説明

長尺円筒部材の真直度計測治具とその計測方法

【課題】長さが2mを超える長尺円筒部材に計測用の罫書を施すことなく、長尺円筒部材の真直度を高精度に計測することができる長尺円筒部材の真直度計測治具とその計測方法を提供する。
【解決手段】真直度計測治具10は、治具本体12と水準器18からなる。治具本体12の下面12aは求心構造13を有し、求心構造により治具本体を長尺円筒部材1の外径上部又は内径下部に水平を保持して載せると、長尺円筒部材の中心軸Z−Zから同一高さ及び同一向きの「求心位置」を維持する。さらに、治具本体12は、オートレベル又はトランシットでピッチングを計測可能な上下方向の高さ変位計測目盛20Aと、トランシットでヨーイングを計測可能な幅方向の幅変位計測目盛20Bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型のシリンダーライナやジェットエンジンのロングシャフトの内径加工に用いるボーリングバーなど、長尺円筒部材の真直度計測治具とその計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺円筒部材の外形や内面の真直度を計測する手段として、種々の提案が既になされている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
特許文献1は、円筒状物体の外形の真直度をその主要部の表面に損傷を与えることなく簡便に高精度で測定することを目的とする。
そのため、特許文献1の装置は、図8に示すように、感光層未形成部53に対応する位置に回転スペーサー56が嵌め込まれている真直度基準体5に感光ドラム1を回転スペーサー56を介して互いの中心軸が平行になるようにバネ57で押しつけ、微小間隙58にレーザー光を垂直に投射するレーザー光発光部59と微小間隙58を通過したレーザー光を受けるレーザー光受光部60を一体として装着された移動台62を真直度基準体55に平行なガイドレール61に沿って移動させて微小間隙58をレーザー光で走査し、感光ドラム1の外形の真直度に応じて変わる間隙幅を微小間隙58を通過したレーザー光量の変化量により検知して真直度を求めるものである。なお、この図で52は感光層である。
【0004】
特許文献2は、深穴の真直度測定を精度良く且つ効率良く行なうことを目的とする。
そのため、特許文献2の装置は、図9に示すように、ストレートゲージ72の外周面に変位計73を取り付け、ストレードゲージ72をシリンダの深穴71aに挿入して変位計73によりストレートゲージ72の外周面と深穴71aの内周面との隙間分布を求め、ストレートゲージ72のゲージ長Lgあたりの深穴71aの真直度を求め、深穴71aの真直度を直接的に測定し、ストレートゲージ72を深穴71aの軸方向に移動させることでゲージ長Lgあたりの深穴71aの真直度を連続して求めるものである。
【0005】
【特許文献1】特開平5−248842号明細書、「円筒状物体の外形の真直度測定装置」
【特許文献2】特開平6−213617号明細書、「深穴の真直度測定装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
大型のシリンダーライナやジェットエンジンのロングシャフトの内径加工に用いるボーリングバーは、長さが2mを超える長尺かつ円筒形の部材(以下、「長尺円筒部材」と呼ぶ)である。
かかる長尺円筒部材は、ワーク(例えば、シリンダーライナやロングシャフト)の内面を加工するための加工装置(例えば中ぐり盤)に両端を支持して水平に取り付けられ、この長尺円筒部材に取り付けた加工工具(例えばバイト)を水平に移動しながら、ワークをその軸中心に回転させて、ワークの内面を加工するために用いられる。
【0007】
このような長尺円筒部材は、予め旋盤等の加工装置を用いて、ほぼ全長にわたり同一の外径に加工されている。しかし、長尺円筒部材の加工時の加工歪み等により、長尺円筒部材の軸心に曲がりが生じている場合がある。
しかし、従来は、長さが2mを超える長尺円筒部材の真直度を高精度に計測する手段がなかった。
【0008】
そこで、従来は、トランシットやオートレベルを用いて、このような長尺円筒部材の円筒頂点を計測していたが、円筒の頂点のため計測器焦点が合わせにくく、計測精度が低い問題点があった。
【0009】
また、トランシットやオートレベルを用いて、計測精度を高めるために、長尺円筒部材自体に計測用の罫書を施すことも考えられるが、罫書線を入れることは長尺円筒部材の品質を落とすことになる問題点があった。
【0010】
本発明は上述した従来の問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、長さが2mを超える長尺円筒部材に計測用の罫書を施すことなく、長尺円筒部材の真直度を高精度に計測することができる長尺円筒部材の真直度計測治具とその計測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、ほぼ全長にわたり同一の外径又は内径に加工され両端を水平支持された長尺円筒部材の軸心の真直度を計測するための真直度計測治具であって、
治具本体と、該治具本体に取り付けられその傾きを水平に保持するための水準器とからなり、
前記治具本体の下面は求心構造を有し、該求心構造により治具本体を長尺円筒部材の外径上部又は内径下部に水平を保持して載せると、長尺円筒部材の中心軸から同一高さ及び同一向きの求心位置を維持するようになっており、
さらに、治具本体は、オートレベル又はトランシットでピッチングを計測可能な上下方向の高さ変位計測目盛と、トランシットでヨーイングを計測可能な幅方向の幅変位計測目盛とを備える、ことを特徴とする長尺円筒部材の真直度計測治具が提供される。
【0012】
本発明の好ましい実施形態によれば、治具本体の上面は、前記求心位置において、水平であり、
治具本体の前面及び/又は後面は、前記求心位置において、円筒部材の軸心に対し垂直であり、
治具本体の右側面及び/又は左側面は、前記求心位置において、円筒部材の軸心と平行かつ鉛直であり、
前記高さ変位計測目盛は、前記前面、後面、右側面又は左側面の少なくとも1つに設けられ、
前記幅変位計測目盛は、前記前面、後面、又は上面の少なくとも1つに設けられる。
【0013】
また、前記求心構造は、長尺円筒部材の外面に2つの直交平面が接するV溝、2つの同一円筒表面が接する1対の円筒ローラ、又は3点又は4点で接する3又は4のボールを有する。
【0014】
また、本発明によれば、ほぼ全長にわたり同一の外径又は内径に加工され両端を水平支持された長尺円筒部材の軸心の真直度を計測する計測方法であって、
求心構造を有し、該求心構造により治具本体を長尺円筒部材の外径上部又は内径下部に水平を保持して載せると、長尺円筒部材の中心軸から同一高さ及び同一向きの求心位置を維持するようになっている治具本体の下面を、長尺円筒部材の外径上部又は内径下部に載せ、
前記治具本体を、水準器を用いて水平に調整し、
前記治具本体に設けられた上下方向の高さ変位計測目盛を、離れた位置からオートレベル又はトランシットで観察して治具本体のピッチングを計測し、
前記治具本体に設けられた幅方向の幅変位計測目盛を、離れた位置からトランシットで観察して治具本体のヨーイングを計測する、ことを特徴とする長尺円筒部材の真直度計測方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
上記本発明の治具及び計測方法によれば、治具本体の下面が求心構造を有し、該求心構造により治具本体を長尺円筒部材の外径上部又は内径下部に水平を保持して載せると、長尺円筒部材の中心軸から同一高さ及び同一向きの求心位置を維持するようになっているので、この治具本体の下面を、長尺円筒部材の外径上部又は内径下部に載せ、水準器を用いて水平に調整することにより、治具本体は長尺円筒部材の中心軸から同一高さ及び同一向きの求心位置を維持することができる。
【0016】
さらに、上下方向の高さ変位計測目盛が治具本体に設けられているので、これをオートレベル又はトランシットで観察することにより、所定の水平高さに対する治具本体の上下方向位置、すなわち長尺円筒部材の軸心のピッチングを計測することができる。
また、幅方向の幅変位計測目盛が治具本体に設けられているので、これをトランシットで観察することにより、所定の幅方向位置に対する治具本体の幅方向位置、すなわち長尺円筒部材の軸心のヨーイングを計測することができる。
【0017】
従って、長尺円筒部材の長さが2mを超える場合であっても、長尺円筒部材自体に計測用の罫書を施すことなく、長尺円筒部材の真直度(軸心のピッチングとヨーイング)を高精度に計測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施例を図面を参照して説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0019】
図1は、本発明の真直度計測治具を用いた計測装置の全体構成図であり、 (A)は平面図、(B)は側面図である。
【0020】
図1において、1は長さが2mを超える長尺円筒部材であり、ほぼ全長にわたり同一の外径に加工されている。なお、円筒部材の自重によるたわみや加工時の加工誤差や加工時の加工歪み等により、軸心に曲がりが生じている可能性がある。
また、2はこの長尺円筒部材1を用いてワーク(図示せず)の内面を加工するための加工装置であり、長尺円筒部材1の両端で水平に支持している。
この状態において、長尺円筒部材1の中心軸Z−Zは、水平軸であるが、軸心に曲がりがある場合、曲がりのない仮想上の中心軸(以下、「仮想中心軸」と呼ぶ)に対して上下方向と幅方向にわずかにずれている可能性がある。以下、仮想中心軸に対する上下方向の変位を「ピッチング」、仮想中心軸に対する幅方向の変位を「ヨーイング」と呼ぶ。
【0021】
図1において、10は本発明の真直度計測治具、20は真直度計測治具10に取り付けられた計測目盛、30はオートレベル、40はトランシットである。
オートレベル30とトランシット40は、望遠鏡と水平目盛盤及び/又は鉛直目盛盤または十字線を備えており、離れた位置から対象物の特定の位置(例えば後述する計測目盛)を観測することにより、水平目盛盤及び/又は鉛直目盛盤または十字線を仮想中心軸としてこれに対する上下方向の変位と幅方向の変位を計測することができるようになっている。
【0022】
真直度計測治具10は、長尺円筒部材1の任意に位置において、長尺円筒部材1の外径上部に載せることにより、長尺円筒部材1の中心軸Z−Zから同一高さ及び同一向きの「求心位置」を維持するようになっている。従って、この求心位置において、真直度計測治具10に固定して取り付けられた計測目盛(図示せず)も、長尺円筒部材1の中心軸Z−Zから同一高さ及び同一向きを維持する。
【0023】
この状態において、図1(A)に示すように、加工装置2から離れた位置からオートレベル30又はトランシット40を用いて真直度計測治具10の特定の位置(例えば後述する計測目盛)を観測することにより、真直度計測治具10の仮想中心軸に対する上下方向の変位(すなわちピッチング)を、水平目盛盤により計測することができる。
また、この状態において、図1(B)に示すように、加工装置2から離れた位置からオートレベル30又はトランシット40を用いて真直度計測治具10の特定の位置(例えば後述する計測目盛)を観測することにより、真直度計測治具10の仮想中心軸に対する幅方向の変位(すなわちヨーイング)を、鉛直目盛盤を用いて計測することができる。
【0024】
図2は、本発明の真直度計測治具の第1実施形態図であり、(A)は側面図、(B)はB−B矢視図、(C)はC−C矢視図である。
この図において、本発明の真直度計測治具10は、治具本体12、水準器18、及び計測目盛20からなる。
【0025】
治具本体12は、下面12a、上面12b、前面12c、後面12d、右側面12e及び左側面12fを有する。
治具本体12の下面12aは求心構造13を有し、この求心構造13により治具本体12を長尺円筒部材1の外径上部に水平を保持して載せると、長尺円筒部材1の中心軸Z−Zから同一高さ及び同一向きの「求心位置」を維持するようになっている。
この例で、求心構造13は、長尺円筒部材1の外面に2つの直交平面14が接するV溝である。すなわち、2つの直交平面14はその間に90°の相対角度を有しており、長尺円筒部材1の外面に接する状態において、その中心軸が長尺円筒部材1の中心軸Z−Zを通るように位置する。
従って、この位置において、2つの直交平面14の中心軸に対して直交する上面12bが、水平となる治具本体12の位置を「求心位置」と呼ぶ。
【0026】
上述した求心位置では、治具本体12の各部分が、長尺円筒部材1の中心軸Z−Zから同一高さ及び同一向きに位置する。すなわち、上面12bは、求心位置において水平であり、前面12c及び/又は後面12dは、求心位置において、円筒部材の軸心Z−Zに対し垂直であり、右側面12e及び/又は左側面12fは、求心位置において、円筒部材の軸心Z−Zと平行かつ鉛直である。
【0027】
水準器18は、治具本体12に取り付けられ、その傾きを水平に保持するために用いられる。この例では水準器18は、治具本体12の上面12bに幅方向に延びる棒状の水泡式水準器であり、治具本体12の上面12bの幅方向の傾きを水平に調整できるようになっている。
なお、水準器18は、この構成に限定されず、治具本体12の上面12bの中心軸Z−Z方向の傾きを同時に計測できるようにしてもよい。また、この例において、水準器18は、治具本体12に着脱可能であるが、上面12b又はその他の位置に固定してもよい。
【0028】
計測目盛20は、上下方向の高さ変位計測目盛20Aと、幅方向の幅変位計測目盛20Bからなる。
高さ変位計測目盛20Aは、治具本体12の前面12c、後面12d、右側面12e又は左側面12fの少なくとも1つに設けられ、オートレベル30(又はトランシット40)でこれに内蔵された水平目盛盤または十字線に対する上下方向の変位(ピッチング)を計測できるようになっている。
また、幅変位計測目盛20Bは、治具本体12の前面12c、後面12d、又は上面12bの少なくとも1つに設けられ、トランシット40でこれに内蔵された鉛直目盛盤または十字線に対する幅方向の変位(ヨーイング)を計測できるようになっている。
【0029】
図3は、本発明の真直度計測治具の第2実施形態図であり、(A)は側面図、(B)は軸方向矢視図である。
この例で、求心構造13は、長尺円筒部材1の外面に2つの同一円筒表面が接する1対の円筒ローラ15である。すなわち、1対の円筒ローラ15は互に平行であり、その円筒表面が長尺円筒部材1の外面に接する状態において、その中心軸が長尺円筒部材1の中心軸Z−Zを通るように構成されている。
この構成により、治具本体12を長尺円筒部材1の外径上部に水平を保持して載せると、治具本体12の各部分が、長尺円筒部材1の中心軸Z−Zから同一高さ及び同一向きの「求心位置」を維持することができる。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0030】
図4は、本発明の真直度計測治具の第3実施形態図であり、(A)は側面図、(B)は軸方向矢視図である。
この例で、求心構造13は、長尺円筒部材1の外面に3点又は4点で接する3又は4のボール16を有する。すなわち、3又は4のボール16は中心軸Z−Zから等距離に位置しており、その外面が長尺円筒部材1の外面に接する状態において、上面12bに直交する軸線が長尺円筒部材1の中心軸Z−Zを通るように構成されている。
その他の構成は第1及び第2実施形態と同様である。
【0031】
図5は、本発明の真直度計測治具の第4実施形態図であり、(A)は側面図、(B)は軸方向矢視図である。
この例で、長尺材1は、ほぼ全長にわたり同一の内径に加工され両端を水平支持されている。
【0032】
この例で、求心構造13は、第2実施形態と同様に、長尺円筒部材1の外面に2つの同一円筒表面が接する1対の円筒ローラ15である。なお、第3実施形態と同様に、3点又は4点で接する3又は4のボール16であってもよい。
この構成により、治具本体12を長尺円筒部材1の外径上部に水平を保持して載せると、治具本体12の各部分が、長尺円筒部材1の中心軸Z−Zから同一高さ及び同一向きの「求心位置」を維持することができる。
その他の構成は第2又は第3実施形態と同様である。
【0033】
図6は、計測目盛20の第1実施形態図であり、図7は計測目盛20の第2実施形態図である。
【0034】
図6(A)と図7(A)は、上下方向の高さ変位計測目盛20Aであり、ピッチング計測用である。オートレベル30、トランシット40に内蔵目盛りがなく、厳密な水平軸を示すヘアラインのみの場合には、図6(A)に示す水平補助ライン22a付きを用いるのがよい。逆にオートレベル30、トランシット40に内蔵目盛がある場合には、図7(A)のように補助ラインがない水平基準ライン21aのみであってもよい。
【0035】
図6(B)と図7(B)は、幅方向の幅変位計測目盛20Bであり、ヨーイング計測用である。オートレベル30、トランシット40に内蔵目盛がなく、厳密な水平軸を示すヘアラインのみの場合には、図6(B) に示す鉛直補助ライン22b付きを用いるのがよい。逆にオートレベル30、トランシット40に内蔵目盛がある場合には、図7(B)のように補助ラインがない鉛直基準ライン21bのみであってもよい。
【0036】
図6(C)と図7(C)は、上下方向と幅方向の両用目盛20Cであり、ピッチング計測とヨーイング計測の両方に用いることができる。この両用目盛20Cは、高さ変位計測目盛20Aと幅変位計測目盛20Bの両方を含んでいる。
その他の構成は、図6(A)と図7(A)、及び図6(B)と図7(B)と同様である。
【0037】
なお、計測目盛20の構成は、この例に限定されず、オートレベル30又はトランシット40でこれに内蔵された水平目盛盤に対する上下方向の変位(ピッチング)と幅方向の変位(ヨーイング)を計測できる限りで、その他の構成、例えば、単なるクロスや円形であってもよい。
【0038】
上述した真直度計測治具10を用いて、本発明の計測方法では、
(A)治具本体12の下面12aを、長尺円筒部材1の外径上部又は長尺部材1の内径下部に載せ、
(B)治具本体12を、水準器18を用いて水平に調整し、
(C)治具本体12に設けられた上下方向の高さ変位計測目盛20Aを、離れた位置からオートレベル30又はトランシット40で観察して治具本体12のピッチングを計測し、
(D)治具本体12に設けられた幅方向の幅変位計測目盛20Bを、離れた位置からトランシット40で観察して治具本体12のヨーイングを計測する。
【0039】
真直度計測治具10は、長尺円筒部材1の円筒軸方向に等ピッチまたは不等ピッチに移動させた後、水準器18により円周方向にピッチごとに治具10を同じ姿勢となるよう調整し、その後オートレベルやトランシットにより円筒の水平、垂直方向の真直度を計測する。治具10の調整は、手動で調整しても良いがネジなどで微調整できる機能を有しても良い。
【0040】
また、オートレベルやトランシット以外にオートコリメータでも計測できる。この場合、反射鏡を治具10に搭載する必要がある。
【0041】
上述した本発明の治具10及び計測方法によれば、治具本体12の下面12aが求心構造13を有し、この求心構造13により治具本体12を長尺円筒部材1の外径上部又は内径下部に水平を保持して載せると、長尺円筒部材1の中心軸Z−Zから同一高さ及び同一向きの求心位置を維持するようになっているので、この治具本体1212aの下面を、長尺円筒部材1の外径上部又は長尺部材1の内径下部に載せ、水準器18を用いて水平に調整することにより、治具本体12は長尺円筒部材1の中心軸Z−Zから同一高さ及び同一向きの求心位置を維持する。
【0042】
また、この求心位置において、治具本体12の上面12bは水平となり、前面12c及び/又は後面12dは円筒部材1の軸心Z−Zに対し垂直となり、右側面12e及び/又は左側面12fは円筒部材1の軸心Z−Zと平行かつ鉛直となる。
【0043】
さらに、上下方向の高さ変位計測目盛20Aが治具本体12の前面12c、後面12d、右側面12e又は左側面12fの少なくとも1つに設けられているので、これをオートレベル30又はトランシット40で観察することにより、所定の水平高さ(水平目盛盤)に対する治具本体の上下方向位置、すなわち長尺円筒部材1の軸心Z−Zのピッチングを計測することができる。
また、幅方向の幅変位計測目盛20Bが治具本体12の前面12c、後面12d、又は上面12bの少なくとも1つに設けられているので、これをトランシット40で観察することにより、所定の幅方向位置(鉛直目盛盤)に対する治具本体12の幅方向位置、すなわち長尺円筒部材1の軸心Z−Zのヨーイングを計測することができる。
【0044】
従って、長尺円筒部材1の長さが2mを超える場合であっても、長尺円筒部材自体に計測用の罫書を施すことなく、長尺円筒部材の真直度(軸心のピッチングとヨーイング)を高精度に計測することができる。
【0045】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の真直度計測治具を用いた計測装置の全体構成図である。
【図2】本発明の真直度計測治具の第1実施形態図である。
【図3】本発明の真直度計測治具の第2実施形態図である。
【図4】本発明の真直度計測治具の第3実施形態図である。
【図5】本発明の真直度計測治具の第4実施形態図である。
【図6】計測目盛の第1実施形態を示す図である。
【図7】計測目盛の第2実施形態を示す図である。
【図8】特許文献1の装置の説明図である。
【図9】特許文献2の装置の説明図である。
【符号の説明】
【0047】
1 長尺円筒部材、2 加工装置、
10 真直度計測治具、12 治具本体、
12a 下面、12b 上面、12c 前面、12d 後面、
12e 右側面、12f 左側面、
13 求心構造、14 直交平面、
15 円筒ローラ、16 ボール、
18 水準器、20 計測目盛、
20A 高さ変位計測目盛、20B 幅変位計測目盛、
21a 水平基準ライン、21b 鉛直基準ライン、
22a 水平補助ライン、22b 鉛直補助ライン、
30 オートレベル、40 トランシット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ほぼ全長にわたり同一の外径又は内径に加工され両端を水平支持された長尺円筒部材の軸心の真直度を計測するための真直度計測治具であって、
治具本体と、該治具本体に取り付けられその傾きを水平に保持するための水準器とからなり、
前記治具本体の下面は求心構造を有し、該求心構造により治具本体を長尺円筒部材の外径上部又は内径下部に水平を保持して載せると、長尺円筒部材の中心軸から同一高さ及び同一向きの求心位置を維持するようになっており、
さらに、治具本体は、オートレベル又はトランシットでピッチングを計測可能な上下方向の高さ変位計測目盛と、トランシットでヨーイングを計測可能な幅方向の幅変位計測目盛とを備える、ことを特徴とする長尺円筒部材の真直度計測治具。
【請求項2】
治具本体の上面は、前記求心位置において水平であり、
治具本体の前面及び/又は後面は、前記求心位置において、円筒部材の軸心に対し垂直であり、
治具本体の右側面及び/又は左側面は、前記求心位置において、円筒部材の軸心と平行かつ鉛直であり、
前記高さ変位計測目盛は、前記前面、後面、右側面又は左側面の少なくとも1つに固定して設けられ、
前記幅変位計測目盛は、前記前面、後面、又は上面の少なくとも1つに固定して設けられる、ことを特徴とする請求項1に記載の長尺円筒部材の真直度計測治具。
【請求項3】
前記求心構造は、長尺円筒部材の外面に2つの直交平面が接するV溝、2つの同一円筒表面が接する1対の円筒ローラ、又は3点又は4点で接する3又は4のボールを有する、ことを特徴とする請求項1に記載の長尺円筒部材の真直度計測治具。
【請求項4】
ほぼ全長にわたり同一の外径又は内径に加工され両端を水平支持された長尺円筒部材の軸心の真直度を計測する計測方法であって、
求心構造を有し、該求心構造により治具本体を長尺円筒部材の外径上部又は内径下部に水平を保持して載せると、長尺円筒部材の中心軸から同一高さ及び同一向きの求心位置を維持するようになっている治具本体の下面を、長尺円筒部材の外径上部又は内径下部に載せ、
前記治具本体を、水準器を用いて水平に調整し、
前記治具本体に設けられた上下方向の高さ変位計測目盛を、離れた位置からオートレベル又はトランシットで観察して治具本体のピッチングを計測し、
前記治具本体に設けられた幅方向の幅変位計測目盛を、離れた位置からトランシットで観察して治具本体のヨーイングを計測する、ことを特徴とする長尺円筒部材の真直度計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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