説明

長尺の光学補償フィルムの製造方法

【課題】所定の配向角及びNz係数を有し、全幅に亘って配向角及びNz係数のバラツキが小さい長尺の延伸フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の長尺の光学補償フィルムの製造方法は、平均配向角βが、この工程における延伸終了位置における幅方向に対して10〜80°の範囲にある光学フィルムBを得る工程と、前記光学フィルムB上に、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミド−イミド、及びポリエステルイミドからなる群から選ばれる少なくとも一種のポリマーの溶液を塗布してなる塗膜を乾燥させる工程とを含み、平均配向角βが幅方向に対して10〜80°の範囲にあり、且つ、Nz係数の値が1.3以上又は−0.3以下である長尺の光学補償フィルムの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺の光学補償フィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置には、性能向上のために様々な位相差フィルムなどの光学補償フィルムが使用されている。この位相差フィルムは、その機能を十分に発揮するように、偏光子の偏光透過軸や、液晶セルの偏光透過軸などと、特定の種々の角度に遅相軸が傾くように、液晶表示装置に据え付けられる。その遅相軸の傾き角度は、表示装置の側辺に平行でも、垂直でもない角度となることがある。
【0003】
ところで、上述のような、側辺に平行でも、垂直でもない角度に配向した位相差フィルムを得る方法としては、透明な樹脂フィルムを、縦延伸又は横延伸により配向させて長尺の延伸フィルムを得た後、その延伸フィルムの側辺に対して所定の角度で、方形状に裁断する方法が広く知られている。しかしながら、この方法では、最大面積が得られるように裁断しても、裁断ロスが必ず生じ、延伸フィルムの利用効率が低いという問題があった。
【0004】
一方、所定の角度で斜めに配向された長尺の延伸フィルムでは、側辺に対して平行に切り取ることができ、延伸フィルムの利用効率が高くなる。このような斜めに配向軸が傾いたフィルムを延伸によって得る方法が、種々提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、連続的に供給されるポリマーフィルムの両端を保持手段により保持し、該保持手段をフィルムの長手方向に進行させつつ張力を付与して延伸する光学用ポリマーフィルムの延伸方法において、ポリマーフィルムの一方端の実質的な保持開始点から実質的な保持解除点までの保持手段の軌跡L1およびポリマーフィルムのもう一端の実質的な保持開始点から実質的な保持解除点までの保持手段の軌跡L2と、二つの実質的な保持解除点の距離Wが、|L2-L1|>0.4Wの関係を満たし、かつポリマーフィルムの支持性を保ち、揮発分率が5%以上の状態を存在させて延伸したのち、収縮させながら揮発分率を低下させることを特徴とする光学用ポリマーフィルムの延伸方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、熱可塑性樹脂からなる長尺状フィルムを延伸することにより得られ、光軸(配向軸)が長尺状フィルムの巻き取り方向に平行でも垂直でもない方向とされている長尺状光学フィルムの製造方法であって、フィルムが実質的に延伸される領域内において、対向しているフィルムの幅方向両端の移動速度の大きさが等しくかつ移動距離が異なり、フィルムの幅方向両端を保持する一対の治具の内、少なくとも一方がフィルム面に対して波打った形状のレール上を移動されるように延伸を行うことを特徴とする長尺状光学フィルムの製造方法が開示されている。さらに特許文献2ではこの延伸工程を数回繰り返したり、予め縦方向または横方向に延伸した後、この延伸工程を行ってもよいことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-86554号公報
【特許文献2】特開2003-232928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これらの斜め延伸方法により、長尺の延伸フィルムの幅方向に対する配向角が大きい延伸フィルムを生産する場合には、長尺の延伸フィルムの幅方向で配向角のバラツキが大きくなり、またNz係数のバラツキも大きくなる。従って、全幅に亘って配向角及びNz係数のバラツキが小さい光学フィルムを工業的に大量生産することが困難であった。
【0009】
本発明の目的は、所定の配向角及びNz係数を有し、全幅に亘って配向角及びNz係数のバラツキが小さい長尺の光学補償フィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上述目的を達成するために検討した結果、熱可塑性樹脂からなる長尺の未延伸フィルムの延伸に斜め延伸と同時二軸延伸とを組み合わせて用いること、または長尺の未延伸フィルムの延伸に斜め延伸と所定のポリマー溶液の塗布乾燥を組み合わせることにより、所定の配向角及びNz係数を有し、全幅に亘って配向角及びNz係数のバラツキが小さい長尺の光学補償フィルムが得られることを見出し、この知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明の第1の観点によると、n1z<n1x及びn1z<n1y、又は、n1z>n1x及びn1z>n1yを満たす第一光学フィルムを形成する工程と、前記第一光学フィルムを延伸して、平均配向角θが、この工程における延伸終了位置における幅方向に対して10〜80°の範囲にある第二光学フィルムを得る工程とを含み、前記第二光学フィルムの、(n−n)/(n−n)で表されるNz係数の値が1.3以上又は−0.3以下である長尺の光学補償フィルムの製造方法が提供される。ただし、n1xは、波長550nmの光に対する第一光学フィルムの面内の遅相軸方向の屈折率の平均値、n1yは、波長550nmの光に対する第一光学フィルムの面内の進相軸方向の屈折率の平均値、n1zは、波長550nmの光に対する第一光学フィルムの厚み方向の屈折率の平均値、nは、波長550nmの光に対する第二光学フィルムの面内の遅相軸方向の屈折率の平均値、nは、波長550nmの光に対する第二光学フィルムの面内の進相軸方向の屈折率の平均値、nは、波長550nmの光に対する第二光学フィルムの厚み方向の屈折率の平均値を表す。
【0012】
本第1の観点に係る発明おいては、前記第一光学フィルムを形成する工程は、熱可塑性樹脂からなる長尺の透明フィルムを二軸延伸する工程であることが好ましく、前記二軸延伸は、同時二軸延伸であることが好ましい。さらに、前記同時二軸延伸は、フィルムの長手方向に垂直な方向の延伸倍率よりも長手方向の延伸倍率が高い同時二軸延伸ことが好ましい。
【0013】
また、本第1の観点に係る発明においては、前記第一光学フィルムを形成する工程が、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミド−イミド及びポリエステルイミドからなる群から選ばれる少なくとも一種のポリマーの溶液を熱可塑性樹脂からなる長尺の透明フィルム上に塗布してなる塗膜を乾燥させる工程であっても良い。
【0014】
本発明の第2の観点によると、平均配向角αが、この工程における延伸終了位置における幅方向に対して5〜75°の範囲にある光学フィルムAを得る工程と、前記光学フィルムAを同時二軸延伸する工程とを含み、平均配向角αが幅方向に対して10〜80°の範囲にあり、且つ、Nz係数の値が1.3以上又は−0.3以下である長尺の光学補償フィルムの製造方法が提供される。
【0015】
また、本発明の第3の観点によると、平均配向角βが、この工程における延伸終了位置における幅方向に対して10〜80°の範囲にある光学フィルムBを得る工程と、前記光学フィルムB上に、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミド−イミド、及びポリエステルイミドからなる群から選ばれる少なくとも一種のポリマーの溶液を塗布してなる塗膜を乾燥させる工程とを含み、平均配向角βが幅方向に対して10〜80°の範囲にあり、且つ、Nz係数の値が1.3以上又は−0.3以下である長尺の光学補償フィルムの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の長尺の光学補償フィルムの製造方法によれば、所定の配向角及びNz係数を有し、全幅に亘って配向角及びNz係数のバラツキが小さい良好な光学特性を有する光学補償フィルムを精度よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態にかかる同時二軸延伸用テンター延伸機の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる斜め延伸用テンター延伸機の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る長尺の光学補償フィルムの第1の製造方法について説明を行なう。本第1の製造方法は、n1z<n1x及びn1z<n1y、又は、n1z>n1x及びn1z>n1yを満たす第一光学フィルムを形成する第1工程と、第一光学フィルムを延伸して、平均配向角θが、この工程における延伸終了位置における幅方向に対して10〜80°の範囲にある第二光学フィルムを得る第2工程とを含み、各工程を実施することにより、第二光学フィルムの、(n−n)/(n−n)で表されるNz係数の値が1.3以上又は−0.3以下である長尺の光学補償フィルムを製造する。
【0019】
なお、n1xは、波長550nmの光に対する第一光学フィルムの面内の遅相軸方向の屈折率の平均値、n1yは、波長550nmの光に対する第一光学フィルムの面内の進相軸方向の屈折率の平均値、n1zは、波長550nmの光に対する第一光学フィルムの厚み方向の屈折率の平均値、nは、波長550nmの光に対する第二光学フィルムの面内の遅相軸方向の屈折率の平均値、nは、波長550nmの光に対する第二光学フィルムの面内の進相軸方向の屈折率の平均値、nは、波長550nmの光に対する第二光学フィルムの厚み方向の屈折率の平均値を表す。
【0020】
ここで第一光学フィルムを形成する第1工程においては、熱可塑性樹脂からなる長尺の透明フィルムを二軸延伸するが、二軸延伸は、フィルムの配向緩和低減のため同時二軸延伸であることが好ましいが、逐次二軸延伸(縦延伸(フィルム長手方向の延伸)後に横延伸(フィルム長手方向に垂直な方向の延伸)する延伸〔あるいは、横延伸後に縦延伸する延伸〕)とすることも可能である。
【0021】
本実施の形態において、長尺とは、フィルム又は積層体の幅方向に対し少なくとも5倍程度以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍もしくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻回されて保管又は運搬される程度の長さを有するものをいう。
【0022】
本実施の形態に係る長尺のフィルムに用いる熱可塑性樹脂としては、固有複屈折値が正または固有複屈折値が負の樹脂が用いられる。
【0023】
固有複屈折値が正である樹脂の材料としては、例えば、脂環式オレフィンポリマー、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどを挙げることができる。これらの中で、脂環式オレフィンポリマーを特に好適に用いることができる。
【0024】
本発明に好適に用いられる脂環式オレフィンポリマーは、主鎖及び/または側鎖に脂環構造を有する非晶性樹脂である。
【0025】
脂環式オレフィンポリマー中の脂環構造としては、飽和脂環炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環炭化水素(シクロアルケン)構造などが挙げられるが、機械強度、耐熱性などの観点から、飽和脂環炭化水素(シクロアルカン)構造が好ましい。脂環構造を構成する炭素原子数には、格別な制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個であるときに、機械強度、耐熱性、及びフィルムの成形性の特性が高度にバランスされ、好適である。
【0026】
脂環式オレフィンポリマーを構成する脂環構造を有する繰り返し単位の割合は、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式オレフィンポリマー中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合がこの範囲にあると透明性および耐熱性の観点から好ましい。
【0027】
脂環式オレフィンポリマーの具体例としては、ノルボルネン樹脂、単環の環状オレフィン樹脂、環状共役ジエン樹脂、ビニル脂環式炭化水素樹脂、及び、これらの水素化物等を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン樹脂は、透明性と成形性が良好なため、好適に用いることができる。
【0028】
ノルボルネン樹脂としては、例えば、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との開環共重合体、又はそれらの水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との付加共重合体、又はそれらの水素化物等を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環(共)重合体水素化物は、透明性、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、特に好適に用いることができる。
【0029】
ノルボルネン構造を有する単量体としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、およびこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)などを挙げることができる。ここで、置換基としては、例えばアルキル基、アルキレン基、極性基などを挙げることができる。また、これらの置換基は、同一または相異なって複数個が環に結合していてもよい。ノルボルネン構造を有する単量体は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
極性基の種類としては、ヘテロ原子、またはヘテロ原子を有する原子団などが挙げられる。ヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子などが挙げられる。極性基の具体例としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、ニトリル基、スルホン基などが挙げられる。飽和吸水率の小さいフィルムを得るためには。極性基の量が少ない方が好ましく、極性基を持たない方がより好ましい。
【0031】
ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な他の単量体としては、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのモノ環状オレフィン類およびその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエンなどの環状共役ジエンおよびその誘導体;などが挙げられる。
【0032】
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体およびノルボルネン構造を有する単量体と共重合可能な他の単量体との開環共重合体は、単量体を公知の開環重合触媒の存在下に(共)重合することにより得ることができる。
【0033】
ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどの炭素数2〜20のα−オレフィンおよびこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどのシクロオレフィンおよびこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエンなどの非共役ジエンなどが挙げられる。これらの単量体は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。
【0034】
ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体およびノルボルネン構造を有する単量体と共重合可能な他の単量体との付加共重合体は、単量体を公知の付加重合触媒の存在下に重合することにより得ることができる。
【0035】
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の水素化物、ノルボルネン構造を有する単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環共重合体の水素化物、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体の水素化物、およびノルボルネン構造を有する単量体とこれと付加共重合可能なその他の単量体との付加共重合体の水素化物は、これら開環(共)重合体又は付加(共)重合体の溶液に、ニッケル、パラジウムなどの遷移金属を含む公知の水素化触媒を添加し、水素を接触させて、炭素−炭素不飽和結合を好ましくは90%以上水素化することによって得ることができる。
【0036】
脂環式オレフィンポリマーとしては、例えば特開平05-310845号公報、特開平05-097978号公報、米国特許第6,511,756号公報に記載されているものが挙げられる。 また、固有複屈折値が負の樹脂の材料としては、ビニル芳香族系重合体を挙げることができる。ビニル芳香族系重合体としては、例えば、ポリスチレン、スチレン、又は、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン、p-ニトロスチレン、p-アミノスチレン、p-カルボキシスチレン、p-フェニルスチレンなどのビニル芳香族単量体と、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、(メタ)アクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、酢酸ビニルなどのその他の単量体との共重合体などを挙げることができる。これらの中で、ポリスチレン又はスチレンと無水マレイン酸との共重合体を好適に用いることができる。
【0037】
本実施の形態で用いる熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度が、好ましくは80℃以上、より好ましくは100〜250℃である。また、熱可塑性樹脂の光弾性係数の絶対値は、好ましくは10×10-12Pa-1以下、より好ましくは7×10-12Pa-1以下、特に好ましくは4×10-12Pa-1以下である。光弾性係数Cは、複屈折をΔn、応力をσとしたとき、C=Δn/σで表される値である。光弾性係数がこのような範囲にある透明樹脂を用いると、光学フィルムの面内方向リターデーションReのバラツキを小さくすることができる。さらにこのような光学補償フィルムを液晶表示装置に適用した場合に、液晶表示装置の表示画面の端部の色相が変化する現象を抑えることができる。
【0038】
本実施の形態に用いる熱可塑性樹脂は、顔料や染料のごとき着色剤、蛍光増白剤、分散剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、酸化防止剤、滑剤、溶剤などの配合剤が適宜配合されたものであってもよい。ここで配合剤の配合量は、特に制限されず、熱可塑性樹脂中0〜5重量%である。
【0039】
また、第1工程において用いられる熱可塑性樹脂により構成される長尺の透明フィルム(以下、「原反」ということがある。)は、公知の方法、例えば、キャスト成形法、押出成形法、インフレーション成形法などによって得ることができる。これらのうち押出成形法が残留揮発性成分量が少なく、寸法安定性にも優れるので好ましい。この原反は、その固有複屈折値が正である場合には、単層若しくは2層以上の積層フィルムであってもよいが、その固有複屈折値が負である場合には、延伸を可能とするため、他の透明樹脂(固有複屈折値が負のフィルムを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも低いガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂)により挟んだ三層構造とすることが好ましい。
【0040】
積層フィルムは共押出成形法、フィルムラミネーション法、塗布法などの公知の方法で得ることができる。これらのうち共押出成形法が好ましい。
【0041】
本実施の形態において、延伸後の光学特性を均一にするため原反の厚みムラは極力小さくする必要があり、最大値-最小値の値で3μm以下、好ましくは2μm以下が好ましい。原反の厚みは、通常40〜500μm、好ましくは50〜300μm、より好ましくは50〜200μmである。
【0042】
この第1の製造方法の第1工程として同時二軸延伸を行う場合は、図1に示す同時二軸延伸用テンター延伸機4を用いて行なわれる。図1に示す同時二軸延伸用テンター延伸機4は、パンタグラフ式テンター延伸機と呼ばれるものである。その他の同時二軸延伸機としてはスクリュー式テンター延伸機、リニアモーター式テンター延伸機などがあるが、把持クリップの間隔を広げるための駆動方式が相違するだけである。したがって、いずれの方式の同時二軸延伸機でも適用が可能である。
【0043】
図1に示す同時二軸延伸用テンター延伸機4では、図示しない巻き取りロールから送り出された原反45の端部を把持する複数の把持クリップ32を原反45の両側端に具備し、折尺状に形成された複数個の等長リンク装置より構成された無端リンク装置(図中リンクの一部並びに片側の無端リンクは省略)34を設け、無端リンク装置34を原反45の入口側スプロケット36で駆動することにより、無端リンク装置34がフィルム進行方向(図1では左から右へ)に末広がり状に配置されたガイドレール38,40,42および44に案内されて、把持クリップ32の間隔を徐々に拡大させて端部が把持された原反45を縦横二方向に同時に延伸させ二軸延伸フィルム46を得、さらに二軸延伸フィルム46の端部を把持クリップ32から外して、無端リンク装置34を出口側スプロケット37により駆動して入口側スプロケット36に戻るように構成されている。
【0044】
本実施の形態にかかる同時二軸延伸用テンター延伸機4は、図1中の上下のガイドレール38及び40の間、42及び44の間にパンタグラフの各節を支持する部材がガイドレール長手方向に稼動可能に挟持されている。ガイドレール38及び40の一組と、ガイドレール42及び44の一組とは独立にスライドすることができ、このスライドによってできるレールレイアウトによってMD方向(フィルム長手方向)の把持クリップの間隔の広がり方、TD方向(フィルム幅方向)の把持クリップの間隔の広がり方を調整できるように構成されている。
【0045】
すなわち、ガイドレール40とガイドレール44との間の距離が変わるとパンタグラフの開き幅が変化し、パンタグラフの先に付いている把持クリップ32のMD方向の間隔が調整できる。ガイドレール40とガイドレール44との間の距離が長くなるとリンク装置34のパンタグラフが閉じMD方向の把持クリップ32の間隔が狭くなる。逆にガイドレール40とガイドレール44との間の距離が短くなるとリンク装置34のパンタグラフが開きMD方向の把持クリップ32の間隔が広くなる。各ガイドレールは独立にスライド移動できるので、図中上側のガイドレール40とガイドレール44との間の距離と、図中下側のガイドレール40とガイドレール44との間の距離とを独立に調整し、図1中の上側のMD方向の把持クリップ間隔の広がり方と下側のMD方向把持クリップの間隔の広がり方を同じようにすることもできるし、異ならせることもできる。
【0046】
一方、図1中の上下のガイドレール38のTD方向の距離によって、把持クリップ32のTD方向の間隔が調整できる。各ガイドレールは独立にスライド移動できるので、図中上側のガイドレール38のTD方向の上側への広がり幅(図1中におけるt1)と、下側のガイドレール38のTD方向の下側への広がり幅(図1中におけるt2)とを同じにすることもできるし、異ならしめることもできる。この実施の形態においては、同時二軸延伸用テンター延伸機4の各ガイドレールの間隔を調整してMD方向の延伸倍率が高くなるような延伸条件(原反の材料が、固有複屈折値が正の樹脂である場合には、MD方向の配向が残るような延伸条件;原反の材料が、固有複屈折値が負の樹脂から構成される場合には、TD方向の配向が残るような延伸条件)、即ち、原反の材料が、固有複屈折値が正の樹脂である場合には、平均配向角θ1が二軸延伸フィルム46の巻き取り方向に対して略平行になるような延伸条件で、原反の材料が、固有複屈折値が負の樹脂から構成される場合には、平均配向角θ1が二軸延伸フィルム46の巻き取り方向に対して略垂直になるような延伸条件で同時二軸延伸を行なう。
【0047】
この同時二軸延伸用テンター延伸機4内は、原反45を延伸するのに適した温度に加熱する予熱ゾーンA2、把持クリップ間隔が広がって延伸が行なわれる延伸ゾーンB2、延伸されたフィルムの延伸状態を安定化させるための固定ゾーンC2に分けられる。それぞれの区間の温度は、熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tg(℃)(熱可塑性樹脂が二種類以上ある構成の場合は、一番高いガラス転移温度)に対して、予熱ゾーンA2はTg−5(℃)〜Tg+20(℃)、延伸ゾーンB2はTg−5(℃)〜Tg+20(℃)、固定ゾーンC2はTg−5(℃)〜Tg+20(℃)である。第一工程における延伸倍率は、フィルムの長手方向、フィルムの幅方向、それぞれ、通常1.1〜2.0倍、好ましくは1.2〜1.8倍である。また、前記延伸倍率は、長手方向の延伸倍率の方が高いことが好ましい。
【0048】
以上のようにして同時二軸延伸用テンター延伸機4内を通過した同時二軸延伸フィルム(第一光学フィルム)46は、図示しない巻き取りロールの手前で把持クリップ32から開放され、巻き取りロールに巻き取られる。ここで第一光学フィルム46は、原反45の材料が、固有複屈折値が正の樹脂である場合には、n1z<n1x及びn1z<n1y、の条件を満たし、原反45の材料が、固有複屈折値が負の樹脂から構成される場合には、n1z>n1x及びn1z>n1yを満たす。なお、原反が、固有複屈折値が負の樹脂から構成されるとは、原反の材料として固有複屈折値が負の樹脂の樹脂を含み、且つ、原反を延伸後にn1z>n1x及びn1z>n1yの特性を発現させる構成(例えば、固有複屈折値が負の樹脂からなるフィルムの両面に、固有複屈折値が負の樹脂のガラス転移温度よりも20℃以上低いガラス転移温度を有する樹脂からなるフィルムを積層させた積層体とする構成。(なお、当該積層体を延伸可能とするために、延伸温度を固有複屈折値が負の樹脂のガラス転移温度付近に設定する。))であることをいう。
【0049】
なお、本実施の形態において、第一光学フィルム46は、巻き取りロールに巻き取られ、巻回体にしてから次の延伸工程(第2工程)に供給しているが、巻き取りロールに巻き取らずに、直接次の延伸工程に供給してもよい。
【0050】
第2工程は、図2に示す斜め延伸用テンター延伸機2を用いて行なわれる。図2に示す斜め延伸用テンター延伸機2は、引き出しロール(第一光学フィルム巻回体)10と、巻き取りロール12と、予熱ゾーンA1、延伸ゾーンB1および固定ゾーンC1からなる恒温室14と、フィルムを搬送するための把持クリップ(図示せず)が走行するレール16とを備えている。
【0051】
把持クリップは、引き出しロール10から繰り出された第一光学フィルム(第1工程における第1光学フィルム46)11の両端を把持し、予熱ゾーンA1、延伸ゾーンB1および固定ゾーンC1からなる恒温室14内に第一光学フィルム11を導き斜め延伸する。そして、巻き取りロール12の手前で斜め延伸フィルム(第二光学フィルム)13を開放する。把持クリップから開放された第二光学フィルム13は巻き取りロール12によって巻き取られる。左右一対のレール16は、末端のない連続した無限軌道を有し、第二光学フィルム13を開放した把持クリップを、順次、恒温室14の出口側から入口側に戻すように構成されている。
【0052】
本実施の形態に係る斜め延伸用テンター延伸機2においては、図2に示すように、予熱ゾーンA1のフィルム走行方向(フィルム繰り出し方向)が、固定ゾーンC1のフィルム走行方向(フィルム巻き取り方向)に対して、角度θ傾いている。即ち、引き出しロール10から第一光学フィルム11が繰り出される方向と、巻き取りロール12に第二光学フィルム13が巻き取られる方向は、非平行に構成されている。図2に示す斜め延伸用テンター延伸機2では、フィルムの走行方向に対して左側にレール16が屈曲しているが、図2の予熱ゾーンA1のフィルム走行方向を軸に線対称にした、右側にレールが屈曲するようにしてもよい。
【0053】
延伸ゾーンB1は、この斜め延伸用テンター延伸機2のように、フィルム走行方向が変化せずに直線状になっていることが好ましい。フィルムの走行方向を変化させないことにより延伸フィルムの光学特性を良好なものとすることができる。なお、レール16の開き角度は延伸倍率に応じて適宜選択できる。固定ゾーンC1のフィルム走行方向(フィルム巻き取り方向)は、図2に示すようにθの角度で予熱ゾーンA1のフィルム走行方向(フィルム繰り出し方向)から傾いている。このために、図中の上側の把持クリップは下側の把持クリップよりも遠回りすることになり、これにより斜め延伸が行なわれる。
【0054】
即ち、未延伸フィルム11は、予熱ゾーンA1、延伸ゾーンB1および固定ゾーンC1からなる恒温室14内を通過している間に、把持クリップからの張力によって延伸される。予熱ゾーンA1、延伸ゾーンB1および固定ゾーンC1は、それぞれ独立に温度を設定でき、それぞれのゾーンでは温度が、通常、一定に保たれている。各ゾーンの温度は適宜選択できるが、第一光学フィルム11を構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tg(℃)(熱可塑性樹脂が二種類以上ある構成の場合は、一番高いガラス転移温度)に対して、予熱ゾーンはTg〜Tg+30(℃)、延伸ゾーンはTg〜Tg+20(℃)、固定ゾーンはTg〜Tg+15(℃)である。
【0055】
本実施の形態においては幅方向の厚みムラの制御のために延伸ゾーンB1において幅方向に温度差を付けてもよい。特に把持クリップ付近の温度をフィルム中央部よりも高めにすることが好ましい。延伸ゾーンB1において幅方向に温度差をつけるには、温風を恒温室14内に送り込むノズルの開度を幅方向で差を付けるように調整する方法や、ヒータを幅方向に並べて加熱制御するなどの公知の手法を用いることができる。予熱ゾーンA1、延伸ゾーンB1および固定ゾーンC1の長さは適宜選択でき、通常、延伸ゾーンB1の長さに対して、予熱ゾーンA1の長さが通常100〜150%、固定ゾーンC1の長さが通常50〜100%である。
【0056】
なお、予熱ゾーンA1と延伸ゾーンB1との境目18および延伸ゾーンB1と固定ゾーンC1との境目20には、フィルムが通過できるスリットを有する仕切板が設置されている。予熱ゾーンA1は、予熱ゾーンA1のフィルム走行方向に直角な方向のフィルム長さを実質的に変えずにフィルムを温めながらフィルムを搬送するゾーンである。予熱ゾーンA1のフィルム走行方向は、フィルムの繰り出し方向に平行な方向であり、通常、引き出しロール10の回転軸と直交している。
【0057】
延伸ゾーンB1は、延伸ゾーンB1のフィルム走行方向に直角な方向のフィルム長さを大きくしながらフィルムを搬送するゾーンである。延伸ゾーンB1におけるフィルム走行方向は、延伸ゾーンB1が図2のように傾きを変えずに一定の角度で広がったレール配置においては、予熱ゾーンA1と延伸ゾーンB1の境目におけるフィルムの中点から延伸ゾーンB1と固定ゾーンC1の境目におけるフィルムの中点に結んだ直線の方向である。
【0058】
固定ゾーンC1は、固定ゾーンC1のフィルム走行方向に直角な方向のフィルム長さを実質的に変えずにフィルムを冷ましながらフィルムを搬送するゾーンである。固定ゾーンC1のフィルム走行方向は、フィルムの巻き取り方向に平行な方向であり、通常、巻き取りロール12の回転軸と直交している。
【0059】
本実施の形態に係る製造方法では、予熱ゾーンA1、延伸ゾーンB1および固定ゾーンC1におけるフィルム面が互いに略平行であることが好ましい。すなわち、引き出しロール10から引き出されたフィルムは、捩れずに、平らなままで、予熱ゾーンA1、延伸ゾーンB1および固定ゾーンC1を通過し、巻き取りロール12に巻き取られるのが好ましい。
【0060】
本実施の形態に係る製造方法では、把持クリップの走行速度がフィルム両端で略等しい。把持クリップの走行速度は適宜選択できるが、通常、10〜100m/分である。把持クリップの走行速度は、把持クリップによりフィルムを把持してからフィルムを開放するまで、一定に保たれる。左右一対の把持クリップの走行速度の差は、走行速度の通常1%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下である。把持クリップがこのような走行速度でレール16上を走行することにより、延伸フィルムの光学特性のバラツキを防止することができる。
【0061】
第2工程における延伸倍率は、通常1.3〜2.0倍、好ましくは1.5〜1.8倍である。延伸倍率Rがこの範囲にあると幅方向の厚みムラが小さくなるので好ましい。当該延伸倍率は、延伸フィルムの幅方向の長さ変化量から求めることができる。具体的には、第1工程前の原反の幅をW、第1工程後の第一光学フィルムの幅をW1とすると、延伸倍率RはW/Wにより求めることができる。
【0062】
第2工程における角度θは、5〜75°、好ましくは5〜40°の範囲内で適宜選択される。
【0063】
以上のようにして恒温室内を通過した延伸フィルム(第二光学フィルム)13は、巻き取りロール12の手前で把持クリップから開放され、巻き取りロール12に巻き取られる。このようにして、平均配向角θが、この工程における延伸終了位置における幅方向に対して10〜80°、好ましくは40〜50°の範囲にあり、(n−n)/(n−n)で表されるNz係数の値が1.3以上又は−0.3以下である第二光学フィルム(光学補償フィルム)13が製造される。なお、第二光学フィルム13は、原反45の材料が、固有複屈折値が正の樹脂から構成される場合には、Nz係数の値が1.3以上となり、原反45の材料が、固有複屈折値が負の樹脂から構成される場合には、Nz係数の値が−0.3以下となる。
【0064】
なお、必要に応じて、巻きとりロールに巻き取る前に、テンター延伸機の把持クリップで把持されていたフィルムの両端をトリミングしてもよい。また、巻き取る前に、フィルム同士のブロッキングを防止する目的で、マスキングフィルムを重ねて同時に巻き取ってもよいし、延伸フィルムの少なくとも一方、好ましくは両方の端にテープ等を張り合わせながら巻き取ってもよい。マスキングフィルムとしては、上記フィルムを保護することができるものであれば特に制限されず、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどがあげられる。
【0065】
また、本実施の形態における第1工程の同時二軸延伸と第2工程の斜め延伸においては、第1工程の同時二軸延伸により発現するリターデーションRe1と第2工程の斜め延伸により発現するリターデーションRe2とが、Re1>Re2の関係を有するような、延伸条件でそれぞれの工程における延伸を行なうことが好ましい。それぞれの工程における延伸条件は、未延伸フィルムを用い斜め延伸と同時二軸延伸とを別々に行いその結果に基づいて定める。Re1>Re2とすることにより、得られる光学補償フィルムの配向軸を、同時二軸延伸において面内配向軸が発現する方向と、斜め延伸において面内配向軸が発現する方向の、間の方向に効果的に発現させることができる。加えて、得られる光学補償フィルムの厚みムラを、効果的に小さくすることができる。ここで、斜め延伸において面内配向軸が発現する方向とは、原反の材料が、固有複屈折値が正の樹脂から構成される場合には、原反の延伸方向のことを指し、原反の材料が、固有複屈折値が負の樹脂から構成される場合には、原反の延伸方向の面内直交方向のことを指す。
【0066】
次に、本実施の形態に係る長尺の光学補償フィルムの第2の製造方法について説明する。この第2の製造方法は、第1の製造方法の第1工程を、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミド−イミド及びポリエステルイミドからなる群から選ばれる少なくとも一種のポリマーの溶液を熱可塑性樹脂からなる長尺の透明フィルム上に塗布してなる塗膜を乾燥させる工程に変更し、この第1工程により、n1z<n1x及びn1z<n1y、又は、n1z>n1x及びn1z>n1yを満たす第一光学フィルム得、第1光学フィルムを第1の製造方法の第2工程と同様の工程により斜め延伸して第二光学フィルムを製造する。このようにして、平均配向角θが、第2工程における延伸終了位置における幅方向に対して10〜80°、好ましくは40〜50°の範囲にあり、(n−n)/(n−n)で表されるNz係数の値が1.3以上又は−0.3以下である光学補償フィルムを製造する。
【0067】
なお、この第1工程により得られる第一光学フィルムのn1x、n1y及びn1zの大小関係、並びにNz係数は、塗布するポリマーにより変えることができ、例えば塗布するポリマーが、特開2004−46065号公報や特開2005−114836号公報に記載のポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミド−イミド及びポリエステルイミドからなる群から選ばれる少なくとも一種であるのときにn1z<n1x及びn1z<n1yを満たし、塗布するポリマーが、特開2006−3715号公報に記載のポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミド−イミド及びポリエステルイミドからなる群から選ばれる少なくとも一種であるのときにn1z>n1x及びn1z>n1yを満たす。また、第一光学フィルムがn1z<n1x及びn1z<n1yを満たす場合には、Nz係数の値が1.3以上となり、n1z>n1x及びn1z>n1yを満たす場合には、Nz係数の値が−0.3以下となる。
【0068】
第2の製造方法に用いられるポリマー溶液としては、通常、前記ポリマーを溶媒に溶解させたものが挙げられる。前記溶媒としては、前記ポリマーを溶解させることができるものであれば、特に制限されず、使用するポリマーに応じて適宜決定できる。具体的には、ハロゲン化炭化水素類;芳香族炭化水素類;ケトン系溶媒;エステル系溶媒;アルコール系溶媒;ニトリル系溶媒;エーテル系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、一種類でもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0069】
前記ポリマー溶液は、溶媒100重量部に対して、前記ポリマーが5〜50重量部の範囲で配合されることが好ましい。また、塗布方法は、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、バーコート法等の公知方法で行うことができる。
【0070】
また、前記ポリマー溶液には、必要に応じて、安定剤、可塑剤、金属類等を含む種々の添加剤を配合してもよい。
【0071】
前記ポリマー溶液を塗布してなる塗膜の乾燥は、自然乾燥、風乾、加熱乾燥等により行うことができる。加熱乾燥の場合、その温度は特に制限されないが、例えば、25〜250℃であり、好ましくは40〜200℃である。また、塗膜の乾燥は、透明フィルムに塗布した状態で行ってもよいし、透明フィルムから剥離して行ってもよい。
【0072】
次に、本実施の形態に係る長尺の光学補償フィルムの第3の製造方法について説明する。この第3の製造方法は、原反を第1の製造方法の第2工程で用いたのと同様な斜め延伸用テンター延伸機を用いて斜め延伸を行い、平均配向角αが、この工程における延伸終了位置における幅方向に対して5〜75°の範囲にある光学フィルムAを得る工程と、光学フィルムAを第1の製造方法の第1工程で用いたのと同様な同時二軸延伸用テンター延伸機を用いて同時二軸延伸する工程とを含み、各工程を実施することにより、平均配向角αが幅方向に対して10〜80°の範囲にあり、且つ、係数Nz値が1.3以上又は−0.3以下である長尺の光学補償フィルムを製造する。なお、第1工程の斜め延伸及び第2工程の同時二軸延伸は、それぞれ第1の製造方法と同一の延伸条件により行なう。第3の製造方法において、光学フィルムAの平均配向角αは、好ましくは5〜40°の範囲である。
【0073】
次に、本実施の形態に係る長尺の光学補償フィルムの第4の製造方法について説明する。この第4の製造方法は、原反を第1の製造方法の第2工程で用いたのと同様な斜め延伸用テンター延伸機を用いて斜め延伸を行い、平均配向角βが、この工程における延伸終了位置における幅方向に対して10〜80°の範囲にある光学フィルムBを得る工程と、光学フィルムBにポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミド−イミド及びポリエステルイミドからなる群から選ばれる少なくとも一種のポリマーの溶液を光学フィルムB上に塗布してなる塗膜を乾燥させる工程とを含み、各工程を実施することにより、平均配向角βが幅方向に対して10〜80°の範囲にあり、且つ、係数Nz値が1.3以上又は−0.3以下である長尺の光学補償フィルムを製造する。ここで、塗布するポリマーが、特開2004−46065号公報や特開2005−114836号公報に記載のポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミド−イミド及びポリエステルイミドからなる群から選ばれる少なくとも一種であるのときにNz係数の値が1.3以上となり、塗布するポリマーが特開2006−3715号公報に記載のポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミド−イミド及びポリエステルイミドからなる群から選ばれる少なくとも一種であるときにNz係数の値が−0.3以下となる。なお、第1工程の斜め延伸は、第1の製造方法と同一の延伸条件により行なう。また、光学フィルムBにポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミド−イミド及びポリエステルイミドからなる群から選ばれる少なくとも一種のポリマーの溶液を光学フィルムB上に塗布してなる塗膜を乾燥させる工程は、第2の製造方法における第一光学フィルムを得る工程と同様の条件により行う。第4の製造方法において、θは10〜80°、好ましくは40〜50°の範囲であり、平均配向角βは好ましくは40〜50°の範囲である。
【0074】
上述の各実施の形態の長尺の光学補償フィルムの製造方法によれば、所定の配向角およびNz係数を有し、配向角及びNz係数のバラツキが小さい光学特性に優れた長尺の光学補償フィルムを精度よく製造することができる。
【0075】
上述の各実施の形態に係る光学補償フィルムは、上述のように平均配向角がフィルムの幅方向、即ちフィルムの長手方向と直交する方向を0°としたとき10〜80°の範囲、好ましくは40〜50°の範囲内にあるが、用いられる表示装置の設計によってこの範囲内での最適値が選択される。
【0076】
また、上述の各実施の形態に係る光学補償フィルムは、配向角のバラツキが、幅方向の少なくとも1350mmにおいて1.2°以下であり、好ましくは1.0°以下であり、より好ましくは0.8°以下である。配向角のバラツキが1.2°を超える光学補償フィルムを、偏光板と貼り合せて円偏光板を得、これを液晶表示装置に据え付けると、光漏れが生じ、コントラストを低下させてしまうことがある。なお、上述の各実施の形態において、配向角は、フィルムの幅方向と配向軸(フィルム面内の遅相軸)とがなす角度のうち、小さい方の角度とする。なお、平均配向角は、市販の偏光顕微鏡を用いて、光学補償フィルムの配向角を幅方向に50mm間隔で測定し、その平均値とする。また、配向角のバラツキは、各測定値の最大値から最小値を差し引いた値とする。
【0077】
上述の各実施の形態に係る光学補償フィルムは、フィルムの面内の遅相軸方向の屈折率の平均値をn、フィルム面内で遅相軸に直交する方向の屈折率の平均値をn、フィルムの厚み方向の屈折率の平均値をnとしたとき、(n-n)/(n-n)で表されるNz係数が1.3以上または−0.3以下、好ましくは1.7〜30.0または−29.0〜−0.7、より好ましくは2.1〜10.0または−9.0〜−1.1の範囲であるが、用いられる液晶表示装置の設計によってこの範囲内での最適値が選択される。なお、本実施形態においては、原反の厚みが薄くとも効率的にNz係数を上記範囲内とすることが可能である。
【0078】
上述の各実施の形態に係る光学補償フィルムは、Nz係数のバラツキが、幅方向の少なくとも1350mmにおいて、0.13以下、好ましくは0.10以下、より好ましくは0.09以下、さらに好ましくは0.08以下である。Nz係数のバラツキが0.13を超えると、これを液晶表示装置に組み込むと、色ムラなどの表示品位低下の原因となる。なお、Nz係数は、市販の位相差測定装置を用いて、光学補償フィルムの屈折率を幅方向に50mm間隔で測定し、上記式に基づいて算出する。また、Nz係数のバラツキは、各測定値の最大値から最小値を差し引いた値とする。
【0079】
上述の各実施の形態において、光学補償フィルムの平均厚みは、機械的強度などの観点から、好ましくは20〜200μm、さらに好ましくは30〜80μm、特に好ましくは30〜50μmである。また、光学補償フィルムの幅方向の厚みムラは巻き取りの可否に影響を与えるため、好ましくは3μm以下、より好ましくは2μm以下である。ここで平均厚みは、市販の厚み測定装置を用いて、光学補償フィルムを幅方向に50mm間隔で測定し、その平均値を平均厚みとする。また、厚みムラは、各測定値の最大値から最小値を差し引いた値とする。
【0080】
上述の各実施の形態において、長尺の光学補償フィルムは、幅が少なくとも1350mm、好ましくは少なくとも1500mm以上である。長尺の光学補償フィルムは、その製造工程において、任意に、延伸後にその幅方向の両端を切り落として作成されるが、この場合、フィルムの幅は、両端を切り落とした後の寸法とすることができる。
【0081】
上述の各実施の形態に係る光学補償フィルムは、残留揮発性成分の含有量が、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.05重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下である。残留揮発性成分の含有量が多いと経時的に光学特性が変化するおそれがある。揮発性成分の含有量を上記範囲にすることにより、寸法安定性が向上し、面内方向リターデーションReや厚み方向リターデーションRth(=((n+n)/2-n)×d;nは面内遅相軸方向の屈折率;nは面内で遅相軸に直交する方向の屈折率;nは厚さ方向の屈折率;dはフィルムの平均厚み)の経時変化を小さくすることができ、さらにこの光学補償フィルムを備える円偏光板や液晶表示装置の劣化を抑制でき、表示画像を長期間良好な状態に保つことができる。
【0082】
なお、揮発性成分は、フィルム中に微量含まれる分子量200以下の物質であり、例えば、残留単量体や溶媒などが挙げられる。揮発性成分の含有量は、フィルム中に含まれる分子量200以下の物質の合計として、フィルムをクロロホルムに溶解させてガスクロマトグラフィーにより分析することにより定量することができる。
【0083】
上述の各実施の形態において、光学補償フィルムは、飽和吸水率が、好ましくは0.03重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下、特に好ましくは0.01重量%以下である。飽和吸水率が上記範囲であると、面内方向リターデーションReや厚み方向リターデーションRthの経時変化を小さくすることができ、さらには円偏光板や液晶表示装置の劣化を抑制でき、表示画像を長期間良好な状態に保つことができる。ここで、飽和吸水率は、JIS K7209に準拠して、フィルムの試験片を23℃の水中に24時間、浸漬し、試験片の質量変化、すなわち、浸漬前と浸漬後の質量の差を測定して求め、浸漬前の百分率として表される値である。
【0084】
上述の各実施の形態に係る光学補償フィルムは、長尺の偏光子と積層して長尺の積層フィルムを形成することができる。ここで偏光子は、直角に交わる二つの直線偏光の一方を透過するものである。例えば、ポリビニルアルコールフィルムやエチレン酢酸ビニル部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムにヨウ素や二色性染料などの二色性物質を吸着させて一軸延伸させたもの、前記親水性高分子フィルムを一軸延伸して二色性物質を吸着させたもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン配向フィルムなどが挙げられる。その他に、グリッド偏光子や異方性多層フィルムなどの反射性偏光子が挙げられる。偏光子の厚さは、通常5〜80μmである。
【0085】
上述の各実施の形態に係る光学補償フィルムは、偏光子の両面に積層させても片面に積層させてもよく、また積層する数にも特に限定はなく、2枚以上積層させてもよい。なお、光学補償フィルム(斜め延伸フィルム)に偏光子を積層させる場合には、接着性を向上させるために、斜め延伸フィルム上にポリイミドなどを塗布し、その上に偏光子を積層させることが好ましい。偏光子の片面のみに、光学補償フィルムを積層した場合は、残りの片面に偏光子の保護を目的として、適宜の接着層を介して保護フィルムを積層してもよい。保護フィルムとしては、適宜な透明フィルムを用いることができる。中でも、透明性や機械的強度、熱安定性や水分遮蔽性等に優れる樹脂を有するフィルム等が好ましく用いられる。その樹脂の例としては、トリアセチルセルロースの如きアセテート重合体、脂環式オレフィンポリマー、鎖状ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートの如きポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、アクリル重合体等が挙げられる。
【0086】
上述の長尺の積層フィルムを得るための好適な製造方法は、本実施の形態に係る光学補償フィルムの巻回体および偏光子巻回体からそれぞれ同時にフィルムを繰り出しながら、該光学補償フィルムと該偏光子とを密着させることを含む方法である。光学補償フィルムと偏光子との密着面には接着剤を介在させることができる。光学補償フィルムと偏光子とを密着させる方法としては、二本の平行に並べられたロールのニップに光学補償フィルムと偏光子を一緒に通し圧し挟む方法が挙げられる。
【0087】
本実施の形態に係る長尺の光学補償フィルムまたは長尺の円偏光板は、その使用形態に応じて所望の大きさに切り出して、位相差板または偏光板として用いられる。この場合、長尺のフィルムの巻き取り方向に対して、垂直または平行な方向に沿って切り出すことができるため、光学補償フィルムを無駄なく使用することができる。
【0088】
上述の実施の形態に係る長尺の光学補償フィルム又は長尺の積層フィルムは、所望の大きさに裁断して液晶表示装置に用いられる。液晶表示装置の一例としては、偏光透過軸を電圧の調整で変化させることができる液晶パネルと、それを挟むように配置される円偏光板とで構成されるものが挙げられる。また、前述の光学補償フィルムは位相差板として、光学補償、偏光変換などのために液晶表示装置に用いられる。なお、液晶表示装置には、液晶パネルに光を送りこむために、表示面の裏側に、透過型液晶表示装置ではバックライト装置が、反射型液晶表示装置では反射板が、通常備えられている。なお、バックライト装置としては、冷陰極管、水銀平面ランプ、発光ダイオード、ELなどが挙げられる。
【0089】
液晶表示装置としては、反射型表示方式の液晶パネルを備える反射型液晶表示装置が好ましい。液晶パネルはその表示モードによって特に制限されない。例えば、ツイステッドネマチック(TN)モード、スーパーツイステッドネマチック(STN)モード、ハイブリッドアラインメントネマチック(HAN)モード、バーティカルアラインメント(VA)モード、マルチドメインバーティカルアラインメント(MVA)モード、オプティカルコンペンセイテッドベンド(OCB)モード、インプレーンスイッチング(IPS)モードなどを挙げることができる。液晶表示装置には、その他に、プリズムアレイシート、レンズアレイシート、光拡散板、導光板、拡散シート、輝度向上フィルム等の適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【実施例】
【0090】
以下、本発明の実施例及び比較例を示しながら、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0091】
本実施例における評価は、以下の方法によって行う。
【0092】
(1)平均配向角θ及び配向角のバラツキ
偏光顕微鏡(オリンパス社製、BX51)を用いて、フィルムの幅方向50mm間隔で測定し、面内の遅相軸を測定し、遅相軸の方向とフィルムの幅方向との成す角度(配向角)の平均値を求め、これを平均配向角θとした。配向角θのバラツキは、配向角の最大値と最小値の差とした。
【0093】
(2)平均Nz係数及びそのバラツキ
位相差計(王子計測社製、KOBRA-21ADH)を用いて、フィルムの幅方向50mm間隔でNz係数を測定し、それぞれについて平均値を求めた。Nz係数のバラツキは、Nz係数の最大値と最小値の差とした。
【0094】
(3)実施例に係る円偏光板を用いた液晶表示装置の表示特性
透過軸が幅方向にある長尺の偏光子(サンリッツ社製、HLC2−5618S,厚さ180μm)と、各実施例の光学補償フィルムを貼り合わせて長尺の積層フィルムを得、この積層フィルムから切り出した円偏光板を、市販の反射型液晶表示装置のバックライト側の偏光板と置き換え、光学補償フィルムを貼り合わせた側が液晶セル側に配置されるように組み込み、得られた液晶表示装置の表示特性を目視により正面から確認した。
【0095】
(製造例1)
脂環式オレフィンポリマー(Tg=137℃、固有複屈折値が正の樹脂)からなるペレットを用いて、溶融押出し法により、厚み150μmの未延伸フィルム1を得た。
【0096】
(製造例2)
メタクリル樹脂(Tg=103℃)からなるペレット及びスチレン樹脂(Tg=125℃、固有複屈折値が負の樹脂)からなるペレットをそれぞれ用いて、溶融押出し法により、メタクリル樹脂/スチレン樹脂/メタクリル樹脂の三層構造からなる、厚み160μmの未延伸フィルム2を得た。
【0097】
(実施例1)
製造例1において得られた未延伸フィルム1を、表1に示す条件で長手方向の延伸倍率が高くなるように同時二軸延伸して、平均配向角がフィルムの幅方向に対して90°の延伸フィルムaを得た。次いで、延伸フィルムaを、表1に示す条件で斜め延伸した後、(なお、繰出し角度(フィルムの巻き取り方向に対するフィルムの繰り出し方向の角度、以下同じ)は、38°に設定した。)フィルム両端150mmをトリミングすることにより、幅1350mmの光学補償フィルムAを得た。なお、表1において、二軸延伸の総延伸倍率は、フィルムの面倍率(フィルムの長手方向の延伸倍率×フィルムの幅方向の延伸倍率)である。以下同じ。
【0098】
参考評価として、得られた光学補償フィルムAを、VAモードの液晶表示装置Aに組み込み、画面の表示特性を評価した。表2に示すように、観察角度を変化させても表示画像に変化が見られなかった。
【0099】
(実施例2)
未延伸フィルム1の代わりに、製造例2で得られた未延伸フィルム2を用いた以外は、実施例1と同様にして、光学補償フィルムBを得た。なお、延伸条件は表1に示す。
【0100】
参考評価として、得られた光学補償フィルムBを、IPSモードの液晶表示装置Bに組み込み、画面の表示特性を評価した。表2に示すように、観察角度を変化させても表示画像に変化が見られなかった。
【0101】
(実施例3)
製造例1において得られた未延伸フィルム1を、表1に示す条件で逐次二軸延伸(自由端縦一軸延伸後に、固定端横一軸延伸)した以外は、実施例1と同様にして、光学補償フィルムCを得た。なお、延伸条件は表1に示す。
【0102】
参考評価として、得られた光学補償フィルムCを、VAモードの液晶表示装置Cに組み込み、画面の表示特性を評価した。表2に示すように、観察角度を変化させても表示画像にほとんど変化が見られなかった。
【0103】
(実施例4)
2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)および2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル(PFMBまたはTFMB)から合成された下記一般式(1)で表されるポリイミド(重量平均分子量Mw=177,000)を、メチルイソブチルケトン(MIBK)溶媒に溶解し、14質量%溶液を調製し、このポリイミド溶液を、製造例1において得られた未延伸フィルム1に、直接塗布し、加熱乾燥してフィルムdを得た。次にフィルムdを表1に示す延伸条件で斜め延伸し(延伸倍率1.3倍、平均配向角45°)光学補償フィルムDを得た。
【0104】
参考評価として、得られた光学補償フィルムDを、VAモードの液晶表示装置Dに組み込み、画面の表示特性を評価した。表2に示すように、表示画像を斜め方向から観察すると、正面から観察した場合と略同様の表示画像が得られるが、部分的に画像ムラが見られた。
【化1】

【0105】
(実施例5)
製造例1において得られた未延伸フィルム1を、表1に示す条件で斜め延伸して、平均配向角が38°の延伸フィルムeを得た。(なお、繰出し角度は、38°に設定した。)次いで、延伸フィルムeを、表1に示す条件で同時二軸延伸した後、(なお、ここでの同時二軸延伸は、未延伸フィルムを延伸した場合に、フィルムの長手方向に遅相軸が出現する(つまり、長手方向の延伸倍率が高くなる)ような延伸条件を用いた。)実施例1と同様にフィルム両端をトリミングすることにより、光学補償フィルムEを得た。
【0106】
参考評価として、得られた光学補償フィルムEを、VAモードの液晶表示装置Eに組み込み、画面の表示特性を評価した。表2に示すように、観察角度を変化させても表示画像に変化が見られなかった。
【0107】
(実施例6)
製造例1において得られた未延伸フィルム1を、斜め延伸し(延伸倍率1.3倍、平均配向角45°)、延伸フィルムfを得た。下記式(2)で表されるポリエーテルケトン(Mw:500,000)をメチルイソブチルケトンに溶解し、20wt%のワニスを調製し、延伸フィルムfに塗工、乾燥し光学補償フィルムFを得た。
【0108】
参考評価として、得られた光学補償フィルムFを、VAモードの液晶表示装置Fに組み込み、画面の表示特性を評価した。表2に示すように、表示画像を斜め方向から観察すると、正面から観察した場合と略同様の表示画像が得られるが、部分的に画像ムラが見られた。
【化2】

【0109】
(比較例1)
繰出し角度を83°に設定した以外は、実施例1と同様にして延伸を行ったが、フィルムに皺が発生して巻き取ることができなかった。なお、延伸条件は表1に示す。
【0110】
(比較例2)
製造例1において得られた未延伸フィルム1を、表1に示す条件で斜め延伸したが、フィルムに皺が発生して巻き取ることができなかった。(なお、繰出し角度は、82°に設定した。)
【表1】

【表2】

【符号の説明】
【0111】
2…斜め延伸用テンター延伸機、4…同時二軸延伸用テンター延伸機、11,46…第一光学フィルム、13…第二光学フィルム、45…透明フィルム(原反)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均配向角βが、この工程における延伸終了位置における幅方向に対して10〜80°の範囲にある光学フィルムBを得る工程と、
前記光学フィルムB上に、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミド−イミド、及びポリエステルイミドからなる群から選ばれる少なくとも一種のポリマーの溶液を塗布してなる塗膜を乾燥させる工程とを含み、
平均配向角βが幅方向に対して10〜80°の範囲にあり、且つ、Nz係数の値が1.3以上又は−0.3以下である長尺の光学補償フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記光学フィルムBを得る工程は、熱可塑性樹脂からなる長尺の透明フィルムを斜め延伸する工程である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記斜め延伸を、予熱ゾーン、延伸ゾーンおよび固定ゾーンを備え、該延伸ゾーンがフィルム走行方向が変化せずに直線状になっているテンター延伸機を用いて行う、請求項2に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−197683(P2011−197683A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99595(P2011−99595)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【分割の表示】特願2006−296175(P2006−296175)の分割
【原出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】