説明

長尺体の直線度の経時変化を把握する方法、システム

【課題】長尺体の直線度の経時変化を把握する方法およびシステムを提供すること。
【解決手段】長尺体の直線度の経時変化を把握する方法は、角速度センサーが取り付けられた移動体を、長尺体にガイドされながら移動させる移動工程(S3)と、前記移動体が移動した際の前記角速度センサーの姿勢の変化の情報を前記角速度センサーが取得する取得工程(S4)と、前記角速度センサーの姿勢の変化の情報と前記長尺体における移動中の前記角速度センサーの位置との関係を、情報処理部が関連づけして情報処理する情報処理工程(S5)と、定期的に前記移動体を移動させ、その都度前記情報処理部が前記情報処理し、該情報処理した結果の経時変化を、記憶部が記憶する記憶工程(S6)と、を具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサーを用いて長尺体の直線度の経時変化を把握する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、特許文献1に示す如く、プリンターは、キャリッジと、シャフトとを備えていた。前記キャリッジは、印字ヘッドを有しており、用紙の幅方向に移動可能に設けられていた。また、前記シャフトは、用紙の幅方向に延設されており、前記キャリッジをガイドするように構成されていた。またさらに、前記キャリッジには、前記キャリッジの傾きを検出するジャイロ検出部が設けられていた。そして、前記プリンターの設置方向が変化した場合、前記印字ヘッドの重力方向に対する傾きが変化する。該傾きを前記ジャイロ検出部が検出し、前記印字ヘッドの傾きの値に応じて、前記印字ヘッドからインクを吐出する際のエネルギーの大きさを制御するように構成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−112898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記ジャイロ検出部は、前記プリンターが設置された際の前記印字ヘッドの重力方向に対する傾きを検出する構成であり、前記シャフトの直線度および該直線度の経時変化を考慮した構成ではなかった。
また、大型プリンターでは、前記シャフトの長さが長くなる傾向にあり、前記シャフトの直線度を保証することは困難である。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、長尺体の直線度の経時変化を把握する方法およびシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様の長尺体の直線度の経時変化を把握する方法は、角速度センサーが取り付けられた移動体を、長尺体にガイドされながら移動させる移動工程と、前記移動体が移動した際の前記角速度センサーの姿勢の変化の情報を前記角速度センサーが取得する取得工程と、前記角速度センサーの姿勢の変化の情報と前記長尺体における移動中の前記角速度センサーの位置との関係を、情報処理部が関連づけして情報処理する情報処理工程と、定期的に前記移動体を移動させ、その都度前記情報処理部が前記情報処理し、該情報処理した結果の経時変化を、記憶部が記憶する記憶工程と、を具備することを特徴とする。
【0007】
本態様によれば、前記移動体が移動した際の前記角速度センサーの位置および姿勢の変化の情報に基づいて、前記情報処理工程により、前記長尺体の直線度を測定することができる。そして、定期的に前記移動体を移動させ、その都度前記情報処理部が前記情報処理し、該情報処理した結果の経時変化を、前記記憶部が記憶することによって、前記長尺体の直線度の経時変化を把握することができる。
【0008】
ここで、前記長尺体の直線度を測定することにより、例えば、前記長尺体の歪みが所定の許容範囲内か否かを判定することができる。また、前記長尺体の歪みの大きさ(程度)は、経時変化により徐々に大きくなる傾向がある。つまり、現在は、前記長尺体の歪みが所定の許容範囲内であっても、経時変化によりいずれは前記長尺体の歪みが所定の許容範囲外となる虞がある。
【0009】
そこで、前記長尺体の直線度の経時変化を把握することにより、前記長尺体の歪みが許容範囲外となる時期を予測することができる。そして、その頃にメンテナンス時期を設定することができ、例えば、サービスマンのサービス効率を向上させることができる。具体的には、いつ、どこのお客様のところへ訪問してメンテナンスを行うかの計画を予め立てることができ、ある地域の複数のお客様のところへの訪問予定を纏めることができる。
例えば、前記長尺体が大型プリンターのガイド部材である場合に、本態様の前記把握する方法は特に有効である。
【0010】
本発明の第2の態様の長尺体の直線度の経時変化を把握するシステムは、長尺体にガイドされながら、角速度センサーが設けられた移動体を移動させる移動手段と、前記移動体を移動させた際の前記角速度センサーの姿勢の変化の情報と前記長尺体における移動中の前記角速度センサーの位置との関係を、関連づけして情報処理する情報処理手段と、定期的に前記移動体を移動させ、その都度前記情報処理部が前記情報処理し、該情報処理した結果を、接続された通信回線を通じてサービスセンターへ送信する送信手段と、前記サービスセンターにおいて前記情報処理の結果を受信する受信手段と、前記サービスセンターにおいて受信した前記情報処理の結果を記憶する記憶手段と、を備えていることを特徴とする。
ここで、「サービスセンター」とは、長尺体を使用する者に対して、長尺体の直線度の調整や交換等のサービスを提供するものの拠点をいう。
【0011】
本態様によれば、前記接続された通信回線として、例えば、インターネットで前記長尺体の直線度についての測定データを前記サービスセンターへ送ることができる。そして、前記サービスセンターにおいて前記長尺体の直線度の経時変化を把握することができる。従って、前記サービスセンターにおいて前記長尺体の歪みが許容範囲外となる時期を予測することができる。その結果、上記第1の態様と同様の作用効果を得ることができる。つまり、必要な頃にメンテナンス時期を設定することができ、サービスマンのサービスの効率を向上させることができる。
【0012】
本発明の第3の態様は、第2の態様において、前記長尺体は、第1の所定の方向に長尺であり、ベース部に対して前記第1の所定の方向において複数の箇所で接触して取り付けられており、前記情報処理手段が前記情報処理した結果に基づいて、前記複数の箇所の少なくとも一部において、前記長尺体に対して前記第1の所定の方向と交差する方向に力を作用させて該長尺体の直線度を調整可能な調整手段を有していることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、第2の態様と同様の作用効果に加え、前記情報処理した結果に基づいて、前記長尺体の直線度を調整することができる。つまり、前記長尺体の歪みを矯正することができる。
例えば、前記長尺体の歪みが所定の許容範囲外であった場合に、前記長尺体の歪みを所定の許容範囲内に矯正することができる。
尚、前記長尺体の直線度の調整(矯正)は、ユーザー自ら行ってもよいし、専門のサービスマンが行ってもよい。
【0014】
本発明の第4の態様は、第2または第3の態様において、前記角速度センサーは、基体部と、第2の所定の方向において前記基体部から両側に延びるように設けられた駆動系である二つのT字振動子と、前記第2の所定の方向と交差する方向において前記基体部から両側に延びるように設けられた検出系である二つの共振アームと、を有しており、前記二つのT字振動子は、前記二つの共振アームを対称軸線として、線対称となる構成であることを特徴とする。所謂、「ダブルT型振動子」を用いた角速度センサーである。
【0015】
本態様によれば、第2または第3の態様と同様の作用効果に加え、前記二つのT字振動子が対向した対称軸線上に前記共振アームが配設されているため、前記共振アーム上における駆動振動の影響を殆ど無にすることができる。言い換えると、「漏れ振動」を非常に小さくすることができる。
ここで、「漏れ振動」とは、駆動系の振動が検出系に与える影響(振動)をいう。
【0016】
従って、本態様の前記角速度センサーは、従来のセンサー(例えば、音叉型振動ジャイロセンサー)と比較して高い感度を有することができる。その結果、前記長尺体の直線度を高精度で測定することができる。
また、線対称な関係の二つのT字振動子を有する「ダブルT型振動子」を用いることにより、従来のセンサーと比較して小型化することができる。その結果、前記角速度センサーを、前記移動体に容易に取り付けることができるサイズにすることができる。
【0017】
本発明の第5の態様は、第4の態様において、前記角速度センサーには、前記基体部と、前記二つのT字振動子と、前記二つの共振アームとを有する構造の素子が三つ設けられており、該三つの前記構造の素子の向きは、互いに非平行であることを特徴とする。
本態様によれば、第4の態様と同様の作用効果に加え、前記角速度センサーは、互いに平行でない3軸回りのそれぞれの角速度情報を検出することができる。その結果、前記移動体が移動する際の進行方向をX軸方向とした場合、一度の移動でX軸回りのロール、Y軸回りのピッチ、Z軸回りのヨーの情報を得ることができる。
【0018】
本発明の第6の態様は、第2から第5のいずれか一の態様において、前記移動体は、記録装置における被記録媒体に対してインクを吐出して記録する記録ヘッドを有し、被記録媒体の幅方向へ移動可能なキャリッジであり、前記長尺体は、前記キャリッジを幅方向へ案内するガイド部材であることを特徴とする。
本態様によれば、第2から第5のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、前記記録装置における前記ガイド部材の直線度の経時変化について把握することができる。前記記録装置が大型プリンターである場合、前記ガイド部材の長さが長くなる傾向があり、歪みが生じやすい。係る場合に、本態様の前記把握するシステムは特に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施例のプリンターの概略を示す側面図。
【図2】本実施例のプリンターにおけるガイド部材の測定手段の概略を示す図。
【図3】(A)(B)は本実施例のガイド部材の調整手段の原理を示す図。
【図4】(A)(B)は本実施例の角速度センサー装置の内部を示す図。
【図5】本実施例のガイド部材の直線度の経時変化を把握する方法を示す図。
【図6】(A)〜(C)は本実施例のガイド部材の直線度の経時変化の様子を示す図。
【図7】(A)〜(C)はロールが変化した場合の測定結果とガイド部材との関係を示す図。
【図8】(A)〜(C)はピッチが変化した場合の測定結果とガイド部材との関係を示す図。
【図9】(A)〜(C)はヨーが変化した場合の測定結果とガイド部材との関係を示す図。
【図10】他の実施例のガイド部材の直線度の経時変化を把握するシステムの概念図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すのは、本実施例の記録装置としての大型のインクジェットプリンター1(以下、単にプリンターという。)の全体構成の概略を示す側断面図である。
図1に示す如く、プリンター1は、繰り出し手段2と、記録部13と、巻き取り装置24と、を備えている。このうち、繰り出し手段2は、ロール状に巻かれたロール媒体Rを解いて送り方向Aへ送り出すことができるように構成されている。具体的には、第1ホルダー部8と、ローラー対12と、を有している。
【0021】
このうち、第1ホルダー部8は、ロール媒体Rの両端部を回動可能に保持することができるように設けられている。第1ホルダー部8は、ロール媒体Rのロール芯30の芯口31に嵌る軸部9と、ロール媒体Rの端部と接触可能なフランジ部10と、を有している。軸部9は、回動自在な構成でも、図示しないモーターの動力によって駆動する構成でもよい。回動自在な構成の場合は、送り方向下流側の駆動するローラー対12によってロール媒体Rが引っ張られて解かれるからである。
尚、第1ホルダー部8は、向い合わせで一対配設されている。そして、このうち少なくとも一方の第1ホルダー部8が、ロール媒体Rの幅寸法の違いに対応して幅方向Xにスライドし取付け位置を調整できるように構成されている。
【0022】
また、第1ホルダー部8の下方には、仮置き部としての仮置き台7と、持ち上げ手段3とが設けられている。仮置き台7は、ロール媒体Rを第1ホルダー部8に取り付ける前に仮に置くための台である。一例として、幅方向Xに延設された二本の第1の軸6によって構成されている。また、持ち上げ手段3は、仮置き台7に置かれた重たいロール媒体Rを容易に上方に持ち上げ、ロール媒体Rの側端を容易に第1ホルダー部8に取り付けることができるように構成されている。尚、Z軸方向が上下方向である。
【0023】
具体的に、持ち上げ手段3は、二本の第1の軸6に対して幅方向Xに摺動可能なベース部材32と、操作レバー4と、昇降部5と、を備えている。そして、操作レバー4を一方向へ回動させることにより、昇降部5は上昇し、ロール媒体Rを持ち上げることができる。一方、操作レバー4を反対方向へ回動させることにより、昇降部5は下降し、ロール媒体Rを下ろすことができる。
【0024】
また、記録部13は、プリンター本体11を有している。プリンター本体11には、幅方向Xに延設された長尺体としてのガイド部材15と、キャリッジ14と、記録ヘッド16と、媒体支持部17とが設けられている。ガイド部材15は、主ガイド軸としての第1ガイド部材15aと、副ガイド軸としての第2ガイド部材15bとによって構成されている。キャリッジ14は、第1ガイド部材15aおよび第2ガイド部材15bにガイドされながら移動手段20によって幅方向Xへ移動可能に設けられている。移動手段20として、例えば、キャリッジ14と係合した無端ベルト(図示せず)を介して駆動モーター20aの動力をキャリッジ14に伝達することによりキャリッジ14を移動させることができる。
【0025】
また、記録ヘッド16は、キャリッジ14における媒体支持部17と対向する位置に設けられ、インクをロール媒体Rに対して吐出して記録することができるように構成されている。またさらに、媒体支持部17は、ロール媒体Rを支持し、ロール媒体Rと記録ヘッド16との間の距離を所定の距離にすることができるように設けられている。
尚、ローラー対12は、プリンター本体11の内部に設けたが、外部でもよい。ロール媒体Rを送り方向Aへ送ることができればよいからである。
またさらに、巻き取り装置24は、モーター(図示せず)の動力によってロール媒体Rを巻き取り、二本の第2の軸26に取り付けられた第2ホルダー部28に巻き取ったロール媒体Rを保持することができるように構成されている。
【0026】
尚、巻き取る際にロール媒体Rに張力を与えるテンションバー21が設けられている。これにより、撓みを除去してきれいにロール媒体Rをロール状に巻き取ることができる。
また、プリンター1は、下端部に移動用のキャスター23を有する側面視逆T字形の支持フレーム22を対向するように左右両端部に備えている。そして、支持フレーム22の上部にプリンター本体11が設けられている。
【0027】
本実施例のプリンター1は、長尺体としてのガイド部材15の直線度の経時変化を把握する経時変化把握装置としての経時変化把握部18(図2参照)を有している。経時変化把握部18は、ガイド部材15の直線度を測定する測定手段33と、測定した結果の経時変化を記憶する記憶部19とを有している。また、本実施例のプリンター1は、ガイド部材15の直線度を調整可能な調整手段(41、47)を有している。先ず、ガイド部材15の直線度を測定する測定手段33と、測定した結果の経時変化を記憶する記憶部19とについて説明し、次に、ガイド部材15の直線度を調整可能な調整手段(41、47)について説明する。
【0028】
図2に示すのは、本実施例のガイド部材15の直線度を測定する測定手段33の概略を示す図である。
図2に示す如く、ガイド部材15の直線度を測定する測定手段33は、ガイド部材15のうちの特に第1ガイド部材15aの直線度を測定することができるように設けられている。具体的に、ガイド部材15の直線度を測定する測定手段33は、角速度センサー装置34と、ケーブル40と、情報処理部39とを有している。
【0029】
このうち、角速度センサー装置34は、高精度なセンサーで小型であり、キャリッジ14に設けられている。また、ケーブル40は、角速度センサー装置34と、情報処理部39とを接続するように設けられている。そして、角速度センサー装置34は、ケーブル40を介して、角速度センサー装置34が取得した情報を、情報処理部39へ送ることができるように構成されている。
尚、技術的思想としては、角速度センサー装置34が取得した情報を、情報処理部39へ送ることができればよい。従って、無線で前記情報が、角速度センサー装置34から情報処理部39へ送られる構成でもよい。つまり、ガイド部材15の直線度を測定する測定手段33は、ケーブル40を有しない構成でもよい。
【0030】
また、情報処理部39は、角速度センサー装置34が取得した情報を処理することができるように設けられている。また、情報処理部39は、表示部39aを有している。
そして、移動体としてのキャリッジ14がベースフレーム51に取り付けられた第1ガイド部材15aおよび第2ガイド部材15bにガイドされながら幅方向Xへ移動する際に角速度センサー装置34が取得した情報を、情報処理部39が処理する。この際、情報を処理した結果を表示部39aに表示するように構成されている。
【0031】
また、記憶部19は、情報処理部39が定期的に情報を処理した結果の経時変化を記憶することができるように設けられている。そして、経時変化の様子(傾向)を表示部39aに表示することができるように構成されている。
尚、第1ガイド部材15aは、後述する調整手段としての第1調整機構41を介してベースフレーム51に取り付けられている。同様に、第2ガイド部材15bは、後述する調整手段としての第2調整機構47を介してベースフレーム51に取り付けられている。
【0032】
続いて、ベースフレーム51に取り付けられた第1ガイド部材15aおよび第2ガイド部材15bの直線度を調整可能な調整手段(41、47)について説明する。
図3(A)(B)に示すのは、本実施例のガイド部材15の調整手段としての第1調整機構41および第2調整機構47の原理を示す図である。このうち、図3(A)は側断面図である。一方、図3(A)はY軸方向の矢印の下流側から上流側へ向かって見た正面図である。
【0033】
図3(A)(B)に示す如く、キャリッジ14は、前述したように、主ガイド軸としての第1ガイド部材15aおよび副ガイド軸としての第2ガイド部材15bによって案内されるように構成されている。具体的には、Y軸およびZ軸方向におけるキャリッジ14の位置は、第1ガイド部材15aによって決まり、X軸回りのキャリッジ14の姿勢は、第2ガイド部材15bによって決まる構成である。つまり、キャリッジ14は、第2ガイド部材15bに対しては、もたれ掛かっているだけの構成である。
【0034】
また、第1ガイド部材15aは、第1調整機構41を介してベースフレーム51に取り付けられている。第1調整機構41は、第1ガイド部材15aを複数の箇所で支持し、複数の箇所それぞれにおいて、Y軸方向およびZ軸方向における第1ガイド部材15aの位置を調整することができるように設けられている。言い換えると、前記複数の箇所それぞれにおいて、第1ガイド部材15aに対してX軸方向と交差する方向へ力を作用させて、第1ガイド部材15aの直線度を調整することができるように構成されている。
【0035】
具体的には、第1調整機構41は、一例として、第1L字部品46と、第1長穴42と、第1ねじ44と、第2長穴43と、第2ねじ45とを有している。このうち、第1長穴42は、第1L字部品46に形成されたZ軸方向に長尺な穴である。第1ねじ44は、第1長穴42を介して第1ガイド部材15aを第1L字部品46に固定するように設けられている。
【0036】
また、第2長穴43は、第1L字部品46に形成されたY軸方向に長尺な穴である。第2ねじ45は、第2長穴43を介して第1L字部品46をベースフレーム51に固定するように設けられている。従って、前記複数の箇所それぞれにおいて、第1ねじ44を緩めることにより、第1ガイド部材15aのZ軸方向の位置を調整することができる。また、前記複数の箇所それぞれにおいて、第2ねじ45を緩めることにより、第1ガイド部材15aのY軸方向の位置を調整することができる。
【0037】
同様に、第2ガイド部材15bは、第2調整機構47を介してベースフレーム51に取り付けられている。第2調整機構47は、第2ガイド部材15bを複数の箇所で支持し、複数の箇所それぞれにおいて、Y軸方向における第2ガイド部材15bの位置を調整することができるように設けられている。言い換えると、前記複数の箇所それぞれにおいて、第2ガイド部材15bに対してX軸方向と交差する方向へ力を作用させて、第2ガイド部材15bの直線度を調整することができるように構成されている。
【0038】
具体的には、第2調整機構47は、一例として、ベースフレーム51に固定された複数の第2L字部品50と、第3長穴48と、第3ねじ49とを有している。このうち、第3長穴48は、第2L字部品50に形成されたY軸方向に長尺な穴である。第3ねじ49は、第3長穴48を介して第2ガイド部材15bを第2L字部品50に固定するように設けられている。従って、前記複数の箇所それぞれにおいて、第3ねじ49を緩めることにより、第2ガイド部材15bのY軸方向の位置を調整することができる。
【0039】
尚、技術的思想としては、第2調整機構47は、第1ガイド部材15aを中心とした第2ガイド部材15bの周方向における位置を調整することができればよい。従って、調整することができる方向は、Y軸方向に限らない。また、前述したように、キャリッジ14は、第2ガイド部材15bに対しては、もたれ掛かっているだけの構成である。従って、該構成の場合、第2ガイド部材15bは、第1ガイド部材15aを中心とした放射方向に歪んでいても問題はない。
【0040】
続いて、角速度センサー装置34の内部について説明する。
図4(A)(B)に示すのは、本実施例の角速度センサー装置34の内部を示す図である。このうち、図4(A)は分解斜視図である。一方、図4(B)は角速度センサーのダブルT型構造の水晶素子38(ダブルT型振動子)を示す平面図である。尚、図に示すのは、Z軸回りの角速度を検出する場合である。
図4(A)に示す如く、角速度センサー装置34は、ケース35と、角速度センサーの素子38と、回路基板37と、蓋36とを有している。このうち、ケース35および蓋36は、角速度センサーの素子38および回路基板37を保護するための部材である。また、角速度センサーの素子38は、回路基板37に取り付けられている。
【0041】
図4(B)に示す如く、角速度センサーの素子38は、所謂、ダブルT型構造を有している。具体的には、角速度センサーの素子38は、基体部38aと、駆動系である二つのT字振動子38bと、検出系である二つの共振アーム38cと、を有している。二つのT字振動子38bは、所定の方向として例えばY軸方向において基体部38aから両側に延びるように設けられている。また、二つの共振アーム38cは、Y軸方向と交差するX軸方向において基体部38aから両側に延びるように設けられている。
そして、前記二つのT字振動子38bは、前記二つの共振アーム38cを対称軸線として、線対称となるように、角速度センサーの素子38は構成されている。この構造をダブルT型構造という。
【0042】
ダブルT型構造にすることにより、二つのT字振動子38bが対向した対称軸線上に共振アーム38cが配設されているため、共振アーム38c上における駆動振動の影響を殆ど無にすることができる。言い換えると、「漏れ振動」を非常に小さくすることができる。
ここで、「漏れ振動」とは、駆動系の振動が検出系に与える影響(振動)をいう。
また、ダブルT型構造にすることにより、従来のセンサーと比較して小型化することができる。その結果、角速度センサー装置34を、キャリッジ14に容易に取り付けることができるサイズにすることができる。
【0043】
尚、図4(B)では、一つのダブルT型構造の素子38を示したが、ダブルT型構造の素子38を三つ有する構成とすることが望ましい。三つの前記構造の素子38の向きは、互いに平行でない関係(互いに非平行)とすることで、X軸回り、Y軸回り、Z軸回りのそれぞれの角速度情報を検出することができるからである。そして、キャリッジ14が移動する際の進行方向をX軸方向とした場合、一度の移動でX軸回りのロール、Y軸回りのピッチ、Z軸回りのヨーの情報を得ることができるからである。
【0044】
続いて、第1ガイド部材15aおよび第2ガイド部材15bの直線度の経時変化を把握する方法について説明する。
図5に示すのは、本実施例の第1ガイド部材15aおよび第2ガイド部材15bの直線度の経時変化を把握する方法を示す図である。
図5に示す如く、ステップS1では、制御部(図示せず)が所定の時間が経過したか否かを判定する。定期的に第1ガイド部材15aおよび第2ガイド部材15bの直線度を測定するためである。
【0045】
所定の時間は、ある程度長い時間(期間)であることが望ましい。おおよその経時変化の傾向を把握するためだからである。例えば、一週間〜一ヶ月程度である。
制御部が所定の時間が経過したと判定した場合、第1ガイド部材15aおよび第2ガイド部材15bの直線度を測定するべく、ステップS2へ進む。
一方、制御部が所定の時間が未だ経過していないと判定した場合、所定の時間が経過するまでステップS1を繰り返す。
ステップS2では、キャリッジ14を、X軸方向における移動可能な範囲の一端である基準位置へ移動させる。
【0046】
ステップS3では、キャリッジ14を、移動手段20によってX軸方向における移動可能な範囲の一端側から他端側へ移動させる。キャリッジ14の移動は自動である。この際、略一定の速度でキャリッジ14を移動させることが望ましい。角速度センサー装置34が取得する角速度の変化した情報(姿勢の変化の情報)と、第1ガイド部材15aおよび第2ガイド部材15bにおけるX軸方向の角速度センサー装置34の位置との対応を容易に取ることができるからである。
【0047】
また、キャリッジ14の移動は、技術的思想としては、前記一端から前記他端までの片道だけでよく、往復移動させる必要はない。往路と復路とでは、再現性があり、仮に横軸を時間とした場合に左右対称の波形を得ることができるからである。
尚、より信頼性を高めるために、往復移動させてもよい。また、複数回往復させて、平均値を取るようにしてもよいのは言うまでもない。
【0048】
ステップS4では、角速度センサー装置34が、キャリッジ14の移動中の角速度のデータを取得する。ここで、角速度センサー装置34が有しているダブルT型構造の素子38が一つである場合、X軸回りのロール、Y軸回りのピッチ、Z軸回りのヨーのいずれか一の情報を得ることができる。係る場合、角速度センサー装置34の向きを変えて、キャリッジ14を移動させることにより、残りの二つの情報を得ることができる。
【0049】
また、前述したように、角速度センサー装置34が有しているダブルT型構造の素子38が三つである場合、X軸回りのロール、Y軸回りのピッチおよびZ軸回りのヨーの情報を一度に取得することができる。尚、角速度センサー装置34が有しているダブルT型構造の素子38が一つである場合、角速度センサー装置34を三つ設けてもよい。係る場合もX軸回りのロール、Y軸回りのピッチおよびZ軸回りのヨーの情報を一度に取得することができるからである。
【0050】
ステップS5では、角速度センサー装置34の姿勢の変化の情報とガイド部材15における移動中の角速度センサー装置34の位置との関係を、情報処理部39が関連づけして情報処理を行う。この際、例えば、角速度のデータを一回積分して必要に応じて補正する。これにより、角速度センサー装置34の角度(姿勢)と、X軸方向における位置との関係を得ることができ、第1ガイド部材15aおよび第2ガイド部材15bの直線度の程度を把握することができる。具体的には、キャリッジ14の移動中の角速度の変化により、X軸方向におけるどの位置で、X軸回りのロール、Y軸回りのピッチ、Z軸回りのヨーの変化があったかを特定することができる。
【0051】
ステップS6では、情報処理の結果を、情報処理部39が情報処理するたびに記憶部19が記憶する。これにより、第1ガイド部材15aおよび第2ガイド部材15bの直線度の経時変化を把握することができる。そして、経時変化の傾向から、第1ガイド部材15aおよび第2ガイド部材15bの歪みの程度が許容範囲を超えそうになる時期を予測することができる。
【0052】
従って、予測された時期の少し前に、必要に応じて、第1ガイド部材15aおよび第2ガイド部材15bを調整することができる。また、必要に応じて、第1ガイド部材15aおよび第2ガイド部材15bの少なくとも一方を交換することもできる。
その結果、ガイド部材15の直線度について所定の品質を担保することができ、プリンター1の記録品質をも担保することができる。
【0053】
図6(A)〜(C)に示すのは、本実施例のガイド部材15の直線度の経時変化の様子を示す図である。一例として、情報処理の結果においてロール(X軸回りの角度)が変化していた場合を示す。縦軸はロール(X軸回り)方向の角度を示す。角度が大きい程、ガイド部材15が歪んでいることがわかる。一方、横軸はX軸方向における角速度センサー装置34の位置を示す。このうち、図6(A)は最初に直線度を測定した結果である。また、図6(B)は図6(A)を測定したときから所定の時間が経過したときの結果である。またさらに、図6(C)は図6(B)を測定したときからさらに所定の時間が経過したときの結果である。
【0054】
図6(A)〜(C)に示す如く、時間が経過すると共に、ガイド部材15の歪みの程度が大きくなる傾向がある。尚、本実施例では、ある所定の長い時間(期間)が経過してもそれ以上歪みが大きくならなくなる時点よりも前についての前記傾向であることを前提として説明する。
ガイド部材15が所定量歪むまでに要する期間はプリンター1が設置されている場所における気温や湿度それらの変化の条件等にも左右されるが、遅かれ早かれロールの変化(ガイド部材15の歪み)が、所定の許容値の範囲(−T1〜T1)を超えてしまう虞がある。
【0055】
そこで、前述したように、定期的にガイド部材15の直線度を測定することにより、直線度の経時変化の傾向を把握することができる。つまり、ガイド部材15の歪みの程度が大きくなる傾向を把握することができる。
従って、ガイド部材15の歪みの程度が大きくなる傾向から、ガイド部材15の歪みの程度が許容範囲を超えそうになる時期を予測することができる。そして、該超えそうになる時期の少し前の段階で、ガイド部材15の直線度を調整することができる。または、ガイド部材15を交換してもよい。
【0056】
続いて、情報処理の結果から推測される第1ガイド部材15aおよび第2ガイド部材15bの状態について説明する。
図7(A)〜(C)に示すのは、ロール(X軸回りの角度)が変化した場合の測定結果と、第1ガイド部材15aおよび第2ガイド部材15bとの関係を示す図である。
このうち、図7(A)は情報処理の結果である。縦軸はロール(X軸回り)方向の角度を示す。一方、横軸はX軸方向における角速度センサー装置34の位置を示す。
また、図7(B)は概略側断面図である。
またさらに、図7(C)は概略平面図である。
【0057】
図7(A)に示す如く、例えば、情報処理の結果において、X軸方向における略中央をピークとするようにロール(X軸回りの角度)が変化していたとする。
ここで、本実施例では、図7(A)におけるロールの正側への変化を、キャリッジ14の図7(B)における時計方向への姿勢の変化とする。
係る場合、X軸回りにキャリッジ14の姿勢がX軸方向における略中央をピークとするように変化したので、図7(B)および図7(C)に示す如く、第2ガイド部材15bのX軸方向における略中央が、Y軸の矢印方向の下流側へ凸となるように歪んでいると推測することができる。
尚、歪み具合については、理解を容易にするために、強調して示してあるものとする。
【0058】
そして、図7(A)におけるロールの変化が、所定の許容値の範囲(−T1〜T1)を超えそうになっている場合、第2ガイド部材15bに問題があると考えられる。そして、第2ガイド部材15bを、前述した第2調整機構47により、第2ガイド部材15bの直線度が増すように調整する。具体的には、第2ガイド部材15bの幅方向Xにおける中央付近について、第3ねじ49を緩めてY軸の矢印方向の上流側へ僅かに移動させる。そして、第3ねじ49を締める。
その後、再度キャリッジ14を移動させて、情報処理を行う。そして、ロールの変化が、小さくなっていることを確認する。
尚、調整手段(41、47)を有さない構成である場合、およびガイド部材15を交換した方がよいと判断した場合は、前述したように、ガイド部材15を新しい物に交換する。
【0059】
図8(A)〜(C)に示すのは、ピッチ(Y軸回りの角度)が変化した場合の測定結果と、第1ガイド部材15aおよび第2ガイド部材15bとの関係を示す図である。
このうち、図8(A)は情報処理の結果である。縦軸はピッチ(Y軸回り)方向の角度を示す。一方、横軸はX軸方向における角速度センサー装置34の位置を示す。
また、図8(B)は概略側断面図である。
またさらに、図8(C)はY軸の矢印方向の上流側から下流側へ向かって見た概略背面図である。
【0060】
図8(A)に示す如く、例えば、情報処理の結果において、X軸方向における略中央を基準とした左側が負側にピークを有しており、右側が正側にピークを有するようにピッチ(Y軸回りの角度)が変化していたとする。
ここで、本実施例では、図8(A)におけるピッチの正側への変化を、キャリッジ14の図8(C)における時計方向への姿勢の変化とする。
【0061】
係る場合、Y軸回りにキャリッジ14の姿勢が図8(C)における反時計方向へ傾いた後に、時計方向へ姿勢を変化させてY軸回りの方向においては元の姿勢に一度戻る。その後、時計方向へ傾いた後、反時計方向へ姿勢を変化させてY軸回りの方向においては元の姿勢の戻ったことがわかる。
従って、図8(B)および図8(C)に示す如く、第1ガイド部材15aのX軸方向における略中央が、Z軸の矢印方向の下流側へ凸となるように歪んでいると推測することができる。
尚、歪み具合については、理解を容易にするために、強調して示してあるものとする。
【0062】
そして、図8(A)におけるピッチの変化が、所定の許容値の範囲(−T2〜T2)を超えそうになっている場合、第1ガイド部材15aに問題があると考えられる。そして、前述した第1調整機構41により、第1ガイド部材15aの直線度が増すように調整する。具体的には、第1ガイド部材15aの幅方向Xにおける中央付近について、第1ねじ44を緩めてZ軸の矢印方向の上流側へ僅かに移動させる。そして、第1ねじ44を締める。
その後、再度キャリッジ14を移動させて、情報処理を行う。そして、ピッチの変化が、小さくなっていることを確認する。
尚、調整手段(41、47)を有さない構成である場合、およびガイド部材15を交換した方がよいと判断した場合は、前述したように、ガイド部材15を新しい物に交換する。
【0063】
図9(A)〜(C)に示すのは、ヨー(Z軸回りの角度)が変化した場合の測定結果と、第1ガイド部材15aおよび第2ガイド部材15bとの関係を示す図である。
このうち、図9(A)は情報処理の結果である。縦軸はヨー(Z軸回り)方向の角度を示す。一方、横軸はX軸方向における角速度センサー装置34の位置を示す。
また、図9(B)は概略側断面図である。
またさらに、図9(C)は概略平面図である。
【0064】
図9(A)に示す如く、例えば、情報処理の結果において、X軸方向における略中央を基準とした左側が負側にピークを有しており、右側が正側にピークを有するようにヨー(Z軸回りの角度)が変化していたとする。
ここで、本実施例では、図9(A)におけるヨーの正側への変化を、キャリッジ14の図9(C)における時計方向への姿勢の変化とする。
【0065】
係る場合、Z軸回りにキャリッジ14の姿勢が図9(C)における反時計方向へ傾いた後に、時計方向へ姿勢を変化させてZ軸回りの方向においては元の姿勢に一度戻る。その後、時計方向へ傾いた後、反時計方向へ姿勢を変化させてZ軸回りの方向においては元の姿勢の戻ったことがわかる。
従って、図9(B)および図9(C)に示す如く、第1ガイド部材15aのX軸方向における略中央が、Y軸の矢印方向の下流側へ凸となるように歪んでいると推測することができる。
尚、歪み具合については、理解を容易にするために、強調して示してあるものとする。
【0066】
そして、図9(A)におけるヨーの変化が、所定の許容値の範囲(−T3〜T3)を超えそうになっている場合、第1ガイド部材15aに問題があると考えられる。そして、前述した第1調整機構41により、第1ガイド部材15aの直線度が増すように調整する。具体的には、第1ガイド部材15aの幅方向Xにおける中央付近について、第2ねじ45を緩めてY軸の矢印方向の上流側へ僅かに移動させる。そして、第2ねじ45を締める。
その後、再度キャリッジ14を移動させて、情報処理を行う。そして、ヨーの変化が、小さくなっていることを確認する。
【0067】
尚、調整手段(41、47)を有さない構成である場合、およびガイド部材15を交換した方がよいと判断した場合は、前述したように、ガイド部材15を新しい物に交換する。ガイド部材15の直線度の調整は、ユーザー自ら行ってもよいし、専門のサービスマンが行ってもよい。
また、上記実施例において、移動体としてのキャリッジ14は、長尺体としての第1ガイド部材15aおよび第2ガイド部材15bによってガイドされる構成としたが、長尺体は、一つの第1ガイド部材15aである構成でもよい。つまり、第2ガイド部材15bを有さない構成でもよい。
【0068】
本実施例の長尺体としての第1ガイド部材15aの直線度の経時変化を把握する方法は、角速度センサーである角速度センサー装置34が取り付けられた移動体としてのキャリッジ14を、第1ガイド部材15aにガイドされながら移動させる移動工程(S3)と、キャリッジ14が移動した際の角速度センサー装置34の姿勢の変化の情報を角速度センサー装置34が取得する取得工程(S4)と、角速度センサー装置34の姿勢の変化の情報と第1ガイド部材15aにおける移動中の角速度センサー装置34の位置との関係を、情報処理部39が関連づけして情報処理する情報処理工程(S5)と、定期的にキャリッジ14を移動させ(S3)、その都度情報処理部39が前記情報処理し(S4、S5)、該情報処理した結果の経時変化を、記憶部19が記憶する記憶工程(S6)と、を具備することを特徴とする。
【0069】
[他の実施例]
続いて、ユーザー側のプリンター1と、プリンター1のサービスセンター61との間におけるガイド部材15の直線度の経時変化を把握するシステムについて説明する。
図10に示すのは、他の実施例の長尺体の一例であるガイド部材15の直線度の経時変化を把握するシステムの概念図である。
図10に示す如く、他の実施例の長尺体の一例であるガイド部材15の直線度の経時変化を把握するシステムは、プリンター1に設けられた情報処理部39(図2参照)と、送信手段60と、サービスセンター61に設けられた受信手段62と、記憶手段63と、を有している。
【0070】
このうち、情報処理部39は、前述した実施例の情報処理部39と同様である(図2参照)。具体的には、キャリッジ14を移動させた際の角速度センサー装置34の姿勢の変化の情報とガイド部材15における移動中の角速度センサー装置34の位置との関係を、関連づけして情報処理するように構成されている。また、送信手段60は、情報処理部39が情報処理した結果を、例えば、インターネット等の電気通信回線を通じてサービスセンター61へ送信することができるように設けられている。
【0071】
またさらに、受信手段62は、送信手段60によって送られた情報処理の結果を受信することができるように設けられている。また、記憶手段63は、前述した実施例の記憶部19(図2参照)と同様に、情報処理の結果を記憶することができるように構成されている。異なる点は、前述した実施例の記憶部19はプリンター1に設けられていたが、他の実施例の記憶手段63は、サービスセンター61にある。
尚、その他の構成については、前述した実施例と同様であるので、同じ符号を用いることとし、その説明は省略する。
【0072】
従って、各プリンター1(64〜66)において、定期的にキャリッジ14を移動させてガイド部材15の直線度を測定することができる。そして、各プリンター1(64〜66)の送信手段60からサービスセンター61の受信手段62へガイド部材15の直線度の測定結果が送られる。
ここで、各プリンター1(64〜66)から送信される情報には、各プリンター1(64〜66)を識別する情報が含まれているものとする。
その結果、他の実施例では、サービスセンター61において、各プリンター1(64〜66)のガイド部材15の直線度の測定結果を把握することができる。さらに、ガイド部材15の直線度の経時変化を把握することができる。
【0073】
例えば、第1プリンター64(1)および第2プリンター65(1)が地区Bにおいて使用されており、第3プリンター66(1)が地区Cにおいて使用されているとする。サービスセンター61のサービスマンは、第1プリンター64(1)および第2プリンター65(1)のガイド部材15の直線度の経時変化を把握し、ガイド部材15の歪みが前述した所定の許容値の範囲を超えそうな時期を予測することができる。
【0074】
これにより、第1プリンター64(1)および第2プリンター65(1)の少なくとも一方において、ガイド部材15の歪みが前述した所定の許容値の範囲を超える前の段階で、両方をメンテナンスするために、地区Bの第1プリンター64(1)が設置されている場所および第2プリンター65(1)が設置されている場所を効率よく訪問することができる。
【0075】
そして、前述した調整手段(41、47)によりガイド部材15の直線度を上げるように調整する。または、ガイド部材15を新しい物に交換することができる。
その結果、第1プリンター64(1)および第2プリンター65(1)におけるガイド部材15の直線度について所定の品質を担保することができ、第1プリンター64(1)および第2プリンター65(1)の記録品質をも担保することができる。
【0076】
さらに、地区Cが地区Bの近くである場合であって、メンテナンスが必要である場合は、地区Cの第3プリンター66(1)が設置されている場所をも訪問すると、サービスマンの仕事の効率をさらによくすることができる。
具体的には、一件当たりのサービスマンの移動時間を短くすることができる。また、移動コストを下げることができる。その結果、ユーザーの金銭的負担を小さくすることができる。そして、顧客満足度を上げることができる。
尚、プリンター1(64〜66)とサービスセンター61との間の通信手段として、インターネット等の電気通信回線を用いたが、無線でもよい。
【0077】
他の実施例の第1ガイド部材15aの直線度の経時変化を把握するシステムは、第1ガイド部材15aにガイドされながら、角速度センサー装置34が設けられたキャリッジ14を移動させる移動手段20と、キャリッジ14を移動させた際の角速度センサー装置34の姿勢の変化の情報と第1ガイド部材15aにおける移動中の角速度センサー装置34の位置との関係を、関連づけして情報処理する情報処理手段としての情報処理部39と、定期的にキャリッジ14を移動させ、その都度情報処理部39が前記情報処理し、該情報処理した結果を、接続された通信回線を通じてサービスセンター61へ送信する送信手段60と、サービスセンター61において前記情報処理の結果を受信する受信手段62と、サービスセンター61において受信した前記情報処理の結果を記憶する記憶手段63と、を備えていることを特徴とする。
【0078】
また、他の実施例において、第1ガイド部材15aは、第1の所定の方向であるX軸方向に長尺であり、ベース部としてのベースフレーム51に対してX軸方向において複数の箇所で接触して取り付けられており、情報処理部39が前記情報処理した結果に基づいて、前記複数の箇所の少なくとも一部において、第1ガイド部材15aに対してX軸方向と交差する方向に力を作用させて第1ガイド部材15aの直線度を調整可能な調整手段としての第1調整機構41を有していることを特徴とする。
【0079】
またさらに、他の実施例において、角速度センサー装置34は、基体部38aと、第2の所定の方向(例えばY軸方向)において基体部38aから両側に延びるように設けられた駆動系である二つのT字振動子38bと、前記第2の所定の方向(例えばY軸方向)と交差する方向(例えばX軸方向)において基体部38aから両側に延びるように設けられた検出系である二つの共振アーム38cと、を有しており、前記二つのT字振動子38bは、前記二つの共振アーム38cを対称軸線として、線対称となる構成であることを特徴とする。
【0080】
また、他の実施例において、角速度センサー装置34には、基体部38aと、前記二つのT字振動子38bと、前記二つの共振アーム38cとを有する構造の素子38が三つ設けられており、該三つの前記構造の素子38の向きは、互いに非平行であることを特徴とする。
またさらに、他の実施例において、前記移動体は、記録装置であるプリンター1における被記録媒体の一例であるロール媒体Rに対してインクを吐出して記録する記録ヘッド16を有し、ロール媒体Rの幅方向Xへ移動可能なキャリッジ14であり、前記長尺体は、キャリッジ14を幅方向Xへ案内するガイド部材15であることを特徴とする。
【0081】
尚、上記実施例(他の実施例含む)において、長尺体はプリンター1のガイド部材15として説明したが、プリンター1の部材に限らない。
また、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0082】
1 プリンター、2 繰り出し手段、3 持ち上げ手段、4 操作レバー、5 昇降部、
6 第1の軸、7 仮置き台、8 第1ホルダー部、9 軸部、10 フランジ部、
11 プリンター本体、12 ローラー対、13 記録部、
14 キャリッジ(移動体)、15 ガイド部材(長尺体)、15a 第1ガイド部材、
15b 第2ガイド部材、16 記録ヘッド、17 媒体支持部、
18 経時変化把握部、19 記憶部、20 移動手段、20a 駆動モーター、
21 テンションバー、22 支持フレーム、23 キャスター、24 巻き取り装置、
26 第2の軸、28 第2ホルダー部、30 ロール芯、31 芯口、
32 ベース部材、33 測定手段、34 角速度センサー装置(角速度センサー)、
35 ケース、36 蓋、37 回路基板、
38 ダブルT型構造の素子(ダブルT型振動子)、38a 基体部、
38b T字振動子、38c 共振アーム、39 情報処理部、39a 表示部、
40 ケーブル、41 第1調整機構(調整手段)、42 第1長穴、43 第2長穴、
44 第1ねじ、45 第2ねじ、46 第1L字部品、
47 第2調整機構(調整手段)、48 第3長穴、49 第3ねじ、
50 第2L字部品、51 ベースフレーム、60 (他の実施例の)送信手段、
61 サービスセンター、62 受信手段、63 記憶手段、64 第1プリンター、
65 第2プリンター、66 第3プリンター、A 送り方向、B 地区、C 地区、
R ロール媒体、X 幅方向、Y X軸およびZ軸と直交する方向、
Z 上下方向(鉛直方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
角速度センサーが取り付けられた移動体を、長尺体にガイドされながら移動させる移動工程と、
前記移動体が移動した際の前記角速度センサーの姿勢の変化の情報を前記角速度センサーが取得する取得工程と、
前記角速度センサーの姿勢の変化の情報と前記長尺体における移動中の前記角速度センサーの位置との関係を、情報処理部が関連づけして情報処理する情報処理工程と、
定期的に前記移動体を移動させ、その都度前記情報処理部が前記情報処理し、該情報処理した結果の経時変化を、記憶部が記憶する記憶工程と、を具備する前記長尺体の直線度の経時変化を把握する方法。
【請求項2】
長尺体にガイドされながら、角速度センサーが設けられた移動体を移動させる移動手段と、
前記移動体を移動させた際の前記角速度センサーの姿勢の変化の情報と前記長尺体における移動中の前記角速度センサーの位置との関係を、関連づけして情報処理する情報処理手段と、
定期的に前記移動体を移動させ、その都度前記情報処理部が前記情報処理し、該情報処理した結果を、接続された通信回線を通じてサービスセンターへ送信する送信手段と、
前記サービスセンターにおいて前記情報処理の結果を受信する受信手段と、
前記サービスセンターにおいて受信した前記情報処理の結果を記憶する記憶手段と、を備えている前記長尺体の直線度の経時変化を把握するシステム。
【請求項3】
請求項2に記載の長尺体の直線度の経時変化を把握するシステムにおいて、前記長尺体は、第1の所定の方向に長尺であり、ベース部に対して前記第1の所定の方向において複数の箇所で接触して取り付けられており、
前記情報処理手段が前記情報処理した結果に基づいて、前記複数の箇所の少なくとも一部において、前記長尺体に対して前記第1の所定の方向と交差する方向に力を作用させて該長尺体の直線度を調整可能な調整手段を有していることを特徴とする前記長尺体の直線度の経時変化を把握するシステム。
【請求項4】
請求項2または3に記載の長尺体の直線度の経時変化を把握するシステムにおいて、前記角速度センサーは、
基体部と、
第2の所定の方向において前記基体部から両側に延びるように設けられた駆動系である二つのT字振動子と、
前記第2の所定の方向と交差する方向において前記基体部から両側に延びるように設けられた検出系である二つの共振アームと、を有しており、
前記二つのT字振動子は、前記二つの共振アームを対称軸線として、線対称となる構成であることを特徴とする前記長尺体の直線度の経時変化を把握するシステム。
【請求項5】
請求項4に記載の長尺体の直線度の経時変化を把握するシステムにおいて、前記角速度センサーには、前記基体部と、前記二つのT字振動子と、前記二つの共振アームとを有する構造の素子が三つ設けられており、
該三つの前記構造の素子の向きは、互いに非平行であることを特徴とする前記長尺体の直線度の経時変化を把握するシステム。
【請求項6】
請求項2から5のいずれか1項に記載の長尺体の直線度の経時変化を把握するシステムにおいて、
前記移動体は、記録装置における被記録媒体に対してインクを吐出して記録する記録ヘッドを有し、被記録媒体の幅方向へ移動可能なキャリッジであり、
前記長尺体は、前記キャリッジを幅方向へ案内するガイド部材であることを特徴とする前記長尺体の直線度の経時変化を把握するシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−237663(P2012−237663A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107155(P2011−107155)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】