説明

鏡面化粧シート

【課題】鏡面性を有すると共に耐傷付き性・耐汚染性等の性能を付与させることができ、なおかつ干渉縞を低減させる事で意匠性にも優れた鏡面化粧シートを提供すること。
【解決手段】熱可塑性樹脂基材上に絵柄模様層、透明熱可塑性樹脂層、表面保護層を少なくともこの順に有してなり、前記透明熱可塑性樹脂層が二軸延伸ポリエステル系樹脂からなり、前記透明熱可塑性樹脂層の表面全面に波型凹凸形状を有し、かつ、前記表面保護層の表面全面に前記透明熱可塑性樹脂層の表面全面の波型凹凸形状に沿った波型凹凸形状を有してなり、前記表面保護層の表面全面の波型凹凸形状が振幅300〜800nm、波長1.5〜3.0mmとなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の建築物の内外装材や、造作材、建具等の建築資材、家具什器類、住設機器や家電製品等の表面化粧に使用するための化粧シートに関するものである。更に詳しくは、例えばキッチン扉や浴室内装等の、高鮮映性を主とした高意匠性が要求される用途に特に好適な鏡面化粧シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、係る用途の化粧シートとしては、ポリ塩化ビニル樹脂フィルムに適宜の絵柄の印刷を施してなるものが主流であった。また近年ではそれに加えて、環境問題への対応を考慮して、燃焼時の塩化水素又はダイオキシン等の有害物質の発生のおそれのない、ポリオレフィン系樹脂等の非塩素系樹脂フィルムを使用した化粧シートも開発され、広く使用される様になりつつある。
【0003】
ところで、上記したキッチン扉や浴室内装等の用途では、他の通常の用途と比較して、格段に優れた高鮮映性が要求されており、上記したポリ塩化ビニル樹脂フィルムやポリオレフィン系樹脂フィルムでは対応できない。これは、ポリ塩化ビニル樹脂フィルムは軟質で厚み精度や表面平滑度に乏しく、ポリオレフィン系樹脂は結晶性が高いために表面ヘイズが高いことや、両者共に耐擦傷性が弱いこと等によるものである。
【0004】
そこで、高鮮映性が要求される用途の為の化粧シートとしては従来より、透明性や表面平滑性、耐擦傷性等に優れたポリエステル系樹脂フィルムを表面に配した構成の鏡面化粧シートが、主として使用されている。具体的には、着色ポリ塩化ビニル樹脂フィルム又は着色ポリオレフィン系樹脂フィルムからなる隠蔽性の基材シートの表面に接着剤を介して、予め裏面に適宜の絵柄の印刷を施した透明なポリエステル系樹脂フィルムを貼合わせてなるものである。
【0005】
更に表面部に表面保護層を積層することにより、更なる耐傷性の向上や、汚染防止機能、抗菌機能、防黴機能、防虫機能、消臭機能、ホルムアルデヒド除去機能、芳香機能、光触媒機能、超親水性機能、導電機能およびイオン発生機能等、様々な機能を有する事を狙う試みがなされた。
【0006】
しかし、前記表面保護層を設けると、透明熱可塑性樹脂層との屈折率の違いにより干渉縞が発生し、特にその干渉縞が目立ちやすい鏡面シートにおいては、意匠性を大きく損ねる結果を生んでしまった。干渉縞を低減させるために表面に凹部模様を設けるなどの工夫もされているが、十分な効果を挙げていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭57−165259号公報
【特許文献2】特開平4−238026号公報
【特許文献3】特開平10−258488号公報
【特許文献4】特開2008−247012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、鏡面性を有すると共に耐傷付き性・耐汚染性等の性能を付与させることができ、なおかつ干渉縞を低減させる事で意匠性にも優れた鏡面化粧シートを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前記課題を解決したものでありすなわちその請求項1記載の発明は、熱可塑性樹脂基材上に絵柄模様層、透明熱可塑性樹脂層、表面保護層を少なくともこの順に有してなり、前記透明熱可塑性樹脂層が二軸延伸ポリエステル系樹脂からなり、前記透明熱可塑性樹脂層の表面全面に波型凹凸形状を有し、かつ、前記表面保護層の表面全面に前記透明熱可塑性樹脂層の表面全面の波型凹凸形状に沿った波型凹凸形状を有してなり、前記表面保護層の表面全面の波型凹凸形状が振幅300〜800nm、波長1.5〜3.0mmとなることを特徴とする鏡面化粧シートである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1記載の発明により、透明熱可塑性樹脂層を二軸延伸ポリエステル系樹脂を用いることで透明性にすぐれたものとし、かつ、最表面の波形凹凸形状を振幅300〜800nm、波長1.5〜3.0mmの範囲とすることで表面平滑性、鏡面性に優れた化粧シートとなる。また前記波形凹凸形状は透明熱可塑性樹脂層の表面全面に有してその上に表面保護層を沿って設けることで表面の耐傷付き性・耐汚染性等の性能を付与しつつ、干渉縞の発生を大幅に低減した鏡面化粧シートを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の鏡面化粧シートの一実施例の断面の構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を図面に基づき詳細に説明する。図1に本発明の鏡面化粧シートの一実施例の断面の構造を示す。熱可塑性樹脂基材1上に絵柄模様層2、適宜設ける接着剤層3を介して透明熱可塑性樹脂層4、適宜設けるアンカー層5を介して表面保護層6を設けてなる。また前記熱可塑性樹脂基材1の裏面にプライマー層7を適宜設けても良い。
【0013】
本発明における熱可塑性樹脂基材1に用いうる樹脂としては、公知の着色または透明のポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、着色または透明の非晶状態の結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、共重合ポリエステル系樹脂等が使用可能である。厚みは20〜200μm程度が望ましいが、コストや成形性から、40〜160μmが特に望ましい。これより薄くなると化粧シートを貼り付ける化粧板下地基材の凹凸や異物による欠点が目立ち、好ましくない。
【0014】
本発明における絵柄模様層2としては、印刷等による所望の絵柄の意匠を付与するために設けられるものである。絵柄模様層2のなす絵柄の種類は特に限定されず、例えば木目柄、石目柄、布目柄、砂目柄、抽象柄、幾何学図形、文字又は記号、或いはそれらの組み合わせ等、所望により任意である。
【0015】
前記絵柄模様層2に使用する印刷インキの種類は特に限定されず、従来より係る化粧シートに使用されている任意の印刷インキを使用することができる。具体的には、例えばブチラール系、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、エポキシ系、アルキド系、ポリアミド系等のバインダー樹脂に、有機又は無機の染料又は顔料や、必要に応じて体質顔料、充填剤、粘着付与剤、分散剤、消泡剤、安定剤その他の添加剤を適宜添加し、適当な希釈溶剤で所望の粘度に調整してなる、従来公知の任意の印刷インキが使用可能である。
【0016】
接着剤層3は、絵柄模様層2を設けた熱可塑性樹脂基材1と後述する透明熱可塑性樹脂層4との接着性を向上させるために適宜設ける。接着剤層3に使用する接着剤としては、前記目的を達成できるものであれば特に限定するものではないが、2液ウレタン樹脂接着剤等が使用可能である。塗布量としては乾燥後の塗布量が、1〜10g/m程度が望ましい。
【0017】
本発明における透明熱可塑性樹脂層4には二軸延伸ポリエステル系樹脂が用いられ、その表面に全面に波型凹凸形状を有してなるものが用いられる。用いる樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、共重合ポリエステル系樹脂等が使用可能である。厚みは20〜200μm程度が望ましいが、コストや成形性から、40〜160μmが特に望ましい。
【0018】
適宜設けるアンカー層5としては、前記透明熱可塑性樹脂層4と後述する表面保護層6との接着性を向上させるために適宜設ける。用いる樹脂としては、アクリル−ウレタンポリオール混合樹脂等が使用可能である。塗布量としては乾燥後の塗布量が、1〜10g/m程度が望ましい。
【0019】
本発明における表面保護層6としては、熱硬化型樹脂や2液硬化型ウレタン系樹脂、アクリレート系の電子線硬化型樹脂や紫外線硬化型樹脂が使用可能である。
【0020】
本発明における前記透明熱可塑性樹脂層4の表面全面に有する波型凹凸形状は、干渉縞が目立ちやすい鏡面化粧シートの干渉縞を低減するために設けられるものであり、表面保護層5がこの表面全面の波型凹凸形状にほぼ同調して設けられ、表面保護層を設けたあとの波型凹凸形状が振幅300〜800nm、波長1.5〜3.0mmとなるものを用いる。これにより鏡面化粧シート表面の鏡面性を損なわないまま干渉縞の低減が可能となる。振幅が高まるか波長が短くなると鏡面性が損なわれ、振幅が低くなるか波長が長くなると、干渉縞の低減が出来なくなってしまう。
【0021】
適宜設けるプライマー層は本発明の鏡面化粧シートを表面化粧として用いる各種建材の表面部材との接着性を考慮して適宜選択すれば良い。具体的には2液硬化型のウレタン系樹脂が好適である。塗布量としては乾燥後の重量が0.5〜20g/m程度が接着性の点で望ましい。
【実施例1】
【0022】
熱可塑性樹脂基材1としてオレフィン系の熱可塑性樹脂シート「リベスターTPO 120μm厚」(リケンテクノス(株)製)を用い、この表面に絵柄模様層2として抽象柄を通常の印刷インキを用いてグラビア印刷法により設けた。またこの裏面にプライマー層7として「DICBEAM EXP−60608プライマー」(大日本インキ化学工業(株)製)を設けた。
【0023】
前記絵柄模様層2が施されたその上に、透明熱可塑性樹脂層4として二軸延伸ポリエチレンテレフタレートシート(東洋紡績(株)製「E5000」 50μm厚)を用い、あらかじめ表面にコロナ処理を施してからドライラミネートにより接着した。その際、その熱により、透明熱可塑性樹脂層4の表面全面に波型凹凸形状を押圧エンボスにより設けた。
【0024】
前記波型凹凸形状を形成した透明熱可塑性樹脂層4の表面にコロナ処理を施し、アンカー層5としてアクリル系樹脂とポリウレタンポリオール樹脂との混合樹脂100重量部に、HDI系イソシアネートを10重量部を混合、適当な粘度に希釈後、ダイレクトナチュラルグラビアコート方式によって乾燥後の塗布量が2g/mとなるように塗布して設けた。
【0025】
表面保護層6として紫外線硬化型樹脂(大日本インキ化学工業(株)製「DICBEAM EXP−60413グロスST」)を希釈溶剤で適切な粘度に希釈した後、ダイレクトリバースグラビア方式(周速比100%)による塗工により乾燥後の塗工厚が5〜6μmになるよう塗布した後、高照度の高圧水銀ランプを照射し硬化させ、鏡面化粧シートを得た。表面の波型凹凸形状の振幅・波長をOLYMPUS製分光反射率測定機「USPM−RU Ver2.00」を用いて、ピークバレー法により測定したところ、振幅は300〜700nm、波長は2.0〜2.5mmであった。
【0026】
<比較例1>
前記絵柄模様層2が施されたその上に、透明熱可塑性樹脂層4をドライラミネートする際、透明熱可塑性樹脂層4にあらかじめアンカー層5、表面保護層6を前記同様の方法で先に設けてから、その後にドライラミネートを行った他は、実施例1と同様にして鏡面化粧シートを得た。波型凹凸形状は透明熱可塑性樹脂層4の表面にはなく、表面保護層6の表面全面にのみ設けられたものとなり、前記同様に表面の波型凹凸形状の振幅・波長を測定したところ、振幅は150〜300nm、波長は1.0〜2.0mmであった。
【0027】
<比較例2>
透明熱可塑性樹脂層4の厚みを25μmとした以外は比較例1と同様にして鏡面化粧シートを得た。波型凹凸形状は透明熱可塑性樹脂層4の表面にはなく、表面保護層6の表面全面にのみ設けられたものとなり、前記同様に表面の波型凹凸形状の振幅・波長を測定したところ、振幅は300〜1600nm、波長は1.0〜2.5mmであった。
【0028】
<外観確認>
実施例1および比較例1、2の鏡面化粧シートについて、3波長域発光型(光源色:昼白色、記号:EX−N)の蛍光灯下において、目視により鏡面性・干渉縞の見え方を観察・評価した。結果を表1に示す。
【0029】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の鏡面化粧シートは、住宅等の建築物の内外装材や、造作材、建具等の建築資材、家具什器類、住設機器や家電製品等の表面化粧に使用可能である。
【符号の説明】
【0031】
1…熱可塑性樹脂基材
2…絵柄模様層
3…接着剤層
4…透明熱可塑性樹脂層
5…アンカー層
6…表面保護層
7…プライマー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂基材上に絵柄模様層、透明熱可塑性樹脂層、表面保護層を少なくともこの順に有してなり、前記透明熱可塑性樹脂層が二軸延伸ポリエステル系樹脂からなり、前記透明熱可塑性樹脂層の表面全面に波型凹凸形状を有し、かつ、前記表面保護層の表面全面に前記透明熱可塑性樹脂層の表面全面の波型凹凸形状に沿った波型凹凸形状を有してなり、前記表面保護層の表面全面の波型凹凸形状が振幅300〜800nm、波長1.5〜3.0mmとなることを特徴とする鏡面化粧シート。




【図1】
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【公開番号】特開2010−253778(P2010−253778A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105751(P2009−105751)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】