説明

長尺状λ/4板、円偏光板、偏光板、OLED表示装置、及び立体画像表示装置

【課題】本発明の目的は、幅手の平面性と光学的均一性を兼ね備えた薄膜長尺状λ/4板を提供することにある。さらには、該λ/4板を用いた円偏光板、偏光板により、外光下でも視認性が良好なOLED表示装置、および首を傾けた際の輝度低下を低減できる立体(3D)画像表示装置を提供することにある。
【解決手段】フィルムの遅相軸が長尺方向に対し20〜70°の角度を有し、波長590nmにおける面内位相差Ro(590)がRo(590)=120〜160nmを満たす長尺状λ/4板であって、該長尺状λ/4板が下記(1)式を満たすセルロースアシレートからなる層Aと、下記(2)式を満たすセルロースアセテートからなる層Bを含む積層フィルムであることを特徴とする長尺状λ/4板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺状λ/4板、円偏光板、偏光板、OLED表示装置、及び立体画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELを使った表示装置では、外光が素子内部で反射して外界の景色の写り込みやコントラストの低下等の表示性能の劣化が起こるのを防止するために有機EL素子の視認側に円偏光板が用いられている。円偏光板は、λ/4板の遅相軸と偏光子の吸収軸が45°の角度をもって積層されている。λ/4板を斜め延伸によって作製すれば、偏光子との貼合工程をロールtoロールで作製でき、λ/4板を斜めにカットしたりする余計な工程を省けるので生産性もよく、また、偏光板保護フィルム等余計なフィルムを省略できることから偏光板を薄型化できるため、λ/4板を斜め延伸によって作製する方法が開発されてきた。
【0003】
しかしながら斜め延伸をすると、フィルム幅手方向の光学的均一性がとりにくいという課題があり、様々な改善が試みられている。例えば、特許文献1では、幅手方向の光学的均一性の改善を狙って、斜め延伸時の温風の吹き出し口を斜めに設置したり、特許文献2では同じく幅手方向の光学的均一性を狙って、幅手方向に温度分布を持たせた状態で斜め延伸する技術が公開されている。また特許文献3では、テンターの予熱ゾーンと延伸ゾーン、延伸ゾーンと固定ゾーンの境界線の角度を設計して均一性の向上を狙った技術が公開されている。これらの技術はいずれも、単層のフィルムを使って、延伸の加熱方法やゾーン規定といったプロセス条件を従来のものと変えて均一性を改善しようとしたものであり、光学的均一性に関してはそれなりの効果は得られていたものの、フィルムにツレやヨレが生じたりする故障がまれに生じ、平面性と光学的均一性を兼ね備えたフィルムを安定的に作製することには問題があった。
【0004】
また、斜め延伸時のフィルムにかかる負荷を材料面から低減する検討もされており、例えば特許文献4には、延伸適性の高いセルロースアセテートプロピオネート樹脂を用いて斜め延伸してλ/4板を作製する技術が開示されているが、たしかに低倍率の延伸でも所望の位相差が発現しやすいが、昨今の大画面の表示装置や立体画像表示装置に適用するには、やはり斜め延伸による幅手方向の均一性や平面性に課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許473823号公報
【特許文献2】特開2006−224618号公報
【特許文献3】特開2009−78474号公報
【特許文献4】特開2008−083307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記課題を解決するものであり、その目的は、幅手の平面性と光学的均一性を兼ね備えた薄膜長尺状λ/4板を提供することにある。さらには、該λ/4板を用いた円偏光板、偏光板により、外光下でも視認性が良好なOLED表示装置(有機EL表示装置)、および首を傾けた際の輝度低下を低減できる立体(3D)画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は以下の構成により達成される。
【0008】
1.波長590nmにおける面内位相差Ro(590)がRo(590)=120〜160nmを満たす長尺状λ/4板であって、該長尺状λ/4板が下記(1)式を満たすセルロースアシレートからなる層Aと、下記(2)式を満たすセルロースアセテートからなる層Bを含む積層フィルムであり、かつ該積層フィルムの遅相軸が長尺方向に対し20〜70°の角度を有していることを特徴とする長尺状λ/4板。
【0009】
式(1) 2.0<Z1<2.7
(式中、Z1は層Aのセルロースアシレートの総アシル置換度を表す。)
式(2) 2.7≦X2
(式中、X2は層Bのセルロースアセテートの総アセチル置換度を表す。)
2.前記長尺状λ/4板が、層B/層A/層Bの順に隣接する積層フィルムであることを特徴とする前記1に記載の長尺状λ/4板。
【0010】
3.総膜厚が80μm以下であることを特徴とする前記1または2に記載の長尺状λ/4板。
【0011】
4.前記層Bに脂肪族ポリエステル、アクリル系ポリマー、及びスチレン系ポリマーから選ばれる高分子量化合物の少なくとも1種を含むことを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の長尺状λ/4板。
【0012】
5.前記層Bに棒状構造を有するレタデーション発現剤を含み、前記層Aに円盤状構造を有するレタデーション発現剤を含むことを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の長尺状λ/4板。
【0013】
6.前記層Bに含まれる棒状化合物の量WBと、前記層Aに含まれる円盤状化合物の量WAが、WB/WA=1.3〜1.6を満たすことを特徴とする前記4に記載の長尺状λ/4板。
(WBは層Bに含まれるセルロースアセテート100質量部に対する棒状化合物の質量部、WAは層Aに含まれるセルロースアシレート100質量部に対する円盤状化合物の質量部を表す)
7.前記1〜6のいずれか1項に記載の長尺状λ/4板と偏光子が隣接して配置され、偏光子の吸収軸とλ/4板の遅相軸が実質的に45°の向きとなるように配置されていることを特徴とする円偏光板。
【0014】
8.前記7に記載の円偏光板を用いたことを特徴とするOLED表示装置。
【0015】
9.前記1〜6のいずれか1項に記載の長尺状λ/4板と偏光子が、(λ/4板)/偏光子/(λ/4板)の順で隣接して配置され、偏光子の吸収軸とλ/4板の遅相軸が各々、実質的に45°の向きになるように配置され、かつ2枚のλ/4板の遅相軸が直交するように配置されたことを特徴とする偏光板。
【0016】
10.前記1〜6のいずれか1項に記載の長尺状λ/4板と偏光子が、(λ/4板)/偏光子/(λ/4板)の順で隣接して配置され、偏光子の吸収軸とλ/4板の遅相軸が各々、実質的に45°の向きになるように配置され、かつ、2枚のλ/4板の遅相軸が平行になるように配置されたことを特徴とする偏光板。
【0017】
11.前記9または10に記載の偏光板を用いたことを特徴とする立体画像表示装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、幅手の平面性と光学的均一性を兼ね備えた薄膜長尺状λ/4板を提供することができる。さらには、該λ/4板を用いた円偏光板、偏光板により、外光下でも視認性が良好なOLED表示装置、および首を傾けた際の輝度低下を低減できる立体(3D)画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】テンターによる斜め延伸を示す模式図である。
【図2】共流延ダイ及び流延して多層構造ウェブを形成したところを表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
本発明の長尺状λ/4板(以下簡単にλ/4板という)は、波長590nmにおける面内位相差Ro(590)が120〜160nmであるλ/4板であって、前記式(1)を満たすセルロースアシレートを含む層Aと、前記式(2)を満たすセルロースアセテートを含む層Bが積層された樹脂フィルムであり、フィルムの遅相軸が、長尺方向に対して20〜70°の角度にあることを特徴とする。
【0022】
本明細書中において、「層A」とは前記式(1)を満たすセルロースアシレートを含む層で、本発明のλ/4板の層の中で最も膜厚が厚い層のことをいい、「層B」とは、前記式(2)を満たすセルロースアセテートを含み、「層A」よりも膜厚が薄い層のことをいう。また、本発明は、「層A」と「層B」の積層フィルムの「層A」側に、更に「層B」があることが好ましい。この場合、「層A」の両側に配置される「層B」は、膜厚が同じであっても異なってもよいが、「層A」と同じあるいは「層A」よりも厚いことは位相差発現性の観点から好ましくない。
【0023】
かかる構成により、幅手の平面性と光学的均一性を兼ね備え、偏光板化工程においてロールトゥーロールが可能な薄膜長尺状λ/4板を提供することができる。本発明者は、フィルムの遅相軸が、長尺方向に対して20〜70°の角度にあるλ/4板を作る際、従来の斜め延伸時の風の当て方や幅手方向の温度分布の付与、延伸ゾーンの設計などのプロセス面の改善では、上記幅手方向の光学値均一性の低下と平面性の劣化の問題が発生するところ、式(1)で表されるセルロースアシレートを含む層Aに、式(2)で表される複屈折発現性の低いセルロースアセテートを含む層Bを積層した樹脂フィルムを、遅相軸が長尺方向に対して20〜70°の角度になるように長尺方向に対して斜めに延伸して作製することにより、前記の問題を解決できることを見出し、本発明を成すに至った次第である。
【0024】
また、本発明のλ/4板は、膜厚が80μm以下であることが好ましい。
【0025】
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現および薄膜化の観点から、前記層Bには、脂肪族ポリエステル、アクリル系ポリマー、スチレン系ポリマーから選ばれる少なくとも1種の高分子量化合物を含むことが好ましい。層Bにこのような高分子量化合物を含有させると、層Bの延伸適性を改良でき、λ/4板の位相差の波長分散性を望ましい方向に調整することができる。
【0026】
更に、前記層Aに円盤状構造を有するレタデーション発現剤を含み、前記層Bに棒状構造を有するレタデーション発現剤を含むことが位相差を調整する上で好ましい。
【0027】
また、前記層Bに含まれる棒状構造を有するレタデーション発現剤(以下、簡単に「棒状化合物という場合がある)の量WBと、層Aに含まれる円盤状構造を有するレタデーション発現剤(以下、簡単に「円盤状化合物という場合がある)の量WAが、WB/WA=1.3〜1.6を満たすことが、λ/4の位相差を達成するように斜め延伸する際の、延伸適性や光学値発現の観点から好ましい。
【0028】
本発明のλ/4板の製造方法は、前記式(1)を満たすセルロースアシレートを含む層A用ドープと、前記式(2)を満たすセルロースアセテートを含む層B用ドープを共流延法により支持体上に流延し、剥離したウェブを乾燥しながら長尺方向に対して20〜70°の方向に1.3倍以上延伸することによってλ/4板を製造することが好ましい実施態様である。
【0029】
また、本発明のλ/4板は、偏光子の吸収軸と該λ/4板の遅相軸が実質的に45°の傾きをもって貼合された円偏光板を形成し、円偏光板として液晶表示装置や有機ELディスプレイ、更には首を傾けた際の輝度低下を低減できる立体画像表示装置に使用されることが好ましい。
【0030】
また、上記円偏光板の偏光子側に、偏光子の吸収軸とλ/4板の遅相軸が実質的に45°の傾きをもつように、さらにλ/4板が貼合された偏光板も好ましい。このような部材は、有機ELディスプレイを使った立体画像表示装置において、首を傾けた際の輝度低下を低減できるので好ましい。
【0031】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。
【0032】
(λ/4板)
本発明のλ/4板とは、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(または、円偏光を直線偏光に)変換する機能を有するものをいう。λ/4板は、所定の光の波長(通常、可視光領域)に対して、層の面内の位相差値Roが約1/4となるように設計されている。
【0033】
本発明のλ/4板は、波長590nmで測定したRo(590)が120〜160nmの範囲である。
【0034】
本発明のλ/4板は、可視光の波長の範囲においてほぼ完全な円偏光を得るため、可視光の波長の範囲において概ね波長の1/4のレタデーションを有する位相差板(樹脂フィルム)であることが好ましい。
【0035】
「可視光の波長の範囲において概ね1/4のレタデーション」とは、波長400から700nmにおいて長波長ほどレタデーションが大きく、波長450nmで測定した下記式(i)で表されるレタデーション値であるRo(450)と波長590nmで測定したリターデーション値であるRo(590)が、1<Ro(590)/Ro(450)≦1.6を満たすことが好ましい。さらにλ/4板として有効に機能するためには、Ro(450)が100〜125nmの範囲内であり、波長550nmで測定したリターデーション値であるRo(550)が125〜142nmの範囲内であり、Ro(590)が130〜152nmの範囲内の位相差フィルムであることがより好ましい。
【0036】
式(i):Ro=(nx−ny)×d
式(ii):Rt={(nx+ny)/2−nz}×d
式中、nx、nyは、23℃・55%RH、450nm、550nm、590nmの各々における屈折率nx(フィルムの面内の最大の屈折率、遅相軸方向の屈折率ともいう。)、ny(フィルム面内で遅相軸に直交する方向の屈折率)であり、dはフィルムの厚さ(nm)である。
【0037】
Ro、Rtは自動複屈折率計を用いて測定することができる。自動複屈折率計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で、各波長での複屈折率測定によりRoを算出する。
【0038】
λ/4板の遅相軸と後述する偏光子の透過軸との角度が実質的に45°になるように積層すると円偏光板が得られる。「実質的に45°」とは、40〜50°であることを意味する。λ/4板の面内の遅相軸と偏光子の透過軸との角度は、41〜49°であることが好ましく、42〜48°であることがより好ましく、43〜47°であることが更に好ましく、44〜46°であることが最も好ましい。
【0039】
(セルロースアシレート、セルロースアセテート)
本発明のλ/4板は、下記式(1)を満たすセルロースアシレートを含む層Aと下記式(2)を満たすセルロースアセテートを含む層Bとが積層された樹脂フィルムであることを特徴とする。
【0040】
式(1) 2.0<Z1<2.7
(式中、Z1は層Aのセルロースアシレートの総アシル置換度を表す。)
式(2) 2.7≦X2
(式中、X2は層Bのセルロースアセテートの総アセチル置換度を表す。)
まず、層Aに用いられるセルロースアシレートについて詳細に記載する。
【0041】
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部をアシル基によりアシル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位および6位に位置するセルロースの水酸基がアシル化している割合(100%のアシル化は置換度1)を意味する。なお、アシル基の置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法により求めたものである。
【0042】
前記Z1は、2.1<Z1<2.6を満たすことがより好ましく、2.1≦Z1≦2.5を満たすことがより好ましい。
【0043】
セルロースアシレートの総アシル基置換度が2.0を下回る場合には、ドープ粘度の上昇によるフィルム面品質の劣化、延伸張力の上昇によるヘイズアップなどが発生することがある。また、総アシル置換度が2.7より大きい場合は、必要な位相差が得られ難い。
【0044】
本発明に係る層Aは、上記式(1)を満たすセルロースアセテートであることがより好ましく、ジアセチルセルロースであることが特に好ましい。
【0045】
本発明におけるセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリル基でもよく特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましい例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、イソブタノイル基、tert−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、tert−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などがより好ましく、特に好ましくはアセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基(アシル基が炭素原子数2〜4である場合)であり、より特に好ましくはアセチル基(セルロースアシレートが、セルロースアセテートである場合)である。
【0046】
一方、本発明に係る層Bに用いられるセルロースアセテートは、総アセチル置換度X2が、2.7以上であるセルローストリアセテートであることが好ましい。X2が、この範囲のセルローストリアセテートを用いることで、支持体からの剥離性を改善でき、また、幅手平面性と光学的均一性を両立するができる。総アセチル置換度X2は、より好ましくは2.8≦X2<≦3.0である。
【0047】
ここでいうアセチル置換度は、セルロースを構成する各無水グルコースの有する3個のヒドロキシル基(水酸基)のうち、エステル化(アセチル化)されているヒドロキシル基(水酸基)の数の平均値をいい、0〜3の範囲内の値を示す。
【0048】
本発明において、アセチル基で置換されていない部分は通常ヒドロキシル基(水酸基)として存在しているものである。これらは公知の方法で合成することができる。
【0049】
本発明に係るセルロースアシレート、セルロースアセテートの数平均分子量(Mn)は、30000〜300000の範囲が得られるフィルムの機械的強度が強く好ましい。更に50000〜200000のものが好ましく用いられる。
【0050】
セルロースアシレート、セルロースアセテートの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnの値は、1.4〜3.0であることが好ましい。
【0051】
セルロースアシレート、セルロースアセテートの重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。
【0052】
測定条件は以下の通りである。
【0053】
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
【0054】
更に本発明のλ/4板は、前記層Aの前記層Bとは異なる面に、前記式(2)を満たすセルロースアセテートからなる層Bを備えていることが好ましい。層Aの両側に備えられる層Bは、両者の膜厚が同じであっても異なっていてもよいが、層Aと同じあるいは層Aよりも厚いことは位相差発現性の観点から好ましくない。
【0055】
本発明に係るセルロースアシレート、セルロースアセテートの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ、ケナフなどを挙げることができる。またそれらから得られたセルロースアシレート、セルロースアセテートはそれぞれ任意の割合で混合使用することができる。
【0056】
セルロースのアシル化において、アシル化剤としては、酸無水物や酸クロライドを用いた場合、反応溶媒である有機溶媒としては、有機酸、例えば、酢酸、メチレンクロライド等が使用される。
【0057】
触媒としては、アシル化剤が酸無水物である場合には、硫酸のようなプロトン性触媒が好ましく用いられ、アシル化剤が酸クロライド(例えば、CHCHCOCl)である場合には、塩基性化合物が用いられる。
【0058】
また一般的なセルロースの混合脂肪酸エステルの工業的合成方法は、セルロースをアセチル基および他のアシル基に対応する脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、吉草酸等)またはそれらの酸無水物を含む混合有機酸成分でアシル化する方法である。
【0059】
具体的には特開平10−45804号公報に記載の方法を参考にして合成することができる。
【0060】
以下に添加剤を説明する。
【0061】
セルロースアシレート、セルロースアセテート以外の添加剤としては、可塑剤、紫外線吸収剤、レタデーション調整剤、レタデーション発現剤、酸化防止剤、劣化防止剤、剥離助剤、界面活性剤、染料、微粒子等がある。本発明において、微粒子以外の添加剤についてはセルロースアシレート、セルロースアセテート溶液の調製の際に添加してもよいし、微粒子分散液の調製の際に添加してもよい。
【0062】
(紫外線吸収剤)
本発明のλ/4板は、紫外線吸収剤を含んでいても含んでいなくてもよい。より具体的には、OLED表示装置の外光反射防止のために円偏光板化されて用いられる場合にはλ/4板に紫外線吸収剤が必須ではないが、立体画像表示装置用の首を傾けた時の色味変化防止のために用いられる場合には、表示装置において偏光子よりも視認側に配置されるため、紫外線吸収剤を含むことが好ましい。
【0063】
使用し得る紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、トリアジン系化合物等を挙げることができるが、着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。また、特開平10−182621号、同8−337574号、特開2001−72782号記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号、特開2002−31715号、同2002−169020号、同2002−47357号、同2002−363420号、同2003−113317号記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。紫外線吸収剤としては、偏光子や液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、かつ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。
【0064】
本発明に有用な紫外線吸収剤の具体例として、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物等を挙げることができるが、これらに限定されない。また、市販品として、チヌビン(TINUVIN)109、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)326、チヌビン(TINUVIN)928(何れもBASFジャパン社製)を好ましく使用できる。高分子紫外線吸収剤としては、大塚化学社製の反応型紫外線吸収剤RUVA−93を例として挙げることができる。
【0065】
ベンゾフェノン系化合物の具体例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0066】
本発明で好ましく用いられる上記記載の紫外線吸収剤は、透明性が高く、偏光板や液晶素子の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましく用いられる。
【0067】
紫外線吸収剤のドープへの添加方法は、ドープ中で紫外線吸収剤を溶解するようなものであれば制限なく使用できるが、本発明においては紫外線吸収剤をメチレンクロライド、酢酸メチル、ジオキソラン等のセルロースエステルに対する良溶媒、又は良溶媒と低級脂肪族アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等)のような貧溶媒との混合有機溶媒に溶解し紫外線吸収剤溶液としてセルロースエステル溶液に添加してドープとする方法が好ましい。この場合できるだけドープ溶媒組成と紫外線吸収剤溶液の溶媒組成とを同じとするか近づけることが好ましい。
【0068】
(レタデーション調整剤)
〈高分子量化合物〉
本発明のλ/4板は、レタデーション調整剤として脂肪族ポリエステル、アクリル系ポリマー、スチレン系ポリマーから選ばれる高分子量化合物を層Bに含むことが好ましい。層Bにこのような高分子量化合物を含ませることで、非添加の場合と比べて機械特性が改善し、λ/4板作製時の延伸過程においてクレーズや白化などの故障が生じにくくなる。また、λ/4板の位相差の波長分散性を望ましい方向に調整する効果もある。
【0069】
ここで、本発明における高分子量添加剤の数平均分子量は、より好ましくは数平均分子量700〜8000であり、さらに好ましくは数平均分子量700〜5000であり、特に好ましくは数平均分子量1000〜5000である。
【0070】
高分子量添加剤は、セルロースアシレートに対して1〜35質量%、より好ましくは4〜30質量%、更に好ましくは10〜25質量%添加することが好ましい。添加量が1質量%以下だと十分な効果を発揮できず、35質量%以上だと、延伸時の白化が起こってしまったり、機械強度や物理的なフィルム物性が劣化したりしてしまうため、好ましくない。また、2種類以上のレタデーション調整剤を用いる場合、その合計量が、上記範囲内であることが好ましい。
【0071】
以下、本発明に用いられる高分子量化合物について、その具体例を挙げながら詳細に説明するが、本発明で用いられる高分子量化合物がこれらのものに限定されるわけでないことは言うまでもない。
【0072】
高分子量化合物としては、ポリエステル系ポリマー、スチレン系ポリマーおよびアクリル系ポリマーおよびこれら等の共重合体から選択され、脂肪族ポリエステル、アクリル系ポリマーおよびスチレン系ポリマーが好ましい。また、スチレン系ポリマー、アクリル系ポリマーといった、負の固有複屈折を有するポリマーを少なくとも一種含まれることが好ましい。
【0073】
前記ポリエステル系ポリマーとしては、炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸と、炭素数2〜12の脂肪族ジオール、炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールから選ばれる少なくとも1種類以上のジオールとの反応によって得られるものであり、かつ反応物の両末端は反応物のままでもよいが、さらにモノカルボン酸類やモノアルコール類またはフェノール類を反応させて、所謂末端の封止を実施してもよい。この末端封止は、特にフリーなカルボン酸類を含有させないために実施されることが、保存性などの点で有効である。ポリエステル系ポリマーに使用されるジカルボン酸は、炭素数4〜20の脂肪族ジカルボン酸残基または炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸残基であることが好ましい。
【0074】
本発明で好ましく用いられる炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。
【0075】
これらの中でも好ましい脂肪族ジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である。特に好ましくは、脂肪族ジカルボン酸成分としてはコハク酸、グルタル酸、アジピン酸である。
【0076】
高分子量化合物に利用されるジオールは、例えば、炭素数2〜20の脂肪族ジオール、炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールから選ばれるものである。
【0077】
炭素原子2〜20の脂肪族ジオールとしては、アルキルジオールおよび脂環式ジオール類を挙げることができ、例えば、エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用される。
【0078】
好ましい脂肪族ジオールとしては、エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールであり、特に好ましくはエタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールである。
【0079】
炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールとしては、好ましくは、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレンエーテルグリコールおよびポリプロピレンエーテルグリコールならびにこれらの組み合わせが挙げられる。その平均重合度は、特に限定されないが好ましくは2〜20であり、より好ましくは2〜10であり、さらには2〜5であり、特に好ましくは2〜4である。これらの例としては、典型的に有用な市販のポリエーテルグリコール類としては、カーボワックス(Carbowax)レジン、プルロニックス(Pluronics)レジンおよびニアックス(Niax)レジンが挙げられる。
【0080】
本発明においては、特に末端がアルキル基あるいは芳香族基で封止された高分子量化合物であることが好ましい。これは、末端を疎水性官能基で保護することにより、高温高湿での経時劣化に対して有効であり、エステル基の加水分解を遅延させる役割を示すことが要因となっている。
【0081】
本発明に用いられるポリエステル添加剤の両末端がカルボン酸やOH基とならないように、モノアルコール残基やモノカルボン酸残基で保護することが好ましい。
【0082】
この場合、モノアルコールとしては炭素数1〜30の置換、無置換のモノアルコールが好ましく、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、シクロヘキシルアルコール、オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ノニルアルコール、イソノニルアルコール、tert−ノニルアルコール、デカノール、ドデカノール、ドデカヘキサノール、ドデカオクタノール、アリルアルコール、オレイルアルコールなどの脂肪族アルコール、ベンジルアルコール、3−フェニルプロパノールなどの置換アルコールなどが挙げられる。
【0083】
好ましく使用され得る末端封止用アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、イソペンタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、シクロヘキシルアルコール、イソオクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、イソノニルアルコール、オレイルアルコール、ベンジルアルコールであり、特にはメタノール、エタノール、プロパノール、イソブタノール、シクロヘキシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、イソノニルアルコール、ベンジルアルコールである。
【0084】
また、モノカルボン酸残基で封止する場合は、モノカルボン酸残基として使用されるモノカルボン酸は、炭素数1〜30の置換、無置換のモノカルボン酸が好ましい。これらは、脂肪族モノカルボン酸でも芳香族環含有カルボン酸でもよい。好ましい脂肪族モノカルボン酸について記述すると、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、カプリル酸、カプロン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸が挙げられ、芳香族環含有モノカルボン酸としては、例えば安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、p−tert−アミル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸等があり、これらはそれぞれ1種または2種以上を使用することができる。
【0085】
かかる本発明に用いられる高分子量化合物の合成は、常法により上記ジカルボン酸とジオールおよび/または末端封止用のモノカルボン酸またはモノアルコール、とのポリエステル化反応またはエステル交換反応による熱溶融縮合法か、あるいはこれら酸の酸クロライドとグリコール類との界面縮合法のいずれかの方法によっても容易に合成し得るものである。これらのポリエステル系添加剤については、村井孝一編者「添加剤 その理論と応用」(株式会社幸書房、昭和48年3月1日初版第1版発行)に詳細な記載がある。また、特開平05−155809号、特開平05−155810号、特開平5−197073号、特開2006−259494号、特開平07−330670号、特開2006−342227号、特開2007−003679号各公報などに記載されている素材を利用することもできる。
【0086】
前記スチレン系ポリマーは、好ましくは、一般式(1)で表される、芳香族ビニル系単量体から得られる構造単位である。
【0087】
【化1】

【0088】
式中、R101〜R104は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子またはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい、置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、または極性基を表し、R104は全て同一の原子または基であっても、個々異なる原子または基であっても、互いに結合して、炭素環または複素環(これらの炭素環、複素環は単環構造でもよいし、他の環が縮合して多環構造を形成してもよい)を形成してもよい。
【0089】
芳香族ビニル系単量体の具体例としては、スチレン;α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどのアルキル置換スチレン類;4−クロロスチレン、4−ブロモスチレンなどのハロゲン置換スチレン類;p−ヒドロキシスチレン、α−メチル−p−ヒドロキシスチレン、2−メチル−4−ヒドロキシスチレン、3,4−ジヒドロキシスチレンなどのヒドロキシスチレン類;ビニルベンジルアルコール類;p−メトキシスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、m−tert−ブトキシスチレンなどのアルコキシ置換スチレン類;3−ビニル安息香酸、4−ビニル安息香酸などのビニル安息香酸類;メチル−4−ビニルベンゾエート、エチル−4−ビニルベンゾエートなどのビニル安息香酸エステル類;4−ビニルベンジルアセテート;4−アセトキシスチレン;2−ブチルアミドスチレン、4−メチルアミドスチレン、p−スルホンアミドスチレンなどのアミドスチレン類;3−アミノスチレン、4−アミノスチレン、2−イソプロペニルアニリン、ビニルベンジルジメチルアミンなどのアミノスチレン類;3−ニトロスチレン、4−ニトロスチレンなどのニトロスチレン類;3−シアノスチレン、4−シアノスチレンなどのシアノスチレン類;ビニルフェニルアセトニトリル;フェニルスチレンなどのアリールスチレン類、インデン類などが挙げられるが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。これらの単量体は、二種以上を共重合成分として用いてもよい。これらのうち、工業的に入手が容易で、かつ安価な点で、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
【0090】
前記アクリル系ポリマーは、好ましくは、一般式(2)で表される、アクリル酸エステル系単量体から得られる構造単位である。
【0091】
【化2】

【0092】
式中、R105〜R108は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい、置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、または極性基を表す。
【0093】
当該アクリル酸エステル系単量体の例としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、tert−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−メトキシエチル)、アクリル酸(2−エトキシエチル)アクリル酸フェニル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸(2または4−クロロフェニル)、メタクリル酸(2または4−クロロフェニル)、アクリル酸(2または3または4−エトキシカルボニルフェニル)、メタクリル酸(2または3または4−エトキシカルボニルフェニル)、アクリル酸(oまたはmまたはp−トリル)、メタクリル酸(oまたはmまたはp−トリル)、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸フェネチル、メタクリル酸フェネチル、アクリル酸(2−ナフチル)、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸(4−メチルシクロヘキシル)、メタクリル酸(4−メチルシクロヘキシル)、アクリル酸(4−エチルシクロヘキシル)、メタクリル酸(4−エチルシクロヘキシル)等、または上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものを挙げることができるが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。これらの単量体は、2種以上を共重合成分として用いてもよい。これらのうち、工業的に入手が容易で、かつ安価な点で、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、tert−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、または上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものが好ましい。
【0094】
前記共重合体は、一般式(1)で表される芳香族ビニル系単量体および一般式(2)で表されるアクリル酸エステル系単量体から得られる構造単位を少なくとも1種含むものが好ましい。
【0095】
【化3】

【0096】
式中、R101〜R104は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子またはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい、置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、または極性基を表し、R104は全て同一の原子または基であっても、個々異なる原子または基であっても、互いに結合して、炭素環または複素環(これらの炭素環、複素環は単環構造でもよいし、他の環が縮合して多環構造を形成してもよい)を形成してもよい。
【0097】
【化4】

【0098】
式中R105〜R108は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有していてもよい、置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基、または極性基を表す。また、共重合組成を構成する上記以外の構造として、前記単量体と共重合性に優れたものであることが好ましく、例として、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、シス−1−シクロヘキセン−1,2−無水ジカルボン酸、3−メチル−シス−1−シクロヘキセン−1,2−無水ジカルボン酸、4−メチル−シス−1−シクロヘキセン−1,2−無水ジカルボン酸等の酸無水物、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル基含有ラジカル重合性単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド、トリフルオロメタンスルホニルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミド結合含有ラジカル重合性単量体;酢酸ビニルなどの脂肪酸ビニル類;塩化ビニル、塩化ビニリデンなどの塩素含有ラジカル重合性単量体;1,3−ブタジエン、イソプレン、1,4−ジメチルブタジエン等の共役ジオレフィン類をあげることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。この中で特に、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体が特に好ましい。
【0099】
(低分子量化合物)
本発明のλ/4板に有用なレタデーション調整剤としては、前述したような高分子量化合物を用いることが最も好ましいが、以下のような低分子量化合物も用いることができる。
【0100】
低分子量化合物としては、以下を挙げることができる。これらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に劣化防止剤の混合などである。さらにまた、赤外吸収染料としては例えば特開2001−194522号公報に記載されている。またその添加する時期はセルロースアシレート溶液(ドープ)作製工程において何れで添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。さらにまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。
【0101】
低分子量化合物としては、特に限定されないが、以下に述べる一般式(3)〜(7)で表される化合物が挙げられる。
【0102】
【化5】

【0103】
(式中、Rはアルキル基またはアリール基を表し、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。R、RおよびRの炭素原子数の総和は10以上である。)
【0104】
【化6】

【0105】
(式中、RおよびRは、それぞれ独立に、アルキル基またはアリール基を表す。RおよびRの炭素原子数の総和は10以上である。)
一般式(3)において、Rはアルキル基またはアリール基を表し、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。また、R、RおよびRの炭素数の総和が10以上であることが特に好ましい。また、一般式(4)中、RおよびRは、それぞれ独立に、アルキル基またはアリール基を表す。また、RおよびRの炭素数の総和は10以上であり、各々、アルキル基およびアリール基は置換基を有していてもよい。置換基としてはフッ素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基およびスルホンアミド基が好ましく、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基およびスルホンアミド基が特に好ましい。また、アルキル基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素数1〜25のものが好ましく、6〜25のものがより好ましく、6〜20のもの(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、アミル基、イソアミル基、tert−アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ビシクロオクチル基、ノニル基、アダマンチル基、デシル基、tert−オクチル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、ジデシル基)が特に好ましい。アリール基としては炭素数が6〜30のものが好ましく、6〜24のもの(例えば、フェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基、ナフチル基、ビナフチル基、トリフェニルフェニル基)が特に好ましい。一般式(3)または一般式(4)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0106】
【化7】

【0107】
【化8】

【0108】
【化9】

【0109】
【化10】

【0110】
【化11】

【0111】
一般式(3)または一般式(4)で表される化合物は、以下の方法にて作製することができる。
【0112】
一般式(3)の化合物は、スルホニルクロリド誘導体とアミン誘導体との縮合反応により得ることができる。また、一般式(4)の化合物は、スルフィドの酸化反応もしくは芳香族化合物とスルホン酸クロリドのFriedel−Crafts反応により得ることができる。
【0113】
次に、一般式(5)で表される化合物に関して詳細に説明する。
【0114】
【化12】

【0115】
上記一般式(5)において、R11はアリール基を表す。R12およびR13は、それぞれ独立に、アルキル基またはアリール基を表し、少なくとも一方はアリール基である。R12がアリール基であるとき、R13はアルキル基でもアリール基でもよいが、アルキル基であることがより好ましい。ここで、アルキル基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素数が1〜20のものが好ましく、1〜15のものがさらに好ましく、1〜12のものが最も好ましい。アリール基は炭素数が6〜36のものが好ましく、6〜24のものがより好ましい。
【0116】
次に、一般式(6)で表される化合物に関して詳細に説明する。
【0117】
【化13】

【0118】
上記一般式(6)において、R21、R22およびR23は、それぞれ独立にアルキル基を表す。ここで、アルキル基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよい。R21は環状のアルキル基であることが好ましく、R22およびR23の少なくとも一方が環状のアルキル基であることがより好ましい。アルキル基は炭素数が1〜20のものが好ましく、1〜15のものがさらに好ましく、1〜12のものが最も好ましい。環状のアルキル基としては、シクロヘキシル基が特に好ましい。
【0119】
上記一般式(5)および(6)におけるアルキル基およびアリール基は、それぞれ置換基を有していてもよい。置換基としてはハロゲン原子(例えば、塩素、臭素、フッ素およびヨウ素)、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、スルホニルアミノ基、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基およびアシルアミノ基が好ましく、より好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、スルホニルアミノ基およびアシルアミノ基であり、特に好ましくはアルキル基、アリール基、スルホニルアミノ基およびアシルアミノ基である。
【0120】
次に、一般式(5)および(6)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0121】
【化14】

【0122】
【化15】

【0123】
【化16】

【0124】
【化17】

【0125】
次に、前記一般式(7)で表される化合物について説明する。
【0126】
【化18】

【0127】
上記一般式(7)において、R31、R32、R33およびR34は、それぞれ、水素原子、置換もしくは無置換の脂肪族基、または置換もしくは無置換の芳香族基を表し、脂肪族基が好ましい。脂肪族基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、環状であることがより好ましい。脂肪族基および芳香族基が有していてもよい置換基としては後述の置換基Tが挙げられるが、無置換のものが好ましい。
【0128】
31、X32、X33およびX34は、それぞれ、単結合、−CO−およびNR35−(R35は置換もしくは無置換の脂肪族基、または置換もしくは無置換の芳香族基を表し、無置換のものおよび/または脂肪族基がより好ましい)からなる群から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。X31、X32、X33およびX34の組み合わせは、特に限定されないが、−CO−、−NR35−から選ばれるのがより好ましい。a、b、cおよびdは0以上の整数であり、0または1であることが好ましく、a+b+c+dは2以上であり、2〜8であることが好ましく、より好ましくは2〜6、さらに好ましくは2〜4である。Z31は(a+b+c+d)価の有機基(環状のものを除く)を表す。Z31の価数は2〜8が好ましく、2〜6がより好ましく、2〜4がさらに好ましく、2または3が最も好ましい。有機基とは、有機化合物からなる基をいう。
【0129】
また、上記一般式(7)としては、好ましくは下記一般式(7−1)で表される化合物である。
【0130】
一般式(7−1)
311−X311−Z311−X312−R312
上記一般式(7−1)において、R311およびR312は、それぞれ、置換もしくは無置換の脂肪族基、または置換もしくは無置換の芳香族基を表し、脂肪族基が好ましい。脂肪族基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、環状であることがより好ましい。脂肪族基および芳香族基が有していてもよい置換基としては後述の置換基Tが挙げられるが、無置換のものが好ましい。X311およびX312は、それぞれ独立に、−CONR313−またはNR314CO−を表し、R313およびR314は、置換もしくは無置換の脂肪族基、または置換もしくは無置換の芳香族基を表し、無置換のものおよび/または脂肪族基がより好ましい。Z311は−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、−NR315−(R315は置換もしくは無置換の脂肪族基、または置換もしくは無置換の芳香族基を表し、無置換のものおよび/または脂肪族基がより好ましい)、アルキレン基およびアリーレン基から選ばれる、1種以上の基から形成される2価の有機基(環状のものを除く)を表す。Z311の組み合わせは特に限定されないが、−O−、−S−、−NR315−、およびアルキレン基から選ばれるのが好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのがさらに好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのが最も好ましい。
【0131】
上記一般式(7−1)としては、好ましくは下記一般式(7−2)〜(7−4)で表される化合物である。
【0132】
【化19】

【0133】
【化20】

【0134】
【化21】

【0135】
上記一般式(7−2)〜(7−4)において、R321、R322、R323およびR324は、それぞれ置換もしくは無置換の脂肪族基、または置換もしくは無置換の芳香族基を表し、脂肪族基が好ましい。脂肪族基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、環状であることがより好ましい。脂肪族基および芳香族基が有していてもよい置換基としては後述の置換基Tが挙げられるが、無置換のものが好ましい。Z321は−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、−NR325−(R325は置換もしくは無置換の脂肪族基、または置換もしくは無置換の芳香族基を表し、無置換のものおよび/または脂肪族基がより好ましい)、アルキレン基、アリーレン基から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。Z321の組み合わせは特に限定されないが、−O−、−S−、−NR325−、およびアルキレン基から選ばれるのが好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのがさらに好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのが最も好ましい。
【0136】
以下に、上記の置換もしくは無置換の脂肪族基について説明する。脂肪族基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素数1〜25のものが好ましく、6〜25のものがより好ましく、6〜20のものが特に好ましい。脂肪族基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、アミル基、イソアミル基、tert−アミル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、ビシクロオクチル基、アダマンチル基、n−デシル基、tert−オクチル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ジデシル基などが挙げられる。
【0137】
以下に、上記の芳香族基について説明する。
【0138】
芳香族基は芳香族炭化水素基でも芳香族ヘテロ環基でもよく、より好ましくは芳香族炭化水素基である。芳香族炭化水素基としては、炭素数が6〜24のものが好ましく、6〜12のものがさらに好ましい。芳香族炭化水素基の具体例な環としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、ターフェニルなどが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニルが特に好ましい。芳香族ヘテロ環基としては、酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子のうち少なくとも1つを含むものが好ましい。ヘテロ環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環基としては、ピリジン、トリアジン、キノリンが特に好ましい。
【0139】
また、以下に前記の置換基Tに関して詳細に説明する。
【0140】
置換基Tとしては、例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8のものであり、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基など)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えば、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基など)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えばプロパルギル基、3−ペンチニル基など)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは6〜20、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基など)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは0〜10、特に好ましくは0〜6であり、例えばアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基など)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基など)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは6〜16、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基など)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばアセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基など)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12であり、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基など)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは7〜16、特に好ましくは7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニル基など)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜10であり、例えばアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基など)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜10であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基など)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノ基など)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは7〜16、特に好ましくは7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ基など)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基など)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは0〜16、特に好ましくは0〜12であり、例えばスルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基など)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基など)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメチルチオ基、エチルチオ基など)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは6〜16、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニルチオ基など)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメシル基、トシル基などが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基など)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基など)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなど)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には、例えばイミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基など)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは3〜30、特に好ましくは3〜24であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基など)などが挙げられる。これらの置換基はさらに置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
【0141】
一般式(7)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0142】
【化22】

【0143】
【化23】

【0144】
【化24】

【0145】
一般式(5)および一般式(6)、一般式(7)の化合物は、縮合剤(例えばジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)など)を用いた、カルボン酸類とアミン類との脱水縮合反応、またはカルボン酸クロリド誘導体とアミン誘導体との置換反応などにより得ることができる。
【0146】
本発明に用いられるレタデーション調整剤としては、セルロースアシレートの可塑剤として知られるおおくの化合物も有用に使用することができる。可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルホスフェート(TPP)およびトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)およびジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)およびO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。DEPおよびDPPが特に好ましい。
【0147】
本発明に用いられるレタデーション調整剤は、Rt低減剤であることが好適なNzファクターを実現する観点からより好ましい。前記レタデーション調整剤のうち、Rt低減剤としては、例えば、脂肪族ポリエステル、アクリル系ポリマーおよびスチレン系ポリマー、一般式(3)〜(7)の低分子化合物などを挙げることができ、その中でも脂肪族ポリエステル、アクリル系ポリマーおよびスチレン系ポリマーが好ましく、脂肪族ポリエステル、アクリル系ポリマーがより好ましい。
【0148】
(レタデーション発現剤)
本発明ではλ/4の位相差を出すために、層Aと層Bにレタデーション発現剤を加えてもよい。レタデーション発現剤としては、棒状または円盤状化合物からなるものを挙げることができる。上記棒状または円盤状化合物としては、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物をレタデーション発現剤として好ましく用いることができる。
【0149】
本発明においては、棒状構造を有するレタデーション発現剤を層Bに、円盤状構造を有するレタデーション発現剤を層Aに加えることが好ましい。
【0150】
また、前記層Bに含まれる棒状構造を有するレタデーション発現剤(以下、簡単に「棒状化合物という場合がある)の量WBと、層Aに含まれる円盤状構造を有するレタデーション発現剤(以下、簡単に「円盤状化合物という場合がある)の量WAが、WB/WA=1.3〜1.6を満たすことが、λ/4の位相差を達成するように斜め延伸する際の、延伸適性や光学値発現の観点から好ましい。(WBは層Bに含まれるセルロースエステル100質量部に対する棒状化合物の質量部、WAは層Aに含まれるセルロースエステル100質量部に対する円盤状化合物の質量部を表す)
棒状化合物からなるレタデーション発現剤の添加量は、セルロースアシレートを含むポリマー成分100質量部に対して0.1〜30質量部であることが好ましく、0.5〜20質量部であることがさらに好ましい。円盤状のレタデーション発現剤は、前記セルロースアシレートを含むポリマー成分100質量部に対して、0.05〜20質量部の範囲で使用することが好ましく、1.0〜15質量部の範囲で使用することがより好ましく、3.0〜10質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。
【0151】
円盤状化合物はRtレタデーション発現性において棒状化合物よりも優れているため、特に大きなRtレタデーションを必要とする場合には好ましく使用される。2種類以上のレタデーション発現剤を併用してもよい。
【0152】
レタデーション発現剤は、250〜400nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましく、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
【0153】
〈円盤状構造を有するレタデーション発現剤〉
円盤状化合物について説明する。円盤状化合物としては少なくとも二つの芳香族環を有する化合物を用いることができる。
【0154】
本明細書において、「芳香族環」は、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。
【0155】
芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。
【0156】
芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が含まれる。
【0157】
芳香族環としては、ベンゼン環、縮合ベンゼン環、ビフェニル類が好ましい。特に1,3,5−トリアジン環が好ましく用いられる。具体的には例えば特開2001−166144号公報に開示の化合物が好ましく用いられる。
【0158】
レタデーション発現剤が有する芳香族環の炭素数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがより好ましく、2〜8であることがさらに好ましく、2〜6であることが最も好ましい。
【0159】
二つの芳香族環の結合関係は、(a)縮合環を形成する場合、(b)単結合で直結する場合および(c)連結基を介して結合する場合に分類できる(芳香族環のため、スピロ結合は形成できない)。結合関係は、(a)〜(c)のいずれでもよい。
【0160】
(a)の縮合環(二つ以上の芳香族環の縮合環)の例には、インデン環、ナフタレン環、アズレン環、フルオレン環、フェナントレン環、アントラセン環、アセナフチレン環、ビフェニレン環、ナフタセン環、ピレン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドリジン環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、プリン環、インダゾール環、クロメン環、キノリン環、イソキノリン環、キノリジン環、キナゾリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フタラジン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェナントリジン環、キサンテン環、フェナジン環、フェノチアジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環およびチアントレン環が含まれる。ナフタレン環、アズレン環、インドール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環およびキノリン環が好ましい。
【0161】
(b)の単結合は、二つの芳香族環の炭素原子間の結合であることが好ましい。二以上の単結合で二つの芳香族環を結合して、二つの芳香族環の間に脂肪族環または非芳香族性複素環を形成してもよい。
【0162】
(c)の連結基も、二つの芳香族環の炭素原子と結合することが好ましい。連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−CO−、−O−、−NH−、−S−またはそれらの組み合わせであることが好ましい。組み合わせからなる連結基の例を以下に示す。なお、以下の連結基の例の左右の関係は、逆になってもよい。
c1:−CO−O−
c2:−CO−NH−
c3:−アルキレン−O−
c4:−NH−CO−NH−
c5:−NH−CO−O−
c6:−O−CO−O−
c7:−O−アルキレン−O−
c8:−CO−アルケニレン−
c9:−CO−アルケニレン−NH−
c10:−CO−アルケニレン−O−
c11:−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−
c12:−O−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−O−
c13:−O−CO−アルキレン−CO−O−
c14:−NH−CO−アルケニレン−
c15:−O−CO−アルケニレン−
芳香族環および連結基は、置換基を有していてもよい。
【0163】
置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、スルホ基、カルバモイル基、スルファモイル基、ウレイド基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、脂肪族アシル基、脂肪族アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、脂肪族アミド基、脂肪族スルホンアミド基、脂肪族置換アミノ基、脂肪族置換カルバモイル基、脂肪族置換スルファモイル基、脂肪族置換ウレイド基および非芳香族性複素環基が含まれる。
【0164】
アルキル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。環状アルキル基よりも鎖状アルキル基の方が好ましく、直鎖状アルキル基が特に好ましい。アルキル基は、さらに置換基(例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキル置換アミノ基)を有していてもよい。アルキル基の(置換アルキル基を含む)例には、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、2−ヒドロキシエチル基、4−カルボキシブチル基、2−メトキシエチル基および2−ジエチルアミノエチル基の各基が含まれる。
【0165】
アルケニル基の炭素原子数は、2〜8であることが好ましい。環状アルケニル基よりも鎖状アルケニル基の方が好ましく、直鎖状アルケニル基が特に好ましい。アルケニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルケニル基の例には、ビニル基、アリル基および1−ヘキセニル基が含まれる。
【0166】
アルキニル基の炭素原子数は、2〜8であることが好ましい。環状アルキニル基よりも鎖状アルキニル基の方が好ましく、直鎖状アルキニル基が特に好ましい。アルキニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルキニル基の例には、エチニル基、1−ブチニル基および1−ヘキシニル基が含まれる。
【0167】
脂肪族アシル基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アシル基の例には、アセチル基、プロパノイル基およびブタノイル基が含まれる。
【0168】
脂肪族アシルオキシ基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アシルオキシ基の例には、アセトキシ基が含まれる。
【0169】
アルコキシ基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。アルコキシ基は、さらに置換基(例えば、アルコキシ基)を有していてもよい。アルコキシ基の(置換アルコキシ基を含む)例には、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基およびメトキシエトキシ基が含まれる。
【0170】
アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニル基およびエトキシカルボニル基が含まれる。
【0171】
アルコキシカルボニルアミノ基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。アルコキシカルボニルアミノ基の例には、メトキシカルボニルアミノ基およびエトキシカルボニルアミノ基が含まれる。
【0172】
アルキルチオ基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルキルチオ基の例には、メチルチオ基、エチルチオ基およびオクチルチオ基が含まれる。
【0173】
アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。アルキルスルホニル基の例には、メタンスルホニル基およびエタンスルホニル基が含まれる。
【0174】
脂肪族アミド基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アミド基の例には、アセトアミドが含まれる。
【0175】
脂肪族スルホンアミド基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。脂肪族スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基およびn−オクタンスルホンアミド基が含まれる。
【0176】
脂肪族置換アミノ基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族置換アミノ基の例には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基および2−カルボキシエチルアミノ基が含まれる。
【0177】
脂肪族置換カルバモイル基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。脂肪族置換カルバモイル基の例には、メチルカルバモイル基およびジエチルカルバモイル基が含まれる。
【0178】
脂肪族置換スルファモイル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。脂肪族置換スルファモイル基の例には、メチルスルファモイル基およびジエチルスルファモイル基が含まれる。
【0179】
脂肪族置換ウレイド基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。脂肪族置換ウレイド基の例には、メチルウレイド基が含まれる。
【0180】
非芳香族性複素環基の例には、ピペリジノ基およびモルホリノ基が含まれる。
【0181】
レタデーション発現剤の分子量は、300〜800であることが好ましい。
【0182】
円盤状化合物として下記一般式(I)で表されるトリアジン化合物を用いることが好ましい。
【0183】
【化25】

【0184】
上記一般式(I)中:
201は、各々独立に、オルト位、メタ位およびパラ位の少なくともいずれかに置換基を有する芳香族環または複素環を表す。
【0185】
201は、各々独立に、単結合または−NR202−を表す。ここで、R202は、各々独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基または複素環基を表す。
【0186】
201が表す芳香族環は、フェニルまたはナフチルであることが好ましく、フェニルであることが特に好ましい。R201が表す芳香族環はいずれかの置換位置に少なくとも一つの置換基を有してもよい。前記置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、アルキル置換スルファモイル基、アルケニル置換スルファモイル基、アリール置換スルファモイル基、スルオンアミド基、カルバモイル、アルキル置換カルバモイル基、アルケニル置換カルバモイル基、アリール置換カルバモイル基、アミド基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基およびアシル基が含まれる。
【0187】
201が表す複素環基は、芳香族性を有することが好ましい。芳香族性を有する複素環は、一般に不飽和複素環であり、好ましくは最多の二重結合を有する複素環である。複素環は5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましく、6員環であることが最も好ましい。複素環のヘテロ原子は、窒素原子、硫黄原子または酸素原子であることが好ましく、窒素原子であることが特に好ましい。芳香族性を有する複素環としては、ピリジン環(複素環基としては、2−ピリジルまたは4−ピリジル)が特に好ましい。複素環基は、置換基を有していてもよい。複素環基の置換基の例は、上記アリール部分の置換基の例と同様である。
【0188】
201が単結合である場合の複素環基は、窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基であることが好ましい。窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましく、5員環であることが最も好ましい。複素環基は、複数の窒素原子を有していてもよい。また、複素環基は、窒素原子以外のヘテロ原子(例えば、O、S)を有していてもよい。以下に、窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基の例を示す。ここで、−Cnは、n−Cを示す。
【0189】
【化26】

【0190】
202が表すアルキル基は、環状アルキル基であっても鎖状アルキル基であってもよいが、鎖状アルキル基が好ましく、分岐を有する鎖状アルキル基よりも、直鎖状アルキル基がより好ましい。アルキル基の炭素原子数は、1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましく、1〜10であることがさらに好ましく、1〜8がさらにまた好ましく、1〜6であることが最も好ましい。アルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基)およびアシルオキシ基(例えば、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基)が含まれる。
【0191】
202が表すアルケニル基は、環状アルケニル基であっても鎖状アルケニル基であってもよいが、鎖状アルケニル基を表すのが好ましく、分岐を有する鎖状アルケニル基よりも、直鎖状アルケニル基を表すのがより好ましい。アルケニル基の炭素原子数は、2〜30であることが好ましく、2〜20であることがより好ましく、2〜10であることがさらに好ましく、2〜8であることがさらにまた好ましく、2〜6であることが最も好ましい。アルケニル基は置換基を有していてもよい。置換基の例には、前述のアルキル基の置換基と同様である。
【0192】
202が表す芳香族環基および複素環基は、R201が表す芳香族環および複素環と同様であり、好ましい範囲も同様である。芳香族環基および複素環基はさらに置換基を有していてもよく、置換基の例にはR201の芳香族環および複素環の置換基と同様である。
【0193】
以下に一般式(I)で表される化合物の具体例を挙げるが、こられに限定されない。
【0194】
【化27】

【0195】
【化28】

【0196】
【化29】

【0197】
【化30】

【0198】
【化31】

【0199】
【化32】

【0200】
【化33】

【0201】
【化34】

【0202】
【化35】

【0203】
【化36】

【0204】
【化37】

【0205】
円盤状化合物としては下記一般式(II)で表されるトリフェニレン化合物を好ましく用いることもできる。
【0206】
【化38】

【0207】
上記一般式(II)中、R203〜R208は各々独立して、水素原子または置換基を表す。
【0208】
203〜R208が各々表す置換基としては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる)、アルケニル基(好ましくは、炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられる)、置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜40、より好ましくは炭素数0〜30、特に好ましくは炭素数0〜20のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アニリノ基などが挙げられる)、
アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜40、より好ましくは炭素数6〜30、特に好ましくは炭素数6〜20のアリールオキシ基であり、例えば、フェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる)、アシル基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のアシル基であり、例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜40、より好ましくは炭素数7〜30、特に好ましくは炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基であり、例えば、フェニルオキシカルボニル基などが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアシルオキシ基であり、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアシルアミノ基であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜40、より好ましくは炭素数7〜30、特に好ましくは炭素数7〜20のアリールオキシカルボニルアミノ基であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のスルホニルアミノ基であり、例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜40、より好ましくは炭素数0〜30、特に好ましくは炭素数0〜20のスルファモイル基であり、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のカルバモイル基であり、例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる)、
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基などが挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは、炭素数6〜40、より好ましくは炭素数6〜30、特に好ましくは炭素数1〜20、例えば、フェニルチオ基などが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のスルホニル基であり、例えば、メシル基、トシル基などが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のスルフィニル基であり、例えば、メタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のウレイド基であり、例えば、無置換のウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のリン酸アミド基であり、例えば、ジエチルリン酸アミド基、フェニルリン酸アミド基などが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12のヘテロ環基であり、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有するヘテロ環基であり、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、1,3,5−トリアジル基などが挙げられる)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)が含まれる。これらの置換基はさらにこれらの置換基によって置換されていてもよい。また、置換基を二つ以上有する場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
【0209】
203〜R208が各々表す置換基としては、好ましくはアルキル基、アリール基、置換もしくは無置換のアミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基またはハロゲン原子である。
【0210】
以下に一般式(II)で表される化合物の具体例を挙げるが、こられに限定されない。
【0211】
【化39】

【0212】
【化40】

【0213】
【化41】

【0214】
一般式(I)で表される化合物は、例えば特開2003−344655号公報に記載の方法、一般式(II)で表される化合物は、例えば特開2005−134884号公報に記載の方法等、公知の方法により合成することができる。
【0215】
〈棒状構造を有するレタデーション発現剤〉
本発明では前述の円盤状化合物の他に直線的な分子構造を有する棒状化合物も好ましく用いることができる。直線的な分子構造とは、熱力学的に最も安定な構造において棒状化合物の分子構造が直線的であることを意味する。熱力学的に最も安定な構造は、結晶構造解析または分子軌道計算によって求めることができる。例えば、分子軌道計算ソフト(例えば、WinMOPAC2000、富士通(株)製)を用いて分子軌道計算を行い、化合物の生成熱が最も小さくなるような分子の構造を求めることができる。分子構造が直線的であるとは、上記のように計算して求められる熱力学的に最も安定な構造において、分子構造で主鎖の構成する角度が140度以上であることを意味する。
【0216】
少なくとも二つの芳香族環を有する棒状化合物としては、下記一般式(11)で表される化合物が好ましい。
【0217】
一般式(11):Ar−L−Ar
上記一般式(11)において、ArおよびArは、それぞれ独立に、芳香族基である。
【0218】
本明細書において、芳香族基は、アリール基(芳香族性炭化水素基)、置換アリール基、芳香族性ヘテロ環基および置換芳香族性ヘテロ環基を含む。
【0219】
アリール基および置換アリール基の方が、芳香族性ヘテロ環基および置換芳香族性ヘテロ環基よりも好ましい。芳香族性ヘテロ環基のヘテロ環は、一般には不飽和である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましく、窒素原子または硫黄原子がさらに好ましい。芳香族基の芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環およびピラジン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
【0220】
置換アリール基および置換芳香族性ヘテロ環基の置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ブチルアミノ基、ジメチルアミノ基の各基)、ニトロ基、スルホ基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基(例えば、N−メチルカルバモイル基、N−エチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基の各基)、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基(例えば、N−メチルスルファモイル基、N−エチルスルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基の各基)、ウレイド基、アルキルウレイド基(例えば、N−メチルウレイド基、N,N−ジメチルウレイド基、N,N,N′−トリメチルウレイド基の各基)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、s−ブチル基、tert−アミル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基の各基)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基の各基)、アルキニル基(例えば、エチニル基、ブチニル基)、アシル基(例えば、ホルミル基、アセチル基、ブチリル基、ヘキサノイル基、ラウリル基の各基)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、ブチリルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、ラウリルオキシ基の各基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基の各基)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基の各基)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基)、アルコキシカルボニルアミノ基(例えば、ブトキシカルボニルアミノ基、ヘキシルオキシカルボニルアミノ基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基の各基)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、ペンチルスルホニル基、ヘプチルスルホニル基、オクチルスルホニル基の各基)、アミド基(例えば、アセトアミド基、ブチルアミド基、ヘキシルアミド基、ラウリルアミド基の各基)および非芳香族性複素環基(例えば、モルホリル基、ピラジニル基)が含まれる。
【0221】
なかでも、好ましい置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基およびアルキル基が挙げられる。
【0222】
アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基およびアルキルチオ基のアルキル部分とアルキル基とは、さらに置換基を有していてもよい。アルキル部分およびアルキル基の置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、スルホ基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基、ウレイド基、アルキルウレイド基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アミド基および非芳香族性複素環基が含まれる。アルキル部分およびアルキル基の置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニル基およびアルコキシ基が好ましい。
【0223】
一般式(11)において、L1は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−O−、−CO−およびそれらの組み合わせからなる基から選ばれる二価の連結基である。
【0224】
アルキレン基は、環状構造を有していてもよい。環状アルキレン基としては、シクロヘキシレンが好ましく、1,4−シクロヘキシレンが特に好ましい。鎖状アルキレン基としては、直鎖状アルキレン基の方が分岐を有するアルキレン基よりも好ましい。
【0225】
アルキレン基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、より好ましくは1〜15であり、さらに好ましくは1〜10であり、さらに好ましくは1〜8であり、最も好ましくは1〜6である。
【0226】
アルケニレン基およびアルキニレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有することが好ましく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造を有することがさらに好ましい。
【0227】
アルケニレン基およびアルキニレン基の炭素原子数は、好ましくは2〜10であり、より好ましくは2〜8であり、さらに好ましくは2〜6であり、さらに好ましくは2〜4であり、最も好ましくは2(ビニレン基またはエチニレン基)である。
【0228】
アリーレン基は、炭素原子数は6〜20であることが好ましく、より好ましくは6〜16であり、さらに好ましくは6〜12である。
【0229】
一般式(11)の分子構造において、Lを挟んで、ArとArとが形成する角度は、140度以上であることが好ましい。
【0230】
棒状化合物としては、下記式一般式(12)で表される化合物がさらに好ましい。
【0231】
一般式(12):Ar−L−X−L−Ar
上記一般式(12)において、ArおよびArは、それぞれ独立に、芳香族基である。芳香族基の定義および例は、一般式(12)のArおよびArと同様である。
【0232】
一般式(12)において、LおよびLは、それぞれ独立に、アルキレン基、−O−、−CO−およびそれらの組み合わせからなる基より選ばれる二価の連結基である。
【0233】
アルキレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有することが好ましく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造を有することがさらに好ましい。
【0234】
アルキレン基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましく、より好ましくは1〜8であり、さらに好ましくは1〜6であり、さらに好ましくは1〜4であり、1または2(メチレン基またはエチレン基)であることが最も好ましい。
【0235】
L2およびL3は、−O−CO−または−CO−O−であることが特に好ましい。
【0236】
一般式(12)において、Xは、1,4−シクロヘキシレン基、ビニレン基またはエチニレン基である。
【0237】
一般式(11)または(12)で表される化合物の具体例としては、特開2004−109657号公報の〔化1〕〜〔化11〕に記載の化合物が挙げられる。
【0238】
溶液の紫外線吸収スペクトルにおいて最大吸収波長(λmax)が250nmより長波長である棒状化合物を、二種類以上併用してもよい。
【0239】
棒状化合物は、文献記載の方法を参照して合成できる。文献としては、Mol.Cryst.Liq.Cryst.,53巻、229ページ(1979年)、同89巻、93ページ(1982年)、同145巻、111ページ(1987年)、同170巻、43ページ(1989年)、J.Am.Chem.Soc.,113巻、1349ページ(1991年)、同118巻、5346ページ(1996年)、同92巻、1582ページ(1970年)、J.Org.Chem.,40巻、420ページ(1975年)、Tetrahedron、48巻16号、3437ページ(1992年)を挙げることができる。
【0240】
また、特開2004−50516号公報の11〜14頁に記載の棒状芳香族化合物を、前記Re発現剤として用いてもよい。
【0241】
また、レタデーション発現剤として、一種の化合物を単独で、又は二種類以上の化合物を混合して用いることができる。レタデーション発現剤として互いに異なる二種類以上の化合物を用いると、レタデーションの調整範囲が広がり、容易に所望の範囲に調整できるので好ましい。
【0242】
前記セルロースアシレートフィルムをソルベントキャスト法で作製する場合は、前記レタデーション発現剤を、ドープ中に添加してもよい。添加はいずれのタイミングで行ってもよく、例えば、アルコール、メチレンクロライド、ジオキソラン等の有機溶媒にレタデーション発現剤を溶解してから、セルロースアシレート溶液(ドープ)に添加してもよいし、又は直接ドープ組成中に添加してもよい。
【0243】
その他、前記各公報に記載されている以外の棒状化合物の好ましい化合物の具体例を以下に示す。
【0244】
【化42】

【0245】
【化43】

【0246】
【化44】

【0247】
【化45】

【0248】
【化46】

【0249】
【化47】

【0250】
前記具体例(1)〜(34)、(41)、(42)は、シクロヘキサン環の1位と4位とに二つの不斉炭素原子を有する。ただし、具体例(1)、(4)〜(34)、(41)、(42)は、対称なメソ型の分子構造を有するため光学異性体(光学活性)はなく、幾何異性体(トランス型とシス型)のみ存在する。具体例(1)のトランス型(1−trans)とシス型(1−cis)とを、以下に示す。
【0251】
【化48】

【0252】
前述したように、棒状化合物は直線的な分子構造を有することが好ましい。そのため、トランス型の方がシス型よりも好ましい。
【0253】
具体例(2)および(3)は、幾何異性体に加えて光学異性体(合計4種の異性体)を有する。幾何異性体については、同様にトランス型の方がシス型よりも好ましい。光学異性体については、特に優劣はなく、D、Lあるいはラセミ体のいずれでもよい。
【0254】
具体例(43)〜(45)では、中心のビニレン結合にトランス型とシス型とがある。上記と同様の理由で、トランス型の方がシス型よりも好ましい。
【0255】
本発明では、必要に応じ、劣化防止剤、剥離促進剤、マット剤、滑剤、前述の可塑剤等を適宜用いることができる。
【0256】
(劣化防止剤)
本発明においてはセルロースアシレート溶液に公知の劣化(酸化)防止剤、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、4、4′−チオビス−(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1、1′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2、2′−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのフェノール系あるいはヒドロキノン系酸化防止剤を添加することができる。さらに、トリス(4−メトキシ−3,5−ジフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどのリン系酸化防止剤をすることが好ましい。劣化防止剤の添加量は、セルロース系樹脂100質量部に対して、0.05〜5.0質量部を添加する。
【0257】
(剥離促進剤)
本発明のλ/4板には、剥離促進剤を含むことが、より剥離性と高める観点から好ましい。剥離促進剤は、例えば、0.001〜1質量%の割合で含めることができ、0.5質量%以下の添加であれば剥離剤のフィルムからの分離等が発生し難いため好ましく、0.005質量%以上であれば所望の剥離低減効果を得ることができるため好ましいため、0.005〜0.5質量%の割合で含めることが好ましく、0.01〜0.3質量%の割合で含めることがより好ましい。剥離促進剤としては、公知のものが採用でき、有機、無機の酸性化合物、界面活性剤、キレート剤等を使用することができる。中でも、多価カルボン酸およびそのエステルが効果的であり、特に、クエン酸のエチルエステル類が効果的に使用することができる。
【0258】
本発明のλ/4板は、前記層Bに剥離促進剤を含むことが好ましい。
【0259】
(マット剤)
特に本発明のλ/4板には、ハンドリングされる際に、傷が付いたり搬送性が悪化することを防止するために、微粒子を添加することが一般に行われる。それらは、マット剤、ブロッキング防止剤あるいはキシミ防止剤と称されて、従来から利用されている。それらは、前述の機能を呈する素材であれば特に限定されず、無機化合物のマット剤であっても、有機化合物のマット剤であってもよい。
【0260】
前記無機化合物のマット剤の好ましい具体例としては、ケイ素を含む無機化合物(例えば、二酸化ケイ素、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなど)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロングチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ・アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくはケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、セルロースアシレートフィルムの濁度を低減できるので、二酸化ケイ素が特に好ましく用いられる。前記二酸化ケイ素の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。前記酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名で市販されているものが使用できる。
【0261】
前記有機化合物のマット剤の好ましい具体例としては、例えば、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。シリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、トスパール105、トスパール108、トスパール120、トスパール145、トスパール3120及びトスパール240(以上東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。
【0262】
これらのマット剤をセルロースアシレート溶液へ添加する場合は、特にその方法に限定されずいずれの方法でも所望のセルロースアシレート溶液を得ることができれば問題ない。例えば、セルロースアシレートと溶媒を混合する段階で添加物を含有させてもよいし、セルロースアシレートと溶媒で混合溶液を作製した後に、添加物を添加してもよい。更にはドープを流延する直前に添加混合してもよく、所謂直前添加方法でありその混合はスクリュー式混練をオンラインで設置して用いられる。具体的には、インラインミキサーのような静的混合機が好ましく、また、インラインミキサーとしては、例えば、スタチックミキサーSWJ(東レ静止型管内混合器Hi−Mixer)(東レエンジニアリング製)のようなものが好ましい。なお、インライン添加に関しては、濃度ムラ、粒子の凝集等をなくすために、特開2003−053752号公報は、セルロースアシレートフィルムの製造方法において、主原料ドープに異なる組成の添加液を混合する添加ノズル先端とインラインミキサーの始端部の距離Lが、主原料配管内径dの5倍以下とする事で、濃度ムラ、マット粒子等の凝集をなくす発明が記載されている。さらに好ましい態様として、主原料ドープと異なる組成の添加液供給ノズルの先端開口部とインラインミキサーの始端部との間の距離(L)が、供給ノズル先端開口部の内径(d)の10倍以下とし、インラインミキサーが、静的無攪拌型管内混合器または動的攪拌型管内混合器であることが記載されている。さらに具体的には、セルロースアシレートフィルム主原料ドープ/インライン添加液の流量比は、10/1〜500/1、好ましくは50/1〜200/1であることが開示されている。さらに、添加剤のブリードアウトが少なく、かつ層間の剥離現象もなく、しかも滑り性が良好で透明性に優れた位相差フィルムを目的とした発明の特開2003−014933号にも、添加剤を添加する方法として、溶解釜中に添加してもよいし、溶解釜〜共流延ダイまでの間で添加剤や添加剤を溶解または分散した溶液を、送液中のドープに添加してもよいが、後者の場合は混合性を高めるため、スタチックミキサー等の混合手段を設けることが好ましいことが記載されている。
【0263】
本発明のλ/4板は、層Bにマット剤を含有することが、フィルム面の摩擦係数低減による耐擦傷性、広幅フィルムを長尺で巻いたときに発生するキシミの防止、フィルム折れの防止の観点から好ましい。
【0264】
本発明のλ/4板において、前記マット剤は、多量に添加しなければフィルムのヘイズが大きくならず、実際にLCDに使用した場合、コントラストの低下、輝点の発生等の不都合が生じにくい。また、少なすぎなければ上記のキシミ、耐擦傷性を実現することができる。これらの観点から0.01〜5.0質量%の割合で含めることが好ましく、0.03〜3.0質量%の割合で含めることがより好ましく、0.05〜1.0質量%の割合で含めることが特に好ましい。
【0265】
(λ/4板の製造)
本発明のλ/4板は、溶液流延法、溶融流延法のいずれの方法で製造されてもよいが、溶液流延法により製造することが好ましい。
【0266】
本発明のλ/4板の製造は、セルロースアシレート、またはセルロースアセテート(以下、両者をまとめてセルロースアシレートと呼称する。)及びレタデーション調整剤、レタデーション発現剤、マット剤などの添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープをベルト状若しくはドラム状の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸する工程、更に乾燥する工程、必要であれば得られたフィルムを更に熱処理する工程、冷却後巻き取る工程により行われる。本発明のλ/4板は固形分中に好ましくはセルロースアシレートを60〜95質量%含有するものである。
【0267】
(ドープ調製)
ドープを調製する工程について述べる。ドープ中のセルロースアシレートの濃度は、濃度が高い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減出来て好ましいが、セルロースアシレートの濃度が高過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、更に好ましくは、15〜25質量%である。
【0268】
ドープで用いられる溶剤は、単独で用いても二種以上を併用してもよいが、セルロースアシレートの良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが生産効率の点で好ましく、良溶剤が多い方がセルロースアシレートの溶解性の点で好ましい。良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70〜98質量%であり、貧溶剤が2〜30質量%である。良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースアシレートを単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するか又は溶解しないものを貧溶剤と定義している。そのため、セルロースアシレートのアセチル基置換度によっては、良溶剤、貧溶剤が変わり、例えばアセトンを溶剤として用いる時には、セルロースの酢酸エステル(アセチル置換度2.4)では良溶剤になり、セルロースの酢酸エステル(アセチル基置換度2.8)では貧溶剤となる。
【0269】
本発明に用いられる良溶剤は特に限定されないが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等が挙げられる。特に好ましくはメチレンクロライド又は酢酸メチルが挙げられる。
【0270】
また、本発明に用いられる貧溶剤は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。また、ドープ中には水が0.01〜2質量%含有していることが好ましい。
【0271】
上記記載のドープを調製する時の、セルロースアシレートの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができる。加熱と加圧を組み合わせると常圧における沸点以上に加熱できる。溶剤の常圧での沸点以上でかつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため好ましい。また、セルロースアシレートを貧溶剤と混合して湿潤或いは膨潤させた後、更に良溶剤を添加して溶解する方法も好ましく用いられる。
【0272】
加圧は窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱によって溶剤の蒸気圧を上昇させる方法によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
【0273】
溶剤を添加しての加熱温度は、高い方がセルロースアシレートの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高過ぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。好ましい加熱温度は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70℃〜105℃が更に好ましい。また、圧力は設定温度で溶剤が沸騰しないように調整される。
【0274】
若しくは冷却溶解法も好ましく用いられ、これによって酢酸メチルなどの溶媒にセルロースアシレートを溶解させることができる。
【0275】
次に、このセルロースアシレート溶液を濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過する。濾過材としては、不溶物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さ過ぎると濾過材の目詰まりが発生しやすいという問題がある。このため絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材が更に好ましい。
【0276】
濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。濾過により、原料のセルロースアシレートに含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。
【0277】
輝点異物とは、二枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間にセルロースアシレートフィルムを置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光が漏れて見える点(異物)のことであり、径が0.01mm以上である輝点数が200個/cm以下であることが好ましい。より好ましくは100個/cm以下であり、更に好ましくは50個/m以下であり、更に好ましくは0〜10個/cm以下である。また、0.01mm以下の輝点も少ない方が好ましい。
【0278】
ドープの濾過は通常の方法で行うことができるが、溶剤の常圧での沸点以上で、かつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という)の上昇が小さく、好ましい。好ましい温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることが更に好ましい。
【0279】
濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることが更に好ましい。
【0280】
(流延)
ここで、ドープの流延について説明する。
【0281】
本発明にかかる層A及び層B用に調製したセルロースアシレート溶液(ドープ)から、ソルベントキャスト法により多層構造を有するセルロースアシレートフィルムを製造することができる。
【0282】
(共流延)
本発明では得られたセルロースアシレート溶液(ドープ)は、支持体としての平滑なバンド上或いはドラム上に前記2種以上の複数のセルロースアシレート液を流延して製膜することが好ましい。
【0283】
2種以上のドープを同時に支持体上に流延してもよいし、別々に支持体上に流延してもよい。別々に流延する逐次流延法の場合は、支持体側のドープを先に流延して支持体上である程度乾燥させた後に、その上に重ねて流延することが出来る。また、3種以上のドープを使用する場合、同時流延(共流延ともいう)と逐次流延を適宜組み合せて流延し、積層構造のフィルムを作製することも出来る。共流延若しくは逐次流延によって製膜されるこれらの方法は、乾燥されたフィルム上に塗布する方法とは異なり、積層構造の各層の境界が不明確になり、断面の観察で積層構造が明確には分かれないことがあるという特徴があり、各層間の密着性を向上させる効果がある。
【0284】
本発明のλ/4板の製造方法は、生産性の観点からは共流延で行うことが好ましく、公知の共流延方法を用いることができる。例えば、金属支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよく、例えば特開昭61−158414号、特開平1−122419号、特開平11−198285号の各公報などに記載の方法が適応できる。また、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延することによってもフィルム化することでもよく、例えば特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、特開平6−134933号の各公報に記載の方法で実施できる。また、特開昭56−162617号公報に記載の高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高,低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押出すセルロースアシレートフィルム流延方法でもよい。更に又、特開昭61−94724号、特開昭61−94725号の各公報に記載の外側の溶液が内側の溶液よりも貧溶媒であるアルコール成分を多く含有させることも好ましい態様である。
【0285】
あるいは、また、2個の流延口を用いて、第一の流延口により金属支持体に成型したフィルムを剥離し、金属支持体面に接していた側に第二の流延を行うことでより、フィルムを作製することでもよく、例えば特公昭44−20235号公報に記載されている方法である。流延するセルロースアシレート溶液は同一の溶液でもよいし、異なるセルロースアシレート溶液でもよく特に限定されない。複数のセルロースアシレート層に機能を持たせるために、その機能に応じたセルロースアシレート溶液を、それぞれの流延口から押出せばよい。さらに本発明に係るセルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光層など)を同時に流延することも実施しうる。本発明のフィルムを製造する方法としては、製膜が同時または逐次での多層流延製膜であることが好ましい。
【0286】
共流延の場合、各層の厚さは特に限定されないが、好ましくは層Bがλ/4板の総厚の0.2〜50%であることが好ましく、より好ましくは2〜30%の厚さであることが好ましい。3層以上の共流延の場合で、式(2)を満たすセルロースアセテートからなる層Bが複数層存在する場合には、層Bの厚みの合計がλ/4板の総厚の0.2〜50%であることが好ましく、より好ましくは2〜30%の厚さであることが好ましい。
【0287】
また、剥離剤を金属支持体側の層のみ含有させることも好ましい態様である。また、冷却ドラム法で金属支持体を冷却して溶液をゲル化させるために、支持体に接する側の層に貧溶媒であるアルコールを他方の層より多く添加することも好ましい。流延時のセルロースアシレートを含む溶液の粘度も層Aと層Bで異なっていても良く、層Bの粘度が層Aの粘度よりも小さいことが好ましいが、層Aの粘度が層Bの粘度より小さくてもよい。
【0288】
本発明のフィルムの製造方法では、上述のとおり層B用ドープに、棒状構造を有する位相差発現剤を含み、層Aには円盤状構造を有する位相差発現剤を添加することで、レタデーションの発現性を高めたセルロースアシレートの多層構造を有するフィルムを得ることができる。
【0289】
本発明では、多層流延したドープを乾燥させて支持体から剥離する。
【0290】
ドープは、ドラムまたは金属支持体上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18〜35質量%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたは金属支持体の表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ソルベントキャスト法における流延および乾燥方法については、米国特許2336310号、同2367603号、同2492078号、同2492977号、同2492978号、同2607704号、同2739069号、同2739070号、英国特許640731号、同736892号の各明細書、特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号、同62−115035号の各公報に記載がある。
【0291】
ドープは、表面温度が10℃以下のドラムまたは金属支持体上に流延することが好ましい。流延してから2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得られたフィルムをドラムまたは金属支持体から剥ぎ取り、さらに100℃から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶媒を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時のドラムまたは金属支持体の表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
【0292】
流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルト若しくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。キャストの幅は1〜4mとすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤が沸騰して発泡しない温度以下に設定される。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高過ぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。好ましい支持体温度としては0〜100℃で適宜決定され、5〜30℃が更に好ましい。或いは、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風又は冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は溶媒の蒸発潜熱によるウェブの温度低下を考慮して、溶媒の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡も防ぎながら目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。特に、流延から剥離するまでの間で支持体の温度及び乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行うことが好ましい。
【0293】
本発明のλ/4板が良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%が好ましく、更に好ましくは20〜40質量%又は60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%又は70〜120質量%である。また、該金属支持体上の剥離位置における温度を−50〜40℃とするのが好ましく、10〜40℃がより好ましく、15〜30℃とするのが最も好ましい。
【0294】
本発明においては、残留溶媒量は下記式で定義される。
【0295】
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
なお、Mはウェブ又はフィルムを製造中又は製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
【0296】
また、セルロースアシレートフィルムの乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離し、更に乾燥し、残留溶媒量が0.5質量%以下となるまで乾燥される。
【0297】
フィルム乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールをウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
【0298】
前記金属支持体から剥離する際に、剥離張力及びその後の搬送張力によってウェブは縦方向に延伸する為、本発明においては流延支持体からウェブを剥離する際は剥離及び搬送張力をできるだけ下げた状態で行うことが好ましい。具体的には、例えば50〜170N/m以下にすることが効果的である。その際、20℃以下の冷風を当て、ウェブを急速に固定化することが好ましい。
【0299】
セルロースアシレートフィルムは、更に延伸処理により屈折率(面内の遅相軸方向の屈折率nx、面内の遅相軸に垂直な方向の屈折率ny及び厚さ方向の屈折率nz)を調整することができる。本発明のλ/4板は、波長590nmで測定したRo(590)が120〜160nmの範囲内である。
【0300】
また、前述の式(ii)で表されるフィルム厚さ方向のレタデーション値Rtについては延伸倍率によって影響されるが、0〜400nmの範囲にあることが好ましい。
【0301】
(延伸工程)
本発明のλ/4板は、フィルムの遅相軸が長尺方向に対し20〜70°であることを特徴とし、より好ましくはフィルムの遅相軸が長尺方向に対し40〜50°、更には実質的に45°であることが好ましい。「実質的に45°」とは、44〜46°であることを意味する。そのため、フィルムをその長尺方向に対して任意の角度θ(20°<θ<70°、より好ましくは40〜50°、更に好ましくは実質的に45°)の方向に連続的に斜め延伸するのが好ましい。未延伸フィルムをその長尺方向に対して任意の角度θの方向に連続的に斜め延伸することにより、フィルムの長尺方向に対して角度θの配向軸を有する長尺の延伸フィルムを得ることができる。
【0302】
斜め延伸の方法としては、長尺方向に対して斜め方向に連続的に延伸して、ポリマーの配向軸を所望の角度に傾斜させるものであれば特に制約されず、公知の方法を採用することができる。
【0303】
セルロースアシレートフィルムを長手方向に対して任意の角度θ(20°<θ<70°、より好ましくは40〜50°、更に好ましくは実質的に45°)の方向に斜め延伸するためには、図1で示されるテンターを用いることが好ましい。図1は、テンターによる斜め延伸を示す模式図である。
【0304】
本発明に係る延伸フィルムの製造は、テンターを用いて行う。このテンターは、フィルムロール(繰出しロール)から繰り出されるフィルムを、オーブンによる加熱環境下で、その進行方向(フィルム幅方向の中点の移動方向)に対して斜め方向に拡幅する装置である。このテンターは、オーブンと、フィルムを搬送するための把持具が走行する左右で一対のレールと、該レール上を走行する多数の把持具とを備えている。フィルムロールから繰り出され、テンターの入口部に順次供給されるフィルムの両端を、把持具で把持し、オーブン内にフィルムを導き、テンターの出口部で把持具からフィルムを開放する。把持具から開放されたフィルムは巻芯に巻き取られる。一対のレールは、それぞれ無端状の連続軌道を有し、テンターの出口部でフィルムの把持を開放した把持具は、外側を走行して順次入口部に戻されるようになっている。
【0305】
なお、テンターのレール形状は、製造すべき延伸フィルムに与える配向角、延伸倍率等に応じて、左右で非対称な形状となっており、手動で又は自動で微調整できるようになっている。本発明においては、長尺の熱可塑性樹脂フィルムを延伸し、配向角θが延伸後の巻取り方向に対して、10°〜80°の範囲内で、任意の角度に設定できるようになっている。本発明において、テンターの把持具は、前後の把持具と一定間隔を保って、一定速度で走行するようになっている。
【0306】
図1は、斜め延伸するために用いるテンターのレールの軌道(レールパターン)を示している。セルロースアシレートフィルムの繰出し方向DR1は、延伸後のフィルムの巻取り方向(MD方向)DR2と異なっており、これにより、比較的大きな配向角をもつ延伸フィルムにおいても広幅で均一な光学特性を得ることが可能となっている。繰出し角度θiは、延伸前のフィルムの繰出し方向DR1と延伸後のフィルムの巻取り方向DR2とのなす角度である。本発明においては、上述のように20°〜70°の配向角を持つフィルムを製造するため、繰出し角度θiは、10°<θi<80°、好ましくは15°<θi<50°で設定される。繰出し角度θiを前記範囲とすることにより、得られるフィルムの幅方向の光学特性のバラツキが良好となる(小さくなる。)。
【0307】
フィルムロール(繰出しロール)から繰出されたセルロースアシレートフィルムは、テンター入口(符号aの位置)において、その両端(両側)を左右の把持具によって順次把持されて、把持具の走行に伴い走行される。テンター入口(符号aの位置)で、フィルム進行方向(繰り出し方向DR1)に対して略垂直な方向に相対している左右の把持具CL,CRは、左右非対称なレール上を走行し、予熱ゾーン、延伸ゾーン、熱固定ゾーンを有するオーブンを通過する。ここで、略垂直とは、前述の向かい合う把持具CL,CR同士を結んだ直線とフィルム繰出し方向DR1とがなす角度が、90±1°以内にあることを示す。
【0308】
予熱ゾーンとは、オーブン入口部において、両端を把持した把持具の間隔が一定の間隔を保ったまま走行する区間をさす。延伸ゾーンとは、両端を把持した把持具の間隔が開きだし、再び一定となるまでの区間をさす。また、冷却ゾーンとは、延伸ゾーンより後の把持具の間隔が再び一定となる期間において、ゾーン内の温度がフィルムを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tg℃以下に設定される区間をさす。
【0309】
各ゾーンの温度は、熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgに対し、予熱ゾーンの温度はTg+5〜Tg+20℃、延伸ゾーンの温度はTg〜Tg+20℃、冷却ゾーンの温度はTg−30〜Tg℃に設定することが好ましい。
【0310】
本発明に係る延伸工程における延伸倍率R(W/Wo)は、好ましくは1.3〜3.0倍、より好ましくは1.5〜2.8倍である。延伸倍率がこの範囲にあると幅方向厚さムラが小さくなるので好ましい。テンター延伸機の延伸ゾーンにおいて、幅方向で延伸温度に差を付けると幅方向厚さムラをさらに良好なレベルにすることが可能になる。なお、Woは延伸前のフィルムの幅、Wは延伸後のフィルムの幅を表す。
【0311】
(乾燥工程)
ウェブを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行うことができるが、簡便さの点で、熱風で行うことが好ましい。
【0312】
ウェブの乾燥工程における乾燥温度は好ましくはフィルムのガラス転移点−5℃以下、100℃以上で10分以上60分以下の熱処理を行うことが効果的である。乾燥温度は100〜200℃、更に好ましくは110〜160℃で乾燥が行われる。
【0313】
所定の熱処理の後、巻き取り前にスリッターを設けて端部を切り落とすことが良好な巻姿を得るため好ましい。更に、幅手両端部にはナーリング加工をすることが好ましい。
【0314】
(ナーリング加工)
ナーリング加工は、加熱されたエンボスロールを押し当てることにより形成することができる。エンボスロールには細かな凹凸が形成されており、これを押し当てることでフィルムに凹凸を形成し、端部を嵩高くすることができる。
【0315】
本発明のλ/4板の幅手両端部のナーリングの高さは4〜20μm、幅5〜20mmが好ましい。
【0316】
また、本発明においては、上記のナーリング加工は、フィルムの製膜工程において乾燥終了後、巻き取りの前に設けることが好ましい。
【0317】
ここまで共流延によってセルロースアシレートフィルムを積層して斜め延伸によりλ/4板を作製する方法について述べたが、本発明に係るλ/4板は、予め製膜された、式(1)を満たすセルロースアシレートからなるフィルムと式(2)を満たすセルロースアセテートからなるフィルムを粘着剤で貼合したフィルムを、斜め方向に延伸して作製しても良いし、それらのフィルムを各々既知の方法でけん化した後、ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマー接着剤で貼合した積層フィルムを斜め延伸して作製しても良い。
【0318】
(ヘイズ)
本発明のλ/4板は、ヘイズが1%未満であることが好ましく、0.5%未満であることがより好ましい。ヘイズを1%未満とすることにより、フィルムの透明性がより高くなり、光学フィルムとしてより用いやすくなるという利点がある。
【0319】
(平均含水率)
本発明のλ/4板は、25℃、相対湿度60%における平衡含水率が4%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましい。平均含水率を4%以下とすることにより、湿度変化に対応しやすく、光学特性や寸法がより変化しにくく好ましい。
【0320】
(膜厚)
本発明に係るλ/4板は、積層の総厚が80μm以下であることが好ましく、50μ以下であることがさらに好ましい。80μmより厚いフィルムは、色味の変動などが起きやすいため好ましくなく、また、近年の表示装置の薄型化の流れにもそぐわないため好ましくない。
【0321】
(フィルム長、幅)
本発明のλ/4板は、長尺であることが好ましく、具体的には、100〜10000m程度の長さであることが好ましく、ロール状に巻き取られる。また、本発明のλ/4板の幅は1m以上であることが好ましく、更に好ましくは1.4m以上であり、特に1.4〜4mであることが好ましい。
【0322】
(ハードコート層)
本発明のλ/4板上には、ハードコート層が設けられていることも好ましく、当該ハードコート層はクリアハードコート層又は防眩性ハードコート層のいずれかであることが好ましい。
【0323】
ハードコート層は、紫外線等活性エネルギー線照射により硬化する活性エネルギー線硬化樹脂を含有することが好ましい。
【0324】
活性エネルギー線硬化樹脂とは紫外線や電子線のような活性エネルギー線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂である。活性エネルギー線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線や電子線以外の活性エネルギー線照射によって硬化する樹脂でもよい。
【0325】
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、又は紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0326】
(反射防止層)
本発明のλ/4板のハードコート層上には反射防止層を設けることも好ましい。
【0327】
用いられる反射防止層は低屈折率層のみの単層構成でもよいが、多層の屈折率層を設けることも好ましい。λ/4板上に、ハードコート層を有し、その表面上に光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数、層順等を考慮して積層できる。反射防止層は、支持体よりも屈折率の高い高屈折率層と、支持体よりも屈折率の低い低屈折率層を組み合わせて構成したり、特に好ましくは、3層以上の屈折率層から構成される反射防止層であり、支持体側から屈折率の異なる3層を、中屈折率層(支持体又は防眩性ハードコート層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているものが好ましい。
【0328】
本発明に係る反射防止層の好ましい層構成の例を下記に示す。ここで/は積層配置されていることを示している。
【0329】
(λ/4板)/クリアハードコート層/低屈折率層
(λ/4板)/クリアハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
(λ/4板)/クリアハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
(λ/4板)/防眩性ハードコート層/低屈折率層
(λ/4板)/防眩性ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
(λ/4板)/防眩性ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
低屈折率層、中屈折率層、高屈折率層は公知の構成で形成することができるが、特に低屈折率層は中空球状シリカ系微粒子が好適に用いられることが好ましく、(I)多孔質粒子と該多孔質粒子表面に設けられた被覆層とからなる複合粒子、又は(II)内部に空洞を有し、かつ内容物が溶媒、気体又は多孔質物質で充填された空洞粒子が用いられる。
【0330】
上記、低屈折率層、中屈折率層、高屈折率層に関しては、特開2005−266051号公報に詳述されている。
【0331】
<偏光板>
本発明のλ/4板を利用した偏光板は、偏光子の吸収軸と該λ/4板の遅相軸が実質的に45°の傾きをもって貼合されて円偏光板とすることが好ましい。
【0332】
本発明に係る偏光板は、偏光子としてヨウ素、又は二色性染料をドープしたポリビニルアルコールを延伸したものを使用し、(λ/4板)/偏光子/光学フィルムの構成で貼合して製造することができる。
【0333】
上記光学フィルムは、特に限定されるものではないが、ポリマーフィルムであることが好ましく、製造が容易であること、光学的に均一性であること、光学的に透明性であることが好ましい。これらの性質を有していれば何れでもよく、例えば、セルロースエステル系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム,ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリビニルアセタール系樹脂フィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム又はアクリルフィルム等を挙げることができるが、これらに限定されるわけではない。これらのフィルムは溶液流延法或いは溶融法で製膜されたフィルムが好ましく用いられる。これらのうちセルロースエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンを含む)、シクロオレフィンポリマーフィルムが好ましく、本発明においては、特にセルロースエステルフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルムが、製造上、コスト面、透明性、均一性、接着性等の面から好ましい。例えば、市販のセルロースエステルフィルムとしては、コニカミノルタタック KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC16UR、KC4UE、KC8UE、KC4FR−1、KC4FR−2(以上コニカミノルタオプト(株)製)などが好ましく用いられる。
【0334】
本発明に係る偏光板に好ましく用いられる偏光子としては、ポリビニルアルコール系偏光フィルムが挙げられ、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。ポリビニルアルコール系フィルムとしては、エチレンで変性された変性ポリビニルアルコール系フィルムが好ましく用いられる。偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。延伸は、フィルム製膜方向に一軸延伸を行うことが好ましい。
【0335】
偏光子の膜厚は5〜40μm、好ましくは5〜30μmであり、特に好ましくは5〜20μmである。
【0336】
偏光板は一般的な方法で作製することができる。アルカリ鹸化処理した本発明のλ/4板は、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。もう一方の面には、前記光学フィルムを同様に鹸化処理して貼合することが好ましい。
【0337】
本発明のλ/4板の作製において、長手方向に対し実質的に45°の方向に延伸して作製されたλ/4板の場合には、偏光膜の吸収軸が長手方向に位置している偏光子と、偏光子の長手方向とλ/4板の遅相軸が20°以上70°未満、より好ましくは40°以上50°未満、特に好ましくは44°以上46°未満になるように、ロール・ツー・ロールで連続的に貼り合わせることができる。
【0338】
偏光板は、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成することができる。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。
【0339】
本発明のλ/4板は、偏光子の吸収軸とλ/4板の遅相軸がそれぞれ実質的に45°の傾きをもって貼合され、(λ/4板)/偏光子/(λ/4板)の順に積層された偏光板として用いられることも好ましい。この場合、偏光子の両側に来るλ/4板は、本発明の範囲を満たすものであれば、同一のものであっても異なっていてもよい。また、2枚のλ/4板は遅相軸が平行であっても直交していてもよい。このような構成の偏光板は、後述するように、有機EL表示装置を用いた立体画像表示装置の視認側に好ましく配置される。
【0340】
<液晶表示装置>
本発明に係る液晶表示装置は、偏光板が液晶セルよりも視認側に配置され、液晶セル、偏光子、λ/4板がこの順になるように設けられていることが好ましい。
【0341】
本発明に係る偏光板を液晶セルの視認側の面に貼合した液晶表示装置とすることによって、偏光サングラス等偏光作用のある光学部材を通して観察した場合でも表示画像が偏光軸の方向によって見え難くなるのを低減でき、使用環境に対してより耐久性が高い本発明に係る液晶表示装置を作製することができる。本発明に係る偏光板は反射型、透過型、半透過型LCD或いはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。
【0342】
液晶表示装置における本発明に係る偏光板の位置は、液晶セルに対して視認側へ配置が必要であり、本発明のハードコート付きλ/4板が更に視認側に配置されることで直線偏光を円偏光に変換し、偏光サングラス等偏光作用のある光学部材を通して観察した場合の視認性を大幅に改善できるものである。
【0343】
<有機EL表示装置>
有機EL画像表示装置としても、特に制限されず従来公知の有機EL画像表示装置において、本発明のλ/4板と偏光子からなる円偏光板を、複数の自発光型素子(有機EL素子)が面状に配列された画像形成セルの視認側に設ければよい。その際、λ/4板が偏光子よりも素子側にくるように配置する。このように配置することにより、素子の発光時および素子の非発光時のいずれにおいても、対向電極からの反射光の多くは偏光層に吸収される。したがって、コントラストの高い有機EL素子を提供できる。
【0344】
<立体画像表示装置>
本発明のλ/4板は、立体画像表示装置において、種々の態様において用いることができる。例えば、液晶表示装置と液晶シャッタメガネとからなる立体画像表示装置であって、当該液晶シャッタメガネが、(1)λ/4板、液晶セル、及び偏光子がこの順に設けられている、又は(2)λ/4板、偏光子、液晶セル、及び偏光子がこの順に設けられている液晶シャッタメガネである態様の立体画像表示装置において用いることができる。
【0345】
なお、いずれの態様の場合も、液晶表示装置の前側偏光板は、λ/4板、偏光子、光学フィルムがこの順に設けられており、λ/4板が視認側になるように配置される構成になっている。本発明においては、上記の態様・構成により、立体(3D)画像観賞時に首を傾けた際のクロストーク若しくは輝度低下及び色味変化を低減でき、使用環境に対して優れた視認性を保つことが可能で、使用環境に対してより耐久性が高い立体画像表示装置とすることができる。
【0346】
<有機EL立体画像表示装置>
また、本発明のλ/4板は、有機EL素子を使った立体画像表示装置にも適用することができる。本発明のλ/4板を有機EL立体画像表示装置に用いる場合には、λ/4板、偏光子、λ/4板がこの順に設けられた偏光板を、有機EL素子が面状に配列された画像形成セルの視認側に配置すればよい。このように配置することにより、素子の発光時および素子の非発光時のいずれにおいても対向電極からの外光反射を防止でき、また、上記のように液晶シャッタメガネを使った立体画像表示装置において、首を傾けた際のクロストーク若しくは輝度低下及び色味変化を低減することができ、視認性の良好な有機EL立体画像表示装置を提供することができる。
【実施例】
【0347】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0348】
(セルロースアシレートの合成)
特開平10−45804号公報、同08−231761号公報に記載の方法で、表1記載のセルロースアシレートを合成し、その置換度を測定した。具体的には、触媒として硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)を添加し、アシル置換基の原料となるカルボンを添加し40℃でアシル化反応を行った。この時、カルボン酸の種類、量を調整することでアシル基の種類、置換度を調整した。またアシル化後に40℃で熟成を行った。さらにこのセルロースアシレートの低分子量成分をアセトンで洗浄し除去した。
【0349】
置換度を測定は、ASTM−D817−96に規定の方法により求めた。
【0350】
<実施例101>
以下に示すセルロースアシレートドープを調製した。
【0351】
(層A用セルロースアシレートドープの調製)
セルロースアシレート樹脂:表1に記載のDAC1 100質量部
ジクロロメタン 406質量部
メタノール 61質量部
(層B用セルロースアセテートドープの調製)
セルロースアセテート樹脂:表1に記載のTAC1 100質量部
マット剤:表2に記載の化合物VI 0.12質量部
ジクロロメタン 406質量部
メタノール 61質量部
剥離促進剤:表2に記載の化合物VII 0.05質量部
上記の各セルロースアシレートドープを各々ミキシングタンクに投入し、撹拌して各成分を溶解した後、平均孔径34μmの濾紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターで濾過し、セルロースアシレートドープを調製した。
【0352】
次に、上記調製した層A用、層B用ドープを用いて、層B/層A/層Bの多層構造で製膜した。ドープを流延する際には、図2に示すように、走行する流延支持体の上に共流延ダイから上記3種類のドープを共流延した。
【0353】
図2は、共流延ダイ及び流延して多層構造ウェブを形成したところを表した図である。
【0354】
図中、共流延ダイ10、口金部分11、層B用スリット13、15、層A用スリット14、金属支持体16、層B用ドープ17、19、層A用ドープ18、多層構造ウェブ20、層B21、層A22、層B23を各々表す。
【0355】
ここで、各ドープの流延量を調整することにより、層Aの厚みが最も厚くなるように調整した。
【0356】
多層構造ウェブ20を流延支持体16から剥ぎ取った後、図1の装置を用い、長尺方向とのなす角度θが表3に記載の角度になる様に斜め方向に延伸を行い、十分に乾燥して、長尺状のセルロースアシレートフィルム101を作製した。延伸倍率や延伸温度は、表3に記載の面内位相差Roになるように、適宜調整して延伸を行った。
【0357】
【表1】

【0358】
【表2】

【0359】
【化49】

【0360】
<実施例102>
実施例101の層B用ドープを以下のものに変更して製膜した以外は、実施例101と同様に製造し、評価した。
【0361】
(層B用セルロースアセテートドープの調製)
セルロースアセテート樹脂:表1に記載のTAC1 100質量部
レタデーション調整剤:表2に記載の化合物I 20質量部
マット剤:表2に記載の化合物VI 0.12質量部
ジクロロメタン 406質量部
メタノール 61質量部
剥離促進剤:表2に記載の化合物VII 0.05質量部
<実施例103>
実施例102の層A、層B用のドープを以下のものに変更して製膜した以外は、実施例101、102と同様に製造し、評価した。
【0362】
(層A用セルロースアシレートドープの調製)
セルロースアシレート樹脂:表1に記載のDAC1 100質量部
レタデーション発現剤:表2に記載の化合物III 7質量部
ジクロロメタン 406質量部
メタノール 61質量部
(層B用セルロースアセテートドープの調製)
セルロースアセテート樹脂:表1に記載のTAC1 100質量部
レタデーション調整剤:表2に記載の化合物I 20質量部
レタデーション発現剤:表2に記載の化合物II 8.4質量部
マット剤:表2に記載の化合物VI 0.12質量部
ジクロロメタン 406質量部
メタノール 61質量部
剥離促進剤:表2に記載の化合物VII 0.05質量部
<実施例104、105、107〜113>
実施例103の条件を表3、表4のように変更した以外は、実施例103と同様に製造し、評価した。
【0363】
<実施例106>
実施例103の層A用ドープを以下に調整したものに変更した以外は、実施例103と同様に製造し、評価した。
【0364】
(層A用セルロースアシレートドープの調製)
セルロースアシレート樹脂:表1に記載のDAC1 100質量部
レタデーション発現剤:表2に記載の化合物III 7質量部
紫外線吸収剤:表2に記載の化合物VIII 3質量部
ジクロロメタン 406質量部
メタノール 61質量部
<比較例101>
以下のドープを調製した。
【0365】
セルロースアシレート樹脂:表1に記載のCAP1 100質量部
可塑剤:表2に記載の化合物IXとX 5.5/5.5質量部
レタデーション発現剤:表2に記載の化合物III 2.0質量部
マット剤:表2に記載の化合物VI 0.12質量部
ジクロロメタン 300質量部
エタノール 40質量部
このドープを用い、単層のセルロースアシレートフィルムを製膜した。その後、実施例101〜113と同様に、斜め方向に延伸してλ/4フィルムを作製した。実施例101〜113と同様の評価を行った結果を表4に示す。
【0366】
<比較例102>
以下のドープを調製した。
【0367】
(層A用セルロースアシレートドープの調製)
セルロースアシレート樹脂:表1に記載のTAC1 100質量部
レタデーション発現剤:表2に記載の化合物III 1質量部
添加剤:表2に記載の化合物IVとV 7.8/3.9質量部
ジクロロメタン 450質量部
メタノール 39質量部
(層B用セルロースアセテートドープの調製)
セルロースアセテート樹脂:表1に記載のTAC1 100質量部
レタデーション発現剤:表2に記載の化合物III 1質量部
添加剤:表2に記載の化合物IVとV 7.8/3.9質量部
マット剤:表2に記載の化合物VI 0.12質量部
ジクロロメタン 450質量部
メタノール 39質量部
剥離促進剤:表2に記載の化合物VII 0.05質量部
実施例101と同様に、共流延法により層B/層A/層Bの多層フィルムを製膜した。その後、ロール延伸機で縦一軸延伸処理を行った。ロール延伸機のロールは表面を鏡面処理した誘導発熱ジャケットロールを用い、各ロールの温度は個別に調整できるようにした。延伸ゾーンはケーシングで覆い、130℃とした。延伸部の前のロールは徐々に130℃に加熱できるように設定した。L/W比は2.5となるように延伸間距離を調整した。延伸後は冷却して巻き取った。得られた長尺フィルムを上記の方法で評価した結果を、表4に示す。
【0368】
<比較例103>
特開2010−58331号公報を参考にして、以下のドープを調製した。
【0369】
(層A用セルロースアシレートドープの調製)
セルロースアシレート樹脂:表1に記載のDAC1 100質量部
レタデーション発現剤:表2に記載の化合物XI 10質量部
ジクロロメタン 450質量部
メタノール 39質量部
(層B用セルロースアセテートドープの調製)
セルロースアセテート樹脂:表1に記載のTAC1 100質量部
レタデーション発現剤:表2に記載の化合物III 4質量部
マット剤:表2に記載の化合物VI 0.12質量部
ジクロロメタン 450質量部
メタノール 39質量部
剥離促進剤:表2に記載の化合物VII 0.05質量部
このドープを用い、共流延法により層B/層A/層Bの多層フィルムを製膜した。その後、実施例101〜113と同様に、斜め方向に延伸してλ/4フィルムを作製しようと試みたが、Ro(590)が本発明の範囲を満たすものはできなかった。実施例101〜113と同様の評価を行った結果を表4に示す。
【0370】
《評価》
作製したセルロースアシレートフィルムのレタデーション値Ro(450)とRo(590)を下記方法により測定した。
【0371】
(レタデーション値Ro(450)、Ro(590)、面内配向角の測定)
アッベ屈折率計と分光光源を用いてフィルム試料の平均屈折率を測定した。また市販のマイクロメーターを用いてフィルムの厚さを測定した。
【0372】
自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃55%RHの環境下24時間放置したフィルムにおいて、同環境下、波長450nmにおいてフィルムのレタデーション測定を行った。上述の平均屈折率と膜厚を下記式に入力し、波長450nmにおける面内位相差Ro(450)を求めた。測定は、幅手方向の中心部と、両端部に向かって50mmごと10点ずつの計21点について行い、平均値を表3、表4に示した。同様にして、波長590nmにおいてフィルム幅手方向の上記21点におけるレタデーション測定を行い、面内位相差Ro(590)と面内配向角を求め、その平均値を表3、表4に示した。面内配向角は、フィルムの搬送方向を0°とし反時計まわりに角度を定義して示した。また、上記21点におけるRo(590)の最大値と最小値の差を、Ro(590)の幅手方向バラつきと定義し、表3、表4に示した。同じく、上記21点における面内配向角の最大値と最小値の差を、面内配向角の幅手方向バラつきとし、表3、表4に示した。
【0373】
Ro=(nx−ny)×d
(式中、nx、nyは23℃RH、各波長における屈折率nx(フィルムの面内の最大屈折率、遅相軸方向の屈折率ともいう)、ny(フィルム面内で遅相軸に直交する方向の屈折率)であり、dはフィルムの厚み(nm)である。)
Ro(590)の幅手方向バラつきは、5nm以内であると本発明の効果が出ているといえる。また、面内配向角の幅手バラつきは1°以内であると均一性の高いフィルムであるということができる。
【0374】
(Ro(590)/Ro(450)の算出)
Ro(590)/Ro(450)は、上記の通りに求めたRo(450)の平均値とRo(590)の平均値を用い、Ro(590)をRo(450)で除することにより算出した。Ro(590)/Ro(450)は1より大きく、1.6以下であることが好ましい。
【0375】
(膜厚の測定)
幅手方向の中心部と、両端部に向かって50mmごと10点ずつの計21点について、マイクロメーターを用いてフィルム厚を測定し、その平均値を表3、表4に示した。また、上記21点における膜厚の最大値と最小値の差を膜厚の幅手方向バラつきとし、表3、表4に示した。膜厚の幅手方向バラつきが2μ以内であれば、膜厚均一性の高いフィルムであるといえる。
【0376】
(ヘイズ)
ヘイズメーター(1001DP型、日本電色工業(株)製)を使用して、JISK−6714に準じて測定した。測定はフィルム幅手方向の中心部と、両端部に向かって100mm間隔で5点ずつについて行い、平均値を表3、表4に示した。
【0377】
【表3】

【0378】
【表4】

【0379】
本発明によれば、幅手の平面性と光学的均一性が良好な、薄膜の長尺状λ/4板を提供することができる。
【0380】
<実施例201>
実施例103で作製したλ/4板を用いて、以下の要領で円偏光板を作製した。
【0381】
[円偏光板の作製]
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)し、長尺ロール状のフィルムを得た。
【0382】
これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し長尺ロール状の偏光子を得た。
【0383】
次いで、下記工程1〜5に従って、長尺ロール状の偏光子と、本発明のλ/4板103と、裏面側には市販のセルロースアセテートフィルム(コニカミノルタタックKC4UY、コニカミノルタオプト(株)製)をロールtoロールで貼り合わせて偏光板を作製した。
【0384】
工程1:60℃の2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に90秒間浸漬し、次いで水洗し乾燥して、偏光子と貼合する側を鹸化したλ/4板103′とKC4UY′を得た。
【0385】
工程2:前記偏光子を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
【0386】
工程3:工程2で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、これを工程1で処理したλ/4板103′の上にのせて配置した。
【0387】
工程4:工程3で積層したλ/4板103′と偏光子と、KC4UY′を圧力20〜30N/cm、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
【0388】
工程5:80℃の乾燥機中に工程4で作製した偏光子とλ/4板103′とKC4UY′とをロールtoロールで貼り合わせた試料を2分間乾燥し、本発明の偏光板201を作製した。上記偏光板は、λ/4板の遅相軸と偏光子の吸収軸が45°の傾きで貼合されていた。
【0389】
[有機EL表示装置の作製]
携帯電話W56T((株)東芝製)に実装された表示パネルから円偏光板を剥がし、本発明の円偏光板201を貼り付けた。その際、λ/4板が表示素子側になるように配置した。このようにして本発明の有機EL表示装置201を作製した。
【0390】
<実施例202>
実施例201で用いたλ/4板103を、本発明のλ/4板105に変更した以外は、実施例201と同様の方法で、有機EL表示装置202を作製した。
【0391】
<比較例201、202>
実施例201で用いたλ/4板103を、比較例のλ/4板101、102に変更した以外は、実施例201と同様の方法で、比較の有機EL表示装置201、202を作製した。
【0392】
《評価》
得られた有機EL表示装置を用いて以下の評価を行った。
【0393】
(外光下電圧無印加時の黒味評価)
上記表示装置を、23℃55%RHの部屋に24時間保存後、電圧を印加せず発光していない状態にして、照度約100lxの環境下に置き、表示パネル上の4隅と中央部の5点について、反射色の黒味レベルを以下のように視感評価を行った。
【0394】
◎:5点とも黒味が引き締まっており問題ない
○:1〜2点において光が漏れており、黒味が不十分な点がある
×:3点以上の点において黒味が不十分で問題である
評価した結果を表5に示す。
【0395】
【表5】

【0396】
評価した結果を表5に示す。本発明によれば、外光反射防止能にムラが生じず、黒味ムラのない表示装置を提供できる。
【0397】
<実施例301、実施例302>
本発明の実施例106のλ/4板に、以下の手順でハードコート層、反射防止層を設け、反射防止層付きλ/4板106′を作製した。
【0398】
(ハードコート層の塗設)
作製したλ/4板106の上に、下記ハードコート層塗布液1を塗布幅1.4mでダイコートし、80℃で乾燥した後、120mJ/cmの紫外線を高圧水銀灯で照射して硬化後の膜厚が6μmになるようにクリアハードコート層を設けた。
【0399】
(ハードコート層用塗布液1)
アセトン 45質量部
酢酸エチル 45質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 10質量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート 30質量部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 45質量部
ウレタンアクリレート(商品名U−4HA 新中村化学工業社製) 25質量部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、BASFジャパン社製) 5質量部
2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モノフォリノ−1−オン
(イルガキュア907、BASFジャパン社製) 3質量部
BYK−331(シリコーン界面活性剤、ビックケミー・ジャパン(株)製)
〈反射防止層の塗布〉
(中屈折率層の塗布)
ハードコート層表面上に、下記中屈折率層塗布液をダイコートし、80℃で乾燥した後、120mJ/cmの紫外線を高圧水銀灯で照射して、硬化後の膜厚が110nmとなるように中屈折率層を設けた。屈折率は1.60であった。
【0400】
(中屈折率層塗布液)
〈微粒子分散液2の作製〉
メタノール分散アンチモン複酸化物コロイド(固形分60%、日産化学工業(株)製アンチモン酸亜鉛ゾル、商品名:セルナックスCX−Z610M−F2)6.0kgにイソプロピルアルコール12.0kgを攪拌しながら徐々に添加し、微粒子分散液2を調製した。
【0401】
PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル) 40質量部
イソプロピルアルコール 25質量部
メチルエチルケトン 25質量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート 0.9質量部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 1.0質量部
ウレタンアクリレート(商品名:U−4HA 新中村化学工業社製) 0.6質量部
微粒子分散液2 20質量部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、BASFジャパン社製) 0.4質量部
2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モノフォリノプロパン
−1−オン(イルガキュア907、BASFジャパン社製) 0.2質量部
10%FZ−2207、プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液
(日本ユニカー社製) 0.4質量部
(低屈折率層の塗布)
上記中屈折率層上に、下記の低屈折率層塗布液をダイコートし、80℃で乾燥した後、120mJ/cmの紫外線を高圧水銀灯で照射して膜厚が92nmになるように低屈折率層を設け、反射防止層を作製した。屈折率は1.38であった。
【0402】
(低屈折率層塗布液)
<テトラエトキシシラン加水分解物3の調製>
テトラエトキシシラン230g(商品名:KBE04、信越化学工業社製)とエタノール440gを混合し、これに2%酢酸水溶液120gを添加した後に、室温(25℃)にて26時間攪拌することでテトラエトキシシラン加水分解物3を調製した。
【0403】
プロピレングリコールモノメチルエーテル 430質量部
イソプロピルアルコール 430質量部
テトラエトキシシラン加水分解物3 120質量部
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
(商品名:KBM503、信越化学工業社製) 3.0質量部
イソプロピルアルコール分散中空シリカゾル(固形分20%、触媒化成工業社製シリカゾル、商品名:ELCOM V−8209) 40質量部
アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート
(川研ファインケミカル社製) 3.0質量部
10%FZ−2207、プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液
(日本ユニカー社製) 3.0質量部
上記のように作製した、反射防止層付きλ/4板106′と、本発明の実施例105のλ/4板を、実施例201と同様の要領で偏光板化し、本発明の偏光板301′および偏光板302′を作製した。偏光板301′においては、偏光子の両側に配置されるλ/4板の遅相軸が互いに平行になるように偏光板化し、偏光板302′においては、偏光子の両側に配置されるλ/4板の遅相軸が互いに直交するように偏光板化を行った。
【0404】
偏光板301′および302′を、右目用画像と左目用画像を時系列で交互に切り替えて映し出すことができる有機EL表示装置の発光素子の視認側に来るように配置し、偏光板301′および302′に対応する立体画像表示装置301および302を作製した。本発明の偏光板を表示装置に組み入れる際、偏光板301′および302′の、反射防止層を設けたλ/4板106′の面が最も視認側にくるように向きに注意して組み立てた。
【0405】
また、液晶シャッター付きの立体画像鑑賞用眼鏡のパネル面側(目と反対の面側)にも、本発明の反射防止層付きλ/4板106′を貼合した。液晶シャッターの開閉の切り替えは、表示装置の右目用画像と左目用画像の切り替えに同期させた。
【0406】
作製した立体画像表示装置について3D映像視聴時の首を傾けた際のクロストーク、及び外光下での電圧無印加時の黒味について目視評価した。
【0407】
(外光下電圧無印加時の黒味評価)
実施例201と同じ基準で目視評価を行った。
【0408】
(3D映像視聴時の首を傾けた際のクロストークの評価)
23℃・55%RHの環境で3Dメガネをかけて、メガネが25°傾いた状態になるよう首を傾けた状態で3D映像を視聴し、クロストークを下記基準で評価した。
【0409】
◎:クロストークがまったくない
○:非常に弱いクロストークが見える
△:弱いクロストークが見える
×:クロストークがはっきり見える
以上のように評価した結果を表6に示す。
【0410】
【表6】

【0411】
本発明のλ/4板を装着した立体画像表示装置301、302は、外光下での黒味および3D映像視聴時の首を傾けた際のクロストークに優れていることが明かである。
【符号の説明】
【0412】
DR1 繰出し方向
DR2 巻取り方向
θi 繰出し角度(繰出し方向と巻取り方向のなす角度)
CR,CL 把持具
Wo 延伸前のフィルムの幅
W 延伸後のフィルムの幅
10 共流延ダイ
11 口金部分
13、15 層B用スリット
14 層A用スリット
16 金属支持体
17、19 層B用ドープ
18 層A用ドープ
20 多層構造ウェブ
21 層B
22 層A
23 層B

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長590nmにおける面内位相差Ro(590)がRo(590)=120〜160nmを満たす長尺状λ/4板であって、該長尺状λ/4板が下記(1)式を満たすセルロースアシレートからなる層Aと、下記(2)式を満たすセルロースアセテートからなる層Bを含む積層フィルムであり、かつ該積層フィルムの遅相軸が長尺方向に対し20〜70°の角度を有していることを特徴とする長尺状λ/4板。
式(1) 2.0<Z1<2.7
(式中、Z1は層Aのセルロースアシレートの総アシル置換度を表す。)
式(2) 2.7≦X2
(式中、X2は層Bのセルロースアセテートの総アセチル置換度を表す。)
【請求項2】
前記長尺状λ/4板が、層B/層A/層Bの順に隣接する積層フィルムであることを特徴とする請求項1に記載の長尺状λ/4板。
【請求項3】
総膜厚が80μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の長尺状λ/4板。
【請求項4】
前記層Bに脂肪族ポリエステル、アクリル系ポリマー、及びスチレン系ポリマーから選ばれる高分子量化合物の少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の長尺状λ/4板。
【請求項5】
前記層Bに棒状構造を有するレタデーション発現剤を含み、前記層Aに円盤状構造を有するレタデーション発現剤を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の長尺状λ/4板。
【請求項6】
前記層Bに含まれる棒状化合物の量WBと、前記層Aに含まれる円盤状化合物の量WAが、WB/WA=1.3〜1.6を満たすことを特徴とする請求項5に記載の長尺状λ/4板。
(WBは層Bに含まれるセルロースアセテート100質量部に対する棒状化合物の質量部、WAは層Aに含まれるセルロースアシレート100質量部に対する円盤状化合物の質量部を表す)
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の長尺状λ/4板と偏光子が隣接して配置され、偏光子の吸収軸とλ/4板の遅相軸が実質的に45°の向きとなるように配置されていることを特徴とする円偏光板。
【請求項8】
請求項7に記載の円偏光板を用いたことを特徴とするOLED表示装置。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の長尺状λ/4板と偏光子が、(λ/4板)/偏光子/(λ/4板)の順で隣接して配置され、偏光子の吸収軸とλ/4板の遅相軸が各々、実質的に45°の向きになるように配置され、かつ2枚のλ/4板の遅相軸が直交するように配置されたことを特徴とする偏光板。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の長尺状λ/4板と偏光子が、(λ/4板)/偏光子/(λ/4板)の順で隣接して配置され、偏光子の吸収軸とλ/4板の遅相軸が各々、実質的に45°の向きになるように配置され、かつ、2枚のλ/4板の遅相軸が平行になるように配置されたことを特徴とする偏光板。
【請求項11】
請求項9または10に記載の偏光板を用いたことを特徴とする立体画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−68438(P2012−68438A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213261(P2010−213261)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】