説明

長期保存可能な非アルコール性の非混濁性麦芽飲料および方法

【課題】長期保存可能な、非混濁性の非アルコール性麦芽飲料を提供する。
【解決手段】本飲料は、ソルビン酸塩、安息香酸塩、ソルビン酸、安息香酸、およびそれらの混合物からなる群より選択される化学保存料と、飲料の体積当たり1.5体積を超える二酸化炭素と、麦芽抽出物とを含む。飲料は、約2.5〜約4.0のpHを有し、炭酸カルシウムとしての飲料の硬度が約25mg/lを超える場合に、二酸化炭素が1.8体積を超える量で存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麦芽飲料およびそのような飲料の製法に関する。さらに詳細には、本発明は、長期保存可能な、非アルコール性かつ非混濁性の麦芽飲料およびそのような飲料の製法に関する。
【背景技術】
【0002】
麦芽飲料は、通常、冷却すると混濁する。一般に、混濁飲料は、透明飲料よりも魅力に劣るとみなされている。さらには、一部の消費者は、混濁を汚染の兆候であると考えるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、非混濁性の麦芽飲料が必要である。加えて、そのような飲料の経済的で効率のよい製造方法も必要とされている。
【0004】
さらには、保存状態のよい、長期保存可能な非混濁性の麦芽飲料を製造するための麦芽飲料の保存方法も必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの態様にしたがって、非混濁性の非アルコール麦芽飲料の製法を提供する。本方法は、麦芽溶液を形成する工程を有してなり、凝固剤は、麦芽抽出物、凝固剤および水を含む麦芽からタンパク質を凝固させるのに適していなくてはならない。麦芽抽出物はタンパク質を含む。本方法は、麦芽溶液のpHがタンパク質の凝固に好適となるように、必要に応じて麦芽溶液のpHを調整する工程も含む。pHは約4.0未満であることが好ましい。本方法は、さらに、麦芽溶液中の麦芽抽出物に由来するタンパク質を凝固させる工程も含む。次いで、凝固させたタンパク質を麦芽溶液から取り除き、非混濁性の清涼麦芽飲料を形成する。凝固タンパク質を沈降させ、麦芽溶液をデカンテーションすることによって、凝固タンパク質を除去することが好ましい。麦芽溶液は、デカンテーションの際に、溶液を基準とする体積当たりの重量で、麦芽抽出物に由来する麦芽糖を約10%〜約40%含むことが好ましい。
【0006】
本発明の別の態様にしたがって、長期保存可能な、実質的に非混濁性の飲料を提供する。飲料は、2.5〜4.0のpHを有し、化学保存料、二酸化炭素および麦芽抽出物を含むことが好ましい。化学保存料としては、合計量約1000mg/l以下の、ソルビン酸塩、安息香酸塩、ソルビン酸、安息香酸、またはそれらの混合物が挙げられる。二酸化炭素は、飲料の単位体積当たり1.5体積を超える量で、さらには炭酸カルシウムとしての飲料の硬度が約25mg/lを上回る場合には1.8体積を超える量で、飲料中に存在する。飲料は、実質的に他の保存料を含まないことが最も好ましい。
【0007】
本発明の別の態様にしたがって、長期保存可能な飲料の製法を提供する。本方法は、
最終的な飲料の単位体積当たり約1.5体積を超える量の二酸化炭素で溶液を炭酸化し、
前記溶液に化学保存料を加え、次いで最終的な飲料が約2.5〜約4.0のpHを有するように、前記溶液に酸味料を加える、
各工程を有してなる。化学保存料としては、最終的な飲料における合計量が1000mg/l以下の量の、ソルビン酸塩、安息香酸塩、ソルビン酸、安息香酸、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0008】
したがって、本発明は、麦芽飲料における混濁を防止する改良方法、および麦芽飲料を保存する改良方法を提供する。本方法はまた、化学保存料の不快臭を有しない、非混濁性の麦芽飲料を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の1つの態様にしたがって、非混濁性の非アルコール性麦芽飲料の製造方法を提供する。本明細書では、「非混濁性の」とは、肉眼において、透明で沈殿物のない外観を有することを意味する。特に、「非混濁性の飲料」とは、麦芽溶液に寒冷混濁を生じさせるタンパク質の等電点未満のpH値、または4.2未満のpH値を有する飲料である。
【0010】
一般に、麦芽飲料は、沈殿タンクであって差し支えない、適切な入れ物または容器内で製造できる。水、凝固剤、および麦芽抽出物を混合することにより、溶液を調製する。水は、約21.11℃〜約76.67℃(約70°F〜約170°F)、好ましくは約26.67℃〜約57.22℃(約80°F〜約135°F)、さらに好ましくは約32.22℃〜約37.78℃(約90°F〜約100°F)であってよい、所望の温度に予熱することが好ましい。水を加えた後、凝固剤を加え、高せん断混合条件下で麦芽溶液に混合して構わない。酸性溶液中でタンパク質と結合可能な任意の適切な凝固剤を用いて差し支えない。好ましい凝固剤はカラギーナンである。好ましいカラギーナンとしては、κ−カラギーナンが挙げられる。CP Kelco社製のκ100カラギーナンが本発明に従った用途に適切な凝固剤である。
【0011】
随意的に、本発明の利益を十分に達成させるために、保存料を加えてもよい。保存料としては、ソルビン酸塩、安息香酸塩、ソルビン酸、安息香酸、またはそれらの混合物が挙げられる。保存料は、最終的な飲料における保存料の量が約1000mg/l以下になるような量で加える。保存料は、使用する場合には、麦芽抽出物より前に加えることが好ましい。次いで、麦芽抽出物をタンクに加える。加える麦芽抽出物は、溶液を基準とする体積当たりの重量で、麦芽抽出物に由来する麦芽糖を約10%〜約40%含む麦芽溶液が形成されるような量で加えられることが好ましい。麦芽糖の濃度は、溶液を基準とする体積当たりの重量で、約12%〜約21%、例えば15%であることがさらに好ましい。
【0012】
酸味料を加えて、麦芽溶液のpHを約4.0以下に調整することが好ましい。酸味料は、保存料を加えた後に加えることが好ましい。特に、安息香酸塩など、使用する保存料が酸性媒体に不溶性である場合には、酸味料を加える前に、保存料を完全に溶解させなければならない。最終的な麦芽飲料の製造に望ましい、実質的にすべての酸味料は、この時点で加えることができる。クエン酸、リンゴ酸、リン酸、乳酸およびそれらの混合物を含む、任意の適切な食品用酸味料を使用して差し支えない。麦芽溶液には、約2.3〜約2.8のpHが特に適している。
【0013】
あるいは、凝固剤に応じて、その後、もしくは、望みどおりに、または必要に応じて、pHを調整して、タンパク質の凝固を促進することができる。
【0014】
本発明にしたがって、上記麦芽溶液の製造の結果、麦芽からタンパク質が十分に除去され、非混濁性のまたは実質的に非混濁性の飲料を生じる。また、麦芽抽出物は、濃縮物として市販されているものを購入してもよく、あるいは、麦芽から抽出したばかりの、例えば市販品の濃度に比べて比較的薄くてもよい。
【0015】
タンパク質は、凝固剤によって、麦芽溶液中の麦芽抽出物と共に凝固する。凝固は、さまざまな処理および条件によって実施および促進することができる。一般的には、麦芽溶液は、前述の温度範囲内で約30分〜約12時間、保持される。タンパク質を凝固および除去するには、麦芽溶液を沸騰させたり、約5℃(約41°F)未満に冷却したりすることは必要としない、または一般的に望ましくない。凝固を促進するため、約1時間であろう、所望の時間、低せん断下で溶液を混合してもよい。例えば、凝固タンパク質を沈降させ、溶液をデカンテーションすることなどを含む、任意の適切な方法によって麦芽溶液から凝固タンパク質を除去して差し支えない。例えばろ過または遠心分離などの物理的方法によって凝固タンパク質を除去してもよい。あるいは、例えばイオン交換樹脂などの化学処理によって凝固タンパク質を除去してもよい。清澄溶液をさらに処理して非混濁性の麦芽飲料を生成することができる。
【0016】
具体的には、麦芽溶液を約70〜85%の糖度まで濃縮して、濃縮物を形成して差し支えなく、これを乾燥して、後に再構成するための乾燥飲料ミックスを形成することができる。麦芽溶液を希釈し、要望どおりに、例えば香味料、保存料、および着色料などを含む、他の材料を加えることができる。さらには、得られた麦芽飲料を低温殺菌するか、冷蔵下で分散させてもよい。
【0017】
しかしながら、本発明の利益を十分に達成するためには、典型的には、麦芽飲料を下記のように長期保存できるようにする。所望の種類の追加の酸味料を加えてもよく、最終的な飲料において約2.5〜約4.0のpHを達成することが好ましい。飲料は、典型的には、最終的な飲料の体積当たり約1.5体積を超える二酸化炭素で、さらには最終的な飲料が、約25mg/lを上回るCaCO3としての硬度を有する場合には、最終的な飲料の体積当たり約1.8体積を超える量の二酸化炭素で、炭酸化する。ボトル充填の間に炭酸化した希釈水を加えることにより、または、麦芽飲料を直接炭酸化することにより、飲料を炭酸化して差し支えない。後述のように、他の追加の材料を加えてもよい。
【0018】
本発明の別の態様にしたがって、長期保存可能な、実質的に非混濁性の飲料を提供する。飲料は、約2.5〜約4.0のpHを有し、化学保存料、二酸化炭素、および麦芽抽出物を含む。化学保存料は、約1000mg/l未満の量の、ソルビン酸塩、安息香酸塩、ソルビン酸、安息香酸、またはそれらの混合物から選択される化学保存料であって差し支えない。最終的な飲料が約100〜約600mg/lの安息香酸塩または安息香酸、および約50〜約400mg/lのソルビン酸塩またはソルビン酸を含むことが好ましい。安息香酸のナトリウムまたはカリウム塩、およびソルビン酸ナトリウムが好ましい追加の保存料である。
【0019】
二酸化炭素は、飲料の体積当たり約1.5体積を超える量で、さらには、炭酸カルシウムとしての飲料の硬度が約25mg/lを上回る場合には、約1.8体積を超える量で、飲料中に存在することが好ましい。
【0020】
任意の適切な麦芽抽出物を使用して構わない。麦芽抽出物は、任意の種類の麦芽または麦芽の組合せから抽出して差し支えなく、麦芽の選択は、所望の味に応じて決まる。カラメル風味をもたらすことから、一般的にはカラメル麦芽が望ましい。麦芽抽出物は要望に応じて、酵素活性を有していても、有しなくてもよい。
【0021】
他の保存料は必要としない。しかしながら、タンニン酸、ケイヒ酸、二炭酸ジアルキル(dialkyl dicarbonates)、ナタマイシン、ナイシン、ポリリン酸塩、パラベン、プロピオン酸、プロピオン酸塩、およびEDTAなどの既知の保存料を、他の目的で飲料組成物に含めてもよい。
【0022】
飲料の追加カロリー(added-calorie)または完全カロリー(full-calorie)の実施の形態では、最終的な麦芽飲料は、例えばトウモロコシの高果糖シロップ(HFCS−42またはHFCS−55)および中程度転化させた転化糖(medium invert sugar)を含む、果糖、グルコース、ショ糖、およびそれらの混合物など、要望に応じて、追加の栄養甘味料を加えて差し支えない。完全カロリーの実施の形態では、8〜14%の糖度を有することが好ましく、その内0.5〜5.0%の糖度が麦芽抽出物によって提供される。カロリーを低減した、または低カロリーの実施の形態では、要望に応じて、非栄養甘味料および栄養甘味料を含めることができる。
【0023】
典型的には、飲料の調製に使用する水を処理して、汚染物質および飲料に不快臭を与える可能性のある化合物を含む、望ましくない化合物を排除または低減する。使用する水の少なくとも大部分、またはすべては、最終的な飲料中の加えられた水が、合計約500mg/l未満の溶解固形物、および、約50mg/l未満のアルカリ度を有することが好ましい。
【0024】
随意的な、追加の材料の例としては、限定はしないが、香味料、起泡剤、消泡剤、親水コロイド、多糖類、果汁、酸化防止剤、カフェイン、コーヒー固形物、茶固形物、ハーブ、栄養価の高い化合物、電解質、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、着色剤、乳化剤、および当技術分野で既知の油などが挙げられる。アスコルビン酸を酸化防止剤として使用してもよい。エマルションではないフルーツ香味料が、本発明の飲料の用途にとって好ましい種類の香味料である。香味料は典型的には最終的な飲料の体積当たり0.02%〜0.35%の濃度で用いられる。一般には、飲料は非アルコール性であり、ホップまたはホップ抽出物を含まない。
【実施例】
【0025】
実施例1
非混濁性の麦芽飲料の製造に用いられる本発明の方法は、次の工程を有している。
1. 沈殿タンクに、32.22℃〜37.78℃(90°F〜100°F)の温度で水を加える。
2. カラギーナンを、高せん断下で沈殿タンクに加える。用いたカラギーナンは、主にκ−カラギーナンである、CP Kelco社製のκ100であった。
3. 保存料を沈殿タンクに加える。
4. 麦芽抽出物を沈殿タンクに加え、単位体積当たり約15重量%の溶液を調製する。
5. クエン酸を加える。
6. 低せん断下で1時間、タンクを混合する。
7. タンパク質を12時間かけて沈降させる。
8. 沈降したタンパク質を乱さずに(without disturbing)、溶液をシロップタンクにポンプで送り出し、そこに栄養甘味料、香味料、および軟水を加える。得られたシロップは2.4〜2.8のpHを有する。
9. シロップの、処理済みの希釈水に対する比1:0〜1:4で、飲料を炭酸化し、ボトル充填する。
【0026】
最初の5つの工程の順番は、さまざまな環境に基づいて変更することができる。
【0027】
実施例2
本発明に従って形成された好ましい麦芽飲料の配合を以下に記載する:
● 飲料に0.8〜2.4%の糖度を提供する、糖度80%(液体)の麦芽抽出物を1〜3%w/v;酵素活性を有しないことが好ましい、薄琥珀色の麦芽抽出物、しかしながら、暗色または金色など他のものも可能である。麦芽抽出液はカラメルを含む。
● 糖度10〜13%を生じさせる、十分な栄養甘味料。栄養甘味料は、ショ糖、トウモロコシの高果糖シロップ、または中程度転化された転化糖(〜50%ショ糖、〜25%果糖、〜25%グルコース/D型グルコース)であって差し支えない。
● 100〜300ml/lの安息香酸イオン。カリウムまたはナトリウム塩を加えてもよい。
● 50〜300mg/lのソルビン酸イオン。カリウム塩が好ましい。
● pH:2.50〜3.00。
● CO2:炭酸化は、最終的な飲料の硬度が25ppm(CaCO3として)を超える場合には2.3体積以上でなければならず、25ppm(CaCO3として)未満の場合には2.0体積以上でなければならない。
● 処理水。
● 酸味料。特定の範囲内のpHをもたらしうる任意の食品用の酸が適しているが(すなわち、乳酸、リンゴ酸、酒石酸など)、3,461mg/lのクエン酸が好ましい。
● エマルションではない香味料、好ましくはフルーツの香味料。香味料は、最終的な飲料において0.02%〜0.35%v/vの濃度で使用可能である。
● カラギーナンを使用するが、タンパク質と共に沈降させるため、材料とはみなされない。
【0028】
本発明を、特定の好ましい実施の形態に関して説明してきたが、当業者に認識されるように、本発明は、多くの変更、変形、および再配列が可能であって、これらの変更、変形、および再配列が、添付の特許請求の範囲の及ぶ範囲であることが意図されているものと理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長期保存可能な、実質的に非混濁性の麦芽飲料であって、
合計約1000mg/l以下の保存料において、ソルビン酸塩、安息香酸塩、ソルビン酸、安息香酸、およびそれらの混合物からなる群より選択される化学保存料と、
飲料の体積当たり1.5体積を超える二酸化炭素と、
麦芽抽出物と、
を含み、
前記飲料が、約2.5〜約4.0のpHを有し、炭酸カルシウムとしての前記飲料の硬度が約25mg/lを超える場合に、前記二酸化炭素が1.8体積を超える量で存在することを特徴とする飲料。
【請求項2】
前記飲料が、約7.222℃(約45°F)未満の温度で混濁を呈しないことを特徴とする請求項1記載の長期保存可能な飲料。
【請求項3】
麦芽に由来しない栄養甘味料をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の長期保存可能な飲料。
【請求項4】
前記化学保存料が、約100〜約300mg/lの量で存在する、安息香酸イオンまたは安息香酸と、約50〜約300mg/lの量で存在するソルビン酸イオンまたはソルビン酸との混合物であることを特徴とする請求項1記載の長期保存可能な飲料。
【請求項5】
前記飲料が、実質的に他の保存料を含まないことを特徴とする請求項1記載の長期保存可能な飲料。
【請求項6】
前記飲料が、追加のタンニン酸、ケイヒ酸、二炭酸ジアルキル、ナタマイシン、ナイシン、ポリリン酸塩、パラベン、プロピオン酸、プロピオン酸塩、およびEDTAを含まないことを特徴とする請求項1記載の長期保存可能な飲料。

【公開番号】特開2011−120602(P2011−120602A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23661(P2011−23661)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【分割の表示】特願2009−525694(P2009−525694)の分割
【原出願日】平成19年8月15日(2007.8.15)
【出願人】(593203701)ペプシコ,インコーポレイテッド (28)
【氏名又は名称原語表記】PepsiCo Inc.
【Fターム(参考)】