説明

長尺材の支持具

【課題】 一種類で径の異なる丸棒材に共用でき、選択自在に取着できるようにする。
【解決手段】 吊ボルト41に取着される取着部2とケーブル51を支持する支持部21とを備え、前記取着部2は、基部3と、取着状態における前記吊ボルト41の軸方向に離間して前記基部3に並設され、湾曲形成されて前記吊ボルト41を相反対側から抱えるようにして挟持する一対の挟持片4と、前記一対の挟持片4の間に形成され、前記吊ボルト41が挿入される挿入部9とを形成し、前記取着部2の一対の挟持片4は、内部に大径の吊ボルト41を収容可能に形成するとともに、前記取着部2の基部3は、小径の吊ボルト41の外周部が嵌合する嵌合凹部10を取着状態における前記吊ボルト41の軸方向に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の吊ボルト、異形鉄筋等の丸棒材に、ケーブル、電線管、鞘管等の長尺材を支持させるための長尺材の支持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物の吊ボルト等の丸棒材にケーブル、電線管等の長尺材を支持させて該長尺材を布設路に沿って布設している。前記長尺材は支持具を介して丸棒材に支持させることができ、例えば、特開2003−348739公報に掲載する支持具が使用されている。
【0003】
図11は前記特開2003−348739公報に掲載の支持具を示し、図11においては、支持具61は別体である取着部62と支持部63とを連結して構成されている。前記支持具61の取着部62は基部64に、湾曲形成されて相反対側から抱えるようにして丸棒材としての吊ボルト41を支持する一対の挟持片65が図11の吊ボルト41の軸方向に離間して並設されている。一方、前記支持具61の支持部63はその連結軸67が前記取着部62の連結孔66に嵌入して該取着部62に対する取付向きを変えられるようにして連結されており、長尺材としての例えばケーブル51を支持する支持片68が設けられている。
【0004】
このように構成された前記支持具61は、吊ボルト41が前記一対の挟持片65の並設方向と直交して前記一対の挟持片65間に挿入された後、前記基部64の表面に平行して上下方向に90度回動し、前記吊ボルト41が挟持片65内に嵌め込まれるようにして該吊ボルト41の適宜位置に取着される。このように取着された後は、支持部62は、図12に示すように、挟持片65の湾曲部が吊ボルト41の外周面と当接し、基部64との間で前記吊ボルト41を挟持し、これにより、安定して吊ボルト41に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−348739公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記吊ボルト41は一般にはW3/8即ちM10の径のものが使用されているが、近年W1/2即ちM12の径のものの使用頻度も増している。
【0007】
しかし、前記特開2003−348739公報等に掲載の従来の支持具は、径の異なる吊ボルト41毎に専用のものが備えられ、吊ボルト41のサイズに応じて選択使用していた。このため、コスト高であり、また、部品管理も煩雑なものとなっていた。
【0008】
ここで、支持具61の一対の挟持片65の間隔及び収容空間を大径の吊ボルト41の径に対応して形成し、大小の吊ボルト41に共用できるようにすることも考えられる。しかし、大径の吊ボルト41に対応して形成した支持具61を小径の吊ボルト41に取着したとき、支持具61の挟持片65の内面と吊ボルト41の外周面との間に隙間を生じてこの部分にがたつきを生じ、また、横方向から外力が加わることによって、図13に示すように、横ずれし、場合によっては前記挟持片65が吊ボルト41から外れて落下してしまうおそれがある。したがって、支持状態は大変不安定であり、これに伴って、支持具61の支持部63に支持されているケーブル、管体などの長尺材もがたつき、落下するおそれも生ずる。
【0009】
また、逆に、小径の吊ボルト41に対応して形成した支持具61を大径の吊ボルト41に取着すると、前記吊ボルト41を挟持片65内に収容できないため、前記支持具61は前記吊ボルト41に対して傾いた状態となり、所定位置で支持することができない。
【0010】
そこで、本発明は、一種類で径の異なる丸棒材に共用でき、選択自在に取着できる長尺材の支持具の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の長尺材の支持具は、径の異なる少なくとも2種類の丸棒材に取着可能な、長尺材を支持するものであって、前記丸棒材に取着される取着部と、前記長尺材を支持する支持部とを備えている。前記取着部は、基部と、取着状態における前記丸棒材の軸方向に離間して前記基部に並設され、湾曲形成されて前記丸棒材を相反対側から抱えるようにして挟持する一対の挟持片と、前記一対の挟持片の間に形成され、前記丸棒材が前記並設方向と直交して挿入される挿入部とを有している。
【0012】
そして、前記一対の挟持片は、大径の丸棒材を内部に収容すべく外方に拡径可能であるとともに、収容後は内方に縮径する方向の弾性復元力により前記基部とで挟持するよう形成されている。更に、前記一対の挟持片は、小径の丸棒材を内部に収容すべく外方に拡径可能であるとともに、収容後に前記小径の丸棒材と前記挟持片との間に生じる間隙に該丸棒材が移動するのを防止すべく、前記基部における前記挟持片間及び該挟持片の内面側の少なくとも一方に、前記小径の丸棒材の外周部が嵌合する嵌合凹部が取着状態における前記丸棒材の軸方向に沿って形成され、嵌合状態において、内方に縮径する方向の弾性復元力により前記基部とで挟持するよう形成されている。
【0013】
以下、分説すると、前記丸棒材は、吊ボルト、異形鉄筋などの断面円形の棒材で、主に吊ボルト等のように外周面にねじが螺刻されたものが対象とされるが、ねじが一部に形成されているもの及び全長に至って形成されていないものも含まれる。前記長尺材は、ケーブル等の線材、電線管等の管材で、前記丸棒材に支持されて布設路に沿って布設されるものである。
【0014】
前記支持具は前記丸棒材に取着される取着部と、前記長尺材を支持する支持部とを備えており、前記取着部と支持部とは一体に形成され、または、別体としてこれらを連結して形成される。前記取着部と支持部とを別体に構成した場合は、この支持部のみを交換して各種長尺材に適用することも可能である。また、取着部に対する支持部の取付向き、位置を変えることによって、丸棒材に対する長尺材の支持向きを変移させることも可能である。
【0015】
前記取着部は、基部と、前記丸棒材を相反対側から抱えるようにして挟持する一対の挟持片と、挟持前に該丸棒材が挿入される挿入部とを有している。前記一対の挟持片は、前記丸棒材に取着された状態でその丸棒材の軸方向に離間して前記基部に並設されており、即ち、斜交い位置に設けられており、合成樹脂等を使用して前記基部に一体に立設することができる。前記一対の挟持片は基部から立上がった後、途中から互いに接近する方向に湾曲形成されて前記丸棒材を相反対側から抱えるようにして前記基部とで挟持する。
【0016】
前記丸棒材の軸方向に離間する一対の挟持片の間には該丸棒材の挿入部が形成されており、前記丸棒材は、例えば、取着開始時に、前記一対の挟持片の並設方向と直交して挿入され、その後、支持具を90度回動することによって挟持片内に収容することができる。
【0017】
前記一対の挟持片は、大径の丸棒材を収容すべく拡径可能であり、収容後は弾性復元力により前記基部とで挟持するよう形成されている。これにより、支持具は前記大径の丸棒材に対して定位置に保持され、横方向の外力を受けて横ずれするのが防止される。なお、前記挟持片は、基部に立設された後、支持具の内方に向けて湾曲形成され、かつ、その湾曲部分は該湾曲部分における基部から上方に最も離れた部分である最頂部を更に超えた位置まで延出して挟持片からの離脱を防止している。
【0018】
更に、前記一対の挟持片は、前記基部における前記挟持片間に、または前記挟持片の内面側に、或いはその双方に、小径の丸棒材の外周部が嵌合する嵌合凹部が形成され、嵌合状態において、弾性復元力により前記基部とで挟持するよう形成されている。これにより、支持具は前記小径の丸棒材に対してその軸に沿った定位置に保持され、外力によって横ずれするのが防止される。
【0019】
ここで、前記挟持片は湾曲形成され、形状的に剛性の大きいものとなっている。また、板厚は一定以上の大きさに形成されている。したがって、所要の剛性を有し、内方に縮径する方向の弾性復元力も大きいものとなるので、基部とで強固に丸棒材を挟持し、安定して前記丸棒材に保持される。なお、丸棒材に取着するときは、前記一対の挟持片は基部からの立上部においてたわみ、湾曲部の先端と基部との間の開口が拡開して外方に拡径することにより、挟持片内に丸棒材を挿入し、収容することができる。
【0020】
請求項2の長尺材の支持具は、一対の挟持片が、基部に立設された立上部と、大径の丸棒材の外周面に沿って当接する円弧部とで形成され、前記立上部の間隔は、前記大径の丸棒材の直径と同一に形成されている。これにより、支持具は大径の丸棒材に取着できるとともに、より安定して前記丸棒材に保持される。
【0021】
請求項3の長尺材の支持具は、嵌合凹部が、小径の丸棒材の外周面に沿って当接すべく形成されている。これにより、支持具は前記小径の丸棒材に対してその軸に沿った定位置により安定して保持される。
【0022】
請求項4の長尺材の支持具は、取着部と支持部とが別体で形成され、前記支持部は前記取着部に対して着脱可能に取付けられたものである。
【0023】
請求項5の長尺材の支持具は、支持部が取着部に対して取付向きが変移可能に取付けられたものであり、例えば、請求項4のように、取着部と支持部とを別体で形成し、その連結位置をずらすことによって取付向きを変移させることができる。
【発明の効果】
【0024】
請求項1の長尺材の支持具は、少なくとも2種類の径の異なる丸棒材のいずれに対しても定位置に安定して保持され、これに伴って、支持具に支持される長尺材もがたつきなく、安定して支持される。このため、径の異なる丸棒材に選択自在に取着することができる。その結果、部品数を減らしてコストを低減でき、部品管理も楽になる。
【0025】
請求項2または請求項3の長尺材の支持具は、少なくとも2種類の径の異なる丸棒材のいずれに対してもより安定して保持される。これにより、請求項1と同様に、径の異なる丸棒材に選択自在に取着することができる。
【0026】
請求項4の長尺材の支持具は、支持部が取着部に対して着脱可能に取付けられているから、長尺材の種類に応じてこの支持部のみを交換できる。これによって、取着部は共通して使用でき、部品コストを低減できる。
【0027】
請求項5の長尺材の支持具は、支持部が取着部に対して取付向きが変移可能に取付けられているので、支持部に支持される長尺材の支持方向を任意に変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態の長尺材の支持具を示す斜視図である。
【図2】図1の支持具の一部破断側面図である。
【図3】図1の支持具の分解斜視図である。
【図4】図1の支持具の取着部を示し、(a)は上面図、(b)は背面図、(c)は側面図、(d)は正面図である。
【図5】図1の支持具を吊ボルトに取着する方法を示す正面図であり、(a)は吊ボルトを挿入部に挿入した状態、(b)は前記支持具を上下方向に回動する状態、(c)は吊ボルトに取着後の状態を示す。
【図6】(a)は支持具を大径の吊ボルトに取着した状態を示す上面図、(b)は支持具を小径の吊ボルトに取着した状態を示す上面図である。
【図7】図1の別の取着部を示す上面図であり、(a)は吊ボルトに取着前の状態を示し、(b)は大径の吊ボルトに取着した状態を示し、(c)は小径の吊ボルトに取着した状態を示す。
【図8】図1の基部に形成した、径の異なる3種類の吊ボルトに対応する嵌合凹部を模式的に表した説明図である。
【図9】図1の別の支持具を示す斜視図である。
【図10】図1の更に別の支持具を示す斜視図である。
【図11】従来の長尺材の支持具を示す斜視図である。
【図12】図11の支持具を吊ボルトに取着した状態を示す上面図である。
【図13】吊ボルトに取着された支持具が横ずれした状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図1乃至図6に基づいて説明する。ここで、図1は本発明の実施形態の支持具を示す斜視図、図2は前記支持具の一部破断側面図、図3は前記支持具の分解斜視図であり、図4は前記支持具を構成する取着部を示す。なお、本実施形態では、天井から垂下する吊ボルトにケーブルを支持させる支持具を示す。
【0030】
図1乃至図4において、支持具1は建物の二重天井から垂下する吊ボルト41に取着されてケーブル51を支持するものであり、前記吊ボルト41に取着される取着部2と前記ケーブル51を支持する支持部21とで構成されている。前記取着部2と支持部21とは別体として形成され、各中央部において着脱自在に組付けられ、それぞれ合成樹脂で形成されている。なお、前記吊ボルト41は請求項の丸棒材に相当するものであり、一般には、W3/4の小径のもの及びW1/2の大径のものが使用され、全長に至って雄ねじが形成されている。前記ケーブル51は請求項の長尺材に相当するものであり、図1においては、吊ボルト41の軸方向に直交する水平方向に支持されるようになっている。
【0031】
まず、取着部2は、矩形板状の基部3に前記吊ボルト41を抱えるように挟持する一対の挟持片4が取着状態における吊ボルト41の軸方向即ち図1において上下方向に所定距離離間して並設されている。そして、前記一対の挟持片4の間に、前記吊ボルト41が前記挟持片4の並設方向と直交する状態或いは斜め状態で即ち図1で示せば水平方向或いは斜め方向に挿入される挿入部9が形成されている。つまり、前記一対の挟持片4は図4(c)における上下方向に少なくとも前記吊ボルト41の外径より大きい間隔で離間し、この間に形成された前記挿入部9は吊ボルト41を取着状態における軸と直交する方向或いは斜め方向から挿入可能な大きさに形成されている。
【0032】
前記一対の挟持片4は基部3の側部寄りの位置で立上がった後、互いに中央に向かって円弧状に湾曲し、その先端は取着状態において少なくとも湾曲部分における前記基部3から上方に最も離れた部分である最頂部6aを超えた位置まで延出している。そして、挟持片4の先端と基部3との間には、吊ボルト41が後述するように前記基部3の表面に沿って回動しながら挿入される開口7が形成されている。前記挟持片4はより詳細には、概略、吊ボルト41の半径相当分の長さでほぼ垂直に立上がる立上部5と、この立上部5の上端部から湾曲して大径の吊ボルト41の外周面に沿って当接する円弧部6とで形成されている。前記一対の挟持片4の立上部5の間隔は大径の吊ボルト41の直径と略同一に形成されている。そして、前記挟持片4はその幅全体に至って断面形状が一定で板厚は約2mmに形成されている。但し、前記挟持片4の板厚は約2mmに限られないことは言うまでもない。
【0033】
このように形成された前記挟持片4の円弧部6は幅全体に至って形状的に剛性の大きい円弧状をなし、また、板厚も大きいので、全体的に剛性が大きく、一定形状を保ち、変形し難いものとなっている。したがって、取着時に外方に拡径した後、吊ボルト41を収容後に内方に縮径する弾性復元力は大きいものとなっているから、前記基部3とで吊ボルト41を強固に挟持する。なお、吊ボルト41に取着するときは、基部3からの立上部5においてたわみ、湾曲部の先端と前記基部3との間の開口7が拡開し、前記挟持片4内に吊ボルト41を挿入し、収容することができる。
【0034】
更に、前記円弧部6の挿入部9側の端部の略中央部には、内部側に突出して取着後の吊ボルト41のねじ凹部に係止する爪部8が設けられている。
【0035】
一方、前記基部3の略中央には、小径の吊ボルト41の外周面に沿って当接する円弧状の嵌合凹部10が取着状態における吊ボルト41の軸方向に形成されている。前記嵌合凹部10は少なくとも小径の吊ボルト41の外周部が嵌合した状態で外力等によって簡単に外れて横ずれしてしまわない大きさ、深さに形成されている。なお、前記嵌合凹部10は深すぎると、吊ボルト41の外周面が前記挟持片4の円弧部6と当接せず、該吊ボルト41の挟持ができなくなるので、横ずれ防止効果と挟持力との双方を考慮して最適な大きさに設定することが必要である。これにより、小径の吊ボルト41は外周部の一部が前記嵌合凹部10の内壁面と当接し、吊ボルト41を収容した後に内方に縮径する方向の弾性復元力によって、前記嵌合凹部10の内壁面と挟持片4とで強固に挟持されるため、支持具1は吊ボルト41の軸に沿って安定して保持される。
【0036】
更に、前記基部3の中央部には支持部21と連結するための連結孔11が設けられている。前記連結孔11の奥行方向の略中間位置には、内周全体に至って前記連結孔11の内部に突出する環状段部12が一体に設けられている。また、前記基部3の裏面側には、図4(b)に示すように、連結孔11の外側に、回動中心Cを中心として放射状に伸びる係合溝13が周方向に等間隔で形成されており、この係合溝13には後述する支持部21の突条26が係合するようになっている。なお、前記係合溝13は、本実施形態においては、45度の中心角で周方向に等間隔で8本形成されている。
【0037】
次に、前記取着部2に連結される支持部21はその基部22の一面側に、前記取着部2の基部3の連結孔11と対向して中央部にスリット24を有する連結軸23が一体に設けられている。前記支持部21の基部22の反対面側には、この基部22の平面と直交する方向に支持片27が一体に並設されている。前記連結軸23は先端部に前記取着部2の環状段部12に係止して抜け止めする係止爪25が形成されており、また、基部22の表面において連結軸23のスリット24の底部となる位置には該基部22の幅全体に至って前記取着部2の基部3の係合溝13内に嵌入する突条26が設けられている。この突条26は、前記支持部21を取着部2と反対側に引張りながら回動中心Cを軸として強制的に回動することにより、弾性的に係合溝13から離脱し、別の係合溝13に嵌入せしめることができる。これにより、前記支持部21は前記取着部2に対する取付向きを回動中心Cを軸に周方向に中心角を45度ずつずらしながら変移させることができる。
【0038】
一方、前記支持部21の支持片27は基部22に等間隔で並設されており、本実施形態においては4個形成されている。そして、支持片27間に形成された支持空間28にはケーブル51が載置、支持されるものとなっている。なお、図1においては、前記支持部21はケーブル51を吊ボルト41に対して直交する水平方向に布設するよう支持しているが、前述のように、取着部2への取付向きを変移させることにより、前記ケーブル51の支持向きを水平方向から45度に傾斜する方向更には垂直方向に変えることもできる。
【0039】
次に、このように構成された本実施形態の支持具を吊ボルト41に取着する方法を図5に基づいて説明する。
まず、図5(a)に示すように、吊ボルト41に対してその軸に直交する側方向から支持具1を横向き状態で近接させ、挿入部9内に前記吊ボルト41を挿入する。次に、支持具1を基部3の表面に沿って反時計方向に回動して、図5(b)に示すように、挟持片4の円弧部6の角部が吊ボルト41の外周面に当接したら、強制的に更に同方向に回動し、挟持片4の開口7を弾性的に拡開させながら該挟持片4の内部に吊ボルト41を収容する。このとき、円弧部6は剛性を有し、変形しにくいので、挟持片4は主に立上部5においてたわみ、開口7が拡開して挿入される。前記挟持片4内に吊ボルト41が収容されると、図5(c)の位置で保持される。
【0040】
ここで、大径の吊ボルト41に取着したときには、図6(a)に示すように、円弧部6全体が吊ボルト41の外周面に当接し、嵌合凹部10ではその開口両縁部が吊ボルト41の外周面と当接する。一方、小径の吊ボルト41に取着したときには、図6(b)に示すように、嵌合凹部10の内面全体が吊ボルト41の外周面に当接した状態で、吊ボルト41の軸方向に沿って嵌合する。
【0041】
次に、上記本実施形態の支持具の作用を説明する。
本実施形態の支持具1は、挟持片4間に吊ボルト41が挿入される挿入部9が形成され、その両側の挟持片4は円弧状に形成されて吊ボルト41を抱えるように挟持するから、吊ボルト41の軸に直交する方向から接近させ、吊ボルト41を挿入部9内に挿入させたら、基部3の表面に沿って強制的に回動して吊ボルト41を挟持片4内に収容し、取着できる。したがって、支持具1は吊ボルト41の任意の位置、高さにおいて該吊ボルト41の軸に直交する方向から簡単に該吊ボルト41に取着することができる。
【0042】
そして、特に、取着部2の一対の挟持片4は、内部に大径の吊ボルト41が収容可能であって、円弧部6が該大径の吊ボルト41の外周面に沿って当接する円弧状に形成されているとともに、前記取着部2の基部3には、小径の吊ボルト41の外周面に沿って当接する嵌合凹部10が、取着状態における前記吊ボルト41の軸方向に形成されているから、一種類で大小径の異なる2種類の吊ボルト41に選択自在に取着することができる。
【0043】
即ち、まず、大小いずれの吊ボルト41についても、取着時には、挟持片4は主にその立上部5がたわんで開口7が拡開して挟持片4内への挿入が可能である。また、挟持片4はその立上部5の間隔が大径の吊ボルト41の直径と略同一に形成されて内部に前記大径の吊ボルト41を収容可能な大きさに形成されている。したがって、大小いずれの吊ボルト41についても支持具1の取着が可能である。
【0044】
次に、大径の吊ボルト41については、前述のように、円弧部6が挟持片4の幅全体に至って該大径の吊ボルト41の外周面に沿って当接する円弧状に形成されており、取着後は、図6(a)に示すように、内方に縮径する方向の弾性復元力によって円弧部6の内面が全体的に吊ボルト41の外周面に当接し、基部3側に向けて強く押圧する。しかも、円弧部6は形状的に剛性が高く、板厚も厚く形成されて変形しにくい。これにより、基部3と挟持片4とで吊ボルト41を強く挟持するので、支持具1は、外力が作用することによって図13に示すように横ずれすることがなく、更には、開口7から外方に外れてしまうこともなく、常に一定姿勢に安定して保持される。その結果、前記支持具1によって支持されるケーブル51も一定方向に安定して支持され、良好な布設状態を維持できる。
【0045】
次に、小径の吊ボルト41については、前記取着部2の基部3には、小径の吊ボルト41の外周面に沿って当接する嵌合凹部10が、取着状態における前記吊ボルト41の軸方向に形成されており、取着後は、図6(b)に示すように、嵌合凹部10の内面が全体的に吊ボルト41の外周面と当接する。このとき、円弧部6は吊ボルト41の外周面を内方に縮径する方向の弾性復元力によって図6(b)の一方の挟持片4の当接部4a及び他方の挟持片4の当接部4bにおいて半径方向に強く押圧するため、吊ボルト41は前記嵌合凹部10の内面に強く押圧される。このため、挟持片4と基部3に形成された嵌合凹部10とで吊ボルト41を強く挟持するので、前記嵌合凹部10から横方向への離脱が防止されて常に該嵌合凹部10内に維持される。これにより、図6(b)に示すように、挟持片4の内面と吊ボルト41の外周面との間に隙間があっても、がたつくことがなく、また、大径の吊ボルト41の場合と同様に、外力が作用することによって図13に示すように横ずれすることがなく、常に一定位置に安定して保持される。その結果、前記支持具1によって支持されるケーブル51も一定方向に安定して支持され、良好な布設状態を維持できる。
【0046】
したがって、本実施形態の支持具1によれば、大径の吊ボルト41、小径の吊ボルト41のいずれについてもがたついたり、側方からの外力によって横ずれしたり、更には、開口7から離脱することがなく安定して一定位置に保持される。したがって、前述のように、大小2種類の径の異なる吊ボルト41に共用することができる。
【0047】
なお、前記支持具1への外力は直接加わる他、支持部21に支持された管体などの長尺材を介して作用することが考えられる。
【0048】
ところで、上記実施形態の嵌合凹部10は、基部3に形成しているが、挟持片4の内面側に形成することもできる。図7は嵌合凹部10を挟持片4の内面側に形成した支持具1を示し、図7(a)は支持具1を吊ボルト41に取着する前の状態を、図7(b)は大径の吊ボルト41に取着した場合を、図7(c)は小径の吊ボルト41に取着した場合を示す。
【0049】
図7(a)において、挟持片4の内面側において範囲イに形成された嵌合凹部10は、小径の吊ボルト41の外周面に沿って当接すべく、前記嵌合凹部10の円弧が前記小径の吊ボルト41の外周面と同一の曲率に形成されている。また、前記挟持片4において前記嵌合凹部10より先端側の円弧部6は大径の外周面に沿って当接すべく形成されている。なお、図7において、範囲イの記載は、奥側の挟持片4については省略してある。
【0050】
この支持具1においても、前述の、基部3に嵌合凹部10が形成された支持具1と同様に、大小いずれの吊ボルト41に対しても安定した状態で保持される。即ち、大径の吊ボルト41を取着したときは、図7(b)に示すように、前記大径の吊ボルト41は一対の挟持片4間に収容され、前記挟持片4の円弧部6の先端部分が前記吊ボルト41の外周面に沿って当接し、内方に縮径する方向の弾性復元力によって前記挟持片4と基部3とで挟持されて一定位置に保持される。また、小径の吊ボルト41を取着したときは、図7(c)に示すように、前記小径の吊ボルト41は前記挟持片4の円弧部6の範囲イに形成された嵌合凹部10が前記吊ボルト41の外周面に沿って当接し、内方に縮径する方向の弾性復元力によって前記嵌合凹部10と基部3とで挟持されて一定位置に保持される。
【0051】
ここで、このように、上記各実施形態の嵌合凹部10は、基部3における挟持片4間、或いは、挟持片4の円弧部6の内面側のいずれかに形成しているが、これらの双方に形成してもよく、この場合は、支持具1を更に安定して吊ボルト41に保持させることができる。
【0052】
また、上記各実施形態における支持具1は、径の異なる大小2種類の吊ボルト41に選択自在に取着するものを示しているが、例えば、模式的に示す図8のように、基部3に2種類の嵌合凹部を形成することにより、径の異なる大中小3種類の吊ボルト41に選択自在に取着することもできる。即ち、嵌合凹部の中央部の範囲ロに、実線で示す小径の吊ボルト41aの外周面に沿って当接する嵌合凹部10aを形成し、嵌合凹部における両側の範囲ハに、一点鎖線で示す中径の吊ボルト41bの外周面に沿って当接する嵌合凹部10bを形成する。これにより、嵌合凹部には小、中2種類の吊ボルトの外周面が嵌合することになる。なお、二点鎖線で示す大径の吊ボルト41cは、その外周面が嵌合凹部における左右両側の開口縁部に当接するとともに、他の中、小の吊ボルトと同様に、挟持片4の弾性復元力によって基部3に押圧され、前記基部3と挟持片4とで強く挟持される。その結果、1種類の支持具1で、大中小3種類の吊ボルトに安定して取着することができる。
【0053】
次に、上記実施形態の支持部21はケーブル51を支持するものを示しているが、例えば、管体などを支持する場合には、図9のような、環状のバンド体に形成した支持部31を組付けることができる。即ち、支持部は取着部2に対して着脱可能に取付けられているから、支持部のみを長尺材の種類に適したものに簡単に交換することができる。これにより、取着部2は共通して使用でき、部品コストを低減できる。
【0054】
また、上記実施形態の支持具1は、取着部と支持部とを別体に形成し、これを連結したものとしているが、これに限られるものではなく、例えば、図10に示すように、取着部2と支持部32とを一体化したものとすることもできる。なお、前記支持部32は下部に一体に形成された案内片33を案内として結束バンド34を取付けてケーブル51や管体等を結束し、固定することができる。
【0055】
更に、前記立上部5は垂直ではなく、基部3から直ちに湾曲して立ち上がるものとしてもよい。
【0056】
加えて、本実施形態においては、丸棒材として吊ボルト41を例としているが、他の異形鉄筋などにも同様に適用できる。
【符号の説明】
【0057】
1 支持具
2 取着部
3 基部
4 挟持片
4a、4b 当接部
5 立上部
6 円弧部
9 挿入部
10、10a、10b 嵌合凹部
21、31、32 支持部
41、41a、41b、41c 吊ボルト
51 ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
径の異なる少なくとも2種類の丸棒材に取着可能な、長尺材を支持する長尺材の支持具であって、
前記丸棒材に取着される取着部と、前記長尺材を支持する支持部とを備え、
前記取着部は、基部と、
取着状態における前記丸棒材の軸方向に離間して前記基部に並設され、湾曲形成されて前記丸棒材を相反対側から抱えるようにして前記基部とで挟持する一対の挟持片と、
前記一対の挟持片の間に形成され、前記丸棒材が挿入される挿入部とを有し、
前記一対の挟持片は、大径の丸棒材を内部に収容すべく外方に拡径可能であるとともに、収容後は内方に縮径する方向の弾性復元力により前記基部とで挟持するよう形成され、
更に、前記一対の挟持片は、小径の丸棒材を内部に収容すべく外方に拡径可能であるとともに、収容後に前記小径の丸棒材と前記挟持片との間に生じる間隙に該丸棒材が移動するのを防止すべく、前記基部における前記挟持片間及び該挟持片の内面側の少なくとも一方に、前記小径の丸棒材の外周面が嵌合する嵌合凹部が取着状態における前記丸棒材の軸方向に沿って形成され、嵌合状態において、内方に縮径する方向の弾性復元力により前記基部とで挟持するよう形成されたことを特徴とする長尺材の支持具。
【請求項2】
前記一対の挟持片は、基部に立設された立上部と、大径の丸棒材の外周面に沿って当接する円弧部とで形成され、前記立上部の間隔は、前記大径の丸棒材の直径と同一に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の長尺材の支持具。
【請求項3】
前記嵌合凹部は、小径の丸棒材の外周面に沿って当接すべく形成されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の長尺材の支持具。
【請求項4】
前記取着部と支持部とは、別体で形成され、
前記支持部は、前記取着部に着脱自在に取付けられたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の長尺材の支持具。
【請求項5】
前記支持部は、取着部に対して取付向きが変移可能に取付けられたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の長尺材の支持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−97823(P2011−97823A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270983(P2010−270983)
【出願日】平成22年12月5日(2010.12.5)
【分割の表示】特願2005−215018(P2005−215018)の分割
【原出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】