説明

長尺ランプ容器

【課題】長尺のガラス製エキシマランプにおいて、ランプの破損と照度低下を防止する。
【解決手段】長尺のガラス製の円筒形の内側管1とガラス製の円筒形の外側管2を同軸状に固定し、内側管1が撓まないように保持するための保持材3を設ける。保持材3は、外側管2と同じ材質のガラス棒である。保持材3の長さは、外側管2の内径をd1とし、内側管1の外径をd2としたとき、ほぼ(d12−d22)1/2である。保持材3は、軸に直交する方向で内側管1の外周円筒面に止着されている。このようにして、長尺ランプ容器のエキシマランプでも、内側管1を撓まなくして、本来の放電ギャップを確保できる。ランプの破損や割れによる不点灯を回避でき、ランプ全体の照度の不均一も発生せず、長時間安定した点灯が確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺ランプ容器に関し、特に、光化学反応に供するエキシマランプで、内側管と外側管が同軸状に構成された長尺ランプ容器に関する。
【背景技術】
【0002】
エキシマランプは、強い洗浄力のある波長172nmの光を放射するために、半導体ウエハー表面の洗浄や、液晶基板用ガラスの表面の洗浄に利用されている。液晶基板用ガラスは、拡幅の一途をたどっており、1870mm×2200mmまで大きくなっている。当然、その表面を洗浄するランプも、2000mm以上にも延長されている。エキシマランプは、図4(a)に示すように、二重管構造をしている。エキシマランプは、例えば、外径が30mmで肉厚が1.2mmの外側管と、外径が18mmで肉厚が1.2mmの内側管の2つのガラス管を、同軸状に組み合せて両端に側壁を設けて密閉し、内側間の内面と外側管の外部に電極を取り付け、密閉したガラス製の空間に励起ガスを封入した構成である。
【0003】
エキシマランプとして長時間安定した放電と発光を維持するために、薄肉長尺の内側管は、製作過程から、傷が付かないように、変形しないように、さらに異物が混入しないように、細心の注意を払って取り扱われる。内側管は、外側管と両端の側壁で同軸状に接続されて密閉される。この密閉空間に、励起用ガスを封入する。内側間の内面と外側管の外周部に電極を取り付けて、エキシマランプとして完成する。図4(b)〜(d)に、従来のランプ組立方法を示す。このエキシマランプの製作工程で、内側管や外側管に傷や歪が入り易い。さらに、放電・発光させるランプハウスに取り付けるまでの搬送過程と組付け作業時に、エキシマランプに対して衝撃力が振動として加わり易い。製作途中で、内側管と外側管が接触して傷が付いてしまうことがある。装置に取り付ける工程や搬送による振動で、側壁と内側管との接続部が破損することもある。
【0004】
内側管は、両端を側壁で単純支持されているだけなので、長尺の管を十分に保持する機構がない。特に、内側管は、両端が側壁で保持されているのみで、中央部は全く保持されていない。ランプの全長が800mmを超えると、保持間隔の中央では数mmも撓んでしまう。両側の側壁を架台とすると、ランプ全長の5/8の位置が最も撓みが大きいという報告もある。内側管の撓みが、両端の側壁と接合部に歪ストレスを与えることになる。組付け時の衝撃やランプ点灯時の熱の影響で、このストレスが限界を超えると、ランプが割れることになる。図4(e)に、側壁部の破損の状況を示す。
【0005】
単純支持で担持された長尺の内側管は必ず撓むので、外側管との空間が狭くなる。最も撓みのある部分では、励起ガスの空間即ち放電ギャップが、設定されたギャップより極端に狭くなる。励起ガスの対流が悪くなり、外側の電極と内側の電極との間での放電が、最も空間の狭い部分で発生することになる。この狭いギャップの箇所に放電が集中する。この内側管が最も撓んだ部分に電力が集中してしまい、ランプ全体で見れば放電が不均一になる。発光がばらつくので、照度が不均一になる。この箇所だけ照度が高くなる現象が生じる。その結果、ランプ全体の照度分布が不均一になり、最終的には寿命も短くなる。つまり、装置に設置した後でも、内側管と外側管とのギャップが次第に狭くなってしまい、その箇所に放電が集中して照度ムラが発生し、照度維持期間が短縮されてしまう。
【0006】
そこで、放電ギャップを維持するために、図5(a)〜(c)に示すように、ランプの中央に支持板を取り付けて、内側管と外側管とを支える工夫がなされた。しかし、この方法では、支持板が内側管の外周と外側管の内周を連結しているので、この部位では放電が起こらない。そのため、この付近ではランプの照度が極端に低くなってしまう。そこで、図5(d)と(e)に示すように、支持板の一部を切り欠いて放電を促し、発光の低下を回避する処置が取られた。また、内側管を保持する方法として、図5(f)に示すように、内側管の半径と外側管の半径との差の長さの短いガラス棒製の保持軸にて内側管を保持する方法がある。以下に、これに関連する従来技術の例をいくつかあげる。
【0007】
特許文献1に開示された「エキシマ放電ランプ」は、輸送する際に、放電容器の破損を抑える構造としたものである。外形が概略円筒状である外側管と内側管とを同軸に配置する。外側管と内側管の間に、エキシマ分子を形成する放電用ガスが封入され、両端が封じられた中空円筒状の放電容器を形成する。内側管と外側管の間に、放電容器の長さ方向で中央近傍に、支持部材を設ける。
【0008】
特許文献2に開示された「エキシマランプ」は、二重円筒型放電容器の内側管の撓みを防止するための支持板による照度低下や均一性の悪化を防止したエキシマランプである。放電容器を構成する内側管と外側管の間に、内側管を支持してその撓みを防止する支持板を設ける。支持板に、光取出し方向に切り欠きを形成する。
【特許文献1】特開2004-139889号公報
【特許文献2】特開2006-012554号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来のエキシマランプの内側管の支持方法には、次のような問題がある。支持板を、内側管の外周と外側管の内周の大半の部分に相当する面積で溶着する方法では、放電用励起ガスがランプ全体を対流する流れが悪くなる。そのため、放電が支持板の付近で低下することになり、ランプ全体の照度分布が劣化する。さらに、長尺の内側管を外側管に挿入する組立工程で、支持板が内側管や外側管と接触しながら装着されるので、それぞれが接触する内側管の表面や外側管の内面に傷が入り易く、搬送および点灯時にランプが割れる原因になる。内側管に支持板を取り付けて外側管に挿入する工程を採用しても、逆に、外側管に支持板を先に取り付けて、改めて内側管を挿入する工程としても同様である。
【0010】
また、内側管に固着した保持軸で、外側管との空間を確保する保持機構では、内側管に固着した保持軸の先端と外側管との間の隙間が無い。内側管を外側管に挿入する工程で、内側管と外側管に傷を付けることが多く、ランプの割れの原因となる。
【0011】
本発明の目的は、上記従来の問題を解決して、長尺のガラス製ランプ容器のエキシマランプにおいて、薄肉長尺の内側管を撓ませないようにする内側管保持機構部品がガラス管と放電と発光に悪影響を及ぼさないようにして、ランプの割れなどの破損を防止するとともに、照度分布を均一にして照度低下による寿命短縮も防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明では、長尺のガラス製の円筒形の内側管と、内側管より大径のガラス製の円筒形の外側管と、内側管と外側管とを同軸状に固定する手段と、内側管が撓まないように保持するための保持材とを具備する長尺ランプ容器の保持材を、外側管の内径より短く、軸に直交する方向で内側管の外周円筒面に止着した構成とした。保持材の長さを、外側管の内径をd1とし、内側管の外径をd2としたとき、ほぼ(d12−d22)1/2とした。
【発明の効果】
【0013】
上記のように構成したことにより、内側管を撓まなくして本来の放電ギャップを確保できる長尺ランプ容器のエキシマランプでも、ランプの破損や割れによる不点灯の恐れを無くすことができる。さらに、励起ガスの対流を妨げる部分が無いので、放電が遮断されずに放電と発光が安定する。したがって、ランプ全体の照度の不均一が発生せず、長時間安定した点灯が確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図1〜図3を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
本発明の実施例1は、外側管の内径をd1とし、内側管の外径をd2としたとき、ほぼ(d12−d22)1/2の長さの保持材を、軸に直交する方向で内側管の外周円筒面に止着して、内側管と外側管を同軸状に固定した長尺ランプ容器である。
【0016】
図1は、本発明の実施例1における長尺ランプ容器の概念図である。図1において、内側管1は、ガラス製の円筒状の部材である。外側管2は、ガラス製の円筒状の部材である。保持材3は、内側管を保持するためのガラス棒である。側壁4は、内側管と外側管とを同軸状に固定してつなぐ壁状部分である。放電ギャップ5は、エキシマ放電が行われる空間である。
【0017】
上記のように構成された本発明の実施例1における長尺ランプ容器の製法と機能を説明する。長尺の内側管1を担持するときに生じる弊害を除去するために、内側管1に1箇所若しくは複数箇所、外側管2と同材料の保持材3を設ける。この保持材3は、内側管1の中心軸に直交するように、内側管1の外周に接して拘止する。長尺とは、長さが800mm以上である場合をいう。
【0018】
外側管2と同じガラス素材による棒状の素材を保持材3とする。保持材3の長さは、外側管2の内面に達する長さとする。即ち、外側管2の内径をd1とし、内側管1の外径をd2とすると、概略(d12−d22)1/2の長さとする。外側管2の中心軸と内側管1の中心軸が一致して同軸となるように、長尺の内側管1の中央に、中心軸方向に直交させて、内側管1の外周円筒面に、保持材3を止着する。
【0019】
保持材3は、外側管2の内面には固着しない。内側管1に止着した保持材3と外側管2は、中心軸に直交する方向に移動可能な状態になり、ちょうど、外側管2の内面に架設した状態になる。保持材3は、図1では内側管1の中央に1箇所であるが、ランプが非常に長尺の場合には、複数個所に設けても構わない。保持材3は、外側管2の内径より短いので、エキシマランプの容器を組み付ける際に、保持材3を予め止着した内側管1の中心軸を、外側管2の中心軸から離して挿入するように作業できる。こうすることによって、外側管2の内側と保持材3が接触して傷がつくことを回避できる。内側管1と外側管2とを、内側管1の両端に側壁4を形成させて止着する方法で組み立てる場合にも、内側管1と外側管2の間隔が保持材3で規制されるので、放電ギャップ5の空間を正確に確保できる。
【0020】
上記のように、本発明の実施例1では、長尺ランプ容器を、外側管の内径をd1とし、内側管の外径をd2としたとき、ほぼ(d12−d22)1/2の長さの保持材を、軸に直交する方向で内側管の外周円筒面に止着して、内側管と外側管を同軸状に固定した構成としたので、ランプの破損が防止でき、長時間の安定した点灯が確保できる。
【実施例2】
【0021】
本発明の実施例2は、外側管の内径をd1とし、内側管の外径をd2としたとき、ほぼ(d12−d22)1/2の長さの保持材を、軸に直交する方向で内側管の外周円筒面に2つ交差させて止着して、内側管と外側管を同軸状に固定した長尺ランプ容器である。
【0022】
図2は、本発明の実施例2における長尺ランプ容器の概念図である。図2において、保持材6、7は、内側管を保持するためのガラス棒である。その他の構成は、実施例1と同じである。
【0023】
上記のように構成された本発明の実施例2における長尺ランプ容器の製法と機能を説明する。外側管2の中心軸と内側管1の中心軸が一致して同軸となるように、長尺の内側管1の中央に、中心軸方向に直交させて、内側管1の外周円筒面に、保持材6、7を交差させて止着する。2つの保持材6、7は、内側管1をほぼ120度で挟むように交差させる。ランプを設置したとき、交差部が中心軸の真下に位置するようにする。予め内側管1の所定の箇所に保持材6、7を固定し、その後に外側管2内に挿入する。
【0024】
保持材6、7は、外側管2の内面には固着しない。内側管1に止着した保持材6、7と外側管2は、中心軸に直交する方向に移動可能な状態になり、ちょうど、外側管2の内面に架設した状態になる。保持材6、7は、外側管2の内径より短いので、エキシマランプの容器を組み付ける際に、保持材6、7を予め止着した内側管1の中心軸を、外側管2の中心軸から離して挿入するように作業できる。こうすることによって、外側管2の内側と保持材6、7が接触して傷がつくことを回避できる。内側管1と外側管2とを、内側管1の両端に側壁4を形成させて止着する方法で組み立てる場合にも、内側管1と外側管2の間隔が保持材6、7で規制されるので、放電ギャップ5の空間を正確に確保できる。
【0025】
保持材6、7が交差する角度は、120度でなくてもよい。120度からほぼ180度近くまでの角度であっても構わない。保持材6、7は、中心軸の中央部の1箇所のみに設けてもよいし、ランプが非常に長尺の場合には、複数個所に設けても構わない。
【0026】
上記のように、本発明の実施例2では、長尺ランプ容器を、外側管の内径をd1とし、内側管の外径をd2としたとき、ほぼ(d12−d22)1/2の長さの保持材を、軸に直交する方向で内側管の外周円筒面に2つ交差させて止着して、内側管と外側管を同軸状に固定した構成としたので、ランプの破損が防止でき、長時間の安定した点灯が確保できる。
【実施例3】
【0027】
本発明の実施例3は、外側管の内径をd1とし、内側管の外径をd2としたとき、ほぼ(d12−d22)1/2の長さの保持材を、軸に直交する方向で内側管の外周円筒面に4つ井桁状に交差させて止着して、内側管と外側管を同軸状に固定した長尺ランプ容器である。
【0028】
図3は、本発明の実施例3における長尺ランプ容器の概念図である。図3において、保持材8〜11は、内側管を保持するためのガラス棒である。その他の構成は、実施例1と同じである。
【0029】
上記のように構成された本発明の実施例3における長尺ランプ容器の製法と機能を説明する。外側管2の中心軸と内側管1の中心軸が一致して同軸となるように、長尺の内側管1の中央に、中心軸に直交させて、内側管1の外周円筒面に、4つの保持材8〜11を、内側管1を囲むように井桁状に交差させて止着する。予め内側管1の所定の箇所に保持材8〜11を固定し、その後に外側管2内に挿入する。
【0030】
保持材8〜11は、外側管2の内面には固着しない。保持材8〜11の最小外接円の直径が、外側管2の内径よりわずかに短くなるようにすれば、内側管1に止着した保持材8〜11と外側管2は、中心軸に直交する方向に移動可能な状態になり、ちょうど、外側管2の内面に架設した状態になる。内側管1と外側管2とを、内側管1の両端に側壁4を形成させて止着する方法で組み立てる場合に、内側管1と外側管2の間隔が保持材8〜11で規制されるので、放電ギャップ5の空間を正確に確保できる。保持材8〜11は、中心軸の中央部の1箇所のみに設けてもよいし、ランプが非常に長尺の場合には、複数個所に設けても構わない。
【0031】
上記のように、本発明の実施例3では、長尺ランプ容器を、外側管の内径をd1とし、内側管の外径をd2としたとき、ほぼ(d12−d22)1/2の長さの保持材を、軸に直交する方向で内側管の外周円筒面に4つ井桁状に交差させて止着して、内側管と外側管を同軸状に固定した構成としたので、ランプの破損が防止でき、長時間の安定した点灯が確保できる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の長尺ランプ容器は、光化学反応に供するエキシマランプで、内側管と外側管が同軸にて構成される長尺ランプ容器として最適である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例1における長尺ランプ容器の概念図である。
【図2】本発明の実施例2における長尺ランプ容器の概念図である。
【図3】本発明の実施例3における長尺ランプ容器の概念図である。
【図4】従来のガラス製エキシマランプの構造などを示す概念図である。
【図5】従来の長尺ガラス製エキシマランプの内側管支持構造を示す概念図である。
【符号の説明】
【0034】
1 内側管
2 外側管
3 保持材
4 側壁
5 放電ギャップ
6 保持材
7 保持材
8 保持材
9 保持材
10 保持材
11 保持材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺のガラス製の円筒形の内側管と、前記内側管より大径のガラス製の円筒形の外側管と、前記内側管と前記外側管とを同軸状に固定する手段と、前記内側管が撓まないように保持するための保持材とを具備する長尺ランプ容器であって、前記保持材は、前記外側管の内径より短く、軸に直交する方向で前記内側管の外周円筒面に止着されていることを特徴とする長尺ランプ容器。
【請求項2】
前記保持材は、前記外側管と同じ材質のガラス棒であることを特徴とする請求項1に記載の長尺ランプ容器。
【請求項3】
前記保持材の長さは、前記外側管の内径をd1とし、前記内側管の外径をd2としたとき、ほぼ(d12−d22)1/2であることを特徴とする請求項1に記載の長尺ランプ容器。
【請求項4】
前記保持材を、軸方向の中心部に1つ設けたことを特徴とする請求項1に記載の長尺ランプ容器。
【請求項5】
前記保持材を、軸方向の中心部に2つ交差させて設けたことを特徴とする請求項1に記載の長尺ランプ容器。
【請求項6】
前記保持材を、軸方向の中心部に4つ交差させて井桁状に設けたことを特徴とする請求項1に記載の長尺ランプ容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate