説明

長鎖ポリメチレンハロゲン化物テロマー類

組成物はエチレンのテロマー及び少なくとも1種のフルオロアルキルハロゲン化物又はペルフルオロアルキルハロゲン化物の分布を含み、このテロマーは少なくとも1つのポリメチレンセグメント(−(CH−)及び少なくとも1つのハロメチル基(−CXH)を含み、所望により、少なくとも1つの非フッ素へテロ原子を含み、ハロゲンはヨウ素及び臭素から選択され、分布は少なくとも約15のポリメチレンセグメントのメチレン部分対ハロメチル基の数平均比を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は米国特許仮出願第60/882,798号及び同第60/882,810号(2006年12月29日出願)の優先権を主張し、その内容が本明細書に参考として組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明はエチレン及びフルオロアルキルハロゲン化物若しくはペルフルオロアルキルハロゲン化物のテロマー類に関する。
【背景技術】
【0003】
フッ素化ポリマー類は典型的に、繰返し単位を含み、各単位はフルオロアルキル側鎖に結合した主鎖部分を含む。フルオロアルキル側鎖は典型的に、炭化水素スペーサー基及び末端ペルフルオロアルキル尾部を含む。安定で不活性のペルフルオロアルキル尾部は疎水性であり疎油性である。
【0004】
このようなフッ素化ポリマー類は不活性キャリアと混合し又は溶媒中に溶解させて、親水性材料(例えば紙、布、金属、ガラス又はセラミック)に適用して、撥水性及び撥油性を材料へ提供することができる。ポリマーのペルフルオロアルキル尾部は材料の固体/空気界面にて組織化又は整列して、低エネルギー表面を生成できる。
【0005】
従来のフルオロアルキル側鎖は一般に、式C2n+1(CH−(式中、nは典型的に、6〜12の範囲であり、mは典型的に、1〜11の範囲である)を有する。C2n+1ペルフルオロアルキル尾部中の炭素原子数に加えて、スペーサー基中のメチレン部分(−CH−)の数を調節することで、ポリマー側鎖の組織化若しくは整列及びポリマーを基材材料に適用した際の結晶性類似領域の形成をもたらすことができる。スペーサー基中のメチレン部分の数の増加がnの値の減少(現在では、環境残留物の観点から望ましいと考えられている)を補うことができるとされてきた。
【0006】
しかし、従来のフッ素化ポリマー類の合成において、ペルフルオロアルキル鎖長は一般に、結晶性領域の形成(及び随伴する低表面エネルギー特性の付与能力)を向上させるために変化させられた側鎖の一部に過ぎなかった。これは各種ポリメチレン含有量の側鎖調製のための工業的に有用な方法がなかったことに由来するといってよい。
【0007】
ポリメチレン部分を含む化合物は異なった合成技術により調製されてきたが、それぞれがそれ自身の利点及び欠点を有する。1つのこのような方法は各種テロゲンを使用する、エチレンのテロメリゼーションであった。
【0008】
テロメリゼーションとは、重合条件下にて、分子YZ(「テロゲン」と称される)を、エチレン系不飽和(「タキソゲン」と称される)を有する重合性化合物の2単位以上と反応させて、化学式Y(A)Z(式中、(A)は化学結合により形成された二価のラジカルであり、タキソゲン(単位Aは「タキソモン」と称され、nは2を超える任意の整数であり、Y及びZは末端タキソモンに結合したテロゲンのフラグメントである)のn分子からなる新規炭素原子の形成を伴う)を有する「テロマー」と呼ばれる生成物を形成するプロセスとして定義されてきた。テロメリゼーションはインターポリマー化(より一般的には、共重合と称される)とは異なり、テロメリゼーションにおいてはテロゲン分子1個のみが、得られるテロマー分子各々の中に組み込まれ、テロマー生成物の平均分子量は一般的に、同様の条件下にて形成されたインターポリマーのものよりも大幅に小さい。
【0009】
エチレンテロメリゼーションにより、様々な数のメチレン部分を有するテロマーの混合物又は分布を生じる。しかし、選択されたテロゲン及び利用した条件については、エチレンテロメリゼーションによって、典型的に、限られた鎖長のみのテロマーが得られた。フルオロアルキルハロゲン化物又はペルフルオロアルキルハロゲン化物の工業的用途は特に、典型的に、エチレン分子1個のみ(n=1)の導入に集約される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このため、様々な数のメチレン部分を有する側鎖前駆体化合物(及びそれらの調製のためのプロセス)が必要とされていると考える。特に、公知の合成技術によって生成された、1〜11個より多いメチレン部分を側鎖に有する側鎖前駆体化合物が必要とされている(撥液性用途であり、好ましくは、末端フッ素化基と組み合わされている)。
【課題を解決するための手段】
【0011】
要約すると、一態様では、本発明はエチレンのテロマー及び少なくとも1種のフルオロアルキルハロゲン化物又はペルフルオロアルキルハロゲン化物の分布を含む組成物であって、テロマーは少なくとも1つのポリメチレンセグメント(−(CH−)及び少なくとも1つのハロメチル基(−CXH)を含み、所望により、少なくとも1つの非フッ素へテロ原子を含む、このハロゲンはヨウ素及び臭素から選択され、分布は少なくとも15のポリメチレンセグメントのメチレン部分対ハロメチル基の数平均比を有する、組成物を提供する。好ましくは、数平均比は少なくとも約20である。
【0012】
本発明で使用する場合、用語「数平均比」とは、テロマー分布の数平均分子量から計算される平均比を意味する。テロマー分布の数平均分子量は核磁気共鳴分光法(NMR)、ガスクロマトグラフィー(GC)、又はその他の好適な手法(好ましくは、NMRによる)によって決定することができる。
【0013】
フルオロアルキルハロゲン化物及びペルフルオロアルキルハロゲン化物テロゲンを使用して、エチレンの長鎖テロマーを製造することができることが判明した。テロマーは例えば選択された反応体、反応体の比率、及び反応条件に応じて、10超のメチレン部分、例えば30以上(例えば50以下)のメチレン部分を含有することができる。テロマーは分布(即ち、各種鎖長の化合物(組み込まれたエチレン単位の数が異なる)の混合物)の形態で製造することができ、約7以下の内部メチレン部分(例えばエチレンタキソゲンから誘導されるエチレンタキソモン)対末端ハロメチル基(例えば選択されたテロゲンのハロゲン原子を含む)の数平均比を有する従来のポリメチレンテロマー分布とは異なり、分布は少なくとも約15(好ましくは、少なくとも約20)の数平均比を示すことができる。
【0014】
テロマー分布の少なくともいくつかの実施形態はフルオロアルキル側鎖前駆体として使用することが可能で、多くの用途に対して、1〜11個より多いメチレン部分を従来の側鎖内に有する側鎖前駆体化合物に対する要求を満たす。例えば複数の反応工程を必要とせずに調製可能であるために、このような実施形態は結晶性ポリメチレンの経済的供給源を提供する。加えて、このような実施形態のテロマーはより長いペルフルオロアルキル尾部よりも、より低コスト(及びより容易に調製及びプロセス可能な)であり得る、相対的に短いペルフルオロアルキル尾部を含むことができ、相対的な低生体内蓄積をも提供すると考えられている。したがって、このような実施形態は環境適合性であることができ、しかも、明らかに、長いポリメチレンセグメントの上記の補正効果(より短いペルフルオロアルキル尾部の使用を可能にする)によって、フルオロケミカル撥液性特性(例えば撥水性及び撥油性)の付与に効果的であることができる。
【0015】
本発明のフルオロアルキルハロゲン化物テロマー分布はテロマーのハロゲン(ヨウ素又は臭素)がカルボニル含有部分、イオウ含有部分、アルケニル含有部分、窒素含有部分、及び酸素含有部分、並びにこれらの組み合わせから選択される有機官能性部分Zによって置き換えられている、テロマー誘導体分布へと転化することができる。好ましくは、Zはヒドロキシル部分、アミノ部分、カルボキシル部分、メルカプト部分、スルホネート部分、及びビニル部分、並びにこれらの組み合わせから選択される。誘導体は例えば界面活性剤として、触媒として、及び保護コーティング中にて有用であり得る。
【0016】
例えばヒドロキシル含有誘導体はアクリレート、メタクリレート、若しくはウレタン(又はこれらの組み合わせ)へと更に転化することができ、例えば撥液性(例えば撥油性及び撥水性)を各種基材へもたらすために、コーティング組成物中にて使用するためのフルオロポリマーを調製するために使用することができる。このため、本発明は更に、本発明の組成物のアクリレート誘導体、メタクリレート誘導体、若しくはウレタン誘導体(又はこれらの組み合わせ)から調製されるフルオロポリマー、フルオロポリマー及び液体キャリアを含むコーティング組成物、少なくとも1つの基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部へコーティング組成物を適用することを含むプロセス、並びに少なくとも1つの表面のその少なくとも部分上に、コーティング組成物又はコーティング組成物のフルオロポリマー構成成分を有する、少なくとも1つの基材を含むコーティングされた物品を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
本特許出願において用いるとき、
「連鎖へテロ原子」とは、炭素−へテロ原子−炭素鎖を形成するように、炭素鎖中の炭素原子に結合した炭素以外の原子(例えば酸素、窒素、ケイ素又はイオウ)を意味する。
【0018】
「フルオロ」(例えば「フルオロアルキレン」、「フルオロアルキル」、又は「フルオロカーボン」などの基又は部分に関して)、又は「フッ素化された」とは、炭素に結合した水素原子が少なくとも1つあるように、部分的にのみフッ素化されていることを意味し、
「フルオロケミカル」はフッ素化又はペルフルオロ化を意味し、
「ペルフルオロ」(例えば「ペルフルオロアルキレン」、「ペルフルオロアルキル」、若しくは「ペルフルオロカーボン」などの基又は部分に関して)又は「ペルフルオロ化された」とは、別段に規定されている場合を除いて、炭素に結合した水素原子(フッ素で置き換え可能)がないように完全にフッ素化されていることを意味する。
【0019】
テロゲン
本発明の組成物の調製に用いるのに好適であり得るテロゲンとしては、所望により1つ以上の非フッ素ヘテロ原子を含有する、フルオロアルキルハロゲン化合物及びペルフルオロアルキルハロゲン化合物が挙げられる。ハロゲン化物はヨウ化物若しくは臭化物又はこれらの混合物であることができる。多種多様なヨウ化化合物が利用可能であるために、ヨウ化物が好ましい場合があり、臭化物は以前は反応性が低く、したがって利用し難いと見られていたが、それらの低コストゆえに好ましい場合がある。好ましくは、任意のヘテロ原子はヨウ素、臭素、窒素、酸素、及びイオウから選択される。より好ましくは、ヘテロ原子は単一のヨウ素原子若しくは臭素原子として、連鎖酸素原子、窒素原子、又はイオウ原子(例えばエーテル酸素部分、エステル部分の連鎖酸素原子、又はスルホニル部分の連鎖イオウ原子)として、あるいは末端官能基の一部として(例えばカルボキシル部分、シアノ部分、スルホネート部分、アシルオキシ部分(若しくはアルキルカルボキシレート)、スルホンアミド部分、及びカルボキシアミド部分など、並びにこれらの組み合わせ)存在する。フルオロアルキル基及びペルフルオロアルキル基は所望により1つ以上の環状部分を含むことができる。好ましくは、テロゲンは飽和している。
【0020】
好適なテロゲンの1つのクラスは以下の一般式で表わすことができるものである。
【0021】
RC(R)(R)X (I)
(式中、各Rは独立して水素、フッ素、又は1〜約25個の炭素原子のアルキル基、フルオロアルキル基、若しくはペルフルオロアルキル基(好ましくは1〜約10個の炭素原子、より好ましくは、1〜約6個の炭素原子、最も好ましくは1〜約4個の炭素原子)であって、所望により、少なくとも1つの非フッ素へテロ原子及び/又は少なくとも1つの脂環式部分を含み、2つのR基は互いに結合して、5〜約7個の環炭素原子を有する脂環式環を形成でき、更にR基の少なくとも1つはフッ素を含み、Xはヨウ素又は臭素であることを条件とする。)好ましくは、任意のへテロ原子はヨウ素、臭素、窒素、酸素、及びイオウ(より好ましくは窒素、酸素、及びイオウ、更により好ましくは、窒素及び酸素、最も好ましくは、酸素)から選択される。
【0022】
好ましくは、少なくとも1つのR基は水素又はフッ素である。より好ましくは、1つのR基は水素又はフッ素であり、1つのR基は水素、フッ素、又はペルフルオロアルキルであり、1つのR基は所望により、少なくとも1つの非フッ素へテロ原子を含む、アルキル基、フルオロアルキル基、又はペルフルオロアルキル基である。更により好ましくは、1つのR基は水素又はフッ素であり、1つのR基は水素、フッ素、ペルフルオロイソプロピル、又はペルフルオロメチル(より好ましくは水素、フッ素、又はペルフルオロメチル)であり、1つのR基は所望により、少なくとも1つの非フッ素へテロ原子を含む、フルオロアルキル基又はペルフルオロアルキル基である。最も好ましくは、2つのR基は水素であるか又はフッ素(好ましくは、両方とも水素であるか又は両方ともフッ素である)であるか、あるいは1つのR基は水素であるか又はフッ素であり、別のR基はペルフルオロメチルであり、1つのR基は所望により、少なくとも1つの非ハロゲンへテロ原子を含むフルオロアルキル基又はペルフルオロアルキル基である。好ましくは、テロゲンは飽和しており、好ましくは脂環式部分を含まない。
【0023】
本発明の組成物の調製に用いるのに好適なテロゲンとしては、少なくとも1つのハロメチレン部分(−CHX−)を含むフルオロアルキルハロゲン化物及び所望により、少なくとも1つの非フッ素へテロ原子、少なくとも1つのハロフルオロメチレン部分(−CFX−)及び少なくとも1つの非ハロゲンへテロ原子を含むペルフルオロアルキルハロゲン化物、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0024】
好適なフルオロアルキルハロゲン化物の1つのクラスは以下の一般式で表わすことができるものである。
【0025】
R’’CH(R’)X (II)
(式中、R’’はフッ素又は1〜約25個の炭素原子のフルオロアルキル基又はペルフルオロアルキル基(好ましくは1〜約10個の炭素原子、より好ましくは1〜約6個の炭素原子、最も好ましくは1〜約4個の炭素原子)であって、所望により、少なくとも1つの非フッ素へテロ原子及び/又は少なくとも1つの脂環式部分を含み、R’は水素、フッ素、又は1〜約25個の炭素原子のフルオロアルキル基若しくはペルフルオロアルキル基(好ましくは1〜約10個の炭素原子、より好ましくは1〜約6個の炭素原子、最も好ましくは1〜約4個の炭素原子)であって、所望により、少なくとも1つの非フッ素へテロ原子及び/又は少なくとも1つの脂環式部分を含み、Xはヨウ素又は臭素であり、R’’及びR’が互いに結合して、5〜約7個の環炭素原子を有する脂環式環を形成できることを条件とする。)好ましくは、へテロ原子はヨウ素、臭素、窒素、酸素、及びイオウ(より好ましくは窒素、酸素、及びイオウ、更により好ましくは窒素及び酸素、最も好ましくは酸素)から選択される。
【0026】
好ましくはR’’は所望により、少なくとも1つの非フッ素へテロ原子を含む、フルオロアルキル基又はペルフルオロアルキル基である。好ましくはR’は水素又はペルフルオロアルキル(より好ましくは水素、ペルフルオロイソプロピル、又はペルフルオロメチル、最も好ましくは水素又はペルフルオロメチル)である。好ましくはR’’及びR’は脂環式部分を含まない。
【0027】
好適なフルオロアルキルハロゲン化物テロゲンの代表例としては、CFCHI、CFOCH(CF)I、CFCH(CF)Br、H(CFCHI、CFI、CI、CFCHBr、CBr、(CFCFCHI、CI、CI、CBr、C13CHBr、CFOCI、COCHBr、CCHOCI、CSON(CH)CI、COCI、CFOCCHBr、(CFCHOCI、CSON(CH)CHC(O)CHI、(CFNCCHI、CN(CF)CFBr、FSOI、(CFNCHI、(CFNCFCHI、CHOC(O)CCHI、CHOC(O)CI、(CFCHIなど、及びこれらの混合物が挙げられる。テロゲン混合物(例えばC(CHI(式中、nは1〜約17の数平均値(即ち、混合物の数平均分子量から計算される平均値))であって、例えば従来の「部分的」テロメリゼーションとして得ることができ、更なるテロメリゼーションのために再利用される)も有用である。
【0028】
好ましいフルオロアルキルハロゲン化物テロゲンとしては、CHOC(O)CCHI、CI、(CFCFCHI、CI、CSON(CH)CHC(O)CHI、CSON(CH)CI、CFOCCHBr、(CFCHOCI、CHOC(O)CI、(CFCHI、及びこれらの混合物が挙げられる。より好ましいのは、(CFCFCHI、CI、CSON(CH)CI、CFOCCHBr、(CFCH(O)CI、(CFCHI及びこれらの混合物であり、(CFCFCHI、CI、CSON(CH)CI、CHOC(O)CI、(CFCHI、及びこれらの混合物が最も好ましい。
【0029】
好適なペルフルオロアルキルハロゲン化物の1つのクラスは以下の一般式で表わすことができるものである。
【0030】
R’’’’CF(R’’’)X (III)
(式中、R’’’’は1〜約25個の炭素原子のペルフルオロアルキル基(好ましくは1〜約10個の炭素原子、より好ましくは1〜約6個の炭素原子、最も好ましくは1〜約4個の炭素原子)であり、所望により、少なくとも1つの脂環式部分及び/又は少なくとも1つの非フッ素ハロゲン原子(好ましくはヨウ素又は臭素であり、存在する場合、1個のみのこのようなハロゲン原子が好ましい)を含み、R’’’はフッ素又は1〜約25個の炭素原子(好ましくは1〜約10個の炭素原子、より好ましくは1〜約6個の炭素原子、最も好ましくは1〜約4個の炭素原子)のペルフルオロアルキル基であり、Xはヨウ素又は臭素であり、R’’’’及びR’’’の少なくとも1つは少なくとも1つの非ハロゲンへテロ原子を含むという条件であり、R’’’’及びR’’’は互いに結合して、5〜約7個の環炭素原子を有する脂環式環を形成できることを更に条件とする。)好ましくはへテロ原子は窒素、酸素、及びイオウ(より好ましくは窒素又は酸素、最も好ましくは酸素)から選択される。
【0031】
好ましくはR’’’’は少なくとも1つの非ハロゲンへテロ原子を含むペルフルオロアルキル基である。好ましくはR’’’はフッ素又はペルフルオロアルキル(より好ましくはフッ素、ペルフルオロイソプロピル、又はペルフルオロメチル、最も好ましくはフッ素又はペルフルオロメチル)である。好ましくはR’’’’及び’’’は脂環式部分又は非フッ素ハロゲン原子を含まない。
【0032】
好適なペルフルオロアルキルハロゲン化物テロゲンの代表例としては、CI、C11Br、C13I、FSOOCI、FSOBr、CFOCI、CFOCF(CF)I、(CFCFOCI、CO(i−CO)CF(CF)I(式中、pは0〜7の整数である)、CO(n−CO)CF(CF)I(式中、pは0〜7の整数である)、CO(i−CO)CF(CF)Br(式中、pは0〜7の整数である)、FOC(O)C10Iなど、及びこれらの混合物が挙げられる。好ましいペルフルオロアルキルハロゲン化物テロゲンとしては、CI、C11Br、C13I、FSOOCI、FSOBr、CFOCI、FOC(O)C10I、(CFCFOCI、CO(i−CO)CF(CF)I(式中、pは5〜7の整数である)、及びこれらの混合物が挙げられる。より好ましいのは、CI、C11Br、C13I、FSOOCI、FOC(O)C10I、(CF3)2CFOCI、CO(i−CO)CF(CF)I(式中、pは5〜7の整数である)、及びこれらの混合物であり、CI、FSOOCI、及びCO(i−CO)CF(CF)I(式中、pは5〜7の整数である)、並びにこれらの混合物を伴うものが最も好ましい。
【0033】
好ましいテロゲンとしては、スルホンアミド部分、ペルフルオロポリエーテル部分、又は比較的小さい炭素数(炭素原子が約6個未満)のペルフルオロアルキル部分(テロゲンはそれ自体、相対的に低生体内蓄積特性を示すことができるテロマー分布を提供する傾向がある)を含むようなものが挙げられる。一般に、選好は経済的要因(例えばコスト、入手可能性、若しくは取扱いの容易さ)又は性能要因(例えばテロゲン又は得られたテロマー分布の)に基づくことができる。
【0034】
ヘテロ原子はフルオロアルキルハロゲン化物及びペルフルオロアルキルハロゲン化物テロゲン中に、官能基(例えばアルコキシ基、アルカノイルオキシ基、アルキルオキシアシル基、シアノ基、スルホニル基等の活性水素原子を有しない基)の形態で、存在することができる。このような官能基は触媒若しくはアニオン性界面活性剤のための強酸(例えば−COOH又は−SOH)として、又は反応性中間体(例えばポリマー形成におけるような)として有用であり得る。追加の非フッ素ハロゲンは原子炭素に結合したヨウ素又は臭素の形態である場合、エチレン挿入のための追加の反応部位を提供することができる。好ましいテロゲンとしては、フルオロアルキルハロゲン化物及びこれらの混合物が挙げられる。
【0035】
上述したテロゲンは既知の方法により調製することができる。例えばフルオロアルキルハロゲン化物は脱離基(フルオロアルキル部分の)を臭化物又はヨウ化物により置換することにより調製することができ、ペルフルオロアルキルハロゲン化物はペルフルオロオレフィン(例えばテトラフルオロエチレン又はヘキサフルオロプロピレン)をIFと反応させることによって、又はペルフルオロアシルハロゲン化物の脱カルボニルにより調製することができる。テロゲンのいくつか(例えばFSOOCI及びI(CFI)は市販されている。
【0036】
テロマー調製
本発明のテロマー組成物の調製方法は原液のまま又は所望により、選択された反応温度及び反応圧力にて液体である反応希釈剤(反応体及び反応開始剤(類)の溶解又は分散が可能であり、反応体、反応開始剤(類)、及び得られたテロマー生成物に対して不活性である)の存在下で実施することができる。好適な希釈剤としては水(懸濁技術又はエマルション技術のため)、超臨界二酸化炭素、ペルフルオロカーボン類、ヒドロフルオロエーテル類(HFEs)、ヘキサフルオロベンゼン、トリフルオロトルエン、ヘキサフルオロキシレン、アルカン類、ベンゼンなど、及びこれらの混合物が挙げられる。好ましい希釈剤としては、フリーラジカル中間体に対するそれらの一般的な低反応性故に、フッ素含有希釈剤が挙げられる。所望する場合、テロマー生成物の一部は、希釈剤の少なくとも一部として機能することができる(より少ない希釈剤が必要であるか又は希釈剤を追加する必要がない)。一般に、テロゲン重量の約30倍までの量の希釈剤を用いることができる。
【0037】
テロメリゼーションプロセスは種々の手順うち任意のものによって実施することができる。所望であれば、エチレン、テロゲン(類)、フリーラジカル反応開始剤(類)、及び希釈剤(類)を(基本的に任意の順序及び方式の組み合わせによって)オートクレーブ又は類似の圧力反応器(例えばステンレス製であって、所望により、ガラスライナー付であり、所望により、攪拌手段が装着されている)に充填することができる。プロセスはバッチ式で実施することができる。あるいは、プロセスは例えば管形反応器を使用して、半連続式又は連続式にて(反応物質の連続導入及び/又は生成物の連続除去により)実施することができる。所望であれば、ある反応構成成分を他の反応構成成分へ、徐々に(例えばエチレンをテロゲン及びフリーラジカル反応開始剤の溶液へ添加することによって)加えることができる。所望する場合、各種の異なったプロセス実施方法を組み合わせることができる。
【0038】
テロメリゼーションプロセスは高温、高圧にて、好ましくは、最も効率的に実施することができる。一般的に、約0℃〜約250℃で変化する温度を利用することができる(例えば選択された特定のフリーラジカル反応開始剤に依存する)が、多くの場合、約75℃〜約125℃の温度が好ましい。一般的に、好ましい温度は低温での低反応性とより高温での副反応の生じやすさとの間で、選択されたバランスを反映することができる。
【0039】
一般に、約10気圧〜約350気圧の反応圧力(好ましくは約50気圧〜約350気圧、より好ましくは約100気圧〜約350気圧)で十分であり得る。所望であれば、テロメリゼーションプロセスは酸素などの反応性物質の存在を回避できるように、不活性反応環境で実施することができる。好ましくは反応条件は実質的に無酸素であることができる。
【0040】
一般的に、約4:1〜約400:1のエチレン総量対テロゲン総量のモル比(「総モル比」)が十分なものであり得、約8:1〜約300:1の総モル比が好ましい(より好ましくは約10:1〜約200:1であり;更により好ましくは約50:1〜約150:1であり;最も好ましくは約70:1〜約125:1である)。総モル比の選択は出発物質たるテロゲンのメチレン部分含有量に対するテロマー生成物の所望のメチレン部分含有量に依存し、一般的に、テロメリゼーションプロセスによってテロゲン1モル当たりに導入されるのが望ましいエチレンモル数の少なくとも約2倍である。(一般的に、比がより小さい場合、テロメリゼーションの速度及び程度は所望したものより小さくなり得る。)
【0041】
このような総(又は全体的)モル比は一般に、プロセス全体を通して維持され得るが、幾らかの変動(例えば全反応時間の25%未満)は許容されることができ、エチレンの消費が予想される。したがって、エチレン対テロゲンの瞬間的なモル比は広範囲で変化し得るが、一般に、化学量論的過剰量のエチレン(所望のテロマー生成物に対して)を用いるのが有用であり得る。
【0042】
フリーラジカル生成反応開始剤が周知である。有用な熱フリーラジカル反応開始剤類としては次のもの、(1)例えば2,2’−アゾ−ビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾ−ビス(イソバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾ−ビス(イソブチレート)、アゾ−ビス(ジフェニルメタン)、及び4,4’−アゾ−ビス(4−シアノペンタン酸)などのアゾ化合物類、(2)例えば過酸化水素、過酸化ベンゾイル、過酸化クミル、過酸化tert−ブチル、過酸化シクロヘキサノン、過酸化グルタル酸、過酸化ラウロイル、及び過酸化メチルエチルケトンなどの過酸化物類、(3)例えばtert−ブチルヒドロペルオキシド及びクメンヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド類、(4)例えば過酢酸、過安息香酸、過硫酸カリウム、及び過硫酸アンモニウムなどの過酸類、(5)例えばt−ブチルペルベンゾエート及び過炭酸ジイソプロピルなどの過酸エステル類、(6)熱レドックス反応開始剤など及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
好ましいフリーラジカル反応開始剤としてはアゾ化合物、過酸化物、過酸エステル、及びこれらの混合物が挙げられる。より好ましいのは、2,2’−アゾ−ビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾ−ビス(イソバレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、t−ブチルペルオキシド、t−ブチルペルベンゾエート、及びこれらの混合物(最も好ましくは2,2’−アゾ−ビス(イソブチロニトリル)、t−ブチルペルベンゾエート、及びこれらの混合物から選択されるようなもの)から選択されるフリーラジカル反応開始剤である。フリーラジカル反応開始剤は触媒的な有効量(例えばテロゲンの総重量に対して、約5重量%(好ましくは約1〜約5重量%、より好ましくは約2重量%)以下)にて使用可能である。反応開始剤は所望の場合、全部を一度に又は徐々に添加することができる。
【0044】
反応器からのテロマー生成物分布は回収したままで使用可能であり、あるいは所望により、例えば分別蒸留、選択抽出、吸着など、及びこれらの組み合わせを使用して、より大きな選択数値範囲の炭素原子を有するテロマー留分及びより小さい選択数値範囲の炭素原子を有するテロマー留分へと分離することができる。より低いテロマー留分は任意の未反応テロゲンと共に、エチレンと更に反応させるために反応器へと回収して、追加の高分子量(より長鎖の)テロマー生成物を生成することができる。しかし、一般に、相対的に長鎖のテロマー類を、このような分離及び再利用を必要とせずに(反応物質の比率及び反応温度を適切に選択することによって)生成することができる。
【0045】
生成物組成物
得られた組成物は少なくとも1つのポリメチレンセグメント(−(CH−)及び少なくとも1つのハロメチル基(−CXH)を含むフルオロアルキルハロゲン化物テロマー類の分布を含む。テロマー類は所望により、少なくとも1種の非フッ素へテロ原子を含み、ハロゲンはヨウ素及び臭素から選択される。分布は少なくとも約15のポリメチレンセグメントのメチレン部分対ハロメチル基の数平均比(即ち、分布の数平均分子量から計算される平均比)を示す。分布の数平均分子量は核磁気共鳴分光法(NMR)、ガスクロマトグラフィー(GC)、又はその他の好適な手法(好ましくはNMRによる)によって決定することができる。好ましくは分布の数平均比は少なくとも約20である(例えば好ましい結晶化特性の観点から)。
【0046】
生成物テロマー分布の1つのクラスは以下の一般式で表わすことができるものである。
【0047】
RCR(R)−(CH−X (IV)
(式中、R及びXは化学式Iについて上述したようなものであり、nは少なくとも約15(好ましくは少なくとも約20)の数平均値(即ち、分布の数平均分子量から計算される平均値)である。)
生成物テロマー分布の好ましい1つのクラスは以下の一般式で表わすことができるものである。
【0048】
R’’CH(R’)−(CH−X (V)
(式中、R’’、R’、及びXは化学式IIについて上述したようなものであり、nは少なくとも約15(好ましくは少なくとも約20)の数平均値である。)
生成物テロマー分布の別の好ましいクラスは以下の一般式で表わすことができるものである。
【0049】
R’’’’CF(R’’’)−(CH−X (VI)
(式中、R’’’’、R’’’、及びXは化学式IIIについて上述したようなものであり、nは少なくとも約15(好ましくは少なくとも約20)の数平均値である。)
このようなテロマー分布の代表的な例としては、C(CHI、C11(CHBr、C13(CHI、CF(CHI、CFCF(CHI、(CFNCF(CHI、CF(CHI、CO(CO)CF(CF)(CHI、CSON(CH)(CHI、FSOOC(CHI、CHOC(O)CF(CHI、FOC(O)CF(CHI、(CFCF(CHI、(CFN(CHI、(CFCHO(CHI、SFCF(CHI、CFOC(CHBr、(CFCH(CHI、(CFC(CHBr、CSON(CH)CHC(O)(CHI(式中、nは少なくとも約15(例えば18、20、25、26、45、など)の数平均値)など、及びこれらの混合物が挙げられる。奇数のメチレン部分を有するテロマー類は奇数のメチレン部分を有するテロゲン(得られたテロマー類の物理的性質(例えば融点)を変化させるのに好都合であり得る)を使用して得ることができる。
【0050】
好ましいテロマー分布としては、C(CHI、C11(CHBr、C13(CHI、CFCF(CHI、(CFCH(CHI、CO(CO)CF(CF)(CHI、CSON(CH)(CHI、(CFCF(CHI、CFOC(CHBr、CHOC(O)CF(CHI、FSOOC(CHI、(CFNCF(CHI、(CFCHO(CHI(式中、nは少なくとも約15(例えば18、20、25、26、及び、45)の数平均値)、及びこれらの混合物が挙げられ、並びにC(CHI、C13(CHI、(CFCH(CHI、CO(CO)CF(CF)(CHI、CSON(CH)(CHI、(CFCF(CHI、CFOC(CHBr(式中、nは少なくとも約15(例えば18、20、25、26、及び、45)の数平均値)、及びこれらの混合物を伴うものが好ましい。
【0051】
本発明の組成物はガスクロマトグラフィーによって示されるように、例えば約5〜約10の異なったテロマーの、相対的に均一又は平坦な分布であることができるようなテロマーの混合物を含むことができる。
【0052】
誘導体類及び用途
フルオロアルキルハロゲン化物テロマー組成物は例えばフッ素化ポリマー調製において、フルオロアルキル側鎖前駆体として使用可能である。組成物は反応性化学物質であって、1以上の工程(例えば求核置換又は脱離反応又はフリーラジカル付加)によって、官能性誘導体へと転化されることができる。このような官能性誘導体は溶液及び基材へ、濡れ、浸透、拡散、レベリング性、発泡、泡安定化、流動性、乳化、分散性、並びに油、水、及び汚れ忌避などの性質を向上又は提供するのに有用であることができる。
【0053】
このような官能性誘導体のクラスは上記化学式IV〜VIの変更によって表すことが可能であって、ここで、Xは有機官能性部分Zによって置き換えられており、それは1つ以上の炭素原子を含有することができ、カルボニル含有、イオウ含有、アルケニル含有、窒素含有、及び酸素含有部分、並びにこれらの組み合わせから選択されることができる。代表的な官能性Z部分としては、例えば求電子反応、求核反応、又は遊離基反応が可能な重合性基、複数のペンダントペルフルオロアルキル基を有するポリマー鎖を含むポリマーを形成するのに有用であり、このような基を備えた誘導体が挙げられる。このような誘導体類としては、カルボン酸及びスルホン酸並びにそれらの金属塩及びアンモニウム塩、アルキルエステル及びアルケニルエステルを包含するエステル類、アミド類、アルコール類、アクリレート及びメタクリレート(並びにポリアクリレート類及びポリメタクリレート類)、メルカプタン類又はチオール類、アルケニルエーテル類などが挙げられる。
【0054】
このため、Zは−COOH、−COOM1/v、−COONH、−CHCOOR、−CONR、−NR、−CONRA、−OH、−OSO1/v、−SO1/v、−SONH、−SONR、−SONRA、−SOR、−SH、−CN、−CHNR、−CHOCOCR=CH、−CH=CH(式中、MはK又はNaなどの一価の金属原子など、価数「v」を有する金属原子であり、Rはアルキル(例えば1〜約14個の炭素原子を有する)、アリール(例えば約6〜約10若しくは12個の環炭素原子を有する)、又はこれらの組み合わせ(例えばアルカリル若しくはアラルキル)であり、R及びRは各々独立してH又はRであり、Rはアルキレン(例えば1〜約13個の炭素原子を有する)であり、RはH又はCHであり、Aは脂肪族又は芳香族部分であり、これは、所望により、カルボキシル基若しくはスルホン酸基又はアルカリ金属塩若しくはアンモニウム塩又はこれらのエステル、カルボキシアミド基、スルホンアミド基、を含有することができ、あるいは、1〜3個のヒドロキシル基、1個以上のエーテル酸素若しくはオキシラン酸素原子、シアノ基、又は1個以上の一級、二級、三級アミノ基、若しくは四級化アミノ基、又はその他の官能性基を含有することができる)などの部分を含むことができる。好ましくはZはヒドロキシル部分、アミノ部分、カルボキシル部分、メルカプト部分、スルホネート部分、及びビニル部分、並びにこれらの組み合わせから選択される。
【0055】
例えば本発明のポリメチレンハロゲン化物テロマー類は対応するポリメチレンアルコール類へと更に転化することができる。このような転化のために、上述した調製プロセスは好ましくは(a)少なくとも1種のポリメチレンハロゲン化物テロマーを、少なくとも1種のカルボン酸金属塩(好ましくは酢酸ナトリウム)と共に混ぜ合わせること、及び(b)得られたポリメチレンカルボキシレートをアルカノリシス(好ましくはメタノリシス又はエタノリシス)に付すこと(ここで、混ぜ合わせる及び付すことは、実質的無水条件下にて実施される)を更に含む。
【0056】
上述した誘導体類はその他の派生的フルオロケミカル組成物類へと転化することができる。例えばヒドロキシル基含有誘導体類(対応するポリメチレンアルコール類)は例えば米国特許第2,803,656号(アールブレヒト(Ahlbrecht)ら)に記載されているような界面活性剤として有用な、対応するサルフェート誘導体類又は例えば米国特許第3,094,547号(ハイン(Heine))に記載されているような繊維処理剤及び革処理剤として有用なホスフェート誘導体類へと転化することができる。ヒドロキシル基含有誘導体類は更に、イソシアネート類と反応して、例えば米国特許第3,398,182号(グエンスナー(Guenthner)ら)、同第4,024,178号(ランドゥッチ(Landucci))、同第4,668,406号(チャン(Chang))、同第4,606,737号(ステルン(Stern))、及び同第4,540,497号(チャン(Chang)ら)、それぞれに記載されているような繊維材料などの繊維性基材を処理するのに有用な、ウレタン類、カルボジイミド類、ビウレット類、アロファネート類、及びグアニジン類などのカルバモイル含有誘導体類を合成することもできる。
【0057】
アミン官能性誘導体類は例えば米国特許第2,764,602号(アールブレヒト(Ahlbrecht))及び同第2,759,019号(ブラウン(Brown)ら)に記載されているような界面活性剤又は例えば米国特許第4,484,990号(バルトマン(Bultman)ら)に記載されているような両性界面活性剤として有用な、対応するアミン塩類へと転化することができる。アミン官能性誘導体類は引き続いて反応して、例えば米国特許第4,359,096号(バーガー(Berger))(その表Iを参照のこと)に記載されているような両性界面活性剤を形成することができる。
【0058】
重合性官能性誘導体類(例えばZがアクリレート、メタクリレート、ウレタン又はそれらの組み合わせ(例えばアクリル酸ウレタン)である)を使用して、ポリアクリレート類、ポリメタクリレート類、ポリエステル類、ポリウレタン類、ポリアミド類、及びポリビニルエーテル類などのポリマー類を製造することができる。このようなポリマー類は従来の段階成長重合、連鎖成長重合、又はグラフト重合の技術又はプロセスによって製造することができる。ステップ成長ポリマー類は例えばヒドロキシル、カルボキシル、イソシアナト、又はアミノ重合性基を有するような誘導体類から調製可能である。アクリレート、メタクリレート、又はビニル誘導体類を使用して、ポリアクリレート類などの連鎖成長ポリマー類を製造することができる。
【0059】
フルオロケミカルエチレン系不飽和誘導体類はホモポリマー化してホモポリマーを製造し、あるいは共重合性モノマー類と共重合して、ランダムポリマー、交互ポリマー、ブロックポリマー、及びグラフトポリマーを製造することができる。有用な共重合性モノマー類としては、フッ素含有及びフッ素非含有(又は炭化水素)モノマー類(例えばメチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、オクタデシルメタクリレート、ポリ(オキシアルキレン)ポリオールオリゴマー類及びポリマー類のアクリレート及びメタクリレートエステル類、例えばポリ(オキシエチレン)グリコールジメタクリレート、グリシジルメタクリレート、エチレン、ビニルアセタート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルクロロアセテート、イソプレン、クロロプレン、スチレン、ブタジエン、ビニルピリジン、ビニルアルキルエーテル類、ビニルアルキルケトン類、アクリル酸及びメタクリル酸、2−ヒドロキシエチルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルメタクリレートなど、及びこれらの混合物)が挙げられる。
【0060】
得られたポリマーは従来の適用法(例えば噴霧又は浸漬)を使用して、基材(例えばプラスチック及びセラミックなどの非多孔質基材又は繊維(例えばナイロンカーペット繊維又はポリエステル上着布地)、革、紙、板紙、及び木材)などの繊維状若しくは多孔質基材)の自由表面エネルギーを変更するためのコーティング又は仕上げとしての水溶液若しくは非水溶液又はエマルションの形態で適用して、そこへ撥油性及び撥水性を提供することができる。
【0061】
重合性誘導体類と共に使用可能な各種コモノマー類の相対量は一般に、実験的に選択可能であるとともに、処理される基材、フルオロケミカル処理から所望される性質(例えば所望の撥油性及び/又は撥水性の程度)、基材への適用様式に依存し得る。一般に、コポリマー類の、インターポリマー化単位又はポリマー鎖中の繰返し単位において、このような単位の約5〜約95モル・パーセントはペンダントペルフルオロアルキル基を含有することができる。得られたフルオロポリマー類はその他の又は既知のポリマー類、例えばペルフルオロメチルで末端処理したフルオロ脂肪族ビニルポリマー類とブレンドすることができ、このブレンドを使用して、表面特性(例えば布地などの繊維材料の)を変化させて、それらに撥油性及び撥水性などの改善された性質を提供するために使用することができる。
【0062】
界面活性剤として有用な誘導体類は一般に、−CONa、−SONHC(CHCl、−SON(C)(CO)H、及び−CONHC(CHCHCO、などの極性基を有することができ、これらの部分はアニオン性、カチオン性、非イオン性、及び両性界面活性剤それぞれにおける代表的な極性基である。界面活性剤は濡れ、浸透、拡散、均染性、発泡、泡安定化、流動性、乳化、分散性、並びに油、水、及び汚れ忌避などの性質を向上させたり、水性及び非水性(有機物質)液体系へそれを提供したりするのに有用であることができる。液体系は一般に、液相(その中に、界面活性剤が溶解又は分散している)並びに別の液相、気相、及び分散固体相(例えばポリマー固形分)からなる群から選択される1種以上のその他の相を含むことができ、この系はエマルション、懸濁液、又は泡(空気泡のような)の形態であることができる。このような液体系又はこのような界面活性剤の適用分野の例としては、例えば3M広報98−0211−2213−4(38.3)BPHに記載されているように、すすぎ洗い、洗浄、エッチング及びめっき浴、床磨き剤エマルション、写真処理、水性コーティング材、粉末コーティング材、溶媒系コーティング材、アルカリ性洗浄剤、フルオロポリマーエマルション、半田付けシステム、及び特殊インキが挙げられる。
【0063】
界面活性剤として有用な誘導体類はその他の物質へ組み入れたり、あるいはその他の物質と共に混合したりすることもできる。例えば十分に熱的に安定である場合、それらは、キャストされ、吹き付けられ、押し出され、又は別の方法でフィルム及び繊維などの成形物品へと形成される高分子材料(例えばナイロンなどのポリアミド類、又はポリプロピレンなどのポリオレフィン類)に組み入れることができ、このように組み込まれた誘導体類はそれらの表面の撥油性及び撥水性などの、成形物品の性質を変化させる。界面活性剤は更に、炭化水素界面活性剤及び/又は従来のフルオロケミカル界面活性剤などのその他の界面活性剤(例えば米国特許第2,567,011号及び同第2,732,398号に開示されているようなもの)と混合することもでき、このような混合界面活性剤を使用して、例えば米国特許第3,562,156号(フランセン(Francen))に記載されている様な水性、膜形成フォーム類を形成することができる。
【実施例】
【0064】
本発明の目的及び利点は下記の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は他の諸条件及び詳細と同様に本発明を過度に制限するものと解釈すべきではない。これらの実施例は単に例示のためのものに過ぎず、添付の請求項の範囲を限定することを意図するものではない。
【0065】
実施例及び明細書の他の箇所における全ての部、パーセント、比等は他に記載がない限りにおいて、重量当たりである。使用される溶媒及びその他の試薬は特に記載のない限り、アルドリッチケミカル社(Aldrich Chemical Company)(ミズーリ州セントルイス(St. Louis))より入手した。
【0066】
試験方法
核磁気共鳴(NMR)
バリアンユニティプラス(Varian UNITYplus)400フーリエ変換NMRスペクトロメーター(バリアンNMRインスツルメンツ社(Varian NMR Instruments)、カルフォルニア州パロアルト(Palo Alto)から入手可能)にて、H&19F NMRスペクトルを測定した。
【0067】
ガスクロマトグラフィー/質量分析(GCMS)
GCMS試料を、例えばフィニガン(Finnigan)TSQ7000質量分析計(サーモ・エレクトロン社(Thermo Electron Corporation)、マサチューセッツ州ウォルサム(Waltham)から入手可能)にて測定した。
【0068】
ガスクロマトグラフィー(GC)
ヒューレット・パッカード(Hewlett Packard)6890シリーズガスクロマトグラフ(アジレント・テクノロジー社(Agilent Technologies)、カリフォルニア州パロアルト(Palo Alto)から入手可能)にて、GC試料を測定した。
【0069】
動的接触角測定(DCA)
ビデオ接触角分析器(マサチューセッツ州ビラリカ(Billerica)のASTプロダクツ(AST Products)から製品番号VCA−2500XEとして市販)で標準試薬用ヘキサデカン(ミズーリ州セントルイス(St. Louis)のアルドリッチ(Aldrich)から入手した)及び濾過装置(マサチューセッツ州ビラリカ(Billerica)のミリポア社(Millipore Corporation)から入手した)により濾過した脱イオン水を使用し、試料コーティング上で接触角の測定を行った。報告値は5回の測定の平均値である。
【0070】
示差走査熱量計(DSC)
示差走査熱量計(エルマー(Elmer)、7シリーズ熱分析システム)にて、DSC試料を測定した。
【0071】
【表1】

【0072】
材料
エチレンはオキシゲン・サービス・カンパニー(Oxygen Service Company)(ミネソタ州、セントポール(St. Paul))から入手した。
【0073】
t−ブチル過酸化ベンゾイルはシグマ・アルドリッチ・ケミカル社(Sigma-Aldrich Chemical Company)(ミズーリ州セントルイス(St. Louis))から入手した。
【0074】
n−CIはTCIアメリカ(TCI America)(オレゴン州ポートランド(Portland))から入手したが、シグマ・アルドリッチ・ケミカル社(Sigma-Aldrich Chemical Company)(ミズーリ州セントルイス(St. Louis))から入手可能である。
【0075】
SOFは3M社(3M Company)(ミネソタ州セントポール(St. Pau))から入手した。
【0076】
13Iは(シグマ・アルドリッチ・ケミカル社(Sigma-Aldrich Chemical Company)(ミズーリ州セントルイス(St. Louis))から入手可能である。
【0077】
米国特許第3,145,222号(ブレイス(Brace))に記載されている方法を使用して、60℃にて、2,2’−アゾ−ビス(イソブチロニトリル)(AIBN)と共に、(CFCFIをエチレンに添加することにより(CFCFCHCHIを調製することができる。
【0078】
CF(CFSON(Me)CHCHIについて下記で述べるように、CCHOSO−4−CH(シンクエスト・ラボ社(Synquest Labs, Inc.)、フロリダ州アラチュア(Alachua))から入手可能)をNaIと反応させることによって、CFCFCHIを調製することができる。
【0079】
CF(CFSON(Me)CHCHIは次のようにして調製した。CF(CFSON(Me)CHCHOHを過剰な塩化チオニルと共に塩化メチレン中にて25〜45℃で反応させて、CF(CFSON(Me)CHCHClを得て、その7.1gをNaI 6.0gのアセトン溶液と混合した。得られた溶液を還流状態で攪拌し、CF(CFSON(Me)CHCHIへの転化後にGPC測定を行った。24時間で、転化率は14%であり、NaI 6.0gを添加した。3日間で、転化率は46%であり、6日間で、転化率は72%であり、NaI 6.0gを添加した。13日間で、転換率は98%に到達した。得られた生成物を水で沈殿させ、ヘキサンから再結晶させて、融点80〜82℃の白色プレート6.2gを得た。
【0080】
FOS(CFO(CFIはシグマ・アルドリッチ・ケミカル社(Sigma-Aldrich Chemical Company)(ミズーリ州セントルイス(St. Louis))から入手した。
【0081】
O(イソ−CO)CF(CF)Iは基本的に、「フッ素化学雑誌(J. Fluorine Chem)」(チェン(Chen)ら著、第65巻、59ページ、1993年)に記載されているようにして調製可能である。
【0082】
I(CFIはシグマ・アルドリッチ・ケミカル社(Sigma-Aldrich Chemical Company)(ミズーリ州セントルイス(St. Louis))から入手した。
【0083】
CF(CFBrは3M社(3M Company)(ミネソタ州セントポール(St. Paul))から入手したが、シグマ・アルドリッチ・ケミカル社(Sigma-Aldrich Chemical Company)(ミズーリ州セントルイス(St. Louis))から入手可能である。
【0084】
酢酸ナトリウムはシグマ・アルドリッチ・ケミカル社(Sigma-Aldrich Chemical Company)(ミズーリ州セントルイス(St. Louis))から入手した。
【0085】
ジメチルスルホキシド(DMSO)はアルファ・エイサー(Alfa Aesar)(マサチューセッツ州ワードヒル(Ward Hill))から入手した。
【0086】
テトラヒドロフラン(THF)はEMDケミカルズ社(EMD Chemicals, Inc.)(ニュージャージー州ギブスタウン(Gibbstown))から入手した。
【0087】
p−トルエンスルホン酸はJ.T.ベーカー社(J.T. Baker)(ニュージャージー州フィリップスバーグ(Phillipsburg))から入手した。
【0088】
NaHCOはEMDケミカルズ社(EMD Chemicals, Inc.)(ニュージャージー州ギブスタウン(Gibbstown))から入手した。
【0089】
ジラウリン酸ジブチル錫はシグマ・アルドリッチ・ケミカル社(Sigma-Aldrich Chemical Company)(ミズーリ州セントルイス(St. Louis))から入手した。
【0090】
1,2−ジメトキシエタンはEMDケミカルズ社(EMD Chemicals, Inc.)(ニュージャージー州ギブスタウン(Gibbstown))から入手した。
【0091】
MgSOはEMDケミカルズ社(EMD Chemicals, Inc.)(ニュージャージー州ギブスタウン(Gibbstown))から入手した。
【0092】
2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)はVazo(商標)67として、E.I.デュポン・ドゥ・ヌムール社(El duPont de Nemours & Co.)(デラウェア州ウィルミントン(Wilmington))から入手した。
【0093】
酢酸エチルはEMDケミカルズ社(EMD Chemicals, Inc.)(ニュージャージー州ギブスタウン(Gibbstown))から入手した。
【0094】
メタノールはEMDケミカルズ社(EMD Chemicals, Inc.)(ニュージャージー州ギブスタウン(Gibbstown))から入手した。
【0095】
CH=CHCOClはシグマ・アルドリッチ・ケミカル社(Sigma-Aldrich Chemical Company)(ミズーリ州セントルイス(St. Louis))から入手した。
【0096】
ジイソプロピルエチルアミン(i−PrNEt)はEMDケミカルズ社(EMD Chemicals, Inc.)(ニュージャージー州ギブスタウン(Gibbstown))から入手した。
【0097】
オクタデシルアクリレート(ODA)はサン・エステルズ社(San Esters Corp.)(ニュージャージー州リンデン(Linden))から入手した。
【0098】
ヘキサメチレンジイソシアネートはデスモジュール(Desmodur)(商標)N3300Aとして、バイエルポリマーズ社(Bayer Polymers LLC)(ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh))から入手した。
【0099】
(実施例1)
ヨウ化ペルフルオロブチルを使用するエチレンのテロメリゼーション
43mLのステンレス製オートクレーブに、CI 8gとt−ブチル過酸化ベンゾイル0.0202gとを充填した。オートクレーブをドライアイス浴中で冷却し、真空ポンプを使用して脱気させた後、エチレン18gを導入した。オートクレーブを振盪し、ゆっくりと100℃まで加熱し、一晩100℃で保持した。次に、オートクレーブを室温まで冷却し、あらゆる残存気体を放出し、ワックス様生成物10.5gを回収した。化学式[C(CHI]を有するテロマー類の混合物を含むワックス様生成物はGCMS及びGCを使用して同定した。GCMSを使用して、分子量で示されるテロマー類を同定し、GCを利用して、生成物混合物中に示されるテロマー累の重量%を決定した。実施例1の生成物混合物中の各テロマー[C(CHI]の重量%を示すGCデータは次のように、形式{保持時間(分)、対応するn([C(CHI]中)、対応するテロマー[C(CHI]の混合物中での重量%}を使用して、以下に報告されている。
【0100】
5.5分、n=6、4.4%;6.8分、n=8、8.1%;7.9分、n=10、10.5%;8.8分、n=12、11.6%;9.8分、n=14、11.4%;10.7分、n=16、10.5%;11.5分、n=18、9.4%;12.3分、n=20、8.2%;12.9分、n=22、6.8%;13.5分、n=24、5.3%;14.1分、n=26、4.1%;14.7分、n=28、3.1%;15.2分、n=30、2.5%;15.8分、n=32、2.2%;16.3分、n=34、2.2%;17.0分、n=36、2.5%;18.0分、n=38、2.0%;19.3分、n=40、1.4%。実際のGCデータのクロマトグラムは反応生成物が、従来報告された分布が少なくともいくつかのフッ素含有テロゲンを備える場合に、一般的にn=1〜2で最大値に到達したのと対照的に、おおよそn=12〜14にて最大重量パーセントに到達することを図で示した。
【0101】
要約に続く、重量%からモル%へのGCデータの変換によって、数平均分子量M=582を得た(実施例1の生成物混合物の化学式C(CHI中のnの数平均値16.6に対応する)。
【0102】
加えて、H−NMRを使用して実施例1の生成物を分析した。100万分の1.2〜2.0部(ppm)にて観察されるH−NMR共鳴はCCH(CHn−2−のものと考え、3.2ppmにて観察されたものは末端−CHIのものと考えた。共鳴下の領域は各々90.41及び5.45として測定した。1.2〜2.0ppm(90.41)での共鳴についての領域対3.2ppm(5.45)での共鳴についての領域の比へ、1(末端−CHI基中に含有されるCH部分に対応する)を追加することで、化学式[C(CHI]についての推定数平均値17.6を得た。
【0103】
このため、GC(16.6)及びH−NMR(17.6)分析から決定される数平均値は比較的一定しており、少なくともいくつかのフッ素含有テロゲンを使用して従来報告された分布の1〜2(GCによる)の数平均値nよりも大幅に大きかった。
【0104】
(実施例2〜10)
各種の異なったテロゲンを使用するエチレンのテロメリゼーション
実施例2〜10は反応物の種類と量を下記表1でまとめたように変更した点を除いて、実施例1について前述したのと基本的に同一の方法で実施した。実施例2では、183mLのステンレス製オートクレーブを使用した。
【0105】
【表2】

【0106】
実施例2〜10のぞれぞれについて決定した、化学式[R(CHX]の生成物テロマー混合物の推定数平均値nが下表2(ここで、R及びXは特定の実施例のために使用された、特定のテロゲンRXのR及びXに対応する)にて報告されている。表2にて報告された推定数平均値nを決定し、実施例1で前述のH−NMR技術を使用して計算した。
【0107】
【表3】

【0108】
(実施例11)
ヨウ化ペルフルオロブチルを再利用するエチレンのテロメリゼーション
183mLのステンレス製オートクレーブに、CI 17.2g及び過安息香酸t−ブチル0.457gを充填した。オートクレーブをドライアイス浴中で冷却し、真空ポンプを使用して脱気させた後、エチレン14.4gを添加した。オートクレーブを振盪し、100℃まで加熱し、一晩100℃で保持した。次に、オートクレーブを室温まで冷却し、あらゆる残存気体を放出し、ワックス様生成物26.0gを回収した。生成物はH−NMRによってC(CH16.6Iであると分析された。本生成物10.0gを183mLのステンレス製オートクレーブ内に、過安息香酸t−ブチル0.270g及びエチレン66.2gと共に入れた。上述した反応プロセスを繰り返した。一晩100℃で保持した後、オートクレーブを室温まで冷却し、あらゆる残存気体を放出し、生成物12.8Gを回収した。生成物の数平均値nはH−NMRによって23.4と決定した。
【0109】
(実施例12)
対応するアルコールC(CH17.6OHへのテロマー分布の転化
(CH17.6I(数平均n=17.6)の混合物8.1g、酢酸ナトリウム8.1g、及びDMSO 80mLを攪拌し、135℃まで加熱した。135℃で18時間後、得られた混合物を水中に注いだ。得られた固形物を収集し、THF中に再溶解させた。THF溶液を濾過して、残留塩類を除去し、次にワックス様生成物7gへと濃縮した。GC及びH−NMRによって、C(CH17.6OC(O)CHへと完全に転化したことを確認した。本エステル7g、p−トルエンスルホン酸0.19g、及びエタノール500mLの混合物をフラスコに充填し、還流状態にて48時間加熱した。NaHCO(0.19g)を添加し、得られた固形物を濾過により除去した。溶媒を除去した後、ワックス様生成物6.5gが残った。GC及びH−NMRによって、C(CH17.6OHへと完全に転化したことを確認した。
【0110】
(実施例13)
フルオロポリマーの調製及び試験
ポリ(C(CH17.6OC(O)NHCHCHOC(O)C(Me)=CH)の調製:
(CH17.6OH(10g、M=482.3)、OCNCHCHOC(O)C(Me)=CH(0.321g)、ジブチルスズジラウレート(2滴)、及び1,2−ジメトキシエタン10mLをフラスコに充填した。得られた混合物は室温で一晩攪拌した。攪拌した混合物を水中に注ぎ、得られた収集済み有機層を水洗し、次にMgSO上で乾燥させた。溶剤除去後、白色固体1.2gが残ったが、これはH−NMRによって、C(CH17.6OC(O)NHCHCHOC(O)C(Me)=CHであると決定された。
【0111】
上記の調製されたメタクリレートモノマー0.518g及びVAZO(商標)67 0.005gの、エチルアセテート1.5g中の溶液を5mLアンプルに充填した。冷凍(−80℃)−真空引き(133Pa(0.001316大気圧(1mm Hg)))―解凍の3サイクル後、アンプルを密閉した、60℃にて3日間、湯せんに浸漬した。得られた溶液をメタノール中へ注ぎ、固形物0.34gを収集した。本固形材料のコーティングは当該材料の10〜20重量%エチルアセテート溶液中へナイロンフィルムを浸漬し、続いて当該コーティング済みナイロンフィルムを120〜150℃へ加熱することによって形成した。コーティングしたフィルムのDCA分析により、次の値を得た。水の前進接触角及び後退接触角はそれぞれ116度及び99度、並びにヘキサデカンの前進接触角及び後退接触角はそれぞれ65度及び23度。
【0112】
ポリ(C(CH17.6OC(O)CH=CH)の調製:
(CHOH(1.0g、M=482.3)、CH=CHCOCl 1.88g、i−PrNEt 2.67g、及び1,2−ジメトキシエタン10mLをフラスコに充填した。得られた混合物は室温で一晩攪拌した。混合物を水中に注ぎ、得られた収集済み有機層を水洗し、MgSO上で乾燥させた。溶剤除去後、白色生成物0.9gが残り、これはH−NMRによってC(CH17.6OC(O)CH=CHであると分析され、次に本アクリレートモノマー0.3063g、VAZO(商標)67 0.0044g、及びエチルアセテート0.8gを5mLアンプルへ充填した。冷凍―真空引き―解凍の3サイクル後(前述の通り)、アンプルを密封し、65℃にて3日間湯せんに浸漬した。得られた溶液をメタノール中へ注ぎ、得られた固形物を収集した。DSCは固形物が43℃近辺の溶融ピークを有することを示した。本固形材料のコーティングは当該材料の10〜20重量%エチルアセテート溶液中へナイロンフィルムを浸漬し、続いて当該コーティング済みナイロンフィルムを120〜150℃へ加熱することによって形成した。コーティングしたフィルムのDCA分析により、次の値を得た。水の前進接触角及び後退接触角はそれぞれ122度及び109度、並びにヘキサデカンの前進接触角及び後退接触角はそれぞれ72度及び25度。
【0113】
上記の調製されたアクリレートモノマー0.215g、ODA 0.0922g、Vazo(商標)67 0.0056g、及びエチルアセテート0.8gを、5mLアンプルに充填した。3回の解凍−冷凍−真空引き・サイクル後、アンプルを密封し、65℃にて3日間湯せんに浸漬した。得られた溶液をメタノール中へ注ぎ、得られた固形物を収集した。固形物のDSCは43℃近辺の溶融ピークを示した。本固形材料のコーティングは当該材料の10〜20重量%エチルアセテート溶液中へナイロンフィルムを浸漬し、続いて当該コーティング済みナイロンフィルムを120〜150℃へ加熱することによって形成した。コーティングしたフィルムのDCA分析により、次の値を得た。水の前進接触角及び後退接触角はそれぞれ121度及び102度、並びにヘキサデカンの前進接触角及び後退接触角はそれぞれ64度及び26度。
【0114】
デスモジュール(Desmodur)(商標)N3300を使用したポリウレタンの調製:
(CH17.6OH(0.80g、M=482.3)をエチルアセテート中に溶解させ、水を除去するために、共沸的に加熱した。デスモジュール(Desmodur)(商標)N3300 0.323g及びジブチルスズジラウレート5滴を添加した。得られた混合物を一晩還流させた。溶媒を蒸発させて、固体生成物を得た。本固形材料のコーティングは当該材料の10〜20重量%エチルアセテート溶液中へナイロンフィルムを浸漬し、続いて当該コーティング済みナイロンフィルムを120〜150℃へ加熱することによって形成した。コーティングしたフィルムのDCA分析により、次の値を得た。水の前進接触角及び後退接触角はそれぞれ121度及び71度、並びにヘキサデカンの前進接触角及び後退接触角はそれぞれ68度及び29度。
【0115】
本願において、特許、特許文献、及び出版物に含まれる引用された説明はその全体があたかも単独で組み込まれるかのように、参考として組み込まれる。本発明への様々な予測し難い改良及び変更が、本発明の範囲及び趣旨から逸脱せずに実施できることは当業者には明らかである。本発明は本明細書に開示した例示的実施形態及び実施例によって不当に制限されることを意図したものではなく、そのような実施例及び実施形態は実例だけの目的で表示され、発明の範囲は本明細書に添付した特許請求の範囲によってのみ制限されることを意図したものであることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンのテロマー及び少なくとも1種のフルオロアルキルハロゲン化物又はペルフルオロアルキルハロゲン化物の分布を含む組成物であって、該テロマーが少なくとも1つのポリメチレンセグメント(−(CH−)及び少なくとも1つのハロメチル基(−CXH)を含み、所望により、少なくとも1つの非フッ素へテロ原子を含み、該ハロゲンがヨウ素及び臭素から選択され、該分布が少なくとも15の該ポリメチレンセグメントのメチレン部分対該ハロメチル基の数平均比を有する、組成物。
【請求項2】
前記ハロゲンがヨウ素である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ハロゲンが臭素である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記数平均比が少なくとも20である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記へテロ原子がヨウ素、臭素、窒素、酸素、イオウ、及びこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記分布が次の一般式、
RC(R)(R)−(CH−X (IV)
(式中、各Rは独立して水素、フッ素、又は1〜25個の炭素原子のアルキル基、フルオロアルキル基、若しくはペルフルオロアルキル基であって、所望により、少なくとも1つの非フッ素へテロ原子及び/又は少なくとも1つの脂環式部分を含み、所望により、2つの前記R基は互いに結合して、5〜7個の環炭素原子を有する脂環式環を形成することを条件とし、前記R基の少なくとも1つはフッ素を含むことを更に条件とし、Xはヨウ素又は臭素であり、nは少なくとも15の数平均値である)で表される生成物テロマー分布のクラスから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記へテロ原子がヨウ素、臭素、窒素、酸素、イオウ、及びこれらの混合物から選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも1つの前記R基が水素又はフッ素である、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
1つの前記R基が水素又はフッ素であり、1つの前記R基が水素、フッ素、又は1〜10個の炭素原子のペルフルオロアルキル基であり、1つの前記R基が所望により、少なくとも1つの非フッ素へテロ原子を含む1〜10個の炭素原子のアルキル基、フルオロアルキル基、又はペルフルオロアルキル基である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
1つの前記R基が水素又はフッ素であり、1つの前記R基が水素、フッ素、ペルフルオロイソプロピル、又はペルフルオロメチルであり、1つの前記R基が所望により、少なくとも1つの非フッ素へテロ原子を含む1〜10個の炭素原子のフルオロアルキル基又はペルフルオロアルキル基である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
2つの前記R基が水素又はフッ素であり、1つの前記R基が所望により、少なくとも1つの非ハロゲンへテロ原子を含む1〜10個の炭素原子のフルオロアルキル基又はペルフルオロアルキル基である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
水素又はフッ素である前記2つのR基が両方とも同一である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
1つの前記R基が水素又はフッ素であり、1つの前記R基がペルフルオロメチルであり、1つの前記R基が所望により、少なくとも1つの非ハロゲンへテロ原子を含む1〜10個の炭素原子のフルオロアルキル基又はペルフルオロアルキル基である、請求項10に記載の記組成物。
【請求項14】
前記nが少なくとも20の数平均値である、請求項6に記載の組成物。
【請求項15】
前記分布が、次の一般式、
R’’CH(R’)−(CH−X (V)
(式中、R’’はフッ素又は1〜25個の炭素原子のフルオロアルキル基又はペルフルオロアルキル基であり、所望により、少なくとも1つの非フッ素へテロ原子及び/又は少なくとも1つの脂環式部分を含み、R’は水素、フッ素、又は1〜25個の炭素原子のフルオロアルキル基若しくはペルフルオロアルキル基であり、所望により、少なくとも1つの非フッ素へテロ原子及び/又は少なくとも1つの脂環式部分を含み、Xはヨウ素又は臭素であり、所望により、R’’及びR’は互いに結合して、5〜7個の環炭素原子を有する脂環式環を形成することを条件とし、nは少なくとも15の数平均値である)で表される生成物テロマー分布のクラスから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記nが少なくとも20の数平均値である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記分布が、次の一般式、
R’’’’CF(R’’’)−(CH−X (VI)
(式中、R’’’’は1〜25個の炭素原子のペルフルオロアルキル基であり、所望により、少なくとも1つの脂環式部分及び/又は少なくとも1つの非フッ素ハロゲン原子を含み、R’’’はフッ素又は1〜25個の炭素原子のペルフルオロアルキル基であり、Xはヨウ素又は臭素であり、R’’’’及びR’’’の少なくとも1つは少なくとも1つの非ハロゲンへテロ原子を含むという条件であり、R’’’’及びR’’’は所望により、互いに結合して、5〜7個の環炭素原子を有する脂環式環を形成することを更に条件とし、nは少なくとも15の数平均値である)で表される生成物テロマー分布のクラスから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記nが少なくとも20の数平均値である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記分布がC(CHI、C11(CHBr、C13(CHI、CF(CHI、CFCF(CHI、(CFNCF(CHI、CF(CHI、CO(CO)CF(CF)(CHI、CSON(CH)(CHI、FSOOC(CHI、CHOC(O)CF(CHI、FOC(O)CF(CHI、(CFCF(CHI、(CFN(CHI、(CFCHO(CHI、SFCF(CHI、CFOC(CHBr、(CFCH(CHI、(CFC(CHBr、CSON(CH)CHC(O)(CHI(式中、nは少なくとも約15の数平均値)、及びこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記nが18、20、25、26、又は45の数平均値である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記ハロゲンがカルボニル含有部分、イオウ含有部分、アルケニル含有部分、窒素含有部分、及び酸素含有部分、並びにこれらの組み合わせから選択される有機官能性部分Zによって置き換えられている、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
前記Zがヒドロキシル部分、アミノ部分、カルボキシル部分、メルカプト部分、スルホネート部分、及びビニル部分、並びにこれらの組み合わせから選択される、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記Zがアクリレート部分、メタクリレート部分、及びウレタン部分、並びにこれらの組み合わせから選択される、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
エチレン及びフルオロアルキルハロゲン化物又はペルフルオロアルキルハロゲン化物の少なくとも1種のテロマーの分布を含む組成物であって、該分布が次の一般式、
RC(R)(R)−(CH−X (IV)
(式中、各Rは独立して水素、フッ素、又は1〜6個の炭素原子のアルキル基、フルオロアルキル基、若しくはペルフルオロアルキル基であって、所望により、少なくとも1つの非フッ素へテロ原子又は少なくとも1つの酸素原子を含む1〜25個の炭素原子のペルフルオロアルキル基を含み、前記R基の少なくとも1つはフッ素を含むことを条件とし、Xはヨウ素又は臭素であり、nは少なくとも15の数平均値である)で表される生成物テロマー分布のクラスから選択される、組成物。
【請求項25】
前記ヘテロ原子が窒素、酸素、イオウ、及びこれらの混合物から選択される、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
1つの前記R基が水素又はフッ素であり、1つの前記R基が水素、フッ素、又は1〜6個の炭素原子のペルフルオロアルキル基であり、1つの前記R基が所望により、少なくとも1つの非フッ素へテロ原子を含む1〜6個の炭素原子のアルキル基、フルオロアルキル基、又はペルフルオロアルキル基である、請求項24に記載の組成物。
【請求項27】
1つの前記R基が水素又はフッ素であり、1つの前記R基が水素、フッ素、ペルフルオロイソプロピル、又はペルフルオロメチルであり、1つの前記R基が所望により、少なくとも1つの非フッ素へテロ原子を含む1〜6個の炭素原子のフルオロアルキル基又はペルフルオロアルキル基である、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
2つの前記R基が両方ともに水素であるか又は両方ともフッ素であり、1つの前記R基が所望により、少なくとも1つの非ハロゲンへテロ原子を含む1〜4個の炭素原子のフルオロアルキル基又はペルフルオロアルキル基である、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
1つの前記R基が水素又はフッ素であり、1つの前記R基がペルフルオロメチルであり、1つの前記R基が所望により、少なくとも1つの非ハロゲンへテロ原子を含む1〜4個の炭素原子のフルオロアルキル基又はペルフルオロアルキル基である、請求項27に記載の組成物。
【請求項30】
前記nが少なくとも20の数平均値である、請求項24に記載の組成物。
【請求項31】
請求項23の組成物から調製されるフルオロポリマー。
【請求項32】
請求項31のフルオロポリマー及び液体キャリアを含むコーティング組成物。
【請求項33】
少なくとも1つの基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部へ、請求項32のコーティング組成物を適用することを含むプロセス。
【請求項34】
少なくとも1つのその表面のその少なくとも部分上に、請求項32の前記コーティング組成物又は請求項31の前記フルオロポリマーを有する、少なくとも1つの基材を含むコーティングされた物品。

【公表番号】特表2010−514906(P2010−514906A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544259(P2009−544259)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/088903
【国際公開番号】WO2008/083199
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】