説明

鏡像異性のエクオールを含有する組成物および製品、およびその製造方法

S−エクオール、R−エクオール、またはS−エクオールおよびR−エクオールの非ラセミ体およびラセミ体を含む混合物よりなる市販食品および皮膚用製品の製造に用いられる組成物。当該組成物は、例えば食品サプリメント、医薬品および医薬的組成物等の市販品を製造するために使用できる。当該組成物は、心血管疾患、脂質障害、骨減少症、骨粗鬆症、肝臓疾患、および急性の卵巣エストロゲン不足等のホルモン依存性疾患を含む疾患または関連した状態を防止または治療するために哺乳類にS−エクオールを投与する方法に有用である。当該S−エクオール鏡像異性体は微生物によるイソフラボンの代謝から生合成によって製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鏡像異性のエクオール化合物、すなわち、S−エクオールおよびR−エクオールの製造および単離、および哺乳類およびヒトの疾患や体の異常の治療に用いる鏡像異性のエクオール化合物を含む食品および医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
大豆および精製された大豆タンパク質で作る食品の栄養価値は十分確立されており、そして大豆食品への関心の復活は、主に大豆中に豊富に見出される植物エストロゲンの一種であるイソフラボンの健康上の効用可能性に関する文書による研究の結果である。大豆タンパク質の必須量6.25G/一食あたり(FDA,1999)を含む大豆食品に対する心臓健康促進効能表示を大豆食品の製造者に許可している最近のFDA認可は、大豆の成分であるイソフラボンの価値を認めなかったが、諸研究は、現在、植物エストロゲンが心臓血管の危険因子の低減に寄与する重要な非ステロイド特性を有すると同時に、コレステロール低下効果に寄与することを指摘している。大豆を恒常的に消費しているアジア諸国でホルモンに依存する疾患の発病率が低いのは、大豆イソフラボンの作用が一部起因していることが示唆されてきた。
【0003】
植物エストロゲン、特に大豆、クローバーおよび葛に由来するイソフラボン、例えば、ゲニステイン、ダイゼイン、グリシチン、プエラリンおよびそれらの配糖体誘導体、ビオカニンAおよびホルモノネチン、およびそれらの配糖体誘導体は、いくつかの哺乳類およびヒト組織においてエストロゲン特性を呈し、また、エストロゲン受容体部位でエストロゲン結合を競合的に阻害することによって抗エストロゲン特性を呈している。エストロゲンとは異なり、これらイソフラボン植物エストロゲンは、乳ガンおよび子宮ガンの危険性増加とは関連せず、乳ガンおよび前立腺癌の発達を実際に阻害するであろう。
【0004】
心血管疾患は、特に米国および西欧諸国において、罹患率および死亡率の主要因である。いくつかの原因因子は、当該疾患に対する遺伝的な体質、性別、喫煙やダイエットのような生活様式因子、年齢、高血圧および高脂血症、また高コレステロール血症を含み、心循環器疾患の進行などに関係する。これらの因子のいくつか、特に高脂血症および高コレステロール血症は、血管および心疾患の主原因であるアテローム性動脈硬化症の発達を助長している。
【0005】
血中コレステロールの高濃度は、ヒトにおける血管疾患および心血管疾患に対する主要な危険因子の1つである。低密度リポタンパク質コレステロール(以下「LDL−コレステロール」)および全コレステロールの上昇は、高密度リポタンパク質コレステロール(以下、「HDL−コレステロール」)の低レベルの一素因であるが、心血管疾患の危険性増加に直接的に関連する[コレステロールおよび死亡率:フラミンガム研究の30年間のフォローアップ, ANDERSONら, JAMA, VOL.257, PP.2176-80(1987)]。いくつかの臨床試験は、アテローム性動脈硬化症に対するHDL−コレステロールの保護的な役割を支持している。ある研究は、血液中のHDL−コレステロールが1mg/DL増加する毎に、冠状動脈血管疾患の危険性が女性において3%減少することを示した[高密度リポタンパク質コレステロールおよび心血管疾患:四つの有望な米国の研究, GORDONら, CIRCULATION, VOL.79, PP.8-15(1989)]。
【0006】
閉経後の血漿コレステロールの上昇や米国や大部分の西欧諸国では冠状動脈血管疾患で男性よりも女性の方が多勢死亡しているという事実によって実証されるように、エストロ
ゲンは、脂質代謝の調節や健康な血管の維持に重要な役割を果している。この理由のため、HRT(ホルモン補充療法)がCVD(脳血管疾患)に対する予防を提供することによって、閉経後の女性に有益であろうという意見が長く保持されてきた。8年間の期間にわたってHRTを利用した閉経後の女性16,608名を越える女性の健康支援研究からの最近の発見は、このような有益性を示さず、そして特にエストロゲンとプロゲスチンの処方を組み合わせて摂取した最初の年において、乳ガンの危険性が著しく増すことと共に、血栓塞栓症および心疾患で死亡する危険性が増加することを実際に見出した。これらの報告の結果、HRTの使用は急減し、そして、女性は、現在、閉経後のエストロゲン不足に恩恵を与えるエストロゲン代替物をますます探索している。植物エストロゲン、例えば、エストロゲン受容体に対してコンフォメーション結合によって天然の選択的エストロゲン受容体モジュレーターとして作用するイソフラボンは、魅力のある代替物になる可能性がある。しかし一方、大豆またはクローバーイソフラボンの使用に関しては多数公開されているが、重要な代謝物質であるエクオールの価値の可能性に関するデータは少ない。
【0007】
最近の諸研究で、大豆イソフラボンはアテローム性動脈硬化症の進行を阻害しながら、全コレステロールおよびLDL−コレステロールの血中濃度を下げる役割を動物において演じることを決定付けた。ヒトにおける血中コレステロールレベルに関するイソフラボンの効果については、随分と議論があるが、いくつかの研究は、コレステロールを低下させるためには大豆タンパク質に存在するイソフラボンを摂取する必要性があることを現在示している。血清中の総LDL−コレステロールの減少と大豆タンパク質中のイソフラボンの量との間で投与量に依存する相関を示したCROUSEらの研究は重要である。コレステロールホメオスタシスに対するイソフラボンが持つ効果とは別で、イソフラボンが血管に重要な効果を与えるという証拠が現在ある。脂質過酸化反応の低下、動脈の反応性、血流量および血圧の改善および血小板凝集の減少をいくつかの研究は示している。イソフラボンを含む日常の治療食は、炎症の重要マーカーのうちの一つであり、心血管疾患における増悪因子の1つであると考えられるC反応性蛋白レベルを低減することを最近我々は見出した。上記の全ては、心血管疾患についての重大なリスク低減因子である。
【0008】
イソフラボンは、骨保持効果を有することが示されている。これまでの培養骨細胞の17件のインビトロ研究、閉経後の骨粗鬆症の動物モデルの24件のインビボ研究および17件の食事療法研究で、イソフラボンは骨保持効果を有することを示している。これらの研究の全てにおいて調べたのは、大豆イソフラボンまたはクローバーイソフラボンであった。我々は、エクオールは重要な骨栄養剤で、エストロゲンと異なっており、骨吸収細胞の活性を低減するだけでなく、閉経後の女性の骨ミネラル密度を確実に増やすことができる能力を有することを初めて示した。
【0009】
今までの文献の大部分は、大豆もしくはクローバー中の天然イソフラボンに焦点を合わせたもので、腸内由来の天然イソフラボンの代謝物質の作用または効果について報告した文献はほとんど無く、そこには、哺乳類やヒトにおける治療または予防効果を安全に提供し得る化合物および方法を更に開発する必要性が依然として残っている。
【0010】
非ステロイド性のエストロゲンであるエクオール(7−ヒドロキシ−3−(4′−ヒドロキシフェニル)−クロマン)を、妊娠した雌ウマ尿から1932年に初めて単離、同定し、その後、大豆食品を食しているヒトの尿中で同定した。エクオールは、ステロイド性エストロゲンエストラジオールと同様の構造を有する。エクオールは、イソフラボンの中で独特で、キラル中心を持ち、2種の鏡像異性体つまりR−およびS−鏡像異性体の形で存在する。エクオールに関するこれまでの研究は、全てエクオールのラセミ体を用いて実施したように見える。そこではエクオールには2種の形が存在するという認識が欠けており、我々の知識によれば、これまでの研究は、エクオールの鏡像異性体個々の特定的作用または活性に関して報告していない。雌ウマの尿中で最初に同定されたとき、エクオールは光学的
に活性で、R−鏡像異性体として存在すると報告された。その後、これは不正確なアサインメントであることが見出され、そしてウマの尿から単離されたエクオールの形式は、実はS−鏡像異性体であることが実証された。初めて我々は、腸内で産生されるヒト由来のエクオールは、S−鏡像異性体だけであることを実証し、そして各々の鏡像異性体を合成、単離し、そしてエストロゲン受容体(ER)、ERαおよびERβに対するそれらのそれぞれの親和性(アフィニティ)における明らかな違いを示した。
【0011】
エクオールは当初、卵巣切除したマウスに大量注射した場合エストロゲン活性を有しないとされていたが、しかし、その後の諸発見で、エクオールは羊の不妊症候群に対して関連があることが示された。
【0012】
また、(−)エクオールは、当初、卵巣切除したマウスにおいてエストロゲン活性を有しないとして報告された。しかし後で、エクオールのラセミ体は、弱エストロゲンとして挙動することが証明されたが、一方、その前駆体であるダイゼインおよびホルモノネチンはエストロゲン活性がないか、または殆ど持たなかった。
【0013】
エクオールは、大豆を食しない限り、大部分の健常人の尿中には通常存在しない。インビボでのエクオールの産生は、無菌動物がエクオールを排泄しない、また、エクオールが生れてから全く大豆食品だけを与えた新生児達の血漿および尿中で見つからなかったということから立証されるように、腸内細菌叢にもっぱら依存している。
【0014】
エクオールは、いかなる植物由来の製品中においても自然に発生しない非ステロイド性のエストロゲンである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0015】
[本発明の簡単な説明]
本発明は、S−エクオールを含む市販品の製造において使用する組成物に関する。
【0016】
本発明は、R−エクオールを含む市販の製造において使用する組成物に関する。
本発明は更に、S−エクオールおよびR−エクオールの非ラセミ体を含む商品に関する。
【0017】
本発明は更に、S−エクオール、R−エクオール、およびS−エクオールとR−エクオールの非ラセミ体からなるグループから選ばれた添加剤成分からなる食品組成物に関する。
【0018】
本発明は更に、S−エクオール、R−エクオール、およびS−エクオールとR−エクオールの非ラセミ体からなるグループから選ばれた添加剤成分からなる皮膚への局部塗布用組成物に関する。
【0019】
本発明はまた、第1および第2の鏡像異性体をエクオールのラセミ体から単離する方法に関し、次のステップを含む:(1)エクオールのラセミ体からなる組成物を用意すること;(2)キラル固定相HPLCカラムを用意すること;(3)C4−C8のアルカンおよびC2−C4のアルコールからなる移動相でHPLCカラムの入口に一定量の当該組成物を通過させること;(4)前記通過ステップから第1の期間後、HPLCカラムの出口から第1の鏡像異性体を含む第1の溶出液を収集すること; および(5)前記通過ステップから第2の期間後、当該カラムの出口から第2の鏡像異性体を含む第2の溶出液を収集すること。
【0020】
本発明はまた、イソフラボンをヒト被験者に投与し、そして当該被験者の少なくとも一つの生理データを測定する研究の進め方に関し、次のステップを含む:1)選択された被験者グループの少なくとも一人のヒト被験者にイソフラボンの一回分を投与すること; 2
)当該被験者の尿中にあるエクオールのレベルを検出すること; および3)エクオール産生者かそれともエクオール非産生者か、当該被験者を同定すること。
【0021】
本発明は更に、S−エクオールを含む組成物を製造する方法に関し、次のステップを含む:1)S-エクオールに変換可能なイソフラボンからなる第1組成物を用意すること;2)当該イソフラボンをS-エクオールに変換できる微生物によって当該第1組成物を培養すること;および3)当該イソフラボンの一部をS−エクオールに変換するために、当該培養組成物を十分な時間に培養すること。
【0022】
本発明は加えて、S−エクオールを含む組成物を製造する方法に関し、次のステップを含む:1)S−エクオールに変換できるイソフラボンを含む第1組成物を用意すること;2)当該第1の組成物と、イソフラボンをS−エクオールに変換できるバクテリアから抽出される酵素、アルファグルコシダーゼ、ベータグルコシダーゼ、ベータガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼおよびペクチナーゼからなるグループから選ばれた酵素とを組み合わせること、および3)前記イソフラボンの一部をS−エクオールに変換するため、前記組み合わせ組成物を十分な時間に培養すること。
【0023】
本発明はまた、S−エクオール製品を製造する方法に関し、次のステップを含む:
1)基本的にS−エクオールからなるエクオール鏡像異性体を含み、微生物によってイソフラボンの代謝から生合成された組成物を提供すること;2)下記の抽出法から選ばれる抽出法によって前記組成物からS−エクオールを抽出し、S−エクオールを含む製品を製造すること;A)前記組成物を低分子量アルコールと混合し、水に対するアルコールの比率を少なくとも40:60および95:5以下で用意することを含む溶剤抽出法、およびB)前記組成物を約4.0と約5.5との間のpHで混合することを含む酸性水溶液抽出法;3)前記抽出物を約15%から約55%までの固形分に濃縮すること;4)前記濃縮物を約6%から約13%までの固形分に希釈すること;5)固体沈殿物を希釈した溶液から単離することで、S−エクオール製品を生成すること。
【0024】
本発明はまた、疾患または関連症状の予防または治療のため、S−エクオールまたはその共役類似体を含む組成物を哺乳類に与えることを含むS−エクオールを哺乳類に投与する方法に関する。
【0025】
本発明はまた、疾患または関連症状の予防または治療のため、R−エクオールまたはその共役類似体を含む組成物を哺乳類に与えることを含むR−エクオールを哺乳類に投与する方法に関する。
【0026】
本発明は更に、グルコシドの酵素加水分解方法に関し、グルコシドを対応するアグリコンに変換するための十分な時間と条件下で、グルコシドをHELIX POMATIAからの酵素含有抽出物と接触させることを含む方法に関する。
【0027】
[本発明の詳細な説明]
エクオールは、複素環の二重結合の欠如によりキラル中心を持つ点で大部分のイソフラボンと明らかに異なる。大豆からのダイゼイン、グリシチンおよびゲニステイン、クローバーからのホルモノネチンおよびビオカニンA、および葛からのプエラリンなどの植物エストロゲンイソフラボンは、キラル中心を持たない。R−エクオールおよびS−エクオールの化学構造を図1に示す。
【0028】
R−およびS−鏡像異性体はコンフォメーション的に異なり、このことは二量体化されたERコンプレックスの空胴中の結合部位にエクオールがいかに嵌合するかに影響すると予測される。多くの異なるインビトロの測定システムは、イソフラボンのエストロゲン性を比
較するために用いられてきている。使用される解析評価システムとは独立して、エクオール、ダイゼイン、エストラジオールと子宮サイトソル受容体(CYTOSOLIC RECEPTORS)との相対的モル結合親和性(RELATIVE MOLAR BINDIng AFFINITY)の数値は、それぞれ0.4、0.1および1.0である。しかしこれらの数値は、明白なER亜型の認識やERβの発見に先立つものであり、その相対的モル結合親和性がERαとの親和性を反映するもので、エクオールの鏡像異性体における構造活性の可能な違いを考慮してない。
【0029】
エクオールを含むいくつかの植物エストラゲンは、ERβタンパク質と好んで結合する点で多くのエストロゲン様の物質の中で独特であり、このことは組織、例えば骨、脳および血管の内皮組織の中の受容体亜型(RECEPTOR SUB-TYPE)発見に大豆イソフラボンのいくつかの有益な効果を説明するのに役に立つかもしれない。より最近ヒトERαおよびERβに対するエクオールの結合親和性は、いくつかのほかのイソフラボンと比較された。両受容体に対するエクオールの結合はゲニステインのそれと類似していたが、エクオールは特にERαとともに、他のどのイソフラボンよりも強く遺伝子発現における転写を誘発した。興味深いことに、これらのインビトロ系におけるダイゼインは低い親和性と転写活性を示す。
【0030】
およそ50%のエクオールは遊離型または非結合型で循環し、これはプラズマ中の遊離ダイゼイン(18.7%)またはエストラジオール(4.6%)の割合よりも相当大きい。受容体占有に利用し得るのは非結合型の部分であるので、このことはエクオールの全体的な潜在力を高めることに関連する。更に、R―エクオールおよびS―エクオールは両者ともインビトロおよびインビボにおいてジハイドロテストステロンを中和する能力を持ち、独特の抗アンドロゲン特性を示す。従って、アンドロゲン関連疾患における潜在的薬理学的薬剤としてのR−エクオールの潜在的治療的役割をもたらす。われわれが予測するには、R―エクオールは、エストロゲン受容体ERαおよびERβの発現を調節する際に役割を果たす新しいエストロゲン受容体であるERβ2のリガンドとして役立つかも知れない。こういう意味で、これらの受容体を通して媒介される経路にシグナルを出すことに関連して、R―エクオールは、乳がんや関連するホルモン状態の治療や予防のための潜在的薬剤であるかもしれない。R−エクロールは、また抗酸化活性も有する。したがって、R―エクオールは、イソフラボン摂取に反応して胃腸管において作り出されるものではないが、これまでは認識されなかった重要なイソフラボンであり、重要な薬剤として潜在的可能性のある独特のイソフラボンなのである。
【0031】
実験の部に示すように、エクオールのS−鏡像異性体は、専ら大豆食品を消費する「エクオール産生者」成人の尿および血漿の中に見出されていることが確定した。このことは、腸内のエクオールのバクテリアの製造がおそらく鏡像異性であることを示唆したものであり、実験の部の実験(D)に示すように、S−エクオールはインビトロで培養される人の腸管バクテリアによって作られる唯一のエクオール鏡像異性体である。
【0032】
S−エクオールを含有する組成物
本発明の組成は、S−エクオールを含み、典型的には主にS−エクオールからなる。その組成は市販品を作ることに使われる。その組成物、或いはそこから作られる製品は経口で消費したり、局部に塗布したりし得る。
【0033】
当該製品は、典型的には市場または機関向けの食物製品、医薬、OTC薬剤、軟膏、液剤、クリームや局部塗布に適したその他の材料を含む。食品組成は少なくとも、一食当たり、少なくとも1mg、最高200mgまでのS−エクオールを含有すること。経口投与された薬剤は一回投与量当たり少なくとも1mg、最高200mgまでのS−エクオールを含有すること。
【0034】
局部塗布のための製品は少なくとも0.1%、最高10重量%のS−エクオールを含有する。
本発明の局部塗布組成物はその他の化粧品および医薬活性分子および賦形剤を含有し得る。そのような適当な化粧品および医薬用薬剤は、カビ剤、ビタミン、抗炎症剤、抗生物質、鎮痛薬、一酸化窒素シンターゼ阻害剤、昆虫駆除剤、自己日焼け剤、界面活性剤、モイスチャライザー、安定剤、保存剤、防腐剤、増粘剤、潤滑油、湿潤剤、キレート剤、皮膚浸透エンハンサー、緩和剤、香料および顔料を含有するが、これらに限定されるものではない。
【0035】
S−エクオールは、エクオールの共役物として使っても良い。グルクロニド、サルフェート、アセテート、プロピオン酸エステル、グルコシド、アセチルグルコシド、マロニルグルコシドおよびそれの混合物からなる群から選ばれる物とC−4’またはC−7の位置で共役される。
【0036】
関連する疾患や状態の治療および/または予防またはその傾向を低下させるために、被験者に投与される組成物または製剤は、ひとつ以上の医薬上許容しうるアジュバント、キャリヤーおよび/または賦形剤を含有する。医薬上許容し得るアジュバント、キャリヤーおよび/または賦形剤は、例えば医薬用賦形剤ハンドブック、第二版、米国医薬品協会, 1994年(ここでは参照により引用する)に説明されているような、この分野の技術に熟練している技術者に公知のものである。S−エクオールは、錠剤、カプセル、加工用粉末、シロップ、食品(例えば棒状食品、ビスケット、軽食食品およびこの分野の技術に熟練している技術者に公知の他の標準食品形式のようなもの)、または飲料製剤の形で投与されることができる。飲料は、調味料、バッファー等をも含有できる。
【0037】
本発明の組成物は、経口、直腸投与、点眼、頬部(例えば舌下)、非経口(例えば皮下、筋内、皮内および静脈)および皮膚貼り付け投与に適当なものを含有することができる。与えられたいかなる場合においてももっとも適当な経路は、治療されている状態の性質と重篤性、および患者の状態に依存する。
【0038】
本発明はまたエクオールの非ラセミ体を含有する組成物を含有する市販品を含み、本質的にS−エクオールからなるエクオールを含有する。市販品は、飲料水を含有する食品、および飲料、または個人用ケア製品にし得る。
【0039】
当該組成物は典型的にはS−エクオール鏡像異性体をR−エクオールとS−エクオール((±)エクオールともいう)のラセミ体から単離することによって作ることができる。典型的なラセミ体は、例えばここに述べられるもののような合成経路によって作られる合成ラセミ体である。典型的なS−エクオール組成物は、鏡像異性体純度90%の最少限鏡像体過剰率(EE)のS−エクオールを有する。典型的にはより精製された組成物は96%の最少限EEの、更に典型的には98%の最少限EEのS−エクオールを有して調製できる。
【0040】
本発明の組成物は、またS−エクオールとR−エクオールの非ラセミ体を含み、0%以上90%以下のEEのS−エクオールを有する。0%のEEを有する組成物は、二つの鏡像異性体の50:50のラセミ体である。当該組成物は、ラセミ体からのR−エクオール鏡像異性体の不完全な単離と除去によってラセミ体から直接に作られ得る。当該組成物は、また非ラセミ体とラセミ体の両方を含有する混合物を含む第一のエクオール成分を、基本的にS−エクオールから構成される組成物を含む第二の成分と組み合わせることによって作られる。この方法は、S−エクオールの過剰を有する非ラセミ組成物を製造する。逆に非ラセミ体は、非ラセミ体とラセミ体の両方を含有するエクオールの混合物を含む第一のエクオール成分を、基本的にR−エクオールから構成される組成物を含む第2の成分と組み合わせることによって、R−エクオール鏡像異性体の過剰で作られる。組成物の中のR−エクオール成分とS−エクオール成分の特定の利点または指定により、組成物は約50:50以上から約99.5:1、より典型的には約51:49から約99:1、および約50:50以下から約1:99.5、より典型的には約
49:51から約1:99までのS−エクオール対R−エクオールの比率でS−エクオールとR−エクオールを含んで調製できる。
【0041】
S−エクオール組成物は、食品組成物(また飲料をも含めて)の付加成分として添加できる。当該食品成分はプロバイオティック食品、プレバイオティク食品またはダイエット食製品を含み得る。典型的には食品は少なくとも一食当たり1mgから約100mgのレベルでS−エクオールを、より典型的には一食当たり5-50mgのS−エクオールを含有できる。
【0042】
本発明の食品成分は、またここに述べられるような(±)エクオールの非ラセミ体の成分としてS−エクオールを含み得る。
【0043】
本発明による組成物例は、一つ以上の医薬上許容できる、また工業上標準的なフィラーを含み得る。フィラーは当該組成物で治療される被験者に有害であってはならない。当該フィラーは固体、または液体、または両方にできる。当該フィラーは例えば錠剤のような単位投与量として活性S−エクオールで製剤化でき、典型的には約10%から80%の重量部のS−エクオールを含有できる。組成物は任意に賦形剤、(例えば水のような)希釈剤、および製薬業の分野の技術に熟練している技術者に公知の補助剤を含有する成分を、混合して公知の製薬技術のいずれかによって調製できる。
【0044】
経口投与に適した組成物は、それぞれ所定量の抽出物を含有するカプセル、カシェー剤,トローチ剤、または錠剤、粉末、または顆粒、水溶性または非水溶性液体における溶液または懸濁液、水中の油または油中の水のエマルジョンのような個々の形で提供できる。そのような組成物は、活性S−エクオールとひとつ以上の適当なキャリアー(上記のように一つ以上のアクセサリー成分を含有できる)を一緒にするというステップを含有する適当ないかなる製薬方法によっても調製できる。一般に本発明の組成物は、S−エクオールを液体または細かく分けた固体キャリアー、または両方と一緒に良く混合し、それから必要であれば、得られた混合物を成形することによって調製される。例えば、錠剤は当該抽出物を含有する粉末または顆粒を含んだり、または成形する事により、任意にはひとつ以上のアクセサリー成分と共に調製できる。圧縮錠剤は、適当な機械中で抽出物を任意に結合剤、潤滑油、不活性希釈剤、および/または界面活性/分散剤と混ぜて粉末または顆粒の形に圧縮することによって調製できる。成形した錠剤は、適当な機械の中で、不活性液体バインダーで湿気を与えた粉末状の化合物を成形することによって調製できる。
【0045】
適当なフィラーは、例えばラクトース、サッカロース、マンニトールまたはソルビトールのような糖類、セルロース製剤および/または例えばリン酸トリカルシウムまたはリン酸水素カルシウムのようなリン酸カルシウム類、そしてまた例えば、コーン、小麦、米またはジャガイモ澱粉、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロースおよび/またはポリビニルピロリドンを使用した澱粉ペーストのようなバインダー、および望むなら上記澱粉、またカルボキシメチル澱粉、架橋ポリビニルピロリドン、寒天またはアルギン酸またはアルギン酸ナトリウムのような塩のようなバインダーである。賦形剤は、例えば珪酸、滑石、ステアリン酸、またはマグネシウムまたはカルシウムステアリン酸塩のような塩、および/またはポリエチレングリコールのような流動調整剤および潤滑油にできる。糖衣錠芯は、適当な、任意に腸溶性のの塗布剤が与えられ、とりわけ、そこで使われるのはアラビアゴム、滑石、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタンを含み得る濃縮砂糖溶液、または適当な有機溶剤または溶剤混合物中のコーティング溶液、または腸溶性ののコーティング製剤のためのアセチルセルロースフタレート、またはヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートのような適当なセルロース製剤の溶液が提供される。染料または顔料は、例えば識別の目的のため、または活性成分の異なる投与量を示すために錠剤や糖衣錠コーティングに加え得る。
【0046】
他の経口投与医薬組成物は、例えばゼラチンでできた乾燥状態で充填されたカプセル、ゼラチンや、グリセリンやソルビトールのような可塑剤でできたやわらかい、密封カプセルである。乾燥状態で充填されたカプセルは、例えばラクトースのような注入剤、澱粉のような結合剤および/または滑石、またはマグネシウムステアリンのようなグリカント、および適当な場では安定剤との混合において顆粒の形での抽出物を含み得る。ソフトカプセルにおいては、抽出物は安定剤もまた添加できる脂肪族油、パラフィン油、液体ポリエチレングリコールのような適当な液体の中に溶解または懸濁することが好ましい。
【0047】
食品改善のためにS−エクオールは、シリアル、ヨーグルト、豆乳、スープ、チーズ、パスタ、スプレッド、キャンディーバー、スポーツバー、飲料水または乳製品を含む広範囲の食品または食品成分と混合できる。
【0048】
頬部(舌下)投与に適した製剤は、通常サッカロースおよびアカシアまたはトラガカントゴムの香りを付けたベース中の抽出物を含む菱形物、およびゼラチン、グリセリン、サッカロース、およびアカシアのような不活性ベース中に化合物を含むパステル(粒)を含む。
【0049】
直腸への投与に適した製剤は、単位投与量座剤として提供するのが好ましい。これらは例えば、ひとつ以上の従来の固体キャリアー、例えばココアバターとイソフラボンとを混合し、それからその結果できた混合物を成形することによって調製できる。
【0050】
R−エクオールを含有する組成物
本発明の組成物はR−エクオールを含み、典型的には主にR−エクオールからなる。その組成物は市販品を作ることに使われる。当該組成物、またはそれから作られる製品または商品は経口で消費したり、局部に塗布したりできる。
【0051】
当該製品は、S−エクオールのそれと同じ投与量レベルおよび組成物レベルでR−エクオールを上述のS−エクオール関連の製品のいずれの中に含み得る。
当該R−エクオールはまたエクオール共役物であり得て、グルクロニド、サルフェート、アセテート、プロピオン酸エステル、グルコシド、アセチルグルコシド、マロニルグルコシドおよびそれらの混合物からなる群から選ばれる共役物で、C−4’またはC−7の位置で共役される。
【0052】
関連する疾患や状態の治療および/または予防またはその傾向を低下させるために、被験者に投与されるR−エクオールを含む組成物または製剤は、ひとつ以上の医薬上許容しうるアジュバント、キャリヤーおよび/または賦形剤を含有し、および上述のS−エクオール関連の製品形態において含み得る。
【0053】
当該組成物は典型的にはR−エクオール鏡像異性体を上記のS−エクオール関連のR−エクオールおよびS−エクオールのラセミ体から単離することによって作れる。
【0054】
エクオール産生者および非エクオール産生者の同定
13C]ダイゼインおよび[13C]ゲニステインのトレーサーを使用している健常人の研究は、エクオールがダイゼインから間違いなく作られるものであり、ゲニステインから作られるものではないことを示す。エクオールは、大豆からのダイゼインのグリコシド共役の加水分解とクローバーの中に見出されるメトキシル化イソフラボンホルモノネチンまたはそのグリコシド共役物を通じて生成する。全ての場合において、当該反応は図2に示されるとおり、ジヒドロ中間体を経過する。いったん生成すると、エクオールは代謝的に不活性に見え、肝臓における相II代謝、または低度の付加的ヒドロキシル化があるもの、更なるインビボ変化を受けない。ダイゼインおよびゲニステインについて、主な相II反応は
、グルクオニド化および低度の硫酸化である。尿中のエクオールの存在は、大豆食品の消化と関係があったと言う独自の発見に伴い、明確な理由がわからないが、約50%から70%の成人個体群が大豆食品を毎日食べても、尿中にエクオールを排泄しない、ということが観察された。更に、純粋なイソフラボン化合物を摂取したときでも、それにより食品マトリックスのいかなる影響も取り除いても、多くの人々はダイゼインをエクオールに変換しないことが示されている。この現象は「エクオール産生者」、「非エクオール産生者」(またはエクオール低産生者)という用語につながっている。
【0055】
区分用の値(cut-off value)が経験的に導き出され、これらの範疇のそれぞれに個人の割り当てを可能にする。10ng/ml(40nmol/l)未満の血漿エクオール濃度を持つ人々は、「非エクオール産生者」として分類することができ、レベルが10ng/ml(40nmol/l)を超えるところではこれは「エクオール産生者」と定義する。この区別はまた、エクオール産生者は、尿中1,000nmol/l以上に排泄する人であるので、尿中のレベルから導き出すこともできる。エクオールの排泄は、非常に個人間で変動するにもかかわらず、エクオールを産生できるものと、できないものとの間には大きな境界があり、反応に触媒作用を及ぼす酵素動力学における前駆体―産物関係と一致している。尿中のダイゼインとエクオールレベルの間には逆の関係があるが、これまで、重要な性別差は確定されていない。
【0056】
エクオール産生者または非エクオール産生者としての被験者の状態は、イソフラボン、特にダイゼイン、ゲニステイン、ホルモネチン、およびビオカニンAの投与を評価する臨床的研究の被験者を募る際に重要である。例えば、多くの骨および大豆フィード研究が行われ、種々の結果が出ている。12週間以下の短期間の研究、尿のピリジノリンおよびデオキシピロジノリンのような骨の回転率(BONE-TURNOVE)の代理マーカー(SURROGATE MARKER)が架橋するところで、血漿/血清オステオカルシン、アルカリホスファターゼおよびIGF−1は、イソフラボンを含有する大豆食品が食事に含まれたとき、骨の回転率が減少することを示した。9ヶ月以下のいくつかの臨床的研究は、BONE-SPARING 効果を示すと報告されている。これらのすべての研究では、種々の部位の骨ミネラル密度(BMD)の変化を測定したが、その結果は矛盾し、4つのうち2つは何の作用も示さなかった。一つを除く全ての研究で、エクオールの状態を確定する試みはなかった。そのひとつの研究では、エクオール産生者であるということは、大豆食品が2年の期間にわたって消費されるとき、BMDがかなり増加したという関連が見いだされた。このように、われわれのデータに基づき、エクオールは骨栄養剤で、したがって被験者を「エクオール産生者」と同定することには治療的な意義があり、一方、エクオールを与えることは骨喪失を予防し、骨形成を増加することに有益であろう。
【0057】
本発明は、イソフラボンがヒト被験者に投与される研究を行う方法を含み、少なくともひとつの生理データが測定され、次のステップを含む:1)選択された被験者グループの少なくとも一人のヒト被験者にエクオールの前駆体であるイソフラボンを投与するステップ;2)当該被験者の尿または血液中のエクオールレベルの検知ステップ;3)エクオール産生者か非エクオール産生者か被験者を同定するステップ。生理データは、典型的にはイソフラボンのエストロゲン活性によって影響され得るものである。被験者をエクオール産生者または非エクオール産生者として同定してから、調査研究から集められたデータは明確に解析され、それによってエクオール産生者として特定された一人以上の被験者の基準値は、非エクオール産生者として同定された一人以上の被験者のデータから別途に得られ、分離され、解析され、報告される。エクオール産生者または非エクオール産生者として特定された被験者は、調査被験者のグループから除く(または含まれる)ことができる。
【0058】
エクオールの化学合成
この工程においては標準的化学が反応複素環の二重結合を水素化し、およびC−3位置のカルボニル基を取り除くために使用される。典型的出発物質はダイゼイン、ゲニステイン
、グリシテイン、プエラリン、ホルモノネチンおよびビオカニンAのようなイソフラボンおよびそのグルコシド共役物である。いかなる共役形態も上記に定義されるように加水分解によってアグリコンに還元される。反応のために適した溶剤は氷酢酸のような有機酸、イソプロパノールのような低分子アルコール、およびその混合物を含む。典型的に用いられる還元触媒は、活性炭上の10%のPdパラジウムのような触媒を含む。反応は、室温から60℃までの温度で、周囲よりわずかに上回る圧力から200psig〔14atm.ゲージ〕までの圧力で30時間以上までの反応時間で行う。
【0059】
反応完了後、当該触媒は取り除かれ、全ての濾液も蒸発させる。典型的にはシリカゲルカラムを用いるクロマトグラフィー法によってC2−C4のアルコール、C3−C7のアルカンおよびその混合物を含む溶出液で粗製品を純化する。N−ヘキサンから結晶純化により典型的には少なくとも純度99%、更に典型的には少なくとも75%の収率で、(±)エクオールを製造できる。エクオール結晶製品は無色、吸湿性はなく、大気中で安定しており、最終的濾過操作の間に分解しない。
【0060】
エクオール製品のトリメチルシリルエーテル、tert-ブチルヂメチルシリルエーテル、或いは他の揮発性化合物の誘導体は、GC−MS分析によって、単一ピークとして現れ、その質量スペクトルが発表された標準エクオールのトリメチルシリル(TMS)エーテル誘導体の電子イオンスペクトルと一致することが確認された。
【0061】
R−およびS−鏡像異性体のラセミエクオールからの単離方法
本発明はまた、ラセミエクオール混合物から二つの鏡像異性体を単離する方法に関連する。当該方法は、典型的には化学合成から得られるラセミエクオールの混合物を使用する。一定量のラセミエクオールはC4−C8のアルカンおよびC2−C4のアルコールを含む移動相を使って、HPLCカラムの入口から注入される。ラセミ体を入口に注入してからの第1期間後、期間の長さがカラムのタイプ,溶出液のタイプ、溶出液の流量、温度、およびラセミ体の質量によるが、第1の溶出液がHPLCカラムの出口から集められる。第1の溶出液は、第1の鏡像異性体、典型的にはS−エクオールを含む。ラセミ体をHPLCカラムの入口から注入してから第2期間後、期間の長さがカラムのタイプ、溶出物のタイプ、流量、温度、およびラセミ体物の質量にもよるが、第2の溶出液はHPLCカラムの出口から集められる。第2の溶出液は第二の鏡像異性体、典型的にはR−エクオールを含む。
【0062】
S−エクオールおよびR−エクオールへのエクオールの単離は、キラル固定相カラム上で行うことができる。キラル固定相カラムの典型的な例は、ダイセル化学株式会社によって供給されるキラルセルODカラムまたはOJカラムである。市販用の多量の鏡像異性体単離のためのカラムは、製品、移動相ポンプ、工業規模のカラム、ユーティティー、および制御システムを含む工業システム上で製造できる。移動相は、C3−C7のアルカンまたは類似の極性溶剤であるC2−C4のアルコール、およびその混合物を含む。当該移動相は、典型的にはヘキサン対プロパノール比率95:5から5:95、より典型的には50:50から90:10を含む。移動相の典型的な例は、70%のヘキサンおよび30%のエタノールを含む。
【0063】
カラムからのエクオール鏡像異性体の溶出は、260−280nmでUV吸光度により、また質量分析計のようなより特定的な検知システムでエクオールの特定的なイオン種を監視することによって検知できる。当該検知条件はHPLCによって示されるとおり、S−エクオールおよびR−エクオール鏡像異性体の完全な単離を行えるように最適化される。
【0064】
キラル固定相カラムは、典型的にはエクオール鏡像異性体を選択的に単離するための材料をシリカ担体に担持させるものを含む。典型的な選択材料は、セルロールトリス(3,5−ジメチルフェニルカルバミン酸)およびセルローストリス(4―メチルベンゾアート)を含む。
【0065】
S−エクオールの生合成
従来の食品技術を利用して、S−エクオールはバルクで製造することができ、また種々の食品においては現場で製造できる。ダイゼインやダイゼインを誘導できる他のイソフラボン誘導体を含むベース培養液、食物製品または植物抽出物を提供できる。ダイゼインまたは他のイソフラボンは、標準的なバクテリア性または酵素発酵プロセスによってS−エクオールに変換でき、Sエクオールを含有するバルク溶液や食物製品、または植物抽出物を提供できる。
【0066】
食物製品としてのS−エクオールの製造は、ダイズイン、ダイゼイン、ホルモノネチンまたはプエラリンまたはそれらの共役物または混合物等の充分なスタート物質を含む食物に繁殖するバクテリアの代謝活動を利用することによって達成できる。図2に示すように、ダイゼインのエクオールへの変換は、3つの主なステップを含む:1) グルコシド共役基の加水分解;2)イソフラボンアグリコンのジヒドロ中間体への変換;および3)ジヒドロ中間体のエクオールへの変換。3つのステップの各々に必要な代謝経路および酵素は、必ずしも1つのバクテリアに現れるわけではない。ヒトの研究事例ではこれらの反応を行うことに関連して作用するひとつかそれ以上のバクテリアがしばしば存在するということが示唆される。これらの研究では、エクオールは、少量であるかほとんど検出されないかも知れないが、ジヒドロダイゼインは、しばしば大量に血漿および尿に存在するという事実が証明された。エクオールは単一の微生物によってダイゼインから製造されるかも知れないが、それぞれに固有の代謝の特徴を持つバクテリア種の混合物を使う時、よりよいまたは更に効率的な変換を達成することができると思われる。S−エクオールへの効果的な変換をするための重要な条件には、バクテリア微生物または微生物の混合物、培養温度および微生物が利用できる酸素の量の選択などが含まれる。これらの状態は、当業界に精通した人々によく知られている技術によって最適化できる。この反応を遂行するために使う微生物は、食品工業で使用される標準的な技術によって不活性化でき、またはその製品において活性状態であり続けることが可能である。
【0067】
ダイゼインおよび/または他の構造的にS−エクオールに関係するイソフラボン、または中間複合物を変換する過程で有用なバクテリアは、バクテリアの菌種や「エクオール産生者」であるヒトやウマ、齧歯類、または他の哺乳類の胃腸管にコロニーを作ることが見出されたバクテリアの菌種を含むことができる。哺乳類の腸内バクテリアは、糞便で見出されるので、エクオール産生バクテリアもまたエクオール産生哺乳類の糞便中に見出せる。
【0068】
発酵過程で有用な典型的なバクテリアは、最適変換速度およびエクオールの生合成を効率的に行うことを示すべきである。
【0069】
典型的にはダイゼイン(または他の関連イソフラボン)を中間体を通じてS−エクオールへ変換するために、一つ以上のバクテリア菌種が必要である。その反応は、一般に3つの主な反応のうちの1つ以上を含む:イソフラボングリコンからアグリコンイソフラボンへの変換;アグリコンイソフラボンからジヒドロイソフラボンへの変換;およびジヒドロイソフラボンから産物エクオールへの変換である。例えば、ウマの糞尿から単離した微生物の混合培養液および「エクオール産生者」として知られるヒトの胃腸管から単離した混合培養液は、インビボで行うようにグリコンダイセインを最終生成物であるS-エクオールに変換することができる。
【0070】
グリコンをアグリコンに変換できる(例えばダイズインをダイゼインに)典型的なバクテリア菌種は、ENTEROCOCCUS FAECALIS、LACTOBACILLUS PLANTARUM、LISTERIA WELSHIMERI、「エクオール産生者」の哺乳類の腸管から単離された微生物の混合培養物、BACTERIODES FRAGILIS、BIFIDOBACTERIUM LACTIS、EUBACTRIA LIMOSUM、LACTOBACILLUS CASEI、LAC
TOBACILLUS ACIDOpHILOUS、LACTOBACILLUS DELBRUECKII、LACTOBACILLUS PARACASEI、LISTERIA MONOCYTOGENES、MICROCOCCUS LUTEUS、PROPRIONOBACTERIUM FREUDENREICHIIおよびSACHAROMYCES BOULARDII、およびそれらの混合物を含む。
【0071】
アグリコンをエクオールに(例えばダイゼインをエクオールに)変換できる典型的なバクテリア菌種はPROPRIONOBACTERIA FREUNDENREICHII、BIFIDOBACTERIUM LACTIS、LACTOBACILLUS ACIDOpHILUS、 LACTOCOCCUS LACTIS、 ENTEROCOCCUS FAECIUM、LACTOBACILLUS CASEIおよびLACTOBACILLUS SALIVARIUS、および「エクオール産生者」の哺乳類の胃腸管から単離された微生物の混合培養物を含む。
【0072】
グルコシドからアグリコンへのバクテリア変換またはアグリコンからエクオール製品への変換に要する時間は、培養系のバクテリア関連因子特に濃度、利用可能な酸素量および温度、pHに依存するである。多くの場合、24時間以内に実質的に完全な変換を達成することが可能である。
【0073】
イソフラボングルコシドからアグリコンイソフラボンへのバクテリア変換のpH範囲は約3〜約9である。最適pHは、使用されるバクテリアのタイプに主により、したがってそれによって選択すべきである。
【0074】
グルコシドからアグリコンへの、またアグリコンからエクオール製品への酵素的変換に要する時間は、酵素関連因子、特に濃度および系の温度およびpHに依存する。多くの場合、実質的に24時間以内に、好ましくは約2時間以内に、更に最も好ましくは約1時間以内に完全な変換を達成することが可能である。
エクオールを生物学的に製造する代替法としては、S−エクオールを食物製品もしくは他の適当な基質中でダイゼインもしくは他の構造的に関連するイソフラボンの酵素変換によって現場で S−エクオールを産生することができる。適当な酵素は、酵素を単離精製する標準的な技術を用いて、ダイゼインもしくは構造的にエクオールに関連するイソフラボンの変換に効果的なバクテリアから単離濃縮することができる。これらのことは、酵素学および生化学の技術および科学の実践者によく知られ、使用されている。エクオールの産生は食品そのものの中においてバクテリアが繁殖することを必要としないで効率的な変換によって達成される。
【0075】
ダイゼインおよび/または他の関連するイソフラボンまたは中間化合物をエクオールに変換する過程で有用な酵素は、適当なイソフラボンをエクオールに変換した実績のあるバクテリアまたはバクテリアの混合物から単離した酵素を含むことができる。このようなバクテリアやバクテリアの混合物の例としては、「エクオール産生者」であるヒトやウマ、または他の哺乳類の胃腸管にコロニーを作ることが見出されたバクテリアを含むことができるが、そのバクテリアに限定はされていない。ダイゼインもしくは中間化合物をエクオールに変換する過程で有用な典型的な酵素については最適化された変換率やエクオールを効率的に生成する変換の程度を示さなければならない。
【0076】
使用することができる酵素は、ここでダイゼイン、もしくは構造的に関連するイソフラボンもしくは中間化合物をエクオールに変換することが、ここにおいて述べられているバクテリアの一つ以上もしくは混合物から単離することができる。
【0077】
典型的な方法では、バクテリアは、栄養あるトリプトン培養液で約37℃で15時間から72時間、更に典型的には15時間から72時間にわたり嫌気的に培養される。当該バクテリアは、次に従来の技術によって、最も一般的には約1,500Gから25,000Gまたはそれ以上までの重力で遠心分離により培養液から単離する。細胞は生理食塩水に懸濁させることによって生理食塩水溶液(約0.1%から約5%まで、好ましくは約0.9%)で洗浄し、当該懸濁液
を再度遠心分離する。洗浄し、単離した細胞は、酵素学や生化学の技術を実践する人々に良く知られている技術を用いて活性酵素の抽出を準備するために使用する。粗製の酵素混合物は、そのままで酵素抽出物として使用でき、生理食塩水、従来の酵素調製技術によって更に精製される。
【0078】
調製された酵素抽出物は、適当なイソフラボン、例えばダイゼイン、ダイズイン、またはホルモノネチンを含む食品に加える。他の単離した酵素は、そのいくつかは市場で手に入るものだが、酵素関与の反応経路において、初期物質を中間物に変換する速度を上げるために加える。産物は、典型的には培養する試料において穏やかな嫌気性の状態を保ちながら、約25℃から45℃、望ましくは約30℃から40℃で培養する。ダイゼイン型化合物のエクオールへの変換速度は、食品のベースに加えられた活性酵素の量に依存する。最も良い結果は、変換が速やかに(実質的に約2時間で完了する)進行するときに得られるが、低酵素活性では、変換にはより長い時間が必要である。食品において産生したエクオールの量は、食品中のダイゼインを含む化合物の量によって制限するか、または培養が始まった後適当な時に酵素を不活性化することによって、例えば得られた食品産物を約95℃から100℃に熱することによって制御することができる。
【0079】
S−エクオールの酵素的調製の第一ステップはグルコシドのアグリコンへの変換である。この変換を行うため上述された方法で単離した酵素を使う一つの代替方法として、市販の酵素を使うことが可能である。グルコシドのアグリコンへの酵素変換は、適当なpHおよび温度で適当な酵素をイソフラボングルコシドと接触させることで行うことができる。イソフラボングルコシドのアグリコンイソフラボンへの変換は、変換の間に使用する酵素のタイプや、酵素の活性および培養液のpHおよび温度を含む種々の因子に依存することが見出されている。当該変換を行うために必要な当該酵素は、イソブラボン部分とイソフラボングルコシドのブドウ糖とのグルコシド結合を分裂させ得る酵素である。好ましい一実施態様においては、当該酵素は1,4−グルコシド結合を分裂させ得るサッカリダーゼまたはグルコアミラーゼ酵素である。
【0080】
そのような酵素は、市場で入手できるアルファ−およびベータ−グルコシダーゼ酵素、ベータ−ガラクトシダーゼ酵素、グルコアミラーゼ酵素およびペクチナーゼ酵素である。これらの酵素の典型的な実例としては、バイオペクチナーゼ 200AL(それは、好ましくは約pH2.5から約pH6.5の範囲で利用する)(カリフォルニア州レッドウッド市、デルタジェン社から入手できるもの)、ビオラクターゼ 30,000(最適pH範囲は約3から6)、中性ラクターゼ(約6から約8の最適pH範囲)、両者はクエストインターナショナル社(1833の57番街、PO3917、サラソタ、フロリダ34243)から得ることができるものを含む。他の特に好ましい補完的酵素は、ラクターゼ NL(約6から約8の最適pH)およびENZECO 真菌ラクターゼ濃縮物(約4.5から約6.5の最適pH)(ENZYME DEVELOPMENT CORPORATION, 2 PENN PLAZA, SUITE 1102, 360 WEST 31ST STREET, NEW YORK, NY 10001から入手できる);大腸菌からのβガラクトシダーゼ(6.0から8.0の最適pH) (WORTHINGTON BIOCHEMICALS 社製で、SCIMAR, 4 RUSKIN CLOSE, TEMPLESTOWE, VICTORIA. 3106, オーストラリアから入手できる);LACTOZYME 3,000L(好ましくは約6から約8のpH範囲で利用される)及びALPHA-GAL 600L
(好ましくは約4から約6.5のpH範囲で利用される)(NOVO NORDISK BIOINDUSTRIALS社製で、 33 TURNER ROAD,DANBURY, CONN. 06813で入手可能); MAXILACT L2000(好ましくは約4から約6のpH範囲で利用する)(DSM FOOD SPECIALTIES社製で、 PO BOX 1,2600MA, DELFT,オランダから入手可能)。
【0081】
イソフラボングルコシドをアグリコンイソフラボンに変換するためのpH範囲は、約3から約9である。利用するpHは主に使う酵素のタイプに依存し、そしてそれに従って選択すべきである。上記の特定の酵素は、当該酵素の入手先によって特定される最適なpH範囲で活性がある。典型的には当該酵素はpH約6から8の中性pH範囲、またはpH約3から6の酸性pH
範囲のいずれかで活性がある。
【0082】
グルコシドからアグリコンへ変換するため、イソフラボンを多く含む物質の最適温度範囲は約5℃から約75℃である。反応温度は、酵素の活性に著しく影響を与え、従って変換速度に影響する。一部の酵素は70℃以上でも活性があり、例えばALPHA-GAL 600Lは75℃でも活性がある。しかし、酵素の非活性化を避けるために変換は低温で行うことが好ましい。好ましい一実施態様では、当該変換は約35℃から約45℃の間の温度で行う。
【0083】
グルコシドからアグリコンへ変換するために要する時間は酵素関連因子、特に濃度およびシステムの温度およびpHに依存する。多くの場合、24時間以内に実質的に変換を達成することが可能であるが、反応速度を劇的に増加するために酵素を加えることが好ましい。選択した酵素、酵素濃度、pHおよび温度は好ましくは約2時間以内に、最も好ましくは1時間以内に実質的に完全な変換を起こす。
【0084】
β-グルコシダーゼとしてのHELIX POMATIAの使用
本発明はグルコシド、特にイソフラボングルコシドを酵素的に加水分解する新しい方法にも関連する。グルコシドを対応するアグリコンに十分に変換できる時間と条件下で、HELIX POMATIAからの酵素含有抽出物と接触させる。当該酵素含有抽出物は典型的にはHELIX
POMATIAの消化液である。
【0085】
エクオールをその対応するイソフラボングルコシド出発物質から合成する過程で、HELIX POMATIAの消化液がイソフラボングルコシドをアグリコンイソフラボンに変換するためのβグルコシダーゼとして有効に作用することが発見された。HELIX POMATIA消化液は、商品としてはβグルカオニダーゼおよびスルファターゼ製剤として市場に出ており、30年間にわたりステロイドおよびイソフラボン共役物の加水分解に使われてきた酵素製剤であった。β−グルコシダーゼとしての使用は未知であり、予期せぬものであった。当該β−グルコシダーゼ活性はインビトロで砂糖残基を持つイソフラボン共役物を完全に加水分解することが十分可能である。
【0086】
当該消化液はそのままで、または精製された形で使用できる。イソフラボン配糖体を加水分解するHELIX POMATIA消化液の効率は、インビトロで100μGのダイズインおよびゲニステインを、37℃、pH4.5で0.05Mのナトリウムアセテートバッファー10mlに懸濁したHELIX POMATIA消化液0.1mlで培養することにより確立された。われわれはこの培養液に天然のイソフラボンがわずかな量で存在することを発見した。この残量を除くため、酵素/バッファー混合物を加える前に、この酵素調整物が固定相C18 BOND ELUTカートリッジを通過させる。残存するダイズインおよびゲニステイン、および培養中に生成したダイゼインおよびゲニステインの濃度を次の24時間にわたって一定時間の間隔で、サンプリングした一定量の混合物のHPLCにより解析した。
【0087】
図3は、培養混合物に残るアグリコンに対するグリコシドの比率からHPLCで測定されるHELIX POMATIAによるダイズインとゲニステインの加水分解の時間的経過を示す。これらのインビトロの研究は、用いた分析条件下で、使用されたHELIX POMATIAがダイズインおよびゲニスチンを15分以内で完全に加水分解し、この酵素製剤はβ−グルクロニダーゼおよびスルファターゼ活性を有することに加えてβ−グルコシターゼの有用なソースでもあることを示した。
【0088】
バルク溶液からのS−エクオールの単離
バルクで製造したS−エクオールは、結晶化,溶剤抽出、蒸留および沈殿/濾過を含むこの分野の技術に熟練している技術者に公知の方法によって、バクテリアまたは酵素を用いたS−エクオール製造のバルク溶液から単離できる。得られたバルク溶液は、未反応の
ダイゼインまたはその他に使用された関連イソフラボン、副産物および任意の反応物を含むことができる。そのような方法は逆相または順相液体クロマトグラフィーカラムを使用することを含み、キラル固定相クロマトグラフィーと組み合わせできる。
【0089】
S−エクオールをバルク溶液または固相から除く典型的な方法は抽出である。抽出用溶剤は、S−エクオールを含む溶液または固相に加えられる。典型的には、抽出用溶剤はメタノール、エタノール、イソプロヒルアルコールまたはプロピルアルコール等の低分子量アルコール、または3.5から5.5範囲のpHを持つ低分子量アルコール水溶液である。典型的には、もしアルコール水溶液法を使用するならば、アルコール対水の割合を最低40:60および最高95:5の間にするため十分なアルコールを加える。より典型的には、当該比率は少なくとも60:40、更に典型的には65:35および90:10の間である。
【0090】
もし酸性水溶液抽出方法を使用するならば、水溶性酸性溶液は約3.5から約5.5のpHに調整された水溶性酸性溶液を調製し、更に好ましくは、約4.0から約5.0のpHの範囲内に調製する。遠心分離または濾過によって液体から固体を単離させるために、充分な水を加え、十分な低粘度まで液体を希釈する。
【0091】
不溶性の固形物を除いた液体は、液体を除く従来の方法によって濃縮する。典型的に使われる方法は、好ましくは減圧下での蒸発による溶剤の除去を含むが、この方法に限られているわけではない。残存液体を少なくとも約15%から約55%までの固形分に、更に典型的には30%および50%の間の固形分に濃縮する。当該濃縮物は、次いで固形含有量を低下させるためにアルコールに対する水の比を増し、水で希釈する。固体物含有量は6%および15%の間、更に典型的には13%であることが望ましいが、加える水の量は広い幅にわたって変えることができる。当該混合物は、pH約3.0およびpH約6.5の間で、好ましい値としてはpH約4.0および約5.0の間で調整する。典型的には温度は約2℃から約10℃の間で、更に典型的には約5℃から7℃の間である。
【0092】
当該固形物は次いで標準的な単離技術(遠心分離または濾過)によって単離し、そしてエクオールの多い固形物を産生する。
【0093】
エクオールを多く含む材料は、必要に応じて典型的にはシリカゲルカラムを用いるクロマトグラフィーによって、C2−C4のアルコール、C3−C7のアルカンおよびそれらの混合物からなる溶出剤で精製できる。精製した産物は、N−ヘキサンから結晶化でき、S-エクオールを典型的には少なくとも75%の収率で少なくとも99%の純度で製造できる。当該エクオール結晶製品は、無色で、吸湿性がなく、大気中で安定であり、最終的な濾過過程中で分解しない。
【0094】
当該S−エクオール製品のトリメチルシリルエーテル、tert-ブチルジメチルシリルエーテルまたは他の適当な揮発性合成化合物の誘導体は、単一ピークとしてGC-MS分析に現れ、その質量スペクトルが発表された標準エクオールのトリメチルシリル(TMS)エーテル誘導体の電子イオンスペクトルと一致することが確認できる。当該製品は、HPLCキラル固定相カラムを経て、試料を機器に導入した後、エレクトロスプレーイオン化を使用する直接質量分析により同定できる。
【0095】
S−エクオール投与による疾患の治療
この本発明は、インビボでエクオールを作り出せないという問題をかかえる個々の被験者に、エクオール鏡像異性体特にS−エクオール、またはS−エクオールおよびR−エクオールの混合物を直接に投与し、腸内バクテリアによるエクオールの生産欠乏という問題を解決する。S−エクオールの投与はまた、「非エクオール産生者」と同じく「エクオール産生者」のS−エクオールのインビボ産生を補える。
【0096】
本発明は健康上のメリットを得るのに十分な量のS−エクオールを投与する方法を提供する。活性S−エクオールとして、純粋なS−エクオール化合物またはS−エクオールの共役物を直接に摂取または投与できる。典型的には、哺乳類の血漿中の一時的なS−エクオールのレベルが少なくとも5ng/ml、より典型的には少なくとも10ng/mlまたはそれ以上になるように、または尿中の一時的なS−エクオールのレベルが1,000nmol/l以上になるように、S−エクオールを含む組成物を投与する。S−エクオールはまた、下記のようなS−エクオールの共役物でもよい:C−4’またはC−7位置での共役で、グルクロニド、サルフェート、アセテート、プロピオネート、グルコシド、アセチルグルコシド、マロニルグルコシドおよびそれらの混合物からなるグループから選ばれた共役物。典型的には、当該組成物は少なくとも約1mg、より典型的には少なくとも5mgから最高100mgまで、より典型的には50mgまでとする投与量で経口投与する。
【0097】
エクオールのラセミ体の投与に比べて、S−エクオールの投与は、優位点がいくつかあると考えられる。第1に、S−エクオールの有効性は少なくともラセミ体の2倍であると期待される。第2に、人体はS−エクオールのみを産生し、したがってS−エクオールのみを含む組成物は、人体がなじみがあるS−エクオールを有する「天然」製品に相当する。そして第3に、R−エクオール鏡像異性体は人体で産生しないと思われているので、S−鏡像異性体のみ、または実質的にS−鏡像異性体のみを含む治療組成物は人体になじみのない素材を持ち込まない。
【0098】
本発明の組成物は種々のホルモン依存性疾患およびそれらに伴う状態を治療するために使用できる。
【0099】
本発明は脳障害、アルツハイマー型痴呆、加齢を伴う認識機能の低下、ならびに短期および長期の記憶喪失を伴うその他の認識機能の低下および障害を含む疾患や症状を治療および予防するためのS−エクオールの使用を含む。S−エクオールのエストロゲン活性は脳内での神経伝達物質を高め、シナプス密度を回復するように作用する。S−エクオールはエストロゲンと脳の同じ部位で活性であり、エストロゲン応答を発揮すると信じられている。
【0100】
本発明は骨障害および骨粗鬆症の治療および予防のためのS−エクオールの使用を含む。
【0101】
2年にわたる無作為対照研究中に、閉経後の女性は毎日コップ2杯の、イソフラボンありとなし豆乳を摂取した。当該データでは、腰椎BMDおよびBMCは2年間豆乳をごく微量のイソフラボンと共に摂取したグループにおいて、各4.0%および4.3%減少する(P≦0.01)ことが見出された。これらのレベルは、自然に更年期が始まった最初の2年において、通常予想される5−7%の骨質量の損失に近い。対照的に、50mgのイソフラボンを含んだ豆乳を摂取した女性は、各々腰椎BMDおよびBMCが1.1%および、2%の増加を示した。この研究は、イソフラボンの欠乏とは対照的に、イソフラボンを有する大豆タンパク質が2年間にわたり安定した骨質量を維持したことを示した。当該データは腰椎BMD中の変化で測定した骨量低下をイソフラボンの存在で予防したことを示唆した。
この違いが1年間だけでは観察されなかったことを指摘すべきである。骨代謝回転率の遅さから、先の骨研究データの変動性は大豆食品を使った食事療法が短期間に効果を発揮した結果であると考えられる。
【0102】
最も顕著な観察は、10ng/ml(コホートの45%)超の血漿エクオール濃度で定義した「エクオール産生者」である女性の腰椎中の骨ミネラル密度(BMD、P=0.02)および、骨ミネラル含有量(BMC、P=0.009)が各平均2.4%および、2.8%増加した。対照的に「非エ
クオール産生者」グループの女性の増加は各0.6%および、0.3%に止まった。比較対照物質を投与した女性は各4.0%および4.3%(基線と比較してP≦0.01)の減少を示した。このデータは、エクオールを産生するイソフラボンを代謝する能力および体内のエクオールの存在が、増加したBMDおよびBMCに対し直接の関係があることを示す。これらのデータは、エクオールが重要な骨栄養薬剤であることを示唆する。S−エクオールを含む組成物は、骨代謝の代用マーカー(SURROGATE MARKERS)の減少、または骨ミネラル密度で測定される骨の低下の予防に十分な量で投与する。S−エクオールを含む組成物は、また骨形成を増加するか、または骨粗鬆症の防止および骨折を減少するのに十分な量で投与する。
【0103】
本発明は、例えば高コレステロール(コレステロール過剰血症)、高脂血症、脂肪血症および脂質代謝異常(脂質障害)等を治療および防止するためのS−エクオールの使用を含む。上述した当該研究にはまた試験被験者のコレステロール濃度の研究を含んだ。当該結果は、血漿総コレステロール濃度が基準レベルと比較してエクオール産生者では7.2%(P=0.04)減少し、非エクオール産生者では3.0%(P=NS)減少したことを示した。大豆タンパク質が正常血液コレステロールレベルを有する成人に著しくコレステロール低下効果を有せなかったことは、僅かな例外を除いて、おそらく大豆イソフラボンの代謝に関する研究個体群の不均一性およびエクオール生成の関連認識ができなかったことが原因である。これらのデータは、エクオールが脂質に良い方向へ影響することを示唆する。S−エクオールを含む組成物は、血流中の脂質のレベルが減少するため十分な量を投与する。
【0104】
本発明はS−エクオールを使用して、血管運動神経不調および、一般に「ほてり」や「のぼせ」とされる寝汗を含む急性および慢性の卵巣のエストロゲン欠乏状態を治療および予防をすることをも含む。これはまた乳ガンの治療において使用する抗エストロゲン療法に伴ったほてりを含む。
本発明はまたS−エクオールを使用して心血管疾患および肝疾患の治療および予防を含む。
【0105】
本発明は更に、血圧の急な変化に対応する反応性または柔軟性を増加し、血流の改善および血圧の低下により悪化した血管の質を改善するためのS−エクオールの使用も含む。
【0106】
本発明はまた脂質過酸化を低下させて、体内でフリーラジカルを除く酸化防止剤として作用させるためのS−エクオールの使用を含む。
【0107】
本発明はまた、C反応性蛋白のような炎症マーカーを減少させる効果が証明されたように、炎症を減少するためにS−エクオールの使用を含む。
【0108】
本発明はまた良性乳ガン、乳ガン、良性前立腺ガン、前立腺ガン、皮膚ガンおよび結腸ガンを含むガンを治療および予防するためのS−エクオールの使用を含む。
本発明はS−エクオールを使用して腺腫ポリープおよび家族性ポリポーシスを治療および予防することを含む。腺腫ポリープおよび家族性ポリポーシスはいずれも結腸ガンにかかりやすくする素因である。女性の結腸ガンを減少する重要な役割がエストロゲンにあるので、特に結腸がその前駆体からエクオールを産生する主要な部位であり、同様の予防または治療効果があるエクオール鏡像異性体を期待するのが妥当である。
【0109】
本発明の組成物は、胃腸管、前立腺、胸部、皮膚および骨の炎症状態等を含む、種々な非ホルモン依存性疾患およびそれに関連する状態を治療するために使用できる。
エクオール分子中のキラル中心の存在は、その生物学的効力に関連があるかもしれない。特にERβに対する鏡像異性体の効果はラセミ化合物より大きい。
【0110】
本発明の方法の中で、カルシウムまたはビタミンDと共に投与でき(S−エクオール投与
の前、同時また後に投与する)、例えば別の錠剤、または適当な投与剤の一部として共に投与できる。
【0111】
エクオールには細胞機能と関連する他の特性がある。これはポリフェノールであり、水素/電子供与剤である能力をフラボノイドと共通であるので、フリーラジカルを徐去するであろう。エクオールは、FRAP、TEACおよび、CU(II)誘発または鉄(III)誘発のリポソームのインビトロ過酸化測定の中で、検査した全てのイソフラボンの中に最大の酸化防止剤活性を有する。イソフラボンは、インビトロで検査すると弱い酸化防止剤とみなされるにもかかわらず、インビボでのイソフラボンの効果は著しく、成人が大豆タンパク質を食事療法で摂取すると、インビトロでの脂質過酸化の低下は例外1件を除く全ての臨床例で観察されたことで十分説明がつくであろう。他のイソフラボンよりも優れた酸化防止剤活性を有するエクオールを、「エクオール産生者」やエクオールを体内で直接に生産しない人達に、医薬製剤、栄養補助食品、食物製品として与えることができる。エクオールレベルの循環を高めた全ての症例では脂質過酸化をより抑制し、それゆえ心血管疾患のリスクをより低下できる。
【0112】
エクオール非産生者は、一般にエクオール産生者よりもある種の疾患、すなわち乳がんを含む典型的なホルモン依存性疾患または状態を発症する高い危険があると信じられる。エクオール産生の不十分な人またはエクオール非産生者にとって、エクオール鏡像異性体の投与を経口、局部、鼻、皮下、または静脈でまたはそれらの混合投与で行うことにより同等の恩恵が得られであろう。
【0113】
エクオール産生者にエクオール特にS−エクオールを食事療法で補充することは、下記の原因で産生されるS−エクオールのレベルが不十分な時にその状況を改善できる:1) エクオールを産生するイソフラボンの不十分な摂取;2) 前駆体イソフラボンからエクオールを作る腸内バクテリアの活性を一掃する抗生物質の使用;または3) エクオール産生レベルに影響を与える他の健康因子の存在。加えて、エクオール特にS−エクオールの補充は、健康を増強できると思われる。
【0114】
R−エクオール投与による疾患の治療
この本発明はインビボでエクオールを産生できないという問題を解決しようとする個々の被験者にエクオール鏡像異性体、特にR−エクオール、またはR−エクオールおよびS−エクオールの混合物を直接投与し、腸内バクテリアによるエクオールの生産欠乏という問題を解決する。
【0115】
本発明は健康上のメリットを得るのに十分な量でR−エクオールを投与する方法を提供する。純粋なR−エクオール化合物またはR−エクオールの共役物を直接に摂取または投与できる。典型的には、哺乳類の血漿中の一時的なR−エクオールのレベルが少なくとも5ng/ml、より典型的には、少なくとも10ng/mlまたはそれ以上になるように、または尿中の一時的なS−エクオールのレベルが1,000nmol/l以上になるように、R−エクオールを含む組成物を投与する。R−エクオールはまた、下記のようなR−エクオールの共役物でもよい:C−4’またはC−7位置での共役で、グルクロニド、サルフェート、アセテート、プロピオネート、グルコシド、アセチルグルコシド、マロニルグルコシドおよびそれらの混合物からなるグループから選ばれた共役物。典型的には、当該組成物は少なくとも約1mg、より典型的には少なくとも5mgから最高100mgまで、より典型的には50mgまでとする投与量で経口投与する。
乳ガン予防などの場合、ラセミ体の投与に比べて、R−エクオールを十分な量で投与できるのは、R−エクオールがERβ1またはERβ2などの特殊なERに競合的なリガンドとして結合できるためである。
【0116】
R−エクオールを含む本発明の組成物は、種々のホルモン依存性疾患およびそれらに関連する状態を治療するために使用できる。
【0117】
本発明は脳障害、アルツハイマー型痴呆、加齢を伴う認識機能の低下、ならびに短期および長期の記憶喪失を伴うその他の認識機能の低下および障害を含む疾患や症状を治療および予防するためのR−エクオールの使用を含む。R−エクオールは、エストロゲンと脳の同じ部位において活性であり、脳の一定の領域で豊富である特定エストロゲン受容体を通して介在するエストロゲン応答を発揮すると考えられ、同時に酸化的ストレスに対してニューロンを保護する際の酸化防止剤効果も有すると信じられる。
【0118】
本発明は、酸化防止剤が破骨細胞活性に対して保護効力があるために、骨障害および骨粗鬆症を治療および予防するためにR−エクオールを使用することを含む。
【0119】
R−エクオールを含む組成物は、骨代謝の代用マーカーを減らし、または骨ミネラル密度によって測定する骨の損失を予防するのに十分な量で投与する。R−エクオールを含む当該組成物は、骨形成を増やし、または骨粗鬆症を予防し、骨折を減少させるために十分な量で投与することもできる。
【0120】
本発明は、例えば高コレステロール(コレステロール過剰血症)、高脂血症、脂肪血症および脂質代謝異常(脂質障害)等を治療および防止するためのR−エクオールの使用を含む。大豆タンパク質が、正常血液コレステロールレベルを有する成人に著しくコレステロール低下効果を有せなかったことは、僅かな例外を除いて、おそらく大豆イソフラボンの代謝に関する研究個体群の不均一性およびエクオール生成の関連認識ができなかったことが原因である。これらのデータは、エクオールが脂質に良い方向へ影響することを示唆する。R−エクオールを含む組成物は、血流中の脂質のレベルが減少するため十分な量を投与する。
【0121】
本発明は、R−エクオールを使用して血管運動障害および一般に「ほてり」や「のぼせ」と関連のある寝汗を含む急性および慢性の卵巣エストロゲン不足状態の治療および予防を行うことも含む。これには乳ガン治療において使用する抗エストロゲン療法に伴うほてりも含む。
【0122】
本発明は心血管疾患および肝疾患の治療および予防のためのR−エクオールの使用も含む。
【0123】
本発明は更に、血圧の急変に対応する反応性または柔軟性の増加、血流の改善および血圧を低下させることにより、劣化血管の質を改善するためにR−エクオールを使用することを含む。
【0124】
本発明はR−エクオールを使用して体内のフリーラジカルを除いて酸化防止剤として働かせることを含む。
【0125】
本発明はまた、C反応性蛋白及びサイトカインのような炎症マーカーを減少させる効果が証明されたように、炎症を減少するためにR−エクオールの使用を含む。
【0126】
本発明は、良性乳ガン、乳ガン、良性前立腺ガン、前立腺ガン、皮膚ガン、および結腸ガンを含むガンを治療および予防するためのR−エクオールの使用も含む。
【0127】
本発明は、R−エクオールを使用して腺腫ポリープおよび家族性ポリポーシスを治療および予防することを含む。腺腫ポリープおよび家族性ポリポーシスはいずれも結腸ガンに
かかりやすくする素因である。女性の結腸ガンを減少する重要な役割がエストロゲンにあるので、特に結腸がその前駆体からエクオールを産生する主要な部位であるので、同様の予防または治療効果があるエクオール鏡像異性体を期待するのが妥当である。
【0128】
実験
(A)「エクオールー産生者」成人におけるエクオール鏡像異性体の決定
「エクオール−産生者」として予め同定した大豆食品を摂取する成人の当該尿試料を分析した。エクオールは、試料が固相BOND ELUT C18カートリッジを通過させ、尿(25ml)から単離した。当該カートリッジを水洗した後、当該イソフラボンはメタノール(5ml)での溶出により回収し、当該メタノール相を窒素流れの下で乾燥した。当該試料はHELIX POMATIAによる酵素的加水分解にかけ、それからBOND ELUT C18カートリッジに再溶出した。当該試料のメタノール抽出液は窒素ガス下で乾燥し、HPLC移動相(100μL)で再溶解した。エクオール鏡像異性体は、実施例2に示される方法でCHIRALCEL OJ キラル相カラムを使用するHPLCにより同定した。エクオールの検出は、選択されたイオンモニターエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)により達成した。S−エクオールの標準物および大豆食品を摂取する成人の尿から得られた試料のマスクロマトグラムを図4に示す。
【0129】
ヒトの尿に排泄するエクオールがS−鏡像異性体であることを保持係数およびマスクロマトグラムから確認した。R−鏡像異性体が検出限界以下でした。同一「エクオール産生者」からの血漿分析もエクオールのS−鏡像異性体のみが存在していることを明らかにした。
【0130】
(B)ラセミエクオールの化学的合成
ダイゼイン(200mg、0.8mmol)を氷酢酸(20ml)およびイソプロパノール(20ml)の混合物に溶解させ、55P.S.I.G.(3.7気圧ゲージ)の圧力下で、活性炭(150mg)上にある10%のPdで還元する。当該反応(2時間、TLC:イソプロパノール/N−ヘキサン1/4)の終わりに、当該触媒をろ過して取り除き、当該濾液は蒸発する。当該粗残留物は、溶出剤としてイソプロパノールおよびN−ヘキサン(1:4V/V)との混合溶媒を使用してシリカゲルのカラムで精製し、N−ヘキサンから結晶化した純製品(160mg、収率82%)として(±)エクオールが得られる。この化学合成製品は、無色の結晶で、吸湿性がなく、空気中で安定で、最終濾過操作の間に分解しない。この化学合成製品は、あらゆる点で(±)エクオール(ラセミエクオール)の標準品と同一である。図5は、合成したエクオールのトリメチルシリルエーテル誘導体のGC−MS分析を示す。当該S−エクオール製品のトリメチルシリルエーテルは、単一ピークとしてGC-MS分析に現れ、その質量スペクトルが発表された標準エクオールのトリメチルシリル(TMS)エーテル誘導体の電子イオンスペクトルと一致する。予想される当該分子イオンはM/Z 470で、ベースピークはM/Z 234である。精製したエクオール製品はHPLCおよび質量分析により確認して純度99%超を有した。
【0131】
(C)光学二色性によるS鏡像異性体およびR鏡像異性体の溶出順序
S−エクオールおよびR−エクオールのラセミ体は、1.0ml/分の流量で、ヘキサンの10%エタノールの初期移動相により、表Aに示すプログラムに従って15分間にわたりヘキサン中のエタノールを90%まで増加する勾配溶出で、CHIRALCEL OJ カラム上のキラルクロマトグラフィーにより単離した:
【0132】
【表1】

【0133】
図6はS−エクオールおよびR−エクオールのラセミ体のマスクロマトグラムのイオン記録(M/Z 241)を示す。
【0134】
鏡像異性体−1と指定される当該第一溶出物および鏡像異性体−2と指定される当該第二溶出物を別々に集めた。各鏡像異性体を計量し、当該計量済み試料を分光グレードエタノール 1mlで溶解した。各鏡像異性体の旋光度の測定はナトリウムD線の光波長を使用して20℃で行った。
【0135】
鏡像異性体−1材料(正味重量1.6mg)は第1および第2の測定で−0.023および−0.022を有し、−14[−0.0225X1000/1.6]の旋光度になり、これはエクオールのS−鏡像異性体と一致する。鏡像異性体−2材料(正味重量1.7mg)は、第1および第2の測定で+0.023および+0.023を有し、+13.5[+0.023X1,000/1.7]の旋光度になり、これはエクオールのR−鏡像異性体と一致する。
【0136】
(D)ヒト腸内バクテリアによるS−エクオールの産生
エクオール産生者およびエクオール非産生者からの新しい排便(1G)は、滅菌蒸留水9ml、TRYPTICASE大豆培養液および脳・心臓輸液用培養液(BRAIN-HEART INFUSION BROTH)にダイゼイン(10mg/l)を加えて単独に培養した。当該培養液を24時間37℃で嫌気的に培養した。それから当該培養混合物を遠心分離し、イソフラボンをBOND ELUT C18固相カートリッジ(VARIAN INC、ハーバー市、CA)を通して単離し、メタノールによって溶出した。それから当該メタノール抽出物を窒素ガスで乾燥し、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)に連結する高圧液体クロマトグラフィーによる分析のため100μL移動相で再溶解した。
【0137】
当該試料抽出物(20μL)を上述実験(C)のキラル固定相カラムおよび溶出液を使用してカラムに注入した。当該鏡像異性体の検出は、両方のエクオール鏡像異性体に特定のM/Z 241で当該イオンの陰イオンモードでの選択イオン記録により行った。当該培養抽出物のマスクロマトグラムを、ほぼ等しい比率のS−エクオールおよびR−エクオールを含んだ当該ラセミエクオールの標準品と比較した。同定は当該鏡像異性体の保持時間の相違に基づく。R−エクオール鏡像異性体よりS−エクオール鏡像異性体が先に溶出する。
【0138】
図7は、「エクオール産生者」から培養した腸内バクテリアによるダイゼインからエクオールへの変換産物のイオン記録(M/Z 241)のマスクロマトグラムを示す。図7はS−エクオール鏡像異性体と一致する顕著なピークを示す。対照的に、図8は、「非エクオール産生者」から培養した腸内バクテリアによるダイゼインからエクオールへの変換産物のイオン記録(M/Z 241)のマスクロマトグラムを示す。トリビアルレベルまたはトレースレベルでS−エクオールが対応する保持時間の位置は検出された。
【0139】
ダイゼインの腸内バクテリアの変換から生成したエクオールは、ESI−MSの分析では単一のピークを示し、S−エクオール鏡像異性体と一致する(鏡像異性体−1)。
【0140】
これらの研究は、ヒト腸内のバクテリアがS−エクオール鏡像異性体だけを産生し、これがヒト血漿およびヒト尿のS−エクオールの出現と一致することを確認した。
【0141】
E)S−鏡像異性体およびR−鏡像異性体の受容体結合能力の決定
エストロゲン受容体ERおよびERに対するS−鏡像異性体エクオールおよびR−鏡像異性体エクオールの相対親和性をインビトロの結合研究で調べた。
【0142】
ホルモン受容体タンパク質の合成:全長ラットERα表現ベクター(PCDNA−ERα;RHPRICEUCSF)およびERβ表現ベクター(PCDNA−ERβ;TAブラウン、ファイザー、GROTON、CT)を使って、TNT−結合網状赤血球溶解物系(プロメガ、マディソン、WI)を用いて、T7−RNAポリメラーゼの作用下、インビトロでホルモン受容体を90分間30℃でで合成した。翻訳反応混合物を−80℃で使用まで貯蔵した。
【0143】
飽和等温線:ERαとERβに対するS−エクオールおよびR−エクオール鏡像異性体の結合親和性を算出及び確立するために、網状赤血球溶解物上清液100μlを最適時間および最適温度で培養した;[3H]17β−エストラジオール(E2)の濃度の増加(0.01−100nm)で、室温90度(ERβ)および4℃(ERα)で18時間。これらの時間は経験的に決定し、エストロゲンと受容体の最適結合を表わす。非特異的結合を平行チューブで300倍過剰のERアゴニスト、ジエチルスチルベストロールを使用し、評価した。培養の後、結合および非結合[3H]E2の単離は、培養物を1mlの親油性セファデックスLH−20 (SIGMA-ALDRICH CO., SAINT LOUIS, MO)カラムを通して行った。カラムの準備は、以前に発表されたプロトコール(半田ら(1986);O'KEEFEら、1990)に従って、使い捨てピペットチップ(1ml;LABCRAFT, CURTIN MATHESON SCIENTIFIC, INC, HOUSTON, TX)をTEGMD(10mm TRIS-CL、1.5mm
EDTA、10%グリセリン、25mmモリブデートおよび1mm ジチオトレイトール、pH7.4)で飽和させたセファデックスで−でパックして組み立てた。クロマトグラフィーを行う前に、当該カラムをTEGMD(100(l)を使って再平衡した後、当該培養反応物をカラムに加え、追加の30分間に当該カラム上に培養させた。この培養の後、600μlのTEGMDを各カラムに加え、溶出液を集め、4mlのシンチレーション液を加え、試料を2900 TR パッカードシンチレーションカウンター(PACKARD BIOSCIENCE, MERIDEN, CT)でカウントした(各5分)。
【0144】
競合結合研究をS−エクオールおよびR−エクオール鏡像異性体のエストロゲン特性を評価するために行なった。ER結合において[3H](E2)と競合するSおよびRの能力に基づいて、インビトロにおいて翻訳したERとの親和性は当該鏡像異性体2個にとり非常に異なることを示した。S−エクオール鏡像異性体は、ERβ[KD(NM)=0.73±0.2]に対して最大の親和性を示し、その一方で、それのERαに対する親和性は[KD(NM)=6.41±1.0]と比較すると比較的低かった。R−エクオール鏡像異性体は、ERβ[KD(NM)=15.4±1.3]およびERα[KD(NM)=27.38±3.8]の両方に対して低い親和性を示した。参考として、17β−エストラジオールは、この系のERαとERβとの結合において、それぞれKD(NM)=0.13、KD(NM)=0.15を示した。
【0145】
当該研究は、S−エクオール鏡像異性体だけがERに対して充分な親和性を有し、ヒトにおいて報告される循環エクオールレベルと潜在的な関連を有することを示す。ERαに対するS−エクオールおよびR−エクオール鏡像異性体の相対的結合親和性は、17β−エストラジオールと比較して、各49倍および211倍低かった。しかし、S−エクオール鏡像異性体は、ERβ選択性を示し、ERβに対して比較的高い親和性を有し、その一方でR−エクオール鏡像異性体の親和性はS−エクオール鏡像異性体よりほぼ100倍の低かった。S−エクオー
ルだけが、ヒト血漿およびヒト尿において発見される単離の実験および関連の同定は、当該鏡像異性体の結合特異性の観点を支持する。
【実施例1】
【0146】
HPLCによる別々の鏡像異性体へのラセミ体エクオールの単離
S−およびR−エクオールの合成ラセミ体を実験セクションの実験(B)で述べた化学合成法に従って調製し、ダイセル化学工業社により提供されたCHIRALCEL OJ(直径0.46CM×長さ25CM)カラムに通した。当該カラムは、粒径10μmのシリカゲル担体上にセルローストリス(4−メチルベンゾエート)を坦持したものである。使用した移動相は、1ml/minの流量で表Aに従い15分間でヘキサン90%/エタノール10%から始まり、ヘキサン10%/エタノール90%の最終組成まで直線的に増加する勾配溶出であった。カラムからのエクオールの溶出は、260nmでのUV吸光度により検出した。図9は、キラル相カラムを使用したエクオール鏡像異性体の溶出を示す。R−エクオールの保持時間は7.05分、一方S−エクオールの保持時間は7.75分であった。鏡像異性体の同定は、それぞれの保持係数及び光学二色法によって確認した高純度鏡像異性体標準物との比較で行った。
【実施例2】
【0147】
エクオールの吸収およびバイオアベイラビリティ
健常人女性被験者にエクオール25mgの投与量で注射投与し、そしてエクオールの血漿レベルを観察した。腸管による吸収は迅速に進み、4−6時間後に最大血漿濃度に達し、その後8.8時間の最終除去半減期を示し循環系から消滅した。表Bに示す(±)エクオールの薬物動力学は、他のイソフラボンとの類似性があった。但し、血漿クリアランス(CL/F=6.85l/h)は、その前駆体のダイゼイン(CL/F=17.5l/h)と比較して遅く、そして比較的高い投与量調整バイオアベイラビリティ(dose adjusted bioavailability)(AUC INF/F=145.8ng/ml/HR/mg エクオール)を示す。図10は(±)エクオール経口投与後の健常成人女性のエクオールの薬物動力学を示す対数/線形プロットで表現された血漿出現/消滅曲線を示す。表Bも、健康な女性におけるダイゼインについての以前に公表された比較値を示す。
【0148】
【表2】

【実施例3】
【0149】
エクオールのエストロゲン活性
化学的に合成されたエクオールのラセミ体の、未成熟ラットの子宮におけるエストロゲン活性を比較するために、成熟期前の22日齢スプラーグ−ドーリー系ラットに皮下注射した(投与量100mgおよび500mgの両方)。また、ゲニステイン(投与量500mg)およびDMSO(比較対照群)を使って試験した。子宮の重量を17、19および21日目に測定した。図11は、当該投与量の半分が不活性R−エクオール鏡像異性体であるという事実を考慮すると、エストロゲン活性として、ラセミ体エクオールがこのモデルにおいてゲニステインの二倍を超えたことを示す。
【実施例4】
【0150】
大豆食品中におけるグルコシドのアグリコンへのバクテリア変換
食品中におけるダイゼインのエクオールへの変換の第一のステップは、アグリコンのエクオールへの酵素還元の前に、イソフラボンのグルコシドからアグリコンへの変換である。この変換を達成するための多数の微生物の能力を調べた。タンパク質約3.5%、炭水化物約8%およびダイゼイン約16mg/lを含む滅菌大豆飲料に、試験微生物を植え付け、適当な温度で培養した。培養温度は20−40℃の範囲が適当と考えられ、また試験した大部分の当該微生物に対しては30−37℃の温度が好ましかった。培養は、大多数の菌株では嫌気性条件下で行なった。ダイズインのダイゼインへの変換の進捗状況は、培養開始後、10−72時間の間の間隔をおいて採取した試料を未反応ダイゼインについて解析して追跡した。結果を表Cに示す。試験したバクテリアの54個の種/株の中で、ダイズインをダイゼインに変換することができなかったものが26個あった。ダイズインをダイゼインに変換することができる28個の微生物の中で、4個は当該変換を高速で行うことが可能で、実質的に100%の変換を達成するに要した時間は10時間から24時間であった。12タイプは中間速度で、25−72時間で実質的に完全に変換した。残りの微生物は変換が遅く、72時間の培養期間内で変換が完了したものは50%未満であった。高速変換を示した微生物にはENTEROCOCCUS FAECALIS、LACTOBACILLUS PLANTARUM、LISTERIA WELSHIMERIおよびウマの糞便から単離した微生物の混合培養物が含まれた。試験した7種のLACTOBACILLUS PLANTARUM株の内、1種は高速、4種は中速、そして2種は低速の変換体と分類した。グルコシドをアグリコンに効率的に変換することが可能な他の有機体にはBACTERIODES FRAGILIS, BIFIDOBACTERIUM LACTIS, EUBACTRIA LIMOSUM, LACTOBACILLUS CASEI, LACTOBACILLUS ACIDOpHILOUS, LACTOBACILLUS DELBRUEKII , LACTOBACILLUS PARACASEI, LISTERIA MONOCYTOGENES, MICROCOCCUS LUTEUS, PROPRIONOBACTERIUM FREUDENREICHII および SACHAROMYCED BOULARDIが含まれた。
【0151】
【表3】

【実施例5】
【0152】
食品中におけるダイゼインのエクオールへのバクテリア変換
還元環境下でダイゼインを代謝させることができるバクテリアまたはバクテリアの組み合わせを見出す実験において、ほぼ20 mg/lのダイゼインを含むダイゼイン強化豆乳の諸試料に、異なるバクテリア単独またはいくつかの微生物の組み合わせを植え付けた。微生物を植えつけた豆乳を37℃で42時間まで嫌気状態で培養した。実験期間の全体にわたってある時間間隔で試料を抜出し、イソフラボン含有量、特にダイゼイン含有量を分析した。ダイゼインのエクオールへの変換は、時間と共に当該反応物中のダイゼインレベルの低下
を伴い、変わりに水素化産物、即ちエクオールが現れる。ダイゼインレベル以外で、イソフラボン含有量の著しい変化は微生物を植えつけた試料のいずれにも見当たらず、このことはイソフラボン(適当な代謝バクテリアが存在しないか不活性である時のダイゼインを含む)の安定性を明示している。結果を表Dに示す。調べた7種の微生物を植えつけた試料のうち、4種は全培養期間中ダイゼイン濃度に変化を示さなかった。微生物を植えつけた試料のうちの3種は、水素化化合物の濃度変化に伴ってダイゼインレベルの実質的な低下を示した。この変化に作用した微生物はPROPRIONOBACTERIA FREUNDENREICHII、以下を含む混合培養物:BIFIDOBACTERIUM LACTIS、LACTOBACILLUS ACIDOpHILUS、LACTOCOCCUSLACTIS、ENTEROCOCCUS FAECIUM、LACTOBACILLUS CASEI、およびLACTOBACILLUS SALIVARIUS、およびウマの糞便から単離した混合培養物であった。初期レベルのほぼ50%のダイゼイン減失は、ウマの糞便混合培養物では15時間未満で生じ、そして他の2種の培養物では25時間までかかった。
【0153】
【表4】

【実施例6】
【0154】
食物製品中におけるS-エクオールのバクテリアによる製造
塩と砂糖を有する加水分解された植物およびミルクタンパク質を含む、簡単で軽い培養液を調製した。ダイゼインをほぼ2mg/lのレベルで培養液に加えた。約15分間圧力釜で加熱し、そして室温まで冷却した培養液を、日常のダイエットの一部として豆乳を消費したときにエクオールを産生することが知られている人の胃腸管に由来した微生物の混合培養物を接種した。当該培養液を、37℃の温度で24時間保持した後、分析に供した。生存する微生物は、食物製品中の微生物を不活性化するために使う共通の方法によって、適宜に死滅させることができる。ダイゼインに由来するエクオール(S-エクオールであると推定される)の存在は、培養液の抽出物のエレクトロスプレーマス分析によって確認した。
【実施例7】
【0155】
食物製品中のS-エクオールの酵素的製造
BIFIDOBACTERIUM LACTIS、LACTOBACILLUS ACIDOpHILUS、LACTOCOCCUSLACTIS、ENTEROCOCCUS FAECIUM、LACTOBACILLUS CASEIおよびLACTOBACILLUS SALIVARIUSを含むバクテリアの混合培養物を、嫌気状態下37℃で、約24時間から約36時間、栄養用トリプトン培養液で培養する。当該バクテリアを、約10,000Gで遠心分離することにより当該培養液から単離し、そして当該細胞を約0.9%生理食塩水に懸濁させ、再度遠心分離する。洗浄し、単離した当該細胞を酵素学および生化学の技術を実践する人達によく知られている技術を使用して、活性酵素の抽出物を調製するために使用する。粗製酵素混合物は、そのまま使用でき、または精製酵素抽出物への従来の酵素調製技術によって、更に精製することができる。
【0156】
精製した酵素混合物を10mg/lのダイゼインを含む食物製品に添加する。当該組成物は、温和な嫌気性の条件を維持しつつ、約30−40℃の温度で約2時間培養する。次に当該組成物を約95−100℃に加熱して当該酵素を不活性化し、S−エクオールを含む食物製品を得る。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】図1は、R−エクオールおよびS−エクオール鏡像異性体の化学構造を示す。
【図2】図2は、ホルモノネチンおよびダイゼインがエクオールに変換される化学反応のスキームを示す。
【図3】図3は、HELIX POMATIA消化液に存在する酵素を用いた培養によって大豆菌から得たイソフラボン配糖体類の加水分解速度を示す。
【図4】図4は、大豆食品を食した成人の尿試料からのエクオール鏡像異性体の溶出液のマスクロマトグラムと、円偏光二色性法で同定した鏡像異性体の標準品との比較を示す。
【図5】図5は、合成したエクオールのトリメチルシリルエーテル誘導体のGC−MS分析を示す。
【図6】図6は、ラセミ体からキラル分離したS−エクオールおよびR−エクオールのもう一つのマスクロマトグラムを示す。
【図7】図7は、「エクオール産生者」の腸内バクテリア培養によるダイゼインのバクテリア生合成で得た培養産生物からキラル分離したもののマスクロマトグラムを示す。
【図8】図8は、「エクオール非産生者」の腸内バクテリア培養によるダイゼインのバクテリア生合成で得た培養産生物からキラル分離したもののマスクロマトグラムを示す。
【図9】図9は、キラル固定相カラムからエクオール鏡像異性体の単離および溶出を示す。
【図10】図10は、経口投与後の健常成人女性の(±)エクオールの血漿中の出現/消滅曲線を示す。
【図11】図11は、未成熟ラットの子宮におけるゲニステインおよび(±)エクオールのエストロゲン活性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
市販品の製造に用いられ、S−エクオールを含む組成物。
【請求項2】
S−エクオールおよびR−エクオールのラセミ体からS−エクオールを単離することよりなる請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
基本的にS−エクオールからなり、光学純度90%の最小限鏡像体過剰率(Minimum enantiomeric excess)(EE)、更に好ましくは96%の最少限EE、より更に好ましくは98%の最少限EEを有する請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
市販品の製造に用いられ、R−エクオールを含む組成物。
【請求項5】
基本的にR−エクオールからなり、光学純度90%の最小限鏡像体過剰率(EE)、更に好ましくは96%の最小限(EE)、更に好ましくは98%の最小限(EE)を有する請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
S−エクオールとR−エクオールの非ラセミ体を含む商品。
【請求項7】
約1:99から約49:51、または約51:49から99:1のR−エクオールに対するS−エクオールの比率を有する非ラセミ体を含む請求項6に記載の商品。
【請求項8】
前記商品が食品を含むことを特徴とする請求項6に記載の商品。
【請求項9】
前記エクオールの非ラセミ体がS−エクオールおよびR−エクオールからなるグループから選ばれた第1エクオール成分、およびS−エクオールおよびR−エクオールのラセミ体からなる第2エクオール成分を混合することにより製造される請求項8に記載の商品。
【請求項10】
S−エクオール、R−エクオール、およびS−エクオールおよびR−エクオールの非ラセミ体からなるグループから選ばれる添加剤成分を含む食品組成物。
【請求項11】
一食あたり少なくとも約1mg、および約300mgまで、より好ましくは少なくとも約10mg、および約200mgまで、更に好ましくは少なくとも約30mg、および約50mgまでのS−エクオールを含む請求項10に記載の食品組成物。
【請求項12】
好ましくは軟膏、液体、またはクリームのかたちで、好ましくはS−エクオールを組成物及び媒体重量の少なくとも0.1%から10%まで含む皮膚に対する局部塗布用組成物。
【請求項13】
S−エクオールがC−4’またはC−7位置での共役で、グルクロニド、サルフェート、アセテート、プロピオネート、グルコシド、アセチルグルコシド、マロニルグルコシド、およびそれらの混合物からなるグループから選ばれた化合物と共役物を生成する請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
下記のステップよりなるエクオールのラセミ体を第1および第2の鏡像異性体に単離する方法:
(1) エクオールのラセミ体を含む組成物を用意すること;
(2) キラル固定相シリカ担体、好ましくはセルローストリス(3,5−ジメチルフェニルカルバメート)およびセルローストリス(4−メチルベンゾエート)を含むシリカ担体、を含むHPLCカラムを用意すること;
(3) C3−C7のアルカンおよびC2−C4のアルコールを含み、好ましくは95:5から5:95
まで、更に好ましくは50:50から90:10までのプロピルアルコールに対するヘキサンの比率を含む移動相でHPLCカラムの入口から前記組成物の一定量を通過させること;
(4) 前記通過ステップから第1の期間後、HPLCカラムの出口から第1の鏡像異性体を含む第1の溶出液を収集すること;および
(5) 前記通過ステップから第2の期間後、当該カラムの出口から第2の鏡像異性体を含む第2の溶出液を収集すること。
【請求項15】
下記のステップよりなるイソフラボンをヒト被験者に投与して、少なくとも一つの生理データを測定する研究を実施する方法:
1) 好ましくはダイゼイン、ダイズイン、ゲニステイン、ゲニスチン、ホルモノネチン、ビオカニンA、およびプエラリン、およびそれらの混合物からなるグループから選ばれたイソフラボンを被験者グループから選ばれたすくなくとも一人のヒト被験者に投与すること;
2) 当該被験者の尿のエクオールレベルを検出すること;および
3) 当該被験者がエクオール産生者か非エクオール産生者かを確認すること。
【請求項16】
前記生理データがエストロゲン活性によって左右されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
更に下記のステップから選ばれた一つのステップを含む請求項15に記載の方法:(A) 非エクオール産生者として確認された複数の被験者のデータからエクオール産生者として確認された複数の被験者のデータを明確に解析すること;
(B) 被験者から選ばれたグループから非エクオール産生者を除外すること。
【請求項18】
下記のステップよりなるS−エクオールを含有する組成物、好ましくは食物製品、および局部塗布用の皮膚用組成物から選ばれる組成物を製造する方法:
1) 好ましくはダイゼイン、ダイズイン、ゲニステイン、ゲニスチン、ホルモノネチン、ビオカニンA、ジヒドロダイゼイン、プエラリン、プエラリン、それらの共役物、およびそれらの混合物から選ばれるS−エクオールに変換可能なイソフラボンを含む第1の組成物を用意すること;
2) 前記イソフラボンをS−エクオールに変換できる微生物で第1の組成物を培養すること;
3) 前記イソフラボンの一部をS−エクオールに変換するために前記組成物を十分な時間に培養すること;および
4) 微生物を選択的に不活性化すること。
【請求項19】
前記微生物がENTEROCOCCUS FAECALIS, A LLACTOBACILLUS PLANTARUM STRAIN, LISTERIA
WELSHIMERI, 「エクオール産生者」であることが知られる哺乳類の腸管から単離された混合微生物, BACTERIODES FRAGILIS ,BIFIDOBACTERIUM LACTIS, EUBACTRIA LIMOSUM, LACTOBACILLUS CASEI, LACTOBACILLUS ACIDOpHILOUS, LACTOBACILLUS DELBRUEEKII, LACTOBACILLUS PARACASEI, LISTERIA MONOCYTOGENES, MICROCOCCUS LUTEUS, PROPRIONOBACTERIUM
FREUDENREICHII, SACHAROMYCES BOULARDII, LACTOCOCCUS LACTIS, ENTEROCOCCUS FAECIUM, LACTOBACILLUS SALIVARIUS、およびそれらの混合物からなるグループから選ばれることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
下記のステップよりなるS−エクオールを含有する組成物を製造する方法:
1) S−エクオールに変換可能なイソフラボン、好ましくはダイゼイン、ダイズイン、ゲニステイン、ゲニスチン、ホルモノネチン及びビオカニンAからなるグループから選ばれるイソフラボンを含む第1の組成物を用意すること;
2) 第1の組成物と、イソフラボンをS−エクオールに変換できるバクテリアから抽出さ
れる酵素、アルファグルコシダーゼ、ベータグルコシダーゼ、ベータガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼおよびペクチナーゼからなるグループから選ばれた酵素とを組み合わせること;および
3) 前記イソフラボンの一部をS−エクオールに変換するため、前記組み合わせ組成物を十分な時間に培養すること。
【請求項21】
下記のステップよりなる工程を含むS−エクオール製品の製造方法:
1) 基本的にS−エクオールからなるエクオール鏡像異性体を含み、微生物によってイソフラボンの代謝から生合成された組成物を提供すること;
2) 下記の抽出法から選ばれる抽出法によって前記組成物からS−エクオールを抽出し、S−エクオールを含む製品を製造すること;
A) 前記組成物を低分子量アルコールと混合し、水に対するアルコールの比率を少なくとも40:60および95:5以下で用意することを含む溶剤抽出法;および
B) 前記組成物を約4.0と約5.5との間のpHで混合することを含む酸性水溶液抽出法;
3) 前記抽出物を約15%から約55%までの固形分に濃縮すること;
4) 前記濃縮物を約6%から約13%までの固形分に希釈すること;
5) 固体沈殿物を希釈した溶液から単離すること;および
6) 前記固体沈殿物を選択的に精製および/または結晶化し、それによってS−エクオール製品を製造すること。
【請求項22】
疾患または関連した状態を防止または治療するために、S−エクオールまたはその共役類似体を含む組成物を哺乳類に与えることを含むS−エクオールを哺乳類に投与する方法。
【請求項23】
疾患または関連した状態を防止または治療するために、R−エクオールまたはその共役類似体を含む組成物を哺乳類に与えることを含むR−エクオールを哺乳類に投与する方法。
【請求項24】
グルコシドを対応するアグリコンに変換するための十分な時間と条件下で、グルコシドをHELIX POMATIAからの酵素含有抽出物、好ましくはHELIX POMATIAの消化液からの酵素含有抽出物と接触させることを含むグルコシド、好ましくはイソフラボングルコシドの酵素加水分解方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
市販品および規格製品の製造に用いられる組成物であって、単離されたS−エクオールを含む、組成物。
【請求項2】
基本的にS−エクオールからなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
S−エクオールは、光学純度90%の最小限鏡像体過剰率(Minimum enantiomeric excess)(EE)、更に好ましくは96%の最少限EEを有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
市販品および規格製品の製造に用いられる組成物であって、S−エクオールとR−エクオールとの非ラセミ体を含む、組成物。
【請求項5】
非ラセミ体は、約51:49から99:1のS−エクオール対R−エクオールの比率を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の組成物を含む食品組成物であって、一食あたり少なくとも約1mgから300mgまで、より好ましくは少なくとも約10mgから200mgまでの単離されたS−エクオールを含む、食品組成物。
【請求項7】
請求項1から5のいずれかに記載の組成物を含む、皮膚に対する局部塗布用組成物であって、重量比で0.1%以上10%以下の単離されたS−エクオールおよび媒体を含む、局部塗布用組成物。
【請求項8】
疾患または関連した状態を防止または治療するためにS−エクオールを哺乳類に投与する方法であって、単離されたS−エクオールまたはその共役類似体を含む組成物を哺乳類に与えるステップを含む、方法。
【請求項9】
単離されたS−エクオールは、哺乳類の血漿中の一時的なS−エクオールのレベルが少なくとも5ng/mLになるように、少なくとも約1mgのS−エクオールの投与量で与えられる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
組成物は基本的にS−エクオールからなる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
組成物はS−エクオールとR−エクオールとの非ラセミ体を含む、請求項8に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2006−504409(P2006−504409A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−523362(P2004−523362)
【出願日】平成15年7月24日(2003.7.24)
【国際出願番号】PCT/US2003/023056
【国際公開番号】WO2004/009035
【国際公開日】平成16年1月29日(2004.1.29)
【出願人】(500469235)チルドレンズ ホスピタル メディカル センター (40)
【出願人】(505026321)オーストラリアン・ヘルス・アンド・ニュトリション・アソシエーション・リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】AUSTRALIAN HEALTH & NUTRITION ASSOCIATION LIMITED
【Fターム(参考)】