説明

門型カルバート

【課題】 両側版部の下端部の沈下方向及びカルバート支間方向の変位を制限することができ、構築の工期と手間を縮減することもできる門型カルバートを提供する。
【解決手段】 掘削地盤6に、上面に嵌合溝8が形成されたプレキャストコンクリート製又は現場打ち製の基礎コンクリート7が設けられ、基礎コンクリート7の嵌合溝8に、門型カルバート1のプレキャストコンクリート製の側版部3の下端及び該下端の側面から水平に延びるフーチング部4がガタ無く嵌合されており、基礎コンクリート7の上面とフーチング部4の上面とが略面一となるように落とし込まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路下水路、高架鉄道下水路、地下通路等、主に地中のコンクリート建造物に使用される門型カルバートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6(a)に示すように、断面口型構造のコンクリート製のボックスカルバート51は、河川Rの上に構築する場合に、河川Rの下に底版部52を設置するために、既存の河川Rを切り回すなどの対策を行う必要がある。
【0003】
これに対し、図6(b)に示すように、断面門型構造のコンクリート製の門型カルバート61は、底版部が無いため、河川Rの上に構築する場合にも、既存の河川Rを切り回す必要が無く、自然環境にやさしい工法である。一方、底版部が無い構造上、門型カルバートの基礎部が堅固でない場合には、死荷重及び活荷重載荷時に、両側版部の下端部がカルバート支間方向(互いに離れたり接近したりする水平方向)に変位するおそれがある。そこで、門型カルバートは、基礎部を堅固にする必要がある。もし基礎部が堅固でなければ、門型カルバートの部材厚を厚くしなければならないため不経済となる。また、基礎部の条件によっては、門型にできない場合もある。
【0004】
図6(b)に示す門型カルバート61は、現場打ちコンクリート製による一体型である。すなわち、掘削地盤66に杭67を打ち込むとともに、杭67の頭部67aを突出させるようにして杭67と接合する基礎コンクリート68を打設し、基礎コンクリート68の上に、上版部62と両側版部63と両フーチング部64とからなる門型カルバート61を現場打ちして一体成形し、フーチング部64に杭67の頭部67aを埋設して構築する。この門型カルバート61は、側版部63の上部が上版部62に一体化されているとともに、フーチング部64が杭67及び基礎コンクリート68に一体化されているため、両側版部63の下端部のカルバート支間方向の変位を制限することができる。しかし、杭67を打ち込んだり、門型カルバート61を現場打ちしたりするには、多くの工期と手間がかかる。
【0005】
そこで、工期と手間を縮減するには、図6(c)に示す分割型の門型カルバート71のように、上版部72をプレキャストコンクリート製とし、それとは別体で、側版部73及びフーチング部74を左右別々のプレキャストコンクリート製とし、掘削地盤76に杭77を打ち込むとともに、杭77の頭部が突出しないようにして杭77と接合する基礎コンクリート78を打設し、基礎コンクリート78の上にフーチング部74を設置し、両側版部73に上版部72を連結する工法が考えられる。しかし、杭77を打ち込む手間は残る。また、フーチング部74と杭77及び基礎コンクリート78とが一体化されていないため、前記カルバート支間方向の変位を制限することができない。
【0006】
また、特許文献1には、図7に示すような門型カルバート81が開示されている。すなわち、上版部82と側版部83とからなり、側版部83の下端には円い凸部84が形成されている。この凸部84を受けるために、土台85の上面に円い凹部86が形成されている。凸部84と凹部86とでヒンジ継手を構成しており、側版部83を土台85に固定一体化することなく回動自在とすることにより、土台85に回転モーメントが生じない構造となっている。また、円い凸部84と、土台85の凹部86に間欠的に設けた梁87とに、軸88を挿通することにより、耐震性等に対処している。この実施例によれば、ヒンジ継手を用いることで土台85の底面にかかる反力が均一化して必要地耐力が減少するとされている。また、土台85を用いることで杭を省いているようである。しかし、梁87や軸88を用いたヒンジ継手は構造が複雑で、施工に手間がかかる。また、寸法は不明であるが、図示された程度の大きさ及び構造の土台85だけでは、沈下方向及びカルバート支間方向の変位の少ない堅固な基礎部にすることは困難である。
【特許文献1】特開2001−254428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記課題を解決し、両側版部の下端部の沈下方向及びカルバート支間方向の変位を制限することができ、構築の工期と手間を縮減することもできる門型カルバートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の門型カルバートは、掘削地盤に、上面に嵌合溝が形成されたプレキャストコンクリート製又は現場打ち製の基礎コンクリートが設けられ、前記基礎コンクリートの嵌合溝に、門型カルバートのプレキャストコンクリート製の側版部の下端及び該下端の側面から水平に延びるフーチング部が嵌合されたことを特徴とする。
【0009】
基礎コンクリートと門型カルバートとの寸法関係は、次の数式(1)〜(4)を満たすことが好ましい。
a+2b≦A≦a+5b …(1)
1.5b≦B≦2.5b …(2)
C≒a+c …(3)
D≒b …(4)
ここで、Aは基礎コンクリートの幅
Bは基礎コンクリートの高さ
Cは基礎コンクリートの嵌合溝の内幅
Dは基礎コンクリートの嵌合溝の深さ
aは門型カルバートのフーチング部の幅
bは門型カルバートのフーチング部の厚さ
cは門型カルバートの側版部の厚さ
【0010】
数式(1)の下限は、主として沈降方向の変位を効果的に制限するためと、嵌合溝の両側方に残る基礎コンクリートの上部の幅を確保するためであり、数式(1)の上限は取扱性とコストの見地である。
数式(2)の下限は、主としてカルバート支間方向の変位を効果的に制限するためと、嵌合溝の下方に残る基礎コンクリートの厚さを確保するためであり、数式(2)の上限は取扱性とコストの見地である。
数式(3)は、嵌合溝に側版部の下端及びフーチング部をガタ無く嵌合させるためであり、従ってCが、前記のとおりガタ無く嵌合しうる程度にa+cより若干大きい場合を含んで、a+cとほぼ等しいことを意味している。
数式(4)は、嵌合溝に側版部の下端及びフーチング部を嵌合させるときに、基礎コンクリートの上面とフーチング部の上面とが略面一となるように落とし込むためであり、従ってDが、前記のとおり略面一とみられる程度に、bとほぼ等しいことを意味している。
【0011】
門型カルバートは、次の何れの態様でもよい。
(a)上版部と両側版部と両フーチング部とが一体成形されたプレキャストコンクリート製である態様
(b)上版部がプレキャストコンクリート製であり、それとは別体で、側版部及びフーチング部が左右別々のプレキャストコンクリート製である態様
【0012】
また、フーチング部は、側版部の下端の内側面からカルバート内側へ水平に延びたもの(L型)でもよいし、側版部の下端の外側面からカルバート外側へ水平に延びたもの(L型)でもよいし、側版部の下端の内側面及び外側面からカルバート内側及び外側へ水平に延びたもの(T型)でもよい。このように、側版部の下端に加えてフーチング部が基礎コンクリートの嵌合溝に嵌合して載置されることにより、門型カルバートの起立安定性が増す。
【0013】
また、本発明は、多くの場合において杭を必要としないものであるが、現場の地盤状況等によっては必要に応じて基礎コンクリートに杭を付加することもできる。
【0014】
また、基礎コンクリートの嵌合溝の底部に上方へ突出する連結部を備えたアンカーを埋設しておいて、該連結部をプレキャストコンクリート製の側版部又はフーチング部と結合して一体化することもできる。
【0015】
門型カルバートの用途は、特に限定されず、道路下水路、高架鉄道下水路、歩行者用地下通路等の各種コンクリート建造物を例示できる。
【発明の効果】
【0016】
以上詳述したように、本発明に係る門型カルバートによれば、両側版部の下端部の沈下方向及びカルバート支間方向の変位を制限することができ、構築の工期と手間を縮減することもできる優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
掘削地盤6に、上面に嵌合溝8が形成されたプレキャストコンクリート製又は現場打ち製の基礎コンクリート7が設けられ、基礎コンクリート7の嵌合溝8に、門型カルバート1のプレキャストコンクリート製の側版部3の下端及び該下端の側面から水平に延びるフーチング部4が嵌合されている。基礎コンクリート7と門型カルバート1との寸法関係は、前記数式(1)〜(4)を全て満たす。
【実施例1】
【0018】
図1、図2は本発明の実施例1を示す。門型カルバート建造物は、その長さ方向にセグメントとしての門型カルバートを連結して構築されたものであり、本実施例では道路の下側に建造される河川Rの地下コンクリート建造物である。
【0019】
前記セグメントとしての門型カルバート1は分割型であり、上版部2は例えばPC鋼材内蔵のプレキャストコンクリート製であり、それとは別体で、側版部3及びフーチング部4(両部3、4は一体)は左右別々の例えば鉄筋埋設のプレキャストコンクリート製である。上版部2は、梁と側版部3の上端に続く柱とを含む形状に成形されている。側版部3は柱形状に成形されており、その厚さcは25〜75cm(例えば50cm)である。フーチング部4は側版部3の下端の内側面からカルバート内側へ水平に延びた短板状に成形されており、その幅aは50〜150cm(例えば100cm)、厚さbは30〜90cm(例えば60cm)である。なお、これらの数値は例示であり、限定されるものではない。各部2、3、4はそれらに作用する断面力に耐え得る強度で設計・成形されている。
【0020】
掘削地盤6には、上面に矩形の嵌合溝8が形成されたプレキャストコンクリート製又は現場打ち製の断面略四角形状の基礎コンクリート7が、左右の側版部3に対応して左右に設けられている。9は基礎コンクリート7の下に敷設された基礎砕石である。基礎コンクリート7と門型カルバート1との寸法関係は前記数式(1)〜(4)を満たしており、前記門型カルバート1で例示した寸法のうち括弧書きした数値の場合には次のようになる。
220cm≦基礎コンクリートの幅A≦400cm …(1’)
90cm≦基礎コンクリートの高さB≦150cm …(2’)
嵌合溝の内幅C≒150cm …(3’)
嵌合溝の深さD≒60cm …(4’)
【0021】
基礎コンクリート7の嵌合溝8に、門型カルバート1の側版部3の下端及びフーチング部4が嵌合されたことにより、基礎コンクリート7と門型カルバート1とが幅方向にずれないように十分に結合されている。
【0022】
そして、両側版部3の上端部に上版部2が架設され、例えば鋼板、PC鋼材、鋼棒、ボルト等の接続部材から選ばれる1つ又は2つ以上(図示略)で連結されている。こうして一つの門型カルバート1が設置されている。その繰り返しにより多数の門型カルバート1が一列に並設され、上版部2及び側版部3に設けられた複数本の鋼材(図示略)によって建造物の軸方向に連結されている。
【0023】
この実施例1の門型カルバート1によれば、次のような作用効果が得られる。
(a)門型カルバート1がフーチング部4を備えているのに加えて、前記数式(1)〜(4)を全て満たす寸法関係の基礎コンクリート7の嵌合溝8にこのフーチング部4がガタ無く嵌合して、十分な幅と十分な高さとを有する巨大な二重フーチングを構成しているため、基礎部が堅固であり、両側版部3の下端部の沈降方向及びカルバート支間方向の変位を制限することができる。そして、多くの場合において杭を必要としないので、施工が容易になる。なお、現場の地盤状況等によっては必要に応じて基礎コンクリートに杭を付加してもよいが、その杭も量的に少なくて済む。
【0024】
(b)側版部3の下端に加えてフーチング部4が基礎コンクリート7の嵌合溝8に嵌合して載置されることにより、門型カルバート1の起立安定性が増す。
【0025】
(c)仮にこの二重フーチングのような巨大なフーチング部を側版部3とともにプレキャストで形成すると、その運搬性や取扱性が低下するが、フーチング部4と基礎コンクリート7とを分けて形成しているため、運搬性や取扱性が良い。
【0026】
(d)上版部2はプレキャストコンクリート製、側版部3及びフーチング部4もプレキャストコンクリート製であり、現場打ちするのはプレキャストコンクリート製を用いない場合の基礎コンクリート7だけで済むため、構築の工期と手間を縮減することができる。
【実施例2】
【0027】
図3、図4は本発明の実施例2を示す。この門型カルバート21は、フーチング部4が側版部3の下端の外側面からカルバート外側へ水平に延びている点においてのみ実施例1と相違するものであり、実施例1と共通の部材に共通の符号を付してその説明を省略する。門型カルバート21及び基礎コンクリート7の各部の寸法としては、実施例1と同等の数値を例示できる。この実施例2によっても、実施例1と同様の作用効果が得られる。
【実施例3】
【0028】
図5は本発明の実施例3を示す。この門型カルバート31は、フーチング部4が側版部3の下端の内側面及び外側面からカルバート内側及び外側へ水平に延びている点(T型フーチング)においてのみ実施例1と相違するものであり、実施例1と共通の部材に共通の符号を付してその説明を省略する。
【0029】
このようなT型フーチングとすることにより、門型カルバート21の起立安定性がさらに増す。この場合のフーチング部4の幅aは、カルバート内側へ延びた部分の幅a1とカルバート外側へ延びた部分の幅a2との和である。幅a1、幅a2はいずれも50〜150cm(例えば100cm)、従ってaは100〜300cm(例えば200cm)、門型カルバートの他部は実施例1と同様の数値、をそれぞれ例示できる。そして、この例示する寸法のうち括弧書きした数値の場合、基礎コンクリートの幅A、嵌合溝の内幅Cは次のようになり、他部は実施例1と同等となる。
320cm≦基礎コンクリートの幅A≦500cm …(1”)
嵌合溝の内幅C≒250cm …(3”)
この実施例3によっても、実施例1と同様の作用効果が得られる。
【0030】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施例1の門型カルバートの斜視図である。
【図2】(a)は同門型カルバートの正面図、(b)はIIb−IIb断面図、(c)は部分拡大正面図である。
【図3】本発明の実施例2の門型カルバートの斜視図である。
【図4】(a)は同門型カルバートの正面図、(b)はIVb−IVb断面図、(c)は部分拡大正面図である。
【図5】本発明の実施例3の門型カルバートを示し、(a)は正面図、(b)はVb−Vb断面図、(c)は部分拡大正面図である。
【図6】従来例の正面図である。
【図7】別の従来例の正面図である。
【符号の説明】
【0032】
1、21、31 門型カルバート
2 上版部
3 側版部
4 フーチング部
6 掘削地盤
7 基礎コンクリート
8 嵌合溝
9 基礎砕石
R 河川

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削地盤に、上面に嵌合溝が形成されたプレキャストコンクリート製又は現場打ち製の基礎コンクリートが設けられ、
前記基礎コンクリートの嵌合溝に、門型カルバートのプレキャストコンクリート製の側版部の下端及び該下端の側面から水平に延びるフーチング部が嵌合されたことを特徴とする門型カルバート。
【請求項2】
前記基礎コンクリートと前記門型カルバートとの寸法関係は、次の数式(1)〜(4)を満たす請求項1記載の門型カルバート。
a+2b≦A≦a+5b …(1)
1.5b≦B≦2.5b …(2)
C≒a+c …(3)
D≒b …(4)
ここで、Aは基礎コンクリートの幅
Bは基礎コンクリートの高さ
Cは基礎コンクリートの嵌合溝の内幅
Dは基礎コンクリートの嵌合溝の深さ
aは門型カルバートのフーチング部の幅
bは門型カルバートのフーチング部の高さ
cは門型カルバートの側版部の厚さ

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−247193(P2007−247193A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−69831(P2006−69831)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(000186898)昭和コンクリート工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】