説明

門型架台及びセントル台車

【課題】門型架台の作業場に落下した残コンクリートを門型架台から運搬して、残コンクリートにより作業に支承をきたさないようにする門型架台及びセントル台車を提供することを目的とする。
【解決手段】掘削されたトンネル壁面にコンクリートを打設するための打設空間を形成する型枠を型枠支持部を介して支持し、トンネルの長手方向に相互に間隔をおいて並ぶ複数の門型支柱21を連結してなる門型架台20であって、門型支柱21間に設けられた作業場35に落下した、コンクリートの打設時に発生した残余分である残コンクリートを門型架台20の長手方向外側に運び出す運搬装置45を備えたことを特徴とする門型架台。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セントル台車及びそれに用いられる門型架台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、トンネル壁面をコンクリートで覆工する場合に、特許文献1記載のようなセントル台車に設けられているアーチ形状の型枠を用い、坑口から逐次、型枠が設けられた区間毎に、覆工コンクリートの打設が行われる。
そして、このようなコンクリートの打設は、コンクリートポンプに繋がれた配管を用いて、生コンクリートを型枠の外側の打設空間に圧送することによって行われる。
この場合、打設空間に生コンクリートを流し込む位置は、打設空間に生コンクリートが充填されていくのにあわせて、通常は、トンネルの側方から天頂へと徐々に高い位置へと変えて行われる。そして、その度に門型架台に設けられた作業場の上方に載置された切替装置により配管の切替えが行われている。また、配管は使用の度に、配管内に残っている生コンクリートを排出して配管内を空にすると共に洗浄を行う必要があることから、配管の切替えに伴い、配管内の生コンクリートの排出及び洗浄が行われている。そのため、トンネル内、特にセントル台車の門型架台の作業場には、多くの残コンクリート(特に骨材)が落下し堆積することとなっている。
【0003】
しかし、現状では、作業場に落下した残コンクリートは、そのまま放置されてしまうか、若しくは、作業場から地面に落とす程度の処理しか行われないことから、場合によっては、作業に支承をきたすことがあった。
また、生コンクリートを圧送するための配管等の洗浄に使用した洗浄排水等を流すための排水機構は、傾斜を利用したものであることから、残コンクリート、特に粒径が大きい骨材等までを流せるほどの傾斜を排水機構に付けることができず、洗浄排水等の水流により流すことができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−91751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、門型架台の作業場に落下した残コンクリートを門型架台から運搬して、残コンクリートにより作業に支承をきたさないようにする門型架台及びセントル台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の門型架台は、掘削されたトンネル壁面にコンクリートを打設するための打設空間を形成する型枠を型枠支持部を介して支持し、トンネルの長手方向に相互に間隔をおいて並ぶ複数の門型脚体を連結してなる門型架台であって、前記門型脚体間に設けられた作業場に落下した、前記コンクリートの打設時に発生した残余分である残コンクリートを前記門型架台の長手方向外側に運び出す運搬装置を備えたことを特徴とする。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のセントル台車は、上記門型架台を備えている。
【0008】
ここで運搬装置としては、特に限定はされないが、配管の洗浄に使用した洗浄排水等の水流を利用して、作業場の残コンクリートを集めることができ、このようにして集めたもののうち、セメント等のように粒子の細かいものを洗浄排水等の水流を利用して運搬でき、また、新たに運搬装置を設けるためのスペースを確保する必要がなくスペース効率がよいことから、洗浄排水等の排水を排出するための排水シュータ内に組み込まれていることが好ましい。
【0009】
また、運搬装置としては、特に限定はされないが、電動機や内燃機関によって駆動され、その駆動力により物を運搬するものが好ましい。具体的には、ベルトコンベア、パンコンベア、スクリューコンベア等が例示でき、作業性及び保守性がよいことから、ベルトコンベア又はスクリューコンベアであることがより好ましい。
【0010】
また、作業場の下方の空間が狭くならず、切羽と坑口との行き来が容易にできることから、運搬装置は、坑口側からみて門型脚体の側方に設けられていることが好ましい。
【0011】
排水シュータとしては、特に限定はされないが、坑口側からみて門型脚体の一方の側方に設けられていてもよいし、両側方に設けられていてもよい。また、排水シュータが門型脚体の両側方に設けられている場合には、運搬装置は、それぞれの排水シュータに組み込まれていてもよいし、一方の排水シュータのみに組み込まれていてもよい。
また、洗浄排水等を流すために付けられる排水シュータの傾斜としては、特に限定はされないが、坑口側を高くし、切羽側を低くした傾斜でもよいし、切羽側を高くし、坑口側を低くした傾斜でもよいし、長さ方向の中間部を高くし、両端(坑口側の端と切羽側の端)を低くした傾斜でもよい。
【0012】
門型脚体の態様としては、特に限定はされないが、下方へと延びる2本の脚部とこの2本の脚部を繋ぐ繋ぎ部とを有する門型支柱である態様や、トンネルの幅方向に間隔をおいて立つ2本の支柱とこの2本の支柱に架け渡され、トンネルの幅方向へと延びる梁とからなる態様等が例示できる。
【0013】
作業場としては、特に限定はされないが、作業者等が載上する面に堆積する残コンクリートの量を減らすことができると共に、残コンクリートを配管等の洗浄排水等を用いて容易に集め、運搬装置へ移動することができることから、作業者等が載上する上面が網目状の床部と、床部の下方に運搬装置の方へと下っていく傾斜面を有する底部とを有する構造のものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、門型架台の作業場に落下した残コンクリートを門型架台の長手方向外側に運搬し、残コンクリートをトンネルの外等に容易に排出することができることから、残コンクリートにより作業に支承をきたさないようにする門型架台及びセントル台車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例の門型架台の左側面図である。
【図2】同門型架台及びセントル台車の正面図である。
【図3】同門型架台の作業場の底部の平面図である。
【図4】同門型架台の排水シュータの一部の断面図である。
【図5】本発明の別の実施例の門型架台の排水シュータの一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0016】
本発明の実施例の門型架台を図1〜図4を用いて説明する。
【0017】
坑口側からみたセントル台車10の正面図である図2に示すように、門型架台20は、トンネル15に覆工コンクリートを打設するための打設空間16を形成するための型枠11、12を支持している。
【0018】
図1〜図4に示すように、門型架台20は、トンネル15の床面17に、互いに平行に敷設された2本のレール18に載っている4本の門型支柱21と、4本の門型支柱21を繋ぐ連結桁30、31、32と、門型支柱21の間に設けられた作業場35と、門型支柱21の左側方に設けられ、門型架台20の長手方向(トンネルの長手方向でもある)へと延びる排水シュータ40とを有する。
【0019】
門型支柱21は、下方へと延びる2本の脚部26と2本の脚部26を繋いでいる繋ぎ部27とを有する門型をしている。門型支柱21は、互いに間隔をおいて平行に並んでおり、そのうち、両端の門型支柱21の脚部26の下端には、トンネル15内を移動できるよう、モータ22によって駆動する車輪23を有する車台24が取り付けられている。また、それぞれの門型支柱21には、側方へと延びるターンパックル25が突設されており、このターンパックル25を介して、側部の型枠11を支持している。
【0020】
連結桁30、31、32には、4本の門型支柱21をそれぞれ脚部26で繋いでいる下連結桁30と、繋ぎ部27で繋いでいる上連結桁31と、端の門型支柱21とその隣の門型支柱21との間に渡され、天頂部の型枠12を上下動可能に支持する昇降装置13が載置されている載置桁32とがある。
【0021】
作業場35は、上連結桁31上に設けられ、排水シュータ40側へと下っていく傾斜面を有する底部36と、底部36の上方に設けられ、上面にエキスバンドメタルが張られている床部37とを備えている。底部36は、排水シュータ40側の端に、ポッパー38が設けられ、ポッパー38の下端は、排水シュータ40へと繋がっている。床部37の上面は、作業者が作業し易いよう、略水平になっている。また、作業場35の上方には、生コンクリートを圧送するための配管を切換える切替装置50があり、切替装置50は、門型支柱21上に置かれたジャッキ51によって支持されている。
【0022】
排水シュータ40は、底板41と側板42とによって囲まれ、上方が開口した樋状をしており、坑口側の門型支柱21よりも坑口側の位置から切羽側の門型支柱21よりも切羽側の位置まで一本の樋として形成されている。また、底板41の途中(中間の門型支柱21の付近)には二箇所の上下の段差ができている。そして、坑口側を高くし、切羽側を低くすることで、坑口側から切羽側へと洗浄排水W等が流れるように傾斜をつけていると共に、底板41の切羽側端部には、洗浄排水W等を排水シュータ40から排出するための排水口43が設けられている。なお、排水シュータは、切羽側を高くし、坑口側を低くすることで傾斜をつけているものでもよいし、長さ方向の中間部を高くし、両端(坑口側の端と切羽側の端)を低くすることで両端へと下る傾斜をつけているものでもよい。
【0023】
側板42で囲まれた空間内には、隣り合う門型支柱21間にそれぞれ1台ずつで合計3台のベルトコンベア45が長さ方向に連続して組み込まれている。そして、それぞれのベルトコンベア45は、底板41と略平行に設けられ、坑口側から運ばれてきた残コンクリートCを排出口へと連続して運べるよう、坑口側のものほど、上になるようにして、互いに端部が重なるようになっている。また、ベルトコンベア45は、側板42に回転可能に軸着された二つのベルト車46を両端にし、そのベルト車46に無端環状のベルト47を掛けたものである。そして、ベルト47は、坑口側のベルト車46を回転駆動する駆動モータ48により駆動するようになっている。また、ベルト47と底板41との間には、洗浄排水W等の水を流すための隙間Aができ、ベルト47と側板42との間には、洗浄排水W等の水流により運搬できる粒子径の小さいもの(例えばセメント)は通れ、洗浄排水W等の水流により運搬できない粒子径の大きいもの(例えば骨材)は通れない隙間ができている。なお、本実施例では、3台のベルトコンベア45はそれぞれに設けられた駆動モータ48により駆動するようになっているが、ベルトコンベアが互いに重なる部位でそれぞれのベルト車同士をチェーン等により連結して、一つの駆動モータにより3台のベルトコンベアが駆動するようにしたものでもよい。また、本実施例では、3台のベルトコンベアを用いているが、その台数は特に限定はされず、2台にしてもよいし、長尺のベルトコンベアを1台にしてもよい。
【0024】
次に、本実施例の門型架台20を用いた、覆工コンクリートの打設方法について、説明する。
【0025】
先ず、覆工コンクリートが打設される場所に門型架台20を移動して、設置し、打設空間16が形成されるように型枠11、12をセットする。そして、生コンクリートを圧送するための配管を切替装置50により切換えることで、生コンクリートが打設空間16に注入される場所を変更しながら打設を行う。打設終了後、配管内等に残った生コンクリートを作業場35に排出する。排出後、配管等を水により洗浄し、その排水も作業場に排出する。また、作業場においても、水等を用いて、床部37に付着している残コンクリートCを底部36へと落下させると共に、床部37等の洗浄を行う。そして、底部36に落とされた残コンクリートCは、洗浄排水W等によりホッパー38から排水シュータ40へと流される。洗浄排水W等と共に排水シュータ40へと流された残コンクリートCは、ベルトコンベア45上に落下し、ベルトコンベア45により、排水口43へと運ばれ、排水口43から、門型架台20の外へと放出される。そして、門型架台20の外へと出された残コンクリートCは、ズリ出し用のコンベア等を用いて、トンネルの外へと排出される。また、残コンクリートCと共に排水シュータ40へと流れてきた洗浄排水W等の水は、一部はベルトコンベア45上を流下し、一部はベルト47と側板42との間の隙間等から隙間Aへと落ち隙間Aを流下し、共に排水口43から門型架台20の外へと放出される。
【0026】
本実施例よれば、次の(a)〜(f)の効果が得られる。
(a)排水シュータ40内にベルトコンベア45を組み込むことで、洗浄排水W等の水流だけでは運ぶことができなかった残コンクリート(特に骨材)Cを作業場35から門型架台20の長手方向の外側に運ぶことができるようになった。
(b)作業場35の残コンクリートCを門型架台20の長手方向の外側に運ぶことにより、残コンクリートCをトンネルの外等に容易に運搬することができるようになった。
(c)水等を用いて、作業場の残コンクリートCの洗浄除去を行うことができるようになった。
(d)残コンクリートCが作業場及びトンネル(坑道)内に残されないことから、残コンクリートCにより作業に支承をきたすことをなくすことができた。
(e)洗浄排水W等の水を用いて残コンクリートCの洗浄除去を行うことで、洗浄排水W等の水流によって流せる微粒子分(例えばセメント等)は、水流で運搬されることから、使用するベルトコンベアを比較的小型のベルトコンベア45にすることができた。
(f)ベルトコンベア45を各門型支柱21間に1台ずつ設けることにより、例えば長尺の一本ものの場合より、駆動モータ48を小型のものにすることができ、ベルトコンベア45を設置することができた。
【0027】
本発明の別の実施例は、図5に示すように、排水シュータ40を断面がU字状の樋63にし、円柱状のシャフト61の周りに羽根62が螺旋状に取付けられたスクリューコンベア60を樋63の中に組み込んだものである。本実施例においても、ベルトコンベア45を用いた上記実施例と同じ効果を得ることができた。
【0028】
本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で、適宜変更して具体化することもできる。
【符号の説明】
【0029】
10 セントル台車
11 型枠(側部)
12 型枠(天頂部)
15 トンネル
16 打設空間
20 門型架台
21 門型支柱
25 ターンパックル
30 下連結桁
31 上連結桁
32 載置桁
35 作業場
40 排水シュータ
45 ベルトコンベア
60 スクリューコンベア
C 残コンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削されたトンネル壁面にコンクリートを打設するための打設空間を形成する型枠を型枠支持部を介して支持し、トンネルの長手方向に相互に間隔をおいて並ぶ複数の門型脚体を連結してなる門型架台であって、
前記門型脚体間に設けられた作業場に落下した、前記コンクリートの打設時に発生した残余分である残コンクリートを前記門型架台の長手方向外側に運び出す運搬装置を備えたことを特徴とする門型架台。
【請求項2】
前記運搬装置は、排水を排出するための排水シュータ内に組み込まれている請求項1記載の門型架台。
【請求項3】
前記運搬装置は、ベルトコンベア又はスクリューコンベアである請求項1又は2記載の門型架台。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の門型架台を備えたセントル台車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−58314(P2011−58314A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211114(P2009−211114)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(596007979)大栄工機株式会社 (8)
【Fターム(参考)】