説明

長鎖アルコールのエステルおよび皮膚を処置するためのその使用

皮膚状態を処置する組成物および方法を開示する。エステルは、エステルおよび皮膚科学的に許容可能なキャリアを含む。エステルは一般式(I)


で表される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
長鎖アルコールは、化粧品およびパーソナルケアにおいて多くの用途を有する。長鎖アルコール,例えばベヘニルアルコールは、皮膚をより平滑にして水分損失を防止するエモリエントとして有用である。他のアルコールは、活性含有成分として有用である。1つのこのような例はイデベノンであり、これは強力な酸化防止剤であり、皮膚の荒れおよび細い線および皴の低減、ならびにまた光損傷を受けた皮膚の改善を示してきた(McDaniel,D.H.;Neudecker,B.A.;Dinardo,J.C;Lewis II,J.A.;Maibach,H.I.Journal of Cosmetic Dermatology 2005,4,167−173)。この物質はまた、保護および再生の効果を誘導し(米国特許第6,756,045号)、皮膚の色素過剰を低減し(米国特許公開第2005/0175559号)、そして人間の皮膚における刺激および/または炎症反応を低減する(米国特許公開第2005/0197407号)ことが主張されてきた。イデベノンのエステル誘導体は、この橙色固体の物理特性を改善できる。加えて、イデベノンの脂肪酸とのエステルは、皮膚内で加水分解してイデベノンおよび脂肪酸誘導体を与えることになり、これもまた有益な利点を有することができる。
【0002】
エステル,例えばイデベノンの古典的な化学的調製は、アルコールと酸、酸クロリド、または酸無水物との反応を含む。これらの方法は、しばしば、過酷な試薬または高温のいずれかを用い、これは、アルコールまたは酸の誘導体のいずれかが不安定である場合には、困難の原因となる可能性がある。
【0003】
報告されてきた、イデベノンおよび類似の分子の短鎖エステルがある。米国特許第4,271,083号は、イデベノンおよび類似の分子のアルキルエステルを報告し、ここでアルキルエステルは1〜4炭素原子を有するものである。米国特許第4,407,757号は、イデベノンおよび類似の分子のアセテートエステルを記載する。米国特許第6,756,045号は、イデベノンの親水性エステル、特にスルホン酸エステルを記載する。これらの文献のいずれも、これらの物質を酵素的方法で調製したものではない。
【0004】
これらの文献のいずれも、長鎖脂肪酸(これは、より短鎖の脂肪酸よりも、生理学的により親和性で皮膚に対してより低刺激性であることができる)を伴うイデベノンの誘導体を記載しない(Schurer,2002,Contact Dematitis 47:199;Kojima et al.,1998,Altern Animal Test.Exper.5:201)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の簡単な要約
本発明に係る第1の態様は、エステルおよび皮膚科学的に許容可能なキャリアを含む組成物に関し、該エステルは、一般式1:
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、
RおよびR1は、独立に、C1−C4アルキルであり、
2は、C5−C22アルキル、C5−C22アルケニル、C5−C20ジエニル、C6−C22トリエニル、C8−C22テトラエニルおよびその混合物からなる群から選択され、そして
nは、2〜12である)
で表される。
【0008】
別の態様は、皮膚状態を処置する方法であって、エステルおよび皮膚科学的に許容可能なキャリアを含む組成物の有効量を皮膚に適用することを含み、該エステルが、一般式1:
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、
RおよびR1は、独立に、C1−C4アルキルであり、
2は、C5−C22アルキル、C5−C22アルケニル、C5−C20ジエニル、C6−C22トリエニル、C8−C22テトラエニルおよびその混合物からなる群から選択され、そして
nは、2〜12である)
で表される、方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
本発明は、長鎖アルコールの一連の新規なエステル、および該エステルを含有し、該エステルが一般式1:
【0012】
【化3】

【0013】
(式中、
RおよびR1は、分岐鎖および直鎖のC1−C4アルキルから選択され、
2は、置換および非置換の分岐鎖および直鎖の飽和C5−C22アルキル、置換および非置換の分岐鎖および直鎖のC5−C22アルケニル、置換および非置換の分岐鎖および直鎖のC5−C20ジエニル、置換および非置換の分岐鎖および直鎖のC6−C22トリエニル、ならびに置換および非置換の分岐鎖および直鎖のC8−C22テトラエニルまたはその混合物から選択され、そして
nは、2〜12である)
で表される、組成物に関する。
【0014】
2で表すことができるアルキル基、アルケニル基、ジエニル基、トリエニル基、およびテトラエニル基は、約20個以下の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖の脂肪族炭化水素基であることができ、例えば、C1−C6−アルコキシ、シアノ、C2−C6−アルコキシカルボニル、C2−C6−アルカノイルオキシ、ヒドロキシ、アリール、ヘテロアリール、チオール、チオエーテル、およびハロゲンから選択される1〜3の基で置換されていることができる。用語「C1−C6−アルコキシ」「C2−C6−アルコキシカルボニル」および「C2−C6−アルカノイルオキシ」は、構造−OR3、−CO23、および−OCOR3にそれぞれ対応する基を意味するのに用い、R3は、C1−C6−アルキルまたは置換C1−C6−アルキルである。
【0015】
本発明の化合物の例としては、式1で表され、アシル基R2−COが、リノレオイル、ステアロイル、リノレノイル、共役リノレオイル、パルモイル、およびオレオイル、またはその混合物であるものが挙げられる。
【0016】
エステルは、2:
【0017】
【化4】

【0018】
で表されるアルコールを、長鎖酸R2COOHまたは長鎖エステルR2COOR4と、不活性溶媒および酵素の存在下で、水を除去するための方法を伴いまたは伴わずに、反応させることによって調製できる。ここで、R、R1およびR2は、上記で定義した通りであり、そしてR4は、直鎖または分岐鎖のC1−C4のアルカンまたはアルケンである。本発明の目的のために、長鎖酸または長鎖エステルは、5炭素原子以上の鎖を有する酸またはエステルを含むことになる。
【0019】
4で表される直鎖または分岐のC1−C4のアルキル基またはアルケニル基は、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、2−ブテニル等から選択できる。
【0020】
プロセスは、環状もしくは非環状のエーテル溶媒,例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、もしくはテトラヒドロフラン、芳香族炭化水素,例えばベンゼン、トルエン、もしくはキシレン、脂肪族もしくは脂環式の飽和もしくは不飽和の炭化水素,例えばヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、もしくはリモネン、ハロゲン化炭化水素,例えばジクロロメタン、ジクロロエタン、ジブロモエタン、テトラクロロエチレン、もしくはクロロベンゼン、極性非プロトン性溶媒,例えばアセトニトリル、ジメチルホルムアミド、もしくはジメチルスルホキシド、またはその混合物から選択される不活性溶媒中で実施する。許容可能な溶媒の例としては、トルエン、リモネン、およびアセトニトリルが挙げられる。プロセスは、温度が約−100℃から溶媒の沸点までの間で、または約0〜60℃の間で、または更に約20〜50℃の間で、実施できる。長鎖酸または長鎖エステルの量は、0.85〜20当量(2で表されるアルコールの量基準)、または1〜10当量(アルコールの量基準)であることができる。プロセスにおいて使用する酵素は、プロテアーゼ、リパーゼ、またはエステラーゼから選択される。例えば、リパーゼを使用でき、そしてホールセル、単離された天然酵素、または支持体上に固定化したものの形状であることができる。これらのリパーゼの例としては、これらに限定するものではないが、Lipase PS “Amano”(Pseudomonas spより)、Lipase PS−C “Amano”(セラミック上に固定化されたPsuedomonas spより)、Lipase PS−D “Amano”(珪藻土上に固定化されたPseudomonas spより)、LipoPrime(登録商標)50T、Lipozyme(登録商標)TL IM、またはNovozym(登録商標)435(アクリルレジン上に固定化されたCandida antarcticaより)が挙げられる。
【0021】
プロセスは、任意に、モレキュラーシーブスまたはイオン交換樹脂から選択される種々の追加物の存在下で実施できる。例えば、3A,4A,または5Aのモレキュラーシーブスを使用できる。
【0022】
プロセスの生成物は、当業者に公知の方法,例えば抽出、ろ過、または結晶化を用いて単離できる。生成物1は、必要であれば、当業者に公知の方法,例えば抽出、クロマトグラフィ、蒸留、または結晶化を用いて精製できる。
【0023】
本発明に係るエステルは、組成物,例えば化粧用組成物、スキンケア組成物等において、使用できる。該組成物は、例えば、皮膚の荒れ、細い線および皴を低減すること、光損傷を受けた皮膚を改善すること、皮膚を再生すること、皮膚の色素過剰を低減すること、ならびに皮膚における刺激および/または炎症反応を低減すること、のために有用であることができる。
【0024】
本発明の典型的な化粧および/またはスキンケア組成物は、本発明に係る、少なくとも0.001質量%のエステルを含有する。例えば、組成物は、本発明に係る、約0.001質量%〜約10.0質量%または約0.01質量%〜約5.0質量%のエステルを含有できる。より低濃度は顕著性がより低い状態のために採用でき、そしてより高濃度はより深刻な状態で採用できる。推奨される範囲はまた、組成物において採用される任意の補助的な含有成分に左右される。
【0025】
本発明の化粧およびスキンケア組成物はまた、エステルに加えて、他の皮膚コンディショニング含有成分を含有できる。このような他の含有成分は当業者に公知である。
【0026】
典型的には、皮膚部分への局所的な適用は、キャリアと関連して達成される。採用する際、キャリアは不活性(活性または補助的な1種または複数種の含有成分の不活性化または酸化をもたらさないという意味で、そして、これが適用される皮膚領域に対して何らの不利な作用ももたらさないという意味で)である。例えば、本発明に係る化合物は、皮膚科学的に許容可能なキャリアまたはビヒクルとの混合物で(例えば、ローション、クリーム、軟膏、ソープ、スティック等として)、局所的な適用を容易にするように、そして幾つかの場合では、追加的な有利な効果(例えば、作用させる皮膚領域を保湿することによってもたらされると考えられるもの)を与えるように、適用する。多くの調合は当該分野で公知であり、そして油および/またはアルコールおよびエモリエント,例えばオリーブ油、炭化水素油およびワックス、シリコーン油、他の植物性、動物性もしくは海洋性の脂肪もしくは油、グリセリド誘導体、脂肪酸もしくは脂肪酸エステル、またはアルコールもしくはアルコールエステル、レシチン、ラノリンおよび誘導体、多価アルコールもしくはエステル、ワックスエステル、ステロール、リン脂質等、ならびに一般的には乳化剤(ノニオン性、カチオン性またはアニオン性)も(幾つかのエモリエントは本質的に乳化特性を有するが)を含有するローションが挙げられる。これらの同じ一般的な含有成分は、クリーム(ローションというより)中またはゲル中または固体スティック中に、種々の割合の含有成分を用いることによって、および/または増粘剤(例えばゴムもしくは他の形の親水コロイド)を含ませることによって、配合できる。
【0027】

本発明は以下の例によって更に説明できるが、特記がない限り、これらの例は単に例示の目的で含まれ本発明の範囲の限定を意図しないことが理解されよう。
【0028】
例1:
イデベノンリノレエート(1a)(EX00011−037)の調製
イデベノン(2a、R=R1=Me、n=9;547mg;1.6mmol)を、10mLのトルエン中に溶解させた。リノレン酸(2.18g;4.9当量)、続いて641mgの4Aモレキュラーシーブスおよび309mgのNovozym(登録商標)435を添加した。反応混合物を室温で2日間撹拌し、その点で、tlc分析(1:1 酢酸エチル:ヘプタン溶離液)は残留イデベノンなしを示した。固体をろ過によって除去し、そして沈殿物をトルエンで洗浄した。組合されたろ液と洗浄液とを、低減された圧力で濃縮した。残渣をヘプタン(22mL)中に溶解させ、そして11mLのメタノールと11mLの10%水性炭酸カリウムとの混合物で洗浄した。有機層を、11mLのメタノール、4mLの飽和炭酸水素ナトリウム、および7mLの水の混合物で更に洗浄した。有機層を、次いで、硫酸ナトリウムで乾燥させ、そして濃縮して、0.84g(87%)の1a(R=R1=Me、n=9)を得た。
1H NMR(CDCl3)δ5.40−5.30(m,4H);4.049(t,2H,J=6.87Hz);3.988(s,6H);2.768(t,2H,J=5.77Hz);2.45(m,2H);2.288(t,2H,J=7.42Hz);2.08−2.01(m,3H);2.009(s,3H);1.64−1.57(m,3H);1.40−1.29(m,30H);0.89(t,3H,J=6.60Hz).
【0029】
例2:
イデベノン共役リノレエート(1b)(EX00011−037)の調製
イデベノン(2a;499mg;1.48mmol)を10mLのトルエン中に溶解させた。共役リノレン酸(Tonalin(登録商標)FFA;2.07g;5当量)、次いで、500mgの4Aモレキュラーシーブスおよび300mgのNovozym(登録商標)435を添加した。反応混合物を室温で2日間撹拌し、その点で、tlc分析(1:1 酢酸エチル:ヘプタン溶離液)は少量のイデベノンを示した。追加の4Aモレキュラーシーブスを添加し、そして混合物を更に2日間撹拌し、その点で、tlc分析は残留イデベノンなしを示した。固体をろ過によって除去し、そして沈殿物をトルエンで洗浄した。組合されたろ液と洗浄液とを、低減された圧力で濃縮した。残渣をヘプタン(50mL)中に溶解させ、そしてメタノールと10%水性炭酸カリウムとの1:1混合物で2回洗浄した(50mL、次いで20mL)。有機層を、15mLのメタノール、5mLの飽和炭酸水素ナトリウム、および10mLの水の混合物で更に洗浄した。有機層を、次いで、硫酸ナトリウムで乾燥させ、そして濃縮して、850mg(96%)の1bを得た。
1H NMR(CDCl3)δ6.33−6.24(m,1H);5.935(t,1H,J=11.0Hz);5.60−5.60(m,1H);5.35−5.26(m,1H);4.049(t,2H,J=6.60Hz);3.988(s,3H);3.986(s,3H);2.445(t,2H,J=6.87Hz);2.285(t,2H,J=7.42Hz);2.18−2.05(m,3H);2.009(s,3H);1.62−1.56(m,5H);1.30−1.23(m,30H);0.91−0.86(m,3H).
【0030】
例3:
Pamolyn 200リノレン酸でのイデベノンエステル(1c)(EX00011−037)の調製
イデベノン(2a;501mg;1.48mmol)を、10mLのトルエン中に溶解させた。Pamolyn 200(登録商標)リノレン酸(2.07g;5当量)、続いて500mgの4Aモレキュラーシーブスおよび300mgのNovozym(登録商標)435を添加した。反応混合物を室温で2日間撹拌し、その点で、tlc分析(1:1 酢酸エチル:ヘプタン溶離液)は少量のイデベノンを示した。追加の4Aモレキュラーシーブスを添加したが、tlcによっては何らの変化も観察されなかった。固体をろ過によって除去し、そして沈殿物をトルエンで洗浄した。組合されたろ液と洗浄液とを、低減された圧力で濃縮した。残渣をヘプタン(50mL)中に溶解させ、そしてメタノールと10%水性炭酸カリウムとの1:1混合物で洗浄した(50mL)。有機層を、15mLのメタノール、5mLの飽和炭酸水素ナトリウム、および10mLの水の混合物で更に洗浄した。有機層を、次いで、硫酸ナトリウムで乾燥させ、そして濃縮して、798mg(90%)の1bを得た。
【0031】
例4:
イデベノンオクタノエート(1d)(EX00011−037)の調製
イデベノン(2a;500mg;1.48mmol)を、10mLのトルエン中に溶解させた。オクタン酸(1.07g;5当量)、続いて500mgの4Aモレキュラーシーブスおよび300mgのNovozym(登録商標)435を添加した。反応混合物を室温で2日間撹拌し、その点で、tlc分析(1:1 酢酸エチル:ヘプタン溶離液)はイデベノンなしを示した。固体をろ過によって除去し、そして沈殿物をトルエンで洗浄した。組合されたろ液と洗浄液とを、低減された圧力で濃縮した。真空中での濃縮により630mg(92g)の1dが得られた。
1H NMR(CDCl3)δ4.051(t,2H,J=6.87Hz);3.990(s,3H);3.987(s,3H);2.446(t,2H,J=7.15Hz);2.289(t,2H,J=7.42Hz);2.010(s,3H);1.61−1.57(m,5H);1.33−1.28(m,30H);0.878(t,3H,J=6.60Hz).
【0032】
例5:
皮膚脂質の酸化は、老化した外観、および皮膚状態への他の不所望の作用に寄与する可能性がある。単純皮膚脂質モデル(皮膚中に見出される脂肪酸を基にする)を用いて、皮膚脂質酸化の阻害および皮膚の状態の改善に対する、種々の化合物の局所的な有効性を評価および予測できる(Narayanan,S.:Hunerbein,A.:Getie,M.;Jackel,A.;Neubert,R.H.Scavenging properties of metronidazole on free oxygen radicals in a skin lipid model system.J Pharm Pharmacol.2007 Aug;59(8):1125−30)。
【0033】
脂質酸化は、多くの分析方法によって測定できる。加速酸化試験,例えば、Oxidative Stability Index(OSI)は、脂質の酸化安定性および酸化防止剤有効性の両者を評価するための方法として認められている(Bartee,S.D.;Kim,H.J.;Min,D.B.Effects of antioxidants on the oxidative stability of oils containing arachidonic,docosapentaaenoic and docosahexaenoic acids.J Amer Oil Chem Soc 2007 84:363−68.;Official methods and recommended practices of the AOCS,5th Edition,AOCS 1998)。
【0034】
この例においては、OSI法を用い、イデベノンエステルの酸化防止剤活性を、皮膚脂質中に存在する脂肪酸の混合物中での脂質酸化を阻害するためのこれらの活性を測定することによって、評価した。試験した、単純皮膚脂質モデルの組成物は、74%リノール酸;21%オレイン酸;4%リノレン酸である。単純皮膚脂質モデルは、大きな割合のポリ不飽和および不飽和の脂肪酸(これらは酸化する傾向がある)を含む。
【0035】
非処置サンプルは、単純皮膚脂質モデル(脂肪酸混合物)からなっていた。処置サンプルは、試験物質を単純皮膚脂質モデル中で1または2質量%で室温にて溶解させることによって調製した。処置および非処置の脂質マトリクスは、試験溶液を80℃に加熱すること、およびエアをサンプルを通じてバブリングすることによって酸化した。OSI(時間単位での誘導時間)を、Oxidative Stability Instrument(Omnion,Inc.Rockville MD)およびBarteeら,2007の方法を用いて評価した。非処置および処置のサンプルは、3重に試験し、そして平均および標準偏差が表1に含まれる。OSI(時間単位での誘導時間)はまた、35℃(模擬的な皮膚表面温度)での酸化について、装置に搭載されているソフトウエアを用いて評価した。
【0036】
【表1】

【0037】
単純皮膚脂質モデルマトリクスを、1%イデベノン(公知の強力な酸化防止剤)または1%もしくは2%のイデベノンリノレエートのいずれかで処置することにより、非処置対照(p<0.01)よりも脂質酸化の始まりが顕著に遅延した。酸化防止剤処置は、互いに顕著には異ならず、イデベノンの長鎖エステルが、皮膚脂質モデル系において、有効な酸化防止剤であることを示す。
【0038】
例6
本発明のエステルの予備的な毒物学の効果は、3−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)分光光度細胞生死判別アッセイ(マウスメラノサイトでの)(例示文献、DeMarcoら、Biochem.Pharmacol.2002,64,1503−1512)を用いて試験した。メラノサイト(B16:F10マウスメラノーマ細胞)を、ATCC(American Type Culture Collection;Manassas,VA)から購入した。細胞を約37℃にてDMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium)中で、フェノールレッドなし、かつ10%FCS(ウシ胎仔血清)および1%抗生剤の存在下で生育させた。密集(約90%)になった時点で、細胞をトリプシン−EDTAで分離して計数した。細胞(5×105細胞/ウェル)を、次いで、96ウェルプレート(Corning/Costar #3595)中に、体積100±1μl培地/ウェルを用いてプレーティングした。
【0039】
初めのプレーティングから24時間後、イデベノンおよびイデベノンリノレエートの貯蔵溶液をDMSO中で新たに調製した。貯蔵溶液を培地中で希釈して、濃度2,20,200および1000μMを得た;DMSO濃度は常に0.2%で維持した。次に、100μLの各希釈物を、存在する100μL/ウェル培地および1000μM毎ウェルに0.1%DMSOとともに添加した。各希釈物について8重で実施した。
【0040】
24時間後用量で、10%MTT溶液(20μL;5.0mg/mL、DMEM中、フェノールレッドなし)を各ウェルに添加した。プレートを2時間約37℃でインキュベートした。培地を注意深く取出し、そしてMTT溶媒溶液(200μL;0.1N HCl 無水イソプロパノール中)を各ウェルに添加した。生存細胞からのミトコンドリアデヒドロゲナーゼ(還元酵素)はテトラゾリウム環を開裂させ、紫色のMTTホルマザン結晶を与える。所定の時点について、生存細胞の数はMTTホルマザン生成と相関する。Molecular Devices Spectra Max 340(Sunnyvale,CA)を用い、96ウェルプレートを振とう(10分間)し、そして続いて、MTTホルマザンの量を、吸収波長570nmを用い、690nmでのバックグラウンド吸収の読みを差し引いて読んだ。イデベノンおよびイデベノンリノレエートについての細胞の生存率のデータを以下で一覧にする。イデベノンは、メラノサイトに対して≧100μMで直ちに細胞毒性であり;一方、イデベノンリノレエートは、メラノサイトに対して全ての試験濃度にて細胞毒性でなく、イデベノンの長鎖エステルが改善された耐性(より低い細胞毒性および刺激)を生体系において有することができることを示唆する。
【0041】
【表2】

【0042】
本発明を、その好ましい態様を特に参照しながら詳細に説明してきたが、本発明の精神および範囲の中で変更および改変をなすことができることが理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステルおよび皮膚科学的に許容可能なキャリアを含む組成物であって、該エステルが一般式1:
【化1】

(式中、
RおよびR1は、独立に、C1−C4アルキルであり、
2は、C5−C22アルキル、C5−C22アルケニル、C5−C20ジエニル、C6−C22トリエニル、C8−C22テトラエニルおよびその混合物からなる群から選択され、そして
nは、2〜12である)
で表される、組成物。
【請求項2】
該エステルが、少なくとも0.001質量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
該エステルが、少なくとも約0.001質量%〜約10質量%の量で存在する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
該エステルが、約0.01質量%〜約5.0質量%の量で存在する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
2のアルキル基、アルケニル基、ジエニル基、トリエニル基、およびテトラエニル基が、約22個以下の炭素原子を含有する脂肪族炭化水素基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
22個以下の炭素原子を含有する脂肪族炭化水素が、C1−C6−アルコキシ、シアノ、C2−C6−アルコキシカルボニル、C2−C6−アルカノイルオキシ、ヒドロキシ、アリール、ヘテロアリール、チオール、チオエーテル、およびハロゲンからなる群から選択される1〜3の基で置換されている、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
アシル基R2−COが、リノレオイル、ステアロイル、リノレノイル、共役リノレオイル、パルモイル、オレオイルおよびその混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
該組成物が、ローション、クリーム、ゲル、軟膏、ソープ、またはスティックである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
皮膚状態を処置する方法であって、請求項1に記載の組成物の有効量を皮膚に適用することを含む、方法。
【請求項10】
該皮膚状態が、肌荒れ、皮膚の皴、光損傷皮膚、皮膚の色素過剰、皮膚刺激および皮膚炎症反応からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。

【公表番号】特表2011−511069(P2011−511069A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545862(P2010−545862)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/000404
【国際公開番号】WO2009/099524
【国際公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】