説明

長手方向掃気式往復動ピストン内燃機関のためのシリンダ構造及びピストン

【課題】長手方向掃気式往復動ピストン内燃機関のためのシリンダ構造及びピストンに関する。
【解決手段】低速運転長手方向掃気式大型2気筒ディーゼルエンジンのためのシリンダ構造1は、ピストン3が、上死点及び下死点間をシリンダ軸Zに沿って往復可動に設けられ、掃気空気を燃焼空間200へ導入するための掃気空気入口41がシリンダに設けられている。また、ピストン3は2部品ピストンであり、ピストンリング33を含むジャケットピストン32及びジャケットピストン32内に位置されるメインピストン31を含む。また、ジャケットピストン32のための保持ユニット5がシリンダ2に設けられ、ジャケットピストン32がメインピストン31から、シリンダ軸Zに関して下死点の領域で保持ユニット5により持ち上げられることができ、それにより掃気空気41が燃焼空間200へ、ジャケットピストン32の掃気空気開口部を通じて導入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長手方向掃気式往復動ピストン内燃機関のための、特に本独立請求項の前文による、低速運転の長手方向掃気式大型2気筒ディーゼルエンジンのためのシリンダ構造及びピストンに関する。
【背景技術】
【0002】
大型のディーゼルエンジンは、船舶又は例えば電気エネルギ発生のための大型発電装置の駆動力として静置操作で汎用されている。この側面で、前記内燃機関は通常、連続運転状態で非常に長時間運転されるものであり、このことは前記運転上の高い安全性及び利用性を要求するものである。この理由で、特に、長期保守間隔、低摩損性及び燃料材料及び運転材料の経済的取り扱いが、前記装置を操作する上で操作管理者(オペレータ)にとって中心的な判断基準となる。とりわけ、かかる大型孔径(ボア)の低速運転ディーゼル機関のピストン動作挙動は、前記保守間隔の長さを決める決定的因子であり、さらに消費される潤滑油により運転コスト従って利益を直接的に決める決定的因子である。従って、ピストン動作挙動の複雑な問題は、大型ディーゼルエンジンにとってはますます高い重要性を持つものである。
【0003】
しかし大型ディーゼルエンジンについてはこれらのためだけでなく、前記ピストン潤滑は潤滑ユニットを通じて行われ、前記ユニットはピストン又はシリンダ壁内を流入・流出するように構成され、前記ユニットを通じて潤滑油が前記シリンダ壁表面に適用されることで前記ピストンとその運転表面間の摩擦を最小化し、従って前記運転表面と前記ピストンの摩損を最小化するものである。例えば、操作運転表面の摩損は、例えば今日、ブエルトジレの2気筒エンジンなどの現代的エンジンは1000時間運転期間で0.05mmより少ない程度である。かかる機関の潤滑油供給量は非常に少量であり1.3g/kWhより少ないが、これはコストをできるだけ削減するためだけでなく摩損を同時に最小化するためでもある。
【0004】
この側面で、多くの解決法方法が知られており、シリンダの運転表面の潤滑のための潤滑システムであり、これは潤滑システム自体の設計だけでなく潤滑方法にも関するものである。これに対応する解決方法は当業者によく知られている。
【0005】
潤滑性及びピストン動作挙動を改善するこれらの全ての方法はしかし1つの問題を未解決のまま残すものであり、この問題は前記構成により生じるものであり従ってこれまで知られた長手方向掃気式内燃機関全てについて生じる問題である。当業者に知られているように、新鮮な空気、しばしば掃気空気として参照される空気は一般的に、前記シリンダのより底部端で掃気空気開口部であって通常は掃気スリット形状の開口部を通じて、長手方向掃気式内2気筒機関へ導入され、一方で前記ピストンはその下死点近くに位置し、前記新鮮な空気の前記シリンダ内の燃焼室への通路を開放する。
【0006】
前記掃気スリットは、そこを通じて例えばターボ過給器により新鮮な空気が既定の圧力で前記シリンダへ注入されるものであり、一般的には前記掃気スリットの領域の前記シリンダの内部表面で前記潤滑油膜の均一な形成を可能とはしないものである。というのは掃気スリットは前記シリンダのシリンダ壁に開口しており、これにより潤滑油膜を壊すからである。これに関連して、前記シリンダの作動表面での潤滑油膜の形成への前記掃気スリットの悪影響は顕著であって、むしろ前記スリットの下及びずっと上でさえ顕著であり、このことは、前記掃気スリットが形成されるシリンダ部分の外側でさえそうであることを意味する。これは、前記掃気スリットによる前記シリンダ作動表面での潤滑油膜の流れが邪魔されることは、前記掃気スリットからずっと離れた領域にも影響し、従ってピストン動作挙動及びピストンとピストンリング間及び前記掃気スリットからずっと離れたシリンダ壁間それぞれの潤滑性に大きな悪影響を及ぼすことを意味する。
【0007】
さらに前記掃気スリットの副次的悪影響は、そのピストンリングとの協働から生じ、これらは下死点近くでその移動上で前記掃気スリットを通過する際に生じる。ピストンリングはある機械的に半径方向の既定張力を持ち、前記シリンダ壁と多かれ少なかれシーリングするようにシリンダ壁と協働し得るものであることから、これらは完全には閉鎖リングとして形成され、ピストンリングはむしろオープンリングとして形成され、ある程度のギャップを持ち半径方向外側向きの張力が生じ、これがピストンリングをシリンダ壁へ押し付けてシーリングする。好ましくない条件で、前記ギャップでピストンリングの境界が部分的に前記ピストンリングの半径方向外側への張力による掃気スリットへ押し付けられることが起こり得るが、これによりこれらは前記掃気スリットの下部境界で詰まり、これが前記掃気スリットの近くでシリンダ壁に危険な引っかき傷又は線条を生じる恐れがある。最悪の場合、これはピストン発作を引き起こしシリンダの破壊及び/又はピストンの破壊を引き起こし、特に外洋での船舶にとっては危険な状況となる得る。
【0008】
さらに、無視できない量の潤滑油が、ピストンリング構造が通過することにより前記スリットから失われる。ある量の潤滑油はピストンリング構造に蓄えられているが、ピストンリング構造は、シリンダ内を移動する際に前記ピストンリング構造内に潤滑油を集め、かつさらに前記ピストンリング構造で燃焼プロセスの際に大きく蓄積されるガス圧力の増加の対象とされこの中に蓄えられる。ピストンリング構造がその後掃気スリットを通過すると、ピストンリング構造に加えられる加圧は前記掃気スリットを通じて急激にレシーバスペース及び/又はピストンのサブスペースに放出され、それにより同時にピストンリング構造に蓄えられていた潤滑油の大部分がまた前記掃気スリットを通じてレシーバスペースへ移動する。これは一方では比較的高価な潤滑油の損失になり、他方ではレシーバスペースの不要な汚染を生じることとなる。さらに、潤滑油はピストン動作に役立たなくなる。
【0009】
さらなる不利は、前記掃気スリットの固定位置形状である。これは特に、「複数種類(dual)燃料」機関の可能な応用に関して不利となる。「複数種類燃料」機関とは、異なる燃料例えば重油に代えてガス又は異なる燃料で運転され得る機関である。特に、そのような応用の方法において位置する、掃気スリットの変更不可位置形状及び/又はサイズで不利となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この理由から、本発明の課題は、長手方向掃気式往復動ピストン内燃機関のための、新規なシリンダ構造及びピストンを提供することである。特に、低速運転の大型2気筒ゼルエンジンのためのものであり、これらは従来技術で知られた問題であって、既知のシリンダ構造の下部領域の掃気スリットによって特に決められる問題を防止するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を満たす本発明の主題は独立請求項1及び9に記載の構成により特徴付けられる。
【0012】
従属請求項は本発明の具体的な有利な実施態様に関連する。
【0013】
従って、本発明は、長手方向掃気式往復動ピストン内燃機関のシリンダ構造であり、特に低速運転長手方向掃気式大型2気筒ディーゼルエンジンに関するものであり、前記エンジンは、燃焼空間及び入口領域を含み、シリンダ内にピストンが設けられ、前記ピストンは上死点及び下死点間をシリンダ軸に沿って往復可動であり、シリンダ内で掃気入口が掃気を前記燃焼空間に導入するために前記シリンダに設けられている、ものである。本発明によれば、前記ピストンは2部品ピストン(two-parts-piston)であり、ピストンリングを含むジャケットピストンと前記ジャケットピストンに配置されるメインピストンを含む。この側面において、前記ジャケットピストンの保持ユニットは、前記ジャケットピストンが、前記シリンダ軸に関して下死点の領域で前記保持ユニットにより前記メインピストンから持ち上げられ得るように、前記シリンダに設けられ、それにより前記掃気は、前記ジャケットピストンの掃気開口部を通じて前記入口領域から前記燃焼空間に導入され得る。
【0014】
本発明による前記ピストンは、2部品、即ち外側ジャケットピストンとその中に配置されるメインピストンからなるものであり、さらに前記ジャケットピストンの前記シリンダの底部端に保持ユニットが設けられ、前記ジャケットピストンが、下死点の領域で前記メインピストンから前記保持ユニットにより前記シリンダ軸に関して持ちあげられ得るように構成されているものである。これにより、前記掃気(空気)は前記燃焼空間に、前記入口領域から前記ジャケットピストンの掃気開口部、前記ジャケットピストン及び/又は前記ジャケットピストンに設けられるピストンリングを通じて前記入口領域から導入されることができるようになる。従って前記ピストンは全体として、下死点近くでの移動において、前記掃気開口部従って特に掃気スリットとは直接に接触することがなくなり、前記掃気スリットを完全に省くことも可能とする。
【0015】
これは次のことを意味する。即ち、本発明による解決手段において、掃気スリットの開放機能が、前記2部品ピストンの前記下死点の下部領域での動きに置換される、ということである。これは次の際に生じる。即ち、燃焼プロセスが前記下死点への方向で完了した後に動く際に、前記シリンダが好ましくは減衰的に支持可能に、前記シリンダの前記下部領域の前記シリンダランニングブッシュに設けられるか又はそれに一体化されている前記保持ユニット上に配置される、際である。前記メインピストンは効果的に固定的に前記ピストンロッドを介して前駆クランクシャフトへ接続されていることから、前記メインピストンはさらに下死点方向へ進み、一方で前記ジャケットピストンは前記保持ユニットにより保持され、かつ前記ジャケットピストンはこの位置を前記メインピストンが下部下死点から再び上死点へ戻り、再び前記ジャケットピストンと一緒になるまで維持する。
【0016】
このようにして、前記ジャケットピストンに設けられたピストンリング構造の前記ピストンリングは常に、前記シリンダの前記シリンダランニングブッシュの閉鎖部内に維持され、従って前記ピストンリング構造内に含まれる潤滑油の、例えば前記掃気スリットを通じて、前記ピストンの下部への放出はもはや生じないこととなる。
【0017】
異なる効果がまた奏される。というのは、前記ピストンジャケット及び従って前記ピストンリング構造は、本発明のシリンダ構成におけるシリンダの下部領域での掃気開口部とは直接協働せず、空気入口開口部を通じて、例えばターボ過給器からの新鮮な空気が既定の圧力で前記シリンダ内へ注入され得る、からである。
【0018】
前記ピストン上部部分は、従来技術から知られている前記掃気閉鎖プロセスの際の油煙(oil cloud)に晒されるが、これは前記ピストン上部部分が掃気スリットを閉鎖する際であることを意味する。この油煙は、シリンダ潤滑油から生じるものであり、まず前記ピストンの下部側へ吹きこまれるものであるが、例えばピストンの下死点方向への下方移動の際に前記ピストンリングの前記リング構造から放出される圧力を介して生じるものである。このような油煙はその後それ自体、堆積物、燃焼及び炭化して前記ピストン上部で潤滑油コーキングとなり、これにより知られた損傷である「リニアポリッシュ」を生じさせ、最悪の場合にはピストン停止となる。本発明による2部品ピストンでは、前記ピストンの上部部分は掃気中の前述の油煙には晒されることはない。というのは前記ジャケットピストンの周縁表面は掃気とは直接接触することはないからでる。従って、本発明の2部品ピストンの使用において、前記ピストンの上部部分での潤滑油コーキング堆積損傷は効果的に防止されるか、又は大きく低減され得る。
【0019】
さらなる効果が奏される。即ち、本発明による前記シリンダ構造について、前記ジャケットピストン及び従ってピストンリング構造は、前記シリンダの下部領域での空気開口部とはもはや協働せず、空気入口開口部を通じて、例えばターボ過給器からの新鮮な空気が既定の圧力で前記シリンダ内へ導入され、それにより前記シリンダの内部表面での潤滑油膜の完全に均一な膜が形成されることが可能となる。前記潤滑油膜は、前記シリンダ作動表面の前記シリンダ下部端(ここに前記保持ユニットが位置する)への全体にわたり完全に均一な膜を形成可能となる。
【0020】
前記シリンダ壁での潤滑油膜は従って、空気導入開口部には干渉されることはない。というのは潤滑油膜は前記空気入口開口部の領域には形成されず、前記保持ユニットまで形成されるからである。前記空気入口開口部の悪影響、即ち例えば前記潤滑油膜が形成される前記掃気スリットによる悪影響は、このようにして除外されることとなる。
【0021】
従って、前記空気開口部と前記ピストンリングとの損傷を生じる恐れのある協働が避けられる。というのは、これらはもはや前記空気開口部とは直接協働することはないからである。従って、前記ピストンリングの前記ギャップでの境界はまた、前記空気開口部に対して、前記ピストンリングの半径方向外側向きの張力による前記開口部への押し付けは存在せず、従って前記掃気スリットとの境界で動きが止められることもない。従って、本発明によるシリンダ構造によると、前記シリンダ及び/又はシリンダ壁の引っ掻き傷、条線などが生じることはない。
【0022】
また、潤滑油が前記掃気スリットから失われることもない。というのは前記ピストンリングは前記空気入口開口部とはもはや直接接触するものはなく、従って潤滑油は前記ピストンリング構造に維持され、さらなる潤滑作用に利用されるからである。これにより最終的に、大きな量の潤滑油が節約でき、前記ピストン及び前記シリンダ間の潤滑性能が大きく改良されることなる。特に下死点及び前記レシーバスペースの近くの前記シリンダの底部領域はもはや前記ピストン構造からの潤滑油の汚染が生じないこととなる。
1つの好ましい実施態様では、減衰エレメントが前記保持ユニット及び/又は前記ジャケットピストンに設けられ、それにより前記ジャッケットピストンは減衰的に前記保持ユニットに受けいれられる。作動状態では、前記ピストンはその底部下死点へ向かって大きな速度で移動し、従ってほとんどの場合、減衰エレメントが設けられる必要があり、それにより前記ジャケットピストンが前記保持ユニットによりあまりに急激に制動されないようにされるべきである。この急激な制動は、前記ピストン及びシリンダに大きな損傷を与える恐れがあるからである。
【0023】
この側面において、本発明の構造は、最初に設定装置を設けてし、この掃気空気開口部の開口断面を設定可能とすることを提供する。本発明の2部品ピストンのさらなる利点は、前記掃気開口部の断面が変更可能に設定可能であるということである。所与のピストン形状について、前記開口断面は即ち、開状態での前記ジャケットピストン及び前記メインピストン間の距離から実質的に決まる。
【0024】
この側面で、この距離は例えばまた、前記ピストンの前記下死点から前保持ユニットの距離が変更されることにより影響され、又は例えば前記ジャケットピストンの静位置が変更されることにより影響される。ここで設定装置が前記保持ユニット及び前記ジャケットピストン間に設けられる(例えば、スペーサの形で)。前記保持ユニットと前記ジャケットピストン間の距離を前記設定装置によってより大きく選択されるほど、前記メインピストン及び前記ジャケットピストン間の前記掃気のための開口部断面は所与のクランク角に対し大きくなる。これはまた、前記保持ユニットと前記底部下死点間の距離をより大きく選択される場合でも同様である。
【0025】
この側面において、前記設定装置は、例えば、油圧設定装置、空気圧設定装置又は電気的設定装置であり、前記設定装置はとりわけ、前記保持ユニット及び/又は前記ジャケットピストンに設けられる。特に例えば、前記減衰エレメントもまた、1つの設定装置として追加的に対応して設計され得る。このことは、前記設定装置は、例えば、前記シリンダの前記保持ユニットの軸位置に設けられる得ることを意味する。この目的で、前記保持ユニットは例えば、前記シリンダの前記内部のリングとして設けられることができ、これは前記設定装置を通じて前記シリンダ軸に沿って交換可能である。又は、異なる例では、前記設定装置はスペーサエレメントであって、その高さは変更可能であり、前記ジャケット及び前記保持ユニットの間に設けられ得る。
【0026】
前記掃気のための前記開口部断面の設定を変更することができるということ、即ち前記掃気プロセスを自由に構成できることにより、前記機関を単純にかつ非常に柔軟に最適化することができる。つまり、前記メインピストン及び前記ジャケットピストン間の開口断面領域例えば部分的負荷領域などのある負荷領域について、変更することで可能となる。
【0027】
さらに、本発明によるシリンダ構造を持つ機関はまた、ガス、重油、ディーゼル油又は他の代替燃料などの異なる燃料を用いて作動させ得る「複数種類燃料」機関として初めて使用され得るものである。というのは、前記掃気プロセスにおいて前記燃焼空間へ導入される掃気量は前記最初について非常に広い範囲で変更可能であるからである。
【0028】
この側面において特に有利に、排油穴(bore)が潤滑油の交換のための前記シリンダに設けられる。前記排油穴を通じて例えば、潤滑油は前記シリンダの内部から前記シリンダの作動表面から外部へ取り出され、廃棄されるか、又は再使用される。又は、前記排油穴を通じて前記シリンダへ潤滑油を供給することも可能である。
【0029】
特に好ましくは、中心化手段を、前記メインピストン及び/又は前記ジャケットピストンに設け、前記ジャケットピストンに関して前記メインピストンを中心化して、それにより、一方では、前記メインピストンが前記ジャケットピストンへ形状適合的に繰り返し導入され得るようにすることである。さらに他方では、前記ピストンとの組み合わせにおいて、前記メインピストン及び前記ジャケットピストンが常に形状適合的に協働し、前記燃焼空間が、前記掃気相の開始までの前記圧縮相、燃焼相及び拡張相の際の、前記ピストンサブスペースに対して安全にシールされることである。
【0030】
この側面において、前記中心化手段は例えば、当業者には明らかな方法における、前記ジャケットピストンの内部及び/又は前記メインピストンの外側表面のガイドブッシュであり得る。またそれは特に好ましくは、前記メインピストン及び/又は前記ジャケットピストンの円錐形状であり得る。前記ピストンが、下死点から上死点への方向に上向き移動を開始する際に、前記メインピストンは自動的にそれ自体を前記ジャケットピストン内に中心化し、それにより前記ジャケットピストンの掃気スリットを閉じ、前記ピストンは再び作動ピストンとしての本来の機能を取り戻すこととなる。
【0031】
さらに本発明は、本発明によるシリンダ構造を持つ、長手方向掃気式往復動ピストン内燃機関、特に低速運転長手掃気式大型2気筒ディーゼルエンジンのためのピストンに関する。本発明のピストンは、この関連で、前記シリンダ構造に設置可能なものであり、上死点及び下死点間を前記シリンダ軸に沿って往復運動し得るものである。本発明によれば、前記ピストンは2部品ピストンであり、ピストンリングを含むジャケットピストンと前記ジャケットピストン内に位置し得るメインピストンを持ち、前記ジャケットピストンが、前記設置状態で前記シリンダ軸に関して前記下死点の領域にある保持ユニットにより前記メインピストンから持ち上げられ得るものである。
【0032】
この側面において、減衰エレメントは特に好ましく前記ジャケットピストンに設けられる。
【0033】
造り付け状態での特別に設けられた設定装置の手段により、前記ジャケットピストンの掃気スリットの開口断面が設定可能となる。ここで前記設定装置は有利には油圧式、空圧式設定装置である。特に前記設定装置は、前記ジャケットピストンに設けられ、前記減衰エレメントは特にそれ自体が設定装置として形成されるものである。
【0034】
特に好ましくは、中心化手段が、メインピストン及び/又は前記ジャケットピストンに設けられて前記メインピストンを前記ジャケットピストン内に中心化する。ここで前記中心化手段は、例えばガイドブッシュであり、前記ピストン又は前記ジャケットピストンの円錐形状を持つ。
【0035】
本発明はさらに図面を参照しつつ詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、長手方向部分に掃気スリットを持つ円筒形状シリンダ構造を示す。
【図2a】図2aは、閉じた状態での本発明による第1のシリンダ構造を模式的に示す。
【図2b】図2bは、開いた状態で図2aのピストンのシリンダ構造を模式的に示す。
【図3】図3は、排油穴及び設定装置を持つ本発明のシリンダ構造の第2の実施態様を示す。
【図4a】本発明のピストンの具体的な実施態様を示す。
【図4b】図4aの例の透視図である。
【図4c】図4a及び/又は図4bによるジャケットピストンの内部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、シリンダライナ2’、ピストン3’及び新鮮空気供給システム400’を含むシリンダ構造1’の断面を部分的に模式的に示す。
【0038】
図1のシリンダ構造1’は、長手方向掃気式大型2気筒ディーゼルエンジンとして従来技術として知られる典型的構造である。参照符号に対応する知られたシリンダ構造間の相違をより明確にするためにダッシュが付されている。また本発明によるシリンダ構造の構成による参照番号はダッシュが付されていない。
【0039】
前記構造は、シリンダ2’を含み、これはまたシリンダ2’として参照され、この中にピストン3’が前記シリンダ2’のシリンダ壁に沿って往復可動に設けられている。前記ピストン3’はピストンリング構造33’を含み、この例では模式的に単に2つのピストンリングを持つものとして示されている。
【0040】
燃焼室200’は、前記シリンダ2’の前記燃焼空間領域21’に存在し、インジェクションノズルを持つシリンダカバー及び図による出口バルブにより上部で仕切られている。
【0041】
前記大型のディーゼルエンジンの運転状態で下死点UT'及び上死点OT'間を往復運動するピストンリング3’は、ピストンロッド8’を介して図示されていないクロスヘッドに接続され、ピストン3’の往復運動はそこから前記機関の図示されていないクランクシャフトへ伝達される。前記ピストンロッド8’は、前記図に依る底部で前記シリンダライナ2’の入口領域22’に接続される前記レシーバ空間401'を通じてガイドされ、かつ下にあるクランクシャフト空間に対して前記レシーバ空間401’をシールするスタッフボックス402’によりガイドされる。従って、矢印41’で示される新鮮空気41’は前記レシーバ空間401’から前記レシーバ空間の下にある前記クランクシャフト空間9’へは到達することはできない。ここで新鮮空気は図示されていないターボ過給器により高圧例えば4バールで、前記レシーバ空間401’へ供給される。
【0042】
図1から分かるように及び一般に知られているように、新鮮空気41’のガス圧力は常に前記レシーバ空間401’に存在し、この構成により前記ピストン3’の下部側のピストンにも常に存在する。
【0043】
以下の燃焼プロセスは、燃焼空間200’で開始され、その際前記ピストン3’は上死点OT'に非常に近い位置にあり、前記ピストン3’は前記燃焼空間200’で蓄積された燃焼圧力により下死点UT'へ向い下方へ移動する。そこで、前記ピストンの表面が掃気スリット221’を持つ掃気開口部4’の下に来ると、掃気空気41’がレシーバ空間401’から前記掃気スリット221’を介して前記燃焼空間4’に到達することができる。従ってこれにより前記燃焼空間200’での次の続く燃焼のために利用可能となる。
【0044】
前記上死点OT’から下死点UT'へ及びその戻りの途中で、前記ピストンは前記入口領域22’で前記掃気スリット4’を通過しなければならない。これはここで個々繰り返さないが上記の悪影響が生じることとなる。
【0045】
図2aでは、本発明による第1のシリンダ構造を、長手方向掃気式大型2気筒ディーゼルエンジンの場合に単純化した方法で模式的に示す。図2aのシリンダ構造1は閉じた状態でのピストンを示す。明確にするために、大型のディーゼルエンジンについての本発明の理解に本質的でないコンポーネントは明示的には図2a及び図3には示されていない。
【0046】
図2aの前記シリンダ構造1は、燃焼空間200及び入口領域22を持つシリンダを含み、そこを通じて掃気空気がシリンダ内へ導入される。これに関して前記入口領域22及び/又は大型ディーゼルエンジンの残るコンポーネントは、従来技術及び図1で既に説明したことから原理的に、知られたものとして設計されることができるものである。
【0047】
燃焼空間200は、インジェクションノズル及び出口バルブを含む図示されていないシリンダカバーにより仕切られている。ピストン3のメインピストン31は、大型ディーゼルエンジンの運転状態で上死点及び下死点間をシリンダ軸Zに沿って往復運動し、これはまた前記ピストンロッド8を介して図示されていないクロスヘッドへ接続されており、前記クロスヘッドから前記ピストン3’の動きは大型の2気筒ディーゼルエンジンの図示されていないクランクシャフトへ伝達される。この目的で、ピストンのロッド8は図示されていないレシーバ空間を通じてガイドされ、図による前記シリンダ2で前記入口領域22の中へ伸び、前記クランクシャフトに固定的に効果的に接続される。前記レシーバ領域で、掃気空気41は掃気入口4を介して提供される。この掃気空気は図示されていないがターボ過給器が高圧(例えば、4バールで)で前記レシーバ空間へ知られた方法で供給される。
【0048】
本発明によれば、前記ピストン3は2部品ピストンであり、ピストンリング構造33を持つジャケットピストン32及び前記キャリアピストン32内に位置可能なメインピストン31を含む。前記ジャケットピストン32のための保持ユニット5がシリンダ2に設けられ、ジャケットピストン32が、前記シリンダ軸Zに関して前記メインピストン31から前記保持ユニット5により前記下死点の領域で持ち上げられることができ、それにより図2bに記載のように、掃気空気41が前記入口領域22から前記燃焼空間200へ前記ジャケットピストン32の掃気空気開口部320を通じて導入可能となる。
【0049】
前記ジャケットピストン32の前記掃気空気開口部320を介して前記掃気空気41を導入することは図2bに示されている。ここで開いた状態でのピストン3を持つ本発明によるシリンダ構造1が示される。
【0050】
図2bでは、前記メインピストン31が下死点の近くで動き始めるところであり、この理由で前記ジャケットピストン32からは分離されており、前記ジャケットピストンは保持ユニット5で設定されている。保持ユニット5は前記シリンダ2の内部で保持リングとして設計されている。ジャケットピストン32は保持ユニット5で設定され、メインピストン31は前記ジャケットピストン32から分離されていることから、前記ジャケットピストン32の掃気空気開口部320は開いており、従って開口断面111が形成され、そこから掃気空気が前記燃焼空間へ流れ込むことができる。これは矢印41で示される。
【0051】
図3を参照して、減衰エレメント10を含む本発明によるシリンダ構造1の実施に特に関連する第2の実施態様が模式的に示されており、前記減衰エレメント10はスペーサ形状で設定装置11として設計される。
【0052】
設定装置11及び/又は減衰エレメント10は、この例では油圧エレメントであり、既定の圧力で図示されていない油圧ラインを介して既定量の油圧油が与えられ、一方で、前記ジャケットピストン32が前記保持ユニット5上へ設定される際に減衰される減衰力が設定可能となる。他方で、同時に又はこれに代えて、前記保持ユニット5及びジャケットピストン32の間の距離が設定可能であり、従って開口部断面111及び掃気空気41の燃焼空間200への供給はそれによりそれぞれ柔軟に前記運転条件に適合させることができる。
【0053】
前記掃気空気の供給を固定的に設定可能であることにより、本発明の大型2ストロークディーゼルエンジンはまた初めて、「複数種類燃料」機関として使用され得る。これはガス、重油、ディーゼル油又は他の燃料などの異なる燃料を代わりに使用できるものであり、前記掃気プロセスで前記燃焼空間200へ導入される掃気空気41の量が初めて非常に広い範囲で変更可能となるものである。
【0054】
さらに、図3による実施態様では、潤滑油交換のための排油穴12が従ってに設けられている。前記排油穴手段により、例えば、シリンダ2の作動表面からの潤滑油がシリンダ2の内部から外側に取り出され、そこで廃棄されるか再使用されるかが案内される。代わりにまた、前記排油穴12から潤滑油を導入することも可能である。
【0055】
さらに、図2aから図4cによると、前記ジャケットピストン32に関して前記メインピストン31を中心化するための中心化手段がメインピストン31及びジャケットピストン32に設けられ、従って一方で、メインピストン31が前記ジャケットピストン32へ導入され形状適合的となる。かつ他方で、前記ピストン3の組み合わせにおいて前記メインピストン31及び前記ジャケットピストン32は常に形状適合的に協働し、前記掃気相の開始までの前記燃焼空間200が、圧縮相、燃焼相及び膨張相の際に前記ピストンサブスペースに対してほとんどの部分のために安全にシールする。
【0056】
中心化手段13は本明細書では例示として、前記メインピストン31の外側表面で前記メインピストン31の円錐形状及び前記ジャケットピストン32で対応する逆円錐表面として与えられている。作動状態では上死点の方向に上に移動する前記ピストンは下死点UTから開始しその後、前記メインピストン31は自動的にそれ自体を前記ジャケット32の中に中心化し、それにより前記ジャケットピストン32の掃気開口部320を閉じ、ピストン3は再び作動ピストンとして通常の機能を取り戻すこととなる。
【0057】
図4aを参照して、本発明によるピストンの具体的な実施態様が模式的に示される。ここで図4bのよりよい理解のために図4aの例がそれぞれの図に示され、図4cには図4a及び/又は図4bによる前記ジャケットピストン32の内部のより詳細が示されている。
【0058】
図4aから図4cによる実施態様では、前記ジャケットピストン32に関して前記メインピストン31を中心化するための中心化方法が前記メインピストン及び前記ジャケットピストンに設けられ、この例では又、一方では前記メインピストン31が常にジャケット32へ形状適合的の導入可能である。また他方では、ピストン3の組み合わせにおいて、前記メインピストン31及びジャケットピストン32は常に形状適合的方法で協働し、燃焼空間は、前記掃気相が開始されるまで圧縮相、燃焼相及び膨張相の際に前記ピストンサブスペースに対して安全にシールされる。
【0059】
前記中心化手段13はこの例では、前記メインピストン31の外側表面に前記メインピストン31の円錐形状として、及び前記ジャケットピストン32の表面に対応する逆円錐形状として設けられている。
【0060】
さらにメインピストン31は、回転部1301に対して第1の安全部を持ち、この例では、前記ジャケットピストン32の内部における回転部1301に対する複数の第1の安全部と回転部1302に対する対応する数の安全部を持つ。回転部1301に対する前記第1の安全部及び回転部1302に対する前記第2の安全部はこの関係においてピストン3の組み合わせ状態で協働し、銭メインピストン31に対してジャケットピストン32の回転が、掃気相が開始されるまで少なくとも圧縮相、燃焼相及び膨張相で安全に防止されることとなる。
【0061】
さらに、減衰エレメント10はまたそれぞれ前記回転部1301に対する第1の安全部に設けられ、これは設定装置11として設計される。前記設定装置11はまた、油圧、空気圧又は電気的設定装置及び/又は減衰エレメント10であってよい。特に単純にスプリングエレメントであってよく、移動可能なスプリングパスを持つものであってよい。
【0062】
本発明につき記載された実施態様は単に例示の方法によるものであり、本発明がこれらの例に限定されるものと理解されてはならない。特に記載された実施態様はまた組み合わせることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向掃気式往復動ピストン内燃機関、特に低速運転長手方向掃気式大型2気筒ディーゼルエンジンのためのシリンダ構造であり、前記シリンダ構造が、
燃焼空間及び入口領域を含むシリンダを含み、ピストンが、上死点及び下死点間をシリンダ軸に沿って往復可動に設けられ、
前記掃気空気を前記燃焼空間へ導入するための掃気空気入口が前記シリンダに設けられ、
前記ピストンが、ピストンリングを含むジャケットピストンと前記ジャケットピストン内に位置されるメインピストンを持つ2部品ピストンであり、
前記ジャケットピストンのための保持ユニットが前記シリンダに設けられ、
前記ジャケットピストンが前記メインピストンから、前記シリンダ軸に関して前記下死点の前記領域で前記保持ユニットにより持ち上げられることができ、それにより前記掃気空気が前記燃焼空間へ、前記入口領域から前記ジャケットピストンの掃気空気開口部を通じて導入可能である、シリンダ構造。
【請求項2】
請求項1に記載のシリンダ構造であり、減衰エレメントが前記保持ユニット及び/又は前記ジャケットピストンに設けられる、シリンダ構造。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか1項に記載のシリンダ構造であり、前記掃気空気開口部の開口断面が設定可能である設定装置を設けられる、シリンダ構造。
【請求項4】
請求項3に記載のシリンダ構造であり、前記設定装置が、油圧、空気圧又は電気的設定装置である、シリンダ構造。
【請求項5】
請求項3又は4のいずれか1項に記載のシリンダ構造であり、前記設定装置が前記保持ユニット及び/又は前記ジャケットピストンに設けられ、かつ前記減衰エレメントが特に設定装置として形成される、シリンダ構造。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシリンダ構造であり、潤滑油を交換するために排油穴が前記シリンダに設けられる、シリンダ構造。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシリンダ構造であり、前記ジャケットピストンに関して前記メインピストンを中心化するために、中心化手段が前記メインピストン及び/又は前記ジャケットピストンに設けられる、シリンダ構造。
【請求項8】
請求項7に記載のシリンダ構造であり、前記中心化手段が、ガイドブッシュ又は前記メインピストン又は前記ジャケットピストンの円錐形状である、シリンダ構造。
【請求項9】
長手方向掃気式往復動ピストン内燃機関、特に低速運転長手掃気式大型2気筒ディーゼルエンジンのためのピストンであり、
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のシリンダ構造を含み、ピストンが前記シリンダ構造のシリンダに、下死点及び上死点間をシリンダ軸に沿って往復可動に設けられ、
前記ピストンが、ピストンリングを含むジャケットピストンと前記ジャケットピストン内に位置され得るメインピストンとを含む2部品ピストンであり、
前記ジャケットピストンが前記メインピストンから、前記設置状態で前記シリンダ軸に関して前記下死点の領域で保持ユニットにより持ち上げられることができる、ピストン。
【請求項10】
請求項9に記載のピストンであり、減衰エレメントが前記ジャケットピストンに設けられる、ピストン。
【請求項11】
請求項9又は10に記載のピストンであり、前記ジャケットピストンの掃気空気開口部の開口断面が設置状態で設置可能とするための設定装置が設けられる、ピストン。
【請求項12】
請求項11に記載のピストンであり、前記設定装置が、油圧、空気圧又は電気的設定装置である、ピストン。
【請求項13】
請求項11又は12のいずれか1項に記載のピストンであり、前記設定装置が前記ジャケットピストンに設けられ、前記減衰エレメントが特に設定装置として形成される、ピストン。
【請求項14】
請求項9乃至13のいずれか1項に記載のピストンであり、中心化手段が、前記ジャケットピストン内で前記メインピストンを中心化するために、前記メインピストン及び/又は前記ジャケットピストンに設けられる、ピストン。
【請求項15】
請求項14に記載のピストンであり、前記中心化手段が、ガイドブッシュ又は前記メインピストン又は前記ジャケットピストンの円錐形状である、ピストン。

【図1】
image rotate

【図2a】
image rotate

【図2b】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4a】
image rotate

【図4b】
image rotate

【図4c】
image rotate


【公開番号】特開2012−202403(P2012−202403A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261945(P2011−261945)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(510210678)ヴェルツィラ シュヴェイツ アーゲー (18)
【Fターム(参考)】