説明

長尺貨物輸送用の連結車両

【課題】それぞれの輸送台車の上下方向寸法を小さくし、長尺貨物の輸送を容易に行えるようにすることにある。
【解決手段】長尺貨物輸送用の連結車両は、鉄道車両の長手方向両端部をそれぞれ支持する前側輸送台車15と後側輸送台車16とを有している。それぞれの輸送台車15,16の台車本体20にはターンテーブル30が回転自在に装着されており、鉄道車両の長手方向端部がターンテーブル30に積載されている。また、ターンテーブル30の垂直軸よりも下方側に位置して、前輪軸23と後輪軸24とを相互に連結する連結部材37が台車本体20に水平軸42を軸心として回動自在に取り付けられている。これら連結部材37と水平軸42とにより構成されるねじり防止機構36により、前側輸送台車15のターンテーブル30と後側輸送台車16のターンテーブル30とが相互に平行に同一平面上に保持されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺貨物を積載して走行する長尺貨物輸送用の連結車両に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺鋼材や電柱等の長尺貨物を輸送する際には、長尺貨物を積載して走行する長尺貨物輸送用の連結車両が用いられる。長尺貨物輸送用の連結車両は、長尺貨物の長手方向一端部を支持する前側輸送台車と、長尺貨物の長手方向他端部を支持する後側輸送台車とを有している。この連結車両に長尺貨物が積載された状態では、前側輸送台車と後側輸送台車とが長尺貨物を介して連結されており、トラクタにより前側輸送台車を牽引することで後側輸送台車が追従走行され、長尺貨物が連結車両により輸送される。
【0003】
例えば、特許文献1、2には、長尺貨物としての鉄道車両を輸送するための連結車両が記載されている。この連結車両によれば、従来のようにクレーンを用いて鉄道車両を重量物貨物船に積み降ろしすることなく、鉄道車両を連結車両に積載してRORO船(自動車専用船)に積み降ろしすることが可能となる。このように、長尺貨物輸送用の連結車両を用いる場合には、車両積み込み用の埠頭において連結車両に鉄道車両を積載してRORO船内に積み込み、車両降ろし用の埠頭において連結車両によりRORO船から鉄道車両が降ろされることになる。
【0004】
長尺貨物輸送用の連結車両の前側輸送台車および後側輸送台車は、走行車輪が設けられた台車本体をそれぞれ有している。輸送台車としては、例えば、特許文献1に記載されるように左右一対の走行車輪が設けられた1軸タイプと、特許文献2に記載されるように台車本体の前方側に設けられる前輪と台車本体の後方側に設けられる後輪とを備えた2軸タイプとがある。この特許文献2に記載される輸送台車は、走行車輪としてラバータイヤを用いたラバータイヤボギー(RTB)となっている。
【0005】
台車本体の上方側には、鉛直方向つまり台車上下方向に延びる垂直軸を軸心としてターンテーブルが回転自在に装着されており、鉄道車両の長手方向端部を積載するためのボルスタがターンテーブルに支持されている。このターンテーブルによりボルスタに対して台車本体を回転させることで、連結車両を旋回させることができるようになっている。
【0006】
また、特許文献2に記載される輸送台車では、水平軸に対して回転可能なヒンジ機構がターンテーブルの上端部に設けられており、台車本体に対してボルスタが傾斜自在となっている。このヒンジ機構により、連結車両がRORO船のスロープを走行する際に台車本体に対してボルスタが傾斜されることで、前側輸送台車のボルスタと後側輸送台車のボルスタとを平行に保持することが可能となり、鉄道車両に車両左右方向を軸心とする曲げモーメントやねじりモーメントが作用することを防止できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−254477号公報
【特許文献2】特開2009−190507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載される輸送台車においては、ヒンジ機構がターンテーブルよりも上方側に設けられているため輸送台車の上下方向寸法が大きくなり、それぞれの輸送台車により鉄道車両を支持した状態での高さ寸法が大きくなってしまうこととなる。したがって、例えば、RORO船の出入り口の高さが低い場合には、連結車両によりRORO船内に鉄道車両を積み降ろしする際に鉄道車両を積載して連結車両がRORO船内に出入りすることができない。この場合には、従来のようにクレーンを用いて鉄道車両を重量物貨物船に積み降ろししなければならず、鉄道車両の輸送が煩雑となる。
【0009】
本発明の目的は、それぞれの輸送台車の上下方向寸法を小さくし、長尺貨物の輸送を容易に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の長尺貨物輸送用の連結車両は、長尺貨物の長手方向一端部を支持する前側輸送台車と、前記長尺貨物の長手方向他端部を支持する後側輸送台車とを有し、駆動車両により前記前側輸送台車を牽引することで前記後側輸送台車を追従走行させて前記長尺貨物を輸送する長尺貨物輸送用の連結車両であって、それぞれの前記輸送台車は、前方側に複数の前輪が設けられ、後方側に複数の後輪が設けられる台車本体と、台車上下方向に延びる垂直軸を軸心として回転自在に前記台車本体に装着され、前記長尺貨物の長手方向端部が積載されるターンテーブルと、前記垂直軸よりも下方側において前記前輪の前輪軸と前記後輪の後輪軸との間に設けられ、前記前輪軸および前記後輪軸と平行に延びる水平軸と、前記前輪軸と前記後輪軸とを相互に連結するとともに、前記水平軸を軸心として回動自在に前記台車本体に取り付けられる連結部材とを有し、前記前輪軸と前記後輪軸とが前記台車本体に対して台車上下方向に移動自在に取り付けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明の長尺貨物輸送用の連結車両は、前記前輪軸および前記後輪軸は、台車前後方向に延びる回動軸を軸心として回動自在に前記連結部材に取り付けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明の長尺貨物輸送用の連結車両は、前記水平軸は前記前輪軸および前記後輪軸よりも台車下方側に配置されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の長尺貨物輸送用の連結車両は、前記前側輸送台車と前記後側輸送台車とは共通仕様であることを特徴とする。
【0014】
本発明の長尺貨物輸送用の連結車両は、前記長尺貨物としての鉄道車両を輸送する際には、前記ターンテーブルに前記鉄道車両の走行車輪を固定するための複数の車輪止めが設けられ、当該車輪止めが前記ターンテーブルに対して台車前後方向に位置変更可能であることを特徴とする。
【0015】
本発明の長尺貨物輸送用の連結車両は、それぞれの前記輸送台車は、前記前輪および前記後輪としてソリッドタイヤを用いたポールトレーラであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、垂直軸よりも下方側に設けられた水平軸を軸心として、前輪軸と後輪軸とを相互に連結する連結部材を台車本体に回動自在に取り付けるようにしたので、長尺貨物輸送用の連結車両により長尺貨物を輸送する際に長尺貨物に曲げモーメントやねじりモーメントが作用することを防止できるとともに、それぞれの輸送台車の上下方向寸法を小さく設定することが可能となる。したがって、例えば、RORO船の出入り口の高さが低い場合でも鉄道車両を積載した状態で連結車両がRORO船内に出入りすることが可能となり、連結車両により鉄道車両の輸送を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態である長尺貨物輸送用の連結車両の側面図である。
【図2】図1に示す長尺貨物輸送用の連結車両の平面図である。
【図3】図1を一部拡大して示す側面図である。
【図4】図2を一部拡大して示す平面図である。
【図5】前側輸送台車の側面図である。
【図6】前側輸送台車の平面図である。
【図7】ターンテーブルに設けられた車輪止めを示す斜視図である。
【図8】車輪止めの固定位置を変更した状態を示す説明図である。
【図9】前側輸送台車を一部拡大して示す側面図である。
【図10】図9におけるA−A線に沿う断面図である。
【図11】前側輸送台車の背面図である。
【図12】(A)、(B)はそれぞれねじり防止機構の動作を示す説明図である。
【図13】長尺貨物輸送用の連結車両がスロープの途中を走行するときの状態を示す説明図である。
【図14】図13の状態におけるそれぞれの輸送台車を示す拡大図である。
【図15】長尺貨物輸送用の連結車両がスロープに進入するときの状態を示す説明図である。
【図16】図15の状態におけるそれぞれの輸送台車を示す拡大図である。
【図17】連結具の変形例を示す図3に対応する側面図である。
【図18】連結具の変形例を示す図4に対応する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1に示す長尺貨物輸送用の連結車両10は、長尺貨物としての鉄道車両11を輸送するための鉄道車両輸送用の連結車両であり、車両積み込み用の埠頭において鉄道車両11を積載してRORO船内に鉄道車両11を積み込むとともに、車両降ろし用の埠頭においてRORO船から鉄道車両11を降ろすために用いられる。この連結車両10により輸送される鉄道車両11は、旅客や貨物を乗せる車両本体12と、車両本体12の長手方向両端部にそれぞれ設けられる走行台車13とを有しており、一対の走行台車13により車両本体12の長手方向両端部が支持されている。それぞれの走行台車13には、線路上を走行するための複数の走行車輪14が設けられている。
【0020】
長尺貨物輸送用の連結車両10は、鉄道車両11の長手方向一端部を支持する前側輸送台車15と、鉄道車両11の長手方向他端部を支持する後側輸送台車16とを有しており、それぞれの輸送台車15,16に鉄道車両11の走行台車13が積載されるようになっている。連結車両10に鉄道車両11が積載された状態では、前側輸送台車15と後側輸送台車16とが鉄道車両11を介して連結されている。また、前側輸送台車15の前方側には、連結具(ドローバー)17を介して駆動車両としてのトラクタ18が連結されている。このトラクタ18により前側輸送台車15が牽引されることで後側輸送台車16が追従走行され、鉄道車両11が連結車両10により輸送される。鉄道車両11を車両積み込み用の埠頭から車両降ろし用の埠頭まで輸送する際には、鉄道車両11がそれぞれの輸送台車15,16に積載された状態で輸送される。
【0021】
図3は図1を一部拡大して示す側面図であり、図4は図2を一部拡大して示す平面図である。図5は前側輸送台車の側面図であり、図6は前側輸送台車の平面図である。
【0022】
前側輸送台車15は、複数の縦梁および横梁からなる矩形フレーム状に形成された台車本体20を有しており、台車本体20の前方側に複数の前輪21が設けられ、台車本体20の後方側に複数の後輪22が設けられている。前輪21は台車本体20の左右両側にそれぞれ一対ずつ(計4つ)設けられており、それぞれ対をなす前輪21が前輪軸23により相互に連結されて回転自在に支持されている。同様に、後輪22は台車本体20の左右両側にそれぞれ一対ずつ(計4つ)設けられており、それぞれ対をなす後輪22が後輪軸24により相互に連結されて回転自在に支持されている。この前側輸送台車15は、前輪軸23と後輪軸24とを備えた2軸タイプの輸送台車であり、前輪21および後輪22としてソリッドタイヤを用いたポールトレーラとなっている。
【0023】
前側輸送台車15の台車本体20の前端部には、前側輸送台車15とトラクタ18とを連結するための連結具17が着脱自在に取り付けられている。図3に示すように、連結具17の後端部は、前輪軸23および後輪軸24と平行に台車左右方向(水平方向)に延びる台車側揺動軸25を軸心として、台車本体20の前端部に台車上下方向(鉛直方向に)揺動自在に連結されている。また、図4に示すように、連結具17の前端部には台車上下方向に延びるキングピン(トラクタ側揺動軸)26が設けられており、連結具17の前端部はキングピン26を軸心としてトラクタ18の図示しないカプラに水平方向に回動自在に連結されている。この連結具17には、台車左右方向に貫通する一対のフォークポケット17aが形成されており、フォークリフトの一対の爪をフォークポケット17aに挿入して持ち上げた状態で、フォークリフトにより連結具17を運搬することが可能となっている。
【0024】
このように、前側輸送台車15とトラクタ18とを連結する連結具17を前側輸送台車15に着脱自在に取り付けるようにしたので、前側輸送台車15と後側輸送台車16とを共通仕様とすることができる。つまり、前側輸送台車15と後側輸送台車16とのいずれにも連結具17を着脱自在に取り付けることが可能となっている。これにより、前側輸送台車15と後側輸送台車16とを区別する必要がなくなるため、輸送台車15,16の製造や管理が容易となる。なお、本実施の形態においては、前側輸送台車15と後側輸送台車16とを共通仕様としているため、後側輸送台車16についての説明を省略する。
【0025】
台車本体20の台車上方側には、鉄道車両11の走行台車13が積載されるターンテーブル(ボルスタ)30が設けられている。ターンテーブル30は複数の縦梁および横梁からなる矩形フレーム状に形成されており、ターンテーブル30の略中央部から台車下方側へ向けて台車上下方向に延びる垂直軸31を備えている。この垂直軸31が台車本体20に形成された軸孔20aに挿通されることにより、ターンテーブル30は垂直軸31を軸心として水平方向に回転自在に台車本体20に装着されており、図6に矢印で示すように、ターンテーブル30が台車本体20に対して水平方向に回転可能となっている。
【0026】
ターンテーブル30には、走行台車13の走行車輪14を固定するための車輪止め32が取り付けられており、走行台車13の走行車輪14に対応させて車輪止め32がターンテーブル30の4隅にそれぞれ一対ずつ設けられている。ターンテーブル30に走行台車13が積載された状態では、走行台車13の走行車輪14がそれぞれ対応する一対の車輪止め32により固定され、走行台車13と輸送台車15,16とが互いに固縛されることで、輸送台車15,16に対して鉄道車両11が移動することが防止されている。
【0027】
このターンテーブル30により、前側輸送台車15および後側輸送台車16のターンテーブル30に鉄道車両の長手方向両端部をそれぞれ支持した状態で、ターンテーブル30に対して台車本体20を水平方向に回転させることが可能となる。つまり、連結車両10に鉄道車両11を積載した状態で、鉄道車両11の長手方向に対して台車本体20を水平方向に回転させることが可能となる。したがって、鉄道車両11に車両上下方向を軸心とする曲げモーメントやねじりモーメントが作用することなく、連結車両10を旋回させることができるようになっている。
【0028】
図7はターンテーブルに設けられた車輪止めを示す斜視図であり、図8は車輪止めの固定位置を変更した状態を示す説明図である。それぞれの車輪止め32は、ターンテーブル30に形成されたスライド孔33に沿って台車前後方向に移動自在に取り付けられており、ターンテーブル30には車輪止め32の複数の固定位置に対応させて複数の固定用ピン穴34が形成されている。この車輪止め32はいずれかの固定位置に移動された状態で対応する固定用ピン穴34に図示しない固定用ピンを挿通することにより、ターンテーブル30に対して当該固定位置に固定されるようになっている。
【0029】
このように、それぞれの車輪止め32はターンテーブル30に対して台車前後方向に位置変更可能であり、車輪止め32をターンテーブル30に対して台車前後方向に位置変更することで、走行車輪14の軸間距離の異なる鉄道車両11に適応することが可能となっている。例えば、図7に実線で示すように走行車輪14の軸間距離Lの鉄道車両11に適応するように設定された状態から、輸送台車15,16の前方側に設けられた一対の車輪止め32aを後方側へ位置変更するとともに、輸送台車15,16の後方側に設けられた一対の車輪止め32bを前方側へ位置変更することで、図7に二点鎖線で示すように走行車輪14の軸間距離Mの鉄道車両11に適応することが可能となる。
【0030】
それぞれの輸送台車15,16には、連結車両10が埠頭とRORO船との間で掛け渡されたスロープを走行する際に前側輸送台車15のターンテーブル30と後側輸送台車16のターンテーブル30とを平行に保持するために、ねじり防止機構(シーソー機構)36が設けられている。図9は前側輸送台車を一部拡大して示す側面図であり、図10は図9におけるA−A線に沿う断面図であり、図11は前側輸送台車の背面図である。図12(A)、(B)はそれぞれねじり防止機構の動作を示す説明図である。
【0031】
前側輸送台車15には、台車本体20よりも下方側つまり垂直軸31よりも下方側に位置させて、台車前後方向に延びる左右一対の連結部材37が設けられている。各連結部材37の前端部は、それぞれ対をなす前輪21の相互間に配置されており、前輪軸23を支持する軸支持部材38が連結部材37の前端部に取り付けられている。また、各連結部材37の後端部は、それぞれ対をなす後輪22の相互間に配置されており、後輪軸24を支持する軸支持部材39が連結部材37の後端部に取り付けられている。この連結部材37により、前輪軸23と後輪軸24とが相互に連結されている。
【0032】
図11に示すように、軸支持部材38,39は、台車前後方向に延びるピン部材(回動軸)40により連結部材37にそれぞれ回動自在に取り付けられており、前輪軸23および後輪軸24がピン部材40を軸心として台車上下方向に回動自在となっている。これにより、前輪21または後輪22が道路上の障害物に乗り上げた際には、前輪軸23または後輪軸24がピン部材40を軸心として回動され、障害物に乗り上げた前輪21または後輪22が台車本体20に対して上方側に移動されることで、台車本体20の左右方向を地面に対して水平に保持することが可能となる。例えば、前側輸送台車15の前輪21または後輪22が障害物に乗り上げた場合でも、前側輸送台車15のターンテーブル30の左右方向が地面に対して水平に保持されるため、前側輸送台車15のターンテーブル30の左右方向が後側輸送台車16のターンテーブル30の左右方向に対して傾斜することがない。したがって、鉄道車両11に車両前後方向を軸心とする曲げモーメントやねじりモーメントが作用することを防止できる。
【0033】
各連結部材37の長手方向(台車前後方向)中央部には、前輪軸23および後輪軸24と平行に台車左右方向に延びる水平軸42がそれぞれ設けられており、水平軸42が連結部材37の長手方向中央部を貫通した状態で取り付けられている。この水平軸42の軸中心Cは前輪軸23の軸中心Cfと後輪軸24の軸中心Crよりも台車下方側に配置されている。
【0034】
一方、台車本体20の前後方向略中央部には、台車本体20から下方側に延びる左右一対のブラケット43が固定されている。ブラケット43は下方側に開口する断面略コの字形状に形成されており、ブラケット43の内側に連結部材37の長手方向中央部が挿通されている。このブラケット43には連結部材37に取り付けられた水平軸42の軸方向両端部が支持されており、ブラケット43を介して、連結部材37が水平軸42を軸心として台車上下方向に回動自在に台車本体20に取り付けられている。
【0035】
これら連結部材37と水平軸42とによりねじり防止機構36が構成されており、ねじり防止機構36により、前輪軸23および後輪軸24が台車本体20に対して台車上下方向に移動自在に取り付けられている。例えば、図12(A)に示すように、連結部材37が水平軸42を軸心として図中反時計回り方向に回動されると、連結部材37の長手方向が台車本体20の前後方向に対して傾斜され、台車本体20に対して前輪21が下方側に移動されるとともに後輪22が上方側に移動される。逆に、図12(B)に示すように、連結部材37が水平軸42を軸心として図中時計回り方向に回動されると、連結部材37の長手方向が台車本体20の前後方向に対して傾斜され、台車本体20に対して前輪21が上方側に移動されるとともに後輪22が下方側に移動される。
【0036】
このねじり防止機構36には連結部材37の回動範囲を規制する規制部材44が設けられており、連結部材37よりも台車上方側に位置させて規制部材44がブラケット43に固定されている。一方、連結部材37の台車上方側の側面には、台車前後方向両側に向かうにつれて台車下方側にそれぞれ傾斜する一対の傾斜面37a,37bが形成されている。これにより、図12(A)に示すように、連結部材37の車両後方側の傾斜面37bが規制部材44に当接されることで、連結部材37が水平軸42を軸心として図中反時計回り方向に回動されることが防止される。逆に、図12(B)に示すように、連結部材37の車両前方側の傾斜面37aが規制部材44に当接されることで、連結部材37が水平軸42を軸心として図中時計回り方向に回動されることが防止される。
【0037】
また、台車本体20には、規制部材44の台車前後方向両側に位置させて、一対のストッパ部材45a,45bが設けられている。ストッパ部材45a,45bは台車本体20から台車下方側へ突出するように取り付けられており、台車下方側の端部にゴム材料等からなる弾性部46a,46bを備えている。連結部材37には、ストッパ部材45a,45bの弾性部46a,46bの少なくとも一方が常に弾性接触されており、輸送台車15,16の走行時に連結部材37が台車本体20に対してがたつくことが防止されている。図12(A)に示すように、連結部材37が水平軸42を軸心として図中反時計回り方向に回動される際には、車両前方側のストッパ部材45aの弾性部46aから連結部材37が離れるとともに、車両後方側のストッパ部材45bの弾性部46bが連結部材37により押し潰される。逆に、図12(B)に示すように、連結部材37が水平軸42を軸心として図中時計回り方向に回動される際には、車両前方側のストッパ部材45aの弾性部46aが連結部材37により押し潰されるとともに、車両後方側のストッパ部材45bの弾性部46bから連結部材37が離れることとなる。
【0038】
次に、連結車両10により鉄道車両11をRORO船内に積み降ろしする際に連結車両10が埠頭とRORO船との間に掛け渡されたスロープを走行するときの状態について説明する。図13は長尺貨物輸送用の連結車両がスロープの途中を走行するときの状態を示す説明図であり、図14は図13の状態におけるそれぞれの輸送台車を示す拡大図である。図15は長尺貨物輸送用の連結車両がスロープに進入するときの状態を示す説明図であり、図16は図15の状態におけるそれぞれの輸送台車を示す拡大図である。
【0039】
図13および図14に示すように、連結車両10がスロープの途中を走行するときには、前側輸送台車15が走行する路面Rfと後側輸送台車16が走行する路面Rrとが同一平面上にある。この場合には、それぞれの輸送台車15,16の連結部材37が台車本体20に対して平行に配置され、前輪軸23および後輪軸24が台車本体20に対して台車上下方向に移動されない。つまり、それぞれの輸送台車15,16の台車本体20が路面Rf,Rrと平行に配置され、前側輸送台車15のターンテーブル30と後側輸送台車16のターンテーブル30とが互いに平行に同一平面上に保持される。
【0040】
これに対し、図15および図16に示すように、連結車両10がスロープに進入するとき、つまり前側輸送台車15がスロープを走行するとともに後側輸送台車16が平坦な路面を走行するときには、前側輸送台車15が走行する路面Rfと後側輸送台車16が走行する路面Rfとが同一平面上にない。この場合には、前側輸送台車15の連結部材37が水平軸42を軸心として図中反時計回り方向に角度αだけ回動され、台車本体20に対して前輪21が下方側に移動されるとともに後輪22が上方側に移動される。ここで、角度αは、それぞれの輸送台車15,16の水平軸42の軸中心Cを結ぶ線分と路面Rfとのなす角度であり、前側輸送台車15の台車本体20が路面Rfに対して角度αだけ傾斜される。一方、後側輸送台車16は連結部材37が水平軸42を軸心として図中時計回り方向に角度βだけ回動され、台車本体20に対して前輪21が上方側に移動されるとともに後輪22が下方側に移動される。ここで、角度βは、それぞれの輸送台車15,16の水平軸42の軸中心Cを結ぶ線分と路面Rrとのなす角度であり、後側輸送台車16の台車本体20が路面Rrに対して角度βだけ傾斜される。これにより、前側輸送台車15のターンテーブル30と後側輸送台車16のターンテーブル30とが互いに平行に同一平面上に保持される。
【0041】
このように、それぞれの輸送台車15,16に設けられたねじり防止機構36により、前側輸送台車15のターンテーブル30と後側輸送台車16のターンテーブル30とが常に互いに平行に同一平面上に保持されるようにしたので、鉄道車両11に車両前後方向を軸心とする曲げモーメントやねじりモーメントが作用することを防止できる。なお、図13および図14においては、連結車両10がスロープを下り方向に走行するときについて説明したが、連結車両10が平坦な路面やスロープを上り方向に走行するときなど、路面Rfと路面Rrとが同一平面上にあるときについては同様である。また、図15および図16においては、連結車両10がスロープを下り方向に進入するときについて説明したが、連結車両10がスロープを上り方向に進入するときや連結車両10がスロープから平坦な路面へ進入するときなど、路面Rfと路面Rrとが同一平面上にないときについては同様である。
【0042】
このねじり防止機構36をターンテーブル30の垂直軸31よりも下方側に配置するようにしたので、ねじり防止機構をターンテーブルよりも上方側に配置するようにした場合に比べて、それぞれの輸送台車15,16の上下方向寸法を小さく設定することが可能となる。したがって、それぞれの輸送台車15,16により鉄道車両11を支持した状態での高さ寸法が大きくなることが抑制されるため、RORO船の出入り口の高さが低い場合でも鉄道車両11を積載した状態で連結車両10がRORO船内に出入りすることができ、連結車両10によりRORO船内へ鉄道車両11を積み降ろしすることが可能となる。よって、クレーンにより鉄道車両11を重量物貨物船に積み降ろしして鉄道車両11を輸送する必要がなくなり、鉄道車両11の輸送を容易に行うことができる。
【0043】
なお、前記実施の形態においては、連結具17の前端部に設けられたキングピン26とトラクタ18のカプラとを連結するようにしたが、連結具50の前端部に設けられたルネットアイとトラクタ18の後端部に設けられたピントルフックとを連結するようにしても良い。図17は連結具の変形例を示す図3に対応する側面図であり、図18は連結具の変形例を示す図4に対応する平面図である。図17および図18において、上述した部材と同様の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0044】
この連結具50の後端部は、図17に示すように、前輪軸23および後輪軸24と平行に台車左右方向(水平方向)に延びる台車側揺動軸25を軸心として、台車本体20の前端部に台車上下方向(鉛直方向に)揺動自在に連結されている。また、図18に示すように、連結具50の前端部に設けられたルネットアイとトラクタ18の後端部に設けられたピントルフックとを連結することにより、連結具50の前端部は、台車前後方向に延びるトラクタ側揺動軸51を軸心として、トラクタ18の後端部に水平方向に回動自在に連結されている。
【0045】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、前記実施の形態においては、水平軸42を前輪軸23および後輪軸24よりも台車下方側に配置するようにしたが、水平軸42の位置は垂直軸31よりも台車下方側であれば任意に変更可能である。但し、前記実施の形態のように、水平軸42を前輪軸23および後輪軸24よりも台車下方側に配置することで、それぞれの輸送台車15,16の上下方向寸法をより小さく設定することが可能となることはもちろんである。
【0046】
また、前記実施の形態においては、長尺貨物としての鉄道車両11を積載して輸送する連結車両10について説明したが、長尺貨物としては鉄道車両11に限られず、例えば、長尺鋼材や電柱等の長尺貨物を連結車両により輸送するようにしても良い。その場合には、長尺貨物が積載された連結車両が一般道を走行するようにしても良く、上り坂や下り坂を走行する際には図13〜図16と同様の動作をすることとなる。
【符号の説明】
【0047】
10 長尺貨物輸送用の連結車両
11 鉄道車両(長尺貨物)
15 前側輸送台車
16 後側輸送台車
17 連結具
18 トラクタ(駆動車両)
20 台車本体
21 前輪
22 後輪
23 前輪軸
24 後輪軸
30 ターンテーブル
31 垂直軸
32,32a,32b 車輪止め
36 ねじり防止機構
37 連結部材
40 ピン部材(回動軸)
42 水平軸
50 連結具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺貨物の長手方向一端部を支持する前側輸送台車と、前記長尺貨物の長手方向他端部を支持する後側輸送台車とを有し、駆動車両により前記前側輸送台車を牽引することで前記後側輸送台車を追従走行させて前記長尺貨物を輸送する長尺貨物輸送用の連結車両であって、
それぞれの前記輸送台車は、
前方側に複数の前輪が設けられ、後方側に複数の後輪が設けられる台車本体と、
台車上下方向に延びる垂直軸を軸心として回転自在に前記台車本体に装着され、前記長尺貨物の長手方向端部が積載されるターンテーブルと、
前記垂直軸よりも下方側において前記前輪の前輪軸と前記後輪の後輪軸との間に設けられ、前記前輪軸および前記後輪軸と平行に延びる水平軸と、
前記前輪軸と前記後輪軸とを相互に連結するとともに、前記水平軸を軸心として回動自在に前記台車本体に取り付けられる連結部材とを有し、
前記前輪軸と前記後輪軸とが前記台車本体に対して台車上下方向に移動自在に取り付けられていることを特徴とする長尺貨物輸送用の連結車両。
【請求項2】
請求項1記載の長尺貨物輸送用の連結車両において、前記前輪軸および前記後輪軸は、台車前後方向に延びる回動軸を軸心として回動自在に前記連結部材に取り付けられていることを特徴とする長尺貨物輸送用の連結車両。
【請求項3】
請求項1または2記載の長尺貨物輸送用の連結車両において、前記水平軸は前記前輪軸および前記後輪軸よりも台車下方側に配置されていることを特徴とする長尺貨物輸送用の連結車両。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の長尺貨物輸送用の連結車両において、前記前側輸送台車と前記後側輸送台車とは共通仕様であることを特徴とする長尺貨物輸送用の連結車両。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の長尺貨物輸送用の連結車両において、前記長尺貨物としての鉄道車両を輸送する際には、前記ターンテーブルに前記鉄道車両の走行車輪を固定するための複数の車輪止めが設けられ、当該車輪止めが前記ターンテーブルに対して台車前後方向に位置変更可能であることを特徴とする長尺貨物輸送用の連結車両。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の長尺貨物輸送用の連結車両において、それぞれの前記輸送台車は、前記前輪および前記後輪としてソリッドタイヤを用いたポールトレーラであることを特徴とする長尺貨物輸送用の連結車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−86585(P2012−86585A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232371(P2010−232371)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【特許番号】特許第4823380号(P4823380)
【特許公報発行日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000232818)日本郵船株式会社 (61)
【出願人】(304035975)株式会社MTI (46)
【出願人】(000229357)日本トレクス株式会社 (27)
【出願人】(390000594)株式会社レクザム (64)