長期間の効果を有するタンパク質の送達のための単一タンパク質ナノカプセル
単一タンパク質コアと、タンパク質コアに共有結合によって固定された薄いポリマーシェルとを有するタンパク質ナノカプセル。本発明の態様は、単一タンパク質コアと、タンパク質コアに共有結合によって固定された薄いポリマーシェルとを有するタンパク質ナノカプセルを含む。いくつかの実施形態において、単一タンパク質コアは、複数の重合性基を有するタンパク質である。いくつかの実施形態において、単一タンパク質コアは、タンパク質触媒である。いくつかの実施形態において、ナノカプセルは、タンパク質コアの触媒活性を保持する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2009年3月9日に出願された米国仮出願第61/158,588号(この全体の内容は、参考として本明細書に援用される)および2009年10月22日に出願された米国仮出願第61/254,121号(この全体の内容は、参考として本明細書に援用される)への優先権を主張する。
【0002】
本発明は、Defense Threat Reducing Agency(DTRA)によって付与された助成金第BRBAA07−E−2−0042号の政府の支援によってなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
発明の分野
本発明は、細胞内タンパク質送達ビヒクル、該ビヒクルを調製方法、およびタンパク質を細胞標的に送達するための該ビヒクルの使用に関する。
【背景技術】
【0004】
平均的な真核細胞は、通常の細胞機能に関与する何千もの異なるタンパク質を含有する。ほとんどの人間の疾患は、何らかの形で、特定タンパク質の全身性または限局性の機能不全に関連付けられる。これに関して、タンパク質療法(非特許文献1)は、そのような疾患を治療するための最も直接的で安全な手法を提供する。組換えDNA技術の最近の進歩により、多種多様の医薬用タンパク質の合成が可能となっている(非特許文献2;非特許文献3)が、タンパク質療法の広範な使用は、細胞内送達の効率が低いことやプロテアーゼに対するタンパク質の安定性が低いこと等、まだいくつかの根本的な技術的障壁により制限されている。
【0005】
治療用タンパク質の細胞内における使用は、癌およびタンパク質欠乏性疾患の治療において非常に重要である(Wadiaら、Protein Transport (Cell−penetrating peptides: Processes and Applications、(CRC Press)、365頁、2002年)。しかしながら、細胞外活性タンパク質の用途が幅広いのと比較して、細胞内活性タンパク質薬物は、血清中での安定性が悪く、細胞膜の透過性が低いことに一部起因して、臨床用途が極めて少ない(非特許文献1)。いくつかのタンパク質は、受容体媒介エンドサイトーシスにより細胞外空間から細胞内に移行し得る(Vyasら、Crit. Rev. Ther. Drug Carrier Syst.、第18巻、1〜76頁、2001年;Satoら、Adv. Drug Deliv. Rev.、第19巻、445〜467頁、1996年)が、それらのタンパク質はエンドソーム内に取り込まれ、適切な細胞内コンパートメントに放出されずにリソソーム内で分解され得る。この問題を回避するための取り組みが次第に行われている。例えば、リポソームに包まれたタンパク質は、細胞質内に輸送されるものの、効率が低いことが示されている(Straubingerら、FEBS Lett.、第179巻、148〜154頁、1985年;Bulmusら、J. Control Release、第93巻、105〜120頁、2003年)。最近、いくつかの微小カチオン性ペプチド(細胞透過性ペプチド、CPPと呼ばれる)が同定され、タンパク質送達を補助するために使用された(Fawellら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第91巻、664〜668頁、1994年;Morrisら、第19巻、1173〜1176頁、2001年;Schwarzeら、Science、第285巻、1569〜1572頁、1999年)。細胞内送達効率が大幅に改善され、細胞内で活性が保持されるため、この戦略は医薬的用途において有望である。また、これらの戦略を用いるとタンパク質を細胞内に送達することができるものの、細胞内のタンパク質の安定性が低いことが、まだ治療用タンパク質の幅広い用途を妨げている。様々な考えられる不活性化要因(Fagainら、Biochim. Biophys. Acta.、第1252巻、1〜14頁、1995年)のうち、血清中のプロテアーゼ消化が決定的な要因であり、細胞内タンパク質送達の成功を確実とするにはこれに対処する必要がある(Hooper, N. M. Proteases in Biology and Medicine、(Portland Press、London)、2002年)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Birchら、Therapeutic Proteins, methods and Protocols(2005年)(Humana Press、Totowa)、1〜16頁
【非特許文献2】Nagleら、Nature Rev. Drug Discov.(2003年)第2巻、75〜79頁
【非特許文献3】Brekkeら、Nature Rev. Drug Discov.(2003年)第2巻、52〜62頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様は、単一タンパク質コアと、タンパク質コアに共有結合によって固定された薄いポリマーシェルとを有するタンパク質ナノカプセルを含む。いくつかの実施形態において、単一タンパク質コアは、複数の重合性基を有するタンパク質である。いくつかの実施形態において、単一タンパク質コアは、タンパク質触媒である。いくつかの実施形態において、ナノカプセルは、タンパク質コアの触媒活性を保持する。
【0008】
いくつかの実施形態において、単一タンパク質コアは、少なくとも1種のモノマーと共重合してナノカプセルを形成する。他の実施形態において、単一タンパク質コアは、少なくとも1種のモノマーおよび少なくとも1種の架橋剤と共重合している。
【0009】
いくつかの実施形態において、ナノカプセルは、表面修飾をさらに含む。表面修飾剤は、発光分子、細胞標的化部分、ペプチド、タンパク質、抗体またはオリゴ糖であってもよい。表面修飾剤は、造影剤(imaging agent)、細胞標的化促進剤(cell targeting enhancer)、または細胞透過促進剤(cell−penetration enhancer)として機能し得る。
【0010】
本発明の別の態様は、少なくとも1つの重合性基を有するタンパク質を誘導体化し、次いで誘導体化されたタンパク質をモノマー単位と共重合させることにより、ナノカプセルを調製する方法を含む。いくつかの実施形態において、共重合は、架橋剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、方法は、ナノカプセルの表面を修飾するステップをさらに含む。
【0011】
本発明の別の態様は、有効濃度の上述のナノカプセルに細胞を暴露することによりタンパク質を送達する方法を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、アクリルアミド(1)、2−ジメチルアミノエチルメタクリレート(2)、および非分解性架橋剤メチレンビスアクリルアミド(3)または酸分解性グリセロールジメタクリレート(4)のin situ共重合により調製された、分解性および非分解性ポリマーシェルを有する例示的なカチオン性単一タンパク質ナノカプセルの合成および細胞取り込みを示す概略図である。I、タンパク質表面に重合性アクリル基を複合化することによる、重合性タンパク質の形成;II、1、2および3からの非分解性ナノカプセルの形成;III、1、2および4からの分解性ナノカプセルの形成;IV、エンドサイトーシスによる分解性または非分解性ナノカプセルの細胞取り込み;V、分解性ナノカプセルのシェルは、内在化後に分解してタンパク質カーゴを放出し、大分子基質と相互作用させる。
【図2】図2は、N−アクリルオキシスクシンイミド(NAS)による修飾前後のタンパク質のMALDI−TOF質量スペクトルを示す。図2Aは、ネイティブEGFP(1)および修飾EGFP(2)を示す。図2Bは、ネイティブHRP(1)および修飾HRP(2)を示す。図2Cは、ネイティブSOD(1)および修飾SOD(2)を示す。図2Dは、ネイティブカスパーゼ−3(1)および修飾カスパーゼ−3(2)を示す。
【図3】図3は、50mMのpH7.0リン酸緩衝液中のネイティブEGFPおよびnEGFPの、489nmの励起波長を用いた蛍光スペクトルを示す。
【図4】図4は、例示的ナノカプセルのサイズを示す。図4Aは、HRPナノ粒子のTEM画像を示す。図4Bは、HRPナノカプセルのAFM画像を示す。図4Cは、単一の1.4nm金量子ドット標識化HRPコアを含有するナノカプセルのTEM画像を示す。これらの図は、単一コアのナノスケール構造の形成を裏付けている。
【図5】図5は、動的光散乱(DLS)により決定された、HRPおよびnHRPの粒度分布を示す。
【図6】図6は、ゼータ電位に対するモノマーの重量比の効果を示す。図6Aは、異なるモノマー重量比(上から下の順に、DMAEMA(2)/AAm(1)=0、1/3、1)で形成されたナノカプセルのゼータ電位分布を示す。図6Bは、異なるモノマー重量比(上から下の順に、モノマー2対モノマー1=1/6、1/3、1、ゼータ電位:2.23、5.83から10.93mV)で形成されたnHRPのゼータ電位分布を示す。
【図7】図7は、ネイティブHRP(左)およびnHRP(右)の相対触媒活性を示す。ネイティブHRPおよびnHRPの活性試験は、既存のプロトコル(Davisら、J. Biol. Chem.、第256巻、5992〜5996頁、1981年)に従った。簡潔には、試験中、pH5.5の100mMクエン酸リン酸塩0.9ml、0.02MのH2O2 0.05ml、および0.2μg/mLのHRPまたはnHRP 10μLを試験管内に入れた。0.02MのTMBを含有するDMSO 0.05mlを添加することにより反応を開始させ、655nmで監視した。TMBの酸化速度は、TMBの酸化生成物のモル吸収係数(39,000M−1cm−1)を使用し、吸着曲線の初期線形部分の傾きから導出した。
【図8】図8は、例示的ナノカプセルのプロテアーゼに対する安定性を示す。図8Aは、50℃での1mg/mLトリプシンおよびキモトリプシンへの暴露後のネイティブEGFPおよびEGFPナノカプセルの蛍光強度の比較を示すが、EGFPナノカプセルが、プロテアーゼに対し極めて安定であることを示唆している(蛍光強度は、プロテアーゼへの暴露前の未接触EGFPに正規化した)。図8Bは、400nMのEGFPナノカプセルとの3時間、48時間および144時間のインキュベーション後のHeLa細胞の細胞蛍光強度を示すが、細胞の繁殖に起因する強度低下を示している。図8Cは、400nMのTAT−EGFP融合タンパク質との3時間のインキュベーション後のHeLa細胞の細胞蛍光強度を示すが、未修飾タンパク質の急速な分解を示している。図8Dは、異なる時間でのnEGFPまたはTAT−EGFP融合タンパク質による処理後の細胞の細胞蛍光強度を示す。
【図9】図9は、規定温度でのEGFPナノカプセルまたは未接触EGFPとの3時間のインキュベーション後のHeLa細胞の蛍光顕微鏡画像を示し、細胞はDAPIで対比染色されている(スケールバー=50μm)。
【図10】図10は、ローダミン標識化nHRPの取り込みを示す蛍光画像を示す。細胞は、EEA1(初期エンドソームに対して)またはRab7(リソソームに対して)で対比染色された。
【図11】図11は、異なる時間でのEGFPナノカプセルとのインキュベーション後のHela細胞蛍光強度を示す。HeLa細胞は、異なる時間400nMのEGFPナノカプセルとインキュベートし、洗浄し、トリプシン処理し、FACS分析に供した。
【図12】図12は、TAT−EGFPおよびアンテナペディア−EGFP複合体と比較したナノカプセル、ならびに細胞取り込みに対するゼータ電位の効果を示す。図12Aは、異なる濃度のnEGFP(11.7nm、ゼータ電位10.9mV)、TAT−EGFP融合タンパク質またはネイティブEGFPとインキュベートしたHeLa細胞の蛍光支援細胞分類を示す。図12Bは、ネイティブEGFP、EGFPナノカプセル(nEGFP)、アンテナペディア−EGFP複合体(ANTE−EGFP)による処理後のHeLa細胞の細胞蛍光分布を示す。図12Cは、EGFPナノカプセルのゼータ電位と、EGFPナノカプセルとの3時間の共培養後のHeLa細胞の平均細胞蛍光強度との相関を示す。
【図13】図13は、インキュベーション時間の延長のナノカプセル取り込みに対する効果を示す。図13Aおよび13Bは、異なる時間のnEGFPとのインキュベーション後のHela細胞蛍光強度を示す。HeLa細胞は、異なる時間400nMのnEGFPとインキュベートし、洗浄し、トリプシン処理し、FACS分析に供した。
【図14】図14は、ナノカプセルサイズの細胞取り込みに対する効果を示す。異なるサイズのnEGFPとのインキュベーション後のHeLa細胞の細胞蛍光強度分布である(赤:7.53nm、緑:10.6nm、紫:15.7nm)。
【図15】図15は、異なる温度、および3つの異なるエンドサイトーシス阻害剤:アミロリド、CPZおよびβ−シクロデキストリン(β−CD)の存在下での、HeLa細胞の平均細胞蛍光強度を示す。蛍光強度は、37℃でnEGFPとインキュベートされた細胞に正規化されている。
【図16】図16は、100μMクロロキンによる処理あり、またはなしでの3時間のEGFPナノカプセルとのインキュベーション後のHeLa細胞の蛍光顕微鏡画像を示す(スケールバー=20μm)。
【図17】図17は、金量子ドット標識化HRPナノカプセルとのインキュベーション後のHeLa細胞のTEM画像を示す。濃い矢印は、細胞サイトゾル内の単一ナノカプセルの分散を示し、薄い矢印は、ナノカプセルのクラスタを示す。
【図18】図18は、複数タンパク質送達を示す。図18Aは、ローダミン−B標識化nHRP(赤)、nEGFP(緑)、およびNIR−667標識化nBSA(青)の導入後のHeLa細胞の共焦点画像を示す。図18Bは、nEGFP、NIR−667標識化nBSA、およびローダミン−B標識化nHRPが同時にHeLa細胞内に導入された後の、これらのナノ粒子の共局在化定量を示す。
【図19】図19は、MTT分析により決定される、3時間のEGFPナノカプセルとの共培養と、それに続く新鮮培地中での12時間のインキュベーション後のHeLa細胞の相対細胞増殖速度を示し、細胞増殖速度は、いかなる薬剤でも処理していないHeLa細胞に正規化した。
【図20】図20は、異なる濃度のHRPまたはHRPナノカプセルとの3時間のインキュベーションと、それに続くPBS洗浄、ならびにPBS中の1mMのTMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)および1μMのH2O2との10分間のインキュベーション後の、HeLa細胞の写真を示す。
【図21】図21は、HRPおよびSODナノカプセルの細胞内の活性を示す。図21Aは、400nMネイティブHRPまたはnHRPの導入およびIAAとの12時間のインキュベーション後のHeLa細胞生存能力を示す、MTT分析を示す。細胞増殖速度は、未処理細胞に正規化した。図21Bは、nSODおよびパラコートとのインキュベーション後のHeLa細胞生存能力を示す。未処理細胞は、100%細胞増殖対照として使用し、パラコートのみで処理した細胞は、0%対照として使用した。データは平均を示し、エラーバーは、3回行った3つの独立した実験からのものである。
【図22】図22は、EGFPナノカプセルまたはHRPナノカプセルの投与および1mMジヒドロエチジウムへの暴露後の、C57BL/6マウスの組織切片の共焦点画像を示す。
【図23】図23は、例示的な分解性ナノカプセルの異なるpHでのサイズ変化を示す。図23Aは、分解性CASナノカプセル(de−nCAS)および非分解性CASナノカプセル(nCAS)のpH5.5でのサイズを示す。図23Bは、分解性CASナノカプセル(de−nCAS)および非分解性CASナノカプセル(nCAS)のpH7.4でのサイズを示す。
【図24】図24は、50℃のpH7.4緩衝液中1mg ml−1トリプシンおよびα−キモトリプシン(a−chymostrypsin)への暴露後の、ネイティブEGFP、非分解性EGFPナノカプセル(nEGFP)および分解性EGFPナノカプセル(de−nEGFP)の蛍光強度を示す。蛍光強度は、プロテアーゼ添加前のネイティブEGFPに正規化されている。
【図25】図25は、nEGFPまたはde−nEGFPとの3時間のインキュベーションと、それに続く新鮮培地中でのインキュベーション後の、異なる時間でのHeLa細胞の蛍光強度を示す。蛍光強度は、新鮮培地とのさらなるインキュベーションを行わなかった各細胞に正規化されている。
【図26】図26は、様々な濃度のde−nCAS、nCAS、CAS、de−nBSAまたはnBSAとの48時間のインキュベーション後の細胞増殖プロファイルを示す、MTT分析を示す。データは、未処理細胞に正規化されている。
【図27】図27は、ネイティブCAS、nCASまたはde−nCASが導入されたHeLa細胞を示す、APO−BrdUTM TUNEL分析を示す。de−nCASとインキュベートされた細胞内のPI染色核およびAlexa Fluor 488染色ニックエンド標識は、アポトーシスDNA断片化を示している。データは平均を示し、エラーバーは、3回行った3つの独立した実験からのものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のいくつかの実施形態を以下で詳細に説明する。実施形態の説明において、明確性のために具体的な用語が使用される。しかしながら、本発明は、そのように選択された具体的な用語に制限されることを意図しない。本発明の広い概念から逸脱しない範囲で、他の等価の成分を使用することができ、また他の方法を考案することができることが、関連技術の当業者には認識される。本明細書中のいずれかで引用される全ての参考文献は、参照することにより、それぞれが個々に組み込まれているかのように組み込まれる。
【0014】
本明細書において、値の範囲が示されている場合、文脈上異なる定義が明示されていない限り、その範囲の上限および下限の間の、下限の単位の10分の1までの各介在値、ならびにその示された範囲内の任意の他の示された値または介在値が、本発明に包含されることが理解される。任意の範囲の端点の値は、その範囲内に含まれる。
【0015】
本発明の実施形態は、単一タンパク質コアと、タンパク質コアに共有結合によって固定された薄いポリマーシェルとを有するナノカプセルを含む。いくつかの実施形態において、ナノカプセルは、正電荷を有する。いくつかの実施形態において、ナノカプセルは、約5nmから約200nmの間の最大寸法を有してもよい。サイズは、単一タンパク質コアのサイズおよび薄いポリマーシェルの厚さによって変わり得る。小さいサイズおよび電荷が、高い細胞内効率をもたらす。各ナノカプセルは、共有結合によって連結した2つの部分、すなわち単一タンパク質コアおよび薄いポリマーネットワークシェルを含有する。そのコアシェル構造は、タンパク質をタンパク質分解および熱変性から保護し、生体内または生体外での高い安定性をもたらす。
【0016】
本明細書において使用される場合、単一タンパク質コアは、ナノカプセルが、薄いポリマーシェルを有する単一の機能性タンパク質を含むことを意味する。多くの場合、単一の機能性タンパク質は、単一のポリペプチドである。対象のタンパク質がマルチマー(すなわち、二量体、ホモ二量体、ヘテロ二量体、三量体等)として正常に機能する場合、単一タンパク質コアはマルチマーを含む。例えば、カスパーゼ−3(CAS)の活性型は二量体であり、カスパーゼ−3を含有するナノカプセルは、単一タンパク質コアとして二量体を含む。複数の機能を有する融合タンパク質もまた単一タンパク質コアに使用することができるが、通常互いに相互作用して機能性単位を形成しない複数のタンパク質は、単一タンパク質コアではない。通常会合して機能性単位を形成しない同じタンパク質の複数の複製は、単一タンパク質コアではない。
【0017】
ナノカプセルは、離散した粒度分布および低い粒度分布を有する。単一タンパク質コアは、ポリマーコーティング内にカプセル化される。いくつかの実施形態において、ポリマーコーティングは架橋して、タンパク質をカプセル化するポリマーコーティグの密度を増加させる。いくつかの実施形態において、ポリマーは、タンパク質上の少なくとも3、4、5、7、10、15、または20箇所で、薄いポリマーシェルに共有結合によって固定される。いくつかの実施形態において、ポリマーは、少なくとも3箇所で、薄いポリマーシェルに共有結合によって固定される。これにより、タンパク質は確実にポリマーネットワーク内にカプセル化される。
【0018】
いくつかの実施形態において、ナノカプセルは、約5nmから約200nmの間の最大寸法を有してもよい。ナノカプセルのサイズは、単一タンパク質コアのサイズおよび薄いポリマーシェルの厚さに一部依存する。いくつかの実施形態において、ナノカプセルは、約10nmから約200nmの間、約5から約100nmの間、約5nmから50nmの間、または約10nmから約30nmの間であってもよい。いくつかの実施形態において、ポリマーシェルは、約1nmから約20nmの間の厚さであってもよい。いくつかの実施形態において、ポリマーシェルは、約1nmから約10nmの間の厚さであってもよい。いくつかの実施形態において、ナノカプセルは略球形であるが、形状は、単一タンパク質コアの形状に依存して変動し得る。一例として、厚さ約2nmのポリマーシェルを有する直径約5nmの単一タンパク質コア(例えば、緑色蛍光タンパク質(EGFP)等)は、約9nmの全体的サイズを有する。
【0019】
いくつかの実施形態において、タンパク質は、タンパク質触媒(すなわち酵素)であってもよい。いくつかの実施形態において、タンパク質は、発光等の別の機能を有してもよい(例えばEGFP)。化学的にまたは共有結合によって修飾されたタンパク質は、その修飾がナノカプセルの形成に干渉しない限り、所望により使用することもできる。一般に、任意のタンパク質を本発明によるナノカプセル内に組み込むことができ、またタンパク質の実用性に基づき選択することができる。いくつかの実施形態において、タンパク質は、化粧品用途または治療用途において有用である。ナノ粒子を構築するために使用されるタンパク質の典型的な例には、強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、ウシ血清アルブミン(BSA)、カスパーゼ−3、およびリパーゼが含まれる。ローダミン−B標識化HRPおよびNIR−667標識化BSA等の化学修飾タンパク質もまた使用されている。様々な異なる用途の具体的なタンパク質の例を、以下の表に示す。タンパク質の他の例は、当業者に明らかである。
【0020】
【表1−1】
いくつかの実施形態において、ポリマーシェルは透過性である。本明細書において使用される場合、透過性は、ポリマーシェルにおける細孔もしくは穴を通して、またはポリマーを通した拡散により、分子がポリマーシェルを通過し得ることを意味する。例えば、基質、補因子および他の化学元素がポリマーシェルを通過することができ、これによりナノカプセルは単一タンパク質コアの活性を保持することができる。
【0021】
これらのナノカプセル内のタンパク質は、非修飾タンパク質よりも安定である。安定性は、経時的なタンパク質活性の損失、またはタンパク質の分解もしくは変性で決定される。いくつかの実施形態において、ナノカプセルは、プロテアーゼによる分解に耐性を有する。薄いポリマーシェルは、プロテアーゼ酵素に対するタンパク質コアの暴露を低減する。その結果、タンパク質コアの活性は、プロテアーゼの存在下(例えば生体内、血清中、または細胞内)で、保護されていないネイティブタンパク質より長く持続する。薄いポリマーシェルは、タンパク質構造を安定化し、タンパク質の凝集を防止する。したがって、ナノカプセルは、pHおよび温度の変化に対しより耐性を有する。例えば、ナノカプセルは、ネイティブタンパク質よりも、室温または低温(すなわち冷蔵または冷凍)での保存寿命が長い。同様に、ナノカプセルは、ネイティブタンパク質よりも、複数回の冷凍/解凍サイクル後に活性を失いにくい。薄いポリマーシェルによりタンパク質構造が安定化されるため、ナノカプセルは、有機溶媒および界面活性剤に対しより耐性を有する。ポリマーコーティングはまた、有機溶媒中での溶解性を増加させるために調節され得る。ナノカプセルとともに使用され得る有機溶媒および界面活性剤の例には、化粧品(すなわちメークアップ)および医薬品において広く使用されるものの中でも、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、4−ジクロロベンゼン、パラジクロロベンゼン、1,4−ジオキサン、1,4−ジオキサンPEG、ポリエチレン、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン、ラウレス硫酸ナトリウムまたはオキシノール、ポリソルベート60、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、2−ブトキシ−1−エタノール、アルキルフェノキシ、ポリエトキシエタノールが含まれる。他の有機溶媒は、当業者に明らかである。薄いポリマーコーティングは凝集を防止するため、ナノカプセルは、保護されていないタンパク質が凝集する傾向がある界面(すなわち気/液または液/固界面)においてより安定である。
【0022】
いくつかの実施形態において、ナノカプセルは、単一タンパク質コアの活性を保持する。単一タンパク質コアが蛍光性(例えばEGFP、または蛍光標識化BSA)である場合、ナノカプセルもまた蛍光性である。単一タンパク質コアが酵素的に活性である場合、酵素活性はナノカプセル内に存在する。ナノカプセルの活性は、ポリマーシェルのない単一タンパク質コアに比べて低くなり得る。いくつかの実施形態において、ナノカプセルの活性は、ネイティブタンパク質の少なくとも約30%である。他の実施形態において、ナノカプセルの活性は、ネイティブタンパク質の少なくとも約50%、ネイティブタンパク質の少なくとも約70%、またはネイティブタンパク質の少なくとも約90%である。
【0023】
いくつかの実施形態において、単一タンパク質コアは、複数の重合性基を有するタンパク質である。重合性基は、ある特定の化学的条件下で重合する化学部分である。重合条件の例には、光重合、ラジカル重合、および触媒誘導重合が含まれる。一般に、重合性基がナノカプセルを形成するために使用されるモノマーと重合することができる限り、重合性基の種類は決定的ではない。重合性基の例には、光重合またはラジカル重合により重合する二重結合含有部分が含まれる。いくつかの実施形態において、重合性基は、ビニル基、アクリル基、アルキルアクリル基(すなわち、メタクリル等のアルキル置換基を有するアクリル基)である。本明細書において使用される場合、アクリル(アルキルアクリル、メタクリル等)は、アクリルエステルおよびアクリルアミドを含む。いくつかの実施形態において、重合性基は、タンパク質コアのリジン残基に共有結合したアクリル基である。
【0024】
タンパク質は、容易に修飾され得る多くの異なる表面アミノ酸を含有する。例えば、リジン、システイン、トレオニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、セリン、ヒスチジン、アルギニン、チロシン、プロリンおよびトリプトファンは、公知のプロセスおよび手順を使用して容易に修飾され得る。タンパク質を修飾するために使用される試薬は、少なくとも1つの重合性基と、タンパク質表面上のアミノ酸側鎖と反応する少なくとも1つの反応基とを有する。アミノ酸側鎖と反応するために使用される反応基の例には、ある特定のカップリング試薬で活性化されると、アミン(例えばリジン)およびヒドロキシル(例えばトレオニンまたはセリン)含有残基と反応する活性化エステル(例えばハロゲン化アシルまたはN−ヒドロキシスクシンイミドエステル);チオール(例えばシステイン)含有残基と反応するマレイミド;ならびにカルボン酸(例えばグルタミン酸およびアスパラギン酸)含有残基と反応するアミンが含まれる。このように、重合性基は、単一タンパク質コアに共有結合する。重合性基は、直接結合してもよく、または連結基を介して結合してもよい。
【0025】
いくつかの実施形態において、連結基は、タンパク質コアと重合性基との間に存在する。連結基は、重合性基とタンパク質コアとを分離する化学部分である。連結基として使用される試薬は、少なくとも1つの重合性基と、連結基により分離された少なくとも1つの反応基とを有する。反応基は、通常タンパク質表面上のアミノ酸側鎖との反応によりタンパク質コアと反応し、その間の連結基により重合性基を単一タンパク質コアに共有結合させる。
【0026】
いくつかの実施形態において、連結基は分解性であってもよい。分解性連結基は、ある特定の条件下で切断する化学部分である。例として、分解性連結基は、例えば、ある特定のpH値(高pHまたは低pH)で加水分解し得るか、あるいは光分解的に(すなわちある特定の波長の光が照射されると)、またはある特定の温度下、還元−酸化条件下、もしくは触媒作用によって(すなわちプロテアーゼにより)切断し得る。タンパク質コアと反応する反応基と、ナノカプセルを形成する重合性基とを連結基が有する限り、任意の好適な分解性連結基を使用することができる。分解性連結基はまた、ナノカプセルの重合中に安定である必要がある。連結基の種類は、連結基が切断する条件に基づき選択することができる。多くの連結基が公知であり、当業者に容易に明らかとなる。
【0027】
いくつかの実施形態において、ナノカプセルは、モノマー単位と共重合した単一タンパク質コアである。モノマー単位は、単一タンパク質コアと重合してコポリマーを形成し、ナノカプセルのポリマーシェルを形成する化学部分である。いくつかの実施形態において、単一タンパク質コアが二重結合を有する重合性基、例えばビニル、アクリル、アルキルアクリルまたはメタクリル基を備える場合、モノマー単位もまた二重結合を有する重合性基、例えばビニル、アクリル、アクリルアミド、アルキルアクリル、アルキルアクリルアミド、メタクリルまたはメタクリルアミド基を有する。タンパク質の重合性基、およびモノマー単位の重合性基は、ナノカプセルを形成するために使用される条件下でコポリマーを形成することができる限り、同じであっても異なっていてもよい。例えば、ビニルおよびアクリル基は、ラジカル重合条件下でコポリマーを形成し得る。
【0028】
いくつかの実施形態において、ナノカプセルは、2種以上の異なるモノマー単位と共重合した単一タンパク質コアである。一般に、異なるモノマー単位が全てナノカプセルを形成するために使用される条件下でコポリマーを形成することができる限り、任意の数の異なるモノマー単位を使用してタンパク質コアとのコポリマーを形成することができる。異なる側鎖を有するモノマー単位を使用して、ナノカプセルの表面特徴を改変することができる。表面特徴は、異なるモノマー単位間の比を調節することにより制御することができる。いくつかの実施形態において、モノマーは、中性、中性親水性、疎水性、正荷電または負荷電であってもよい。ナノカプセルの溶解度は、例えば、荷電モノマー単位と非荷電または親水性または疎水性モノマー単位との間の比を変更することにより調節することができる。いくつかの実施形態において、ナノカプセルは、正電荷または負電荷を有する。
【0029】
いくつかの実施形態において、少なくとも1種のモノマー単位が、pH=7.4で正電荷または負電荷を有する。pH=7.4で電荷を有するモノマー単位を使用することにより、ナノカプセルの全体的な電荷は、荷電および非荷電モノマー単位の比を変更することにより変更および調節することができる。いくつかの実施形態において、モノマー単位は、pH=7.4で正電荷を有する。正荷電モノマー単位を使用することにより、正電荷を有するナノカプセルを形成することができる。電荷は、中性および正荷電モノマー単位の比を変更することにより調節することができる。
【0030】
いくつかの実施形態において、ナノカプセルは、少なくとも1種のモノマー単位(上述の通り)および少なくとも1種の架橋剤と共重合した単一タンパク質コアを備える。架橋剤は、2つ以上の重合性基を有する化学化合物である。一般に、架橋剤上の重合性基が、ナノカプセルを形成するために使用される条件下で、タンパク質コアと少なくとも1種のモノマー単位との間で架橋したコポリマーを形成することができる限り、任意の架橋化合物を使用することができる。架橋剤の例には、2つのビニル、アクリル、アルキルアクリル、またはメタクリル基を有する化合物が含まれる。2つのアクリル基を有する具体的な架橋剤の例には、N,N’−メチレンビスアクリルアミドおよびグリセロールジメタクリレート(共に図1に示される)が含まれる。
【0031】
いくつかの実施形態において、架橋剤は、分解性架橋剤である。分解性架橋剤は、ある特定の条件下で切断し、ナノカプセルのポリマーシェルの少なくとも一部の分解または除去をもたらす。例えば、分解性架橋剤は、ある特定のpH(高いまたは低い)で加水分解し得るか、特定酵素(例えばエステラーゼまたはペプチダーゼ)により切断され得るか、ある特定の波長に暴露されると光分解的に切断され得るか、またはある特定の温度で切断され得る。低いpHで加水分解する架橋剤の例には、生理学的なpH(約7.4)で安定であるがより低いpH(約5.5)では加水分解するグリセロールジメタクリレートが含まれる。分解性架橋剤の他の例には、参照することによりその全内容が組み込まれる米国特許第7,056,901号に記載されている、アセタール架橋剤が含まれる。
【0032】
分解性および非分解性架橋基のさらなる具体例を、以下の表に示す。
【0033】
【表1−2】
タンパク質コアの基質がポリマーコーティングを通過するには大き過ぎる場合、ポリマーコーティングを除去または低減する分解性架橋剤が有利となり得る。例えば、低いpHで分解する分解性架橋剤を使用して、ナノカプセルがエンドサイトーシスにより細胞内に内在化した後にポリマーコーティングを除去または低減することができる。血清および後期エンドソームは、それぞれ約7.4および約5.5のpH値を有することが周知である。したがって、pH約7.4では安定であるがpH約5.5では分解する分解性架橋剤は、ナノカプセルが細胞内に進入した後にのみポリマーコーティングを除去または低減する。このように、タンパク質コアは血清中に存在するプロテアーゼから保護されるが、大きな基質を有するタンパク質コアがまだ細胞に効果的に送達され得る。ポリマーコーティングが低減された後でも、タンパク質コアの活性はまだ存在する。しかしながら、ポリマーコーティングが除去された後、タンパク質コアは細胞内プロテアーゼによる分解を受けやすくなるが、この欠点は、ナノカプセルの増加した血清中安定性および血清プロテアーゼ耐性により相殺される。
【0034】
ある特定の実施形態において、ナノカプセルは、表面修飾をさらに含む。表面修飾は、ナノカプセルの形成後にナノカプセルの表面に付加される化学部分である。反応性側鎖がナノカプセルの形成に干渉しない限り、反応性側鎖(または保護された反応性側鎖)を有するモノマー単位を使用してナノカプセルを形成することができる。反応性側鎖は、(必要に応じて脱保護後に)表面修飾剤と反応させて、表面修飾をナノカプセルに共有結合させることができる。表面修飾剤は、小分子、ポリマー、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、多糖類、または抗体であってもよい。表面修飾は、ナノカプセルの溶解度を改変する、ナノカプセルの表面電荷を変更する、またはナノカプセルに発光、細胞標的化もしくは細胞透過等の追加的機能を付与することができる。細胞標的化を向上させる表面修飾は、非標的化細胞と比較して、標的細胞へのナノカプセルの導入を増加させる。細胞透過を向上させる表面修飾は、細胞透過促進剤を含まないナノカプセルと比較して、細胞へのナノカプセルの導入を増加させる。ナノカプセル上に、2種以上の表面修飾が存在してもよい。小分子表面修飾の例には、フルオレセインもしくはローダミン等の発光性化合物、または葉酸等の細胞標的化化合物が含まれる。ポリマーは、溶解度を増加させるためのポリエチレングリコールを含む。特定の細胞表面特徴、細胞情報伝達タンパク質、または成長ホルモンに対する抗体等のペプチドを細胞標的化に使用することができる。他のペプチドを使用して、ナノ粒子の細胞透過を増加させることができる(例えばTATまたはアンテナペディア(antennepedia)ホメオドメイン)。いくつかの実施形態において、表面修飾は抗体である。
【0035】
生成
本発明の実施形態は、少なくとも1つの重合性基を有するタンパク質を誘導体化し、次いで誘導体化されたタンパク質をモノマー単位と共重合させることにより、単一タンパク質コアと、タンパク質コアに共有結合によって固定された薄いポリマーシェルとを有するナノカプセルを生成する方法を含む。
【0036】
単一タンパク質ナノカプセルを形成するために、一般的な2段階手順が使用される。まず、重合性基がタンパク質表面に共有結合によって連結される。次いで、緩衝液中での機能性モノマー、および任意選択で架橋剤の後続する重合により、タンパク質コアのそれぞれが、薄い(架橋ネットワーク)ポリマー外皮で被覆される。この一般法は、所望のタンパク質コアを有する多種多様な低粒度分布ナノカプセルの簡便な合成、ならびに表面電荷および官能基の容易な制御を可能にする。
【0037】
重合性基が酵素表面に結合したら、モノマー(例えば、表2に列挙されるもの等)を使用して、調整可能な組成、構造、表面特性および機能性を有するポリマーコーティングを形成することができる。酵素活性の保持を確実とするために、室温ラジカル重合技術を使用することができる。これらのポリマーコーティングは、カプセル化された酵素用の人工膜として機能するため、構造的完全性を提供するための好適な機械的強度を示し、迅速な基質輸送を可能にする効果的な輸送経路を有し、基質選択性および保湿を提供する特定の機能性を含有する。
【0038】
ナノカプセルは、商業的供給源から直接、または他の報告されている方法を使用して得ることができるタンパク質コアの生物機能を変化させない。
【0039】
タンパク質を誘導体化または修飾するために使用される試薬は、以下の一般構造
【0040】
【化1】
を有し、重合性基は、ナノカプセルを形成するために使用される条件下で、1種または複数種のモノマーおよび/または架橋剤とコポリマーを形成する化学部分である。いくつかの実施形態において、重合性基は、二重結合含有基、例えばビニル、アクリル、アルキルアクリル、およびメタクリルである。前述したように、アクリル(およびアルキルアクリルおよびメタクリル)は、アクリルエステルおよびアクリルアミドの両方を含む。
【0041】
連結基は任意選択的であり、重合性基とタンパク質との間に存在し得る。連結基は、反応基を重合性基から分離する化学部分である。連結基は、いかなる特定の化学構造にも限定されないが、重合反応に干渉するべきではない。いくつかの実施形態において、連結基は、ある特定の条件下で切断する分解性連結基である。例えば、アセタール、ケタールまたはエステルは、ある特定のpHで加水分解され得る。これらの官能基の1つまたは複数を有する連結基は、(例えば、上述したようにエンドソーム内で)pHの変化に応答して分解し得る。
【0042】
反応基は、アミノ酸側鎖と反応して重合性基をタンパク質に共有結合させる化学部分である。多くの反応基が公知であり、異なるアミノ酸側鎖と反応するために使用される。例えば、ハロゲン化アシル、または活性化エステル(例えばN−ヒドロキシスクシンイミドエステル)は、アミン(例えばリジン上)またはヒドロキシル(例えばセリンもしくはトレオニン上)と反応する。イソシアネートは、アミンと反応する。エポキシドは、アミンまたはチオール(例えばシステイン)と反応する。マレイミドは、チオールと反応する。他の官能基は、1種または複数種のカップリング試薬(例えばカルボジイミド試薬)の存在下で、アミノ酸側鎖と反応し得る。例えば、アミンは、カルボン酸アミノ酸側鎖(例えば、グルタメートまたはアスパルテート上)と反応し得る。他の反応基は、当業者に容易に明らかとなる。
【0043】
上述のタンパク質修飾中、部位特異的な制御修飾を実現するために、遺伝子組換え技術を使用して、空間的に定義された場所に特定のアミノ酸を導入することができる。この技術により、修飾部位および密度を正確に制御することができる。
【0044】
タンパク質を誘導体化するために使用される具体的な化合物の例を、表1に示す。多くの他の例が利用可能であり、当業者に明らかである。
【0045】
【表1−3】
モノマー単位は、一般構造
【0046】
【化2】
を有し、重合性基は、ナノカプセルを形成するために使用される条件下で、タンパク質コアおよび任意選択の架橋剤とコポリマーを形成する化学部分である。重合性基は、前述した全ての重合性基を含む。タンパク質の重合性基、およびモノマー単位の重合性基は、ナノカプセルを形成するために使用される条件下でコポリマーを形成することができる限り、同じであっても異なっていてもよい。例えば、ビニルおよびアクリル基は、ラジカル重合条件下でコポリマーを形成し得る。
【0047】
側鎖は、重合に関与しないモノマー単位の一部である。一般に、側鎖は、任意の構造を有してもよく、ナノカプセルの所望の特性に基づき選択され得る。モノマー単位の側鎖は、ナノカプセルの表面特性に影響する。いくつかの実施形態において、側鎖は、中性、中性親水性(すなわち水溶性であるが荷電していない)、疎水性、正荷電または負荷電であってもよい。中性側鎖は、アミド、エステル、エーテル、ヒドロキシルを含み、そのいくつかは、その構造に依存して親水性または疎水性であってもよい。正荷電側鎖は、アミン(モノおよびジアルキルアミン等の置換アミン、ならびに四置換アンモニウム化合物、ならびにその環式変異型を含む)、グアニジン、ならびにピリジンおよびイミダゾール等の複素環を含む。負荷電側鎖は、カルボン酸を含む。疎水性側鎖は、アルキル基(直鎖、分岐鎖または環式アルキル基を含む)およびアリール基を含む。
【0048】
具体的なモノマー単位の例およびそれらの機能を表2に示す。
【0049】
【表2】
機能:1から5:親水性表面および保湿;2)温度応答性;3)負荷電表面;4)表面修飾のための反応性側鎖;5)正荷電表面;6)疎水性表面 。
【0050】
修飾タンパク質およびモノマー単位(複数種可)の重合には、タンパク質およびモノマー単位(複数種可)に対し使用され、重合中にタンパク質の機能を損なわない、重合性基に好適な任意の方法を使用することができる。重合方法の例には、前述したもの等の二重結合含有重合性基の光重合およびラジカル重合が含まれる。いくつかの実施形態において、重合は、ラジカル重合である。
【0051】
いくつかの実施形態において、重合は室温で行われるが、重合中にタンパク質の機能が失われない限り、温度は、重合方法に依存して、所望により上昇させても低下させてもよい。分解性架橋剤または連結基が使用される場合、ナノ粒子の機能は、ポリマーコーティングの分解後に測定され得る。重合反応があまりにもゆっくりと生じる場合、または重合を開始させるために高温が必要である場合には、反応温度を上昇させてもよい。重合反応があまりにも急速に生じる場合には、温度を低下させてもよい。
【0052】
いくつかの実施形態において、重合反応は、水中または水性緩衝液中で行われる。溶媒が重合反応に干渉しない、またはタンパク質を分解しない限り、所望により他の溶媒を使用してもよい。反応成分を溶解するために必要である場合には、溶媒混合物が反応に干渉しない、またはタンパク質コアに損傷を与えない限り、水または水性緩衝液と有機共溶媒との混合物を使用してもよい。いくつかの実施形態において、重合反応は、緩衝液中で行われる。
【0053】
いくつかの実施形態において、共重合ステップは、少なくとも2種の異なるモノマー単位を含む。一般に、異なるモノマー単位が全てナノカプセルを形成するために使用される条件下でコポリマーを形成することができる限り、任意の数の異なるモノマー単位を使用してタンパク質コアとのコポリマーを形成することができる。異なる側鎖を有するモノマー単位を使用して、ナノカプセルの表面特徴を改変することができる。表面特徴は、異なるモノマー単位間の比を調節することにより制御することができる。いくつかの実施形態において、モノマーは、中性、中性親水性、疎水性、正荷電または負荷電であってもよい。ナノカプセルの溶解度は、荷電モノマー単位と非荷電または親水性または疎水性モノマー単位との間の比を変更することにより調節することができる。
【0054】
いくつかの実施形態において、共重合ステップは、架橋剤をさらに含む。架橋剤は、連結基により分離された少なくとも2つの重合性基を有する試薬である。架橋剤は、3つ以上の重合性基を有してもよい。架橋剤上の全ての重合性基が、ナノカプセルを形成するために使用される条件下でモノマー単位(複数可)およびタンパク質コアとコポリマーを形成することができる限り、架橋剤上の重合性基は、同じであっても異なっていてもよい。2つの重合性基を有する架橋剤は、一般構造
【0055】
【化3】
を有し、重合性基は、前述のものと同じである。連結基は、重合反応に干渉しない限り、任意の構造を有し得る。好適な連結基の例には、アルキル基(置換アルキル基を含む)、アリール基(置換アリール基を含む)、ケトン、アミド、エステル、エーテルおよびそれらの組合せが含まれる。架橋剤の具体例には、N,N’−メチレンビスアクリルアミドおよびグリセロールジメタクリレート(図1を参照)が含まれる。
【0056】
いくつかの実施形態において、連結基は分解性である。分解性連結基は、ある特定の条件下で切断し得る。分解性連結基の構造は、連結基を切断させるために必要な条件の種類を決定付ける。例えば、連結基は、pHの変化(すなわち増加または減少)により、特定波長の光への暴露により、または熱に応答して切断し得る。分解性架橋剤の例は、グリセロールジメタクリレートである。
【0057】
いくつかの実施形態において、ナノカプセルを生成する方法は、ナノカプセルの表面を修飾するステップをさらに含む。モノマー単位(複数種可)の側鎖は、重合後、ナノカプセルの表面上に存在する。反応性側鎖(または保護された反応性側鎖)を有するモノマー単位を使用して、ナノカプセルを調製することができる。反応性側鎖は重合に干渉しないが、ナノカプセルが形成された後に(すなわち重合が完了した後に)さらに化学修飾され得る。標準的化学脱保護方法を使用して、保護された反応性側鎖を脱保護し、次いで化学修飾剤と反応させることができる。反応性側鎖は、表面修飾剤をナノカプセルの表面に共有結合させるために化学試薬で処理される。表面修飾は、小分子、ポリマー、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、多糖類、または抗体であってもよい。表面修飾は、ナノカプセルの溶解度を改変する(例えば、ポリエチレングリコールまたは他の親水性基を添加することにより)、ナノカプセルの表面電荷を変化させる(例えば、荷電表面修飾剤を添加することにより)、またはナノカプセルに発光、細胞標的化もしくは細胞透過等の追加的機能を付与することができる。小分子表面修飾の例には、フルオレセインもしくはローダミン等の発光性化合物、または葉酸等の細胞標的化化合物が含まれる。ポリマーは、溶解度を増加させるためのポリエチレングリコールを含む。ペプチドおよびポリペプチドを細胞標的化に使用してもよく、これには、特定の細胞表面特徴、細胞情報伝達ペプチド、またはホルモンに対し選択的な抗体が含まれ得る。他のペプチドを使用して、ナノ粒子の細胞透過を増加させることができる(例えばTATまたはアンテナペディアホメオドメイン)。いくつかの実施形態において、表面修飾は抗体である。ナノカプセルは誘導体化されやすい表面を有しているため、特定の抗体がナノカプセルと複合化して、標的化送達のさらなる能力を提供することができる。
【0058】
ナノカプセルのサイズおよび表面特徴は、ナノカプセルを形成するために使用される異なるモノマーおよび/または架橋剤の重量比を変更することにより調節することができる。例えば、DMAEMA(正荷電)対AAm(中性)の重量比を0:1から1:3、さらには1:1に変えると、それぞれ−12.8から8.64、さらには15.2mV(図6A)という調節可能なゼータ電位を有するBSAナノカプセルを合成することができる。モノマー単位および架橋剤の種類および比を変化させることにより、溶解度もまた容易に調節することができる。親水性または荷電モノマーの量を増加させると、水溶性が増加する。疎水性モノマーの量を増加させると、有機溶媒または混合有機/水溶媒系に対するナノカプセルの溶解度が増加する傾向がある。
【0059】
薄いポリマーコーティングの透過性は、ナノカプセルを調製するために使用される反応混合物中の架橋剤の比を変更することにより調節することができる。一般に、架橋剤の量が少ない程、より高い透過性が得られる。同様に、薄いポリマーコーティングの透過性は、架橋剤上の連結基の長さを変化させることにより変更することができる。一般に、連結基が長い程、透過性の増加がもたらされる。
【0060】
この単純な方法は、サイズ、表面特徴が良好に制御され、また任意のタンパク質コアを使用した、新規なタンパク質細胞内送達ベクターの調製への効果的な経路を提供する。
【0061】
使用
ナノカプセルは、内部に組み込まれたタンパク質に非常に類似した細胞内機能を果たす。多種多様なタンパク質を使用して、異なる機能を果たすナノカプセルを形成することができる。試験された例示的な生物活性タンパク質には、強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、ウシ血清アルブミン(BSA)、およびスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)が含まれる。
【0062】
本明細書に記載のナノカプセルは、生体外または生体内において、改善された安定性および/または長期間の効果をもって細胞にタンパク質またはタンパク質活性を送達するために使用され得る。ナノカプセルはプロテアーゼによる分解に対しより耐性を有するため、タンパク質活性は、ネイティブまたは保護されていないタンパク質が投与された場合よりも長い効果を有する。その結果、(保護されていないタンパク質と比較して)同じ効果を得るためにより少ないタンパク質(ナノカプセルの形態)が必要となり、それにより効率が向上する。
【0063】
本発明の実施形態は、有効濃度の上述のナノカプセルに細胞を暴露することによりタンパク質を送達する方法を含む。細胞は、培地内(すなわち生体外)にあってもよく、または生物内(すなわち生体内)に存在してもよい。本明細書において使用される場合、「タンパク質を送達する」とは、タンパク質はナノカプセルを形成するように修飾されているため、タンパク質の活性を細胞に送達することを意味する。しかしながら、ナノカプセルの活性は、ナノカプセルに使用されるネイティブタンパク質の活性と同じである。タンパク質基質がナノカプセルを透過しない場合、分解性ポリマーコーティングを使用して、ポリマーコーティングの低減または除去後に細胞にタンパク質を送達することができる。
【0064】
いくつかの実施形態において、タンパク質は、治療用タンパク質である。治療用タンパク質は、対象における疾患または障害を治療するために使用されるタンパク質または酵素である。いくつかの実施形態において、対象は、哺乳動物または人間である。
【0065】
本明細書に記載のナノカプセルは、対象における疾患または障害を治療するために使用され得る任意のタンパク質または酵素と併用することができる。例えば、本発明によるナノカプセルは、過剰増殖性障害、癌、または腫瘍の治療に使用され得る。他の実施形態において、ナノカプセルは、化粧品に使用され得る。
【0066】
医薬組成物
本明細書に記載のナノカプセルは、診断または治療上の処置方法における使用のための、様々な組成物に配合することができる。組成物(例えば医薬組成物)は、キットとして製造することができる。一般に、本発明の医薬組成物は、有効量(例えば医薬的有効量)の本発明の組成物を含む。
【0067】
本発明の組成物は、本発明の組成物および医薬的に許容されるキャリアを含む医薬組成物として配合することができる。「医薬的に許容されるキャリア」とは、生物学的またはその他の点で望ましくないわけではない材料を意味し、すなわち、材料は、いかなる望ましくない生物学的効果も引き起こさずに、またはそれが含有される医薬組成物の他の成分のいずれとも有害に相互作用することなく、対象に投与され得る。キャリアは、当然ながら、当業者には周知であるように、活性成分のいかなる分解も最小限化するように、また対象におけるいかなる有害な副作用も最小限化するように選択される。医薬的に許容されるキャリアおよび医薬組成物の他の成分に関する議論については、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Publishing Company、1990年を参照されたい。いくつかの好適な医薬的キャリアは、当業者に明らかであり、例えば、水(滅菌および/または脱イオン水を含む)、好適な緩衝液(例えばPBS)、生理食塩水、細胞培地(例えばDMEM)、人工脳脊髄液等を含む。
【0068】
本発明の医薬組成物またはキットは、本発明の組成物に加えて他の医薬品を含有し得る。他の薬剤(複数種可)は、患者の治療中任意の好適な時点で、同時または順番に投与することができる。
【0069】
具体的な配合は、使用される具体的な薬剤および選択された投与経路に一部依存することが、当業者には理解される。したがって、本発明の組成物の多種多様な好適な配合が存在する。
【0070】
目下の具体的用途に基づいて、好適または適切な配合を選択、適合または確立することができることが、当業者には理解される。本発明の組成物の用量は、単位投薬形態であってもよい。「単位投薬形態」という用語は、本明細書において使用される場合、動物(例えば人間)対象への単位用量として好適な、物理的に別個の単位を指し、各単位は、医薬的に許容される希釈剤、キャリアまたはビヒクルと関連して所望の効果を生成するのに十分な量として計算される、単独または他の治療薬剤と組み合わせた所定量の本発明の薬剤を含有する。
【0071】
当業者は、個々の患者において所望の有効量または有効濃度の薬剤を達成するために、使用されている組成物の正確な配合のための適切な用量、スケジュール、および投与方法を容易に決定することができる。
【0072】
本発明に関して、動物、具体的には人間に投与される本発明の組成物の用量は、妥当な期間にわたり個人において少なくとも検出可能な量の診断または治療応答を生じさせるのに十分である必要がある。所望の効果を達成するために使用される用量は、投与されている具体的薬剤の効力、ホストにおける薬剤に関連した薬力学、感染した個人の疾患状態の重症度、対象に投与されている他の医薬等を含む、様々な因子により決定される。用量のサイズはまた、使用される具体的薬剤またはその組成物に付随し得るいかなる有害な副作用の存在によっても決定付けられる。一般に、可能な時にはいつでも、有害な副作用を最小限に維持することが望ましい。生物学的に活性な材料の用量は変動し、具体的薬剤毎の好適な量は、当業者に明らかである。
【0073】
本発明の別の実施形態は、生体外または生体内において、本明細書に開示される方法のいずれかに有用なキットである。そのようなキットは、本発明の組成物の1種または複数種を備えることができる。任意選択で、キットは、方法を実行するための指示を備える。本発明のキットの任意の要素は、好適な緩衝液、医薬的に許容されるキャリア等、容器、または包装材料を含む。キットの試薬は容器内にあってもよく、その中で試薬は安定、例えば凍結乾燥形態または安定化された液体である。試薬は、単一使用形態、例えば単一投薬形態であってもよい。
【0074】
上記説明から、本明細書に記載の発明に変形および修正を行い、様々な使用および条件に適合させることができることが明らかである。そのような実施形態もまた、以下の特許請求の範囲内である。
【0075】
本明細書におけるいかなる変数の定義における要素のリストの列挙も、任意の単一の要素またはリストされた要素の組合せ(または部分的組合せ)としてのその変数の定義を含む。本明細書における実施形態の列挙は、任意の単一の実施形態、または任意の他の実施形態もしくはその一部との組合せとしてのその実施形態を含む。
【0076】
また、単一の時制でリストされた用語は、文脈上異なる意味が示されない限り、複数も含む。
【0077】
以下に開示される実施例は、本発明を例示するために提供されるが、その範囲を限定するものではない。本発明の他の変形例は、当業者に容易に明らかとなり、添付の特許請求の範囲に包含される。本明細書において引用される全ての出版物、データベースおよび特許は、あらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる。
【0078】
本発明の化合物を調製、特性決定および使用する方法を、以下の実施例において例示する。出発材料は、当技術分野において公知の手順に従い、または本明細書において例示されるように作製される。以下の実施例は、本発明がより完全に理解され得るように提供される。これらの実施例は単なる例示にすぎず、決して本発明を制限するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0079】
材料
全ての化学薬品は、別段に指定されない限りSigma−Aldrich社から購入し、そのまま使用した。N−(3−アミノプロピル)メタクリルアミド塩酸塩は、Polymer Science,Inc.から購入した。ウサギ抗EEA抗体およびウサギ抗Rab7抗体は、Cell Signaling Technology,Inc.から購入した。Alexa488ヤギ抗ウサギIgGおよびAPO−BrdUTM TUNELアポトーシスキットは、Invitrogen Life Technologies,Inc.から購入した。スルフヒドリル含有Cys(Npys)アンテナペディアペプチドは、AnaSpec,Inc.から購入した。2−ジメチルアミノエチルメタクリレートは、使用前にカラムクロマトグラフィーで精製し、その後−20℃で保存した。
【0080】
機器
ナノカプセルのIRスペクトルは、PerkinElmer Paragon 1000 FT−IR分光器で得られた。UV−可視スペクトルは、GeneSys 6分光器(Thermo Scientific社製)を使用して得られた。蛍光スペクトルは、QuantaMaster Spectrofluorimeter(Photon Technology International社製)を使用して得られた。ナノカプセルのTEM画像は、Philips EM 120 TEMで100000倍で得られた。観察前、1%のpH7.0リンタングステン酸(PTA)溶液を用いてナノカプセルを負染色した。ゼータ電位および粒径分布は、Malvern社製粒度測定器Nano−ZSを使用して測定した。ナノカプセルのSEM画像は、JEOL JSM−6700F SEMを使用して得られた。測定前に、シリコン表面上の乾燥試料を金でスパッタコーティングした。試料のAFM測定は、新しく開裂した雲母表面上で、空気中のタッピングモードで操作したNanoscope III(Digital Instruments社製、Santa Barbara、USA)を使用して行った。細胞の蛍光画像は、Zeiss Axio Observer.Z1蛍光顕微鏡またはLeica TCS SP MP Inverted Confocal Microscopeを使用して得られた。細胞蛍光強度分布は、Becton Dickinson FACScan Analytic Flow Cytometerを使用して決定された。励起光として488nmアルゴンレーザを使用した。質量スペクトルは、Applied Biosystem Voyager−DE−STR MALDI−TOF質量分析計を使用して得られた。
【0081】
EGFPおよびTAT−EGFPの調製
His標識化EGFPおよびTAT−EGFP融合タンパク質の配列は、以前に報告されたもの(Caronら、Mol. Ther.、第3巻、310〜318頁、2001年)に従い設計した。融合タンパク質は、形質転換Escherichia coliBL21中で発現させ、ニッケル樹脂親和性カラム(Sigma aldrich社製)を使用して精製した。EGFPおよびTAT−EGFPは、His標識ペプチドのさらなる処理を行わずに、以降の実験に直接使用した。EGFPの濃度は、489nmで53,000M−1cm−1の消光係数により決定した。
【0082】
アンテナペディアペプチドEGFP複合体の調製
EGFPを50mMのリン酸ナトリウム、0.15MのNaCl、pH7.2に2mg/mLの濃度で溶解した。DMSO中2mMの濃度のSigma−aldrich社製N−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)25μLを、EGFP溶液1mLに添加した。室温で30分間混合し反応させる。50mMのリン酸ナトリウム、0.15MのNaCl、10mMのEDTA、pH7.2を使用して、反応副生成物および未修飾EGFPから修飾EGFPをゲル濾過により精製する。AnaSpec,Inc.製スルフヒドリル含有Cys(Npys)アンテナペディアペプチド0.5mgを添加してアンテナペディアペプチドEGFP複合体を形成し、ゲル濾過により最終複合体を精製する。MALDI−MSは、約1:1のアンテナペディアペプチド対EGFPの比を示した。
【0083】
タンパク質濃度分析
ナノカプセルの形態のタンパク質の含有量を、ビシンコニン酸(BCA)比色タンパク質分析により決定した。簡潔には、25mMのBCA、3.2mMのCuSO4、および適切に希釈されたタンパク質/ナノカプセルを含有する酒石酸塩(tertrate)緩衝液(pH11.25)を、60℃で30分間インキュベートした。溶液を室温まで冷却した後、UV−Vis分光器で562nmでの吸光度値を測定した。標準として公知の濃度のBSA溶液を使用した。
【0084】
アポトーシス分析
市販のAPO−BrdU Terminal Deoxynucleotidyl Transferase dUTP Nick End Labeling(TUNEL)分析キットを使用して、単離されたHeLa細胞においてアポトーシスを検出した。簡潔には、細胞を6ウェルプレート上に1ウェル当たり100,000細胞の密度で播種し、10%ウシ成長血清(BGS)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)2mL中で培養した。次いでプレートを、5%CO2中、37℃で12時間インキュベートし、タンパク質/ナノカプセルの添加前に70〜80%の集密度に到達させた。24時間のインキュベーション後、細胞をまずリン酸緩衝生理食塩水中1%のパラホルムアルデヒド、pH7.4で固定し、続いて氷上の70%エタノールで処理した。次いで細胞に、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼおよびブロモデオキシウリジン(BrdUrd)を含有するDNA標識化溶液を加えた。次いで細胞をAlexa Fluor(登録商標)488染料標識化抗BrdUrd抗体で染色した。最後に、RNase Aを含有するヨウ化プロピジウム(PI)溶液で細胞を染色し、蛍光顕微鏡(Zeiss社製、Observer Z1)下で、Alexa Fluor 488およびPI用の適切なフィルタを使用して可視化した。
【0085】
実施例1 − ナノカプセル合成
分解性または非分解性架橋剤によるEGFPナノカプセル
図1に示すように、重合性ビニル基は、タンパク質(I)に共有結合している。モノマー(1、2)および架橋剤(3または4)を含有する水溶液中での後続の重合により、各タンパク質コアは薄いポリマーシェルに被覆される。このスキームによって、非分解性(3)または分解性(4)架橋剤を使用することでそれぞれ非分解性(II)または分解性(III)外皮を有するタンパク質ナノカプセルを合成することができる。以降、非分解性および分解性ナノカプセルは、それぞれnタンパク質およびde−nタンパク質と示されるが、接頭辞「n」は「ナノカプセル」を示す。カチオン性(2)または中性(1)モノマー等のモノマーの適切な選択により、表面電荷の正確な制御が可能となる。タンパク質コアは、広範なタンパク質ライブラリから選択することができる。
【0086】
タンパク質修飾
pH8.5、50mM炭酸ナトリウム緩衝液3.8ml中10mgの量のEGFPを、ジメチルスルホキシド(DMSO)40ml中N−アクリルオキシスクシンイミド4mgと、室温で2時間反応させた。最後に、pH7.0、20mMリン酸緩衝液に対して反応溶液を十分に透析した。
【0087】
修飾度は、マトリックス支援レーザ脱離/イオン化飛行時間(MALDITOF)質量スペクトルを用いて測定したが、これはタンパク質1分子当たりビニル基が5個から20個の間であった(図2、表3)。
【0088】
【表3】
*カスパーゼ−3は二量体であり、分子量は質量値を2倍することにより計算した。
【0089】
ナノカプセル重合
1mg ml−1のアクリロイル化EGFP溶液5mlを使用して、アクリロイル化タンパク質表面からのラジカル重合を、脱酸素および脱イオン水30ml中に溶解した過硫酸アンモニウム2mg、およびN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン4mlを試験管に加えることにより開始させた。脱酸素および脱イオン水0.5ml中に溶解した特定量の2−ジメチルアミノエチルメタクリレート、アクリルアミドおよびN,N’−メチレンビスアクリルアミド(非分解性架橋剤)またはグリセロールジメタクリレート(分解性架橋剤)(モル比=5:5:1)を、60分かけて試験管に加えた。窒素雰囲気下でさらに60分間反応を進行させた。最後に、透析を使用してモノマーおよび開始剤を除去した。合成直後のEGFPナノカプセルは、ネイティブEGFPのナノカプセルと同様の蛍光スペクトルを示している(図3)。タンパク質ナノカプセルの収率は、95%を超えていた。未修飾EGFPは、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して除去した。
【0090】
HRPナノカプセル
HRPナノカプセルを合成するために、アクリロイル化および重合中の安定剤として4−ジメチルアミノアンチピリン(HRPに対し1:10の重量比)を反応混合物中に添加した。同様のアクリロイル化、重合、および精製プロセスを行って、HRPナノカプセルを合成した。
【0091】
SOD、CAS、BSA、HRPナノカプセル
SOD、CAS、HRP、NIR−667標識化BSAおよびローダミン−B標識化HRPナノカプセルを、EGFPナノカプセルの方法と類似の方法を使用して合成した。NIR−667標識化BSAおよびローダミン−B標識化HRPは、複合化技術を使用してタンパク質を修飾することにより合成した。CASは、EGFPの方法と類似の方法を使用して発現および精製し、使用したプラスミド、pHC332は、A.Clay Clark博士(ノースカロライナ州立大学)からの寛大なる寄贈品であった。ウシ赤血球からのCu、Zn−SODおよびホースラディッシュペルオキシダーゼ(Sigma−Aldrich社製)は、20mMのpH7.0リン酸緩衝液に対する透析後に使用した。
【0092】
Auナノ粒子標識化ナノカプセル
pH7.5の緩衝液中で1時間、Auナノ粒子(Nanoprobe社(NY)製モノ−スルホ−N−ヒドロキシ−スクシンイミドナノゴールド)をネイティブHRPと5:1のモル比で反応させた。ゲル濾過(Superdex−75)を使用して、過剰のナノゴールドを除去した。ナノゴールドおよびタンパク質のモル濃度は、420nmでのナノゴールドの155,000M−1cm−1のモル消光係数に基づき、UV/visスペクトルから計算した。得られたAu標識化ナノカプセルは、0.94の金/HRP比を含む。次いで、標識化HRPを使用し、同様のプロトコルを用いてナノカプセルを合成した。TEMでのより良好な画像化のために、銀増感技術を使用した。簡潔には、Au標識化ナノカプセルをTEMグリッド上に滴下し、脱イオン水で濯いだ。次いで新たに調製したAg含有現像液上にグリッドを1〜2分浮遊させ、水で濯ぎ、pH7.0の1%リンタングステン酸ナトリウムを使用して染色した。このプロセスにより、直径3〜4nmの均一なナノ粒子が形成された。
【0093】
ナノカプセルの特性決定
図4Aおよび4Bは、約15nmの均一な直径を示すHRPナノカプセルの代表的なTEMおよびAFM画像である。動的光散乱(DLS)は、HRPナノカプセルが16.8nmに狭い粒度分布を示すことを示唆していた(図5)。DLSによってより大きな直径が測定されたのは、水溶液中での水和層に起因し得る。HRP分子の流体力学半径は約5nmであるため、平均シェル厚は約5nmから8nmである。単一の1.4nm金ナノ粒子により各HRP酵素を標識化することにより、ほとんどのナノカプセルは、単一の金粒子のみを含有することが観察され(図4C)、これは単一タンパク質コアシェル構造をさらに裏付けている。さらに、DMAEMA(正荷電)対AAm(中性)の重量比を0:1から1:3、さらには1:1に変えると、それぞれ−12.8から8.64、さらには15.2mVという調節可能なゼータ電位を有するBSAナノカプセルを合成することができる(図6)。この単純な方法は、サイズ、表面電荷およびタンパク質コアが良好に制御された、新規なタンパク質細胞内送達ベクターの調製への効果的な経路を提供する。
【0094】
実施例2 − ナノカプセルタンパク質活性
ネイティブHRP(左)およびHRPナノカプセル(右)の相対触媒活性を決定した。ネイティブHRPおよびHRPナノカプセルの活性試験は、既存の(exiting)プロトコル(Davisら、J. Biol. Chem.、第256巻、5992〜5996頁、1981年)に従った。簡潔には、試験中、pH5.5、100mMのクエン酸リン酸塩0.9ml、0.02MのH2O2 0.05ml、および0.2μg/mLのHRPまたはHRPナノカプセル10μLを、試験管内に入れた。0.02MのTMBを含有するDMSO 0.05mlを添加することにより反応を開始させ、655nmで監視した。TMBの酸化速度は、TMBの酸化生成物のモル吸収係数(39,000M−1cm−1)を使用し、吸着曲線の初期線形部分の傾きから導出した。
【0095】
実施例3 − プロテアーゼに対する安定性
EGFPおよびEGFPナノカプセルを、PBS緩衝液中、1mg/mLのトリプシンおよびα−キモトリプシンの両方と50℃でインキュベートした。EGFPおよびEGFPナノカプセルの蛍光強度を、489nmの励起波長で、異なる時間間隔で測定した。
【0096】
生理環境内に広く存在するプロテアーゼに起因した低いタンパク質安定性は、治療用タンパク質の応用におけるもう1つの課題である。トリペプチドSer65−Tyr66−Gly67の翻訳後の環化により形成されるEGFP分子内のフルオロフォアは、周囲微小環境に対し極めて敏感である(Tsien, R. Y.、Annu. Rev. Biochem.、第67巻、509〜544頁、1998年)。外部β−バレル構造の保護なしでは、フルオロフォアは容易に破壊され消光し得る(Ormoら、Science、第273巻、1392〜1395頁、1996年)。ポリマーシェルの存在は、タンパク質コアをタンパク質分解から保護する。図8Aは、50℃で3時間の1mg/mLプロテアーゼ(トリプシンおよびα−キモトリプシン)に対する暴露後のネイティブEGFPおよびEGFPナノカプセルの蛍光強度を比較したものである。ネイティブEGFPは、その元の蛍光強度の60%しか維持せず、一方ナノカプセルはその90%超を維持した。
【0097】
ナノカプセルの安定性をさらに確認するために、ナノカプセル導入後の細胞蛍光強度を監視した。図8Bは、導入後0時間、48時間および144時間でのHeLa細胞の蛍光強度分布を示す。必然的に、細胞の繁殖の結果、HeLa細胞の蛍光強度は経時的に減少する。それにもかかわらず、EGFPナノカプセルが導入された細胞の蛍光強度は、144時間後でさえも対照(ネイティブEGFP)より著しく高い。常に、他のタンパク質と同様に、TAT−EGFPは送達効率が良好な手法と考えられているものの、プロテアーゼ攻撃を受ける。TAT−EGFPとのインキュベーションの48時間後における91%の細胞蛍光強度の損失と比較して、EGFPナノカプセルにおいては、42%のみの低下が観察された(図8D)。
【0098】
実施例4 − 細胞内在化
細胞内在化試験は、蛍光顕微鏡技術および蛍光活性化細胞分類(FACS)により評価した。10%ウシ成長血清(BGS)および1%ペニシリン/ストレプトマイシンを添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で、HeLa細胞を培養した。細胞(20000細胞/ウェル、24ウェルプレート)を、ナノカプセルを添加する前日に播種した。異なる濃度のナノカプセルまたはネイティブタンパク質を、細胞培地中に添加した。37℃で2時間から4時間のインキュベーション後、細胞をPBSで3回洗浄し、蛍光顕微鏡で可視化するか、またはトリプシン処理し、遠心分離し、PBS中に再懸濁し、FACSで分析した。製造者のマニュアルに従い、エンドソーム/リソソーム染色を行った。簡潔には、ローダミン標識化HRPナノカプセルとのインキュベーション後、細胞を簡単に洗浄し、2%ホルムアルデヒドで固定し、PBS/1%Tritonを浸透させ、5%BSAでブロックし、ウサギ抗EEA抗体(初期エンドソームに対して)またはウサギ抗Rab7抗体(リソソームに対して)で一晩処理した。細胞をAlexa488ヤギ抗ウサギIgGで染色し、次いで共焦点顕微鏡で観察した。
【0099】
EGFPナノカプセルをモデルとして使用して、細胞導入を試験した。図9は、400nMのEGFPナノカプセルまたは未修飾EGFPとの2時間の共培養後のHeLa細胞の蛍光顕微鏡画像を示す。未修飾EGFPと比較して、ナノカプセルは、HeLa細胞によってより効果的に内在化される。インキュベーション時間を2時間から4時間または8時間に延長すると、それぞれ448から559または619に蛍光強度が若干増加したが、取り込みは2時間以内でほとんど終了したことを示している(図11)。細胞蛍光強度は、より高いナノカプセル濃度で増加した(図12A)。比較として、TAT−EGFP融合タンパク質(TATはHIVウイルスから得られる細胞透過性ペプチドである)と2時間インキュベートされた細胞は、ナノカプセル処理細胞の蛍光強度よりも1/100低い蛍光強度を示した(図12A)。さらに、細胞取り込み効率に対するナノカプセルの表面電荷の効果もまた調査した。13.3mVのゼータ電位を有する400nMナノカプセルとインキュベートしたHeLa細胞は、398の平均蛍光強度を有することが判明したが、これは6.7mVのナノカプセルで得られた平均蛍光強度よりも3.2倍高い(図12C)。
【0100】
nEGFPを有する細胞は、ネイティブEGFPを有する細胞よりも著しく高い蛍光強度を示す(図12A)。CPP支援送達と比較して、この戦略は有利である。同じタンパク質濃度では、ナノカプセルとインキュベートされた細胞は、TAT−EGFP融合タンパク質(図12A)またはアンテナペディア−EGFP複合体(図12B;TATおよびアンテナペディアは、それぞれHIV−Tatタンパク質およびアンテナペディアホメオドメインから得られるCPPである)とインキュベートされた細胞よりも、2桁から3桁高い蛍光強度を示す。ナノカプセルの取り込みは、時間(図13)、濃度(図12A)およびゼータ電位(図12C)とともに増加するが、ナノカプセルサイズ(7.5〜15.7nmの範囲、図14)による大きな影響は観察されないことが判明した。
【0101】
エンドサイトーシス阻害
ナノカプセルの取り込み経路は、エンドサイトーシスプロセスが関与し得る。HeLa細胞をEGFPナノカプセルと4℃で3時間インキュベートすると、37℃でインキュベートした場合よりもはるかに低い細胞取り込みを示した(図9)。この観察は、細胞取り込みが、主に、活性化された経路、すなわち、ほとんどのカチオン性CPPおよびポリマーで観察されるエンドサイトーシスプロセス(Brooksら、Adv. Drug Deliv. Rev.、第57巻、559〜577頁、2005年;Poonら、Biochem. Soc. Trans.、第35巻、778〜793頁、2007年;Futamiら、J. Biosci. Bioeng.、第99巻、95〜103頁、2005年;Fischerら、J. Bio. Chem.、第279巻、12625〜12635頁、2004年)と一致するエンドサイトーシスによるものであったことを裏付けている。
【0102】
HeLa細胞(20000細胞/ウェル、24ウェルプレート)を、ナノカプセルを添加する前日に播種した。次いで、実験の前に、培地を、2mMのアミロリド(マクロピノサイトーシスの阻害剤)、20μg/mLのクロルプロマジン(chloroproamzine)(CPZ、クラスリン媒介エンドサイトーシスの阻害剤)、または5mMのβ−シクロデキストリン(β−CD、カベオラ媒介エンドサイトーシスの阻害剤)を含む0.5mlの新鮮培地と交換した。30分後、50nMのEGFPナノカプセルを細胞培地に添加し、37℃で2時間インキュベートした。PBSで洗浄した後、細胞をトリプシン処理し、遠心分離し、PBS中に再懸濁し、FACSで分析した。エンドサイトーシス阻害剤を含まない培地中でインキュベートしたHeLa細胞を対照として使用した。適用した3種のエンドサイトーシス阻害剤(図15)のうち、β−シクロデキストリン(β−CD)のみが、ナノカプセル取り込みを効果的に阻害したが、これはカベオラ媒介エンドサイトーシス経路を示唆している。
【0103】
クロロキン処理
事前にEGFPナノカプセルとインキュベートしたHeLa細胞の拡大蛍光画像(図16)では、ナノカプセルの不均質な分布が明らかである。
【0104】
HeLa細胞(20000細胞/ウェル、24ウェルプレート)を、ナノカプセルを添加する前日に播種した。実験の前に、培地を100μMクロロキンを含む新鮮培地0.5mlと交換し、細胞を0.2μMのEGFPナノカプセルと3時間インキュベートした。PBSでの洗浄後、細胞を蛍光顕微鏡で観察した。クロロキンを含まない培地中でインキュベートしたHeLa細胞を対照として使用した。
【0105】
リソソーム指向性薬剤であるクロロキン(Fischerら、J. Bio. Chem.、第279巻、12625〜12635頁、2004年;Ciftciら、Int. J. Pharm.、第218巻、81〜92頁、2001年)をインキュベーション中に培地に導入し、エンドソームを破壊した。その結果、小胞内に捕捉されるナノカプセルの数が減少し、細胞内においてナノカプセルの均一な分散が得られた(図16)。それにもかかわらず、クロロキンの使用前、サイトゾル内の高濃度のナノカプセルが観察された(図17の赤矢印)が、これは、恐らくは「プロトンスポンジ」効果(Akincら、J. Gene Med.、第7巻、657〜663頁、2004年)によるエンドソームからのナノカプセルの部分的な放出を示唆している。
【0106】
TEM試験
ナノゴールド標識化ナノカプセルを導入したHeLa細胞を、1%グルタルアルデヒドで4℃で1時間固定し、2%四酸化オスミウムで1時間処理し、段階的な一連のエタノール洗浄で脱水した。次いで処理後の細胞をEpon812(Electron Microscopy Sciences社製、Fort Washington、PA)に包埋した。極薄い(約80nm)断面を2%酢酸ウラニルで染色し、TEMで検査した。
【0107】
一貫して、事前に金標識化ナノカプセルとインキュベートしたHeLa細胞のTEM画像は、エンドソームの輪郭と類似した輪郭を有する凝集金粒子を示している(図17、緑矢印)が、これは、エンドソーム内へのナノカプセルの捕捉を示唆している。
【0108】
複数タンパク質内在化
この方法は、低い毒性での複数タンパク質送達に一般化することができる。図18Aは、EGFP(緑)、ローダミン−B標識化HRP(赤)およびAlexaFluoro−664標識化BSA(青)のナノカプセルを同時に内在化したHeLa細胞の蛍光画像を示す。同時導入後の共局在化の定量化を、図18Bに示す。そのような複数タンパク質送達は、2つ以上のタンパク質が相乗的または並行して作用する治療に非常に有望である(Yamauchiら、Japan. J. Cancer Res.、第83巻、540〜545頁、1992年;Kaliberovら、Cancer Gene Ther.、第13巻、203〜214頁、2006年)。
【0109】
実施例5 − 生体外活性
細胞生存能力
ネイティブタンパク質を対照として使用して、ナノカプセルの毒性をMTT分析により評価した。ナノカプセルへの暴露の前日に、96ウェルプレート上にHeLa細胞(7000細胞/ウェル)を播種した。異なる濃度のナノカプセルを細胞と2〜4時間インキュベートし、混合物から除去し、新鮮培地で24時間インキュベートした。MTT溶液(20μL)を各ウェルに添加し、3時間インキュベートした。次いで培地を除去し、DMSO100μLをセル上に添加した。プレートを振動台の上に設置し、150rpmで5分間溶液を完全に混合し、次いで560nmで吸光度値を測定した。未処理の細胞を、100%細胞増殖対照として使用した。
【0110】
図19は、異なる濃度のEGFPナノカプセルおよびネイティブEGFPへの暴露後の、HeLa細胞の生存能力を比較したものである。EGFPナノカプセルおよびネイティブEGFPは両方とも、試験された各濃度において同様の細胞毒性を示す(図19)。17.24μMのEGFPナノカプセルへの暴露においても、細胞生存能力の低下はわずか15%であった。
【0111】
癌細胞成長阻害
96ウェルプレートに設置したHeLa細胞(2000細胞/ウェル)を、HRPナノカプセルまたはネイティブHRPと4時間インキュベートし、次いで異なる濃度のインドール−3−酢酸(IAA)に12時間暴露した。MTTを使用して評価したHeLa細胞生存能力曲線から、最大半量阻害濃度(IC50)を決定した。
【0112】
高い送達効率、低い毒性、および長期安定性の他に、タンパク質送達システムは、送達される医薬用タンパク質が内在化後に完全な生体触媒活性によりその生物活性を保持し得ない限り、効果的とはなり得ない。酵素ナノカプセルの送達が活性細胞内酵素をもたらすか否かを決定するために、HRPおよびSODナノカプセルの送達を調査した。最近、潜在的なプロドラッグ癌治療として、インドール−3−酢酸(IAA)およびHRPの組合せが提案されている(Folkesら、Biochem. Pharmacol.、第61巻、129〜136頁、2001年)。IAAは、人間において良好な耐容性を示す植物ホルモンであり、HRPによりフリーラジカル中間体に特異的に転換されて、哺乳動物細胞内でアポトーシスを誘導することができる(de Meloら、Toxicol. Lett.、第148巻、103〜111頁、2004年)。HRPナノカプセルが合成され、ネイティブHRP活性の92%を保持することが示された(図7)。HRPナノカプセルが細胞内在化後にその活性を保持するか否かを決定するために、HeLa細胞をHRPおよびHRPナノカプセルとインキュベートし、発色基質である1mMのTMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)および1μMのH2O2に暴露した(図20)。ナノカプセル導入細胞は、ナノカプセル濃度の増加とともに増強する緑色を示すが、これは細胞内で活性なナノカプセルの送達が成功したことを裏付けている。HRPナノカプセルの細胞内活性をさらに決定するために、HeLa細胞をHRPまたはHRPナノカプセルと4時間インキュベートした。洗浄後、IAAを培地内に添加した。IAA濃度の増加とともに、HRPナノカプセルで前処理した細胞は、細胞生存能力の劇的な低下を示したが、ネイティブHRPで前処理した細胞は、対照細胞と同様の挙動を示し(図21A)、これは酵素が細胞内で生体触媒活性を示したことを実証している。
【0113】
細胞内酵素ナノカプセル活性をさらに確認するために、細胞内スーパーオキシド生成化合物であるパラコートで処理した細胞内にSODナノカプセルを送達した。好気性細胞内で酸素代謝中に形成される副生成物であるスーパーオキシドイオンは、広範な人間の疾患、例えば炎症、糖尿病、発癌、虚血/再かん流傷害および神経変性疾患等の発生および進行に関与する(Fridovichら、Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol.、第23巻、239〜257頁、1983年;Finkelら、Nature、第408巻、239〜244頁、2000年;Amesら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第90巻、7915〜7922頁、1993年)。SODはスーパーオキシドアニオンを効果的に不均化することができ、フリーラジカルの無害化において重要な役割を果たし、細胞を酸化的損傷から保護する(McCord, J. M.、Method in Enzymol.、第349巻、331〜341頁、2002年)。したがって、細胞内SODの活性は、細胞生存能力に直接的に関連し得る。図21Bは、SODナノカプセルとの2時間のインキュベーションに続く、5mMパラコートへの12時間の暴露後の相対細胞生存能力を示す。SODナノカプセルは、低いナノカプセル濃度で、細胞の酸化的損傷を効果的に妨げた。しかしながら、ナノカプセル濃度を増加させると、細胞生存率が低下した。この曲線は、多くの異なる心筋虚血−再かん流モデルにおいて観察される用量反応曲線と一致し、これは高SOD濃度におけるヒドロキシル基生成量の増加に起因し得る(Fridovich, I.、Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol.、第23巻、239〜57頁、1983年)。それにもかかわらず、この研究は、様々な治療薬または老化防止薬への機能性ナノカプセルの使用の可能性をさらに証明している。
【0114】
実施例5 − インビボ生体内分布
全ての動物実験は、Los Angeles Chancellor’s Animal Research Committee(ARC)のカリフォルニア大学により確立されたGuidelines for the Care and Use of Research Animalsに従って行った。6〜8週齢のヌードマウスに、ナノカプセル生理食塩水溶液または生理食塩水溶液(対照)100uLを注射した。24時間および48時間後、マウスを致死させ、生体外画像化のために全ての主要な臓器を取り出した。次いで、ナノカプセルを含有する凍結臓器を寒剤および低温保持装置内のミクロトームに埋設した。HRPナノカプセルを含有する組織切片をジヒドロエチジウム(Invitrogen社製)で染色し、共焦点顕微鏡を使用して観察した。
【0115】
ナノカプセルの生体内送達は、ヌードマウスに0.2mgのEGFPナノカプセルまたは対照EGFPを腹腔内注射することにより行った。8時間後、様々な臓器切片の蛍光共焦点顕微鏡分析により、ナノカプセル注射マウスからの全ての検査組織において強い信号が明らかとなったが、一方対照EGFP注射マウスにおける信号はバックグラウンドレベルのままであった(図22)。蛍光強度は経時的に減少するが、注射から50時間後であってもまだ高いままである。そのような極めて安定なナノカプセルは、幹細胞画像化および腫瘍追跡等、長期安定性を必要とする生体内細胞画像化マーカーとして使用することができる。さらに、注射されたナノカプセルは、組織内でもまだ活性なままであった。例えば、HRPナノカプセルまたはネイティブHRPの注射から8時間後、マウスを致死させ、切開し、ジヒドロエチジウム(HRPの蛍光性基質)を用いてHRP活性に関して組織を検査した。蛍光共焦点顕微鏡画像から、生成物エチジウムからの赤色蛍光が明確に観察され、ナノカプセルが生体内で活性であることを示した。
【0116】
実施例6 − 分解性架橋剤含有ナノカプセル
安定性およびpH誘導分解
非分解性ナノカプセルプラットフォームを使用して、小分子基質のタンパク質が長期安定性および高活性をもって効果的に送達され得ることが実証された。しかしながら、巨大分子基質の場合、ポリマー外皮がコアタンパク質へのそのアクセスを阻害し得る。血清および後期エンドソームは、それぞれ約7.4および約5.5のpH値を有することが周知である。したがって、この障害を克服するため、酸分解性ナノカプセルが開発された。de−nCASおよびnCASを例として使用して、pH5.5(図23A)および7.4(図23B)でのサイズ発達を試験した。nCASは両方のpH値で安定であるが、de−nCASはpH7.4でのみ安定である。pH5.5では、de−nCASの平均直径は、3時間以内に、20nmからネイティブCASの平均直径(約6nm)と同様のサイズである6nmに急速に減少する。重要なことに、分解性ナノカプセルは、pH7.4ではトリプシンおよびα−キモトリプシン(a−chymotrypsin)に対し安定であり(図24)、これにより、分解性ナノカプセルは循環系において安定性を維持し得、内部エンドソームがそのタンパク質カーゴを細胞内で放出する際に分解され得る。
【0117】
細胞内分解をさらに定量化するために、de−nEGFPおよびnEGFPをHeLa細胞に送達した。24時間後、de−nEGFPを含有する細胞の細胞蛍光強度は、nEGFPを含有する細胞よりも大幅に低く(図25)、これは分解性ナノカプセルが酸性細胞内環境に応じてそのシェルを剥離され得ることを裏付けている。
【0118】
アポトーシス誘導
脱保護プロセスは、必然的にカーゴタンパク質をプロテアーゼ攻撃に暴露するが、カーゴタンパク質と大きな基質との相互作用を可能にする。例えば、アポトーシス、壊死および炎症において重要な役割を果たすシステインプロテアーゼファミリーの一員であるCASは、細胞内の他のタンパク質基質を切断させてアポトーシスを誘発する(Nicholsonら、Nature、第376巻、37〜43頁、1995年;Porterら、Cell Death Differ.、第6巻、99〜104頁、1999年;Oliverら、Drug Resist. Updates、第8巻、163〜170頁、2005年)。図26に示すように、HeLa細胞のネイティブCAS、nCAS、de−nBSAまたはnBSAとのインキュベーションにより、de−nCASを含む細胞よりも著しく高い同様の生存能力が示された。末端dUTPニックエンド標識化(TUNEL)分析(図27)は、de−nCASにより誘発されたアポトーシスを裏付けている。
【0119】
結論
蛍光、発光および治療用タンパク質の細胞内の使用は、癌およびタンパク質欠乏性疾患の診断および治療において非常に重要である。2007年、治療用タンパク質市場は、約19%成長して480億ドルとなり、2010年までに900億ドルを超える売上を達成すると予測されている。しかしながら、将来の成長は、薬物送達の課題およびコスト問題を含む多くの障害を克服する産業に大きく依存する。高血圧用のアンジオテンシン変換酵素、貧血用のエリスロポエチン、肝炎用のインターフェロン、ゴーシェ病用のグルコセレブロシダーゼ、および酵素プロドラッグ化学療法用のアスパラギナーゼ等の治療用タンパク質は、特異的および効果的な治療薬剤として認識されている。緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質および有機蛍光分子標識化タンパク質等の蛍光および生物発光タンパク質、蛍または甲虫からのルシフェラーゼならびにホースラディッシュペルオキシダーゼは、腫瘍および血管画像化に広く使用されている。これらの単一タンパク質ポリマーナノカプセルは、生体外および生体内の両方において、天然タンパク質の直接的使用よりも細胞内送達における高い効率、活性および安定性を示す。
【0120】
タンパク質画像化および治療は、癌およびタンパク質機能不全疾患を診断および治療するための、最も直接的で安全な手法を提供する。しかしながら、タンパク質画像化および治療の広範な使用は、細胞内送達の効率が低いことやプロテアーゼに対するタンパク質の安定性が低いこと等の、いくつかの根本的な技術的障壁によってなお制限されている。これらの単一タンパク質ポリマーナノカプセルは、生体外および生体内の両方での細胞内送達における高い効率、活性および安定性のための、治療、画像化、およびその他の用途への極めて有望な経路を提示する。単一タンパク質ポリマーナノカプセルは、天然タンパク質に基づくものと比べて、癌についてのタンパク質に基づく画像化におけるより良好なコントラストおよび正確性、ならびにより長い半減期、より高い活性およびタンパク質療法のより低い用量を提供する。
【0121】
本発明のある特定の具体的実施形態を参照しながら本発明を説明および例示したが、本発明の精神および範囲から逸脱せずに、手順およびプロトコルの様々な適合、変更、修正、置換、削除、または追加を行うことができることが、当業者に理解される。したがって、本発明は以下の特許請求の範囲により定義されること、およびそのような特許請求の範囲は妥当な限り広義に解釈されることが意図される。
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2009年3月9日に出願された米国仮出願第61/158,588号(この全体の内容は、参考として本明細書に援用される)および2009年10月22日に出願された米国仮出願第61/254,121号(この全体の内容は、参考として本明細書に援用される)への優先権を主張する。
【0002】
本発明は、Defense Threat Reducing Agency(DTRA)によって付与された助成金第BRBAA07−E−2−0042号の政府の支援によってなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
発明の分野
本発明は、細胞内タンパク質送達ビヒクル、該ビヒクルを調製方法、およびタンパク質を細胞標的に送達するための該ビヒクルの使用に関する。
【背景技術】
【0004】
平均的な真核細胞は、通常の細胞機能に関与する何千もの異なるタンパク質を含有する。ほとんどの人間の疾患は、何らかの形で、特定タンパク質の全身性または限局性の機能不全に関連付けられる。これに関して、タンパク質療法(非特許文献1)は、そのような疾患を治療するための最も直接的で安全な手法を提供する。組換えDNA技術の最近の進歩により、多種多様の医薬用タンパク質の合成が可能となっている(非特許文献2;非特許文献3)が、タンパク質療法の広範な使用は、細胞内送達の効率が低いことやプロテアーゼに対するタンパク質の安定性が低いこと等、まだいくつかの根本的な技術的障壁により制限されている。
【0005】
治療用タンパク質の細胞内における使用は、癌およびタンパク質欠乏性疾患の治療において非常に重要である(Wadiaら、Protein Transport (Cell−penetrating peptides: Processes and Applications、(CRC Press)、365頁、2002年)。しかしながら、細胞外活性タンパク質の用途が幅広いのと比較して、細胞内活性タンパク質薬物は、血清中での安定性が悪く、細胞膜の透過性が低いことに一部起因して、臨床用途が極めて少ない(非特許文献1)。いくつかのタンパク質は、受容体媒介エンドサイトーシスにより細胞外空間から細胞内に移行し得る(Vyasら、Crit. Rev. Ther. Drug Carrier Syst.、第18巻、1〜76頁、2001年;Satoら、Adv. Drug Deliv. Rev.、第19巻、445〜467頁、1996年)が、それらのタンパク質はエンドソーム内に取り込まれ、適切な細胞内コンパートメントに放出されずにリソソーム内で分解され得る。この問題を回避するための取り組みが次第に行われている。例えば、リポソームに包まれたタンパク質は、細胞質内に輸送されるものの、効率が低いことが示されている(Straubingerら、FEBS Lett.、第179巻、148〜154頁、1985年;Bulmusら、J. Control Release、第93巻、105〜120頁、2003年)。最近、いくつかの微小カチオン性ペプチド(細胞透過性ペプチド、CPPと呼ばれる)が同定され、タンパク質送達を補助するために使用された(Fawellら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第91巻、664〜668頁、1994年;Morrisら、第19巻、1173〜1176頁、2001年;Schwarzeら、Science、第285巻、1569〜1572頁、1999年)。細胞内送達効率が大幅に改善され、細胞内で活性が保持されるため、この戦略は医薬的用途において有望である。また、これらの戦略を用いるとタンパク質を細胞内に送達することができるものの、細胞内のタンパク質の安定性が低いことが、まだ治療用タンパク質の幅広い用途を妨げている。様々な考えられる不活性化要因(Fagainら、Biochim. Biophys. Acta.、第1252巻、1〜14頁、1995年)のうち、血清中のプロテアーゼ消化が決定的な要因であり、細胞内タンパク質送達の成功を確実とするにはこれに対処する必要がある(Hooper, N. M. Proteases in Biology and Medicine、(Portland Press、London)、2002年)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Birchら、Therapeutic Proteins, methods and Protocols(2005年)(Humana Press、Totowa)、1〜16頁
【非特許文献2】Nagleら、Nature Rev. Drug Discov.(2003年)第2巻、75〜79頁
【非特許文献3】Brekkeら、Nature Rev. Drug Discov.(2003年)第2巻、52〜62頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様は、単一タンパク質コアと、タンパク質コアに共有結合によって固定された薄いポリマーシェルとを有するタンパク質ナノカプセルを含む。いくつかの実施形態において、単一タンパク質コアは、複数の重合性基を有するタンパク質である。いくつかの実施形態において、単一タンパク質コアは、タンパク質触媒である。いくつかの実施形態において、ナノカプセルは、タンパク質コアの触媒活性を保持する。
【0008】
いくつかの実施形態において、単一タンパク質コアは、少なくとも1種のモノマーと共重合してナノカプセルを形成する。他の実施形態において、単一タンパク質コアは、少なくとも1種のモノマーおよび少なくとも1種の架橋剤と共重合している。
【0009】
いくつかの実施形態において、ナノカプセルは、表面修飾をさらに含む。表面修飾剤は、発光分子、細胞標的化部分、ペプチド、タンパク質、抗体またはオリゴ糖であってもよい。表面修飾剤は、造影剤(imaging agent)、細胞標的化促進剤(cell targeting enhancer)、または細胞透過促進剤(cell−penetration enhancer)として機能し得る。
【0010】
本発明の別の態様は、少なくとも1つの重合性基を有するタンパク質を誘導体化し、次いで誘導体化されたタンパク質をモノマー単位と共重合させることにより、ナノカプセルを調製する方法を含む。いくつかの実施形態において、共重合は、架橋剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、方法は、ナノカプセルの表面を修飾するステップをさらに含む。
【0011】
本発明の別の態様は、有効濃度の上述のナノカプセルに細胞を暴露することによりタンパク質を送達する方法を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、アクリルアミド(1)、2−ジメチルアミノエチルメタクリレート(2)、および非分解性架橋剤メチレンビスアクリルアミド(3)または酸分解性グリセロールジメタクリレート(4)のin situ共重合により調製された、分解性および非分解性ポリマーシェルを有する例示的なカチオン性単一タンパク質ナノカプセルの合成および細胞取り込みを示す概略図である。I、タンパク質表面に重合性アクリル基を複合化することによる、重合性タンパク質の形成;II、1、2および3からの非分解性ナノカプセルの形成;III、1、2および4からの分解性ナノカプセルの形成;IV、エンドサイトーシスによる分解性または非分解性ナノカプセルの細胞取り込み;V、分解性ナノカプセルのシェルは、内在化後に分解してタンパク質カーゴを放出し、大分子基質と相互作用させる。
【図2】図2は、N−アクリルオキシスクシンイミド(NAS)による修飾前後のタンパク質のMALDI−TOF質量スペクトルを示す。図2Aは、ネイティブEGFP(1)および修飾EGFP(2)を示す。図2Bは、ネイティブHRP(1)および修飾HRP(2)を示す。図2Cは、ネイティブSOD(1)および修飾SOD(2)を示す。図2Dは、ネイティブカスパーゼ−3(1)および修飾カスパーゼ−3(2)を示す。
【図3】図3は、50mMのpH7.0リン酸緩衝液中のネイティブEGFPおよびnEGFPの、489nmの励起波長を用いた蛍光スペクトルを示す。
【図4】図4は、例示的ナノカプセルのサイズを示す。図4Aは、HRPナノ粒子のTEM画像を示す。図4Bは、HRPナノカプセルのAFM画像を示す。図4Cは、単一の1.4nm金量子ドット標識化HRPコアを含有するナノカプセルのTEM画像を示す。これらの図は、単一コアのナノスケール構造の形成を裏付けている。
【図5】図5は、動的光散乱(DLS)により決定された、HRPおよびnHRPの粒度分布を示す。
【図6】図6は、ゼータ電位に対するモノマーの重量比の効果を示す。図6Aは、異なるモノマー重量比(上から下の順に、DMAEMA(2)/AAm(1)=0、1/3、1)で形成されたナノカプセルのゼータ電位分布を示す。図6Bは、異なるモノマー重量比(上から下の順に、モノマー2対モノマー1=1/6、1/3、1、ゼータ電位:2.23、5.83から10.93mV)で形成されたnHRPのゼータ電位分布を示す。
【図7】図7は、ネイティブHRP(左)およびnHRP(右)の相対触媒活性を示す。ネイティブHRPおよびnHRPの活性試験は、既存のプロトコル(Davisら、J. Biol. Chem.、第256巻、5992〜5996頁、1981年)に従った。簡潔には、試験中、pH5.5の100mMクエン酸リン酸塩0.9ml、0.02MのH2O2 0.05ml、および0.2μg/mLのHRPまたはnHRP 10μLを試験管内に入れた。0.02MのTMBを含有するDMSO 0.05mlを添加することにより反応を開始させ、655nmで監視した。TMBの酸化速度は、TMBの酸化生成物のモル吸収係数(39,000M−1cm−1)を使用し、吸着曲線の初期線形部分の傾きから導出した。
【図8】図8は、例示的ナノカプセルのプロテアーゼに対する安定性を示す。図8Aは、50℃での1mg/mLトリプシンおよびキモトリプシンへの暴露後のネイティブEGFPおよびEGFPナノカプセルの蛍光強度の比較を示すが、EGFPナノカプセルが、プロテアーゼに対し極めて安定であることを示唆している(蛍光強度は、プロテアーゼへの暴露前の未接触EGFPに正規化した)。図8Bは、400nMのEGFPナノカプセルとの3時間、48時間および144時間のインキュベーション後のHeLa細胞の細胞蛍光強度を示すが、細胞の繁殖に起因する強度低下を示している。図8Cは、400nMのTAT−EGFP融合タンパク質との3時間のインキュベーション後のHeLa細胞の細胞蛍光強度を示すが、未修飾タンパク質の急速な分解を示している。図8Dは、異なる時間でのnEGFPまたはTAT−EGFP融合タンパク質による処理後の細胞の細胞蛍光強度を示す。
【図9】図9は、規定温度でのEGFPナノカプセルまたは未接触EGFPとの3時間のインキュベーション後のHeLa細胞の蛍光顕微鏡画像を示し、細胞はDAPIで対比染色されている(スケールバー=50μm)。
【図10】図10は、ローダミン標識化nHRPの取り込みを示す蛍光画像を示す。細胞は、EEA1(初期エンドソームに対して)またはRab7(リソソームに対して)で対比染色された。
【図11】図11は、異なる時間でのEGFPナノカプセルとのインキュベーション後のHela細胞蛍光強度を示す。HeLa細胞は、異なる時間400nMのEGFPナノカプセルとインキュベートし、洗浄し、トリプシン処理し、FACS分析に供した。
【図12】図12は、TAT−EGFPおよびアンテナペディア−EGFP複合体と比較したナノカプセル、ならびに細胞取り込みに対するゼータ電位の効果を示す。図12Aは、異なる濃度のnEGFP(11.7nm、ゼータ電位10.9mV)、TAT−EGFP融合タンパク質またはネイティブEGFPとインキュベートしたHeLa細胞の蛍光支援細胞分類を示す。図12Bは、ネイティブEGFP、EGFPナノカプセル(nEGFP)、アンテナペディア−EGFP複合体(ANTE−EGFP)による処理後のHeLa細胞の細胞蛍光分布を示す。図12Cは、EGFPナノカプセルのゼータ電位と、EGFPナノカプセルとの3時間の共培養後のHeLa細胞の平均細胞蛍光強度との相関を示す。
【図13】図13は、インキュベーション時間の延長のナノカプセル取り込みに対する効果を示す。図13Aおよび13Bは、異なる時間のnEGFPとのインキュベーション後のHela細胞蛍光強度を示す。HeLa細胞は、異なる時間400nMのnEGFPとインキュベートし、洗浄し、トリプシン処理し、FACS分析に供した。
【図14】図14は、ナノカプセルサイズの細胞取り込みに対する効果を示す。異なるサイズのnEGFPとのインキュベーション後のHeLa細胞の細胞蛍光強度分布である(赤:7.53nm、緑:10.6nm、紫:15.7nm)。
【図15】図15は、異なる温度、および3つの異なるエンドサイトーシス阻害剤:アミロリド、CPZおよびβ−シクロデキストリン(β−CD)の存在下での、HeLa細胞の平均細胞蛍光強度を示す。蛍光強度は、37℃でnEGFPとインキュベートされた細胞に正規化されている。
【図16】図16は、100μMクロロキンによる処理あり、またはなしでの3時間のEGFPナノカプセルとのインキュベーション後のHeLa細胞の蛍光顕微鏡画像を示す(スケールバー=20μm)。
【図17】図17は、金量子ドット標識化HRPナノカプセルとのインキュベーション後のHeLa細胞のTEM画像を示す。濃い矢印は、細胞サイトゾル内の単一ナノカプセルの分散を示し、薄い矢印は、ナノカプセルのクラスタを示す。
【図18】図18は、複数タンパク質送達を示す。図18Aは、ローダミン−B標識化nHRP(赤)、nEGFP(緑)、およびNIR−667標識化nBSA(青)の導入後のHeLa細胞の共焦点画像を示す。図18Bは、nEGFP、NIR−667標識化nBSA、およびローダミン−B標識化nHRPが同時にHeLa細胞内に導入された後の、これらのナノ粒子の共局在化定量を示す。
【図19】図19は、MTT分析により決定される、3時間のEGFPナノカプセルとの共培養と、それに続く新鮮培地中での12時間のインキュベーション後のHeLa細胞の相対細胞増殖速度を示し、細胞増殖速度は、いかなる薬剤でも処理していないHeLa細胞に正規化した。
【図20】図20は、異なる濃度のHRPまたはHRPナノカプセルとの3時間のインキュベーションと、それに続くPBS洗浄、ならびにPBS中の1mMのTMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)および1μMのH2O2との10分間のインキュベーション後の、HeLa細胞の写真を示す。
【図21】図21は、HRPおよびSODナノカプセルの細胞内の活性を示す。図21Aは、400nMネイティブHRPまたはnHRPの導入およびIAAとの12時間のインキュベーション後のHeLa細胞生存能力を示す、MTT分析を示す。細胞増殖速度は、未処理細胞に正規化した。図21Bは、nSODおよびパラコートとのインキュベーション後のHeLa細胞生存能力を示す。未処理細胞は、100%細胞増殖対照として使用し、パラコートのみで処理した細胞は、0%対照として使用した。データは平均を示し、エラーバーは、3回行った3つの独立した実験からのものである。
【図22】図22は、EGFPナノカプセルまたはHRPナノカプセルの投与および1mMジヒドロエチジウムへの暴露後の、C57BL/6マウスの組織切片の共焦点画像を示す。
【図23】図23は、例示的な分解性ナノカプセルの異なるpHでのサイズ変化を示す。図23Aは、分解性CASナノカプセル(de−nCAS)および非分解性CASナノカプセル(nCAS)のpH5.5でのサイズを示す。図23Bは、分解性CASナノカプセル(de−nCAS)および非分解性CASナノカプセル(nCAS)のpH7.4でのサイズを示す。
【図24】図24は、50℃のpH7.4緩衝液中1mg ml−1トリプシンおよびα−キモトリプシン(a−chymostrypsin)への暴露後の、ネイティブEGFP、非分解性EGFPナノカプセル(nEGFP)および分解性EGFPナノカプセル(de−nEGFP)の蛍光強度を示す。蛍光強度は、プロテアーゼ添加前のネイティブEGFPに正規化されている。
【図25】図25は、nEGFPまたはde−nEGFPとの3時間のインキュベーションと、それに続く新鮮培地中でのインキュベーション後の、異なる時間でのHeLa細胞の蛍光強度を示す。蛍光強度は、新鮮培地とのさらなるインキュベーションを行わなかった各細胞に正規化されている。
【図26】図26は、様々な濃度のde−nCAS、nCAS、CAS、de−nBSAまたはnBSAとの48時間のインキュベーション後の細胞増殖プロファイルを示す、MTT分析を示す。データは、未処理細胞に正規化されている。
【図27】図27は、ネイティブCAS、nCASまたはde−nCASが導入されたHeLa細胞を示す、APO−BrdUTM TUNEL分析を示す。de−nCASとインキュベートされた細胞内のPI染色核およびAlexa Fluor 488染色ニックエンド標識は、アポトーシスDNA断片化を示している。データは平均を示し、エラーバーは、3回行った3つの独立した実験からのものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のいくつかの実施形態を以下で詳細に説明する。実施形態の説明において、明確性のために具体的な用語が使用される。しかしながら、本発明は、そのように選択された具体的な用語に制限されることを意図しない。本発明の広い概念から逸脱しない範囲で、他の等価の成分を使用することができ、また他の方法を考案することができることが、関連技術の当業者には認識される。本明細書中のいずれかで引用される全ての参考文献は、参照することにより、それぞれが個々に組み込まれているかのように組み込まれる。
【0014】
本明細書において、値の範囲が示されている場合、文脈上異なる定義が明示されていない限り、その範囲の上限および下限の間の、下限の単位の10分の1までの各介在値、ならびにその示された範囲内の任意の他の示された値または介在値が、本発明に包含されることが理解される。任意の範囲の端点の値は、その範囲内に含まれる。
【0015】
本発明の実施形態は、単一タンパク質コアと、タンパク質コアに共有結合によって固定された薄いポリマーシェルとを有するナノカプセルを含む。いくつかの実施形態において、ナノカプセルは、正電荷を有する。いくつかの実施形態において、ナノカプセルは、約5nmから約200nmの間の最大寸法を有してもよい。サイズは、単一タンパク質コアのサイズおよび薄いポリマーシェルの厚さによって変わり得る。小さいサイズおよび電荷が、高い細胞内効率をもたらす。各ナノカプセルは、共有結合によって連結した2つの部分、すなわち単一タンパク質コアおよび薄いポリマーネットワークシェルを含有する。そのコアシェル構造は、タンパク質をタンパク質分解および熱変性から保護し、生体内または生体外での高い安定性をもたらす。
【0016】
本明細書において使用される場合、単一タンパク質コアは、ナノカプセルが、薄いポリマーシェルを有する単一の機能性タンパク質を含むことを意味する。多くの場合、単一の機能性タンパク質は、単一のポリペプチドである。対象のタンパク質がマルチマー(すなわち、二量体、ホモ二量体、ヘテロ二量体、三量体等)として正常に機能する場合、単一タンパク質コアはマルチマーを含む。例えば、カスパーゼ−3(CAS)の活性型は二量体であり、カスパーゼ−3を含有するナノカプセルは、単一タンパク質コアとして二量体を含む。複数の機能を有する融合タンパク質もまた単一タンパク質コアに使用することができるが、通常互いに相互作用して機能性単位を形成しない複数のタンパク質は、単一タンパク質コアではない。通常会合して機能性単位を形成しない同じタンパク質の複数の複製は、単一タンパク質コアではない。
【0017】
ナノカプセルは、離散した粒度分布および低い粒度分布を有する。単一タンパク質コアは、ポリマーコーティング内にカプセル化される。いくつかの実施形態において、ポリマーコーティングは架橋して、タンパク質をカプセル化するポリマーコーティグの密度を増加させる。いくつかの実施形態において、ポリマーは、タンパク質上の少なくとも3、4、5、7、10、15、または20箇所で、薄いポリマーシェルに共有結合によって固定される。いくつかの実施形態において、ポリマーは、少なくとも3箇所で、薄いポリマーシェルに共有結合によって固定される。これにより、タンパク質は確実にポリマーネットワーク内にカプセル化される。
【0018】
いくつかの実施形態において、ナノカプセルは、約5nmから約200nmの間の最大寸法を有してもよい。ナノカプセルのサイズは、単一タンパク質コアのサイズおよび薄いポリマーシェルの厚さに一部依存する。いくつかの実施形態において、ナノカプセルは、約10nmから約200nmの間、約5から約100nmの間、約5nmから50nmの間、または約10nmから約30nmの間であってもよい。いくつかの実施形態において、ポリマーシェルは、約1nmから約20nmの間の厚さであってもよい。いくつかの実施形態において、ポリマーシェルは、約1nmから約10nmの間の厚さであってもよい。いくつかの実施形態において、ナノカプセルは略球形であるが、形状は、単一タンパク質コアの形状に依存して変動し得る。一例として、厚さ約2nmのポリマーシェルを有する直径約5nmの単一タンパク質コア(例えば、緑色蛍光タンパク質(EGFP)等)は、約9nmの全体的サイズを有する。
【0019】
いくつかの実施形態において、タンパク質は、タンパク質触媒(すなわち酵素)であってもよい。いくつかの実施形態において、タンパク質は、発光等の別の機能を有してもよい(例えばEGFP)。化学的にまたは共有結合によって修飾されたタンパク質は、その修飾がナノカプセルの形成に干渉しない限り、所望により使用することもできる。一般に、任意のタンパク質を本発明によるナノカプセル内に組み込むことができ、またタンパク質の実用性に基づき選択することができる。いくつかの実施形態において、タンパク質は、化粧品用途または治療用途において有用である。ナノ粒子を構築するために使用されるタンパク質の典型的な例には、強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、ウシ血清アルブミン(BSA)、カスパーゼ−3、およびリパーゼが含まれる。ローダミン−B標識化HRPおよびNIR−667標識化BSA等の化学修飾タンパク質もまた使用されている。様々な異なる用途の具体的なタンパク質の例を、以下の表に示す。タンパク質の他の例は、当業者に明らかである。
【0020】
【表1−1】
いくつかの実施形態において、ポリマーシェルは透過性である。本明細書において使用される場合、透過性は、ポリマーシェルにおける細孔もしくは穴を通して、またはポリマーを通した拡散により、分子がポリマーシェルを通過し得ることを意味する。例えば、基質、補因子および他の化学元素がポリマーシェルを通過することができ、これによりナノカプセルは単一タンパク質コアの活性を保持することができる。
【0021】
これらのナノカプセル内のタンパク質は、非修飾タンパク質よりも安定である。安定性は、経時的なタンパク質活性の損失、またはタンパク質の分解もしくは変性で決定される。いくつかの実施形態において、ナノカプセルは、プロテアーゼによる分解に耐性を有する。薄いポリマーシェルは、プロテアーゼ酵素に対するタンパク質コアの暴露を低減する。その結果、タンパク質コアの活性は、プロテアーゼの存在下(例えば生体内、血清中、または細胞内)で、保護されていないネイティブタンパク質より長く持続する。薄いポリマーシェルは、タンパク質構造を安定化し、タンパク質の凝集を防止する。したがって、ナノカプセルは、pHおよび温度の変化に対しより耐性を有する。例えば、ナノカプセルは、ネイティブタンパク質よりも、室温または低温(すなわち冷蔵または冷凍)での保存寿命が長い。同様に、ナノカプセルは、ネイティブタンパク質よりも、複数回の冷凍/解凍サイクル後に活性を失いにくい。薄いポリマーシェルによりタンパク質構造が安定化されるため、ナノカプセルは、有機溶媒および界面活性剤に対しより耐性を有する。ポリマーコーティングはまた、有機溶媒中での溶解性を増加させるために調節され得る。ナノカプセルとともに使用され得る有機溶媒および界面活性剤の例には、化粧品(すなわちメークアップ)および医薬品において広く使用されるものの中でも、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、4−ジクロロベンゼン、パラジクロロベンゼン、1,4−ジオキサン、1,4−ジオキサンPEG、ポリエチレン、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン、ラウレス硫酸ナトリウムまたはオキシノール、ポリソルベート60、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、2−ブトキシ−1−エタノール、アルキルフェノキシ、ポリエトキシエタノールが含まれる。他の有機溶媒は、当業者に明らかである。薄いポリマーコーティングは凝集を防止するため、ナノカプセルは、保護されていないタンパク質が凝集する傾向がある界面(すなわち気/液または液/固界面)においてより安定である。
【0022】
いくつかの実施形態において、ナノカプセルは、単一タンパク質コアの活性を保持する。単一タンパク質コアが蛍光性(例えばEGFP、または蛍光標識化BSA)である場合、ナノカプセルもまた蛍光性である。単一タンパク質コアが酵素的に活性である場合、酵素活性はナノカプセル内に存在する。ナノカプセルの活性は、ポリマーシェルのない単一タンパク質コアに比べて低くなり得る。いくつかの実施形態において、ナノカプセルの活性は、ネイティブタンパク質の少なくとも約30%である。他の実施形態において、ナノカプセルの活性は、ネイティブタンパク質の少なくとも約50%、ネイティブタンパク質の少なくとも約70%、またはネイティブタンパク質の少なくとも約90%である。
【0023】
いくつかの実施形態において、単一タンパク質コアは、複数の重合性基を有するタンパク質である。重合性基は、ある特定の化学的条件下で重合する化学部分である。重合条件の例には、光重合、ラジカル重合、および触媒誘導重合が含まれる。一般に、重合性基がナノカプセルを形成するために使用されるモノマーと重合することができる限り、重合性基の種類は決定的ではない。重合性基の例には、光重合またはラジカル重合により重合する二重結合含有部分が含まれる。いくつかの実施形態において、重合性基は、ビニル基、アクリル基、アルキルアクリル基(すなわち、メタクリル等のアルキル置換基を有するアクリル基)である。本明細書において使用される場合、アクリル(アルキルアクリル、メタクリル等)は、アクリルエステルおよびアクリルアミドを含む。いくつかの実施形態において、重合性基は、タンパク質コアのリジン残基に共有結合したアクリル基である。
【0024】
タンパク質は、容易に修飾され得る多くの異なる表面アミノ酸を含有する。例えば、リジン、システイン、トレオニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、セリン、ヒスチジン、アルギニン、チロシン、プロリンおよびトリプトファンは、公知のプロセスおよび手順を使用して容易に修飾され得る。タンパク質を修飾するために使用される試薬は、少なくとも1つの重合性基と、タンパク質表面上のアミノ酸側鎖と反応する少なくとも1つの反応基とを有する。アミノ酸側鎖と反応するために使用される反応基の例には、ある特定のカップリング試薬で活性化されると、アミン(例えばリジン)およびヒドロキシル(例えばトレオニンまたはセリン)含有残基と反応する活性化エステル(例えばハロゲン化アシルまたはN−ヒドロキシスクシンイミドエステル);チオール(例えばシステイン)含有残基と反応するマレイミド;ならびにカルボン酸(例えばグルタミン酸およびアスパラギン酸)含有残基と反応するアミンが含まれる。このように、重合性基は、単一タンパク質コアに共有結合する。重合性基は、直接結合してもよく、または連結基を介して結合してもよい。
【0025】
いくつかの実施形態において、連結基は、タンパク質コアと重合性基との間に存在する。連結基は、重合性基とタンパク質コアとを分離する化学部分である。連結基として使用される試薬は、少なくとも1つの重合性基と、連結基により分離された少なくとも1つの反応基とを有する。反応基は、通常タンパク質表面上のアミノ酸側鎖との反応によりタンパク質コアと反応し、その間の連結基により重合性基を単一タンパク質コアに共有結合させる。
【0026】
いくつかの実施形態において、連結基は分解性であってもよい。分解性連結基は、ある特定の条件下で切断する化学部分である。例として、分解性連結基は、例えば、ある特定のpH値(高pHまたは低pH)で加水分解し得るか、あるいは光分解的に(すなわちある特定の波長の光が照射されると)、またはある特定の温度下、還元−酸化条件下、もしくは触媒作用によって(すなわちプロテアーゼにより)切断し得る。タンパク質コアと反応する反応基と、ナノカプセルを形成する重合性基とを連結基が有する限り、任意の好適な分解性連結基を使用することができる。分解性連結基はまた、ナノカプセルの重合中に安定である必要がある。連結基の種類は、連結基が切断する条件に基づき選択することができる。多くの連結基が公知であり、当業者に容易に明らかとなる。
【0027】
いくつかの実施形態において、ナノカプセルは、モノマー単位と共重合した単一タンパク質コアである。モノマー単位は、単一タンパク質コアと重合してコポリマーを形成し、ナノカプセルのポリマーシェルを形成する化学部分である。いくつかの実施形態において、単一タンパク質コアが二重結合を有する重合性基、例えばビニル、アクリル、アルキルアクリルまたはメタクリル基を備える場合、モノマー単位もまた二重結合を有する重合性基、例えばビニル、アクリル、アクリルアミド、アルキルアクリル、アルキルアクリルアミド、メタクリルまたはメタクリルアミド基を有する。タンパク質の重合性基、およびモノマー単位の重合性基は、ナノカプセルを形成するために使用される条件下でコポリマーを形成することができる限り、同じであっても異なっていてもよい。例えば、ビニルおよびアクリル基は、ラジカル重合条件下でコポリマーを形成し得る。
【0028】
いくつかの実施形態において、ナノカプセルは、2種以上の異なるモノマー単位と共重合した単一タンパク質コアである。一般に、異なるモノマー単位が全てナノカプセルを形成するために使用される条件下でコポリマーを形成することができる限り、任意の数の異なるモノマー単位を使用してタンパク質コアとのコポリマーを形成することができる。異なる側鎖を有するモノマー単位を使用して、ナノカプセルの表面特徴を改変することができる。表面特徴は、異なるモノマー単位間の比を調節することにより制御することができる。いくつかの実施形態において、モノマーは、中性、中性親水性、疎水性、正荷電または負荷電であってもよい。ナノカプセルの溶解度は、例えば、荷電モノマー単位と非荷電または親水性または疎水性モノマー単位との間の比を変更することにより調節することができる。いくつかの実施形態において、ナノカプセルは、正電荷または負電荷を有する。
【0029】
いくつかの実施形態において、少なくとも1種のモノマー単位が、pH=7.4で正電荷または負電荷を有する。pH=7.4で電荷を有するモノマー単位を使用することにより、ナノカプセルの全体的な電荷は、荷電および非荷電モノマー単位の比を変更することにより変更および調節することができる。いくつかの実施形態において、モノマー単位は、pH=7.4で正電荷を有する。正荷電モノマー単位を使用することにより、正電荷を有するナノカプセルを形成することができる。電荷は、中性および正荷電モノマー単位の比を変更することにより調節することができる。
【0030】
いくつかの実施形態において、ナノカプセルは、少なくとも1種のモノマー単位(上述の通り)および少なくとも1種の架橋剤と共重合した単一タンパク質コアを備える。架橋剤は、2つ以上の重合性基を有する化学化合物である。一般に、架橋剤上の重合性基が、ナノカプセルを形成するために使用される条件下で、タンパク質コアと少なくとも1種のモノマー単位との間で架橋したコポリマーを形成することができる限り、任意の架橋化合物を使用することができる。架橋剤の例には、2つのビニル、アクリル、アルキルアクリル、またはメタクリル基を有する化合物が含まれる。2つのアクリル基を有する具体的な架橋剤の例には、N,N’−メチレンビスアクリルアミドおよびグリセロールジメタクリレート(共に図1に示される)が含まれる。
【0031】
いくつかの実施形態において、架橋剤は、分解性架橋剤である。分解性架橋剤は、ある特定の条件下で切断し、ナノカプセルのポリマーシェルの少なくとも一部の分解または除去をもたらす。例えば、分解性架橋剤は、ある特定のpH(高いまたは低い)で加水分解し得るか、特定酵素(例えばエステラーゼまたはペプチダーゼ)により切断され得るか、ある特定の波長に暴露されると光分解的に切断され得るか、またはある特定の温度で切断され得る。低いpHで加水分解する架橋剤の例には、生理学的なpH(約7.4)で安定であるがより低いpH(約5.5)では加水分解するグリセロールジメタクリレートが含まれる。分解性架橋剤の他の例には、参照することによりその全内容が組み込まれる米国特許第7,056,901号に記載されている、アセタール架橋剤が含まれる。
【0032】
分解性および非分解性架橋基のさらなる具体例を、以下の表に示す。
【0033】
【表1−2】
タンパク質コアの基質がポリマーコーティングを通過するには大き過ぎる場合、ポリマーコーティングを除去または低減する分解性架橋剤が有利となり得る。例えば、低いpHで分解する分解性架橋剤を使用して、ナノカプセルがエンドサイトーシスにより細胞内に内在化した後にポリマーコーティングを除去または低減することができる。血清および後期エンドソームは、それぞれ約7.4および約5.5のpH値を有することが周知である。したがって、pH約7.4では安定であるがpH約5.5では分解する分解性架橋剤は、ナノカプセルが細胞内に進入した後にのみポリマーコーティングを除去または低減する。このように、タンパク質コアは血清中に存在するプロテアーゼから保護されるが、大きな基質を有するタンパク質コアがまだ細胞に効果的に送達され得る。ポリマーコーティングが低減された後でも、タンパク質コアの活性はまだ存在する。しかしながら、ポリマーコーティングが除去された後、タンパク質コアは細胞内プロテアーゼによる分解を受けやすくなるが、この欠点は、ナノカプセルの増加した血清中安定性および血清プロテアーゼ耐性により相殺される。
【0034】
ある特定の実施形態において、ナノカプセルは、表面修飾をさらに含む。表面修飾は、ナノカプセルの形成後にナノカプセルの表面に付加される化学部分である。反応性側鎖がナノカプセルの形成に干渉しない限り、反応性側鎖(または保護された反応性側鎖)を有するモノマー単位を使用してナノカプセルを形成することができる。反応性側鎖は、(必要に応じて脱保護後に)表面修飾剤と反応させて、表面修飾をナノカプセルに共有結合させることができる。表面修飾剤は、小分子、ポリマー、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、多糖類、または抗体であってもよい。表面修飾は、ナノカプセルの溶解度を改変する、ナノカプセルの表面電荷を変更する、またはナノカプセルに発光、細胞標的化もしくは細胞透過等の追加的機能を付与することができる。細胞標的化を向上させる表面修飾は、非標的化細胞と比較して、標的細胞へのナノカプセルの導入を増加させる。細胞透過を向上させる表面修飾は、細胞透過促進剤を含まないナノカプセルと比較して、細胞へのナノカプセルの導入を増加させる。ナノカプセル上に、2種以上の表面修飾が存在してもよい。小分子表面修飾の例には、フルオレセインもしくはローダミン等の発光性化合物、または葉酸等の細胞標的化化合物が含まれる。ポリマーは、溶解度を増加させるためのポリエチレングリコールを含む。特定の細胞表面特徴、細胞情報伝達タンパク質、または成長ホルモンに対する抗体等のペプチドを細胞標的化に使用することができる。他のペプチドを使用して、ナノ粒子の細胞透過を増加させることができる(例えばTATまたはアンテナペディア(antennepedia)ホメオドメイン)。いくつかの実施形態において、表面修飾は抗体である。
【0035】
生成
本発明の実施形態は、少なくとも1つの重合性基を有するタンパク質を誘導体化し、次いで誘導体化されたタンパク質をモノマー単位と共重合させることにより、単一タンパク質コアと、タンパク質コアに共有結合によって固定された薄いポリマーシェルとを有するナノカプセルを生成する方法を含む。
【0036】
単一タンパク質ナノカプセルを形成するために、一般的な2段階手順が使用される。まず、重合性基がタンパク質表面に共有結合によって連結される。次いで、緩衝液中での機能性モノマー、および任意選択で架橋剤の後続する重合により、タンパク質コアのそれぞれが、薄い(架橋ネットワーク)ポリマー外皮で被覆される。この一般法は、所望のタンパク質コアを有する多種多様な低粒度分布ナノカプセルの簡便な合成、ならびに表面電荷および官能基の容易な制御を可能にする。
【0037】
重合性基が酵素表面に結合したら、モノマー(例えば、表2に列挙されるもの等)を使用して、調整可能な組成、構造、表面特性および機能性を有するポリマーコーティングを形成することができる。酵素活性の保持を確実とするために、室温ラジカル重合技術を使用することができる。これらのポリマーコーティングは、カプセル化された酵素用の人工膜として機能するため、構造的完全性を提供するための好適な機械的強度を示し、迅速な基質輸送を可能にする効果的な輸送経路を有し、基質選択性および保湿を提供する特定の機能性を含有する。
【0038】
ナノカプセルは、商業的供給源から直接、または他の報告されている方法を使用して得ることができるタンパク質コアの生物機能を変化させない。
【0039】
タンパク質を誘導体化または修飾するために使用される試薬は、以下の一般構造
【0040】
【化1】
を有し、重合性基は、ナノカプセルを形成するために使用される条件下で、1種または複数種のモノマーおよび/または架橋剤とコポリマーを形成する化学部分である。いくつかの実施形態において、重合性基は、二重結合含有基、例えばビニル、アクリル、アルキルアクリル、およびメタクリルである。前述したように、アクリル(およびアルキルアクリルおよびメタクリル)は、アクリルエステルおよびアクリルアミドの両方を含む。
【0041】
連結基は任意選択的であり、重合性基とタンパク質との間に存在し得る。連結基は、反応基を重合性基から分離する化学部分である。連結基は、いかなる特定の化学構造にも限定されないが、重合反応に干渉するべきではない。いくつかの実施形態において、連結基は、ある特定の条件下で切断する分解性連結基である。例えば、アセタール、ケタールまたはエステルは、ある特定のpHで加水分解され得る。これらの官能基の1つまたは複数を有する連結基は、(例えば、上述したようにエンドソーム内で)pHの変化に応答して分解し得る。
【0042】
反応基は、アミノ酸側鎖と反応して重合性基をタンパク質に共有結合させる化学部分である。多くの反応基が公知であり、異なるアミノ酸側鎖と反応するために使用される。例えば、ハロゲン化アシル、または活性化エステル(例えばN−ヒドロキシスクシンイミドエステル)は、アミン(例えばリジン上)またはヒドロキシル(例えばセリンもしくはトレオニン上)と反応する。イソシアネートは、アミンと反応する。エポキシドは、アミンまたはチオール(例えばシステイン)と反応する。マレイミドは、チオールと反応する。他の官能基は、1種または複数種のカップリング試薬(例えばカルボジイミド試薬)の存在下で、アミノ酸側鎖と反応し得る。例えば、アミンは、カルボン酸アミノ酸側鎖(例えば、グルタメートまたはアスパルテート上)と反応し得る。他の反応基は、当業者に容易に明らかとなる。
【0043】
上述のタンパク質修飾中、部位特異的な制御修飾を実現するために、遺伝子組換え技術を使用して、空間的に定義された場所に特定のアミノ酸を導入することができる。この技術により、修飾部位および密度を正確に制御することができる。
【0044】
タンパク質を誘導体化するために使用される具体的な化合物の例を、表1に示す。多くの他の例が利用可能であり、当業者に明らかである。
【0045】
【表1−3】
モノマー単位は、一般構造
【0046】
【化2】
を有し、重合性基は、ナノカプセルを形成するために使用される条件下で、タンパク質コアおよび任意選択の架橋剤とコポリマーを形成する化学部分である。重合性基は、前述した全ての重合性基を含む。タンパク質の重合性基、およびモノマー単位の重合性基は、ナノカプセルを形成するために使用される条件下でコポリマーを形成することができる限り、同じであっても異なっていてもよい。例えば、ビニルおよびアクリル基は、ラジカル重合条件下でコポリマーを形成し得る。
【0047】
側鎖は、重合に関与しないモノマー単位の一部である。一般に、側鎖は、任意の構造を有してもよく、ナノカプセルの所望の特性に基づき選択され得る。モノマー単位の側鎖は、ナノカプセルの表面特性に影響する。いくつかの実施形態において、側鎖は、中性、中性親水性(すなわち水溶性であるが荷電していない)、疎水性、正荷電または負荷電であってもよい。中性側鎖は、アミド、エステル、エーテル、ヒドロキシルを含み、そのいくつかは、その構造に依存して親水性または疎水性であってもよい。正荷電側鎖は、アミン(モノおよびジアルキルアミン等の置換アミン、ならびに四置換アンモニウム化合物、ならびにその環式変異型を含む)、グアニジン、ならびにピリジンおよびイミダゾール等の複素環を含む。負荷電側鎖は、カルボン酸を含む。疎水性側鎖は、アルキル基(直鎖、分岐鎖または環式アルキル基を含む)およびアリール基を含む。
【0048】
具体的なモノマー単位の例およびそれらの機能を表2に示す。
【0049】
【表2】
機能:1から5:親水性表面および保湿;2)温度応答性;3)負荷電表面;4)表面修飾のための反応性側鎖;5)正荷電表面;6)疎水性表面 。
【0050】
修飾タンパク質およびモノマー単位(複数種可)の重合には、タンパク質およびモノマー単位(複数種可)に対し使用され、重合中にタンパク質の機能を損なわない、重合性基に好適な任意の方法を使用することができる。重合方法の例には、前述したもの等の二重結合含有重合性基の光重合およびラジカル重合が含まれる。いくつかの実施形態において、重合は、ラジカル重合である。
【0051】
いくつかの実施形態において、重合は室温で行われるが、重合中にタンパク質の機能が失われない限り、温度は、重合方法に依存して、所望により上昇させても低下させてもよい。分解性架橋剤または連結基が使用される場合、ナノ粒子の機能は、ポリマーコーティングの分解後に測定され得る。重合反応があまりにもゆっくりと生じる場合、または重合を開始させるために高温が必要である場合には、反応温度を上昇させてもよい。重合反応があまりにも急速に生じる場合には、温度を低下させてもよい。
【0052】
いくつかの実施形態において、重合反応は、水中または水性緩衝液中で行われる。溶媒が重合反応に干渉しない、またはタンパク質を分解しない限り、所望により他の溶媒を使用してもよい。反応成分を溶解するために必要である場合には、溶媒混合物が反応に干渉しない、またはタンパク質コアに損傷を与えない限り、水または水性緩衝液と有機共溶媒との混合物を使用してもよい。いくつかの実施形態において、重合反応は、緩衝液中で行われる。
【0053】
いくつかの実施形態において、共重合ステップは、少なくとも2種の異なるモノマー単位を含む。一般に、異なるモノマー単位が全てナノカプセルを形成するために使用される条件下でコポリマーを形成することができる限り、任意の数の異なるモノマー単位を使用してタンパク質コアとのコポリマーを形成することができる。異なる側鎖を有するモノマー単位を使用して、ナノカプセルの表面特徴を改変することができる。表面特徴は、異なるモノマー単位間の比を調節することにより制御することができる。いくつかの実施形態において、モノマーは、中性、中性親水性、疎水性、正荷電または負荷電であってもよい。ナノカプセルの溶解度は、荷電モノマー単位と非荷電または親水性または疎水性モノマー単位との間の比を変更することにより調節することができる。
【0054】
いくつかの実施形態において、共重合ステップは、架橋剤をさらに含む。架橋剤は、連結基により分離された少なくとも2つの重合性基を有する試薬である。架橋剤は、3つ以上の重合性基を有してもよい。架橋剤上の全ての重合性基が、ナノカプセルを形成するために使用される条件下でモノマー単位(複数可)およびタンパク質コアとコポリマーを形成することができる限り、架橋剤上の重合性基は、同じであっても異なっていてもよい。2つの重合性基を有する架橋剤は、一般構造
【0055】
【化3】
を有し、重合性基は、前述のものと同じである。連結基は、重合反応に干渉しない限り、任意の構造を有し得る。好適な連結基の例には、アルキル基(置換アルキル基を含む)、アリール基(置換アリール基を含む)、ケトン、アミド、エステル、エーテルおよびそれらの組合せが含まれる。架橋剤の具体例には、N,N’−メチレンビスアクリルアミドおよびグリセロールジメタクリレート(図1を参照)が含まれる。
【0056】
いくつかの実施形態において、連結基は分解性である。分解性連結基は、ある特定の条件下で切断し得る。分解性連結基の構造は、連結基を切断させるために必要な条件の種類を決定付ける。例えば、連結基は、pHの変化(すなわち増加または減少)により、特定波長の光への暴露により、または熱に応答して切断し得る。分解性架橋剤の例は、グリセロールジメタクリレートである。
【0057】
いくつかの実施形態において、ナノカプセルを生成する方法は、ナノカプセルの表面を修飾するステップをさらに含む。モノマー単位(複数種可)の側鎖は、重合後、ナノカプセルの表面上に存在する。反応性側鎖(または保護された反応性側鎖)を有するモノマー単位を使用して、ナノカプセルを調製することができる。反応性側鎖は重合に干渉しないが、ナノカプセルが形成された後に(すなわち重合が完了した後に)さらに化学修飾され得る。標準的化学脱保護方法を使用して、保護された反応性側鎖を脱保護し、次いで化学修飾剤と反応させることができる。反応性側鎖は、表面修飾剤をナノカプセルの表面に共有結合させるために化学試薬で処理される。表面修飾は、小分子、ポリマー、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、多糖類、または抗体であってもよい。表面修飾は、ナノカプセルの溶解度を改変する(例えば、ポリエチレングリコールまたは他の親水性基を添加することにより)、ナノカプセルの表面電荷を変化させる(例えば、荷電表面修飾剤を添加することにより)、またはナノカプセルに発光、細胞標的化もしくは細胞透過等の追加的機能を付与することができる。小分子表面修飾の例には、フルオレセインもしくはローダミン等の発光性化合物、または葉酸等の細胞標的化化合物が含まれる。ポリマーは、溶解度を増加させるためのポリエチレングリコールを含む。ペプチドおよびポリペプチドを細胞標的化に使用してもよく、これには、特定の細胞表面特徴、細胞情報伝達ペプチド、またはホルモンに対し選択的な抗体が含まれ得る。他のペプチドを使用して、ナノ粒子の細胞透過を増加させることができる(例えばTATまたはアンテナペディアホメオドメイン)。いくつかの実施形態において、表面修飾は抗体である。ナノカプセルは誘導体化されやすい表面を有しているため、特定の抗体がナノカプセルと複合化して、標的化送達のさらなる能力を提供することができる。
【0058】
ナノカプセルのサイズおよび表面特徴は、ナノカプセルを形成するために使用される異なるモノマーおよび/または架橋剤の重量比を変更することにより調節することができる。例えば、DMAEMA(正荷電)対AAm(中性)の重量比を0:1から1:3、さらには1:1に変えると、それぞれ−12.8から8.64、さらには15.2mV(図6A)という調節可能なゼータ電位を有するBSAナノカプセルを合成することができる。モノマー単位および架橋剤の種類および比を変化させることにより、溶解度もまた容易に調節することができる。親水性または荷電モノマーの量を増加させると、水溶性が増加する。疎水性モノマーの量を増加させると、有機溶媒または混合有機/水溶媒系に対するナノカプセルの溶解度が増加する傾向がある。
【0059】
薄いポリマーコーティングの透過性は、ナノカプセルを調製するために使用される反応混合物中の架橋剤の比を変更することにより調節することができる。一般に、架橋剤の量が少ない程、より高い透過性が得られる。同様に、薄いポリマーコーティングの透過性は、架橋剤上の連結基の長さを変化させることにより変更することができる。一般に、連結基が長い程、透過性の増加がもたらされる。
【0060】
この単純な方法は、サイズ、表面特徴が良好に制御され、また任意のタンパク質コアを使用した、新規なタンパク質細胞内送達ベクターの調製への効果的な経路を提供する。
【0061】
使用
ナノカプセルは、内部に組み込まれたタンパク質に非常に類似した細胞内機能を果たす。多種多様なタンパク質を使用して、異なる機能を果たすナノカプセルを形成することができる。試験された例示的な生物活性タンパク質には、強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、ウシ血清アルブミン(BSA)、およびスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)が含まれる。
【0062】
本明細書に記載のナノカプセルは、生体外または生体内において、改善された安定性および/または長期間の効果をもって細胞にタンパク質またはタンパク質活性を送達するために使用され得る。ナノカプセルはプロテアーゼによる分解に対しより耐性を有するため、タンパク質活性は、ネイティブまたは保護されていないタンパク質が投与された場合よりも長い効果を有する。その結果、(保護されていないタンパク質と比較して)同じ効果を得るためにより少ないタンパク質(ナノカプセルの形態)が必要となり、それにより効率が向上する。
【0063】
本発明の実施形態は、有効濃度の上述のナノカプセルに細胞を暴露することによりタンパク質を送達する方法を含む。細胞は、培地内(すなわち生体外)にあってもよく、または生物内(すなわち生体内)に存在してもよい。本明細書において使用される場合、「タンパク質を送達する」とは、タンパク質はナノカプセルを形成するように修飾されているため、タンパク質の活性を細胞に送達することを意味する。しかしながら、ナノカプセルの活性は、ナノカプセルに使用されるネイティブタンパク質の活性と同じである。タンパク質基質がナノカプセルを透過しない場合、分解性ポリマーコーティングを使用して、ポリマーコーティングの低減または除去後に細胞にタンパク質を送達することができる。
【0064】
いくつかの実施形態において、タンパク質は、治療用タンパク質である。治療用タンパク質は、対象における疾患または障害を治療するために使用されるタンパク質または酵素である。いくつかの実施形態において、対象は、哺乳動物または人間である。
【0065】
本明細書に記載のナノカプセルは、対象における疾患または障害を治療するために使用され得る任意のタンパク質または酵素と併用することができる。例えば、本発明によるナノカプセルは、過剰増殖性障害、癌、または腫瘍の治療に使用され得る。他の実施形態において、ナノカプセルは、化粧品に使用され得る。
【0066】
医薬組成物
本明細書に記載のナノカプセルは、診断または治療上の処置方法における使用のための、様々な組成物に配合することができる。組成物(例えば医薬組成物)は、キットとして製造することができる。一般に、本発明の医薬組成物は、有効量(例えば医薬的有効量)の本発明の組成物を含む。
【0067】
本発明の組成物は、本発明の組成物および医薬的に許容されるキャリアを含む医薬組成物として配合することができる。「医薬的に許容されるキャリア」とは、生物学的またはその他の点で望ましくないわけではない材料を意味し、すなわち、材料は、いかなる望ましくない生物学的効果も引き起こさずに、またはそれが含有される医薬組成物の他の成分のいずれとも有害に相互作用することなく、対象に投与され得る。キャリアは、当然ながら、当業者には周知であるように、活性成分のいかなる分解も最小限化するように、また対象におけるいかなる有害な副作用も最小限化するように選択される。医薬的に許容されるキャリアおよび医薬組成物の他の成分に関する議論については、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Publishing Company、1990年を参照されたい。いくつかの好適な医薬的キャリアは、当業者に明らかであり、例えば、水(滅菌および/または脱イオン水を含む)、好適な緩衝液(例えばPBS)、生理食塩水、細胞培地(例えばDMEM)、人工脳脊髄液等を含む。
【0068】
本発明の医薬組成物またはキットは、本発明の組成物に加えて他の医薬品を含有し得る。他の薬剤(複数種可)は、患者の治療中任意の好適な時点で、同時または順番に投与することができる。
【0069】
具体的な配合は、使用される具体的な薬剤および選択された投与経路に一部依存することが、当業者には理解される。したがって、本発明の組成物の多種多様な好適な配合が存在する。
【0070】
目下の具体的用途に基づいて、好適または適切な配合を選択、適合または確立することができることが、当業者には理解される。本発明の組成物の用量は、単位投薬形態であってもよい。「単位投薬形態」という用語は、本明細書において使用される場合、動物(例えば人間)対象への単位用量として好適な、物理的に別個の単位を指し、各単位は、医薬的に許容される希釈剤、キャリアまたはビヒクルと関連して所望の効果を生成するのに十分な量として計算される、単独または他の治療薬剤と組み合わせた所定量の本発明の薬剤を含有する。
【0071】
当業者は、個々の患者において所望の有効量または有効濃度の薬剤を達成するために、使用されている組成物の正確な配合のための適切な用量、スケジュール、および投与方法を容易に決定することができる。
【0072】
本発明に関して、動物、具体的には人間に投与される本発明の組成物の用量は、妥当な期間にわたり個人において少なくとも検出可能な量の診断または治療応答を生じさせるのに十分である必要がある。所望の効果を達成するために使用される用量は、投与されている具体的薬剤の効力、ホストにおける薬剤に関連した薬力学、感染した個人の疾患状態の重症度、対象に投与されている他の医薬等を含む、様々な因子により決定される。用量のサイズはまた、使用される具体的薬剤またはその組成物に付随し得るいかなる有害な副作用の存在によっても決定付けられる。一般に、可能な時にはいつでも、有害な副作用を最小限に維持することが望ましい。生物学的に活性な材料の用量は変動し、具体的薬剤毎の好適な量は、当業者に明らかである。
【0073】
本発明の別の実施形態は、生体外または生体内において、本明細書に開示される方法のいずれかに有用なキットである。そのようなキットは、本発明の組成物の1種または複数種を備えることができる。任意選択で、キットは、方法を実行するための指示を備える。本発明のキットの任意の要素は、好適な緩衝液、医薬的に許容されるキャリア等、容器、または包装材料を含む。キットの試薬は容器内にあってもよく、その中で試薬は安定、例えば凍結乾燥形態または安定化された液体である。試薬は、単一使用形態、例えば単一投薬形態であってもよい。
【0074】
上記説明から、本明細書に記載の発明に変形および修正を行い、様々な使用および条件に適合させることができることが明らかである。そのような実施形態もまた、以下の特許請求の範囲内である。
【0075】
本明細書におけるいかなる変数の定義における要素のリストの列挙も、任意の単一の要素またはリストされた要素の組合せ(または部分的組合せ)としてのその変数の定義を含む。本明細書における実施形態の列挙は、任意の単一の実施形態、または任意の他の実施形態もしくはその一部との組合せとしてのその実施形態を含む。
【0076】
また、単一の時制でリストされた用語は、文脈上異なる意味が示されない限り、複数も含む。
【0077】
以下に開示される実施例は、本発明を例示するために提供されるが、その範囲を限定するものではない。本発明の他の変形例は、当業者に容易に明らかとなり、添付の特許請求の範囲に包含される。本明細書において引用される全ての出版物、データベースおよび特許は、あらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる。
【0078】
本発明の化合物を調製、特性決定および使用する方法を、以下の実施例において例示する。出発材料は、当技術分野において公知の手順に従い、または本明細書において例示されるように作製される。以下の実施例は、本発明がより完全に理解され得るように提供される。これらの実施例は単なる例示にすぎず、決して本発明を制限するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0079】
材料
全ての化学薬品は、別段に指定されない限りSigma−Aldrich社から購入し、そのまま使用した。N−(3−アミノプロピル)メタクリルアミド塩酸塩は、Polymer Science,Inc.から購入した。ウサギ抗EEA抗体およびウサギ抗Rab7抗体は、Cell Signaling Technology,Inc.から購入した。Alexa488ヤギ抗ウサギIgGおよびAPO−BrdUTM TUNELアポトーシスキットは、Invitrogen Life Technologies,Inc.から購入した。スルフヒドリル含有Cys(Npys)アンテナペディアペプチドは、AnaSpec,Inc.から購入した。2−ジメチルアミノエチルメタクリレートは、使用前にカラムクロマトグラフィーで精製し、その後−20℃で保存した。
【0080】
機器
ナノカプセルのIRスペクトルは、PerkinElmer Paragon 1000 FT−IR分光器で得られた。UV−可視スペクトルは、GeneSys 6分光器(Thermo Scientific社製)を使用して得られた。蛍光スペクトルは、QuantaMaster Spectrofluorimeter(Photon Technology International社製)を使用して得られた。ナノカプセルのTEM画像は、Philips EM 120 TEMで100000倍で得られた。観察前、1%のpH7.0リンタングステン酸(PTA)溶液を用いてナノカプセルを負染色した。ゼータ電位および粒径分布は、Malvern社製粒度測定器Nano−ZSを使用して測定した。ナノカプセルのSEM画像は、JEOL JSM−6700F SEMを使用して得られた。測定前に、シリコン表面上の乾燥試料を金でスパッタコーティングした。試料のAFM測定は、新しく開裂した雲母表面上で、空気中のタッピングモードで操作したNanoscope III(Digital Instruments社製、Santa Barbara、USA)を使用して行った。細胞の蛍光画像は、Zeiss Axio Observer.Z1蛍光顕微鏡またはLeica TCS SP MP Inverted Confocal Microscopeを使用して得られた。細胞蛍光強度分布は、Becton Dickinson FACScan Analytic Flow Cytometerを使用して決定された。励起光として488nmアルゴンレーザを使用した。質量スペクトルは、Applied Biosystem Voyager−DE−STR MALDI−TOF質量分析計を使用して得られた。
【0081】
EGFPおよびTAT−EGFPの調製
His標識化EGFPおよびTAT−EGFP融合タンパク質の配列は、以前に報告されたもの(Caronら、Mol. Ther.、第3巻、310〜318頁、2001年)に従い設計した。融合タンパク質は、形質転換Escherichia coliBL21中で発現させ、ニッケル樹脂親和性カラム(Sigma aldrich社製)を使用して精製した。EGFPおよびTAT−EGFPは、His標識ペプチドのさらなる処理を行わずに、以降の実験に直接使用した。EGFPの濃度は、489nmで53,000M−1cm−1の消光係数により決定した。
【0082】
アンテナペディアペプチドEGFP複合体の調製
EGFPを50mMのリン酸ナトリウム、0.15MのNaCl、pH7.2に2mg/mLの濃度で溶解した。DMSO中2mMの濃度のSigma−aldrich社製N−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)25μLを、EGFP溶液1mLに添加した。室温で30分間混合し反応させる。50mMのリン酸ナトリウム、0.15MのNaCl、10mMのEDTA、pH7.2を使用して、反応副生成物および未修飾EGFPから修飾EGFPをゲル濾過により精製する。AnaSpec,Inc.製スルフヒドリル含有Cys(Npys)アンテナペディアペプチド0.5mgを添加してアンテナペディアペプチドEGFP複合体を形成し、ゲル濾過により最終複合体を精製する。MALDI−MSは、約1:1のアンテナペディアペプチド対EGFPの比を示した。
【0083】
タンパク質濃度分析
ナノカプセルの形態のタンパク質の含有量を、ビシンコニン酸(BCA)比色タンパク質分析により決定した。簡潔には、25mMのBCA、3.2mMのCuSO4、および適切に希釈されたタンパク質/ナノカプセルを含有する酒石酸塩(tertrate)緩衝液(pH11.25)を、60℃で30分間インキュベートした。溶液を室温まで冷却した後、UV−Vis分光器で562nmでの吸光度値を測定した。標準として公知の濃度のBSA溶液を使用した。
【0084】
アポトーシス分析
市販のAPO−BrdU Terminal Deoxynucleotidyl Transferase dUTP Nick End Labeling(TUNEL)分析キットを使用して、単離されたHeLa細胞においてアポトーシスを検出した。簡潔には、細胞を6ウェルプレート上に1ウェル当たり100,000細胞の密度で播種し、10%ウシ成長血清(BGS)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)2mL中で培養した。次いでプレートを、5%CO2中、37℃で12時間インキュベートし、タンパク質/ナノカプセルの添加前に70〜80%の集密度に到達させた。24時間のインキュベーション後、細胞をまずリン酸緩衝生理食塩水中1%のパラホルムアルデヒド、pH7.4で固定し、続いて氷上の70%エタノールで処理した。次いで細胞に、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼおよびブロモデオキシウリジン(BrdUrd)を含有するDNA標識化溶液を加えた。次いで細胞をAlexa Fluor(登録商標)488染料標識化抗BrdUrd抗体で染色した。最後に、RNase Aを含有するヨウ化プロピジウム(PI)溶液で細胞を染色し、蛍光顕微鏡(Zeiss社製、Observer Z1)下で、Alexa Fluor 488およびPI用の適切なフィルタを使用して可視化した。
【0085】
実施例1 − ナノカプセル合成
分解性または非分解性架橋剤によるEGFPナノカプセル
図1に示すように、重合性ビニル基は、タンパク質(I)に共有結合している。モノマー(1、2)および架橋剤(3または4)を含有する水溶液中での後続の重合により、各タンパク質コアは薄いポリマーシェルに被覆される。このスキームによって、非分解性(3)または分解性(4)架橋剤を使用することでそれぞれ非分解性(II)または分解性(III)外皮を有するタンパク質ナノカプセルを合成することができる。以降、非分解性および分解性ナノカプセルは、それぞれnタンパク質およびde−nタンパク質と示されるが、接頭辞「n」は「ナノカプセル」を示す。カチオン性(2)または中性(1)モノマー等のモノマーの適切な選択により、表面電荷の正確な制御が可能となる。タンパク質コアは、広範なタンパク質ライブラリから選択することができる。
【0086】
タンパク質修飾
pH8.5、50mM炭酸ナトリウム緩衝液3.8ml中10mgの量のEGFPを、ジメチルスルホキシド(DMSO)40ml中N−アクリルオキシスクシンイミド4mgと、室温で2時間反応させた。最後に、pH7.0、20mMリン酸緩衝液に対して反応溶液を十分に透析した。
【0087】
修飾度は、マトリックス支援レーザ脱離/イオン化飛行時間(MALDITOF)質量スペクトルを用いて測定したが、これはタンパク質1分子当たりビニル基が5個から20個の間であった(図2、表3)。
【0088】
【表3】
*カスパーゼ−3は二量体であり、分子量は質量値を2倍することにより計算した。
【0089】
ナノカプセル重合
1mg ml−1のアクリロイル化EGFP溶液5mlを使用して、アクリロイル化タンパク質表面からのラジカル重合を、脱酸素および脱イオン水30ml中に溶解した過硫酸アンモニウム2mg、およびN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン4mlを試験管に加えることにより開始させた。脱酸素および脱イオン水0.5ml中に溶解した特定量の2−ジメチルアミノエチルメタクリレート、アクリルアミドおよびN,N’−メチレンビスアクリルアミド(非分解性架橋剤)またはグリセロールジメタクリレート(分解性架橋剤)(モル比=5:5:1)を、60分かけて試験管に加えた。窒素雰囲気下でさらに60分間反応を進行させた。最後に、透析を使用してモノマーおよび開始剤を除去した。合成直後のEGFPナノカプセルは、ネイティブEGFPのナノカプセルと同様の蛍光スペクトルを示している(図3)。タンパク質ナノカプセルの収率は、95%を超えていた。未修飾EGFPは、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して除去した。
【0090】
HRPナノカプセル
HRPナノカプセルを合成するために、アクリロイル化および重合中の安定剤として4−ジメチルアミノアンチピリン(HRPに対し1:10の重量比)を反応混合物中に添加した。同様のアクリロイル化、重合、および精製プロセスを行って、HRPナノカプセルを合成した。
【0091】
SOD、CAS、BSA、HRPナノカプセル
SOD、CAS、HRP、NIR−667標識化BSAおよびローダミン−B標識化HRPナノカプセルを、EGFPナノカプセルの方法と類似の方法を使用して合成した。NIR−667標識化BSAおよびローダミン−B標識化HRPは、複合化技術を使用してタンパク質を修飾することにより合成した。CASは、EGFPの方法と類似の方法を使用して発現および精製し、使用したプラスミド、pHC332は、A.Clay Clark博士(ノースカロライナ州立大学)からの寛大なる寄贈品であった。ウシ赤血球からのCu、Zn−SODおよびホースラディッシュペルオキシダーゼ(Sigma−Aldrich社製)は、20mMのpH7.0リン酸緩衝液に対する透析後に使用した。
【0092】
Auナノ粒子標識化ナノカプセル
pH7.5の緩衝液中で1時間、Auナノ粒子(Nanoprobe社(NY)製モノ−スルホ−N−ヒドロキシ−スクシンイミドナノゴールド)をネイティブHRPと5:1のモル比で反応させた。ゲル濾過(Superdex−75)を使用して、過剰のナノゴールドを除去した。ナノゴールドおよびタンパク質のモル濃度は、420nmでのナノゴールドの155,000M−1cm−1のモル消光係数に基づき、UV/visスペクトルから計算した。得られたAu標識化ナノカプセルは、0.94の金/HRP比を含む。次いで、標識化HRPを使用し、同様のプロトコルを用いてナノカプセルを合成した。TEMでのより良好な画像化のために、銀増感技術を使用した。簡潔には、Au標識化ナノカプセルをTEMグリッド上に滴下し、脱イオン水で濯いだ。次いで新たに調製したAg含有現像液上にグリッドを1〜2分浮遊させ、水で濯ぎ、pH7.0の1%リンタングステン酸ナトリウムを使用して染色した。このプロセスにより、直径3〜4nmの均一なナノ粒子が形成された。
【0093】
ナノカプセルの特性決定
図4Aおよび4Bは、約15nmの均一な直径を示すHRPナノカプセルの代表的なTEMおよびAFM画像である。動的光散乱(DLS)は、HRPナノカプセルが16.8nmに狭い粒度分布を示すことを示唆していた(図5)。DLSによってより大きな直径が測定されたのは、水溶液中での水和層に起因し得る。HRP分子の流体力学半径は約5nmであるため、平均シェル厚は約5nmから8nmである。単一の1.4nm金ナノ粒子により各HRP酵素を標識化することにより、ほとんどのナノカプセルは、単一の金粒子のみを含有することが観察され(図4C)、これは単一タンパク質コアシェル構造をさらに裏付けている。さらに、DMAEMA(正荷電)対AAm(中性)の重量比を0:1から1:3、さらには1:1に変えると、それぞれ−12.8から8.64、さらには15.2mVという調節可能なゼータ電位を有するBSAナノカプセルを合成することができる(図6)。この単純な方法は、サイズ、表面電荷およびタンパク質コアが良好に制御された、新規なタンパク質細胞内送達ベクターの調製への効果的な経路を提供する。
【0094】
実施例2 − ナノカプセルタンパク質活性
ネイティブHRP(左)およびHRPナノカプセル(右)の相対触媒活性を決定した。ネイティブHRPおよびHRPナノカプセルの活性試験は、既存の(exiting)プロトコル(Davisら、J. Biol. Chem.、第256巻、5992〜5996頁、1981年)に従った。簡潔には、試験中、pH5.5、100mMのクエン酸リン酸塩0.9ml、0.02MのH2O2 0.05ml、および0.2μg/mLのHRPまたはHRPナノカプセル10μLを、試験管内に入れた。0.02MのTMBを含有するDMSO 0.05mlを添加することにより反応を開始させ、655nmで監視した。TMBの酸化速度は、TMBの酸化生成物のモル吸収係数(39,000M−1cm−1)を使用し、吸着曲線の初期線形部分の傾きから導出した。
【0095】
実施例3 − プロテアーゼに対する安定性
EGFPおよびEGFPナノカプセルを、PBS緩衝液中、1mg/mLのトリプシンおよびα−キモトリプシンの両方と50℃でインキュベートした。EGFPおよびEGFPナノカプセルの蛍光強度を、489nmの励起波長で、異なる時間間隔で測定した。
【0096】
生理環境内に広く存在するプロテアーゼに起因した低いタンパク質安定性は、治療用タンパク質の応用におけるもう1つの課題である。トリペプチドSer65−Tyr66−Gly67の翻訳後の環化により形成されるEGFP分子内のフルオロフォアは、周囲微小環境に対し極めて敏感である(Tsien, R. Y.、Annu. Rev. Biochem.、第67巻、509〜544頁、1998年)。外部β−バレル構造の保護なしでは、フルオロフォアは容易に破壊され消光し得る(Ormoら、Science、第273巻、1392〜1395頁、1996年)。ポリマーシェルの存在は、タンパク質コアをタンパク質分解から保護する。図8Aは、50℃で3時間の1mg/mLプロテアーゼ(トリプシンおよびα−キモトリプシン)に対する暴露後のネイティブEGFPおよびEGFPナノカプセルの蛍光強度を比較したものである。ネイティブEGFPは、その元の蛍光強度の60%しか維持せず、一方ナノカプセルはその90%超を維持した。
【0097】
ナノカプセルの安定性をさらに確認するために、ナノカプセル導入後の細胞蛍光強度を監視した。図8Bは、導入後0時間、48時間および144時間でのHeLa細胞の蛍光強度分布を示す。必然的に、細胞の繁殖の結果、HeLa細胞の蛍光強度は経時的に減少する。それにもかかわらず、EGFPナノカプセルが導入された細胞の蛍光強度は、144時間後でさえも対照(ネイティブEGFP)より著しく高い。常に、他のタンパク質と同様に、TAT−EGFPは送達効率が良好な手法と考えられているものの、プロテアーゼ攻撃を受ける。TAT−EGFPとのインキュベーションの48時間後における91%の細胞蛍光強度の損失と比較して、EGFPナノカプセルにおいては、42%のみの低下が観察された(図8D)。
【0098】
実施例4 − 細胞内在化
細胞内在化試験は、蛍光顕微鏡技術および蛍光活性化細胞分類(FACS)により評価した。10%ウシ成長血清(BGS)および1%ペニシリン/ストレプトマイシンを添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で、HeLa細胞を培養した。細胞(20000細胞/ウェル、24ウェルプレート)を、ナノカプセルを添加する前日に播種した。異なる濃度のナノカプセルまたはネイティブタンパク質を、細胞培地中に添加した。37℃で2時間から4時間のインキュベーション後、細胞をPBSで3回洗浄し、蛍光顕微鏡で可視化するか、またはトリプシン処理し、遠心分離し、PBS中に再懸濁し、FACSで分析した。製造者のマニュアルに従い、エンドソーム/リソソーム染色を行った。簡潔には、ローダミン標識化HRPナノカプセルとのインキュベーション後、細胞を簡単に洗浄し、2%ホルムアルデヒドで固定し、PBS/1%Tritonを浸透させ、5%BSAでブロックし、ウサギ抗EEA抗体(初期エンドソームに対して)またはウサギ抗Rab7抗体(リソソームに対して)で一晩処理した。細胞をAlexa488ヤギ抗ウサギIgGで染色し、次いで共焦点顕微鏡で観察した。
【0099】
EGFPナノカプセルをモデルとして使用して、細胞導入を試験した。図9は、400nMのEGFPナノカプセルまたは未修飾EGFPとの2時間の共培養後のHeLa細胞の蛍光顕微鏡画像を示す。未修飾EGFPと比較して、ナノカプセルは、HeLa細胞によってより効果的に内在化される。インキュベーション時間を2時間から4時間または8時間に延長すると、それぞれ448から559または619に蛍光強度が若干増加したが、取り込みは2時間以内でほとんど終了したことを示している(図11)。細胞蛍光強度は、より高いナノカプセル濃度で増加した(図12A)。比較として、TAT−EGFP融合タンパク質(TATはHIVウイルスから得られる細胞透過性ペプチドである)と2時間インキュベートされた細胞は、ナノカプセル処理細胞の蛍光強度よりも1/100低い蛍光強度を示した(図12A)。さらに、細胞取り込み効率に対するナノカプセルの表面電荷の効果もまた調査した。13.3mVのゼータ電位を有する400nMナノカプセルとインキュベートしたHeLa細胞は、398の平均蛍光強度を有することが判明したが、これは6.7mVのナノカプセルで得られた平均蛍光強度よりも3.2倍高い(図12C)。
【0100】
nEGFPを有する細胞は、ネイティブEGFPを有する細胞よりも著しく高い蛍光強度を示す(図12A)。CPP支援送達と比較して、この戦略は有利である。同じタンパク質濃度では、ナノカプセルとインキュベートされた細胞は、TAT−EGFP融合タンパク質(図12A)またはアンテナペディア−EGFP複合体(図12B;TATおよびアンテナペディアは、それぞれHIV−Tatタンパク質およびアンテナペディアホメオドメインから得られるCPPである)とインキュベートされた細胞よりも、2桁から3桁高い蛍光強度を示す。ナノカプセルの取り込みは、時間(図13)、濃度(図12A)およびゼータ電位(図12C)とともに増加するが、ナノカプセルサイズ(7.5〜15.7nmの範囲、図14)による大きな影響は観察されないことが判明した。
【0101】
エンドサイトーシス阻害
ナノカプセルの取り込み経路は、エンドサイトーシスプロセスが関与し得る。HeLa細胞をEGFPナノカプセルと4℃で3時間インキュベートすると、37℃でインキュベートした場合よりもはるかに低い細胞取り込みを示した(図9)。この観察は、細胞取り込みが、主に、活性化された経路、すなわち、ほとんどのカチオン性CPPおよびポリマーで観察されるエンドサイトーシスプロセス(Brooksら、Adv. Drug Deliv. Rev.、第57巻、559〜577頁、2005年;Poonら、Biochem. Soc. Trans.、第35巻、778〜793頁、2007年;Futamiら、J. Biosci. Bioeng.、第99巻、95〜103頁、2005年;Fischerら、J. Bio. Chem.、第279巻、12625〜12635頁、2004年)と一致するエンドサイトーシスによるものであったことを裏付けている。
【0102】
HeLa細胞(20000細胞/ウェル、24ウェルプレート)を、ナノカプセルを添加する前日に播種した。次いで、実験の前に、培地を、2mMのアミロリド(マクロピノサイトーシスの阻害剤)、20μg/mLのクロルプロマジン(chloroproamzine)(CPZ、クラスリン媒介エンドサイトーシスの阻害剤)、または5mMのβ−シクロデキストリン(β−CD、カベオラ媒介エンドサイトーシスの阻害剤)を含む0.5mlの新鮮培地と交換した。30分後、50nMのEGFPナノカプセルを細胞培地に添加し、37℃で2時間インキュベートした。PBSで洗浄した後、細胞をトリプシン処理し、遠心分離し、PBS中に再懸濁し、FACSで分析した。エンドサイトーシス阻害剤を含まない培地中でインキュベートしたHeLa細胞を対照として使用した。適用した3種のエンドサイトーシス阻害剤(図15)のうち、β−シクロデキストリン(β−CD)のみが、ナノカプセル取り込みを効果的に阻害したが、これはカベオラ媒介エンドサイトーシス経路を示唆している。
【0103】
クロロキン処理
事前にEGFPナノカプセルとインキュベートしたHeLa細胞の拡大蛍光画像(図16)では、ナノカプセルの不均質な分布が明らかである。
【0104】
HeLa細胞(20000細胞/ウェル、24ウェルプレート)を、ナノカプセルを添加する前日に播種した。実験の前に、培地を100μMクロロキンを含む新鮮培地0.5mlと交換し、細胞を0.2μMのEGFPナノカプセルと3時間インキュベートした。PBSでの洗浄後、細胞を蛍光顕微鏡で観察した。クロロキンを含まない培地中でインキュベートしたHeLa細胞を対照として使用した。
【0105】
リソソーム指向性薬剤であるクロロキン(Fischerら、J. Bio. Chem.、第279巻、12625〜12635頁、2004年;Ciftciら、Int. J. Pharm.、第218巻、81〜92頁、2001年)をインキュベーション中に培地に導入し、エンドソームを破壊した。その結果、小胞内に捕捉されるナノカプセルの数が減少し、細胞内においてナノカプセルの均一な分散が得られた(図16)。それにもかかわらず、クロロキンの使用前、サイトゾル内の高濃度のナノカプセルが観察された(図17の赤矢印)が、これは、恐らくは「プロトンスポンジ」効果(Akincら、J. Gene Med.、第7巻、657〜663頁、2004年)によるエンドソームからのナノカプセルの部分的な放出を示唆している。
【0106】
TEM試験
ナノゴールド標識化ナノカプセルを導入したHeLa細胞を、1%グルタルアルデヒドで4℃で1時間固定し、2%四酸化オスミウムで1時間処理し、段階的な一連のエタノール洗浄で脱水した。次いで処理後の細胞をEpon812(Electron Microscopy Sciences社製、Fort Washington、PA)に包埋した。極薄い(約80nm)断面を2%酢酸ウラニルで染色し、TEMで検査した。
【0107】
一貫して、事前に金標識化ナノカプセルとインキュベートしたHeLa細胞のTEM画像は、エンドソームの輪郭と類似した輪郭を有する凝集金粒子を示している(図17、緑矢印)が、これは、エンドソーム内へのナノカプセルの捕捉を示唆している。
【0108】
複数タンパク質内在化
この方法は、低い毒性での複数タンパク質送達に一般化することができる。図18Aは、EGFP(緑)、ローダミン−B標識化HRP(赤)およびAlexaFluoro−664標識化BSA(青)のナノカプセルを同時に内在化したHeLa細胞の蛍光画像を示す。同時導入後の共局在化の定量化を、図18Bに示す。そのような複数タンパク質送達は、2つ以上のタンパク質が相乗的または並行して作用する治療に非常に有望である(Yamauchiら、Japan. J. Cancer Res.、第83巻、540〜545頁、1992年;Kaliberovら、Cancer Gene Ther.、第13巻、203〜214頁、2006年)。
【0109】
実施例5 − 生体外活性
細胞生存能力
ネイティブタンパク質を対照として使用して、ナノカプセルの毒性をMTT分析により評価した。ナノカプセルへの暴露の前日に、96ウェルプレート上にHeLa細胞(7000細胞/ウェル)を播種した。異なる濃度のナノカプセルを細胞と2〜4時間インキュベートし、混合物から除去し、新鮮培地で24時間インキュベートした。MTT溶液(20μL)を各ウェルに添加し、3時間インキュベートした。次いで培地を除去し、DMSO100μLをセル上に添加した。プレートを振動台の上に設置し、150rpmで5分間溶液を完全に混合し、次いで560nmで吸光度値を測定した。未処理の細胞を、100%細胞増殖対照として使用した。
【0110】
図19は、異なる濃度のEGFPナノカプセルおよびネイティブEGFPへの暴露後の、HeLa細胞の生存能力を比較したものである。EGFPナノカプセルおよびネイティブEGFPは両方とも、試験された各濃度において同様の細胞毒性を示す(図19)。17.24μMのEGFPナノカプセルへの暴露においても、細胞生存能力の低下はわずか15%であった。
【0111】
癌細胞成長阻害
96ウェルプレートに設置したHeLa細胞(2000細胞/ウェル)を、HRPナノカプセルまたはネイティブHRPと4時間インキュベートし、次いで異なる濃度のインドール−3−酢酸(IAA)に12時間暴露した。MTTを使用して評価したHeLa細胞生存能力曲線から、最大半量阻害濃度(IC50)を決定した。
【0112】
高い送達効率、低い毒性、および長期安定性の他に、タンパク質送達システムは、送達される医薬用タンパク質が内在化後に完全な生体触媒活性によりその生物活性を保持し得ない限り、効果的とはなり得ない。酵素ナノカプセルの送達が活性細胞内酵素をもたらすか否かを決定するために、HRPおよびSODナノカプセルの送達を調査した。最近、潜在的なプロドラッグ癌治療として、インドール−3−酢酸(IAA)およびHRPの組合せが提案されている(Folkesら、Biochem. Pharmacol.、第61巻、129〜136頁、2001年)。IAAは、人間において良好な耐容性を示す植物ホルモンであり、HRPによりフリーラジカル中間体に特異的に転換されて、哺乳動物細胞内でアポトーシスを誘導することができる(de Meloら、Toxicol. Lett.、第148巻、103〜111頁、2004年)。HRPナノカプセルが合成され、ネイティブHRP活性の92%を保持することが示された(図7)。HRPナノカプセルが細胞内在化後にその活性を保持するか否かを決定するために、HeLa細胞をHRPおよびHRPナノカプセルとインキュベートし、発色基質である1mMのTMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)および1μMのH2O2に暴露した(図20)。ナノカプセル導入細胞は、ナノカプセル濃度の増加とともに増強する緑色を示すが、これは細胞内で活性なナノカプセルの送達が成功したことを裏付けている。HRPナノカプセルの細胞内活性をさらに決定するために、HeLa細胞をHRPまたはHRPナノカプセルと4時間インキュベートした。洗浄後、IAAを培地内に添加した。IAA濃度の増加とともに、HRPナノカプセルで前処理した細胞は、細胞生存能力の劇的な低下を示したが、ネイティブHRPで前処理した細胞は、対照細胞と同様の挙動を示し(図21A)、これは酵素が細胞内で生体触媒活性を示したことを実証している。
【0113】
細胞内酵素ナノカプセル活性をさらに確認するために、細胞内スーパーオキシド生成化合物であるパラコートで処理した細胞内にSODナノカプセルを送達した。好気性細胞内で酸素代謝中に形成される副生成物であるスーパーオキシドイオンは、広範な人間の疾患、例えば炎症、糖尿病、発癌、虚血/再かん流傷害および神経変性疾患等の発生および進行に関与する(Fridovichら、Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol.、第23巻、239〜257頁、1983年;Finkelら、Nature、第408巻、239〜244頁、2000年;Amesら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第90巻、7915〜7922頁、1993年)。SODはスーパーオキシドアニオンを効果的に不均化することができ、フリーラジカルの無害化において重要な役割を果たし、細胞を酸化的損傷から保護する(McCord, J. M.、Method in Enzymol.、第349巻、331〜341頁、2002年)。したがって、細胞内SODの活性は、細胞生存能力に直接的に関連し得る。図21Bは、SODナノカプセルとの2時間のインキュベーションに続く、5mMパラコートへの12時間の暴露後の相対細胞生存能力を示す。SODナノカプセルは、低いナノカプセル濃度で、細胞の酸化的損傷を効果的に妨げた。しかしながら、ナノカプセル濃度を増加させると、細胞生存率が低下した。この曲線は、多くの異なる心筋虚血−再かん流モデルにおいて観察される用量反応曲線と一致し、これは高SOD濃度におけるヒドロキシル基生成量の増加に起因し得る(Fridovich, I.、Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol.、第23巻、239〜57頁、1983年)。それにもかかわらず、この研究は、様々な治療薬または老化防止薬への機能性ナノカプセルの使用の可能性をさらに証明している。
【0114】
実施例5 − インビボ生体内分布
全ての動物実験は、Los Angeles Chancellor’s Animal Research Committee(ARC)のカリフォルニア大学により確立されたGuidelines for the Care and Use of Research Animalsに従って行った。6〜8週齢のヌードマウスに、ナノカプセル生理食塩水溶液または生理食塩水溶液(対照)100uLを注射した。24時間および48時間後、マウスを致死させ、生体外画像化のために全ての主要な臓器を取り出した。次いで、ナノカプセルを含有する凍結臓器を寒剤および低温保持装置内のミクロトームに埋設した。HRPナノカプセルを含有する組織切片をジヒドロエチジウム(Invitrogen社製)で染色し、共焦点顕微鏡を使用して観察した。
【0115】
ナノカプセルの生体内送達は、ヌードマウスに0.2mgのEGFPナノカプセルまたは対照EGFPを腹腔内注射することにより行った。8時間後、様々な臓器切片の蛍光共焦点顕微鏡分析により、ナノカプセル注射マウスからの全ての検査組織において強い信号が明らかとなったが、一方対照EGFP注射マウスにおける信号はバックグラウンドレベルのままであった(図22)。蛍光強度は経時的に減少するが、注射から50時間後であってもまだ高いままである。そのような極めて安定なナノカプセルは、幹細胞画像化および腫瘍追跡等、長期安定性を必要とする生体内細胞画像化マーカーとして使用することができる。さらに、注射されたナノカプセルは、組織内でもまだ活性なままであった。例えば、HRPナノカプセルまたはネイティブHRPの注射から8時間後、マウスを致死させ、切開し、ジヒドロエチジウム(HRPの蛍光性基質)を用いてHRP活性に関して組織を検査した。蛍光共焦点顕微鏡画像から、生成物エチジウムからの赤色蛍光が明確に観察され、ナノカプセルが生体内で活性であることを示した。
【0116】
実施例6 − 分解性架橋剤含有ナノカプセル
安定性およびpH誘導分解
非分解性ナノカプセルプラットフォームを使用して、小分子基質のタンパク質が長期安定性および高活性をもって効果的に送達され得ることが実証された。しかしながら、巨大分子基質の場合、ポリマー外皮がコアタンパク質へのそのアクセスを阻害し得る。血清および後期エンドソームは、それぞれ約7.4および約5.5のpH値を有することが周知である。したがって、この障害を克服するため、酸分解性ナノカプセルが開発された。de−nCASおよびnCASを例として使用して、pH5.5(図23A)および7.4(図23B)でのサイズ発達を試験した。nCASは両方のpH値で安定であるが、de−nCASはpH7.4でのみ安定である。pH5.5では、de−nCASの平均直径は、3時間以内に、20nmからネイティブCASの平均直径(約6nm)と同様のサイズである6nmに急速に減少する。重要なことに、分解性ナノカプセルは、pH7.4ではトリプシンおよびα−キモトリプシン(a−chymotrypsin)に対し安定であり(図24)、これにより、分解性ナノカプセルは循環系において安定性を維持し得、内部エンドソームがそのタンパク質カーゴを細胞内で放出する際に分解され得る。
【0117】
細胞内分解をさらに定量化するために、de−nEGFPおよびnEGFPをHeLa細胞に送達した。24時間後、de−nEGFPを含有する細胞の細胞蛍光強度は、nEGFPを含有する細胞よりも大幅に低く(図25)、これは分解性ナノカプセルが酸性細胞内環境に応じてそのシェルを剥離され得ることを裏付けている。
【0118】
アポトーシス誘導
脱保護プロセスは、必然的にカーゴタンパク質をプロテアーゼ攻撃に暴露するが、カーゴタンパク質と大きな基質との相互作用を可能にする。例えば、アポトーシス、壊死および炎症において重要な役割を果たすシステインプロテアーゼファミリーの一員であるCASは、細胞内の他のタンパク質基質を切断させてアポトーシスを誘発する(Nicholsonら、Nature、第376巻、37〜43頁、1995年;Porterら、Cell Death Differ.、第6巻、99〜104頁、1999年;Oliverら、Drug Resist. Updates、第8巻、163〜170頁、2005年)。図26に示すように、HeLa細胞のネイティブCAS、nCAS、de−nBSAまたはnBSAとのインキュベーションにより、de−nCASを含む細胞よりも著しく高い同様の生存能力が示された。末端dUTPニックエンド標識化(TUNEL)分析(図27)は、de−nCASにより誘発されたアポトーシスを裏付けている。
【0119】
結論
蛍光、発光および治療用タンパク質の細胞内の使用は、癌およびタンパク質欠乏性疾患の診断および治療において非常に重要である。2007年、治療用タンパク質市場は、約19%成長して480億ドルとなり、2010年までに900億ドルを超える売上を達成すると予測されている。しかしながら、将来の成長は、薬物送達の課題およびコスト問題を含む多くの障害を克服する産業に大きく依存する。高血圧用のアンジオテンシン変換酵素、貧血用のエリスロポエチン、肝炎用のインターフェロン、ゴーシェ病用のグルコセレブロシダーゼ、および酵素プロドラッグ化学療法用のアスパラギナーゼ等の治療用タンパク質は、特異的および効果的な治療薬剤として認識されている。緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質および有機蛍光分子標識化タンパク質等の蛍光および生物発光タンパク質、蛍または甲虫からのルシフェラーゼならびにホースラディッシュペルオキシダーゼは、腫瘍および血管画像化に広く使用されている。これらの単一タンパク質ポリマーナノカプセルは、生体外および生体内の両方において、天然タンパク質の直接的使用よりも細胞内送達における高い効率、活性および安定性を示す。
【0120】
タンパク質画像化および治療は、癌およびタンパク質機能不全疾患を診断および治療するための、最も直接的で安全な手法を提供する。しかしながら、タンパク質画像化および治療の広範な使用は、細胞内送達の効率が低いことやプロテアーゼに対するタンパク質の安定性が低いこと等の、いくつかの根本的な技術的障壁によってなお制限されている。これらの単一タンパク質ポリマーナノカプセルは、生体外および生体内の両方での細胞内送達における高い効率、活性および安定性のための、治療、画像化、およびその他の用途への極めて有望な経路を提示する。単一タンパク質ポリマーナノカプセルは、天然タンパク質に基づくものと比べて、癌についてのタンパク質に基づく画像化におけるより良好なコントラストおよび正確性、ならびにより長い半減期、より高い活性およびタンパク質療法のより低い用量を提供する。
【0121】
本発明のある特定の具体的実施形態を参照しながら本発明を説明および例示したが、本発明の精神および範囲から逸脱せずに、手順およびプロトコルの様々な適合、変更、修正、置換、削除、または追加を行うことができることが、当業者に理解される。したがって、本発明は以下の特許請求の範囲により定義されること、およびそのような特許請求の範囲は妥当な限り広義に解釈されることが意図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一タンパク質コアと、前記タンパク質コアに共有結合によって固定された薄いポリマーシェルとを含むタンパク質ナノカプセル。
【請求項2】
前記単一タンパク質コアが、複数の重合性基を有するタンパク質を含む、請求項1に記載のナノカプセル。
【請求項3】
前記重合性基が二重結合である、請求項2に記載のナノカプセル。
【請求項4】
前記重合性基が、ビニル、アクリル、アルキルアクリル、およびメタクリルから選択される、請求項2に記載のナノカプセル。
【請求項5】
少なくとも1種のモノマー単位と共重合された単一タンパク質コアを含む、請求項1に記載のナノカプセル。
【請求項6】
少なくとも2種の異なるモノマー単位と共重合された単一タンパク質コアを含む、請求項5に記載のナノカプセル。
【請求項7】
少なくとも1種のモノマー単位が、pH=7.0で正電荷または負電荷を有する、請求項5から6のいずれか一項に記載のナノカプセル。
【請求項8】
少なくとも1種のモノマー単位および少なくとも1種の架橋剤で共重合された単一タンパク質コアを含む、請求項5から7のいずれか一項に記載のナノカプセル。
【請求項9】
前記架橋剤が分解性架橋剤である、請求項8に記載のナノカプセル。
【請求項10】
表面修飾剤をさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のナノカプセル。
【請求項11】
前記表面修飾剤が、発光分子、細胞標的化部分、ペプチド、タンパク質、抗体またはオリゴ糖からなる群より選択される、請求項10に記載のナノカプセル。
【請求項12】
前記表面修飾剤が、造影剤、細胞標的化促進剤、または細胞透過促進剤として機能する、請求項10から11のいずれか一項に記載のナノカプセル。
【請求項13】
前記表面修飾剤が抗体である、請求項10から12のいずれか一項に記載のナノカプセル。
【請求項14】
前記単一タンパク質コアがタンパク質触媒である、請求項1から13のいずれか一項に記載のナノカプセル。
【請求項15】
前記単一タンパク質コアの触媒活性を有する、請求項14に記載のナノカプセル。
【請求項16】
少なくとも1つの重合性基を有するタンパク質を誘導体化するステップと、
前記誘導体化されたタンパク質をモノマー単位と共重合させるステップと
を含む、ナノカプセルを生成する方法。
【請求項17】
前記重合性基が二重結合含有基である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記重合性基が、ビニル、アクリル、アルキルアクリル、およびメタクリルから選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記共重合させるステップが、少なくとも2種の異なるモノマー単位を含む、請求項16から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1種のモノマー単位が、pH=7.4で正電荷または負電荷を有する、請求項16から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記共重合させるステップが架橋剤をさらに含む、請求項16から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記架橋剤が分解性架橋剤である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ナノカプセルの表面を修飾するステップをさらに含む、請求項16から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
有効濃度の請求項1から15のいずれか一項に記載のナノカプセルに細胞を暴露するステップを含む、タンパク質を送達する方法。
【請求項25】
前記タンパク質が治療用タンパク質である、請求項24に記載の方法。
【請求項1】
単一タンパク質コアと、前記タンパク質コアに共有結合によって固定された薄いポリマーシェルとを含むタンパク質ナノカプセル。
【請求項2】
前記単一タンパク質コアが、複数の重合性基を有するタンパク質を含む、請求項1に記載のナノカプセル。
【請求項3】
前記重合性基が二重結合である、請求項2に記載のナノカプセル。
【請求項4】
前記重合性基が、ビニル、アクリル、アルキルアクリル、およびメタクリルから選択される、請求項2に記載のナノカプセル。
【請求項5】
少なくとも1種のモノマー単位と共重合された単一タンパク質コアを含む、請求項1に記載のナノカプセル。
【請求項6】
少なくとも2種の異なるモノマー単位と共重合された単一タンパク質コアを含む、請求項5に記載のナノカプセル。
【請求項7】
少なくとも1種のモノマー単位が、pH=7.0で正電荷または負電荷を有する、請求項5から6のいずれか一項に記載のナノカプセル。
【請求項8】
少なくとも1種のモノマー単位および少なくとも1種の架橋剤で共重合された単一タンパク質コアを含む、請求項5から7のいずれか一項に記載のナノカプセル。
【請求項9】
前記架橋剤が分解性架橋剤である、請求項8に記載のナノカプセル。
【請求項10】
表面修飾剤をさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のナノカプセル。
【請求項11】
前記表面修飾剤が、発光分子、細胞標的化部分、ペプチド、タンパク質、抗体またはオリゴ糖からなる群より選択される、請求項10に記載のナノカプセル。
【請求項12】
前記表面修飾剤が、造影剤、細胞標的化促進剤、または細胞透過促進剤として機能する、請求項10から11のいずれか一項に記載のナノカプセル。
【請求項13】
前記表面修飾剤が抗体である、請求項10から12のいずれか一項に記載のナノカプセル。
【請求項14】
前記単一タンパク質コアがタンパク質触媒である、請求項1から13のいずれか一項に記載のナノカプセル。
【請求項15】
前記単一タンパク質コアの触媒活性を有する、請求項14に記載のナノカプセル。
【請求項16】
少なくとも1つの重合性基を有するタンパク質を誘導体化するステップと、
前記誘導体化されたタンパク質をモノマー単位と共重合させるステップと
を含む、ナノカプセルを生成する方法。
【請求項17】
前記重合性基が二重結合含有基である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記重合性基が、ビニル、アクリル、アルキルアクリル、およびメタクリルから選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記共重合させるステップが、少なくとも2種の異なるモノマー単位を含む、請求項16から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1種のモノマー単位が、pH=7.4で正電荷または負電荷を有する、請求項16から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記共重合させるステップが架橋剤をさらに含む、請求項16から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記架橋剤が分解性架橋剤である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ナノカプセルの表面を修飾するステップをさらに含む、請求項16から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
有効濃度の請求項1から15のいずれか一項に記載のナノカプセルに細胞を暴露するステップを含む、タンパク質を送達する方法。
【請求項25】
前記タンパク質が治療用タンパク質である、請求項24に記載の方法。
【図4】
【図17】
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図17】
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公表番号】特表2012−519733(P2012−519733A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−554125(P2011−554125)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/026678
【国際公開番号】WO2010/104865
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/026678
【国際公開番号】WO2010/104865
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】
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