説明

長尺物の昇降装置及びその設置方法

【課題】設置作業中に作業者が移動すべき距離を短縮するとともに作業内容を簡略化し、限られた空間で作業者が安全に作業を行うことが可能なタンク内に長尺物を抜き差しする昇降装置を提供する。
【解決手段】タンク1内に洗浄装置2を抜き差しすべく天面1a上に設置され、三脚状の架台11と、架台11に設けられて上下方向に駆動可能なフック13とを有する昇降装置10であって、架台11に設けられている一対の第1支脚14は、挿入口側と通路側とに揺動可能なようにその端部が支持部材17にそれぞれ取り付けられ、架台11の第2支脚15は支持部材17が設けられている側とは挿入口1bを挟んで反対側に設けられた支柱22の固定部22aに固定される。昇降装置10の設置は、まず一対の第1支脚14の端部を支持部材17に取り付け、その後支柱22に設けられている第2ウインチ23で架台11の頂部16を挿入口側に引き起こすことにより行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクの天面からそのタンク内に長尺物を挿入したり抜き出したりするための昇降装置及びその設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地中や井戸などから揚水パイプなどの長尺管をウインチを利用して引き上げたり降下させたりする装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、地面に三脚を立て、その三脚で地面に接地棒を打ち込むための打設機を垂直に保持する保持装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。他に地面に長尺物を押し込む装置としては、シンウォールチューブサンプラーを地盤に押し込むシンウォールチューブサンプラーの押込装置が知られている(特許文献3参照)。その他、岸壁に固定される大容量三脚デリツク装置が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−199395号公報
【特許文献2】特開平5−266961号公報
【特許文献3】特開2000−212945号公報
【特許文献4】特開平6−156981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ビールなどの飲料物の製造工場には、製造した飲料物やその飲料物の原料などを一時貯蔵するコニカルタンクが設けられている。このようなコニカルタンクに対しては、定期的に内部の洗浄などのメンテナンスが行われる。この際、洗浄装置をタンクの天面からタンク内に挿入したり抜き出したりする作業を作業者が手作業で行っているが、例えばタンクの高さが20m程度の場合、洗浄装置の長さが4m程度となるため、作業者にかかる負担が大きい。そこで、作業者への負担を軽減すべく特許文献1の装置のような三脚状の架台を有する昇降装置を用いてこの作業を行うことにしたが、タンクの天面上という限られた空間でこの昇降装置を設置する設置作業を行う必要があるため、設置作業中に作業者が移動する距離を短縮したり設置作業の作業内容を簡略化する必要がある。特許文献1〜4の装置は地面に設置するものであるため、このような限られた空間には適していない。また、これらの特許文献1〜4には、限られた空間に装置を設置する方法について開示されていない。
【0005】
そこで、本発明は、設置作業中に作業者が移動すべき距離を短縮するとともに作業内容を簡略化し、限られた空間で作業者が安全に作業を行うことが可能な長尺物の昇降装置及びその設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の長尺物の昇降装置は、タンク(1)の天面(1a)に設けられている挿入口(1b)から前記タンク内に長尺物(2)を挿入する挿入作業、及び前記挿入口から前記タンク内に挿入されている前記長尺物を抜き出す取出作業を行うために前記天面に設置されて前記長尺物を上下方向に移動させる昇降装置(10)であって、前記タンクの前記天面には、作業者が前記天面に移動するための通路(3)が前記タンクとは別の建物から掛け渡されており、同じ長さの一対の第1支脚(14)と、第2支脚(15)と、前記一対の第1支脚のそれぞれの一端が所定の間隔を離して取り付けられるとともに前記一対の第1支脚の並び方向と直交する方向に前記第2支脚が揺動可能なように前記第2支脚の一端が取り付けられる頂部(16)とを有し、前記天面のうち前記挿入口よりも前記通路寄りに互いに離して設定された一対の第1支脚配置位置(P1)にそれぞれ設けられた支持部材(17)に他端を中心として各第1支脚が前記挿入口側と前記通路側とに揺動可能なように各第1支脚の他端がそれぞれ取り付けられ、前記一対の第1支脚配置位置が設定された側とは前記挿入口を挟んで反対の側において各第1支脚配置位置からの距離が互いに等しくなるように設定された第2支脚配置位置(P2)に前記第2支脚の他端が固定され、かつ前記頂部が前記挿入口の上方に位置するとともに前記頂部と前記挿入口との間の距離(L2)が前記長尺物の長さ(L1)より長くなるように前記天面上に設置される架台(11)と、前記架台の前記頂部から下方に吊り下げられて駆動手段(12)にて上下方向に駆動可能な装着部(13)と、前記架台の前記頂部にワイヤ(23a)が装着されるウインチ手段(23)が設けられるとともに付け根部分に前記第2支脚の他端が嵌め込まれて固定される受け部材(22a)を有し、かつ前記第2支脚配置位置に設置される支柱(22)と、を備えていることにより、上述した課題を解決する。
【0007】
本発明の昇降装置によれば、架台を第1支脚の他端を中心として通路側と挿入口側に揺動できるので、作業者は第1支脚の他端をそれぞれ支持部材に取り付けた後、ウインチ手段で架台の頂部に装着したワイヤを巻き上げることにより架台を挿入口側に引き起こすことができる。そのため、長尺物を手で抜き差しする作業と比較して作業者が重いものを長時間持ったり長時間無理な姿勢で作業を行ったりする必要がない。したがって、作業内容を簡略化し、タンクの天面上という限られた空間で作業者が安全に昇降装置の設置作業を行うことができる。また、この昇降装置は、作業者がタンクの天面上において第1支脚配置位置、第2支脚配置位置、及び挿入口の3箇所に移動することでほぼ設置を行うことができる。そのため、設置作業中に作業者が移動すべき距離を短縮することができる。そして、第1支脚配置位置及び第2支脚配置位置にそれぞれ作業者を配置しておくことにより、設置作業中は作業者が移動すべき距離をさらに短縮することができる。さらに、本発明の昇降装置では、各支脚の他端がそれぞれ天面上に移動しないように固定できるので、長尺物を挿入したり抜き出したりする作業中に昇降装置がふらつくことを防止できる。そのため、作業者が安全に長尺物の抜き差し作業を行うことができる。
【0008】
本発明の昇降装置の一形態において、前記タンクは、製造された飲料物が貯蔵されるコニカルタンク(1)であり、前記長尺物は、前記タンク内を洗浄するために前記タンク内に挿入する洗浄装置(2)であってもよい。このようなタンクは定期的に洗浄装置をタンクの天面から挿入して洗浄を行うので、本発明の設置方法が好適に適用できる。
【0009】
本発明の設置方法は、上述した昇降装置を前記タンクの前記天面に設置する設置方法であって、まず前記昇降装置の各第1支脚の他端をそれぞれ前記第1支脚配置位置の前記支持部材に揺動可能に支持させ、次にウインチ手段を巻き上げることにより前記架台を前記挿入口側に起こし、その後前記第2支脚の他端を前記受け部材に嵌め込んで前記第2支脚配置位置に固定する設置工程(S1〜S4)と、前記長尺物の一端に前記装着部を装着する装着工程(S5)と、を備えていることにより、上述した課題を解決する。
【0010】
本発明の設置方法によれば、作業者が第1支脚配置位置、第2支脚配置位置、及び挿入口の3箇所に移動することで昇降装置の設置をほぼ行うことができる。そのため、設置作業中に作業者が移動すべき距離を短縮できる。また、作業者が重いものを長時間持ったり、長時間無理な姿勢で作業を行ったりする必要がない。そのため、設置作業の作業内容を簡略化でき、限られた空間で作業者が安全に設置作業を行うことができる。
【0011】
本発明の設置方法の一形態において、前記設置工程は、前記昇降装置の各第1支脚の他端が前記一対の第1支脚配置位置に置かれ、かつ前記頂部が前記通路上に位置するように前記架台を倒した状態で前記通路上に置く第1設置工程(S1)と、前記通路上に倒した状態で置かれた前記架台の各第1支脚の他端を、前記頂部が各第1支脚の他端を中心として前記挿入口側と前記通路側とに揺動可能なように各支持部材にそれぞれ取り付ける第2設置工程(S2)と、前記第2支脚配置位置に前記支柱を立てるとともに、前記第2設置工程で各第1支脚の他端をそれぞれ前記支持部材に取り付けた前記架台の前記頂部に前記ウインチ手段のワイヤを掛け、前記ウインチ手段を巻き上げることにより前記一対の第1支脚の他端を中心として前記架台を前記挿入口側に起こす第3設置工程(S3)と、前記第3設置工程で起こした前記架台の前記第2支脚の他端を前記受け部材に嵌め込み、その後前記ウインチ手段のワイヤを張ることにより前記架台を前記天面上に固定する第4設置工程(S4)と、を備えていてもよい。
【0012】
このように架台を設置することにより、作業者が重いものを長時間持ったり長時間無理な姿勢で作業を行ったりすることなく架台を設置することができる。そのため、作業内容を簡略化し、タンクの天面上という限られた空間で作業者が安全に昇降装置の設置作業を行うことができる。
【0013】
なお、以上の説明では本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0014】
以上に説明したように、本発明によれば、設置作業中に作業者が移動する距離を短縮でき、また各工程で作業者が行うべき作業を簡略化できるので、タンクの天面上という限られた空間で作業者が安全に作業を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明の一形態に係る設置方法で昇降装置が設置されるタンクの概略を示した図である。図1に示したタンク1は、内部に製造した飲料物が貯蔵されるコニカルタンクであり、地面から天面1aまでの高さHは20m程度である。図1に示したようにタンク1の天面1aには、挿入口1bが設けられている。図2は、天面1aを上から見た図である。図2に示したように天面1aはほぼ円状であり、挿入口1bはほぼその中心に設けられている。図1に示したように、この挿入口1bからは長尺物としての洗浄装置2が挿入される。洗浄装置2は、その下端に設けられた洗浄ヘッド2aから水などの洗浄液を噴射してタンク1内を洗浄する。洗浄装置2の上端は挿入口1bより外側に配置され、不図示の洗浄液供給装置と接続される。図1に示したようにこの洗浄装置2の長さL1は、洗浄装置2がタンク1内に挿入された際に洗浄ヘッド2aがタンク1内の洗浄に適した位置に配置されるように設定されている。この長さL1としては、例えば約4mが設定される。タンク1の天面1aには、作業者がその天面1aに移動可能なように別の建物から通路3が掛け渡されている。また、天面1aの外周及び通路3の両側には作業者の転落を防止するための安全柵4が設けられている。
【0016】
タンク1内への洗浄装置2の挿入及びタンク1内からの洗浄装置2の抜き出しは、天面1a上に設置される昇降装置10を用いて行われる。図1〜図3を参照して昇降装置10について説明する。図3は、昇降装置10を拡大して示した図である。なお、図3においては安全柵4の図示を省略している。昇降装置10は、架台11と、架台11に取り付けられる駆動手段としての第1ウインチ12と、架台11の頂部16から下方に吊り下げられ第1ウインチ12で上下方向に駆動される装着部としてのフック13とを備えている。架台11は、同じ長さの一対の第1支脚14と、第2支脚15と、一対の第1支脚14及び第2支脚15が取り付けられる頂部16とを有している。この形態では、第2支脚15も第1支脚14と同じ長さに設定されている。そして、これらの支脚14、15の長さは、図1に示したように昇降装置10を天面1a上に設置した場合に挿入口1bから頂部16までの距離L2が洗浄装置2の長さL1より十分大きくなるように設定される。
【0017】
図2に示したように頂部16は、ほぼ正三角形の板部材であり、一対の第1支脚14は一方の一端が頂部の一つの頂点に配置され、他方の一端が他の頂点に配置されるように頂部16に固定されている。頂部の16の残りの頂点には、第2支脚15の一端が配置される。そのため、第2支脚15の一端は、この一端から各第1支脚14の一端までの距離が互いに等しくなるように頂部16に取り付けられる。また、第2支脚15は、頂部16に取り付けられた一端を中心として一対の第1支脚14の並び方向と直交する方向に揺動可能なように頂部16に取り付けられる。例えば、第2支脚15の一端に孔を形成するとともに貫通孔が形成された支持板を頂部16の下面に設け、この支持板の貫通孔と第2支脚15の孔とをそれぞれ貫通するようにボルトを通すことにより、第2支脚15を頂部16に揺動可能に取り付けることができる。
【0018】
図2に示したように各第1支脚14の他端は、天面1aの外周のうち通路3が接続されている部分の両端、言い換えると通路3の一方の側面が天面1aの外周と接している位置及び通路3の他方の側面が天面1aの外周と接している位置に配置される。以降、これらの位置を第1支脚配置位置P1と称することがある。一方、第2支脚15の他端は、天面1aの外周のうち第1支脚配置位置P1とは挿入口1bを挟んで反対の側に各第1支脚配置位置P1からの距離が互いに等しくなるように設定された第2支脚配置位置P2に配置される。第1支脚配置位置P1には、それぞれ支持部材17が設けられている。支持部材17は、第1支脚14が天面1aの外周より内側及び天面1aの外周より外側の両方に揺動可能なように第1支脚14の一端を支持する。具体的には、例えば第1支脚配置位置P1に半円状の軸受部、及びその軸受部に嵌って回転する回転軸を支持部材17として設け、第1支脚14の他端をその回転軸と接続すればよい。このように各第1支脚14の他端を支持部材17にそれぞれ支持させることにより、一対の第1支脚14をその他端を中心として天面1aの外周より外側に倒したときに頂部16を通路3上に移動させることができる。
【0019】
頂部16には、第1滑車18と、第2滑車19と、第1ウインチ12のワイヤ12aの先端が固定される固定部20と、頂部16のほぼ中央に配置されて上下方向に貫通する貫通孔21とが設けられている。図2に示したように第1滑車18は、頂部16の中央より第1支脚14側寄りに設けられ、第2滑車19は頂部16の頂点のうち第2支脚15の一端が取り付けられた頂点に設けられている。図3に示したように第1滑車18には、第1ウインチ12のワイヤ12aが巻き掛けられる。そのワイヤ12aの先端は、貫通孔21を介して固定部20に固定される。そして、ワイヤ12aのうち固定部20から貫通孔21までの間の部分にフック13の動滑車13aが取り付けられる。この昇降装置10によれば、第1ウインチ12でワイヤ12aを巻き上げることによりフック13を上方に駆動でき、ワイヤ12aを引き出すことによりフック13を下方に駆動できる。また、動滑車13aを利用することにより、第1ウインチ12を巻き上げる際に要する力が半分になるので、洗浄装置2を抜き差しする際に作業者が無理なく第1ウインチ12を操作することができる。そのため、洗浄装置2の挿入作業や取出作業を安全に行うことができる。
【0020】
また、昇降装置10は、天面1aのうち第2支脚15の他端が配置される第2支脚配置位置P2に設置される支柱22と、その支柱22の上端に設けられるウインチ手段としての第2ウインチ23とを備えている。支柱22の付け根部分には、第2支脚15の他端が嵌め込まれる受け部材としての固定部22aが設けられている。図3に示したように第2ウインチ23のワイヤ23aは、第2滑車19に巻き掛けられ、その先端は支柱22に固定される。そのため、第2ウインチ23でワイヤ23aを張ることにより、第2支脚15を固定部22aに押し付けて、昇降装置20を天面1aに固定することができる。
【0021】
図4は、この昇降装置10をタンク1の天面1aに設置する設置方法の手順を示したフローチャートである。図4に示したように昇降装置10を設置するには、まず通路3上に昇降装置10の架台11を倒した状態で置く第1設置工程S1を行う。この際、図5に示したように架台11は、各第1支脚14の他端がそれぞれ第1支脚配置位置P1に置かれ、かつ頂部16が一対の第1支脚配置位置P1を挟んで挿入口1aがある側(以下、内側と称することがある。)とは反対の側(以下、外側と称することがある。)を向くように通路3上に置かれる。なお、図示を省略したがこの際に第1ウインチ12をいずれかの第1支脚14に取り付ける。また、第1ウインチ12のワイヤ12を第1滑車18に巻き掛けるとともに、そのワイヤ12aの先端が貫通孔21を介して固定部20に固定される。そして、そのワイヤ12aにフック13が取り付けられる。なお、図5においても安全柵4の図示を省略している。
【0022】
次の第2設置工程S2では、第1設置工程S1において通路3上に倒した状態で置いた架台11の各第1支脚14の他端をそれぞれ支持部材17に取り付ける。この作業を実施することにより、一対の第1支脚14の他端を中心として架台11を内側と外側とに揺動させることが可能な状態にすることができる。続く第3設置工程S3では、図6に示したように第2支脚配置位置P2に支柱22を立てるとともに、第2ウインチ23のワイヤ23aを架台11の第2滑車19に巻き掛けるとともにその先端を支柱22に固定する。なお、図6においても安全柵4の図示を省略している。その後、第2ウインチ23でワイヤ23aを巻き上げ、一対の第1支脚14の他端を中心として架台11を図6に矢印Uで示した方向、すなわち内側に起こす。なお、この際、第1支脚14がほぼ垂直に立った後は、架台11が自重で内側に倒れないように作業者が第1支脚配置位置P1で第1支脚14を支持する。
【0023】
第4設置工程S4では、第2ウインチ23をさらに巻き上げて第3設置工程S3よりも架台11をさらに起こし、第2支脚15を挿入口1bより第2支脚配置位置P2側に移動させて図2に示したように架台11の第2支脚15の他端を固定部22aに嵌め込む。これにより、第2支脚15の他端を第2支脚配置位置P2に配置することができる。上述したように第1支脚14及び第2支脚15はそれぞれ同じ長さである。また、第1支脚配置位置P1及び第2支脚配置位置P2はそれぞれ天面1aの外周に設定されている。そのため、各第1支脚14の他端を第1支脚配置位置P1にそれぞれ配置し、第2支脚15の他端を第2支脚配置位置P2に配置することにより、昇降装置10の頂部16を天面1aの中心に設けられている挿入口1bの上方に配置することができる。その後、ワイヤ23aが張るまで第2ウインチ23を巻き上げる。これにより、第2支脚15の他端を固定部22aに固定することができるので、天面1a上に架台11を固定することができる。続く装着工程S5では、フック13を洗浄装置2の上端に取り付ける。なお、フック13を直接洗浄装置2の上端に取り付けることができない場合は、例えば洗浄装置2の上端にアイボルトやワイヤなどの適宜の治具を取り付け、それらにフック13を掛ければよい。
【0024】
以上で昇降装置10の設置は完了する。その後、図1に示したようにタンク1内に挿入されている洗浄装置2を抜き出す取出作業を行う場合は、第1ウインチ12を巻き上げて洗浄装置2をタンク1から抜き出す。一方、タンク1内に洗浄装置2を挿入する挿入作業を行う場合は、まず天面1a上に洗浄装置2を横に倒した状態で置いておき、その上端にフック13を取り付ける。次に第1ウインチ12を巻き上げて洗浄装置2を挿入口1bの上方に吊す。その後、第1ウインチ12のワイヤ12aを徐々に出していくことにより、洗浄装置2をタンク1内に挿入することができる。なお、天面1aから昇降装置10を取り外す場合は、上述した設置手順を逆に行えばよい。
【0025】
以上に説明したように、本発明の昇降装置10によれば、通路3上に架台11を倒した状態で置いた後から第4設置工程S4までの間、第3設置工程S3で第2ウインチ23のワイヤ23aを第2滑車19に巻き掛ける作業を除いて作業者は第1支脚配置位置P1及び第2支脚配置位置P2のみで作業を行うことができる。そのため、予めこれらの支柱配置位置P1、P2に作業者を配置しておくことにより、作業者が殆ど移動することなく設置作業を進めることができる。また、設置作業中に移動するにしてもこれら支柱配置位置P1、P2の周囲、挿入口1bの周囲、及び通路3上に移動するのみであり、天面1aにおいてそれ以外の場所に移動する必要がない。そのため、設置作業中に作業者が移動する距離を短縮できる。
【0026】
また、本発明の昇降装置10では、最初に昇降装置10を通路3上に倒した状態で置いた後は各支脚14、15の端部の取り付けやウインチ12、23のワイヤ12a、23aの取り付け、及びウインチ12、23の操作のみでほぼ設置作業を進めることができる。そのため、洗浄装置2を手作業で抜き差しする場合と比較して重いものを長時間持ったり長時間無理な姿勢で作業を行ったりする必要がない。従って、作業内容を簡略化し、タンク1の天面1a上という限られた空間で作業者が安全に昇降装置10の設置作業を行うことができる。さらに、本発明の昇降装置10は、各支脚14、15がそれぞれ支脚配置位置P1、P2に固定されるので、洗浄装置2を挿入したり抜き出したりする作業中に昇降装置10がふらつくことを防止できる。そのため、作業者が安全に洗浄装置2の抜き差し作業を行うことができる。
【0027】
本発明は上述した形態に限定されることなく種々の形態にて実施してよい。例えば、本発明が適用されるタンクは飲料物が貯蔵されるコニカルタンクに限定されず、天面から長尺物が挿入される種々のタンクに適用してよい。タンクの天面からタンク内に挿入される長尺物は洗浄装置に限定されず、例えばタンク内を検査するための検査装置やタンク内に貯蔵されている物質をサンプリングするサンプリング装置などでもよい。
【0028】
タンクの天面上に設定される各支脚配置位置は、上述した形態の位置に限定されない。各第1支脚配置位置は、架台を天面の外周より外側に倒したときに頂部が通路上に位置するように設定されていればよい。また第2支脚配置位置は、天面のうち各第1支脚配置位置が設定されている側と挿入口を挟んで反対の側に設定されていればよい。この際、これら各支脚配置位置に各支脚の他端を配置した場合に頂部が挿入口の上方に位置するように第2支脚は第1支脚とは異なる長さにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一形態に係る設置方法で昇降装置が設置されるタンクの概略を示す図。
【図2】図1のタンクの天面を上から見た図。
【図3】昇降装置を拡大して示す図。
【図4】昇降装置の設置手順を示すフローチャート。
【図5】通路上に倒して置かれている状態の昇降装置を示す図。
【図6】架台を起こしている途中の昇降装置を示す図。
【符号の説明】
【0030】
1 タンク
1a 天面
1b 挿入口
2 洗浄装置(長尺物)
3 通路
10 昇降装置
11 架台
12 第1ウインチ(駆動手段)
13 フック(装着部)
14 第1支脚
15 第2支脚
16 頂部
17 支持部材
22 支柱
22a 固定部(受け部材)
23 第2ウインチ(ウインチ手段)
23a 第2ウインチのワイヤ
P1 第1支脚配置位置
P2 第2支脚配置位置
S1 第1設置工程
S2 第2設置工程
S3 第3設置工程
S4 第4設置工程
S5 装着工程
L1 洗浄装置の長さ
L2 頂部と挿入口との間の距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクの天面に設けられている挿入口から前記タンク内に長尺物を挿入する挿入作業、及び前記挿入口から前記タンク内に挿入されている前記長尺物を抜き出す取出作業を行うために前記天面に設置されて前記長尺物を上下方向に移動させる昇降装置であって、
前記タンクの前記天面には、作業者が前記天面に移動するための通路が前記タンクとは別の建物から掛け渡されており、
同じ長さの一対の第1支脚と、第2支脚と、前記一対の第1支脚のそれぞれの一端が所定の間隔を離して取り付けられるとともに前記一対の第1支脚の並び方向と直交する方向に前記第2支脚が揺動可能なように前記第2支脚の一端が取り付けられる頂部とを有し、前記天面のうち前記挿入口よりも前記通路寄りに互いに離して設定された一対の第1支脚配置位置にそれぞれ設けられた支持部材に他端を中心として各第1支脚が前記挿入口側と前記通路側とに揺動可能なように各第1支脚の他端がそれぞれ取り付けられ、前記一対の第1支脚配置位置が設定された側とは前記挿入口を挟んで反対の側において各第1支脚配置位置からの距離が互いに等しくなるように設定された第2支脚配置位置に前記第2支脚の他端が固定され、かつ前記頂部が前記挿入口の上方に位置するとともに前記頂部と前記挿入口との間の距離が前記長尺物の長さより長くなるように前記天面上に設置される架台と、前記架台の前記頂部から下方に吊り下げられて駆動手段にて上下方向に駆動可能な装着部と、前記架台の前記頂部にワイヤが装着されるウインチ手段が設けられるとともに付け根部分に前記第2支脚の他端が嵌め込まれて固定される受け部材を有し、かつ前記第2支脚配置位置に設置される支柱と、を備えていることを特徴とする長尺物の昇降装置。
【請求項2】
前記タンクは、製造された飲料物が貯蔵されるコニカルタンクであり、
前記長尺物は、前記タンク内を洗浄するために前記タンク内に挿入する洗浄装置であることを特徴とする請求項1に記載の長尺物の昇降装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の昇降装置を前記タンクの前記天面に設置する設置方法であって、
まず前記昇降装置の各第1支脚の他端をそれぞれ前記第1支脚配置位置の前記支持部材に揺動可能に支持させ、次にウインチ手段を巻き上げることにより前記架台を前記挿入口側に起こし、その後前記第2支脚の他端を前記受け部材に嵌め込んで前記第2支脚配置位置に固定する設置工程と、前記長尺物の一端に前記装着部を装着する装着工程と、を備えていることを特徴とする昇降装置の設置方法。
【請求項4】
前記設置工程は、前記昇降装置の各第1支脚の他端が前記一対の第1支脚配置位置に置かれ、かつ前記頂部が前記通路上に位置するように前記架台を倒した状態で前記通路上に置く第1設置工程と、前記通路上に倒した状態で置かれた前記架台の各第1支脚の他端を、前記頂部が各第1支脚の他端を中心として前記挿入口側と前記通路側とに揺動可能なように各支持部材にそれぞれ取り付ける第2設置工程と、前記第2支脚配置位置に前記支柱を立てるとともに、前記第2設置工程で各第1支脚の他端をそれぞれ前記支持部材に取り付けた前記架台の前記頂部に前記ウインチ手段のワイヤを掛け、前記ウインチ手段を巻き上げることにより前記一対の第1支脚の他端を中心として前記架台を前記挿入口側に起こす第3設置工程と、前記第3設置工程で起こした前記架台の前記第2支脚の他端を前記受け部材に嵌め込み、その後前記ウインチ手段のワイヤを張ることにより前記架台を前記天面上に固定する第4設置工程と、を備えていることを特徴とする請求項3に記載の昇降装置の設置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−298502(P2009−298502A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152579(P2008−152579)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(392032100)キリンエンジニアリング株式会社 (54)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【Fターム(参考)】