説明

長尺フレキシブル配線板の製造方法

【課題】 配線の微細化あるいは多層化が容易になる長尺フレキシブル配線板の製造方法を提供する。
【解決手段】 第1FPC一層単板11と第2FPC一層単板12の一端部の間に絶縁性接着層13を介挿し位置合わせする。これ等のFPC一層単板は第1絶縁体層14、配線層15aあるいは15bおよび第2絶縁体層16を有する。それ等の一端部の領域を位置決めしたまま重ね合せ絶縁性接着層13を介し接合する。その後、上記一端部および絶縁性接着層13を貫通するスルーホール17とスルーホール導電体18を形成し、スルーホール導電体18により配線層15a,15bの配線間を接続して配線層15にする。そして、2枚のFPC一層単板を個片化し、一方のFPC一層単板を上記端部領域の近傍で折り返し長尺フレキシブル配線板にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送配線あるいは回路配線が配設されたフレキシブル配線板の長尺化を容易にする長尺フレキシブル配線板の製造方法。
【背景技術】
【0002】
例えばネットワーク機器、サーバー、テスターのような電子機器では、フレキシブル配線板(以下、FPC;Flexible Printed Circuitともいう)が多用されている。このようなFPCでは、数GHz〜数十GHz帯の高速デジタル信号の使用においてその高周波特性を損なうことなく高速伝送することが要求される。また、例えば携帯機器類のようなモバイル電子機器では、その短小軽薄化に伴って、その高密度配線化および短小軽薄化が種々に進められている。そして、伝送配線あるいは回路配線等の微細化とパターン間の縮小化、更にはその多層化が行われている。
【0003】
また、FPCは、例えばOA機器、自動車等の大型機器において、同軸ケーブル、ワイヤーハーネスのような電気信号の配線材の代わりとしても有望視され一部で使用されるようになってきている。それは、これ等の部品のモジュール化および部品内部の省スペース化を容易にするからである。しかし、FPCが大型機器において配索される場合には、上記電子機器に使用されるFPCよりも長尺のものが必要になる場合がある。
【0004】
FPCの製造には、従来から、その基材として片面金属張積層板あるいは両面金属張積層板基材を用い、これ等の単板の基材を枚葉で各種の加工処理する生産方式がある(例えば、特許文献1参照)。この方法は枚葉方式ともいわれ、一定の寸法(例えば50cm)の矩形シート状FPC(以下、FPC単板ともいう)を製造した後で所定形状に切断し、外形加工を通して複数のFPCにする。このFPCの製造方法では、特に配線の微細化および多層化による高密度配線が容易である。
【0005】
また、FPCの製造には、基材の可撓性を利用したロール・トゥ・ロール(Roll to Roll)方式により長尺の連続基板を用いる生産方法がある(例えば、特許文献2参照)。この方法は、例えば基材として柔軟性があり長尺の片面金属張積層板あるいは長尺の両面金属張積層板を用い、ロール巻出し機およびロール巻取り機の間で搬送しながら各種の加工処理を加える。この製造方法は長尺フレキシブル配線板(以下、長尺FPCともいう)の製造には好適であり、特に大量生産に有効であるが、配線の微細化、多層化による高密度配線化に不向きなところがある。これは、ロール巻出しおよびロール巻取りにおいて基材にかかる応力により長尺状シートが変形を受け易く、微細パターンの配線および配線層間を接続するビア形成等が難しくなるからである。
【0006】
ところで、上述したOA機器、自動車に用いられる長尺のFPCにおいて、その高機能化あるいは高性能化に伴い長尺FPCの高密度配線化が必要になってくる。この場合、枚葉方式により外形加工し製造した複数のFPCを中継用コネクタを介して接続することにより、長尺FPCとして使用することができる。しかしながら、中継用コネクタを介した長尺FPCでは、伝送されるデジタル信号の高周波特性が低下し易い。また、省スペースで配線できるというFPCの利点が中継用コネクタのために低減するようになる。
【0007】
その他に、枚葉方式により製造する複数のFPCをつなぎ合せて長尺にする手法は従来から提示されている(例えば、特許文献3参照)。この長尺化の手法では、第1のFPCの配線の端部の接続部が、第2のFPCの配線の端部に設けられた孔部に導電性部材を介して嵌合し、長尺方向に接続するようになる。しかしながら、この長尺化手法は、単層配線構造の長尺FPCには有効となるがその多層化には不向きであり、また、配線の微細化においては適用が難しくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−55980号公報
【特許文献2】特開2008−42037号公報
【特許文献3】特開平7−106727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、高周波信号の伝送特性に優れると共に、配線の微細化あるいは多層化が容易になる長尺フレキシブル配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明にかかる長尺フレキシブル配線板の製造方法は、絶縁体層間に配線層が形成された第1のフレキシブル配線板の一端部と第2のフレキシブル配線板の一端部とを位置合わせする工程と、それ等の一端部の間に接合部材を介挿し、前記第1のフレキシブル配線板と前記第2のフレキシブル配線板を重ね合せる工程と、前記接合部材により、前記第1のフレキシブル配線板および前記第2のフレキシブル配線板を前記一端部で接合すると共に、前記一端部に導通部材を形成することにより、前記第1のフレキシブル配線板の配線層と前記第2のフレキシブル配線板の配線層との配線間を電気的に接続する工程と、を有し、前記一端部で接合する前記第1のフレキシブル配線板および前記第2のフレキシブル配線板のうちの一方を折り返して、前記第1のフレキシブル配線板あるいは前記第2のフレキシブル配線板よりも長尺にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、高周波信号の伝送特性に優れ、配線の微細化あるいは多層化が容易な長尺フレキシブル配線板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる長尺フレキシブル配線板の製造方法の一例を示す製造工程別断面図。
【図2】本発明の第1の実施形態にかかる長尺フレキシブル配線板の配線間の接続の説明に供する一部拡大平面図。
【図3】本発明の第2の実施形態にかかる長尺フレキシブル配線板の製造方法の一例を示す製造工程別断面図。
【図4】本発明の第2の実施形態にかかる長尺フレキシブル配線板の配線間の接続の説明に供する一部拡大平面図。
【図5】本発明の第3の実施形態にかかる長尺フレキシブル配線板の製造方法の一例を示す製造工程別断面図。
【図6】本発明の第4の実施形態にかかる長尺フレキシブル配線板の製造方法の一例を示す製造工程別断面図。
【図7】本発明の第5の実施形態にかかる長尺フレキシブル配線板の製造方法の一例を示す製造工程別断面図。
【図8】本発明の第5の実施形態にかかる長尺フレキシブル配線板の配線間の接続の説明に供する一部拡大平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の好適な実施形態のいくつかについて図面を参照して説明する。ここで、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なる。
【0014】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態にかかる長尺FPCすなわち長さの長いFPCの製造方法について図1および図2を参照して説明する。この実施形態では単層配線構造を有する長尺FPCの一例について説明される。
【0015】
図1(a)に示すように、従来技術で説明したように所定形状に外形加工されていない状態の矩形シート状FPCを2枚用意する。そして、これ等の第1FPC一層単板11の一端部aと第2FPC一層単板12の一端部bの間に絶縁性樹脂層である絶縁性接着層13を介挿するようにして位置合わせする。ここで、例えば第1FPC一層単板11および第2FPC一層単板12は、それ等の一端部から他端部にわたって、それぞれ配設された配線層の相互接続に対応する配線が一端部で上下に重なるように位置決めされる。
【0016】
第1FPC一層単板11では、ベースフィルムとなる第1絶縁体層14上に配線層15aが形成され、この配線層15aがカバーレイフィルムとしての第2絶縁体層16により被覆されている。同様に、第2FPC一層単板12では、第1絶縁体層14上に配線層15bが形成され、この配線層15bが第2絶縁体層16により被覆されている。
【0017】
ここで、第1FPC一層単板11および第2FPC一層単板12は例えば片面金属張積層板を用いて作製される。そして、絶縁体層は厚さが15μm〜50μm程度の熱硬化性のポリイミド系樹脂からなり、配線層15aおよび配線層15bは、それ等の厚さが10μm〜20μm程度の銅(Cu)からなる。それ等の配線のパターンはが互いに異なるものであってもよいし同じになっても構わない。そして、絶縁性接着層13は熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂の絶縁性接着剤からなる。
【0018】
次に、図1(b)に示すように、第1FPC一層単板11および第2FPC一層単板12を位置決めしたまま重ね合せ、絶縁性接着層13で接着して接合する。この接合において、上記一端部の領域以外では第1FPC一層単板11の第2絶縁体層16と第2FPC一層単板12の第1絶縁体層14は、それ等が熱硬化しているため接着しない。
【0019】
次に、図1(c)に示すように、公知のレーザ加工、ドリル加工等により、第1FPC一層単板11と第2FPC一層単板12の接合した一端部の領域にスルーホール17を形成する。ここで、スルーホール17は、第1FPC一層単板11および第2FPC一層単板12の第1絶縁体層14、第2絶縁体層16と共に配線層15a,15bを貫通する所定口径の貫通孔である。
【0020】
次に、図1(d)に示すように、スルーホール17に導電性ペーストを充填し熱処理を施し、配線層15a,15bの配線の間を接続する導通部材としてスルーホール導電体18を形成する。ここで、導電性ペーストは、例えばCu、銀(Ag)、金(Au)、錫(Sn)、鉛(Pb)、カーボン等の導電性粒子とバインダーであるエポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂等とを混合したものである。このスルーホール導電体18により、第1FPC一層単板11における配線層15aの配線と第2FPC一層単板12の配線層15bにおいて対応する配線が相互に接続して配線層15になる。ここで、スルーホール17へのスルーホール導電体18の形成は、無電解メッキのようなメッキ法によるスルーホール17の導電化によっても形成することができる。
【0021】
次に、図2を参照してスルーホール導電体18による配線層15a,15bの接続についての説明を加える。図2は、重ね合わされた状態の第1FPC一層単板11と第2FPC一層単板12の一部拡大した平面図であり、例えば複数の配線が直線状の配線パターンに配設された様子を示す。ここで、図2に記すX−X矢視の断面図が図1(d)に相当する。図2に示すように、第1FPC一層単板11と第2FPC一層単板12の重なるように示されている配線層15a,15bのそれぞれの信号配線は、それらの端部に設けられているスルーホール導電体18を通して互いに接続する。図2では、スルーホール導電体18は配線密度を上げるため絶縁接着層13の配置された領域に千鳥状に配列しているが、直線状の配列になっていても構わない。
【0022】
次に、図1(d)に示す第1FPC一層単板11と第2FPC一層単板12を所定形状に切断し個片化する。そして、最後に図1(e)に示すように、第1FPC一層単板11を第2FPC一層単板12に接合する一端部で折り返す。この折り返しにより長尺FPCが作製される。そして、この長尺FPCは通常の枚葉方式により生産されるFPCの約2倍に長尺化される。例えば使用される矩形シート状FPCの寸法が50cmであるとすると約1mの長さに長尺化したFPCが製造できる。
【0023】
本実施形態の長尺FPCの製造方法では、枚葉方式により作製した矩形シート状FPCを用いている。このため、配線層における微細な信号配線の配設が容易であり、高い信頼性のある高密度配線化が可能な長尺FPCが製造できるようになる。そして、デジタル信号の高周波特性に優れた伝送が容易になる。また、本実施形態の製造方法は高性能の長尺FPCにあっても、その生産性向上が容易である。
【0024】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態にかかる長尺FPCの製造方法について、図3および図4を参照して説明する。この実施形態は、信号配線およびシールド配線が2層構造に配設される長尺FPCの場合である。この長尺FPCでは、複数のストリップ線路である信号配線およびグランド配線が所要の配線パターンに配設される。ここで、信号配線はLVDS(Low Voltage Differential Signaling)に対応できる2本ペアの伝送配線として示される。なお、この長尺FPCはフラットケーブルとしても使用される。
【0025】
図3(a)に示すように、2層配線構造の矩形シート状FPCを2枚用意する。そして、第1の実施形態で説明したのと同様に、第1FPC二層単板21と第2FPC二層単板22の一端部間に絶縁性接着層23を介挿し位置合わせをする。ここで、第1FPC二層単板21および第2FPC二層単板22は、第一の実施形態で説明したのと同様にそれ等の対応する配線が一端部において互いに重なり合うように位置決めされる。
【0026】
第1FPC二層単板21では、第1絶縁体層24上に第1配線層25aが配設され、この第1配線層25aが第2絶縁体層26により被覆されている。そして、第2絶縁体層26上に第2配線層27aが形成され、第2配線層27aが第3絶縁体層28により被覆されている。同様に、第2FPC二層単板22では、第1絶縁体層24上に第1配線層25bが配設され、この第1配線層25bが第2絶縁体層26により被覆される。そして、第2絶縁体層26上に第2配線層27bが形成され、第2配線層27bが第3絶縁体層28により被覆される。
【0027】
ここで、第1FPC二層単板21および第2FPC二層単板22は、両面金属張積層板をコア材に作製され、その第2絶縁体層26は厚さが25μm〜50μm程度の熱可塑性の液晶ポリマーからなる。液晶ポリマーとしては、例えばキシダール(商品名.Dartco社製)、ベクトラ(商品名.Clanese社製)で代表される多軸配向の熱可塑性ポリマーである。また、他の絶縁性樹脂を添加・配合し変性したものであってもよい。そして、ベクスターFAタイプ(融点285℃)、ベクスターCTタイプ(融点310℃)、BIACフィルム(融点335℃)なども例示される。
【0028】
また、第1絶縁体層24および第3絶縁体層28は、例えばポリイミド系樹脂のような熱硬化性樹脂からなり、それぞれ厚さが15μm〜50μm程度になっている。そして、絶縁性接着層23は、第1の実施形態の場合と同様に熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂の絶縁性接着剤からなる。
【0029】
そして、第1配線層25a,25bおよび第2配線層27a,27bは、それ等の厚さが10μm〜20μm程度のCuからなる。ここで、第1配線層25a,25bには、例えば図4で後述されるような信号配線とグランド配線が配設される。また、第2配線層27a,27bにはシールド配線が配設される。なお、第2配線層27a,27bの所定箇所に開口29a,29bが設けてある。
【0030】
次に、図3(b)に示すように、第1の実施形態の場合と同様に絶縁性接着層23を介して、第1FPC二層単板21および第2FPC二層単板22の一端部の領域のみを接合する。
【0031】
次に、図3(c)に示すように、公知のレーザ加工、ドリル加工等により、第1FPC二層単板21と第2FPC二層単板22の一端部の接合する領域にスルーホール30を形成する。ここで、スルーホール30は、第1FPC二層単板21と第2FPC二層単板22の第1絶縁体層24、第2絶縁体層26および第3絶縁体層28と共に第1配線層25a,25bを貫通する貫通孔である。なお、スルーホール30は、開口29a,29bを通るところで第2配線層27a,27bを貫通しない。
【0032】
そして、第1の実施形態で説明したのと同様に、スルーホール30に導電性ペーストを充填し熱処理を施してスルーホール導電体31を形成する。あるいは、メッキ法によりスルーホール30を導電化する。このスルーホール導電体31により、第1FPC二層単板21における第1配線層25aの配線と第2FPC二層単板12の第1配線層25bにおける配線が電気的に接続して第1配線層25になる。
【0033】
次に、図4を参照してスルーホール導電体31による第1配線層25a,25bの接続についての説明を加える。図4は、重ね合わされた状態の第1FPC二層単板21と第2FPC二層単板22の一部拡大した平面図である。ここで、第1配線層25a,25bは、点線により示すように、2本ペアの信号配線、この信号配線の両脇に沿い配設されたグランド配線の配線パターンに形成されている。また、第2配線層27a,27bは実線で示すようにシールド配線のパターンに形成されている。ここで、図4に記すX−X矢視の断面図が図3(c)に相当している。
【0034】
図4に示すように、第1FPC二層単板21と第2FPC二層単板22の重なるように示されている第1配線層25a,25bのそれぞれの配線は、上述したように、それらの端部に設けられているスルーホール導電体31を通して互いに接続し第1配線層25になる。これに対して、第2配線層27a,27bは、その開口29a,29bのない領域に形成されたスルーホール導電体31により、第1配線層25a,25bのグランド配線と共に接続する。このようなスルーホール導電体31により、第1FPC二層単板21の第2配線層27aは第2FPC二層単板22の第2配線層27bに電気的に接続して第2配線層27になる。
【0035】
次に、図3(c)に示す第1FPC二層単板21と第2FPC二層単板22を所定形状に切断し個片化し、図3(d)に示すように、第1FPC二層単板21を絶縁性接着層23により第2FPC二層単板22に接合する一端部で折り返す。この折り返しにより、長尺FPCが作製される。
【0036】
第2の実施形態では、第1の実施形態で説明したのと同様な作用効果が奏される。また、第1配線層25と第2配線層27の間の第2絶縁体層26が液晶ポリマーからなると、その比誘電率は3以下になり、静電正接は0.003以下になる。そのために、長尺フレキシブル配線基板における第1配線層25の信号配線は、数GHz〜数十GHz帯の高周波信号の極めて優れた伝達・伝導特性を示す。ここで、第1配線層25のグランド配線および第2配線層27のシールド配線は、電磁シールドとして作用し信号配線間の電磁干渉、あるいは外部からの電磁波による信号の擾乱を低減する。
【0037】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態にかかる長尺FPCの製造方法について、その一例を示す図5を参照して説明する。この実施形態は配線層の配線の間を接続する導通部材の形成に異方導電性接着層を適用する場合である。
【0038】
図5(a)に示すように、2層配線構造の矩形シート状FPCを2枚用意する。そして、第1FPC二層単板41と第2FPC二層単板42の一端部間に異方導電性接着層43を挟むようにして位置合わせをし、セットアップする。ここで、第1FPC二層単板41に対して第2FPC二層単板42の表裏を引っくり返し、第一の実施形態で説明したのと同様にそれ等の対応する配線が一端部において互いに重なり合うように位置決めして重ね合せる。
【0039】
第1FPC二層単板41では、第2の実施形態で説明したのと同様に、第1絶縁体層44上に第1配線層45aが配設され、この第1配線層45aが第2絶縁体層46により被覆されている。そして、第2絶縁体層46上に第2配線層47aが形成され、第2配線層47aが第3絶縁体層48により被覆されている。この第1FPC二層単板41の一端部では、第2配線層47aの先端がエッチングされ、しかもその一部は露出するように第3絶縁体層48が選択的に除去され、露出部49aが形成されている。
【0040】
同様に、裏返しになっている第2FPC二層単板42では、第1絶縁体層44上に第1配線層45bが配設され、この第1配線層45bが第2絶縁体層46により被覆される。そして、第2絶縁体層46上に第2配線層47bが形成され、第2配線層47bが第3絶縁体層48により被覆される。そして、第2FPC二層単板42の一端部でも同様に、第1配線層47bの先端がエッチング除去され、その一部は露出するように第3絶縁体層48が選択的に除去され、露出部49bが形成されている。
【0041】
これ等の第1FPC二層単板41および第2FPC二層単板42は、第2の実施形態の場合と同様に両面金属張積層板をコア材に作製されるとよい。ここで、第2絶縁体層46は液晶ポリマーであってもよいし、ポリイミド系樹脂のような熱硬化性樹脂からなっていても構わない。また、第1絶縁体層44および第3絶縁体層48は、第1の実施形態で説明したように、例えばポリイミド系樹脂のような熱硬化性樹脂からなる。
【0042】
そして、異方導電性接着層43は、異方導電性フィルム(ACF;Anisotropic Conductive Film)、異方導電性ペースト(ACP;Anisotropic Conductive Paste)である。なお、ACPの場合は、第1FPC二層単板41の一端部の露出部49aに所定の厚さに印刷される。
【0043】
また、第1配線層45a,45bおよび第2配線層47a,47bは、それ等の厚さが10μm〜20μm程度に配設される。これ等の2層構造の配線は、それぞれ回路配線である。あるいは、第2の実施形態で説明したような伝送配線になっていても構わない。
【0044】
次に、図5(b)に示すように、少なくとも第1FPC二層単板41および第2FPC二層単板42の一端部に対して加熱加圧処理(熱プレス)を行う。そして、異方導電性接着層43を介して、第1FPC二層単板41および第2FPC二層単板42の一端部の領域のみを接合する。なお、異方導電性接着層43は、第1FPC二層単板41の露出部49aおよび第2FPC二層単板42の露出部49bにおいて、第2配線層47a,47bと共に上下の第2絶縁体層46に熱圧着する。この熱圧着により異方導電性接着層43が部分的に導通部材になり、第2配線層47a,47bはそれぞれの対応する配線間が電気的に接続して第2配線層47になる。
【0045】
次に、図5(c)に示すように、第2の実施形態で説明したのと同様にして、第1FPC二層単板41と第2FPC二層単板42の一端部の接合する領域にスルーホール50を形成する。ここで、スルーホール50は、第1FPC二層単板41と第2FPC二層単板42の第1絶縁体層44、第2絶縁体層46および異方導電性接着層43と共に第1配線層45a,45bを貫通する貫通孔である。
【0046】
そして、第2の実施形態で説明したのと同様に、スルーホール50に導電性ペーストを充填し熱処理を施してスルーホール導電体51を形成する。あるいは、メッキ法によりスルーホール50を導電化する。このスルーホール導電体51により、第1FPC二層単板41における第1配線層45aの配線と第2FPC二層単板12の第1配線層45bにおいて対応する配線が電気的に接続して第1配線層45になる。
【0047】
そして、図5(c)に示す第1FPC二層単板41と第2FPC二層単板42を所定形状に切断し個片化し、図5(d)に示すように、第1FPC二層単板41を第2FPC二層単板42に接合する一端部で折り返す。この折り返しにより、長尺FPCが作製される。
【0048】
上記実施形態において、第1FPC二層単板41と第2FPC二層単板42の第1配線層45a,45bも異方導電性接着層43を通して電気的に接続するようにできる。この場合は、露出部49a,49bにおいて、第2絶縁体層46の一部を選択的に除去し、第1配線層45a,45bの端部も露出するようにして、異方導電性接着層43がその端部で第1配線層45a,45bに接するようにする。このようにすることにより、第1配線層45a,45bの端部で圧着する異方導電性接着層43が上下方向に異方導電性を示し電気的に接続することになる。この場合には、上記スルーホール50のスルーホール導電体51は不要となる。
【0049】
第3の実施形態では、第1の実施形態あるいは第2の実施形態で説明したのと同様な作用効果が奏される。また、種々の伝送配線あるいは回路配線が多層化し高密度配線化できるようになり、高機能化あるいは高性能化するOA機器、自動車等の大型機器に適用する長尺FPCが容易に製造できる。
【0050】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態にかかる長尺FPCの製造方法について、その一例を示す図6を参照して説明する。この実施形態は配線層の配線の間を接続する導通部材として導電性ペーストバンプを適用する場合である。
【0051】
図6(a)に示すように、単層配線構造の矩形シート状FPCを2枚用意する。ここで、第1FPC二層単板61に対して第2FPC二層単板62の表裏を引っくり返し、第一の実施形態で説明したのと同様にそれ等の対応する配線が一端部において互いに重なり合うように位置合わせする。第1FPC一層単板61では、第1絶縁体層63上に配線層64aが形成され、この配線層64aが第2絶縁体層65により被覆されている。同様に、第2FPC一層単板62では、第1絶縁体層63上に配線層64bが形成され、この配線層64bが第2絶縁体層65により被覆されている。そして、第1FPC二層単板61および第2FPC二層単板62の一端部では、第2絶縁体層65が選択的に除去され、配線層64a,64bの端部が露出するように露出部66a,66bが形成されている。
【0052】
第1の実施形態で説明したのと同様に、第1FPC一層単板61および第2FPC一層単板62は例えば片面金属張積層板を用いて作製される。そして、絶縁体層は厚さが15μm〜50μm程度の熱硬化性のポリイミド系樹脂からなる。配線層64aおよび配線層64bは10μm〜20μm程度の厚さのCuからなり、例えば所要の回路配線である。
【0053】
次に、図6(b)に示すように、露出部66aで露出する第1FPC一層単板61の配線層64aの端部に導電性ペーストバンプ67をバンプ付けする。そして、例えば厚さが15μm〜30μm程度の絶縁性樹脂層となる絶縁性樹脂フィルム68を第2FPC一層単板62の露出部66bとの間で上方から重ね、位置決めしてセットアップした後に熱プレスする。導電性ペーストバンプ67は、Ag、Au、Cu、Sn、鉛(Pb)等の金属粒子やカーボン粒子とエポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂等とを混合した導電性ペーストをスクリーン印刷・乾燥の繰り返しにより例えば円錐状に形成したものである。絶縁性樹脂フィルム68は液晶ポリマーのような熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂である。
【0054】
このようにして、図6(c)に示すように、円錐状の導電性ペーストバンプ67は、絶縁性樹脂フィルム68を貫通して第2FPC一層単板62の露出部66bで露出する配線層64bの端部に接続する。ここで、導電性ペーストバンプ67の頭部は圧潰し塑性変形する。そして、絶縁性樹脂フィルム68は露出部66a,66bにおいて、第1FPC一層単板61および第2FPC一層単板62を接合する。また、配線層64aおよび配線層64bは電気的に接続して配線層64になる。
【0055】
なお、上記熱プレスにおいて、第1FPC一層単板61と第2FPC一層単板62は、それらの絶縁体層65が予め熱硬化していることから、上記一端部の領域以外では接着しない。
【0056】
次に、図6(c)に示す第1FPC一層単板61と第2FPC一層単板62を所定形状に切断し個片化する。そして、最後に図6(d)に示すように、第1FPC一層単板61を第2FPC一層単板62に接合する一端部で折り返す。この折り返しにより、長尺FPCが作製される。この第4の本実施形態では、第1の実施形態で説明したのと同様な作用効果が奏される。
【0057】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態にかかる長尺FPCの製造方法について、図7および図8を参照して説明する。この実施形態は、2層構造の配線が導電性ペーストバンプとスルーホール導電体の導通部材により接続される場合である。
【0058】
図7(a)に示すように、2層配線構造の矩形シート状FPCを2枚用意する。ここで、第1FPC二層単板71に対して第2FPC二層単板72の表裏を引っくり返し、それ等の対応する配線が一端部において互いにに重なり合うように位置合わせする。第1FPC二層単板71では、第3の実施形態で説明したのと同様に、第1絶縁体層73上に第1配線層74aが配設され、この第1配線層74aが第2絶縁体層75により被覆されている。また、第2絶縁体層75上に第2配線層76aが形成され、第2配線層76aが第3絶縁体層77により被覆されている。この第1FPC二層単板71の一端部では、第2配線層76aの先端がエッチング除去され、しかもその一部は露出するように第3絶縁体層77が選択的に除去され、露出部78aが形成されている。
【0059】
同様に、裏返しになっている第2FPC二層単板72では、第1絶縁体層73上に第1配線層74bが配設され、この第1配線層74bが第2絶縁体層75により被覆される。そして、第2絶縁体層75上に第2配線層76bが形成され、第2配線層76bが第3絶縁体層77により被覆される。そして、第2FPC二層単板72の一端部でも同様に、第1配線層76bの先端がエッチング除去され、その一部は露出するように第3絶縁体層77が選択的に除去され、露出部78bが形成されている。なお、これ等の第1FPC二層単板71および第2FPC二層単板72は第3の実施形態で説明したのと同様に形成することができる。
【0060】
そして、第4の実施形態の場合と同様にして、露出部78aで露出する第1FPC二層単板71の第2配線層76aの端部に導電性ペーストバンプ79をバンプ付けする。そして、例えば厚さが15μm〜30μm程度の絶縁性樹脂フィルム80を第2FPC二層単板72の露出部78bとの間で上方から重ね、位置決めしてセットアップした後に熱プレスする。
【0061】
このようにして、図7(b)に示すように、導電性ペーストバンプ79は、絶縁性樹脂フィルム80を貫通して第2FPC二層単板72の露出部78bで露出する第2配線層76bの端部に接続する。そして、絶縁性樹脂フィルム80は露出部78a,78bにおいて、第1FPC二層単板71および第2FPC二層単板72を接合する。また、第2配線層76aおよび第2配線層76bは電気的に接続して第2配線層76になる。
【0062】
なお、上記熱プレスにおいて、第1FPC二層単板71と第2FPC二層単板72は、それ等の第3絶縁体層77が予め熱硬化していることから、上記一端部の領域以外では接着しない。また、第2絶縁体層75が熱可塑性樹脂からなる場合には、熱プレスの加熱温度は第2絶縁体層75が軟化により熱変形しない温度に設定される。
【0063】
次に、図7(c)に示すように、第2の実施形態で説明したのと同様にして、第1FPC二層単板71と第2FPC二層単板72の両端部の接合する領域にスルーホール81を形成する。ここで、スルーホール81は、第1FPC二層単板71と第2FPC二層単板72の第1絶縁体層73、第2絶縁体層75および絶縁性樹脂フィルム80と共に第1配線層74a,74bを貫通する貫通孔となる。
【0064】
そして、第2の実施形態で説明したのと同様に、スルーホール81にスルーホール導電体82を形成する。このスルーホール導電体82により、第1FPC二層単板71における第1配線層74aの配線と第2FPC二層単板72の第1配線層74bにおいて対応する配線が電気的に接続して第1配線層74になる。
【0065】
次に、図8を参照して導電性ペーストバンプ79およびスルーホール導電体82による2層配線の接続についての説明を加える。図8は、裏返しに重ね合わされた状態の第1FPC二層単板71と第2FPC二層単板72の一部拡大した平面図である。ここで、第1配線層74a,74bは実線により示され、第2配線層76a,76bは点線により示される。図8に記すX−X矢視の断面図が図7(c)に相当している。
【0066】
図8に示すように、第1FPC二層単板71と第2FPC二層単板72が裏返しに重なり示されている第1配線層74a,74bのそれぞれの配線は、それらの端部に設けられているスルーホール導電体82を通して互いに接続して第1配線層74になる。これに対して、第2配線層76a,76bのそれぞれの配線は導電性ペーストバンプ79により互いに接続して第2配線層76になる。
【0067】
そして、図7(c)に示す第1FPC二層単板71と第2FPC二層単板72を所定形状に切断し個片化する。その後、図7(d)に示すように、第1FPC二層単板71を絶縁性樹脂フィルム80により第2FPC二層単板22に接合する一端部で折り返す。この折り返しにより長尺FPCが作製される。
【0068】
第5の実施形態においては、第1FPC二層単板71と第2FPC二層単板72の第1配線層74a,74bも導電性ペーストバンプを通して電気的に接続するようにできる。この場合は、露出部78a,78bにおいて、第2絶縁体層75の一部を選択的に除去し、第1配線層74a,74bの端部も露出するようにする。そして、それ等の間において上記絶縁性樹脂フィルム80を貫通する別の導電性ペーストバンプにより接続する。この場合には、上記スルーホール81のスルーホール導電体82は不要になる。
【0069】
第5の実施形態では、第3の実施形態で説明したのと同様な作用効果が奏され、種々の多層化し複雑化した回路配線を有する長尺FPCが容易に製造できる。
【0070】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上述した実施形態は本発明を限定するものでない。当業者にあっては、具体的な実施態様において本発明の技術思想および技術範囲から逸脱せずに種々の変形・変更を加えることが可能である。
【0071】
上記実施形態では2層までの配線構造を有する長尺FPCの場合について説明したが、3層以上の配線構造となる長尺FPCも製造することができる。例えば、第3、第5の実施形態で説明した異方導電性接着層、導電性ペーストバンプを用いて3層以上の配線間の電気的な接続をすればよい。あるいは、その中の1層の配線間にはスルーホール導電体の導通部材を適用することもできる。
【0072】
また、矩形シート状FPCの寸法の略3倍になる長尺FPCも製造することもできる。例えば、3枚の矩形シート状FPCである第1FPC単板、第2FPC単板および第3FPC単板を位置合わせする。そして、その中の第1FPC単板と第2FPC単板の一端部と、第2FPC単板と第3FPC単板の対向する他端部とにそれぞれ上記実施形態で説明したのと同様な接合と導通部材による配線間の接続を施すようにする。さらに多数枚の矩形シート状FPCを用い更に長尺化したFPCを製造することもできる。
【0073】
また、上記実施形態では矩形シート状FPCを用いて長尺FPCを製造する場合について説明しているが、矩形シート状FPCを外形加工したものを用いて長尺FPCを製造するようにしても構わない。
【0074】
上記実施形態では最外層の絶縁体層を熱硬化性樹脂により形成する場合について説明しているが、熱可塑性樹脂を使用することもできる。但し、この場合には、熱プレスにおける加熱温度は熱硬化性樹脂のガラス転移点以下にしてその軟化による貼着が起こらないようにする。
【符号の説明】
【0075】
11,61…第1FPC一層単板、12,62…第2FPC一層単板、13,23…絶縁性接着層(接合部材)、14,24,44,63,73…第1絶縁体層、15a,15b,64a,64b…配線層,16,26,46,65,75…第2絶縁体層、17,30,50,81…スルーホール、18,31,51,82…スルーホール導電体(導通部材),21,41,71…第1FPC二層単板、22,42,72…第2FPC二層単板、25a,25b,45a,45b,74a,74b…第1配線層、28,48,77…第3絶縁体層、29a,29b…開口、43…異方導電性接着層(導通部材)、49a,49b,66a,66b,78a,78b…露出部、67,79…導電性ペーストバンプ(導通部材)、68,80…絶縁性樹脂フィルム(接合部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体層間に配線層が形成された第1のフレキシブル配線板の一端部と第2のフレキシブル配線板の一端部とを位置合わせする工程と、
それ等の一端部の間に接合部材を介挿し、前記第1のフレキシブル配線板と前記第2のフレキシブル配線板を重ね合せる工程と、
前記接合部材により、前記第1のフレキシブル配線板および前記第2のフレキシブル配線板を前記一端部で接合すると共に、前記接合される一端部に導通部材を形成することにより、前記第1のフレキシブル配線板の配線層と前記第2のフレキシブル配線板の配線層との配線間を電気的に接続する工程と、を有し、
前記一端部で接合する前記第1のフレキシブル配線板および前記第2のフレキシブル配線板のうちの一方を折り返して、前記第1のフレキシブル配線板あるいは前記第2のフレキシブル配線板よりも長尺にすることを特徴とする長尺フレキシブル配線板の製造方法。
【請求項2】
前記第1のフレキシブル配線板および前記第2のフレキシブル配線板の最外層の絶縁体層は熱硬化性樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の長尺フレキシブル配線板の製造方法。
【請求項3】
前記接合部材は絶縁性樹脂層であり、前記導通部材は前記一端部および前記絶縁性樹脂層を貫通するスルーホールに形成されたスルーホール導電体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のフレキシブル配線板の製造方法。
【請求項4】
前記接合部材は絶縁性樹脂層であり、前記導通部材は前記一端部において前記第1のフレキシブル配線板の配線上に形成された導電性ペーストバンプであることを特徴とする請求項1又は2に記載のフレキシブル配線板の製造方法。
【請求項5】
前記接合部材および導通部材は、異方導電性接着層からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のフレキシブル配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−98296(P2013−98296A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238733(P2011−238733)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000177690)山一電機株式会社 (233)
【Fターム(参考)】