人人口の約9%が、中等度から重度の癌無関連慢性疼痛に罹患していることが推定されている(American Academy of Pain Medicine, 2001)。1ヵ月より長く続く疼痛と定義することができる(Bonica, Semin Anesth 1986, 5 : 82-99)慢性疼痛は、常用の疼痛制御法では効果がでにくい、たゆまぬ持続性疼痛と説明することができる。9千万人もの米国人が、慢性疼痛に罹患しており、そのうち6千万人までが、数日から数年にわたる期間、一部又は完全に無力化している可能性がある(Bonica, Semin Anesth 1986, 5 : 82-99)。
【0004】
慢性疼痛は、幾つかの方法で分類することができる。1つの大まかな分類では、生理学的メカニズムの観点から説明できる体因性疼痛を、心理学的観点でより良好に理解される心因性疼痛と区別している。推定される病因による疼痛のさらなる分類が、関連の分類法によって試みられている。例えば、侵害受容器性疼痛は、体性又は内臓性、いずれかの疼痛感受性神経線維の活性化に起因する。体性神経が関与する場合、その疼痛は、典型的にはうずく痛み又は圧迫されるような痛みとして経験される。求心路遮断痛は、求心性経路の遮断をもたらす神経組織損傷に起因するものであり、交感神経遮断に対する反応を基にさらに区別することができる。最後に、心因性疼痛は、心理的な原因に起因するものであり、神経受容器性及び神経原性のものではない。
【0005】
長期に及ぶ疼痛は、その適応性のある生物学的役割を喪失させる。植物性兆候、例えば、倦怠、睡眠障害、食欲低下、食物に対する嗜好の喪失、体重減少、性欲減退及び便秘が、次第に発現する。抑うつ的情動が目立ってくることもある。特に、多くの患者において、精神的障害のほうが疼痛の継続的知覚より彼らの生活にとって破壊的である。
【0006】
慢性疼痛の罹患率は、高齢者(Mobily, J Aging Health 1994, 6 : 139-154; Crook et al., Pain 1984, 18 : 299-314)及び手術後の患者(Crook et al., Pain 1984, 18 : 299-314; Perttunen et al., Acta Anaesthesiol Scand 1999, 43 : 563-567; Callesen et al., Br J Surg 1999, 86:1528-1531)などの特定の集団において特に高い。高齢者の中で、地域社会で生活している人の25%から50%が、疼痛に罹患しており、ナーシングホームで生活している人の49%から83%が、日常生活の活動を妨げる疼痛に罹患していると推定されている(Ferrel and Ferrell, Compr Ther 1991, 17 : 53-58; Ferrell, Ann Ther Med 1995, 123: 681-687)。
【0007】
多種多様な薬剤(例えば、非ステロイド性抗炎症薬、アセトアミノフェン)を高齢者及び他の集団における慢性疼痛の治療に使用することができる(Brusso and Brose, Ann Rev. Med, 1998, 49 : 123-133)が、依然としてオピオイドがこの状態の重要な薬物療法源である(Cherny, J. Oncol Manag 2000, 9 : 8-15)。オピオイドは、オピオイド療法の便宜を増し、潜在的副作用を多少低下させる可能性がある経皮的制御送達(Ahmedzai, Eur. J. Cancer 1997, 33 : 58-514; Jeal and Benfield, Drugs 1997, 53 : 109-138; Mercadente, Cancer 1999, 86 : 1856-66)を含む様々な剤形で、投与することができる。このアプローチの利点には、数日毎に1回の適用、及び起立性低血圧などの有害事象をもたらすことがある高い血漿中薬物ピーク濃度の回避が挙げられる(Dayer et al., Drugs 1997, 53 : 18-24; Merecadante and Fulfaro, Oncology 1999, 13 : 215-220,225)。
【0008】
例えば、フェンタニールを投与するためのデュラゲシック(Duragesic)を含む、オピオイド鎮痛薬が活性成分である経皮送達システムは、市販されている。デュラゲシックパッチは、48時間から72時間(2から3日)まで十分な鎮痛をもたらすと言われている。
【0009】
経皮剤形での高齢者の治療では、それより若い人々に対する高齢者の皮膚の著しい変化を考慮しなければならない。例えば、高齢者では皮膚の厚さが減少し、皮脂分泌が減少する(Seindenari et al., Skin Pharmacol 1994, 7 : 201-209; Jacobsen et al., J Invest Dermatol 1985, 85 : 483-485)。老年期では皮膚のコラーゲン線維数が減少し(Lovell et al., Br J Dermatol 1987, 117: 419-428; Moragas et al., Analyt Quant Cytol Histol 1998, 20 : 493-499)、また皮膚への血流が減少する(Rooke et al., J Appl Physiol 1994, 77 : 11-14; Weiss et al, Age Ageing 1992, 21 : 237-241)。
【0010】
ブプレノルフィンは、若年患者においても、高齢者患者においても、静脈内経路、硬膜外経路、クモ膜下経路又は舌下経路を含む多数の異なる投与経路により送達したときに広範な患者における疼痛制御に有効であることが証明されている、μ−オピオイド受容体の強力な部分作動薬である(Inagaki et al. , Anesth Analg 1996, 83 : 530-536; Brema et al., Int J Clin Pharmacol Res 1996, 16 : 109-116; Capogna et al., Anaesthesia 1988, 43 : 128-130; Adrianensen et al., Acta Anaesthesiol Belg 1985, 36 : 33-40; Tauzin-Fin et al., Eur J Anaesthesiol 1998, 15 : 147-152; Nasar et al., Curr Med Res Opin 1986, 10 : 251-255)。ブプレノルフィンの幾つかのタイプの経皮製剤が、文献に報告されている。例えば、ハイル(Hille)らの米国特許第5,240,711号、ヒダカ(Hidaka)らの米国特許第5,225,199号、シャルマ(Sharma)らの米国特許第5,069,909号、チャン(Chien)らの米国特許第4,806,341号、ドラスト(Drust)らの米国特許第5,026,556号、コチンケ(Kochinke)らの米国特許第5,613,958号及びレダー(Reder)らの米国特許第5,968,547号を参照のこと。ローマン・セラピエ・システム社(Lohmann Therapie-Systeme GmbH & Co.)製のブプレノルフィン経皮送達システムが、商標名TRANSTEC(登録商標)で、現在、欧州連合において販売されている。これらのパッチは、20、30及び40mgのブプレノルフィンを含有し、近似的送達率、すなわち「流」速は、それぞれ35、52.5及び70μg/時である。しかし、現行のブプレノルフィン経皮システムは、7日の投与期間で処方される。これでは、漸増用量を必要とする患者が疼痛寛解が有効であるレベルに達するために、数週間かかることもある。
【0011】
慢性疼痛は、小児集団においても有意な問題であり、また慢性疼痛に随伴する肉体的及び精神的症状は、全健康に影響を及ぼすことがあり、成人慢性疼痛の発現の素因をもたらすこともある。小児において、慢性疼痛は、若年性関節炎、脳性麻痺、脊柱彎曲症、術後性のもの、及び癌を含む様々な病状によって引き起こされる。
【0012】
青年期及び若年性脊柱側弯症は、前頭面における側方弯曲によって特徴づけられる脊柱異常である。脊柱手術後の疼痛管理法には、静脈内注射、経口投与、患者管理型鎮痛薬送達システム、及び硬膜外カテーテル薬物送達が挙げられる。一般に、患者は、術後2〜4日間、これらの治療を併用し、その後は一般に経口鎮痛薬で十分である。しかし、残留疼痛を制御するために、術後3ヶ月以下の疼痛投与が必要である。
【0013】
若年性関節炎(JA)は、通常は16歳未満の小児患者を罹患させる、また多くの場合慢性疼痛を随伴する慢性関節炎性疾患を指す。JAは、関節の炎症が主症状である別の状態を包含し、再発と寛解のサイクルによってさらに特徴付けられる。現行の治療法には、腫脹を軽減するための治療、疾患関節の充分な動きを維持するための治療、疼痛を寛解するための治療、及び合併症を特定、治療及び予防するための処置が挙げられる。現在使用されている薬物には、非ステロイド性抗炎症薬(イブプロフェン及びナプロキセンなど)、メトトレキセート、スルファサラジン、ペニシラミン、及びヒドロキシクロロキンが挙げられる。ステロイド経口投与は有効であるが、長期使用に伴う有害な副作用を有する。疾患関節へのステロイド注射も有効であり得るが、この送達方式は、多くの場合、小児には問題が多い。エンブレル(Enbrel)などの新しい抗炎症モノクローナル抗体は、多くの治療耐性患者に間欠的寛解をもたらしている。
【0014】
脳性麻痺は、病因不明の疾患の一定範囲に付けられた集合名である。脳性麻痺に罹患している小児患者にとって共通の目標は、筋痙攣の管理及び防止である。硬膜外鎮痛法は、重大な整形外科処置を行う場合に特に価値がある(Nolan et al., Anesthesia 2000 Jan; 55(1) : 32-41)。また、厄介な処置である硬膜外ブピバカイン及びフェンタニールの持続注入を用いて、重度の合併症がないCPの小児に鎮痛をもたらしているが、間欠的硬膜外塊状注入でのモルヒネは、高い過剰鎮静発生率を伴う(Brenn et al., Can J Anaesth 1998, 45 (12): 1156-61)。痙攣の管理に使用される薬物の一部は、バクロフェン及びボツリヌス毒素である。
【0015】
一般に、小児において疼痛を寛解するための現行の薬物には、パラセタモール、アスピリン、非ステロイド性抗炎症組成物、オピオイド(天然のものと合成のもの、両方を含む)、及びオピオイド類似体が挙げられる。経皮又は経粘膜吸収によるオピオイド投与、及び脳脊髄幹鎮痛法(neuraxial analgesia)(Gohanu et al., Pediatr Clin North Am 2000, 47(3) : 559-87)の使用を含む、小児集団における疼痛制御のための新しい技法が提案されているが、長期疼痛制御の改善された方法が、依然として必要とされている。
【0016】
当該技術分野における進歩にもかかわらず、悪心又は起立性低血圧などの有害な副作用の発生率を実質的に上昇させることなく長期間にわたって有効鎮痛レベルのブプレノルフィンを提供するように、疼痛罹患患者を有効に治療する方法が依然として必要とされている。これらの関心事は、高齢者高血圧患者、呼吸器疾患患者及び小児患者のような危険度の高い患者に安全で有効な疼痛管理方法を提供することに関して、特に重要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、有害反応、例えば、悪心、便秘、嘔吐、頭痛、めまい及び傾眠など(しかし、これらに限定されない)を惹起することなく、又は少なくとも最小限にして、有効な鎮痛又は疼痛寛解を可能にするブプレノルフィンの特異的な投与計画を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
従って、本発明は、(1)5日以下である第一投与期間、第一のブプレノルフィン含有経皮剤形を、(2)5日以下である第二投与期間、前記第一剤形と同じ用量のブプレノルフィン又は前記第一剤形より多い用量のブプレノルフィンを含む第二のブプレノルフィン含有経皮剤形を、及び(3)第三投与期間、前記第二剤形より多い用量のブプレノルフィンを含む第三のブプレノルフィン含有経皮剤形を、患者に投与することを含む、患者において慢性疼痛を治療する方法を提供する。
【0019】
特定の実施形態において、前記第一、第二及び第三経皮剤形は、概算で、以下の表の一行に示す量のブプレノルフィンを含有する。
第一(mg) 第二(mg) 第三(mg)
5 5 10
5 5 20
5 5 30
5 10 20
5 10 30
5 10 40
5 20 40
5 30 40
10 10 20
10 10 30
10 10 40
10 20 30
10 20 40
10 30 40
20 20 30
20 20 40
20 30 40
【0020】
好ましくは、前記第一、第二及び第三投与期間は、各々、少なくとも2日である。さらに好ましくは、前記第一及び/又は第二投与期間は、5日、4日又は3日である。特定の実施形態において、前記第一投与期間は、2日である。もう1つの実施形態において、前記第二投与期間は、2日又は3日である。場合により、本発明の方法は、前記第三投与期間の後の第四投与期間に、少なくとも1回、第四のブプレノルフィン含有経皮剤形を投与することをさらに含む。例えば、前記第四投与期間は、2日であり得、前記第四剤形は、30又は40mgのブプレノルフィンを含有し得る。
【0021】
1つの実施形態において、前記第一剤形は、5mgのブプレノルフィンを含む。もう1つの実施形態において、前記第二剤形は、10mgのブプレノルフィンを含む。さらに他の実施形態において、前記第三剤形は、20、30又は40mgのブプレノルフィンを含み、その後の剤形は、30又は40mgのブプレノルフィンを含む。
1つの好ましい実施形態は、前記第一剤形が、3日以下の投与期間のために5mg以下のブプレノルフィンを含み、前記第二剤形が、3日以下の投与期間のために10mg以下のブプレノルフィンを含み、及び前記第三剤形が、20mg以下のブプレノルフィンを含み、前記第三投与期間が、7日以下続く実施形態である。
【0022】
特定の実施形態において、前記患者は、高齢者もしくは小児、高齢者高血圧患者、又は少なくとも1週間続くと予想される疼痛に罹患している患者である。疼痛が少なくとも1週間続くと予想される疾患には、患者が、変形性関節炎、慢性腰痛、術後疼痛に罹患しているか、広範囲の外傷から回復しつつある場合のものが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、前記投与計画は、収縮期血圧を少なくとも20mmHg及び/又は拡張期血圧を少なくとも10mmHg低下させる。前記経皮投与は、局所用ゲル、ローション、軟膏、経粘膜システム、経粘膜装置、及びイオン導入法による送達システムから成る群より選択される経皮システムによってもたらすことができる。
【0023】
本発明は、ブプレノルフィンの第一、第二、及び第三経皮剤形(この場合、前記第三剤形は、前記第一及び第二剤形より高い用量のブプレノルフィンを含む)を投与することにより、慢性疼痛をその必要がある患者において治療する方法も提供し、この方法は、前記第三剤形と同じ用量のブプレノルフィンを単に投与のに比べ、悪心、嘔吐及び頭痛から選択される有害事象の発生率を上昇させない。好ましくは、前記方法は、失神を誘発しない。1つの実施形態において、前記第一剤形は、5、10又は20mg以下のブプレノルフィンを含み、前記第二剤形は、10、20又は30mg以下のブプレノルフィンを含み、3日間投与され、及び前記第三剤形は、少なくとも20、30又は40mgのブプレノルフィンを含み、少なくとも2日間投与される。前記患者は、高齢者患者、高血圧に罹患している高齢者患者、又は高血圧の治療のためにサイアザイド利尿薬を服用している高齢者患者であり得る。特定の実施形態において、この投与計画は、収縮期血圧を少なくとも20mmHg及び/又は拡張期血圧を少なくとも10mmHg低下させる。
【0024】
本発明は、(1)第一投与期間、第一のブプレノルフィン含有経皮剤形を、(2)第二の投与期間、前記第一剤形より多い用量のブプレノルフィンを含む第二のブプレノルフィン含有経皮剤形を、及び(3)第三投与期間、前記第二剤形より多い用量のブプレノルフィンを含む第三のブプレノルフィン含有剤形を、患者に投与することにより、慢性疼痛を治療する方法も提供し、この場合、前記投与計画は、(a)投与24時間後の平均血漿中ブプレノルフィン濃度が、10〜100pg/mLの間、好ましくは20〜50pg/mLの間であること、(b)投与72時間後の平均血漿中ブプレノルフィン濃度が、25〜200pg/mLの間、好ましくは40〜100pg/mLの間であること、(c)投与144時間後の平均血漿中ブプレノルフィン濃度が、100〜250pg/mLの間、好ましくは100〜200pg/mLであること;及び(d)投与168時間後の平均血漿中ブプレノルフィン濃度が、400〜1000pg/mLの間、好ましくは少なくとも500pg/mLであることを特徴とする血漿中ブプレノルフィンプロフィールをもたらす。1つの実施形態において、前記血漿プロフィールは、図1に示すものと実質的に同様である。
【0025】
もう1つの実施形態において、前記患者は、高齢者であり、及び/又は高血圧に罹患している。
【0026】
もう1つの実施形態において、前記患者は、脊柱側弯症、脳性麻痺、若年性関節炎、癌又は術後疼痛に罹患している小児患者である。
【0027】
さらに他の実施形態において、前記経皮剤形は、経皮投与用品及び経皮投与用組成物から選択される。前記経皮投与用品は、例えば、拡散駆動型経皮システムであり得る。あるいは、前記経皮投与用組成物は、局所用ゲル、ローション、軟膏、経粘膜システム、経粘膜装置、及びイオン導入法による送達システムから成る群より選択することができる。
(発明の詳細な説明)
【0028】
本発明は、一定の有害反応を最小限にしつつ、そうした治療がすぐに必要な患者において有効な慢性疼痛治療を達成する方法を提供する。本発明は、経皮ブプレノルフィンの用量を急速に上昇させて、有害反応を誘発することなく又は有害反応を最小限にして有効な鎮痛を達成することができるという発見に、一部基づく(例えば、実施例5を参照のこと)。7日用経皮ブプレノルフィン剤形は、有効な疼痛療法への調整を遅らせることがあり、即時有効用量は、有害事象、特に悪心をもたらすことがある。それ故、本発明の治療計画は、疼痛、特に3日より長く続く疼痛を有効に治療することができる。そうした疼痛は、例えば、術後疼痛、癌に起因する疼痛、又は収縮性疼痛、ならびに小児の疼痛疾患、例えば、脊柱側弯症、若年性関節炎、収縮性疼痛及び脳性麻痺(しかし、これらに限定されない)であり得る。
【0029】
本方法は、少なくとも1つの漸増用量のブプレノルフィンを含む1シリーズの経皮剤形を患者に投与することを含む投与計画で、鎮痛に有効な量のブプレノルフィンを患者に投与することを含む。本発明の投与計画は、合併症を最小限にしつつ、又は一定の有害反応を減少させつつ、7日用用量増加計画より迅速に鎮痛を達成する点で、オピオイドについての先行技術の投与計画に勝る重要な利点を生じる。例えば、実施例1に記載するように、6日間でのBTDS 20への調整に基づく用量増加計画は、利尿薬での治療を受けている高齢者高血圧患者においても、健常な、治療を受けていない被験者においても、起立性低血圧の発現を導かなかった。起立性低血圧は、オピオイド鎮痛薬の投与の結果生じ得る公知有害事象の中の一つである(Thompson et al., Br J Anaesth 1998, 81: 152-154; “Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,” J. G. Hardman (Ed.), McGraw-Hill Professional Publishing, 2001, pp.530-532)。従って、必ずしもいずれかの特定のグループ又は患者集団に限定する必要はないが、本発明は、危険度の高い患者、例えば、高血圧患者などの心血管予備能不全の患者に有効な治療法を提供する。加えて、実施例6に記載するように、健常な被験者における悪心、嘔吐及び頭痛の発生率を、6日以内にBTDS 20に用量を増加させることにより、BTDS 20の直接投与と比較して低下させた。
【0030】
本発明の経皮投与計画は、高齢者、若年及び小児患者における血圧も低下させた。本投与計画は、本投与計画の使用の中止が必要となる有意な有害事象を生じることなく、血圧を低下させた。加えて、薬物動態試験は、高齢者被験者及び若年被験者における薬物の血漿中プロフィールが類似していることを示した。これは、特定の標的集団における特定の薬物動態学的投与調節の必要がないことを示唆している。対照的に、フェンタニール経皮投与システムでの先行試験は、高齢者患者では、呼吸抑制などの有害事象のため、パッチを除去する必要があった(Thompson et al., Br J Anaesth 1998, 81 : 152-154)。従って、本発明は、疼痛治療における効能を維持させつつ、又は増大さえもさせつつ、他のオピオイドで以前に見られたような有害事象を誘発しないオピオイド鎮痛薬の新規送達法を提供する。
【0031】
従って、本発明は、薬物療法での患者のコンプライアンス率及び治療効能を増大させる、ブプレノルフィンのより有効な経皮投与方法を提供する。本方法は、起立性低血圧など(しかし、これに限定されない)の有害事象の発現を減少させる。従って、本方法は、薬物療法での患者のコンプライアンス率及び治療効能を増大させる。特に、副作用の低減及び合併症の最少化(上記ならびに実施例1及び6を参照のこと)は、その主治療効果:疼痛制御を低減させない。
【0032】
あるいは、本発明の投与計画は、「少なくとも1つの増加用量のブプレノルフィンを含む1シリーズの経皮剤形」の投与という言葉で記述することができる。これは、前の剤形より多い用量のブプレノルフィンを各々有する少なくとも2つの経皮剤形を患者に適用すること指し、この場合、そのシリーズのブプレノルフィンの用量は、用量増加前、既定の日数、好ましくは3日間、直線的に上昇する。例えば、1つのシリーズの、3つの経皮剤形を、そのシリーズの各々の後続剤形がその前のものの2倍の用量のブプレノルフィンを有するように、第一剤形が5mgのブプレノルフィンを含有し、第二剤形が10mgのブプレノルフィンを含有し、第三剤形が20mgのブプレノルフィンを含有する投与計画で投与することができる。あるいは、そのシリーズの剤形は、それぞれ20mg、30mg及び40mgのブプレノルフィン、又はそれぞれ2mg、4mg及び8mgのブプレノルフィン、又は1mg、2mg又は3mgのブプレノルフィンを含むことができる。特定の投与計画(単位:mg)は、5−5−10、5−10−10、5−10−20、5−20−40、5−10−30、5−30−40、10−10−20、10−10−30、10−10−40、10−20−30、10−20−40及び10−30−40である。下で論じるように、本発明は、所望の用量のシリーズを収容しているキットを提供する。
【0033】
本明細書で用いる「BTDS」は、「ブプレノルフィン経皮システム」を意味し、「BTDS X」(この場合、「X」は、ゼロより大きな数である)は、Xミリグラムのブプレノルフィンを含有する経皮剤形を意味する。従って、「BTDS 5」は、約5mgのブプレノルフィンを含有する。好ましくは、BTDSは、塩基又は塩の形態、さらに好ましくは塩基の形態のブプレノルフィンを含有する。
【0034】
本発明の方法は、高齢者(65歳より上の年齢)、若年青年(17歳と45歳の間の年齢)、及び小児(誕生と16歳の間の年齢。新生児、幼児、小児及び青年と、多くの場合、呼ばれる年齢群を包含する)集団における患者を含む、疼痛治療が必要なあらゆる患者に投与することができる。
【0035】
前記患者は、危険度の高い患者として分類することができるが、そうである必要はない。本発明の文脈において、用語「危険度の高い」は、その患者が、オピオイド療法に禁忌を示す、又はそうした療法からの有害事象の可能性を増大させる持病を有する患者を意味する。そうした持病は、年齢を包含し、危険度の高い集団には、高齢者及び小児を挙げることができる。小児集団には、特に、学齢の小児、さらに特に、危険度の高い疾患、例えば気管支肺形成異常に罹患している幼児が挙げられる。危険度の高い患者、特に高齢者患者は、追加の薬物を用いて、血圧をさらに低下させることができる。そうした薬物には、利尿薬、β−受容体遮断薬、ACE阻害剤、アンギオテンシンII受容体拮抗薬、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。加えて、危険度の高い集団の他のグループには、心疾患に罹患している人が挙げられる。具体的には、この治療グループは、うっ血性心疾患の患者;右左シャント、心室中隔欠損症、動脈管開存症、肺動脈バイパス形成、ブラロック(Blalock)−タウシグ(Tausig)及びフォンターネ(Fontane)処置後状態を伴う小児を包含し得る。
本発明の方法は、疼痛治療が必要なあらゆる患者に投与することができる。患者は、特別な病状を有するものとして分類することができるが、そうである必要ははい。これらの病状には、高血圧、脊柱彎曲症、脳性麻痺、収縮性疼痛及び他の癌によるものが挙げられるが、これらに限定されない。患者は、必要な場合には、追加の薬物を用いて、さらに疼痛を軽減することができる。そうした薬物には、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、アセトアミノフェン(又はパラセタモール)ならびに即時放出型μ−作動薬オピオイド及び/又は非経口オピオイド、ならびにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本発明を既存の薬物の代わりに使用することもでき、その結果、他のタイプの薬物の必要性を低下させることができる。
【0036】
鎮痛薬の「鎮痛に有効な」量は、患者が経験する疼痛のレベルを低下させることができる薬剤の量を意味する。患者が経験する疼痛のレベルは、視覚アナログ尺度(VAS)又はリカート(Likert)型尺度の使用により評定することができる。VASは、線の一方の端が無痛を表し、線のもう一方の端が想像できるかぎり最悪の痛みを表す直線である。患者には、各時点での自分たちの痛みを考えてその線上に印をつけるように頼み、無痛からその印までの長さは、その全尺度長と関連付けることができる。リカート型尺度は、記載に対する同意又は不同意の程度に基づく、通常は1から5の範囲の評点尺度である。同様のタイプの尺度ではあるが、11点尺度(0から10の範囲)に基づくものを使用することもできる。そうした疼痛尺度を適用して、患者が治療中に経験する疼痛レベルの変化、例えば、患者又は患者の集団が疼痛療法の開始前及び開始後に経験する疼痛レベルの低下を視覚化することができる。
【0037】
本明細書で用いる用語「高血圧」は、血圧読み取り前と比較して異常に高い動脈血圧を指し、その異常に高い値が、特定期間にわたって維持される。従来、その期間は、3〜6ヶ月である。その上昇は、収縮期圧、拡張期圧、又はそれら両方において観察することができる。従来、成人における高血圧は、140/90mmHgと等しい、又はそれより高い血圧と定義される。血圧は、当該技術分野において公知のいずれかの方法によって測定することができる。そうした方法には、直接動脈穿刺、振動測定法、ドップラー超音波検査法、及び血圧測定法が挙げられるが、これらに限定されない。通常の実施において、血圧は、聴診器を上腕動脈の上に配置し、血圧計のカフを上腕のまわりに配置して測定する。血圧計のカフは、血流の有意な閉塞が達成され、血液の拍動を聞くことができなくなるまでポンプによって膨らませる。収縮期血圧である、血流の最初の音(第一カラトコフ(Karatkoff)音)が聞こえるまで、圧を開放する。血流をもはや聞くことができなくなるまでさらに圧力を開放し、その時点で、拡張期圧の読み取り値を記録する(Bate’s Guide to Physical Examination and History Taking, 6th ed., L. S. Bickley, R. A.Hoekelman, B. Bates, pp. 276-280, Lippincott Williams & Wilkins Publishers, 1995)。血圧は、水銀ミリメートル(mmHg)で測定する。逆に、「低血圧」は、集団正常値に対して異常に低い血圧を指す。
【0038】
「抗高血圧活性」又は「血圧を低下させる」という言い回しは、患者、好ましくは高血圧の患者の血圧を低下させる活性薬剤の効果を指す。1つの実施形態では、血圧降下を経験する人の血圧を、収縮期圧については少なくとも20mmHg又は拡張期圧については少なくとも10mmHg低下させる。もう1つの実施形態において、抗高血圧活性は、収縮期圧については少なくとも20mmHg及び拡張期圧については少なくとも10mmHg、血圧を低下させる活性薬剤の効果を指す。本活性薬剤は、高血圧でない人において血圧を低下させることもあるし、させないこともあり、また高血圧の人すべてにおいて血圧を低下させるとはかぎらない。好ましい実施形態において、経皮ブプレノルフィンは、患者の血圧を140/90mmHgに低下させる。
【0039】
用語「起立性低血圧」は、臥位から急に立ち上がることによって引き起こされる測定血圧の著しい低下を指す。
【0040】
本明細書で用いる用語「既定の日数」は、薬物療法開始前に、その薬物の用量を必要な患者に投与する時間の長さを指す。好ましくは、その薬物はオピオイドであり、さらに好ましくはそのオピオイドは、ブプレノルフィンである。本発明の文脈において、その薬物は、薬物療法の開始前にその日数、投与される。その既定の日数は、個人間で変化し得り、また通常の当業者は、本出願の中で論じているガイドラインを用いて、それを決定することができる。好ましい実施形態において、既定の日数は、3日である。
【0041】
本明細書における用語「有害事象(AE)」又は「有害な経験」は、患者又は医薬品の投与を受ける臨床検査の被験者におけるあらゆる有害な医療上のできごとを意味し、それは必ずしもこの治療と因果関係があるとはかぎらない。深刻な有害事象(経験)又は反応は、死をもたらす、生命にかかわる、入院患者に入院もしくは既存の入院を長期化求める、永続性のもしくは有意な能力障害/不能状態をもたらす、又は先天的異常/出生時欠損である、あらゆる用量でのあらゆる不都合な医療上のできごとである。(Guideline for Industry-Clinical Safety Data Management: Definitions and Standards for Expedited reporting. ICH-E2A, March 1995. World Wide Web (www. ) address fda.gov/MedWatch/report/iche2a.pdf, pp.5-7)。ある治療計画における有害事象の例には、悪心、便秘、嘔吐、頭痛、めまい、傾眠、起立性低血圧、呼吸抑制、胆嚢炎、及び腹痛が挙げられるが、これらに限定されない(さらなる有害事象につては、表5を参照のこと)。
【0042】
「部分作動薬」は、受容体に結合するが、完全には刺激しない作用因子を本明細書では意味する。受容体において高濃度ででも、低濃度ででもこの作用因子は結合し、その受容体から可能な総薬理活性の機能を発生させる。加えて、この作用因子は、完全作動薬の結合を妨げ、その結果、その受容体からの総活性を遮断する。Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, J. G. Hardman (Ed.), McGraw-Hill Professional Publishing, 2001, p. 31-32も参照のこと。
【0043】
(ブプレノルフィン)
本発明は、ブプレノルフィン又はその薬学的に許容可能な塩、エーテル誘導体、エステル誘導体、酸誘導体、エナンチオマー、ジアステレオマー、ラセミ体、多形もしくは溶媒和物に関する。薬理学的に、ブプレノルフィンは、オピオイド部分作動薬であり、オピオイド作動薬の多くの作用、例えば鎮痛を共有する。部分作動薬は、一般に、受容体に対して親和性を有する化合物を包含するが、完全作動薬とは異なり、受容体の高い比率をその化合物が占有している場合でさえ、その薬理活性を小程度にしか惹起しない。鎮痛に対する「天井効果」(すなわち、用量増加に伴って追加される鎮痛効果がない)は、多くの動物モデルにおけるブプレノルフィンに関して充分に文献に記載されている。それは、高親油性であり、オピオイド受容体からゆっくりと解離する。ブプレノルフィンは、中枢神経系(「CNS」)及び抹消組織内のμオピオイド受容体における部分作動薬であると当該技術分野ではみなされている。さらに、ブプレノルフィンは、μ受容体及びκ1受容体に高い親和性で結合し、δ受容体にはそれより低い親和性で結合すると考えられている。κ受容体における内作動薬活性は、限られているようであり、大部分の証拠は、ブプレノルフィンがκ受容体において拮抗薬活性を有することを示唆している。κ作動作用の欠如は、作動薬/拮抗薬でよく見られる不快及び精神異常作用がブプレノルフィンには全くないことの説明となる。他の研究は、ブプレノルフィンのオピオイド拮抗作用が、δオピオイド受容体との相互作用によって媒介され得ることを示唆している。
ブプレノルフィンが、ゆっくりとμ受容体と結合し、μ受容体からゆっくりと解離することは、当該技術分野において公知である。μ受容体に対するブプレノルフィンの高い親和性ならびに前記受容体へのそのゆっくりとした結合及び解離によって、鎮痛の長期持続を説明することができ、その薬物で観察される限定的肉体的依存能を一部説明することができると考えられる。高親和性結合は、ブプレノルフィンが、他の投与オピオイドのμ作動薬作用を阻害できるということの説明にもなる。
【0044】
他のオピオイド作動薬と同様に、ブプレノルフィンは、用量に関連した鎮痛をもたらす。正確なメカニズムは、完全には証明されていないが、鎮痛は、中枢神経系内のμ及びことによるとκオピオイド受容体に対するブプレノルフィンの高い親和性の結果として生じるように見える。この薬物は、痛覚閾値(有害刺激に対する求心性神経終末の閾値)を変化させることもできる。体重ベースで、非経口ブプレノルフィンの鎮痛効力は、非経口モルヒネのものの約25から約50倍、ペンタゾシンのものの約200倍、及びメペリジンのものの約600倍であるように見える。
【0045】
(塩及び誘導体)
本活性化合物の様々な薬学的に許容可能な塩、エーテル誘導体、エステル誘導体、酸誘導体、及び水溶性変更性誘導体も本発明に包含される。本発明は、さらに、本化合物の個々のエナンチオマー、ジアステレオマー、ラセミ体及び他の異性体すべてを包含する。本発明は、本化合物のすべての多形ならびに溶媒和物、例えば、水和物及び有機溶媒とで形成されたものも包含する。そうした異性体、多形及び溶媒和物は、本明細書に提供する開示を基に、当該技術分野において公知の方法、例えば、位置特異的及び/又はエナンチオ選択的合成及び分割によって調製することができる。
【0046】
本化合物の適する塩には、酸付加塩、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、過塩素酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、炭酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、サリチル酸、p−アミノサリチル酸、2−フェノキシ安息香酸、及び2−アセトキシ安息香酸とで作られたもの;サッカリンとで作られた塩;アルカリ金属塩、例えば、ナトリウム及びカリウム塩;アルカリ土類金属塩、例えば、カルシウム及びマグネシウム塩;ならびに有機又は無機配位子とで形成された塩、例えば四級アンモニウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。
追加の適する塩には、本発明の化合物の酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物、エデト酸カルシウム塩、カンシル酸、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エディシレート、エストレート、エシレート、フマル酸塩、グルセプテート、グルコネート、グルタメート、グリコリルアルサニレート、ヘキシルレソルシネート、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエート、ヨウ化物、イソチオネート、乳酸塩、ラクトビオネート、ラウレート、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシレート、臭化メチル塩、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、ムケート(mucate)、ナプシレート、硝酸塩、N−メチルグルカミンアンモニウム塩、オレイン酸塩、パモ酸塩(エンボネート)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロネート、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、硫酸塩、セバセテート、コハク酸塩、タンネート、酒石酸塩、テオクレート、トシレート、トリエチオダイド及びバレレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
本発明は、本発明の化合物のプロドラッグを包含する。プロドラッグには、ブプレノルフィンにインビボで容易に転化することができるブプレノルフィンの機能性誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。適するプロドラッグ誘導体の選択及び調製のための従来の手順は、例えば、「Design of Prodrugs」, ed. H. Bundgaard, Elsevier, 1985に記載されている。
【0048】
(経皮剤形)
経皮剤形は、例えばオピオイド鎮痛薬などの鎮痛薬を含む(しかし、これらに限定されない)多数の異なる活性治療有効薬の送達に適便な剤形である。典型的なオピオイド鎮痛薬には、フェンタニール、ブプレノルフィン、エトルフィン、及び他の高力価麻薬が挙げられるが、これらに限定されない。経皮剤形は、活性薬剤の時限放出及び持続放出に特に有用である。
【0049】
経皮剤形は、経皮投与用品及び経皮投与用組成物に分類することができる。最も一般的な経皮投与用品は、液体レザバー又は接着マトリックス中に薬物を配したシステムを使用する拡散駆動型経皮システム(経皮パッチ)である。経皮投与用組成物には、局所用ゲル、ローション、軟膏、経粘膜システム及び装置、ならびにイオン導入法(電気拡散)による送達システムが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、経皮剤形は、経皮パッチである。
【0050】
本医薬組成物は、経皮剤形、例えば、液体レザバー又は接着マトリックス中に薬物を配したシステムを使用する拡散駆動型経皮システム(経皮パッチ)、局所用ゲル、ローション、軟膏、経粘膜システム及び装置、ならびにイオン導入法(電子拡散)による送達システムとして処方される。ブプレノルフィンの時限放出及び持続放出のために、本発明の投与計画では経皮剤形を使用する。
【0051】
本発明に従って使用される経皮剤形は、好ましくは、ブプレノルフィン不透過性の薬学的に許容可能な材料で製造された裏層を含む。この裏層は、好ましくは、活性薬剤、例えばブプレノルフィンに対する保護カバーとしての役割を果たし、また支持機能を提供することもできる。裏層の製造に適する材料の例は、高及び低密度ポリエチレンのフィルム、ポリプロピレンのフィルム、ポリビニルクロライドのフィルム、ポリウレタンのフィルム、ポリエステル、例えばポリ(エチレンフタレート)のフィルム、金属箔、そうした適するポリマーフィルムの金属箔積層品、織布(前記レザバーの成分がそれらの物理的特性などのためにその織物を透過することができない場合)である。好ましくは、裏層に使用される材料は、アルミニウム箔などの金属箔とそうしたポリマーの積層品である。裏層は、望ましい保護及び支持機能を提供するであろうあらゆる適切な厚さであり得る。適する厚さは、約10から約200マイクロメートルであろう。望ましい材料及び厚さは、当業者には明らかであろう。
【0052】
一定の好ましい実施形態において、本発明に従って使用される経皮剤形は、ポリマーマトリックス層を含む。一般に、生体的に許容可能なポリマーマトリックスを形成するために用いられるポリマーは、薬剤が制御された速度で通過できる薄い壁又は被膜を形成することができるものである。前記ポリマーマトリックスに含めるための材料の例の非限定的なリストには、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/エチレンアクリレートコポリマー、エチレンビニルアセテートコポリマー、シリコーン、ゴム、ゴム様合成ホモポリマー、コポリマー又はブロックポリマー、ポリアクリル酸エステル及びそれらのコポリマー、ポリウレタン、ポリイソブチレン、塩素化ポリエチレン、ポリビニルクロライド、ビニルクロライド−ビニルアセテートコポリマー、ポリメタクリレートポリマー(ヒドロゲル)、ポリビニリデンクロライド、ポリ(エチレンテレフタレート)、エチレン−ビニルアルコールコポリマー、エチレン−ビニルオキシエタノールコポリマー、ポリシロキサン−ポリメタクリレートコポリマーなどのシリコーンコポリマーを含むシリコーン、セルロースポリマー(例えば、エチルセルロース、及びセルロースエステル)、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ならびにそれらの混合物が含まれる。前記ポリマーマトリックス層に含めるための材料の例は、一般的なポリジメチルシロキサン構造のシリコーンエラストマー(例えば、シリコーンポリマー)である。好ましいシリコーンポリマーは、架橋しており、薬学的に許容可能である。ポリマーマトリックスに含めるための他の好ましい材料には、適する過酸化物触媒を使用して架橋することができるジメチル及び/又はジメチルビニルシロキサン単位を有する架橋性コポリマーであるシリコーンポリマーが挙げられる。スチレン及び1,3−ジエンに基づくブロックコポリマー(特に、スチレン−ブタジエン・ブロックコポリマーの直鎖スチレン−イソプレン・ブロックコポリマー)、ポリイソブチレン、アクリレート及び/又はメタクリレートに基づくポリマーから成るポリマー類も好ましい。
【0053】
ポリマーマトリックス層は、薬学的に許容可能な架橋剤を場合によっては含むことができる。適する架橋剤には、例えばテトラプロポキシシランが挙げられる。本発明の方法に従って使用される好ましい経皮送達システムは、望ましい投与期間、例えば約2日から約8日間、患者の皮膚にその剤形を貼り付けるための接着層を含む。その剤形の接着層が、望ましい期間、接着を施すことに失敗した場合、例えば、接着テープ、例えば外科用テープで患者の皮膚にその剤形を貼り付けることによって、その剤形と皮膚の間の接触を維持することができる。患者の皮膚へのその剤形の接着は、その剤形の接着層のみによって達成してもよいし、又は外科用テープなどの周囲接着源を伴って達成してもよいが、その剤形は、必要な投与期間、患者の皮膚に好ましく接着されていなければならない。
【0054】
接着層は、その剤形と薬学的に許容可能であり、好ましくは低アレルギー性である当該技術分野において公知のあらゆる接着剤、例えば、ポリアクリル酸接着性ポリマー、アクリレートコポリマー(例えばポリアクリレート)及びポリイソブチレン接着性ポリマーの使用を好ましくは含む。本発明の他の好ましい実施形態において、接着剤は、好ましくは低アレルギー性である感圧接触接着剤である。
【0055】
本発明に従って使用することができる経皮剤形は、場合によっては浸透増進薬を含むことができる。浸透増進薬は、患者の血流へのブプレノルフィンの浸透及び/又は吸収を促進する化合物である。浸透増進剤の非限定的なリストには、ポリエチレングリコール、界面活性剤などが含まれる。
【0056】
あるいは、ブプレノルフィンの透過は、その剤形を患者の望ましい部位に適用した後、例えば閉鎖包帯で閉鎖することにより増進することができる。浸透は、例えば刈り込むこと、剃ること、又は脱毛薬の使用により適用部位から毛髪を除去することによって、増進することもできる。もう1つの浸透増進因子は、熱である。熱的増進は、数ある中でも、経皮剤形の適用後にその適用部位に対して赤外線ランプなどの放射熱形を使用することによって誘導することができる。ブプレノルフィンの浸透を増進する他の手段、例えばイオン導入法による手段の使用も、本発明の範囲内であると考えられる。
【0057】
本発明に従って使用することができる好ましい経皮剤形は、非透過性裏層、例えばポリエステル製のもの;接着層、例えばポリアクリレート製のもの;及びブプレノルフィン及び他の望ましい製薬助剤、例えば軟化剤、浸透増進剤、粘度調節剤などを含有するマトリックスを含む。
【0058】
本活性薬剤、ブプレノルフィンは、薬物レザバー、薬物マトリックス又は薬物接着剤層の中の装置に含めることができる。パッチのこの面積、及び単位面積あたりの活性薬剤の量によって、通常の当業者が容易に決定できるような限界用量が決まる。
【0059】
一定の好ましい経皮送達システムは、軟化剤も含む。適する軟化剤には、高級アルコール、例えば、ドデカノール、ウンデカノール、オクタノール;カルボン酸のエステル(この場合、そのアルコール成分は、ポリエトキシル化アルコールであってもよい);ジカルボン酸のジエステル、例えば、ジ−n−ブチルアジアペート;及びトリグリセリド、特に、カプリル酸/カプリン酸又はヤシ油の中鎖トリグリセリドが挙げられ、これらは、特に適することが証明された。適する軟化剤のさらなる例は、多価アルコール、例えば、レブリン酸、コクプリル酸(cocprylic acid)グリセロール及び1,2−プロパンジオールであり、これらは、ポリエチレングリコールによってエーテル化することもできる。
【0060】
ブプレノルフィン溶媒も本発明の経皮送達システムに含めることができる。好ましくは、前記溶媒は、塩の形成の完了を回避するために十分な程度までブプレノルフィンを溶解する。適する溶媒の非限定的な例には、少なくとも1つの酸性基を有するものが挙げられる。ジカルボン酸のモノエステル、例えば、モノメチルグルタレート及びモノメチルアジペートが、特に適する。
【0061】
前記レザバー又はマトリックスに含めることができる他の薬学的に許容可能な化合物には、溶媒、例えば、イソプロピルアルコールなどのアルコール;浸透増進剤、例えば、上に記載したもの;及び粘度調節剤、例えば、セルロース誘導体、天然又は合成ゴム(例えばグアールガム)などが挙げられる。
【0062】
好ましい実施形態において、本経皮剤形は、除去可能な保護層を含む。前記除去可能な保護層は、適用前に除去され、それらを例えばシリコーン処理によって除去可能にするならば、上に記載した裏層の製造に使用される材料から成る。他の除去可能な保護層は、例えば、ポリテトラ−フルオロエチレン、処理紙、アロフェン、ポリビニルクロライドなどである。一般に、除去可能な保護層は、接着層と接触した状態にあり、適用が望まれる時まで接着層の完全性を維持する適便な手段となる。
【0063】
本発明に従って使用される経皮剤形の組成及び使用される装置のタイプは、その装置が、望ましい期間、その経皮剤形の望ましい流量及び/又は望ましい送達速度で、活性薬剤、例えばブプレノルフィンを送達するならば、本発明の方法にとって重要とは考えられない。
【0064】
本発明に従って使用するための一定の好ましい経皮剤形は、ハイル(Hille)らの米国特許第5,240,711号(LTS・ローマン・セラピエ・システム社(LTS Lohmann Therapie-Systeme GmbH & Co.)に譲渡された)に記載されている。前記特許は、本明細書に参照して組み込まれている。そうしたブプレノルフィン経皮送達システムは、ブプレノルフィン及び場合によっては感圧接着剤と併用した浸透増進剤を含有する不透過性裏層を有する積層複合体であり得る。前記第5,240,711号特許の好ましい経皮剤形は、(i)ブプレノルフィン不透過性のポリエステル裏層、(ii)ポリアクリレート接着層、(iii)ポリエステル分離層;ならびに(iv)ブプレノルフィン、ブプレノルフィン用の溶媒、軟化剤及びポリアクリレート接着剤を含有するマトリックスを含む。前記ブプレノルフィン溶媒は、最終的な製剤の中に存在していてもよいし、していなくてもよい。そこに記載されている経皮送達装置は、活性物質不透過性の裏層、感圧接着剤レザバー層及び場合によっては除去可能な保護層を具備する。好ましくは、前記レザバー層は、(重量で)約10から約95%のポリマー材料、(重量で)約0.1から約40%の柔軟剤、(重量で)約0.1から約30%のブプレノルフィンを含む。ブプレノルフィン基剤又はその薬学的に許容可能な塩のための溶媒は、(重量で)約0.1から約30%ほど含めることができる。
【0065】
本発明の投与計画は、幾つかの別個の投与期間を含む。投与期間は、そのシリーズの経皮剤形のうちの1つが患者に投与される時間であり、その投与計画は、そのシリーズの各経皮剤形の投与のための別個の投与期間から成るであろう。従って、例えば、患者は、そのシリーズの第一の経皮剤形を3日続けて身に付けることができる。そのパッチは、例えば第五肋間腔の腋窩中線に配置してもよい。除去したら、患者は、第二剤形をさらに3日続けて身に付けることができ、その後、患者は、第三剤形をさらに7日間身に付けることができる。好ましい実施形態において、望ましい用量、すなわち第三用量レベルが達成されるまでの本投与計画の全治療期間は、6日である。その後、無期限にこの用量を維持することができる。用量の増加が必要な場合には、適切な間隔で、例えば3日ごとに用量を増加してもよい。
【0066】
本発明の剤形は、1つ又はそれ以上の不活性化剤も含むことができる。用語「不活性化剤」は、その経皮剤形の乱用の可能性を低下させるために、活性薬剤を不活性化又は架橋する化合物を指す。不活性化剤の非限定的な例には、重合剤、光開始剤及びホルマリンが挙げられるが、これらに限定されない。重合剤の例には、ジイソシアネート、過酸化物、ジイミド、ジオール、トリオール、エポキシド、シアノアクリレート、及びUV活性化モノマーが挙げられる。
【0067】
好ましい実施形態において、本発明の方法は、高齢者、例えば65歳又はそれより高齢の患者において慢性疼痛を治療するために用いられる。もう1つの好ましい実施形態において、本発明の方法は、小児集団において慢性疼痛を治療するために用いられる。
【0068】
本発明の方法では、好ましくは、患者におけるブプレノルフィンの血漿中濃度の漸進的上昇を達成する方法で、ブプレノルフィンを投与する。好ましい実施形態において、本発明の方法によって達成される血漿プロフィールは、次のように説明することができる。
(a)投与24時間後の平均血漿中ブプレノルフィン濃度は、10〜100pg/mL、好ましくは20〜50pg/mLの間である;
(b)投与72時間後の平均血漿中ブプレノルフィン濃度は、25〜200pg/mL、好ましくは40〜100pg/mLの間である;
(c)投与144時間後の平均血漿中ブプレノルフィン濃度は、100〜250pg/mL、好ましくは150〜200pg/mLの間である;及び
(d)投与168時間後の平均血漿中ブプレノルフィン濃度は、400〜1000pg/mLの間、好ましくは、少なくとも500pg/mL、又は患者の必要性に依存してそれ以上である。
【0069】
好ましい実施形態において、本発明の方法は、図2に示すものと実質的に同様の血漿プロフィールを達成する。「実質的に同様」は、最大血漿中濃度(Cmax)又は血漿中濃度−時間経過プロフィールの下の面積(AUC)が、図2に示す基準プロフィールのものと30%より大きく異ならないを指す。好ましくは、最大血漿中濃度(Cmax)及び/又は血漿中濃度−時間経過プロフィールの下の面積(AUC)は、図2に示す基準プロフィールのものとは20%より大きく、さらにいっそう好ましくは10%より大きく異ならない。あるいは、血漿プロフィールは、食品医薬品局(FDA)のガイドライン(21 C. F. R. 320, and “Guidance for Industry-Statistical Approaches to Establishing Bioequivalence” U. S. Dept. of Health and Human Services, FDA, and CDER, January 2001参照のこと)に従って判定した場合、基準プロフィールと生体内利用率が等価である。
【0070】
局所製剤は、典型的には懸濁化剤及び場合によっては消泡剤を含有する。そうした局所製剤は、水薬、アルコール溶液、局所用クレンザー、クレンジングクリーム、スキンゲル、スキンローション、及びクリーム又はゲル処方(水溶液及び水性懸濁液が挙げられるが、これらに限定されない)でのシャンプーであり得る。
【0071】
本発明の化合物は、リポソーム送達システム、例えば、経皮用製品又は経皮用組成物に含めることができる小さな単層ベシクル、大きな単層ベシクル及び多層ベシクルなどの形態で投与することができる。リポソームは、様々なリン脂質、例えば、コレステロール、ステアリルアミン又はホスファチジルコリンから形成することができる。
【0072】
本経皮剤形は、当該技術分野において公知のいずれかの方法によって処方することができ、提案のとおり投与することができる。そうした処方は、米国特許第4,806,341号、同第5,240,711号及び同第5,968,547号に記載されている。
【0073】
(患者集団)
本明細書に記載するような本発明の用量増加計画は、小児患者を含むあらゆる年齢群の患者の疼痛療法に適用することができる。前記小児患者は、脊柱側弯症、若年性関節炎、ならびに収縮性疼痛、鎌状赤血球疼痛及び持続性(3日より長い)術後疼痛を含む(しかし、これらに限定されない)疾患からの慢性疼痛症状を患っていてもよい。
【0074】
小児集団への特定のBTDS投与は、注射にまつわる針の不快感を伴わず、すなわち経口投与法で迅速な用量増加をもたらす。さらに、小児の疼痛の評定は、小児がその不快感を取り次ぐことができないため、難しいことがあり、それ故、治療が遅れることがある。BTDSパッチの適用は、背中への配置である可能性が高く、その結果、薬物の除去が回避されるであろうという点も、患者のコンプライアンスを増す。
【0075】
本発明において、小児集団のための投与計画は、目標血漿中レベルを達成する際の吸収及び代謝の差により体重差を補正することができるので、成人集団のものに厳密に合わせることができる。一般に、小児は、同じオピオイド血中レベルを達成するために、1ポンドあたりで約30〜40%多く必要とする。例えば、BTDS 20を使用する25kg(55ポンド)の小児は、同じBTDS 20を使用する50kgの成人とほぼ同様の血漿中レベルを達成することができる。従って、好ましい実施形態において、小児患者のための投与スケジュールは、成人のものと同じである。
【0076】
(投与)
本発明の単位剤形は、慢性疼痛に罹患している患者、好ましくは人間に投与される。好ましい実施形態において、患者は、高齢者である。もう1つの好ましい実施形態において、患者は、小児である。本発明の単位剤形は、あらゆる潜在的毒性を最小限にしつつ最適な活性を得るように定義した投与計画で投与することができる。例えば、本方法は、段階的、上昇的用量のブプレノルフィンを含む1シリーズの経皮剤形を患者に投与することを含む投与計画で、鎮痛に有効な量のブプレノルフィンを患者に投与することを含む。好ましくは、本投与計画は、次の段階を含む:
(a)第一投与期間、第一のブプレノルフィン含有経皮剤形を患者に投与する段階;
(b)第二投与期間、前記第一剤形と同じ又はそれより多い用量のブプレノルフィンを含む第二のブプレノルフィン含有経皮剤形を患者に投与する段階;及び
(c)第三投与期間、前記第二剤形より多い用量のブプレノルフィンを含む第三のブプレノルフィン含有経皮剤形を患者に投与する段階。
【0077】
特定の実施形態において、前記第一剤形は、5mg以下のブプレノルフィンを含み、前記第一投与期間は、少なくとも約2日であり、前記第二剤形は、10mg以下のブプレノルフィンを含み、前記第二投与期間は、少なくとも約3日であり、前記第三剤形は、20mg以下のブプレノルフィンを含み、前記第三投与期間は、少なくとも約2日である。もう1つの特定の実施形態において、前記第一及び第二投与期間は、各々約7日未満であり、好ましくは、約5日未満、さらにいっそう好ましくは約3日以下である。
【0078】
もう1つの実施形態では、後続の剤形を投与することができる。例えば、目標鎮痛レベルが、第三投与期間で達成される場合、第三剤形は、約2日ごとから約1週間ごとにわたる頻度でパッチを交換しながら、無期限の期間、継続的に投与することができる。目標鎮痛レベルが、第三投与期間で達成されない場合、30mgのブプレノルフィン及び40mgのブプレノルフィン負荷で出発して漸増的に後続剤形を用いることができる。
【0079】
本発明の化合物の用量は、様々な因子、例えば、基礎疾患状態、その個体の状態、体重、性別及び年齢、ならびに投与方式によって変化し得る。本発明の化合物を利用する投与の既定間隔又は計画は、患者のタイプ、種、年齢、体重、性別及び病状;治療すべき疾患の重症度;投与経路;患者の腎機能及び肝機能;ならびに利用する特定の化合物を含む様々な因子に従って選択される。通常の技術の医師又は獣医師は、その疾患を予防する、その疾患に対抗する、又はその疾患の進行を阻止するために必要な薬物の有効量を容易に決定し、処方することができる。毒性を伴うことなく効能を生じる範囲内の薬物濃度を達成する際の最適精度には、標的部位の薬物利用能の動態に基づく計画が必要である。これは、薬物の吸収、分布、代謝及び排泄の考慮を含む。
【0080】
本発明の組成物又は剤形は、経皮剤形として投与されるとき、通常の当業者が決定できるようなあらゆる身体部位に施すことができる。例えば、本組成物又は剤形は、患者の上肢、下肢又は胸部に施すことができる。小児についての好ましい実施形態において、好ましくは、その配置は、その経皮ユニットが取れるの防ぐために背中への配置である。各回、同じ位置に用量を繰り返し投与してもよいし、しなくともよい。
【0081】
一般に、局所製剤は、その局所製剤の全重量100%を基準にして、約0.01から約100重量%、好ましくは約3から約80重量%の本化合物を含有する。一般に、経皮剤形は、その剤形の全重量100%を基準にして、約0.01から約100重量%、好ましくは約3から約50重量%の本化合物を含有する。
本発明の方法において使用される剤形は、単独で投与してもよいし、又は他の活性薬剤と併用で投与してもよい。別の製剤の形態の1つより多くの活性薬剤との併用治療については、それらの活性薬剤を同時に投与することができ、又は時間をずらして別々に各々を投与することができる。望ましい効果を達成するために上に記載したような他の活性薬剤と併用する時には、投与量を調節することができる。その一方で、これらの様々な活性薬剤の単位剤形を独自に最適化し、併用して、いずれかの活性薬剤を単独で使用した場合より病状が大きく軽減される相乗的な結果を達成することができる。
【0082】
小児集団への特定のBTDSの投与は、注射にまつわる針の不快感を伴うことなく、すなわち経口投与で迅速な用量増加をもたらす点で有利である。本発明では、最適な疼痛寛解までの時間が、大きく短縮される。BTDSパッチの適用が、背中への配置である可能性が高く、その結果、薬物が取れることを避けられるという点で、患者のコンプライアンスも増す。
【0083】
(キット)
本発明は、本発明を実施するための成分をキットの形態で適便に提供することができる実施形態も提供する。その最も単純な実施形態において本発明のキットは、患者の必要に従ってセットするセット用量で、セット数のブプレノルフィンパッチを提供する。各キットは、次の表から選択される適切な投与計画を含むであろう。
【表2】
【0084】
好ましい実施形態において、本投与計画は、5mg、10m及び20mgである。パッチを適用する方法、そのユニットの保管及び治療計画の詳細に関する説明も含まれる。
【0085】
さらなる実施形態において、本キットは、使用済みブプレノルフィンパッチ廃棄用の廃棄容器又は装置を含むであろう。そうした容器又は装置は、パッチの中の薬物についての潜在的乱用を防止又は制限するために使用されるあろう。本明細書で用いる用語「容器」は、その最も広い意味、すなわち、材料を保持するためのあらゆる入れ物という意味を有する。
【0086】
本発明のキットは、包装材、及び、例えばその包装材又は添付文書上のその使用についての説明を好ましくは含む。本キット内のブプレノルフィンパッチは、患者のためにコード(すなわち、色コード、日による数字コード、又は用量による数字コードなど)付けすることができる。患者は、疼痛寛解が十分であると患者が判断するまで処方された順序でBTDSを適用し、必要に応じて即時放出型の救急薬を利用することとなろう。
【0087】
(実施例)
本発明は、以下の実施例を参照することにより、よりよく理解されるであろう。これらの実施例は、本発明の例として提供するものであり、制限として提供するのではない。
【実施例1】
【0088】
(高齢者及びサイアザイド利尿薬を受けている高齢者高血圧患者におけるBTDS投与計画の生理学的効果)
この試験の目的は、高齢者被験者及びサイアザイド利尿薬を服用している高齢者高血圧被験者におけるBTDS用量増加の生理学的効果を評価することである。
【0089】
(被験者選択)
A.高齢者高血圧被験者: 年齢65〜80歳、体重範囲70〜94kg(男性)及び55から81kgまで(女性)の男性又は女性高血圧被験者。高血圧を除き、患者には、基本的な身体検査、血液学、血液化学、尿検査、ECG、及び生命徴候によって証明されるような有意な異常病歴はなかった。女性は、閉経後、すなわち少なくとも1年は月経がない状態、又は外科的に生殖不能でなければならなかった。血圧及び抗高血圧薬物療法は、参加前の少なくとも2ヶ月間は安定していなければならなかった。血圧は、サイアザイド利尿薬単独で、又はサイアザイド利尿薬と他のいずれかの単一薬剤とを併用して制御した。
【0090】
B.高齢者健常被験者: 年齢65〜74歳(65歳及び74歳を含む)、体重範囲70〜94kg(男性)及び55から81kgまで(女性)の男性又は女性高齢者被験者。患者は、基本的な身体検査、血液学、血液化学、尿検査、ECG、及び生命徴候によって証明されるような有意な異常病歴はなかった。女性は、閉経後、すなわち少なくとも1年は月経がない状態、又は外科的に生殖不能でなければならなかった。
【0091】
C.若年健常被験者: 年齢21〜40歳、体重範囲70〜94kg(男性)及び55から81kgまで(女性)の男性又は女性被験者。患者は、基本的な身体検査、血液学、血液化学、尿検査、ECG、及び生命徴候によって証明されるような有意な異常病歴はなかった。女性は、スクリーニングのための訪問中及び投与前の時点で血清妊娠テスト陰性でなければならなかった。スクリーニングから、試験から開放されるまで、追加の殺精子性フォーム又はゼリーを併用するバリア又はIUD避妊を使用しなければならなかった。
【0092】
(除外基準)
1.オピオイドに対する、又は向精神薬もしくは催眠薬に対するなんらかの過敏性歴。
2.発作、失神直前又は失神歴。
3.ブプレノルフィンの経皮吸収、分布、代謝又は排泄に有意に干渉し得るなんらかの病状又は外科的疾患。
4.高齢者女性被験者におけるホルモン補充療法(全身又は局所的)及び高齢者高血圧患者における抗高血圧薬物療法を除く、現在進行中の処方又は一般用医薬品を必要とするあらゆる付随する病状。
5.過去3ヶ月以内の7日間より長いオピオイド含有薬物の使用。
6.過去2年間の薬物又はアルコール乱用歴。
7.文書化された現在進行中の臨床的に有意な心血管疾患、肺疾患、内分泌性疾患、神経疾患、代謝性疾患又は精神病。
8.病因にかかわらず、頻繁な悪心又は嘔吐歴。
9.この試験に登録する前30日間の臨床試験への参加。
10.この試験に参加する前4週間のなんらかの有意な疾患。
11.試験投与適用前7日間の、ビタミン及び/又はミネラルサプリメントを含むあらゆる薬物の使用。
12.試験薬投与8時間前から試験薬投与開始の4時間後まで食物及びカフェイン含有飲料を控えることに対する拒絶。
13.予備試験(スクリーニング)又は投与直前血中アルコール、尿中薬物スクリーニング又は血清妊娠テスト陽性。
14.タバコ製品の現在使用。
15.1日あたり60グラムより多くのアルコール接取。
16.試験投与適用の48時間以内、又はこの試験中のあらゆる時点でのアルコール飲料の消費。
17.試験投与適用前過去6週間の血液又は血液製剤の受容。
18.HIV(Eliza)及び/又はB型肝炎(HBsAg)陽性。
【0093】
(方法)
BTDS 5を第0日から第3日まで、BTDS 10を第3日から第6日まで、及びBTDS 20を第6日から第13日まで被験者に投与した。第13日の後、さらに4日間(第17日)、患者をモニターした。
【0094】
生命徴候は、次のとおり測定した。
1.BTDS 5の適用の0、1、4、8、12、24時間前
2.第0日及び第3日、BTDS 5及び10の適用の30分前、ならびにBTDS 5及びBTDS 10の適用の1、2、4、8、12、20、23、36、47及び60時間後、
3.第6日、BTDS 20の適用の30分前、ならびにBTDS 20適用の1、2、4、8、12、20、23、36、47、60、71、84、95、108、119、132、143、156及び164時間後、ならびに
4.第13日、BTDS 20の除去の0.25、0.50、0.75、1、2、4、8、12、24、48及び72時間後。
【0095】
検査した生命徴候には、血圧(被験者は、5分間は仰臥位のままで、その後、血圧測定を受けた。その後、被験者は、起立し、起立の1分後及び2分間起立した後、血圧を測定した)、脈拍(bpm、5分仰臥、1分起立、及び2分起立で測定)、呼吸数(呼吸回数/分)、及び経皮的酸素飽和度(SaO2)が含まれていた。
【0096】
生理学的測定。血圧(mmHg):予定された評定時間各々において、被験者は、5分間は仰臥位のままでおり、その後、BP測定を受けた。その後、被験者は、起立し、起立の1分後及び2分間起立した後、BPの測定をした。
【0097】
脈拍(bpm):脈拍は、5分仰臥、1分起立、及び2分起立で測定した。
【0098】
経皮的酸素飽和度(SaO2):経皮的酸素飽和度SaO2は、赤外分光光度測定法によりSaO2を定量するフィンガーティップセンサーを使用するパルスオキシメトリーによって測定した。
【0099】
薬物動態のサンプリングは、次のように行った。
(1)BTDS 5及びBTDS 10の適用の0、23、47時間後、
(2)BTDS 20の適用の0、23、47、71、95、119及び143時間後、ならびに
(3)BTDS 20の除去の0.25、0.50、0.75、1、2、4、8、12、24、48及び72時間後。
【0100】
BTDS適用部位における局所反応の評定。BTDS適用部位における反応についての皮膚の評定を最初のシステムの適用前及び各BTDS除去時に行った。BTDS適用部位における皮膚の外観を、紅斑及び浮腫について、紅斑は0(目に見える発赤がない)から5(皮膚の暗赤色変色)の範囲にわたる、及び浮腫は0(目に見える反応がない)から5(直径1mmより大きく広がっている、またそのシステムの縁からはみ出している重度の腫脹)まで変化する評価尺度を用いて評価した。
【0101】
臨床検査: スクリーニング時及び試験完了時(第15日)に得た血液及び尿サンプルについて、臨床試験を行った。血液サンプルは、血液学及び化学についての分析を行い、検尿の評定は、色、懸濁度、比重、グルコース、アルブミン、胆汁(ウロビリノーゲン)、pH、アセトン(ケトン)及び顕微鏡検査を含むものだった。
【0102】
身体検査及びECG。標準的な身体検査及び12誘導ECGを、スクリーニング時及び試験完了時に行った。薬力学評価のために調べたものに加え、生命徴候をこれらの時点で調べた。
【0103】
ブプレノルフィン/ノルブプレノルフィンアッセイ。この薬物動態分析は、ブプレノルフィン及びノルブプレノルフィンの濃度についての血漿サンプルのアッセイを含むものだった。ノルブプレノルフィンは、ブプレノルフィンの主要な公知I相代謝産物であり、その親化合物より低い薬理活性を有する。
【0104】
簡単に言えば、ブプレノルフィン及びノルブプレノルフィン、ならびにその内標準重水素化d4−ブプレノルフィン及び重水素化d9−ノルブプレノルフィン(テキサス州オースチンのラディアン社(Radian Corporation, Austin, TX))を液体クロマトグラフィー−エレクトロスプレー/質量分析/質量分析(LC−ESI/MS/MS)によって測定した。これらの技法の一般的な説明については、Huang et al., Anal Chem 1990, 62 : 713A-725A.; Heel et al., Curr Ther 1979, 5 : 29-33.; Watson et al., 1982??? ; Adrianensen et al., Acta Anaesthesiol Belg 1985, 36 : 33-40; ; Lewis and Walter, “Buprenorphine: An Alternative Treatment For Opioid Dependence” National Institute on Drug Abuse, Monograph series ; Hand et al., 1989 ; Tebbett, 1985 ; and Blom et al., 1985を参照のこと。内標準は、凝固を防止するためにEDTAで処理したヒト血漿に、適切な体積のd4−ブプレノルフィン/d9−ノルブプレノルフィン溶液をピペッティングすることによって、サンプル調製前にヒト血漿に入れた(spiked)。
【0105】
固相抽出法(SPE)を用いて、2つの対象化合物を0.5mL ヒト血漿サンプルから単離した。抽出前、すべての患者サンプル、標準物質及び対照を37℃で解凍し、渦攪拌して、少なくとも15分間、3000rpmで遠心分離した。対照及び標準物質(すなわち、既知量のブプレノルフィン及び/又はノルブプレノルフィンを含有するサンプル)を含め、各血漿サンプルに、バッファ(8mM 酢酸アンモニウム)及び内標準を添加した。その後、パッカード・マルチプローブ IIEX(Packard MultiProbe IIEX)(コネチカット州メリデンのパッカード(Packard, Meriden, CT))又はトムテック・カデュラ(Tomtec Qadra)(コネチカット州ハムデンのトムテック(Tomtech, Hamden, CT))のいずれかを使用し、対象分析物を固定相に吸収させ、その後、洗浄してマトリックス材料を除去し、溶離して分析物を回収する抽出法に、各サンプル、標準物質及び対照を付した。溶離物を窒素ガス流のもと、45℃で蒸発乾固させ、その後、9:1 アセトニトリル:酢酸アンモニウム(8mM)中で再構成した。
【0106】
アセトニトリル:酢酸アンモニウム:メタノール移動相を使用する、逆相SB−C18カラム(2.1mm ID x 50mm、5u 粒径;デラウエア州ウィルミントンのヒューレット・パッカード(Hewlett-Packard, Wilmington, DE))をベースにした高速液体クロマトグラフィー(HPLC)システムをMSの前に適用して、各サンプル中の成分を分離した。
【0107】
そのMSシステムは、ESI源を装備したマイクロマス・カトロ・LC質量分析器(Micromass Qattro LC Mass Spectrometer)(マサチューセッツ州ベヴァリーのマイクロマス社(Micromass Inc., Beverly, MA))から成り、多重反応モニターモード(Multiple Reaction Monitoring Mode(MRM))で操作した。定量は、ブプレノルフィン対d4−ブプレノルフィン、及びノルブプレノルフィン対d9−ノルブプレノルフィンのピーク面積比に基づく較正曲線を用いて行った。ブプレノルフィン及びノルブプレノルフィン分析物に対する選択性及び感受性を強化するために、前駆体又は分子イオン(複数を含む)から生成物イオン(複数を含む)への遷移プロセスを両方の分析物に用いた。用いた遷移は、468.1から55.1(ブプレノルフィンについて)、472.4から59.1(d4−ブプレノルフィンについて)、414.1から101.0(ノルブプレノルフィンについて)、及び423.1から110.0(d9−ノルブプレノルフィンについて)であった。生成物イオンへの前駆体の正確な遷移は、質量調整レポートを基に微調整することができる。
【0108】
マイクロマス(Micromass)のマスリナックス(MassLynx)ソフトウエアを使用して、そのMSからのクロマトグラフピークを積分し、ブプレノルフィン/d4−ブプレノルフィン及びノルブプレノルフィン/d9−ノルブプレノルフィンのピーク面積比を決定した。各血漿標準物質、サンプル及び対照について面積比を決定した。その後、標準物質のピーク面積比を用いて、加重(1/x2)線形回帰に基づく較正曲線を作成した。サンプル及び対照の濃度をその回帰線からpg/mLで計算した。この方法の定量限界は、両方の分析物について、ヒト血漿中25pg/mLであり、濃度範囲は、ヒト血漿中25から600pg/mLである判定した。
【0109】
薬物動態測定基準。BTDSでの処理後、血漿中ブプレノルフィン及び血漿中ノルブプレノルフィン濃度から、以下の薬物動態測定基準を概算した。
AUCt(pg・h/mL)。時間=0(システム・アプリケーション)から最終定量可能濃度までの血漿中濃度−時間経過プロフィール下の面積は、次のような線形台形公式を用いて概算した。
【数1】
式中、ciは、i番目のサンプルの濃度であり、tiは、i番目のサンプルの投与からの時間であり、nは、最終定量可能濃度まで(最終定量可能濃度を含む)の利用可能なサンプルの数である。
【0110】
AUC∞(pg・h/mL) − 時間=0(投与)から無限大までの血漿中濃度−時間経過プロフィール下の面積は、次のとおり概算した。
【数2】
式中、Ctは、最終定量可能濃度であり、λzは、対数変換プロフィールの見掛けの最終段階の負の傾斜である。
【0111】
Cmax(pg/mL) − サンプリング時間に対するブプレノルフィン及びノルブプレノルフィンの測定血漿中濃度を、各個の血漿中濃度−時間経過プロフィールにプロットした。各物質の最大濃度をそれぞれのプロフィールから各々取った。各物質の平均最大濃度は、個々の値すべての算術平均として計算した。
【0112】
tmax(h) − 投与から最大観測濃度までの時間は、血漿中濃度−時間経過プロフィールから直接取った。投与から最大観測濃度までの平均時間は、個々の値すべての算術平均として計算した。
【0113】
t1/2(h) − 見掛けの最終半減期は、次のように計算した。
【数3】
式中、λzは、その曲線の最終(対数線形)部分に関連した一次速度定数である。これは、対数濃度に対する時間の線形回帰によって概算した。見掛けの最終半減期は、次の基準に合う場合に報告可能とみなした。
・ 観測データ点が、最終対数線形部分上にあらねばならない。
・ 決定にあたり、少なくとも3つのデータ点
・ 決定係数(R2)>0.85。
個々の時間経過データセットが、上の基準に合わない場合、t1/2は、概算不可と報告した。
【0114】
応答変量として平均仰臥血圧、予測因子としてグループ、及び共変量として基線平均仰臥血圧を用いる共分散分析(ANCOVA)モデルを使用して、平均仰臥BPについて各区画内でのグループ間での比較を行った。2つの高齢者グループと若年健常被験者のグループの間のペアワイズ比較も行った。他のすべてのPD変量は、同じ方法で分析した。
【0115】
分析のために薬物動態測定基準を対数変換した。対数変換した変量について、信頼区画の差及び限度を累乗することにより、その原尺度における対応する平均比率及び信頼区画を生じた。薬物動態測定基準のグループ間比較は、分散分析(ANOVA)モデルを使用して行った。2つの高齢者グループと若年健常被験者グループの間でペアワイズ比較を行った。統計学的有意性は、多重比較のため、一種過誤を調節せず5%レベルで評定した。AUCt、AUC∞、及びCmaxの最小二乗平均の比率(高齢者健常/若年健常及び高齢者高血圧/若年健常)の信頼区画(90%)を概算した。
【0116】
統計法。応答変量として平均仰臥BP、予測因子としてグループ、及び共変量として基線平均仰臥BPを用いる共分散分析(ANCOVA)モデルを使用して、平均仰臥BPについて各区画内のグループ間での比較を行った。2つの高齢者グループと若年健常被験者のグループの間でペアワイズ比較も行った。他のすべてのPD変量は、同じ方法で分析した。
【0117】
分析のために薬物動態測定基準を対数変換した。対数変換した変量について、信頼区画の差及び限度を累乗することにより、その原尺度における対応する平均比率及び信頼区画を生じた。薬物動態測定基準のグループ間での比較は、分散分析(ANOVA)モデルを使用して行った。2つの高齢者グループと若年健常被験者のグループの間でのペアワイズ比較を行った。統計学的有意性は、多重比較のため、一種過誤を調節せず5%レベルで評定した。AUCt、AUC∞、及びCmaxの最小二乗平均の比率(高齢者健常/若年健常及び高齢者高血圧/若年健常)の信頼区画(90%)を概算した。
【0118】
(結果及び考察)
生理学的な結果及び安全性の結果を表1〜6及び図1〜5に提示する。
【0119】
被験者人口統計及び基線素因。36人の被験者が、この試験に登録した。12人の若年健常被験者(年齢21歳から41歳、平均年齢29歳)、13人の高齢者健常被験者(年齢65歳から74歳、平均年齢68歳)、及び11人の高血圧の高齢者被験者(年齢65歳から80歳、平均年齢71歳)。すべての被験者は、薬物動態及び安全性の評定について評価することができ、32人が、薬物動態分析のためにデータを提供した。被験者についての人口統計学的及び基線生理学的特徴を表1にまとめる。
【表3】
【0120】
(薬物動態の結果)
血圧及び脈拍数の起立性変化。表2は、5分仰臥血圧と2分直立血圧の間の差、ならびに最初のBTDS適用の30分前(基線)、各用量増加の4から8時間後、及び第13日におけるBTDS 20の除去の3.5時間後に取った脈拍数読み取り値をまとめたものである。
【表4】
a 起立性変化は、5分仰臥の読み取り値と2分直立の読み取り値の間の差である。平均変化は、特定の評定時点で全グループに対して平均した各被験者についての変化である。
b 評定区画は、各BTDS投与後6から8時間及びBTDS除去後4時間である。
c 応答変量として平均起立性変化、予測変量としてグループ、及び共変量として基線起立性変化を用いたANCOVAモデルからのペアワイズ比較(レファレンスとして若年健常を用いる)に関して、P<0.5。
d 11人の若年健常被験者が、適用3及びBTDS 20除去後に血圧及び脈拍数について評価可能であった。
e 12人の高齢者健常被験者が、BTDS 20除去後に血圧及び脈拍数について評価可能であった。
f 基線起立性変化に合わせた調整最小二乗平均分析(ANCOVAモデル)についての90% CI。
【0121】
3グループ間で起立性血圧応答の差は観測されなかった。脈拍の起立性増加はわずかであったが、2つの高齢者グループにおけるものより若年成人におけるもののほうが統計学的に有意に大きかった。失神は発生しなかった。
【0122】
呼吸数及び酸素飽和度。表3は、各BTDSの適用後6から8時間及びBTDS 20の除去後4時間の時点での、基線におけるRR及び%SaO2についてのデータをまとめたものである。すべてのグループにおいて、平均RRの変化は小さかった。2つの高齢者グループにおける基線での平均%SaO2は、レファレンス範囲よりわずかに低かった。基線と比較して、各評定時点での平均%SaO2は、3グループいずれにおいても有意には変化しなかった。呼吸抑制は観察されなかった。
【表5】
a 変化は、BTDS前(0.5時間)から適用後までである;平均変化は、特定の評定時点で全グループに対して平均した各被験者についての変化である。
b 評定区画は、各BTDS投与後6から8時間及びBTDS除去後4時間である。
c 11人の若年健常被験者が、適用3及びBTDS 20除去後にRR及び%SaO2について評価可能であった。
d 11人の高齢者健常被験者が、BTDS 20除去後にRRについて評価可能であった。
e レファレンス範囲: 95%から110%。
f 12人の高齢者健常被験者が、BTDS 20除去後に%SaO2について評価可能であった。
【0123】
薬物動態。ブプレノルフィン及びその代謝産物、ノルブプレノルフィンについての3グループの関する血漿中濃度対時間曲線を図2及び3に示し、薬物動態パラメータを表4にまとめる。評価したいずれのブプレノルフィン又はノルブプレノルフィン薬物動態パラメータについてもグループ間に統計学的に有意な差はなかった。ノルブプレノルフィンについてのAUCt及びCmaxは、高齢者健常被験者又は若年成人被験者におけるものより高血圧の高齢者におけるもののほうが高かった。
【表6】
a 10人の若年健常被験者が、AUC∞及びt1/2について評価可能であった。
b 7人の高齢者健常被験者が、AUC∞及びt1/2について評価可能であった。
c 4人の高血圧の高齢者被験者がAUC∞及びt1/2について評価可能であった。このグループのうち7人の被験者について、ノルブプレノルフィン濃度が最終測定(最終BTDSの除去後72時間)の時点で高いままであったためである。
【0124】
薬物動態/薬力学の関係。平均血漿中ブプレノルフィン濃度対仰臥SBP、DBP(図4A、4B、4C及び図5A、5B、5C)及び脈拍(データは示さない)のプロット及び評価は、いずれの被験者グループについてもブプレノルフィンの血漿中レベルとこれらの血行力学パラメータの間に関係がないことを示した。
【0125】
(安全性)
有害事象。すべての被験者は、BTDSに対する忍容性に優れていた。いずれかの治療グループの1人より多くの被験者が報告した有害事象を表5にまとめる。2件の重度の治療関連有害事象(同じ若年成人被験者について記録された胆嚢炎及び腹部疼痛)が入院を必要とした。2人の被験者が、治療関連有害事象のため、中止した。1人の若年成人被験者は、嘔吐のため第5日に試験を中止し、1人の高齢者健常被験者は、第10日に経験した低血圧のため中止した。これらの有害事象は、その施設から出る前に解決した。
【表7】
【0126】
適用部位の反応。各BTDS用量についての適用部位の紅斑及び浮腫を表6にまとめる。大部分の被験者が、軽度の適用部位の反応を経験した。重度又は用量を制限する紅斑又は浮腫の報告はなかった。
【表8】
【0127】
身体検査、臨床検査、又はECG。身体検査、臨床検査、又はECGの結果において臨床的に有意な変化はなかった。
【0128】
起立性低血圧(OH)の発現に対する開示した投与計画の効果も図2から5Cに示す。これらの図は、増加用量でのブプレノルフィンの経皮投与(BTDS)及び同じ適用部位への反復適用が、若年健常被験者、高齢者健常被験者、及び利尿薬での治療を受けている高齢者高血圧被験者においてOHの発現をもたらさなかったことを示している。加えて、この試験のいずれの被験者も、失神(全身性脳性虚血に起因する意識の一時的停止、気絶又は卒倒)を経験しなかった。高血圧の被験者についての結果も、BTDSとサイアザイド利尿薬の同時使用により起立性低血圧(OH)の発生率増加が生じないという結論を支持している。
【0129】
薬物動態分析は、高齢者正常血圧又は高血圧被験者対若年健常被験者におけるBTDSの薬物動態の間に潜在的交絡差はなかった。この薬物動態試験の結果は、BTDSが忍容性に優れていることを示した。一部の高齢者被験者においてBP低下が観察されたが、症候性のものではなく、有意とみなされるものでもなかった。BP低下を経験した若年被験者はいなかった。薬物動態の結果は、BTDS用量増加によるブプレノルフィンの低血圧作用の欠如が、ブプレノルフィン暴露の相違によるものではかったことを実証している。
【実施例2】
【0130】
(健常な高齢者被験者と若年成人被験者を比較する7日適用用BTDSの薬物動態及び安全性)
この試験は、7日間身に付けるBTDS単独適用の薬物動態及びそのバイオアベイラビリティに対する年齢の影響を比較及び評定した。
【0131】
(被験者選択)
年齢21〜45歳及び65歳より高齢又は65歳、体重範囲70から94kg(男性)及び55から81kg(女性)の男性及び妊娠していない女性。患者には、基本的な身体検査、血液学、血液化学、尿検査、ECG、及び生命徴候によって証明されるような有意な異常病歴はなかった。
【0132】
(方法)
登録前の2週間の間、被験者をスクリーニングした。同じ日にすべての被験者に投与し、すべての被験者が、胸部右上にBTDS 10(活性)(10mg(流量 10μg/h))、BTDS 5(プラシーボ)及びBTDS 20(プラシーボ)を受けた。薬物動態サンプリングは、投与前から適用の7日間(168時間)を通して除去の36時間後(204時間)まで行った。1被験者につき合計27のサンプルを計画した。血漿を分離し、−20℃で凍結した。LC/MS/MS法を用いて盲検でのブプレノルフィン血漿中濃度を決定し、25pg/mLから600pg/mLまで線形であることを確認する。BTDS 20(BTDS 5又はBTDS 10については、薬物動態プロフィールを発生させなかった)での処理後、血漿中ブプレノルフィン及び血漿中ノルブプレノルフィン濃度から、以下の薬物動態測定基準を概算した。
【0133】
AUCt(pg・h/mL)。時間=0(システム・アプリケーション)から最終定量可能濃度までの血漿中濃度−時間経過プロフィールの下の面積は、次のような線形台形公式を用いて概算した。
【数4】
式中、ciは、i番目のサンプルの濃度であり、tiは、i番目のサンプルの投与からの時間であり、nは、最終定量可能濃度まで(最終定量可能濃度を含む)の利用可能なサンプルの数である。
【0134】
Cmax(pg/mL) − 最大観測濃度は、血漿中濃度−時間経過プロフィールから直接取った。
【0135】
(結果)
7日間身に付けるBTDS 10は、高齢者にも、若年成人にも忍容性に優れていた。相乗平均値を用いてそれら2つの試験グループにおけるAUCt及びCmaxを比較したところ、グループ間の差は、AUCについては7%、Cmaxについては10%であった(図6及び表7参照)。高齢者においてシステムの除去直後にブプレノルフィン濃度上昇の形跡があったが、この上昇は、有害事象をもたらさなかった。いずれの年齢群においても経皮システムでの治療を制限する問題はなかった。
【表9】
【0136】
血圧試験は、高齢者被験者と若年被験者の両方においてブプレノルフィンの投与が血圧を低下させることを示した(表8参照)。
【表10】
【0137】
体温、呼吸数及び脈拍の平均値は、BTDS 10への暴露による影響を受けなかった。1人の若年被験者及び3人の高齢者被験者において、大部分にBTDS 10の除去後に呼吸数及び/又は脈拍の低下が観察されたが、それらは有意とは考えられなかった。1分あたりの呼吸回数8未満の呼吸数は、観測されなかった。異常な身体検査所見はBTDS 10暴露中には現れず、ECG所見において試験前及び試験後に観測された異常は、いずれも有意とは考えられなかった。
【0138】
収縮期血圧(SBP)及び拡張期血圧(DBP)における同時低下(SBP:基線より20mmHg以上低下;DBP:10mmHg以上低下)が、BTDS 10暴露中に7人(58%)の高齢者被験者において発生した。これらの事象は、すべて、自然に解決した。1人の高齢者被験者には、血圧低下と同時に発生した軽度のめまいがあった。SBP及びDBPの同時低下を経験した若年被験者はいなかった。(図7及び8を参照のこと)。
【0139】
患者グループごとの有害事象を表9に示す。
【表11】
【0140】
他の経路によるブプレノルフィンは、この試験において観察されたものと同様の血圧に対する効果を示している。カトリーヌ(Catheline)ら(1980)は、血圧、脈拍及び呼吸に関し、筋肉内ブプレノルフィン及び筋肉内モルフィンについて同様の用量応答曲線を示し、一方、ヒール(Heel)ら(Drugs 1979; 17: 81-110)は、経口ブプレノルフィン後の収縮期血圧における約10%の低下ならびに拡張期血圧におけるわずかな低下を報告した。血圧の低下についての本試験の所見は、非経口ブプレノルフィン後の約10mmHgの平均動脈圧の低下及び約10pbmの呼吸数の減少を示したMelon et al., Anesth Anal Rean 1980, 37 : 121-125による以前の研究を裏付けるものでもある。
【0141】
もう1つのオピオイド、フェンタニールは、経皮製剤の形で現在利用可能であるが、高齢者では薬物動態変化を随伴する((Holdsworth et al., Gerontology 1994, 40: 32-37; Bentley et al., Anesth Analg 1982,61 : 968-971; Thompson et al., Br J Anaesth 1998, 81: 152-154)。IVフェンタニール薬物動態及び年齢についての研究において、高齢者では、この集団では薬物クリアランスの低下に起因して排泄が長期化するため、匹敵する用量のIVフェンタニールにより、より高い血清中薬物濃度が生じることが判明した(Bentley, 1982)。フェンタニールの2つの経皮製剤についての比較薬物動態性能評価が公表されている(Holdsworh et al., Gerontology 1994, 40: 32-37; Thompson et al., Br J Anaesth 1998,81: 152-154)。24時間用フェンタニール経皮システムの試験では、若年成人被験者より高齢者被験者のほうが大きいCmaxを達成する傾向があった(Holdsworth et al., Gerontology 1994, 40 : 32-37)。10人の高齢者被験者は、有害事象のため、早々にパッチを除去したため、高齢者被験者と若年成人被験者を比較するために、AUCをパッチを身に付けていた期間で割った。パッチを身に付けていた実際の期間についてAUCを補正すると、高齢者被験者は若年及び若年成人よりフェンタニールへの平均暴露が有意に長かった。この試験は、この24時間用フェンタニール経皮システムが、若年成人に比べて高齢者では薬物動態学的に交換可能な性能を提供できないことを示した。
【0142】
高齢者被験者における異なる3日用フェンタニール経皮システムについて、9人の高齢者被験者のうち2人が、呼吸抑制(呼吸回数8未満/分)のために試験が終わる前にフェンタニール経皮システムを除去した(Thompson et al., Br J Anaesth 1998, 81 : 152- 154)。血漿中フェンタニール濃度の増加は、若年成人被験者より高齢者被験者のほうが有意に遅かった(P=0.005で、平均半減期、それぞれ、11.1時間対4.2時間)。従って、上に記載した試験は、2つの異なるフェンタニール経皮システムが、若年成人に比べて高齢者では薬物動態学的に交換可能な性能を提供しなかったことを示している。従って、これら2つのフェンタニール経皮システムでの経験は、若年成人において見られるものに匹敵する経皮的薬物動態機能を高齢者において提供することが、技術的な挑戦を意味することを示している。
【0143】
特に、薬物誘発起立性低血圧は、高齢者における罹病率の主因である(Verhaeverbekel, Drug Sat., 1997, 17 : 105-108)。起立性低血圧及び他の失神エピソードは、この年齢群におけるナーシングホームへの入院の40%及び少なからぬ医学的問題の原因である。高齢者高血圧は、心臓前負荷の低下及び自律神経機能(例えば、アドレナリン作動性受容体の反応及び圧反射)の低下をもたらす医原性血液量減少のため、特に危険度が高い。
【0144】
この試験は、BTDS 10が、高齢者においても、若年成人においても、一定したブプレノルフィン血中濃度を提供することを示した。
【実施例3】
【0145】
変形性関節炎の患者におけるブプレノルフィン経皮システム(BTDS)の鎮痛効力及び安全性
この実施例は、イブプロフェンだけでは充分な疼痛制御を達成することができなかった変形性関節炎患者において、プラシーボとの比較で、ブプレノルフィン、μ−オピオイド部分作動薬を含有する増加用量の経皮システムの鎮痛効力及び安全性を評価するように設計する。
【0146】
(方法)
この試験設計は、変形性関節炎に随伴する慢性疼痛の制御のためにオピオイドを服用している患者のスクリーニングを伴う。オピオイドの投与は、疼痛レベルが疼痛尺度で7未満になったときに停止し、イブプロフェン1600mg/日を、非盲検ラン・インとして7日間投与する。7日のイブプロフェンの後、疼痛レベルが、7日より長い又は7日である場合、二重盲検力での適切量への調整(titration)に対する無作為化を行って、3日ごとにプラシーボ又はBTDS(5−10−20 mcg/h)を投与する。7日後、維持用量は、目標鎮痛レベルが達成されている限り、少なくとも3日ごとに投与される最終BTDS用量である。(疼痛制御が達成されない場合、1又はそれ以上の後続のBTDS用量レベルを投与、40mgまで調整することができる)。21日後、二重盲検の維持を7日間追跡する。
【0147】
一次効能変量は、維持期間の終了時(第28日)に分析する疼痛についての治療が成功した患者の割合である。患者が、効能がない(DOLE)ため早期に中止しない場合、及び最終訪問時に疼痛のための投与に伴う患者の満足度(患者満足度)(「あなたが受けた疼痛のための試験投与をあなたはどのように評価するでしょうか?」)についてのかれらの評点が、2、3又は4(この場合、0は、「劣る」であり、1は、「並」であり、2は、「良好」であり、3は、「非常に良好」であり、4は、「超良好」である)である場合、治療は成功と考えられる。二次効能変量には、最後の24時間の間の平均疼痛強度、患者の満足度、及び適切量への調整期間終了時の用量レベルが挙げられる。疼痛についての治療が成功した患者の割合は、治療及びセンターに関する項ならびに他の適切な共変量を用いるロジスティック回帰を使用して分析する。平均疼痛強度及び患者の満足度については、治療及びセンターに関する項ならびに他の適切な共変数を用いる線形混合型モデルを使用する。適切量への調整期間終了時に用量レベルについてコクラン−マンテル−ヘンツェル(Cochran-Mantel-Haenszel)カイ二乗解析を行う。
【実施例4】
【0148】
(慢性腰痛の患者の治療におけるヒドロコドン/アセトアミノフェンとの比較でのBTDSの有効性及び安全性)
この実施例は、慢性腰痛の患者においてBTDS、ブプレノルフィンを含有するマトリックス経皮システムの有効性を、ヒドロコドン/アセトアミノフェン(HCD/APAP)錠と比較するように設計する。
【0149】
(方法)
7日のランイン期間中、患者は、すべての鎮痛薬を中止して、400mgのイブプロフェンを1日4回服用し、それをその試験を通して継続する。最初の7日間、患者は、鎮痛の有効レベルに調整する(3投与レベル: BTDS 5、10、20mcg/h);3日ごとに適用、又はHCD/APA(2.5mg ヒドロコドン/250mg アセトアミノフェン;1、2又は3錠、1日4回)。患者は、所定の維持期間、許容可能な有効用量を継続する。
【0150】
一次効能変量は、最後の24時間の間の平均疼痛強度(0〜10の尺度)及び維持期間の疼痛のための投与に関する患者の満足(0〜4の尺度)である。治療及びセンターに関する項及び他の適切な共変数を用いる反復測定線形混合モデルを使用する。最小二乗平均(LS平均)、SE及び95%CIを概算する。95%CIを平均疼痛強度に含める場合(−2,2)及び患者の満足度に含める場合(−1,1)には、等価を示す。公表されているヒドロコドン対プラシーボ試験(7)についての効果量(ES)メタアナリシスを行う。ESを各試験について計算する(ESは、平均差(ヒドロコドン−プラシーボ)/SDである)。デルシモニアン(DerSimonian)併合ES及び95%CIを計算して、BTDSの帰無仮説の間接試験を可能ならしめる。
【実施例5】
【0151】
(慢性腰痛の患者におけるブプレノルフィンTDS、オキシコドン/アセトアミノフェン及びプラシーボの比較効能試験)
本実施例は、ブプレノルフィン経皮システム(BTDS)の鎮痛効能を評価するものである。
【0152】
(方法)
これは、プラシーボ及び活性制御・多用量・二重盲検・平行群間・多施設・安全性及び効能試験である。患者を3つの治療グループのうちの1つにランダムに振り分けた。その試験の最初の21日の間、有効性に関する3つの用量レベルのうちの1つに患者を調整することができた。患者は、この試験期間を通して安定した用量のNSAIDを継続した。平均年齢52歳(年齢範囲19から85歳)の54人の男性及び80人の女性がこの試験に参加した。80%は、オピオイドの経験がなく、20%は、オピオイド経験者であった。効能の一次変量は、平均での疼痛及び現時点での疼痛として測定した。二次効能変量は、効能がないための中止、メディカル・アウトカム・スタディー(medical outcome study)健康調査、治療応答、患者の選好、平均的疼痛についての毎日の患者の日記、安定した疼痛管理までの時間、及び適切量への調整後の用量調整数であった。統計的方法には、疼痛項目についての反復測定分析、及び対象比較についてのペアワイズ対比、メディカル・アウトカム・スタディー(Medical Outcome Study)健康調査項目に関する90%信頼区画、効能がないため中止するまでの時間及び安定した疼痛管理までの時間についてのCOX比例ハザード回帰分析が含まれた。
【0153】
(結果)
BTDSグループとプラシーボグループの間の「平均での疼痛」についての基線からの最小二乗平均変化での効能差は、維持期間、第21日及び第30日(P=0.009)について統計学的に有意であった(図9A、9B)。BTDSグループとプラシーボグループの間の「現時点での疼痛」についての基線からの最小二乗平均変化での差は、第21日及び第30日(P=0.028)によって判定して、維持期間については統計的に有意であった(図10A、10B)。二次効能分析の結果は、一次変量の分析において観測された効能を支持している。効能がないための中止は、Oxy/APAPグループ及びBTDSグループにおけるよりプラシーボグループにおけるほうが多かった。効能がないために中止した患者の試験終了時における割合は、プラシーボでは44%、BTDSグループでは16%、及びOxy/APAPグループでは2%であった(図11A、11B)。中止率を比較するCox比例ハザード回帰分析は、プラシーボと比較してBTDSで0.30の有害率を示し、これは、統計学的に有意であった(P=0.01)。安定した疼痛管理までの時間を比較するCox比例ハザード回帰分析は、プラシーボと比較してBTDSについては1.67及びOxy/APAPグループについては1.51のハザード率を示した。BTDSとプラシーボの間の比率の統計学的分析は、P=0.054という結果になった。試験投与に関する患者の満足度は、プラシーボでよりOxy/APAP及びBTDSでのほうが大きな満足度を示した。
【0154】
(考察)
慢性腰痛の治療に関するBTDSの効能をこの試験で実証した。この試験の維持期間、プラシーボと比較して、BTDSグループについての「平均での疼痛」と「現時点での疼痛」、両方の一次効能変量に関する基線からの最小二乗平均変化の差は、反復測定分析により、統計学的に有意であった。この一次分析からの肯定的な所見は、BTDSグループとプラシーボグループの間の統計学的に有意な差を示した、効能がないための中止率を比較するCox比例ハザード回帰分析を含む二次変量についての結果によって支持された。NSAIDだけでは十分な疼痛制御が達成されなかった選択患者の治療計画にBTDSを加えることにより、プラシーボに比べて有意な改善が生じた。
【実施例6】
【0155】
用量増加計画の関数として有害作用発生率の比較試験
本実施例は、用量増加を伴うBTDS 20を受けた(グループ1)又は用量増加前に用量増加を伴わないBTDS 20を受けた(グループ2)健常な被験者における有害事象の相対的発生率を比較するものである。
【0156】
(方法)
グループ1.グループ1の被験者についての選択基準及び試験計画は、高齢者高血圧、高齢者健常及び若年健常被験者を組み合わせる、実施例1に記載したものと同じであった。簡単に言えば、高齢者高血圧被験者は、年齢65〜80歳、体重範囲70〜94kg(男性)及び55から81kgまで(女性)の高血圧の男性又は女性であり、高齢者健常被験者は、年齢65〜74歳(65歳及び74歳を含む)、体重範囲70〜94kg(男性)及び55から81kgまで(女性)の男性又は女性であり、若年健常被験者は、年齢21〜40歳、体重範囲70〜94kg(男性)及び55から81kgまで(女性)の男性又は女性であった。グループ1の全被験者数は、36であった。
【0157】
グループ1の全被験者に、第0日から第3日までBTDS 5を、第3日から第6日までBTDS 10を、及び第6日から第13日までBTDS 20を投与した。第13日の後、さらに4日間(第17日)、患者をモニターした。第0日から第17日までの期間中に1人より多くの患者によって報告されたあらゆる有害事象を書き留め、実施例1に記載した方法による統計学的分析に用いた。
グループ2.グループ2の被験者についての選択基準は、次のとおりであった。年齢18歳から80歳まで(18歳及び80歳を含む)(平均年齢35歳)、体重範囲42kgから107kgまで(平均体重74kg)の健常な成人被験者で、前記被験者の34%が女性であった。グループ2の全被験者数は、78であった。
【0158】
グループ2の全被験者に、第0日から第7日までBTDS 20を投与した。第7日の後、さらに3日間、患者をモニターした。第0日から第10日までの期間中に1人より多くの患者によって報告されたあらゆる有害事象を書き留め、実施例1に記載した方法による記述分析に用いた。
【0159】
(結果)
グループ1及び2の被験者について書き留めた有害事象の発生率を表10に示す。表10に示されているように、BTDS 20に調整した被験者は、全体的に、より低い有害事象発生率を示した。便秘を報告した被験者数は、グループ1のほうが多かったが、BTDS 20を直接適用するよりむしろBTDS 20に用量を増加させていくほうが、頭痛、悪心及び嘔吐の発生率は顕著に低下した。
【表12】
【0160】
本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態による範囲に限定されない。実際、本明細書に記載されているものに加え、本発明の様々な変形が、上記説明及び添付の図面から当業者には明らかとなろう。そうした変形は、添付の特許請求の範囲内に入るものと解釈する。
【0161】
特許、出版物、手順などが、本出願中いたるところに、また参考文献一覧に特記されているが、それらの開示は、それら全文、本明細書に参照して組み込まれている。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】試験設計。
【図2】BTDS 5(0〜72時間)、BTDS 10(72〜144時間)及びBTDS 20(144〜312時間)の適用後のブプレノルフィンについての血漿中濃度対時間曲線。
【図3】BTDS 5(0〜72時間)、BTDS 10(72〜144時間)及びBTDS(144〜312時間)の適用後のノルブプレノルフィンについての血漿中濃度対時間曲線。
【図4A】グループ(N=36)ごとの収縮期血圧の平均起立性変化及び血漿中ブプレノルフィン濃度の平均変化。
【図4B】グループ(N=36)ごとの収縮期血圧の平均起立性変化及び血漿中ブプレノルフィン濃度の平均変化。
【図4C】グループ(N=36)ごとの収縮期血圧の平均起立性変化及び血漿中ブプレノルフィン濃度の平均変化。
【図5A】グループ(N=36)ごとの拡張期血圧の平均起立性変化及び血漿中ブプレノルフィン濃度の平均変化。
【図5B】グループ(N=36)ごとの拡張期血圧の平均起立性変化及び血漿中ブプレノルフィン濃度の平均変化。
【図5C】グループ(N=36)ごとの拡張期血圧の平均起立性変化及び血漿中ブプレノルフィン濃度の平均変化。
【図6】若年及び高齢者被験者における血漿中ブプレノルフィン濃度対時間(平均±SD)。
【図7】若年被験者における平均血圧及び脈拍数対時間。
【図8】高齢者患者における平均血圧及び脈拍数対時間。
【図9A】BTDS及び対照グループについての平均疼痛強度に関する基線からの変化。
【図9B】BTDS及び対照グループについての平均疼痛強度に関する基線からの変化。
【図10A】BTDSグループと対照グループの間の「現時点での疼痛」に関する基線との差。
【図10B】BTDSグループと対照グループの間の「現時点での疼痛」に関する基線との差。
【図11A】効能がないために中止した患者の試験終了時における割合。
【図11B】効能がないために中止した患者の試験終了時における割合。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
慢性疼痛をそうした治療が必要な患者において治療する方法であって、
5日以下である第一投与期間、第一のブプレノルフィン含有経皮剤形を患者に投与すること;
5日以下である第二投与期間、前記第一剤形と同じ用量のブプレノルフィン又は前記第一剤形より多い用量のブプレノルフィンを含む第二のブプレノルフィン含有経皮剤形をその患者に投与すること;及び
第三投与期間、前記第二剤形より多い用量のブプレノルフィンを含む第三のブプレノルフィン含有経皮剤形をその患者に投与すること
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記第一、第二及び第三経皮剤形が、次の表:
【表1】
の一行に示されているとおりの量のブプレノルフィンを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一投与期間が、少なくとも2日である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第二投与期間が、少なくとも2日である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第三投与期間が、少なくとも2日である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第一投与期間が、4日以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第一投与期間が、3日である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第二投与期間が、4日以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第二投与期間が、3日である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第一剤形が、5mgのブプレノルフィンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第二剤形が、10mgのブプレノルフィンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第三剤形が、20mgのブプレノルフィンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第三剤形が、30mgのブプレノルフィンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第三剤形が、40mgのブプレノルフィンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記第三投与期間の後の第四投与期間に、少なくとも1回、第四のブプレノルフィン含有経皮剤形を投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記第四投与期間が、2日である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第四剤形が、30又は40mgのブプレノルフィンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記患者が、高齢者患者である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記患者が、高齢者高血圧患者である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記患者が、小児患者である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記小児患者が、脊柱側弯症、脳性麻痺、若年性関節炎、癌及び術後疼痛から成る群より選択される疾患に罹患している、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記慢性疼痛が、少なくとも1週間継続することが予想される疼痛である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記患者が、変形性関節炎、慢性腰痛、術後疼痛又は広範囲の外傷からの回復に随伴する疼痛のうちの少なくとも1つに罹患している、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第一剤形が、5mg以下のブプレノルフィンを含み、前記第一投与期間が、3日以下であり、前記第二剤形が、5mg以下のブプレノルフィンを含み、前記第二投与期間が、3日以下であり、前記第三剤形が、20mg以下のブプレノルフィンを含み、前記第三投与期間が、少なくとも約7日である、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記経皮剤形が、局所用ゲル、ローション、軟膏、経粘膜システム、経粘膜装置、及びイオン導入法による送達システムから成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
患者の収縮期血圧を少なくとも20mmHg、又は拡張期血圧を少なくとも10mmHg低下させる、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
患者の収縮期血圧を少なくとも20mmHg、及び拡張期血圧を少なくとも10mmHg低下させる、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
ブプレノルフィンの第一、第二及び第三経皮剤形を患者に投与することを含む、慢性疼痛をそうした治療が必要な患者において治療する方法であって、
前記第三剤形は、前記第一及び第二剤形より高い用量のブプレノルフィンを含み、ならびに
前記第三剤形と同じ用量のブプレノルフィンを単に投与するのに比べ、悪心、嘔吐及び頭痛から選択される有害事象の発生率を上昇させない、
前記方法。
【請求項29】
起立性高血圧又は失神を誘発しない、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記第一剤形が、5mg以下を含み;前記第二剤形が、10mg以下のブプレノルフィンを含み、3日の投与期間投与され;及び前記第三剤形が、少なくとも20mgのブプレノルフィンを含み、少なくとも2日の投与期間投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記第一剤形が、10mg以下のブプレノルフィンを含み;前記第二剤形が、20mg以下のブプレノルフィンを含み、3日間投与され;及び前記第三剤形が、少なくとも30mgのブプレノルフィンを含み、少なくとも2日間投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記第一剤形が、20mg以下のブプレノルフィンを含み;前記第二剤形が、30mg以下のブプレノルフィンを含み、3日間投与され;及び前記第三剤形が、40mgのブプレノルフィンを含み、少なくとも2日間投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記患者が、高齢者患者である、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
前記患者が、高齢者高血圧患者である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記患者が、高血圧の治療のためにサイアザイド利尿薬を服用している、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
患者の収縮期血圧を少なくとも20mmHg、又は拡張期血圧を少なくとも10mmHg低下させる、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
患者の収縮期血圧を少なくとも20mmHg、及び拡張期血圧を少なくとも10mmHg低下させる、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
慢性疼痛をそうした治療が必要な患者において治療する方法であって、該方法は、
5日以下である第一投与期間、第一のブプレノルフィン含有経皮剤形を患者に投与すること;
第二投与期間、前記第一剤形と同じ用量のブプレノルフィン又は前記第一剤形より多い用量のブプレノルフィンを含む第二のブプレノルフィン含有剤形を患者に投与すること;及び
第三投与期間、前記第二剤形より多い用量のブプレノルフィンを含む第三のブプレノルフィン含有経皮剤形を患者に投与すること
を含むものであり、
前記投与計画が、
(a)前記第一剤形の投与24時間後の平均血漿中ブプレノルフィン濃度が、10〜100pg/mLの間であり;
(b)前記第一剤形の投与72時間後の平均血漿中ブプレノルフィン濃度が、25〜200pg/mLの間であり;
(c)前記第一剤形の投与144時間後の平均血漿中ブプレノルフィン濃度が、100〜250pg/mLの間であり;及び
(d)前記第一剤形の投与168時間後の平均血漿中ブプレノルフィン濃度が、400〜1000pg/mLの間である
血漿中ブプレノルフィンプロフィールをもたらす、前記方法。
【請求項39】
(a)投与24時間後の平均血漿中ブプレノルフィン濃度が、20〜50pg/mLの間であり;
(b)投与72時間後の平均血漿中ブプレノルフィン濃度が、40〜100pg/mLの間であり;
(c)投与144時間後の平均血漿中ブプレノルフィン濃度が、150〜200pg/mLの間であり;及び
(d)投与168時間後の平均血漿中ブプレノルフィン濃度が、少なくとも500pg/mLである、
請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記血漿プロフィールが、図1に示すものと実質的に同様である、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記患者が高齢者である、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記患者が高血圧である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記経皮剤形が、経皮投与用品及び経皮投与用組成物から成る群より選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項44】
前記経皮投与用品が、拡散駆動型経皮システムである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記経皮投与用組成物が、局所用ゲル、ローション、軟膏、経粘膜システム、経粘膜装置、及びイオン導入法による送達システムから成る群より選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項1】
慢性疼痛をそうした治療が必要な患者において治療する方法であって、
5日以下である第一投与期間、第一のブプレノルフィン含有経皮剤形を患者に投与すること;
5日以下である第二投与期間、前記第一剤形と同じ用量のブプレノルフィン又は前記第一剤形より多い用量のブプレノルフィンを含む第二のブプレノルフィン含有経皮剤形をその患者に投与すること;及び
第三投与期間、前記第二剤形より多い用量のブプレノルフィンを含む第三のブプレノルフィン含有経皮剤形をその患者に投与すること
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記第一、第二及び第三経皮剤形が、次の表:
【表1】
の一行に示されているとおりの量のブプレノルフィンを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一投与期間が、少なくとも2日である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第二投与期間が、少なくとも2日である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第三投与期間が、少なくとも2日である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第一投与期間が、4日以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第一投与期間が、3日である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第二投与期間が、4日以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第二投与期間が、3日である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第一剤形が、5mgのブプレノルフィンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第二剤形が、10mgのブプレノルフィンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第三剤形が、20mgのブプレノルフィンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第三剤形が、30mgのブプレノルフィンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第三剤形が、40mgのブプレノルフィンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記第三投与期間の後の第四投与期間に、少なくとも1回、第四のブプレノルフィン含有経皮剤形を投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記第四投与期間が、2日である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第四剤形が、30又は40mgのブプレノルフィンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記患者が、高齢者患者である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記患者が、高齢者高血圧患者である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記患者が、小児患者である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記小児患者が、脊柱側弯症、脳性麻痺、若年性関節炎、癌及び術後疼痛から成る群より選択される疾患に罹患している、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記慢性疼痛が、少なくとも1週間継続することが予想される疼痛である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記患者が、変形性関節炎、慢性腰痛、術後疼痛又は広範囲の外傷からの回復に随伴する疼痛のうちの少なくとも1つに罹患している、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第一剤形が、5mg以下のブプレノルフィンを含み、前記第一投与期間が、3日以下であり、前記第二剤形が、5mg以下のブプレノルフィンを含み、前記第二投与期間が、3日以下であり、前記第三剤形が、20mg以下のブプレノルフィンを含み、前記第三投与期間が、少なくとも約7日である、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記経皮剤形が、局所用ゲル、ローション、軟膏、経粘膜システム、経粘膜装置、及びイオン導入法による送達システムから成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
患者の収縮期血圧を少なくとも20mmHg、又は拡張期血圧を少なくとも10mmHg低下させる、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
患者の収縮期血圧を少なくとも20mmHg、及び拡張期血圧を少なくとも10mmHg低下させる、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
ブプレノルフィンの第一、第二及び第三経皮剤形を患者に投与することを含む、慢性疼痛をそうした治療が必要な患者において治療する方法であって、
前記第三剤形は、前記第一及び第二剤形より高い用量のブプレノルフィンを含み、ならびに
前記第三剤形と同じ用量のブプレノルフィンを単に投与するのに比べ、悪心、嘔吐及び頭痛から選択される有害事象の発生率を上昇させない、
前記方法。
【請求項29】
起立性高血圧又は失神を誘発しない、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記第一剤形が、5mg以下を含み;前記第二剤形が、10mg以下のブプレノルフィンを含み、3日の投与期間投与され;及び前記第三剤形が、少なくとも20mgのブプレノルフィンを含み、少なくとも2日の投与期間投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記第一剤形が、10mg以下のブプレノルフィンを含み;前記第二剤形が、20mg以下のブプレノルフィンを含み、3日間投与され;及び前記第三剤形が、少なくとも30mgのブプレノルフィンを含み、少なくとも2日間投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記第一剤形が、20mg以下のブプレノルフィンを含み;前記第二剤形が、30mg以下のブプレノルフィンを含み、3日間投与され;及び前記第三剤形が、40mgのブプレノルフィンを含み、少なくとも2日間投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記患者が、高齢者患者である、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
前記患者が、高齢者高血圧患者である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記患者が、高血圧の治療のためにサイアザイド利尿薬を服用している、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
患者の収縮期血圧を少なくとも20mmHg、又は拡張期血圧を少なくとも10mmHg低下させる、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
患者の収縮期血圧を少なくとも20mmHg、及び拡張期血圧を少なくとも10mmHg低下させる、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
慢性疼痛をそうした治療が必要な患者において治療する方法であって、該方法は、
5日以下である第一投与期間、第一のブプレノルフィン含有経皮剤形を患者に投与すること;
第二投与期間、前記第一剤形と同じ用量のブプレノルフィン又は前記第一剤形より多い用量のブプレノルフィンを含む第二のブプレノルフィン含有剤形を患者に投与すること;及び
第三投与期間、前記第二剤形より多い用量のブプレノルフィンを含む第三のブプレノルフィン含有経皮剤形を患者に投与すること
を含むものであり、
前記投与計画が、
(a)前記第一剤形の投与24時間後の平均血漿中ブプレノルフィン濃度が、10〜100pg/mLの間であり;
(b)前記第一剤形の投与72時間後の平均血漿中ブプレノルフィン濃度が、25〜200pg/mLの間であり;
(c)前記第一剤形の投与144時間後の平均血漿中ブプレノルフィン濃度が、100〜250pg/mLの間であり;及び
(d)前記第一剤形の投与168時間後の平均血漿中ブプレノルフィン濃度が、400〜1000pg/mLの間である
血漿中ブプレノルフィンプロフィールをもたらす、前記方法。
【請求項39】
(a)投与24時間後の平均血漿中ブプレノルフィン濃度が、20〜50pg/mLの間であり;
(b)投与72時間後の平均血漿中ブプレノルフィン濃度が、40〜100pg/mLの間であり;
(c)投与144時間後の平均血漿中ブプレノルフィン濃度が、150〜200pg/mLの間であり;及び
(d)投与168時間後の平均血漿中ブプレノルフィン濃度が、少なくとも500pg/mLである、
請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記血漿プロフィールが、図1に示すものと実質的に同様である、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記患者が高齢者である、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記患者が高血圧である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記経皮剤形が、経皮投与用品及び経皮投与用組成物から成る群より選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項44】
前記経皮投与用品が、拡散駆動型経皮システムである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記経皮投与用組成物が、局所用ゲル、ローション、軟膏、経粘膜システム、経粘膜装置、及びイオン導入法による送達システムから成る群より選択される、請求項43に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【公表番号】特表2006−513184(P2006−513184A)
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−560867(P2004−560867)
【出願日】平成15年12月15日(2003.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2003/039792
【国際公開番号】WO2004/054553
【国際公開日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(599108792)ユーロ−セルティーク エス.エイ. (134)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年12月15日(2003.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2003/039792
【国際公開番号】WO2004/054553
【国際公開日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(599108792)ユーロ−セルティーク エス.エイ. (134)
【Fターム(参考)】
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