説明

長さが異なるプレキャスト・コンクリートブロック製造用の装置

【課題】
凹凸噛合とボルト緊結のために必要な端部構造の精度を保ちつつ、同一の型枠装置で、長さが連続的に異なるプレキャスト・コンクリートブロックを製造する。
【解決手段】
両側面型枠(5)の間を、移動可能端面型枠(1)を動かして任意の位置にセットできるようにすることで長さを連続的に変えられる。コンクリート充填後に移動可能端面型枠(1)の移動の妨げになる出っ張り部は、型枠付属部(2)として取り付け、コンクリート打設後、上方に取り外しを行えるようにする。型枠を支持する装置とは独立の可動式フレーム(11)あるいは固定フレー(14)から、移動端面型枠(1)の側面および上面に力を加えてコンクリート充填をすることで端部構造の精度を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端部の形状および断面形状が同じで、長手方向の仕上げ長さが長短に異なるプレキャスト・コンクリートブロックを製造するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
同一発明者による特許文献1では、局部基礎ブロックに対する延長基礎ブロックの位置決め及び基礎天端面の形成を簡単にすることができる基礎ブロックの接続構造が提供されている。これは、局部基礎ブロックと延長基礎ブロックの接続端を凹凸噛合させ、さらにボルトで緊結するものである(図1)。この方法により、住宅などの基礎施工において、建設現場でのコンクリート充填作業を不要にすることで施工を省力化し、施工期間も短縮できることからコストを縮減し、また、解体も容易に行えることから、分解した基礎ブロックの再使用も可能になるという効果がある。これを可能にするには、凹凸噛合のため両端面部の寸法精度を高めることが必要である。長さも含めて形状が決まったブロックに対しては、この要求には、それに応じた型枠を用いることによって対応可能である。
【特許文献1】特開 2005−97883号公報
【0003】
しかし、これを広く住宅用基礎として廉価に提供するためには、ユーザーの要求に応じて長さが異なる延長基礎ブロックを、同一の型枠で製造できるようにすることが望ましい。プレキャスト・コンクリート基礎の軸方向(長手方向)の長さを自由に設定できる方法として、特許文献2には、両端部の型枠と中間枠(長さが異なるものをモジュール化)の組み合わせからなるものが示されている。この方法で、長さが異なるブロックの製造に対応するには中間枠として多数のものを準備する必要があること、また、それでもなお、長さが連続的に変化する要求には応えられないことから、十分な長さ精度を持った製品を作ることがむつかしい。また、この方法では基礎ブロックとしての利用方法としては、現場での完全な組立型ではなく、最後は現場において接続部のコンクリート打設を想定している。すなわち、この方法では、端面の精度は確保できても、長さの方の要求には十分に対応できないという問題がある。
【特許文献2】特開平 8−11119号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、たとえば図1に示すような端部は凹凸噛合するため複雑な形状のプレキャスト・コンクリートブロック製造装置であって、
(1)長さを自由に変えることができること
(2)凹凸噛合のための端部の寸法精度を十分に確保できること
(3)長尺部の表面が滑らかなこと
などを満足するものを製造でき、さらに装置が
(4)コンクリート充填後の養生促進のための加温に耐えること
(5)コンクリートを抜き出すための振動に耐えて、繰り返し使用できること
などを満足するようなものを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は前述の課題解決のために、第一に、充填されるコンクリートの両側面部を成型するための側面型枠(5)と、同じく両端面部を成型するための端面型枠(1,18)、および下端面型枠(8)からなる型枠において、端面型枠の少なくとも一方は、2つの側面型枠(5)の間を移動でき任意位置に設定可能な移動可能端面型枠(1)とする。
【0006】
第二に、移動可能端面型枠(1)が、コンクリート充填後にセット時とは逆の方向に移動するのに妨げとなるような出っ張りを持っている場合には、該端面型枠(1)に、上方に取り外しできる型枠付属部(2)を取り付け、コンクリート充填後の該移動可能端面型枠(1)の移動前に、該型枠付属部(2)を取りはずしを行えるようにする。
【0007】
第三に、型枠を支持するものとは独立した可動式フレーム(11)あるいは固定式フレーム(14)を設置して、型枠をセット後、移動可能端面型枠(1)の側面および上部に力を加えられるようにする。可動式フレーム(11)を用いた場合には、移動できる端面型枠(1)を所定の位置に設置した後、その位置に該可動式フレーム(11)を移動させ、ジャッキなどによって、型枠支持材(12)や型枠上部バックアップ部材(17)を介してまた、固定式フレーム(14)を用いた場合には、その位置に、型枠全体を移動させて、固定式フレーム(14)から同様に、移動可能端面型枠(1)の側面および上部に力を加えられるようにする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、長さが連続的に異なるプレキャスト・コンクリートブロックを、長尺部の表面が滑らかな状態で製造することができる。
【0009】
請求項2の発明によれば、複雑な端面形状の場合でも、型枠外しの作業性を確保できる。
【0010】
請求項3あるいは4の発明によれば、端面型枠の移動、コンクリート充填、養生促進のための加温、コンクリートを抜き出すための振動付加に耐えて繰り返し使用な型枠で、隙間からのコンクリートの張り出しなどがなく、十分な寸法精度をもったプレキャストコンクリートブロックを製造することが可能になる。
【0011】
このように、住宅などの基礎工事を現場で凹凸噛合とボルト緊結による組立作業だけで行えるプレキャスト・コンクリートブロックのうち、延長基礎ブロックについて任意の長さのものを、凹凸噛合とボルト緊結のために必要な製品の端部形状の精度を確保しながら、同一の型枠を用いて製造することができ、広い用途にコストを縮減して効率的に対応することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態としては、両方の端面型枠を移動させるものとすることも可能であるが、2つの端面型枠の移動方式のうち、1つは固定端面型枠(18)、もう一方は移動可能端面型枠(1)とする場合について述べる。図2は、端面型枠の移動方式を示す。コンクリート充填時のコンクリートの流れをよくするために、コンクリートブロック使用状態とは逆に、フーチング部型枠(19−2)を上面にして行われる。型枠は、充填されるコンクリートの両側面部を成型するための左右一対の側面型枠(5、5)、前後の両端面部を成型するための端面型枠(1,18)、および下端面を形成する下端面型枠(8)からなり、型枠基盤(20)上におかれる。この型枠において、両側面型枠(5)、固定式の端面型枠(18)および下端面型枠(8)をセット・固定する。側面型枠(5)は、支保工(7)によって支えられる。その後で、移動可能端面型枠(1)を、左右一対の側面型枠(5、5)の間をスライドさせて、製造しようとするコンクリートブロックの長さによって決まる位置にセットする。この移動可能端面型枠(1)の押し込みによる移動には、端面に支持具(10)で3ケ所に力を加えることによって行なう。これによって、端面型枠の位置を正確に決めることができる。なお、lLは、この装置で最大長さのものを作る時の端面型枠の位置を表し、一方、lSは、これよりも長さが短いものを作る時の端面型枠の位置を表す。
【0013】
この移動可能端面型枠(1)が、コンクリート充填後、セット時とは逆の方向に移動するのに妨げとなるような出っ張りを持っている場合には、例えば前記特許文献1に説明されるボルト孔などを同時に成形する付属型枠の出っ張りなどの場合、該端面型枠(1)に出っ張りとなる部分を型枠付属部(2)として取り外し可能な状態で取り付けておき、コンクリート充填後、該端面型枠(1)の移動前に、該型枠付属部(2)を上方に取り外す。該型枠付属部(2)は、たとえば、移動可能端面型枠(1)に接着剤などで仮留めした後、端面型枠上部バックアップ部材(17)を介して上方から力を加えることで支えた状態で、コンクリート充填作業を行う。
【0014】
この端面型枠(1)と側面型枠(5)、あるいは下端面型枠(8)の間には、移動可能端面型枠(1)の移動を阻害なく円滑にするために、移動時にはある程度の隙間が必要であるが、その状態でコンクリート充填を行うと、隙間からコンクリートの張り出しが生じるおそれがある。それが起きないように端面型枠(1)を所定の位置にセット後、図4に示すように、この端面型枠(1)およびそれに取り付けた型枠付属部(2)と、側面型枠(5)および下端面型枠8の間を密着させるように力を加える。そのための方法の1つが、図5に示すような可動式フレーム(11)を用いる方法である。この場合、凸型作業レール(13)上で可動式フレーム(11)を移動して位置を設定した後、ジャッキ(9)を介在させて緊張させて発生させた力を、支保工の端面型枠対応部(12)、端面型枠上部バックアップ部材(17)を介して、移動可能端面型枠(1)の側面および上部に加えて、端面型枠(1)およびそれに取り付けた型枠部分(2)と 側面型枠(5)の間、および下端面型枠(8)の間を密着させた状態で、コンクリート充填および養生の作業を行う。
【0015】
もう1つの方法は図6に示すように、フレーム(14)は固定しておき、台車(16)に載せた型枠全体を凹型作業レール(15)上で移動させて、同じ操作を行うものである。いずれの方法を採用するかは、作業場の条件によって応じて選択できる。
【0016】
この状態でコンクリート充填を行ない、通常の作業通り、養生促進の加温などを行う。この操作は、稼動式フレーム、固定式フレームを用いる場合とも共通である。
【0017】
つぎに、型枠を取り外す時点では、まず、フレームにつけられたジャッキ(9)を弛緩操作して加えられていた力を抜く。その後、コンクリートブロックが型離れしやすいように型枠に震動などを加える。その後、移動式フレーム(11)使用の場合には、フレームを、型枠取りはずしの作業の邪魔にならない位置に移動する。そして、側面型枠(5)を外し、つぎに、移動可能端面型枠(1)に取り付けられた型枠付属部(2)を上方に取りはずす。その後で端面型枠(1)を移動させて、コンクリートブロック(3)を取り外す。固定式フレーム(14)を使用する場合には、型枠全体を移動させた後、同じ作業を行う。
【実施例1】
【0018】
端部の構造が図1に示すような延長基礎プレキャストブロックで長さが1985mmのものを、最大3500mmの長さのものが作れる側面型枠を用いて製造した。端部フーチング面に30mm×30mm×40mm(深さ)のくぼみを形成するために、鋼で作った移動可能端面型枠(1)に、木製の型枠付属部を有機接着材で貼り付けた。また、ボルトナット取り付け作業用のコンクリート表面の凹み部形成のための型枠部材(4−2)は、
木製のものを鋼管製のボルト孔形成用型枠部材(6−2)の先端に取り付けた。移動可能型枠(1)を所定の位置に設置後、型枠支持材(12)として鋼ブロックを、また、型枠上部バックアップ部材(17)として木製のものをおいた後、可動式フレーム(11)を移動可能型枠(1)の存在する場所に移動し、それに取り付けられた9つのジャッキ(8)によって、型枠支持材(12)と上部バックアップ部材(17)に力を加えた。そして、コンクリート充填および養生を行った。以後の作業は0017で述べた通りである。
【実施例2】
【0019】
端部の構造が図1に示すような延長基礎プレキャストブロックで長さが2750mmのものを、最大3500mmの長さのものが作れる側面型枠を用いて製造した。型枠全体は台車に乗せられている。端部フーチング面に30mm×30mm×40mm(深さ)のくぼみを形成するために、鋼で作った移動可能端面型枠(1)に、プラスチック製の型枠付属部を接着材で貼り付けた。また、ボルトナット取り付け作業用のコンクリート表面の凹み部形成のための型枠部材(4−2)は、プラスチック製のものを鋼管製のボルト孔形成用型枠部材(6−2)の先端に取り付けた。移動可能型枠(1)を所定の位置に設置後、型枠支持材(12)として鋼ブロックを、また、型枠上部バックアップ部材(17)としてプラスチック製のものをおいた後、固定フレーム(14)の存在する位置に型枠全体を乗せた台車を移動し、固定式フレーム(14)に取り付けられた9つのジャッキ(8)によって、支保工の端面型枠支持材(12)と上部バックアップ部材(17)に力を加えた。そして、コンクリート充填および養生を行った。以後の作業は0017で述べた通りである。
【産業上の利用可能性】
【0020】
住宅などの基礎工事を、現場での凹凸噛合とボルト緊結による組立作業だけで行えるプレキャスト・コンクリートブロックのうち、延長基礎ブロック(3)について、任意の長さのものを、必要な製品端部形状の精度を確保しながら、同一の型枠を用いて製造することができる。さらに、このコンクリートブロックに限らず、同じ型枠を用いて、端部の形状が複雑で、しかも精度を要するとともに、長さを自由に変更する用途に用いることができ、コスト削減に有効に作用する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】製造しようとするプレキャスト・コンクリートブロック(延長基礎ブロック)の端部形状の例を示す斜視図である。
【図2】端面型枠の移動方式を示す平断面図および側断面図である。
【図3】移動可能端面型枠に取り付ける型枠付属部の例を示す側断面図である。
【図4】型枠を支持するものとは独立して設置したフレームから、ジャッキ(9)によって、型枠支持材(12)や型枠上部バックアップ部材(17)を介して、移動可能端面型枠(1)の側面および上部に力を加える状態を示す断面図である。
【図5】移動可能端面型枠に力をかける方法(可動式フレームを用いる場合)を示す斜視図である。
【図6】移動可能端面型枠に力をかける方法(固定式フレームを用いる場合)を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0022】
1 移動可能端面型枠
2 移動可能端面型枠に取り付ける型枠付属部
3 プレキャスト・コンクリートブロック(延長基礎ブロック)
4−1 ボルトナット取り付け作業用のコンクリート表面の凹み部
4−2 コンクリート表面の凹み部形成のために型枠部材
5 側面型枠
6−1 ボルト孔
6−2 ボルト孔形成用型枠部材
7 支保工
8 下端面型枠
9 ジャッキ
11 可動式フレーム
12 支保工の端面型枠対応部
13 凸型作業レール
14 固定式フレーム
15 凹型作業レール
16 台車
17 端面型枠上部バックアップ部材
18 固定端面型枠
19−1 フーチング
19−2 フーチング部型枠
20 型枠基盤













【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填されるコンクリートの両側面部を成型するための左右一対の側面型枠(5、5)と、同じく該コンクリートの前後両端面部を成型するための端面型枠(1,18)、および下端面型枠(8)からなる型枠において、該端面型枠の少なくとも一方は、前記左右一対の側面型枠(5、5)の間を移動でき任意位置に設定可能な移動可能端面型枠(1)とすることを特徴とする、長さが異なるプレキャスト・コンクリートブロック製造用の装置。
【請求項2】
請求項1の移動可能端面型枠(1)に、上方に取り外しできる型枠付属部(2)を取り付け、コンクリート充填後、該移動可能端面型枠(1)の移動前に、該型枠付属部(2)の取りはずしを行うことを特徴とする、長さが異なるプレキャスト・コンクリートブロック製造用の装置。
【請求項3】
移動可能端面型枠(1)を所定の位置に設置した後、型枠を支持するものとは独立に設置した可動式フレーム(11)を移動させ、該可動式フレーム(11)から、移動可能端面型枠(1)の上部および側面に力を加えられることを特徴とする、請求項1あるいは2の長さが異なるプレキャスト・コンクリートブロック製造用の装置。
【請求項4】
型枠を支持するものとは独立の固定式フレーム(14)の設置場所に、型枠全体を移動させて、固定式フレーム(14)から、移動可能端面型枠(1)の上部および側面に力を加えることを特徴とする特許請求項1あるいは2の長さが異なるプレキャスト・コンクリートブロック製造用の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−54974(P2007−54974A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−239857(P2005−239857)
【出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【出願人】(300057492)
【Fターム(参考)】