説明

鏡像異性的に富化された1−アリール−2−アミノエタノールおよび1−ヘテロアリール−2−アミノエタノールの製造方法

本発明は、式(I)の鏡像異性的に富化されたアミノアルコールを調製する方法に関し、ここで、R1、R2、およびR3は、本明細書中で定義される。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鏡像異性的に富化されたアミノアルコールの製造方法に関する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
アミノアルコールは、薬剤、薬剤の中間体、ポリマー、キレート剤、キラル助剤などとして使用するための重要な化合物である。
【0003】
本発明は、ケトンのキラル還元のためのルテニウム触媒の調製のための簡単な方法およびその使用を記載する。本発明のさらなる局面は、アミノアルコール、特にキラル1,2−アミノアルコールの調製である。多数のこれらの重要な化合物の合成が、記載されている。方法としては、例えば、アミノケトンの還元、α−ヒドロキシアミドの還元、エポキシドとアミンとの反応、ハロヒドリンとアミンとの反応、α−アミノオルガノ−リチウムとアルデヒドとの反応、およびアジリジノオキサゾリジノンの開環が挙げられる。
【0004】
アミノアルコールを調製するための方法は多数存在するが、全ての状況に適するものはない。1つの局面において、本発明は、評価されていない溶媒効果から利益を得る一般的な還元プロトコルを意図する。別の局面において、本発明は、複雑な嫌気的、無水的な操作、精製、および/または再結晶を必要としない不斉還元触媒の簡単な調製を提供し、文献に記載されるように調製された触媒よりも、反応性が高く選択性である触媒を製造する。さらなる局面において、キラルアミノエタノールは、中間体のオキサゾリジノンの作用によって実現され、キラルハロヒドリンとイソシアネートとの反応、続く結晶化によって製造されるか、あるいはキラルハロヒドリンとクロロホルメートとの反応、誘導されたカルボネートとアミンとの反応、続く結晶化から生じ得る。中間体オキサゾリジノンの使用は、オリゴマーおよび所望でない位置異性体の生産(直接的なアミン置換が試みられる場合、しばしば直面する結果である)を避ける。さらに、アミノアルコールのより高い極性および吸湿性のために、これらは、精製することが困難であり、従って、オキサゾリジノン形成のさらなる利点としては、キラルHPLCまたは再結晶化による簡単なキラル富化が挙げられる。オキサゾリジノン開裂から生じるアミノエタノールは、反応物から単離される場合、分析学的に純粋であり、そして実質的に水を含まない(約99%未満)。プロセスは以下の工程からなる:1)ジメチルホルムアミドのような極性溶媒中、ルテニウム錯体触媒でのα−ハロケトンの不斉還元により、キラルα−ハロヒドリンを得る;2)工程1)のα−ハロヒドリンとイソシアネートとの反応(またはクロロホルメート、次いでアミンとの反応)により、対応するウレタンを得る;3)工程2)のウレタンと塩基とを接触させ、オキサゾリジノンを得る;4)場合によって、簡単な操作をしたオキサゾリジノンを精製して高い光学純度(95〜99%eeより大きい)のオキサゾリジノンを得る;および5)オキサゾリジノンの加水分解により、鏡像異性的に高純度なアミノアルコールを得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの局面において、本発明は、次の式I:
【化1】

の鏡像異性的に富化されたアミノアルコールの製造方法であって、この方法は、
【0006】
次の式A:
【化2】

のカルボニル化合物を、還元剤の存在下溶媒中で還元し、次の式B:
【化3】

のアルコールを得る工程、
ここで、R1は、1〜12個の炭素のアルキルもしくはヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、
2は、H、1〜4個の炭素のアルキル、CH2−アリール、またはCH2−ヘテロアリールであり、そしてXは、Cl、Br、I、アリール−SO2O−、ペルフルオロアルキル−SO2O−、およびアルキル−SO2O−の群から選択され;
【0007】
式Bのアルコールから次の式D:
【化4】

のウレタンを形成させる工程、
ここで、R3は、1〜6個の炭素のアルキル、アリール、ベンジル、低級アルキル−CO、アリール−CO、低級アルキル−O−CO−、アリール−O−CO−、ベンジル−O−CO−、およびアリール−SO2−の群から選択され;
【0008】
式Dのウレタンを塩基で処理することによって次の式E:
【化5】

のオキサゾリジノンを形成させる工程;
式Eのオキサゾリジノンを精製する工程;および
式Eのオキサゾリジノンを、式Iの鏡像異性的に富化されたアミノアルコールに変換する工程を特徴とする。
【0009】
本発明の実施形態としては、1つまたはそれ以上の以下の特徴が挙げられ得る。還元剤はキラル触媒である。キラル触媒としては、ルテニウムが挙げられる。キラル触媒は、次のもの:
【化6】

である。ケトンの還元に使用される溶媒としては、DMFが挙げられる。式Dのウレタンは、式Bのアルコールと次の式C:
R3NCO
のイソシアネートとの反応によって形成され、
ここで、R3は、1〜6個の炭素のアルキル、アリール、ベンジル、低級アルキル−CO、アリール−CO、低級アルキル−O−CO−、アリール−O−CO−、ベンジル−O−CO−、およびアリール−SO2−の群から選択される。式Dのウレタンからオキサゾリジノンを形成するために使用される塩基としては、水素化ナトリウムもしくはカリウムt−ブトキシド、ナトリウムアミレート、または水素化ナトリウムが挙げられる。式Iの鏡像異性的に富化されたアミノアルコールは、約50%ee、約80%、約90%ee、約95%ee、または約99%eeより大きい。
【0010】
定義
詳細な説明において、以下の定義が使用される。用語「脱離基」とは、置換基を意味し、これは求核置換に供され、March,Advanced Organic Chemistry:Reactions,Mechanisms,and Structure,McGraw−Hill,pp.251−375,1968に記載されるような炭素−炭素結合またはヘテロ原子−炭素結合を形成する。脱離基の例としては、クロロ、ブロモ、ヨード、アリールスルホニル、およびアルキルスルホニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0011】
用語「ee」とは、鏡像体余剰率を意味する。例えば、特定の化合物のエナンチオマー混合物中には,その化合物の一方のエナンチオマーが、他のエナンチオマーよりも多量に存在する。鏡像異性的に富化された形態としては、特定の化合物の単一のエナンチオマーの濃度が、その化合物の他のエナンチオマーと比較して、50%より高い、より特に60%、70%、80%、もしくは90%、または90%以上(例えば、95%以上、97%以上、99%以上、99.5%以上)である特定の化合物のエナンチオマー混合物が挙げられ得る。
【0012】
用語「アルキル」とは、それ自体によりまたは別の置換基の一部として、他に規定されない限り、直鎖もしくは分枝鎖、または環状炭化水素基、またはそれらの組み合わせであることが意味され、これは完全に飽和、単不飽和、多不飽和であり得、そして指定された炭素原子の数を有する二価基または多価基であり得る(すなわち、C1〜C8は、1〜8個の炭素を意味する)。飽和炭化水素基の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)エチル、シクロプロピルメチル、例えば、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチルの同族体および異性体などの基。不飽和アルキル基は、1つまたはそれ以上の二重結合または三重結合を有するものである。不飽和アルキル基の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ビニル、2−プロペニル、クロチル、2−イソペンテニル、2−(ブタジエニル)、2,4−ペンタジエニル、3−(1,4−ペンタジエニル)、エチニル、1−プロピニルおよび3−プロピニル、3−ブチニル、ならびにより高級な同族体および異性体。用語「アルケン」とは、それ自体によりまたは別の置換基の一部として、−CH2CH2CH2CH2−によって例示されるような、アルカンから誘導された二価基を意味する。「低級アルキル」または「低級アルケン」は、8個またはそれ以下の炭素原子を有するより短い鎖のアルキル基またはアルケン基である。
【0013】
用語「アルコキシ」、「アルキルアミノ」、および「アルキルチオ」とは、それぞれ、酸素原子、窒素原子、または硫黄原子を介してアルキル基がその分子の残りの部分に結合した基をいう。同様に、用語「ジアルキルアミノ」は、−NR'R''(ここで、R基は、同じかまたは異なるアルキル基であり得る)をいう通常の意味で使用される。
【0014】
用語「ヘテロアルキル」とは、それ自体によりまたは別の用語と組み合わせて、他に規定されない限り、安定な直鎖もしくは分枝鎖、または環状炭化水素基、またはそれらの組み合わせであって、完全に飽和されているか、1〜3の範囲の不飽和を含み、規定された数の炭素原子およびO、N、およびSからなる群から選択される1〜3個のヘテロ原子からなるものを意味し、ここで、窒素原子および硫黄原子は、場合によって酸化されていてもよく、そして窒素ヘテロ原子は、場合によって四級化されていてもよい。ヘテロ原子のO、N、およびSは、ヘテロアルキル基の任意の内部位置に配置されていてよい。例として、以下が挙げられるが、これらに限定されない:−CH2−CH2−O−CH3、−CH2−CH2−NH−CH3、−CH2−CH2−N(CH3)−CH3、−CH2−S−CH2−CH3、−CH2−CH2−S(O)−CH3、−CH2−CH2−S(O)2−CH3、−CH=CH−O−CH3、−Si(CH33、−CH2−CH=N−OCH3、および−CH=CH−N(CH3)−CH3。2つまでのヘテロ原子が、例えば、−CH2−NH−OCH3のように連続し得る。「ヘテロシクロアルキル」のように以下により詳細に記載されるこれらの基もまた、用語「ヘテロアルキル」に含まれる。用語「シクロアルキル」および「ヘテロシクロアルキル」は、それ自体によりまたは他の用語と組み合わせて、他に規定されない限り、それぞれ、「アルキル」および「ヘテロアルキル」の環式バージョンを表す。さらに、ヘテロシクロアルキルについて、ヘテロ原子は、複素環が分子の残りに結合する位置を占有し得る。シクロアルキルの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:シクロペンチル、シクロヘキシル、1−シクロヘキセニル、3−シクロヘキセニル、シクロヘプチルなど。ヘテロシクロアルキルの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−モルホリニル、3−モルホリニル、テトラヒドロフラン−2−イル、テトラヒドロフラン−3−イル、テトラヒドロチエン−2−イル、テトラヒドロチエン−3−イル、1−ピペラ
ジニル、2−ピペラジニルなど。
【0015】
用語「ハロ」または「ハロゲン」とは、それ自体によりまたは別の置換基の一部として、他に規定されない限り、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を意味する。さらに、「フルオロアルキル」のような用語は、モノフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキルを含むことを意味する。
【0016】
用語「アリール」は、単独でか、または他の用語(例えば、アリールオキシ、アリールチオキシ、アラルキル)と組み合わせて利用され、他に規定されない限り、単環式または縮合もしくは共有結合された多環式(三環まで)であり得る芳香族置換基を意味する。用語「ヘテロアリール」とは、N、O、およびSから選択される0〜4個のヘテロ原子を含むこれらのアリール環を包含することが意味され、ここで、窒素原子および硫黄原子は、場合によって酸化され、そして窒素原子は、場合によって、四級化される。「ヘテロアリール」基は、ヘテロ原子を介して分子の残りの部分に結合され得る。アリール基およびヘテロアリール基の非限定的な例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、4−ビフェニル、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、3−ピラゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、ピラジニル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、2−フェニル−4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、2−ベンゾフラニル、3−ベンゾフラニル(3−banzofuranyl)、5−ベンゾチアゾリル、プリニル、2−ベンズイミダゾリル、1−インドリル、5−インドリル、1−イソキノリル、5−イソキノリル、2−キノキサリニル、5−キノキサリニル、3−キノリル、および6−キノリル。上記のアリール環系の各々についての置換基は、以下に記載される受容可能な置換基の群から選択される。用語「アラルキル」とは、アリール基またはヘテロアリール基がアルキル基(例えば、ベンジル、フェネチル、ピリジルメチルなど)またはヘテロアルキル基(例えば、フェノキシメチル、2−ピリジルオキシメチル、3−(1−ナフチルオキシ)プロピルなど)に結合されるこれらの基を包含することが意味される。各々の上記の用語(例えば、「アルキル・・・ヘテロアルキル」および「アリール」)とは、意図された基の置換形態および非置換形態の両方を包含することが意味される。基の各型についての好ましい置換基は、以下に提供される。
【0017】
アルキル基およびヘテロアルキル基(アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、およびヘテロシクロアルケニルとしてしばしば言及される基を含む)についての置換基は、以下から選択される種々の基であり得る:0〜(2N+1)の範囲の数(ここで、Nはこのような基中の炭素原子の総数である)の、OR'、=O、=NR'、=N−OR'、−NR'R''−SR'、−ハロゲン、−SiR'R''R、−OC(O)R'、−C(O)R'、−CO2R'、CONR'R''、−OC(O)NR'R''−NR'C(O)R'、−NR'−C(O)NR''R'''、−NR'COOR''、−NH−C(NH2)=NH、−NR'C(NH2)=N−H、−NH−C(NH2)=NR'、−S(O)R'、S(O)2R'、−S(O)2NR'R''、−CN、および−NO2。各々のR'、R''、およびX''とは、独立して、水素、非置換Cl−COアルキルおよびヘテロアルキル、非置換アリール、1〜3個のハロゲンで置換されたアリール、非置換アルキル、アルコキシ、もしくはチオアルコキシ基、またはアリール−(C1−C4)アルキル基をいう。R'およびR''が同じ窒素原子に結合される場合、それらは窒素原子と結合して、3〜7員環を形成し得る。例えば、−NR'R''とは、1−ピロリジニルおよび4−モルホリニルを包含することが意味される。置換基についての上記の議論から、当業者は、用語「アルキル」は、ハロアルキル (例えば、−CF3および−CH2CF3)およびアシル(例えば、−C(O)CH3、−C(O)CF3、−C(O)CH2OCH3など)のような基を包含することが意味されることを理解する。
【0018】
同様に、アリール基の置換基も様々であり、そして以下から選択される:0〜芳香環系の空いている原子価(open valence)の総数の範囲の数の、ハロゲン、−OR、−OC(O)R、−NR'R''、−SR、−R'、−CN、−NO2、−CO2R'、−CONR'R:'、−C(O)R'、−OC(O)NR'R''、−NR''C(O)R'、−NR''(O)2R'、−NR'−C(O)NR''R'''、−NH−C(NH2)=NH、−NR'C(NH2)=NH、−NH−C(NH2)=NR'、−S(O)R'、−S(O)2R'、−S(O)2NR'R''、−N3、−CH(Ph)2、ペルフルオロ(C1−C4)アルコキシ、およびペルフルオロ(C1−C4)アルキル、;ここでR'、R''、およびR'''は、独立して、水素、(C1−C8)アルキル およびヘテロアルキル、非置換アリール、(非置換アリール)−(C1−C4)アルキル、ならびに(非置換アリールオキシ−(C1−C4)アルキルから選択される。
【0019】
アリール環の隣接原子上の2つの置換基は、場合によって、式−S−C(O)−(CH2q−R−の置換基で置き換えられ得、ここでSおよびRは、独立して、−NH−、−O−、−CH2−、または単結合であり、そして下付き文字のqは、0〜2の整数である。あるいは、アリール環の隣接原子上の2つの置換基は、場合によって、式−A−(CH2w−B−の置換基で置き換えられ得、ここでAおよびBは、独立して、−CH2−、−O−、−NH−、−S−、−S(O)−、−S(O)2−、−S(O)2NR'または単結合であり、そしてwは、1〜3の整数である。このように形成された新しい環の単結合の1つは、場合によって、二重結合で置き換えられ得る。あるいは、アリール環の隣接原子上の2つの置換基は、場合によって、式−(CH2w−G−(CH2w'−の置換基で置き換えられ得、ここでwおよびw'は、独立して、0〜3の整数であり、そしてGは、−O−、−NR'−、−S−、−S(O)−、−S(O)2−、または−S(O)2NR'−である。−NR'−および−S(O)2NR'−中の置換基R'は、水素または 非置換(C1−C6)アルキルから選択される。本明細書中で使用される場合、用語「ヘテロ原子」とは、酸素(O)、窒素(N)、および硫黄(S)を包含することが意味される。
【0020】
キラルアミノアルコールを製造するための全体のプロセスを、スキームIに要約する。
【化7】

【0021】
工程1において、以下の式A:
【化8】

のケトン(ここで、R1は、1〜12個の炭素のアルキルもしくはヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり;
2は、H、1〜4個の炭素のアルキル、CH2−アリール、またはCH2−ヘテロアリールであり、
Xは、Cl、Br、I、アリール−SO2O−、ペルフルオロアルキル−SO2O−、およびアルキル−SO2O−の群から選択される)
を、適切なキラル還元剤を使用して、以下の式B:
【化9】

のキラルアルコールに還元する。
【0022】
キラル還元を達成するための方法としては、エナンチオ選択性水素還元、エナンチオ選択性水素化、およびエナンチオ選択性移動型水素化(enantioselective transfer hydrogenation)が挙げられる(例えば、Palmer,M.J;et.al.,Tetrahedron:Asymmetry,(1999),10,2045およびそれらに引用される参考文献を参照のこと)。
【0023】
本発明の別の局面において、ケトンAは、Noyori,et.al.(Noyori,R.;Hashiguchi,S.,Accts.Chem.Res.,(1997),30,97−102;Fujii,A.;Hashiguchi,S.;Uematsu,N.;Ikariya,T.;Noyori,R.,J.Am.Chem.Soc.(1996),118,2521−2522)によって記載される方法の改変型を使用するエナンチオ選択性転移型水素化によって還元される。改変型は、Noyori他(Vedejs,E.,et.al.,J.Org.Chem.(1999),64,6724)によって記載される困難なキラル触媒の調製および再結晶を排除し、そして簡単な酸素不感受性(oxygen insensitive)の触媒調製を提供し、種々の式Bのアルコールの調製を可能にする。触媒は、購入することもできるし、インサイチュで調製することもできる。
【0024】
本発明の方法はまた、従来の評価されていない溶媒効果から利益を得る。ジメチルホルムアミドのような極性溶媒の使用により、短時間(48時間を45分にまで短縮する)での収率が向上し、エナンチオ選択性(約60%eeを99%ee以上に改善する)が著しく改善する。触媒の調製において、トリエチルアミンのような適切な第三級アミンを含むイソプロパノール、2−ブタノール、シクロヘキサノールなどのような第二級アルコールの適切な溶媒中、N−トシル−1,2−ジフェニルエチレンジアミンのような適切なリガンドと、RuCl2(η6−p−シメン)ダイマーのようなルテニウム錯体の適切な供給源との混合物を、60〜80℃にて1時間加熱する。溶媒の蒸発により、安定な橙褐色の固体として所望の触媒を得る(方法A)。あるいは、触媒は、リガンド、N−トシル−1,2−ジフェニルエチレンジアミン、およびRuCl2(η6−p−シメン)ダイマーのようなルテニウム供給源とをDMF(DMFのみか、またはメチル−tert−ブチルエーテル(MTBE)のような共溶媒の存在下のいずれか)中で混合し、次いで、ギ酸とトリエチルアミンの5:2(mole/mole)混合物の添加によって調製し得る(方法B)。還元が方法Aによる触媒の調製によって実施される場合、還元は、極性溶媒を触媒に添加し、次いで式Aのケトンおよびギ酸とトリエチルアミンとの5:2〜1:1(mole/mole)混合物を添加し、そして45分〜6時間(通常は45分間)、−15℃〜室温(通常は室温)で、20mmHg〜1atmの圧力下で、攪拌することによって実施される。
【0025】
この系の工程2において、式Bのアルコールを、以下の式C:
R3NCO
の適切なイソシアネート剤(ここで、R3は、1〜6個の炭素のアルキル、アリール、ベ
ンジル、低級アルキル−CO、アリール−CO、低級アルキル−O−CO−、アリール−O−CO−、ベンジル−O−CO−、およびアリール−SO2−の群から選択される)と反応させ;
【0026】
以下の式D:
【化10】

のウレタン(ここで、X、R1、R2、およびR3は、上で定義される通りである)を得る。この反応は、場合によって、ジエチルエーテル、塩化メチレン、クロロホルム、トルエン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフランなどのような適切な溶媒中で、−50℃〜100℃(通常は0℃〜40℃)の温度で実施される。トリエチルアミン、ピリミジン、4−N,N−ジメチルピリジンなどのような第三級有機塩基を、触媒として添加してもよい。アルキル、アリール、ベンジル、アシル、アロイル、およびアリールスルホニルイソシアネートは周知であり、そしてこれらの多くが市販されている。アルコキシ、ベンジルオキシ、およびアリールオキシカルボニルイソシアネートは、米国特許第5,386,057号、および同第4,210,750号に記載される手順によって調製され得、これらの全体の内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0027】
工程3において、式Dのウレタンを、溶媒中で水酸化ナトリウム、カリウムt−ブトキシドなどのような塩基を反応させ、以下の式E:
【化11】

のオキサゾリジノン(ここで、R1、R2、およびR3は、上で定義される通りである)を得る。適切な塩基としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:カリウムtert−ブトキシド、ナトリウムアミレート、水素化ナトリウムなど。適切な溶媒としては、以下が挙げられる:tert−ブチルアルコール、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど。この反応は、−50℃〜100℃(通常は0℃〜40℃)の温度で実施される。オキサゾリジノンは単離され、容易に精製され、再結晶またはキラル高速液体クロマトグラフィーのような簡便な方法論によって光学純度を増大し得る(Cox,G.B.Innov.Pharm.Technol.(2001)01(8),131;Issaq,H.J.Prep.Biochem.Biotechnol.(2000),30(1),79)を参照のこと)。
【0028】
工程4において、式Eのオキサゾリジノンを、以下の式I:
【化12】

のアミノアルコールに加水分解する。
【0029】
式DおよびEのR3が、低級アルキル−CO、アリール−CO、低級アルキル−O−CO−、アリール−O−CO−、ベンジル−O−CO−、およびアリール−SO2−である場合、式IのR3は、特定の加水分解条件および置換基に依存して、低級アルキル−CO、アリール−CO、低級アルキル−O−CO−、アリール−O−CO−、ベンジル−O−CO−、およびアリール−SO2−、またはHであり得る。
【0030】
加水分解は、水、エタノールなどのようなプロトン性溶媒、または標準的な手順(Katz,S.J.,et.al.,Tetrahedron Lett.,(2002),43,557)に従う溶媒の混合物中で、式Eのオキサゾリジノンと水酸化カリウムのような延期とを接触することによって達成される。所望の生成物が式Iのキサゾリジノン(ここで、R3は、低級アルキル−CO、アリール−CO、低級アルキル−O−CO−、アリール−O−CO−、ベンジル−O−CO−、およびアリール−SO2−である)である場合、加水分解は、記載されているようにメタノール中で炭酸セシウムを用いて達成され得る(Ishizuka,T.,et.al.,Tetrahedron Lett.,(1987),28,4185;Benedetti,F.,et.al.,Tetrahedron Lett.,(2000),41,10071)。
【0031】
〔実施例〕
さらなる詳細がなくとも、当業者は、前述の説明を使用して、本発明をその全範囲にわたって実施することができるであろう。以下の詳細な実施例は、種々の化合物をどのように調製するか、および/または本発明の種々のプロセスをどのように実施するかを説明するものであるが、これらは単なる例示であっていかなる局面においても前述の開示を限定するものと解釈されるべきではない。当業者は、反応物質ならびに反応条件および技術の両方について、これらの手順から適切な改変を直ちに認識するであろう。
【0032】
実施例1:R−2−(1−ヒドロキシ−2−クロロエチル)−ピリジンの調製
【化13】

[RuCl2(η6−p−シメン)]2(0.84g、1.37mmol)、Et3N(0.67g、6.66mmol、0.93mL)、および(1S,2S)−N−p−トルエンスルホニル−1,2−ジフェニルエチレンジアミン(1.0g、 2.72mmol、ケトンをベースにして1.78mol%)を、500mLの1N丸底フラスコ中で混合する。イソプロパノール(25mL)およびEt3N(0.67g、6.66mmol、0.93mL)を添加し、還流冷却器を取り付け、そしてこの混合物を還流下で温め、そして1時間維持する。室温まで冷却し、そして真空中(ロトベイパー(rotovapor)、次いで真空ポンプ)で濃縮し、茶色の粉末固体として触媒を得る。この触媒に、無水DMF(Aldrich Sure Seal、225mL)、次いで2−クロロアセチルピリジン(23.88g、0.153mol)、およびHCOOH/Et3N(5:2、Fluka、55mL)を添加する。約2〜3分間攪拌した後(室温)、気泡(CO2であると推測される)が、赤黒い溶液の攪拌渦(stirring vortex)から生じるのが見える。反応状況を、分析用逆相HPLCによってモニターし、そして75分間攪拌した後、出発物質が消費される(95:5 NaH2PO4/H3PO4緩衝用水/CH3CN〜5:95、17分;出発クロロケトンの保持時間:7.39分、ハロヒドリンの保持時間:2.66分)。この反応をMeOH(25mL)を添加することによってクエンチし、5分間攪拌し、次いでDMFなどを真空中(コールドフィンガーロトバイパー(cold finger rotovapor)、真空ポンプ)で除去し、赤黒い粘稠性油状物を得る。この粗物質を、Et2O/CH2Cl2(4:1、1.25L)中に取り上げ、3Lの分離漏斗中に入れ、飽和NaHCO3溶液(1.0L)、ブライン(1.0L)で洗浄し、そして乾燥する(Na2SO4)。濾過し、そして真空中で濃縮し赤褐色の油状物として粗生成物を得、これをフラッシュ法を使用して、シリカゲルカラムのクロマトグラフィーによって精製する(70mm OD、250g 230−400メッシュ、ヘキサンを充填;CH2Cl2/ヘキサン60:40中に化合物を適用する;ヘキサン/Et2O(75:25 2L;65:35 2L;55:45 2L;350mL画分)で溶出する)。画分9〜16を合わせ、黄白色の固体として目的のハロヒドリン(14.72g、61%)を得る。物理的特性:MP:47−48℃;1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ=8.65,7.92,7.58,7.44,5.13,4.60,3.91;IR(ニート):3138,3074,3029,3014,2974,2964,2955,2895,2862,2848,2472,2350,2328,2305,2261cm-1;分析実測値:C,53.23;H,5.12;N,8.82;比旋光度[α]D25=−39(c 0.94,CH2Cl2);キラルHPLC分析(Chiracel OJ):98:2;96%ee。
【0033】
実施例2:S−2−(1−ヒドロキシ−2−クロロエチル)−ピリジン
【化14】

[RuCl2(η6−p−シメン)]2(0.84g、1.37mmol)、Et3N(0.67g、6.66mmol、0.93mL)、および(1R,2R)−N−p−トルエンスルホニル−1,2−ジフェニルエチレンジアミン(1.0g、 2.72mmol、ケトンをベースにして1.78mol%)を、500mLの1N丸底フラスコ中で混合する。i−PrOH(25mL)およびEt3N(0.67g、6.66mmol、0.93mL)を添加し、還流冷却器を取り付け、そしてこの混合物を還流下で温め、そして1時間維持する。室温まで冷却し、そして真空中(ロトベイパー、次いで真空ポンプ)で濃縮し、茶色の粉末固体として触媒を得る。この触媒に、無水DMF(Aldrich Sure Seal、225mL)、次いで2−クロロアセチルピリジン(23.88g、0.153mol)、およびHCOOH/Et3N(5:2、Fluka、55mL)を添加する。約2〜3分間攪拌した後(室温)、気泡(CO2であると推定される)が、赤黒い溶液の攪拌渦から生じるのが見える。反応状況を、分析用逆相HPLCによってモニターし、そして65分間攪拌した後、出発物質が、十分に消費されている(95:5 NaH2PO4/H3PO4緩衝用水/CH3CN〜5:95、17分間;出発クロロケトンの保持時間:7.39分間、ハロヒドリンの保持時間:2.66分間)。この反応をMeOH(25mL)を添加することによってクエンチし、5分間攪拌し、次いでDMFなどを真空中(コールドフィンガーロトバイパー、真空ポンプ)で除去し、赤黒い粘稠性油状物を得る。この粗物質を、Et2O/CH2Cl2(4:1、1.25L)中に取り上げ、3Lの分液漏斗中に入れ、飽和NaHCO3溶液(1.0L)、ブライン(1.0L)で洗浄し、そして乾燥する(Na2SO4)。濾過し、そして真空中で濃縮し赤褐色の油状物として粗生成物を得、これをフラッシュ法を使用して、シリカゲルカラムのクロマトグラフィーによって精製する(70mm OD、250g 230−400メッシュ、ヘキサンを充填;CH2Cl2/ヘキサン60:40中に化合物を適用する;ヘキサン/Et2O(75:25 2L;65:35 2L;55:45 2L;350mL画分)で溶出する)。画分11〜17を合わせ、黄白色の固体として目的のハロヒドリン(16.41g、68%)を得る。物理的特性:MP:49−50℃;1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ=8.60,7.77,7.58,7.30,5.00,4.20,3.85;EI−MS(70EV):160(35),158(M+,90),122(90),106(ベース);IR(ニート):3085,3075,2470,2350,2328,2305,2260,1109,1077,1006,783,762,720,640,624cm-1;分析実測値:C,53.27;H,5.19;N,8.81,Cl,22.29;比旋光度[α]D25=62(c 0.94,メタノール);キラルHPLC分析(Chiracel OJ):100:0;>99%ee。
【0034】
実施例3:S−2−(1−ヒドロキシ−2−−メチルアミノ−エチル)−ピリジン
【化15】

R−2−(1−ヒドロキシ−2−クロロエチル)−ピリジン(6.0g、38mmol)およびNaI(0.57g、3.8mmol)を、500mLのプラスチックでコートされた壁の厚いボトル中で混合し、そしてMeOH(0.19L)中の2M MeNH2で覆う。TeflonストッパーをTeflonテープで包み、ボトルを密閉する。攪拌を開始し、そしてこのボトルを、60℃の油浴中に16時間浸す。黄褐色の混合物を室温まで冷却し、そして分析用逆相HPLCによる分析により、反応が完了したことを確認する(出発物質の保持時間=2.66分;生成物の保持時間=1.22分)。真空中で濃縮し、黄色油状物として粗生成物を得、これをCH2Cl2−THF(0.25L、10:90)で処理し、黄色溶液および白色沈殿物を得る。この沈殿物を、濾過によって除去し、CH2Cl2−THF(10:90)でリンスし、そしてこの合わせた濾液を真空中で濃縮し、黄褐色油状物を得る。この粗生成物をフラッシュ法を使用して、シリカゲルカラムのクロマトグラフィーによって精製する(70mm OD、250g、230−400メッシュ;CH2Cl2−MeOH 90:10で充填する;CH2Cl2−MeOH 90:10、2L、500mL 画分;CH2Cl2−MeOH−NH4OH 89:10:1、8L、500mL画分で溶出する)。画分10〜18を合わせ、琥珀色の油状物とし目的のアミノエタノール(3.34g、58%)を得る。物理的特性:1H−NMR(400MHz,DMSO−d6):δ=8.48,7.78,7.50,7.30,4.70,2.85,2.67,2.34;EI−MS(70EV):153(ベース),135(20),122(27),108(43);IR(ニート):3291,3090,3066,2942,2890,2853,2799,1996,1918,1591,1473,1436,1070,772,751cm-1;HRMS(FAB):実測値153.1046;比旋光度[αD25]=−46(c 0.37,CH2Cl2)。
【0035】
実施例4:R−2−(1−ヒドロキシ−2−−メチルアミノ−エチル)−ピリジン
【化16】

S−2−(1−ヒドロキシ−2−クロロエチル)−ピリジン(6.0g、38mmol)およびNaI(0.57g、3.8mmol)を、500mLのプラスチックでコートされた壁の厚いボトル中で混合し、そしてMeOH(0.19L)中の2M MeNH2で覆う。TeflonストッパーをTeflonテープで包み、ボトルを密閉する。攪拌を開始し、そしてこのボトルを、60℃の油浴中に16時間浸す。黄褐色の混合物を室温まで冷却し、そして分析用逆相HPLCによる分析により、反応が完了したことを確認する(出発物質の保持時間=2.44分;生成物の保持時間=1.24分)。真空中で濃縮し、黄色油状物として粗生成物を得、これをCH2Cl2−THF(0.25L、10:90)で処理し、黄色溶液および白色沈殿物を得る。この沈殿物を、濾過によって除去し、CH2Cl2−THF(10:90)でリンスし、そしてこの合わせた濾液を真空中で濃縮し、黄褐色油状物を得る。この粗生成物をフラッシュ法を使用して、シリカゲルカラムのクロマトグラフィーによって精製する(70mm OD、250g、230−400メッシュ;CH2Cl2−MeOH 90:10で充填する;CH2Cl2−MeOH 90:10、2L、500mL画分;CH2Cl2−MeOH−NH4OH 89:10:1、8L、350mL画分で溶出する)。画分14〜30を合わせ、琥珀色の油状物とし目的のアミノエタノール(3.18g、54%)を得る。物理的特性:1H−NMR(400MHz,DMSO−d6):δ=8.49,7.79,7.52,7.25,4.75,2.90,2.67,2.32;EI−MS(70EV):153(ベース),135(18),122(20),108(62);IR(ニート):3279,3090,3064,3012,2943,2890,2851,2799,1996,1591,1473,1436,1070,772,751cm-1;HRMS(FAB):実測値153.1009;比旋光度[αD25]=49(c 0.36,CH2Cl2)。
【0036】
実施例5:2−[1−トリ−イソプロピルシリルオキシ−ビニル]−フラン
【化17】

2−アセチルフラン(50g、0.454mol)を、2Lの1N丸底フラスコに入れ、無水CH2Cl2(Aldrich Sure Seal,0.70L)を添加し、次いで、i−Pr2NEt(176g、1.36mol、3当量、237mL)を添加する。このフラスコに、125mLの均圧滴下漏斗(pressure equialized dropping funnel)を備え、そしてこの混合物を、窒素下に配置し、そして氷水浴中で冷却する。冷却されたケトン/アミン混合物に、1.5時間かけて、TIPSOTf(153.2g、0.5mol、1.1 当量、134.3mL)を添加する。この混合物を、一晩かけて室温まで温める。この反応混合物を、真空中、回転エバポレーター(T≦25℃)で濃縮し、黄色油状物および白色固体を得る。このフラスコの内容物を、エーテル(1.2L)を有する2Lの分液漏斗に移し、さらなる白色固体物質(おそらくiPr2(Et)NH+-OTf、これは濾過によって除去してもよいが、この実験においては除去しない)の形成を生じさせ、そしてこの混合物を、飽和 NaHCO3(2×0.70L)で洗浄する。この有機相を分離し、Na2SO4で乾燥させ、次いで真空中で濃縮し、黄−橙色(yellow−orange)の油状物として粗エノールエーテル(118.3g、98%)を得る。この粗物質をさらに精製せずに、次の工程を直ちに行う。物理的特性:1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.36,6.49,6.40,4.86,4.37,1.32,1.14。
【0037】
実施例6:2−[1−トリ−イソプロピルシリルオキシ−2−クロロ−ビニル]−フラン
【化18】

2−[1−トリ−イソプロピルシリルオキシ−ビニル]−フラン(116.3g、0.436mmolと仮定される)を、2Lの1N丸底フラスコに入れ、無水THF(Aldrich Sure Seal、0.6L)に溶解する。このフラスコを窒素下に配置し、−10℃の浴槽中で冷却し、次いで、NCS(64.11g、0.48mol、1.1当量)を添加し、そしてこの混合物を1時間攪拌した後に、反応を分析用逆相HPLCによって完了したことを判断する。この反応混合物を室温まで温め、エーテル(1.5L)を含む4Lの分液漏斗に注ぎ、そして飽和NaHCO3溶液(2×0.7L)で洗浄する。この有機相を分離し、乾燥し(Na2SO4)、そして真空中で濃縮し、橙色の油状物として目的のクロロ−エノールエーテル(129.9g、99%)を得る。この粗物質をさらに精製せずに、次の工程を直ちに行う。物理的特性:1H−NMR(400MH:z,CDCl3):δ=7.36,6.43,6.40,5.95,1.30,1.11。
【0038】
実施例7:2−クロロアセチルフラン
【化19】

2−[1−トリ−イソプロピルシリルオキシ−2−クロロ−ビニル]−フラン(129.9g、0.431mol)を、4Lのプラスチックボトルに入れ、そしてアセトニトリル(0.6L)に溶解する。この攪拌溶液に48%の無水THF(65mL、0.15mL/mmol)を添加し、そしてこの反応の進行を、分析用逆相HPLCによってモニターする。約2時間後、この反応が完了したことを判断し、そして溶液のpHを慎重に飽和NaHCO3溶液で約7に調節する。この混合物を、CH2Cl2(1.5L)を含む分液漏斗に注ぐ。有機相を除去し、そして水相をCH2Cl2(2×1.0L)で抽出する。合わせた有機相を乾燥し(Na2SO4)、そして真空中で濃縮し、黄色油状物として粗2−クロロアセチルフラン(41.9g、67%)を得る。この粗物質を、1H−NMRおよびHPLCによって完全に純粋であることを判断し、そしてNoyori不斉還元にそのまま使用する。物理的特性:1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.58,7.33,6.59,4.57;MS(ES+):145.4。
【0039】
実施例8:S−1−(2−フリル)−2−クロロエタノール
【化20】

[RuCl2(η6−p−シメン)]2(0.99g、1.61mmol)、Et3N(0.67g、6.66mmol、0.93mL)、および(1R,2R)−N−p−トルエンスルホニル−1,2−ジフェニルエチレンジアミン(1.18g、3.22mmol、ケトンをベースにして2.25mol%)を、500mLの1N丸底フラスコ中で混合する。i−PrOH(25mL)およびEt3N(0.67g、6.66mmol、0.93mL)を添加し、還流冷却器を取り付け、そしてこの混合物を還流下で温め、そして1時間維持する。室温まで冷却し、そして真空中(ロトベイパー)で濃縮し、橙褐色の粉末固体として触媒を得る。この触媒に、無水DMF(Aldrich Sure Seal、250mL)、次いで2−クロロアセチルフラン(20.6g、0.143mol)、およびHCOOH/Et3N(5:2、Fluka、51mL)を添加する。約2〜3分間攪拌した後(室温)、気泡(CO2であると推定される)が、赤黒い溶液の攪拌渦から生じるのが見える。反応状況を、分析用逆相HPLCによってモニターし、そして65分間攪拌した後、出発物質が、十分に消費されている(95:5 NaH2PO4/H3PO4緩衝用水/CH3CN〜5:95、17分;出発クロロケトンの保持時間:6.70分、ハロヒドリンの保持時間:6.35分)。この反応をMeOH(25mL)を添加することによってクエンチし、5分間攪拌し、次いでこの反応混合物を氷水(1L)に注ぎ、そして水相を塩で飽和させる。この混合物をエーテル(500mL)を含む2Lの分液漏斗に移し、振とうさせ、そしてこの有機相を除去する。この水相をエーテル(3×250mL)で抽出し、そしてこの合わせた有機相を、飽和NaHCO3溶液(0.5L)、ブライン(4×250mL)で洗浄し、そして乾燥させる(Na2SO4)。濾過し、そして真空中で濃縮し、赤褐色の油状物として粗生成物(20.5g)を得、これをエーテル/ペンタン(10:90、4×100mL)で粉砕する。合わせた粉末を、真空中で濃縮し(ハロヒドリンは揮発性であるので注意が必要である、従って、磨砕液(triturant)としてエーテル/ペンタンを選択し、真空中でDMFを除去しないこと)、HPLCおよび1H−NMRによって決定されるような良好な純度で所望のハロヒドリンS−1−(2−フリル)−2−クロロエタノール(15.97g、76%)を得る。物理的特性:1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.41,6.37,4.95,3.85,2.58;IR(拡散反射率)1428,1422,1221,1205,1198,1166,1096,1021,953,924,883,789,738,714,666,cm-1;MS(EI)m/z(rel.強度)146(17),129(2),98(6),97(ベース),95(3),94(1),69(3),41(2);HRMS(EI)実測値146.0136;比旋光度[αD25]=17(c 0.97,メタノール);キラルHPLC分析(Chiracel OJ):99:1;98%ee。
【0040】
実施例9:R−1−(2−フリル)−2−クロロエタノール
【化21】

[RuCl2(η6−p−シメン)]2(0.99g、1.61mmol)、Et3N(0.67g、6.66mmol、0.93mL)、および(1S,2S)−−p−トルエンスルホニル−1,2−ジフェニルエチレンジアミン(1.18g、3.22mmol、ケトンをベースにして2.10mol%)を、500mLの1N丸底フラスコ中で混合する。i−PrOH(25mL)およびEt3N(0.67g、6.66mmol、0.93mL)を添加し、還流冷却器を取り付け、そしてこの混合物を還流下で温め、そして1時間維持する。室温まで冷却し、そして真空中(ロトベイパー)で濃縮し、橙褐色の粉末固体として触媒を得る。この触媒に、無水DMF(Aldrich Sure Seal(登録商標)、250mL)、次いで2−クロロアセチルフラン(22.3g、0.154mol)、およびHCOOH/Et3N(5:2、Fluka、55mL)を添加する。約2〜3分間攪拌した後(室温)、気泡(CO2であると推定される)が、赤黒い溶液の攪拌渦から生じるのが見える。反応状況を、分析用逆相HPLCによってモニターし、そして65分間攪拌した後、出発物質が、十分に消費されている(95:5 NaH2PO4/H3PO4緩衝用水/CH3CN〜5:95、17分;出発クロロケトンの保持時間:6.70分、ハロヒドリンの保持時間:6.35分)。この反応をMeOH(25mL)を添加することによってクエンチし、5分間攪拌し、次いでこの反応混合物を氷水(1L)に注ぎ、そして水相を塩で飽和させる。この混合物をエーテル(500mL)を含む2Lの分液漏斗に移し、振とうさせ、そしてこの有機相を除去する。この水相をエーテル(3×250mL)で抽出し、そしてこの合わせた有機相を、飽和NaHCO3溶液(0.5L)、ブライン(4×250mL)で洗浄し、そして乾燥する(Na2SO4)。濾過し、そして真空中で濃縮し、赤褐色の油状物として粗生成物(22.7g)を得、これをエーテル/ペンタン(10:90、4×100mL)で粉砕する。合わせた粉末を、真空中で濃縮し(ハロヒドリンは、揮発性であるので注意が必要である、従って、粉砕液としてエーテル/ペンタンを選択し、真空中でDMFを除去しないこと)、HPLCおよび1H−NMRによって決定されるような良好な純度で所望のハロヒドリンR−1−(2−フリル)−2−クロロエタノール(16.03g、71%)を得る。物理的特性:1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.41,6.32,4.92,3.82,2.58;IR(liq.)3373,2475,2084,2023,1940,1505,1226,1151,1142,1089,1068,1012,884,818,742cm-1;MS(EI)m/z(rel.強度)146(13),148(4),146(13),98(4),97(ベース),95(4),94(2),69(6),65(2),41(7),39(3);HRMS(EI)実測値146.0133;比旋光度[αD25]=−18(c 0.97,メタノール);キラルHPLC分析(Chiracel OJ):99:1;98%ee。
【0041】
実施例10:S−1−(2−フリル)−2−クロロエタノール−N−メチルカルバメート
【化22】

窒素下、氷水浴中で冷却した乾燥CH2Cl2(Aldrich SureSeal(登録商標)75mL)中の(S)−1−(2−フリル)−2−クロロエタノール(5.0g、34.2mmol)に、Et3N(1.38g、13.7mmol、0.4当量、1.9mL)を添加する。5分間攪拌し、次いでメチルイソシアネート(3.32g、58.21mmol、1.7当量、3.46mL)を、シリンジを介して2分かけて添加する。氷を溶かし、そしてこの混合物を、HPLCによって反応をモニターする間、室温以上で維持する。45分間で、反応は約35%完了する(ハロヒドリン保持時間=6.355分;生成物RT=7.826分)。一晩攪拌し、16時間でHPLCは反応が完了したことを示した。この混合物を、Et2O(0.3L)およびブライン(0.3L)に注ぎ込む。この有機相を回収し、水相をEt2O(2×0.2L)で抽出し、合わせた有機相をブライン(0.4L)で洗浄し、そして乾燥させる(Na2SO4)。真空中で濃縮し、茶色の粘稠性油状物として粗カルバメートを得、これをクロマトグラフィーによって精製する(Biotage(登録商標)40gカラム、EtOAc/ヘキサン10:90 1L、EtOAc/ヘキサン20:80 1L、50mL画分)。画分25〜42から、透明な黄白色油状物としてS−1−(2−フリル)−2−クロロエタノール−−メチルカルバメート(4.56g、65%)を得、これを冷却して象牙色固体に凝固させる。物理的特性:MP:26−27℃;1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.43,6.45,6.39,5.97,4.79,3.89,2.82;13C−NMR(100MHz,CDCl3):δ=156.2,150.3,143.3,110.8,109.9,69.1,44.0,28.0;IR(拡散反射率):3365,3355,3344,3333,2477,2392,2197,2088,1727,1694,1550,1531,1518,1253,1248cm-1;MS(CI)m/z(rel.強度):221(3),146(7),129(6),113(5),96(ベース),79(53),52(33);分析実測値:C,46.99;H,4.89;N,6.85;Cl,17.31;比旋光度[αD25]=94(c 1.02,CH2Cl2);キラルHPLC分析(Chiracel OJ):99:1;98%ee。
【0042】
実施例11:R−1−(2−フリル)−2−クロロエタノール−N−メチルカルバメート
【化23】

窒素下、氷水浴中で冷却した乾燥CH2Cl2(Aldrich Sure Seal(登録商標)75mL)中の(R)−1−(2−フリル)−2−クロロエタノール(5.0g、34.2mmol)に、Et3N(1.38g、13.7mmol、0.4当量、1.9mL)を添加する。5分間攪拌し、次いでメチルイソシアネート(3.32g、58.21mmol、1.7当量、3.46mL)を、シリンジを介して2分かけて添加する。氷を溶かし、そしてこの混合物を、HPLCによって反応をモニターする間、室温以上で維持する。45分間で、反応は約35%完了する(ハロヒドリン保持時間=6.355分;生成物RT=7.826分)。一晩攪拌し、16時間でHPLCは反応が完了したことを示した。この混合物を、Et2O(0.3L)およびブライン(0.3L)に注ぎ込む。この有機相を回収し、水相をEt2O(2×0.2L)で抽出し、合わせた有機相をブライン(0.4L)で洗浄し、そして乾燥させる(Na2SO4)。真空中で濃縮し、茶色の粘稠性油状物として粗カルバメートを得、これをクロマトグラフィーによって精製する(Biotage(登録商標)40gカラム、EtOAc/ヘキサン10:90 1L、EtOAc/ヘキサン20:80 1L、50mL画分)。画分25〜42から、透明な黄白色油状物としてR−1−(2−フリル)−2−クロロエタノール−−メチルカルバメート(5.06g、73%)を得、これを冷却して象牙色固体に凝固させる。物理的特性:MP:26−27℃;1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.41,6.43,6.40,5.96,4.91,3.87,2.81;13C−NMR(100MHz,CDCl3):δ=156.2,150.3,143.3,110.8,109.9,69.1,44.0,28.0;IR(拡散反射率):3365,3355,3344,3333,2477,2392,2197,2088,1727,1694,1550,1531,1518,1253,1248,cm-1;MS(CI)m/z(rel.強度):221(50),146(26),129(28),110(20),95(34),52(ベース);分析実測値:C,46.97;H,4.95;N,6.90;Cl,17.27。比旋光度[αD25]=−99(c 0.93,CH2Cl2);キラルHPLC分析(Chiracel OJ):1:99;98%ee。
【0043】
実施例12:5R−3−メチル−5−(2−フリル)−2−オキサゾリジノン
【化24】

水酸化ナトリウム(1.18g、オイル中60%、29.54mmol)を、乾燥した100mLの一つ口14/20丸底フラスコに添加し、50mLの等圧滴下漏斗を備え、NaHを乾燥THF(15mL、Aldrich Sure Seal(登録商標))で覆い、そしてこの装置を窒素下に配置する。この滴下漏斗を、乾燥THF(25mL)に溶解したS−1−(2−フリル)−2−クロロエタノール−−メチルカルバメート(3.00g、14.77mmol)で満たし、そしてこのフラスコを氷水浴中で冷却する。次いで、この滴下漏斗の内容物を0.5時間かけて添加し、そしてこの混合物を、反応をHPLCによってモニターしながら攪拌する(氷水冷却しながら)。1時間程度でこの反応を完了したと判断し(カルバメートRT=7.826分;生成物RT=5.836分)、この反応を、1NHCl溶液(15mL)を添加することによって慎重にクエンチし、そしてこの混合物を、CH2Cl2(0.4L)およびブライン(0.5L)に注ぐ。この有機相を分離し、乾燥させ(Na2SO4)、真空中で濃縮し、NaHからの油分に覆われた黄色油状物として粗オキサゾリジノンを得る。この粗物質を、90gのBiotage(登録商標)カラム(CH2Cl2,1L;Et2O:CH2Cl2 2:98,1L;Et2O:CH2Cl2 4:96,1L;Et2O:CH2Cl2 6:94,1L;50mL画分)のクロマトグラフィーで精製する。画分23〜57を合わせ、黄白色の油状物として5R−3−メチル−5−(2−フリル)−2−オキサゾリジノン(2.29g、93%)を得、これを冷却して象牙色固体に凝固させる。物理的特性:MP:54−55℃;1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.47,6.49,6.41,5.46,3.78,2.97;13C−NMR(100MHz,CDCl3):δ=155.9,148.1,142.1,109.0,108.4,65.9,48.8,29.4;IR(拡散反射率):2492,2436,2402,2351,2304,1759,1743,1503,1439,1307,1267,1154,1138,1029,747,cm-1;MS(EI)m/z(rel.強度):167(71),167(71),123(ベース),108(76),95(43),94(59),86(45),84(64),81(70),53(28),51(50);分析実測値:C,57.46;H,5.39;N,8.36;比旋光度[αD25]=−106(c 1.01,CH2Cl2);キラルHPLC分析(Chiracel OJ):2.8:97.2;94.4%ee。
【0044】
実施例13:5S−3−メチル−5−(2−フリル)−2−オキサゾリジノン
【化25】

水酸化ナトリウム(1.18g、オイル中60%、29.54mmol)を、乾燥した100mLの一つ口14/20丸底フラスコに添加し、50mLの等圧滴下漏斗を備え、NaHを乾燥THF(15mL、Aldrich Sure Seal(登録商標))で覆い、そしてこの装置を窒素下に配置する。この滴下漏斗を、乾燥THF(25mL)に溶解したR−1−(2−フリル)−2−クロロエタノール−−メチルカルバメート(3.00g、14.77mmol)で満たし、そしてこのフラスコを氷水浴中で冷却する。次いで、この滴下漏斗の内容物を0.5時間かけて添加し、そしてこの混合物を、反応をHPLCによってモニターしながら攪拌する(氷水冷却しながら)。1時間程度でこの反応を完了したことを判断し(カルバメートRT=7.826分;生成物RT=5.836分)、この反応を、1NHCl溶液(15mL)を添加することによって慎重にクエンチし、そしてこの混合物を、CH2Cl2(0.4L)およびブライン(0.5L)に注ぐ。この有機相を分離し、乾燥させ(Na2SO4)、真空中で濃縮し、NaHからの油分に覆われた黄色油状物として粗オキサゾリジノンを得る。この粗物質を、90gのBiotage(登録商標)カラム(CH2Cl2,1L;Et2O:CH2Cl2 2:98,1L;Et2O:CH2Cl2 4:96,1L;Et2O:CH2Cl2 6:94,1L;50mL画分)ノクロマトグラフィーで精製する。画分23〜57を合わせ、黄白色の油状物として5S−3−メチル−5−(2−フリル)−2−オキサゾリジノン(2.29g、93%)を得、これを冷却して象牙色固体に凝固させる。物理的特性:MP:54−55℃;1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.47,6.50,6.41,5.48,3.79,2.97;13C−NMR(100MHz,CDCl3):δ=155.9,148.1,142.1,109.0,108.4,65.9,48.8,29.4;IR(拡散反射率):2491,2464,2436,2402,2351,1743,1503,1439,1344,1307,1267,1154,1138,1029,748,cm-1;MS(EI)m/z(rel.強度):167(57),167(57),123(69),108(44),95(26),94(37),86(67),84(ベース),81(43),53(20),51(57);分析実測値:C,57.42;H,5.48;N,8.38;比旋光度[αD25]=109(c 0.97,CH2Cl2);キラルHPLC分析(Chiracel OJ):98.5:1.5;97%ee。
【0045】
あるいは、上記に引用されるオキサゾリジノンは、以下のように塩基としてKOtBuを使用して、カルバメートを精製することなく調製し得る。
【0046】
実施例14:5R−3−メチル−5−(2−フリル)−2−オキサゾリジノン
【化26】

窒素下、氷水浴中で冷却した乾燥CH2Cl2(Aldrich Sure Seal(登録商標)200mL)中の(S)−1−(2−フリル)−2−クロロエタノール(14.0g、95.88mmol)に、Et3N(3.88g、38.3mmol、0.4当量、5.34mL)を添加する。5分間攪拌し、次いでメチルイソシアネート(9.3g、163mmol、1.7当量、9.7mL)を、シリンジを介して5分かけて添加する。氷を溶かし、そしてこの混合物を、HPLCによって反応をモニターする間、室温以上で維持する。45分間で、反応は約35%完了する(ハロヒドリン保持時間=6.355分;生成物RT=7.826分)。さらに3.25時間攪拌し、その時点でHPLCは反応が完了したことを示した。この混合物を、Et2O(1.0L)およびブライン(1.0L)に注ぎ込む。この有機相を回収し、水相をEt2O(2×0.5L)で抽出し、合わせた有機相をブライン(1.5L)で洗浄し、そして乾燥させる(Na2SO4)。真空中で濃縮し、精製された茶色の粘稠性油状物として粗カルバメートを得、さらに精製することなく環化に使用する。
【0047】
(S)−1−(2−フリル)−2−クロロエタノール(95.88mmol)からの粗カルバメートを、乾燥THF(0.2L、Aldrich Sure Seal(登録商標))に溶解し、そしてこの溶液を、窒素下で氷水浴中で冷却する。冷却されたカルバメート溶液に、15分かけてKOtBu(THF中1.0M、97mL,97mmol、1.01当量)を添加する。添加が完了した後にこの混合物を攪拌する。HPLC分析は、この反応が15分以内で完了したことを示唆していた。この混合物を1NのHCl溶液(50mL)を含むEt2O(1.25L)およびブライン(1.0L)に注ぐ。有機相を分離し、水相をEt2O(1.0L)で抽出する。この合わせた有機相を、飽和NaHCO3溶液(1.0L)で洗浄し、そして乾燥させる(Na2SO4)。真空中で濃縮し、赤黒い油状物として粗オキサゾリジノンを得、これをペンタン−Et2O(2:1;3×0.2L)で粉砕する。このペンタン−Et2Oアリコートを、真空中で濃縮し、赤色固体を得、これを120gのBiotage(登録商標)カラムのクロマトグラフィーによって精製する(CH2Cl2中の溶液として導入する、EtOAc/ヘキサン、35:65、1.0L; EtOAc/ヘキサン、50:50、2.0L、50mL画分、を用いて溶出する)。画分21〜45を合わせ、象牙色の固体として5R−3−メチル−5−(2−フリル)−2−オキサゾリジノン(8.75g、ハロヒドリンから55%)を得る。
【0048】
実施例15:5S−3−メチル−5−(2−フリル)−2−オキサゾリジノン
【化27】

窒素下、氷水浴中で冷却した乾燥CH2Cl2(Aldrich Sure Seal(登録商標)150mL)中の(R)−1−(2−フリル)−2−クロロエタノール(10.09g、69.1mmol)に、Et3N(2.80g、27.6mmol、0.4当量、3.85mL)を添加する。5分間攪拌し、次いでメチルイソシアネート(6.7g、117mmol、1.7当量、7.0mL)を、シリンジを介して5分かけて添加する。氷を溶かし、そしてこの混合物を、HPLCによって反応をモニターする間、室温以上で維持する。45分間で、反応は約35%完了する(ハロヒドリン保持時間=6.355分;生成物RT=7.826分)。さらに3.25時間攪拌し、その時点でHPLCは反応が完了したことを示した。この混合物を、Et2O(1.0L)およびブライン(1.0L)に注ぎ込む。この有機相を回収し、水相をEt2O(2×0.5L)で抽出し、合わせた有機相をブライン(1.5L)で洗浄し、そして乾燥させる(Na2SO4)。真空中で濃縮し、茶色の粘稠性油状物として粗カルバメートを得、これを精製し、さらに精製することなく環化に使用する。
【0049】
(R)−1−(2−フリル)−2−クロロエタノール(69.1mmol)からの粗カルバメートを、乾燥THF(0.15L、Aldrich Sure Seal(登録商標))に溶解し、そしてこの溶液を、窒素下で氷水浴中で冷却する。冷却されたカルバメート溶液に、15分かけてKOtBu(THF中1.0M、70mL、70mmol、1.01当量)を添加する。添加が完了した後にこの混合物を攪拌する。HPLC分析は、この反応が15分以内で完了したことを示唆していた。この混合物を1NのHCl溶液(50mL)を含むEt2O(1.25L)およびブライン(1.0L)に注ぐ。有機相を分離し、水相をEt2O(1.0L)で抽出する。この合わせた有機相を、飽和NaHCO3溶液(1.0L)で洗浄し、そして乾燥させる(Na2SO4)。真空中で濃縮し、赤黒い油状物として粗オキサゾリジノンを得、これをペンタン−Et2O(2:1;3×0.2L)で粉砕する。このペンタン−Et2Oアリコートを、真空中で濃縮し、赤色固体を得、これを120gのBiotage(登録商標)カラムのクロマトグラフィーによって精製する(CH2Cl2中の溶液として導入される、EtOAc/ヘキサン、35:65、1.0L; EtOAc/ヘキサン、50:50、2.0L、50mL画分、を用いて溶出する)。画分23〜39を合わせ、象牙色の固体として5S−3−メチル−5−(2−フリル)−2−オキサゾリジノン(7.42g、ハロヒドリンから64%)を得る。
【0050】
実施例16:−メチルR−1−(2−フリル)−2−アミノエタノール
【化28】

500mLの1N RBフラスコ中の5R−3−メチル−5−(2−フリル)−2−オキサゾリジノン(8.0g、47.8mmol)に、1NのKOH溶液(240mL、0.24mol、5当量)を添加する。このフラスコに還流冷却器を備え、窒素下に配置し、次いで予め温めた油浴(50℃)中に浸す。この混合物を攪拌すると、PHA−727185懸濁液は、ゆっくりと透明な溶液に変わる。3時間50℃で攪拌した後、HPLC分析は、反応が完了したことを示した。この混合物を室温まで冷却し、そして分液漏斗に注ぎ、このフラスコをEt2O/CH2Cl2(95:5、0.5L)を用いて分液漏斗にすすぎ入れ(rinsed into)、そして水相を塩で飽和させる。有機相を除去し、水相をEt2O/CH2Cl2(95:5、2×0.5L)で抽出し、そしてこの合わせた有機相を乾燥させる(Na2SO4)。真空中で濃縮し、淡いオレンジ色の油状物として−メチル−R−1−(2−フリル)−2−アミノエタノール(6.50g、96%)を得、これをフリーザー温度(−20℃)で凝固させる。この物質を、分析的に純粋であることを測定し、そしてさらに精製することなく使用する。物理的特性:
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6):δ=7.55(m,1),6.37(m,1),6.25(d,J=3.2Hz,1),4.59(m,1),2.70(m,2),2.25(s,3)。
13C−NMR(100MHz,DMSO−d6):δ=157.3,141.9,110.5,105.9,65.5,56.5,36.5。
IR(ニート):3318(s,b),3116(s,b),2945(s,b),2853(s,b),2801,2085(b),2019(b),1474,1452,1151,1065,1010,884,738,600,cm-1
MS(CI)m/z(rel.強度):159(M+NH4+,14),142(M+H,ベース),126(15),124(8),112(4),74(7),69(6),61(18)。
KF湿度:0.83%。
分析計算値C711NO2:C,59.56;H,7.85;N,9.92.実測値:C,59.90;H,7.83;N,9.68
比旋光度[αD25]=32(c 0.96,EtOH)。
【0051】
実施例17:N−メチルR−1−(2−フリル)−2−アミノエタノールPHA−728907
【化29】

500mLの1N RBフラスコ中のPHA−727186(8.0g、47.8mmol)に、1NのKOH溶液(240mL、0.24mol、5当量)を添加する。このフラスコに還流冷却器を備え、窒素下に配置し、次いで予め温めた油浴(50℃)中に浸す。この混合物を攪拌すると、PHA−727185懸濁液は、ゆっくりと透明な溶液に変わる。3時間50℃で攪拌した後、HPLC分析は、反応が完了したことを示した(HPLC:PHA−727188RT=5.838分、PHA−728907RT=1.458分)。この混合物を室温まで冷却し、そして分液漏斗に注ぎ、このフラスコをEt2O/CH2Cl2(95:5、0.5L)を用いて分液漏斗にすすぎ入れ、そして水相を塩で飽和させる。有機相を除去し、水相をEt2O/CH2Cl2(95:5、2×0.5L)で抽出し、そしてこの合わせた有機相を乾燥させる(Na2SO4)。真空中で濃縮し、淡いオレンジ色の油状物として所望のアミノエタノールPHA728907(6.64g、98%)を得、これをフリーザー温度(−20℃)で凝固させる。この物質を、分析的に純粋であることを測定し、そしてさらに精製することなく使用する。
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6):δ=7.55(m,1),6.37(m,1),6.25(d,J=3.2Hz,1),4.60(m,1),2.71(m,2),2.26(s,3)。
13C−NMR(100MHz,DMSO−d6):δ=157.3,141.9,110.5,105.9,65.5,56.5,36.2。
IR(ニート):3318(s,b),3116,2945(s,b),2853(s,b),2801,2085(b),2019(b),1474,1453,1151,1065,1010,884,738,600,cm-1
MS(CI)m/z(rel.強度):159(M+NH4+,2),142(M+H,ベース),126(14),124(18),112(2),74(2),69 61(10)。
KF湿度:0.64%。
分析計算値C711NO2:C,59.56;H,7.85;N,9.92。実測値:C,59.28;H,7.98;N,9.80。
比旋光度[αD25]=32(c 0.91,EtOH)。
【0052】
アミノエタノールのPHA728901およびPHA−728907の光学純度は、対掌体が基準線以外で分離するため(due to non−baseline separation ofthe antipodes)、キラルHPLCによって決定することが困難である。良好な分析データは、アミノエタノールを以下に示されるようなカルボニルジイミダゾールを有する関連するオキサゾリジノンに再転換することによって得られる。
【0053】
【化30】

【0054】
【化31】

【0055】
実施例18:溶媒効果の実証
表2は、3−クロロアセチルピリジンの還元結果を要約する。還元は、溶媒および圧力が以下の表2に列挙されるように変更されることを除いて、実施例1の手順に従って実施される。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式I:
【化1】

の鏡像異性的に富化されたアミノアルコールの製造方法であって、
a)次の式A:
【化2】

のカルボニル化合物を、還元剤の存在下溶媒中で還元し、次の式B:
【化3】

のアルコールを得る工程、
ここで、R1は、1〜12個の炭素のアルキルもしくはヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、
2は、H、1〜4個の炭素のアルキル、CH2−アリール、またはCH2−ヘテロアリールであり、そしてXは、Cl、Br、I、アリール−SO2O−、ペルフルオロアルキル−SO2O−、およびアルキル−SO2O−の群から選択され;
b)式Bのアルコールから次の式D:
【化4】

のウレタンを形成させる工程、
ここで、R3は、1〜6個の炭素のアルキル、アリール、ベンジル、低級アルキル−CO、アリール−CO、低級アルキル−O−CO−、アリール−O−CO−、ベンジル−O−CO−、およびアリール−SO2−の群から選択され;
c)式Dのウレタンを塩基で処理することによって次の式E:
【化5】

のオキサゾリジノンを形成させる工程;
d)式Eのオキサゾリジノンを精製する工程;および
e)式Eのオキサゾリジノンを、式Iの鏡像異性的に富化されたアミノアルコールに変換する工程、
を包含する、上記の方法。
【請求項2】
還元剤がキラル触媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
キラル触媒が次の式:
【化6】

である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
還元工程Aにおける溶媒がDMFを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
式Dのウレタンが、式Bのアルコールと次の式C:
R3NCO
のイソシアネートとの反応によって形成され、
ここで、R3が、1〜6個の炭素のアルキル、アリール、ベンジル、低級アルキル−CO、アリール−CO、低級アルキル−O−CO−、アリール−O−CO−、ベンジル−O−CO−、およびアリール−SO2−の群から選択される、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
式Dのウレタンからオキサゾリジノンを形成するために使用される塩基が、水素化ナトリウムもしくはカリウムt−ブトキシド、ナトリウムアミレート、または水素化ナトリウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
次の式I:
【化7】

の鏡像異性的に富化されたアミノアルコールを調製する方法であって、
次の式D:
【化8】

のウレタンを塩基で処理することによって、次の式E:
【化9】

のオキサゾリジノンを形成させる、
ここで、R1は、1〜12個の炭素のアルキルもしくはヘテロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、
2は、H、1〜4個の炭素のアルキル、CH2−アリール、またはCH2−ヘテロアリールであり、R3は、1〜6個の炭素のアルキル、アリール、ベンジル、低級アルキル−CO、アリール−CO、低級アルキル−O−CO−、アリール−O−CO−、ベンジル−O−CO−、およびアリール−SO2−の群から選択され、そしてXは、Cl、Br、I、アリール−SO2O−、ペルフルオロアルキル−SO2O−、およびアルキル−SO2O−の群から選択され;そして
式Eのオキサゾリジノンを精製する
工程を包含する、上記の方法。
【請求項8】
オキサゾリジノンが、再結晶によって精製される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
加水分解によって、式Eのオキサゾリジノンを式Iの鏡像異性的に富化されたアミノアルコールに変換する工程をさらに包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
式Iの鏡像異性的に富化されたアミノアルコールが、約50%eeよりも大きい、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
式Iの鏡像異性的に富化されたアミノアルコールが、約80%eeよりも大きい、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
式Iの鏡像異性的に富化されたアミノアルコールが、約90%eeよりも大きい、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
式Iの鏡像異性的に富化されたアミノアルコールが、約95%eeよりも大きい、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
式Iの鏡像異性的に富化されたアミノアルコールが、約99%eeよりも大きい、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2006−521346(P2006−521346A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506371(P2006−506371)
【出願日】平成16年3月15日(2004.3.15)
【国際出願番号】PCT/IB2004/000840
【国際公開番号】WO2004/085414
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
TEFLON
【出願人】(504396379)ファルマシア・アンド・アップジョン・カンパニー・エルエルシー (130)
【Fターム(参考)】