説明

長短複合糸及びその製造方法

【課題】合成繊維マルチフィラメントと獣毛短繊維群の一体性がよく、糸の長さ方向に沿って変化を有し、風合いがよく、「しゃり」感の高い長短複合糸及びその製造方法を提供する。
【解決手段】合成繊維マルチフィラメントと獣毛短繊維群とを加撚した長短複合糸であって、合成繊維マルチフィラメントが開繊して獣毛短繊維群と混合した部分と、合成繊維マルチフィラメントが集束して獣毛短繊維群とは非混合の部分を含む。この糸は獣毛短繊維束(2)をリング精紡機(10)のドラフトゾーン(7,8,9)に供給し、合成繊維マルチフィラメント(1)をリング紡績機のフロントローラ(9)に供給し、両繊維をフロントローラ直後で合体して加撚するに際し、合成繊維マルチフィラメントを予め引っ張って緊張させ、次にオーバーフィードして緩め、緩めた状態で流体交絡(5)し、糸の長さ方向に開繊部分と集束部分を形成した後にフロントローラ(9)に供給して得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リング紡績法による長繊維/短繊維複合糸及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から合成繊維マルチフィラメントと短繊維(ステープル)群とを加撚した複合糸は長短複合糸として知られている(非特許文献1)。長短複合糸は長繊維(フィラメント)と短繊維(ステープル)の長所を生かすことができる。例えば長繊維としてポリエステルマルチフィラメント、短繊維(ステープル)として羊毛を使用した場合、細くて乾きやすい糸を作ることができる。具体的には、コアヤーン(芯鞘構造で主にポリウレタンを芯に、鞘に短繊維を配置)、精紡交燃法(杢糸構造)、開繊法(均一混繊構造)、異速度精紡交燃法(芯鞘2層構造)等がある。このうち開繊法はマルチフィラメントを電気開繊して短繊維群と撚り合わせる方法であり、特許文献1〜4に提案されている。
【0003】
特許文献1では電気開繊法によりマルチフィラメントを複合糸の外側に配置することが開示され、特許文献2では電気開繊法によりマルチフィラメントと短繊維群を渦巻状に撚糸することが開示され、特許文献3では電気開繊法によりマルチフィラメントと短繊維群を均一混合層とし、芯に集め、その周囲を短繊維群が取り囲んで撚糸することが開示され、特許文献4では電気開繊法によりマルチフィラメントと短繊維群を均一混合することが開示されている。しかし、特許文献1〜4はいずれも電気開繊法によるものであり、糸の長さ方向に沿って変化がなく、風合い及び「しゃり」感に欠けるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−176928号公報の段落[0019]
【特許文献2】特開2004−169223号公報
【特許文献3】特開2004−176218号公報
【特許文献4】特開2006−179061号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】本宮達也ら編「繊維の百科事典」、丸善株式会社、平成14年3月25日、748頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、合成繊維マルチフィラメントと獣毛短繊維群の一体性がよく、糸の長さ方向に沿って変化を有し、風合いがよく、「しゃり」感の高い長短複合糸及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の長短複合糸は、合成繊維マルチフィラメントと獣毛短繊維群とを加撚した長短複合糸であって、前記合成繊維マルチフィラメントが開繊して獣毛短繊維群と混合した部分と、前記合成繊維マルチフィラメントが集束して獣毛短繊維群とは非混合の部分を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の長短複合糸の製造方法は、獣毛短繊維束をリング精紡機のドラフトゾーンに供給し、合成繊維マルチフィラメントを前記リング紡績機のフロントローラに供給し、両繊維を前記フロントローラ直後で合体して加撚するに際し、前記合成繊維マルチフィラメントを予め引っ張って緊張させ、次にオーバーフィードして緩め、緩めた状態で流体交絡し、糸の長さ方向に開繊部分と集束部分を形成した後に前記フロントローラに供給することにより、前記の長短複合糸を得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、合成繊維マルチフィラメントと獣毛短繊維群とを加撚した長短複合糸であって、長手方向に前記合成繊維マルチフィラメントが開繊して獣毛短繊維群と混合した部分と、合成繊維マルチフィラメントが集束して獣毛短繊維群とは非混合の部分を含むことにより、合成繊維マルチフィラメントと獣毛短繊維群の一体性がよく、糸の長さ方向に沿って変化を有し、風合いがよく、「しゃり」感が高く、夏物衣料又は薄手ユニホームに好適な長短複合糸を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は本発明の一実施例における長短複合糸の製造工程を示す模式的説明図である。
【図2】図2は本発明の一実施例における合成繊維マルチフィラメントの開繊方法を示す模式的説明図である。
【図3】図3A−Bは本発明の一実施例における長短複合糸の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の長短複合糸は、合成繊維マルチフィラメントと獣毛短繊維群とを加撚した長短複合糸である。合成繊維マルチフィラメントとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、エチレンテレフタレートを90モル%以上含む共重合ポリエステル、ブチレンテレフタレートを90モル%以上含む共重合ポリエステル、トリメチレンテレフタレートを90モル%以上含む共重合ポリエステルからなるマルチフィラメントが好ましい。マルチフィラメントの好ましい構成は、単繊維繊度が0.1〜4dtex(デシテックス)、構成本数が10〜100本、トータル繊度が1〜400dtexである。マルチフィラメントは生糸でもよいし、仮撚加工糸でもよい。
【0012】
獣毛短繊維としては、ウール、カシミヤ、モヘヤ、ゴートヘア、ラクダ、キャメル、グァナコ、ラマ、アルパカ、ビキューナ、アンゴラ、ミンク、フォックスなどが好ましい。とくに好ましくはウールである。
【0013】
本発明の長短複合糸は、合成繊維マルチフィラメントが開繊して獣毛短繊維群と混合した部分と、前記合成繊維マルチフィラメントが集束して獣毛短繊維群とは非混合の部分を含む。これにより、合成繊維マルチフィラメントと獣毛短繊維群の一体性がよく、糸の長さ方向に沿って変化を有し、風合いがよく、「しゃり」感が高く、夏物衣料に好適な長短複合糸とすることができる。合成繊維マルチフィラメントの開繊及び集束は、加撚前に合成繊維マルチフィラメントにオーバーフィード状態で流体交絡により形成するのが好ましい。流体交絡は、インターレースノズル、ループ付与が主目的のタスランノズル等を使用することが挙げられるが、短繊維群とマルチフィラメント糸との交絡を強めるため、インターレースノズルが好ましく用いられる。流体としては圧力空気を使用するのが好ましい。空気圧は、使用素材、加工速度、交絡レベル等に基づき任意に設定される。好ましくは50〜200kPaである。
【0014】
本発明においては、ポリエチレンテレフタレートマルチフィラメントと、ウールとの組み合わせがとくに好ましい。糸としての一体性がよく、糸の長さ方向に沿って変化を有し、風合いがよく、「しゃり」感が高く、夏物清涼衣料に好適となる。
【0015】
合成繊維マルチフィラメントと獣毛短繊維群との混合比率は、合成繊維マルチフィラメントが20〜35重量%、獣毛短繊維群が65〜80重量%の範囲が好ましい。さらに好ましくは、合成繊維マルチフィラメントが24〜30重量%、獣毛短繊維群が70〜76重量%の範囲である。
【0016】
次に製造方法について説明する。まず、獣毛短繊維束(トップ:原毛を開繊し一方向に配列した繊維束)をリング精紡機のドラフトゾーンに供給し、ドラフトしてフロントローラから排出する。合成繊維マルチフィラメントはリング紡績機のフロントローラに供給し、獣毛短繊維群と合成繊維マルチフィラメントの両繊維をフロントローラ直後で合体して加撚する。このとき、合成繊維マルチフィラメントを予め引っ張って緊張させ、次にオーバーフィードして緩め、緩めた状態で流体交絡し、開繊部分と集束部分を形成した後に前記フロントローラに供給する。これにより、本発明の長短複合糸を得る。
【0017】
以下図面を用いて説明する。図1は本発明の一実施例における長短複合糸の製造工程を示す模式的説明図である。獣毛短繊維束の巻糸体2から獣毛短繊維束を引き出しリング精紡機10のバックローラ7に供給し、ドラフトエプロン8でドラフトしてフロントローラ9から排出する。合成繊維マルチフィラメント1aは巻糸体1から引き出し、第1テンションローラ3と第2テンションローラ4との間で合成繊維マルチフィラメント1aを引っ張って緊張させる。次に第2テンションローラ4とフロントローラ9との間でオーバーフィードして緩める。緩めた状態で流体交絡器5に供給して交絡させ、開繊部分1bと集束部分1cを形成して交絡糸1dを得る。流体交絡器には圧力空気6が供給されている。交絡糸1dはフロントローラ9に供給し、ここで獣毛短繊維群と合流してフロントローラ9直後に合体加撚される。合成繊維マルチフィラメントと獣毛短繊維群は合流した後、スネルガイド12を通過し、精紡コップ13に巻き上げられながら実撚が加えられる。11は撚糸である。これにより、本発明の長短複合糸が得られる。
【0018】
第1テンションローラ3と第2テンションローラ4とフロントローラ9の速度関係は、フロントローラ9の速度を1としたとき、第1テンションローラ3の速度を1.03〜1.09とし、第2テンションローラ4の速度を1.10〜1.30とするのが好ましい。このようにすると、第1テンションローラ3と第2テンションローラ4との間では合成繊維マルチフィラメント1aは引っ張って緊張され、第2テンションローラ4とフロントローラ9との間ではオーバーフィードして緩められる。オーバーフィード率はフロントローラの速度を基準として、10〜30%であることが好ましい。
【0019】
図2は本発明の一実施例における合成繊維マルチフィラメントの開繊方法を示す模式的説明図である。合成繊維マルチフィラメント1aを緩めた状態で流体交絡器5に供給し、ここに圧力空気6を供給して開繊部分1bと集束部分1cを形成して交絡糸1dを得る。開繊部分1bの両端には集束部分1cが形成されることから、開繊部分1bのみに注目すると間歇的に開繊部が存在することになる。集束部分1cの交絡数は、4〜18個/mの範囲であることが好ましい。交絡度の測定方法は、フィラメント糸を水の上に浮かべるか又は浸漬させて交絡数を測定する(水浸漬法)。
【0020】
図3A−Bは本発明の一実施例における長短複合糸の模式的断面図である。図3Aは合成繊維マルチフィラメント21が開繊して獣毛短繊維群22と混合した部分23である。図3Bは合成繊維マルチフィラメント21が集束して獣毛短繊維群22とは非混合の部分24である。
【実施例】
【0021】
以下、実施例を用いてさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0022】
本発明の実施例、比較例における測定方法は次のとおりとした。
(1)織物の強度、伸度
JIS L 1096.8.12.1a(A法)にしたがって測定した。
(2)合成繊維マルチフィラメントの交絡数
水浸漬法により長さ1mm以上の交絡部の個数を測定し、1mあたりの個数に換算した。マルチフィラメント糸10本を測定し、その平均値で示した。
(3)長短複合糸の観察
長短複合糸の断面及び側面を光学顕微鏡(倍率500倍)により合成繊維マルチフィラメントとウール繊維群との混合部分と非混合部分を観察した。
(4)風合い
カトーテック社製試験機で引張り、曲げ、せん断等を測定し、これらの結果を数学的に処理し、風合いを「しゃり」、「こし」、「ふくらみ」、「はり」の項目に分けて定量評価し、KES値で表示した。それぞれの数値は大きいほど有効であることを示す。
(5)風合いの総合判定値:THV
THVとは、Total hand valueの略であり、「しゃり」、「こし」、「ふくらみ」、「はり」のKES値の数学的処理によって得られる風合いの総合判定値である。その評価に関しては、下記のとおりである。
THV 5: 優秀(極めて優れている)
THV 4: 良
THV 3: 平均的
THV 2: 平均以下
THV 1: 非常に悪い
THV 0: 用途外も含め問題外
(6)毛羽数
シキボウ製F-INDEX TESTERにより長短複合糸の毛羽数を測定した。
【0023】
(実施例1)
メリノウール100重量%の繊維束(0.179g/m、メートル番手5.6)を図1に示す巻糸体2から引き出し、リング精紡機10のバックローラ7に供給し、ドラフトエプロン8でドラフトし、60番(メートル番手)単糸相当の繊維束をフロントローラ9から紡出した。
【0024】
一方、ポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント(トータル繊度:56dtex、フィラメント数:24本)は図1に示す巻糸体1から引き出し、フロントローラ9の速度を1としたとき、第1テンションローラ3の速度を1.06とし、第2テンションローラ4の速度を1.21として、第1テンションローラ3と第2テンションローラ4との間を引っ張って緊張させ、第2テンションローラ4とフロントローラ9との間でオーバーフィードして緩めた。オーバーフィード率(OF率)はフロントローラの速度を基準として、21%であった。このようにして合成繊維マルチフィラメントを緩めた状態で流体交絡器5に供給して交絡させた。これにより、開繊部分1bと集束部分1cを形成して交絡糸1dを得た。流体交絡器は株式会社愛機リオテック社製の“AT−501HD III”を使用し、圧力空気を130kPa供給した。流体交絡後の交絡数は12個/mであった。
【0025】
得られた交絡糸1dはフロントローラ9に供給し、ここでウール繊維群と合流させ、合体加撚した。合成繊維マルチフィラメントと獣毛短繊維群は合流した後、スネルガイド12を通過し、精紡コップ13に巻き上げられながら実撚が加えられた。これにより長短複合糸が得られた。
【0026】
この長短複合糸を用いて仕上がりのタテ糸数446本/10cm、よこ糸数332本/10cm、目付け143.6g/m2の1/2綾織物を得た。この織物は夏物あるいは薄手ユニホーム向けのものである。
【0027】
本実施例の長短複合糸と織物の特性は次のとおりであった。
(1)織物の強度、伸度
強度はタテ577N,ヨコ438N,伸度はタテ53.1%、ヨコ47.8%であった。
(2)長短複合糸の観察
長短複合糸の断面及び側面を光学顕微鏡(倍率500倍)により観察した。合成繊維マルチフィラメントとウール繊維群とは混合部分と非混合部分が糸の長さ方向に配置されており、得られた長短複合糸は図3Aに示す混合部分23と、図3Bに示す非混合部分24が長さ方向に繰り返していた。
(3)風合い
「しゃり」のKES値は4.34、「THV」は2.67であった。
(4)毛羽数
毛羽数を測定した。1mm以上3mm未満の毛羽数が364個/10m、3mm以上5mm未満の毛羽数が34個/10m、5mm以上の毛羽数が6個/10mであった。
(5)総合評価
本実施例の織物は、合成繊維マルチフィラメントと獣毛短繊維群の一体性がよく、糸の長さ方向に沿って変化を有し、風合いがよく、「しゃり」、「こし」、「はり」のKES値が高く、強度も高く、夏物衣料又は薄手ユニホームに好適な織物となった。
【0028】
(実施例2)
実施例1において、第2テンションローラ4とフロントローラ9との間のオーバーフィード率(OF率)を16%とした以外は実施例1と同様に実施した。流体交絡後の交絡度は7個/mであった。
【0029】
本実施例の長短複合糸と織物の特性は次のとおりであった。
(1)織物の強度、伸度
強度はタテ595N,ヨコ446N,伸度はタテ54.6%,ヨコ49.2%あった。
(2)長短複合糸の観察
長短複合糸の断面及び側面を光学顕微鏡(倍率500倍)により観察した。合成繊維マルチフィラメントとウール繊維群とは混合部分と非混合部分が糸の長さ方向に配置されており、その数は交絡度と同一であった。また、得られた長短複合糸は図3Aに示す混合部分23と、図3Bに示す非混合部分24が長さ方向に繰り返していた。
(3)風合い
「しゃり」のKES値は4.53、「THV」は2.80であった。
(4)毛羽数
毛羽数を測定した。1mm以上3mm未満の毛羽数が343個/10m、3mm以上5mm未満の毛羽数が34個/10m、5mm以上の毛羽数が6個/10mであった。
(5)総合評価
本実施例の織物は、合成繊維マルチフィラメントと獣毛短繊維群の一体性がよく、糸の長さ方向に沿って変化を有し、風合いがよく、「しゃり」感が高く、強度も高く、夏物衣料又は薄手ユニホームに好適な長短複合糸となった。とくに反染品はKES値の数値よりも手触り感が良く、腰もあって夏向きの織物となった。
【0030】
(比較例1)
実施例1において、流体交絡器を使用しないほかは実施例1と同一条件で長短複合糸と織物を製造した。精紡交撚である。交絡数は1個/mである。比較例1の長短複合糸と織物の特性は次のとおりであった。
(1)織物の強度、伸度
強度はタテ481N,ヨコ372N,伸度はタテ38.6%,ヨコ34.2%であった。
(2)長短複合糸の観察
長短複合糸の断面及び側面を光学顕微鏡(倍率500倍)により観察した。合成繊維マルチフィラメントとウール繊維群とは非混合かつ渦巻き状態であった。
(3)風合い
「しゃり」のKES値は2.27、「THV」は2.14であった。
(4)毛羽数
毛羽数を測定した。1mm以上3mm未満の毛羽数が402個/10m、3mm以上5mm未満の毛羽数が45個/10m、5mm以上の毛羽数が9個/10mであった。
(5)総合評価
本比較例の織物は、合成繊維マルチフィラメントと獣毛短繊維群の一体性が悪く、強度も低くて実施例1〜2に比べると良好な夏物衣料又は薄手ユニホームは作成できなかった。
【0031】
(比較例2)
実施例1において、流体交絡器の代わりに電極を配置し、−3000Vを印加してマルチフィラメントを開繊させたほかは実施例1と同一条件で長短複合糸と織物を製造した。交絡数ゼロである。比較例2の長短複合糸と織物の特性は次のとおりであった。
(1)織物の強度、伸度
強度はタテ520N,ヨコ404N,伸度はタテ48.3%,ヨコ40.7%であった。
(2)長短複合糸の観察
長短複合糸の断面及び側面を光学顕微鏡(倍率500倍)により観察した。合成繊維マルチフィラメントとウール繊維群とは分散した状態で混合されていた。
(3)風合い
「しゃり」のKES値は2.49、「THV」は2.34であった。
(4)毛羽数
毛羽数を測定した。1mm以上3mm未満の毛羽数が241個/10m、3mm以上5mm未満の毛羽数が22個/10m、5mm以上の毛羽数が3個/10mであった。
(5)総合評価
本比較例の織物は、合成繊維マルチフィラメントと獣毛短繊維群の一体性が悪く、強度も低くて実施例1〜2に比べると良好な夏物衣料又は薄手ユニホームは作成できなかった。
【0032】
以上の実施例1〜2、比較例1〜2をまとめると次の表1のとおりとなる。
【0033】
【表1】

【0034】
以上のとおり、本発明の実施例品は、合成繊維マルチフィラメントと獣毛短繊維群の一体性がよく、糸の長さ方向に沿って変化を有し、風合いがよく、「しゃり」感が高く、夏物衣料又は薄手ユニホームに好適な長短複合糸であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の長短複合糸は、夏物衣料又は薄手ユニホームに好適である。
【符号の説明】
【0036】
1 合成繊維マルチフィラメント巻糸体
1a 合成繊維マルチフィラメント
1b 同開繊部分
1c 同集束部分
1d 同交絡糸
2 獣毛短繊維束巻糸体
3 第1テンションローラ
4 第2テンションローラ
5 流体交絡器
6 圧力空気
7 バックローラ
8 ドラフトエプロン
9 フロントローラ
10 リング精紡機
11 撚糸
12 スネルガイド
13 精紡コップ
21 合成繊維マルチフィラメント
22 獣毛短繊維群
23 合成繊維マルチフィラメントと獣毛短繊維群との混合部分
24 合成繊維マルチフィラメントと獣毛短繊維群との非混合部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成繊維マルチフィラメントと獣毛短繊維群とを加撚した長短複合糸であって、
前記合成繊維マルチフィラメントが開繊して獣毛短繊維群と混合した部分と、前記合成繊維マルチフィラメントが集束して獣毛短繊維群とは非混合の部分を含むことを特徴とする長短複合糸。
【請求項2】
前記合成繊維マルチフィラメントの開繊及び集束は、加撚前に前記合成繊維マルチフィラメントにオーバーフィード状態で流体交絡により形成している請求項1に記載の長短複合糸。
【請求項3】
前記合成繊維マルチフィラメントがポリエステルマルチフィラメントであり、前記獣毛短繊維群がウール繊維群である請求項1〜2のいずれか1項に記載の長短複合糸。
【請求項4】
前記合成繊維マルチフィラメントと前記獣毛短繊維群との混合比率が、合成繊維マルチフィラメントが20〜35重量%、獣毛短繊維群が65〜80重量%の範囲である請求項1〜3のいずれか1項に記載の長短複合糸。
【請求項5】
獣毛短繊維束をリング精紡機のドラフトゾーンに供給し、合成繊維マルチフィラメントを前記リング紡績機のフロントローラに供給し、両繊維を前記フロントローラ直後で合体して加撚するに際し、
前記合成繊維マルチフィラメントを予め引っ張って緊張させ、次にオーバーフィードして緩め、緩めた状態で流体交絡し、糸の長さ方向に開繊部分と集束部分を形成した後に前記フロントローラに供給することにより、請求項1〜4のいずれか1項に記載の長短複合糸を得ることを特徴とする長短複合糸の製造方法。
【請求項6】
前記オーバーフィード率が、フロントローラの速度を基準として、10〜30%である請求項5に記載の長短複合糸の製造方法。
【請求項7】
前記合成繊維マルチフィラメントの開繊部分と集束部分が、それぞれ4〜18個/mの範囲である請求項5又は6に記載の長短複合糸の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−219404(P2012−219404A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85714(P2011−85714)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(390018153)日本毛織株式会社 (8)
【Fターム(参考)】