説明

長さ多型を有する準種において変異を検出するための方法および材料

本発明は,病原体の核酸において興味の対象である変異の存在または非存在を検出する方法に関し,ここで,興味の対象である変異は,病原体の複数の準種を規定する長さ多型に隣接して位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は,米国特許仮出願60/603,195(2004年8月20日出願)および米国特許仮出願60/603,337(2004年8月20日出願)に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は一般に,病原体における興味の対象である変異の存在または非存在を検出するための方法および物質に関する。本発明はまた,1人の患者からのサンプル中に存在する複数のヒト免疫不全ウイルス(HIV−1)準種の間の変異の存在または非存在を検出するための特定の方法およびプライマーに関する。
【背景技術】
【0003】
病原体の核酸配列はしばしば高い確率で変異し,多様な多型変種を生ずる。例えば,レトロウイルスのレンチウイルス群のメンバーであり,後天性免疫不全症候群(Acquired Immune Deficiency Syndrome;AIDS),あるいはAIDS関連複合体(ARC)の主要な病原因子であるヒト免疫不全ウイルスは,典型的には高頻度の変異を生ずる。HIV−1のRNAゲノムは,HIV−1の複製に必要な蛋白質をコードする種々の遺伝子を含む。これは,他のすべてのレトロウイルスと同様にRNAゲノムを有しており,これはウイルスリバーストランスクリプターゼ(RT)酵素により複製される。RT酵素は,一本鎖ウイルスRNAゲノムをコピーして二本鎖DNA/RNAハイブリッドとし,その結果DNAプロウイルスが宿主細胞ゲノム中に組み込まれる。RT酵素は,通常はポリメラーゼ酵素の"プルーフリーディング"機能を助けてエラーを修復する3’エキソヌクレアーゼ活性を欠失している。したがって,RT酵素は10,000塩基がコピーされる転写ごとに少なくとも1つの誤りを生じ,その結果,HIV−1の高い変異率の原因である誤りが生ずる。
【0004】
HIV−1のRNAゲノムはまた,2つの主要なサブユニット,すなわち,gpl20表面糖蛋白質およびgp41貫膜糖蛋白質からなるエンベロープ糖蛋白質(env)をコードする遺伝子を含む。gp41サブユニットは,HIV−1ウイルスがCD4細胞の細胞外膜に融合することを容易にする貫膜蛋白質をコードする。HIV−1 env蛋白質は,CD4細胞への初期感染に重要な役割を果たすため,HIV−1の細胞への融合を担う蛋白質の相互作用を阻害し,このことによりHIVの感染を阻害することができる薬剤の探索における第1の標的であった。HIV−1 env蛋白質のgp41サブユニットの1つの特定の標的は,7回反復1(HR1)および7回反復2(HR2)ドメインであり,これらはウイルスと細胞膜との融合に必要なコンフォメーション変化を容易にするうえで鍵となる役割を果たすことが見いだされている。多くの抗レトロウイルス薬剤は,HIV−1の細胞への侵入を阻害するために,HIV−1 env蛋白質を標的とするため,HIV−1の薬剤耐性の原因となる多くの変異はこの領域中で生ずる。
【0005】
HIVを治療するために現在利用可能な種々の薬剤は,3つの異なる種類に分類される:ヌクレオシドリバーストランスクリプターゼ阻害剤(NRTI),非ヌクレオシドリバーストランスクリプターゼ阻害剤(NNRTI),およびプロテアーゼ阻害剤(PI)。AIDSを治療するために用いられている現在利用可能な抗レトロウイルス化合物はいくつかの欠点を有しており,これには,一過性のCD4細胞数効果,ウイルス複製の不完全な阻害,処方される投与量における毒性,および耐性型のウイルスの出現が含まれる。組み合わせ療法が登場しているが,多くの患者は,抗レトロウイルス化合物を用いても,完全なウイルス抑制を達成できないか維持できないままである。不完全なウイルス抑制の結果として,HIVウイルスの非常に高い突然変異率(ウイルスRT酵素が誤りを起こしやすい性質のため)およびウイルスの遺伝的可変性と相まって,薬剤に対する感受性が低下した多くのHlV変種が生ずる。例えば,HIVと宿主細胞との融合を阻害する新しい種類の抗HIV剤の最初のものであるエンフビルチド(Enfuvirtide;Enf,以前はT−20と称されていた)を使用すると,gp41(HR1)の第1の7回反復ドメイン中に耐性変異が出現し,これがT−20治療の失敗につながっている。
【0006】
治療的介入の前に,特定の抗レトロウイルス剤に対するHIV−1薬剤耐性に関連した変異を同定することによって,ウイルスが最も高い感受性をもつ薬剤を選択して投与することにより,治療的介入の特定の経過を最適化することができる。変異は,種々の手法によって検出することができる。その最も直接的かつ信頼性のある手法は,ウイルスDNAの配列決定(ジェノタイピング)である。ジェノタイピングの結果に基づいて治療的介入に関連した重要かつ救命的な決定がなされる臨床的ジェノタイピングの場合には,DNAの相補鎖の配列を比較することにより配列決定結果を確認することがさらに重要である。しかし,単一の患者サンプル中に複数の種の病原性ベクターが存在する場合には,ジェノタイピングの有効性を高め,配列結果の双方向確認を得ることが困難である。混合された種の病原性ベクターを含む患者サンプルは複数の変種のDNA配列を含むため,配列決定は,特定の位置に複数の塩基を示し,挿入または欠失変異の場合には,読み枠のシフトのためDNAの領域全体にわたって各位置で複数の塩基を示すであろう。したがって,結果が混乱し,配列の相補鎖の確認およびその配列における臨床的に意義ある変異の同定が妨げられるであろう。したがって,患者サンプル中に複数の種の形で存在する病原性ベクターは,臨床的なジェノタイピングの努力をますます困難性なものとし,臨床的に重要な変異,例えば,特定の治療薬剤に対して耐性のウイルスを生じさせる変異を検出するための診断アッセイを構築することをますます困難なものとする。
【0007】
したがって,臨床の状況における相補鎖確認に適しており,かつ患者のサンプル中に複数の準種の形で存在する病原性ベクター中の,臨床的に重要な変異を検出し同定することができる,より正確かつ信頼性のあるジェノタイピング法を開発することが求められている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
本発明は,複数の準種の病原体を含む患者サンプル中に存在するHIV等の病原体を臨床でジェノタイピングするための改良された方法および材料を提供する。
【0009】
特定の観点においては,本発明は,混合された長さ多型を有する病原体の複数の準種を含むサンプル中に存在する病原体において,興味の対象である変異の存在または非存在を検出する方法および材料に関し,ここで,興味の対象である変異は,長さ多型に隣接して位置する。
【0010】
特定の観点においては,本発明は,混合された準種の病原体を含む患者サンプルにおいて興味の対象である変異の存在または非存在を検出する方法および材料に関し,ここで,興味の対象である変異は,異なる核酸配列長さの準種をもたらす挿入変異または欠失変異などの所定の長さ多型に隣接して位置する。特定の観点においては,本発明は,混合された準種を含む患者サンプル中に存在しうる長さ多型を有するHIV−1ウイルスのジェノタイピングにおける正確性を改良するための方法およびプライマーを提供する。本発明の改良された方法および材料は,感染性疾患,例えばAIDSの治療的介入および治療を改良することができる。
【0011】
本発明の方法およびプライマーは,全HIV−1 env遺伝子の増幅および配列決定からは,治療的介入にはその同定が必須である重要な薬剤耐性を伴う変異の存在を同定し確認するのに必要な信頼性のある相補鎖確認データが得られないという最初の発見の結果として開発された。HIV−1 env遺伝子のgp41領域は,第1の7回反復ドメイン(HR1)および第2の7回反復ドメイン(HR2)を含む。第1の7回反復ドメイン(HR1)のまわりの領域は,高頻度で挿入または欠失変異を受けやすく,その結果HR1ドメイン中に薬剤耐性変異を有し,さらに長さ多型を有する複数の準種を含む,混合されたHIV−1集団が生ずる。単一の患者サンプル中に準種の間で混合された長さ多型が存在することにより,より広い領域をカバーするプライマーを用いて相補鎖の確認配列を得ようとする努力が妨げられる。これは,外側プライマーの1つと目的とする変異との間に生ずる混合長さ多型変異のために,プライマー間の領域に異なる長さの配列を有する相補プライマー伸長産物が生じ,このために重複した読み枠外の配列シグナルが生ずるためである。本発明の方法は,長さ多型を含む領域を含まない,興味の対象である変異の領域を配列決定することにより,ジェノタイピングの信頼性を改良する。プライマーセットは,単独で用いてもよく,または可変の領域を含む二次的プライマーセットと組み合わせて用いて,他の配列決定プライマーを用いては容易に特性決定することができないサンプルについてジェノタイプを確認することができる。
【0012】
本発明の方法は,最初はHIV−1遺伝子に関連して開発されたが,かかる方法は,複数の準種の間で長さ多型を有するあらゆる病原体に適用可能である。したがって,本発明は,HIV−1等の病原体の核酸において,興味の対象である変異の存在または非存在を検出する方法に関し,ここで,興味の対象である変異は,病原体の複数の準種を規定する長さ多型に隣接して位置しており,該方法は,
a)患者サンプルから興味の対象である変異を包含する二本鎖DNAテンプレートを取得し;
b)DNAテンプレートの,興味の対象である変異を含み長さ多型を含まない領域の第1の鎖を配列決定し;
c)DNAテンプレートの,興味の対象である変異を含み長さ多型を含まない領域の第2の鎖を配列決定し;そして
d)第1の鎖の配列を第2の鎖の配列と比較して,興味の対象である変異の配列の相補鎖確認を得る,ことを含む。
【0013】
別の観点においては,本発明は,HIV−1等の病原体の核酸において興味の対象である変異の存在または非存在を検出する方法に関し,ここで,興味の対象である変異は,病原体の複数の準種を規定する長さ多型に隣接して位置しており,該方法は,
a)患者サンプルから興味の対象である変異を包含する二本鎖DNAテンプレートを取得し;
b)DNAテンプレートの,興味の対象である変異および長さ多型の両方を含む第1の領域を増幅し;
c)DNAテンプレートの,興味の対象である変異を含み長さ多型を含まない領域の第1の鎖を配列決定し;
d)DNAテンプレートの,興味の対象である変異を含み長さ多型を含まない領域の第2の鎖を配列決定し;そして
e)第1の鎖の配列を第2の鎖の配列と比較して,興味の対象である変異の配列の相補鎖確認を得ることを含む。
【0014】
さらに別の観点においては,本発明は,HIV−1等の病原体の核酸において興味の対象である変異の存在または非存在を検出する方法に関し,ここで,興味の対象である変異は病原体の複数の準種を規定する長さ多型に隣接して位置しており,該方法は,
a)患者サンプルから興味の対象である変異を包含する二本鎖DNAテンプレートを取得し;
b)DNAテンプレートの,興味の対象である変異を含み長さ多型を含まない第1の遺伝子領域を増幅し;
c)DNAテンプレートの,興味の対象である変異を含みさ多型を含まない領域の第1の鎖を配列決定し;
d)DNAテンプレートの,興味の対象である変異を含みさ多型を含まない領域の第2の鎖を配列決定し;そして
e)第1の鎖の配列を第2の鎖の配列と比較して,興味の対象である変異の配列の相補鎖確認を得ることを含む。
【0015】
本発明の1つの観点においては,興味の対象である変異は,HIVのgp41およびgpl20からなる群より選択される領域に位置する。本発明の別の観点においては,興味の対象である変異は,HIV−1エンベロープ糖蛋白質gp41中に存在する。本発明のさらに別の観点においては,興味の対象である変異は,gp41の36−45位に存在する。
【0016】
別の観点においては,本発明は,本質的に配列番号1のヌクレオチド7329−7614,配列番号1の7388−7549または配列番号1の7492−7522,それらの15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントからなる領域に対応するプライマー伸長産物を生成することができるオリゴヌクレオチドプライマーに関する。
【0017】
別の観点においては,本発明は,配列番号31,配列番号32,配列番号33,配列番号34,配列番号35,およびそれらの15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントからなる群より選択される,フォワードプライマーとリバースプライマーとの組み合わせに関する。
【0018】
1つの観点においては,本発明は,HIV−1 env蛋白質のgp41サブユニットをジェノタイピングするための方法およびプライマーに関し,該方法は,HIV−1 env蛋白質のgp41サブユニットのHR1およびHR2ドメインの両方を包含する領域の配列を決定することを含む。
【0019】
別の観点においては,本発明は,配列番号2,配列番号3,配列番号4,配列番号5,配列番号6,配列番号7,配列番号8,配列番号9,配列番号10,配列番号11,配列番号12,配列番号13,配列番号14,配列番号15,配列番号16,配列番号17,配列番号18,配列番号19,配列番号20,配列番号21,配列番号22,配列番号23,配列番号24,配列番号25,配列番号26,配列番号27,配列番号28,配列番号29,配列番号30,およびそれらの15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントの1またはそれ以上からなる群より選択されるプライマーを含む。
【0020】
別の観点においては,本発明は,HIV−1のHR1およびHR2ドメインを包含する領域を囲む双方向配列決定プライマーのセットを含むプライマーの組み合わせに関し,ここで,プライマーの組み合わせは,
(a)配列番号2,配列番号3,配列番号4,配列番号5,配列番号6,配列番号7,配列番号8,配列番号9,配列番号10,配列番号11,配列番号12,配列番号13,配列番号14,およびそれらの15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントの1またはそれ以上からなる群より選択されるフォワードプライマー;および
(b)配列番号15,配列番号16,配列番号17,配列番号18,配列番号19,配列番号20,配列番号21,配列番号22,配列番号23,配列番号24,配列番号25,配列番号26,配列番号27,配列番号28,配列番号29,配列番号30,およびそれらの15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントの1またはそれ以上からなる群より選択されるリバースプライマー
を含む。
【0021】
各群から選択された1またはそれ以上のプライマーを逆転写,増幅および配列決定プライマーとして用いることができる。
【0022】
プライマーは,適当なジェノタイピングキット中に包装することができる。そのようなキットは,プライマーに加えて,RNase阻害剤,リバーストランスクリプターゼ,ポリメラーゼ,および/またはDNTPおよびddNTP原料等の試薬を含んでいてもよい。好ましい観点においては,本発明は,病原体の核酸において興味の対象である変異の存在または非存在を検出するためのキットに関し,ここで,興味の対象である変異は,病原体の複数の準種を規定する長さ多型に隣接して位置しており,該キットは,DNAテンプレートの興味の対象である変異を含む領域の第1の鎖を配列決定するための第1のプライマー,およびDNAテンプレートの興味の対象である変異を含む領域の第2の鎖を配列決定するための第2のプライマーを含み,ここで,第1のプライマーおよび第2のプライマーにより規定される領域は長さ多型を含まない。
【0023】
プライマーは,本発明の方法において適宜用いられる。この方法にしたがって,HIV−1ウイルスを含むと疑われるサンプルを処理してウイルスRNAを回収する。回収されたウイルスRNAを逆転写してDNAとし,これを本発明のプライマーを用いて配列決定する。得られた配列情報を用いて,試験したウイルスのジェノタイプを確立する,すなわち,サンプル中のウイルスがいずれのサブタイプ,種または準種に属するかを判定するか,または興味の対象である変異の存在または非存在を判定することができる。本発明の方法は,多数のウイルス種を評価するよう設計されたジェノタイピング法と平行して行うことができる。あるいは,これまでに感染性病原体をジェノタイピングする目的で信頼性のある配列情報を得ようとする試みが失敗している対象物を有するサンプルについて,本発明の方法を実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
発明の詳細な説明
本明細書において用いられる用語は当該技術分野において標準的なものであるが,明確性を確実にするために,ある種の用語について以下に定義を記載する。
【0025】
単位,識別番号,および記号は,SIに許容された形を示す。特に記載しない限り,核酸は左から右に5’から3’方向に記載される。本明細書に記載される数値範囲は,その範囲を規定する数値を含み,規定される範囲内の各整数を含みかつ支持する。アミノ酸は,その一般的に知られる3文字記号で表してもよく,the IUPAC−IUBMB Nomenclature Commissionにより推奨される1文字記号で表してもよい。同様に,ヌクレオチドは,その一般的に許容される1文字コードで表すことができる。特に記載しない限り,"a"または"an"との用語は,"・・・の少なくとも1つ"を意味すると解釈すべきである。本明細書において用いられる節の見出しは,整理の目的のためのみであり,記載される主題を制限するものと解釈してはならない。本明細書において引用されるすべての文献または文献の一部,例えば,限定されないが,特許,特許出願,論説,書籍,および論文は,すべての目的のために,明示的に本明細書の一部としてここに引用する。本出願中でアミノ酸または核酸配列の不一致がある場合には,図面にしたがう。
【0026】
本明細書において用いる場合,"病原体"との用語は,宿主生物の外に由来するかまたは外で最初に生成されるが,宿主生物中に存在する感染因子または外来ベクターを意味し,例えば,ウイルス,細菌,真菌またはプロトゾア生物が含まれる。本発明の方法および試薬は,宿主生物中に複数の準種の形で存在する病原体のジェノタイピングに有利に用いられ,ここで,準種は,準種の間で長さ多型を生じさせる,長さ多型の1またはそれ以上のアレルを有することを特徴とする。
【0027】
本明細書において用いる場合,"準種(quasispecies)"との用語は,代替のまたは追加の遺伝子配列の取り込みまたは欠失の結果として,異なる遺伝子配列を含む自己複製型生物の種を意味し,正しい場合も誤りである場合も含まれる。準種は,例えば,既に存在する他の遺伝子配列の遺伝子のコピーのプロセスの結果として生じうる。準種は,典型的には,生物,例えば,細菌およびウイルスなどの感染性病原体のRNAまたはDNAなどの自己複製型高分子の進化プロセスの状況中で生ずる。本明細書において用いる場合,"準種"との用語は,変種(variant species)および変種が由来する野生型種の両方を含む。
【0028】
本明細書において用いる場合,"長さ多型"との用語は,遺伝子配列中の,異なる長さの核酸配列を有する準種を生ずる任意の変異を意味する。長さ多型としては,例えば,限定されないが,異なる核酸配列長さを生ずる挿入変異,欠失変異および,置換変異が挙げられる。複数の準種を含むサンプルの自動化配列決定においては,配列決定の軌跡は,2つの異なる配列(すなわち,参照配列および長さ多型を含む配列)からのデータを含むこととなり,所与のヌクレオチド塩基位置において複数のピークが重ね合わされる。本発明の文脈において,"病原体の複数の準種を規定する長さ多型"との語句は,その遺伝子座に関して病原体の複数の準種を生ずる長さ多型が存在する遺伝視座を意味する。長さ多型とは,異なる準種を生ずる病原体の種々のアレルまたは種を表し,その種に関して長さ多型が規定される"野生型"または"参照"種を含む。
【0029】
本明細書において用いる場合,"隣接する"との用語は,興味の対象である変異の,長さ多型に対する位置について用いられる。興味の対象である変異は,その位置が,標準的な増幅および/または配列決定プライマーが興味の対象である変異と長さ多型との両方を囲むのに十分に近接している場合,長さ多型に"隣接"していると考えられる。興味の対象である変異と長さ多型との間の正確な距離は重要ではないが,外側プライマーの一方と目的とする変異との間に混合長さ多型変異が生ずる場合には,重なり合ったフレーム外の配列が生成するために,配列の質の低下を引き起こす。本発明の方法および物質は,そのような重なり合ったフレーム外配列を生成する任意のまたはすべての長さ多型を含まないようにすることができるプライマーを用いる場合に,有利に利用することができる。
【0030】
本明細書において用いる場合,"サンプル"との用語は,複数の準種を有する病原体からの核酸被検物質を含むかもしれない,患者または患者の群から得られる生物学的サンプルを表す。患者サンプルには,個人または複数の個人から単離された組織または液体のサンプル,例えば,限定されないが,皮膚,血漿,血清,脊髄液,リンパ液,滑液,尿,涙,血液細胞,臓器,腫瘍,およびインビトロ細胞培養構成物のサンプル(例えば,限定されないが,細胞培養培地における細胞の成長から得られるコンディションド培地,組換え細胞および細胞成分)が含まれる。
【0031】
本明細書において用いる場合,"増幅"との用語は,反応混合物中で,1またはそれ以上の特定の遺伝子または遺伝子フラグメントの量を他の遺伝子に対して増加させるプロセスを意味する。多くの増幅方法が当業者に利用可能であり知られている。そのような方法は,典型的には,ポリメラーゼ連鎖反応(またはPCR)の技術または他の何らかのプライマー伸長に基づく方法論を利用する。PCR法は,例えば,米国特許4,683,194,4,683,195および4,683,202,および4,800,159(本明細書の一部としてここに引用する)に記載されている。この方法はまた,Current Protocols in Molecular Biology,(Eds.Ausubel,F.M.et al.,(JohnWiley&Sons;1995)),K.Mullis,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.,51:263−273(1986);およびC.R.Newton&A.Graham,Introduction to Biotechniques:PCR,2nd Ed.,Springer−Verlag(New York:1997)(その内容を本明細書の一部としてここに引用する)などの教科書にも説明されている。PCRは,デュープレックスDNA(ここで,コーディング鎖は"センス鎖"と称され,その相補鎖は"アンチセンス鎖"と称される)の各相補鎖に対して1つずつのプライマーの対を使用することを含み,これらは遺伝子中の目的とする領域の両側に位置する部位でハイブリダイズする。次に反復サイクルにおいて鎖伸長重合を行って,目的とする領域のコピー数を指数関数的に増加させる。簡単にまとめると,PCR反応の第1の工程においては,二本鎖分子を変性させるために,サンプルの核酸分子を一時的に加熱し,次に冷却する。フォワードおよびリバースプライマーは,増幅反応混合物中に,サンプル標的と比較して過剰の濃度で存在する。サンプルをハイブリダイゼーションおよび重合が生ずる条件下でインキュベーションすると,プライマーは,増幅することが望まれる配列の領域の3’側の位置で,その増幅が望まれる配列の相補体である核酸分子の相補鎖にハイブリダイズする。ハイブリダイゼーション後,プライマーの3’末端がポリメラーゼにより伸長される。プライマーの伸長により,所望の核酸サンプル標的の相補体の正確な配列を有するDNA分子が合成される。PCR反応は,所望の核酸配列を指数関数的に増幅することができ,各サイクルで所望の配列を有する分子の数がほぼ2倍になる。すなわち,ハイブリダイゼーション,重合,および変性のサイクルを進めることにより,所望の核酸分子の濃度の指数関数的な増加を達成することができる。増幅されたポリヌクレオチドは,配列決定反応のテンプレートとして用いることができる。Gelfandらは,この増幅プロセスで有用な,生物Thermus aquaticusに由来する熱安定性酵素,"Taqポリメラーゼ"を記載する(米国特許4,889,818;5,352,600;および5,079,352(本明細書の一部としてここに引用する))。別の増幅手法,例えば,NASBA,3SR,Qbレプリカーゼ,および分枝鎖増幅が当業者に知られており利用可能である。"RT−PCR"との用語は,一般に増幅を表し,例えば,RNA配列の増幅を進める逆転写工程を含む。
【0032】
本明細書において用いる場合,"配列決定"との用語は,遺伝子の少なくとも一部におけるヌクレオチドの順番を決定することを意味する。よく知られる配列決定の方法は"チェーンターミネーション"法であり,これはSangerら(PNAS(USA)74(12):5463−5467(1977))により最初に記載され,Sequenase(登録商標)2.0の製品説明(Amersham Life Sciences,Cleveland)に詳細に説明されており,最近では欧州特許EP−B1−655506(この内容をすべて本明細書の一部としてここに引用する)に詳細に述べられている。この方法においては,配列決定すべきDNAを単離し,1本鎖とし,4つの容器に入れる。各容器には,DNA鎖の複製に必要な成分が入っており,これは,プライマーと配列決定すべきDNAとの間のハイブリダイゼーションおよびハイブリダイズしたプライマーの鎖伸長を促すバッファ中に,テンプレート依存的DNAポリメラーゼ,配列決定すべきDNAの配列決定の開始部位に相補的な短いプライマー分子,および塩基A,C,GおよびTのそれぞれのデオキシリボヌクレオチド三リン酸を含む。さらに,各容器は,あるタイプのジデオキシヌクレオチド三リン酸,例えば,ジデオキシアデノシン三リン酸("ddA"),ジデオキシグアノシン三リン酸("ddG"),ジデオキシシトシン三リン酸("ddC"),ジデオキシチミジン三リン酸("ddT")を少量含む。それぞれの容器において,単離されたDNAの一部がそれぞれプライマーとハイブリダイズする。次に,プライマーを,1回に1塩基ずつ伸長して,テンプレートDNAに相補的な新たな核酸ポリマーが形成される。伸長しつつあるポリマー中にジデオキシヌクレオチドが取り込まれると,ポリマーはさらなる伸長が妨げられる。したがって,各容器において,特定の長さの伸長されたポリマーの組が形成され,これはその容器内のジデオキシヌクレオチドに対応するヌクレオチドの位置を示す。次にこれらのポリマーの組をゲル電気泳動を用いて評価して,配列を決定する。
【0033】
ポリヌクレオチドの配列決定は,一本鎖DNAを用いて行っても二本鎖DNAを用いて行ってもよい。プライマー伸長のためにポリメラーゼを使用する場合には,一本鎖DNAテンプレートが必要である。好ましい態様においては,本発明の方法は,配列決定結果の確証的な反対鎖確認を得るために,二本鎖DNAを用いる。二本鎖DNAテンプレートは,アルカリ変性または熱変性を用いて2つの相補DNAテンプレートを分離して一本鎖として,配列決定することができる。重合の間に,DNAテンプレートの各分子は,相補的プライマーにより伸長された鎖として1回コピーされる。熱安定性DNAポリメラーゼ(例えば,Tag,Bst,TthまたはVentDNAポリメラーゼ)を使用することにより,配列決定反応において,熱変性,プライマーアニーリング,伸長およびジデオキシターミネーションの交互周期を通して,二本鎖DNAテンプレートを反復循環させることができる。この循環プロセスは,少量の入力DNAテンプレートを効率的に増幅して,配列決定のために十分なテンプレートを生成する。
【0034】
配列決定はまた,PCR増幅反応生成物に対して直接行うことができる。増幅されたDNAのクローニングは比較的簡単であるが,PCR産物の直接配列決定は,配列情報の取得を容易にし迅速にする。PCR反応が別々の増幅産物を生ずるかぎり,これを直接配列決定に適用することができる。PCR産物をクローニングして,単一クローンを配列決定する方法と比較して,PCR産物の配列を直接分析するアプローチは一般に,TaqDNAポリメラーゼの比較的高い誤差率に影響されない。誤差は分子の全体にわたって確率的に分布していると考えられる。すなわち,圧倒的多数の増幅産物は,正しい配列から構成されるであろう。PCR産物の直接配列決定は,クローニングしたPCR産物の配列決定と比較して,以下の利点を有する:(1)これは生きた細胞の使用に依存しない簡単な酵素プロセスであるため,容易に標準化することができる;および(2)各サンプルについて一方の配列を決定するだけでよい。
【0035】
本明細書において用いる場合,"核酸","ポリヌクレオチド",および"オリゴヌクレオチド"との用語は,プライマー,プローブ,検出すべきオリゴマーフラグメント,オリゴマー対照および未標識ブロッキングオリゴマーを表し,ポリデオキシリボヌクレオチド(2−デオキシ−D−リボースを含む),ポリリボヌクレオチド(D−リボースを含む),およびプリンまたはピリミジン塩基のN−グリコシドである他の任意のタイプのポリヌクレオチド,または修飾されたプリンまたはピリミジン塩基の総称である。"核酸","ポリヌクレオチド"および"オリゴヌクレオチド"との用語の間では,長さ上の区別を意図するものではなく,これらの用語は,特に明示しないかぎり,同等であり代替可能である。これらの用語は,分子の一次構造のみを表す。すなわち,これらの用語は,二本鎖および一本鎖DNA,ならびに二本鎖および一本鎖RNAを含む。オリゴヌクレオチドは,指定されたヌクレオチド配列の領域に対応した,少なくとも約6ヌクレオチド,好ましくは少なくとも約10−12ヌクレオチド,より好ましくは少なくとも約15−25ヌクレオチドの配列から構成される。核酸はまた,標準的なヌクレオチド塩基をヌクレオチドアイソフォーム類似体で置き換えてもよく,これには,例えば,限定されないが,標準的な塩基とおおよそ許容範囲内でハイブリダイズすることができ,相補的アイソフォーム類似体塩基と優先的にハイブリダイズするであろうイソCおよびイソG塩基が含まれる。多くのそのようなアイソフォーム塩基が例えば,www.idtdna.com.に記載されている。本明細書において参照ヌクレオチド配列に対して核酸配列を規定するために用いる場合,"対応する"との用語は,参照配列のすべてまたは一部とマッチするヌクレオチド配列,および参照配列のすべてまたは一部の相補体であるヌクレオチド配列を意味する。
【0036】
オリゴヌクレオチドは,任意の現存する配列または天然の配列から必ずしも物理学的に分離されていなくてもよいが,化学合成,DNA複製,逆転写またはこれらの組み合わせなどの任意の方法により生成することができる。"オリゴヌクレオチド"または"核酸"との用語は,その起源または操作の理由により,以下のゲノムDNAまたはRNA,cDNA,半合成の,または合成の起源のポリヌクレオチドを意図する:(1)それが天然に関連しているポリヌクレオチドのすべてまたは一部と関連しておらず;および/または(2)それが天然に連結しているポリヌクレオチドと異なるポリヌクレオチドに連結しており;および(3)天然に見いだされない。
【0037】
モノヌクレオチドを,1つのモノヌクレオチドペントース環の5’リン酸がその隣の3’酸素にホスホジエステル結合により1つの方向で結合するように反応させてオリゴヌクレオチドを作成するため,オリゴヌクレオチドの末端は,その5’リン酸がモノヌクレオチドペントース環の3’酸素に結合していない場合には"5’末端"と称され,その3’酸素が次のモノヌクレオチドペントース環の5’リン酸に結合していない場合には,"3’末端"と称される。本明細書において用いる場合,核酸配列は,より長いオリゴヌクレオチドの内部にある場合であっても,5’および3’末端を有する場合がある。
【0038】
2つの異なる重複しないオリゴヌクレオチドが同じ直鎖状の相補的核酸配列の異なる領域にアニーリングし,一方のオリゴヌクレオチドの3’末端が他方の5’末端の方向を向く場合,前者を"上流の"オリゴヌクレオチドと称し,後者を"下流の"オリゴヌクレオチドと称する。
【0039】
本明細書において用いる場合"HR1"との用語は,HIV−1 env蛋白質のgp41サブユニットの7回反復1(HR1)領域を表し,配列番号1のヌクレオチド7388−7549で表される。
【0040】
本明細書において用いる場合,特定のヌクレオチド配列に関して,"本質的に〜からなる"との用語は,特定の配列,および所定の長さ多型を含まない任意の追加の配列を意味する。例えば,本質的にHIV−1 env gp41領域のHR1ドメインからなる領域は,HR1(配列番号1のヌクレオチド7388−7549)のすべてまたは一部,および隣接する5’および3’領域の任意の追加のヌクレオチド配列を含み,予想患者集団の間で十分に高い頻度で生じて配列決定結果の信頼性に不利に影響するかもしれない,HR1ドメインの外側に位置する長さ多型を含まない。そのような長さ多型は,例えば,おおよそgp41ドメインの最初の25ヌクレオチドまたは最後の60ヌクレオチド中に存在しうる。本明細書において用いる場合,本質的にHR1ドメインからなる領域は,好ましくは,配列番号1のヌクレオチド7329−7614の領域,またはその15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントに対応する。より好ましくは,本質的にHR1ドメインからなる領域は,配列番号1のヌクレオチド7388−7549の領域またはその15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントに対応する。本質的にHR1ドメインからなる領域はまた,配列番号1のヌクレオチド7492−7522の領域またはその15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントに対応してもよい。"本質的に・・・からなる"との用語は,所定の長さ多型を含まない特定の配列を規定するために用いられるため,本発明は,知られているかまたは知られていない他の長さ多型を含有する配列を含んでいてもよいことが理解されるであろう。本発明の有用性は,主として,長さ多型が病原性ベクターの新たな準種を引き起こし,準種が患者集団中に臨床的失敗率が許容できないほど十分に高い頻度で生ずる状況において生ずる。すなわち,本発明は,配列決定された興味の対象である変異を含む領域が,"所定の長さ多型を含まない"がなお他の長さ多型,例えば,未知であるか,または患者集団の中で臨床的な失敗の確率が許容できないほど高いと判定されないような頻度で生じない長さ多型を含んでいてもよいことを企図する。本発明の目的のためには,所定の長さ多型により規定されるベクターの準種からの配列の相補鎖確認を可能とするため,配列決定される領域からただ1つの所定の長さ多型が除かれていてもよい。
【0041】
本明細書において,参照位置に対するプライマーの位置に関して用いる場合,"包含する"または"囲む"との用語は,PCR伸長プライマーが特定のヌクレオチドまたはヌクレオチドの領域を含むプライマー伸長産物を生成するように配置されることを意味する。プライマーは,参照される位置のすべてまたは一部に対応するかまたはこれに相補的なヌクレオチド配列を含むことができる。あるいは,プライマーは,参照される位置の3’側の領域に相補的であってもよい。
【0042】
"プライマー"との用語は,2以上のプライマーを表してもよく,精製した制限酵素消化産物におけるように天然に生じるオリゴヌクレオチドや,または合成により製造されるオリゴヌクレオチドを表してもよい。これは,核酸鎖に相補的なプライマー伸長産物の合成が触媒される条件下におかれたとき,相補鎖に沿った合成の開始点として作用することができる。そのような条件としては,適当なバッファ("バッファ"には,補因子であるもの,またはpH,イオン強度等を変更する代替物が含まれる)中の,適当な温度における,4つの異なるデオキシリボヌクレオシド三リン酸および重合を誘導する試薬,例えばDNAポリメラーゼまたはリバーストランスクリプターゼの存在が含まれる。
【0043】
プライマーは,増幅の効率を最大にするためには,好ましくは1本鎖であるが,あるいは二本鎖であってもよい。二本鎖の場合,伸長産物を調製するためにプライマーを用いる前に,まずこれを処理してその鎖を分離する。好ましくは,プライマーはオリゴデオキシリボヌクレオチドである。プライマーは,重合用試薬の存在下で伸長産物の合成をプライミングするのに十分な長さでなければならない。プライマーの正確な長さは,多くの因子,例えば,温度およびプライマーの起源および使用方法によって異なるであろう。例えば,標的配列の複雑性に依存して,オリゴヌクレオチドプライマーは,典型的には10−50,好ましくは15−25ヌクレオチドを含むが,より多いかまたは少ないヌクレオチドを含んでいてもよい。短いプライマー分子は一般に,テンプレートと十分に安定なハイブリッド複合体を形成するために,低い温度を必要とする。
【0044】
本明細書において用いる場合,"伸長プライマー"との用語は,テンプレート配列に相補的であり,配列にハイブリダイズして,ポリメラーゼ連鎖反応条件下で配列を伸長してプライマー伸長産物を生成することができるポリヌクレオチド配列を意味する。
【0045】
2つの核酸配列に関して用いる場合,"相補体"およびその関連する形容詞形である"相補的な"との用語は,2つの核酸配列を逆平行の関係で並列させたときに(一方の配列の5’末端が他方の配列の3’末端と対になる),配列の対応するGヌクレオチド塩基とCヌクレオチド塩基とが対となり,対応するAヌクレオチド塩基とTヌクレオチド塩基とが対になることを意味する。一般には天然の核酸中に見いだされないある種の塩基を本発明の核酸中に含めてもよく,これには,例えば,イノシンおよび7−デアザグアニンがある。
【0046】
本明細書において用いる場合,"アレル"との用語は,多型の遺伝子座におけるヌクレオチド配列の特定のバージョンを意味する。
【0047】
本明細書において用いる場合,"多型部位"との用語は,ある集団中で変動する遺伝子座中の所与のヌクレオチド位置を意味する。
【0048】
本明細書において用いる場合,"遺伝子座"との用語は,DNA配列における,または転写されたDNA配列に由来しウイルス粒子中にパッケージングされた対応するRNA鎖における,ヌクレオチドまたはヌクレオチドの領域の特定の位置または配置を意味する。
【0049】
アデノシン,シトシン,グアニンおよびチミンのヌクレオチドは,それぞれ1文字表記A,C,G,およびTにより表される。縮重プライマーを表記する場合には,記号RはGまたはAのいずれかを表し,記号YはT/UまたはCのいずれかを表し,記号MはAまたはCのいずれかを表し,記号KはGまたはT/Uのいずれかを表し,記号SはGまたはCのいずれかを表し,記号WはAまたはT/Uのいずれかを表し,記号Bは"A以外",記号Dは"C以外",記号Hは"G以外",記号Vは"T/U以外"を表し,記号Nは任意のヌクレオチドを表す。本出願の明細書および特許請求の範囲においては,縮重プライマーとは,塩基の選択のすべての組み合わせを表し,DNAまたは対応するRNA配列(すなわち,TがUで置き換えられている)のいずれをも表す。すなわち,縮重プライマーは,単一の種,またはその選択の範囲内の2つの種の混合物,またはその選択の範囲内の3つの種の混合物,および同様にしてすべての可能な組み合わせを含む混合物を表すことができる。アイソフォームヌクレオチド塩基は,当業者に一般に許容されている命名法を用いて表す。
【0050】
本明細書において用いる場合,"オリゴヌクレオチドプライマー"との用語は,4以上のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドから構成される分子を意味する。その正確な長さは,オリゴヌクレオチドプライマーの究極的な機能および用途に関連する多くの因子,例えば,アニーリング反応の温度,プライマーの起源および組成によって異なるであろう。増幅プライマーは,重合用の試薬の存在下で伸長産物の合成をプライミングするのに十分な長さでなければならない。オリゴヌクレオチドプライマーは,核酸鎖に相補的なプライマー伸長産物の合成を誘導する条件下におかれたときに,合成の開始点として作用することができる。この条件としては,適当な温度およびpHにおける,DNAポリメラーゼ等の誘導試薬およびヌクレオチドの存在が挙げられる。好ましい態様においては,プライマーは,誘導試薬の存在下で特定の配列から伸長産物の合成をプライミングするのに十分な長さの一本鎖オリゴデオキシリボヌクレオチドである。本発明の1つの観点においては,オリゴヌクレオチドプライマーは,約10−約50ヌクレオチドの長さ,好ましくは約15−約30ヌクレオチドの長さであるが,プライマーはより多くのまたは少ないヌクレオチドを含んでいてもよい。オリゴヌクレオチドプライマーは,一般に,少なくとも15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,または25ヌクレオチドの長さである。より好ましくは,プライマーは約20−25ヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドプライマーの感度および特異度は,プライマーの長さおよびテンプレート核酸の所与のサンプル中における配列のユニークさにより決定される。短すぎるプライマーは,例えば,広範な種類の配列に対する非特異的結合を示すかもしれない。
【0051】
本発明において用いられるオリゴヌクレオチドプライマーはまた,ユニバーサルプライマーを含んでいてもよい。ユニバーサルプライマーは,ユニバーサルプライマーに相補的な配列を含む標準的なベクター中に挿入されたポリヌクレオチド配列を増幅し配列決定するために便利に用いられる。ユニバーサル配列決定プライマーは当業者にはよく知られており,例えば,T7,SP6,M13(−40),M13(−20),およびM13/pUCと称されるプライマーが挙げられる。増幅プライマーは,増幅産物(アンプリコン)がユニバーサルプライマー部位を取り込むように,ユニバーサルプライマーの相補体を含むよう設計することができ,このことにより,次に相補的ユニバーサル配列決定プライマーを用いて配列決定することが容易になる。
【0052】
本発明のプライマーはまた,プライマー配列と興味の対象である配列との間にランダムな追加の配列を含ませて,より正確な配列決定を容易にしてもよい。典型的には配列の最初の10−50塩基対は読めないため,10−50塩基対のランダム配列を付加することにより,重要な配列を最初の読めない配列の下流にシフトさせて,目的とする配列を配列の正確な読みが得られる領域に配置することができる。
【0053】
"逆転写"との用語は,RNA分子に相補的なDNAを生成するプロセスを意味し,一般に,リバーストランスクリプターゼ酵素を用いて行う。プライマーを用いて重合を開始することができ,このプライマーは,後にPCR増幅に用いるプライマー対の1つであってもよい。次に,RNA分子をコピーされたDNA("cDNA")から分離するか,または酵素のRNAseH活性により分解して,テンプレート依存性DNAポリメラーゼによってcDNAの第2の鎖が生成されるようにする。この方法は,"Current Protocols in Molecular Biology",Eds.Ausubel,F.M.et al,(John Wiley&Sons;1995)(その内容を本明細書の一部としてここに引用する)のユニット3.7および15.4に開示されている。
【0054】
本発明の実施においては,特に記載しないかぎり,当業者の技術の範囲内である分子生物学,微生物学,組換えDNA手法,オリゴヌクレオチド合成の慣用の手法を利用することができる。そのような手法は,文献にすべて説明されている。酵素反応および精製手法は,製造元の仕様書にしたがって,または当該技術分野に一般に確立されているように,または本明細書に記載されるようにして,行うことができる。上述の手法および手順は,一般に,当該技術分野においてよく知られる慣用の方法にしたがって,および本明細書の全体に引用されるか説明される種々の一般的および特定の文献にしたがって実施する。例えば,Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989));Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,ed.,1984);Nucleic Acid Hybridization(B.D.Hames&S.J.Higgins,eds.,1984);A Practical Guide to Molecular Cloning(B.Perbal,1984);およびMethods in Enzymologyのシリーズ(Academic Press,Inc.)を参照(これらのすべての内容を本明細書の一部としてここに引用する)。
【0055】
本発明の方法
本発明は,異なる所定の長さ多型に隣接する興味の対象である変異の存在または非存在を検出する方法に関する。本発明の方法および試薬は,長さ多型について複数の準種のベクターを含むかもしれない患者サンプルにおいて,感染性病原体等の外来ベクターのポリヌクレオチド配列を得るために最も有利に用いることができる。単一の患者サンプル中に混合された準種の長さ多型が存在すると,配列決定された領域が長さ多型を包含する場合に,ベクターの相補的な反対鎖DNAから配列決定結果を確認することが妨げられる。一般に,本発明の方法は,興味の対象である変異に関連するが隣接する所定の長さ多型を含まない領域の両方の相補鎖を選択的に配列決定し,そして相補鎖の配列を比較して,各鎖の配列がすべてのヌクレオチド塩基において他方の鎖と相補的であることを確認することを含む。
【0056】
本発明の方法は最初にHIV−1遺伝子に関して開発されたが,かかる方法は,複数の準種の間で長さ多型を有するあらゆる病原体にもやはり適用することができる。したがって,本発明は,HIV−1等の病原体の核酸における,興味の対象である変異の存在または非存在を検出する方法に関し,ここで,興味の対象である変異は,病原体の複数の準種を規定する長さ多型に隣接して位置する。この方法は,
a)患者サンプルから興味の対象である変異を包含する二本鎖DNAテンプレートを取得し;
b)DNAテンプレートの,興味の対象である変異を含み長さ多型を含まない領域の第1の鎖を配列決定し;
c)DNAテンプレートの,興味の対象である変異を含み長さ多型を含まない領域の第2の鎖を配列決定し;そして
d)第1の鎖の配列を第2の鎖の配列と比較して,興味の対象である変異の配列の相補鎖確認を得ることを含む。工程(b)および(c)の配列決定は,外来ベクターの特定の領域の遺伝子配列情報を与えることができる任意の適当なDNAテンプレートを用いて行うことができる。
【0057】
別の観点においては,本発明は,HIV−1等の病原体の核酸において,興味の対象である変異の存在または非存在を検出する方法に関し,ここで,興味の対象である変異は,病原体の複数の準種を規定する長さ多型に隣接して位置する。この方法は,
a)患者サンプルから興味の対象である変異を包含する二本鎖DNAテンプレートを取得し;
b)DNAテンプレートの,興味の対象である変異および長さ多型の両方を含む第1の領域を増幅させ;
c)DNAテンプレートの,興味の対象である変異を含み長さ多型を含まない領域の第1の鎖を配列決定し;
d)DNAテンプレートの,興味の対象である変異を含み長さ多型を含まない領域の第2の鎖を配列決定し;そして
e)第1の鎖の配列を第2の鎖の配列と比較して,興味の対象である変異の配列の相補鎖確認を得る,ことを含む。この方法においては,増幅工程は興味の対象である変異および長さ多型を含み,長さ多型が排除されるのは配列決定工程(c)および(d)中である。
【0058】
さらに別の観点においては,本発明は,HIV−1等の病原体の核酸において興味の対象である変異の存在または非存在を検出する方法に関し,ここで,興味の対象である変異は,病原体の複数の準種を規定する長さ多型に隣接して位置する。この方法は,
a)患者サンプルから興味の対象である変異を包含する二本鎖DNAテンプレートを取得し;
b)DNAテンプレートの,興味の対象である変異を含み長さ多型を含まない第1の遺伝領域を増幅し;
c)DNAテンプレートの,興味の対象である変異を含み長さ多型を含まない領域の第1の鎖を配列決定し;
d)DNAテンプレートの,興味の対象である変異を含み長さ多型を含まない領域の第2の鎖を配列決定し;そして
e)第1の鎖の配列を第2の鎖の配列と比較して,興味の対象である変異の配列の相補鎖確認を得る,ことを含む。この態様においては,長さ多型が排除されるのは増幅工程においてであり,増幅された領域または増幅された領域の一部を配列決定する次の行程も長さ多型を含まない。
【0059】
本発明の1つの観点においては,興味の対象である変異は,HIVのgp41およびgpl20からなる群より選択される領域中に位置する。本発明の別の観点においては,興味の対象である変異は,HIV−1エンベロープ糖蛋白質gp41中に位置する。本発明のさらに別の観点においては,興味の対象である変異は,gp41の36−45位に位置する。
【0060】
上述の態様により例示されるように,本発明の種々の態様の共通の特徴は,配列決定されるDNAの領域中に長さ多型が含まれないようにして,次に,第1の鎖配列と第2の鎖配列とを比較して,異なる核酸長さを有する複数の長さ多型準種の存在の結果として得られる混乱した結果なしに,興味の対象である変異の配列の相補鎖確認を可能とすることにある。当業者には,配列決定工程の前に種々の方法を利用して,長さ多型を含まない配列データを与えることができるDNAテンプレートを用意しうることが理解されるであろう。
【0061】
DNAの起源
本発明の1つの観点においては,この方法は,まず,患者サンプルから興味の対象である変異を包含する二本鎖ポリヌクレオチドテンプレートを取得することを含む。二本鎖ポリヌクレオチドテンプレートは,最初はゲノムDNAまたはゲノムDNAのフラグメントを含むであろう。このテンプレートは,興味の対象である変異のみならず,複数の準種を生ずる長さ多型を含む領域も包含するであろう。
【0062】
二本鎖ポリヌクレオチドテンプレートは,典型的には,DNAを含む患者サンプルを,サンプル中のすべてまたは一部のDNAをオリゴヌクレオチドプライマーとのハイブリダイゼーションについてアクセス可能とするように処理することにより,患者サンプルから調製される。例えば,溶解し,遠心分離により細胞破片を除き,蛋白質分解性の分解によりDNAを曝露する。したがって,DNAテンプレートは,核DNAのみ,ミトコンドリアDNAのみ,または組織サンプルから単離することにより得られる核またはミトコンドリアDNAのある一部を含んでいてもよい。DNAテンプレートはまた,変換により,例えば総mRNA調製物またはRNAウイルスのゲノムをcDNAに逆転写することにより調製したものであってもよく,プレート上で成長した個々の細菌コロニーから,または濃縮した細菌培養物から単離されたDNAであってもよく,実質的にすべてのウイルスゲノムが単離されているウイルスDNA調製物であってもよい。
【0063】
DNAは,液体サンプル,例えば,血液または尿または組織サンプルから,例えば,溶解し,遠心分離して細胞破片を除去し,蛋白質分解性消化によりDNAを曝露させ,塩沈または標準的なSDS−プロテアーゼK−フェノール抽出を行う,などの多数の手法のいずれかにより調製することができる。サンプルはまた,the Pure Gene DNA Isolation Kit(Gentra)などのキットを用いて調製してもよい。
【0064】
核酸の増幅
本発明の好ましい態様は,DNAを増幅して,続く配列決定のための大量のDNAの供給源を提供する工程を含む。1つの観点においては,本発明の方法は,任意に,DNAテンプレートの興味の対象である変異および長さ多型の両方を含む第1の領域を増幅することを含んでいてもよい。次に,所定の長さ多型を含む増幅産物を,長さ多型を除くプライマーを用いて配列決定する。
【0065】
あるいは,別の観点においては,本発明の方法は,興味の対象である変異を含み長さ多型を含まない領域を含むDNAテンプレートの第1の遺伝子領域を選択的に増幅することを含んでいてもよい。所定の長さ多型を含まない増幅産物は,増幅プライマーに対応する同じプライマーを用いて,増幅されたフラグメントの異なる領域に相補的なプライマーを用いて,またはPCRの間に増幅産物中に取り込まれた(ユニバーサルプライマーを含むプライマーを用いて)ユニバーサルプライマーテンプレートに相補的なユニバーサルプライマーを用いて,直接配列決定することができる。
【0066】
典型的には,配列決定の前に,まず配列決定すべき標的領域を包含するDNAの領域を増幅することにより,配列決定テンプレートを調製する。増幅すべき配列が最初に純粋な形で存在することは必要ではない。これは,複雑な混合物のより少ない部分であってもよく,核酸配列の一部であってもよい。出発核酸は,2以上の所望の特定の核酸配列を含んでいてもよく,これらは同じであっても異なっていてもよい。したがって,本発明の方法は,大量の1つの特定の核酸配列を製造するためのみならず,配列中に2以上の塩基対変種が存在する場合には同じまたは異なる核酸分子中に存在する2以上の異なる特定の核酸配列を同時に増幅するためにも有用である。
【0067】
1つの観点においては,本発明は,HIV−1 envをジェノタイピングする方法において用いられる,増幅および配列決定プライマーに関する。この方法は,ポリメラーゼ連鎖反応(またはPCR)の手法または他の何らかのプライマー伸長系方法論を用いる,特定の核酸配列を増幅するためのよく知られる方法を利用する。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は当該技術分野において非常によく知られている。例えば,米国特許4,683,195,4,683,202,および4,800,159;K.Mullis,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.,51:263−273(1986);およびC.R.Newton&A.Graham,Introduction to Biotechniques:PCR,2nd Ed.,Springer−Verlag(New York:1997)(これらの開示を本明細書の一部としてここに引用する)は,サンプル標的にハイブリダイズするPCR増幅伸長プライマーを用いて核酸サンプル標的を増幅する手順を記載する。DNAポリメラーゼ(好ましくは熱安定性)を用いてPCR増幅プライマーが伸長されるにつれて,より多くのサンプル標的が作成され,したがって,より多くのプライマーを用いてこの手順を反復し,このことによりサンプル標的配列を増幅することができる。典型的には,反応条件は,ハイブリダイゼーションおよび核酸重合を助ける条件と,デュープレックス分子の変性をもたらす条件との間でサイクリングさせる。
【0068】
簡単には,反応の第1の工程においては,二本鎖分子を変性させるために,サンプルの核酸分子を一時的に加熱し,次に冷却する。フォワードプライマーおよびリバースプライマーは,増幅反応混合物中にサンプル標的と比較して過剰濃度で存在する。サンプルをハイブリダイゼーションおよび重合を行う条件下でインキュベートすると,プライマーは,その増幅が望まれる配列の相補体である核酸分子の相補鎖の,増幅することが望まれる領域の配列の3’側の位置にハイブリダイズする。ハイブリダイゼーションが生じた後,プライマーの3’末端がポリメラーゼにより伸長される。プライマーの伸長により,所望の核酸サンプル標的の相補体の正確な配列を有するDNA分子が合成される。PCR反応は,所望の核酸配列を指数関数的に増幅することができ,各サイクルで所望の配列を有する分子の数をほぼ2倍にする。すなわち,ハイブリダイゼーション,重合,および変性のサイクルを進めることにより,所望の核酸分子の濃度の指数関数的増加が達成される。
【0069】
核酸増幅テンプレートの調製
本発明は,病原体,例えばHIV−1 envおよびその変種形を増幅し配列決定する方法に関する。本発明の方法は,例えば,DNAまたはRNA(メッセンジャーRNAを含む)を用いることができ,このDNAまたはRNAは1本鎖であっても二本鎖であってもよい。さらに,それぞれの1本鎖を含むDNA−RNAハイブリッドを用いてもよい。これらの核酸のいずれかの混合物も用いることができ,同じまたは異なるプライマーを用いて先の増幅反応から産生された核酸も同じように用いることができる。増幅すべき特定の核酸配列は,より大きな分子の一部のみであってもよく,最初は別々の分子として存在して,特定の配列が核酸全体を構成するようにしてもよい。
【0070】
増幅すべき配列が最初に純粋な形で存在することは必要ではない。これは複雑な混合物中の少ない割合であってもよく,核酸配列の一部であってもよい。出発核酸は2以上の所望の特定の核酸配列を含んでいてもよく,これらは同じであっても異なっていてもよい。したがって,本発明の方法は,1つの特定の核酸配列を大量に製造するためのみならず,配列中に2以上の塩基対変種が存在する場合には,同じまたは異なる核酸分子上に位置する2以上の異なる特定の核酸配列を同時に増幅するのにも有用である。
【0071】
核酸テンプレートは,任意の起源から,例えば,pBR322等のプラスミドから,クローニングされたDNAまたはRNAから,または任意の起源,例えば,患者から得られたHIV感染血漿または血清の天然のDNAまたはRNAから,得ることができる。DNAまたはRNAは,血液,組織材料または羊膜細胞から,Maniatisら(Molecular Cloning(1982),280−281)などに記載されている種々の手法により抽出することができる。
【0072】
細胞は,核酸を精製することなく直接用いてもよく,この場合,細胞を低張バッファに懸濁し,細胞が溶解して細胞内成分の分散が生ずるまで,一般には約90℃−100℃で約1−15分間加熱する。加熱工程の後,溶解した細胞に増幅試薬を直接加えることができる。この直接細胞検出法は,末梢血液リンパ球および羊膜細胞について用いることができる。
【0073】
サンプル中に含まれる標的核酸は,最初はRNAの形であろうが,好ましくは逆転写してcDNAとし,次に,任意の適当な変性法,例えば,当業者に知られる物理学的,化学的または酵素的手段を用いて変性する。鎖分離のための好ましい物理学的手段は,完全に(>99%)変性するまで核酸を加熱することを含む。典型的な熱変性は,約80℃から約105℃の温度範囲で数秒間から数分間を含む。変性の代わりに,標的核酸は,一本鎖の形で,例えば,一本鎖RNAまたはDNAウイルスの形でサンプル中に存在してもよい。
【0074】
次に,変性した核酸鎖を,予め選択されたオリゴヌクレオチドプライマー,および,任意に,増幅された配列を検出する目的で標識されたオリゴヌクレオチド(本明細書において"プローブ"と称する))とともに,プライマーおよびプローブが一本鎖核酸に結合しうる条件下でインキュベートする。当該技術分野において知られるように,プライマーは,デュープレックス配列に沿ったその相対的位置が,伸長産物をそのテンプレート(相補体)から分離したときに,1つのプライマーから合成される伸長産物が他のプライマーの伸長のテンプレートとして働いて,規定された長さの複製物を与えるように選択される。
【0075】
核酸の配列決定
上述したDNAの増幅により,配列決定のための大量のDNA起源が生成する。上述のように調製したポリヌクレオチドテンプレートを,ヌクレオチドの配列決定用に当業者に利用可能であり知られている多くの方法のいずれかを用いて配列決定する。
【0076】
本発明の好ましい観点においては,配列決定に用いられるDNAテンプレートは二本鎖である。二本鎖DNAは相補鎖の同時配列決定を可能とし,このことにより,各鎖から得られた正確に相補的であるはずの配列を比較することにより,正しい配列決定の結果を確認することができる。
【0077】
本発明において用いられる増幅方法は,配列決定と組み合わせて同時に用いてもよい。同時増幅および配列決定の方法は,当該技術分野において広く知られており,例えば,カップリングした増幅および配列(CAS)(Ruano and Kidd,Proc.Nat’l.Acad.Sci.(USA)88(7):2815−2819(1991),および米国特許5,427,911(本明細書の一部としてここに引用する)に記載されている),およびCLIP増幅および配列決定(米国特許6,007,983,およびJ.Clin.Microbiology 41(4);1586−1593(April 2003)(本明細書の一部としてここに引用する)に記載されている)が挙げられる。CLIP配列決定は,先に生成されたPCR増幅フラグメントを同時PCR増幅および直接配列決定に供する。CAS配列決定においては,サンプルを第1の反応工程で2つのプライマーで処理し,多数のサイクルで増幅して10,000から100,000倍の増幅を得る。次に,増幅反応の対数期の間にddNTPを加え,さらなるサーマルサイクルで反応を進行させて,連鎖停止された配列決定フラグメントを生成する。CASプロセスは,途中で試薬(ddNTP試薬)を加えることを必要とし,これは誤りまたは夾雑物混入の機会を持ち込み,自動化に用いる装置の複雑性を増加させる。したがって,CAS方法論は,好ましくは,先に生成したPCR増幅フラグメントを同時PCR増幅および直接配列決定に供するCLIP配列決定と組み合わせる。CLIP(登録商標)方法を用いる同時増幅および配列決定は,例えば,市販のキット,例えばTRUGENE(登録商標)HIVジェノタイピングキット(Bayer Health Care LLC)に記述され与えられている試薬および条件を用いて行うことができる。
【0078】
特定の観点においては,本発明は,細菌またはウイルスなどの感染性病原体,例えば,B型肝炎ウイルス,C型肝炎ウイルス,およびヒト免疫不全ウイルス,特にHIV−1 env,およびこれらの変種型の配列決定に関する。本発明の方法において用いられる二本鎖DNAテンプレートは,例えば,DNAまたはメッセンジャーRNA等のRNAに由来するものであってもよく,1本鎖であっても二本鎖であってもよい。さらに,DNAテンプレートは,1つの鎖がDNAであり1つの鎖がRNAであるDNA−RNAハイブリッドの形であってもよい。これらの核酸の任意のものの混合物も用いることができ,または,先に行った同じまたは異なるプライマーを用いる本発明の増幅反応により生成した核酸を利用してもよい。増幅すべき特定の核酸配列は,より大きい分子の一部であってもよく,または特定の配列が全核酸を構成するように別々の分子として最初に存在するものであってもよい。
【0079】
HIV−1 gp41のHR1および/またはHR2ドメインの配列決定
本発明は,HIV−1ウイルスを含むと疑われるサンプルにおいてHIV−1貫膜糖蛋白質(gp41)をジェノタイピングするための新規な方法および試薬を含む。
【0080】
本発明は,gp41のHR1およびHR2ドメインの全てまたは一部,またはgp41のHR1ドメインの全てまたは一部を包含するプライマーを提供することにより,上述の問題点を解決する。
【0081】
本発明の配列決定プライマーは,HIV−1に特異的なオリゴヌクレオチドからなり,これを用いてgp41DNAの一部を増幅し配列決定することができる。当業者に知られる方法にしたがって,HIV−1ウイルスに感染していると疑われる個人から得られたサンプルを用いて,ウイルスRNAをRNAまたはDNAの形で回収する。サンプルから得られたウイルスHIV−1 RNAを逆転写してcDNAとする。次に,cDNAテンプレートを,ポリメラーゼ連鎖反応または他の何らかのプライマー伸長系方法を用いて増幅する。次に,得られた増幅されたフラグメントを,gp41サブユニットを囲むか,HR1およびHR2ドメインを囲むか,あるいは,HR1ドメインを囲むプライマーのセットを用いて,サイクルシークエンシング法またはCLIP(商標)双方向シークエンシングを用いて最初に配列決定する。
【0082】
本発明の1つの特定の観点は,HIV−1ウイルスを含むと疑われるサンプル中のHIV−1 env遺伝子のgp41サブユニットを増幅しジェノタイピングする方法である。この方法は,(1)HIV−1 env領域を増幅し,(2)gp41のHR1およびHR2ドメインの両方を包含する領域の配列を決定することを含む。
【0083】
本発明は,一般に,HIV−1ウイルスを含むと疑われるサンプル中において,HIV−1貫膜糖蛋白質(gp41)のHR1ドメインを配列決定およびジェノタイピングするための新規な方法および試薬に関する。gp41領域の最初の7回反復ドメイン(HR1)の周囲の高い複雑性は,HR1ドメインの近くで挿入または欠失変異が生ずる頻度が比較的高いためであることが見いだされている。HR1ドメイン中の変異は,例えば,HIV−1エンベロープ糖蛋白質gp41の36−38位で生ずることが知られている。特定の変異としては,G36V/D/S,I37V,V38A/M/E,Q39R,Q40H,N42T,N43H/E/D/S,L44M,L45Mが挙げられる。長さ多型を有するHIV−1ウイルス集団の混合物が血漿中に生じて,一致しないHR1ヌクレオチド配列データおよび矛盾する双方向配列データをもたらすことが見いだされている。この問題は,これまでに認識されておらず,これはおそらく,配列決定の前にRT−PCR産物をクローニングすることに依存した方法であったこと,または確認用双方向データなしで1方向データが許容されていたためであろう。本発明は,本質的にHIV−1 envのHR1ドメインからなり長さ多型の原因であるより可変性の高い領域を除く領域を配列決定するための方法およびプライマーを提供することにより,上述の問題点を解決する。したがって,本発明のプライマーは,HR1ドメインに到達する前に長さ多型を含む領域を通して配列決定するための配列決定プライマーを用いては正確に特徴決定することができないサンプルについて,配列を確認するのに有用である。
【0084】
gp41のための配列決定プライマー
本発明の配列決定プライマーは,フォワードプライマーおよびリバースプライマーの両方を含み,これらは,検出可能な標識で標識してもよい。最も一般的な配列決定装置用には,蛍光標識が望ましいが,他のタイプの標識,例えば,呈色,発色,蛍光(化学発光を含む)および放射性標識を用いてもよい。プライマーの組み合わせは,逆転写,増幅または配列決定に適当な他の試薬を含んでいてもよく,もちろん,分析用のHIV−1の遺伝的材料を含んでいてもよい。
【0085】
1つの観点においては,本発明は,gp41のHR1およびHR2ドメインの配列を決定するための方法およびプライマーを含む。特定の態様においては,本発明は,gp41のHR1およびHR2ドメインを包含する領域の両方のDNA鎖(双方向)の配列を決定するための方法およびプライマーを含む。
【0086】
別の観点においては,本発明はまた,本質的にHIV−1糖蛋白質gp41のHR1ドメインからなる領域を配列決定するための方法およびプライマーを含む。本発明の配列決定プライマーは,本質的にHIV−1のHR1ドメインからなる領域を配列決定するのに望ましい特異性を有する任意の適当な配列決定プライマーでありうる。当業者に知られる方法にしたがって,HIV−1ウイルスに感染していることがわかっているかその疑いのある個人から得たサンプルを用いて,ウイルスRNAをRNAまたはDNAのいずれかの形で回収する。サンプルから得たウイルスHIV−1 RNAを逆転写してcDNAとする。次に,cDNAテンプレートを,ポリメラーゼ連鎖反応またはプライマー伸長に基づく他の方法を用いて増幅する。好ましい態様においては,増幅される領域は,HIV−1 env蛋白質をコードする領域を包含するが,より広いかまたは狭い領域もまた,HIV envドメインの特定の領域を配列決定するためのテンプレートとして用いるのに適している。次に,本質的にHR1ドメインからなる領域の配列を与えるが,HR1領域それ自体を配列決定する前にHR1ドメイン近傍の挿入および/または欠失変異により引き起こされた長さ多型の領域については配列決定しないプライマーのセットを用いて,あるいは1方向配列決定の場合には単一のプライマーを用いて,得られた増幅されたフラグメントを配列決定する(例えば,サイクルシークエンシングまたはCLIP(登録商標)双方向配列決定により)。したがって,本発明のプライマーは,挿入および/または欠失変異により引き起こされた長さ多型の領域とHR1ドメインそれ自体との間に存在する領域に相補的であり,したがって,プライマーの伸長は,長さ多型から離れる方向に,HR1ドメインに向かって進行する。特定の態様においては,本発明は,HIV−1ウイルスを含むと疑われるサンプルにおいて,HIV−1 env遺伝子のgp41サブユニットのHR1ドメインを配列決定する方法を提供し,この方法は,本質的にgp41のHR1ドメインからなるが,長さ多型に伴う変異を含むHR1ドメインに隣接する領域を含まない領域のヌクレオチド配列を決定することを含む。
【0087】
本発明のプライマーは,HIV−1の亜集団が混合された血漿の間の長さ多型の結果として他のプライマーでは解読が困難な配列データが得られるような臨床の状況において,HR1の配列を決定することを可能とする。これらのプライマーは,HR1変異を確認するために利用することができるが,また,HR1のみをカバーする代替の配列決定プライマーセットとして用いてもよい。
【0088】
本発明のプライマーは,DNAの1本の鎖の配列を決定するのに用いるための単一のプライマーであってもよい。あるいは,本発明の好ましい態様においては,プライマーは,gp41のHR1ドメインを囲む領域の両方のDNA鎖(双方向配列)の配列を決定するためのプライマーの組み合わせである。したがって,本発明の配列決定プライマーは,フォワードプライマー,リバースプライマー,またはフォワードプライマーとリバースプライマーの両方を含んでいてもよい。臨床目的で患者サンプルからのHIV−1のジェノタイプの決定に用いる場合には,DNAのフォワードおよびリバースの両方の鎖の配列を取得し,このことにより,配列決定の結果を確認することが望ましい。しかし,フォワード鎖およびリバース鎖の一方または他方の配列を得るだけの場合にも本発明の配列決定プライマーを用いることができることが理解されるであろう。
【0089】
本発明のプライマーはHR1中の薬剤耐性関連変異とHIVの亜集団が混合された血漿中に見いだされる長さ多型との間の領域に特異的である。機能的な意味では,そのようなプライマーは,HIV亜集団の混合血漿の間に見いだされる長さ多型に関連した挿入または欠失変異を含まない配列決定反応生成物を生成することができるプライマーとして定義することができる。目的は,HR1領域(特に,HR1中に位置する薬剤耐性変異)について矛盾のない配列データを得ることであるため,プライマーは最初にHR1領域の配列データを与え(伸長の反対側の方向に存在する長さ多型から離れる方向),次にHR1の他方の側にある長さ多型を含むかもしれない配列を決定する方向に伸長を開始することが企図される。まずHR1領域を通る配列を生成することにより(長さ多型の領域を通る配列を生成する前に),HR1領域について矛盾のないヌクレオチド配列データが得られる。したがって,HR1領域の後の長さ多型から生ずる混乱した配列の存在は,HR1領域それ自体の配列決定の結果に悪影響を与えない。したがって,プライマーは,長さ多型の領域を通って配列決定するであろうが,ただし,そのような配列はHR1の配列が最初に生成された後に生成されることが理解されるであろう。
【0090】
許容しうる配列決定プライマーの例は下記に開示される。本発明の配列決定プライマーは,好ましくは以下に記載される配列と同じ配列を有するプライマーの中から選択されるが,本発明は,主要なHIV−1サブタイプに対する特異性を有するが,あまり一般的ではないサブタイプに対しても特異性を有するかもしれない縮重配列を含むことが企図される。そのような縮重配列の設計および構築は当業者によく知られている。
【0091】
一般に,DNA配列決定プライマーは,15またはそれ以上のヌクレオチド塩基,好ましくは18−30ヌクレオチド塩基からなる。配列決定プライマーはまた,上述のプライマーの18,19,20,21,22,23,24,または25ヌクレオチドを有するフラグメントを含んでいてもよい。プライマーは,特にテンプレートがGCリッチである場合には,二次的プライミングのアルチファクトやノイズ配列につながりうるため,52℃−65℃の範囲の溶融温度(Tm)を有することが好ましい。さらに,好ましいプライマーは,二量体や著しいヘアピンを形成せず,二次的なプライミング部位をもたない。また,プライマーは,3’末端における結合の特異性が低いであろう(すなわち,ミスプライミングを回避するために,より低い,好ましくは40−60%のGC含量を有する)。これらの特性を有するプライマーを設計するコンピュータソフトウエアが利用可能であり,これには例えば,LaserGene(DNA Star),Oligo(National Biosciences,Inc.),MacVector(Kodak/IBI)およびthe GCG suiteがある。さらに,プライマーは,Whitehead Institute PCR Primer Probram(http://wwwgenome.wi.mit.edu/cgi−bin/primer/primer3.cgiから入手可能)を用いて,上述の基準を満たすように設計することができる。さらなる設計基準は当業者に知られておりかつ利用可能である。
【0092】
配列決定プライマーは,増幅プライマーとは異なり,3’塩基について同じ位置を有しない限り一緒に混合することができないため,特定の縮重塩基位置が以下に示されるが,3’および5’位置は改変することができることが理解されるべきである。5’ヌクレオチド位置は,より配列保存性の高い領域を含むかまたは溶融温度および結合のストリンジェンシーを改変するよう変更してもよい。成功率が所望のHIV−1サブタイプについての配列を得るのに十分であれば,非縮重プライマーセットが好ましい。また,反応条件を調節して動作を最適化することができる。配列決定プライマーの可能な修飾の例は以下に開示される。
【0093】
特定の態様においては,以下から選択される配列決定プライマーを用いて,gp41のHR1およびHR2ドメインの両方を包含する領域を配列決定する。
配列番号2 5’−GCACCXACSARGGCAAAGAGAMGAGYGG−3’
配列番号3 5’−ACCAAGGCAAAGAGAAGAGTGG−3’
配列番号4 5’−CCCACCAAGGCAAAGAGAAGAGTGG−3’
配列番号5 5’−GCACCCACCAAGGCAAAGAGAAGAGTGG−3’
配列番号6 5’−GCACCCACCAAGGCAAAGAGAAGAGYGG−3’
配列番号7 5’−GCACCCACCAAGGCAAAGAGAMGAGYGG−3’
配列番号8 5’−GCACCCACCAGGGCAAAGAGAMGAGYGG−3’
配列番号9 5’−GCACCCACGAGGGCAAAGAGAMGAGYGG−3’
配列番号10 5’−GCACCNACGAGGGCAAAGAGAMGAGYGG−3’
配列番号11 5’−ACGAGGGCAAAGAGAMGAGYGG−3’
配列番号12 5’−CCAAGGCAAAGAGAAGAGTG−3’
配列番号13 5’−CGAGGGCAAAGAGAMGAGYG−3’
配列番号14 5’−GCACCCACCAAGGCAAAGAGAAGAGTGG−3’
配列番号15 5’−ACCAAGGCAAAGAGAAGAGTGG−3’
配列番号16 5’−tartaggaggnttrataggnttaagaata−3’
配列番号17 3’−gtaggaggcttgataggtttaag−5’
配列番号18 3’−tagtaggaggcttgataggtttaag−5’
配列番号19 3’−tartaggaggcttgataggtttaag−5’
配列番号20 3’−tartaggaggnttgataggtttaag−5’
配列番号21 3’−tartaggaggnttrataggtttaag−5’
配列番号22 3’−tartaggaggnttrataggnttaag−5,
配列番号23 3’−tartaggaggnttrataggnttaagaata−5’
配列番号24 3’−ggaggnttrataggnttaagaata−5’
配列番号25 3’−ggvggnttrataggnttaagaata−5’
配列番号26 3’−taggaggnttrataggnttaag−5’
配列番号27 3’−ggaggcttggtaggtttaaga−5’
配列番号28 3’−ggvggnttrataggnttaaga−5’
配列番号29 3’−tagtaggaggcttgataggtttaagaata−5’
配列番号30 3’−gtaggaggcttgataggtttaag−5’
【0094】
配列決定プライマーは,例えば,以下からなる群より選択される少なくとも1つのフォワード配列決定プライマーを含むことができる:
配列番号2 5’−GCACCXACSARGGCAAAGAGAMGAGYGG−3’
配列番号3 5’−ACCAAGGCAAAGAGAAGAGTGG−3’
配列番号4 5’−CCCACCAAGGCAAAGAGAAGAGTGG−3’
配列番号5 5’−GCACCCACCAAGGCAAAGAGAAGAGTGG−3’
配列番号6 5’−GCACCCACCAAGGCAAAGAGAAGAGYGG−3’
配列番号7 5’−GCACCCACCAAGGCAAAGAGAMGAGYGG−3’
配列番号8 5’−GCACCCACCAGGGCAAAGAGAMGAGYGG−3’
配列番号9 5’−GCACCCACGAGGGCAAAGAGAMGAGYGG−3’
配列番号10 5’−GCACCNACGAGGGCAAAGAGAMGAGYGG−3’
配列番号11 5’−ACGAGGGCAAAGAGAMGAGYGG−3’
配列番号12 5’−CCAAGGCAAAGAGAAGAGTG−3’
配列番号13 5’−CGAGGGCAAAGAGAMGAGYG−3’
配列番号14 5’−GCACCCACCAAGGCAAAGAGAAGAGTGG−3’
【0095】
本発明の1つの態様においては,双方向一次配列決定プライマーのセットは,配列番号2,およびその3’末端を含む15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントのヌクレオチド配列を含む第1のプライマーを含む。配列番号2は,フォワードプライマーとして用いることができる縮重プライマーのセットを記述し,ここで,Xは,5−ニトロインドールまたはCであり,SはGまたはCを表し,RはGまたはAを表し,MはAまたはCを表し,YはTまたはCを表す。Y(T/C)におけるプライマー縮重は,HIVのBおよびAサブタイプの両方の単離物を検出するために設計されたものである。同様に,M(A/C)におけるプライマー縮重は,F−タイプのHIV組換え体を検出するために設計されたものである。上述の配列の他の変種を用いて,他のHIV変種を検出することができる。
【0096】
別の態様においては,本発明は,配列番号3,配列番号4,配列番号5,配列番号6,配列番号7,配列番号8,配列番号9,配列番号10,配列番号11,配列番号12,および配列番号13,およびそれらの15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントからなる群より選択される第1のプライマーを含む,双方向一次配列決定プライマーのセットを含む。
【0097】
さらに別の態様においては,本発明は,配列番号14,およびその15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントの配列を含む第1のプライマーを含む双方向一次配列決定プライマーのセットを含む。
【0098】
さらに別の態様においては,本発明は,配列番号3の配列を含む第1のプライマーを含む双方向一次配列決定プライマーのセットを含む。
【0099】
一次配列決定プライマーはまた,以下からなる群より選択される少なくとも1つのリバース配列決定プライマーを含んでいてもよい:
配列番号15 5’−ACCAAGGCAAAGAGAAGAGTGG−3’
配列番号16 5’−tartaggaggnttrataggnttaagaata−3’
配列番号17 3’−gtaggaggcttgataggtttaag−5’
配列番号18 3’−tagtaggaggcttgataggtttaag−5’
配列番号19 3’−tartaggaggcttgataggtttaag−5’
配列番号20 3’−tartaggaggnttgataggtttaag−5’
配列番号21 3’−tartaggaggnttrataggtttaag−5’
配列番号22 3’−tartaggaggnttrataggnttaag−5,
配列番号23 3’−tartaggaggnttrataggnttaagaata−5’
配列番号24 3’−ggaggnttrataggnttaagaata−5’
配列番号25 3’−ggvggnttrataggnttaagaata−5’
配列番号26 3’−taggaggnttrataggnttaag−5’
配列番号27 3’−ggaggcttggtaggtttaaga−5’
配列番号28 3’−ggvggnttrataggnttaaga−5’
配列番号29 3’−tagtaggaggcttgataggtttaagaata−5’
配列番号30 3’−gtaggaggcttgataggtttaag−5’
【0100】
本発明の1つの態様においては,双方向一次配列決定プライマーのセットは,配列番号16,および3’末端を含むその15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントのヌクレオチド配列を含む第2のプライマーを含む。配列番号16は,フォワードプライマーとして用いることができる縮重プライマーのセットを記述し,ここで,RはGまたはAを表し,Xは5−ニトロインドールまたはCを表し,Zは5−ニトロインドールまたはTを表し,VはAまたはGまたはCであってTではないことを表す。上述の配列の他の変種を利用すれば,他のHIV変種を検出することができる。
【0101】
別の態様においては,本発明は,配列番号17,配列番号18,配列番号19,配列番号20,配列番号21,配列番号22,配列番号23,配列番号24,配列番号25,配列番号26,配列番号27,および配列番号28からなる群より選択される第2のプライマーを含む双方向一次配列決定プライマーのセットを含む。
【0102】
さらに別の態様においては,本発明は,配列番号29,およびその15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントの配列を含む第2のプライマーを含む双方向一次配列決定プライマーのセットを含む。
【0103】
さらに別の態様においては,本発明は,配列番号30の配列を含む第2のプライマーを含む双方向一次配列決定プライマーのセットを含む。
【0104】
本発明のさらに別の観点においては,HIV−1のHR1ドメインを配列決定するための用いられるプライマーは,配列番号31,配列番号32,配列番号33,配列番号34,配列番号35,および配列番号36(以下に記載)またはそれらの少なくとも15またはそれ以上のヌクレオチドののフラグメントの1またはそれ以上からなる群より選択される配列を有するであろう。
配列番号31 5’−TTGGGTTCTTGGGAGCAGCAGGAAG−3’
配列番号32 5’−TTGGGTTCTTGGGAGCAGCAGG−3’
配列番号33 5’−AGTRGTGCARATGAKTTTTCCAGAG−3’
配列番号34 5’−GTGGTGCAGATGAGTTTTCCAGAG−3’
配列番号35 5’−GTGGTGCAGATGAGTTTTCCAGAGC−3’
【0105】
配列番号31,配列番号32,配列番号33は,HR1の5’側の領域中の代替フォワードプライマー配列を表す。配列番号31のプライマー配列は,配列番号1のヌクレオチド7329−7353の配列に対応する。配列番号32のプライマー配列は,配列番号1のヌクレオチド7329−7350の配列に対応する。配列番号33のプライマー配列は,配列番号1のヌクレオチド7337−7361の配列に対応する。
【0106】
配列番号34,配列番号35,配列番号36は,HR1の3’側(HR1ドメインとHR2ドメインの間)の領域中の代替リバースプライマー配列を表す。配列番号34のプライマー配列は,配列番号1のヌクレオチド7563−7587(ctctggaaaamtcatytgcacyact)のリバース相補体に対応する。配列番号35のプライマー配列は,配列番号1のヌクレオチド7564−7587(ctctggaaaactcatctgcaccac)のリバース相補体に対応する。配列番号36のプライマー配列は,配列番号1のヌクレオチド7563−7588(ctctggaaaactcatctgcaccacg)のリバース相補体に対応する。
【0107】
本発明の1つの態様においては,プライマーは,配列番号1およびその15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントのヌクレオチド配列を含む。
【0108】
本発明の別の態様においては,プライマーは,配列番号31およびその15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントのヌクレオチド配列を含む。
【0109】
本発明の別の態様においては,プライマーは,配列番号32およびその15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントのヌクレオチド配列を含む。
【0110】
本発明の別の態様においては,プライマーは,配列番号33およびその15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントのヌクレオチド配列を含む。
【0111】
本発明の別の態様においては,プライマーは,配列番号34およびその15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントのヌクレオチド配列を含む。
【0112】
本発明の別の態様においては,プライマーは,配列番号35およびその15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントのヌクレオチド配列を含む。
【0113】
本発明の別の態様においては,プライマーは,双方向配列決定プライマーのセットを含み,ここで,フォワードプライマーは,配列番号1,配列番号31,および配列番号32,およびそれらの15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントからなる群より選択され,リバースプライマーは,配列番号33,配列番号34,および配列番号35,およびそれらの15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントからなる群より選択される。
【0114】
配列番号1,配列番号31,および配列番号32で示されるフォワードプライマー部位は,3’末端は好ましくは−Gヌクレオチド塩基であり,より好ましくは−GGである。このことにより,プライマーの3’末端で特に強いハイブリダイゼーションが得られ,おそらくは,異なる位置で終わるプライマーに対してより改良された配列決定結果が得られる。プライマーの3’末端はさらに3’方向に伸長することができる。プライマーのすぐ後の配列は一般に質が低いため,フォワードプライマーの3’末端は,好ましくは,HR1配列の始まりが明確であるよう,HR1領域から十分な距離に位置する。フォワードプライマーの3’末端は,好ましくは配列番号1の3’末端の−AAGよりさらに延長されないが,HR1領域のための適当な配列を得ることができれば,この点を超えて伸長するプライマーも企図される。
【0115】
このプライマーの5’末端はわずかに短くしてもよいが,これはプライマーのアニーリング特性も変化させるであろう。特に,5’末端−GGは短くして−Gとしてもよい。より短いタイプのもの(TGG−,GG−,G−)を3’末端の伸長と組み合わせて,アニーリング(または融点,Tm)温度を他の可能なリバースプライマーとマッチさせるようにさらに最適化することができる。
【0116】
フォワードプライマーは,用いられる配列決定化学に対する適当な修飾とともに,上述した位置を越えてさらに修飾してもよい。例えば,ネステッドPCRプライマーにユニバーサル配列決定プライマーテールを用いて,ユニバーサル配列決定プライマーを重要な領域に近づけすぎることなく,プライマーをやや内側に移動させることができる。このためには,WPプライマーがPCRプライマーとしてユニバーサル配列決定テールを含むことが必要である。
【0117】
配列番号33,配列番号34,および配列番号35を例とするリバースプライマーはまた,本発明にしたがって修飾することができる。好ましい態様においては,リバースプライマーの5’末端は,ヌクレオチド7564(G)または7563(A)であることができる。好ましい態様においては,リバースプライマーの3’末端はヌクレオチド7585(G),7586(A),7587(G)または7588(C)であることができる。プライマーは,好ましくはHR1領域からそれ以上離れていないものであり,さもなくば,配列があまり保存されていないHlV配列位置に配置されて,あまり強固でない配列決定プライマーセットを与える。プライマーは好ましくはHR1領域にそれ以上近くないものであり,さもなくばプライマーのすぐ後の十分な初期配列を与えることができず,HR1位置に到達する前に配列データを解析することができない。
【0118】
上述のプライマーの組み合わせは,本発明にしたがう方法において,HIV−1ウイルスを含むと疑われるサンプルについて,ウイルスのサブタイプおよびジェノタイプを評価するために用いることができる。
【0119】
この方法は,サンプルを処理してウイルスRNAを回収し;回収したウイルスRNAを逆転写し;逆転写産物を配列決定し;そして,配列決定工程の結果を用いて試験したウイルスのジェノタイプを確立する,の各工程を含む。この方法においては,逆転写工程および配列決定工程のいずれかまたは両方を,上述のプライマーの組み合わせを用いて実施することができる。本発明の方法は,HIVのgp41領域における多型変種を評価するために,そして特にgp41のHR1ドメインにおける多型変種を評価するために設計されたパラレルジェノタイピング法を実施する工程を含むことができる。あるいは,この方法は,先にgp41に特異的なジェノタイピング手順を用いてジェノタイピングを試みたが失敗したサンプルを用いて行うことができる。
【0120】
キット
本発明はまた,上述の方法を実施するのに必要でありかつ十分な試薬を含むキットを含む。1つの観点においては,本発明は,混合された長さ多型を有する病原体の複数の準種を含むサンプル中において病原体における興味の対象である変異の存在または非存在を検出するためのキットに関し,ここで,興味の対象である変異は,長さ多型に隣接して位置する。このキットは,興味の対象である変異を含むDNAテンプレートの領域の第1の鎖を配列決定するための第1のプライマー,および興味の対象である変異を含むDNAテンプレートの領域の第2の鎖を配列決定するための第2のプライマーを含み,ここで,第1のプライマーおよび第2のプライマーにより規定される(すなわち,これらを含みこれらの間の)領域には長さ多型が含まれない。
【0121】
別の観点においては,本発明は,配列番号2,配列番号3,配列番号4,配列番号5,配列番号6,配列番号7,配列番号8,配列番号9,配列番号10,配列番号11,配列番号12,配列番号13,配列番号14,配列番号15,配列番号16,配列番号17,配列番号18,配列番号19,配列番号20,配列番号21,配列番号22,配列番号23,配列番号24,配列番号25,配列番号26,配列番号27,配列番号28,配列番号29,配列番号30,およびそれらの15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントからなる群より選択される1またはそれ以上のオリゴヌクレオチドプライマーを含むキットに関する。
【0122】
さらに別の観点においては,本発明は,
(a)配列番号2,配列番号3,配列番号4,配列番号5,配列番号6,配列番号7,配列番号8,配列番号9,配列番号10,配列番号11,配列番号12,配列番号13,配列番号14,およびそれらの15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントの1またはそれ以上からなる群より選択されるフォワードプライマー;および
(b)配列番号15,配列番号16,配列番号17,配列番号18,配列番号19,配列番号20,配列番号21,配列番号22,配列番号23,配列番号24,配列番号25,配列番号26,配列番号27,配列番号28,配列番号29,配列番号30,およびそれらの15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントの1またはそれ以上からなる群より選択されるリバースプライマー,
を含むキットに関する。
【0123】
さらに別の態様においては,本発明は,本質的に配列番号1のヌクレオチド7329−7614またはその15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントからなる領域に対応するプライマー伸長産物を生成することができるオリゴヌクレオチドプライマーを含むキットに関する。
【0124】
さらに別の態様においては,本発明は,オリゴヌクレオチドプライマーを含むキットに関し,ここで,プライマーは,本質的に配列番号1のヌクレオチド7388−7549またはその15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントからなる領域に対応するプライマー伸長産物を生成することができる。
【0125】
さらに別の態様においては,本発明は,オリゴヌクレオチドプライマーを含むキットに関し,ここで,プライマーは,本質的に配列番号1のヌクレオチド7492−7522またはその15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントからなる領域に対応するプライマー伸長産物を生成することができる。
【0126】
さらに別の態様においては,本発明は,オリゴヌクレオチドプライマーを含むキットに関し,ここで,プライマーは,配列番号31,配列番号32,配列番号33,配列番号34,配列番号35,およびそれらの15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントからなる群より選択される。
【0127】
さらに別の態様においては,本発明は,本質的に配列番号1のヌクレオチド7329−7614またはその15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントからなる領域を囲む双方向配列決定プライマーのセットを含むプライマーの組み合わせを含むキットに関する。
【0128】
さらに別の態様においては,本発明は,プライマーの組み合わせを含むキットに関し,ここで,双方向配列決定プライマーのセットは,本質的に配列番号1のヌクレオチド7388−7549またはその15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントからなる領域を囲む。
【0129】
さらに別の態様においては,本発明は,プライマーの組み合わせを含むキットに関し,ここで,双方向配列決定プライマーのセットは,本質的に配列番号1のヌクレオチド7492−7522またはその15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントからなる領域を囲む。
【0130】
さらに別の態様においては,本発明は,プライマーの組み合わせを含むキットに関し,ここで,双方向一次配列決定プライマーのセットは,配列番号31,配列番号32,配列番号33,配列番号34,配列番号35,およびそれらの15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントからなる群より選択される2またはそれ以上のプライマーを含む。
【0131】
さらに別の態様においては,本発明は,プライマーの組み合わせを含むキットに関し,ここで,双方向配列決定プライマーのセットは,
(a)配列番号31および配列番号32,およびそれらの15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントからなる群より選択される少なくとも1つのフォワードプライマー,および
(b)配列番号33,配列番号34,配列番号35,およびそれらの15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントからなる群より選択される少なくとも1つのリバースプライマー
を含む。
【0132】
以下の実施例は,本発明の特定の態様を例示する。
【実施例】
【0133】
実施例1
以下の実施例は,gp41のHR1領域中の一次配列決定プライマーセット(EC7719F,EC831IR)および二次配列決定プライマーセット(WP8746F,WP8960RBおよび/またはWP8746RC)を用いた,長さ多型を含む混合集団を示す臨床血漿サンプルからの双方向(二重鎖)配列決定を示す。フォワード鎖一次配列決定プライマーのみを用いて得られた,長さ多型を有するかまたは有しないほぼ等量の混合物の複雑な配列痕跡は,決定的な結果を示さなかった。得られた重ね合わせピークは,日常的な分析によっては解析ができない。下記に示されるように,二次プライマーセットを使用することにより,ただちに使用可能な双方向結果が得られた。
【0134】
RT−PCRおよびCLIP配列決定条件を組み合わせた代表的なセットを用いて,以下のプライマーを用いて,質の高い配列データが得られた:
EMF1(5’−AGAGAAAGAGCAGAAGACAGTGGC−3’),および
EMR1(5’−CCTTGTAAGTCATTGGTCTTAAAGGTACC−3’)(RT−PCRプライマー);
EC7719F(5’−ACCAAGGCAAAGAGAAGAGTGG−3’),および
EC8311R(3’−gtaggaggcttgataggtttaag−5’)(CLIPプライマー);および
WP8746F(5’−TTGGGTTCTTGGGAGCAGCAGG−3’),
WP8960RB(5’−GTGGTGCAGATGAGTTTTCCAGAG−3’)および/または
WP8746RC(5’−GTGGTGCAGATGAGTTTTCCAGAGC−3’)(CLIPプライマー)
【0135】
以下の材料を用いた:
RT−PCR試薬:TRUGENE HIVキット
CLIP試薬:VG30001コア配列決定キット
RT−PCRプライマー:
EMFl(未標識)30μM
EMRl(未標識)30μM
CLIPプライマー:
EC7719F(Cy5.5)3μM
EC8311R(Cy5.0)3μM
EC831IR(未標識)3μM
【0136】
ウイルスRNA用TRUPREP抽出キットの包装中の指針にしたがって,患者血漿サンプルからRNAを抽出した。
【0137】
gp41領域のRT−PCR増幅のためには,以下の試薬を用いた:
【表1】

【0138】
マスターミックスIおよびIIは使用まで氷上に保持した。16μLのマスターミックスIを各PCRチューブの底に小分けした。マスターミックスIを有するPCRプレートに各10μLの抽出RNAサンプルをピペットで入れた。次にチューブをサーモサイクラーに入れた。50℃サイクル1回の5分後,サーモサイクラーを休止し,14μLのマスターミックスIIを各ウエルに加えた。次に,以下のプロトコルにしたがって,サーモサイクラープログラムを再開する:
1x 90℃,2分間,
50℃,20分間
注:上述の50℃の工程後に5分間の休止をおいて,マスターミックスIIを加える。
94℃で2分間,
37x 94℃で30秒間,
60℃で30秒間,
68℃で2分間),
1x 68℃で7分間
40℃で次の作業まで保持する。
【0139】
次に,得られたPCR増幅産物を以下のようにしてCLIP配列決定法を用いて配列決定した。まず,7.00μLのThermo Sequenase酵素を63μLの酵素希釈バッファで10倍に希釈して,総容量を70.00μLとした。次に,11.50μLの標識EC8311R(3μL)リバースプライマーを11.50μLの未標識EC8311R(3μL)リバースプライマーで50%に希釈して,総容量を23.00μLとした。次に,以下のようにしてgp41CLIPマスターミックスを調製した。
【0140】
【表2】

【0141】
17μLのCLIPマスターミックスを配列決定すべき増幅産物各5μLに加えた。次に3μLのターミネーションミックスA,C,G,Tを各配列決定チューブにピペットで加えた。
【0142】
5μLのマスターミックス/増幅産物をターミネーションミックスを含む各配列決定チューブにピペットで加えた。次に,以下のCLIP配列決定熱サイクルプログラムを用いてミックスを配列決定した:
1x 94℃,5分間,
(30)x 94℃,20秒間,
60℃,20秒間,
70℃,1.5分間,
1x 70℃,5分間,
4℃で保持。
【0143】
配列決定が完了したら,6μLのストップローディング染料を各チューブに加えた。サンプルを94℃で2分間加熱し,氷上で急冷し,穏やかにボルテックスすることによりよく混合した。2μLをMicrocel(登録商標)カセットの各ウエルに負荷した。次に,製造元により供給されたLR Tower設定および負荷のTRUGENEプロトコルにしたがって,Microcel500および6%のSurefillを用いて,2000V,50%レーザー出力,実行時間70分間で自動DNA配列決定を行った。
【0144】
以下の表1および表2は,合わせたHR1およびHR2領域(表1)の配列決定およびHR1領域のみ(表2)の配列決定の結果の分析を示す。表1に示されるように,"不明瞭マッチ"のカラムは,FASTAファイルのそれぞれにおける位置において不明瞭なベースコールを有する少なくとも1つの塩基またはコードと一致する。
【0145】
【表3】

【0146】
上述のデータは,HIV−1のHR1およびHR2領域を囲むプライマーが,広範囲のHIV変種について配列データを取得することができることを示す。
【0147】
表2は,プライマーがHR1領域のみを囲む本発明の好ましい観点においては,HR1領域中の不明瞭なマッチが少ないために,編集工程が少なくなり,全体的な整合性が高くなることを示す。
【0148】
【表4】

【0149】
特定の患者サンプルに関しては,ECプライマーセットおよびWPプライマーセットの両方を用いてサンプル28942からの配列トレースを生成した。ECプライマーセットのみを用いて生成した配列データから,読み取り可能でありかつ確認できる配列データが得られた。これは,一方の方向からでは読み取ることができず,その結果,確認することができない不明確な結果が得られた。しかし,サンプル28942をWPプライマーセットで分析したところ,不明確なデータはアンチセンス鎖配列を用いて確認することができた。
【0150】
上述のデータは,本質的にHR1ドメインからなる領域を本発明のプライマーを用いて配列決定することにより,有意に少ない不明瞭性およびミスマッチ,および改良された正確性および一致度をもつ配列決定結果が得られたことを示す。例えば,エンフビルチド(enfuvirtide)(FUZEON(商標)またはT−20)治療に伴う耐性変異(HR1)について特に興味深い領域において生成したHIV−1 gp41配列決定データの以下の例は,標準的設計のプライマー(EC)および新規プライマー(WP)を用いたデータを含む。一般に,外側プライマーの1つと興味の対象である変異との間で生ずる任意の混合された長さの多型変異は,重複および読み枠外配列が生成するために,配列の質の低下を引き起こす。本発明のプライマーは,この問題点を回避し,興味の対象である領域中で質の高い双方向配列データを与え,HR1中で生ずる任意の変異のアンチセンス鎖の確認を可能とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HIV−1のHR1およびHR2ドメインを含む領域を囲む双方向配列決定プライマーのセットを含むプライマーの組み合わせであって,
プライマーの組み合わせは,
(a)配列番号2,配列番号3,配列番号4,配列番号5,配列番号6,配列番号7,配列番号8,配列番号9,配列番号10,配列番号11,配列番号12,配列番号13,配列番号14,およびそれらの15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントの1またはそれ以上からなる群より選択されるフォワードプライマー;および
(b)配列番号15,配列番号16,配列番号17,配列番号18,配列番号19,配列番号20,配列番号21,配列番号22,配列番号23,配列番号24,配列番号25,配列番号26,配列番号27,配列番号28,配列番号29,配列番号30,および15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントの1またはそれ以上からなる群より選択されるリバースプライマー,
を含むプライマーの組み合わせ。
【請求項2】
プライマーの組み合わせは,本質的に配列番号1のヌクレオチド7329−7614またはその15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントからなる領域を囲む双方向配列決定プライマーのセットを含む,請求項1記載のプライマーの組み合わせ。
【請求項3】
双方向配列決定プライマーのセットが,本質的に配列番号1のヌクレオチド7388−7549またはその15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントからなる領域を囲む,請求項2記載のプライマーの組み合わせ。
【請求項4】
双方向配列決定プライマーのセットが,本質的に配列番号1のヌクレオチド7492−7522またはその15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントからなる領域を囲む,請求項3記載のプライマーの組み合わせ。
【請求項5】
双方向一次配列決定プライマーのセットが,配列番号31,配列番号32,配列番号33,配列番号34,配列番号35,およびそれらの15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントからなる群より選択される2またはそれ以上のプライマーを含む,請求項4記載のプライマーの組み合わせ。
【請求項6】
双方向配列決定プライマーのセットが,
(a)配列番号31および配列番号32,およびそれらの15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントからなる群より選択される少なくとも1つのフォワードプライマー,および
(b)配列番号33,配列番号34,配列番号35,およびそれらの15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントからなる群より選択される少なくとも1つのリバースプライマー,
を含む,請求項5記載のプライマーの組み合わせ。
【請求項7】
病原体の核酸中で興味の対象である変異の存在または非存在を検出する方法であって,ここで,興味の対象である変異は,病原体の複数の準種を規定する長さ多型に隣接して位置しており,該方法は,
a)患者サンプルから興味の対象である変異を包含する二本鎖DNAテンプレートを取得し;
b)DNAテンプレートの興味の対象である変異を含む領域の第1の鎖を配列決定し;
c)DNAテンプレートの興味の対象である変異を含む領域の第2の鎖を配列決定し,ここで,DNAテンプレートの配列決定された領域の第1の鎖および第2の鎖に共通する領域は長さ多型を含まず;そして
d)第1の鎖の配列を第2の鎖の配列と比較して,興味の対象である変異の配列の相補鎖確認を得る,ことを含む方法。
【請求項8】
病原体がHIV−1である,請求項7記載の方法。
【請求項9】
興味の対象である変異が,HIV−1エンベロープ糖蛋白質gp41中に存在する,請求項8記載の方法。
【請求項10】
興味の対象である変異が,gp41の36位−45位の間に存在する,請求項9記載の方法。
【請求項11】
DNAテンプレートの配列決定された第1の鎖および第2の鎖に共通する領域が,本質的に配列番号1のヌクレオチド7329−7614またはその15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントからなる長さ多型を含まない,請求項7記載の方法。
【請求項12】
DNAテンプレートの配列決定された第1の鎖および第2の鎖に共通する領域が,本質的に配列番号1のヌクレオチド7388−7549またはその15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントからなる長さ多型を含まない,請求項7記載の方法。
【請求項13】
DNAテンプレートの配列決定された第1の鎖および第2の鎖に共通する領域が,本質的に配列番号1のヌクレオチド7492−7522またはその15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントからなる長さ多型を含まない,請求項7記載の方法。
【請求項14】
配列が,配列番号31,配列番号32,配列番号33,配列番号34,配列番号35,およびそれらの15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントからなる群より選択される1またはそれ以上のプライマーからなる群より選択されるプライマーを用いて決定される,請求項7記載の方法。
【請求項15】
配列が,配列番号31,配列番号32,およびそれらの15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントからなる群より選択される1またはそれ以上のプライマーを含むフォワードプライマー,および配列番号33,配列番号34,配列番号35,およびそれらの15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントからなる群より選択される1またはそれ以上のプライマーを含むリバースプライマーを用いて決定される,請求項7記載の方法。
【請求項16】
配列が,配列番号2,配列番号3,配列番号4,配列番号5,配列番号6,配列番号7,配列番号8,配列番号9,配列番号10,配列番号11,配列番号12,配列番号13,配列番号14,配列番号15,配列番号16,配列番号17,配列番号18,配列番号19,配列番号205配列番号21,配列番号22,配列番号23,配列番号24,配列番号25,配列番号26,配列番号27,配列番号28,配列番号29,配列番号30,およびそれらの15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントからなる群より選択されるプライマーを用いて決定される,請求項7記載の方法。
【請求項17】
配列が,配列番号2,配列番号3,配列番号4,配列番号5,配列番号6,配列番号7,配列番号8,配列番号9,配列番号10,配列番号11,配列番号12,配列番号13,配列番号14,およびそれらの15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントの1またはそれ以上からなる群より選択されるフォワードプライマーを用いて決定される,請求項16記載の方法。
【請求項18】
プライマーが,配列番号15,配列番号16,配列番号17,配列番号18,配列番号19,配列番号20,配列番号21,配列番号22,配列番号23,配列番号24,配列番号25,配列番号26,配列番号27,配列番号28,配列番号29,配列番号30,およびそれらの15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントの1またはそれ以上からなる群より選択されるリバースプライマーである,請求項16記載の方法。
【請求項19】
HIV−1のHR1およびHR2ドメインを包含する領域を囲む双方向配列決定プライマーのセットを含むプライマーの組み合わせを含み,ここで,プライマーの組み合わせは,
(a)配列番号2,配列番号3,配列番号4,配列番号5,配列番号6,配列番号7,配列番号8,配列番号9,配列番号10,配列番号11,配列番号12,配列番号13,配列番号14,およびそれらの15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントの1またはそれ以上からなる群より選択されるフォワードプライマー;および
(b)配列番号15,配列番号16,配列番号17,配列番号18,配列番号19,配列番号20,配列番号21,配列番号22,配列番号23,配列番号24,配列番号25,配列番号26,配列番号27,配列番号28,配列番号29,配列番号30,およびそれらの15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントの1またはそれ以上からなる群より選択されるリバースプライマー
を含む,請求項16記載の方法。
【請求項20】
混合された長さ多型を有する病原体の複数の準種を含むサンプルにおいて,病原体中の興味の対象である変異の存在または非存在を検出するためのキットであって,ここで,興味の対象である変異は長さ多型に隣接して位置しており,該キットは,DNAテンプレートの興味の対象である変異を含む領域の第1の鎖を配列決定するための第1のプライマー,およびDNAテンプレートの興味の対象である変異を含む領域の第2の鎖を配列決定するための第2のプライマーを含み,ここで,第1のプライマーおよび第2のプライマーにより規定される領域は長さ多型を含まない,ことを特徴とするキット。
【請求項21】
キットが,配列番号31,配列番号32,配列番号33,配列番号34,配列番号35,およびそれらの15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントからなる群より選択される1またはそれ以上のオリゴヌクレオチドプライマーを含む,請求項20記載のキット。
【請求項22】
キットが,配列番号2,配列番号3,配列番号4,配列番号5,配列番号6,配列番号7,配列番号8,配列番号9,配列番号10,配列番号11,配列番号12,配列番号13,配列番号14,配列番号15,配列番号16,配列番号17,配列番号18,配列番号19,配列番号20,配列番号21,配列番号22,配列番号23,配列番号24,配列番号25,配列番号26,配列番号27,配列番号28,配列番号29,配列番号30,およびそれらの15またはそれ以上のヌクレオチドのフラグメントからなる群より選択される1またはそれ以上のオリゴヌクレオチドプライマーを含む,請求項21記載のキット。



【公表番号】特表2008−510467(P2008−510467A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528055(P2007−528055)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【国際出願番号】PCT/US2005/029618
【国際公開番号】WO2006/023768
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(503106111)バイエル・ヘルスケア・エルエルシー (154)
【Fターム(参考)】