説明

長尺物の切断装置及び長尺物の切断方法

【課題】単純な構造で省スペース化を図ることができるにもかかわらず高い作業効率で精度よく長尺物を切断できる長尺物の切断装置、及び、高い作業効率で精度よく長尺物を切断できる長尺物の切断方法を提供すること。
【解決手段】無限軌道を間欠的に走行して粘着性表面に粘着保持した長尺物を搬送する無端ベルトと、自身の平坦な表面が無端ベルトの内表面に接触するように無端ベルト内に配置された受け台と、無端ベルトの上部に前記受け台に対向すると共に前後進可能になるように配置され、無端ベルト上の長尺物を切断する切断刃とを備えて成る長尺物の切断装置、並びに、無限軌道を間欠的に走行する無端ベルトの粘着性表面に長尺物を粘着保持し、無端ベルトが停止したときに切断刃を無端ベルトに向かって前進させて長尺物を無限軌道上の搬送途中で切断する長尺物の切断方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、長尺物の切断装置及び長尺物の切断方法に関し、さらに詳しくは、単純な構造で省スペース化を図ることができるにもかかわらず高い作業効率で精度よく長尺物を切断できる長尺物の切断装置、及び、高い作業効率で精度よく長尺物を切断できる長尺物の切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ホース等の各種管体、及び、棒状又は板状部材等の端縁等に設けられる各種保護部材等は長尺状に成形等された原反を適宜の長さに切断されて製造されることがある。
【0003】
このような長尺状の原反を切断する装置が提案されている。例えば、長尺状の原反として幅の広いシート状長尺物を切断する切断装置における前記シート状長尺物の送り機構が特許文献1において提案されている。このシート状長尺物の送り機構は、具体的には、「弾性を有するシート状長尺物の切断装置において、該シート状長尺物を、切断手段に間欠的に送る機構であって、該シート状長尺物は、長手方向の一端を保持具によって保持部の台座上に保持され、前記保持部と共に、切断手段に向けて間欠的に移動するとともに、前記シート状長尺物の下面が、前記保持部の間欠的送り機構に同調して移動し、前記保持部の下面にその一端を固定され、前記切断手段の直前に設置されたコロを介して下方に巻き込まれ、その他端は巻き取りロールに巻き取られるように構成されたシート状ベルトに接触状態で移動することを特徴とする弾性を有するシート状長尺物の送り機」である(特許文献1の請求項1等)。
【0004】
この送り機における特徴は、「シート状長尺物13が保持具12と保持部11に形成されている台座18の間に長手方向の端部をはさまれた状態で保持され、保持部の移動と共に、シート状長尺物13の下面が前記保持部のステップモーター(間欠的送り機構)に同調して移動するシート状ベルト15に接触状態で移動するようにすること」にあると、特許文献1に記載されている(例えば、0014欄及び0015欄)。
【0005】
この送り機においては、シート状長尺物を保持部11に保持する必要があると共に、高い寸法精度を実現するために保持部の間欠的送り機構の移動とシート状ベルトの移動とを高精度に同調させる必要があるうえ、シート状ベルトを巻き取る作業も必要になるので、さらなる作業性の向上が求められる。また、この送り機構はシート状長尺物を保持部11に保持する必要があるので長尺状の原反に好適に利用できない場合がある。さらに、前記のような長尺状の原反を切断する装置においてもその簡略化及び省スペース化が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3794555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、単純な構造で省スペース化を図ることができるにもかかわらず、高い作業効率で精度よく長尺物を切断できる長尺物の切断装置、及び、高い作業効率で精度よく長尺物を切断できる長尺物の切断方法を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、弾性を有する長尺物を間欠的に搬送しつつ切断する前記長尺物の切断装置であって、無限軌道を間欠的に走行して粘着性表面に粘着保持した前記長尺物を搬送する無端ベルトと、前記無端ベルト内に、自身の平坦な表面が前記無端ベルトの内表面に接触するように、配置された受け台と、前記無端ベルトの上部に前記無端ベルトを挟んで前記受け台に対向すると共に前記受け台に対して前後進可能になるように配置され、前記無端ベルトが停止したときに前進して前記無端ベルト上の前記長尺物を切断する切断刃とを備えて成ることを特徴とする長尺物の切断装置であり、
請求項2は、前記無端ベルトの走行方向上流側に前記無端ベルトと離間して配置され、前記長尺体を前記粘着性表面に案内する案内部材を備えて成ることを特徴とする請求項1に記載の長尺物の切断装置であり、
請求項3は、弾性を有する長尺物を間欠的に搬送しつつ切断する前記長尺物の切断方法であって、粘着性表面を有し、無限軌道を間欠的に走行する無端ベルトの前記粘着性表面に前記長尺物を粘着保持し、前記無端ベルトが停止したときに前記長尺物を切断可能な切断刃を前記無端ベルトに向かって前進させ、前記長尺物を前記無限軌道上の搬送途中で切断することを特徴とする長尺物の切断方法である。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る長尺物の切断装置は、粘着性表面を有する前記無端ベルトとこの無端ベルト内に配置された前記受け台と前記無端ベルトの上部に配置された前記切断刃とを備えてなるから、構造が単純で省スペース化されているうえ、長尺物を、無端ベルトの粘着性表面に粘着保持できると共に粘着保持された状態のままで無限軌道上を搬送し、その途中で切断できる。
【0010】
また、この発明に係る長尺物の切断方法は、無端ベルトの粘着性表面に長尺物を粘着保持し、前記無端ベルトが停止したときに前記長尺物を無限軌道上の搬送途中で切断するから、無限軌道を走行する無端ベルト上でその表面に粘着保持された長尺物を切断できる。
【0011】
したがって、この発明によれば、単純な構造で省スペース化を図ることができるにもかかわらず、高い作業効率で精度よく長尺物を切断できる長尺物の切断装置、及び、高い作業効率で精度よく長尺物を切断できる長尺物の切断方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、この発明に係る長尺物の切断装置の一例を示す概略図であり、図1(a)はこの発明に係る長尺物の切断装置の一例を示す概略正面図であり、図1(b)はこの発明に係る長尺物の切断装置の一例を示す概略上面図である。
【図2】図2は、この発明に係る長尺物の切断装置の一例を用いて長尺物を切断する方法を説明する概略説明図であり、図2(a)はこの発明に係る長尺物の切断装置の一例を用いて長尺物を切断する方法を説明する概略正面図であり、図2(b)はこの発明に係る長尺物の切断装置の一例を用いて長尺物を切断する方法を説明する概略上面図である。
【図3】図3は、この発明に係る長尺物の切断装置に用いられる無端ベルトの一例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明に係る長尺物の切断装置及び切断方法によって切断される長尺物は、弾性又は可撓性を有する長尺物であればよく、ゴム、エラストマー等の弾性材料で形成された長尺物、樹脂、金属等の硬質材料で形成され、弾性又は可撓性を発現する長尺物等が挙げられる。前記弾性材料としては、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、シリコーンエラストマー、ウレタンエラストマー等が挙げられる。前記硬質材料としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、アルミウニム等が挙げられる。また、長尺物は、その軸線方向に延在していればよく、軸線に垂直な断面形状は特に限定されない。前記断面形状としては、例えば、矩形、不定形、円形、楕円形、軸孔を有する円形、軸孔を有する楕円形、十字状、C字状、H字状、L字状、S字状、T字状、U字状、Y字状等が挙げられる。
【0014】
前記弾性材料で形成された長尺物としては、例えば、各種ホース、各種チューブ、各種棒状体、各種ロープ、各種保護部材、各種摺動部材、各種緩衝部材等が挙げられる。前記硬質材料で形成された長尺物としては、例えば、各種ホース、各種チューブ、各種保護部材、各種摺動部材、各種緩衝部材等が挙げられる。この長尺物は、通常、その軸線方向に延在しているが、軸線方向に垂直な幅方向にも延在するシート状、すなわち、シート状長尺物であってもよい。この長尺物は、取扱性等の観点から軸体等に巻回された原反とされているのがよい。
【0015】
この発明に係る長尺物の切断装置及び切断方法は、後述するように、通常切断しにくい弾性材料で形成された長尺物であっても高精度で切断できる。したがって、この発明に係る長尺物の切断装置及び切断方法は、弾性材料で形成された長尺物を切断するのに好適であり、特に、各種ホース、各種チューブ、各種保護部材、各種摺動部材及び各種緩衝部材等の中実体ではない、すなわち、軸線方向に連続する中空部を有する長尺体、例えば、その前記断面形状が軸孔を有する円形、軸孔を有する楕円形、十字状、C字状、H字状、L字状、S字状、T字状、U字状、Y字状等の長尺体を切断するのに好適である。
【0016】
この発明に係る長尺物の切断装置は、弾性を有する長尺物を間欠的に搬送しつつ、長尺物の搬送停止時に長尺物を切断する切断装置であって、無限軌道を間欠的に走行して粘着性表面に粘着保持した長尺物を搬送する無端ベルトと、無端ベルト内に、自身の平坦な表面が無端ベルトの内表面に接触するように、配置された受け台と、無端ベルトの上部に無端ベルトを挟んで受け台に対向すると共に前記受け台に対して前後進可能になるように配置され、無端ベルトが停止したときに前進して無端ベルト上の長尺物を切断する切断刃とを備えている。
【0017】
この発明に係る長尺物の切断装置の一例である長尺物の切断装置を、図面を参照して、具体的に説明する。この長尺物の切断装置(以下、切断装置と称することがある。)1は、図1に示されるように、無限軌道を間欠的に走行して粘着性表面21に粘着保持した長尺物7(図1において図示しない。図2参照。)を搬送する無端ベルト3と、自身の平坦な表面31が無端ベルト3の内表面22に接触するように無端ベルト3内に配置された受け台4と、無端ベルト3の上部に無端ベルト3を挟んで受け台4に対向すると共に前記受け台4に対して前後進可能になるように配置され、無端ベルト3が停止したときに受け台4に向かって前進して無端ベルト3上の長尺物7を切断する切断刃5と、無端ベルト3の走行方向上流側に無端ベルト3と離間して配置され、長尺体7を無端ベルト3の粘着性表面21に案内する案内部材11と、切断された長尺物を収納する収納容器12とを備えて成る。
【0018】
前記無端ベルト3は、その粘着性表面21に粘着保持した長尺物7を搬送する。この無端ベルト3は、図1及び図3に示されるように、軸線方向に延在する環状のベルトであり、その外表面21が粘着性を有し、その内表面22は実質的に非粘着性になっている。具体的には、無端ベルト3は、図3に明確に示されるように、非粘着性材料で形成されたベルト基体23と、このベルト基体23の表面全体に積層された粘着層24とから形成されている。すなわち、無端ベルト3の外表面21は、ベルト基体23の表面全体に接着された、粘着性材料で形成された粘着層24の粘着性表面とされている。したがって、外表面21は粘着性表面とも称され、長尺物7を粘着保持できる粘着力を有している。ここで、前記粘着力は、長尺物7を搬送中に変位しない程度に粘着性表面21上に保持できる程度であればよく、必ずしも長尺物7を重力に反して粘着保持できる程の強い粘着力が要求されるわけではない。粘着性表面21の粘着力は、用いる長尺物7の質量及び表面積、無端ベルト3からの取り外し性等を考慮して適宜に調整され、例えば、1〜50g/mmに設定される。この粘着力は、例えば、特開2007−165397号公報に記載の「信越ポリマー法」に従って測定することができる。前記内表面22は、非粘着性であってもよく、例えば、前記「信越ポリマー法」に従って測定された粘着力が1g/mm未満に設定されていればよい。
【0019】
前記無端ベルト3は、図1に示されるように、その内部に配置された、少なくとも2本の支持ローラ8及びテンションローラ9に張架されている。前記支持ローラ8の少なくとも1つは、例えば、図示しないステップモーター等の制御ユニットに接続され、間欠的に回転する。したがって、無端ベルト3は、前記支持ローラ8の間欠的な回転によって、支持ローラ8及びテンションローラ9の周囲の無限軌道を間欠的に走行し、すなわち、走行と停止とを交互に繰り返す。
【0020】
無端ベルト3は、長尺物7が無端ベルト3に接触する接触幅とほぼ同じ幅を有していればよく、図2(b)に明確に示されるように前記接触幅よりも大きな幅を有しているのが好ましい。無端ベルト3がこのように大きな幅を有していると、長期間の切断作業により切断刃5で無端ベルト3の一部が損傷又は切断されても初期の機能を十分に発揮できる。無端ベルト3の周長及び厚さは適宜に設定される。
【0021】
無端ベルト3、特にベルト基体23は、前記支持ローラ8及びテンションローラ9に張架可能な屈曲性を有する非粘着性材料で形成されていればよく、後述する切断刃5によって損傷又は切断されにくい材料で形成されているのが好ましい。このような好ましい材料として、例えば、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂、又は、ステンレス、アルミニウム等の金属等が挙げられる。
【0022】
前記粘着層24は、粘着性材料で形成されていればよく、前記粘着性材料として、例えば、粘着性シリコーンゴム等が挙げられる。粘着性シリコーンゴムとしては、例えば、特開2007−165397号公報に記載の「シリコーン生ゴム(a)と、架橋成分(b)と、粘着成分(c)と、触媒(d)と、シリカ系充填材(e)とを含有する粘着性組成物」を挙げることができる。
【0023】
無端ベルト3を張架する支持ローラ8及びテンションローラ9は、図1に示されるように、互いの軸線が平行となるように無端ベルト3の周長に応じた間隔で配置されている。これらのローラ8及び9はそれぞれ樹脂又は金属で形成されている。テンションローラ9は、無端ベルト3の走行面に対して垂直な方向に前後進可能になっているのが好ましく、無限軌道の復路を走行する無端ベルト3の内表面22に圧接して、2本の支持ローラ8に無端ベルト3を所定の張力で張架させる。
【0024】
前記制御ユニットは、無端ベルト3の間欠的な走行を制御できるユニットであればよく、例えばステップモーター等が挙げられる。この制御ユニットは、図示しない制御部と、制御部からの信号によって支持ローラ8を駆動させる駆動部とを有している。この制御ユニットは、支持ローラ8を間欠的に回動させるように、すなわち、所定量回動させた後に所定時間例えば1〜10秒程度停止させるように、調整されている。支持ローラ8の回動量は切断する長尺体7の長さに一致する距離だけ無端ベルト3が走行する量である。
【0025】
前記受け台4は、図1に示されるように、無端ベルト3内に、自身の平坦な表面31が無端ベルト3の内表面22に接触するように、配置されている。すなわち、無端ベルト3は前記無限軌道の往路において前記内表面22上を摺動するように走行する。この受け台4は、無端ベルト3の内表面22に接触することによって、無端ベルト3の走行を安定化させると共に後述する切断刃5が長尺物7を切断する際に切断刃5の前進方向への長尺物7の変位を防止する。したがって、この受け台4は、前記テンションローラ9と同様に、無端ベルト3の張力を調整できるように、無端ベルト3の走行面に対して垂直な方向、すなわち、切断刃5の前後進方向に、移動可能になっているのが好ましい。この受け台4は、図1(b)によく示されるように、無端ベルト3の幅と略同一の幅を有し、その表面31が無端ベルト3の内表面22全体に接触している。受け台4は通常硬質材料で形成される。
【0026】
前記切断刃5は、無端ベルト3が停止したときに無端ベルト3上の長尺物7を切断する。この切断刃5は、図1に示されるように、無端ベルト3の上部に無端ベルト3を挟んで受け台4に対向すると共に受け台4に対して前後進可能になるように配置されている。この切断刃5は、図1(a)によく示されるように、無端ベルト3の上部方向に、搬送されてくる長尺物7に接触しない程度に無端ベルト3の粘着性表面21から離間するまで後退可能になっている。切断刃5は、無端ベルト3の粘着性表面21まで到達しないように前進可能になっているのが好ましく、その最大前進量は、例えば、切断刃5が前記粘着性表面21の0.02mm手前に到達するように調整されている。
【0027】
この切断刃5は、長尺物7を切断できればよく、例えば、ブレード状の平刃、ロータリーカッター等が挙げられる。切断刃5として、平刃を採用するときはその刃長、ロータリーカッターを採用するときはその移動量それぞれは長尺物7の幅よりも大きく無端ベルト3の幅よりも小さくなっている。
【0028】
前記案内部材11は、長尺体7を無端ベルト3の粘着性表面21に案内する部材であり、図1に示されるように、無端ベルト3の無限軌道における往路の走行方向上流側、すなわち、無端ベルト3の搬送方向の上流側に無端ベルト3と離間して配置されている。この案内部材11は、円筒状をなし、無端ベルト3の走行に同期して無端ベルト3の走行方向と同方向に回動する。この案内部材11は、図1(b)に明確に示されるように、無端ベルト3の幅と略同一の幅を有するローラであり、その外周面上で長尺物7を支持して、無端ベルトの走行方向と長尺物7の軸線とがほぼ同方向となるように長尺物7を粘着性表面21に供給する。この案内部材11は、粘着性表面21に供給される長尺物7をその幅方向から挟むことのできる間隔で立設された一対のフランジを有するローラ、特に、長尺物7の幅と略同一の軸線長さを有し、その両端部に立設された一対のフランジを有するローラであるのが、長尺物7を蛇行させることなくほぼ直線状に粘着性表面21に供給できる点で、好ましい。案内部材11は通常硬質材料で形成される。
【0029】
前記収納容器12は、図1に示されるように、無端ベルト3の無限軌道における往路の走行方向下流側に配置された支持ローラ8の下方に無端ベルト3から離れて配置されている。この収納容器12は切断された長尺物の寸法等に応じて適宜の寸法及び材料で形成されている。
【0030】
切断装置1は、無端ベルト3と受け台4と切断刃5と案内部材11と収納容器12とを備えていればよいが、これらに加えて、長尺物7を無端ベルト3の粘着性表面21上に所定の張力で供給する供給機構を備えているのが好ましい。切断装置1が供給機構を備えていると、長尺物7を一定の張力で粘着性表面21上に供給することができ、粘着性表面21にほぼ直線的に供給することができ、より一層高い寸法精度で長尺物7を切断できる。
【0031】
このような供給機構の一例を挙げると、例えば、図1に示されるように、無端ベルト3の無限軌道における往路の走行方向上流側に無端ベルト3と離間して配置され、長尺物7を弛緩状態に送り出す送出部材41と、この送出部材41から弛緩状態に送り出された長尺物7の最下点L(図1において図示しない。図2参照。)よりも上方に配置され、長尺物7の弛緩状態を検出する検出部42と、この検出部42で検出された信号を受信して前記送出部材41から送り出される長尺物7の送り出し量を調整する調整部材(図示しない。)とを備えて成る供給機構13が挙げられる。この供給機構13は、無端ベルト3の走行に従動又は同期して長尺物7の送り出し速度を調整する。具体的には、供給機構13は、弛緩状態の長尺物7が検出部42の配置位置を上方に越えると長尺物7を送り出す速度を無端ベルト3の間欠的な走行速度よりも高め、一方、検出部42の配置位置を下方に越えると長尺物7を送り出す速度を無端ベルト3の間欠的な走行速度よりも遅らせる。
【0032】
前記送出部材41は、無端ベルト3の走行に応じて長尺物7を弛緩状態に送り出す。この送出部材41は、図1に示されるように、前記案内部材11よりもさらに上流側に案内部材11と離間して配置され、長尺物7の原反を巻回してなる軸体7aが装着される。この例において、送出部材41は、軸体7aの軸孔が挿通される棒状体とされている。送出部材41は、図示しない駆動装置によって無端ベルト3の走行と同期して回転自在に構成されている。
【0033】
前記検出部42は、長尺物7の弛緩状態を検出して、検出状態に応じた信号を前記調整部材に発信する。この検出部42は、前記最下点L(例えば、図2参照。)よりも上方で長尺物7の進行方向に交差する方向にレーザを発する発信部43と、レーザの発信方向延長線上であって発信部43に対向するように配置され、発信部43から発せられたレーザを受信する受信部44例えばセンサーとを備えている。このように前記最下点Lよりも上方で前記発信部43と前記受信部44とが互いに対向するように配置されていると、発信部43から発せられたレーザを受信部44で受信できる。したがって、後に詳術するように、発信部43から発せられたレーザを長尺物7が遮ると受信部44がレーザを受信できなくなるので、受信部44の受信状態によって長尺物7の弛緩状態を検出できる。
【0034】
前記調整部材は、図1及び図2に示されていないが、前記検出部42で検出された信号を受信して、その信号に応じて前記送出部材41の回転速度を調整する。したがって、この調整部材は、前記信号を受信する受信部と、受信した信号に応じて送出部材41の回転速度を調整する制御部と、この制御部に接続され、送出部材41を回転させる駆動部とを有している。これらの受信部、制御部及び駆動部は公知の構成を採用することができる。
【0035】
前記切断装置1は、図1に示されるように、長尺物7を粘着保持可能な粘着性表面21を有する無端ベルト3を備えているから、例えば特許文献1のように保持部に長尺物7を保持する等の特別は作業を要することなく、長尺物7がいかなる長さであっても作業を中断することなく連続して、長尺物7の自重及び張力で前記粘着性表面21に長尺物7を粘着保持でき、その粘着保持状態のままで長尺物7を搬送できる。また、前記切断装置1は、図1に示されるように、受け台4及び切断刃5が無端ベルト3の無限軌道の途中、具体的にはその往路の途中に配置され、構造が単純で省スペース化されているうえ、長尺物7を無端ベルト3の無限軌道の途中で搬送中に切断できる。したがって、この切断装置1は、単純な構造で省スペース化されているにもかかわらず、高い作業効率で精度よく長尺物を切断できる。
【0036】
この発明に係る長尺物の切断方法は、弾性を有する長尺物を間欠的に搬送しつつ長尺物の搬送停止時に長尺物を切断する切断方法である。この切断方法は、粘着性表面を有し、無限軌道を間欠的に走行する無端ベルトの粘着性表面に長尺物を粘着保持し、長尺物を切断可能な切断刃を無端ベルトが停止したときに無端ベルトに向かって前進させ、長尺物を前記無限軌道上の搬送途中で切断する方法である。
【0037】
この発明に係る長尺物の切断方法を、前記切断装置1を用いた、長尺物の切断方法(以下、この発明に係る一切断方法と称することがある。)を例に挙げて、説明する。
【0038】
この発明に係る一切断方法においては、まず、長尺物の切断装置を準備する。準備する切断装置1は前記した通りであり、図1に示される構成及び配置を有している。この切断装置1において、前記ステップモーター等の制御ユニットにおける駆動時間及び停止時間を、長尺体7を切断する所定の長さと同じだけ無端ベルト3が走行するように、また、切断刃5が十分に前後進できるように、設定する。
【0039】
この発明に係る一切断方法においては、次いで、図2(a)によく示されるように、長尺体7を巻回してなる軸体7aを送出部材41に装着して最下点Lが前記検出部42よりも下方になるように長尺体7を弛緩状態に送り出す。このとき、送り出された長尺体7の先端は案内部材11を介して無端ベルト3の粘着性表面21に粘着保持するのがよい。
【0040】
この状態において、支持ローラ8及び送出部材41をそれぞれ所定方向に間欠的に回転させる。そうすると、無端ベルト3の間欠的な走行によって、長尺体7は送出部材41から間欠的に送り出され、案内部材11によって案内されて間欠的に走行している無端ベルト3の粘着性表面21に到達する。そして、粘着性表面21に到達した長尺体7は、図2に示されるように粘着性表面21に粘着保持され、無限軌道上を所定の長さ分だけ間欠的に搬送される。
【0041】
前記切断装置1においては無端ベルト3の弛緩状態が調整される。前記弛緩状態が緊張する場合を例にして説明する。無端ベルト3は、図2(a)に示されるように、検出部42よりも最下点Lが下方になるように弛緩状態にある。この弛緩状態において、無端ベルト3を走行させた場合に、例えば送出部材41の相対的な回転速度が無端ベルト3よりも小さく、長尺物7の張力が大きくなると、無端ベルト3の弛緩状態が緊張して前記最下点Lが徐々に上昇する。さらに、最下点Lが上昇し続けると、受信部44が受信している発信部43からのレーザを長尺物7が遮り、受信部44で前記レーザを受信できなくなる。そうすると、受信部44から調整部材に信号が発信され、この信号を受信した調整部材は送出部材41の回転速度を早くする。送出部材41の高速回転によって無端ベルト3の間欠的な走行速度よりも長尺物7の送り出し量が大きくなって、長尺体7の弛緩状態を緩和する。送出部材41の高速回転が継続して長尺物7がさらに弛緩して検出部42を下方に通過すると、前記とは逆に、受信部44がレーザを受信できなくなり、送出部材41の回転速度が無端ベルト3の間欠的な走行速度と同速度又はやや低速に減速される。このようにして、軸体7aから送り出される長尺体7の送出量が調整され、長尺体7の張力が一定となるから、粘着性表面21に粘着保持される長尺体7の粘着状態を均一かつ直線状に保つことができ、より一層高い精度で長尺体7を切断できる。無端ベルト3の弛緩状態がさらに弛緩する場合は前記の緊張する場合とは逆にして長尺体7の送出量が調整される。
【0042】
この発明に係る一切断方法においては、次いで、無端ベルト3の走行が停止したときに切断刃5を無端ベルト3に向かって前進させる。そうすると、切断刃5の下方に位置する長尺体7は無限軌道上の搬送途中で前進する切断刃5によって切断される。このとき、長尺体7は受け台4で支持されているから切断刃5によって所定の切断位置で切断される。その後、切断刃5が上方に後退して長尺体7の切断が完了する。
【0043】
この発明に係る一切断方法においては、次いで、無端ベルト3の走行が再開され、切断された長尺体7はさらに下流側に搬送されて前記収納容器12に収納されると共に、未切断の長尺体7が所定の長さ分だけ下流方向に搬送される。次いで、前記のように、切断刃5を無端ベルト3に向かって前進させて長尺体7を切断する。
【0044】
この発明に係る一切断方法においては、このようにして、長尺体7を、無限軌道を走行する無端ベルト3の粘着性表面21に粘着保持した状態で搬送し、前記粘着保持した状態を保持したまま搬送途中で切断する。したがって、高い作業効率で精度よく長尺物を切断できる。
【0045】
この発明に係る長尺物の切断装置及び長尺物の切断方法は、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。
【0046】
例えば、前記切断装置1は、無端ベルト3と受け台4と切断刃5と案内部材11と収納容器12とを備えているが、この発明においては、これらに加えて、切断刃よりも搬送方向の上流側であって無端ベルトの上部に長尺体の高さと略同一の間隔をあけて配置された、長尺体を無端ベルトに押圧する押圧部材を備えていてもよい。この押圧部材は長尺体の搬送方向に延在する平板状、無端ベルトに対向し上方に凹んだ凹面を有する部材、例えば、上方に凸の半円形状等の部材等が挙げられる。
【0047】
前記無端ベルト3は、図3に示されるように、ベルト基体23とこのベルト基体23の表面全体に積層された粘着層24とで形成されているが、この発明において、無端ベルトは、ベルト基体における長尺物を粘着保持する領域の表面に粘着層が積層されていればよく、例えば、ベルト基体とこのベルト基体の表面における周方向又は軸線方向の一部に積層された粘着層とで形成されていてもよく、ベルト基体とこのベルト基体における表面の全面又は一部に貼着されたアクリル系の両面粘着テープとで形成されていてもよい。
【0048】
前記切断装置1において、無端ベルト3は2本の支持ローラ8とテンションローラ9に張架されているが、この発明において、長尺物の切断装置は、無端ベルトの内部に設置され、無端ベルトの内表面に接して蛇行等を防止する案内板等を備えていてもよい。この案内板は前記受け台を無限軌道に沿って延長することによって代用することもできる。
【0049】
前記切断装置1において、受け台4は、その表面31が無端ベルト3の内表面22全体に接触しているが、この発明において、受け台はその平坦な表面が切断刃の前進位置に対応する無端ベルトの内表面に接していればよい。
【0050】
この発明に係る一切断方法は、前記切断装置1を用いて実施されるが、この発明において、用いる切断装置1は前記切断装置1に限定されることなく、他の切断装置を用いて実施することもできる。
【符号の説明】
【0051】
1 長尺物の切断装置
3 無端ベルト
4 受け台
5 切断刃
7 長尺物
7a 軸体
8 支持ローラ
9 テンションローラ
11 案内部材
12 収納容器
13 供給機構
21 粘着性表面(外表面)
22 内表面
23 ベルト基体
24 粘着層
31 表面
41 送出部材
42 検出部
43 発信部
44 受信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性を有する長尺物を間欠的に搬送しつつ切断する前記長尺物の切断装置であって、
無限軌道を間欠的に走行して粘着性表面に粘着保持した前記長尺物を搬送する無端ベルトと、
前記無端ベルト内に、自身の平坦な表面が前記無端ベルトの内表面に接触するように、配置された受け台と、
前記無端ベルトの上部に前記無端ベルトを挟んで前記受け台に対向すると共に前記受け台に対して前後進可能になるように配置され、前記無端ベルトが停止したときに前進して前記無端ベルト上の前記長尺物を切断する切断刃とを備えて成ることを特徴とする長尺物の切断装置。
【請求項2】
前記無端ベルトの走行方向上流側に前記無端ベルトと離間して配置され、前記長尺体を前記粘着性表面に案内する案内部材を備えて成ることを特徴とする請求項1に記載の長尺物の切断装置。
【請求項3】
弾性を有する長尺物を間欠的に搬送しつつ切断する前記長尺物の切断方法であって、
粘着性表面を有し、無限軌道を間欠的に走行する無端ベルトの前記粘着性表面に前記長尺物を粘着保持し、
前記無端ベルトが停止したときに前記長尺物を切断可能な切断刃を前記無端ベルトに向かって前進させ、
前記長尺物を前記無限軌道上の搬送途中で切断することを特徴とする長尺物の切断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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