説明

長尺材の搬送装置

【課題】長尺材、特に外形の異なった長尺材を搬送する際に、搬送装置を稼動状態においたまま、搬送物の外径の変動に応じて搬送装置上への載荷本数を増減することができる長尺材の搬送装置を提供する。
【解決手段】長尺材の移送方向に延在して敷設した複数のスキッドレール1と、前記スキッドレール1に並行して走行し前記長尺材を前記スキッドレール上で前進させるドッグ付きチェーン2と、該ドッグ付きチェーン2の駆動機構を有する長尺材の搬送装置において、前記ドッグ付きチェーン2をチェーンリンク4間に所定ピッチを離間してドッグ5を連結・配置したものとするとともに、前記ドッグ5の離間ピッチ間に前記所定ピッチを分割し、かつ前記スキッドレール1の移送面に対して上下に出没自在に出没ドッグ6A,6Bを設けてなるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺材をその長さ方向と直角方向に移送する長尺材の搬送装置に係り、特に鋼管、丸棒等の径の異なる長尺材の搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺材をその直角方向に搬送する装置として、例えば移送方向に延在して敷設した一対のスキッドレール上に長尺材を掛け渡し、これをチェーンに所定のピッチで取付けた爪状のドッグで押して移動させるスキッドレール−チェーンコンベヤ方式の長尺材搬送装置として、例えば冷却床が知られている。
【0003】
従来から用いられているスキッドレール−チェーンコンベヤ方式の長尺材搬送装置の典型的な構造は、図9にその要部を示すように、移送方向に延在して敷設した一対のスキッドレール1上に長尺材Sを掛け渡し、これをスキッドレール1に並行して走行するドッグ付きチェーン2によって押しながら前進させるようになっている。このドッグ付きチェーン2は、図示しない駆動機構によってチェーンガイド3に沿って矢印の方向に走行するようになっており、チェーンリンク4の間に適当なピッチPをおいてドッグ5が連結・配置されたものとして構成されている。
【0004】
上記従来のスキッドレール−チェーンコンベヤ方式の長尺材搬送装置においては、ドッグ5の取付けピッチPは、長尺材搬送装置の搬送物Sの最大径に応じて固有のものとして定められており、そのため、例えば鋼管を搬送するとき、鋼管の外径が変化しても搬送装置上に載荷できる鋼管の本数を変えることができず、鋼管の外径が小さくなったときには、搬送速度を上げない限り、搬送量が小さくなるなどの問題がある。
【0005】
このような問題を解決するために、例えば、特許文献1、2には、2本のドッグ付きチェーンを1組として設置し、外径の大きい鋼管を移送するときには、該ドッグ付きチェーンの位相を互いに一致させるようにするとともに、外径の小さい鋼管を移送するときには
前記位相を異ならしめて一方のドッグピッチ間に他方のドッグが入り込むようにして外径の小さい鋼管を搬送装置上により多く載荷できる冷却床が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開昭59−120313号公報
【特許文献2】特開昭59−120314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1、2に開示された手段では、位相変更操作に先立って搬送装置を空荷の状態にしなければならず、また、位相変更操作のために搬送装置を停止しなければならず、そのため位相変更操作のために多大の時間を要するという問題があり、生産性の向上を十分には図り得ないという問題があった。
【0008】
本発明は、本発明は長尺材、特に外径の異なった鋼管などの長尺材を搬送する際に、搬送装置を稼動状態においたまま、搬送物の外径の変動に応じて搬送装置上への載荷本数を増減することができる長尺材の搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、長尺材の移送方向に延在して敷設した複数のスキッドレールと、前記スキッドレールに並行して走行し前記長尺材を前記スキッドレール上で前進させるドッグ付きチェーンと、該ドッグ付きチェーンの駆動機構を有する長尺材の搬送装置において、前記ドッグ付きチェーンをチェーンリンク間に所定ピッチを離間してドッグを連結・配置したものとするとともに、前記ドッグの離間ピッチ間に前記所定ピッチを分割し、かつ前記スキッドレールの移送面に対して上下に出没自在に出没ドッグを設けてなるものとしている。
【0010】
上記発明において、出没ドッグをベルクランク状の外形を有するものとするとともに、その一方のアームを取付けアームとし、他方のアームを作動アームとし、かつ、前記取付けアームの端部をドッグ付きチェーンのチェーンリンクとドッグの回動接続部に回動自在に取付け、前記取付けアームと作動アームとの交点に上下機構を取付けかつドッグ付きチェーンに沿って走行するものとすることができる。
【0011】
上記発明において、出没ドッグを出没ドッグごとに設けた上下機構によって制御されるものとすることができる。
【0012】
また、出没ドッグを搬送ライン前半部に設置された出没ドッグ群と搬送ライン後半部に設置された出没ドッグ群に分られ、各群ごとに上下機構により制御されるものとすることもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、長尺材、特に外形の異なる長尺材を搬送する際に、搬送装置を稼動状態においたまま、搬送物の外径の変動に応じて搬送装置上への載荷本数を増減することができるようになる。それにより、長尺材の搬送装置の稼働率を向上させることができ、ひいては鋼管等の生産性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明に係る長尺材搬送装置の全体構成を示す平面図であり、図2はそのA−A断面の拡大矢視図である。ここに示すように、本発明の長尺材の搬送装置は、複数のドッグ付きチェーンユニット8を並列してなり、各ドッグ付きチェーンユニット8は、長尺材、例えば鋼管の移送方向に延在して敷設した複数のスキッドレール1と、スキッドレール1に並行して走行し長尺材Sを前記スキッドレール1上で前進させるドッグ付きチェーン2と、該ドッグ付きチェーン2の駆動装置13とを備えている。また、前記ドッグ付きチェーン2は、チェーンリンク4間に所定ピッチPを離間してドッグ5を連結・配置したものであり、このドッグ付きチェーン2に前記ドッグ5の離間ピッチP間に前記所定ピッチを分割するように前記スキッドレール1の移送面に対して上下に出没自在な出没ドッグ6が付設されている。
【0015】
スキッドレール1は、長尺材を移送するために、長尺材をその長手方向に直角方向に載荷するものであり、一般には搬送方向に水平に設置されるが、本発明の場合には、長尺材(鋼管等)がドッグ付きチェーン2によって強制的に押されて搬送されるようになっているため、必要に応じた登り勾配あるいは下り勾配が許容される。その設置間隔は、長尺材の搬送時にたわみ等の不具合が発生しないように、また、冷却床としてとして用いる場合には冷却むらなどが生じないように定めればよい。
【0016】
ドッグ付きチェーン2は、チェーンリンク4の間に所定ピッチPをおいてドッグ5を挟み込んで連結したものである。図2に示すように、これらチェーンリンク4とドッグ5の連結部には車輪9が取付けられていてチェーンガイド3の上を走行できるようになっている。この走行のために、ドッグ付きチェーン2は、スプロケット11,12に取付けられ、駆動装置13によって周回走行ができるようになっている。
【0017】
本発明では、上記ドッグの離間ピッチ間にピッチPを分割し、かつ前記スキッドレール1の移送面1aに対して上下に出没自在な出没ドッグ6が設けられている。具体的には、図4、図5及び作動メカニズムの説明図である図6に示すように、ドッグ付きチェーン2を構成するチェーンリンク4とドッグ5の回動接続部10から同軸に短い軸25を延長し、これに出没ドッグ6を回動自在に取付けている。
【0018】
出没ドッグ6は、図7に示すように、その本体17はベルクランク状の外形を有し、その一方に取付けアーム18を他方に作動アーム19を有している。取付けアーム18の端部には前記ドッグ付きチェーン2を構成するチェーンリンク4とドッグ5の回動接続部10から突出た短い軸25に回動自在に取付けられる回動取付け部23が設けられている。一方、作動アーム19の端部にはローラ24が取付けられている。また、取付けアーム18と作動アーム19との交点には車輪22が取付けられており、作動アーム19の前記車輪22の取付け面と反対面側は内側に窪ませた作動面20(鋼管等の支持面)となっている。
【0019】
上記出没ドッグ6は、図4〜6に示されているように、その下面側を出没ドッグ上下機構7によって支持されるようになっている。具体的には、取付けアーム18と作動アーム19との交点に取付けられた車輪22の下側に出没ドッグ支持エレメント21が配置されている。
【0020】
この支持エレメント21は、図3に例示した場合にあっては、複数の出没ドッグ6のそれぞれに設けられ(21A〜21E)、個々に上下機構7によって上下できるようになっている。この出没ドッグの上下機構7は大径の鋼管S1を搬送するときには、図6に示す作動メカニズムの6Bの状態に示すように、押し下げられた状態にある。一方、小径の鋼管S2を搬送するときには、図6の6Aの状態に示すように押し上げられた状態になる。すなわち、図6の6Bの状態から上下機構7によって支持エレメント21を介して出没ドッグ6の取付けアーム18と作動アーム19との交点に取付けた車輪22を押し上げると、出没ドッグ6がその回動取付け部23を中心として回動し、作動アーム19がスキッドレール1の走行面より上側に突き出ることになり(6Aの状態)、これによって、ドッグ付きチェーン2のドッグ5の離間ピッチを出没ドッグ6の作動アーム19によって分割できることになる。
【0021】
また、図2、図4及び図5から分るように、出没ドッグ6はドッグ付きチェーン2に回動自在に接続されており、その取付けアーム18と作動アーム19との交点には車輪22が取付けられ、かつ該車輪22が支持エレメント21によって下方から支持されているので、出没ドッグ6はドッグ付きチェーン2によって牽引され、それに沿って支持エレメント21の上を走行することができる(図3参照)。このようにして、先行するドッグと出没ドッグ6の作動アーム19の間及び作動アーム19と後行するドッグとの間に小径の鋼管S2を支持して搬送する区域を作ることができるようになる。この小径の鋼管S2の搬送区域を確実に作るようにするため、出没ドッグ上下機構7には、支持エレメント21(21A〜21E)上を車輪22が走行できるようにする制御機構(図示しない)が設けられ、支持エレメント21A〜21Eが順次走行面を作るようにされている(図3(b)参照)。なお、この場合において、出没ドッグ6は、支持エレメント21の末端部近傍においては、ガイド14、15によって案内される。なお、出没ドッグ6の作動アーム19の先端に設けたローラ24は、小径の鋼管を押すときのローラとして作用する。
【0022】
本発明では、上記のようにして、ドッグ付きチェーン2のドッグの離間ピッチ間に任意のタイミングで出没ドッグ6を出没させて離間ピッチを分割させることができる。したがって、長尺材の径が大きいときは、出没ドッグを没の状態にして大径の鋼管S1を搬送するようにし、長尺材の径が小さいときは、出没ドッグを出の状態にして小径の鋼管S2を搬送するようにすることができる。
【0023】
本発明の基本的な構成及びその作動は、上記のとおりであるが、上記の例では、出没ドッグ6を個々に制御することにしているため、設備構成が複雑になり、かつ、操作が煩瑣になるおそれがある。図8に示す構成はその問題を解決するための本発明の変形例であって、出没ドッグ支持エレメント21が前半の出没ドッグの上下動を司る前半側支持ブロック26と後半の出没ドッグの上下動を司る後半側支持ブロック26と後半側支持ブロック27及びこれらの間を連結する支持エレメント28により構成したものとしている。その他の構成については、すでに説明した基本態様と変わるところがない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る長尺物移送装置の全体構成を示す平面図である。
【図2】図1のA−A断面の拡大矢視図である。
【図3】出没ドッグの作動状態を示す説明図である。(a)は平面図であり、(b)は正面図である。
【図4】図3のB−B矢視の一部断面図である。
【図5】図3のC−C矢視の一部断面図である。
【図6】出没ドッグの作動メカニズムの説明図である。
【図7】出没ドッグの平面図である。
【図8】本発明の変形例の全体構成を示す平面図である。
【図9】従来の長尺物搬送装置の主要部の構造を示す(a)平面図、(b)正面図である。
【符号の説明】
【0025】
1:スキッドレール、2:ドッグ付きチェーン、3:チェーンガイド、4:チェーンリンク、5:ドッグ、6(6A, 6B):出没ドッグ、7:出没ドッグ上下機構、8:ドッグ付きチェーンユニット、9:車輪、10:回動接続部、11:スプロケット(駆動側)、12:スプロケット(従動側)、13:駆動装置、14:ガイド(駆動側)、15:ガイド(従動側)、16:支持躯体、17:出没ドッグ本体、18:取付けアーム、19:作動アーム、20:作動面、21A, 21B, ・・・21E:出没ドッグ支持エレメント、22:車輪、23:回動接続部、24:ローラ、25:短い軸、26:前半側支持ブロック、27:後半側支持ブロック、28:連結支持エレメント、S1:大径の鋼管、S2:小径の鋼管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺材の移送方向に延在して敷設した複数のスキッドレールと、前記スキッドレールに並行して走行し前記長尺材を前記スキッドレール上で前進させるドッグ付きチェーンと、該ドッグ付きチェーンの駆動機構を有する長尺材の搬送装置において、
前記ドッグ付きチェーンをチェーンリンク間に所定ピッチを離間してドッグを連結・配置したものとするとともに、前記ドッグの離間ピッチ間に前記所定ピッチを分割し、かつ前記スキッドレールの移送面に対して上下に出没自在な出没ドッグを設けてなるものとすることを特徴とする長尺材の搬送装置。
【請求項2】
出没ドッグをベルクランク状の外形を有するものとなすとともに、その一方のアームを取付けアームとし、他方のアームを作動アームとし、かつ、前記取付けアームの端部をドッグ付きチェーンのチェーンリンクとドッグの回動接続部に回動自在に取付け、前記取付けアームと作動アームとの交点に上下機構を取付け、かつ、ドッグ付きチェーンに沿って走行するものとなしたことを特徴とする請求項1記載の長尺材の搬送装置。
【請求項3】
出没ドッグが、出没ドッグごとに設けた上下機構によって制御されるものであることを特徴とする請求項1又は2記載の長尺材の搬送装置。
【請求項4】
出没ドッグが、搬送ライン前半部に設置された出没ドッグ群と搬送ライン後半部に設置された出没ドッグ群に分られており、各群ごとに上下機構により制御されるものであることを特徴とする請求項1又は2記載の長尺材の搬送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−179452(P2008−179452A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−14480(P2007−14480)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】