説明

長時間放出特性を有する生分解性眼インプラント

【課題】 眼疾患、例えば後眼疾患の治療のために、長期間、所望の後眼領域または部位において治療薬剤レベルを維持できるように、治療用薬剤を送達できる炎症媒介眼疾患の治療用生侵食性インプラントを提供する。
【解決手段】 炎症媒介眼疾患の治療用生侵食性インプラントであって、(a)第一活性剤および第一生侵食性ポリマーをブレンドして、第一活性剤ポリマー混合物を形成する工程、(b)第二活性剤および第二生侵食性ポリマーをブレンドして、第二活性剤ポリマー混合物を形成する工程、(c)第一および第二活性剤ポリマー混合物を共押出して、第一および第二領域を含有する生侵食性インプラントを形成する工程によって製造され、第一領域が第一活性剤ポリマー混合物を含有し、第二領域が第二活性剤ポリマー混合物を含有し、第一および第二領域が異なる活性剤放出特性を有する生侵食性インプラント。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼疾患を治療するためのインプラントおよび方法に関する。本発明は、特に、活性剤および生侵食性ポリマーを含んで成る長時間放出生侵食性インプラントを、眼の領域または部位に埋め込むことによって眼疾患を治療するインプラントおよび方法に関する。本発明の生侵食性インプラントは、1つまたはそれ以上の活性(治療)剤の向上した放出動態を経時的に与えるために、可変かつ広範な放出速度を有する。
【背景技術】
【0002】
眼疾患は、眼、または眼の部分もしくは領域の1つを冒しているかまたはそれに関係している疾患、病気または症状を包含しうる。一般的に言えば、眼は、眼球、および眼球を構成している組織および流体(体液)、眼周囲筋(例えば、斜筋および直筋)、ならびに眼球の中かまたは眼球に近接した視神経の部分を包含する。
【0003】
前眼症状は、水晶体包の後壁または毛様体筋の前方に位置する、前眼(即ち、眼の前方)領域または部位、例えば、眼周囲筋、眼瞼または眼球組織または流体を冒しているか、またはそれに関係している疾患、不快または症状である。従って、前眼症状は、結膜、角膜、前眼房、虹彩、後眼房(網膜の後ろであるが、水晶体包の後壁の前)、水晶体または水晶体包、および前眼領域または部位を血管新生化するかまたは神経支配する血管および神経を、主に冒しているかまたはそれに関係している。後眼症状は、後眼領域または部位、例えば、脈絡膜または強膜(水晶体包の後壁全体にわたる平面の後方位置)、硝子体、硝子体腔、網膜、視神経(即ち、視神経円板)、ならびに後眼領域または部位を血管新生化するかまたは神経支配する血管および神経を、主に冒しているかまたはそれに関係している疾患、不快または症状である。
【0004】
従って、後眼症状は、下記のような疾患、不快または症状を包含しうる:黄斑変性、例えば、非滲出性老化関連黄斑変性および滲出性老化関連黄斑変性;脈絡膜新生血管形成;急性斑状視神経網膜疾患;黄斑浮腫、例えば、類嚢胞黄斑浮腫および糖尿病性黄斑浮腫;ベーチェット病、網膜障害、糖尿病性網膜症(増殖性糖尿病性網膜症を含む);網膜動脈閉鎖性疾患;網膜中心静脈閉鎖;ブドウ膜炎網膜疾患;網膜剥離;後眼部位または領域を冒す眼の外傷;眼のレーザー治療によって生じたかまたは影響を受けた後眼症状;光ダイナミック療法によって生じたかまたは影響を受けた後眼症状;光凝固、放射線網膜症、網膜上膜疾患、網膜枝静脈閉鎖、前虚血性視神経症(anterior ischemic optic neuropathy)、非網膜症糖尿病性網膜機能不全、色素性網膜炎および緑内障。緑内障は、その治療目標が、網膜細胞または視神経細胞の損傷または欠損による視力低下を予防するか、または視力低下の発生を減少させること(即ち、神経保護)であるので、後眼症状と考えることができる。
【0005】
従って、前眼症状は、下記のような疾患、不快または症状を包含しうる:無水晶体;偽水晶体;乱視;眼瞼痙攣;白内障;結膜疾患;結膜炎;角膜疾患;角膜潰瘍;眼乾燥症候群;眼瞼疾患;涙器疾患;涙管閉塞;近視;老眼;瞳孔障害;屈折障害および斜視。緑内障も前眼症状と考えられるが、その理由は、緑内障治療の臨床目的が、前眼房における水性液の高圧を減少させる(即ち、眼内圧を減少させる)ことでありうるからである。
【0006】
本発明は、眼疾患、例えば、前眼疾患または後眼疾患、または前眼疾患および後眼疾患の両方として特徴付けられる眼疾患の治療のための、長時間放出インプラントおよび方法に関し、かつそれらを指向する。
【0007】
眼疾患の治療に有用な治療化合物は、例えば、抗腫瘍活性、抗血管新生活性、キナーゼ阻害活性、抗コリン作用活性、抗アドレナリン作用活性、および/または抗炎症活性を有する活性剤を包含しうる。
【0008】
黄斑変性、例えば老化関連黄斑変性(「AMD」)は、世界中で失明の主要原因となっている。1300万人のアメリカ人が黄斑変性の徴候を有していると推定される。黄斑変性は、網膜黄斑(読んだり運転したりするのに必要とされる鮮明な直接視に関与している網膜の感光部分)を破壊する。中心視力が特に影響を受ける。黄斑変性は、乾性(萎縮性)または湿性(滲出性)として診断される。黄斑変性の乾性形は、黄斑変性の湿性形より一般的であり、AMD患者の約90%が乾性AMDと診断されている。該疾患の湿性形は、一般に、より深刻な視力低下を生じる。黄斑変性は、緩慢なまたは突然の無痛性視力低下を生じうる。黄斑変性の原因は明らかでない。AMDの乾性形は、黄斑組織の老化および菲薄化、黄斑における色素沈着、または2つの過程の組合せから生じうる。湿性AMDの場合、新しい血管が網膜の下に成長し、血液および液体を漏出させる。この漏出は、網膜細胞を死滅させ、中心視力に盲点を形成する。
【0009】
黄斑浮腫(「ME」)は、黄斑の腫脹を生じうる。浮腫は、網膜血管からの液体漏出によって生じる。血液が、弱い血管壁から漏出して、網膜錐体(色を検知し、日中の視覚(daytime vision)が依存している神経終末)に富む網膜黄斑の極めて小さい領域に入る。次に、中心視野の中央またはすぐ横に不鮮明化が生じる。視力低下が、何ヶ月にもわたって進行しうる。網膜血管閉塞、眼の炎症および老化関連黄斑変性は全て、黄斑浮腫に関連している。黄斑は、白内障除去後の腫脹によって冒される場合もある。MEの症状は、ぼやけた中心視覚、歪んだ視覚、ピンク色視(vision tinted pink)、および光感受性を包含する。MEの原因は、網膜血管閉塞、黄斑変性、糖尿病性黄斑漏出、眼炎症、突発性中心性漿液性網脈絡膜症、前部または後部ブドウ膜炎、扁平部炎、色素性網膜炎、放射線性網膜症、後部硝子体剥離、網膜上膜形成、突発性傍中心窩網膜毛細血管拡張症、Nd:YAG嚢切開または虹彩切開を包含しうる。MEを有する患者の中には、緑内障用の局所エピネフリンまたはプロスタグランジン類似体の使用経験を有する者もある。MEの最重要治療は、一般に、局所投与される抗炎症点眼剤である。
【0010】
抗炎症(即ち、免疫抑制)薬を、炎症に関係した後眼疾患、例えばブドウ膜炎または黄斑浮腫のような眼疾患の治療に使用することができる。従って、局所または経口グルココルチコイドがブドウ膜炎の治療に使用されている。局所および経口薬投与に関する主要な問題は、薬剤が、適切な(即ち治療的な)眼内濃度に達することができないことである。例えば下記を参照:Bloch-Michel E. (1992), Opening address: intermediate uveitis, In Intermediate Uveitis, Dev. Ophthalmol, W.R.F. Boekeら編、Basel: Karger, 23:1-2; Pinar, V.ら(1997), Intraocular inflammation and uveitis, In Basic and Clinical Science Course. Section 9(1997-1998) San Francisco: American Academy of Ophthalmology, p.57-80, 102-103, 152-156;Boeke, W.(1992), Clinical picture of intermediate uveitis, In Intermediate Uveitis, Dev. Ophthalmol. W.R.F. Boekeら編、Basel: Karger, 23:20-7;およびCheng C-Kら(1995), Intravitreal sustained-release dexamethasone device in the treatment of experimental uveitis, Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 36:442-53。
【0011】
全身グルココルチコイド投与は、単独で、または局所グルココルチコイドに付加して、ブドウ膜炎の治療に使用することができる。しかし、眼において治療レベルを達成しうるように、高血漿濃度のステロイドへの長時間暴露(2〜3週間にわたる1mg/kg/日の投与)が必要とされる場合が多い。
【0012】
残念なことに、これらの高い薬剤血漿レベルは、全身性副作用、例えば、高血圧、高血糖、感染の罹患性の増加、消化性潰瘍、精神病および他の合併症を一般に生じる。Cheng C-Kら(1995), Intravitreal sustained-release dexamethasone device in the treatment of experimental uveitis, Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 36:442-53;Schwartz, B. (1966), The response of ocular pressure to corticosteroids, Ophthalmol. Clin. North Am. 6:929-89;Skalka, H.W.ら(1980), Effect of corticosteroids on cataract formation, Arch Ophthalmol 98:1773-7;およびRenfro, L.ら(1992), Ocular effects of topical and systemic steroids, Dermatologic Clinics 10:505-12。
【0013】
さらに、短い血漿半減期を有する薬剤の場合、眼内組織への薬剤の暴露が限定されるため、治療量の活性剤を眼に送達することが、不可能ではないにしても、困難な場合がある。従って、後眼疾患を治療する薬剤のより有効な送達方法は、薬剤を、眼に直接的に、例えば硝子体内に直接的に、配置することである。Maurice, D.M.(1983), Micropharmaceutics of the eye, Ocular Inflammation Ther. 1:97-102;Lee, V.H.L.ら(1989), Drug delivery to the posterior segment, Chapter 25 In Retina. T.E. OgdenおよびA.P. Schachat編, St. Louis:CV Mosby, 第1巻, p.483-98;およびOlsen, T.W.ら(1995), Human scleral permeability:effects of age, cryotherapy, transscleral diode laser, and surgical thinning, Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 36:1893-1903。
【0014】
薬剤の硝子体内注入のような方法は、期待がもてる結果を示しているが、グルココルチコイドのような活性剤の短い眼内半減期(約3時間)により、治療薬剤レベルを維持するために硝子体内注入を頻繁に繰り返す必要がある。その結果、この繰り返し法は、網膜剥離、眼内炎および白内障のような副作用の可能性を増加させる。Maurice, D.M.(1983), Micropharmaceutics of the eye, Ocular Inflammation Ther. 1:97-102;Olsen, T.W.ら(1995), Human scleral permeability:effects of age, cryotherapy, transscleral diode laser, and surgical thinning, Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 36:1893-1903;ならびにKwak, H.W.およびD’Amico, D.J.(1992), Evaluation of the retinal toxicity and pharmacokinetics of dexamethasone after Intravitreal injection, Arch. Ophthalmol. 110:259-66。
【0015】
さらに、局所、全身および眼周囲グルココルチコイド治療は、毒性、および慢性全身性薬剤暴露続発症に関連した長期副作用により、注意深く監視する必要がある。Rao, N.A.ら(1997), Intraocular inflammation and uveitis, In Basic and Clinical Science Course, Section 9 (1997-1998) San Francisco: American Academy of Ophthalmology, p.57-80, 102-103, 152-156;Schwartz, B. (1966), The response of ocular pressure to corticosteroids, Ophthalmol Clin North Am 6:929-89;Skalka, H.W.およびPichal, J.T.(1980), Effect of corticosteroids on cataract formation, Arch Ophthalmol 98:1773-7;Renfro, LおよびSnow, J.S.(1992), Ocular effects of topical and systemic steroids, Dermatologic Clinics 10:505-12;Bodor, N.ら(1992), A comparison of intraocular pressure elevating activity of loteprednol etabonate and dexamethasone in rabbits, Current Eye Research 11:525-30。
【0016】
米国特許第6217895号は、眼の後区にコルチコステロイドを投与する方法を開示しているが、生侵食性インプラントは開示していない。
【0017】
米国特許第5501856号は、網膜/硝子体の疾患または緑内障の手術後に、眼の内部に適用される眼内インプラント用の、制御放出医薬調製物を開示している。
【0018】
米国特許第5869079号は、生分解性持続放出インプラントにおける親水性および疎水性材料の組合せを開示し、デキサメタゾンを含んで成るポリ乳酸ポリグリコール酸(PLGA)コポリマーインプラントを開示している。薬剤放出動態の生体外試験によって示されているように、開示されている100〜120μg 50/50 PLGA/デキサメタゾンインプラントは、HPMCのような放出促進剤を配合物に添加しなければ、第4週の初めまで認識できる薬剤放出を示さなかった。
【0019】
米国特許第5824072号は、眼の脈絡膜上腔または無血管領域への導入用のインプラントを開示し、デキサメタゾンを含んで成るメチルセルロース(即ち、非生分解性)インプラントを開示している。WO 9513765は、眼の脈絡膜上または無血管領域への導入用の、活性剤を含んで成る治療目的のインプラントを開示している。
【0020】
米国特許第4997652号および第5164188号は、マイクロカプセル化薬剤を含んで成る生分解性眼インプラントを開示し、コハク酸ヒドロコルチゾンを含んで成るマイクロカプセルを眼の後区に埋め込むことを記載している。
【0021】
米国特許第5164188号は、眼の脈絡膜上への導入用のカプセル化薬剤を開示し、ヒドロコルチゾンを含んで成るマイクロカプセルおよびプラックを毛様体輪に配置することを記載している。米国特許第5443505号および第5766242号は、眼の脈絡膜上腔または無血管領域への導入用の、活性剤を含んで成るインプラントを開示し、ヒドロコルチゾンを含んで成るマイクロカプセルおよびプラックを毛様体輪に配置することを記載している。
【0022】
Zhouらは、増殖性硝子体網膜症(PVR)の眼内管理用の、5−フルオロウリジン、トリアムシノロンおよびヒト組換え組織プラスミノゲン賦活性剤を含んで成る多剤インプラントを開示している。Zhou, T.ら(1998), Development of a multiple-drug delivery implant for intraocular management of proliferative vitreoretinopathy, Journal of Controlled Release 55:281-295。
【0023】
米国特許第6046187号は、患者の特定部位への局所麻酔薬投与の前か同時かまたは後に、1つまたはそれ以上のグルココルチコステロイド剤を投与することによって、局所麻酔を調節する方法および組成物を記載している。
【0024】
米国特許第3986510号は、「眼の嚢」(sac of the eye)(これは、眼球の強膜の眼球結膜および眼瞼の眼瞼結膜の表面によって境界を付けられたものを意味する)に挿入および保持するためかまたは眼の角膜区画を覆って配置するために適合させた形状の、生侵食性薬剤放出速度制御物質内に閉じ込めた薬剤配合物の1つまたはそれ以上の内部貯留部を有する眼インサートを記載している。
【0025】
米国特許第6369116号は、強膜弁に挿入された放出調整材を有するインプラントを記載している。
【0026】
EP 0654256号は、切開部を閉じるために、硝子体の手術後の強膜栓の使用を開示している。
【0027】
米国特許第4863457号は、その上の結膜とその下の強膜の間の結膜下領域内、または部分厚強膜弁(partial thickness sclera flap)内の強膜自体の中に、インプラントを配置することによって、緑内障濾過手術の失敗を防ぐ生侵食性インプラントの使用を記載している。
【0028】
EP 488401は、網膜/硝子体の疾患または緑内障の手術後に眼の中に適用される、ある種のポリ乳酸から製造された眼内インプラントを開示している。
【0029】
EP 430539は、脈絡膜上に挿入される生侵食性インプラントの使用を記載している。
【0030】
重要なことに、活性剤を含んで成る生侵食性ポリマーのPLGAコポリマー配合物は、一般に、特徴的なS字形放出プロフィールにおいて活性剤を放出することが既知であり(時間対放出された全活性剤の%として観測した場合)、即ち、活性剤がほとんど放出されない比較的長い初期遅延期(第一放出段階)後に、活性剤の大部分が放出される高い正の勾配期(第二放出段階)があり、次に、薬剤放出が安定状態に達する別のほぼ水平(第三)放出段階があることが既知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】米国特許第6217895号
【特許文献2】米国特許第5501856号
【特許文献3】米国特許第5869079号
【特許文献4】米国特許第5824072号
【特許文献5】米国特許第4997652号
【特許文献6】米国特許第5164188号
【特許文献7】米国特許第5164188号
【特許文献8】米国特許第6046187号
【特許文献9】米国特許第3986510号
【特許文献10】米国特許第6369116号
【特許文献11】EP 0654256号
【特許文献12】米国特許第4863457号
【特許文献13】EP 488401
【特許文献14】EP 430539
【非特許文献】
【0032】
【非特許文献1】Bloch-Michel E. (1992), Opening address: intermediate uveitis, In Intermediate Uveitis, Dev. Ophthalmol, W.R.F. Boekeら編、Basel: Karger, 23:1-2
【非特許文献2】Pinar, V.ら(1997), Intraocular inflammation and uveitis, In Basic and Clinical Science Course. Section 9(1997-1998) San Francisco: American Academy of Ophthalmology, p.57-80, 102-103, 152-156
【非特許文献3】Boeke, W.(1992), Clinical picture of intermediate uveitis, In Intermediate Uveitis, Dev. Ophthalmol. W.R.F. Boekeら編、Basel: Karger, 23:20-7
【非特許文献4】Cheng C-Kら(1995), Intravitreal sustained-release dexamethasone device in the treatment of experimental uveitis, Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 36:442-53
【非特許文献5】Cheng C-Kら(1995), Intravitreal sustained-release dexamethasone device in the treatment of experimental uveitis, Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 36:442-53
【非特許文献6】Schwartz, B. (1966), The response of ocular pressure to corticosteroids, Ophthalmol. Clin. North Am. 6:929-89
【非特許文献7】Skalka, H.W.ら(1980), Effect of corticosteroids on cataract formation, Arch Ophthalmol 98:1773-7
【非特許文献8】Renfro, L.ら(1992), Ocular effects of topical and systemic steroids, Dermatologic Clinics 10:505-12
【非特許文献9】Maurice, D.M.(1983), Micropharmaceutics of the eye, Ocular Inflammation Ther. 1:97-102
【非特許文献10】Lee, V.H.L.ら(1989), Drug delivery to the posterior segment, Chapter 25 In Retina. T.E. OgdenおよびA.P. Schachat編, St. Louis:CV Mosby, 第1巻, p.483-98
【非特許文献11】Olsen, T.W.ら(1995), Human scleral permeability:effects of age, cryotherapy, transscleral diode laser, and surgical thinning, Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 36:1893-1903
【非特許文献12】Maurice, D.M.(1983), Micropharmaceutics of the eye, Ocular Inflammation Ther. 1:97-102
【非特許文献13】Olsen, T.W.ら(1995), Human scleral permeability:effects of age, cryotherapy, transscleral diode laser, and surgical thinning, Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 36:1893-1903
【非特許文献14】Kwak, H.W.およびD’Amico, D.J.(1992), Evaluation of the retinal toxicity and pharmacokinetics of dexamethasone after Intravitreal injection, Arch. Ophthalmol. 110:259-66
【非特許文献15】Rao, N.A.ら(1997), Intraocular inflammation and uveitis, In Basic and Clinical Science Course, Section 9 (1997-1998) San Francisco: American Academy of Ophthalmology, p.57-80, 102-103, 152-156
【非特許文献16】Schwartz, B. (1966), The response of ocular pressure to corticosteroids, Ophthalmol Clin North Am 6:929-89
【非特許文献17】Skalka, H.W.およびPichal, J.T.(1980), Effect of corticosteroids on cataract formation, Arch Ophthalmol 98:1773-7
【非特許文献18】Renfro, LおよびSnow, J.S.(1992), Ocular effects of topical and systemic steroids, Dermatologic Clinics 10:505-12
【非特許文献19】Bodor, N.ら(1992), A comparison of intraocular pressure elevating activity of loteprednol etabonate and dexamethasone in rabbits, Current Eye Research 11:525-30
【非特許文献20】Zhou, T.ら(1998), Development of a multiple-drug delivery implant for intraocular management of proliferative vitreoretinopathy, Journal of Controlled Release 55:281-295
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
従って、眼疾患、例えば後眼疾患の治療に重要な、治療に有効な長時間放出インプラントが必要とされている。特に、長期間、例えば、60日、90日、120日、6ヶ月、8ヶ月、12ヶ月またはそれ以上にわたって、好ましくは所望の後眼領域または部位において治療薬剤レベルを維持する有効な送達が必要とされている。そのような活性剤の長時間送達は、治療される炎症または他の後眼疾患の再発を予防するのに有利である。短い放出プロフィールを有するインプラントの使用と比較して、そのような長時間送達は、疾患を治療するために、経時において患者に必要とされる外科的処置の回数を最小限にすることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明は、これらおよび他の要求を満たし、かつ、網膜疾患のような眼疾患を治療するために、ステロイド性抗炎症薬デキサメタゾンのような活性剤を、硝子体液中に少なくとも約5ng/mL(かつ約100ng/mLまで)のデキサメタゾンまたはデキサメタゾン等量に相当するレベルで、連続的かまたは実質的に連続的に、約30日〜約360日またはそれ以上にわたって放出することができる生侵食性インプラントおよびインプラントシステムを提供する。ある変形例において、少なくとも10〜50ng/mLのデキサメタゾンまたはデキサメタゾン等量の一貫した放出レベルが得られる。他の変形例において、連続的なまたは実質的に連続的な活性薬剤放出レベルが、生体内(即ち、硝子体内)において、少なくとも約90日またはそれ以上、120日またはそれ以上、6ヶ月またはそれ以上、8ヶ月またはそれ以上、および12ヶ月またはそれ以上にわたって達成できる。
【0035】
定義
本明細書において使用される下記の用語は、下記の意味を有する。
「約」は、「およそ」または「ほぼ」を意味し、本明細書に示されている数値または範囲に関して、列挙されているまたは特許請求されている数値または範囲の±10%を意味する。
【0036】
「活性剤」および「薬剤」は、互換的に使用され、眼疾患の治療に使用されるあらゆる物質を意味する。
【0037】
「生侵食性ポリマー」は、生体内で分解するポリマーを意味し、経時におけるポリマーの侵食が、本発明の活性剤放出動態を達成するのに必要とされる。従って、ポリマー膨潤によって薬剤を放出する作用をするメチルセルロースのようなヒドロゲルは、「生侵食性(または生分解性)ポリマー」という用語から特に除外される。「生侵食性」および「生分解性」という用語は、同義語であり、本明細書において互換的に使用される。
【0038】
「デキサメタンゾン相当濃度」または「デキサメタゾン等量」は、デキサメタゾンの特定用量とほぼ同じ生体内有効性を有するのに必要な、ステロイド性抗炎症薬のような活性剤の濃度を意味する。例えば、ヒドロコルチゾンは、デキサメタゾンより約25倍低い有効性であり、従って、ヒドロコルチゾン25mg用量が、デキサメタゾン1mg用量に相当する。当業者は、当分野で既知のいくつかの標準的試験の1つによって、特定のステロイド性抗炎症薬に関してデキサメタゾン相当濃度を決めることができる。選択されたコルチコステロイドの相対有効性は、例えば、Gilman, A.G.,ら編(1990), Goodman and Gilman’s: The Pharmacological Basis of Therapeutics, 第8版, Pergamon Press: New York, p.1447に見出しうる。
【0039】
「累積放出プロフィール」は、インプラントから、生体内の眼領域または部位に経時的に放出されるかまた生体外の特定放出媒体に経時的に放出される活性剤の累積合計パーセントを意味する。
【0040】
「長時間」または「長時間放出」における「長時間」は、30日より長い期間、好ましくは少なくとも50日間(即ち、50日間〜365日間)、最も好ましくは少なくとも60日間を意味する。長時間放出は1年間またはそれ以上持続することもできる。
【0041】
「緑内障」は、原発性、続発性および/または先天性緑内障を意味する。原発性緑内障は、開放隅角および閉塞隅角緑内障を包含する。続発性緑内障は、種々の他の疾患、例えば、外傷、炎症、血管性疾患および糖尿病の合併症として起こりうる。
【0042】
眼疾患に関連した「炎症媒介」は、抗炎症薬での治療が有効な任意の眼疾患を意味し、下記疾患を包含するがそれらに限定されない疾患を意味する:ブドウ膜炎、黄斑浮腫、急性黄斑変性、網膜剥離、眼腫瘍、真菌またはウイルス感染、多病巣性脈絡膜炎、糖尿病性ブドウ膜炎、増殖性硝子体網膜症(PVR)、交感性眼炎、フォークト−コヤナギ−ハラダ(VKH)症候群、ヒストプラスマ症、およびブドウ膜拡散。
【0043】
「外傷」または「損傷」は、互換的であり、例えば炎症のような炎症媒介疾患から生じる細胞性および形態的症状発現および徴候を意味する。
【0044】
「生体外において無限沈下条件下に測定」は、生体外での薬剤放出を測定するアッセイを意味し、該試験は、受容体媒質における薬剤濃度が飽和の5%を超えないように設計される。好適なアッセイの例は、例えば、USP 23;NF 18(1995), p.1790-1798に見出しうる。
【0045】
「眼疾患」は、眼、または眼の部分もしくは領域の1つを冒しているかまたはそれに関係している疾患、病気または症状、例えば網膜疾患を意味する。眼は、眼球、および眼球を構成している組織および液体、眼周囲筋(例えば、斜筋および直筋)、ならびに眼球の中かまたは眼球に近接した視神経の部分を包含する。
「複数」は、2またはそれ以上を意味する。
【0046】
「後眼疾患」は、後眼領域または部位、例えば、脈絡膜または強膜(水晶体包の後壁全体にわたる平面の後方位置)、硝子体、硝子体腔、網膜、視神経(即ち、視神経円板)、ならびに後眼領域または部位を血管新生化するかまたは神経支配する血管および神経を、冒しているかまたはそれに関係している疾患、病気または症状である。
【0047】
「ステロイド性抗炎症薬」および「グルココルチコイド」は、本明細書において互換的に使用され、治療有効レベルで投与した場合に炎症を減少させるステロイド系の物質、化合物または薬剤を包含することを意味する。
【0048】
インプラントからの活性剤放出の「実質的に連続的な速度」という語句におけるような生侵食性インプラントからの活性剤に特徴的な放出プロフィールまたは放出に関する「実質的に」は、放出速度(即ち、放出される活性剤量/時間単位)が、選択された期間(即ち、日数)にわたって、100%以上変化しないこと、好ましくは50%以上変化しないことを意味する。「実質的に均一に分散した」という語句におけるような、ポリマーにおける活性剤のブレンド、混合または分散に関する「実質的に」は、そのような均質分散において、活性剤の粒子(即ち、集合体)が存在しないかまたは実質的に存在しないことを意味する。
【0049】
インプラントに関する「眼領域または部位への(での)挿入(または埋込)に適した」は、過度の組織損傷を生じずに、かつ、インプラントが埋め込まれるかまたは挿入される患者の現存視力を不当に実質的に損なわずに、挿入または埋込できるような大きさ(寸法)を有するインプラントを意味する。
【0050】
「治療レベル」または「治療量」は、眼疾患を安全に治療して眼疾患の症状を減少させるかまたは予防するのに適切な、眼領域に局所的に送達された活性剤の量または濃度を意味する。
【0051】
1つの変形例において、本発明は、それぞれの生侵食性インプラントが特有の薬剤放出プロフィールを有する複数の生侵食性インプラントを含有する眼疾患治療用薬剤送達システムを提供する。同時投与される場合、このインプラントシステムの1つの態様は、少なくとも約120日間にわたって、少なくとも約10ng/mL硝子体液のデキサメタゾンまたはデキサメタゾン等量に相当するレベルで、薬剤の長時間連続放出を与えることができる。ある変形例において、このインプラントシステムは3つのインプラントを含有することができ、各インプラントは、単独ポリ(ラクチド)(即ちPLA)ポリマーまたはポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(即ちPLGA)コポリマーから形成される。
【0052】
他の変形例において、本発明の生侵食性インプラントは、それぞれが異なる放出特性を有する2つまたはそれ以上の異なる生侵食性ポリマーを使用して製造される。1つの変形例において、第一量の薬剤または活性剤を、第一ポリマーとブレンドし、得られた物質を押出し、次に、砕いて粒子にし、次に、該粒子を追加量の薬剤または活性剤および同じかまたは第二のポリマーとブレンドして、押出、射出成形または直接圧縮によって最終生侵食性インプラントを形成する。得られたインプラントは、最初にポリマーをブレンドすることによって形成されたインプラントと異なる放出プロフィールを有し、少なくとも約60日間にわたって、少なくとも約10ng/mLのデキサメタゾンまたはデキサメタゾン等量に相当するレベルで、活性剤の連続または実質的連続放出を与える。
【0053】
さらに他の変形例において、活性剤を、第一および第二生侵食性ポリマーと別々にブレンドして、第一および第二の薬剤−ポリマー混合物を形成することができ、該混合物を共押出して、異なる放出特性を有する第一および第二領域を有するインプラントを製造することができる。得られたインプラントは、2つのポリマーを初めにブレンドすることによって形成したインプラントと異なる放出プロフィールを有し、少なくとも約60日間にわたって、少なくとも約10ng/mLのデキサメタゾンまたはデキサメタゾン等量に相当するレベルで、薬剤の連続放出を与える。
【0054】
本発明は、眼疾患治療用薬剤送達システムを含み、該薬剤送達システムは(a)眼領域または部位に挿入するのに適した少なくとも1つの生侵食性インプラントを含んで成ることができ、該生侵食性インプラントは(i)活性剤および(ii)生侵食性ポリマーを含んで成り、該生侵食性インプラントは、治療レベルの活性剤を、眼領域または部位に、約30日〜約1年にわたって放出することができる。好ましくは、生侵食性インプラントは、生体内において、実質的に連続的な速度で、治療レベルの活性剤を、眼領域または部位に放出することができる。より好ましくは、生侵食性インプラントは、硝子体へ埋め込まれると、治療レベルの活性剤を、眼領域または部位に、実質的に連続的な速度で、約50日〜約1年にわたって放出することができる。活性剤は抗炎症薬であってよい。生侵食性ポリマーはPLGAコポリマーであってよい。
【0055】
生侵食性インプラントは、約1μg〜約100mgの重さを有することができ、寸法は約0.1mm以上かつ約20mm以下である。
【0056】
本発明の範囲内の薬剤送達システムは、複数の生侵食性インプラントを含んで成ることができる。活性剤は、生侵食性ポリマーに実質的に均一に分散させることができ、または活性剤および生侵食性ポリマーの粒子の形態で、活性剤を生侵食性ポリマーと組み合わすことができる。
【0057】
好ましい態様において、薬剤送達システムは(a)生侵食性ポリマーの部分に実質的に均一に分散された活性剤の部分;ならびに、(b)活性剤および生侵食性ポリマーの粒子の形態の、同じかまたは異なる生侵食性ポリマーの部分と組み合わされた同じかまたは異なる活性剤の部分を含んで成ることができる。
【0058】
他の態様において、薬剤送達システムは、(a)眼領域または部位に挿入するのに適した生侵食性インプラントを含んで成ることができ、該生侵食性インプラントは、(i)活性剤、および(ii)生侵食性ポリマーを含んで成り、該生侵食性インプラントは、眼領域または部位へ挿入されると、治療レベルの活性剤を、少なくとも約40日間にわたって放出することができる。
【0059】
さらに、薬剤送達システムは、(a)後眼領域または部位に埋め込み可能な複数の生侵食性インプラントを含んで成ることができ、各インプラントは、(i)活性剤および(ii)生侵食性ポリマーを含んで成り、複数の生侵食性インプラントは、生体内において、治療レベルの活性剤を、約5日〜約1年にわたって実質的に連続的に放出することができる。この薬剤送達システムは、(a)第一放出特性を有する第一インプラント、および(b)第二放出特性を有する第二インプラントを含んで成ることができ、該第一および第二放出特性は異なっている。薬剤送達システムの放出プロフィールは、第一および第二放出プロフィールの総和に相当することができる。明らかに、この薬剤送達システムは、(a)第一放出特性を有する第一インプラント、(b)第二放出特性を有する第二インプラント、および(c)第三放出特性を有する第三インプラントを含んで成ることができる。該薬剤送達システムの放出プロフィールは、第一、第二および第三放出プロフィールの総和に相当することができる。薬剤送達システムは、異なる生侵食性ポリマーを有する少なくとも2つの異なるインプラントを含んで成ることができる。従って、薬剤送達システムは、第一、第二および第三生侵食性インプラントを含んで成ることができ、該第一インプラントは、第一平均分子量を有する第一ポリマーを含んで成り、該第二インプラントは、第二平均分子量を有する第二ポリマーを含んで成り、該第三インプラントは、第三平均分子量を有する第三ポリマーを含んで成る。
【0060】
本発明のある態様は、(a)後眼領域に埋め込み可能な複数の生侵食性インプラント、を含んで成る眼疾患の治療用薬剤送達システムであることができ、各インプラントは、(i)抗炎症薬および(ii)生侵食性インプラントを含んで成り、複数の生侵食性インプラントは、抗炎症薬を、少なくとも約10ng/mLデキサメタゾン等量のレベルで、5日〜1年にわたって実質的に連続的に放出することができる。
【0061】
眼疾患治療用長時間放出生侵食性インプラントの好ましい製造方法は、(a)活性剤および第一生侵食性ポリマーをブレンドし押出して、第一固体物質を形成する工程;(b)該第一固体物質を砕いて粒子にする工程;(c)該粒子を、活性剤および第二生侵食性ポリマーと共にブレンドし押出(または直接圧縮)して、生侵食性インプラントを形成する工程;によって行うことができ、該生侵食性インプラントは、治療レベルの活性剤を、約50日〜約1年の期間にわたって、実質的に連続的な速度で放出することができる。
【0062】
他の態様において、眼疾患の治療用生侵食性インプラントを、(a)ステロイド性抗炎症薬および第一生侵食性ポリマーをブレンド(次に、押出、射出成形等)して、第一固体物質を形成する工程;(b)該固体物質を砕いて粒子にする工程;(c)該粒子を、ステロイド性抗炎症薬および第二生侵食性ポリマーと共にブレンド(次に、押出、射出成形等)して、生侵食性インプラントを形成する工程;によって製造することができ、該生侵食性インプラントは、治療レベルの活性剤を、約50日〜約1年の期間にわたって、実質的に連続的な速度で放出することができる。そのような生侵食性インプラントは、ステロイド性抗炎症薬を、少なくとも約10ng/mLに相当するデキサメタゾン等量レベルで、50日〜1年にわたって実質的に連続的に放出することができる。例えば、生侵食性インプラントは、ステロイド性抗炎症薬を、少なくとも約50ng/mLに相当するデキサメタゾン等量で、少なくとも約50日間にわたって連続的に放出することができる。
【0063】
眼疾患の治療用生侵食性インプラントを、(a)第一生侵食性ポリマーと共に分散された活性剤を含んで成る分散物、(b)活性剤および第二生侵食性ポリマーを含んで成る粒子、として製造することもでき、該粒子は、分散物の活性剤放出特性と異なる活性剤放出特性を有する。そのようなインプラントは、活性剤を、少なくとも10ng/mLのデキサメタゾンまたはデキサメタゾン等量に相当するレベルで、少なくとも約50日間にわたって実質的に連続的に放出することができる。従って、そのような生侵食性インプラントは、活性剤を、少なくとも50ng/mLのデキサメタゾンまたはデキサメタゾン等量に相当するレベルで、少なくとも約50日間にわたって実質的に連続的に放出することができる。
【0064】
本発明の好ましい態様は、炎症媒介眼疾患の治療用生侵食性インプラントであり、該インプラントは、(a)第一活性剤および第一生侵食性ポリマーをブレンドして、第一活性剤ポリマー混合物またはマトリックスを形成する工程;(b)第二活性剤および第二生侵食性ポリマーをブレンドして、第二活性剤ポリマー混合物またはマトリックスを形成する工程;(c)該第一および第二活性剤ポリマーマトリックスを共押出して、第一および第二領域を有する生侵食性インプラントを形成する工程;によって製造され、該第一領域は該第一活性剤ポリマーマトリックスを含有し、該第二領域は該第二活性剤ポリマーマトリックスを含有し、該第一および第二領域は、異なる活性剤放出特性を有する。第一活性剤および第二活性剤は、同じ活性剤であることができ、または第一活性剤および第二活性剤は、異なる活性剤であることもできる。同様に、第一ポリマーおよび第二ポリマーは、同じポリマーであることができ、または第一ポリマーおよび第二ポリマーは異なるポリマーであることができる。インプラントは、活性剤を、少なくとも10ng/mLのデキサメタゾンまたはデキサメタゾン等量に相当するレベルで、少なくとも約50日間にわたって実質的に連続的に放出することができる。従って、インプラントは、活性剤を、少なくとも50ng/mLのデキサメタゾンまたはデキサメタゾン等量に相当するレベルで、少なくとも約50日間にわたって実質的に連続的に放出することができる。
【0065】
後眼疾患の治療用生侵食性インプラントは、(a)第一活性剤および第一生侵食性ポリマーをブレンドして、第一活性剤ポリマー混合物を形成する工程;(b)該第一活性剤ポリマー混合物を第二ポリマーと共に共押出して、第一および第二領域を有する生侵食性インプラントを形成する工程;によって製造することができ、該第一領域は該第一活性剤ポリマー混合物を含有し、該第二領域は該第二ポリマー混合物を含有する。
【0066】
後眼疾患の治療用生侵食性インプラントは、(a)活性剤と第一生侵食性ポリマーとの第一混合物を含有する第一領域、および(b)活性剤と第二生侵食性ポリマーとの第二混合物を含有する第二領域、を含んで成ることができ、該第一および第二領域は、異なる活性剤放出特性を有する。このインプラントは、活性剤を、少なくとも10ng/mLのデキサメタゾンまたはデキサメタゾン等量に相当するレベルで、少なくとも約50日間にわたって実質的に連続的に放出することができる。または、このインプラントは、活性剤を、少なくとも50ng/mLのデキサメタゾンまたはデキサメタゾン等量に相当するレベルで、少なくとも約50日間にわたって実質的に連続的に放出することができる。
【0067】
本発明による眼疾患の治療法は、眼領域または部位に、本明細書に開示する薬剤送達システムを埋め込むことを含んで成ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】実施例1および2における3インプラントシステム(合計1500μgのデキサメタゾン)に関して、デキサメタゾンの生体外累積放出(インプラントに装填されたデキサメタゾンの合計量のパーセント)を時間の関数として示すグラフである。
【図1B】図1によって示されているのと同じデキサメタゾン生体外累積放出を示し、かつ、3つの個別(対照)ポリマーのそれぞれからの、デキサメタゾン生体外累積放出も示すグラフである。
【図2】(a)単一350μgデキサメタゾンインプラント、(b)単一700μgデキサメタゾンインプラント、および(c)実施例1および3の3インプラントシステムに関して、時間の関数としての生体内デキサメタゾン濃度(ngデキサメタゾン/mL硝子体液)を、比較して示すグラフである。
【図3】実施例4および5の多ポリマー単一インプラントシステムに関して、デキサメタゾンの生体外累積放出(各インプラントに装填されたデキサメタゾンの合計量のパーセント)を時間の関数として示すグラフである。
【図4】実施例4および5の多ポリマー単一インプラントシステムの付加的態様に関して、デキサメタゾンの生体外累積放出(各インプラントに装填されたデキサメタゾンの合計量のパーセント)を時間の関数として示すグラフである。
【図5】(a)デキサメタゾン1500μgを装填した単一ポリマー(RG755)3mgインプラント、(b)実施例4の方法によって製造し、デキサメタゾン1500μgを装填した特定多ポリマー(R203島部(island)およびRG502H海部(sea))3mgインプラント、(c)デキサメタゾン350μgを装填した単一ポリマー0.5mgインプラント、および(d)デキサメタゾン700μgを装填した単一ポリマー1mgインプラントに関して、時間の関数としての生体内デキサメタゾン濃度(ngデキサメタゾン/mL硝子体液)を、比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0069】
本発明は、後眼疾患を治療するために治療量の活性剤を長時間にわたって放出することができる生侵食性インプラントの発見に基づいている。本発明は、生分解性眼インプラントおよびインプラントシステム、ならびにそのようなインプラントおよびインプラントシステムを後眼疾患の治療に使用する方法を含む。インプラントは、モノリシック(即ち、活性剤が、生分解性ポリマーマトリックスに均一に分布または分散されている)に形成することができる。さらに、インプラントは、活性剤を種々の長い期間にわたって眼の眼球領域に放出するように形成することもできる。従って、約60日またはそれ以上、90日またはそれ以上、120日またはそれ以上、6ヶ月またはそれ以上、8ヶ月またはそれ以上、または12ヶ月またはそれ以上の長期間にわたって、本発明によって製造したインプラントから活性剤を放出することができる。
【0070】
眼疾患の治療用生分解性インプラント
本発明のインプラントは、生分解性ポリマーと混合された、またはそれに分散された活性剤を含有することができる。インプラント組成は、選択された薬剤放出プロフィール、使用される特定の活性剤、治療される眼疾患、および患者の病歴によって変化させることができる。使用しうる活性剤は下記物質を包含するがそれらに限定されない(本発明の範囲内のインプラント中に単独でまたは他の活性剤と組み合わせて使用):ACE(アンジオテンシン転換酵素)阻害薬、内因性サイトカイン、基底膜に影響を与える物質、内皮細胞の増殖に影響を与える物質、アドレナリン作動薬または遮断薬、コリン作動薬または遮断薬、アルドースレダクターゼ阻害薬、鎮痛薬、麻酔薬、抗アレルギー薬、抗炎症薬、抗高血圧薬、昇圧薬、抗細菌薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬、抗原虫薬、抗感染薬、抗腫瘍薬、代謝拮抗薬、抗血管新生薬、チロシンキナーゼ阻害薬、抗生物質、例えばアミノグリコシド、例えば、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシンおよびバンコマイシン;アムフェニコール、例えばクロラムフェニコール;セファロスポリン、例えば塩酸セファゾリン;ペニシリン系抗生物質、例えば、アンピシリン、ペニシリン、カルベニシリン、オキシリン、メチシリン;リンコサミド、例えばリンコマイシン;ポリぺプチド抗生物質、例えばポリミキシンおよびバシトラシン;テトラサイクリン系抗生物質、例えばテトラサイクリン;キノロン類、例えばシプロフラキシン等;スルホンアミド、例えばクロラミンT;およびスルホン、例えば親水性物質としてのスルファニル酸、抗ウイルス薬、例えば、アシクロビル、ガンシクロビル、ビダラビン、アジドチミジン、ジデオキシイノシン、ジデオキシシトシン、デキサメタゾン、シプロフラキシン、水溶性抗生物質、例えば、アシクロビル、ガンシクロビル、ビダラビン、アジドチミジン、ジデオキシイノシン、ジデオキシシトシン;エピネフリン;イソフルロフェート;アドリアミシン;ブレオマイシン;マイトマイシン;ara-C;アクチノマイシンD;スコポラミン等;鎮痛薬、例えば、コデイン、モルフィン、ケテロラク、ナプロキセン等、麻酔薬、例えばリドカイン;β−アドレナリン遮断薬またはβ−アドレナリン作動薬、例えば、エピドリン、エピネフリン等;アルドースレダクターゼ阻害薬、例えば、エパルレスタット、ポナルレスタット、ソルビニル、トルレスタット;抗アレルギー薬、例えば、クロモリン、ベクロメタゾン、デキサメタゾンおよびフルニソリド;コルヒチン、駆虫薬、例えば、イベルメクチンおよびスラミンナトリウム;抗アメーバ薬、例えばクロロキンおよびクロルテトラサイクリン;および抗真菌薬、例えば、アンホテリシン等;抗血管新生化合物、例えば、アネコルターブアセテート、レチノイド、例えばTazarotene;抗緑内障薬、例えば、ブリモニジン(AlphaganおよびAlphagan P)、アセトゾラミド、ビマトプロスト(Lumigan)、チモロール、メベフノロール;メマンチン;α−2アドレナリン受容体作動薬;2−メトキシエストラジオール;抗腫瘍薬、例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、インターフェロンα、β、γ、代謝拮抗薬、例えば、葉酸類似体、プリン類似体およびピリミジン類似体;免疫抑制薬、例えば、アザチオプリン、シクロスポリンおよびミゾリビン;縮瞳薬、例えばカルバコール、散瞳薬、例えばアトロピン等、プロテアーゼ阻害薬、アプロチニン、カモスタット、ガベキサート、血管拡張薬、例えばブラジキニン等、および種々の増殖因子、例えば、上皮増殖因子、塩基性線維芽細胞増殖因子、神経生長因子等。
【0071】
1つ変形例において、活性剤はメトトレキサートである。他の変形例において、活性剤はレチン酸である。他の変形例において、活性剤は、抗炎症薬、例えば、非ステロイド性抗炎症薬である。使用しうる非ステロイド性抗炎症薬は、アスピリン、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ケトロラク、ナプロキセンおよびスプロフェンを包含するが、それらに限定されない。他の変形例において、抗炎症薬は、ステロイド性抗炎症薬、例えばデキサメタゾンである。
【0072】
ステロイド性抗炎症薬
眼インプラントに使用しうるステロイド性抗炎症薬は、下記物質を包含するが、それらに限定されない:21−アセトキシプレグネノロン、アルクロメタゾン、アルゲストン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、クロロプレドニゾン、クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチコステロン、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコート、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフロラゾン、ジフルコルトロン、ジフルプレドネート、エノキソロン、フルアザコート、フルクロロニド、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオロメトロン、フルペロロンアセテート、フルプレドニデンアセテート、フルプレドニソロン、フルランドレノリド、フルチカソンプロピオネート、ホルモコルタール、ハルシノリド、ハロベタソールプロピオネート、ハロメタゾン、ハロプレドンアセテート、ヒドロコルタメート、ヒドロコルチゾン、ロテプレドノールエタボネート、マジプレドン、メドリゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、モメタゾンフロエート、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾロン25−ジエチルアミノ−アセテート、燐酸プレドニゾロンナトリウム、プレドニゾン、プレドニバル、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンベネトニド、トリアムシノロンヘキサアセトニド、およびそれらの任意誘導体。
【0073】
1つの態様において、コルチゾン、デキサメタゾン、フルオシノロン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾンおよびトリアムシノロンならびにそれらの誘導体が、好ましいステロイド性抗炎症薬である。他の好ましい変形例において、ステロイド性抗炎症薬は、デキサメタゾンである。他の変形例において、生分解性インプラントは、2つまたはそれ以上のステロイド性抗炎症薬の組合せを含有する。
【0074】
活性剤、例えばステロイド性抗炎症薬は、インプラントの約10wt%〜約90wt%を占めることができる。1つの変形例において、活性剤は、インプラントの約40wt%〜約80wt%である。好ましい変形例において、活性剤は、インプラントの約60wt%を占める。本発明のより好ましい態様において、活性剤は、インプラントの約50wt%を占めることができる。
【0075】
生分解性ポリマー
1つの変形例において、活性剤を、インプラントの生分解性ポリマーに均一に分散させることができる。インプラントは、例えば、逐次(sequential)または二段(double)押出法によって製造することができる。使用される生分解性ポリマーの選択は、所望の放出動態、患者の耐容能(tolerance)、治療される疾患の種類等によって変化しうる。考慮されるポリマー特性は、埋め込み部位における生体適合性および生分解性、対象活性剤との適合性、および加工温度を包含するが、それらに限定されない。生分解性ポリマーマトリックスは、インプラントの少なくとも約10wt%、少なくとも約20wt%、少なくとも約30wt%、少なくとも約40wt%、少なくとも約50wt%、少なくとも約60wt%、少なくとも約70wt%、少なくとも約80wt%、または少なくとも約90wt%を一般に占める。1つの変形例において、生分解性ポリマーマトリックスは、インプラントの約40〜50wt%を占める。
【0076】
使用できる生分解性ポリマーは、有機エステルまたは有機エーテルのようなモノマー由来のポリマーであって、分解した際に、生理学的に許容される分解生成物を生じるものであるが、それらに限定されない。無水物、アミド、オルトエスエル等を、単独で、または他のモノマーと組み合わせて、使用してもよい。ポリマーは通常、縮合重合体である。ポリマーは、架橋または非架橋であってよい。架橋されている場合、それらは通常、軽架橋以下であってよく、約5%未満または約1%未満が架橋されている。
【0077】
多くの場合、炭素および水素の他に、ポリマーは、酸素および窒素、好都合には酸素を含有する。酸素は、オキシ、例えばヒドロキシまたはエーテル、カルボニル、例えば非オキソ−カルボニル、例えばカルボン酸エステル等として存在しうる。窒素は、アミド、シアノおよびアミノとして存在しうる。使用できる生分解性ポリマーの例は、Heller, Biodegradable Polymers in Controlled Drug Delivery, CRC Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 第1巻, CRC Press, Boca Raton, FL (1987)に記載されている。
【0078】
特に関心がもたれるものは、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸のポリマー(ホモポリマーまたはコポリマー)、および多糖類である。関心がもたれるポリエステルは、D−乳酸、L−乳酸、ラセミ乳酸、グリコール酸、カプロラクトンおよびそれらの組合せのホモポリマーまたはコポリマーを包含する。グリコール酸および乳酸のコポリマーは、特に関心のもたれるものであり、生分解速度はグリコール酸/乳酸の比によって調節される。ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)コポリマーにおける各モノマーのパーセントは、0〜100%、約15〜85%、約25〜75%、または約35〜65%である。ある変形例において、25/75 PLGAおよび/または50/50 PLGAコポリマーが使用される。他の変形例において、PLGAコポリマーは、ポリラクチドポリマーと共に使用される。
【0079】
親水性および疎水性末端PLGAの混合物を含有する生分解性ポリマーマトリックスを使用してもよく、これはポリマーマトリックス分解速度を調節するのに有用である。疎水性末端(キャップまたは末端キャップとも称される)PLGAは、ポリマー末端において性質上疎水性のエステル結合を有する。一般的な疎水性末端基は、アルキルエステルおよび芳香族エステルを包含するが、それらに限定されない。親水性末端(非キャップとも称される)PLGAは、ポリマー末端において性質上親水性の末端基を有する。ポリマー末端において親水性末端基を有するPLGAは、より速い速度で水を吸収し加水分解を受けるため、疎水性末端PLGAより速く分解する(Tracyら、Biomaterials 20:1057-1062(1999))。加水分解を促進するために組み込みうる好適な親水性末端基の例は、カルボキシル、ヒドロキシルおよびポリエチレングリコールであるが、それらに限定されない。特定末端基は、一般に、重合工程に使用された開始剤から生じる。例えば、開始剤が水またはカルボン酸である場合、得られる末端基はカルボキシルおよびヒドロキシルである。同様に、開始剤が一官能価アルコールである場合、得られる末端基はエステルまたはヒドロキシルである。
【0080】
付加的物質
種々の目的のために、他の物質を配合物に使用しうる。例えば、緩衝剤および防腐剤を使用してよい。使用しうる防腐剤は、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、メチルパラベン、ポリビニルアルコールおよびフェニルエチルアルコールを包含するが、それらに限定されない。使用しうる緩衝剤の例は、所望の投与経路に関してFDAで認可されている炭酸ナトリウム、硼酸ナトリウム、燐酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等を包含する。塩化ナトリウムおよび塩化カリウムのような電解質も配合物に含有させてよい。
【0081】
生分解性眼インプラントは、活性剤の放出を加速するまたは遅延する付加的な親水性または疎水性化合物を含有することもできる。さらに、米国特許第5869079号に開示されているような放出調節剤を、インプラントに含有させることができる。使用される放出調節剤の量は、所望の放出プロフィール、調節剤の活性、および調節剤の不存在下のグルココルチコイドの放出プロフィールに依存する。緩衝剤若しくは放出促進剤または調節剤が親水性である場合、放出加速剤としても作用しうる。露出した薬剤の表面積を増加させ、それによって薬剤拡散速度を増加させる薬剤粒子周囲の物質のより速い溶解によって、親水性添加剤は放出速度を増加させる作用をする。同様に、疎水性緩衝剤、促進剤または調節剤は、よりゆっくり溶解し、薬剤粒子の露出を遅くし、それによって薬剤拡散速度を遅くすることができる。
【0082】
放出動態
本発明のインプラントは、生分解性ポリマーマトリックス内に分散された活性剤の粒子を用いて配合することができる。理論に縛られるものではないが、活性剤の放出は、生分解性ポリマーマトリックスの侵食、かつ、眼液、例えば硝子体液への粒状剤の拡散、次に、ポリマーマトリックスの溶解および活性剤の放出によって達成できると考えられる。インプラントからの活性剤の放出動態に影響を与える要素は、インプラントの大きさおよび形、活性剤粒子の大きさ、活性剤の溶解性、活性剤/ポリマーの比、製造方法、露出される表面積、およびポリマーの侵食速度のような特性を包含しうる。この活性剤放出形態によって得られる放出動態は、例えば架橋ヒドロゲルの場合のような、ポリマー膨潤によって活性剤を放出する配合物によって得られるものとは異なる。その場合、活性剤は、ポリマー侵食によってではなく、ポリマー膨潤および薬剤拡散によって放出され、露出された経路を通って液体が拡散すると共に活性剤を放出する。
【0083】
活性剤の放出速度は、生分解性ポリマーマトリックスを構成する1つまたはそれ以上のポリマー主鎖成分の分解速度に少なくとも部分的に依存しうる。例えば、縮合ポリマーは、(分解メカニズムの中でも特に)加水分解によって分解でき、従って、インプラントによる水取り込みを促進するインプラント組成のなんらかの変化が、加水分解速度を増加させると考えられ、それによって、ポリマーの分解および侵食の速度が増加し、従って活性剤放出の速度が増加する。
【0084】
本発明のインプラントの放出動態は、インプラントの表面積に部分的に依存しうる。表面積が大きいほど、より多くのポリマーおよび活性剤を眼液に暴露させて、より速いポリマーマトリックスの侵食および活性剤粒子の眼液への溶解を生じる。従って、インプラントの大きさおよび形によって、放出速度、治療期間、および埋め込み部位における活性剤濃度を調節することもできる。等しい活性剤装填量において、より大きいインプラントは、比例的により多い投与量を送達するが、表面積対質量比に依存して、より遅い放出速度を有する場合もある。眼領域への埋め込みのために、インプラントの総重量は、好ましくは、例えば約100μg〜約15mgである。より好ましくは、約300μg〜約10mg、最も好ましくは、約500μg〜約5mgである。本発明の特に好ましい態様において、インプラントの重量は、約500μg〜約2mg、例えば約500μg〜約1mgである。
【0085】
生侵食性インプラントは、一般に固体であり、インプラントが所望の放出動態を有し、目的とする眼疾患の治療に有効な量の活性剤を送達する限り、粒子、シート、パッチ、プラック、フィルム、ディスク、ファイバー、ロッド等として形成してよく、または、選択された埋め込み部位に適合性の任意の大きさまたは形であってよい。インプラントの大きさの上限は、所望される放出動態、埋め込み部位におけるインプラントに関する許容(toleration for the implant)、挿入時の大きさ制限、および取扱い容易性のような要素によって決定される。例えば、硝子体腔は、直径約0.05mm〜3mmおよび長さ約0.5mm〜約10mmを一般に有する比較的大きいロッド形インプラントを収容できる。1つの変形例において、ロッドは直径約0.1mm〜約1mmを有する。他の変形例において、ロッドは直径約0.3mm〜約0.75mmを有する。さらに他の変形例において、可変形態を有するがほぼ同じ容量を有する他のインプラントも使用しうる。
【0086】
活性剤、ポリマーおよび任意の他の調節剤の比率は、変化する比率においていくつかのインプラントを処方することによって経験的に決定しうる。USP承認の溶解または放出試験方法を使用して、放出速度を測定することができる(USP 23;NF 18(1995), p.1790-1798)。例えば、無限沈下法(infinite sink method)を使用して、秤量した薬剤送達デバイスを、水中に0.9%NaClを含有する測定容量の溶液に添加すると、該溶液容量は、放出後の薬剤濃度が飽和の20%未満、好ましくは5%未満であるような容量になる。混合物を37℃に維持し、ゆっくり撹拌して、生侵食後の薬剤拡散を確実にする。時間の関数としての溶解薬剤の外観を、当分野で既知の種々方法、例えば、分光光度的に、HPLC、質量分析等によって追跡しうる。
【0087】
適用
本発明のインプラントおよび方法によって治療できる眼疾患の例は、緑内障、ブドウ膜炎、黄斑浮腫、黄斑変性、網膜剥離、後眼腫瘍、真菌またはウイルス感染症、多病巣性脈絡膜炎、糖尿病性網膜症、増殖性硝子体網膜症(PVR)、交感性眼炎、フォークト−コヤナギ−ハラダ(VKH)症候群、ヒストプラスマ症、ブドウ膜拡散および血管閉塞であるが、それらに限定されない。1つの変形例において、インプラントは、ブドウ膜炎、黄斑浮腫、血管閉塞性疾患、増殖性硝子体網膜症(PVR)および種々の他の網膜症のような疾患を治療するのに特に有効である。
【0088】
埋め込み(移植)方法
生分解性インプラントは、強膜における切開の形成後に、鉗子、トロカール、または他の種類のアプリケーターによる配置を包含する種々の方法によって、眼に挿入できる。ある場合には、切開を形成せずにトロカールまたはアプリケーターを使用しうる。好ましい変形例において、手動操作型アプリケーターを使用して、1つまたはそれ以上の生分解性インプラントを眼に挿入する。手動操作型アプリケーターは一般に、18〜30GAステンレス鋼針、レバー、アクチュエーターおよびプランジャーを有して成る。1つまたはそれ以上のインプラントを後眼領域または部位に挿入するのに好適な装置は、米国特許出願第10/666872号に開示されている装置を包含する。
【0089】
埋め込み方法は、針、トロカールまたは埋め込み装置を使用して、眼領域内の対象領域に先ず接近することを一般に含む。対象領域、例えば、硝子体腔に一旦入ると、手動操作型装置のレバーを下に押して、アクチュエーターがプランジャーを前方に動かすようにしうる。プランジャーが前方へ移動すると共に、それが1つまたはそれ以上のインプラントを対象領域(即ち、硝子体)に押し入れることができる。
【0090】
インプラントの製造方法
種々の方法を使用して、本発明のインプラントを製造しうる。有用な方法は、相分離法、界面法、押出法、圧縮法、成型法、射出成形法、ヒートプレス法等を包含する。
【0091】
インプラントを製造するのに使用される方法の選択および方法パラメーターの調節は、薬剤の放出速度に影響を与えうる。室温圧縮法は、薬剤およびポリマーの個々の微粒子が分散したインプラントを生じる。押出法は、製造温度が高くなると共に、連続ポリマーマトリックスに薬剤が次第により均一に分散したインプラントを生じる。
【0092】
押出法の使用は、インプラントの大量生産を可能にし、ポリマーマトリックスに薬剤が均質に分散したインプラントを生じる。押出法を使用した場合、選択されるポリマーおよび活性剤は、製造に必要とされる温度、一般に少なくとも約50℃において安定である。押出法は、約25℃〜約150℃、より好ましくは約60℃〜約130℃の温度を使用する。
【0093】
種々の押出法を使用して、ポリマーマトリックスへの活性剤分散の均一性を包含するがそれに限定されない種々の特性を有するインプラントが得られる。例えば、ピストン押出機、一軸押出機および二軸押出機を使用することによって、活性剤が次第により均一に分散したインプラントが一般に得られる。1つの押出法を使用した場合、温度、押出速度、ダイ形状およびダイ表面仕上げのような押出パラメーターは、製造されたインプラントの放出プロフィールに影響を与える。
【0094】
ピストン押出法によってインプラントを製造する1つの変形例において、薬剤およびポリマーを室温で先ず混合し、次に、約0〜約1時間、より一般的には約0〜約30分間、さらに一般的には約5分〜約15分間、最も一般的には約10分間にわたって、約60℃〜約150℃、より一般的には約100℃の温度に加熱する。次に、インプラントを、約60℃〜約130℃、好ましくは約90℃の温度で押し出す。
【0095】
例示したスクリュー押出法において、活性剤およびポリマーの粉末ブレンドを、約80℃〜約130℃の温度に事前設定した一軸または二軸押出機に添加し、押出機における最小滞留時間で、フィラメントまたはロッドとして直接的に押し出す。次に、押し出されたフィラメントまたはロッドを、目的とする疾患の治療に適した活性剤の負荷投与量を有する小さいインプラントに切る。
【0096】
本発明のインプラントシステムは、多くの生侵食性インプラントの組合せを含有することができ、各インプラントは、同時投与された場合に薬剤の長時間連続放出を与える独特のポリマー組成および薬剤放出プロフィールを有する。さらに、得られる薬剤連続放出は、持続性であり、かつ、ポリマーブレンドから成る単一インプラントによって生じる放出プロフィールと異なる。例えば、少なくとも120日間の連続放出を得るために、速い、中くらいおよび遅い放出特性を有する別々のポリマーから製造した3つの個々のインプラントを使用することができ、速い放出のインプラントは0〜60日間で大部分の薬剤を放出し、中くらいの速さの放出のインプラントは60〜100日で大部分の薬剤を放出し、遅い放出のインプラントは100日後から大部分の薬剤を放出する。速い放出のインプラントの例は、特定の、低分子量の、速い分解プロフィールのポリラクチドポリマー、例えばBoehringer Ingelheim GmbH, Germanyによって製造されているR104(分子量約3500のポリ(D,L−ラクチド))から製造されたインプラントである。中くらいの放出速度のインプラントの例は、特定の、中くらいの分子量の、中くらいの速さの分解プロフィールのPLGAコポリマー、例えば、Boehringer Ingelheim GmbH, Germanyによって製造されているRG755(wt/wt 75%ラクチド/25%グリコリドのポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)、分子量約40,000、固有粘度0.50〜0.70dl/g)から製造されたインプラントである。遅い放出のインプラントの例は、特定の、高分子量の、遅い分解プロフィールの他のポリラクチドポリマー、例えば、Boehringer Ingelheim GmbH, Germanyによって製造されているR203/RG755(R203の分子量約14,000、固有粘度0.25〜0.35dl/g;RG755の分子量約40,000)から製造されたインプラントである。これらのインプラントは、一緒に投与した場合に、生体外において少なくとも120日間にわたる薬剤の長時間連続放出を与え、これは、硝子体内(即ち、生体内)において少なくとも約5〜10ngデキサメタゾン等量/mLの持続薬剤レベル(濃度)を約240日間にわたって生じることができる。
【0097】
それぞれが異なる放出特性を有する2つまたはそれ以上の異なる生侵食性ポリマーを使用して、長時間放出プロフィールを有する単一生侵食性インプラントを本発明によって製造することもできる。1つのそのような方法において、薬剤または活性剤の粒子を第一ポリマーとブレンドし、押し出して、フィラメントまたはロッドを形成する。次に、このフィラメントまたはロッドを先ず小さく砕き、次に、さらにすりつぶして、約30μm〜約50μmの大きさ(直径)の粒子にし、次に、追加量の薬剤または活性剤および第二ポリマーとブレンドする。次に、この第二混合物を押し出して、フィラメントまたはロッドにし、次に、適切な大きさに切って、最終インプラントを形成する。得られたインプラントは、2つのポリマーを最初にブレンドし、次に押し出すことによって形成したインプラントと異なる放出プロフィールを有する。形成されたインプラントは、第一ポリマーと異なる特定の放出特性をそれ自体が有する第二ポリマーと薬剤ブレンドの中に拘束された、ある特定の放出特性を有する薬剤および第一ポリマーの初期粒子を含有すると考えられる。インプラントの例は、RG755、R203、RG503、RG502、RG502Hを第一ポリマーとし、RG502、RG502Hを第二ポリマーとして形成されたインプラントである。使用しうる他のポリマーは、PURAC America, Inc. Lincolnshire, IL.から入手可能なPDL(ポリ(D,L−ラクチド))およびPDLG(ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド))ポリマーを包含する。ポリ(カプロラクトン)ポリマーも使用できる。特定ポリマーの特徴は以下の通りである:(1) RG755は、分子量約40,000、ラクチド分75wt%、グリコリド分25wt%を有し;(2) R203 は、分子量約14,000、ラクチド分100wt%を有し;(3) RG503は、分子量約28,000、ラクチド分50wt%、グリコリド分50wt%を有し;(4) RG502は、分子量約11,700(固有粘度0.16〜0.24dl/g)、ラクチド分50wt%、グリコリド分50wt%を有し;(5) RG502Hは、分子量約8,500、ラクチド分50wt%、グリコリド分50wt%を有し、ポリマー鎖の末端に遊離酸を有する。
【0098】
一般に、固有粘度が0.16である場合、分子量は約6,300であり、固有粘度が0.28である場合、分子量は約20,700である。本明細書に記載する全てのポリマー分子量は、ダルトンで表した平均分子量である。
【0099】
本発明により、少なくとも10ng/mLのデキサメタゾンまたはデキサメタゾン等量に相当するレベルでの少なくとも60日間にわたる連続的なまたは実質的に連続的な薬剤放出が得られる。
【0100】
他の方法において、種々の放出特性を有するポリマーを使用して単一インプラントを製造することができ、この方法において、別々の薬剤−ポリマーブレンドを調製し、次に、これらを共押出して、種々の放出プロフィールを有する種々の領域または区域を含有するインプラントが形成される。これらの共押出インプラントの全体的薬剤放出プロフィールは、ポリマーを先ずブレンドし、次に、それらを押し出すことによって形成されたインプラントの放出プロフィールと異なる。例えば、異なるポリマーを使用して、薬剤または活性剤の第一および第二ブレンドを形成し、2つのブレンドを同軸押出して、特定の放出特性を有する内側コア領域、および第二の異なる放出特性を有する外部シェル領域を有するインプラントを形成することができる。
【0101】
下記の実施例によりは、本発明およびその実施態様を詳しく説明する。
【実施例1】
【0102】
デキサメタゾン三インプラント長時間放出システムの製造
活性剤デキサメタゾン(Pharmacia Corp., Peapack, NJ)を、下記の3種類のポリマーのそれぞれと個々に混合して、3種類のデキサメタゾン−ポリマーミックスを形成することによって、デキサメタゾンの長時間送達用の生侵食性インプラントシステムを製造した:
1. ポリ(D,L−ラクチド)(R104、Boehringer Ingelheim GmbH, Germany);
2. ラクチド/グリコリドの75:25(wt%/wt%)ブレンドとしての、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)(RG755、Boehringer Ingelheim GmbH, Germany);および
3. ポリ(D,L−ラクチド)(R203、Boehringer Ingelheim GmbH, Germany)。
【0103】
R203およびR104は両方ともポリ(D,L−ラクチド)ポリマーであるが、異なる分子量を有する。R203の分子量は約14,000であり、R104の分子量は約3,500である。RG755はポリ(ラクチド−コ−グリコリド)コポリマーである。RG755の分子量は約40,000である。
【0104】
デキサメタゾンおよび前記の3つのポリマーの1つを、(デキサメタゾン)/(3つのポリマーの各ポリマー)の比50/50で充分に混合した。
【0105】
次に、3つのデキサメタゾン−ポリマーブレンドの3つの別々のバッチのそれぞれを、シングル−ピストン熱押出機に送り、それによって、3種類の押出デキサメタゾン−ポリマーフィラメントを形成した。フィラメントをさらに処理して、個々のセグメント(インプラント)を得、各セグメントは、デキサメタゾン約0.5mgを含有する約1mgのインプラントであった。三インプラントシステムは、デキサメタゾン0.5mgと別々に合わした3つのポリマーのそれぞれ(R104、RG755またはR203)に関して各1mgのインプラントから成っていた。合わした3つのインプラントにおけるデキサメタゾン合計濃度は約1.5mgであり、3つの各インプラントは約1mgであり、3つの各インプラントは約50wt%のデキサメタゾンを含有していた。三インプラントデキサメタゾン長時間放出システムをこのようにして製造した。
【実施例2】
【0106】
三インプラント長時間放出システムからのデキサメタゾンの生体外放出
実施例1の三インプラントシステムからのデキサメタゾンの累積放出を、生体外で測定した。受容媒質(0.1M燐酸塩溶液、pH4.4、37℃)を充填したガラス瓶に、三インプラントシステムを入れた。「無限沈下」条件を可能にするために、濃度が飽和の5%を超えないように受容媒質容量を選択した。二次輸送現象、例えば、停滞境界層における濃度分極を最小限にするために、ガラス瓶を37℃において振とう水浴に入れた。HPLC分析のために、試料を、所定時点でガラス瓶から採取した。表1および対応する図1に示すように、濃度値を使用して、累積放出データを計算した。表1において、「日数」は、3つのインプラントから放出されたデキサメタゾン累積量の生体外測定日であり、「Cum.」は、累積の略語であり、「Dex」はデキサメタゾンの略語である。
【0107】
図1Bは、図1で示されているのと同じデキサメタゾン生体外累積放出を示し、かつ、デキサメタゾン0.5mgと別々に合わされた3つのポリマーのそれぞれ(R104、RG755またはR203)に関する1mgインプラントそれぞれから別々に放出された、3つの個別(対照)ポリマーのそれぞれからのデキサメタゾン生体外累積放出も示すグラフである。表1Bは図1Bのためのデータを示す。
【0108】
この試験は、実施例1の三インプラントシステムからのデキサメタゾンの累積放出の使用が、161日間にわたる生体外放出、実質的に一定の放出速度(即ち、ほぼ直線的な、右上がり勾配)での活性剤の実質的に連続的な放出、を可能にすることを示した。
【実施例3】
【0109】
三インプラント長時間放出システムからのデキサメタゾンの生体内放出
実施例1の三インプラントシステムを、8匹のウサギの眼の硝子体に埋め込んだ。これは、試料ホルダーおよびプランジャー付きの単純トロカールに実施例1の3つのインプラントを装填し、下方前強膜を切開し、トロカールを強膜切開に挿入し、トロカールプランジャーを押し下げて、実施例1の3つのインプラントを硝子体に配置することによって行った。デキサメタゾンの生体内硝子体濃度を、硝子体試料採取によって、LC/MS(液体クロマトグラフィーおよび質量分析)を使用して追跡した。各眼のデキサメタゾン濃度を、実施例1の三インプラントシステムについて、7、30、60、90、120、150、180、210、240および360日目に測定した。1混合濃度測定の平均結果を、表2の左側の2つの欄に示す。
【0110】
デキサメタゾンおよび生分解性PLGAポリマーの単一(Posurdex)インプラントを使用して、比較試験も行った。特に、デキサメタゾン(60wt%)、PLGA(RG502、Boehringer Ingelheim GmbH, Germany)(10wt%)および遊離酸末端PLGA(RG502H、Boehringer Ingelheim GmbH, Germany)(30wt%)の重量比60/30/10において、生分解性ポリマーとしてのポリ乳酸−ポリグリコール酸(PLGA)と混合したデキサメタゾンの単一押出比較試験インプラントを形成した。これらの比較試験インプラントの2つのバージョンを製造した:1つはデキサメタゾン350μgを含有し、もう1つのインプラントはデキサメタゾン700μgを含有していた。これらの単一生侵食性デキサメタゾン(Posurdex)インプラントを、ウサギの眼の硝子体に埋め込んだ三インプラントシステムと同じ方法で使用し(350μgデキサメタゾンまたは700μgデキサメタゾン生侵食性インプラントのどちらか1つだけを各眼に配置したことに注意)、350μgおよび700μg比較試験単一インプラントからのデキサメタゾンの生体内硝子体濃度を、硝子体試料採取によって監視した。表2の右側の3つの欄に示すように、各眼のデキサメタゾン濃度を、1、4、7、14、21、28、35、42日目に測定した。
【0111】
使用したRG502(分子量約11,700)およびRG502H(分子量約8,500)ポリマーは、両方ともポリ(D,L−ラクチド−コ−グルコリド)である。RG502Hは、そのポリマー鎖の末端に遊離酸を有する。
【0112】
全てのデキサメタゾン測定値を、濃度(ngデキサメタゾン/mL硝子体液)として示す。
【0113】
図2(表2のデータを使用)は、実施例1のインプラントシステムを硝子体内に生体内埋め込みしてから種々の時間後に分析したデキサメタゾンの硝子体濃度を、この実施例3で先に記載した350μgまたは700μgデキサメタゾンインプラントの単一硝子体内埋め込みに関して得たデキサメタゾンの硝子体濃度と比較して示す。
【0114】
この試験は、実施例1の生侵食性インプラントシステムが、生体内において、デキサメタゾンを下記のように硝子体に放出しうることを示した:(1)単一デキサメタゾン剤(比較試験)インプラントと比較して、かなり長く(即ち、約30日間に対して約360日間)、かつ、かなり直線的に放出。重要なことに、この試験は、各インプラントポリマーが異なる3つの生侵食性ポリマーデキサメタゾンインプラントの使用が、生体内において、360日間にわたって、実質的に一定した放出速度(即ち、実質的にゼロ勾配でのほぼ直線的放出)での、デキサメタゾン活性剤の実質的に連続的な放出を可能にすることを(合わされた3つのインプラントの放出特性の累積観察として)示した。
【0115】
さらに、この試験は、実施例1の生侵食性インプラントシステムが、少なくとも10ng/mLまたは少なくとも約100ng/mLの生体内硝子体内デキサメタゾン(またはデキサメタゾン等量)濃度を、120日間または360日間にわたって、放出し維持しうることも示した。この試験は、比較により、単一(350μgまたは700μg)インプラントが約30日後に硝子体へのデキサメタゾンの送達をし尽くし、かつ、そのかなり短い放出期間においてさえ、単一生侵食性インプラントは、生体内硝子体内デキサメタゾン(またはデキサメタゾン等量)濃度を、実質的に連続した放出かまたは実質的に一定した活性剤放出速度において、放出または維持することができないことも示した。
【実施例4】
【0116】
デキサメタゾン長時間送達単一インプラントの製造
A. デキサメタゾンを含有する長時間送達インプラントを以下のように製造した。5つの別々のバッチにおいて、活性剤デキサメタゾンと選択ポリマーとを、60wt%デキサメタゾンおよび40wt%ポリマーの比で先ず充分に混合し、以下の5種類の生侵食性ポリマーのそれぞれを使用した:
1. ポリ(D,L−ラクチド)(R203、Boehringer Ingelheim GmbH, Germany);
2. 50%ラクチド/50%グリコール酸(50/50)におけるポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)(RG502、Boehringer Ingelheim GmbH, Germany);
3. PLGA遊離酸末端(50/50)(RG502H、Boehringer Ingelheim GmbH, Germany);
4. PLGA(50/50)(R503、Boehringer Ingelheim GmbH, Germany);および
5. PLGA75%ラクチド/25%グリコール酸(RG755、Boehringer Ingelheim GmbH, Germany)。
【0117】
B. RG755: 分子量約40,000、ラクチド75wt%およびグリコリド25wt%;
R203: 分子量約14,000、ラクチド=100%;
RG503: 分子量約28.300、ラクチド=50%、グリコリド=50%;
RG502: 分子量約11,700、ラクチド=50%、グリコリド=50%;
RG502H: 分子量約8,500、ラクチド=50%、グリコリド=50%、ポリマー鎖末端に遊離酸。
【0118】
C. 各バッチについて、デキサメタゾン活性剤およびポリマー(5つのポリマーのうちの1つ)を、デキサメタゾンおよびポリマーの重量比60/40(wt/wt)で充分に混合した。5つのポリマーのそれぞれを使用してこれを行って、5種類のデキサメタゾン−ポリマーブレンドを得た(5種類のポリマーブレンドのそれぞれにおいて同量のデキサメタゾン)。
【0119】
D. 次に、5種類の60%デキサメタゾン−40%ポリマーブレンドの5つの分離バッチのそれぞれを、別々に押出機に供給し、5種類の押出デキサメタゾン−ポリマーフィラメントを収集した。次に、そのようにして得たフィラメントを、別々にすりつぶして、直径30μm〜50μmのデキサメタゾン−ポリマー粒子にした。それによって、下記に説明する5種類の「島部」を製造した。
【0120】
E. 次に、下記ブレンドを別々に製造した:(1) デキサメタゾンおよびRG502ポリマーのブレンド(デキサメタゾン40wt%/RG502 60wt%);および(2) デキサメタゾンおよびRG502Hポリマーのブレンド(デキサメタゾン40wt%/RG502H 60wt%)。それによって、下記に説明する2種類の「海部」を製造した。
【0121】
F. 次に、先に得たデキサメタゾン−ポリマー(5つのうちの1つ)粒子(島部)の5つの各バッチのために、粒子を、別々かつ充分に、デキサメタゾン−生侵食性ポリマーRG502ブレンドまたはデキサメタゾン−生侵食性ポリマーRG502Hブレンド(即ち、前記海部の1つ)と混合した。次に、得られた島部と海部の混合物を、再び押出機に供給し、押し出されたデキサメタゾン−ポリマーフィラメントを収集し、さらに処理して、個々のセグメントを得、各セグメントはデキサメタゾン500μgを含んで成る単一複合インプラントを与えた。
【0122】
要約すれば、500μgデキサメタゾン第一押出フィラメント(60/40 デキサメタゾン/ポリマー)を、すりつぶして粒子にし、該粒子を、500μg第二バッチ(40/60 デキサメタゾン/ポリマー)と混合し、それによって、最終1mg押出フィラメントにおけるデキサメタゾン量は以下の通りであった:(500μgx60%)+(500μgx40%)=500μgデキサメタゾン。
【0123】
G. 「島部」という用語は、本明細書において、前記パラグラフDで製造したデキサメタゾン−生侵食性ポリマー粒子を意味するために使用される。「海部」という用語は、前記パラグラフEに示したように、第二生侵食性ポリマーに分散させた(例えば、均一分散させた)デキサメタゾン(即ち、粒子または島部でない)を記述するために使用されている。
【0124】
3つの対照インプラントも製造した。3つの全ての対照インプラントは、全て海部インプラント(無島部)であった。第一対照インプラントは、生侵食性ポリマーRG502Hに分散させたデキサメタゾンから成っていた。第二対照インプラントは、生侵食性ポリマーRG502に分散させたデキサメタゾンから成っていた。第三対照インプラントは、生侵食性ポリマーR203に分散させたデキサメタゾンから成っていた。全ての対照インプラントは、単一ポリマーおよびデキサメタゾン混合物を押し出すことによって製造された。3つの対照インプラントは、基本的にPosurdex型インプラントであった。全ての対照群試料は、50/50wt%のデキサメタゾンおよび各ポリマーによって製造され、500μgデキサメタゾンを含有する1mgインプラントとして製造された。
【0125】
これらの2つの島部および海部インプラントのそれぞれ、および3つの対照インプラントのそれぞれは、デキサメタゾン500μgを含有していた。
【0126】
実施例4に記載したインプラントは、1mg円筒形インプラントとして製造した。さらに、前記のポリマーおよびデキサメタゾン量を3倍にすることによって、3mg(1500μgデキサメタゾン)RG755単一ポリマーインプラント、および3mg(1500μgデキサメタゾン)R203/RG502H二ポリマーインプラントも製造した。
【実施例5】
【0127】
デキサメタゾン長時間送達単一インプラントの生体外性能
実施例4の選択インプラントからのデキサメタゾンの放出を、生体外で測定した。対照インプラントも製造し試験し、対照インプラントは単一ポリマーおよびデキサメタゾン混合物を押し出すことによって製造した。全ての対照群において、試料を50/50wt% デキサメタゾンおよび各ポリマーによって製造し、各1mgインプラントにデキサメタゾン500μgが存在していた。受容媒質(0.1M燐酸塩溶液、pH4.4、37℃)を充填したガラス瓶にインプラントを入れた。「無限沈下」条件を可能にするために、濃度が飽和の5%を超えないように受容媒質容量を選択した。二次輸送現象、例えば、停滞境界層における濃度分極を最小限にするために、ガラス瓶を37℃において振とう水浴に入れた。HPLC分析のために、試料を、1、4、7、14、21、28、35、42および49日目にガラス瓶から採取した。いくつかの試料を、63および77日目にも採取した。表3および図3および4に示すように、濃度値を使用して、累積放出データを計算した。
【0128】
図3は、下記の2つのインプラントに特徴的な生体外デキサメタゾン放出を示す:(1) インプラントの島部が、デキサメタゾン−R203ポリマー粒子から成り、同インプラントの海部が、RG502Hポリマーに分散したデキサメタゾンから成るインプラント;および、(2) 第二インプラントであって、この第二インプラントの島部が、デキサメタゾン−R203ポリマー粒子から成り、この第二インプラントの海部が、RG502ポリマー物質に分散したデキサメタゾンから成る第二インプラント。そのような島部および海部インプラント配合物は、島部または海部生侵食性ポリマーの一方だけとデキサメントの、各特徴からは予測できない放出プロフィールを生じることが観察された。
【0129】
図4は、下記の2つのインプラントに特徴的な生体外デキサメタゾン放出を示す:(1) インプラントの島部が、デキサメタゾン−RG755ポリマー粒子から成り、同インプラントの海部が、RG502Hポリマーに分散したデキサメタゾンから成るインプラント;および、(2) 第二インプラントであって、この第二インプラントの島部が、デキサメタゾン−RG755ポリマー粒子から成り、この第二インプラントの海部が、RG502ポリマー物質に分散したデキサメタゾンから成る第二インプラント。そのような島部および海部インプラント配合物は、島部または海部生侵食性ポリマーの一方だけとデキサメントの、各特徴からは予測できない放出プロフィールを生じることが観察された。
【0130】
これらの生体外放出の結果は、複数のポリマーから製造したインプラントが、少なくとも約80日間にわたって、デキサメタゾンの実質的に直線的な放出を可能にする可変生体外放出プロフィールを有しうることを示す。
【実施例6】
【0131】
長時間放出インプラントからのデキサメタゾンの生体内放出
実施例4のインプラントを、14匹のウサギの各眼の硝子体に埋め込んだ。これは、トロカールにインプラントを装填し、強膜を切開し、トロカールを強膜切開に挿入し、トロカールプランジャーを押し下げて、実施例5の各インプラントを各眼の硝子体に配置することによって行った。デキサメタゾンの生体内硝子体濃度を、硝子体試料採取によって、LC/MSを使用して監視した。各眼について、デキサメタゾン濃度を、7、21、35、49、63、77および112日目に測定した。測定の平均結果を、RG755ポリマー3mg(1500μgデキサメタゾン)インプラント、およびR203(島部)/RG502H(海部)3mg(1500μgデキサメタゾン)インプラントについて、表4に示す。
【0132】
デキサメタゾン(350μgまたは700μg)および生分解性ポリマーの、単一(Posurdex)0.5mgまたは1mgインプラント(表4の「単一ポリマーインプラント」)を使用して、比較試験も行った。特に、生分解性ポリマーとしてのポリ乳酸−ポリグリコール酸(PLGA)と混合したデキサメタゾン[重量比70/30の、デキサメタゾン(70wt%)/PLGA(Birmingham Polymers, Inc., Birmingham, Alabama, 固有粘度0.16)(30wt%)]から、単一押出法インプラントを形成した。インプラントの2つのバージョンを製造し、1つはデキサメタゾン350μgを含有し、もう1つはデキサメタゾン700μgを含有していた。これらの単一生侵食性デキサメタゾン(Posurdex)インプラントを、同じ方法で、ウサギの眼の硝子体に埋め込み(350μgデキサメタゾンまたは700μgデキサメタゾン生侵食性インプラントのどちらか1つだけを各眼に配置したことに注意)、デキサメタゾンの生体内硝子体濃度を、硝子体試料採取によって監視した。これも表4に示すように、各眼のデキサメタゾン濃度を、1、4、7、14、21、28、35、42日目に測定した。測定したデキサメタゾン濃度(ngデキサメタゾン/mL硝子体液として示す)を、表4の「Day」欄の右側に示す。
【0133】
図5は、実施例6のインプラントシステムの硝子体内生体内埋め込みから種々の時間後に得られた濃度(測定されたデキサメタゾン量)を、350μgまたは700μgデキサメタゾンインプラントの単一硝子体内埋め込みに関して得られた放出プロフィールと比較して示す(表4のデータを使用)。
【0134】
この試験は、実施例5の特定の島部および海部生分解性インプラントが、生体内において、デキサメタゾンを硝子体に下記のように放出しうることを示した:(1) 単一ポリマー活性剤インプラントよりかなり長い期間にわたって(即ち、少なくとも約112日間対約30日間)、かつ、かなり直線的に放出。重要なことに、この試験は、島部および海部インプラントが、生体内において、360日間にわたって、実質的に一定した放出速度(即ち、実質的にゼロ勾配でのほぼ直線的放出)での、活性剤の実質的に連続的な放出を可能にすることを(合わされた3つのインプラントの放出特性の累積観察として)示した。
【0135】
重要なことに、表4および図5に示されているように、単一ポリマーRG755 3mgインプラント(1500μgデキサメタゾン)は長時間放出プロフィールを示し、それによって、固有粘度約0.50〜約0.70dl/gを有する75:25(wt%)ラクチド/グリコリド単一ポリマーは、長時間放出インプラントを製造するのに好適であることを示している。
【0136】
さらに、この試験は、実施例5の生侵食性インプラントシステムが、少なくとも10ng/mLまたは少なくとも約100ng/mLの生体内硝子体内デキサメタゾン(またはデキサメタゾン等量)濃度を、120日間または360日間にわたって、放出し維持しうることを示した。この試験は、比較により、単一インプラント(350μgまたは700μgデキサメタゾン)が約30日後に硝子体へのデキサメタゾンの送達をし尽くし、かつ、そのかなり短い放出期間においてさえ、単一ポリマー生侵食性インプラントは、生体内硝子体内デキサメタゾン(またはデキサメタゾン等量)濃度を、実質的に連続した放出かまたは実質的に一定した活性剤放出速度において、放出または維持できないことも示した。
【実施例7】
【0137】
抗炎症活性剤長時間放出システムによる眼疾患の治療
長時間放出インプラントシステムを使用して、眼疾患を治療することができる。インプラントは、ステロイド、例えば抗炎症性ステロイド、例えばデキサメタゾンを、活性剤として含有することができる。選択的にまたは付加的に、活性剤は、非ステロイド性抗炎症薬、例えばケトララク(Allergan, Irvine, Californiaから、ケトララクトロメタミン眼用液として入手可能)であってもよい。従って、例えば、実施例1または実施例4のデキサメタゾンまたはケトララク長時間放出インプラントシステムを、所望の治療作用のために、眼疾患患者の眼の領域または部位(即ち、硝子体)に埋め込むことができる。眼疾患は、ブドウ膜炎のような炎症性疾患であってよく、または患者が下記疾患の1つまたはそれ以上に罹患していてもよい:黄斑変性(非滲出性老化関連黄斑変性および滲出性老化関連黄斑変性を包含する);脈絡膜新生血管;急性斑状視神経網膜症;黄斑浮腫(類嚢胞黄斑浮腫および糖尿病性黄斑浮腫を包含する);ベーチェット病;糖尿病性網膜症(増殖性糖尿病性網膜症を包含する);網膜動脈閉鎖性疾患;網膜中心静脈閉鎖;ブドウ膜炎網膜疾患;網膜剥離;網膜症;網膜上膜疾患;網膜枝静脈閉鎖;前虚血性視神経障害(anterior ischemic optic neuropathy);非網膜症糖尿病性網膜機能不全;色素性網膜炎および緑内障。インプラントは、実施例2および6に記載した手順(トロカール埋め込み)を使用して、硝子体に挿入することができる。インプラントは、例えばデキサメタゾンまたはケトロラクの治療量を、長時間にわたって放出することができ、それによって眼疾患の症状を治療することができる。
【実施例8】
【0138】
抗血管新生長時間放出インプラントの製造および治療的使用
本発明の眼疾患治療用インプラントは、ステロイド、例えば抗血管新生ステロイド、例えばアネコルターブを、活性剤として含有することができる。従って、アネコルターブアセテート(血管新生阻害ステロイド(angiostatic steroid))の長時間送達用の生侵食性インプラントシステムは、実施例1の方法または実施例4の方法を使用し、デキサメタゾンの代わりにアネコルターブアセテートを活性剤として使用して、製造することができる。1つまたはそれ以上のインプラントに、合計約15mgのアネコルターブを装填することができる(即ち、5mgのアネコルターブを、実施例1の方法によって製造した3つのインプラントのそれぞれに装填することができる)。
【0139】
アネコルターブアセテート長時間放出インプラントシステムを、所望の治療作用のために、眼疾患患者の眼の領域または部位(即ち、硝子体)に埋め込むことができる。眼疾患は、血管新生疾患、またはブドウ膜炎のような炎症性疾患であってよく、または患者が下記疾患の1つまたはそれ以上に罹患していてもよい:黄斑変性(非滲出性老化関連黄斑変性および滲出性老化関連黄斑変性を包含する);脈絡膜新生血管;急性斑状視神経網膜症;黄斑浮腫(類嚢胞黄斑浮腫および糖尿病性黄斑浮腫を包含する);ベーチェット病;糖尿病性網膜症(増殖性糖尿病性網膜症を包含する);網膜動脈閉鎖性疾患;網膜中心静脈閉鎖;ブドウ膜炎網膜疾患;網膜剥離;網膜症;網膜上膜疾患;網膜枝静脈閉鎖;前虚血性視神経障害(anterior ischemic optic neuropathy);非網膜症糖尿病性網膜機能不全;色素性網膜炎および緑内障。インプラントは、実施例2および6に記載した手順(トロカール埋め込み)を使用して、硝子体に挿入することができる。インプラントは、アネコルターブの治療量を、長時間にわたって放出することができ、それによって眼疾患の症状を治療することができる。
【実施例9】
【0140】
抗VEGF長時間放出インプラントの製造および治療的使用
VEGF(血管内皮成長因子)(VEGF-Aとしても既知)は、血管内皮細胞の成長、生存および増殖を刺激することができる成長因子である。VEGFは、新血管の発生(新脈管形成)および未熟血管の生存(血管維持)において中心的役割を果たしていると考えられる。VEGFの腫瘍発現は、血管網の発生および維持を生じ、これは腫瘍成長および転移を促進する。従って、増加したVEGF発現は、多くの腫瘍型において悪い予後に関係している。VEGFの阻害は、単独でまたは現在の治療法(例えば、放射線療法、化学療法、対象生物学療法)を補うために使用される抗癌療法となりうる。
【0141】
VEGFは、構造的に関連した2つの膜受容体チロシンキナーゼ、VEGF受容体−1(VEGFR-1またはflt-1)およびVEGFR-2(flk-1またはKDR)に結合し活性化することによってその作用を発揮すると考えられ、それらは血管壁内の内皮細胞によって発現される。VEGFは、構造的に異なる受容体ニューロピリン−1とも相互作用しうる。VEGFがこれらの受容体に結合することによって、シグナルカスケード(signaling cascade)を開始し、遺伝子発現ならびに細胞の生存、増殖および移動における作用を生じる。VEGFは、構造的に関連したタンパク質のファミリーの構成員である(下記の表A参照)。これらのタンパク質は、VEGFR(VEGF受容体)のファミリーに結合し、それによって、種々の生物学的過程を刺激する。胎盤成長因子(PIGF)およびVEGF-Bは、主にVEGFR-1に結合する。PIGFは新脈管形成を調節し、炎症反応においても役割を担っていると考えられる。VEGF-CおよびVEGF-Dは、主にVEGFR-3に結合し、脈管形成よりむしろリンパ管形成を刺激する。
【0142】
【表1】

【0143】
長時間放出生侵食性インプラントシステムを使用して、VEGFによって媒介される眼疾患を治療することができる。従って、インプラントは、VEGFの形成を阻害するか、またはVEGFのVERFRへの結合を阻害する作用を有する化合物を、活性剤として含有することができる。活性剤は、例えば、ラニビズマブ(rhuFab V2)(Genentech, South San Francisco, California)であってよく、インプラントは、実施例1の方法または実施例4の方法を使用し、デキサメタゾンの代わりにラニビズマブを活性剤として使用して製造することができる。ラニビズマブは、湿性老化関連黄斑変性を包含する黄斑変性の患者に特に有用となりうる抗−VEGF(血管内皮成長因子)製剤である。1つまたはそれ以上のインプラントに、合計約300〜500μgのラニビズマブを装填することができる(即ち、約150μgのラニビズマブを、実施例1の方法によって製造した3つの各インプラントに装填することができる)。
【0144】
ラニビズマブ長時間放出インプラントシステムを、所望の治療作用のために、眼疾患患者の眼の領域または部位(即ち、硝子体)に埋め込むことができる。眼疾患は、ブドウ膜炎のような炎症性疾患であってよく、または患者が下記疾患の1つまたはそれ以上に罹患していてもよい:黄斑変性(非滲出性老化関連黄斑変性および滲出性老化関連黄斑変性を包含する);脈絡膜新生血管;急性斑状視神経網膜症;黄斑浮腫(類嚢胞黄斑浮腫および糖尿病性黄斑浮腫を包含する);ベーチェット病;糖尿病性網膜症(増殖性糖尿病性網膜症を包含する);網膜動脈閉鎖性疾患;網膜中心静脈閉鎖;ブドウ膜炎網膜疾患;網膜剥離;網膜症;網膜上膜疾患;網膜枝静脈閉鎖;前虚血性視神経障害(anterior ischemic optic neuropathy);非網膜症糖尿病性網膜機能不全;色素性網膜炎および緑内障。インプラントは、実施例2および6に記載した手順(トロカール埋め込み)を使用して、硝子体に挿入することができる。インプラントは、ラニビズマブの治療量を、長時間にわたって放出することができ、それによって眼疾患の症状を治療することができる。
【0145】
ペガプタニブは、VEGFに選択的に結合し中和することができるアプタマーであり、例えば、異常血管成長を阻害することによって、かつ眼の後部の血管漏出を安定化させるかまたは後退させる(reverse)ことによって、老化関連黄斑変性および糖尿病性黄斑浮腫の治療に有効性を有しうる。ペガプタニブナトリウム(Macugen; Pfizer Inc, New YorkまたはEyetech Pharmaceuticals, New York)の長時間送達用の生侵食性インプラントシステムも、実施例1の方法または実施例4の方法を使用し、デキサメタゾンの代わりにペガプタニブナトリウムを活性剤として使用して製造することができる。実施例1の方法によって、1つまたはそれ以上のインプラントに、合計約1mg〜約3mgのMacugenを装填することができる。
【0146】
ペガプタニブナトリウム長時間放出インプラントシステムを、所望の治療作用のために、眼疾患患者の眼の領域または部位(即ち、硝子体)に埋め込むことができる。
【0147】
Regeneron, Tarrytown, New Yorkから入手可能なVEGF Trap化合物約1〜3mgを使用して、眼疾患、例えば眼腫瘍の治療用の、長時間放出生侵食性眼内インプラントも、この実施例9に記載のように製造することができる。
【実施例10】
【0148】
β遮断薬長時間放出インプラントの製造および治療的使用
眼疾患を治療するための長時間放出インプラントシステムは、β−アドレナリン受容体拮抗薬(即ち、「β遮断薬」)、例えば、レボブノロール、ベタキソロール、カルテオロール、チモロール半水和物およびチモロールを含有することができる。マレイン酸チモロールは、開放隅角緑内障の治療に一般に使用される。従って、マレイン酸チモロール(Timoptic, TimopolまたはLoptomitの商品名で種々の供給源から入手可能)を活性剤として含有する長時間放出生侵食性インプラントシステムを、実施例1の方法または実施例4の方法を使用し、デキサメタゾンの代わりにマレイン酸チモロールを使用して製造することができる。例えば、マレイン酸チモロール約50μg〜150μgを、実施例1の方法によって製造された3つの各インプラントに装填することができる。
【0149】
チモロール長時間放出インプラントシステムを、所望の治療作用のために、眼疾患患者の眼の領域または部位(即ち、硝子体)に埋め込むことができる。眼疾患は、ブドウ膜炎のような炎症性疾患であってよく、または患者が下記疾患の1つまたはそれ以上に罹患していてもよい:黄斑変性(非滲出性老化関連黄斑変性および滲出性老化関連黄斑変性を包含する);脈絡膜新生血管;急性斑状視神経網膜症;黄斑浮腫(類嚢胞黄斑浮腫および糖尿病性黄斑浮腫を包含する);ベーチェット病;糖尿病性網膜症(増殖性糖尿病性網膜症を包含する);網膜動脈閉鎖性疾患;網膜中心静脈閉鎖;ブドウ膜炎網膜疾患;網膜剥離;網膜症;網膜上膜疾患;網膜枝静脈閉鎖;前虚血性視神経障害(anterior ischemic optic neuropathy);非網膜症糖尿病性網膜機能不全;色素性網膜炎および緑内障。インプラントは、実施例2および6に記載した手順(トロカール埋め込み)を使用して、硝子体に挿入することができる。インプラントは、チモロールの治療量を、長時間にわたって放出することができ、それによって、例えば眼圧降下を生じさせることにより、眼疾患の症状を治療することができる。
【実施例11】
【0150】
プロスタミド長時間放出インプラントの製造および治療的使用
眼疾患を治療するための長時間放出インプラントシステムは、プロスタミドを含有することができる。プロスタミドは、COX2を包含する経路におけるアナンダミドから生合成される天然物質である。ビマトプロスト(Lumigan;ルミガン)は、プロスタミドFに化学的に関連した合成プロスタミド類似体である。ルミガンは、他のIOP降下薬に不耐性または不充分に反応性の開放隅角緑内障または眼高圧の患者における高い眼内圧(IOP)の減少に関して、FDAによって認可されている。ルミガンは、房水の流出を増加させることによって眼内圧を降下させると考えられる。
【0151】
従って、Lumigan(ルミガン)(Allergan, Irvine, California)を活性剤として含有する長時間放出生侵食性インプラントシステムを、実施例1の方法または実施例4の方法を使用し、デキサメタゾンの代わりにマレイン酸チモロールを使用して製造することができる。例えば、ルミガン約100μg〜300μgを、実施例1の方法によって製造された3つの各インプラントに装填することができる。
【0152】
ルミガン長時間放出インプラントシステムを、所望の治療作用のために、眼疾患患者の眼の領域または部位(即ち、硝子体)に埋め込むことができる。眼疾患は、ブドウ膜炎のような炎症性疾患であってよく、または患者が下記疾患の1つまたはそれ以上に罹患していてもよい:黄斑変性(非滲出性老化関連黄斑変性および滲出性老化関連黄斑変性を包含する);脈絡膜新生血管;急性斑状視神経網膜症;黄斑浮腫(類嚢胞黄斑浮腫および糖尿病性黄斑浮腫を包含する);ベーチェット病;糖尿病性網膜症(増殖性糖尿病性網膜症を包含する);網膜動脈閉鎖性疾患;網膜中心静脈閉鎖;ブドウ膜炎網膜疾患;網膜剥離;網膜症;網膜上膜疾患;網膜枝静脈閉鎖;前虚血性視神経障害(anterior ischemic optic neuropathy);非網膜症糖尿病性網膜機能不全;色素性網膜炎および緑内障。インプラントは、実施例2および6に記載した手順(トロカール埋め込み)を使用して、硝子体に挿入することができる。インプラントは、ルミガンの治療量を、長時間にわたって放出することができ、それによって、例えば眼圧降下を生じさせることにより、眼疾患の症状を治療することができる。
【実施例12】
【0153】
α−2長時間放出インプラントの製造および治療的使用
α−2アドレナリン受容体作動薬、例えば、クロニジン、アプラクロニジンまたはブリモニジンを活性剤として含有する長時間放出インプラントシステムを使用して、眼疾患を治療することができる。従って、実施例1の方法または実施例4の方法を使用し、デキサメタゾンの代わりにAlphaganを使用して、ブリモニジン(Allergan, Irvine, California;AlphaganまたはAlphagan P)を活性剤として含有する長時間放出生侵食性インプラントシステムを、製造することができる。例えば、Alphagan約50μg〜100μgを、実施例1の方法によって製造された3つの各インプラントに装填することができる。
【0154】
ブリモニジン長時間放出インプラントシステムを、所望の治療作用のために、眼疾患患者の眼の領域または部位(即ち、硝子体)に埋め込むことができる。眼疾患は、ブドウ膜炎のような炎症性疾患であってよく、または患者が下記疾患の1つまたはそれ以上に罹患していてもよい:黄斑変性(非滲出性老化関連黄斑変性および滲出性老化関連黄斑変性を包含する);脈絡膜新生血管;急性斑状視神経網膜症;黄斑浮腫(類嚢胞黄斑浮腫および糖尿病性黄斑浮腫を包含する);ベーチェット病;糖尿病性網膜症(増殖性糖尿病性網膜症を包含する);網膜動脈閉鎖性疾患;網膜中心静脈閉鎖;ブドウ膜炎網膜疾患;網膜剥離;網膜症;網膜上膜疾患;網膜枝静脈閉鎖;前虚血性視神経障害(anterior ischemic optic neuropathy);非網膜症糖尿病性網膜機能不全;色素性網膜炎および緑内障。インプラントは、実施例2および6に記載した手順(トロカール埋め込み)を使用して、硝子体に挿入することができる。インプラントは、ブリモニジンの治療量を、長時間にわたって放出することができ、それによって、例えば眼圧降下を生じさせることにより、眼疾患の症状を治療することができる。
【実施例13】
【0155】
レチノイド長時間放出インプラントの製造および治療的使用
長時間放出インプラントシステムを使用して眼疾患を治療することができる。インプラントは、エチルニコチネートのようなレチノイド、例えばタザロテンを含有することができる。従って、実施例1の方法または実施例4の方法を使用し、デキサメタゾンの代わりにタザロテンを使用して、タザロテン(Allergan, Irvine, California)を活性剤として含有する長時間放出生侵食性インプラントシステムを製造することができる。例えば、タザロテン約100μg〜500μgを、実施例1の方法によって製造された3つの各インプラントに装填することができる。
【0156】
タザロテン長時間放出インプラントシステムを、所望の治療作用のために、眼疾患患者の眼の領域または部位(即ち、硝子体)に埋め込むことができる。眼疾患は、ブドウ膜炎のような炎症性疾患であってよく、または患者が下記疾患の1つまたはそれ以上に罹患していてもよい:黄斑変性(非滲出性老化関連黄斑変性および滲出性老化関連黄斑変性を包含する);脈絡膜新生血管;急性斑状視神経網膜症;黄斑浮腫(類嚢胞黄斑浮腫および糖尿病性黄斑浮腫を包含する);ベーチェット病;糖尿病性網膜症(増殖性糖尿病性網膜症を包含する);網膜動脈閉鎖性疾患;網膜中心静脈閉鎖;ブドウ膜炎網膜疾患;網膜剥離;網膜症;網膜上膜疾患;網膜枝静脈閉鎖;前虚血性視神経障害(anterior ischemic optic neuropathy);非網膜症糖尿病性網膜機能不全;色素性網膜炎および緑内障。インプラントは、実施例2および6に記載した手順(トロカール埋め込み)を使用して、硝子体に挿入することができる。インプラントは、タザロテンの治療量を、長時間にわたって放出することができ、それによって、例えば眼圧降下を生じさせることにより、眼疾患の症状を治療することができる。
【実施例14】
【0157】
チロシンキナーゼ阻害薬長時間放出インプラントの製造および治療的使用
一般に、チロシンキナーゼ阻害薬は、成長因子シグナル伝達の小分子阻害薬である。タンパク質チロシンキナーゼ(PTK)は、酵素活性を有する大きくかつ多様な種類のタンパク質を含んで成る。PTKは、細胞増殖および分化の調節において重要な役割を果たしている。例えば、受容体チロシンキナーゼ仲介シグナル伝達は、ある成長因子(リガンド)との細胞外相互作用、次に、受容体二量化、内在性タンパク質チロシンキナーゼ活性の一過性刺激、およびリン酸化によって開始される。それによって、細胞内シグナル伝達分子のために結合部位が形成され、適切な細胞反応(例えば、細胞分裂、代謝性ホメオスタシス、および細胞外微小環境への反応)を促進する細胞質シグナル伝達分子のスペクトラム(a spectrum of cytoplasmic signaling molecules)との複合体を形成する。
【0158】
受容体チロシンキナーゼに関して、チロシンリン酸化部位が、シグナル伝達分子のSH2(src相同性)ドメインのための高親和性結合部位として機能することも示されている。受容体チロシンキナーゼ(RTK)と会合するいくつかの細胞内基質タンパク質が同定されている。それらは、2つの主要なグループに分けられる:(1)触媒ドメインを有する基質;および、(2)そのようなドメインを有さないが、アダプターとして機能し、触媒活性分子と会合する基質。受容体またはタンパク質と、それらの基質のSH2ドメインとの相互作用の特異性は、リン酸化チロシン残基を直接的に取り囲むアミノ酸残基によって決定される。SH2ドメインと、ある受容体上のホスホチロシン残基を取り囲むアミノ酸配列との結合親和性における差異は、それらの基質リン酸化プロフィールにおける観測される差異と一致している。これらの観測は、各受容体チロシンキナーゼの機能が、その発現パターンおよびリガンド利用能だけでなく、特定受容体によって活性化される下流シグナル伝達経路の配列によっても決まることを示唆している。即ち、リン酸化は、ある成長因子受容体ならびに分化因子受容体によって漸加されるシグナル伝達経路の選択性を決定する重要な調節段階を提供する。
【0159】
PTKにおける異常発現または変異は、非制御細胞増殖(例えば、悪性腫瘍増殖)または主要発生過程における欠陥を生じることが示されている。従って、生物医学界は、以下を見出すことに多くの資財を投じている:PTKファミリー構成員のある生物学的役割、分化過程におけるそれらの機能、腫瘍発生および他の疾患におけるそれらの関与、リガンド刺激時に活性化されるそれらのシグナル伝達経路の根底にある生化学的メカニズム、および新規薬剤開発。
【0160】
チロシンキナーゼは、受容体型(細胞外、膜内外および細胞内ドメインを有する)、または非受容体型(完全に細胞内)であることができる。RTKは、多様な生物学的活性を有する膜内外受容体の大ファミリーから成る。RTKの内在性機能はリガンド結合時に活性化され、その結果、受容体および多くの細胞基質のリン酸化を生じ、次に、種々の細胞反応を生じる。
【0161】
現在、少なくとも19の明確なRTKサブファミリーが同定されている。HERサブファミリーと称される1つのRTKサブファミリーは、EGFR、HER2、HER3およびHER4から成ると考えられる。受容体のHERサブファミリーのリガンドは、上皮成長因子(EGF)、TGF-α、アンフィレグリン(amphiregulin)、HB-EGF、ベタセルリン(betacellulin)およびヘレグリン(heregulin)を包含する。
【0162】
インスリンサブファミリーと称されるRTKの第二ファミリーは、INS-R、IGF-1RおよびIR-Rから成る。第三ファミリー、「PDGF」サブファミリーは、PDGFαおよびβ受容体、CSFIR、c-kitおよびFLK-IIを包含する。FLKファミリーとして同定されるRTKの他のサブファミリーは、キナーゼインサートドメイン−受容体胎児肝キナーゼ−1(KDR/FLK-1)、胎児肝キナーゼ4(FLK-4)およびfms様チロシンキナーゼ1(flt-1)から成ると考えられる。これらの各受容体は、当初、造血成長因子の受容体であると考えられていた。RTKの他の2つのサブファミリーは、FGF受容体ファミリー(FGFR1、FGFR2、FGFR3およびFGFR4)およびMetサブファミリー(c-metおよびRon)と称されている。
【0163】
PDGFサブファミリーとFLKサブファミリーの類似性により、2つのサブファミリーは、一緒に考慮される場合が多い。既知のRTKサブファミリーは、参照により本明細書に組み入れられるPlowmanら, 1994, DN&P 7(6):334-339において同定されている。
【0164】
非受容体チロシンキナーゼは、細胞外および膜内外配列を有さない細胞酵素の集合を表す。現在、11のサブファミリー(Scr、Frk、Btk、Csk、Abl、Zap70、Fes/Fps、Fak、Jak、AckおよびLIMK)を構成する24を超える個々の非受容体チロシンキナーゼが同定されている。現在、非受容体チロシンキナーゼのSrcサブファミリーは、最も多くのPTKから成り、Src、Yes、Fyn、Lyn、Lck、Blk、Hck、FgrおよびYrkを包含する。Srcサブファミリーおよび酵素は、腫瘍形成に関連づけられている。非受容体チロシンキナーゼについての詳しい説明は、参照により本明細書に組み入れられるBolen, 1993, Oncogen 8:2025-2031に示されている。
【0165】
RTKまたは非受容体チロシンキナーゼのいずれにせよ、多くのチロシンキナーゼは、癌、乾癬および過剰免疫反応を包含する病原性状態を生じる細胞シグナルカスケードを生じる細胞シグナル伝達経路に関与していることが見出された。
【0166】
細胞増殖の制御、調節および調整、異常細胞増殖に関連した疾患および障害に関して、推測されるPTKの重要性に鑑みて、下記物質の使用を包含する種々の方法を使用して、受容体および非受容体チロシンキナーゼ「阻害薬」を同定する多くの試みがなされている:変異リガンド(米国特許第4966849号)、可溶性受容体および抗体(PCT出願第WO 94/10202号;Kendall & Thomas, 1994, Proc. Nat’l Acad. Sci 90:10705-09;Kimら, 1993, Nature 362:841-844)、RNAリガンド(Jellinekら, Biochemistry 33:10450-56;Takanoら, 1993, Mol. Bio. Cell 4:358A;Kinsellaら, 1992, Exp. Cell Res. 199:56-62;Wrightら, 1992, J. Cellular Phys. 152:448-57)、およびチロシンキナーゼ阻害薬(PCT出願第WO94/03427号、第WO92/21660号、第WO91/15495号、第WO94/14808号;米国特許第5330992号;Marianiら, 1994, Proc. Am. Assoc. Cancer Res. 35:2268)。
【0167】
チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)、例えば米国特許出願第2004-00019098号に開示されているTKI(Allergan, Irvine, Californiaから入手可能)を活性剤として含有する長時間放出インプラントシステムを使用して眼疾患を治療することができ、該インプラントは、実施例1の方法または実施例4の方法を使用し、デキサメタゾンの代わりにTKIを使用して製造することができる。例えば、TKI約100μg〜300μgを、実施例1の方法によって製造された3つの各インプラントに装填することができる。
【0168】
TKI長時間放出インプラントシステムを、所望の治療作用のために、眼疾患患者の眼の領域または部位(即ち、硝子体)に埋め込むことができる。眼疾患は、ブドウ膜炎のような炎症性疾患であってよく、または患者が下記疾患の1つまたはそれ以上に罹患していてもよい:黄斑変性(非滲出性老化関連黄斑変性および滲出性老化関連黄斑変性を包含する);脈絡膜新生血管;急性斑状視神経網膜症;黄斑浮腫(類嚢胞黄斑浮腫および糖尿病性黄斑浮腫を包含する);ベーチェット病;糖尿病性網膜症(増殖性糖尿病性網膜症を包含する);網膜動脈閉鎖性疾患;網膜中心静脈閉鎖;ブドウ膜炎網膜疾患;網膜剥離;網膜症;網膜上膜疾患;網膜枝静脈閉鎖;前虚血性視神経障害(anterior ischemic optic neuropathy);非網膜症糖尿病性網膜機能不全;色素性網膜炎および緑内障。インプラントは、実施例2および6に記載した手順(トロカール埋め込み)を使用して、硝子体に挿入することができる。インプラントは、TKIの治療量を、長時間にわたって放出することができ、それによって、例えば眼圧降下を生じさせることにより、眼疾患の症状を治療することができる。
【実施例15】
【0169】
NMDA拮抗薬長時間放出インプラントの製造および治療的使用
グルタメートによるN−メチル−D−アスパルテート(NMDA)受容体の過剰刺激が、種々の疾患に関与していると考えられる。メマンチンはNMDA拮抗薬であり、これを使用して、NMDA受容体複合体によって仲介される神経損傷を減少させることができる。メマンチンは、Merz Pharmaceuticals, Greensboro, North CarolinaからAxuraの商品名で入手できる。長時間放出インプラントシステムを使用して、眼疾患を治療することができる。インプラントは、メマンチンのようなNMDA拮抗薬を含有することができる。従って、メマンチンを活性剤として含有する長時間放出生侵食性インプラントシステムを、実施例1の方法または実施例4の方法を使用し、デキサメタゾンの代わりにメマンチンを使用して製造することができる。例えば、メマンチン約400μg〜700μgを、実施例1の方法によって製造された3つの各インプラントに装填することができる。
【0170】
メマンチン長時間放出インプラントシステムを、所望の治療作用のために、眼疾患患者の眼の領域または部位(即ち、硝子体)に埋め込むことができる。眼疾患は、ブドウ膜炎のような炎症性疾患であってよく、または患者が下記疾患の1つまたはそれ以上に罹患していてもよい:黄斑変性(非滲出性老化関連黄斑変性および滲出性老化関連黄斑変性を包含する);脈絡膜新生血管;急性斑状視神経網膜症;黄斑浮腫(類嚢胞黄斑浮腫および糖尿病性黄斑浮腫を包含する);ベーチェット病;糖尿病性網膜症(増殖性糖尿病性網膜症を包含する);網膜動脈閉鎖性疾患;網膜中心静脈閉鎖;ブドウ膜炎網膜疾患;網膜剥離;網膜症;網膜上膜疾患;網膜枝静脈閉鎖;前虚血性視神経障害(anterior ischemic optic neuropathy);非網膜症糖尿病性網膜機能不全;色素性網膜炎および緑内障。インプラントは、実施例2および6に記載した手順(トロカール埋め込み)を使用して、硝子体に挿入することができる。インプラントは、メマンチンの治療量を、長時間にわたって放出することができ、それによって眼疾患の症状を治療することができる。
【実施例16】
【0171】
エストラトロポン長時間放出インプラントの製造および治療的使用
あるエストラトロポンは、抗血管新生、抗腫瘍および関連した有用な治療活性を有する。長時間放出インプラントシステムを使用して、眼疾患を治療することができる。インプラントは、2−メトキシエストラジオール(Entremed, Inc., Rockville, Marylandから、Panzemの商品名で入手可能)のようなエストラトロポンを含有することができる。従って、実施例1の方法または実施例4の方法を使用し、デキサメタゾンの代わりに2−メトキシエストラジオールを使用して、メマンチンを活性剤として含有する長時間放出生侵食性インプラントシステムを製造することができる。2−メトキシエストラジオールは、眼の後部における異常血管形成をブロックする小分子血管新生阻害薬として使用することができる。従って、2−メトキシエストラジオール約400μg〜700μgを、実施例1の方法によって製造した3つの各インプラントに装填することができる。
【0172】
2−メトキシエストラジオール長時間放出インプラントシステムを、所望の治療作用のために、眼疾患患者の眼の領域または部位(即ち、硝子体)に埋め込むことができる。眼疾患は、ブドウ膜炎のような炎症性疾患であってよく、または患者が下記疾患の1つまたはそれ以上に罹患していてもよい:黄斑変性(非滲出性老化関連黄斑変性および滲出性老化関連黄斑変性を包含する);脈絡膜新生血管;急性斑状視神経網膜症;黄斑浮腫(類嚢胞黄斑浮腫および糖尿病性黄斑浮腫を包含する);ベーチェット病;糖尿病性網膜症(増殖性糖尿病性網膜症を包含する);網膜動脈閉鎖性疾患;網膜中心静脈閉鎖;ブドウ膜炎網膜疾患;網膜剥離;網膜症;網膜上膜疾患;網膜枝静脈閉鎖;前虚血性視神経障害(anterior ischemic optic neuropathy);非網膜症糖尿病性網膜機能不全;色素性網膜炎および緑内障。インプラントは、実施例2および6に記載した手順(トロカール埋め込み)を使用して、硝子体に挿入することができる。インプラントは、2−メトキシエストラジオールの治療量を、長時間にわたって放出することができ、それによって眼疾患の症状を治療することができる。
【0173】
同じ方法を使用して、他の長時間放出単一または多ポリマーインプラントを製造することができ、該インプラントにおいて、活性剤は、例えば、硝子体内出血の治療薬(例えばVitrase;Ista Pharmaceuticalsから入手可能)、抗生物質(例えば、シクロスポリンまたはガチフロキサシン;前者はAllergan, Irvine, Californiaから商品名Restasisとして入手可能、後者はAllerganから商品名Zymarとして入手可能)、オフロキサシン、アンドロゲン、エピナスチン(Elestat, Allergan, Irvine, CA)であるか、または同じ長時間送達システムにおける下記のような2つまたはそれ以上の活性剤の組合せである:単一長時間放出インプラントにおけるプロスタミド(即ち、ブリマトプロスト)とβ遮断薬(即ち、チモロール)との組合せ、またはα2−アドレナリン作動薬(即ち、ブリモニジン)とβ遮断薬、例えばチモロールとの組合せ。本発明の範囲のインプラントは、眼組織への光ダイナミック療法またはレーザ法と共に使用できる。
【0174】
前記の全ての文献、論文、特許、出願および公開は、参照により全体として本明細書に組み入れられる。
【0175】
従って、請求の範囲の意図および範囲は、前記の好ましい実施形態の記載に限定すべきでない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症媒介眼疾患の治療用生侵食性インプラントであって、
(a) 第一活性剤および第一生侵食性ポリマーをブレンドして、第一活性剤ポリマー混合物を形成する工程;
(b) 第二活性剤および第二生侵食性ポリマーをブレンドして、第二活性剤ポリマー混合物を形成する工程;
(c) 第一および第二活性剤ポリマー混合物を共押出して、第一および第二領域を含有する生侵食性インプラントを形成する工程;
によって製造され、
該第一領域が該第一活性剤ポリマー混合物を含有し、該第二領域が該第二活性剤ポリマー混合物を含有し、該第一および第二領域が異なる活性剤放出特性を有する生侵食性インプラント。
【請求項2】
第一活性剤および第二活性剤が同じ活性剤である請求項1に記載の生侵食性インプラント。
【請求項3】
第一活性剤および第二活性剤が異なる活性剤である請求項1に記載の生侵食性インプラント。
【請求項4】
第一ポリマーおよび第二ポリマーが同じポリマーである請求項1に記載の生侵食性インプラント。
【請求項5】
第一ポリマーおよび第二ポリマーが異なるポリマーである請求項1に記載の生侵食性インプラント。
【請求項6】
活性剤を、少なくとも10ng/mLのデキサメタゾンまたはデキサメタゾン等量に相当するレベルで、少なくとも50日間にわたって、連続的に放出することができる請求項1に記載の生侵食性インプラント。
【請求項7】
活性剤を、少なくとも50ng/mLのデキサメタゾンまたはデキサメタゾン等量に相当するレベルで、少なくとも50日間にわたって、連続的に放出することができる請求項1に記載の生侵食性インプラント。
【請求項8】
後眼疾患の治療用生侵食性インプラントであって、
(a) 活性剤と第一生侵食性ポリマーとの第一混合物を含有する第一領域;および
(b) 活性剤と第二生侵食性ポリマーとの第二混合物を含有する第二領域;
を含んで成り、
該第一および第二領域が、異なる活性剤放出特性を有する生侵食性インプラント。
【請求項9】
活性剤を、少なくとも10ng/mLのデキサメタゾンまたはデキサメタゾン等量に相当するレベルで、少なくとも50日間にわたって、連続的に放出することができる請求項8に記載の生侵食性インプラント。
【請求項10】
活性剤を、少なくとも50ng/mLのデキサメタゾンまたはデキサメタゾン等量に相当するレベルで、少なくとも50日間にわたって、連続的に放出することができる請求項8に記載の生侵食性インプラント。

【図1】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−207028(P2012−207028A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−144950(P2012−144950)
【出願日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【分割の表示】特願2007−510790(P2007−510790)の分割
【原出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(591018268)アラーガン、インコーポレイテッド (293)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】