説明

長尺物保持用クリップ

【課題】リード紐などの長尺物の長さを簡易な操作で調整することができるとともに、その長尺物の調整長さを確実に保持することができる長尺物保持用クリップを提供する。
【解決手段】本体部32に固定された壁部37は、リード紐を案内する案内面37A、37Bを有する。係合部53、73は、本体部の間で案内面と垂直な方向に離れて位置する回動軸線RP1、RP2の回りに回動可能に支持される。弾性付勢部54、74は、係合部の先端53C、73Cが案内面に係合するように係合部を付勢する。回動軸線を通り案内面に垂直な線が案内面から延びる延長平面ES1、ES2と交わる交点CP1、CP2から離れた係合位置EP1、EP2で、係合部の先端は案内面と係合する。係合部の先端部分53B、73Bは、係合位置から交点に向かう方向において係合位置より上流側に位置する案内面と鋭角θ1をなす方向に延びる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、犬用のリード紐などの長尺物を保持するクリップに関し、詳細には、長尺物の長さが調整できるように長尺物を弾性力により挟持して保持する長尺物保持用クリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、犬用のリード紐を保持する長尺物保持用クリップとして、特許文献1に記載された金属製ピンチが提案されている。この金属製ピンチは、一対の本体部片と、両本体部片を回動可能に連結する1つの回動軸体と、両本体部片の頭部が閉じるように付勢するつるまきバネとから構成される。両本体部片は、頭部と反対側に裾部をそれぞれ有し、犬の飼い主などの使用者がつるまきバネの弾性力に抗して両裾部を押圧することにより、両頭部が開放される。長いリード紐および短いリード紐の一方の端部は、両本体部片の裾部の側で、犬の胸部および胴体部に装着される主要布にそれぞれ固定される。この両リード紐の他方の端部は、両本体部片の間に挿通されて、両本体部片の両頭部の間から引き出される。その引き出された短いリード紐の他方の端部は、長いリード紐の途中部分に縫い付けられて固定される。長いリード紐の他方の端部側に延びるリード紐は、使用者が保持するために使用される。
【0003】
主要布が装着される犬の大きさに応じて、両本体部片の裾部側から引き出される両リード紐の長さを調整する必要がある。この場合、特許文献1に記載の金属製ピンチでは、使用者が、つるまきバネの弾性力に抗して両裾部を押圧することにより両頭部を開放し、両リード紐に沿って両本体部片の位置を移動させる。この両本体部片の位置を移動させることにより、犬に装着される両リード紐の長さが調整される。特許文献1に記載の金属製ピンチでは、両リード紐の調整された長さを保持するために、歯が両頭部にそれぞれ形成される。両頭部の両歯は、つるまきバネの弾性力により、両リード紐の側面にそれぞれ係止されて、両本体部片の位置を保持する。
【0004】
特許文献1に記載された金属製ピンチにおいて、両リード紐の調整された長さを保持するための保持力は、両頭部の両歯と両リード紐の側面との間に作用する摩擦力であり、この摩擦力はつるまきバネの弾性力の強さに応じて決められる。主要布が犬に装着された場合、その主要布に固定された両リード紐は、両本体部片の裾部側から引き出される方向に大きな力で引っ張られる。この大きな引っ張り力が、両本体部片の裾部側の両リード紐に繰り返し作用すると、両リード紐上での両本体部片の位置が、つるまきバネの弾性力に応じた保持力に拘わらず所定の調整位置からずれることがある。この両本体部片の位置のずれにより、両リード紐の調整された長さが長くなり、主要布の装着状態において両リード紐が緩んだ状態になる。装着状態でのリード紐の緩みを防止するためには、つるまきバネの弾性力を強くすることが考えられる。しかし、つるまきバネの弾性力を強くした場合には、両リード紐の長さを調整するために両裾部を押圧して両頭部を開放する際に、使用者は、つるまきバネの強い弾性力に抗して両裾部を大きな押圧力で押す必要があり、両リード紐の長さを調整するための操作性が損なわれる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−232837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記問題を解決するために、リード紐などの長尺物の長さを簡易な操作で調整することができるとともに、その長尺物の調整長さを確実に保持することができる長尺物保持用クリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明態様は、対向して配置された一対の本体部と、前記両本体部の間で前記両本体部の少なくとも一方に固定され、長尺物を案内する案内面を有する壁部と、前記両本体部の間で前記壁部の案内面と垂直な方向に前記案内面から離れて位置する回動軸線の回りに回動可能に支持され、先端が前記壁部の案内面と係合可能な係合部と、前記係合部の先端が前記壁部の案内面に係合するように弾性力により所定の回動方向に前記係合部を付勢する弾性付勢部と、を備え、前記係合部の回動軸線を通り前記壁部の案内面に垂直な線が前記案内面または前記案内面から延びる延長平面と交わる交点から離れた係合位置で、前記係合部の先端が前記壁部の案内面と係合し、前記係合部の先端部分が、前記係合位置から前記交点に向かう方向において、前記係合位置より上流側に位置する前記壁部の案内面と鋭角をなす方向に延びて形成される構成である。
【0008】
本発明態様では、前記壁部の案内面により案内される長尺物は、犬のリード紐に限定されない。荷物などを縛る紐などの長尺物でも、本発明の長尺物保持用クリップに連結された物を吊り下げる紐などの長尺物あっても良い。
【0009】
本発明態様では、前記係合部および前記弾性付勢部が、前記壁部の案内面の片側の領域に設けられる構成でも、前記壁部の案内面の両側の領域に一対設けられる構成であっても良い。
【0010】
本発明態様では、前記係合部および前記弾性付勢部が、一体に形成される構成でも、各部が別個独立の部材により形成される構成であっても良い。
【0011】
本発明態様では、前記壁部の案内面が、前記係合位置から前記交点に向かう方向において、前記交点よりも下流側の位置まで延びて形成される構成でも、前記交点よりも上流側の位置まで形成されて前記交点より下流側には形成されていない構成であっても良い。
【0012】
本発明態様では、前記係合部の先端が前記壁部の案内面との間で前記弾性付勢部の弾性力により長尺物を挟持している状態において、前記係合部の先端部分が、前記係合位置から前記交点に向かう方向において、前記係合位置より上流側に位置する前記壁部の案内面と鋭角をなす方向に延びて配置される構成であることが好ましい。しかし、本発明態様は、この好ましい構成以外の構成であっても良い。たとえば、前記係合部の先端が前記壁部の案内面との間で前記弾性付勢部の弾性力により長尺物を挟持している状態において、前記係合部の先端部分が、前記係合位置より上流側に位置する前記壁部の案内面とほぼ直角をなす方向に延びて配置される構成であっても良い。この構成においては、挟持されている長尺物が前記係合位置から前記交点に向かう方向に引っ張られたときに、前記係合部自体が弾性変形し、その係合部の先端部分が前記係合位置より上流側に位置する前記壁部の案内面と鋭角をなす状態に変化する構成であっても良い。
【0013】
本発明態様では、前記係合部の先端部分は、前記壁部の案内面と係合可能な先端を含み、前記係合位置より上流側に位置する前記壁部の案内面と鋭角をなす方向に、前記弾性付勢部の弾性力による押圧力が前記先端から前記壁部の案内面に付与されるように、その案内面と鋭角をなす方向に延びる形状であれば、いかなる形状であっても良い。たとえば、前記係合部の先端部分の形状は、上下の側端面がほぼ平行で棒状に延びる形状、上下の側端面が僅かに湾曲する形状、または上下の側端面がテーパ状に傾斜する形状であっても良い。前記係合部の先端部分の延びる方向は、上下の側端面がほぼ平行な形状である場合、上下の側端面が延びる方向であり、上下の側端面が湾曲する形状またはテーパ状の形状など平行でない形状である場合、先端部分の先端に近い部分の各横断面の重心を結ぶ線が延びる方向である。
【0014】
請求項2に記載の具体的態様は、前記壁部が、両側面に長尺物を案内する案内面を有し、前記係合部および前記弾性付勢部が、前記両本体部の間で前記壁部の両側の領域に一対設けられる構成である。
【0015】
本具体的態様では、前記係合部および前記弾性付勢部が、前記壁部に関して、左右対称の配置関係で一対設けられる構成が好ましい。しかし、本具体的態様では、前記係合部および前記弾性付勢部が、前記壁部に関して、左右非対称の配置関係であっても良い。
【0016】
請求項3に記載の具体的態様は、前記係合部の先端が前記壁部の案内面との間で前記弾性付勢部の弾性力により長尺物を挟持している状態において、前記係合部の先端部分が、前記係合位置から前記交点に向かう方向において、前記係合位置より上流側に位置する前記壁部の案内面と鋭角をなす方向に延びて配置される構成である。
【0017】
請求項4に記載の具体的態様は、前記弾性付勢部の弾性力に抗して前記係合部の先端を前記壁部の案内面から離間させるために操作可能であり、前記係合部に固定された操作部を備え、使用者が接触可能な前記操作部の一部が、前記両本体部の外周縁から外方に延びることを特徴とする構成である。
【0018】
本具体的態様では、操作部以外の他の部材が、両本体部の間の空間内に配置される構成が好ましい。しかし、本具体的態様では、操作部以外の他の部材が、前記両本体部の外周縁から外方に延びる構成であっても良い。
【0019】
請求項5に記載の具体的態様は、前記壁部の案内面が、前記係合位置から前記交点に向かう方向において、前記係合位置より上流側の第1の位置から、前記係合位置より下流側であって前記交点より上流側の第2の位置までの間に形成される構成である。
【0020】
請求項6に記載の具体的態様は、前記壁部が、前記第2の位置の近傍に、前記案内面から突出する突出部分を有し、前記突出部分が、前記係合部の先端と当接可能に構成される。
【0021】
請求項7に記載の具体的態様は、前記係合部が、前記鋭角をなす方向に延びる先端部分と前記回動軸線の回りに回動可能に支持される支持部分との間に、その先端部分の肉厚よりも薄い肉厚を有する部分を含む構成である。
【0022】
請求項8に記載の具体的態様は、前記係合部および前記弾性付勢部が、前記回動軸線の配置位置から互いに異なる方向に延びて一体に形成され、前記回動軸線の配置位置から延びる前記弾性付勢部の一部が、前記両本体部の少なくとも一方に固定された係止部に係止される構成である。
【0023】
請求項9に記載の具体的態様は、前記弾性付勢部が、一端において前記係合部に連結され、他端において長尺物と係合可能な爪部分を有し、前記弾性付勢部の一端と他端との間の中間部分が、前記両本体部の少なくとも一方に固定された係止部に係止される構成である。
【0024】
請求項8および請求項9に記載の具体的態様では、係止部は、弾性付勢部の一部分を一定の位置に固定する構成に限定されず、弾性付勢部の一部分の回動または直線運動を規制して弾性付勢部がその弾性により自然状態に戻ろうとする動きを制限する構成であっても良い。
【0025】
請求項10に記載の具体的態様は、前記両本体部の間であって、前記壁部の案内面またはその案内面から延びる延長平面の位置と前記回動軸線の配置位置との間に、長尺物が挿通される挿通領域を備え、前記係止部が、長尺物を前記挿通領域に案内する案内面を有する構成である。
【発明の効果】
【0026】
請求項1に記載の発明態様では、係合部の先端部分が、係合位置から交点に向かう方向において、係合位置より上流側に位置する壁部の案内面と鋭角をなす。係合部の先端と案内面との間で長尺物が挟持されている状態で、その長尺物が係合位置から交点に向かう方向に引っ張られたとき、係合部の先端は、長尺物との間の摩擦力により、係合部の先端と案内面との間隔が狭くなるように長尺物と共に僅かに移動し、長尺物を案内面に押し付ける力が大きくなる。押し付ける力が大きくなることにより、係合位置から交点に向かう方向に長尺物が引き出されることはなく、予め調整された長尺物の長さが保持される。一方、長尺物が係合位置から交点に向かう方向と反対の方向に引っ張られたとき、係合部の先端は、長尺物との間の摩擦力により、係合部の先端と案内面との間隔が広くなるように長尺物と共に僅かに移動し、長尺物を案内面に押し付ける力は小さくなる。押し付ける力が小さくなることにより、使用者は、係合位置から交点に向かう方向と反対の方向に長尺物を抵抗なく引き出すことができ、予め調整された長尺物の長さを容易に変えることができる。
【0027】
請求項2に記載の具体的態様では、係合部および弾性付勢部が、両本体部の間で壁部の両側の領域に一対設けられる。1つの長尺物保持用クリップにより、使用者は、壁部の両側の案内面により案内される2つの長尺物を、予め調整された長さに確実に保持することができると共に、その予め調整された長さを容易に変えることができる。
【0028】
請求項3に記載の具体的態様では、係合部の先端が壁部の案内面との間で弾性付勢部の弾性力により長尺物を挟持している状態において、係合部の先端部分が、係合位置から交点に向かう方向において、係合位置より上流側に位置する壁部の案内面と鋭角をなす。長尺物が係合位置から交点に向かう方向に引っ張られたとき、係合部の先端が、係合部の先端と案内面との間隔が狭くなるように長尺物と共に確実に移動することが可能となる。この結果、係合部の先端が長尺物を大きな力で案内面に押し付け、係合位置から交点に向かう方向に長尺物が引き出されることを確実に防止することができる。
【0029】
請求項4に記載の具体的態様では、係合部の先端を壁部の案内面から離間させるために操作可能な操作部が、係合部に固定されて設けられ、使用者が接触可能な操作部の一部が、両本体部の外周縁から外方に延びる。この結果、使用者は、操作部を操作することにより、係合部の先端を壁部の案内面から離間させ、係合位置から交点に向かう方向に長尺物を自由に引き出すことができ、長尺物の引き出し長さを簡易に調整することができる。
【0030】
請求項5に記載の具体的態様では、壁部の案内面が、係合位置から交点に向かう方向において、係合位置より上流側の第1の位置から、係合位置より下流側であって交点より上流側の第2の位置までの間に形成される。この結果、壁部は、長尺物を案内するとともに係合部の先端と協働して長尺物を挟持するために必要最小限の範囲に設けられ、両本体部内の小さな空間に他の部材を効率良く配置することが可能となる。また、壁部は、第2の位置より下流側には設けられていないことから、使用者は、第2の位置の下流側から長尺物を挿入する際に、壁部に妨げられることなく長尺物を容易に両本体部の間に挿入することができる。
【0031】
請求項6に記載の具体的態様では、壁部が、前記第2の位置の近傍に、壁部の案内面から突出する突出部分を有し、突出部分が、前記係り合う部の先端と当接可能に構成される。長尺物が係合部の先端と壁部の案内面との間に挿通されていない状態において、係合部の先端は弾性付勢部の弾性力により回動軸線の回りに回動する。係合部の先端が突出部分に当接することにより、その係合部の先端の回動位置を予め決められた位置に規制することが可能となる。
【0032】
請求項7に記載の具体的態様では、係合部が、前記鋭角をなす方向に延びる先端部分と回動軸線の回りに回動可能に支持される支持部分との間に、その先端部分の肉厚よりも薄い肉厚を有する部分を含む。この結果、長尺物が係合位置から交点に向かう方向に引っ張られたとき、係合部の薄肉部分が弾性変形し、係合部の先端が、係合部の先端と案内面との間隔が狭くなるように長尺物と共に確実に移動することが可能となる。これにより、係合部の先端が長尺物を大きな力で案内面に押し付け、係合位置から交点に向かう方向に長尺物が引き出されることを確実に防止することができる。
【0033】
請求項8に記載の具体的態様では、係合部および弾性付勢部が、回動軸線の配置位置から互いに異なる方向に延びて一体に形成され、弾性付勢部の一部が、両本体部の少なくとも一方に固定された係止部に係止される。この結果、係合部および弾性付勢部が、小型に形成され、両本体部の間の小さな空間内に配置されることが可能となる。
【0034】
請求項9に記載の具体的態様では、弾性付勢部が、一端において係合部に連結され、他端において長尺物と係合可能な爪部分を有し、弾性付勢部の中間部分が係止部に係止される。この結果、弾性付勢部は、所定の回動方向に係合部を付勢するとともに、自身の弾性力により爪部分を長尺物に係止させることができ、この係止により長尺物が不用意に引き出されることを防止することができる。
【0035】
請求項10に記載の具体的態様では、係止部の案内面が、壁部の案内面またはその案内面から延びる延長平面の位置と回動軸線の配置位置との間に設けられた挿通領域に、長尺物を案内する。この結果、挿通領域が両本体部の間の小さな空間内に確保され、使用者は、係止部の案内面に沿って長尺物を挿通領域に容易に挿通することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係るリード紐保持用クリップを使用した胴輪付きリードを犬に装着した状態を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係るリード紐保持用クリップを使用した胴輪付きリードを犬から外した状態を示す斜視図である。
【図3A】本実施形態に係るリード紐保持用クリップ20を上方から見た平面図である。
【図3B】本実施形態における本体フレーム30の一部を破断した状態でリード紐保持用クリップ20を前方から見た正面図である。
【図3C】本実施形態に係るリード紐保持用クリップ20を下方から見た底面図である。
【図3D】本実施形態に係るリード紐保持用クリップ20を左側方から見た左側面図である。
【図4A】本実施形態に係るリード紐保持用クリップ20の本体フレーム30を上方から見た平面図である。
【図4B】本実施形態における本体フレーム30を前方から見た正面図である。
【図4C】本実施形態における本体フレーム30を下方から見た底面図である。
【図4D】本実施形態における本体フレーム30を左側方から見た左側面図である。
【図5】本実施形態に係るリード紐保持用クリップ20の保持フレーム体50を前方から見た拡大正面図である。
【図6】本実施形態に係るリード紐保持用クリップ20にリード紐を挿通しないときに、両係合部53、73の先端53C、73Cが両案内面37A、37Bに係合している状態を示すリード紐保持用クリップ20の断面図である。
【図7】図6に示すリード紐を挿通しない状態で、両係合部53、73の先端53C、73Cが両案内面37A、37Bから離間した状態を示すリード紐保持用クリップ20の断面図である。
【図8】本実施形態に係るリード紐保持用クリップ20にリード紐5A、5Bを挿通したときに、両係合部53、73の先端53C、73Cと両案内面37A、37Bとの間にリード紐5A、5Bが挟持されている状態を示すリード紐保持用クリップ20の断面図である。
【図9】図8に示すリード紐5A、5Bを挿通した状態で、リード紐5A、5Bが左右方向に引っ張られた状態を示すリード紐保持用クリップ20の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
<実施形態>
以下に、本発明の一実施形態に係るリード紐保持用クリップ20を使用した胴輪付きリード1について、図面を参照して説明する。
【0038】
[胴輪付きリード1の概略構成]
胴輪付きリード1の概略構成について、図1および図2を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るリード紐保持用クリップ20を使用した胴輪付きリード1を犬に装着した状態を示す斜視図である。図2は、胴輪付きリード1を犬から外した状態を示す斜視図である。胴輪付きリード1は、主要布3と、リード紐5と、補助紐7A、7Bと、リード紐保持用クリップ20とから構成される。主要布3は、図2に示すように、犬の首下前部を覆う前部布3Aと、犬の胸部を覆う後部布3Bと、犬の両前足の間を覆う下部布3Cとから構成される。リード紐5は、前部布3Aの左右両端部分にそれぞれ縫い付けられた短いリード紐5Aおよび長いリード紐5Bと、長いリード紐5Bに連続するリード紐5Cとから構成される。短いリード紐5Aおよび長いリード紐5Bは、リード紐保持用クリップ20に挿通された後に、紐縫合部9において互いに縫い合わされる。
【0039】
補助紐7A、7Bの一端は、後部布3Bの左右両端部分に縫い付けられる。補助紐7A、7Bの他端は、紐縫付部11A、11Bにおいてリード紐5A、5Bにそれぞれ縫い付けられる。犬の左右の前足は、図2に二点鎖線で示す左右の領域13A、13Bに通される。
【0040】
使用者は、紐縫合部9と紐縫付部11A、11Bとの間でリード紐保持用クリップ20の位置を変えることができる。このリード紐保持用クリップ20の位置を変えることにより、使用者は、クリップ20から前部布3Aに向かって延びるリード紐5A、5Bの長さを犬の大きさに応じて調整することができ、また、胴輪付きリード1を犬に装着したり外したりすることができる。
【0041】
[リード紐保持用クリップ20の構成]
本実施形態に係るリード紐保持用クリップ20の構成について、図3A乃至図3Dを参照して説明する。リード紐保持用クリップ20は、本体フレーム30と、一対の保持レバー体50、70とを有する。図3A乃至図3Dは、リード紐5A、5Bが挿通されていない状態において、本体フレーム30の左右両側の領域に一対の保持レバー体50、70が組み付けられたリード紐保持用クリップ20をそれぞれ示す。本実施形態における上下方向、左右方向および前後方向は、図3A乃至図3Dに矢印で示す方向とし、他の図面においても同様である。図3Aはリード紐保持用クリップ20を上方から見た平面図であり、図3Bは本体フレーム30の一部を破断した状態でリード紐保持用クリップ20を前方から見た正面図であり、図3Cはリード紐保持用クリップ20を下方から見た底面図であり、図3Dはリード紐保持用クリップ20を左側方から見た左側面図である。
【0042】
本体フレーム30は、前後方向に対向する一対の本体部31、32を有する。貫通孔33、34が、本体部31の左右両側にそれぞれ形成され、同様に、貫通孔35、36が、貫通孔33、34と上下方向において一致する位置に、本体部32の左右両側にそれぞれ形成される。回動突部51、52が、保持レバー体50の前後両面にそれぞれ形成され、同様に、回動突部71、72が、保持レバー体70の前後両面にそれぞれ形成される。回動突部51、52が、貫通孔33、35に嵌合可能であり、回動突部71、72が、貫通孔34、36に嵌合可能である。回動突部51、52が貫通孔33、35に嵌合することにより、保持レバー体50は、本体フレーム30に対して回動可能となる。また、回動突部71、72が貫通孔34、36に嵌合することにより、保持レバー体70は、本体フレーム30に対して回動可能となる。
【0043】
(本体フレーム30の詳細な構成)
本体フレーム30の詳細な構成について、図4A乃至図4Dを参照して説明する。図4A乃至図4Dは、本体フレーム3単体をそれぞれ示しており、図4Aは本体フレーム30を上方から見た平面図であり、図4Bは本体レーム30を前方から見た正面図であり、図4Cは本体フレーム30を下方から見た底面図であり、図4Dは本体フレーム30を左側方から見た左側面図である。本体フレーム30は、合成樹脂により一体成形される。本体フレーム30は、一対の本体部31、32と、壁部37と、一対の係止部38、39とを有する。両本体部31、32は、略楕円形状で板状に形成され、互いに対向して配置される。両本体部31、32の前後方向の間隔は、リード紐部5A、5Bの幅より僅かに広い間隔である。本体部31は、左右両側端の後面に、僅かに前方に傾斜する一対の傾斜面31A、31Bを有する。本体部32は、左右両側端の前面に、僅かに後方に傾斜する一対の傾斜面32A、32Bを有する。
【0044】
壁部37は、両本体部31、32の間に固定され、その両本体部の左右方向における中央位置に配置される。壁部37は、両本体部31、32の上方端から、貫通孔33、34の形成位置を結ぶ水平線より僅かに上方の所定位置まで延びる。壁部37は、左右両側に、上下方向に延びる一対の案内面37A、37Bを有するとともに、下端に、両案内面37A、37Bから突出する突出部分37Cを有する。
【0045】
一対の係止部38、39は、両本体部31、32の間に固定され、貫通孔33、34の形成位置を結ぶ水平線より下方であって、両本体部31、32の下方端から上方に離れた所定位置に配置される。両係止部38、39は、壁部37を基準に左右対称な位置に配置される。係止部38は、左側に、上下方向に延びる係止面38Aを有するとともに、右側に、下方に向かって左方に傾斜する案内面38Bを有する。係止部39は、右側に、上下方向に延びる係止面39Aを有するとともに、左側に、下方に向かって右方に傾斜する案内面39Bを有する。
【0046】
本実施形態の両本体部31、32は、本発明の一対の本体部の一例である。本実施形態の壁部37、両案内面37A、37B、および突出部分37Cは、本発明の壁部、長尺物を案内する案内面、および突出部分の一例である。本実施形態の両係止部38、39、および案内面38B、39Bは、本発明の係止部、および長尺物を案内する案内面の一例である。
【0047】
(保持レバー体50、70の詳細な構成)
一対の保持レバー体50、70の詳細な構成について、図3A乃至図3D、図5および図6を参照して説明する。両保持レバー体50、70の各々は、合成樹脂により一体成形される。図3Bに示すように、保持レバー体50は、係合部53と、弾性付勢部54と、操作部55とを有する。同様に、保持レバー体70は、係合部73と、弾性付勢部74と、操作部75とを有する。両保持レバー体50、70は同一の構造を有するので、主に保持レバー体50を例にしてその構造を説明する。
【0048】
(係合部53の構成)
図5は、本体フレーム30から取り外され、自然状態にある保持レバー体50を前方から見た正面図である。係合部53は、支持部分53Aと、先端部分53Bとを備える。先端部分53Bは、支持部分53Aの上部から右方に屈曲して延出する。先端部分53Bの先端53Cは、壁部37の案内面37Aと係合可能であり、鋭角をなす形状に形成される。連結部分53Dは、支持部分53Aと先端部分53Bとを連結する。図5に示すように、連結部分53Dの肉厚W1は、先端部分53Bの延出する方向と直交する方向の肉厚W2よりも薄く形成される。この薄肉の連結部分53Dの弾性変形により、先端部分53Bは、支持部分53Aに対して上下方向に変位することが可能となる。
【0049】
図3Cおよび図5に示すように、回動突部51、52は、支持部分53Aの前面および後面から突出してそれぞれ形成される。図3Cに示すように、回動突部51の突出端面は、右方に向かって後方に僅かに傾斜して形成され、回動突部52の突出端面は、右方に向かって前方に僅かに傾斜して形成される。一方、図3Dに示すように、回動突部51、52の突出端面は、上下方向において、同じ突出高さとなるように形成される。保持レバー体50が両本体部31、32の間に組み付けられる際に、回動突部51、52の傾斜した突出端面は両本体部31、32の傾斜面31A、32Aと接触し、両本体部31、32が互いに離れる方向に僅かに弾性変形することにより、回動突部51、52は貫通孔33、35に嵌合する。また、保持レバー体70の回動突部71、72の突出端面の形状も、図3Cに示すように、回動突部51、52の突出端面の形状と同様に形成される。この傾斜した突出端面の形状により、両保持レバー体50、70は、弾性変形を利用して本体フレーム30に組み付けることが容易にできる。一方、傾斜した回動突部の最も高い部分が、両本体部の外周端部に近接した貫通孔の内面に係合する。たとえば、図3Cに示すように、回動突部51、52の傾斜した突出端面の最も高い左方部分が、貫通孔33、35の左方内面に係合し、保持レバー体50は、両本体部31、32から外れる左方向に力が加えられても、容易に外されることがない。このため、一旦組み付けられた両保持レバー体50、70は、その組み付け状態を確実に維持することができる。
【0050】
保持レバー体70も、保持レバー体50と同様に、図6に示すように、係合部73、その係合部73の支持部分73A、先端部分73B、先端73C、および連結部分73Dを有する。本実施形態の係合部53、73、支持部分53A73A、先端部分53B、73Bおよび先端53C、73Cは、本発明の係合部、支持部分、先端部分、および係合部の先端の一例である。本実施形態の連結部分53D、73Dは、本発明の薄い肉厚を有する部分の一例である。
【0051】
(弾性付勢部54の構成)
弾性付勢部54は、係合部53の支持部分53Aの右側部から下方に延出する。弾性付勢部54は、湾曲部分54Aと、直線部分54Bと、爪部分54Cとを備える。湾曲部分54Aは、係合部53の支持部分53Aに連結し、弾性変形可能に形成される。直線部分54Bは、湾曲部分54Aの終端から斜め下方に直線状に延出し、係止部38の係止面38Aと係合可能に形成される。爪部分54Cは、直線部分54Bの先端部に形成され、鋭角をなす形状の先端54Dを有する。爪部分54Cの先端54Dは、リード紐保持用クリップ20に挿通されたリード紐部と係合可能に形成される。図3Bに示すように、保持レバー体50が本体フレーム30に組み付けられたとき、湾曲部分54Aは弾性変形し、直線部分54Bが係止部38の係止面38Aと係合する。保持レバー体50は、湾曲部分54Aの弾性力により、回動突部51、52を中心に反時計回り方向に常時付勢される。同一の構造を有する保持レバー体70が組み付けられたときも、湾曲部分が弾性変形し、直線部分が係止部39の係止面39Aと係合する。保持レバー体70は、湾曲部分の弾性力により、回動突部71、72を中心に時計回り方向に常時付勢される。
【0052】
保持レバー体70も、保持レバー体50と同様に、図6に示すように、弾性付勢部74、その弾性付勢部74の湾曲部分74A、直線部分74B、爪部分74C、および先端74Dを有する。本実施形態の弾性付勢部54、74、および爪部分54C、74Cは、本発明の弾性付勢部、および爪部分の一例である。本実施形態の直線部分54B、74Bは、本発明の弾性付勢部の一端と他端との間の中間部分の一例である。
【0053】
(操作部55の構成)
操作部55は、係合部53の支持部分53Aの左側部から下方に延出する。操作部55が支持部分53Aから延出する方向と直交する方向の肉厚W4は、係合部53および弾性付勢部54が延出する方向と直交する方向の肉厚W2、W3に比べ、充分に大きく設定される。厚い肉厚の操作部55は、使用者の手指により押圧されたときでも、弾性変形することがない。図3Bに示すように、操作部55の大部分が、両本体部31、32の外周縁から外方に延出する。図3Cおよび図5に示すように、凹部55A、55Bが、操作部55の前面および後面に設けられ、合成樹脂により成形される際に、厚い肉厚の操作部55に縮みが生ずるのを防いでいる。同一の構造を有する保持レバー体70の操作部75の大部分も、図3Bに示すように、両本体部31、32の外周縁から右下方に延出する。使用者は、親指と人差し指とにより、湾曲部分の弾性力に抗して、操作部55、75の外方に延出する部分を同時に押圧することができる。
【0054】
保持レバー体70も、保持レバー体50と同様に、図3Cおよび図6に示すように、操作部75、および凹部75A、75Bを有する。本実施形態の操作部55、75は、本発明の操作部の一例である。
【0055】
[リード紐保持用クリップ20の組み立て方法およびその使用方法]
本実施形態に係るリード紐保持用クリップ20の組み立て方法およびその使用方法について、図6乃至図9を参照して説明する。図6乃至図9は、リード紐保持用クリップ20の前面側の本体部31を取り除いて、そのクリップ20の内部構成を示す。
【0056】
(リード紐保持用クリップ20の組み立て方法)
本実施形態に係るリード紐保持用クリップ20は、本体フレーム30と、一対の保持レバー体50、70との3つの部品から構成される。各部品は、合成樹脂により成形される。リード紐保持用クリップ20は、壁部37に関して左右対称な形状であり、両保持レバー体50、70は、全く同じ構造を有する。両保持レバー体50、70は、本体フレーム30の両本体部31、32が互いに離れる方向に弾性変形することにより、両本体部の間に押し込まれ、回動突部51、52が貫通孔33、35に嵌合するとともに、回動突部71、72が貫通孔34、36に嵌合する。この嵌合により、両保持レバー体50、70は、本体フレーム30に組み付けられる。両保持レバー50、70を両本体部31、32の間に押し込む工程は、組み立て作業者または組み立て機械により、行われる。
【0057】
(リード紐保持用クリップ20の使用方法)
本実施形態に係るリード紐保持用クリップ20の使用方法に関して、クリップ20にリード紐5A、5Bを挿通するための操作と、そのリード紐5A、5Bの長さを調整するための操作とに分けて説明する。
【0058】
(リード紐5A、5Bを挿通するための操作)
本実施形態に係るリード紐保持用クリップ20を胴輪付きリード1に使用するためには、図2に示すように、前部布3Aの左右両端部分にそれぞれ縫い付けられたリード紐5A、5Bがクリップ20に挿通され、その後に、短いリード紐5Aが長いリード紐5Bに縫い付けられる必要がある。
【0059】
図6は、リード紐5A、5Bが挿通される前のリード紐保持用クリップ20の内部構成であって、両係合部53、73の先端53C、73Cが両案内面37A、37Bに係合している状態を示す。両保持レバー体50、70は、弾性付勢部54、74の弾性力により、時計回り方向および反時計回り方向にそれぞれ付勢される。この弾性力の付勢により、図6に示すように、係合部53の先端53Cが係合位置EP1で壁部37の案内面37Aに係合し、係合部73の先端73Cが係合位置EP2で壁部37の案内面37Bに係合する。壁部37の両案内面37A、37Bから下方に延びる延長平面ES1、ES2は、両保持レバー体50、70の回動軸線RP1、RP2を通り両案内面37A、37Bに垂直な線と、交点CP1、CP2においてそれぞれ交わる。係合位置EP1、EP2は、交点CP1、CP2より上方に位置する。すなわち、係合位置EP1、EP2は、上下方向において、交点CP1、CP2よりも、両保持レバー体50、70の回動軸線RP1、RP2の位置から離れた位置にある。
【0060】
本実施形態では、図6に示すように、係合部53の先端部分53Bの上側端面53B1と下側端面53B2とは、ほぼ平行に延びて形成される。係合部53の先端53Cは、先端部分53Bの上側端面53B1の延びる先端に位置する。同様に、係合部73の先端部分73Bの上側端面73B1と下側端面73B2とは、ほぼ平行に延びて形成される。係合部73の先端73Cは、先端部分73Bの上側端面73B1の延びる先端に位置する。係合部53、73の先端部分53B、73Bの形状が、その上下の側端面がほぼ平行な棒状の形状であることから、その先端部分53B、73Bの延びる方向は、上側端面53B1、73B1の延びる方向である。保持レバー体50の係合部53の先端53Cが壁部37の案内面37Aと係合しているときに、係合部53の先端部分53Bの延びる方向は、係合位置EP1から交点CP1に向かう方向、すなわち下向きの方向において、係合位置EP1から上流側に位置する案内面37Aに対して角度θ1をなす方向である。また、保持レバー体70の係合部73の先端73Cが壁部37の案内面37Bと係合しているときに、係合部73の先端部分73Bの延びる方向は、係合位置EP2から交点CP2に向かう方向、すなわち下向きの方向において、係合位置EP2から上流側に位置する案内面37Bに対して角度θ1をなす方向である。本実施形態では、角度θ1は、75度の鋭角に設定される。
【0061】
両係合部53B、73Bが両案内面37A、37Bと係合する係合位置EP1、EP2は、通常、壁部37の突出部分37Cより上方にある。しかし、両保持レバー体50、70が、過剰な力により、時計回り方向および反時計回り方向に回動されたとき、両係合部53、73の先端53C、73Cは突出部分37Cに当接する。この当接により、両保持レバー体50、70の回動位置が規制され、両係合部53B、73Bの先端53C、73Cは、過剰な回動力が加わった場合でも、両案内面37A、37Bとの係合状態を維持することができる。
【0062】
図7は、リード紐5A、5Bが挿通される前のリード紐保持用クリップ20の内部構成であって、両係合部53、73の先端53C、73Cが両案内面37A、37Bから離間した状態を示す。使用者は、片手の親指と人差し指とにより、両保持レバー体50、70の操作部55、75を矢印方向AP1、AP2に押圧する。この押圧により、両保持レバー体50、70は、両弾性付勢部54、74の弾性力に抗して、図6に示す状態から反時計回り方向および時計回り方向にそれぞれ回動し、両係合部53、73の先端53C、73Cが両案内面37A、37Bから離間した状態になる。係合部53の先端53Cと案内面37Aとの間の領域が、リード紐が挿通される挿通領域RG1となり、係合部73の先端73Cと案内面37Bとの間の領域が、リード紐が挿通される挿通領域RG2となる。挿通領域RG1は、係合部53の回動軸線RP1の配置位置と案内面37Aの延長平面ES1の位置との間に存在し、挿通領域RG2は、係合部73の回動軸線RP2の配置位置と案内面37Bの延長平面ES2の位置との間に存在する。
【0063】
本実施形態では、壁部37が、両本体部31、32の上方端から、係合位置EP1、EP2より下方であって交点CP1、CP2より上方の所定位置まで設けられる。図7に二点鎖線で示す領域RG3が、両本体部31、32の間であって壁部37の突出部分37Cより下方に存在する。この領域RG3は、壁部が両本体部の上方端から下方端まで存在する構成に比べ、本実施形態の壁部37が交点CP1、CP2の上方の所定位置までしか存在しない構成であることから、比較的広い領域となる。このため、使用者がリード紐を本体フレーム30の下方から挿入する場合に、本体フレーム30の内部でリード紐を引っ掛けることなく、挿通領域RG1、RG2に通すことができる。また、両係止部38、39の案内面38B、39Bは、領域RG3に挿入されるリード紐の先端部分を挿通領域RG1、RG2に向けて案内することができる。本実施形態における両本体部31、32の上方端の位置が、本発明の係合位置より上流側の第1の位置の一例であり、交点CP1、CP2の上方の所定位置が、本発明の交点より上流側の第2の位置の一例である。
【0064】
図8は、リード紐5A、5Bが挿通された後のリード紐保持用クリップ20の内部構成であって、両係合部53、73の先端53C、73Cと両案内面37A、37Bとの間にリード紐5A、5Bが挟持されている状態を示す。図7に示すように、両係合部53、73の先端53C、73Cが両案内面37A、37Bから離間した状態において、使用者は、本体フレーム30の下方から、リード紐5A、5Bを挿入し、本体フレーム30の上方から引き出す。その後、使用者は、両保持レバー体50、70の操作部55、75の押圧を解除する。この押圧の解除により、両保持レバー体50、70は、弾性付勢部54、74の弾性力により、時計回り方向および反時計回り方向にそれぞれ回動し、両係合部53、73の先端53C、73Cが、リード紐5A、5Bを両案内面37A、37Bに押し付ける。
【0065】
保持レバー体50の係合部53の先端53Cがリード紐5Aを案内面37Aに押し付けているときに、係合部53の先端部分53Bの延びる方向は、係合位置EP1から交点CP1に向かう方向、すなわち下向きの方向において、係合位置EP1から上流側に位置する案内面37Aに対して角度θ2をなす方向である。また、保持レバー体70の係合部73の先端73Cがリード紐5Bを案内面37Bに押し付けているときに、係合部73の先端部分73Bの延びる方向は、係合位置EP2から交点CP2に向かう方向、すなわち下向きの方向において、係合位置EP2から上流側に位置する案内面37Bに対して角度θ2をなす方向である。角度θ2は、リード紐の太さに応じて変化するが、本実施形態に係るリード紐保持用クリップ20に挿通可能なリード紐の中で比較的太いリード紐を挿通した場合において、角度θ2は、85度の鋭角に設定される。
【0066】
前述したように、リード紐5A、5Bは、本体フレーム30の上方から引き出され、その後に、互いに縫い合わされて固定される。これにより、本実施形態に係るリード紐保持用クリップ20を備えた胴輪付きリード1が、図2に示すように完成する。
【0067】
(リード紐5A、5Bの長さを調整するための操作)
使用者は、胴輪付きリード1を犬に装着する際には、図2に示すように紐縫合部9の近くまでリード紐保持用クリップ20を移動させ、リード紐5A、5Bの長さを比較的長く設定する必要がある。リード紐5A、5Bの長さを長く設定するために、使用者は、図7に示すように、片手の親指と人差し指とにより、両保持レバー体50、70の操作部55、75を矢印方向AP1、AP2に押圧する。この押圧により、両保持レバー体50、70は、両弾性付勢部54、74の弾性力に抗して、反時計回り方向および時計回り方向にそれぞれ回動し、両係合部53、73の先端53C、73Cが、両案内面37A、37B上のリード紐5A、5Bから離間した状態になる。この離間状態において、使用者は、紐縫合部9の近くまでリード紐保持用クリップ20を容易に移動させることができる。
【0068】
胴輪付きリード1を犬に装着した後に、使用者は、犬の大きさに応じた適切な長さに、リード紐5A、5Bの長さを調整する必要がある。使用者は、図8に示すように両係合部53、73の先端53C、73Cと両案内面37A、37Bとの間にリード紐5A、5Bが挟持されている状態のままで、図2に示す紐縫付部11A、11Bに向かってリード紐保持用クリップ20を移動させる。この場合、係合部53の先端53Cは、リード紐5Aとの摩擦力により、図8において上向きの力を受け、保持レバー体50は、反時計回り方向に回転しようとする。また、係合部73の先端73Cは、リード紐5Bとの摩擦力により、図8において上向きの力を受け、保持レバー体70は、時計回り方向に回転しようとする。この結果、両係合部53、73の先端53C、73Cは、両案内面37A、37Bから僅かに離れる方向に変位し、リード紐5A、5Bを両案内面37A、37Bに押し付ける力が小さくなる。この押し付ける力が小さくなることにより、使用者は、小さな力で紐縫付部11A、11Bに向かってリード紐保持用クリップ20を簡単に移動させることができる。
【0069】
使用者が、犬の大きさに応じた適切な長さにリード紐5A、5Bの長さを調整した場合、リード紐5A、5Bは、図1に示すように犬の首部分に強く装着される。図9は、リード紐5A、5Bが挿通された後のリード紐保持用クリップ20の内部構成であって、胴輪付きリード1が犬に装着されたときに、リード紐5A、5Bが左右方向に強く引っ張られた状態を示す。
【0070】
図9に示すように、リード紐5A、5Bが左右方向に強く引っ張られた状態において、係合部53の先端53Cは、リード紐5Aとの摩擦力により、図9において下向きの力を受け、保持レバー体50は、時計回り方向に回転しようとする。また、係合部73の先端73Cは、リード紐5Bとの摩擦力により、図9において下向きの力を受け、保持レバー体70は、反時計回り方向に回転しようとする。この結果、両係合部53、73の先端53C、73Cは、両案内面37A、37Bに向かって僅かに近づく方向に変位し、リード紐5A、5Bを両案内面37A、37Bに押し付ける力が大きくなる。この押し付ける力が大きくなることにより、リード紐5A、5Bが、リード紐保持用クリップ20から、胴輪付きリード1が装着されている犬に向かって、すなわち図9における左下向きおよび右下向きに引き出されることを確実に防止することができる。
【0071】
リード紐5A、5Bが左右方向に強く引っ張られた状態において、リード紐5A、5Bは、両係止部38、39の案内面38B、39Bに沿って案内されるとともに、両弾性付勢部54、74の弾性力により両爪部分54C、74Cにそれぞれ係止される。この爪部分54C、74Cの係止により、リード紐5A、5Bが、図9における左下向きおよび右下向きに引き出されることを一層確実に防止することができる。両爪部分54C、74Cがリード紐5A、5Bを係止している状態において、係合部53、73の支持部分53A、73Aの下方部分が、弾性付勢部54、74の直線部分54B、74Bの上方部分と当接する。この当接により、弾性付勢部54、74の爪部分54C、74Cの回動位置が、図9に示す位置に規制される。
【0072】
<変形例>
本発明は、本実施形態に限定されることはなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。以下にその変形の一例を述べる。
【0073】
(1)本実施形態に係るリード紐保持用クリップ20は、リード紐5A、5Bが主要布3の前部布3Aに縫い付けられた胴輪付きリード1に使用された。この胴輪付きリード1に代えて、本実施形態に係るリード紐保持用クリップ20は、特開平9−262039号公報に記載された輪付き引き紐、および特開2002−330659号公報に記載された胴輪などの他のタイプのリードに使用されても良い。
【0074】
(2)本実施形態に係るリード紐保持用クリップ20では、壁部37の案内面37A、37Bおよび保持レバー体50、70が、左右両側に一対設けられる構成である。使用者は、両保持レバー体50、70を押圧操作することにより、一対のリード紐5A、5Bの長さを別個独立に調整することができる。この構成に代えて、壁部の案内面および保持レバー体が、片側のみに設けられ、2つのリード紐の一方が本体フレームに固定され、他のリード紐の長さのみが、保持レバー体の押圧操作により調整される構成であっても良い。
【0075】
(3)本実施形態に係るリード紐保持用クリップ20では、係合部53、弾性付勢部54、および操作部55が、保持レバー体50として合成樹脂により一体に成形された構成である。この構成に代えて、これらの3つの部分が別個の部材により構成されても良い。たとえば、弾性付勢部が、係合部の回動軸の回りに巻装されるつるまきバネ、または、回動可能な係合部と本体部に固定された係止部との間に設けられる板バネから構成されても良い。
【0076】
(4)本実施形態に係るリード紐保持用クリップ20では、壁部37が、図7に示すように両本体部31、32の上方端から、係合位置EP1、EP2より下方であって交点CP1、CP2より上方の所定位置まで設けられる構成である。この構成により、比較的広い領域RG3が、壁部37の突出部分37Cより下方に確保される。しかし、この構成に代えて、壁部が、両本体部の上方端から下方端まで長く延びる構成であっても良い。この場合、両本体部の下方端において爪部分と壁部の案内面との間のリード紐の挿通領域がやや大きく設けられることが必要となる。
【0077】
(5)本実施形態に係るリード紐保持用クリップ20では、係合部53、73の先端部分53B、73Bの上側端面53B1、73B1と下側端面53B2、73B2とがほぼ平行に延びる形状であり、先端53C、73Cが上側端面53B1、73B1の延びる先端に位置する構成である。この構成に代えて、先端部分の上側端面と下側端面とがほぼ平行に延びる形状であり、係合部の先端が下側端面の延びる先端に位置する構成であっても良い。この係合部の先端が下側端面の延びる先端に位置する構成である場合、図6および図8に示す係合部の先端部分の延びる方向と壁部の案内面とがなす角度θ1、θ2は、先端部分の下側端面の延びる方向と壁部の案内面とがなす角度に相当する。
【符号の説明】
【0078】
1 胴輪付きリード
5A、5B リード紐
20 リード紐保持用クリップ
30 本体フレーム
31、32 本体部
37 壁部
37A、37B 案内面
37C 突出部分
38、39 係止部
38A、39A 係止面
38B、39B 案内面
50、70 保持レバー体
53、73 係合部
53A、73A 支持部分
53B、73B 先端部分
53C、73C 係合部の先端
53D、73D 連結部分
54、74 弾性付勢部
54A、74A 湾曲部分
54B、74B 直線部分
54C、74C 爪部分
55、75 操作部
RP1、RP 回動軸線
ES1、ES2 延長平面
CP1、CP2 交点
EP1、EP2 係合位置
RG1、RG2 挿通領域
θ1、θ2 角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して配置された一対の本体部と、
前記両本体部の間で前記両本体部の少なくとも一方に固定され、長尺物を案内する案内面を有する壁部と、
前記両本体部の間で前記壁部の案内面と垂直な方向に前記案内面から離れて位置する回動軸線の回りに回動可能に支持され、先端が前記壁部の案内面と係合可能な係合部と、
前記係合部の先端が前記壁部の案内面に係合するように弾性力により所定の回動方向に前記係合部を付勢する弾性付勢部と、を備え、
前記係合部の回動軸線を通り前記壁部の案内面に垂直な線が前記案内面または前記案内面から延びる延長平面と交わる交点から離れた係合位置で、前記係合部の先端は前記壁部の案内面と係合し、
前記係合部の先端部分は、前記係合位置から前記交点に向かう方向において、前記係合位置より上流側に位置する前記壁部の案内面と鋭角をなす方向に延びて形成されることを特徴とする長尺物保持用クリップ。
【請求項2】
前記壁部は、両側面に長尺物を案内する案内面を有し、
前記係合部および前記弾性付勢部は、前記両本体部の間で前記壁部の両側の領域に一対設けられることを特徴とする請求項1に記載の長尺物保持用クリップ。
【請求項3】
前記係合部の先端が前記壁部の案内面との間で前記弾性付勢部の弾性力により長尺物を挟持している状態において、前記係合部の先端部分は、前記係合位置から前記交点に向かう方向において、前記係合位置より上流側に位置する前記壁部の案内面と鋭角をなす方向に延びて配置されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の長尺物保持用クリップ。
【請求項4】
前記弾性付勢部の弾性力に抗して前記係合部の先端を前記壁部の案内面から離間させるために操作可能であり、前記係合部に固定された操作部を備え、
使用者が接触可能な前記操作部の一部が、前記両本体部の外周縁から外方に延びることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の長尺物保持用クリップ。
【請求項5】
前記壁部の案内面は、前記係合位置から前記交点に向かう方向において、前記係合位置より上流側の第1の位置から、前記係合位置より下流側であって前記交点より上流側の第2の位置までの間に形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の長尺物保持用クリップ。
【請求項6】
前記壁部は、前記第2の位置の近傍に、前記案内面から突出する突出部分を有し、
前記突出部分は、前記係合部の先端と当接可能に構成されることを特徴とする請求項5に記載の長尺物保持用クリップ。
【請求項7】
前記係合部は、前記鋭角をなす方向に延びる先端部分と前記回動軸線の回りに回動可能に支持される支持部分との間に、その先端部分の肉厚よりも薄い肉厚を有する部分を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の長尺物保持用クリップ。
【請求項8】
前記係合部および前記弾性付勢部は、前記回動軸線の配置位置から互いに異なる方向に延びて一体に形成され、
前記回動軸線の配置位置から延びる前記弾性付勢部の一部は、前記両本体部の少なくとも一方に固定された係止部に係止されることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の長尺物保持用クリップ。
【請求項9】
前記弾性付勢部は、一端において前記係合部に連結され、他端において長尺物と係合可能な爪部分を有し、
前記弾性付勢部の一端と他端との間の中間部分は、前記両本体部の少なくとも一方に固定された係止部に係止されることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の長尺物保持用クリップ。
【請求項10】
前記両本体部の間であって、前記壁部の案内面またはその案内面から延びる延長平面の位置と前記回動軸線の配置位置との間に、長尺物が挿通される挿通領域を備え、
前記係止部は、長尺物を前記挿通領域に案内する案内面を有することを特徴とする請求項8または請求項9に記載の長尺物保持用クリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−144880(P2011−144880A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6504(P2010−6504)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(591070831)株式会社マーゼンプロダクツ (24)
【出願人】(000114606)モリト株式会社 (198)
【Fターム(参考)】