説明

閃光放電ランプ点灯装置、光照射器、及びそれを用いた光硬化材料の硬化方法

【課題】半導体ウェハー等の光照射工程においてウェハー上のひずみの発生を抑制し、それにより半導体チップ製造における歩留まりを向上する。
【解決手段】本発明の閃光放電ランプ点灯装置は、入力電圧を昇圧して複数の蓄電素子にそれぞれ充電する複数の昇圧充電回路、複数の蓄電素子に接続される照射範囲の異なる複数の閃光放電ランプをそれぞれ点灯開始させるための複数の始動回路、複数の充電回路及び始動回路をそれぞれ制御する複数の電源制御回路、及び複数の電源制御回路を統括制御する点灯装置制御部を備え、点灯装置制御部は、複数の電源制御回路に個別のタイミングで複数の閃光放電ランプを点灯させるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は閃光放電ランプ点灯装置、光照射器、及びそれを用いた光硬化材料の硬化方法に関し、例えば、半導体製造工程における半導体ウェハー基板の光照射工程に用いられる閃光放電ランプ点灯装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造工程において、ダイシングと呼ばれる半導体ウェハー基板を個々の半導体チップに分離する工程では、分離前に半導体ウェハー基板に貼付する紫外線硬化性テープ(以下、「テープ」という)又は半導体ウェハー基板に塗布する紫外線硬化性の塗料(以下、「塗料」という)を硬化させるための紫外線照射用の光源として紫外線ランプが用いられてきた。
【0003】
しかしながら、UVランプからの放射熱による半導体ウェハー基板の変形や、照射時間などを考慮して、近年では紫外線ランプに代わり、閃光放電光を照射させることのできるキセノンランプに代表される閃光放電ランプが採用されるようになってきた。これは、紫外線ランプと比較して、閃光放電ランプは点灯時に放射する熱が少ないこと、及び短時間に高照度の放射光を照射できることから、テープ又は塗料を効率よく硬化させることができるためである。
【0004】
特許文献1はこの閃光放電ランプを点灯させるための点灯装置を開示する。点灯装置は蓄電コンデンサを高電圧で充電し、この充電された高電圧を閃光放電ランプに印加した状態で、放電ランプの外部に近接させたトリガワイヤに数10kVの高電圧パルスを印加することにより、ランプを絶縁破壊させて蓄電コンデンサの電荷をランプ電流として一気に放電させる。閃光放電ランプは通常、円形の半導体ウェハーに対応するような環状ランプであり、半導体ウェハーは閃光放電ランプによってほぼ一様に照射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4140279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年は半導体製造の高効率化を目的として半導体ウェハーの大型化(大口径化)が望まれており、従来主流であったφ300mmのウェハーに代わりφ450mmのウェハーが採用されるようになってきた。これに対しては、半導体ウェハーの面積が大きくなるので、その分エネルギーの大きな光を放電照射すればよい。しかし、φ300mmのウェハーではほとんど問題とならなかった光照射に起因するウェハーのひずみが、φ450mmのウェハーにおいては無視できないレベルとなって現れることが分かってきた。
【0007】
上記の光照射工程においてテープ又は塗料を硬化させる際、テープ又は塗料は硬化する過程で微少ながら収縮をする。この収縮の影響として、半導体ウェハーにおけるチップにひずみが生じる。これは円形の半導体ウェハーの中心部付近のチップではほとんど問題とならないが、中心部から外側方向へ向かうほど収縮の影響が大きくなりチップのひずみが問題となる。従って、このひずみはφ300mmのウェハーの場合ではほとんど問題とならないが、φ450mmのウェハーでは、特に外周部に存在するチップでその影響が大きくなる。ひずみの量が大きいと半導体チップは不良となってしまい、これにより半導体チップ製造における歩留まりが低下してしまうという問題があった。
【0008】
そこで本発明は、照射対象物となる基板に付されたテープ又は塗料を硬化させる際に、テープ又は塗料の収縮による基板上のひずみ発生を抑制することを目的とする。特に、半導体ウェハーの光照射工程においてウェハー上のひずみの発生を抑制し、それにより半導体チップ製造における歩留まりを向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の側面は、半導体ウェハーに付された光硬化材料を硬化させるための光照射器である。光照射器は、第1の環状閃光放電ランプ、第1の環状閃光放電ランプの内側に配置された第2の環状閃光放電ランプ、第1の環状閃光放電ランプを点灯させる第1の電源部、第2の環状閃光放電ランプを点灯させる第2の電源部、並びに第1及び第2の電源部を統括制御する点灯装置制御部を備え、点灯装置制御部は、第1の電源部による点灯を第2の電源部による点灯開始よりも先に開始させるように構成される。
【0010】
本発明の第2の側面は、基板に付された光硬化材料を硬化させるための光照射器である。光照射器は、相互に異なる照射範囲を有する複数の閃光放電ランプ、複数の閃光放電ランプをそれぞれ点灯させる複数の電源部、及び複数の電源部を統括制御する点灯装置制御部を備え、点灯装置制御部は、複数の電源部に個別のタイミングで複数の閃光放電ランプを点灯させるように構成される。
【0011】
好ましくは、光照射器は、同心配置されて相互に異なる照射範囲を有する環状の複数の閃光放電ランプ、複数の閃光放電ランプをそれぞれ点灯させる複数の電源部、及び複数の電源部を統括制御する点灯装置制御部を備え、点灯装置制御部は、複数の電源部に個別のタイミングで複数の閃光放電ランプを点灯させるように構成される。複数の電源部は、外側からi番目の照射範囲を有する閃光放電ランプを点灯させるi番目の電源部及び外側からj番目(i<j)の照射範囲を有する閃光放電ランプを点灯させるj番目の電源部を含み、点灯装置制御部は、i番目の電源部による点灯をj番目の電源部による点灯開始よりも先に開始させるように構成される。
【0012】
本発明の第3の側面は、同心配置され相互に異なる照射範囲を有する複数の閃光放電ランプ、複数の閃光放電ランプをそれぞれ点灯させる複数の電源部、及び複数の電源部を統括制御する点灯装置制御部を備えた光照射器を用いて、基板に付された光硬化材料を硬化させる方法である。複数の電源部は、外側からi番目の照射範囲を有する閃光放電ランプを点灯させるi番目の電源部及び外側からj番目(i<j)の照射範囲を有する閃光放電ランプを点灯させるj番目の電源部を含み、本方法は、点灯装置制御部が、i番目の電源部による点灯とj番目の電源部による点灯とを個別のタイミングで制御する工程を備る。個別のタイミングで制御する工程は、(A)点灯装置制御部がi番目の電源部による点灯を開始させる工程、及び(B)工程(A)の後に、点灯装置制御部がj番目の電源部による点灯を開始させる工程を含む。
【0013】
本発明の第4の側面は閃光放電ランプ点灯装置である。閃光放電ランプ点灯装置は、入力電圧を昇圧して複数の蓄電素子にそれぞれ充電する複数の昇圧充電回路、複数の蓄電素子に接続される照射範囲の異なる複数の閃光放電ランプをそれぞれ点灯開始させるための複数の始動回路、複数の充電回路及び始動回路をそれぞれ制御する複数の電源制御回路、及び複数の電源制御回路を統括制御する点灯装置制御部を備え、点灯装置制御部は、複数の電源制御回路に個別のタイミングで複数の閃光放電ランプを点灯させるように構成される。
【0014】
好ましくは、閃光放電ランプ点灯装置は、入力電圧を昇圧して複数の蓄電素子にそれぞれ充電する複数の昇圧充電回路、複数の蓄電素子に接続される照射範囲の異なる複数の閃光放電ランプをそれぞれ点灯開始させるための複数の始動回路、複数の充電回路及び始動回路をそれぞれ制御する複数の電源制御回路、及び複数の電源制御回路を統括制御する点灯装置制御部を備え、点灯装置制御部は、複数の電源制御回路に個別のタイミングで複数の閃光放電ランプを点灯させるように構成される。複数の閃光放電ランプは同心配置された環状ランプであり、複数の電源制御回路が、外側からi番目の照射範囲を有する閃光放電ランプに対応するi番目の電源制御回路及び外側からj番目(i<j)の照射範囲を有する閃光放電ランプに対応するj番目の電源制御回路を含み、点灯装置制御部は、i番目の電源制御回路による点灯をj番目の電源制御回路による点灯開始よりも先に開始させるように構成される。
【0015】
上記第1から第4の側面において、第1又はi番目の電源部から出力される点灯1回あたりのエネルギーが、第2又はj番目の電源部から出力される点灯1回あたりのエネルギーよりも低くなるようにしてもよい。また、好ましくはi=1である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の閃光放電ランプ点灯装置を示す図である。
【図2】閃光放電ランプを示す図である。
【図3】本発明の光照射器を示す図である。
【図4A】本発明の光照射器を説明する図である。
【図4B】本発明の光照射器を説明する図である。
【図4C】本発明の光照射器を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明の閃光放電ランプ点灯装置(以下、「点灯装置」という)の図である。点灯装置は、交流電源10を整流平滑化する整流部(11、12)、整流部の出力を受けて第1の閃光放電ランプ24に電力を供給する第1の電源部(13−27)、整流部の出力を受けて第2の閃光放電ランプ64に電力を供給する第2の電源部(53−67)、及び第1の電源部と第2の電源部を統括制御する点灯装置制御部30を備える。
【0018】
入力電源は単相電源を図示しているが三相電源であってもよい。また、整流部は整流回路11及び平滑コンデンサ12で図示しているが、昇圧チョッパ回路等で構成してもよい。なお、入力電源として直流電源が接続される場合には整流部はなくてもよい。
【0019】
第1の電源部は、整流部の出力を交流変換するフルブリッジ回路(13−16)を備える。フルブリッジ回路において、電源制御回路25は点灯装置制御部30からの充電開始指令を受けると、トランジスタ13及び16とトランジスタ14及び15を50kHz程度の高周波で交互にオン/オフさせる。このスイッチング動作によって整流部からの直流入力が交流変換される。フルブリッジ回路の交流出力はインダクタ17によって電流制限されて昇圧トランス18の1次巻線に入力され、昇圧トランス18の巻数比に従って昇圧された電圧が2次巻線に発生する。昇圧トランス18の2次巻線に発生した電圧がダイオードブリッジ19−21によって整流され、これが蓄電コンデンサ(蓄電素子)22に充電される。充電電圧は、例えば、3000V程度である。充電検出手段(不図示)(例えば、蓄電コンデンサ22の電圧検出回路)によって充電完了が検出されると、電源制御回路25は充電完了信号を点灯装置制御部30に返す。
【0020】
点灯装置制御部30は充電完了信号を受けた後、所定のタイミングで点灯指令を電源制御回路25に出力する。電源制御回路25は点灯指令を受けてイグナイタ回路26に始動信号を出力する。イグナイタ回路26は始動信号を受けると、外部トリガ27に10k〜20kVの高圧パルス電圧を発生させる。
【0021】
外部トリガ27からの高圧パルスによって閃光放電ランプ24が絶縁破壊されると、蓄電コンデンサ22に充電されていたエネルギーが放電電流ピーク制御インダクタ23によって限流されつつ閃光放電ランプ24に投入される。これにより、閃光放電ランプ24の一回の閃光点灯が行われる。この充電から点灯までの一連の動作が、設定されたタイミングで繰り返される。
【0022】
閃光放電ランプ24の点灯が不図示の点灯検出手段によって検出されると、電源制御回路25は点灯確認信号を点灯装置制御部30に返す。閃光放電ランプ24が不点の場合には、電源制御回路25は不点信号を点灯装置制御部30に返す。但し、点灯確認信号及び不点信号の送信は本発明においては必須の動作ではない。
【0023】
第2の電源部も第1の電源部と同様の基本構成を有する。第2の電源部もフルブリッジ回路(53−56)を備え、電源制御回路65は点灯装置制御部30からの充電開始指令を受けると、トランジスタ53−56を50kHz程度の高周波でスイッチングさせる。フルブリッジ回路の交流出力はインダクタ57によって電流制限されて昇圧トランス58の1次巻線に入力され、昇圧トランス58の巻数比に従って昇圧された電圧が2次巻線に発生する。昇圧トランス58の2次巻線に発生した電圧がダイオードブリッジ59−61によって整流され、これが蓄電コンデンサ(蓄電素子)62に充電される。充電電圧は、例えば、3000V程度である。不図示の充電検出手段によって充電完了が検出されると、電源制御回路65は充電完了信号を点灯装置制御部30に返す。後述するように、蓄電コンデンサ62の容量は蓄電コンデンサ22の容量と同一としてもよいし異ならせてもよい。
【0024】
点灯装置制御部30は充電完了信号を受けた後、所定のタイミングで点灯指令を電源制御回路65に出力する。電源制御回路65は点灯指令を受けてイグナイタ回路66に始動信号を出力し、イグナイタ回路66は始動信号を受けると、外部トリガ67に10k〜20kVの高圧パルス電圧を発生させる。この所定のタイミングは、点灯装置制御部30から第1の電源部の電源制御回路25に点灯指令を出力するタイミングとは個別に設定される。
【0025】
外部トリガ67からの高圧パルスによって閃光放電ランプ64が絶縁破壊されると、蓄電コンデンサ62に充電されていたエネルギーが放電電流ピーク制御インダクタ63によって限流されつつ閃光放電ランプ64に投入される。これにより、閃光放電ランプ64の一回の閃光点灯が行われる。この充電から点灯までの一連の動作が、設定されたタイミングで繰り返される。
【0026】
点灯装置制御部30はマイコン、パソコン等のコンピュータからなり、CPU31、メモリ32、及び場合によっては入出力インターフェイス33を備える。点灯装置制御部30は、上述したように第1及び第2の電源部に個別のタイミングで第1及び第2の閃光放電ランプ24及び64を点灯させるように構成される。従って、この個別の点灯タイミングは、コンピュータのメモリ32にプログラムしておいてもよいし、挿抜可能な記憶媒体から読み込まれるようにしてもよいし、通信機器から伝送媒体を介して読み込まれるようにしてもよい。また、点灯装置制御部30がパソコンからなる場合には、製造工程に応じてユーザが入出力インターフェイス33を介して所望のタイミングを入力できるようにしてもよい。また、図1では点灯装置制御部30と電源部制御回路25及び65とを有線で接続しているが、無線通信で接続してもよい。
【0027】
図2は図1の閃光放電ランプ24又は64及び外部トリガ27又は67の具体的構成を示す。閃光放電ランプ(以下、「ランプ」という)は、石英発光管101、石英発光管101の一端内部に配置された陽極102、石英発光管101の他端内部に配置された陰極103、石英発光管101の両端部を封止するシール部104、石英発光管に近接配置されたトリガワイヤ105(外部トリガ)、並びに陽極102及び陰極103にそれぞれ接続された電極芯棒106からなる。陽極102はタングステン製であり、陰極103はタングステン製電極の先端に焼結電極を溶接したものである。なお、焼結電極とはタングステンに酸化バリウムBaOや酸化アルミニウムAL203をドープし、焼き固めたものである。
【0028】
図3は本発明の光照射器を示すものであり、上段が上面図、下段が側面図である。光照射器は、ランプを内包する照射器301、第1のランプA(図1の閃光放電ランプ24に対応するものとする)、第2のランプB(図1の閃光放電ランプ64に対応するものとする)、反射板302、及びダクト303を備える。照射対象となる半導体ウェハー等の基板304がランプA及びB並びに反射鏡302に対して対向配置される。なお、ランプA及びBは同心配置されることが望ましい(図の明瞭化のためトリガワイヤは図示していないが実際には設けられる)。また、上述のイグナイタ回路26及び66からの高圧パルスが減衰しないように、ランプA及びBに付されるトリガワイヤとイグナイタ回路26及び66との間の配線は短い方が好ましい。従って、照射器301にイグナイタ回路26及び66が設けられるものとする。反射板302はランプからの放電光を被照射物に対して効率よく反射させるためのものであり、ダクト303はランプを冷却(空冷)するための吸気用又は排気用のダクトである。
【0029】
図4A−4Cは図3の光照射器におけるランプA及びBの照射範囲を説明する図である。光照射器では、ランプA及びBの主照射範囲は、ランプA及びB並びに反射鏡302の配置によって決定される。一例として、図4Aに示すエリア401はランプAの主照射エリアであり、図4Bに示すエリア402はランプBの主照射エリアであり、図4Cに示すエリア403はランプA及びランプBの主照射エリアが合成された合成照射エリアである。
【0030】
本発明では、第1の電源部によるランプAの点灯開始が第2の電源部によるランプBの点灯開始よりも先に行われるように構成される。これにより、硬化時にひずみの発生しやすい外周部付近(エリア401)を先に照射し、エリア401の光硬化材料をある程度硬化させておき、半導体チップにひずみが発生しにくい状態としておくことができる。その後ランプA及びBを点灯させてエリア401及び402の光硬化材料を硬化させていく。
【0031】
以降に示す各実施例では、次のことを前提としている。
光照射器において、φ450mmウェハーが使用され、ウェハーのチップ上にはテープ又は塗料(以下、「光硬化材料」という)が付される。
φ450mmウェハーに貼付したテープを完全に硬化させるためには、ランプA及びBの点灯における積算エネルギー値(蓄電コンデンサ22及び62からの放電エネルギーの積算値又は累積値)を13500J以上とする必要がある。
また、通常の半導体製造工程のタクトタイムとして、ランプ点灯に費やせる時間は10秒程度であり(その後20秒程度でウェハーの搬送及び待機が行われる)、この10秒程度の間に30発程度の閃光点灯が行われる。なお、ランプ点灯サイクルPPS(Pulse Per Second)は電源の充電能力にもよるが、5PPS〜10PPSとするのが一般的である。従って、一般的な製造方法から大幅な変更を行わなくても済むように、タクトタイムやランプ点灯サイクルは上記の範囲に準ずることが好ましい。
【0032】
実施例1.
本実施例では蓄電コンデンサ22及び62ともその容量を50μFとし、充電完了時の充電電圧を3000VDCとした。即ち、1回の点灯あたりの放電エネルギーEは、E=50μF×3000V/2=225Jである。また、ランプA及びB(第1及び第2の電源部)とも点灯サイクルを5PPSとした。
【0033】
表1に本実施例の点灯パターンを示す。
表1.

【0034】
表1に示すように、点灯装置制御部30は、まず第1の電源部によるランプAの点灯を開始させる。従って、0〜1秒の間は、第1の電源部によるランプAの点灯のみが行われる。PPS=5であるから、この1秒間に5回の閃光点灯が行われる。上述したように、この最初の1秒間で、ウェハー上でひずみが発生し易い外周部付近(エリア401)が照射され、光硬化材料がある程度硬化される。
【0035】
次に、点灯装置制御部30は第2の電源部によるランプBの点灯を開始させる。1〜6秒の期間では、ランプAとランプBは同じタイミングで点灯される(エリア403が照射される)。ランプA及びBともPPS=5であるから、双方ともこの期間に30回の点灯が行われる。動作開始から6秒経過の時点でランプA及びBの点灯が終了し、光照射工程が終了する。
【0036】
ランプAによる累積点灯回数、累積放電エネルギーは35回、7875Jであり、ランプBについては30回、6750Jである。従って、ランプA及びBによる点灯の合計放電エネルギーは14625Jとなり、タクトタイム10秒以下で、φ450mmウェハー上の光硬化材料を硬化させるのに必要な13500Jを得ることできる。
【0037】
実施例2.
本実施例では、蓄電コンデンサ22(ランプA側)を30μF、蓄電コンデンサ62(ランプB側)を50μFとし、どちらも充電完了時の充電電圧を3000VDCとした。即ち、コンデンサ22での1回の点灯あたりの放電エネルギーEは、E=30μF×3000V/2=135Jであり、コンデンサ62での1回の点灯あたりの放電エネルギーEは、E=50μF×3000V/2=225Jである。また、ランプB(第2の電源部)の点灯サイクルは実施例1と同様に5PPSとしたが、ランプA(第1の電源部)の点灯サイクルは、蓄電コンデンサ22の容量が実施例1の場合よりも小さいので8PPSとした。
【0038】
表2に本実施例の点灯パターンを示す。
表2.

【0039】
表2に示すように、本実施例でも点灯装置制御部30は、まず第1の電源部によってランプAの点灯を開始させる。従って、0〜1秒の間は、第1の電源部によるランプAの点灯のみが行われる。PPS=8であるから、この1秒間に8回の閃光点灯が行われる。上述したように、この最初の1秒間で、ウェハー上でひずみが発生し易い外周部付近(エリア401)が照射され、光硬化材料がある程度硬化される。さらに、ランプAの放電エネルギーが135Jであり実施例1の225Jよりも低いため、外周部付近の光硬化材料を緩やかに硬化させることができ、外周部付近のひずみがより発生し難くなる。
【0040】
次に、点灯装置制御部30は第2の電源部によるランプBの点灯を開始させる。1〜6秒の期間では、ランプAとランプBとは個別タイミングで点灯される(エリア401とエリア402が個別に照射される)。ランプAはPPS=8であるから、この期間に42回の点灯が行われ、一方ランプBはPPS=5であるから、この期間に30回の点灯が行われる。動作開始から5.3秒経過の時点でランプAの点灯が終了し、その0.7秒後、即ち動作開始から6秒経過の時点でランプBの点灯が終了し、光照射工程が終了する。
【0041】
ランプAによる累積点灯回数、累積放電エネルギーは50回、6750Jであり、ランプBについては30回、6750Jである。従って、ランプA及びBによる点灯の合計放電エネルギーは13500Jとなり、タクトタイム10秒以下で、φ450mmウェハー上の光硬化材料を硬化させるのに必要な13500Jを得ることできる。また、本実施例では、ランプA側とランプB側とで点灯一回あたりの放電エネルギーや点灯タイミングを調整することによって、双方の合計累積放電エネルギーを過不足なく13500Jに合わせることができ、省エネの観点から好ましい。
【0042】
以上のように、上記の実施例によると、照射範囲の異なる複数の閃光放電ランプをそれぞれ個別のタイミングで点灯制御することで、φ450mm半導体ウェハーのような大口径化したウェハーの光照射工程においてウェハー上のひずみの発生を抑制し、それにより半導体チップ製造における歩留まりを向上することができる。
【0043】
なお、本発明は半導体チップの製造工程だけでなく、DVDの貼り合せ工程における接着剤工程等にも適用できる。即ち、中心付近と外周付近とを個別のタイミングで照射して光硬化材料を所望の順序で硬化させることもできる。これにより、基板に付された光硬化材料の光硬化工程において、収縮が起こり易いエリアを照射するランプを先に点灯開始してそのエリアをある程度光硬化させておき、その後全体のエリアを照射して光硬化を行うことによって、光硬化材料の収縮に起因するひずみ発生を抑制することができる。
【0044】
なお、上記実施例は以下のように変形可能である。
(1)実施例では2本のランプ及びそれに対応する2個の電源部を用いたが、複数本のランプ及びそれに対応する複数の電源部を用いてもよい。この場合でも、外側付近のランプから、好ましくは最も外側のランプから点灯開始することが望ましい。即ち、n本のランプが同心配置される場合に、i<jとして、外側から中心に向けてi番目(好ましくは、i=1)のランプのi番目の電源部による点灯をj番目のランプのj番目の電源部による点灯開始よりも先に開始するようにしてもよい。この際、外側のランプから中心側のランプに向けて(1番目、2番目・・・n番目のように)順次点灯開始するようにしてもよい。
【0045】
(2)実施例では閃光放電ランプとして円形の環状ランプを用いたが、形状はこれに限られず、例えば角形の環状ランプを用いてもよいし、半円弧上のランプをつなげるように配置して環状としてもよいし、あるいは、複数の短い直管ランプを輪状に配置して環状形成してもよい。
【0046】
(3)実施例では電源部とランプが1対1に対応するものを示したが、例えば、1つの電源部に対してランプを2本接続する構成(合計4本)等も可能である。即ち、図1に示すような電源部1つに対して複数のランプが直列接続されるようにしてもよい。また、図1の昇圧トランス18又は58の1次巻線又は2次巻線側を複数系統に分岐し、1つの昇圧トランスに対して複数の蓄電コンデンサ及びランプを設ける構成としてもよい。
【0047】
(4)実施例では電源部にフルブリッジ+昇圧トランスタイプのものを用いたが、高電圧を充電することができれば他の構成の昇圧充電回路であってもよい。また、蓄電コンデンサ22及び62を蓄電素子として示したが、蓄電コンデンサの代わりに、バッテリー、電気二重層コンデンサ等、他の蓄電素子を用いてもよい。
【符号の説明】
【0048】
13−16、53−56.トランジスタ
17、23、57、63.インダクタ
18、58.昇圧トランス
19−21、59−61.ダイオードブリッジ
22、62.蓄電コンデンサ(蓄電素子)
24、64.閃光放電ランプ
25、65.電源部制御回路
26、66.イグナイタ回路
27、67.外部トリガ
30.点灯装置制御部
31.CPU
32.メモリ
33.入出力インターフェイス
101.石英発光管
102.陽極
103.陰極
104.封止部
105.トリガワイヤ
106.電極芯棒
301.照射器
302.反射板
303.ダクト
304.半導体ウェハー(基板)
A、B.ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェハーに付された光硬化材料を硬化させるための光照射器であって、
第1の環状閃光放電ランプ、
前記第1の環状閃光放電ランプの内側に配置された第2の環状閃光放電ランプ、
前記第1の環状閃光放電ランプを点灯させる第1の電源部、
前記第2の環状閃光放電ランプを点灯させる第2の電源部、及び
前記第1及び第2の電源部を統括制御する点灯装置制御部
を備え、
前記点灯装置制御部が、前記第1の電源部による点灯を前記第2の電源部による点灯開始よりも先に開始させるように構成された光照射器。
【請求項2】
請求項1の光照射器において、前記第1の電源部から出力される点灯1回あたりのエネルギーが、前記第2の電源部から出力される点灯1回あたりのエネルギーよりも低いことを特徴とする光照射器。
【請求項3】
基板に付された光硬化材料を硬化させるための光照射器であって、
同心配置されて相互に異なる照射範囲を有する環状の複数の閃光放電ランプ、
前記複数の閃光放電ランプをそれぞれ点灯させる複数の電源部、及び
前記複数の電源部を統括制御する点灯装置制御部
を備え、
前記点灯装置制御部が、前記複数の電源部に個別のタイミングで前記複数の閃光放電ランプを点灯させるように構成され、
前記複数の電源部が、外側からi番目の照射範囲を有する閃光放電ランプを点灯させるi番目の電源部及び外側からj番目(i<j)の照射範囲を有する閃光放電ランプを点灯させるj番目の電源部を含み、
前記点灯装置制御部が、前記i番目の電源部による点灯を前記j番目の電源部による点灯開始よりも先に開始させるように構成された光照射器。
【請求項4】
請求項3の光照射器において、前記i番目の電源部から出力される点灯1回あたりのエネルギーが、前記j番目の電源部から出力される点灯1回あたりのエネルギーよりも低いことを特徴とする光照射器。
【請求項5】
請求項3の光照射器において、前記i=1である光照射器。
【請求項6】
同心配置され相互に異なる照射範囲を有する複数の閃光放電ランプ、前記複数の閃光放電ランプをそれぞれ点灯させる複数の電源部、及び前記複数の電源部を統括制御する点灯装置制御部を備えた光照射器を用いて、基板に付された光硬化材料を硬化させる方法であって、
前記複数の電源部が、外側からi番目の照射範囲を有する閃光放電ランプを点灯させるi番目の電源部及び外側からj番目(i<j)の照射範囲を有する閃光放電ランプを点灯させるj番目の電源部を含み、
前記点灯装置制御部が、前記i番目の電源部による点灯と前記j番目の電源部による点灯とを個別のタイミングで制御する工程を備え、
前記個別のタイミングで制御する工程が、
(A)前記点灯装置制御部が前記i番目の電源部による点灯を開始させる工程、及び
(B)前記工程(A)の後に、前記点灯装置制御部が前記j番目の電源部による点灯を開始させる工程
を含む方法。
【請求項7】
請求項6の方法において、前記i番目の電源部から出力される点灯1回あたりのエネルギーが、前記j番目の電源部から出力される点灯1回あたりのエネルギーよりも低いことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項6の方法において、前記i=1である、方法。
【請求項9】
閃光放電ランプ点灯装置であって、
入力電圧を昇圧して複数の蓄電素子にそれぞれ充電する複数の昇圧充電回路、
前記複数の蓄電素子に接続される照射範囲の異なる複数の閃光放電ランプをそれぞれ点灯開始させるための複数の始動回路、
前記複数の充電回路及び始動回路をそれぞれ制御する複数の電源制御回路、及び
前記複数の電源制御回路を統括制御する点灯装置制御部
を備え、
前記点灯装置制御部が、前記複数の電源制御回路に個別のタイミングで前記複数の閃光放電ランプを点灯させるように構成され、
前記複数の閃光放電ランプは同心配置された環状ランプであり、前記複数の電源制御回路が、外側からi番目の照射範囲を有する閃光放電ランプに対応するi番目の電源制御回路及び外側からj番目(i<j)の照射範囲を有する閃光放電ランプに対応するj番目の電源制御回路を含み、
前記点灯装置制御部が、前記i番目の電源制御回路による点灯を前記j番目の電源制御回路による点灯開始よりも先に開始させるように構成された閃光放電ランプ点灯装置。
【請求項10】
請求項9の閃光放電ランプ点灯装置において、前記i番目の電源部における蓄電素子の容量が、前記j番目の電源部における蓄電素子の容量よりも小さいことを特徴とする閃光放電ランプ点灯装置。
【請求項11】
請求項9の閃光放電ランプ点灯装置において、前記i=1である閃光放電ランプ点灯装置。
【請求項12】
基板に付された光硬化材料を硬化させるための光照射器であって、
相互に異なる照射範囲を有する複数の閃光放電ランプ、
前記複数の閃光放電ランプをそれぞれ点灯させる複数の電源部、及び
前記複数の電源部を統括制御する点灯装置制御部
を備え、
前記点灯装置制御部が、前記複数の電源部に個別のタイミングで前記複数の閃光放電ランプを点灯させるように構成された光照射器。
【請求項13】
閃光放電ランプ点灯装置であって、
入力電圧を昇圧して複数の蓄電素子にそれぞれ充電する複数の昇圧充電回路、
前記複数の蓄電素子に接続される照射範囲の異なる複数の閃光放電ランプをそれぞれ点灯開始させるための複数の始動回路、
前記複数の充電回路及び始動回路をそれぞれ制御する複数の電源制御回路、及び
前記複数の電源制御回路を統括制御する点灯装置制御部
を備え、
前記点灯装置制御部が、前記複数の電源制御回路に個別のタイミングで前記複数の閃光放電ランプを点灯させるように構成された閃光放電ランプ点灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【公開番号】特開2012−186102(P2012−186102A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49819(P2011−49819)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】