閃光放電ランプ点灯装置および太陽電池評価用ソーラーシミュレータ
【課題】
閃光発光波形の制御が容易で、発光のピーク値の持続時間を比較的長く設定できる閃光放電ランプ点灯装置およびこれを用いた太陽電池評価用ソーラーシミュレータを提供する。
【解決手段】
閃光放電ランプ点灯装置は、外部トリガー電極TREを備え、閃光発光を行う閃光放電ランプHFLと、その放電開始時に閃光放電ランプに定電流を供給して点灯する定電流電源CDCおよび閃光放電ランプHFLの放電開始時に立ち上がりの早い始動補助電流を供給するブースト回路BCを備えた閃光点灯回路FOCと、高電圧のトリガー信号を発生して閃光放電ランプHFLのトリガー電極TREに印加することにより閃光放電ランプHFLを始動させる高電圧発生回路HVCとを具備している。
閃光発光波形の制御が容易で、発光のピーク値の持続時間を比較的長く設定できる閃光放電ランプ点灯装置およびこれを用いた太陽電池評価用ソーラーシミュレータを提供する。
【解決手段】
閃光放電ランプ点灯装置は、外部トリガー電極TREを備え、閃光発光を行う閃光放電ランプHFLと、その放電開始時に閃光放電ランプに定電流を供給して点灯する定電流電源CDCおよび閃光放電ランプHFLの放電開始時に立ち上がりの早い始動補助電流を供給するブースト回路BCを備えた閃光点灯回路FOCと、高電圧のトリガー信号を発生して閃光放電ランプHFLのトリガー電極TREに印加することにより閃光放電ランプHFLを始動させる高電圧発生回路HVCとを具備している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池評価用ソーラーシミュレータの擬似太陽光用の光源として好適な瞬間的に高強度の光を照射する閃光放電ランプ点灯装置およびこれを用いた太陽電池評価用ソーラーシミュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池評価用ソーラーシミュレータの性能は、より多くの枚数の太陽電池を、より短時間の間に評価できるか否かにより決まる。既知の太陽電池評価用ソーラーシミュレータでは、複数枚の太陽電池を同時に測定可能なように構成して時間当たりの評価枚数を増加しようとしている(特許文献1参照。)。
【0003】
ところで、太陽電池評価は比較的短時間のうちに測定が可能であるが、擬似太陽光が連続照射されると、太陽電池がダメージを受けるので、測定時にのみ擬似太陽光を照射する方がよい。この目的のために、本発明者は閃光放電ランプを用いることを着想した。従来の閃光放電ランプ点灯装置は、始動時に閃光放電ランプを経由して充放電用コンデンサに蓄積した電荷を放電させることにより、閃光を発生させるのが一般的である。また、閃光放電ランプには、その気密容器の外面に密着させたトリガー電極を装備していて、トリガー電極に高電圧パルスを印加することによって閃光放電ランプを始動させるように構成されている。
【特許文献1】特開2003−069057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の閃光放電ランプ点灯装置の場合、ランプ電流したがって発光強度が山形状をなしたパルス状をなしている。そこで、発光強度の時間に対する変化のピーク値近傍において複数回の測定を行うように同期させても、その測定中に発光強度が時間とともに変化してしまう。そのため、データを発光強度の変化に応じて補正する必要が生じる。このため、測定装置の構成が複雑になってしまうという問題がある。また、ピーク値近傍の時間幅が小さいために、測定積算回数が少なくなってしまう。さらに、測定に利用できない発光強度の立ち上がりおよび立下りの時間が占める割合が大きいのも測定積算回数が少なくなる原因になっている。
【0005】
本発明は、閃光発光波形の制御が容易で、発光のピーク値の持続時間を比較的長く設定できる閃光放電ランプ点灯装置およびこれを用いた太陽電池評価用ソーラーシミュレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の閃光放電ランプ点灯装置は、外部トリガー電極を備え、閃光発光を行う閃光放電ランプと;閃光放電ランプの放電時に閃光放電ランプに定電流を供給して閃光点灯させる定電流電源および閃光放電ランプの放電開始時に先導放電電流を供給するブースト回路を備えた閃光点灯回路と;高電圧のトリガー信号を発生して閃光放電ランプのトリガー電極に印加することにより閃光放電ランプを始動させる高電圧発生回路と;を具備していることを特徴としている。
【0007】
本発明においては、高電圧発生回路を作動させて発生したトリガー信号を閃光放電ランプのトリガー電極に印加することにより、閃光放電ランプの気密容器の内部が絶縁破壊して閃光放電ランプが始動する。閃光放電ランプが始動すると、最初に主としてブースト回路から比較的微弱な先導放電電流が閃光放電ランプに供給されて始動が補助される。これにより閃光放電が開始される。先導放電電流に続いて閃光放電が立ち上がるころから定電流電源からランプ電流の供給が立ち上がって本格的な閃光放電へ移行し、次いでランプ電流はピーク電流に達し、かつ、そのピーク電流の状態が所定時間の間持続する。その間、発光が十分に立ち上がり、次いで光量がピーク状態で所定時間の間ほぼ一定に維持されると、定電流電源からのランプ電流の供給が停止されるので、ランプ電流は立ち下がり、閃光放電が終了する。
【0008】
定電流電源のランプ電流の供給開始と停止の制御は、定電流電源に適当なスイッチ手段を配設して行う。なお、ブースト回路は、閃光放電の開始時に微弱な先導放電電流を供給して指導を補助するだけの比較的小さい電源容量を有していればよい。
【0009】
閃光放電ランプは、以上の一連の放電動作を通じて閃光発光を行う。このとき、放電媒体としての希ガスの種類に応じてそれぞれの分光分布を有する閃光発光が行われる。太陽光に近似した分光分布を有する閃光発光を得るためには、キセノンを主体とする放電媒体を封入すると効果的である。また、紫外線の含有量を増加したい場合には、クリプトンやアルゴンを主体とする放電媒体を封入すると効果的である。
【0010】
また、閃光発光は、閃光放電ランプに供給されるランプ電流の大きさおよびその変化に比例的となる。したがって、ランプ電流を定電流電源を用いて制御することで、閃光発光を、立ち上がりが早くて、しかもピーク値がしばらく持続し、その後立ち下がって終了するように制御することが可能になる。
【0011】
本発明においては、閃光放電の立ち上がりの先導放電電流を閃光点灯回路のブースト回路が供給し手始動を補助し、その後を追って定電流電源が主なランプ電流供給を定電流特性の下に開始するので、閃光放電、したがって閃光発光の早い立ち上がりとフラットで、しかも持続時間が相対的に長いピーク値を実現することが可能になる。
【0012】
したがって、本発明の閃光放電ランプ点灯装置の閃光放電ランプを太陽電池評価用ソーラーシミュレータの擬似太陽光用の光源として用いたときには、発光のピーク値を含むその前後の期間中に太陽電池評価のための所要の測定を実施すれば、その測定積算回数を多くできるとともに、測定データの補正が不要になる。また、たとえ測定データを補正するにしても、その補正が容易になる。
【0013】
本発明の実施に際しては、以下の実施態様の一つまたは複数を所望により選択して採用することを許容する。
【0014】
(第1の実施態様について) 第1の実施態様は、外部トリガー電極を備え、閃光発光を行う閃光放電ランプと;閃光放電ランプを閃光点灯する閃光点灯回路と;高電圧のトリガー信号を発生して閃光放電ランプのトリガー電極に印加することにより閃光放電ランプを始動させる高電圧発生回路と;を具備し、ランプ電流波形の立ち上がり時間を20ms以下に設定した閃光放電ランプ点灯装置である。なお、立ち上がり時間は、ランプ電流立ち上がり波形の波高値の10〜90%の部分の時間である。また、上記立ち上がり時間は、発光についても当てはまる。すなわち、閃光発光波形の立ち上がり時間を20ms以下になるように設定することができる。
【0015】
また、第1の実施態様を実現するには、閃光放電ランプの構成、閃光点灯回路の構成およびその電源インピーダンス、ならびに電源および閃光放電ランプの間を接続する配電線路の分布回路定数を適切に設定するのが望ましい。ランプ電流を供給する閃光点灯回路としては、前述の本発明の構成を採用することができる。しかし、所望により、充放電コンデンサに蓄積した電荷を、閃光放電ランプに放電させる回路構成を採用して実現することも可能である。
【0016】
そうして、第1の実施態様によれば、閃光放電ランプ点灯装置を太陽電池評価用ソーラーシミュレータの擬似太陽光用の光源として用いたときに、電池セルに余分な光や熱が与えられる時間を短くして、電池セルの光電変換機能を低下させないようにすることができる。
【0017】
また、ランプ電流波形の立ち上がり時間または閃光発光波形の立ち上がり時間が短縮することで、ランプ電流波形または閃光発光波形におけるピーク値の持続時間の占める割合が増加するので、1回の閃光発光時間サイクル中に占める測定に利用できる時間の割合(測定時間効率)を高くして、測定積算回数を多くすることができる。
【0018】
(第2の実施態様について) 第2の実施態様は、外部トリガー電極を備え、閃光発光を行う閃光放電ランプと;閃光放電ランプを閃光点灯する閃光点灯回路と;高電圧のトリガー信号を発生して閃光放電ランプのトリガー電極に印加することにより閃光放電ランプを始動させる高電圧発生回路と;を具備し、ランプ電流波形のピーク時間を10ms以上持続するように設定した閃光放電ランプ点灯装置である。なお、ピーク時間は、ランプ電流波形の波高値の90%以上の部分が継続している時間である。また、ピーク時間が上述のように設定されているのであれば、その結果閃光発光波形のピーク値持続時間の10ms以上が実現する。また、上記ピーク期間中における光出力の変動幅は、±2.5%以内であることが望ましい。
【0019】
また、第2の実施態様は、前述した本発明の構成を採用すれば容易に実現することができる。しかし、所望により、充放電コンデンサに蓄積した電荷を閃光放電ランプに放電させる回路構成において、閃光放電ランプ、充放電コンデンサの静電容量および充電電圧、放電回路中に対するインダクタの挿入ならびに放電回路の回路定数の設定を適切に行うなどによって実現させることも可能である。
【0020】
そうして、第2の実施態様によれば、閃光放電ランプ点灯装置を太陽電池評価用ソーラーシミュレータの擬似太陽光用の光源として用いたときに、ランプ電流波形したがって閃光発光波形におけるピーク値の持続時間が長いので、1回の発光中における電池セルの測定積算回数を多くすることができる。
【0021】
(第3の実施態様について) 第3の実施態様は、外部トリガー電極を備え、閃光発光を行う閃光放電ランプと;閃光放電ランプを閃光点灯する閃光点灯回路と;高電圧のトリガー信号を発生して閃光放電ランプのトリガー電極に印加することにより閃光放電ランプを始動させる高電圧発生回路と;を具備し、ランプ電流波形の立ち下がり時間を20ms以下に設定した閃光放電ランプ点灯装置である。なお、立ち下がり時間は、ランプ電流立ち下がり波形の波高値の90〜10%の部分の時間である。また、上記立ち下がり時間は、閃光発光波形についても当てはまる。すなわち、閃光発光波形の立ち下がり時間を20ms以下になるように設定することができる。
【0022】
また、第3の実施態様を実現するには、第1の実施態様と同様に閃光放電ランプの構成、閃光点灯回路の構成およびその電源インピーダンス、ならびに電源および閃光放電ランプの間を接続する配電線路の分布回路定数を適切に設定するのが望ましい。ランプ電流を供給する電源については、前述の本発明の構成を採用することができる。しかし、所望により、充放電コンデンサに蓄積した電荷を閃光放電ランプに放電させる回路構成を採用して実現することも可能である。
【0023】
そうして、第3の実施態様によれば、閃光放電ランプ点灯装置を太陽電池評価用ソーラーシミュレータの擬似太陽光用の光源として用いたときに、電池セルに余分な光や熱が与えられる時間を短くして、電池セルの光電変換機能を低下させないようにすることができる。
【0024】
また、ランプ電流波形の立ち下がり時間が短縮することで、ランプ電流波形、したがって閃光発光波形のピーク値の持続時間の占める割合が増加するので、1回の閃光発光時間サイクル中に占める測定に利用できる時間の割合(測定時間効率)を高くして、測定積算回数を多くすることができる。
【0025】
(第4の実施態様について) 第4の実施態様は、外部トリガー電極を備え、閃光発光を行う閃光放電ランプと;閃光放電ランプを閃光点灯する閃光点灯回路と;高電圧のトリガー信号を発生して閃光放電ランプのトリガー電極に印加することにより閃光放電ランプを始動させる高電圧発生回路と;を具備し、上記閃光点灯回路が並列的に接続された複数の充放電コンデンサを備え、各充放電コンデンサにインダクタをそれぞれ直列接続した回路構成を具備している閃光放電ランプ点灯装置である。
【0026】
そうして、第4の実施態様によれば、所望の閃光放電に必要な大きなランプ電流を確保するとともに、そのピーク値したがって閃光発光のピーク値の持続時間が長くなるように設定しやすくなる。
【0027】
したがって、閃光放電ランプ点灯装置を太陽電池評価用ソーラーシミュレータの擬似太陽光用の光源として用いたときに、1回の発光中における電池セルの測定積算回数を多くすることができる。
【0028】
(第5の実施態様について) 第5の実施態様は、外部トリガー電極を備え、閃光発光を行う閃光放電ランプと;閃光放電ランプを閃光点灯する閃光点灯回路と;高電圧のトリガー信号を発生して閃光放電ランプのトリガー電極に印加することにより閃光放電ランプを始動させる高電圧発生回路と;を具備し、閃光放電ランプ中のランプ電流密度が2000A/cm2以下に設定されている閃光放電ランプ点灯装置である。なお、ランプ電流密度(A/cm2)は、閃光放電ランプの気密容器内に形成されている放電空間の単位断面積(1cm2)当たりのランプ電流(A)である。ランプ電流密度が2000A/cm2以下であれば、ピーク値の持続時間を所望値の10ms以上にすることが容易になるし、また所望の発光量を確保することができる。なお、ランプ電流は、パルス波形のピーク値とする。
【0029】
そうして、第5の実施態様によれば、発光のピーク値持続時間を所望値に設定しやすくなる。
【0030】
したがって、閃光放電ランプ点灯装置を太陽電池評価用ソーラーシミュレータの擬似太陽光用の光源として用いたときに、1回の発光中における電池セルの測定積算回数を多くすることができる。
【0031】
(第6の実施態様について) 第6の実施態様は、外部トリガー電極を備え、閃光発光を行う閃光放電ランプと;閃光放電ランプを閃光点灯する閃光点灯回路と;高電圧のトリガー信号を発生して閃光放電ランプのトリガー電極に印加することにより閃光放電ランプを始動させる高電圧発生回路と;を具備し、上記閃光放電ランプの発光部が例えば螺旋状などの形状に屈曲している閃光放電ランプ点灯装置である。
【0032】
閃光放電ランプ点灯装置を太陽電池評価用ソーラーシミュレータの擬似太陽光の光源として使用する場合に、効果的な形状に形成した閃光放電ランプを用いることができる。この場合、有効発光部長の1/2以上の部分を屈曲させると効果的である。閃光放電ランプを例えば螺旋状に屈曲させる場合には、閃光放電ランプの外径をA(cm)とし、螺旋の直径をB(cm)としたとき、数式3≦B/A≦15を満足するのが好ましい。比B/Aについては、上記数式が示す範囲内で太陽電池評価用ソーラーシミュレータの大きさに応じて適当な値を選択することができる。
【0033】
そうして、第6の実施態様を太陽電池評価用ソーラーシミュレータに採用すれば、少ない閃光放電ランプの数でも所望の配光特性を実現しやすくなる。
【0034】
(第7の実施態様について) 第7の実施態様は、外部トリガー電極を備え、閃光発光を行う閃光放電ランプと;閃光放電ランプを閃光点灯する閃光点灯回路と;高電圧のトリガー信号を発生して閃光放電ランプのトリガー電極に印加することにより閃光放電ランプを始動させる高電圧発生回路と;を具備し、上記閃光点灯回路は、待機時には小さなランプ電流を流して閃光放電ランプの放電を継続させるとともに、使用時には所定値のランプ電流を間欠的に流して閃光放電を行うように構成されている閃光放電ランプ点灯装置である。なお、待機時の発光量は、閃光放電ランプの寿命の短縮を来たさないためには、使用時の閃光放電時の50%以下、好適には30%以下になるように設定するのが望ましい。
【0035】
そうして、第7の実施態様によれば、閃光発光を行わせる際に、都度閃光放電ランプを始動させる必要がなくなるので、ランプ点灯指令信号の投入から閃光発光までの時間を大幅に短縮できるとともに、ランプ電流および発光の立ち上がりと立ち下がりを早めることに対しても効果的である。その結果、閃光放電ランプ点灯装置を太陽電池評価用ソーラーシミュレータの擬似太陽光用の光源として用いたときに、1回の閃光発光時間サイクル中に占める測定に利用できる時間の割合(測定時間効率)を高くして、測定積算回数を多くすることができる。
【0036】
また、都度始動させないため、閃光発光の信頼性が高くなる。
【0037】
(第8の実施態様について) 第8の実施態様は、外部トリガー電極を備え、閃光発光を行う閃光放電ランプと;閃光放電ランプを閃光点灯する閃光点灯回路と;高電圧のトリガー信号を発生して閃光放電ランプのトリガー電極に印加することにより閃光放電ランプを始動させる高電圧発生回路と;を具備し、上記閃光点灯回路は、その定電流電源の出力電流がプログラムに応じて変化するように構成されている。そのため、定電流電源は、その出力電流が可変である。また、プログラム手段が配設されていて、定電流電源がプログラム手段に連動するように構成されている。
【0038】
そうして、第8の実施態様によれば、予め設定されたプログラムに応じて出力電流を変化させることで、多様な用途、例えば太陽電池評価用ソーラーシミュレータなどの用途に対応させることが可能になるとともに、操作性が著しく向上する。
【0039】
(第9の実施態様について) 第9の実施態様は、外部トリガー電極を備え、閃光発光を行う閃光放電ランプと;閃光放電ランプを閃光点灯する閃光点灯回路と;高電圧のトリガー信号を発生して閃光放電ランプのトリガー電極に印加することにより閃光放電ランプを始動させる高電圧発生回路と;を具備し、上記高電圧発生回路は、そこにランプ点灯指令信号が入力されたときに、高電圧発生回路が、その外部へランプ点灯指令信号と同期した外部出力信号を送出可能に構成されている閃光放電ランプ点灯装置である。
【0040】
第9の実施態様においては、閃光放電ランプを点灯するときに高電圧発生回路にランプ点灯指令信号を送ると、当該ランプ点灯指令信号に応じて高電圧発生回路がトリガー信号を発生して閃光放電ランプのトリガー電極に印加する。これにより、閃光放電ランプが始動する。閃光点灯回路が本発明によりブースト回路および安定化電源を備えて構成されている場合には、最初ブースト回路から、続いて安定化電源からランプ電流が供給されるし、また閃光点灯回路が充放電コンデンサを備えて構成されている場合には、当該充放電コンデンサからランプ電流が供給されて、閃光放電ランプが閃光放電により点灯する。
【0041】
また、上記ランプ点灯指令信号が入力すると、それに同期して高電圧発生回路から外部へ外部出力信号が送出される。この外部出力信号を利用して外部機器、例えば太陽電池評価用ソーラーシミュレータの測定プログラムを実行したり、所望により閃光放電ランプの発光の分光分布やランプ電流波形をシンクロ撮影したりするなどを行いやすくなる。
【0042】
(第10の実施態様について) 第10の実施態様は、外部トリガー電極を備え、閃光発光を行う閃光放電ランプと;閃光放電ランプを閃光点灯する閃光点灯回路と;高電圧のトリガー信号を発生して閃光放電ランプのトリガー電極に印加することにより閃光放電ランプを始動させる高電圧発生回路と;を具備し、エンボス加工した反射板を用いて閃光放電ランプの閃光発光を被照射体に照明するように構成されている閃光放電ランプ点灯装置である。エンボス加工した反射板としては、全反射率80%以上、拡散反射率70%以上の光学特性を有するものを、例えば閃光放電ランプLの背面側に配置して用いると効果的である。
【0043】
そうして、第10の実施態様によれば、閃光放電ランプによる直接照射光と同程度の光量を反射板REFにより反射して被照射体、例えば太陽電池などを照明することができる。これによって少ないランプ数で、しかも良好な配光特性の下で効果的な照明を行うことができる。
【0044】
したがって、本実施態様は、太陽電池評価用ソーラーシミュレータに好適である。
【0045】
(第11の実施態様について) 第11の実施態様は、外部トリガー電極を備え、閃光発光を行う閃光放電ランプと;閃光放電ランプを閃光点灯する閃光点灯回路と;高電圧のトリガー信号を発生して閃光放電ランプのトリガー電極に印加することにより閃光放電ランプを始動させる高電圧発生回路と;を具備し、上記閃光点灯回路が充放電コンデンサの放電電流により閃光放電ランプを閃光発光させる回路構成において、放電回路に直列にスイッチング手段を挿入して、充放電コンデンサの放電電流をピーク値近傍で遮断するように構成されている閃光放電ランプ点灯装置である。
【0046】
そうして、第11の実施態様によれば、閃光放電ランプのランプ電流波形したがって閃光発光波形の立ち下がり時間を20ms以下の所望時間に短縮することが容易になる。
【0047】
次に、本発明の太陽電池評価用ソーラーシミュレータは、太陽電池評価用ソーラーシミュレータ本体と;閃光放電ランプが光源として太陽電池評価用ソーラーシミュレータ本体に配設された請求項1記載の閃光放電ランプ点灯装置と;を具備していることを特徴としている。
【0048】
本発明においては、閃光放電ランプ点灯装置によって閃光放電ランプが閃光点灯する擬似太陽光となり、しかも閃光発光のピーク値持続時間を比較的長く設定できるので、その期間中に太陽電池評価のための所要の測定を実施することにより、その測定積算回数を多くできるとともに、測定データの補正が不要になるか、または測定データを補正するにしても、その補正が容易になる。
【発明の効果】
【0049】
請求項1の発明によれば、閃光発光波形の制御が容易で、閃光発光のピーク値の持続時間を比較的長く設定できる閃光放電ランプ点灯装置を提供することができる。
【0050】
請求項2の発明によれば、請求項1の効果を有する太陽電池評価用ソーラーシミュレータを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0052】
図1および図2は、本発明の閃光放電ランプ点灯装置を実施するための第1の形態を示し、図1は回路図、図2は閃光放電ランプの正面図である。本形態において、閃光放電ランプ点灯装置は、閃光放電ランプHFL、閃光点灯回路FOCおよび高電圧発生回路HVGを具備している。
【0053】
〔閃光放電ランプHFLについて〕 閃光放電ランプHFLは、気密容器SE、一対の電極E、E、一対の導入線LW、放電媒体およびトリガー電極TREを備えている。
【0054】
(気密容器SE) 気密容器SEは、例えば石英ガラスなどの放射透過性で気密性の細長い管s1と、この細長い管s1の両端に形成したグレーデッドシール構造の封止部s2、s2とからなる。好ましくは気密容器SEの外径をD(mm)としたとき、数式6≦D≦30を満足する範囲内にある。上記数式において、外径D(mm)は、管軸方向の後述する主要部における外周の平均値の大きさを外周が等しい円形に換算したときの値として求めることができる。
【0055】
また、気密容器SEは、少なくともその主要部、すなわち少なくとも放電により発生した光すなわち紫外光、可視光および/または赤外光を外部へ導出して利用しようとする部位が上記の光に対して透光性の石英ガラスにより形成されている。したがって、上記の部位以外のその他の部位は透光性でなくてもよい。なお、透光性とは、外部へ導出して利用とする所望波長領域の光を実質的に透過すればよく、要すれば真空紫外光に対しても実質的に透過性にすることができる。
【0056】
さらに、気密容器SEは、全体として細長い形状をなしていて、内部が中空になっていて放電空間として利用される。気密容器SEの長さは、被照射物に応じて所望の値に設定することができる。例えば、気密容器SEを0.3〜2m程度の長さとした閃光放電ランプを得ることもできる。
【0057】
さらにまた、気密容器SEは、所望により中空部の管軸方向の主要部が、その他の部分に対して内部断面積が変化していることを許容する。
【0058】
そうして、気密容器SEは、以上のように種々構成され得るが、一実施例として外径12mm、肉厚1mm、内径10mmの石英製バルブからなるものを採用した。
【0059】
(一対の電極E、E) 一対の電極E、Eは、気密容器SEの両端の封止部s2に封着されて、後述する電極主部e1が互いに対向して気密容器SEの両端内部に封装されている。そして、従来から閃光放電ランプに一般に用いられている構成であるところの冷陰極形の電極構造を採用することができる。この場合、例えばニッケル(Ni)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)およびチタン(Ti)のグループから選択された一種または複数種の耐火性金属あるいはこれらの複数種からなる合金またはステンレス鋼などを用いて電極Eを形成することができる。
【0060】
また、電極Eは、例えば電極主部e1および電極軸e2を含み、電極主部e1を電極軸e2の先端に支持させて構成することができる。電極軸e2は、その基端が気密容器SEの封止部に気密に封着される。
【0061】
(一対の導入線LW、LW) 一対の導入線LW、LWは、電極軸e2が一体に延長して気密容器SEの外部に露出している部分からなる。したがって、導入線LWを気密容器SEの封止部を貫通させて気密容器の内部へ突出させ、その先端に電極主部e1を支持させることもできる。
【0062】
さらに、所望により電極軸e2をセラミックスで被覆することができる。これにより、閃光放電ランプの点灯によって高温に加熱された電極軸e2から炭素(C)などの不純物が気密容器SEの内部に放出されて気密容器SEの内面を黒化して閃光放電ランプが短寿命になるのを抑制することができる。また、上記セラミックスを適当な大きさに形成することにより、加えて電極Eを所定位置に保持するための電極保持部材としても作用させることができる。さらに、所望により上記セラミックスにゲッタを保持させることもできる。
【0063】
(放電媒体) 放電媒体は、その放電により所望波長域の光を放射する媒体であり、主として希ガスからなる。希ガスは、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)およびキセノン(Xe)のグループから選択された一種を単独で、または複数種を混合して用いることができる。また、希ガスの封入圧は、従来から閃光放電ランプに一般に用いられているのと同様な圧力、例えば50〜200kPa程度であることを許容する。また、キセノンを主体としてこれにクリプトンを添加することにより、キセノンによる紫外域から赤外域にわたる放射に加えて、200〜300nmの紫外光の放射を増加することができる。また、クリプトンを主体とする希ガスとして封入することにより、さらに紫外線の放射を増加させることもできる。
【0064】
そうして、放電媒体は、種々構成し得るが、一実施例としてXeを13.3kPa封入した。
【0065】
(トリガー電極TRE) トリガー電極TREは、気密容器SEの外面に近接してらせん状に巻回したり、管軸に沿って平行に配設したりされ、少なくとも一方の電極Eとの間に、例えば高電圧のトリガー信号を印加して強い電位傾度を形成する手段である。そうして、気密容器SE内の内部を絶縁破壊して、一対の電極E、E間に放電を生起させることができる。
【0066】
また、トリガー電極TREを螺旋状に配設する場合には、気密容器SEの外周に近接してピッチをP(mm)としたとき、数式5≦P≦50を満足する範囲内においてトリガー電極TREを形成すると効果的である。ピッチPが上記の範囲内であれば、気密容器SEの管長が2m程度以下の範囲において、閃光放電のアークの中心がほぼ管軸上に安定して形成されるとともに、放電によって発生した光エネルギーの所望程度を外部へ導出することができる。なお、トリガー電極TREのピッチPは、気密容器SEの管長によりその最適な範囲が変化するので、上記の範囲内において、管長に応じて最適な条件を選択することができる。例えば、管長が300〜1000mm、かつ、外径D(mm)が6≦D≦30の範囲内にある場合、トリガー電極TREのピッチは、20〜30mmが好適である。なお、上記数式において、外径D(mm)は、管軸方向の後述する主要部における外周の平均値の大きさを外周が等しい円形に換算したときの値である。しかしながら、ピッチPが5mm未満になると、アークの安定性は問題ないが、遮光率が大きくなりすぎるので、不可である。また、ピッチPが30mmを超えると、遮光率の問題はないが、アークの安定性が悪くなるので、不可である。
【0067】
また、トリガー電極TREは、好ましくは上記に加えてその線径をd(mm)としたとき、数式0.1≦d≦2.0を満足する範囲内であれば、点灯時の熱膨張による影響がなくて、しかも、遮光率が大きくなりすぎない。これに対して、線径が0.1mm未満になると、点灯時の熱膨張が大きくなって気密容器との間に隙間が形成されやすくなるとともに、トリガー電極TREのピッチが乱れやすくなる。トリガー電極TREと気密容器SEとの間の隙間が大きくなり、始動性が損なわれる。また、ピッチが乱れると、アークの安定性が損なわれる。また、線径が2.0mmを超えると、遮光率が大きくなるとともに、外部へ導出される管軸方向の光エネルギー分布の均整度が悪くなる。
【0068】
さらに、トリガー電極TREを気密容器SEの外周面に接触状態で所定の位置に固定するために、トリガー電極TREの両端を好ましくは金属製のリング状部材によって緊縛することができる。この場合、金属製のリング状部材からリード線を導出するように構成することができる。このため、リード線に不所望な張力が作用したとしても、トリガー電極TREのピッチが乱れたりするのを防止することができる。
【0069】
〔閃光点灯回路FOCについて〕 閃光点灯回路FOCは、定電流電源CDCおよびブースト回路BCを備えている。
【0070】
(定電流電源CDC) 定電流電源CDCは、定電流特性を有していて、閃光放電の期間中定電流化された直流電流を出力する。閃光放電中の短時間だけ直流の定電流出力を生じさせるために、適当なスイッチング手段、例えば電源スイッチを備えている。この場合、定電流出力はスイッチング手段のオンにより開始され、スイッチング手段のオフにより定電流出力が停止する。
【0071】
また、定電流出力が後述するブースト回路BCに回り込まないようにするために、ダイオードD1を順方向に介して閃光放電ランプHFLの一対の電極E、E間に接続している。そして、定電流化された直流出力電流をランプ電流の立ち上がり期間、ピーク期間および立ち下がり期間を通じて連続して閃光放電ランプHFLに供給する。
【0072】
(ブースト回路BC) ブースト回路BCは、閃光放電ランプHFLの放電開始時に立ち上がりの早い微弱の始動補助電流を供給する。したがって、比較的容量の小さい充放電コンデンサC1、C2の直列接続体を、その電源として構成することができる。すなわち、ブースト回路BCは、充電用の直流電源BDC、充電抵抗R1、上記充放電コンデンサC1、C2、放電抵抗R2およびダイオードD2を備えて構成されている。
【0073】
直流電源BDCは、充電抵抗R1を介して充放電コンデンサC1、C2の直列接続体の両端に接続して、充放電コンデンサC1、C2を比較的高い電圧で充電する。充放電コンデンサC1、C2の直列接続体は、閃光放電ランプHFLの始動時に比較的高い充電電圧の下に立ち上がりの早い始動補助電流を放電抵抗R2およびダイオードD2を通じて放電開始時に閃光放電ランプHFLに供給することにより、始動を補助する。
【0074】
〔高電圧発生回路HPGについて〕 高電圧発生回路HPGは、パルストランスPTを主体として構成されていて、高電圧のトリガー信号を発生する。パルストランスPTは、1次巻線wpが図示しないパルス電源に始動スイッチを介して接続し、2次巻線wsが閃光放電ランプHFLの一方の電極Eとトリガー電極TREとの間に接続している。
【0075】
〔回路動作について〕 高電圧発生回路HPGを作動させて発生したトリガー信号がトリガー電極TREと閃光放電ランプHFLの一方の電極Eとの間に印加すると、閃光放電ランプHFLが絶縁破壊して始動する。すると、まず閃光点灯回路FOCのブースト回路BCから立ち上がりの早い始動補助電流が供給されて閃光放電が開始され、これに続いて定電流電源CDCからランプ電流が供給されるので、ランプ電流が立ち上がり、閃光発光が生じる。
【0076】
次いで、ランプ電流がピーク値に達すると、定電流電源CDCから供給されるランプ電流は、定電流特性の下でピーク値を持続するので、これに同期して閃光放電ランプHFLの閃光発光もピーク値に達して一定となり、閃光発光のピーク値が所定時間の間持続する。
【0077】
所定のピーク期間が経過すると、定電流電源CDCの定電流出力が遮断されるので、ランプ電流が立ち下がり、閃光発光が終了する。
【0078】
そうして、ランプ電流波形および閃光発光波形の立ち上がり時間20ms以下、ピーク値持続時間30ms以上(好適には50〜100ms)、かつ、ピーク値持続期間中の光出力変動±2.5%以内ならびにランプ電流波形および閃光発光波形の立ち下がり時間20ms以下を実現することができる。なお、実施例において、ランプ電流は、そのピーク値が750A、電流密度は955A/cm2であった。
【0079】
図3および図4は、閃光発光の理想波形および実際波形をそれぞれ説明する模式図である。すなわち、閃光発光の理想波形は、図3に示すように立ち上がり時間および立ち下がり時間が0で、ピーク時間TPのみである。しかし、実際には、図4に示すように立ち上がり時間TRUおよび立ち下がり時間TRDが生じてしまう。本形態においては、ブースト回路BCおよび定電流電源CDCを用いていることにより、立ち上がり時間TRUを短縮し、ピーク時間を所望時間持続させるとともに、ランプ電流を遮断して立ち下がり時間TRDを短縮している。
【0080】
図5は、本発明の閃光放電ランプ点灯装置を実施するための第2の形態を示す回路図である。図において、図1と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。本形態は、閃光点灯回路FOCが並列接続した複数のコンデンサからなる充放電コンデンサC3および充電回路CCを主体として構成されている。充放電コンデンサC3の静電容量は0.15F、充電電圧は300V、放電電流のピーク値が755Aである。
【0081】
そうして、ランプ電流波形および閃光発光波形の立ち上がり時間20ms以下、ピーク値持続時間10ms以上ならびにランプ電流波形および閃光発光波形の立ち下がり時間20ms以下を実現することができる。
【0082】
図6は、本発明の閃光放電ランプ点灯装置を実施するための第3の形態を示す回路図である。図において、図5と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。本形態は、閃光点灯回路FOCの充放電コンデンサC3と閃光放電ランプHFLとの間にインダクタンス10mHのインダクタLを直列に挿入して構成されている。なお、充放電コンデンサC3が図5に示すように複数のコンデンサの並列接続体により構成されている場合には、複数のコンデンサ個々にインダクタを直列に挿入すればよい。
【0083】
そうして、インダクタンスによりランプ電流の変化を抑制することにより、ピーク値持続時間20ms以上を実現することができる。
【0084】
図7は、本発明の閃光放電ランプ点灯装置を実施するための第4の形態を示す閃光放電ランプの正面図である。図において、図2と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。本形態は、閃光放電ランプHFLの発光部が螺旋状に屈曲している。また、トリガー電極TREが気密容器SEの外周に螺旋状に巻回されている。
【0085】
そうして、本形態を太陽電池評価用ソーラーシミュレータの擬似太陽光用の光源として用いた場合に、少ないランプ数でありながら太陽電池評価用ソーラーシミュレータとしての好適な配光特性を得ることができる。
【0086】
図8は、本発明の閃光放電ランプ点灯装置を実施するための第5の形態におけるランプ電流の時間に対する変化を示す略図的波形図である。図において、横軸は時間を、縦軸はランプ電流を、それぞれ示す。
【0087】
本形態は、閃光放電ランプHFLを予め始動させて、その待機状態においては放電を維持可能な範囲でランプ電流を小さく絞って連続的に流して放電状態に維持しておき、使用時すなわち発光をさせたいときにはランプ電流をパルス状に大きく制御して所望量の発光を得るように構成されている。
【0088】
図9および図10は、本発明の閃光放電ランプ点灯装置を実施するための第6の形態を示し、図9は回路図、図10は各部の波形図である。図において、図1および図5と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。
【0089】
本形態は、閃光放電ランプHFLを始動させる高電圧発生回路HVCにランプ点灯指令信号が入力されたときに、高電圧発生回路HVCの外部に外部出力信号を出力するために、高電圧発生回路HVCを、信号形成回路SFC、コネクタCN、遅延回路DeCおよび高電圧パルス発生回路HPGを備えて構成している。
【0090】
信号形成回路SFCは、図9において左側の矢印で示すように到来したランプ点灯指令信号を波形整形して所要の動作信号を形成する。そして、高電圧のトリガー信号を発生させるために、まず後述する遅延回路DeCに入力するとともに、コネクタCNにも送出する。コネクタCNは、動作信号を外部へ外部出力信号として供給できるようにしている。遅延回路DeCは、外部の機器と同期を取りやすくするためなどの理由で配設されており、動作信号を所定の時間遅延させる。遅延後の動作信号が入力することにより、高電圧パルス発生回路HPGは、トリガー信号を発生して、閃光放電ランプHFLのトリガー電極TREと図9において下方の電極Eとの間に印加して、閃光放電を開始させる。なお、高電圧パルス発生回路HPGは、図1において説明した高電圧発生回路HVCと同様な回路構成を備えている。
【0091】
一方、図9において、コネクタCNから取り出した外部出力信号を利用する機器は、一例として分光分布測定装置SPMである。この分光分布測定装置SPMは、測定装置本体M1、受光器M2および表示装置M3により構成されている。測定装置本体M1は、コネクタCNから到来した図において右側の矢印に示す外部出力信号に同期して測定動作を行う。受光器M2は、閃光放電ランプHFLの閃光発光を受光して、その受光信号を測定装置本体M1に入力する。表示装置M3は、測定装置本体M1から出力された計測結果の分光分布データを例えば分光分布曲線として表示する。
【0092】
次に、図10に示す各部の波形について説明する。図10において、(a)はランプ点灯指令信号、(b)は動作信号、(c)は高電圧パルス発生回路HPGの入力信号、(d)はトリガー信号、(e)は外部機器動作時間信号、(f)はランプ点灯時間信号である。なお、(c)に示す矢印は遅延回路DeCによる遅延時間を意味示している。
【0093】
図11は、本発明の閃光放電ランプ点灯装置を実施するための第7の形態を示し、図10(a)は正面図、図10(b)は側面略図、図10(c)は下面図である。図において、図2と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。各図において、符号REFは反射板である。
【0094】
反射板REFは、その表面の全体にわたりランダムパターンのエンボス加工が施されている。その結果、反射板REFは、良好な拡散反射性能を有している。なお、図中、符号Gは、閃光放電ランプHFLの電極Eの後背部に支持させたゲッタである。
【0095】
図12は、本発明の閃光放電ランプ点灯装置を実施するための第8の形態を示す回路図である。図において、図5と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。本形態は、閃光点灯回路FOCの充放電コンデンサC3と閃光放電ランプHFLとの間にスイッチング手段SWを直列に挿入し、スイッチング手段SWをランプ電流のピーク値の後端側近傍においてオフすることにより、ランプ電流を遮断するように構成している。
【0096】
そうして、本形態によれば、ランプ電波形、したがって閃光発光波形の立ち下がり時間を容易に20ms以下にすることができる。
【0097】
図13は、本発明の太陽電池評価用ソーラーシミュレータを実施するための一形態を示す概念図である。図において、SYMは太陽電池評価用ソーラーシミュレータ本体、FLUは閃光放電ランプ点灯装置、SBは太陽電池である。
【0098】
太陽電池評価用ソーラーシミュレータ本体SYMは、遮光室を備え、その内部に閃光放電ランプ点灯装置FLUおよび太陽電池SBを所定の関係に配設している。
【0099】
閃光放電ランプ点灯装置FLUは、以上説明した各図に示す本発明を実施したものであり、閃光発光を太陽電池SBに向けて照射するように配置されている。なお、図中、REFは反射板である。
【0100】
太陽電池SBはその多数が閃光発光の照射を受ける位置に配置されている。
【0101】
そうして、閃光放電ランプ点灯装置FLUによる閃光発光が行われたときに、図示を省略している測定システムが作動して所要の測定を実施する。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の閃光放電ランプ点灯装置を実施するための第1の形態を示す回路図
【図2】同じく閃光放電ランプの正面図
【図3】閃光発光の理想波形を示す模式図
【図4】閃光発光の実際波形を示す模式図
【図5】本発明の閃光放電ランプ点灯装置を実施するための第2の形態を示す回路図
【図6】本発明の閃光放電ランプ点灯装置を実施するための第3の形態を示す回路図
【図7】本発明の閃光放電ランプ点灯装置を実施するための第4の形態を示す閃光放電ランプの正面図
【図8】本発明の閃光放電ランプ点灯装置を実施するための第5の形態におけるランプ電流の時間に対する変化を示す略図的波形図
【図9】本発明の閃光放電ランプ点灯装置を実施するための第6の形態を示す回路図
【図10】同じく各部の波形図
【図11】本発明の閃光放電ランプ点灯装置を実施するための第7の形態を示し、図10(a)は正面図、図10(b)は側面略図、図10(c)は下面図
【図12】本発明の閃光放電ランプ点灯装置を実施するための第8の形態を示す回路図
【図13】本発明の太陽電池評価用ソーラーシミュレータを実施するための一形態を示す概念図
【符号の説明】
【0103】
BC…ブースト回路、BDC…直流電源、E…電極、FOC…閃光点灯回路、HFL…閃光放電ランプ、HVC…高電圧発生回路、PT…パルストランス、SDC…安定化電源、TRE…トリガー電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池評価用ソーラーシミュレータの擬似太陽光用の光源として好適な瞬間的に高強度の光を照射する閃光放電ランプ点灯装置およびこれを用いた太陽電池評価用ソーラーシミュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池評価用ソーラーシミュレータの性能は、より多くの枚数の太陽電池を、より短時間の間に評価できるか否かにより決まる。既知の太陽電池評価用ソーラーシミュレータでは、複数枚の太陽電池を同時に測定可能なように構成して時間当たりの評価枚数を増加しようとしている(特許文献1参照。)。
【0003】
ところで、太陽電池評価は比較的短時間のうちに測定が可能であるが、擬似太陽光が連続照射されると、太陽電池がダメージを受けるので、測定時にのみ擬似太陽光を照射する方がよい。この目的のために、本発明者は閃光放電ランプを用いることを着想した。従来の閃光放電ランプ点灯装置は、始動時に閃光放電ランプを経由して充放電用コンデンサに蓄積した電荷を放電させることにより、閃光を発生させるのが一般的である。また、閃光放電ランプには、その気密容器の外面に密着させたトリガー電極を装備していて、トリガー電極に高電圧パルスを印加することによって閃光放電ランプを始動させるように構成されている。
【特許文献1】特開2003−069057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の閃光放電ランプ点灯装置の場合、ランプ電流したがって発光強度が山形状をなしたパルス状をなしている。そこで、発光強度の時間に対する変化のピーク値近傍において複数回の測定を行うように同期させても、その測定中に発光強度が時間とともに変化してしまう。そのため、データを発光強度の変化に応じて補正する必要が生じる。このため、測定装置の構成が複雑になってしまうという問題がある。また、ピーク値近傍の時間幅が小さいために、測定積算回数が少なくなってしまう。さらに、測定に利用できない発光強度の立ち上がりおよび立下りの時間が占める割合が大きいのも測定積算回数が少なくなる原因になっている。
【0005】
本発明は、閃光発光波形の制御が容易で、発光のピーク値の持続時間を比較的長く設定できる閃光放電ランプ点灯装置およびこれを用いた太陽電池評価用ソーラーシミュレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の閃光放電ランプ点灯装置は、外部トリガー電極を備え、閃光発光を行う閃光放電ランプと;閃光放電ランプの放電時に閃光放電ランプに定電流を供給して閃光点灯させる定電流電源および閃光放電ランプの放電開始時に先導放電電流を供給するブースト回路を備えた閃光点灯回路と;高電圧のトリガー信号を発生して閃光放電ランプのトリガー電極に印加することにより閃光放電ランプを始動させる高電圧発生回路と;を具備していることを特徴としている。
【0007】
本発明においては、高電圧発生回路を作動させて発生したトリガー信号を閃光放電ランプのトリガー電極に印加することにより、閃光放電ランプの気密容器の内部が絶縁破壊して閃光放電ランプが始動する。閃光放電ランプが始動すると、最初に主としてブースト回路から比較的微弱な先導放電電流が閃光放電ランプに供給されて始動が補助される。これにより閃光放電が開始される。先導放電電流に続いて閃光放電が立ち上がるころから定電流電源からランプ電流の供給が立ち上がって本格的な閃光放電へ移行し、次いでランプ電流はピーク電流に達し、かつ、そのピーク電流の状態が所定時間の間持続する。その間、発光が十分に立ち上がり、次いで光量がピーク状態で所定時間の間ほぼ一定に維持されると、定電流電源からのランプ電流の供給が停止されるので、ランプ電流は立ち下がり、閃光放電が終了する。
【0008】
定電流電源のランプ電流の供給開始と停止の制御は、定電流電源に適当なスイッチ手段を配設して行う。なお、ブースト回路は、閃光放電の開始時に微弱な先導放電電流を供給して指導を補助するだけの比較的小さい電源容量を有していればよい。
【0009】
閃光放電ランプは、以上の一連の放電動作を通じて閃光発光を行う。このとき、放電媒体としての希ガスの種類に応じてそれぞれの分光分布を有する閃光発光が行われる。太陽光に近似した分光分布を有する閃光発光を得るためには、キセノンを主体とする放電媒体を封入すると効果的である。また、紫外線の含有量を増加したい場合には、クリプトンやアルゴンを主体とする放電媒体を封入すると効果的である。
【0010】
また、閃光発光は、閃光放電ランプに供給されるランプ電流の大きさおよびその変化に比例的となる。したがって、ランプ電流を定電流電源を用いて制御することで、閃光発光を、立ち上がりが早くて、しかもピーク値がしばらく持続し、その後立ち下がって終了するように制御することが可能になる。
【0011】
本発明においては、閃光放電の立ち上がりの先導放電電流を閃光点灯回路のブースト回路が供給し手始動を補助し、その後を追って定電流電源が主なランプ電流供給を定電流特性の下に開始するので、閃光放電、したがって閃光発光の早い立ち上がりとフラットで、しかも持続時間が相対的に長いピーク値を実現することが可能になる。
【0012】
したがって、本発明の閃光放電ランプ点灯装置の閃光放電ランプを太陽電池評価用ソーラーシミュレータの擬似太陽光用の光源として用いたときには、発光のピーク値を含むその前後の期間中に太陽電池評価のための所要の測定を実施すれば、その測定積算回数を多くできるとともに、測定データの補正が不要になる。また、たとえ測定データを補正するにしても、その補正が容易になる。
【0013】
本発明の実施に際しては、以下の実施態様の一つまたは複数を所望により選択して採用することを許容する。
【0014】
(第1の実施態様について) 第1の実施態様は、外部トリガー電極を備え、閃光発光を行う閃光放電ランプと;閃光放電ランプを閃光点灯する閃光点灯回路と;高電圧のトリガー信号を発生して閃光放電ランプのトリガー電極に印加することにより閃光放電ランプを始動させる高電圧発生回路と;を具備し、ランプ電流波形の立ち上がり時間を20ms以下に設定した閃光放電ランプ点灯装置である。なお、立ち上がり時間は、ランプ電流立ち上がり波形の波高値の10〜90%の部分の時間である。また、上記立ち上がり時間は、発光についても当てはまる。すなわち、閃光発光波形の立ち上がり時間を20ms以下になるように設定することができる。
【0015】
また、第1の実施態様を実現するには、閃光放電ランプの構成、閃光点灯回路の構成およびその電源インピーダンス、ならびに電源および閃光放電ランプの間を接続する配電線路の分布回路定数を適切に設定するのが望ましい。ランプ電流を供給する閃光点灯回路としては、前述の本発明の構成を採用することができる。しかし、所望により、充放電コンデンサに蓄積した電荷を、閃光放電ランプに放電させる回路構成を採用して実現することも可能である。
【0016】
そうして、第1の実施態様によれば、閃光放電ランプ点灯装置を太陽電池評価用ソーラーシミュレータの擬似太陽光用の光源として用いたときに、電池セルに余分な光や熱が与えられる時間を短くして、電池セルの光電変換機能を低下させないようにすることができる。
【0017】
また、ランプ電流波形の立ち上がり時間または閃光発光波形の立ち上がり時間が短縮することで、ランプ電流波形または閃光発光波形におけるピーク値の持続時間の占める割合が増加するので、1回の閃光発光時間サイクル中に占める測定に利用できる時間の割合(測定時間効率)を高くして、測定積算回数を多くすることができる。
【0018】
(第2の実施態様について) 第2の実施態様は、外部トリガー電極を備え、閃光発光を行う閃光放電ランプと;閃光放電ランプを閃光点灯する閃光点灯回路と;高電圧のトリガー信号を発生して閃光放電ランプのトリガー電極に印加することにより閃光放電ランプを始動させる高電圧発生回路と;を具備し、ランプ電流波形のピーク時間を10ms以上持続するように設定した閃光放電ランプ点灯装置である。なお、ピーク時間は、ランプ電流波形の波高値の90%以上の部分が継続している時間である。また、ピーク時間が上述のように設定されているのであれば、その結果閃光発光波形のピーク値持続時間の10ms以上が実現する。また、上記ピーク期間中における光出力の変動幅は、±2.5%以内であることが望ましい。
【0019】
また、第2の実施態様は、前述した本発明の構成を採用すれば容易に実現することができる。しかし、所望により、充放電コンデンサに蓄積した電荷を閃光放電ランプに放電させる回路構成において、閃光放電ランプ、充放電コンデンサの静電容量および充電電圧、放電回路中に対するインダクタの挿入ならびに放電回路の回路定数の設定を適切に行うなどによって実現させることも可能である。
【0020】
そうして、第2の実施態様によれば、閃光放電ランプ点灯装置を太陽電池評価用ソーラーシミュレータの擬似太陽光用の光源として用いたときに、ランプ電流波形したがって閃光発光波形におけるピーク値の持続時間が長いので、1回の発光中における電池セルの測定積算回数を多くすることができる。
【0021】
(第3の実施態様について) 第3の実施態様は、外部トリガー電極を備え、閃光発光を行う閃光放電ランプと;閃光放電ランプを閃光点灯する閃光点灯回路と;高電圧のトリガー信号を発生して閃光放電ランプのトリガー電極に印加することにより閃光放電ランプを始動させる高電圧発生回路と;を具備し、ランプ電流波形の立ち下がり時間を20ms以下に設定した閃光放電ランプ点灯装置である。なお、立ち下がり時間は、ランプ電流立ち下がり波形の波高値の90〜10%の部分の時間である。また、上記立ち下がり時間は、閃光発光波形についても当てはまる。すなわち、閃光発光波形の立ち下がり時間を20ms以下になるように設定することができる。
【0022】
また、第3の実施態様を実現するには、第1の実施態様と同様に閃光放電ランプの構成、閃光点灯回路の構成およびその電源インピーダンス、ならびに電源および閃光放電ランプの間を接続する配電線路の分布回路定数を適切に設定するのが望ましい。ランプ電流を供給する電源については、前述の本発明の構成を採用することができる。しかし、所望により、充放電コンデンサに蓄積した電荷を閃光放電ランプに放電させる回路構成を採用して実現することも可能である。
【0023】
そうして、第3の実施態様によれば、閃光放電ランプ点灯装置を太陽電池評価用ソーラーシミュレータの擬似太陽光用の光源として用いたときに、電池セルに余分な光や熱が与えられる時間を短くして、電池セルの光電変換機能を低下させないようにすることができる。
【0024】
また、ランプ電流波形の立ち下がり時間が短縮することで、ランプ電流波形、したがって閃光発光波形のピーク値の持続時間の占める割合が増加するので、1回の閃光発光時間サイクル中に占める測定に利用できる時間の割合(測定時間効率)を高くして、測定積算回数を多くすることができる。
【0025】
(第4の実施態様について) 第4の実施態様は、外部トリガー電極を備え、閃光発光を行う閃光放電ランプと;閃光放電ランプを閃光点灯する閃光点灯回路と;高電圧のトリガー信号を発生して閃光放電ランプのトリガー電極に印加することにより閃光放電ランプを始動させる高電圧発生回路と;を具備し、上記閃光点灯回路が並列的に接続された複数の充放電コンデンサを備え、各充放電コンデンサにインダクタをそれぞれ直列接続した回路構成を具備している閃光放電ランプ点灯装置である。
【0026】
そうして、第4の実施態様によれば、所望の閃光放電に必要な大きなランプ電流を確保するとともに、そのピーク値したがって閃光発光のピーク値の持続時間が長くなるように設定しやすくなる。
【0027】
したがって、閃光放電ランプ点灯装置を太陽電池評価用ソーラーシミュレータの擬似太陽光用の光源として用いたときに、1回の発光中における電池セルの測定積算回数を多くすることができる。
【0028】
(第5の実施態様について) 第5の実施態様は、外部トリガー電極を備え、閃光発光を行う閃光放電ランプと;閃光放電ランプを閃光点灯する閃光点灯回路と;高電圧のトリガー信号を発生して閃光放電ランプのトリガー電極に印加することにより閃光放電ランプを始動させる高電圧発生回路と;を具備し、閃光放電ランプ中のランプ電流密度が2000A/cm2以下に設定されている閃光放電ランプ点灯装置である。なお、ランプ電流密度(A/cm2)は、閃光放電ランプの気密容器内に形成されている放電空間の単位断面積(1cm2)当たりのランプ電流(A)である。ランプ電流密度が2000A/cm2以下であれば、ピーク値の持続時間を所望値の10ms以上にすることが容易になるし、また所望の発光量を確保することができる。なお、ランプ電流は、パルス波形のピーク値とする。
【0029】
そうして、第5の実施態様によれば、発光のピーク値持続時間を所望値に設定しやすくなる。
【0030】
したがって、閃光放電ランプ点灯装置を太陽電池評価用ソーラーシミュレータの擬似太陽光用の光源として用いたときに、1回の発光中における電池セルの測定積算回数を多くすることができる。
【0031】
(第6の実施態様について) 第6の実施態様は、外部トリガー電極を備え、閃光発光を行う閃光放電ランプと;閃光放電ランプを閃光点灯する閃光点灯回路と;高電圧のトリガー信号を発生して閃光放電ランプのトリガー電極に印加することにより閃光放電ランプを始動させる高電圧発生回路と;を具備し、上記閃光放電ランプの発光部が例えば螺旋状などの形状に屈曲している閃光放電ランプ点灯装置である。
【0032】
閃光放電ランプ点灯装置を太陽電池評価用ソーラーシミュレータの擬似太陽光の光源として使用する場合に、効果的な形状に形成した閃光放電ランプを用いることができる。この場合、有効発光部長の1/2以上の部分を屈曲させると効果的である。閃光放電ランプを例えば螺旋状に屈曲させる場合には、閃光放電ランプの外径をA(cm)とし、螺旋の直径をB(cm)としたとき、数式3≦B/A≦15を満足するのが好ましい。比B/Aについては、上記数式が示す範囲内で太陽電池評価用ソーラーシミュレータの大きさに応じて適当な値を選択することができる。
【0033】
そうして、第6の実施態様を太陽電池評価用ソーラーシミュレータに採用すれば、少ない閃光放電ランプの数でも所望の配光特性を実現しやすくなる。
【0034】
(第7の実施態様について) 第7の実施態様は、外部トリガー電極を備え、閃光発光を行う閃光放電ランプと;閃光放電ランプを閃光点灯する閃光点灯回路と;高電圧のトリガー信号を発生して閃光放電ランプのトリガー電極に印加することにより閃光放電ランプを始動させる高電圧発生回路と;を具備し、上記閃光点灯回路は、待機時には小さなランプ電流を流して閃光放電ランプの放電を継続させるとともに、使用時には所定値のランプ電流を間欠的に流して閃光放電を行うように構成されている閃光放電ランプ点灯装置である。なお、待機時の発光量は、閃光放電ランプの寿命の短縮を来たさないためには、使用時の閃光放電時の50%以下、好適には30%以下になるように設定するのが望ましい。
【0035】
そうして、第7の実施態様によれば、閃光発光を行わせる際に、都度閃光放電ランプを始動させる必要がなくなるので、ランプ点灯指令信号の投入から閃光発光までの時間を大幅に短縮できるとともに、ランプ電流および発光の立ち上がりと立ち下がりを早めることに対しても効果的である。その結果、閃光放電ランプ点灯装置を太陽電池評価用ソーラーシミュレータの擬似太陽光用の光源として用いたときに、1回の閃光発光時間サイクル中に占める測定に利用できる時間の割合(測定時間効率)を高くして、測定積算回数を多くすることができる。
【0036】
また、都度始動させないため、閃光発光の信頼性が高くなる。
【0037】
(第8の実施態様について) 第8の実施態様は、外部トリガー電極を備え、閃光発光を行う閃光放電ランプと;閃光放電ランプを閃光点灯する閃光点灯回路と;高電圧のトリガー信号を発生して閃光放電ランプのトリガー電極に印加することにより閃光放電ランプを始動させる高電圧発生回路と;を具備し、上記閃光点灯回路は、その定電流電源の出力電流がプログラムに応じて変化するように構成されている。そのため、定電流電源は、その出力電流が可変である。また、プログラム手段が配設されていて、定電流電源がプログラム手段に連動するように構成されている。
【0038】
そうして、第8の実施態様によれば、予め設定されたプログラムに応じて出力電流を変化させることで、多様な用途、例えば太陽電池評価用ソーラーシミュレータなどの用途に対応させることが可能になるとともに、操作性が著しく向上する。
【0039】
(第9の実施態様について) 第9の実施態様は、外部トリガー電極を備え、閃光発光を行う閃光放電ランプと;閃光放電ランプを閃光点灯する閃光点灯回路と;高電圧のトリガー信号を発生して閃光放電ランプのトリガー電極に印加することにより閃光放電ランプを始動させる高電圧発生回路と;を具備し、上記高電圧発生回路は、そこにランプ点灯指令信号が入力されたときに、高電圧発生回路が、その外部へランプ点灯指令信号と同期した外部出力信号を送出可能に構成されている閃光放電ランプ点灯装置である。
【0040】
第9の実施態様においては、閃光放電ランプを点灯するときに高電圧発生回路にランプ点灯指令信号を送ると、当該ランプ点灯指令信号に応じて高電圧発生回路がトリガー信号を発生して閃光放電ランプのトリガー電極に印加する。これにより、閃光放電ランプが始動する。閃光点灯回路が本発明によりブースト回路および安定化電源を備えて構成されている場合には、最初ブースト回路から、続いて安定化電源からランプ電流が供給されるし、また閃光点灯回路が充放電コンデンサを備えて構成されている場合には、当該充放電コンデンサからランプ電流が供給されて、閃光放電ランプが閃光放電により点灯する。
【0041】
また、上記ランプ点灯指令信号が入力すると、それに同期して高電圧発生回路から外部へ外部出力信号が送出される。この外部出力信号を利用して外部機器、例えば太陽電池評価用ソーラーシミュレータの測定プログラムを実行したり、所望により閃光放電ランプの発光の分光分布やランプ電流波形をシンクロ撮影したりするなどを行いやすくなる。
【0042】
(第10の実施態様について) 第10の実施態様は、外部トリガー電極を備え、閃光発光を行う閃光放電ランプと;閃光放電ランプを閃光点灯する閃光点灯回路と;高電圧のトリガー信号を発生して閃光放電ランプのトリガー電極に印加することにより閃光放電ランプを始動させる高電圧発生回路と;を具備し、エンボス加工した反射板を用いて閃光放電ランプの閃光発光を被照射体に照明するように構成されている閃光放電ランプ点灯装置である。エンボス加工した反射板としては、全反射率80%以上、拡散反射率70%以上の光学特性を有するものを、例えば閃光放電ランプLの背面側に配置して用いると効果的である。
【0043】
そうして、第10の実施態様によれば、閃光放電ランプによる直接照射光と同程度の光量を反射板REFにより反射して被照射体、例えば太陽電池などを照明することができる。これによって少ないランプ数で、しかも良好な配光特性の下で効果的な照明を行うことができる。
【0044】
したがって、本実施態様は、太陽電池評価用ソーラーシミュレータに好適である。
【0045】
(第11の実施態様について) 第11の実施態様は、外部トリガー電極を備え、閃光発光を行う閃光放電ランプと;閃光放電ランプを閃光点灯する閃光点灯回路と;高電圧のトリガー信号を発生して閃光放電ランプのトリガー電極に印加することにより閃光放電ランプを始動させる高電圧発生回路と;を具備し、上記閃光点灯回路が充放電コンデンサの放電電流により閃光放電ランプを閃光発光させる回路構成において、放電回路に直列にスイッチング手段を挿入して、充放電コンデンサの放電電流をピーク値近傍で遮断するように構成されている閃光放電ランプ点灯装置である。
【0046】
そうして、第11の実施態様によれば、閃光放電ランプのランプ電流波形したがって閃光発光波形の立ち下がり時間を20ms以下の所望時間に短縮することが容易になる。
【0047】
次に、本発明の太陽電池評価用ソーラーシミュレータは、太陽電池評価用ソーラーシミュレータ本体と;閃光放電ランプが光源として太陽電池評価用ソーラーシミュレータ本体に配設された請求項1記載の閃光放電ランプ点灯装置と;を具備していることを特徴としている。
【0048】
本発明においては、閃光放電ランプ点灯装置によって閃光放電ランプが閃光点灯する擬似太陽光となり、しかも閃光発光のピーク値持続時間を比較的長く設定できるので、その期間中に太陽電池評価のための所要の測定を実施することにより、その測定積算回数を多くできるとともに、測定データの補正が不要になるか、または測定データを補正するにしても、その補正が容易になる。
【発明の効果】
【0049】
請求項1の発明によれば、閃光発光波形の制御が容易で、閃光発光のピーク値の持続時間を比較的長く設定できる閃光放電ランプ点灯装置を提供することができる。
【0050】
請求項2の発明によれば、請求項1の効果を有する太陽電池評価用ソーラーシミュレータを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0052】
図1および図2は、本発明の閃光放電ランプ点灯装置を実施するための第1の形態を示し、図1は回路図、図2は閃光放電ランプの正面図である。本形態において、閃光放電ランプ点灯装置は、閃光放電ランプHFL、閃光点灯回路FOCおよび高電圧発生回路HVGを具備している。
【0053】
〔閃光放電ランプHFLについて〕 閃光放電ランプHFLは、気密容器SE、一対の電極E、E、一対の導入線LW、放電媒体およびトリガー電極TREを備えている。
【0054】
(気密容器SE) 気密容器SEは、例えば石英ガラスなどの放射透過性で気密性の細長い管s1と、この細長い管s1の両端に形成したグレーデッドシール構造の封止部s2、s2とからなる。好ましくは気密容器SEの外径をD(mm)としたとき、数式6≦D≦30を満足する範囲内にある。上記数式において、外径D(mm)は、管軸方向の後述する主要部における外周の平均値の大きさを外周が等しい円形に換算したときの値として求めることができる。
【0055】
また、気密容器SEは、少なくともその主要部、すなわち少なくとも放電により発生した光すなわち紫外光、可視光および/または赤外光を外部へ導出して利用しようとする部位が上記の光に対して透光性の石英ガラスにより形成されている。したがって、上記の部位以外のその他の部位は透光性でなくてもよい。なお、透光性とは、外部へ導出して利用とする所望波長領域の光を実質的に透過すればよく、要すれば真空紫外光に対しても実質的に透過性にすることができる。
【0056】
さらに、気密容器SEは、全体として細長い形状をなしていて、内部が中空になっていて放電空間として利用される。気密容器SEの長さは、被照射物に応じて所望の値に設定することができる。例えば、気密容器SEを0.3〜2m程度の長さとした閃光放電ランプを得ることもできる。
【0057】
さらにまた、気密容器SEは、所望により中空部の管軸方向の主要部が、その他の部分に対して内部断面積が変化していることを許容する。
【0058】
そうして、気密容器SEは、以上のように種々構成され得るが、一実施例として外径12mm、肉厚1mm、内径10mmの石英製バルブからなるものを採用した。
【0059】
(一対の電極E、E) 一対の電極E、Eは、気密容器SEの両端の封止部s2に封着されて、後述する電極主部e1が互いに対向して気密容器SEの両端内部に封装されている。そして、従来から閃光放電ランプに一般に用いられている構成であるところの冷陰極形の電極構造を採用することができる。この場合、例えばニッケル(Ni)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)およびチタン(Ti)のグループから選択された一種または複数種の耐火性金属あるいはこれらの複数種からなる合金またはステンレス鋼などを用いて電極Eを形成することができる。
【0060】
また、電極Eは、例えば電極主部e1および電極軸e2を含み、電極主部e1を電極軸e2の先端に支持させて構成することができる。電極軸e2は、その基端が気密容器SEの封止部に気密に封着される。
【0061】
(一対の導入線LW、LW) 一対の導入線LW、LWは、電極軸e2が一体に延長して気密容器SEの外部に露出している部分からなる。したがって、導入線LWを気密容器SEの封止部を貫通させて気密容器の内部へ突出させ、その先端に電極主部e1を支持させることもできる。
【0062】
さらに、所望により電極軸e2をセラミックスで被覆することができる。これにより、閃光放電ランプの点灯によって高温に加熱された電極軸e2から炭素(C)などの不純物が気密容器SEの内部に放出されて気密容器SEの内面を黒化して閃光放電ランプが短寿命になるのを抑制することができる。また、上記セラミックスを適当な大きさに形成することにより、加えて電極Eを所定位置に保持するための電極保持部材としても作用させることができる。さらに、所望により上記セラミックスにゲッタを保持させることもできる。
【0063】
(放電媒体) 放電媒体は、その放電により所望波長域の光を放射する媒体であり、主として希ガスからなる。希ガスは、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)およびキセノン(Xe)のグループから選択された一種を単独で、または複数種を混合して用いることができる。また、希ガスの封入圧は、従来から閃光放電ランプに一般に用いられているのと同様な圧力、例えば50〜200kPa程度であることを許容する。また、キセノンを主体としてこれにクリプトンを添加することにより、キセノンによる紫外域から赤外域にわたる放射に加えて、200〜300nmの紫外光の放射を増加することができる。また、クリプトンを主体とする希ガスとして封入することにより、さらに紫外線の放射を増加させることもできる。
【0064】
そうして、放電媒体は、種々構成し得るが、一実施例としてXeを13.3kPa封入した。
【0065】
(トリガー電極TRE) トリガー電極TREは、気密容器SEの外面に近接してらせん状に巻回したり、管軸に沿って平行に配設したりされ、少なくとも一方の電極Eとの間に、例えば高電圧のトリガー信号を印加して強い電位傾度を形成する手段である。そうして、気密容器SE内の内部を絶縁破壊して、一対の電極E、E間に放電を生起させることができる。
【0066】
また、トリガー電極TREを螺旋状に配設する場合には、気密容器SEの外周に近接してピッチをP(mm)としたとき、数式5≦P≦50を満足する範囲内においてトリガー電極TREを形成すると効果的である。ピッチPが上記の範囲内であれば、気密容器SEの管長が2m程度以下の範囲において、閃光放電のアークの中心がほぼ管軸上に安定して形成されるとともに、放電によって発生した光エネルギーの所望程度を外部へ導出することができる。なお、トリガー電極TREのピッチPは、気密容器SEの管長によりその最適な範囲が変化するので、上記の範囲内において、管長に応じて最適な条件を選択することができる。例えば、管長が300〜1000mm、かつ、外径D(mm)が6≦D≦30の範囲内にある場合、トリガー電極TREのピッチは、20〜30mmが好適である。なお、上記数式において、外径D(mm)は、管軸方向の後述する主要部における外周の平均値の大きさを外周が等しい円形に換算したときの値である。しかしながら、ピッチPが5mm未満になると、アークの安定性は問題ないが、遮光率が大きくなりすぎるので、不可である。また、ピッチPが30mmを超えると、遮光率の問題はないが、アークの安定性が悪くなるので、不可である。
【0067】
また、トリガー電極TREは、好ましくは上記に加えてその線径をd(mm)としたとき、数式0.1≦d≦2.0を満足する範囲内であれば、点灯時の熱膨張による影響がなくて、しかも、遮光率が大きくなりすぎない。これに対して、線径が0.1mm未満になると、点灯時の熱膨張が大きくなって気密容器との間に隙間が形成されやすくなるとともに、トリガー電極TREのピッチが乱れやすくなる。トリガー電極TREと気密容器SEとの間の隙間が大きくなり、始動性が損なわれる。また、ピッチが乱れると、アークの安定性が損なわれる。また、線径が2.0mmを超えると、遮光率が大きくなるとともに、外部へ導出される管軸方向の光エネルギー分布の均整度が悪くなる。
【0068】
さらに、トリガー電極TREを気密容器SEの外周面に接触状態で所定の位置に固定するために、トリガー電極TREの両端を好ましくは金属製のリング状部材によって緊縛することができる。この場合、金属製のリング状部材からリード線を導出するように構成することができる。このため、リード線に不所望な張力が作用したとしても、トリガー電極TREのピッチが乱れたりするのを防止することができる。
【0069】
〔閃光点灯回路FOCについて〕 閃光点灯回路FOCは、定電流電源CDCおよびブースト回路BCを備えている。
【0070】
(定電流電源CDC) 定電流電源CDCは、定電流特性を有していて、閃光放電の期間中定電流化された直流電流を出力する。閃光放電中の短時間だけ直流の定電流出力を生じさせるために、適当なスイッチング手段、例えば電源スイッチを備えている。この場合、定電流出力はスイッチング手段のオンにより開始され、スイッチング手段のオフにより定電流出力が停止する。
【0071】
また、定電流出力が後述するブースト回路BCに回り込まないようにするために、ダイオードD1を順方向に介して閃光放電ランプHFLの一対の電極E、E間に接続している。そして、定電流化された直流出力電流をランプ電流の立ち上がり期間、ピーク期間および立ち下がり期間を通じて連続して閃光放電ランプHFLに供給する。
【0072】
(ブースト回路BC) ブースト回路BCは、閃光放電ランプHFLの放電開始時に立ち上がりの早い微弱の始動補助電流を供給する。したがって、比較的容量の小さい充放電コンデンサC1、C2の直列接続体を、その電源として構成することができる。すなわち、ブースト回路BCは、充電用の直流電源BDC、充電抵抗R1、上記充放電コンデンサC1、C2、放電抵抗R2およびダイオードD2を備えて構成されている。
【0073】
直流電源BDCは、充電抵抗R1を介して充放電コンデンサC1、C2の直列接続体の両端に接続して、充放電コンデンサC1、C2を比較的高い電圧で充電する。充放電コンデンサC1、C2の直列接続体は、閃光放電ランプHFLの始動時に比較的高い充電電圧の下に立ち上がりの早い始動補助電流を放電抵抗R2およびダイオードD2を通じて放電開始時に閃光放電ランプHFLに供給することにより、始動を補助する。
【0074】
〔高電圧発生回路HPGについて〕 高電圧発生回路HPGは、パルストランスPTを主体として構成されていて、高電圧のトリガー信号を発生する。パルストランスPTは、1次巻線wpが図示しないパルス電源に始動スイッチを介して接続し、2次巻線wsが閃光放電ランプHFLの一方の電極Eとトリガー電極TREとの間に接続している。
【0075】
〔回路動作について〕 高電圧発生回路HPGを作動させて発生したトリガー信号がトリガー電極TREと閃光放電ランプHFLの一方の電極Eとの間に印加すると、閃光放電ランプHFLが絶縁破壊して始動する。すると、まず閃光点灯回路FOCのブースト回路BCから立ち上がりの早い始動補助電流が供給されて閃光放電が開始され、これに続いて定電流電源CDCからランプ電流が供給されるので、ランプ電流が立ち上がり、閃光発光が生じる。
【0076】
次いで、ランプ電流がピーク値に達すると、定電流電源CDCから供給されるランプ電流は、定電流特性の下でピーク値を持続するので、これに同期して閃光放電ランプHFLの閃光発光もピーク値に達して一定となり、閃光発光のピーク値が所定時間の間持続する。
【0077】
所定のピーク期間が経過すると、定電流電源CDCの定電流出力が遮断されるので、ランプ電流が立ち下がり、閃光発光が終了する。
【0078】
そうして、ランプ電流波形および閃光発光波形の立ち上がり時間20ms以下、ピーク値持続時間30ms以上(好適には50〜100ms)、かつ、ピーク値持続期間中の光出力変動±2.5%以内ならびにランプ電流波形および閃光発光波形の立ち下がり時間20ms以下を実現することができる。なお、実施例において、ランプ電流は、そのピーク値が750A、電流密度は955A/cm2であった。
【0079】
図3および図4は、閃光発光の理想波形および実際波形をそれぞれ説明する模式図である。すなわち、閃光発光の理想波形は、図3に示すように立ち上がり時間および立ち下がり時間が0で、ピーク時間TPのみである。しかし、実際には、図4に示すように立ち上がり時間TRUおよび立ち下がり時間TRDが生じてしまう。本形態においては、ブースト回路BCおよび定電流電源CDCを用いていることにより、立ち上がり時間TRUを短縮し、ピーク時間を所望時間持続させるとともに、ランプ電流を遮断して立ち下がり時間TRDを短縮している。
【0080】
図5は、本発明の閃光放電ランプ点灯装置を実施するための第2の形態を示す回路図である。図において、図1と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。本形態は、閃光点灯回路FOCが並列接続した複数のコンデンサからなる充放電コンデンサC3および充電回路CCを主体として構成されている。充放電コンデンサC3の静電容量は0.15F、充電電圧は300V、放電電流のピーク値が755Aである。
【0081】
そうして、ランプ電流波形および閃光発光波形の立ち上がり時間20ms以下、ピーク値持続時間10ms以上ならびにランプ電流波形および閃光発光波形の立ち下がり時間20ms以下を実現することができる。
【0082】
図6は、本発明の閃光放電ランプ点灯装置を実施するための第3の形態を示す回路図である。図において、図5と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。本形態は、閃光点灯回路FOCの充放電コンデンサC3と閃光放電ランプHFLとの間にインダクタンス10mHのインダクタLを直列に挿入して構成されている。なお、充放電コンデンサC3が図5に示すように複数のコンデンサの並列接続体により構成されている場合には、複数のコンデンサ個々にインダクタを直列に挿入すればよい。
【0083】
そうして、インダクタンスによりランプ電流の変化を抑制することにより、ピーク値持続時間20ms以上を実現することができる。
【0084】
図7は、本発明の閃光放電ランプ点灯装置を実施するための第4の形態を示す閃光放電ランプの正面図である。図において、図2と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。本形態は、閃光放電ランプHFLの発光部が螺旋状に屈曲している。また、トリガー電極TREが気密容器SEの外周に螺旋状に巻回されている。
【0085】
そうして、本形態を太陽電池評価用ソーラーシミュレータの擬似太陽光用の光源として用いた場合に、少ないランプ数でありながら太陽電池評価用ソーラーシミュレータとしての好適な配光特性を得ることができる。
【0086】
図8は、本発明の閃光放電ランプ点灯装置を実施するための第5の形態におけるランプ電流の時間に対する変化を示す略図的波形図である。図において、横軸は時間を、縦軸はランプ電流を、それぞれ示す。
【0087】
本形態は、閃光放電ランプHFLを予め始動させて、その待機状態においては放電を維持可能な範囲でランプ電流を小さく絞って連続的に流して放電状態に維持しておき、使用時すなわち発光をさせたいときにはランプ電流をパルス状に大きく制御して所望量の発光を得るように構成されている。
【0088】
図9および図10は、本発明の閃光放電ランプ点灯装置を実施するための第6の形態を示し、図9は回路図、図10は各部の波形図である。図において、図1および図5と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。
【0089】
本形態は、閃光放電ランプHFLを始動させる高電圧発生回路HVCにランプ点灯指令信号が入力されたときに、高電圧発生回路HVCの外部に外部出力信号を出力するために、高電圧発生回路HVCを、信号形成回路SFC、コネクタCN、遅延回路DeCおよび高電圧パルス発生回路HPGを備えて構成している。
【0090】
信号形成回路SFCは、図9において左側の矢印で示すように到来したランプ点灯指令信号を波形整形して所要の動作信号を形成する。そして、高電圧のトリガー信号を発生させるために、まず後述する遅延回路DeCに入力するとともに、コネクタCNにも送出する。コネクタCNは、動作信号を外部へ外部出力信号として供給できるようにしている。遅延回路DeCは、外部の機器と同期を取りやすくするためなどの理由で配設されており、動作信号を所定の時間遅延させる。遅延後の動作信号が入力することにより、高電圧パルス発生回路HPGは、トリガー信号を発生して、閃光放電ランプHFLのトリガー電極TREと図9において下方の電極Eとの間に印加して、閃光放電を開始させる。なお、高電圧パルス発生回路HPGは、図1において説明した高電圧発生回路HVCと同様な回路構成を備えている。
【0091】
一方、図9において、コネクタCNから取り出した外部出力信号を利用する機器は、一例として分光分布測定装置SPMである。この分光分布測定装置SPMは、測定装置本体M1、受光器M2および表示装置M3により構成されている。測定装置本体M1は、コネクタCNから到来した図において右側の矢印に示す外部出力信号に同期して測定動作を行う。受光器M2は、閃光放電ランプHFLの閃光発光を受光して、その受光信号を測定装置本体M1に入力する。表示装置M3は、測定装置本体M1から出力された計測結果の分光分布データを例えば分光分布曲線として表示する。
【0092】
次に、図10に示す各部の波形について説明する。図10において、(a)はランプ点灯指令信号、(b)は動作信号、(c)は高電圧パルス発生回路HPGの入力信号、(d)はトリガー信号、(e)は外部機器動作時間信号、(f)はランプ点灯時間信号である。なお、(c)に示す矢印は遅延回路DeCによる遅延時間を意味示している。
【0093】
図11は、本発明の閃光放電ランプ点灯装置を実施するための第7の形態を示し、図10(a)は正面図、図10(b)は側面略図、図10(c)は下面図である。図において、図2と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。各図において、符号REFは反射板である。
【0094】
反射板REFは、その表面の全体にわたりランダムパターンのエンボス加工が施されている。その結果、反射板REFは、良好な拡散反射性能を有している。なお、図中、符号Gは、閃光放電ランプHFLの電極Eの後背部に支持させたゲッタである。
【0095】
図12は、本発明の閃光放電ランプ点灯装置を実施するための第8の形態を示す回路図である。図において、図5と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。本形態は、閃光点灯回路FOCの充放電コンデンサC3と閃光放電ランプHFLとの間にスイッチング手段SWを直列に挿入し、スイッチング手段SWをランプ電流のピーク値の後端側近傍においてオフすることにより、ランプ電流を遮断するように構成している。
【0096】
そうして、本形態によれば、ランプ電波形、したがって閃光発光波形の立ち下がり時間を容易に20ms以下にすることができる。
【0097】
図13は、本発明の太陽電池評価用ソーラーシミュレータを実施するための一形態を示す概念図である。図において、SYMは太陽電池評価用ソーラーシミュレータ本体、FLUは閃光放電ランプ点灯装置、SBは太陽電池である。
【0098】
太陽電池評価用ソーラーシミュレータ本体SYMは、遮光室を備え、その内部に閃光放電ランプ点灯装置FLUおよび太陽電池SBを所定の関係に配設している。
【0099】
閃光放電ランプ点灯装置FLUは、以上説明した各図に示す本発明を実施したものであり、閃光発光を太陽電池SBに向けて照射するように配置されている。なお、図中、REFは反射板である。
【0100】
太陽電池SBはその多数が閃光発光の照射を受ける位置に配置されている。
【0101】
そうして、閃光放電ランプ点灯装置FLUによる閃光発光が行われたときに、図示を省略している測定システムが作動して所要の測定を実施する。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の閃光放電ランプ点灯装置を実施するための第1の形態を示す回路図
【図2】同じく閃光放電ランプの正面図
【図3】閃光発光の理想波形を示す模式図
【図4】閃光発光の実際波形を示す模式図
【図5】本発明の閃光放電ランプ点灯装置を実施するための第2の形態を示す回路図
【図6】本発明の閃光放電ランプ点灯装置を実施するための第3の形態を示す回路図
【図7】本発明の閃光放電ランプ点灯装置を実施するための第4の形態を示す閃光放電ランプの正面図
【図8】本発明の閃光放電ランプ点灯装置を実施するための第5の形態におけるランプ電流の時間に対する変化を示す略図的波形図
【図9】本発明の閃光放電ランプ点灯装置を実施するための第6の形態を示す回路図
【図10】同じく各部の波形図
【図11】本発明の閃光放電ランプ点灯装置を実施するための第7の形態を示し、図10(a)は正面図、図10(b)は側面略図、図10(c)は下面図
【図12】本発明の閃光放電ランプ点灯装置を実施するための第8の形態を示す回路図
【図13】本発明の太陽電池評価用ソーラーシミュレータを実施するための一形態を示す概念図
【符号の説明】
【0103】
BC…ブースト回路、BDC…直流電源、E…電極、FOC…閃光点灯回路、HFL…閃光放電ランプ、HVC…高電圧発生回路、PT…パルストランス、SDC…安定化電源、TRE…トリガー電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部トリガー電極を備え、閃光発光を行う閃光放電ランプと;
閃光放電ランプの放電時に閃光放電ランプに定電流を供給して閃光点灯させる定電流電源および閃光放電ランプの放電開始時に先導放電電流を供給するブースト回路を備えた閃光点灯回路と;
高電圧のトリガー信号を発生して閃光放電ランプのトリガー電極に印加することにより閃光放電ランプを始動させる高電圧発生回路と;
を具備していることを特徴とする閃光放電ランプ点灯装置。
【請求項2】
太陽電池評価用ソーラーシミュレータ本体と;
閃光放電ランプが光源として太陽電池評価用ソーラーシミュレータ本体に配設された請求項1記載の閃光放電ランプ点灯装置と;
を具備していることを特徴とする太陽電池評価用ソーラーシミュレータ。
【請求項1】
外部トリガー電極を備え、閃光発光を行う閃光放電ランプと;
閃光放電ランプの放電時に閃光放電ランプに定電流を供給して閃光点灯させる定電流電源および閃光放電ランプの放電開始時に先導放電電流を供給するブースト回路を備えた閃光点灯回路と;
高電圧のトリガー信号を発生して閃光放電ランプのトリガー電極に印加することにより閃光放電ランプを始動させる高電圧発生回路と;
を具備していることを特徴とする閃光放電ランプ点灯装置。
【請求項2】
太陽電池評価用ソーラーシミュレータ本体と;
閃光放電ランプが光源として太陽電池評価用ソーラーシミュレータ本体に配設された請求項1記載の閃光放電ランプ点灯装置と;
を具備していることを特徴とする太陽電池評価用ソーラーシミュレータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−108128(P2006−108128A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−288320(P2004−288320)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]