説明

鏡像異性体富化したアルコール類およびアミン類を製造する方法

本発明は、ケトン類およびイミン類のキラル還元のためのルテニウム触媒の製造に好都合な方法およびその使用を記載する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の背景
鏡像異性体富化した(キラル)アルコール類およびアミン類は、医薬として、また医薬、ポリマー、キレート化剤、キラル助剤などの中間体として使用するための、重要な化合物である。
【0002】
発明の概要
一般に本発明は、ケトン類およびイミン類のキラル還元用ルテニウム触媒の製造および使用に好都合な方法である。
【0003】
1観点において本発明は、a)配位子、ルテニウム錯体、第二級アルコールおよび第三級アミンの混合物を加熱し;そしてb)混合物の揮発性成分を除去することにより、還元触媒を製造する方法を提供する。工程aの混合物を、約30〜約150℃に加熱することができる。混合物の揮発性成分を約0.05〜約100mmHgの減圧下で除去することができる。第二級アルコールはイソプロパノールであってよい。
【0004】
他の観点において本発明は、a)配位子、ルテニウム錯体、および第三級アミンの混合物を溶媒中で撹拌し、次いでギ酸とトリエチルアミンの5:2モル混合物を添加することによる、還元触媒の製造方法である。溶媒はDMFを含むことができる。
【0005】
他の観点において本発明は、前記の方法により製造した還元触媒を提供する。
他の観点において本発明は、式1のケトン類およびイミン類を還元して式2のアルコール類またはアミン類を製造する方法である:
【0006】
【化1】

【0007】
式中:
R1およびR2は、独立して、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、置換アリールおよび置換ヘテロアリールから選択され;
R1とR2は、一緒になって、置換された、または置換されていない3〜12員の炭素環式環または複素環式環を形成していてもよく;
X1は、OまたはN−R3であり;
R3は、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、置換アリールおよび置換ヘテロアリールであり;
X2は、−OHまたは−NHR3であり;R3は式1について定めたものである;
この方法は、a)配位子、ルテニウム錯体、および第三級アミンの混合物を溶媒中で撹拌し、次いでギ酸とトリエチルアミンの5:2モル混合物を添加し;そしてb)前記のケトンまたはイミンを混合物に添加することを含む。
【0008】
他の観点において、式1のケトン類およびイミン類を還元する方法は、a)配位子、ルテニウム錯体、第二級アルコールおよび第三級アミンの混合物を加熱し;b)混合物の揮発性成分を除去し;c)混合物に溶媒を添加し;そしてd)前記のケトンまたはイミンを混合物に添加することを含む。
【0009】
これらの本発明の観点の態様は、下記のうち1以上の特色を含む。配位子は−p−トルエンスルホニル−1,2−ジフェニルエチレンジアミンである。ルテニウム錯体はRuCl(η6−p−シメン)である。第三級アミンはトリエチルアミンである。還元触媒は下記のものである:
【0010】
【化2】

【0011】
有利には、本発明は予想外の溶媒効果を利用した還元プロトコルを考慮する。他の観点において本発明は、複雑な無気無水の操作を全く必要としない簡単な不斉還元触媒の製造方法を提供し、文献の記載に従って製造した触媒より反応性でもあり、より選択性でもある触媒を製造する。
【0012】
発明の詳細な説明
定義
詳細な説明において、下記の定義を用いる:
脱離基という用語は、March, Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure, McGraw−Hill, pp. 251−375, 1968に記載されるように、求核置換されて炭素−炭素結合または異種原子−炭素結合を形成する置換基を意味する。脱離基の例にはクロロ、ブロモ、ヨード、アリールスルホニルおよびアルキルスルホニルが含まれるが、これらに限定されない。
【0013】
用語”ee”は、鏡像異性体過剰率を意味する。たとえば特定の化合物の1鏡像異性体は、その化合物に対する鏡像異性体の混合物中に、他方の鏡像異性体と比較して多量に存在する。鏡像異性体富化した形には、特定の化合物の鏡像異性体の混合物であって、その化合物の単一鏡像異性体の濃度がその化合物の他方の鏡像異性体と比較して50%以上高い、より一般的には60%、70%、80%、90%、またはそれ以上高い(たとえば>95%、>97%、>99%、>99.5%)ものを含めることができる。
【0014】
用語”アルキル”は、それ自体で、または他の置換基の一部として、別途記載しない限り、直鎖もしくは分枝鎖または環式の炭化水素基あるいはその組合わせを意味し、それらは完全飽和、モノ−またはポリ不飽和であってよく、二価および多価の基を含むことができ、表示した個数の炭素原子をもつ(すなわち、C−Cは1〜8個の炭素原子を意味する)。飽和炭化水素基の例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)エチル、シクロプロピルメチル、たとえばn−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチルなどの同族体および異性体などの基が含まれるが、これらに限定されない。不飽和アルキル基は、1以上の二重結合または三重結合をもつものである。不飽和アルキル基の例には、ビニル、2−プロペニル、クロチル、2−イソペンテニル、2−(ブタジエニル)、2,4−ペンタジエニル、3−(1,4−ペンタジエニル)、エチニル、1−および3−プロピニル、3−ブチニル、ならびにより高級の同族体および異性体が含まれるが、これらに限定されない。用語”アルケン”は、それ自体で、または他の置換基の一部として、アルカンから誘導された二価の基、たとえば−CHCHCHCH−を意味する。”低級アルキル”または”低級アルケン”は、8個以下の炭素原子をもつ比較的短かい鎖のアルキル基またはアルケン基である。
【0015】
用語”アルコキシ、.....アルキルアミノ”および”アルキルチオ”は、アルキル基がそれぞれ酸素、窒素または硫黄によりその分子の残部に結合した基を表わす。同様に、用語”ジアルキルアミノ”は、一般的な意味で−NR’R”を表わすのに用いられ、これらのR基は同一または異なるアルキル基であってよい。
【0016】
用語”ヘテロアルキル”は、それ自体で、または他の用語と組み合わせて、別途記載しない限り、安定な直鎖もしくは分枝鎖または環式の炭化水素基あるいはその組合わせであって、完全飽和または1〜3度の不飽和をもち、表示した個数の炭素原子ならびにO、NおよびSよりなる群から選択される1〜3個の異種原子からなるものを意味し、それらの窒素原子および硫黄原子は所望により酸化されていてもよく、窒素異種原子は所望により第四級化していてもよい。異種原子(1以上)O、NおよびSは、ヘテロアルキル基の内部のいずれの位置にあってもよい。例には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:
【0017】
【化3】

【0018】
および−CH=CH−N(CH)−CH。最高2個の異種原子が連続してもよい:たとえば−CH−NH−OCH。用語”ヘテロアルキル”には、”ヘテロシクロアルキル”として以下に詳述する基も含まれる。用語”シクロアルキル”および”ヘテロシクロアルキル”は、それ自体で、または他の用語と組み合わせて、別途記載しない限り、それぞれ環形の”アルキル”および”ヘテロアルキル”を表わす。さらにヘテロシクロアルキルについて、異種原子は、その複素環が分子の残部に結合する位置を占めることができる。シクロアルキルの例には、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−シクロヘキセニル、3−シクロヘキセニル、シクロヘプチルなどが含まれるが、これらに限定されない。ヘテロシクロアルキルの例には、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−モルホリニル、3−モルホリニル、テトラヒドロフラン−2−イル、テトラヒドロフラン−3−イル、テトラヒドロチエン−2−イル、テトラヒドロチエン−3−イル、1−ピペラジニル、2−ピペラジニルなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0019】
用語”ハロ”または”ハロゲン”は、それ自体で、または他の置換基の一部として、別途記載しない限り、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子を意味する。さらに、”フルオロアルキル”などの用語は、モノフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキルを含むものとする。
【0020】
用語”アリール”は、単独で、または他の用語と組み合わせて(たとえばアリールオキシ、アリールチオキシ、アラルキル)用いた場合、別途記載しない限り芳香族置換基を意味し、これらは単環、または互いに縮合もしくは共有結合した多環(最高3環)であってよい。用語”ヘテロアリール”は、N、OおよびSから選択される0〜4個の異種原子を含むアリール環を含むものとし、それらの窒素および硫黄原子は所望により酸化されていてもよく、窒素原子(1以上)は所望により第四級化していてもよい。”ヘテロアリール”基は、異種原子によりその分子の残部に結合することができる。限定ではないアリールおよびヘテロアリールの例は以下が含まれるが、これらに限定されない:フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、4−ビフェニル、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、3−ピラゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、ピラジニル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、2−フェニル−4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、5−ベンゾチアゾリル、プリニル、2−ベンゾイミダゾリル、1−インドリル、5−インドリル、1−イソキノリル、5−イソキノリル、2−キノキサリニル、5−キノキサリニル、3−キノリル、および6−キノリル。
【0021】
前記のアリール環系それぞれの置換基は、後記の許容できる置換基の群から選択される。用語”アラルキル”は、アリールまたはヘテロアリール基がアルキル基に結合した基(たとえばベンジル、フェネチル、ピリジルメチルなど)、またはヘテロアルキル基に結合したもの(たとえばフェノキシメチル、2−ピリジルオキシメチル、3−(1−ナフチルオキシ)プロピルなど)を含むものとする。前記の用語(たとえば”アルキル、.....ヘテロアルキル”および”アリール”)はそれぞれ、指示した基の置換形および非置換形を両方とも含むものとする。各タイプの基に好ましい置換基を以下に示す。
【0022】
アルキル基およびヘテロアルキル基(しばしばアルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、およびヘテロシクロアルケニルと呼ばれる基を含む)の置換基は、下記のものから選択される0〜(2N+1)個(Nはその基の合計炭素原子数である)の多様な基であってよい:
【0023】
【化4】

【0024】
および−NO。R’、R”およびX”は、それぞれ独立して水素、非置換C1−C0アルキルおよびヘテロアルキル、非置換アリール、1〜3個のハロゲンで置換されたアリール、非置換アルキル、アルコキシもしくはチオアルキル基、またはアリール−(C1−C4)アルキル基を表わす。R’とR”が同一窒素原子に結合している場合、それらはその窒素原子と合わせて3〜7員環を形成していてもよい。たとえば−NR’R”は、1−ピロリジニルおよび4−モルホリニルを含むものとする。置換基についての前記の考察から、当業者は用語”アルキル”がハロアルキル(たとえば−CFおよび−CHCF)およびアシル(たとえば−C(O)CH、−C(O)CF、−C(O)CHOCHなど)などの基を含むことを理解するであろう。
【0025】
同様にアリール基の置換基も多様であり、0から芳香族環系の開放原子価の合計数までの個数の下記のものから選択される:
【0026】
【化5】

【0027】
ペルフルオロ(C1−C4)アルコキシ、およびペルフルオロ(C1−C4)アルキル;これらにおいて、R’、R”およびR'”は、独立して水素、(C1−C8)アルキルおよびヘテロアルキル、非置換アリール、(非置換アリール)−(C1−C4)アルキル、ならびに(非置換アリールオキシ)−(C1−C4)アルキルから選択される。
【0028】
アリール環の隣接原子上にある置換基のうち2つが、所望により式−S−C(O)−(CH−R−の置換基で置き換えられていてもよく、ここでSおよびRは独立して−NH−、−O−、−CH−または単結合であり、下付き文字qは0〜2の整数である。あるいは、アリール環の隣接原子上にある置換基のうち2つが、所望により式−A−(CH−B−の置換基で置き換えられていてもよく、ここでAおよびBは独立して−CH−、−O−、−NH−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−S(O)NR’−、または単結合であり、wは1〜3の整数である。こうして形成された新たな環の単結合の1つが、所望により二重結合で置き換えられていてもよい。あるいは、アリール環の隣接原子上にある置換基のうち2つが、所望により式−(CH−G−(CHw’−の置換基で置き換えられていてもよく、ここでwおよびw’は独立して0〜3の整数であり、Gは−O−、−NR’−、−S−、−S(O)−、−S(O)−または−S(O)NR’−である。−NR’−および−S(O)NR’−中の置換基R’は、水素または非置換(C1−C6)アルキルから選択される。本明細書中で用いる用語”異種原子”は、酸素(O)、窒素(N)および硫黄(S)を含むものとする。
【0029】
発明の説明
1観点において本発明は、従来認識されていなかった溶媒効果を利用した一般的な還元プロトコルを考慮する。他の観点において本発明は、複雑な無気無水の操作を全く必要としない簡単な不斉還元触媒の製造方法を提供し、文献の記載に従って製造した触媒より反応性でもあり、より選択性でもある触媒を製造する。
【0030】
ケトン類およびイミン類のキラル還元を達成する方法には、鏡像異性体選択的なヒドリド還元、鏡像異性体選択的な水素化、および鏡像異性体選択的な移動水素化(transfer hydrogenation)が含まれる(たとえばPalmer, M.J.; et al., Tetrahedron: Asymmetry, (1999), 10,2045およびそこに引用された参考文献を参照)。
【0031】
本発明の他の観点においては、Noyoriらが記載した方法(Noyori,R.; Hashiguchi,S., Accts. Chem. Res., (1997), 30,97−102;Fujii,A.; Hashiguchi,S.; Uematsu,N.;Ikariya,T.; Noyori,R., J. Am. Chem. Soc. (1996), 118, 2521−2522)の変法を用いる鏡像異性体選択的な移動水素化により、ケトンAを還元する。これらの変法では、Noyoriらが記載した労力を要するキラル触媒製造および再結晶が回避され(Vedejs,E., et al., J. Org. Chem. (1999), 64,6724)、簡単な酸素非感受性の触媒製造法が提供され、これにより式2の多様なアルコール類の製造が可能になる。この触媒を予め製造し、その性能の劣化なしに長期間にわたって保存することができる。本発明方法は、従来認識されていなかった溶媒効果をも利用する。極性溶媒、たとえばジメチルホルムアミドの使用は、THFおよび塩化メチレンと比較して高い収率を、より短時間で(48時間が45分間に短縮)、かつ著しく改善された鏡像異性体選択率で(約60%eeが>99%eeに改善される)提供する。
【0032】
触媒を製造する際には、適切な配位子、たとえば−トシル−1,2−ジフェニルエチレンジアミン、および適切なルテニウム錯体源、たとえばRuCl(η6−p−シメン)二量体の混合物を、適切な第三級アミン、たとえばトリエチルアミンを含有する適切な第二級アルコール溶媒、たとえばイソプロパノール、2−ブタノール、シクロヘキサノールなどの中で、60〜80℃に1時間加熱する。溶媒を蒸発させると、目的とする触媒が安定な橙褐色固体として得られる(方法A)。
【0033】
あるいは、触媒は、配位子−トシル−1,2−ジフェニルエチレンジアミン、およびルテニウム源、たとえばRuCl(η6−p−シメン)二量体をDMF(DMF単独、またはメチル−t−ブチルエーテル(MTBE)などの補助溶媒の存在下)中で合わせ、次いでギ酸とトリエチルアミンの5:2混合物(モル/モル)を添加することにより製造できる(方法B)。方法Aによる触媒の製造により還元を実施する場合、極性溶媒を触媒に添加し、次いで式Aのケトン、およびギ酸とトリエチルアミンの5:2〜1:1(モル/モル)混合物を添加し、混合物を約45分ないし約6時間、通常は45分間、約−15℃と室温の間の温度、通常は室温で、約20mmHgと1気圧の間の圧力において撹拌することにより、還元が完了する。
【0034】
したがって本発明は、新規な触媒、ならびに式1のケトン類およびイミン類:
【0035】
【化6】

【0036】
(式中:
R1およびR2は、独立して、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、置換アリールおよび置換ヘテロアリールから選択され;
X1は、OまたはN−R3であり;
R3は、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、置換アリールおよび置換ヘテロアリールであり;
R1とR2は、一緒になって、置換された、または置換されていない3〜12員の炭素環式環または複素環式環を形成していてもよい)
を還元して式2のアルコール類またはアミン類:
【0037】
【化7】

【0038】
(式中:
R1およびR2は、式1について記載したものであり;
X2は、−OHまたは−NHR3であり;R3は式1について定めたものである)を製造する方法を記載する。
【0039】
還元して対応するキラルアルコール類またはアミン類にすることができるケトン類およびイミン類の例を表1に示す。これらの例は説明のためのものにすぎず、実施できる還元の範囲を限定するためのものではない。
【0040】
【化8】

【0041】
実施例
実施例1:触媒の製造−方法A
[RuCl(η−p−シメン)](0.84g,1.37mmol)、EtN(0.67g,6.66mmol,0.93mL)、および(1S,2S)−−p−トルエンスルホニル−1,2−ジフェニルエチレンジアミン(1.0g,2.72mmol,ケトンを基準として1.78mol%)を、500mLの一口丸底フラスコ内で合わせる。イソプロパノール(25mL)およびEtN(0.67g,6.66mmol,0.93mL)を添加し、還流冷却器を取り付け、混合物を1時間、加温還流する。混合物を室温に冷却し、真空濃縮すると、触媒が褐色の粉末状固体として得られる。
【0042】
実施例2:2−クロロアセチルピリジンの還元
【0043】
【化9】

【0044】
実施例1で製造した触媒に、無水DMF(Aldrich Sure Seal,225mL)、次いで順に2−クロロアセチルピリジン(23.88g,0.153mol)およびHCOOH/EtN(5:2,Fluka,55mL)を添加する。約2〜3分間の撹拌(室温)後、赤黒色溶液の撹拌ボルテックスから気泡が発生するのが見られる。反応の進行を逆相分析用HPLCによりモニターすると、75分間の撹拌後に出発物質が消費された(NaHPO/HPO緩衝水/CHCN 95:5から5:95まで,17分間;出発クロロケトンの保持時間:7.39分,ハロヒドリンの保持時間:2.66分)。MeOH(25mL)の添加により反応を停止し、5分間撹拌する。溶媒を真空中で除去すると(コールドフィンガー(cold finger)rotovapor、真空ポンプ)、赤黒色の粘稠な油が得られる。この粗製物質をEtO/CHCl(4:1,1.25L)に装入し、3Lの分液ろうとに入れ、飽和NaHCO水溶液(1.0L)、ブライン(1.0L)で洗浄し、乾燥させる(NaSO)。濾過および真空濃縮により粗生成物が赤橙色の油として得られ、これをシリカゲルカラム上でのクロマトグラフィーにより精製する(外径70mm,250g,230〜400メッシュ,ヘキサン充填;化合物をCHCl/ヘキサン 60:40中において付与;ヘキサン/EtOで溶離(75:25 2L;65:35 2L;55:45 2L;350mLずつの画分))。画分9〜16を合わせると、14.72g(61%)のハロヒドリンが淡黄色固体として得られる。
物理的特性:
【0045】
【化10】

【0046】
分析.実測値:C, 53.23; H,5.12; N, 8.82;比旋光度[α]25=−39(c 0.94, CHCl)。キラルHPLC分析(Chiracel OJ):98:2; 96% ee。
【0047】
実施例3:キラルカラムクロマトグラフィーによる光学純度の分析
R−2−(1−ヒドロキシ−2−クロロエチル)−ピリジンの光学純度の分析:Gilson−Ranin HPLCシステムに接続した0.46×25CMのChiracel OJカラムで分析を実施する;ヘプタン中2.5% i−PrOHからなる溶媒を用い、0.5mL/分で送入する。当該化合物をCHCl中の溶液として時点=0で注入し(10μL)、UV検出器を220nmに設定する。時点=45.23分で、積分面積98面積%のピークが検出される;時点=47.77で、積分面積2面積%のピークが検出される;98:2の比率、96%eeとなる。
【0048】
実施例4:溶媒効果の証明
表2に3−クロロアセチルピリジンの還元結果をまとめる。還元を実施例1の手順に従って実施し、ただし溶媒および圧力を表に挙げるように変更する。
【0049】
【化11】

【0050】
【表1】

【0051】
実施例5:2−クロロアセチルフランからS−1−(2−フリル)−2−クロロエタノールへの還元
【0052】
【化12】

【0053】
[RuCl(η−p−シメン)](0.99g,1.61mmol)、EtN(0.67g,6.66mmol,0.93mL)、および(1R,2R)−−p−トルエンスルホニル−1,2−ジフェニルエチレンジアミン(1.18g,3.22mmol,ケトンを基準として2.25mol%)を、500mLの一口丸底フラスコ内で合わせる。i−PrOH(25mL)およびEtN(0.67g,6.66mmol,0.93mL)を添加し、還流冷却器を取り付け、混合物を加温還流し、1時間保持する。室温に冷却し、真空濃縮すると(rotovapor)、触媒が橙褐色の粉末状固体として得られる。この触媒に、無水DMF(Aldrich Sure Seal,250mL)、次いで順に2−クロロアセチルフラン(20.6g,0.143mol)およびHCOOH/EtN(5:2,Fluka,51mL)を添加する。約2〜3分間の撹拌(室温)後、赤黒色溶液の撹拌ボルテックスから気泡(COと推定される)が発生するのが見られる。反応の進行を逆相分析用HPLCによりモニターすると、65分間の撹拌後に出発物質が消費された(NaHPO/HPO緩衝水/CHCN 95:5から5:95まで,17分間;出発クロロケトンの保持時間:6.70分,ハロヒドリンの保持時間:6.35分)。MeOH(25mL)の添加により反応を停止し、5分間撹拌し、次いで反応混合物を氷水(1L)に注入し、水相を塩で飽和する。混合物をエーテル(500mL)で2Lの分液ろうとに移し、振とうし、有機相を分離する。水層をエーテル(250mL,3回)で抽出し、有機層を合わせて飽和NaHCO水溶液(0.5L)、ブライン(250mL,4回)で洗浄し、乾燥させる(NaSO)。濾過および真空濃縮により粗生成物が赤橙色の油(20.5g)として得られ、これをエーテル/ペンタン(10:90,100mL,4回)で摩砕処理する。摩砕処理物を合わせて真空濃縮すると(ハロヒドリンは揮発性であるので注意する;このためエーテル/ペンタンを摩砕処理剤として選択する;DMFは真空中で除去されない)、HPLCおよびH−NMRにより判定して目的とするハロヒドリン(15.97g,76%)が良好な純度で得られる。
物理的特性:
【0054】
【化13】

【0055】
HRMS(EI)実測値146.0136;比旋光度[α]25=17(c 0.97, メタノール)。キラルHPLC分析(Chiracel OJ):99.1; 98% ee。
【0056】
実施例6:2−クロロアセチルピリジンの還元(触媒の製造方法B)
(1R,2R)−−p−トルエンスルホニル−1,2−ジフェニルエチレンジアミン(1.103g,3.01mmol)、[RuCl(η−p−シメン)](0.936g,1.528mmol)、およびトリエチルアミン(0.072g,0.71mmol)を、5mLのDMF中で50mlの三つ口丸底フラスコ内において合わせる。混合物を室温で1時間撹拌し、次いでMTBE(15mL)中の2−クロロアセチルピリジン(3.7g,19.7mmol)溶液を一度に添加し、フラスコをDMF(10mL)ですすぎ、これを反応器に添加する。次いで緩やかな窒素流(約5ml/秒)を開始し、反応混合物に吹き込む。この溶液にギ酸/トリエチルアミンの5:2(モル/モル)混合物8.06mLを一度に添加する。その後30分間にわたって吸熱反応がみられ、温度が22℃から12℃に降下する。混合物を室温で1時間撹拌する。HPLC(1mLのメタノール中に希釈した反応物3滴)は検出可能な2−クロロアセチルピリジン(RT=5.4分)を示さず、97.5面積%のS−2−(1−ヒドロキシ−2−クロロエチル)−ピリジン(RT=3.40分)を示す(Agilient HPLC 50:50 アセトニトリル:0.1M NHOAc,1ml/分,254nmで検出、250×4.6mm Zorbax RX−C8)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元触媒の製造方法であって、
a)配位子、ルテニウム錯体、第二級アルコールおよび第三級アミンの混合物を加熱し;そして
b)混合物の揮発性成分を除去する
ことを含む方法。
【請求項2】
工程aの混合物を約30〜約150℃に加熱する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
混合物の揮発性成分を、約0.05〜約100mmHgの減圧下で除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第二級アルコールがイソプロパノールである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
還元触媒の製造方法であって、
a)配位子、ルテニウム錯体、および第三級アミンの混合物を溶媒中で撹拌し、次いでギ酸とトリエチルアミンの5:2モル混合物を添加する
ことを含む方法。
【請求項6】
溶媒がDMFを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
配位子が−p−トルエンスルホニル−1,2−ジフェニルエチレンジアミンである、請求項1または5に記載の方法。
【請求項8】
ルテニウム錯体がRuCl(η6−p−シメン)である、請求項1または5に記載の方法。
【請求項9】
第三級アミンがトリエチルアミンである、請求項1または5に記載の方法。
【請求項10】
請求項1または5に記載の方法により製造した還元触媒。
【請求項11】
式1のケトン類およびイミン類:
【化1】

(式中:
R1およびR2は、独立して、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、置換アリールおよび置換ヘテロアリールから選択され;
X1は、OまたはN−R3であり;
R3は、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、置換アリールおよび置換ヘテロアリールであり;
R1とR2は、一緒になって、置換された、または置換されていない3〜12員の炭素環式環または複素環式環を形成していてもよい)
を還元して式2のアルコール類またはアミン類:
【化2】

(式中:
R1およびR2は、式1について記載したものであり;
X2は、−OHまたは−NHR3であり;R3は式1について定めたものである)を製造する方法であって、
a)配位子、ルテニウム錯体、および第三級アミンの混合物を溶媒中で撹拌し、次いでギ酸とトリエチルアミンの5:2モル混合物を添加し;そして
b)前記のケトンまたはイミンを混合物に添加する
ことを含む方法。
【請求項12】
式1のケトン類およびイミン類:
【化3】

(式中:
R1およびR2は、独立して、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、置換アリールおよび置換ヘテロアリールから選択され;
X1は、OまたはN−R3であり;
R3は、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、置換アリールおよび置換ヘテロアリールであり;
R1とR2は、一緒になって、置換された、または置換されていない3〜12員の炭素環式環または複素環式環を形成していてもよい)
を還元して式2のアルコール類またはアミン類:
【化4】

(式中:
R1およびR2は、式1について記載したものであり;
X2は、−OHまたは−NHR3であり;R3は式1について定めたものである)を製造する方法であって、
a)配位子、ルテニウム錯体、第二級アルコールおよび第三級アミンの混合物を加熱し;
b)混合物の揮発性成分を除去し;
c)混合物に溶媒を添加し;そして
d)前記のケトンまたはイミンを混合物に添加する
ことを含む方法。
【請求項13】
溶媒がDMFを含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
配位子が−p−トルエンスルホニル−1,2−ジフェニルエチレンジアミンである、請求項11または12に記載の方法。
【請求項15】
ルテニウム錯体がRuCl(η6−p−シメン)である、請求項11または12に記載の方法。

【公表番号】特表2006−521201(P2006−521201A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506386(P2006−506386)
【出願日】平成16年3月15日(2004.3.15)
【国際出願番号】PCT/IB2004/000900
【国際公開番号】WO2004/085058
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(504396379)ファルマシア・アンド・アップジョン・カンパニー・エルエルシー (130)
【Fターム(参考)】