説明

閉蓋状態保持機能付きカップ状容器

【課題】 蓋体の一部を開封した後に閉蓋状態の保持を簡単且つ安価な構成で、しかも容易な作業により達成することのできる閉蓋状態保持機能付きカップ状容器を創出することを課題とする。
【解決手段】 側壁(3)の上縁部にフランジ(5)が周設された有底カップ状の容器本体(2)と、フランジ(5)よりも径方向外側に向かって突出するタブ(8)を有すると共にフランジ(5)に接合されて容器本体(2)を封止する蓋体(7)と、を備えたカップ状容器において、フランジ(5)に、容器本体(2)の底部方向に折り返す折り返し部を形成し、側壁(3)の外側で且つ折り返し部(5b)の内側に、折り曲げられた状態にあるタブ(8)の保持を可能とする保持部(9)を設けて、一部開封された蓋体(7)が閉蓋状態に設定される構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ麺など即席食品の包装に使用するカップ状容器に関わり、特に、即席食品を食するために蓋体を剥がし、熱湯を注ぎ、蓋体を再封して、蒸らし調理を行っている最中に、蓋体が開封してしまうことを防止した閉蓋状態保持機能付きカップ状容器に関する。
【背景技術】
【0002】
カップ麺などの即席食品を収納するカップ状容器は、先ずカップ状容器のフランジからシート状の蓋体の一部分を剥がし、その開口部から、一旦、液体スープの素や具の入った袋を取り出す。次に、袋の中身だけをカップ状容器内に戻して熱湯を注ぎ、開封後の蓋体でカップ状容器の開口部を再封する。そして、この状態で所定時間蒸らすことにより、調理が完成しカップ状容器内の即席食品を食することが可能となっている。
【0003】
従来、蒸らし調理中に蓋体が開封することを防止する手段としては、例えば蓋体の上に支持部材を載せたり、容器本体側のフランジと蓋体とを洗濯バサミのような挟持部材で挟むなど他の部材を用いて行うものがある(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
また即席食品を包装するカップ状容器に閉蓋状態を保持する機能を持たせた技術としては、例えば以下の特許文献3などが存在する。
特許文献3に記載の発明は、表基材層20、剥離剤層14及びプラスチックフィルム層50を備えた積層体構造の蓋材Aの表基材層20にフック部1が、プラスチックフィルム層50にフック部差込用切れ目2が形成されており、蓋材Aの開封用プルタブ5をつまんで蓋材Aを容器本体Bから開封すると、表基材層20にフック部1が形成され、剥離剤層14が設けられた剥離領域C内にプラスチックフィルム層50が露出し、フック部1を差し込むためのフック部差込用切れ目2が現出する。そして、蓋材Aのフック部1をフック部差込用切れ目2に差し込むことにより、閉蓋状態を保持することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−69924号公報
【特許文献2】特開2007−130432号公報
【特許文献3】特開2006−103746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1及び特許文献2に記載のものは支持部材や挟持部材などの他の部材を使用する構成であるところ、即席食品を調理する際、常に他の部材が身近にあるとは限らないし、また即席食品の数よりも支持部材や挟持部材の数が少ない場合もあり、他の部材を用いて閉蓋状態を保持することは必ずしも適切な手段であるとは云い難い。
【0007】
他方、特許文献3に記載の発明では、蓋材側にフック部とフック部差込用切れ目の双方を形成する構成であるため、蓋材を形成するシートの構成が複雑となり製造コストが高騰しやすいという問題がある。
【0008】
またフック部1は、開封用プルタブ5部分に設けられる構成ではなく、フック部差込用切れ目2と共に開封用プルタブ5近傍の剥離領域Cに設けられる構成であるところ、剥離領域Cは容器本体Bの外縁部6よりも開口部の中心側に張り出す構造となっている(引用文献3の図2参照)。このため、このような容器を用いた即席食品では、麺やスープが中心側に張り出した剥離領域Cに引っ掛かりやすく、食事をスムーズに行うことが困難であるという問題がある。
【0009】
さらに閉蓋状態とするには、フック部をフック用差込切れ目に差し込む必要があるところ、例えば不慣れな者や老眼を患う者にとってはフック部を小さな切れ目に差し込む作業は困難を伴うという問題がある。
【0010】
本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく、蓋体の一部を開封した後に閉蓋状態の保持を簡単且つ安価な構成で、しかも容易な作業により達成することのできる閉蓋状態保持機能付きカップ状容器を創出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための手段のうち、本発明の主たる構成は、
側壁の上縁部にフランジが周設された有底カップ状の容器本体と、フランジよりも径方向外側に向かって突出するタブを有すると共にフランジに接合されて容器本体を封止する蓋体と、を備えたカップ状容器において、
フランジに、容器本体の底部方向に折り返す折り返し部を形成し、側壁の外側で且つ折り返し部の内側に、折り曲げられた状態にあるタブの保持を可能とする保持部を設けて、一部開封された蓋体が閉蓋状態に設定されるようにしたことを特徴とする、と云うものである。
【0012】
本発明の閉蓋状態保持機能付きカップ状容器は、蓋体から延出され、フランジよりも径方向外側に向かって突出するタブを、折り返し部の形状に倣いながらその下端側に折り曲げ、さらに側壁の外側と折り返し部との間のスペースである保持部に差し込んで保持させることにより、一度開封してお湯を注ぎ込んだ状態にあるカップ状容器の閉蓋状態を維持する。
【0013】
また本発明の他の構成は、請求項1記載の発明において、凸状の縦リブが、側壁の表面と折り返し部の内面の少なくとも一方に形成されている、と云うものである。
【0014】
上記構成では、保持部を形成する折り返し部と側壁との間の対向間隔を縦リブの高さによって狭くすることにより保持部の保持力を高めると共に、高い側壁強度を達成する。
【0015】
また本発明の他の構成は、請求項1記載の発明において、側壁と折り返し部との間に中間折り返し部を形成し、折り返し部と中間折り返し部との間に保持部が設けられている、と云うものである。
【0016】
上記構成では、側壁と折り返し部との間に中間折り返し部を設けることにより、保持部の径方向の幅寸法を狭くして高い保持力を備えた保持部を達成する。
【0017】
また本発明の他の構成は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明において、折り返し部が、フランジの周方向の一箇所で且つタブと重なる位置に形成されている、と云うものである。
【0018】
上記構成では、タブの形成位置と折り返し部の形成位置を周方向において一致させることにより、蓋体側のタブの、容器本体側の保持部での保持を確実に達成して閉蓋状態を維持する。
【0019】
また本発明の他の構成は、請求項1乃至3のいずれか記載の発明において、折り返し部が、フランジの全周に亘って形成されている、と云うものである。
【0020】
上記構成では、保持部としての利用をフランジの全周に亘って達成する。
【0021】
また本発明の他の構成は、請求項2記載の発明において、縦リブが、周方向の一箇所に形成された折り返し部と側壁との対向部分に形成されている、というものである。
【0022】
上記構成では、保持部が、側壁と周方向の一箇所に形成された折り返し部との対向部分に形成される構成であり、このような保持部であっても、縦リブは側壁側に形成されていてもよいし、折り返し部側に形成されていてもよい。あるいは縦リブを側壁と折り返し部の双方に形成する構成であってもよい。
【0023】
また本発明の他の構成は、請求項2記載の発明において、複数の縦リブが、周方向に一定の間隔で形成されている、というものである。
【0024】
上記構成では、高い保持力を備えた保持部をフランジの全周に亘って達成する。
【0025】
さらに本発明の他の構成は、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の発明において、保持部は、入り口側の対向間隔が奥部側の最大対向間隔よりも狭い寸法で形成されている、というものである。
【0026】
上記構成では、保持部の入り口側を狭くして高い保持力を備えた保持部を達成する。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明の主たる構成においては、蓋体側のタブと、容器本体側の側壁の外側に設けた保持部とにより、閉蓋状態の保持を簡単且つ安価に構成することができると共に、タブの先端を折り曲げて保持部に差し込むだけという簡単な作業により、一部開封した蓋体の閉蓋状態の保持を確実に達成することができる。
しかも従来のように容器本体の開口端の中心側に張り出す剥離領域を不用とすることができるので、麺やスープをスムーズに取り出して食することが可能となる。
【0028】
また、凸状の縦リブが、側壁の表面と折り返し部の内面の少なくとも一方に形成されているとした構成にあっては、保持部の保持力を高めことにより、タブを確実に保持することが可能となる。また側壁の強度を高めることができるため、シール受け治具による蓋体の接合面への接合作業を、容器本体側に不要な変形を与えることなく行うことができる。
【0029】
また、側壁と折り返し部との間に中間折り返し部を形成し、折り返し部と中間折り返し部との間に保持部が設けられているとした構成にあっては、保持部の径方向の寸法を狭くして保持部の保持力を向上させることができる。さらに内側の挿入部をシール受け治具装着用として、外側の保持部をタブ保持用として別々に利用することが可能となり、挿入部での蓋体の接合及び保持部でのタブの保持を確実に行うことができる。
【0030】
また、折り返し部が、フランジの周方向の一箇所で且つタブと重なる位置に形成されているとした構成にあっては、折り返し部をフランジの全周に亘って形成する必要がなくフランジを形成する原材料を少なくすることができるため、製造コストを低減することができる。さらに保持部の形成位置を目視だけでなく、手で触れることによっても確認することが可能となり、より使いやすいカップ状容器とすることができる。
【0031】
他方、折り返し部が、フランジの全周に亘って形成されている構成にあっては、フランジの外側を全周に亘って保持部として利用することができるため、蓋体側のタブの形成位置が周方向に位置ずれしたカップ状容器であっても、閉蓋状態を確実に維持することが可能となる。
【0032】
また縦リブが、周方向の一箇所に形成された折り返し部と側壁との対向部分に形成される構成にあっては、フランジの外側に部分的に設けられる保持部の保持力を高めることができる。
【0033】
また、複数の縦リブが、側壁の周囲に一定の間隔で形成されている構成にあっては、全周に亘る保持部の保持力を高めることができると共に容器本体の全体的な強度を高めることができる。
【0034】
また、保持部は、入り口側の対向間隔が奥部側の最大対向間隔よりも狭い寸法で形成されているとした構成にあっては、保持部の保持力を高めることにより、折り曲げ状態のタブを保持部に差し込むだけで確実に保持することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明のカップ状容器を示す斜視図である。
【図2】図1に示すカップ状容器の平面図である。
【図3】図1に示すカップ状容器の縦方向の半断面図である。
【図4】図1に示すカップ状容器の要部を示すと共に第1実施例としてのフランジを拡大して示す部分断面図であり、Aは蓋体を接合する前の後加工処理を示し、Bはタブが保持された状態を示している。
【図5】第2実施例としてのフランジを拡大して示す部分断面図である。
【図6】第3実施例としてのフランジを拡大して示す部分断面図である。
【図7】第4実施例としてのフランジを拡大して示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明のカップ状容器を示す斜視図、図2は図1に示すカップ状容器の平面図、図3は図1に示すカップ状容器の縦方向の半断面図である。図4は図1に示すカップ状容器の要部を示すと共に第1実施例としてのフランジを拡大して示す部分断面図であり、Aは蓋体を接合する前の後加工処理を示し、Bはタブが保持された状態を示している。
図1乃至図3に示すように、本発明のカップ状容器1は、カップ麺などの即席食品、スープの素及びその他の具材を収納する開口部2aを備えた容器本体2と、このカップ状容器1を封止するシート状の蓋体7とを有して構成される。
【0037】
この実施例では、容器本体2が、略円筒状からなる側壁3と円盤状の底壁4とからなる有底筒形状をしたものとして説明するが、容器本体2の形状は有底筒形状に限られるものではなく、例えば底部が丸い形状からなるいわゆるドンブリ形状を含むものであり、いわば有底カップ状である。容器本体2の上縁部、すなわち側壁3の上端には、径方向外側にリング状に迫り出すフランジ5が一体に周設されており、このフランジ5の上面が蓋体7との接合面5aである。
【0038】
容器本体2は、例えば熱成形法や射出成形法により形成されている。容器本体2の材料としては、例えばシート状の合成樹脂などを用いて形成されている。合成樹脂製は単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。なお、容器本体2は紙材を用いて形成されたものであってもよい。
【0039】
蓋体7は、例えばシート状のアルミ箔、紙材及び合成樹脂のうちの2種以上を接合して製造される合成シートから形成されている。図1及び図2に示すように、蓋体7の周方向一箇所の位置には、指先で摘んで蓋体7の開蓋作業及び閉蓋作業を行うためのタブ8が、径方向の外側に向かって凸状に突出する状態で一体に形成されている。
【0040】
カップ状容器1は、容器本体2の開口部2a内に即席食品、スープの素、スパイス及びその他の具材を収納した後に、蓋体7がフランジ5の接合面5aに熱溶着等の手段により固着されて封止される。タブ8は、接合面5aと接触する部分のみが接合状態にあり、フランジ5の外側に突出している部分は非接合状態にある。
【0041】
カップ状容器1で調理するには、先ず蓋体7の一部を部分的に剥がして開口部2aを部分的に露出させる。次に、容器本体2からスープの素、スパイス及びその他の具材等が入った袋体を取り出し、これら袋体の封を切って中身だけを容器本体2内の麺の上に戻す。そして、容器本体2内にお湯を注ぎ、閉蓋状態を保持しながら所定時間蒸した後、蓋体7を大きく開封することにより食することが可能となる。
【0042】
ここで、蓋体7の部分的な開封による開蓋作業は、タブ8を摘みながら容器本体2から離れる斜め上方a(図4B参照)に強く引き上げることにより行うことができ、この際に蓋体7がフランジ5の接合面5aから剥離して開蓋状態に設定される。
【0043】
図4Aに示すように、第1実施例に示すフランジ5には垂下する方向に折り返された折り返し部5bが設けられている。そして、折り返し部5bの下端5b1と側壁3との対向間隔d1が折り返し部5bの上端5b2と側壁3との間の最大対向間隔d2よりも狭い寸法に形成されている(d1<d2)。折り返し部5bは、成形後のカップ状容器1に後加工を行うことにより、下端5b1が側壁3に接近するように形付けられている。この折り返し部5bと側壁3との間に形成されるスペース部分が保持部9である。
【0044】
そして、図4Bに示すように、剥離されて非接合状態にあるタブ8を摘みながら元の水平姿勢に戻すことにより開口部2aを閉じることができる。次に、タブ8をフランジ5の折り返し部5bの形状に倣いながら図示α1方向に折り曲げ、さらにタブ8の先端のみを保持部9の内側に折り込み、この状態で保持部9に差し入れると、タブ8の先端が保持部9で保持され、これにより蓋体7の閉蓋状態の維持が可能となる。このように、タブ8の先端をフランジ5の下部位置で保持部9内に折り曲げた状態で差し入れるだけという簡単な操作により、一度開封したカップ状容器1の閉蓋状態を維持することができる。
なお、第1実施例では、折り返し部5bがフランジ5の全周に亘って形成されているので、タブ8の形成位置は蓋体7の周縁部のいずれの位置であってもよい。
【0045】
蓋体7を再び開封するには、タブ8の先端を摘みながら保持部9から引き出す操作を行うだけで、折り込み状態にあるタブ8が保持部9から簡単に引き出されて蓋体7の閉蓋状態を終了させることが可能となる。続いてタブ8を閉蓋時とは逆方向に持ち上げ、さらに斜め上方aに引き上げることにより、蓋体7がフランジ5の接合面5aから剥離してより完全な開蓋状態に設定される。
【0046】
第1実施例では、保持部9内に折り曲げた状態で差し入れられたタブ8は、この保持部9内で復元して折り曲げ状態から拡張変形しようとする。ここで、保持部9は対向間隔d1からなる入り口側(下端5b1側)より、最大対向間隔d2を有する奥部の方が広い構造である。このため、タブ8は入り口側よりも奥部の位置で大きく拡張変形することになるので、タブ8の保持部9からの抜け出にくくすることができる、すなわち、保持部9の入り口側を奥部より狭い構造とすることにより、タブ8を保持する保持部9の保持力を高め、より確実に閉蓋状態の維持を可能とすることができる。
【0047】
次に、本発明の第2実施例について説明する。
図5は第2実施例として、カップ状容器のフランジを拡大して示す部分断面図である。なお、図5では蓋体を省略した状態を示しているが、蓋体及びタブの基本的な作用及び効果は第1実施例と同様である。
第2実施例に示すカップ状容器1が第1実施例と大きく異なる点はフランジ5の形状が断面円弧状である点にあり、その他の構成は上記第1実施例と同様である。
【0048】
図5に一点鎖線で示すように、第2実施例に示すカップ状容器1では、成形時に容器本体2の側壁3の上縁部に、断面が半円形状からなるフランジ5が形成される。そして、図5に実線で示すように、成形後にフランジ5の下端5b1を側壁3に接近する方向にカール状に変形させる後加工を行うことにより、フランジ5の外側にほぼ3/4円形状の折り返し部5bが形付けられている。このような折り返し部5bは、フランジ5の全周に亘って略環状に形成されている。折り返し部5bの下端5b1と側壁3とが対向する入り口部分の対向間隔d1は、それよりも奥側に設けられた最大対向間隔d2よりも狭く形成されており、この入り口部分から奥側が保持部9を構成している。
【0049】
第2実施例では、フランジ5の上端5b2は蓋体7が接合される接合面5aであるが、第1実施例同様に上端5b2よりも径方向外側に向かって突出するタブ(図示せず)をフランジ5の形状に倣うように湾曲させ、さらにタブの先端を折り曲げてフランジ5の下部位置で対向間隔d1の入り口部分から保持部9内に差し入れることにより、保持部9内にタブを保持させることが可能である。
なお、第2実施例においても折り返し部5bがフランジ5の全周に亘って形成されているので、タブ8の形成位置は蓋体7の周縁部上のいずれの位置であってもよい。
【0050】
次に、本発明の第3実施例について説明する。
図6は第3実施例として、カップ状容器のフランジを拡大して示す部分断面図である。
第3実施例に示すカップ状容器1が第1実施例と大きく異なる点は側壁3に縦リブ10が形成されている点及びタブ8が蓋体7の縁部に全周に亘って形成されている点にあり、その他の構成は上記第1実施例と同様である。
【0051】
図3に示すように、第3実施例では、フランジ5の折り返し部5bと対向する側壁3の表面に、縦リブ10が径方向外側に向かって凸状に突出する状態で且つ側壁3の上端から底壁4の方向に沿って縦長状に一体形成されている。第3実施例においても折り返し部5bと側壁3とが対向するスペースが保持部9である。縦リブ10はこの保持部9内に一定の間隔を有して周設されている。このため、第3実施例では、周方向の任意の位置で、タブ8を折り曲げてその先端を保持部9に差し入れることにより、閉蓋状態とすることができる。
【0052】
ところで、蓋体7を容器本体2側の接合面5aに接合するには、図示しないシール受け治具を保持部9内に挿入し、蓋体7をフランジ5の接合面5aに熱溶着等させる必要があるところ、シール受け治具を挿入するためには保持部9の幅寸法をある程度広く形成する必要がある。しかしながら、保持部9の幅寸法が広すぎると、保持部9での保持力が低くなって開蓋状態を維持することが困難となる。
【0053】
そこで、第3実施例に示すように、側壁3の表面に縦リブ10を形成するようにすると、シール受け治具が挿入される折り返し部5bと側壁3の表面(縦リブ10の基部)との間である保持部9の幅寸法を広くしても、折り返し部5bと縦リブ10の頭頂部との間の幅寸法を狭くすることができるため、この保持部9の保持力の低下を防止することが可能となる。すなわち、第3実施例では、保持部9内にシール受け治具を受け入れるためのスペースの確保と保持部9での保持力の強化とを同時に達成することができる。
【0054】
次に、本発明の第4実施例について説明する。
図7は第4実施例として、カップ状容器のフランジを拡大して示す部分断面図である。
第4実施例に示すカップ状容器1が第1実施例と大きく異なる点は、側壁3の外側に折り返し部が二重に形成されている点にあり、その他の構成は上記第1実施例と同様である。
【0055】
図7に示すように、このカップ状容器1では、容器本体2の外側、すなわちフ側壁3と折り返し部5bとの間に中間折り返し部5cが周設され、これら二重に形成された折り返し部5bと中間折り返し部5cとによりフランジ5が構成されている。そして、内側である側壁3と中間折り返し部5cとの間に挿入部11が設けられ、外側である中間折り返し部5cと折り返し部5bとの間に保持部9が設けられている。
【0056】
第4実施例においては、折り返し部5bと側壁3との間に中間折り返し部5cを設けることにより、狭い径方向の幅寸法からなる保持部9を達成している。そして、折り返し部5bの下端5b1とこれに対向する中間折り返し部5cとの間である保持部9の入り口側の対向間隔d1は、保持部9の奥部側の最大対向間隔d2よりも狭く形成されている。よって、第4実施例においても、タブ8の先端を折り曲げ、折り返し部5bの下部(下端5b1)位置にあって対向間隔d1からなる入り口部分から保持部9内に差し入れることにより、タブ8をこの保持部9において比較的強固に保持することができ、一度開封した後の蓋体7の開蓋状態を確実に維持することが可能である。
【0057】
なお、シール受け治具を挿入部11へ挿入することは可能であるが、保持部9への挿入は不可能となるように、挿入部11の径方向の幅寸法が、保持部9の径方向の幅寸法よりも広く形成されている。よって、蓋体7をフランジ5の接合面5aに接合してカップ状容器1を封止するときには、図示しないシール受け治具を幅広の挿入部11に挿入して行うことにより可能となっている。
すなわち、この第4実施例においても、蓋体7を接合するためのシール受け治具挿入用のスペースの確保と保持部9での保持力の強化とを同時に達成することが可能である。
【0058】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
【0059】
例えば上記第1乃至第4実施例では、折り返し部がフランジ5の全周に亘って形成される構成を示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、折り返し部はフランジ5の外縁部のいずれか一箇所の位置に形成される構成であってもよい。この場合、蓋体7側のタブ8を、折り返し部と周方向において重なる位置に形成する構成が好ましい。この構成では、折り返し部を形成する材料を少なくすることができるため、全体的な製造コストを低減することが可能となる。
【0060】
また上記第3実施例では、保持部9での保持力を強化する手段として、側壁3の表面に縦リブ10を形成する構成を示して説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、縦リブ10を折り返し部5bの内面(側壁3との対向面)に径方向内側に向けて凸状に突出形成する構成であってもよい。あるいは縦リブ10を側壁3の表面と折り返し部5bの内面の双方に凸状に突出形成する構成としても、保持部9の保持力を高めることが可能である。
【0061】
加えて、縦リブ10は、側壁3とフランジ5の周方向の一箇所に形成された折り返し部5bとの対向部分の少なくとも一方に部分的に形成される構成であってもよいし、複数の縦リブ10を全周に亘って形成された側壁3の表面と同じく全周に亘って形成された折り返し部5bの内面の少なくとも一方に周方向に沿って一定の間隔で形成される構成であってもよい。なお、前者の場合には、タブ8は、蓋体7の周方向の一箇所の位置で、押し返し部5bと重なる位置に形成するようにした構成が好ましい。
【0062】
また第4実施例では、折り返し部5bを全周に亘って形成してもよいし、周方向の一箇所でタブ8と重なる位置に部分的に形成する構成であってもよい。
加えて、縦リブはフランジ5の周方向の一箇所に形成された折り返し部5bと全周に亘って形成された中間折り返し部5cとの対向部分の少なくとも一方に部分的に形成される構成であってもよいし、複数の縦リブを、全周に亘って形成された折り返し部5bと同じく全周に亘って形成された中間折り返し部5cの少なくとも一方に周方向に沿って一定の間隔で形成される構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の閉蓋状態保持機能付きカップ状容器は、カップ麺等の即席食品を包装する分野における用途展開をさらに広い領域で図ることができる。
【符号の説明】
【0064】
1 ;カップ状容器
2 ;容器本体
3 ;側壁
4 ;底壁
5 ;フランジ
5a ;接合面
5b ;折り返し部
5b1;折り返し部の下端
5b2;折り返し部の上端
5c ;中間折り返し部
7 ;蓋体
8 ;タブ
9 ;保持部
10 ;縦リブ
11 ;挿入部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁(3)の上縁部にフランジ(5)が周設された有底カップ状の容器本体(2)と、前記フランジ(5)よりも径方向外側に向かって突出するタブ(8)を有すると共に前記フランジ(5)に接合されて前記容器本体(2)を封止する蓋体(7)と、を備えたカップ状容器において、
前記フランジ(5)に、前記容器本体(2)の底部方向に折り返す折り返し部(5b)を形成し、前記側壁(3)の外側で且つ前記折り返し部(5b)の内側に、折り曲げられた状態にあるタブ(8)の保持を可能とする保持部(9)を設けて、一部開封された蓋体(7)が閉蓋状態に設定されるようにしたことを特徴とする閉蓋状態保持機能付きカップ状容器。
【請求項2】
凸状の縦リブ(10)が、側壁(3)の表面と折り返し部(5b)の内面の少なくとも一方に形成されている請求項1記載の閉蓋状態保持機能付きカップ状容器。
【請求項3】
側壁(3)と折り返し部(5b)との間に中間折り返し部(5c)を形成し、前記折り返し部(5b)と前記中間折り返し部(5c)との間に保持部(9)が設けられている請求項1記載の閉蓋状態保持機能付きカップ状容器。
【請求項4】
折り返し部(5b)が、フランジ(5)の周方向の一箇所で且つタブ(8)と重なる位置に形成されている請求項1乃至3のいずれか一項に記載の閉蓋状態保持機能付きカップ状容器。
【請求項5】
折り返し部(5b)が、フランジ(5)の全周に亘って形成されている請求項1乃至3のいずれか一項に記載の閉蓋状態保持機能付きカップ状容器。
【請求項6】
縦リブ(10)が、周方向の一箇所に形成された折り返し部(5b)と側壁(3)との対向部分に形成されている請求項2記載の閉蓋状態保持機能付きカップ状容器。
【請求項7】
複数の縦リブ(10)が、周方向に一定の間隔で形成されている請求項2記載の閉蓋状態保持機能付きカップ状容器。
【請求項8】
保持部(9)は、入り口側の対向間隔(d1)が奥部側の最大対向間隔(d2)よりも狭い寸法で形成されている請求項1乃至7のいずれか一項に記載の閉蓋状態保持機能付きカップ状容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−206765(P2012−206765A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75504(P2011−75504)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】