説明

閉経後の女性における膣乾燥および性機能障害の予防および処置のための性ステロイド前駆体単独あるいは選択的エストロゲン受容体モジュレータならびに/またはエストロゲン類および/もしくは5型cGMPホスホジエステラーゼ阻害剤の併用

ヒトを含む感受性のある温血動物における、膣機能障害、より詳細には、膣乾燥および性交疼痛症を有し、性機能障害ならびに低い性的欲求および性的能力の原因となる可能性を処置または低減する、性ステロイド前駆体の投与を含む新規方法。さらに、エストロゲンまたは選択的エストロゲン受容体モジュレータの投与、特に、ラロキシフェン、アルゾキシフェン、タモキシフェン、ドロロキシフェン、トレミフェン、イドキシフェン(lodoxifene)、GW5638、TSE−424、ERA−923およびラソフォキシフェンからなる群から選択され、より詳細には、一般構造:式(I)を有する化合物が、医療処置および/またはいくつかのこれらの上述した疾患の発症の阻害のために、具体的に開示される。本発明に有用な、活性成分の送達のための医薬組成物およびキットもまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ヒトを含む感受性のある温血動物において、性ステロイド前駆体を単独でまたは新規な併用療法において使用して、膣の固有層または筋層に影響を及ぼす問題を得る可能性を処置または低減する方法に関する。特に、この併用療法は、選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SERM)を投与する工程および患者の性ステロイドの前駆体レベルを上昇させる工程を含む。この前駆体は、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、硫酸デヒドロエピアンドロステロン(DHEA−S)およびアンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオール(5−ジオール)からなる群から選択される。エストロゲンはまた、のぼせおよび他の閉経期の症状に対するいくつかのSERMの潜在的な効果を妨げる(conteract)ために投与され得る。5型cGMPホスホジエステラーゼ阻害剤もまた、性行為を改善するために投与され得る。本発明はまた、前述の併用療法を実施するためのキットおよび医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第5,843,932号では、卵巣切除したラットの背側の皮膚の2cmの範囲に50%エタノール−50%プロピレングリコール溶液中のDHEAを1日に2回、30mgの用量で投与する1、3または6ヶ月の処置の膣萎縮に対する効果が報告された。病理組織学的実験により、DHEAで処置したラットにおける膣上皮の増殖および粘液分泌(murification)ならびに膣粘膜萎縮の回復が示された。
【0003】
1、3および6ヶ月間、背側の皮膚にDHEAを適用したときのラットを用いて実施された研究では、膣上皮への効果のみが実験され(Sourlaら、1998、J.Steroid Biochem Mol Biol.、66(3):137−149)、他の2つの層、すなわち固有層および筋層への効果は実験されなかった。そして、DHEAは、膣から遠位の部位の皮膚に投与するときよりも局所的に適用するときのほうが膣上皮に対して約10倍効果的だったことにより、その作用を発揮するためには全身吸収を必要とすることを述べている。
【0004】
12ヶ月間、閉経後の女性の皮膚に投与した10%DHEAクリーム中のDHEAの効果についての以前の研究では、DHEAのエストロゲン活性のみが評価された(Labrieら,1997,J.Clin.Endocrinol.Metab.,82:3498−3505)。(3500ページ)「膣の細胞学をDHEAのエストロゲン作用の特異的パラメータとして調べた」ことが示唆された。これは、評価方法、すなわち、上皮の表在性細胞および容易に除去される細胞に限定される膣塗抹による。
【0005】
本発明は、膣の3つの層、すなわち筋層、固有層および上皮に対する、3つのレベルで新規な利点を有するDHEAおよび他の成分の効果を説明する。固有層および筋層に対するDHEAの有益な効果は、5型cGMPホスホジエステラーゼの阻害剤(例えば、バイアグラおよび他の化合物またはプロスタグランジンE1)の正の作用に非常に重要であると考えられている。
【0006】
関連分野の背景
膣乾燥は、50から60歳の閉経後の女性の約50%および70歳以上の72%に影響を及ぼす(Rossin−Amar,2000,Gynecol Obstet Fer
til,28(3):245−249)。これらの女性のうち約80%は、泌尿生殖器障害、特に膣炎および性交疼痛症を経験している(Pandit and Ouslander,1997,Am J Med Sci,314(4):228−31)。これらの問題は、性ステロイドの欠乏に少なくとも部分的に関連していると考えられているので、適切な局所的なホルモン補充療法が閉経期に考慮されるべきである。閉経後の女性は、すべての卵巣のエストロゲンを欠乏しているだけでなく、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)の、アンドロゲンおよびエストロゲン両方への末梢のイントラクライン変換由来のアンドロゲンを進行的に欠乏していることが最近認識された(Labrieら,1991,Mol Cell Endocrinol,78:C113−C118;Labrieら,1995,Ann NY Acad Sci,774:16−28;Labrieら,2003,End Rev,24(2):152−182)。実際には、血清DHEAおよびDHEA−Sは、30から40歳の年齢から徐々に減少する(Labrieら,2003,End Rev,24(2):152−182;Orentreichら,1984,J Clin Endocrinol Metab,59:551−555;Labrieら,1997,J Clin Endocrinol Metab,82:2396−2402)。一連の研究により、低レベルのDHEAおよびDHEA−Sが一連の年齢関連性の病的状態および疾患に関連することが示唆された(Labrieら,1997,J.Clin.Endocrinol.Metab.,82:3498−3505;Helzlsouerら,1992,Cancer Res,52(1):1−4;Szathmariら,1994,Osteoporos Int,4(2):84−88;Thoman and Weigle,1989,Adv Immununol,46:221−261;Barrett−Connorら,1999,J Reprod Med,44(12):1012−1020;Barrett−Connorら,1999,J Am Geriatr Soc,47(6):685−691)。
【0007】
膣乾燥および他の閉経期の症状を緩和するための効果的なアプローチは、ホルモン補充療法(HRT)の使用である(Greendale and Judd,1993,J Am Geriatr Soc,41(4):426−436;Studdら,1980,Pasetto,Paleotti and Ambrus Eds,MT Press,Lancaster,p:127−139)。しかしながら、最近の臨床研究では、エストロゲンおよびプロゲスチンの併用は、心臓血管の事象に負の影響を及ぼす可能性のある、乳癌の発生率を増加させることが示唆された(Colditzら,1995,N Engl J Med,332:1589−1593;Rossら,2000,J Natl Cancer Inst,92(4):328−332;Rossouwら,2002,JAMA,288(3):321−333)。その一方で、上述した潜在的合併症によってエストロゲン成分の使用が限定されているが、エストロゲン−アンドロゲン併用の補充療法の可能性への関心が高まっている(Rosenbergら,1997,J Reprod Med,42(7):394−404;Burdら,2001,Curr Women Health Rep,1(3):202−205)。特に、閉経後の女性におけるヒト性ステロイド生理機能の本発明者らの理解における最近の進歩に基づいて(Labrieら,1991,Mol Cell Endocrinol,78:C113−C118;Labrieら,2003,End Rev,24(2):152−182)、DHEAの使用により、全身性の効果を有さないイントラクライン機構によって特異的な組織で合成した適切なレベルのアンドロゲンおよびエストロゲンを閉経後の女性に提供することが可能になる(Labrieら,1997,J.Clin.Endocrinol.Metab.,82:3498−3505:16−28;Labrieら,2003,End Rev,24(2):152−182;Labrie,2001,Ref Gyn Obstet,8:317−322;Lascoら,2002,145:457−461)。膣機能のアンドロゲン感受性要素の回復はまた、5型cGMPホスホジエステラーゼの阻害剤またはプロスタグランジンE1の作用を助けるはずである。
【0008】
選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SERM)であるアコルビフェン(EM−652)は、当初は乳癌の予防および処置のために開発されたベンゾピラン誘導体である(Gauthierら,1997,J Med Chem,40:2117−2122)。アコルビフェンは、ERに対するすべての公知の化合物の中で最も親和性が高い化合物であり(Gauthier et al,1997,J Med Chem,40:2117−2122;Labrieら,1999,J Steroid Biochem Mol Biol,69(1−6):51−84;Tremblayら,1997,Mol.Endocrinol.,11:353−365)、ERαおよびERβの両方に対して活性を発揮する(Tremblayら,1998,Endocrinology,139:111−118)。少なくともラットにおいて、この化合物は、血清コレステロールおよびトリグリセリドを減少させ、骨量減少を予防しながら、乳腺および子宮内膜において純然かつ非常に強力な抗エストロゲン活性を示す(Labrieら,1999,J Steroid Biochem Mol Biol,69(1−6):51−84)。さらに、DHEAの投与により、ヌードマウスにおけるヒト乳腺腫瘍増殖に対する純粋な抗エストロゲンアコルビフェンを妨げないだけでなく、付加的な阻害効果を発揮することが証明された(Dauvoisら,1991,Cancer Res,51:3131−3135;Luoら,1997,Endocrinology,138:4435−4444)。DHEAおよびアコルビフェンの併用処置は、乳癌における有益な化学予防的かつ治療的アプローチとして提案された(Labrie,2001,Ref Gynecol Obstet,8:317−322)。実際には、ヌードマウスにおけるヒト乳癌異種移植片の増殖に対するDHEAの阻害効果は、ホルモン補充療法としてのその使用を支持する(Dauvoisら,1991,Cancer Res,51:3131−3135;Couillardら,1998,J Natl Cancer Inst,90:772−778)。
【0009】
WO99/63974は、性ステロイド前駆体と選択的エストロゲン受容体モジュレータ併用の医学的使用を開示した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明の概要
従って、本発明の目的は、望ましくない副作用を最小限にしながら、性的欲求および性行為を減少させ得る膣の問題、より詳細には膣乾燥、性交疼痛症および性機能障害の処置の効果的な方法を提供することである。
【0011】
上記の問題を得る危険性を低減する方法を提供することが別の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
1つの実施形態において、本発明は、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、硫酸デヒドロエピアンドロステロン(DHEA−S)およびアンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオール(5−ジオール)からなる群から選択される性ステロイド前駆体のレベルを、前記処置または前記ステロイド前駆体を必要とする被験体または患者において、上昇させる工程を含み、併用療法の一部として前記患者に治療的有効量の選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SERM)を投与する工程をさらに含む、膣乾燥になる危険性を処置または低減する方法に関する。
【0013】
別の実施形態において、本発明は、のぼせおよび他の閉経期の症状に対するSERMの効果を妨げる(conteract)エストロゲンの付加的投与を含む。
【0014】
別の実施形態において、本発明は、性行為を改善するため、5型cGMPホスホジエステラーゼ阻害剤またはプロスタグランジンE1の付加的投与を含む。
【0015】
本明細書中で使用されるとき、選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SERM)は、直接か、またはその活性な代謝産物を介してかのいずれかで、乳房組織におけるエストロゲン受容体アンタゴニスト(「抗エストロゲン」)として機能する化合物であるが、骨組織および血清コレステロールレベル(すなわち、血清コレステロールを低下することによって)に対してエストロゲン効果またはエストロゲン様効果を提供する。インビトロまたはヒトもしくはラットの乳房組織においてエストロゲン受容体アンタゴニストとして機能する非ステロイド性化合物は(特にその化合物がヒト乳癌細胞で抗エストロゲンとして作用する場合)、SERMとして機能する可能性がある。反対に、ステロイド性抗エストロゲンは、血清コレステロールへのいかなる有益な効果も示さない傾向があるので、SERMとして機能しない傾向がある。本発明者らが試験し、SERMとして機能することが見出された非ステロイド性抗エストロゲンとしては、EM−800、EM−01538、ラロキシフェン、タモキシフェン、ドロロキシフェン、トレミフェン、イドキシフェン、TSE−424、ERA−923、ラソキシフェン(CP336156)、アルゾキシフェン(LY353381)およびGW−5638が挙げられる。本発明者らは、ステロイド性抗エストロゲンIC1182,780を試験し、SERMとして機能しないことを見出した。本発明によれば、SERMは、これら化合物が抗エストロゲンとして使用されるとき、当該分野で公知の用量と同じ用量で投与され得る。
【0016】
理論によって結合されることを意図することなしに、SERM(それらの多くが、好ましくは1から2個の炭素原子によって連結される2つの芳香環を有する)は、エストロゲン受容体によって最もよく認識される分子の前述の部分に基づいて、エストロゲン受容体と相互作用すると予想されると考えられている。好ましいSERMは、他の組織において顕著な拮抗特性を有さずに乳房組織において拮抗特性を選択的に引き起こし得る側鎖を有する。従って、SERMは、驚いたことに、そして望ましいことに、骨および(脂質および/またはコレステロールの濃度が都合よく影響される)血液成分においてエストロゲンとして機能(またはエストロゲン様活性を提供)しながら、望ましいことに乳房において抗エストロゲンとして機能し得る。コレステロールおよび/または脂質への好ましい効果は、不適切なレベルのコレステロールおよび脂質によって有害な影響をうけることが知られているアテローム性動脈硬化症に対する好ましい効果に転換する可能性がある。
【0017】
別の実施形態において、本発明は、選択的エストロゲン受容体モジュレータが、以下の特徴:
a)1から2個の介在炭素原子によって離間される2つの芳香環であって、両方の芳香環が置換されていないか、またはヒドロキシル基もしくはインビボでヒドロキシルに変換される基によって置換されている;
b)芳香環および第三級アミン官能基またはそれらの塩を有する側鎖
を備えた分子式を有する、方法、医薬組成物およびキットを含む。
側鎖は、
【0018】
【化1】

【0019】
からなる群から選択されることが好ましい。
2つの芳香環は、ともにフェニルであり、そして側鎖は、メチン、メチレン、−CO、−O−および−S−、芳香環および第三級アミン官能基またはそれらの塩からなる群から選択される部分を有することもまた好ましい。
【0020】
別の実施形態において、選択的エストロゲン受容体モジュレータは、ベンゾチオフェン誘導体、トリフェニルエチレン誘導体、インドール誘導体、ベンゾピラン誘導体、5,6,7,8−テトラヒドロナフタレンおよびセントクロマン誘導体からなる群から選択される。
【0021】
1つの実施形態において、選択的エストロゲン受容体モジュレータは、以下の式:
【0022】
【化2】

【0023】
(式中、RおよびRは、独立して水素、ヒドロキシルおよびインビボでヒドロキシルに変換される部分からなる群から選択され;
およびRは、独立してC1−C4アルキルからなる群から選択されるか、またはR、Rおよびこれらに結合する窒素は一緒になって、ピロリジノ、ジメチル−1−ピロリジノ、メチル−1−ピロリジニル、ピペリジノ、ヘキサメチレンイミノおよびモルホリノからなる群から選択される任意の構造であり;
Aは、−CO−、−CHOHおよび−CH−からなる群から選択され;
Bは、フェニレン、ピリジリデンおよび−シクロC−からなる群から選択される)
のベンゾチオフェン誘導体化合物であることが好ましい。
【0024】
特に、選択的エストロゲン受容体モジュレータは、ラロキシフェン、アルゾキシフェン(LY353381)およびLY335563からなる群から選択される。
【0025】
別の実施形態において、選択的エストロゲン受容体モジュレータは、以下の式:
【0026】
【化3】

【0027】
(式中、Dは、−OCHCHN(R)Rまたは−CH=CH−COOHであり(RおよびRは、独立してC1−C4アルキルからなる群から選択されるか、またはR、Rおよびこれらに結合する窒素原子は一緒になって、ピロリジノ、ジメチル−1−ピロリジノ、メチル−1−ピロリジニル、ピペリジノ、ヘキサメチレンイミノおよびモルホリノからなる群から選択される環状構造である);
EおよびKは、独立して水素またはヒドロキシルであり;
Jは、水素またはハロゲンである)
のトリフェニルエチレン誘導体化合物であることが好ましい。
【0028】
特に、選択的エストロゲン受容体モジュレータは、タモキシフェン,OH−タモキシフェン、ドロロキシフェン、トレミフェン、イドキシフェンおよびGW5638である。
【0029】
別の実施形態において、選択的エストロゲン受容体モジュレータは、以下の式:
【0030】
【化4】

【0031】
(式中、Dは、−OCHCHN(R)R、−CH=CH−CON(R)R、−CC−(CH−N(R)Rからなる群から選択され(RおよびRは、独立してC−Cアルキルからなる群から選択されるか、またはR、Rおよびこれらが結合する窒素原子は一緒になって、ピロリジノ、ジメチル−1−ピロリジノ、メチル−1−ピロリジニル、ピペリジノ、ヘキサメチレンイミノ、モルホリノ、環からなる群から選択される環状構造である);
Xは、水素およびC1−C6アルキルからなる群から選択され;
、R、R、R、RおよびRは、独立して水素、ヒドロキシル、C−Cアルキルおよびインビボでヒドロキシルに変換される部分からなる群から選択される)
のインドール誘導体化合物であることが好ましい。
【0032】
特に、選択的エストロゲン受容体モジュレータは、TSE−424およびERA−923である。
【0033】
別の実施形態において、選択的エストロゲン受容体モジュレータは、以下の式:
【0034】
【化5】

【0035】
(式中、RおよびRは、独立して水素、ヒドロキシルおよびインビボでヒドロキシルに変換される部分からなる群から選択され;
およびRは、独立して水素またはC−Cアルキルであり;
Dは、−OCHCHN(R)Rであり(RおよびRは、独立してC−Cアルキルからなる群から選択されるか、またはR、Rおよびこれらに結合する窒素原子は一緒になって、ピロリジノ、ジメチル−1−ピロリジノ、メチル−1−ピロリジニル、ピペリジノ、ヘキサメチレンイミノ、モルホリノからなる群から選択される環状構造である)
Xは、−O−および−CH−からなる群から選択される)
の化合物であることが好ましい。
【0036】
特に、この化合物は、(−)−シス−(5R,6S)−6−フェニル−5−[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−オール、D−(−)−酒石酸塩(ラソフォキシフェン)および(3,4−トランス−2,2−ジメチル−3−フェニル−4−[4−(2−(2−(ピロリジン−1−イル)エトキシ)フェニル]−7−メトキシクロマン)からなる群から選択される。
【0037】
別の実施形態において、選択的エストロゲン受容体モジュレータは、以下の式:
【0038】
【化6】

【0039】
(式中、RおよびRは、独立して水素、ヒドロキシルまたはインビボでヒドロキシルに変換される部分であり;
Zは、2価の閉環部分であり、特にZは、−O−、−NH−、−S−および−CH−からなる群から選択され;
R100は、4から10個の介在原子によってB環からLを離す2価の部分であり;
Lは、−SO−、−CON−、−N<および−SON<の群から選択される2価または3価の極性部分であり;
は、水素、C−C炭化水素、または5から7員の複素環および前述のハロもしくは不飽和誘導体を形成するためにGおよびLを結合する2価の部分からなる群から選択され;
は、存在しないか、あるいは水素、C−C炭化水素、または5から7員の複素環および前述のハロもしくは不飽和誘導体を形成するためにGおよびLを結合する2価の部分からなる群から選択され;
は、水素、メチルおよびエチルからなる群から選択される)
を有することが好ましい。
【0040】
より詳細には、以下の一般構造:
【0041】
【化7】

【0042】
(式中、Dは、−OCHCHN(R)Rであり(RおよびRは、独立してC−Cアルキルからなる群から選択されるか、またはR、Rおよびこれらに結合する窒素原子は一緒になって、ピロリジノ、ジメチル−1−ピロリジノ、メチル−1−ピロリジニル、ピペリジノ、ヘキサメチレンイミノ、モルホリノ、環からなる群から選択される環状構造である)、
およびRは、独立して水素、ヒドロキシルおよびインビボでヒドロキシルに変換される部分からなる群から選択される)
のベンゾピラン誘導体が好ましい。
【0043】
ベンゾピラン誘導体は、2位の炭素に絶対配置Sを有する光学活性化合物または医薬的に許容可能なそれらの塩であり、この化合物は、分子構造:
【0044】
【化8】

【0045】
(式中、RおよびRは、独立してヒドロキシルおよびインビボでヒドロキシルに変換可能な部分からなる群から選択され;
は、飽和、不飽和または置換ピロリジニル、飽和、不飽和または置換ピペリジノ、飽和、不飽和または置換ピペリジニル、飽和、不飽和または置換モルホリノ、窒素含有環状部分、窒素含有多環状部分およびNRaRbからなる群から選択される化学種である(RaおよびRbは、独立して水素、直鎖または分岐鎖のC−Cアルキル、直鎖または分岐鎖のC−Cアルケニルおよび直鎖または分岐鎖のC−Cアルキニルである)
を有することもまた好ましい。
【0046】
1つの実施形態において、ベンゾピラン誘導体は、酢酸、アジピン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、フマル酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、塩酸、ヒドロクロロチアジド酸、ヒドロキシ−ナフトエ酸,乳酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、メチル硫酸、1,5−ナフタレンジスルホン酸、硝酸、パルミチン酸、ピバル酸、リン酸、プロピオン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、テレフタル酸、p−トルエンスルホン酸および吉草酸からなる群から選択される酸の塩である。
【0047】
好ましい選択的エストロゲン受容体モジュレータは、アコルビフェン、
【0048】
【化9】

【0049】
ラロキシフェン、アルゾキシフェン、タモキシフェン、ドロロキシフェン、トレミフェン、イドキシフェン、GW5638、TSE−424、ERA−923およびラソフォキシフェンである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
発明の詳細な説明
閉経期の卵巣によるエストロゲン分泌の停止後、実際にはすべてのアンドロゲンおよびエストロゲンは、副腎起源のデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)からイントラクライン機構によって末梢の標的組織において合成される。実際に、卵巣のエストロゲンが存在しないとき、血清DHEAの漸進的な減少は、閉経期に頻繁に関連する、膣乾燥、炎症、性交疼痛症および性機能障害に重要な役割を果たす可能性がある。他の有益な効果のうち、膣乾燥を緩和し得る可能性がある新規ホルモン補充療法の特異的なエストロゲンおよび/またはアンドロゲンの効果を評価するために、本発明者らは、卵巣切除(OVX)およびDHEA、抱合エストロゲン(プレマリン)および選択的エストロゲン受容体モジュレータであるアコルビフェンを単独または併用して投与する処置の8ヶ月後のOVX動物のラット膣の形態を調べた。発情期の無処置動物およびプレマリンで処置したOVXラットにおいて、典型的な膣のエストロゲンのパターンは、角質化し、重層化した扁平上皮である。OVXによって、炎症変化に関連する一般の萎縮が生じたが、アコルビフェンは、炎症の発生を減少させ、膣上皮の粘液細胞の数および大きさを増加させた。使用した用量において、プレマリンは、OVX誘導の上皮の萎縮を完全に回復させ、DHEAは、萎縮を部分的に回復させた。実際に、DHEAで処置したOVX動物の膣上皮は、アンドロゲン効果に典型的な3から5層の円柱状の粘液細胞および杯状細胞を伴う過形成になった。DHEAへのプレマリンの追加は、無処置動物よりも上皮を厚くした。さらに、固有層におけるコラーゲン線維の密集度は、DHEAによって増加した。他方では、アコルビフェン単独での処置は、固有層の厚さを増加させる傾向を示し、DHEAと併用したとき、無処置の値に達した。
【0051】
OVX後、膣の筋層は、46%に減少し、DHEAおよびプレマリンによって回復し、その効果はそれぞれ41%および100%であった。他方では、OVX後の膣壁全体の厚さにおける50%減少がDHEAおよびプレマリンによってそれぞれ42%および93%に回復し、DHEAとアコルビフェンとの併用により、膣壁全体の厚さは、無処置のコントロール動物と有意な差がない値にまで回復した。
【0052】
免疫組織化学は、すべてのDHEA処置群において強力なアンドロゲン受容体(AR)標識を表した。他方では、エストロゲン受容体α(ERα)標識およびプロゲステロン受容体(PR)標識は、いずれのアコルビフェン処置群においても検出されなかった。
【0053】
結論として、DHEAまたはDHEAとアコルビフェンとの併用よる処置は、上皮の粘液分泌およびARのアップレギュレーションによって明らかにされたように、優勢なアンドロゲン効果を介して膣壁の種々の層において観察されたOVX誘導の萎縮性変化を部分的または完全に防ぐ。本データはまた、膣壁の3つの層に対するDHEAの特に興味深い効果、すなわち高度に粘液分泌された上皮、固有層における増加したコラーゲン線維の密集度ならびに筋層の厚さの増加を示す。従って、DHEAは、膣の粘膜において、アンドロゲンおよびエストロゲン両方の効果を発揮し、より生理学的な補充療法を提供する。調べた化合物の各々は、膣の機能に対して有望で有益な効果を有し、DHEA単独または併用によって、効果的に、最適に膣乾燥を緩和し、そして全体的な膣の生理機能を回復し、そして閉経期に関連する性機能障害の正常化を助ける。DHEAおよび他の成分を、局所的または全身的に投与することができた。
【0054】
本発明の選択的エストロゲン受容体モジュレータは、以下の特徴:a)1から2個の介在炭素原子によって離間され2つの芳香環であって、両方の芳香環が置換されていない、またはヒドロキシル基もしくはインビボでヒドロキシルに変換される基によって置換されている芳香環;およびb)芳香環および第三級アミン官能基またはそれらの塩を有する側鎖を備えた分子式を有する。
【0055】
本発明の1つの好ましいSERMは、PCT/CA96/00097(WO96/26
201)において報告されたEM−800である。EM−800の分子構造は:
【0056】
【化10】

【0057】
である。
本発明の別の好ましいSERMは、米国特許第6,710,059B1号において報告されたアコルビフェン(EM−1538、EM−652.HC1とも呼ばれる)である。
【0058】
【化11】

【0059】
は、強力な抗エストロゲンEM−652の塩酸塩である。EM−800と比較すると、EM−1538は、より柔らかく、より単純、そしてより合成しやすい塩である。EM−800またはEM−1538のいずれかを投与するとき、インビボにおいて、同一の活性な化合物が生じると考えられている。
【0060】
別の好ましいSERMは、ラソキシフェン(Lasoxifene)(CP−336,156;(−)−シス−(5R,6S)−6−フェニル−5−[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−オール、D−(−)−酒石酸塩)(Pfizer Inc.,米国より入手可能)である。
【0061】
本発明の他の好ましいSERMとしては、タモキシフェン((Z)−2−[4−(1,2−ジフェニル−1−ブテニル)]−N,N−ジメチルエタンアミン)(Zeneca,イギリスより入手可能)、トレミフェン(Orion−Farmos Pharmaceutica,フィンランドまたはSchering−Ploughより入手可能)、ドロロキシフェンおよびラロキシフェン(Eli Lilly and Co.,米国)、アルゾキシフェン(LY335563)およびLY353381(Eli Lilly and Co.,米国)、オスペミフェン(FC1271)(Orion−Farmos Pharmaceutica,,フィンランドより入手可能)、イドキシフェン(SmithKline Beecham,米国)、レボルメロキシフェン(ShalmiらWO97/25034、WO97/25035、WO97/25037、WO97/25038;およびKorsgaardらWO97/25036に開示されている、3,4−トランス−2,2−ジメチル−3−フェニル−4−[4−(2−(2−(ピロリジン−1−イル)エトキシ)フェニル]−7−メトキシクロマン)(Novo Nordisk,A/S,デンマーク))、GW−5638(Willsonら,1997,Endocrinol,138(9):3901−3911によって記載されている)、Aventis(
フランス)によって開発中のSERM3339およびインドール誘導体(MillerらEP0802183A1によって開示されている)およびWyeth Ayers(米国)によって開発され、JP10036347に開示されているTSE−424およびERA−923(American home products corporation)およびWO97/32837に記載されている非ステロイド性エストロゲン誘導体が挙げられる。
【0062】
製造業者により推奨される効力の要求に応じて使用される任意のSERMを使用することができる。適切な用量は、当該分野で公知である。市販の他の任意の非ステロイド性抗エストロゲンは、本発明に従って使用され得る。SERMと同様の活性を有する任意の化合物(例:ラロキシフェンが使用され得る)。
【0063】
本発明に従って投与されるSERMは、好ましくは、1日あたり0.01から10mg/kg体重(好ましくは、0.05から1.0mg/kg)の用量範囲で投与されるか(経口投与の場合、1日あたり10mg(特に、1日あたり20mg)を2等分した用量で投与することが平均体重の人に対しては好ましい)、または1日あたり0.003から3.0mg/kg体重(好ましくは、0.015から0.3mg/ml)の用量範囲で投与される(非経口投与(すなわち、筋肉内、皮下または経皮投与)の場合、1日あたり1.5mg(特に、1日あたり3.0mg)を2等分した用量で投与することが平均体重の人に対しては好ましい)。好ましくは、SERMは、以下に記載の医薬的に許容可能な希釈剤または担体と共に投与される。
【0064】
好ましい5型cGMPホスホジエステラーゼ阻害剤は、Pfizer USAによって商品名「バイアグラ」として販売されているシルデナフィル、Eli Lilly USAによって商品名「シアリス」として販売されているタダラフィル、Bayer(ドイツ)によって商品名「レビトラ」として販売されているバルデナフィルである。現在、開発中である5型cGMPホスホジエステラーゼ阻害剤:Dong−A Pharm Tech(韓国)によるDA−8159、Merck(ドイツ)によるEMR−62203、田辺製薬株式会社(日本)によるTA−1790、Schering−Plough(米国)によるSCH−446132およびPfizer(米国)によるUK−371800もまた好ましい。
【0065】
1つの好ましいプロスタグランジンは、NexMed(米国)により商品名「Alprox−TD」として販売されているアルプロスタジルである。
【0066】
本明細書中で推奨されたすべての用量に関して、参加する臨床医は、個別の患者の応答を監視すべきであり、それに応じて用量を調節するべきである。
【0067】
本発明の効果の実施例
実施例1
材料および方法
動物および処置
実験の開始時に約220から270gの体重であった、10から12週齢の雌Sprague−Dawleyラット(Crl:CD(登録商標)(SD)Br VAF/Plus(商標))(Charles River Laboratory,St−Constant、カナダ)を使用した。この動物を、実験を開始する少なくとも1週間前に環境条件(温度:22±3℃;湿度:50±20%;12時間明期、12時間暗期サイクル、07:15hに点灯)に順応させた。動物を個別に収容し、水およびげっ歯類用の食物(Lab Diet 5002、Ralston Purina、ミズーリ州セントルイス)に自由に近づけるようにした。実験は、カナダ動物管理協会(CCAC)および実験動物
管理公認協会(AAALAC)によって承認されている、動物施設における実験動物の管理および使用に関するCCAC指針に従って行った。
【0068】
合計126匹の雌ラットを以下のとおり、無作為に各14匹の動物の9群に分けた:1)無処置のコントロール;2)卵巣切除した(OVX)コントロール;3)OVX+アコルビフェン(2.5mg/kg);4)OVX+プレマリン(0.5mg/kg);5)OVX+プレマリン+アコルビフェン;6)OVX+DHEA(80mg/kg);7)OVX+DHEA+アコルビフェン;8)OVX+DHEA+プレマリン;9)OVX+DHEA+アコルビフェン+プレマリン。研究の第1日目に、すべての群(群1以外)の動物を、イソフルラン誘導の麻酔下で左右相称に卵巣切除(OVX)した。プレマリンおよびアコルビフェンを0.4%メチルセルロース中の懸濁液として経口経管栄養により投与した(0.5ml/ラット)。一方、50%エタノール−50%プロピレングリコール中のDHEA(0.5ml/ラット)を、背側の皮膚の2×2cmの剪毛した範囲に局所的に適用した。プレマリンについての用量選択は、OVX誘導の子宮萎縮を回復させるのに有効な最少用量に一致させ、アコルビフェンは、プレマリン処置したOVX動物への投与後にOVXと同様の子宮萎縮を引き起こすのに充分な用量で投与した。使用したDHEAの用量によってDHEAの血中レベルが70から100nmol/Lになった。処置を研究の第2日目に開始し、化合物を36週間に亘って1日に1回投与した。無処置およびOVXコントロール群の動物には、賦形剤のみを与えた。
【0069】
最後の投与の24時間後に、一晩絶食させた動物をイソフルラン麻酔下で腹部大動脈における瀉血によって(1群あたり9匹の動物)かまたは10%中性緩衝ホルマリンを用いた心臓内灌流によって(1群あたり5匹の動物)屠殺した。灌流されていない動物由来の膣を回収し、重量を計測し、灌流された動物から回収した膣の腹側に黒色インクで印をつけ、以下に記載するように切断した。
【0070】
組織学的手順
各動物の灌流された膣全体を10%中性緩衝ホルマリン中で後固定した。各膣を、図1に示すように7つの均等な断面切片に分割し、ルーチン的に処理し、一斉に同じパラフィンブロック内に包埋した。パラフィンブロック内の7つの膣の円柱状の切片を元の解剖学的位置に対応した配列に配置し、ブロックの表面に対して垂直の向きに置いた。このようにして、切片を断面切片に切断することが可能になった。各動物について、4μmの厚さのパラフィン切片に切断し、形態学的実験のためにヘマトキシリン−エオシンで染色した。
【0071】
組織形態計測
異なる膣の層の計測を、中間部と子宮膣部(切片7)との間のほぼ中間点である第5切片において実施した(図l)。この第5切片は、典型的な上皮の表面および十分な厚さの平滑筋を示すことが分かった。画像は、DC−330 3CCDカラーカメラ(Dage−MTI、インディアナ州ミシガン市、米国)を用いて記録され、Image−Pro Plus3.0ソフトウェア(Media Cybernetics、メリーランド州シルバースプリング、米国)を使用して定量化された。このようにして、×5対物レンズ(Leica Microsystems,Willowdale、オンタリオ州、カナダ)を使用して、1層あたり3から4個の厚さの計測を、上皮および筋層の典型的な範囲において行い、同時に3つの膣の層についても行った。このようにして膣の厚さ、上皮の厚さおよび筋層の厚さのすべてを計測した。固有層の厚さは、膣の厚さ全体から上皮および筋層の厚さを引くことによって得た。
【0072】
免疫組織化学
免疫染色を、Zymed SPキット(カリフォルニア州サンフランシスコ)を使用し
て実施した。パラフィン切片(4μm)を、トルエン中で脱パラフィンし、エタノールに通して再水和した。内在性ペルオキシダーゼ活性を、30分間、3%Hを含むメタノールを用いたプレインキュベーションにより排除した。クエン酸緩衝液を使用したマイクロ波修復技術(Tacha and Chen,1994)を適用した。スライドを冷却した後、10%ヤギ血清を使用して20分間、非特異的な結合を遮蔽した。そして、切片を、それぞれ1:200、1:250および1:250で、ERα(AB−1,Calbiochem、カリフォルニア)、AR(N−20,Santa Cruz Biotechnology、カリフォルニア)またはPR(Ab−4,NeoMarkers、カリフォルニア)抗体とともに室温で1.5時間、インキュベートした。PBS緩衝液中で洗浄後、切片をビオチン化した抗ウサギ二次抗体とともに10分間インキュベートし、その後ストレプトアビジン−ペルオキシダーゼとともにさらに10分間インキュベートした。ジアミノベンジジンを、色素原として使用し、顕微鏡監視下でビオチン/ストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ複合体を可視化した。対比染色を、30秒間、#2Gill’sヘマトキシリンを使用して実施した。コントロールについては、抗体を惹起させるために使用される過剰量のペプチドを用いた免疫吸着または非免疫ウサギIgGによる置換を実施した。表2に示されるように、免疫染色された核の数および強度の半定量的評価を実施した。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
統計解析
データは、膣の重さについては1群あたり8から9匹の動物または膣の層の厚さの測定については1群あたり5匹の動物の平均±SEMとして表される。統計的有意性は、Duncan−Kramerの多重範囲検定(Kramer,1956,Biometrics,12:307−310)に従って決定された。
【0076】
結果
ラット膣の様々な層の形態および厚さ
ラット膣壁の3つの層、すなわち上皮、固有層および筋層を正確かつ詳細に調べるために、長手方向の軸に沿って得られた7つの切片(図1)を初めに調べた。重要な形態学的差異が、群の間に概して観察されたが、その差異は、同じ群のすべての動物において一様であり、切片2、3、4、5、6および7は、同様の上皮の形態を示した。観察された数少ない例外は、後で言及される。従って、切片5が、膣上皮の種々の処置の効果を説明するために使用された。
【0077】
OVX群において、卵巣刺激がないことにより、いくつかの小型の粘液細胞の範囲の存在とともにすべての切片を特徴付ける膣上皮の萎縮が生じた(表1および図2C)。最も重要なことには、上皮内の微小膿瘍(microabcess)(上皮内の小さい範囲の凝集した白血球)の多くの病巣に中程度から重度の炎症が頻繁に見られた。これらの変化は、病巣の侵食(上皮の層が部分的に消失している区域)および潰瘍化(上皮の層の完全な消失)を伴うことが多かった(図3)。
【0078】
切片1が発情期の動物において見られた10から15個の層と比較して、9から11個の細胞層を含むことを除いて、またはOVX動物がプレマリンを投与されたときアコルビフェンで処置したOVX動物において、切片1は、無処置群と同様に角質化し、重層化した扁平上皮を示した(図4)。従って、切片1におけるアコルビフェン処置動物の上皮の厚さは、4から6個の細胞層だけを含むOVXラットの厚さよりも厚かった。他の切片において(表1)、基底層は、OVX動物より発達していた薄い円柱状粘液細胞の層によって覆われていた(図2D)。OVX+アコルビフェン群において、5匹の動物のうち3匹だけが最小の炎症の徴候を示したが、中程度から重度の炎症変化がすべてのOVX動物においておおむね見られた。
【0079】
すべての群において、萎縮が優勢な特徴であったOVX群の動物を除いて、切片1は、同程度の重層化した扁平上皮を示した(図4)。さらに、OVX+DHEAおよびOVX+DHEA+アコルビフェン群において、粘液細胞は、切片1の優勢な重層化した扁平上皮を伴うことが多かった(図示せず)。
【0080】
DHEAを投与したOVX動物の膣上皮の7つの切片は、典型的なアンドロゲン効果の特徴である、膨張した細胞質空胞を有する大型の多層円柱状粘液細胞から構成されていた(表1、図2G)。いくつかの大きな陥入は、DHEA処置後の上皮を特徴付けた。粘液細胞の大きさおよびそれらの層の数が減少したことを除いては、同様の上皮の形態がOVX+DHEA+アコルビフェン群のすべての切片において見られた(表1、図2H)。DHEA+プレマリン処置した動物において、様々な比の、粘液細胞の層によって覆われた扁平上皮から構成される「混合」型の厚い重層化した上皮(表1、図2I)が、第2切片から第5切片までで観察され、このことから、併用されたエストロゲンおよびアンドロゲンの効果が明らかになった。この群において、3匹の動物が上述した切片において粘液分泌を示した。他の2匹の動物において、重層化した扁平上皮がすべての切片において観察された(表1)。プレマリンをDHEAおよびアコルビフェンと併用したとき、上皮は、DHEA+アコルビフェン群の上皮と同様であった。このことから、アコルビフェンによるエストロゲン誘導の扁平上皮細胞増殖の遮断が示唆される(表1および図2J)。
【0081】
OVX動物へのDHEAの投与により、膣上皮の厚さが38±4μmに増大し、一方、DHEAへのアコルビフェンの追加は、上皮の厚さを変化させず、37±5μmのままであった。プレマリンおよびDHEAをOVX動物に同時投与したとき、84±6μmの厚い厚さが観察され、プレマリン単独を投与された動物の群の厚さとは著しく異なる値であった。最終的には、プレマリン、DHEAおよびアコルビフェンの併用により、32±3
μmの厚さの上皮が生じ、DHEA単独またはアコルビフェンと併用したDHEAを投与された群の厚さと同様の値であった。
【0082】
固有層
膣におけるコラーゲン線維の密集の程度は、上皮に近位の範囲において観察するとき、低い、中程度および高いとして分類された(図6)。「低い」および「中程度の密集度」は、それぞれゆるくか、またはさほどゆるくなくともに凝集した粗いコラーゲン線維の存在に関連し、「高い密集度」は、なめらかできめのある外観を示す、固く詰められた微細なコラーゲン線維を説明するために使用される用語であった。すべての動物において、コラーゲンの量に比例して相対的に少ししか線維細胞は存在しなかった。それらは、大部分は平板化かつ萎縮して見られた。
【0083】
各動物の注意深い実験により(表1)、切片2および3における密集度が切片7まで一般に一定のままであるプラトーに達するまで増加する間、概して、切片1におけるコラーゲン線維の密集度が(発情期のラットおよびプレマリン処置したOVX動物において低かったものまたはOVXラットおよびDHEA処置したOVXラットにおいて高かったものを除いて)中程度であることが明らかになる。従って、発情期の無処置ラットにおける膣の長手方向の軸に沿って、コラーゲン線維の密集度は切片1から3においては低く、切片4から7においては中程度であった。萎縮は、OVX群およびOVX+アコルビフェン群におけるコラーゲン線維の増加した密集度に関連することが多かった(表1)。プレマリン処置したOVX動物において、切片1における密集度は低く、切片2および3においては中程度であり、他の切片において、コラーゲン線維の密集度は、切片6および7において高くなるように徐々に増加した。
【0084】
膣に沿った固有層の厚さの視覚的な光学顕微鏡実験により、その厚さは、切片1において中程度に厚く、切片2から4においてより薄かったことがおおむね明らかになった。切片5から7において、厚さは、切片1と同様のレベルに段階的に増加した。切片5において計測された固有層の厚さの対応する平均値(図5B)は、OVXによって、固有層の厚さを有意に減少させ(無処置群の135±28μmに対して76±2μm)、アコルビフェン(60±8μm)によっては有意ではない減少が誘導されることが示唆される。OVX動物におけるプレマリンまたはプレマリン+アコルビフェン投与後に観察された増加は、無処置群より低いままであった(135±28μmに対して、それぞれ100±9μmおよび90+3μm)。DHEAの投与により、固有層の厚さにおいて統計的に有意でない増加も生じ(96±20μm)、アコルビフェンの追加によりさらに、無処置動物の厚さに達する厚さの増加が生じた(136±17μm)。プレマリン+DHEAでのOVX動物の処置は、DHEA単独と比較したとき、厚さを有意に増加させた(144±14μm)。最終的に、プレマリン+DHEA+アコルビフェンで処置された動物は、その差は統計的に有意ではなかったが、DHEA単独で処置した群と同様の厚さおよびプレマリン+DHEA群より低い厚さを示した(99±9μm)。
【0085】
DHEAは、筋層の厚さにおいて中程度の増加を誘導し(50±2μm)、その厚さは、アコルビフェンの追加によってわずかに減少した(41±3μm)。最終的に、プレマリンおよびDHEAを併用した処置により、DHEA単独で処置した動物と比較したとき、著明な厚さの増加を生じた(62±3μm)。アコルビフェンをプレマリンおよびDHEAに追加したとき、筋層の厚さは、DHEAおよびアコルビフェンと同程度の値に減少した(46±5μg)。
【0086】
膣壁の厚さ全体を計測したとき(図5D)、外膜を構成する、結合組織の外側の薄い層を、含まなかった。OVXにより、顕著な(51%)膣壁の萎縮が生じた(無処置の262±39μmに対して128±3μm)およびOVXへのアコルビフェンの追加は、効果
がなかった(108±8μm)(図7A,BおよびC)。プレマリン処置は、無処置動物の厚さと同様の値(253±10μm)に厚さ全体を維持し、一方、プレマリンへのアコルビフェンの追加は、プレマリンの効果を回復した(150±4μm)(それぞれ図7DおよびE)。DHEA処置によって達成された膣の厚さ全体は(184±21μm)、プレマリン単独処置群の厚さよりも約25%低かった(図7F)。他方では、DHEAへのアコルビフェンの追加により、有意でない厚さの増加が生じ(213±20μm)、それは、無処置群とは有意でなく異なっていた(図7G)。最終的には、OVX動物へのプレマリンおよびDHEAの同時投与により、無処置動物の厚さと同様の値まで顕著に増加した(290±13μm)(図7H)。DHEAおよびプレマリンへのアコルビフェンの追加は、DHEA単独とは有意ではなく異なる値まで効果が回復した(176±11μm)(図7I)。
【0087】
膣重量
処置の8ヶ月後に、様々な群間の膣重量において観察された変化(図8)は、上記した形態学的観察に概して従う。実際は、OVX後の膣重量は、無処置群(205±11mg)と比較して約50%減少し(101±5mg)、一方、アコルビフェン単独でのOVX動物の処置は、膣重量に対して効果がなかった。他方では、プレマリンの投与により、無処置動物の値(170±9mg)には達しない膣重量の増加が生じ、プレマリンへのアコルビフェンの追加により、OVX動物の重量と同様の値(96±4mg)までエストロゲン誘導の重量増加が回復した。反対に、DHEAをOVX動物に与えたとき、膣重量は、プレマリン処置群の重量と同様の値まで増加し(171±12mg)、アコルビフェンとDHEAとの併用により、重量の減少が生じ(135±9mg)、OVX群の重量のより少ないままであった。最終的に、OVX動物におけるプレマリンおよびDHEAの同時投与により、OVX+DHEA群およびOVX+プレマリン群の重量と同様の値に達する膣重量の増加が生じた(179±10mg)。この併用へのアコルビフェンの追加は、有意な効果がなかった(194±12mg)。
【0088】
OVX動物のDHEA処置により、3つの膣の層において多くの核の強力な標識またはARが生じ、DHEA+アコルビフェンおよびDHEA+プレマリンの併用を使用したときに、後者の群における上皮の表面の層における標識された核の数がより少なかったという例外を有する、同じパターンが見られた。DHEA、プレマリンおよびアコルビフェンの併用により、3つの膣壁の層における大部分の核の強力な染色も生じた。
【0089】
考察
性機能障害を伴う膣乾燥または萎縮性膣炎(尿生殖器の萎縮ともいわれる)は、閉経後の女性における共通の問題である(Notelovitz,2000,Menopause,7(3):140−142)。最もよくある症状は、乾き、灼熱感、かゆみ、刺激および性交疼痛症であり、従って、性欲および生活の質の低下を引き起こす(Bermanら,1999,Curr Opin Urol,9(6):563−568)。エストロゲン喪失が関連することが知られているので、エストロゲン補充療法(ERT)およびHRTが処置の選択肢である。しかしながら、女性における性ステロイドの生理機能についての新規な情報は、アンドロゲンの重要な役割を強く示唆しているので(Labrieら,2003,End Rev,24(2):152−182)、本研究では、ラットの膣の形態および性ステロイド受容体発現に対する、HRTまたはERTに対する代替物、すなわちDHEA単独か、または純粋な抗エストロゲンであるアコルビフェンおよびプレマリンと関連してすべてのホルモンの効果を比較する。DHEAは、肝臓を通る初回通過を避けるために経皮的に投与された(Labrieら,1996,Endocrinol,150:S107−S118)。
【0090】
最終的に、本発明者らの結果は、OVX動物と比較したとき、プレマリン処置による膣
重量の有意な増加を示し、その値はDHEA処置群において観察された重量と同様であった。げっ歯類における膣および子宮の重量の増加が、エストロゲン原性の計測として通常使用されるが、これらの器官はまた、他の化合物のうちプロゲステロンおよびテストステロンに応答し得ることを想起することが適切である(Emmens and Martin,1964,Dorfman Ed,Ed Academic Press NY:1)。
【0091】
可能性のある3種類の併用において、ウマのエストロゲンであるプレマリンは、血管運動性の症状を軽減するために脳において作用することを目的としている。実際に、所望しない末梢のエストロゲンの効果を中和させるために、エストロゲンと純粋な選択的抗エストロゲンであるアコルビフェンとの同時投与の利点は、Labrieらによってよく説明されている(Labrieら,2003,Endocrinol,144(11):4700−4706)。本研究において、アコルビフェンをOVX動物に投与したとき、SERMによって誘導される最も典型的な形態学的特徴は、SERMをDHEAに追加したときを含む、プレマリン+アコルビフェン群においてわずかに顕著であり、アコルビフェンで処置したすべての群において優勢なままであったパターン、基底細胞層を覆うきちんと整列した小さい粘液細胞の表面の層の発生であった。抗エストロゲンでの処置下における膣上皮の粘液分泌は、未成熟ラット(Anderson and Kang,1975,Am J anat,144(2):197−207)および成体ラット(Yoshidaら,1998,Cancer Lett,134(1):43−51)において報告されている。この形態学的パターンが、プロゲステロン誘導の粘液分泌と比較されたが(Anderson and Kang,1975,Am J anat,144(2):197−207)、抗エストロゲンが上皮の粘液分泌を誘導する分子機構は、未知なままである。
【0092】
DHEAの多くの有益な効果が、閉経後の女性において報告されている(Labrieら,1997,J.Clin.Endocrinol.Metab.,82:3498−3505;Labrieら,1991,Mol Cell Endocrinol,78:C113−C118)。DHEAについての特異的な受容体が特徴付けられていないので、DHEA処置後のラット膣において観察された形態学的変化は、イントラクライン機構を介したアンドロゲンおよび/またはエストロゲンの作用を有する活性な性ステロイドへのイントラクライン変換を反映する(Labrieら,1991,Mol Cell Endocrinol,78:C113−C118)。それらの変化は、著しい上皮の粘液分泌、きめの細かい、微細に編みこまれた固有層のコラーゲン線維の高い密集度およびOVX動物と比較したときの中程度の筋層の厚さの増加を含む。2つの第1の形態学的変化は、アンドロゲン効果の典型であり、第3の形態学的変化は、筋層におけるプロゲステロン受容体発現の付随する増加によってさらに支持されるエストロゲン様活性を示す。
【0093】
DHEAは、末梢組織においてアンドロゲンおよびエストロゲンのいずれかまたは両方に変換されるので、DHEAでのOVX動物の処置後に本研究において観察された厚い粘液分泌された多層性の上皮は、ラット膣における粘液分泌の優勢なアンドロゲン効果を示唆し、この効果は、上皮のレベルで軽微なエストロゲン効果を共存する可能性を隠し得る。以前の研究では、ラット膣において同じ粘液分泌効果が示された(Sourlaら,1998,J Steroid Biochem.Mol.Biol.,66(3):137−149);この以前の研究において、DHEAの膣内適用は、DHEAの背側の皮膚への適用後に活性であることが見出された効果よりも10倍低い用量で顕著な効果を達成した。
【0094】
本データは、ラット膣において共存するDHEAの主なアンドロゲン作用および軽微なエストロゲン作用を示唆する。さらに、本結果は、抗アンドロゲンであるフルタミド(F
LU)の皮下用量を加えて、本発明者らの研究において使用されたDHEAと同じ局所適用を受けたOVX動物の膣上皮の観察により、十分に支持される(非公開の結果)。実際は、DHEAのアンドロゲン成分によって産生される粘液分泌のアンドロゲン効果は、FLUによって完全に回復され、エストロゲン効果の典型である重層化した扁平上皮を生じた(データは示さず)。DHEAがラット膣において独占的なアンドロゲン効果(粘液分泌)を有し得る場合、この効果は、FLUによって回復し得、OVX動物と同様の萎縮性上皮が観察されるはずである。性腺摘出された雄および雌ラットにおける以前の研究によって、DHEAを用いた処置が、研究中の標的組織に依存して前立腺、精嚢および子宮に対するアンドロゲンおよび/またはエストロゲンの刺激効果をもたらすことが明確に確証された(Labrieら,1988,Endocrinol,123:1412−1417)。
【0095】
他方では、DHEA+アコルビフェンの併用は、上皮の粘液分泌の程度の減少を示し、従って、交互のきちんと整列した粘液細胞層(アコルビフェン効果)および多層性の肥大化した粘液細胞の陥入を示した。これは、DHEAのアンドロゲン効果に一致する。従って、アコルビフェンは、DHEAのエストロゲンの部分的な効果を阻害し、DHEAの主なアンドロゲンの対応物が維持され、アコルビフェンの軽微なエストロゲン様効果が追加された。後者は、小孔レベルで最もよく見られる。DHEAへのアコルビフェンの追加後に観察された膣重量の減少は、プレマリンへのアコルビフェンの追加後に得られたものよりも小さい。従って、抗エストロゲンによって回復されるDHEAのより小さいエストロゲン成分を説明するが、主なアンドロゲン成分は影響されない。さらに、DHEA+アコルビフェン群における固有層の厚さおよびコラーゲン線維の密集度の増加は、それぞれOVX動物および無処置動物と比較したとき、DHEAのエストロゲン成分がアコルビフェンによって遮断されるので、コラーゲン密集度および厚さを増加させるときアンドロゲン類の潜在的な役割を再度示唆する。
【0096】
他の研究は、ラット乳腺(Sourlaら,1998,Endocrinol,139:753−764)、皮膚の皮脂腺(Sourlaら,2000,J Endocrinol,166(2):455−462)および骨ミネラル密度(Martelら,1998,J Endocrinol,157:433−442)におけるDHEAの作用が、ほぼ独占的にアンドロゲン性であることを実証した。それにもかかわらず、ラット膣におけるDHEAのエストロゲン作用の存在は、この化合物で処置した未成熟のラットにおける膣の開口および早発性の排卵の誘導を通して以前に実証されていたが、エストロゲンに芳香化できないアンドロゲンであるDHTは、このような効果を発揮しなかった(Knudsen and Mahesh,1975,Endocrinol,97(2):458−468)。ラット膣の組織のアンドロゲン(特にTesto)を芳香化する能力は、この器官におけるDHEAのエストロゲン効果の大部分を説明する可能性がある(Lephartら,1989,Biol Reprod,40(2):259−267)。エストロゲン受容体に結合することが知られているDHEA代謝産物であるアンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオール(5−ジオール)(Shaoら,1950,J Biol Chem,250:3095−3100;Poortmanら,1975,J Clin Endocrinol Metab,40(3):373−379;Van Doornら,1981,Endocrinol,108:1587−1594;Adamsら,1981,Cancer Res,41:4720−4726)はまた、エストロゲン効果に寄与し得る(Poulin and Labrie,1986,Cancer Res,46:4933−4937)。従って、抗エストロゲンであるアコルビフェンとDHEAとの提案された併用は、5−ジオールの所望されていない任意の刺激効果を防ぎ得る。他方では、アコルビフェンは、骨量減少を防ぐことによってさらなる利点を示し得る(Martelら,2000,J Steroid Biochem Mol Biol,74(1−2):45−56)。
【0097】
本発明者らの最大の知見として、以前の研究では、固有層およびそれほどではないにせよ筋層のコラーゲン線維の密集度および形態に対するDHEAの刺激効果は示されなかった。DHEA由来のアンドロゲンおよびエストロゲンのこのような作用は、閉経後の女性の膣機能に対して有益な効果を有し得、おそらくアンドロゲンまたはエストロゲン誘導の内皮の一酸化窒素合成酵素(eNOS)に媒介される膣の平滑筋弛緩の促進を介して、5型ホスホジエステラーゼの阻害剤(例えば、シルデナフィルまたはタダラフィル)の作用に必要とされる基質を提供し得る(Munarrizら,2003,J Urol,170(2Pt2):S40−S44,Discussion S44−S45において概説されている)。実際に、アコルビフェンは、ヒトおよびラット内皮細胞におけるeNOSを誘導することが見出されている(Simonciniら,2002,Endocrinol,143(6):2052−2061)。
【0098】
DHEA処置を含むすべての群において得られた結果は、AR発現が、3つの組織の区画において同様の様式でラット膣におけるDHEAのイントラクライン変換由来のアンドロゲンによってアップレギュレートされることを明らかにする。
【0099】
アンドロゲンによるラット膣のARの強力な調節に付随して観察される有益な形態学的変化は、閉経後の女性における減少した血清レベルのDHEA由来のアンドロゲンが、低下した膣の健康状態および究極的にはこの年齢群において観察される性欲および性的享楽の喪失に寄与し得る。血清中の総Testo、遊離TestoおよびDHEA−Sの減少が、性的欲求の減少について受診した女性において実際に見られた(Guay and Jacobson,2002,J Sex Marital Ther,28 Suppl 1:129−142)。
【0100】
本研究において、本発明者らは、DHEAまたはDHEAとアコルビフェンとの併用およびDHEAとアコルビフェンおよびプレマリンとの併用を用いたOVX雌ラットの処置は、優勢なアンドロゲン効果を通して、ARを介して、膣において見出されたOVX誘導の萎縮性変化を回復させた。このことは、強力な上皮の粘液分泌および固有層における増加したコラーゲン線維の密集度によって示された。DHEA単独による処置はまた、筋層の厚さを中程度に増加させた。このようなデータは、末梢の標的組織においてDHEAおよびDHEA−Sから局所的に合成された性ステロイドの重要性を強調する。これらの有益な効果に加えて、アコルビフェンは、おそらく、小孔レベルでの保護的な角質化した扁平上皮のエストロゲン様の誘導および体内レベルでの粘液分泌の抗エストロゲン効果を介して炎症発生率を減少させた。
【0101】
性交疼痛症および性的享楽の喪失に関連することが多い膣乾燥の問題を解決するために種々の試みがなされた。一例としては、局所的な膣のエストロゲン調製物が、緩和を提供するために処方されることが多いが、子宮内膜は、対立しないエストロゲンによって刺激され得る(Mattsonら,1989,Maturitas,11:217−222)。子宮摘出された閉経後の女性において、ERTは、いまだ使用されているが、乳癌を発症する危険性が高いことが周知である。さらに、ERTは、グロブリンを結合する性ホルモンを増加させることによって血清アンドロゲンレベルを低下させる。このことは、相対的な卵巣および副腎のアンドロゲン欠乏を誘導し得、従って、同時に起こる生理学的アンドロゲン置換についてのさらなる理論的根拠を与える(Cassonら,1997,Obstet Gynecol,90(6):995−998)。
【0102】
実施例2
方法
動物および処置
卵巣摘出時に215から265gの体重であった、10から12週齢の雌Sprague−Dawleyラット(Crl:CD(SD)Br)(Charles River Laboratory,St−Constant、カナダ)を使用した。この動物を、環境的に制御された部屋(温度:22±3℃;湿度:50±20%;12時間明期、12時間暗期サイクル,07:15hに点灯)に個別に収容した。動物を、水道水および認可されたげっ歯類用の飼料(Lab Diet 5002(固形飼料),Ralston Purina,ミズーリ州セントルイス)に自由に近づけるようにした。実験は、カナダ動物管理協会(CCAC)および実験動物管理公認協会(AAALAC)によって承認されている、動物施設における実験動物の管理および使用に関するCCAC指針に従って行った。
【0103】
様々な実験:2つの20日間の研究および2つの8ヶ月の研究が実施された。2つの第1実験の各々において、動物を無作為に以下のとおり13または14匹の動物の3群に分けた:1)無処置のコントロール;2)卵巣切除した(OVX)コントロール;3)OVX+ラロキシフェン(0.5mg/kg)または3)OVX+LY363381(0.5mg/kg)。1つの8ヶ月の研究において、動物を無作為に以下のとおり7から8匹の動物の5群に分けた:1)無処置のコントロール;2)卵巣切除した(OVX)コントロール;3)OVX+アコルビフェン(0.5mg/kg);4)OVX+ERA−923(0.5mg/kg);5)OVX+TSE−424(0.5mg/kg)。他の8ヶ月の研究において、動物を無作為に以下のとおり10から11匹の動物の3群に分けた:1)無処置のコントロール;2)卵巣切除した(OVX)コントロール;3)OVX+ラソフォキシフェン(0.5mg/kg)。研究の第1日目に、適切な群の動物を、イソフルラン麻酔下で左右相称に卵巣切除(OVX)した。次に試験される化合物を、研究の第1日目から第20日目までか、または研究の第1日目から第32週目まで0.4%メチルセルロースの懸濁液として(0.5ml/ラット)1日に1回、経口経管栄養によって与えた。
【0104】
最後の投与の24時間後に、動物をイソフルラン麻酔下、瀉血によって屠殺した。膣を回収し、切除後すぐに10%中性緩衝ホルマリン中に浸漬した。次に膣を、7つの断面切片に切断するか(アコルビフェン、ERA−923およびTSE−424について)または中間の断面切片のみをサンプリングするために切断した(ラロキシフェン、ラソフォキシフェンまたはLY363381)。次に切片をルーチン的に処理し、パラフィンブロック内に包埋した。適切なすべての切片をパラフィンブロック内で元の解剖学的位置に対応した配列に配置し、ブロックの表面に対して垂直の向きに置いた。このようにして、切片を断面に切断することが可能になった。各動物について、4μmの厚さのパラフィン切片に切断し、形態学的実験のためにヘマトキシリン−エオシンで染色した。
【0105】
図10および11に様々なSERM間の比較が示される:倍率200×でのOVXラットにおける膣上皮の形態。写真AからDは、膣(小孔)の第1切片の上皮の形態を示す。AにおいてOVX動物の上皮は薄く(4から6個の細胞層)、萎縮性であり、眼に見える顆粒層を示さず、一方、同じ上皮は、3つのSERMにおいてより厚く(8から11個の細胞層)、B、CおよびDにおいて多層性の顆粒性区画を示す。EからKにおいては、膣の中間に位置している切片を図示する。OVX動物において、Eにおいて膣上皮は、薄くかつ萎縮性であり(2から3個の細胞層)、厚さは、基底細胞層を覆う1つ(アコルビフェン、ERA−923およびTSE−424)または多くの(ラロキシフェン、ラソフォキシフェンまたはLY363381)粘液細胞層の存在が原因で、すべての処置群において増加する(FからK)。
【0106】
実施例3
材料および方法
実験の開始時に約250から275gの体重であった、10から12週齢の雌Sprague−Dawleyラット(Crl:CD(登録商標)(SD)Br VAF/Plus(商標))(Charles River Laboratory,St−Constant、カナダ)を使用した。この動物を、実験を開始する少なくとも1週間前に環境条件(温度:22±3℃;湿度:50±20%;12時間明期、12時間暗期サイクル,07:15hに点灯)に順応させた。動物を個別に収容し、水およびげっ歯類用の食物(Lab Diet 5002,Ralston Purina,ミズーリ州セントルイス)に自由に近づけるようにした。実験は、カナダ動物管理協会(CCAC)および実験動物管理公認協会(AAALAC)によって承認されている、動物施設における実験動物の管理および使用に関するCCAC指針に従って行った。
【0107】
合計25匹の雌ラットを無作為に以下のとおり5群に分けた:1)3匹の卵巣切除した無傷のコントロール(OVX);2)4匹のOVX+プラセボ坐剤;3)6匹のOVX+0.33mg DHEA坐剤;4)6匹のOVX+0.66mg DHEA坐剤;5)6匹のOVX+1.00mg DHEA坐剤。研究の第1日目に、すべての群の動物を、イソフルラン誘導の麻酔下で左右相称性に卵巣切除した(OVX)。1つの坐剤の膣への挿入を研究の第5日目に開始し、研究の第18日目まで1日に1回継続した(合計14日間の処置)。坐剤を、膣の開口部に静かに配置し、次に70%アルコール中で消毒し、各動物間で乾燥させた小型のなめらかなガラス棒の補助を伴って膣の内側約2−3mmにそっと押し込んだ。
【0108】
最後の投与の24時間後に、動物をイソフルラン麻酔下、瀉血によって屠殺した。尿道を含む膣および子宮を回収し、以下に記載するように切断した。さらなる解析のために、2片の鼡径部の乳腺ならびに剪毛した背側の皮膚の約2×2cmの正方形の片をサンプリングし、後者は、1枚のボール紙の上に置き、静かに平板化する。
【0109】
坐剤の調製
DHEA坐剤をWhitepsol H−15基剤(Medisca,Montreal、カナダ)を使用して調製した。他の任意の脂肪親和性の基剤(例えば、Fattibase、Wecobee、ココアバター、カカオ脂)またはWhitepsol基剤の他の併用もまた、使用され得る。DHEAの適切な量を、最終容積が50μl±3μlの坐剤1つあたり0.33mgまたは0.66mgまたは1.00mgの最終濃度を与えるために計量した。必要とされる最終容積を得るために、適切な量の坐剤の基剤の小丸剤の重さは、以前に計測された坐剤の基剤の濃度に基づいて算出し、それは、50μlあたり47.5mgであった。坐剤の基剤を小型のビーカーに入れ、電子レンジにて50%の力で約3分30秒間融解し、次いで50±3℃の温度で坐剤の基剤を維持するために最低の力に調節された加温板上に移動させた。次いで微粉にしたDHEA(100%の純度でScheweizerhall Inc.から入手)を基剤に一度に添加し、塊り全部を沈んだままにし、3分間湿らせ、その後、端がなめらかで丸いガラス棒を用いて慎重かつゆっくり粉砕し、溶解した。最終的に、溶解されたDHEAを含む基剤(プラセボは、DHEAなしの基剤であった)を予め温められたピペットチップを備えた1000μl−Gilsonピペットを使用してチューブラックに備えた一連の50μl型に注ぐ。これらの型は、微量遠心分離チューブから作製され、その各々は、事前に50μlの水で目盛りを定められ、水の表面に引かれた線のレベルで切断された。室温における30分の冷却の後、坐剤をさらに30分間、4℃に置く。最終的に、基剤の過剰分を剃刀で切り取り、坐剤をその型から取り出し、閉鎖系のガラスビン内で4℃にて使用するまで保管する。それらは、動物に適用される前に室温に達されることが可能であった。
【0110】
組織学的手順
器官を、切除後すぐに10%中性緩衝ホルマリン中に浸漬した。各膣および子宮を、そ
れぞれ子宮頚部からの2つおよび各々の2つの近位および遠位の角からの2つを含む、8つの等しい断面切片および4つの断面切片に分割した。次いで切片をルーチン的に処理し、一斉に同じパラフィンブロック内に包埋した。パラフィンブロック内のすべての切片を元の解剖学的位置に対応した配列に配置し、ブロックの表面に対して垂直の向きに置いた。このようにして、切片を断面に切断することが可能になった。各動物について、4μmの厚さのパラフィン切片に切断し、形態学的実験のためにヘマトキシリン−エオシンで染色した。
【0111】
結果
上皮の形態
すべての膣の切片の実験後、切片4および6が処置間の比較について典型であることが分かった。切片4は、外部の皮膚の特徴を示さない小孔に最も近位であり、コントロール動物における膣の粘膜の外側の範囲において通常見られる軽度から中程度の炎症変化によって影響されないかまたはそれほど影響されなかった。切片6は、より深い膣の粘膜を示し、子宮頚部からたった1切片によって隔てられている。概して、膣の腹側は、背側と比較されるとき、より厚く、かつより粘液分泌された上皮を示す。
【0112】
無処置
図13に示されるように、主なエストロゲンの影響下にある発情期において、膣上皮は、厚く、かつ角質化している。それは、切片4では12から18個の細胞層および切片6では12から15個の層から示される。小孔において見られる厚く重層化した扁平上皮とは反対に、顆粒層は、内部の膣上皮では明らかではなかった。ホルモンの影響下が最小の発情後期において、膣上皮は、より薄い。それは、切片4では6から10個の細胞層および切片6では5から7個の層から示される。
【0113】
卵巣切除した無傷
図14に示されるように、切片4において、膣は、2から6個の細胞層の重層化した扁平上皮によって裏打ちされる。この切片の厚さは、動物間でかなり変化している。切片6において、扁平な細胞の2から3個の細胞層を伴う完全な萎縮が観察される。小型の円柱状の粘液細胞のいくつかの珍しい病巣が、これらの動物の膣全体にわたって見られ得る。この群の3匹の動物のうち2匹が、外側の3つの切片において経度の炎症変化を示した。
【0114】
プラセボ
図15に示されるように、OVX無傷群と比較して、プラセボ群の膣の重層化した扁平上皮は、わずかに厚く、切片4で4から8個の細胞層を示した。しかしながら、切片6においては、2から3個の上皮の細胞層を有する、OVX無傷群において見られたのと同じ形態が観察された。OVX無傷動物において見られたように、小型の円柱状の粘液細胞の病巣は、OVX無傷動物と比較されるとき、膣にわたってわずかに多く見られ得る。この群の4匹の動物のうち3匹は、外側の3つの切片において経度の炎症変化を示した。
DHEA 0.33mg/坐剤
図16において示されるように、概して、低用量でのDHEAの形態学的効果は、きちんと整列した円柱状の粘液細胞によって特徴付けられ、一方、高用量では、粘液細胞は、大型化(肥大)し、空胞化し、重層化する。本群において、DHEAの効果は、切片2においてわずかに識別可能であり、きちんと整列し、かつ肥大化した粘液細胞が交互になっている切片3から4において徐々に増大する。ほぼきちんと整列した粘液細胞のみが観察され得る切片5および6において、DHEA効果は、ゆっくり減少する。効果は、切片7においては非常に小さく(子宮頚部の最初の部分を含む)切片8の外側の膣のひだは消失する。したがって、切片4において、膣上皮は、3から7個の細胞層を有する重層化した扁平上皮である。膣の裏打ちの約20から60%は、1つ以上の重層化した扁平上皮層を覆う、15から50%の肥大化した粘液細胞と粘液分泌されていない範囲とが交互になっ
ている、きちんと整列した粘液細胞からなる。切片6において、上皮の厚さは、OVX無傷動物において見られる厚さまでほとんど減少する。それは、きちんと整列した粘液細胞の層によって覆われる2から5個の細胞層の重層化した扁平上皮からなる。粘液細胞の発生における大きな変化が観察され、これらの細胞は、粘液分泌されていない範囲と交互になって膣の表面の5から75%にまで及ぶ。6匹の処置動物のうち4匹が、膣全体にわたって不均等に分布した軽度の炎症を示した。
【0115】
DHEA 0.66mg/坐剤
図17において示されるように、この群において、DHEAの効果は、切片2において識別可能であり、そして肥大化した粘液細胞の大部分が観察される切片3から4および5において有意に増加する。肥大化した粘液細胞の数は、細胞の大部分がきちんと整列した粘液細胞である切片6および7において減少する。従って、切片4において、重層化した扁平上皮は、3から6個の細胞層の厚さである。膣の裏打ちの約5から20%は、1つ以上の重層化した扁平上皮層を覆う肥大化した粘液細胞の10から75%と交互になっているきちんと整列した粘液細胞からなる。粘液分泌されていない範囲もまた存在する。切片6において、上皮の厚さは減少し、2から4個の細胞層の重層化した扁平上皮からなり、きちんと整列した粘液細胞の層を載せている。粘液分泌された範囲の量は、粘液分泌されていない範囲と交互になって20から80%の膣の表面に変化した。6匹の処置動物のうち、2匹が3つの外部の切片において軽度の炎症を示した。
DHEA 1.00mg/坐剤
図18において示されるように、この群において、DHEAの効果はまた、切片2において識別可能であるが、肥大化した粘液細胞の広大な大部分が観察される切片3から4および5において有意に増加し、きちんと整列した粘液細胞の大部分が観察される切片6から7および8において非常にゆっくり減少する。従って、切片4において、重層化した扁平上皮は、3から9個の細胞層を表す。3から4個の扁平上皮細胞層を覆う肥大化した粘液細胞は、膣の表面の50から70%に及び、きちんと整列した粘液細胞は、膣の表面の5から30%に及ぶ。粘液分泌されていない範囲は、粘液分泌された細胞の間に散在している。切片6において、上皮の厚さはまた減少し、2から4個の細胞層からなる。1から3個の扁平上皮細胞層を覆う肥大化した粘液細胞は、膣の表面の約30から100%に及び、きちんと整列した粘液細胞は、0から70%に及ぶ。散在する粘液分泌されていない範囲はまた、ほとんど観察されない。6匹の処置動物のうち、4匹が4つの外部の切片において軽度の炎症を示した。
【0116】
結論
1.ラットの膣内の処置に使用される賦形剤は、所望の特徴を有する:
a.較正された型内で容易に調製される;
b.微粉化したDHEAを完全に溶解することにより、標準化された用量を保証する優れた機能;
c.膣の粘膜の重大な組織応答および形態学的変化がない:最初の3から4切片においてわずかな上皮の厚さの増大が観察されただけであり、これはおそらく、坐剤の挿入に伴う操作によるものである。
【0117】
2.DHEAは、試験された最低の用量(0.33mg/坐剤)で膣の上皮の形態に効果を発揮した。効果は、第3から第5切片において最大であり、徐々に減少し、第7切片のレベルで消失する。
【0118】
3.0.66mg/坐剤のDHEA用量で、第3切片において効果があり、第6切片においてかなり強力なままである。
【0119】
4.1.00mg/坐剤のDHEA用量で、切片2から3から、子宮頚部に隣接する深
い膣のひだまで効果は強力である。
【0120】
医薬組成物の実施例
好ましい活性なSERMであるアコルビフェン、好ましい活性な性ステロイド前駆体であるDHEA、好ましいエストロゲンである17β−エストラジオールまたはプレマリン、好ましい5型cGMPホスホジエステラーゼ阻害剤であるシルデナフィルまたはタダラフィルを利用するいくつかの医薬組成物を下記に説明するが、これは、例示の目的であり、限定するものではない。活性成分の濃度は、本明細書中で議論されるような広範な範囲にわたって変化され得る。含まれ得る他の成分の量および型は、当該分野において周知である。
【0121】
実施例A
【0122】
【表3】

【0123】
実施例B
【0124】
【表4】

【0125】
実施例C
【0126】
【表5】

【0127】
実施例D
【0128】
【表6】

【0129】
実施例E
【0130】
【表7】

【0131】
実施例F
【0132】
【表8】

【0133】
実施例G
【0134】
【表9】

【0135】
実施例H
【0136】
【表10】

【0137】
実施例I
【0138】
【表11】

【0139】
実施例J
【0140】
【表12】

【0141】
実施例K
【0142】
【表13】

【0143】
実施例L
【0144】
【表14】

【0145】
DHEA坐剤は、Whitepsol H−15基剤(Medisca,Montreal、カナダ)を使用して調製される。他の任意の脂肪親和性の基剤(例えば、Fattibase、Wecobee、ココアバター、カカオ脂または他のWhitepsol基剤の併用)が使用され得る。
【0146】
キットの実施例
好ましい活性なSREMであるアコルビフェン、好ましい活性な性ステロイド前駆体であるDHEA、好ましいエストロゲンである17β−エストラジオールまたは抱合エストロゲン類、好ましい5型cGMPホスホジエステラーゼ阻害剤であるシルデナフィルまたはタダラフィルを利用するいくつかのキットを下記に説明するが、これは、例示の目的であり、限定するものではない。活性成分の濃度は、本明細書中で議論されるような広範な範囲にわたって変化され得る。含まれ得る他の構成要素の量および型は、当該分野において周知である。
【0147】
実施例A
SERM、エストロゲン類および5型cGMPホスホジエステラーゼ阻害剤は、経口的に投与され、性ステロイド前駆体は、局所的または経皮的に投与される。
【0148】
【表15】

【0149】
【表16】

【0150】
【表17】

【0151】
【表18】

【0152】
実施例B
SERMおよび性ステロイド前駆体は、経口投与される。
【0153】
【表19】

【0154】
【表20】

【0155】
他の性ステロイド阻害剤がDHEAに置換され得、他のエストロゲン類がプレマリンに置換され得、他の5型cGMPホスホジエステラーゼ阻害剤がシルデナフィルもしくはタダラフィルに、またはプロスタグランジンE1によって置換され得るのと同様に、他のSERM(トレミフェン、オスペミフェン、ラロキシフェン、アルゾキシフェン、ラソフォキシフェン、TSE−424、ERA−923、EM−800、SERM3339、GW−5638)は、上記の処方物において、アコルビフェンに置換され得る。1個より多いSERMまたは1個より多い前駆体もしくはエストロゲン類もしくは5型cGMPホスホジエステラーゼ阻害剤は、組み合わせた重量パーセントが、好ましくは上記の実施例において与えられた単一の前駆体または単一のSERMについての重量パーセントである場合に含まれ得る。
【0156】
本発明は、好ましい実施形態および実施例に関して説明するが、これによって限定されない。当業者は、より広範な適用性および特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を容易に認識し得る。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】図1は、ラット膣の長手方向の軸に沿って、外部の口(小孔)(切片1)から子宮頚部レベル(切片7)(子宮膣部)までの7つの断面切片への分割を示す。
【図2】図2は、ラットの9群の切片5の膣上皮の組織形態を示す。(J)における棒線は、40μmである。図2Aは、エストロゲン効果の典型として、発情周期に入っているラットの発情期における重層化した扁平上皮は、4つの主な層からなる:1つの細胞層の基底層(b)、6から7個細胞層の有棘層(s)および固く詰められた、平板化し、角化した細胞によって作られる角質層(c)によって覆われる5から6層の顆粒層(g)。図2Bは、エストロゲン−プロゲステロンの影響下である発情周期に入っている発情前期のラットが、粘液分泌を説明するために使用される。切片2から7のほとんどにおいて、1つの基底細胞層(b)が、5から6個の細胞層の有棘層(s)および3から4層の粘液細胞からなる粘液層(m)によって覆われていた。図2Cは、OVXコントロールにおいて、基底細胞層(b)は、萎縮性の立方状の細胞の層(a)によって覆われていた。図2Dは、アコルビフェンの1日あたりの経口用量(2.5mg/kg)で処置されたOVXラットの膣上皮は、基底細胞層(b)を覆う薄い円柱状の粘液細胞の外側の層(m)を伴うが、萎縮を示す。図2Eは、プレマリンの1日あたりの経口用量(0.5mg/kg)で処置されたOVXラットの膣上皮。OVX誘導の萎縮は、発情期において見られたパターンと同程度のエストロゲンのパターンで置換されていた。図2Fは、プレマリン+アコルビフェンを投与されたOVX動物において、より大きな粘液細胞が見られたが、萎縮はアコルビフェン処置動物の形態と同様の形態が優勢であった。図2Gは、1日に1回、背側の皮膚2×2cmの範囲へのDHEAの皮膚適用(80mg/kg)によるOVX動物の処置後、3から5層の粘液細胞(m)から作られる肥厚性上皮が、基底層(b)を覆っているのが見られた。いくつかの陥入は、この上皮を特徴付けた(矢印)。図2Hは、DHEA+アコルビフェン処置動物の膣上皮のほとんどの範囲において、粘液細胞の層(m)は、基底細胞層(b)上にあり、いくつかの範囲において、粘液細胞の多くの層は、基底細胞層を覆っていた。いくつかの陥入は、この上皮を特徴付けた(矢印)。図2Iは、3匹の動物において、DHEA+プレマリンを用いた処置により、3から5層の粘液細胞(m)によって覆われる3から7個の細胞層の厚さの重層化した扁平上皮(s)から構成される混合上皮が生じた。2匹の動物において、重層化した扁平上皮の範囲は、優勢であった(挿入)。書き込まれた棒線は、30μmである。図2Jは、DHEA、プレマリンおよびアコルビフェンが併用されたとき、上皮は、DHEA+アコルビフェン群の上皮と同様であった。
【図3】図3は、OVX動物の膣の粘膜を示す。(A)においては、上皮内の微小膿瘍(M)を伴う病巣の白血球浸潤によって特徴付けられる重度の炎症変化を示し、(B)においては、上皮の完全な消失(diseappearance)として可視化される減少した上皮の厚さおよび潰瘍化(U)によって特徴付けられる病巣の侵食(E)を示す。
【図4】膣上皮が裏打ちされた切片1(外部開口部)におけるアコルビフェンのエストロゲン様効果を図解するために、関連する群との比較を行う。発情期の無処置ラット(A)およびプレマリン処置(D)動物において、上皮は、10から15層の厚さであり、角質化されていた。OVXコントロール(B)において、上皮の厚さは、4から6層に減少し、おおむね角質化していなかった(顆粒層は存在しないことを参照のこと)。一方、アコルビフェン処置動物(C)において、厚さは、9から11層に回復していて、角質化していた。
【図5A】図5Aは、ラット膣の第5切片のレベルで3つの異なる膣の区画の厚さ(μm):DHEA、プレマリンおよびアコルビフェンを単独または併用した処置の36週間後のOVX動物の上皮を示す。発情期および発情前期の無処置動物を、基準のコントロールとして加えられる。同じ文字を共有する群は、p<0.05で統計的に差がない。
【図5B】図5Bは、ラット膣の第5切片のレベルで3つの異なる膣の区画の厚さ(μm):DHEA、プレマリンおよびアコルビフェンを単独または併用した処置の36週間後のOVX動物の固有層を示す。発情期および発情前期の無処置動物を、基準のコントロールとして加えられる。同じ文字を共有する群は、p<0.05で統計的に差がない。
【図5C】図5Cは、ラット膣の第5切片のレベルで3つの異なる膣の区画の厚さ(μm):DHEA、プレマリンおよびアコルビフェンを単独または併用した処置の36週間後のOVX動物の筋層を示す。発情期および発情前期の無処置動物を、基準のコントロールとして加えられる。同じ文字を共有する群は、p<0.05で統計的に差がない。
【図5D】図5Dは、ラット膣の第5切片のレベルで3つの異なる膣の区画の厚さ(μm):DHEA、プレマリンおよびアコルビフェンを単独または併用した処置の36週間後のOVX動物の全体の厚さを示す。発情期および発情前期の無処置動物を、基準のコントロールとして加えられる。同じ文字を共有する群は、p<0.05で統計的に差がない。
【図6】図6は、固有層のコラーゲン線維の密集度を示し、切片5において低い(A)、中程度(B)または高い(C)として図解される。
【図7】図7は、様々な群における相対的な筋層の厚さを強調して、ラット膣の第5切片のレベルにおける3つの膣の区画:(E)上皮、(L)固有層および(M)筋層のマイクロ写真を示す。棒線による3つの膣壁の層の分離は、様々な群の間の厚さの分布を最良に推定するために示される。A)無処置、B)OVXおよびC)アコルビフェンで処置したOVX、D)プレマリンで処置したOVX、E)プレマリン+アコルビフェンで処置したOVX、F)DHEAで処置したOVX、G)DHEA+アコルビフェンで処置したOVX、H)DHEA+プレマリンで処置したOVX、I)DHEA+プレマリン+アコルビフェンで処置したOVX。
【図8】図8は、OVXならびにアコルビフェン、プレマリンおよびDHEAを単独または併用した処置の36週間後に計測したOVX動物の膣重量を示す。無処置動物は、コントロールとして加えられた。
【図9A】図9Aは、様々な群の第5の膣の切片のレベルにおける、(E)上皮、(L)固有層および(M)筋層におけるARの免疫組織化学的局在を示す。棒線は、3つの膣の区画の間の分離を示す。
【図9B】図9Bは、様々な群の第5の膣の切片のレベルにおける、(E)上皮、(L)固有層および(M)筋層におけるERαの免疫組織化学的局在を示す。棒線は、3つの膣の区画の間の分離を示す。
【図9C】図9Cは、様々な群の第5の膣の切片のレベルにおける、(E)上皮、(L)固有層および(M)筋層におけるPRの免疫組織化学的局在を示す。棒線は、3つの膣の区画の間の分離を示す。
【図10】図10は、様々なSERMの間の比較を示す:ラットにおける膣の上皮の形態。
【図11】図11は、様々なSERMの間の比較を示す:ラットにおける膣の上皮の形態。
【図12】図12は、8つの膣の切片(上の列全ておよび右下角の切片)の位置決めを表す顕微鏡スライドの写真を示し、続いて元の解剖学的位置に対応する配列で、4つの子宮切片(子宮頚部の1つの切片および2つの子宮角の3つの切片(1つの子宮角あたり2つの切片))を示す。切片8は、子宮頚部の先頭部分に隣接する外側の膣のひだを含む。
【図13】図13は、無処置ラットの効果を示す。発情期(左欄)では、膣上皮は、切片4において12から18層の厚さであり、切片6においては12から15層の厚さである。発情後期(右欄)では、膣上皮は、切片4において6から10個の細胞層を示し、切片6においては5から7層を表す。
【図14】図14は、卵巣切除した無傷ラットの効果を示す。切片4において、膣は、2から6個の細胞層の重層化した扁平上皮によって裏打ちされている。切片6において、完全な萎縮が平らな2から3個の細胞層とともに観察される。小型の円柱状の粘液細胞いくつかの珍しい病巣は、膣全体にわたって見られた。
【図15】図15は、プラセボ/坐剤の効果を示す。OVX無傷群と比較して、プラセボ群の膣の重層化した扁平上皮は、わずかに厚く、切片4では4から8個の細胞層を表した。切片6において、OVX無傷群と同じ形態が、2から3個の上皮の細胞層とともに観察された。小型の円柱状の粘液細胞の病巣は、OVX無傷動物と比較されるとき、膣のいたるところでわずかに多く見られた。
【図16】図16は、DHEA 0.33mg/坐剤の効果を示す。切片4において、膣上皮は、3から7個の細胞層を有する重層化した扁平上皮である。膣の裏打ちの約20から60%は、1つ以上の重層化した扁平上皮層を覆う15から50%の肥大化した粘液細胞と粘液分泌されていない範囲とが交互になった、きちんと整列した粘液細胞からなる。切片6において、上皮の厚さは、OVX無傷動物において見られた厚さ:円柱状の粘液細胞によって覆われた2から5個の細胞層までほぼ減少した。粘液細胞の発生における大きな変化が観察された。これらの細胞は、粘液分泌されていない範囲と交互に膣の表面の5から75%にまで及ぶ。
【図17】図17は、DHEA 0.66mg/坐剤の効果を示す。切片4において、重層化した扁平上皮は、3から6個の細胞層の厚さである。膣の裏打ちの約5から20%は、1つ以上の重層化した扁平上皮層を覆う10から75%の肥大化した粘液細胞と交互になったきちんと整列した粘液細胞からなる。粘液分泌されていない上皮の範囲もまた、存在する。切片6において、上皮の厚さは減少し、2から4個の細胞層の重層化した扁平上皮からなり、きちんと整列した粘液細胞の層を載せている。粘液分泌された範囲は、粘液分泌されていない範囲と交互に膣の表面の20から80%に変化した。
【図18】図18は、DHEA 1mg/坐剤の効果を示す。切片4において、重層化した扁平上皮は、3から9個の細胞層を表す。3から4個の扁平上皮細胞層を覆う肥大化した粘液細胞は、膣の表面の50から70%に及び、きちんと整列した粘液細胞は、膣の表面の5から30%を裏打ちする。粘液分泌されていない範囲は、粘液分泌された細胞の間に散在する。切片6において、上皮の厚さはまた、減少し、2から4個の細胞層からなる。1から3個の扁平上皮細胞層を覆う肥大化した粘液細胞は、膣の表面の約30から100%に及び、きちんと整列した粘液細胞は、0から70%に及ぶ。散在した粘液分泌されていない範囲はまた、少ししか観察されない。
【図19】図19は、OVXラットにおいて膣内に適用されたDHEA(坐剤)での処置14日目の体重に対する効果のグラフである。プラセボ群と比較して、0.33mgおよび0.66mgの用量でDHEAを与えた群の体重は、わずかに減少し、その減少は、1mg群においてより顕著であった。
【図20】図20は、OVXラットへ0.33mg、0.66mgまたは1mgの膣内適用後のDHEAの血清濃度のグラフである。DHEAをそれぞれ0.33mg、0.66mgまたは1mgの用量で与えたとき、DHEA処置の7時間後の曲線値より下の範囲(AUC)は、32±4ng・h/ml、50±7ng・h/mlおよび131±23ng・h/mlであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉経後の女性において膣の固有層および/または筋層に影響を及ぼす問題となる可能性を処置または低減する方法であって、前記処置を必要とする患者にデヒドロエピアンドロステロン、硫酸デヒドロエピアンドロステロン、アンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオールおよび4−アンドロステン−3,17−ジオンからなる群から選択される性ステロイド前駆体を投与する工程を含む、方法。
【請求項2】
併用療法の一部として、治療的有効量の選択的エストロゲン受容体モジュレータを前記患者に投与する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
併用療法の一部として、治療的有効量のエストロゲンを前記患者に投与する工程をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
閉経後の女性において膣の炎症となる可能性を処置または低減する方法であって、治療的有効量の選択的エストロゲン受容体モジュレータを前記患者に投与する工程を含む、方法。
【請求項5】
閉経後の女性において膣上皮の粘液細胞の数および大きさを増加させる方法であって、前記方法は、治療的有効量の選択的エストロゲン受容体モジュレータを前記患者に投与する工程を含む、方法。
【請求項6】
前記膣疾患が、膣乾燥、性交疼痛症および性機能障害からなる疾患の群から選択される、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項7】
閉経後の女性において膣壁の固有層のコラーゲン線維の密集度を増加させる方法であって、前記方法は、前記処置を必要とする患者にデヒドロエピアンドロステロン、硫酸デヒドロエピアンドロステロン、アンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオールおよび4−アンドロステン−3,17−ジオンからなる群から選択される性ステロイド前駆体を投与する工程を含む、方法。
【請求項8】
閉経後の女性において膣壁の筋層(muscaralis)の厚さを増大させる方法であって、前記処置を必要とする患者にデヒドロエピアンドロステロン、硫酸デヒドロエピアンドロステロン、アンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオールおよび4−アンドロステン−3,17−ジオンからなる群から選択される性ステロイド前駆体を投与する工程を含む、方法。
【請求項9】
閉経後の女性において性機能障害となる可能性を処置または低減する方法であって、前記処置を必要とする前記患者に治療有効量の選択的エストロゲン受容体モジュレータを投与する工程、および併用療法の一部として前記患者に治療有効量の5型cGMPホスホジエステラーゼ阻害剤またはプロスタグランジンを投与する工程をさらに含む、方法。
【請求項10】
デヒドロエピアンドロステロン、硫酸デヒドロエピアンドロステロン、アンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオールおよび4−アンドロステン−3,17−ジオンからなる群から選択される治療有効量の性ステロイド前駆体を前記患者に投与する工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記性ステロイド前駆体がデヒドロエピアンドロステロンである、前述の請求項1、2、3、7および8のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記性ステロイド前駆体が硫酸デヒドロエピアンドロステロンである、前述の請求項1、2、3、7および8のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記性ステロイド前駆体がアンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオールである、前述の請求項1、2、3、7および8のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記5型cGMPホスホジエステラーゼ阻害剤が、シルデナフィル(l−[[3−(4,7−ジヒドロ−1−メチル−7−オキソ−3−プロピル−1Hピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−5−イル)−4−エトキシフェニル]スルホニル]−4−メチルピペラジン)、タダラフィル(6R,12aR)−6−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−2,3,6,7,12,12a−ヘキサヒドロ−2−メチルピラジノ[1’,2’:1,6]ピリド[3,4−b]インドール−1,4−ジオン、DA−8159、EMR−62203、TA−1790、UK−371800およびSCH−446132からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記プロスタグランジンが、プロスタグランジンE1(アルプロスタジル;(llα,13E,15S)−ll,15−ジヒドロキシ−9−オキソプロスタ−13−エン−1−酸))である、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
a)医薬的に許容可能な賦形剤、希釈剤または担体;
b)デヒドロエピアンドロステロン、硫酸デヒドロエピアンドロステロンおよびアンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオールからなる群から選択される、少なくとも1つの治療的有効量の性ステロイド前駆体
を含む、膣適用のための医薬組成物。
【請求項17】
a)医薬的に許容可能な賦形剤、希釈剤または担体;
b)少なくとも1つの治療的有効量の選択的エストロゲン受容体モジュレータおよび
c)少なくとも1つの治療的有効量の5型cGMPホスホジエステラーゼ阻害剤
を含む、医薬組成物。
【請求項18】
a)医薬的に許容可能な賦形剤、希釈剤または担体;
b)少なくとも1つの治療的有効量の選択的エストロゲン受容体モジュレータ;
c)少なくとも1つの治療的有効量の5型cGMPホスホジエステラーゼ阻害剤および
d)デヒドロエピアンドロステロン、硫酸デヒドロエピアンドロステロン、アンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオールからなる群から選択される、少なくとも1つの治療的有効量の性ステロイド前駆体
を含む、医薬組成物。
【請求項19】
プロスタグランジンE1、シルデナフィルおよびタダラフィルからなる群から選択される、少なくとも1つの治療的有効量の5型cGMPホスホジエステラーゼ阻害剤を含む第1の容器を備え、そして少なくとも1つの治療的有効量の選択的エストロゲン受容体モジュレータを含む第2の容器をさらに備える、キット。
【請求項20】
デヒドロエピアンドロステロン、硫酸デヒドロエピアンドロステロン、アンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオールからなる群から選択される、少なくとも1つの治療的有効量の性ステロイド前駆体を含む第1の容器を備え、そして少なくとも1つの治療的有効量の選択的エストロゲン受容体モジュレータを含む第2の容器をさらに備え、そして少なくとも1つの治療的有効量の5型cGMPホスホジエステラーゼ阻害剤またはプロスタグランジンE1を含む第3の容器をさらに備える、キット。
【請求項21】
前記選択的エストロゲン受容体モジュレータが、以下の特徴:
a)1から2個の介在炭素原子によって離間される2つの芳香環であって、両方の芳香環が置換されていないか、またはヒドロキシル基もしくはインビボでヒドロキシルに変換される基によって置換されている;
b)芳香環および第三級アミン官能基またはそれらの塩を有する側鎖
を備えた分子式を有する、前述の請求項2から5、9、17から20、42および43に記載の方法、医薬組成物またはキット。
【請求項22】
前記側鎖が
【化1】

からなる群から選択される、請求項21に記載の方法、医薬組成物またはキット。
【請求項23】
前記2つの芳香環の両方がフェニルであり、前記側鎖がメチン、メチレン、−CO、−O−および−S−、芳香環ならびに第三級アミン官能基またはそれらの塩からなる群から選択される部分を有する、請求項21に記載の方法、医薬組成物またはキット。
【請求項24】
前記選択的エストロゲン受容体モジュレータがベンゾチオフェン誘導体、トリフェニルエチレン誘導体、インドール誘導体、ベンゾピラン誘導体、5,6,7,8−テトラヒドロナフタレンおよびセントクロマン誘導体からなる群から選択される、請求項21に記載の方法、医薬組成物またはキット。
【請求項25】
前記選択的エストロゲン受容体モジュレータが、以下の式:
【化2】

(式中、RおよびRは、独立して水素、ヒドロキシルおよびインビボでヒドロキシルに変換される部分からなる群から選択され;
およびRは、独立してC1−C4アルキルからなる群から選択されるか、またはR、Rおよびこれらに結合する窒素は一緒になって、ピロリジノ、ジメチル−1−ピロリジノ、メチル−1−ピロリジニル、ピペリジノ、ヘキサメチレンイミノおよびモルホリ
ノからなる群から選択される任意の構造であり;
Aは、−CO−、−CHOHおよび−CH−からなる群から選択され;
Bは、フェニレン、ピリジリデンおよび−シクロC−からなる群から選択される)
のベンゾチオフェン誘導体化合物である、請求項21に記載の方法、医薬組成物またはキット。
【請求項26】
前記選択的エストロゲン受容体モジュレータが、ラロキシフェン、アルゾキシフェン(LY353381)およびLY335563からなる群から選択される、請求項25に記載の方法、医薬組成物またはキット。
【請求項27】
前記選択的エストロゲン受容体モジュレータが、以下の式:
【化3】

(式中、Dは、−OCHCHN(R)Rまたは−CH=CH−COOHであり(RおよびRは、独立してC1−C4アルキルからなる群から選択されるか、またはR、Rおよびこれらが結合する窒素原子は一緒になって、ピロリジノ、ジメチル−1−ピロリジノ、メチル−1−ピロリジニル、ピペリジノ、ヘキサメチレンイミノおよびモルホリノからなる群から選択される環状構造である);
EおよびKは、独立して水素またはヒドロキシルであり;
Jは、水素またはハロゲンである)
のトリフェニルエチレン誘導体化合物である、請求項21に記載の方法、医薬組成物またはキット。
【請求項28】
選択的エストロゲン受容体モジュレータが、タモキシフェン、OH−タモキシフェン、ドロロキシフェン、トレミフェン、イドキシフェンおよびGW5638である、請求項27に記載の方法、医薬組成物またはキット。
【請求項29】
前記選択的エストロゲン受容体モジュレータが、以下の式:
【化4】

(式中、Dは、−OCHCHN(R)R、−CH=CH−CON(R)R、−CC−(CH−N(R)Rからなる群から選択され(RおよびRは、独立してC−Cアルキルからなる群から選択されるか、またはR、Rおよびこれらが結合する窒素原子は一緒になって、ピロリジノ、ジメチル−1−ピロリジノ、メチル−1−ピロリジニル、ピペリジノ、ヘキサメチレンイミノ、モルホリノ、環からなる群から選択される環状構造である);
Xは、水素およびC1−C6アルキルからなる群から選択され;
、R、R、R、RおよびRは、独立して水素、ヒドロキシル、C−Cアルキルおよびインビボでヒドロキシルに変換される部分からなる群から選択される)
のインドール誘導体化合物である、請求項21に記載の方法、医薬組成物またはキット。
【請求項30】
選択的エストロゲン受容体モジュレータが、TSE−424およびERA−923である、請求項29に記載の方法、医薬組成物またはキット。
【請求項31】
前記選択的エストロゲン受容体モジュレータが、以下の式:
【化5】

(式中、RおよびRは、独立して水素、ヒドロキシルおよびインビボでヒドロキシルに変換される部分からなる群から選択され;
およびRは、独立して水素またはC−Cアルキルであり;
Dは、−OCHCHN(R)Rであり(RおよびRは、独立してC−Cアルキルからなる群から選択されるか、またはR、Rおよびこれらの結合する窒素原子は一緒になって、ピロリジノ、ジメチル−1−ピロリジノ、メチル−1−ピロリジニル、ピペリジノ、ヘキサメチレンイミノ、モルホリノからなる群から選択される環状構造である)
Xは、−O−および−CH−からなる群から選択される)
の化合物である、請求項21に記載の方法、医薬組成物またはキット。
【請求項32】
前記化合物が、(−)−シス−(5R,6S)−6−フェニル−5−[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)フェニル]−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−オール、D−(−)−酒石酸塩(ラソフォキシフェン)および(3,4−トランス−2,2−ジメチル−3−フェニル−4−[4−(2−(2−(ピロリジン−1−イル)エトキシ)フェニル]−7−メトキシクロマン)からなる群から選択される、請求項31に記載の方法、医薬組成物またはキット。
【請求項33】
前記選択的エストロゲン受容体モジュレータが、以下の式:
【化6】

(式中、RおよびRは、独立して水素、ヒドロキシルまたはインビボでヒドロキシルに変換される部分であり;
Zは、2価の閉環部分であり;
R100は、4から10個の介在原子によってB環からLを離す2価の部分であり;
Lは、−SO−、−CON−、−N<および−SON<の群から選択される2価または3価の極性部分であり;
は、水素、CからC炭化水素、または5から7員の複素環および前述のハロもしくは不飽和誘導体を形成するためにGおよびLを結合する2価の部分からなる群から選択され、
は、存在しないか、あるいは水素、CからC炭化水素、または5から7員の複素環および前述のハロもしくは不飽和誘導体を形成するためにGおよびLを結合する2価の部分からなる群から選択され、
は、水素、メチルおよびエチルからなる群から選択される)
を有する、請求項21に記載の方法、医薬組成物またはキット。
【請求項34】
Zが−O−、−NH−、−S−および−CH−からなる群から選択される、請求項33に記載の方法、医薬組成物またはキット。
【請求項35】
前記化合物が、以下の一般構造:
【化7】

(式中、Dは、−OCHCHN(R)Rであり(RおよびRは、独立してC−Cアルキルからなる群から選択されるか、またはR、Rおよびこれらに結合する窒素原子は一緒になって、ピロリジノ、ジメチル−1−ピロリジノ、メチル−1−ピロリジニル、ピペリジノ、ヘキサメチレンイミノ、モルホリノ、環からなる群から選択される環状構造である)
およびRは、独立して水素、ヒドロキシルおよびインビボでヒドロキシルに変換される部分からなる群から選択される)
のベンゾピラン誘導体である、請求項33に記載の方法、医薬組成物またはキット。
【請求項36】
前記ベンゾピラン誘導体が、2位の炭素に絶対配置Sを有する光学活性化合物または医薬的に許容可能なそれらの塩であり、前記化合物は、分子構造:
【化8】

(式中、RおよびRは、独立してヒドロキシルおよびインビボでヒドロキシルに変換可能な部分からなる群から選択され;
は、飽和、不飽和または置換ピロリジニル、飽和、不飽和または置換ピペリジノ、飽和、不飽和または置換ピペリジニル、飽和、不飽和または置換モルホリノ、窒素含有環状部分、窒素含有多環状部分およびNRaRbからなる群から選択される化学種である(RaおよびRbは、独立して水素、直鎖または分岐鎖のC−Cアルキル、直鎖または分岐鎖のC−Cアルケニルおよび直鎖または分岐鎖のC−Cアルキニルである)
を有する、請求項35に記載の方法、医薬組成物またはキット。
【請求項37】
前記化合物または塩が、実質的に(2R)−鏡像異性体を欠いている、請求項36に記載の方法、医薬組成物またはキット。
【請求項38】
前記ベンゾピラン誘導体が、酢酸、アジピン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、フマル酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、塩酸、ヒドロクロロチアジド酸、ヒドロキシ−ナフトエ酸、乳酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、メチル硫酸、1,5−ナフタレンジスルホン酸、硝酸、パルミチン酸、ピバル酸、リン酸、プロピオン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、テレフタル酸、p−トルエンスルホン酸および吉草酸からなる群から選択される酸の塩である、請求項35に記載の方法、医薬組成物またはキット。
【請求項39】
前記選択的エストロゲン受容体モジュレータが、アコルビフェン
【化9】

である、前述の請求項2から5、9、17から20、42および43のいずれかに記載の方法、医薬組成物またはキット。
【請求項40】
前記選択的エストロゲン受容体モジュレータが、ラロキシフェン、アルゾキシフェン(Arzoxifene)、タモキシフェン、ドロロキシフェン、トレミフェン、イドキシフェン、GW5638、TSE−424、ERA−923およびラソフォキシフェンからなる群から選択される、前述の請求項2から5、9、17から20、42および43のいずれかに記載の方法、医薬組成物またはキット。
【請求項41】
前記性ステロイド前駆体が膣内に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
少なくとも1つの治療的有効量の選択的エストロゲン受容体モジュレータをさらに含む、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項43】
少なくとも1つの治療的有効量のエストロゲンをさらに含む、請求項42に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2008−516995(P2008−516995A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537088(P2007−537088)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【国際出願番号】PCT/CA2005/001612
【国際公開番号】WO2006/042409
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(598009810)アンドルシェルシュ・インコーポレイテッド (11)
【氏名又は名称原語表記】ENDORECHERCHE, INC.
【Fターム(参考)】