鎮静剤組成物
【課題】新たな鎮静剤を提供する。
【解決手段】カノコソウエキスに対し、アスコルビン酸、グルタミン酸、オンジエキスからなる群から選択される少なくとも1種以上を配合することで、著しく鎮静効果が増強された鎮静剤。
【解決手段】カノコソウエキスに対し、アスコルビン酸、グルタミン酸、オンジエキスからなる群から選択される少なくとも1種以上を配合することで、著しく鎮静効果が増強された鎮静剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカノコソウを含有する鎮静剤組成物に関する。具体的には本発明は、カノコソウを含有する鎮静用の医薬品または食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会はIT機器の普及により、肉体労働は減少する一方で、高度な知的および/または精神作業や、一日中同じ姿勢でパソコン画面を見たりするようなVDT(Visual Display Terminal)作業等の増加により、精神的ストレスや頭脳疲労等が増加して労働環境上、大きな問題となってきている。厚生労働省の「平成20年技術革新と労働に関する実態調査」によると、労働者の内87.5%がVDT作業に従事しており、その内34.6%が精神的な疲労やストレスを感じると回答している。
【0003】
このような作業等による、精神的ストレスやいらいら感を鎮めるために、従来、天然由来で安心して使用できる漢方薬、カノコソウ等のハーブを配合した生薬製剤、テアニンやγ-アミノ酪酸(GABA)を配合した機能性または健康食品が用いられている。しかし、それらの作用は緩和であるため、より効きめのある天然由来の鎮静用組成物が求められている。
【0004】
カノコソウはバレリアナ属植物であり、緩和な鎮静作用があるため、古代ギリシャ時代から神経の高ぶりを抑制する植物として用いられてきた。日本には江戸時代に蘭方薬として渡来した。1886年には第1改正日本薬局方に「カノコソウ(吉草根)」として収載された。現在では、その根及び根茎の抽出物が、主に医薬品の鎮静剤や不眠改善薬として精神的なストレス等を改善する目的で用いられている。
【0005】
抗酸化剤であるアスコルビン酸は、副腎皮質機能への関与(ストレス反応の防止)が記載(例えば、非特許文献1参照)されていることから、抗ストレス作用が示唆される。また、オンジ(遠志)には、拘束水浸ストレス胃潰瘍形成抑制作用が記載(例えば、非特許文献1参照)されていることから、抗ストレス作用が示唆される。更に、グルタミン酸誘導体であるテアニンが抗ストレス作用を有することが報告(例えば、特許文献1参照)されていることから、グルタミン酸の抗ストレス作用が示唆される。しかし、アスコルビン酸、オンジおよびグルタミン酸のいずれも、単独で強い鎮静効果を示すという報告はなく、更に、精神ストレス等を改善する薬効成分としては一般的には採用されていない。
【0006】
これまでに、バレリアーナエキス(セイヨウカノコソウ)に、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、葉酸およびテアニンからなる群から選択される1種以上の成分を含む睡眠障害用組成物が記載されている(特許文献2参照)。しかし、バレリアーナとテアニンの組み合わせでの具体的な効果は開示されておらず不明であり、さらにバレリアーナとグルタミン酸との併用効果については示唆もなく、当該併用による鎮静作用については全く不明である。
【0007】
また、ビタミンB6、ビタミンB1、ビタミンB2、ニコチン酸アミド、コクトオリゴ、パントテン酸カルシウム、乳酸カルシウム、サフラン、エゾウコギ、ヨクイニン、カノコソウ、ハチミツ、ビタミンC、タウリン他を含む、月経前緊張症に有効な飲料が記載されている(特許文献3の実施例参照)。しかし、カノコソウとビタミンCの組み合わせを特定するものではなく、この組合せによる鎮静作用を示唆するものではない。なお、カノコソウとオンジの組み合わせは全く知られていない。
【0008】
なお、これまでに、鎮静作用を有する生薬、例えば、カノコソウエキス、パッシフローラエキス、チョウトウコウエキス、ホップエキス、サンザシエキス等を複数配合した催眠鎮静薬がいくつか市販されている(例えば、非特許文献2参照)。
【0009】
以上、カノコソウと、アスコルビン酸、グルタミン酸および/又はオンジを含有する鎮静剤組成物は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−321355号公報
【特許文献2】特開2003−183174号公報
【特許文献3】特開平2−250830号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】第15改正日本薬局方
【非特許文献2】日本医薬品集 一般薬2010−11年版 じほう 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
これまでの鎮静用組成物は作用が緩和であった。本発明の課題は、安全かつ、より効きめの高い鎮静用組成物を見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、かかる課題を解決すべく長年にわたり鋭意研究を進めてきた。その結果、カノコソウに、アスコルビン酸、グルタミン酸またはオンジを併用することで、これらをそれぞれ単独で使用した場合に比べて、著しく鎮静効果が増強された製剤を得ることができ、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0014】
本発明の組成物は、安全な特定の生薬、アミノ酸、またはビタミンから成り、かつ鎮静効果がすぐれており極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】断眠ストレス負荷を与えた動物の自発運動量の変化からみた鎮静作用を評価した図である。図1のコントロール群は断眠ストレス負荷すると落ち着きが無くなって運動量が増加することを示している。これにカノコソウエキスを投与すると自発運動量は減少し鎮静作用が認められた。カノコソウに、鎮静作用が知られていないアスコルビン酸、グルタミン酸、オンジエキスのいずれかを併用すると、鎮静効果が増強されることが認められた。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明におけるカノコソウは、第15改正日本薬局方収載のカノコソウおよびカノコソウ末、さらにはカノコソウエキスを含み、好ましくは、カノコソウエキスである。
本発明におけるカノコソウエキスとしては、バレリアナ属植物(Valeriana)の根、根茎及び葉から水やエタノール等の有機溶媒により抽出した抽出物を使用することができる。バレリアナ属植物の種類として詳しくは、バレリアナフォーリエイ ブリケット(Valeriana fauriei Briquet)(カノコソウ)、バレリアナフォーリエイ フォーマ(Valeriana fauriei forma)(エゾカノコソウ)、バレリアナオフィシナリス(Valeriana officinalis)(セイヨウカノコソウ)を挙げることができる。カノコソウエキスは製剤中に10〜1000mg、より好ましくは50〜500mgを配合することができる。
【0017】
本発明におけるアスコルビン酸としては、アスコルビン酸以外にもアスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウムのようなアスコルビン酸塩を挙げることができ、酢酸エステル、糖エステル、金属塩、並びにこれらの混合物を挙げることができる。
【0018】
本発明におけるグルタミン酸としては、グルタミン酸以外にもグルタミン酸ナトリウムなどの塩やグルタミン酸の誘導体等が挙げられる。
【0019】
本発明におけるオンジ(遠志)は、第15改正日本薬局方収載のオンジおよびオンジ末、さらにはオンジエキスを含み、好ましくはオンジエキスである。
本発明におけるオンジエキスとしては、ヒメハギ属のイトヒメハギ(Polygala tenuifolia)の根から水やエタノール等の有機溶媒により抽出した抽出物を使用することができる。
【0020】
本発明の鎮静剤は、カノコソウエキスに加え、アスコルビン酸、グルタミン酸、オンジエキスからなる群から選択される少なくとも1種以上を有効成分として含有し、カノコソウエキスの重量比1に対して、アスコルビン酸、グルタミン酸、オンジエキスの合計の重量比が0.01〜1である。より好ましい重量比は、カノコソウエキス1に対して、アスコルビン酸、グルタミン酸、オンジエキスの合計が0.1〜1である。
【0021】
本発明の鎮静剤は、経口服用されるものであり、その剤形としては固体状の経口投与剤、例えば錠剤、カプセル剤、細粒剤、顆粒剤などが挙げられる。また、カノコソウはテルペン類等の香気成分が鎮静作用を示すという報告もあることから、より効果的な剤形として液剤などとしても製することができる。その他にはゼリー剤なども挙げられる。
【0022】
本発明の有効成分であるカノコソウエキス、アスコルビン酸、グルタミン酸、オンジエキスの総量は、剤型や服用者の年齢等に応じて適宜選択されるが、一般的には、10〜2000mg/dayであり、より好ましくは100〜1000mg/dayの範囲で使用される。
【0023】
本発明の鎮静剤は、有効成分としてカノコソウエキスに加え、アスコルビン酸、グルタミン酸、オンジエキスからなる群から選択される少なくとも1種以上を有効成分として含有していればよく、必要に応じて本発明の効果を阻害しない範囲で以下のような補助成分も適宜配合することができる。
補助成分:トケイソウエキス、ホップエキス、クラテグスエキス、チョウトウコウエキス、ニンジンエキス、キキョウエキス、ケイヒエキス、コウカエキス、サイシンエキス、ハッカヨウエキス、ボレイエキス、サンソウニンエキス、ブクリョウエキス、オウギエキス、リュウコツ、ボレイ、セッコウ、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンE、葉酸、ナイアシン、ベンフォチアミン、オクトチアミン、パンテチン、テアニン、イノシトール、トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン、アルギニン、アスパラギン酸、トラネキサム酸、乳酸カルシウム、リバオール、タウリン、γ‐オリザノール、塩化カルニチン、またはγ-アミノ酪酸
【0024】
本発明の鎮静剤は、有効成分あるカノコソウエキスおよびアスコルビン酸、グルタミン酸、オンジエキスに、例えば乳糖、デンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の不活性な賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤等の慣用の添加剤を配合して、慣用の方法例えば第十五改正日本薬局方に記載の方法と同様にして、前記のような固形剤に製剤化することができる。また、砂糖、人工甘味料、有機酸、防腐剤などを用いて慣用の方法で液剤にすることもできる。これらには、必要に応じて、着色剤、香料、矯味剤、矯臭剤等を更に配合してもよい。
【0025】
本発明の鎮静剤は、不眠症や緊張感、興奮感、いらいら感などの鎮静、及びこれら症状に伴う頭重、疲労倦怠感の緩和、不安感の解消などに用いることができる。
【0026】
(製造例)
本発明は下記のような処方例にて、公知の錠剤の製法を用い錠剤に製することが可能であるが、これに限定されるものではない。更に必要に応じて、セラック、ステアリン酸、カルナウバロウなどを用いてコーティングすることも可能である。
(表1)
処方例(1日量・6錠) 含有量(mg)
カノコソウエキス 400
オンジエキス 100
アスコルビン酸 100
グルタミン酸 100
軽質無水ケイ酸 200
クロスカルメロースナトリウム 200
乳糖 100
トウモロコシデンプン 50
ステアリン酸マグネシウム 20
【実施例】
【0027】
以下、本発明を製造例及び実施例により具体的に説明するが、本発明は、これら製造例及び実施例に何ら限定されるものではない。
【0028】
(試験例)
本発明の鎮静剤の効果を評価するために、マウスを用いて断眠ストレスを負荷した際の自発運動量の鎮静効果の試験を実施した。試験には体重20〜30gのddy系雄性マウスを1群当り4匹用いた。各ゲージに水深4cmとなるよう水を入れ、その中に直径2cm高さ5.5cmの円柱を設置し、マウスの足場とした。この足場上にマウスを1日20時間乗せて、断眠ストレスを負荷し、それ以外の4時間は通常のゲージにて飼育した。この断眠ストレスを5日間連続負荷すると、通常のゲージに移した際、不眠のストレスで落ち着きが無くなり、自発運動量が増加する。この自発運動量の増加を被検物質投与により鎮静化させる程度を測定した。
試験期間中は1日1回、各マウスにカノコソウエキス(日本薬局方適合品)を体重当り1000mg/kg、更にアスコルビン酸(日本薬局方適合品)、グルタミン酸(日本薬局方適合品)、オンジエキス(日本薬局方適合品)のいずれかを1000mg/kgとなるようにゾンデを用いて経口投与した。コントロール群は同様にして水のみを投与した。自発運動行動量はスーパーメックス(室町機械社製)を使用し、15分間の馴化の後に90分間の自発行動量を測定した。
(実施例1)カノコソウエキス1000mg/kg + アスコルビン酸1000mg/kg
(実施例2)カノコソウエキス1000mg/kg + グルタミン酸1000mg/kg
(実施例3)カノコソウエキス1000mg/kg + オンジエキス1000mg/kg
【0029】
(試験結果)
結果を図1に示す。コントロール群に断眠ストレスを負荷すると落ち着きが無くなって運動量が増加した。これにカノコソウエキスを1000mg/kg投与すると自発運動量は減少し、緩和な鎮静作用が認められた。しかし、カノコソウ1000mg/kg投与群に対して、一般的に鎮静作用が知られていないアスコルビン酸、グルタミン酸、オンジエキスのいずれかを1000mg/kg併用することで、更に自発運動量は減少し、カノコソウ単独で用いる際と比して著しく鎮静効果が向上した。これらの結果から、カノコソウエキスに対し、アスコルビン酸、グルタミン酸、オンジエキスを配合することで、鎮静効果が増強されることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の組成物は、安全な特定の生薬、アミノ酸、またはビタミンから成り、かつ鎮静効果がすぐれており極めて有用である。
【技術分野】
【0001】
本発明はカノコソウを含有する鎮静剤組成物に関する。具体的には本発明は、カノコソウを含有する鎮静用の医薬品または食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会はIT機器の普及により、肉体労働は減少する一方で、高度な知的および/または精神作業や、一日中同じ姿勢でパソコン画面を見たりするようなVDT(Visual Display Terminal)作業等の増加により、精神的ストレスや頭脳疲労等が増加して労働環境上、大きな問題となってきている。厚生労働省の「平成20年技術革新と労働に関する実態調査」によると、労働者の内87.5%がVDT作業に従事しており、その内34.6%が精神的な疲労やストレスを感じると回答している。
【0003】
このような作業等による、精神的ストレスやいらいら感を鎮めるために、従来、天然由来で安心して使用できる漢方薬、カノコソウ等のハーブを配合した生薬製剤、テアニンやγ-アミノ酪酸(GABA)を配合した機能性または健康食品が用いられている。しかし、それらの作用は緩和であるため、より効きめのある天然由来の鎮静用組成物が求められている。
【0004】
カノコソウはバレリアナ属植物であり、緩和な鎮静作用があるため、古代ギリシャ時代から神経の高ぶりを抑制する植物として用いられてきた。日本には江戸時代に蘭方薬として渡来した。1886年には第1改正日本薬局方に「カノコソウ(吉草根)」として収載された。現在では、その根及び根茎の抽出物が、主に医薬品の鎮静剤や不眠改善薬として精神的なストレス等を改善する目的で用いられている。
【0005】
抗酸化剤であるアスコルビン酸は、副腎皮質機能への関与(ストレス反応の防止)が記載(例えば、非特許文献1参照)されていることから、抗ストレス作用が示唆される。また、オンジ(遠志)には、拘束水浸ストレス胃潰瘍形成抑制作用が記載(例えば、非特許文献1参照)されていることから、抗ストレス作用が示唆される。更に、グルタミン酸誘導体であるテアニンが抗ストレス作用を有することが報告(例えば、特許文献1参照)されていることから、グルタミン酸の抗ストレス作用が示唆される。しかし、アスコルビン酸、オンジおよびグルタミン酸のいずれも、単独で強い鎮静効果を示すという報告はなく、更に、精神ストレス等を改善する薬効成分としては一般的には採用されていない。
【0006】
これまでに、バレリアーナエキス(セイヨウカノコソウ)に、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、葉酸およびテアニンからなる群から選択される1種以上の成分を含む睡眠障害用組成物が記載されている(特許文献2参照)。しかし、バレリアーナとテアニンの組み合わせでの具体的な効果は開示されておらず不明であり、さらにバレリアーナとグルタミン酸との併用効果については示唆もなく、当該併用による鎮静作用については全く不明である。
【0007】
また、ビタミンB6、ビタミンB1、ビタミンB2、ニコチン酸アミド、コクトオリゴ、パントテン酸カルシウム、乳酸カルシウム、サフラン、エゾウコギ、ヨクイニン、カノコソウ、ハチミツ、ビタミンC、タウリン他を含む、月経前緊張症に有効な飲料が記載されている(特許文献3の実施例参照)。しかし、カノコソウとビタミンCの組み合わせを特定するものではなく、この組合せによる鎮静作用を示唆するものではない。なお、カノコソウとオンジの組み合わせは全く知られていない。
【0008】
なお、これまでに、鎮静作用を有する生薬、例えば、カノコソウエキス、パッシフローラエキス、チョウトウコウエキス、ホップエキス、サンザシエキス等を複数配合した催眠鎮静薬がいくつか市販されている(例えば、非特許文献2参照)。
【0009】
以上、カノコソウと、アスコルビン酸、グルタミン酸および/又はオンジを含有する鎮静剤組成物は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−321355号公報
【特許文献2】特開2003−183174号公報
【特許文献3】特開平2−250830号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】第15改正日本薬局方
【非特許文献2】日本医薬品集 一般薬2010−11年版 じほう 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
これまでの鎮静用組成物は作用が緩和であった。本発明の課題は、安全かつ、より効きめの高い鎮静用組成物を見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、かかる課題を解決すべく長年にわたり鋭意研究を進めてきた。その結果、カノコソウに、アスコルビン酸、グルタミン酸またはオンジを併用することで、これらをそれぞれ単独で使用した場合に比べて、著しく鎮静効果が増強された製剤を得ることができ、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0014】
本発明の組成物は、安全な特定の生薬、アミノ酸、またはビタミンから成り、かつ鎮静効果がすぐれており極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】断眠ストレス負荷を与えた動物の自発運動量の変化からみた鎮静作用を評価した図である。図1のコントロール群は断眠ストレス負荷すると落ち着きが無くなって運動量が増加することを示している。これにカノコソウエキスを投与すると自発運動量は減少し鎮静作用が認められた。カノコソウに、鎮静作用が知られていないアスコルビン酸、グルタミン酸、オンジエキスのいずれかを併用すると、鎮静効果が増強されることが認められた。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明におけるカノコソウは、第15改正日本薬局方収載のカノコソウおよびカノコソウ末、さらにはカノコソウエキスを含み、好ましくは、カノコソウエキスである。
本発明におけるカノコソウエキスとしては、バレリアナ属植物(Valeriana)の根、根茎及び葉から水やエタノール等の有機溶媒により抽出した抽出物を使用することができる。バレリアナ属植物の種類として詳しくは、バレリアナフォーリエイ ブリケット(Valeriana fauriei Briquet)(カノコソウ)、バレリアナフォーリエイ フォーマ(Valeriana fauriei forma)(エゾカノコソウ)、バレリアナオフィシナリス(Valeriana officinalis)(セイヨウカノコソウ)を挙げることができる。カノコソウエキスは製剤中に10〜1000mg、より好ましくは50〜500mgを配合することができる。
【0017】
本発明におけるアスコルビン酸としては、アスコルビン酸以外にもアスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウムのようなアスコルビン酸塩を挙げることができ、酢酸エステル、糖エステル、金属塩、並びにこれらの混合物を挙げることができる。
【0018】
本発明におけるグルタミン酸としては、グルタミン酸以外にもグルタミン酸ナトリウムなどの塩やグルタミン酸の誘導体等が挙げられる。
【0019】
本発明におけるオンジ(遠志)は、第15改正日本薬局方収載のオンジおよびオンジ末、さらにはオンジエキスを含み、好ましくはオンジエキスである。
本発明におけるオンジエキスとしては、ヒメハギ属のイトヒメハギ(Polygala tenuifolia)の根から水やエタノール等の有機溶媒により抽出した抽出物を使用することができる。
【0020】
本発明の鎮静剤は、カノコソウエキスに加え、アスコルビン酸、グルタミン酸、オンジエキスからなる群から選択される少なくとも1種以上を有効成分として含有し、カノコソウエキスの重量比1に対して、アスコルビン酸、グルタミン酸、オンジエキスの合計の重量比が0.01〜1である。より好ましい重量比は、カノコソウエキス1に対して、アスコルビン酸、グルタミン酸、オンジエキスの合計が0.1〜1である。
【0021】
本発明の鎮静剤は、経口服用されるものであり、その剤形としては固体状の経口投与剤、例えば錠剤、カプセル剤、細粒剤、顆粒剤などが挙げられる。また、カノコソウはテルペン類等の香気成分が鎮静作用を示すという報告もあることから、より効果的な剤形として液剤などとしても製することができる。その他にはゼリー剤なども挙げられる。
【0022】
本発明の有効成分であるカノコソウエキス、アスコルビン酸、グルタミン酸、オンジエキスの総量は、剤型や服用者の年齢等に応じて適宜選択されるが、一般的には、10〜2000mg/dayであり、より好ましくは100〜1000mg/dayの範囲で使用される。
【0023】
本発明の鎮静剤は、有効成分としてカノコソウエキスに加え、アスコルビン酸、グルタミン酸、オンジエキスからなる群から選択される少なくとも1種以上を有効成分として含有していればよく、必要に応じて本発明の効果を阻害しない範囲で以下のような補助成分も適宜配合することができる。
補助成分:トケイソウエキス、ホップエキス、クラテグスエキス、チョウトウコウエキス、ニンジンエキス、キキョウエキス、ケイヒエキス、コウカエキス、サイシンエキス、ハッカヨウエキス、ボレイエキス、サンソウニンエキス、ブクリョウエキス、オウギエキス、リュウコツ、ボレイ、セッコウ、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンE、葉酸、ナイアシン、ベンフォチアミン、オクトチアミン、パンテチン、テアニン、イノシトール、トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン、アルギニン、アスパラギン酸、トラネキサム酸、乳酸カルシウム、リバオール、タウリン、γ‐オリザノール、塩化カルニチン、またはγ-アミノ酪酸
【0024】
本発明の鎮静剤は、有効成分あるカノコソウエキスおよびアスコルビン酸、グルタミン酸、オンジエキスに、例えば乳糖、デンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の不活性な賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤等の慣用の添加剤を配合して、慣用の方法例えば第十五改正日本薬局方に記載の方法と同様にして、前記のような固形剤に製剤化することができる。また、砂糖、人工甘味料、有機酸、防腐剤などを用いて慣用の方法で液剤にすることもできる。これらには、必要に応じて、着色剤、香料、矯味剤、矯臭剤等を更に配合してもよい。
【0025】
本発明の鎮静剤は、不眠症や緊張感、興奮感、いらいら感などの鎮静、及びこれら症状に伴う頭重、疲労倦怠感の緩和、不安感の解消などに用いることができる。
【0026】
(製造例)
本発明は下記のような処方例にて、公知の錠剤の製法を用い錠剤に製することが可能であるが、これに限定されるものではない。更に必要に応じて、セラック、ステアリン酸、カルナウバロウなどを用いてコーティングすることも可能である。
(表1)
処方例(1日量・6錠) 含有量(mg)
カノコソウエキス 400
オンジエキス 100
アスコルビン酸 100
グルタミン酸 100
軽質無水ケイ酸 200
クロスカルメロースナトリウム 200
乳糖 100
トウモロコシデンプン 50
ステアリン酸マグネシウム 20
【実施例】
【0027】
以下、本発明を製造例及び実施例により具体的に説明するが、本発明は、これら製造例及び実施例に何ら限定されるものではない。
【0028】
(試験例)
本発明の鎮静剤の効果を評価するために、マウスを用いて断眠ストレスを負荷した際の自発運動量の鎮静効果の試験を実施した。試験には体重20〜30gのddy系雄性マウスを1群当り4匹用いた。各ゲージに水深4cmとなるよう水を入れ、その中に直径2cm高さ5.5cmの円柱を設置し、マウスの足場とした。この足場上にマウスを1日20時間乗せて、断眠ストレスを負荷し、それ以外の4時間は通常のゲージにて飼育した。この断眠ストレスを5日間連続負荷すると、通常のゲージに移した際、不眠のストレスで落ち着きが無くなり、自発運動量が増加する。この自発運動量の増加を被検物質投与により鎮静化させる程度を測定した。
試験期間中は1日1回、各マウスにカノコソウエキス(日本薬局方適合品)を体重当り1000mg/kg、更にアスコルビン酸(日本薬局方適合品)、グルタミン酸(日本薬局方適合品)、オンジエキス(日本薬局方適合品)のいずれかを1000mg/kgとなるようにゾンデを用いて経口投与した。コントロール群は同様にして水のみを投与した。自発運動行動量はスーパーメックス(室町機械社製)を使用し、15分間の馴化の後に90分間の自発行動量を測定した。
(実施例1)カノコソウエキス1000mg/kg + アスコルビン酸1000mg/kg
(実施例2)カノコソウエキス1000mg/kg + グルタミン酸1000mg/kg
(実施例3)カノコソウエキス1000mg/kg + オンジエキス1000mg/kg
【0029】
(試験結果)
結果を図1に示す。コントロール群に断眠ストレスを負荷すると落ち着きが無くなって運動量が増加した。これにカノコソウエキスを1000mg/kg投与すると自発運動量は減少し、緩和な鎮静作用が認められた。しかし、カノコソウ1000mg/kg投与群に対して、一般的に鎮静作用が知られていないアスコルビン酸、グルタミン酸、オンジエキスのいずれかを1000mg/kg併用することで、更に自発運動量は減少し、カノコソウ単独で用いる際と比して著しく鎮静効果が向上した。これらの結果から、カノコソウエキスに対し、アスコルビン酸、グルタミン酸、オンジエキスを配合することで、鎮静効果が増強されることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の組成物は、安全な特定の生薬、アミノ酸、またはビタミンから成り、かつ鎮静効果がすぐれており極めて有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カノコソウと、アスコルビン酸、グルタミン酸およびオンジからなる群から選択される少なくとも1種以上を含有する鎮静剤組成物。
【請求項2】
カノコソウエキス1重量部に対して、アスコルビン酸、グルタミン酸およびオンジエキスの合計が0.01〜1重量部である請求項1に記載の鎮静剤組成物。
【請求項3】
いらいら感、興奮感、緊張感の鎮静である請求項1に記載の鎮静剤組成物。
【請求項4】
いらいら感、興奮感、緊張感に伴う疲労倦怠感または頭重の緩和のための請求項1に記載の鎮静剤組成物。
【請求項1】
カノコソウと、アスコルビン酸、グルタミン酸およびオンジからなる群から選択される少なくとも1種以上を含有する鎮静剤組成物。
【請求項2】
カノコソウエキス1重量部に対して、アスコルビン酸、グルタミン酸およびオンジエキスの合計が0.01〜1重量部である請求項1に記載の鎮静剤組成物。
【請求項3】
いらいら感、興奮感、緊張感の鎮静である請求項1に記載の鎮静剤組成物。
【請求項4】
いらいら感、興奮感、緊張感に伴う疲労倦怠感または頭重の緩和のための請求項1に記載の鎮静剤組成物。
【図1】
【公開番号】特開2013−53144(P2013−53144A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−175603(P2012−175603)
【出願日】平成24年8月8日(2012.8.8)
【出願人】(306014736)第一三共ヘルスケア株式会社 (176)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年8月8日(2012.8.8)
【出願人】(306014736)第一三共ヘルスケア株式会社 (176)
【Fターム(参考)】
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